【オリイベSS・CP注意】詩神変身譚 この恋文を貴方へ

  • 1125/06/01(日) 21:24:17

    期間限定イベント『詩神変身譚 この恋文を貴方へ』開催未定!

    カルデアは特異点の修復を完了し、暫しの休息を取る予定だった。
    しかし、同年代・同座標──まるで蘇ったかのように、特異点が再び出現する。

    それは、恋で歪んだ理想郷。
    それは、愛の名を騙る監獄。

    まだ終われない恋があるのなら、
    まだ描かれていない愛があるのなら、
    舞台は、何度でも幕を開ける。

    今度こそ、完璧な終焉のために。

    言葉は人を狂わせ、恋は世界を蝕む。
    愛を語れぬ者は、咎人となる。
    だから彼らは、歌うことをやめられない。
    君は、またこの地に立つ。

    ……さあ、君は続きを見届けてくれるかい?
    この恋文が、誰のものだったのかを。
    幕が上がるまで、あと少し。

  • 2二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 21:24:48

    楽しみ

  • 3125/06/01(日) 21:25:34

    ■特攻サーヴァント(一部)
    ★5〔キャスター〕プブリウス・オウィディウス・ナソ(期間限定)
    ★4〔アーチャー〕シータ(先行登場恒常サーヴァント)

    ★5〔ランサー〕ブリュンヒルデ(期間限定)
    ★5〔ライダー〕オデュッセウス(恒常)
    ★4〔セイバー〕ラーマ(恒常)
    ★4〔アーチャー〕トリスタン(ストーリー召喚)

    ※以下の条件を満たしたマスターが参加可能
    「奏章Ⅱ不可逆廃棄孔イド」をクリア

    という内容の大嘘SSです

    ⚠️色んなCP注意⚠️

    ※作成過程で一部、AIを使用しています

  • 4二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 21:25:55

    うぉっすごい出来…恋の神様?ローマかギリシャっぽいしエロスとかなのかな…でも漢字…

  • 5125/06/01(日) 21:28:10

    ■プロローグ:再び綴られた世界
    【カルデア・観測室】
    (特異点修復を終え、マシュと共にダ・ヴィンチちゃんに報告をしている)
    (そこへ、警報が鳴り響く)

    マシュ「……先ほど修復を終えたばかりの座標に、再び特異点反応です!座標は……完全に開いています!」
    ダ・ヴィンチ「先の特異点は記録上は確かに修復済み……
    でも、これは“別の特異点”と見た方がいいだろうね」

    【どういうこと?】
    【前と何が違うの?】

    ダ・ヴィンチ「適合サーヴァントがまるで違うんだ。同じ土地、同じ時代なのに、まったく別の反応が出ている。
    ……原因はまだわからない。でも放置はできないね」

    マシュ「念のため、再調査を。マスター、出撃の準備をお願いします」

  • 6125/06/01(日) 21:29:59

    ダ・ヴィンチ「この特異点、出現の仕方からしてかなりきな臭い。気をつけて!」

    ラーマ「任されたぞ!」
    ブリュンヒルデ「はい……」
    トリスタン「……了解しました」
    オデュッセウス「ああ!心強い者ばかりだからな!この冒険やり遂げよう」

    (4人と共に再度紀元前ローマへ向け、レイシフトを行う)

    【レイシフト直後】
    (そこには、前回の特異点とはまったく違う光景が広がっていた)
    (廃墟だった街は理想郷のように蘇り、どこからか美しい音楽が風に乗って聞こえる)

    【(通信は断絶……)】
    【(同行サーヴァントの気配、なし……)】

  • 7125/06/01(日) 21:38:37

    (広場の噴水のそば、花の冠を頭に乗せた子供たちが詩を口ずさんでいる)
    (その脇に、白い外套を羽織った一人の男が立っている)

    ???「ようこそ、旅人──かな?
    ……ふふ、なんてね。歓迎するよ、カルデアのマスター」

    【誰!?】
    【(戦闘体勢をとる)】

    ???「おっと、ずいぶん物騒だね。そんなに疲れているのかい?」

    ???「私は──キャスター、オウィディウス。詩人だよ。
    真名、プブリウス・オウィディウス・ナソ。長いからヴィドとでも呼んでくれ」

    【どこかで会ったことある……?】

    ヴィド「会ったこと?ないさ。
    でも私は、ずっと君を読んでいた。
    ──だから、私は君の味方だよ。レトル」

  • 8125/06/01(日) 21:43:11

    ヴィド「帝政の黄金、民は賢く、街は清らか、愛が語られ、戦なき日々が続く──我がローマ!
    そして今、君がその地を歩く。

    あぁ、星見台の君よ。
    神々が星を空のもとで、翼を休めるそのひととき、君の心には──何が映っている?

    まだ語られぬ恋、名を持たぬ美。
    けれど私は知っていた──
    愛が形となる前に、君はもう、私の詩に現れていた」

    【仲間を探しているんだ】
    【もう行くね】

    ヴィド「……待って、待って。君は少し早計すぎる。何か嫌なことでもあったのかい?
    私はね、この地の美しさに、君が触れてくれたらそれだけでいい。
    それだけで、いいんだよ」

  • 9125/06/01(日) 21:46:28

    (ヴィドが一歩並び、歩き出す)


    ヴィド「そうだ、君の仲間を探しているのだろう?……ふむ。あぁ、心当たりはあるよ。

    けれどその前に、君自身の目でこの地を見てほしい。

    美しいものの前で、心を曇らせるなんて──もったいないじゃないか?」


    (振り返り、柔らかく微笑む)


    ヴィド「さあ、行こうか、レトル。

    語らいのように、静かに。踊るように、軽やかに。

    このローマを──私の愛した、美しい世界を」


    (詩人の手が差し出される。まるで舞踏の誘いのように)


    ──プロローグ:再び綴られた世界

    [in nova fert animus mutatas dicere formas corpora]

    ──心は、新しき姿を語らんと、動き出す。


    (変身物語第1歌より)

  • 10125/06/01(日) 21:49:14

    >>2

    >>4

    ありがとうございます!全6章立ての予定です。

    お付き合い頂けますと幸いです。。

  • 11二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 21:51:02

    俺の推しセイバーきた!期待

  • 12125/06/01(日) 21:52:45

    ■第1章:あぁ、美しきローマよ
    (ローマの街並み。朝の広場。清掃された石畳に噴水の飛沫がきらめき、バラの花びらが風に舞う)

    【わぁ……!】
    【綺麗……!】

    ヴィド「さあ、こちらだ、レトル。
    この通りは“詩人の坂”と呼ばれていてね──
    歩くだけで恋が芽吹くと、そう噂されている。
    ……信じるかい?」

    (道行く市民はこちらに軽く頭を下げ、穏やかな笑みを浮かべる)
    (子供たちは詩を口ずさみながら、花の冠をかぶって手を振る)

    ヴィド「花はどうだい?
    ──ああ、旅に荷物は不要だね。
    贈り物は、心に余白ができた時がいい。
    愛は押しつけるものじゃないしね!」

    (石造りの食堂。香ばしいレンズ豆のスープ、柔らかな肉団子)
    ヴィド「これがルクッラーナ風の昼食だよ。
    贅沢ではないが、滋味がある。詩と同じだね。
    技巧なんてものは後でいい。情熱があれば、伝わるものさ」

    【美味しい!】
    【これはなかなか……!】

  • 13二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 21:54:29

    ラーマが同行鯖でシータ特効鯖…再会させてね!!!

  • 14125/06/01(日) 21:56:38

    (フォロ・ロマーノ。市場の喧騒。果物の香りと焼きたてパンの匂いが風に溶ける)
    (人々は忙しなく行き交いながらも、どこかしら笑みを浮かべている。そのざわめきの中──見つめ合う二人の姿がある)

    ヴィド「見てごらん、あれが──日常の中に咲く“愛の種”。
    声に出されることはなく、ただ目配せと微笑で芽吹く……気づいた者だけが、そっと手にできるんだ。
    ああ、恋の熱気に当てられて逸れないように。
    私は構わないけど、手を繋がれたら困るのは──君の方じゃないかな?
    ……干しいちじく、いる?」

    【いたただきます!】

    (テルマエ。壮麗な公衆浴場前。白い石が陽光を浴び、湯気が空気をぼかしていく)

    ヴィド「旅の疲れには、湯が一番さ。
    テルマエの熱気は、体だけでなく──心の壁すら溶かしてしまう。
    恋もまた、そういう場所を選ぶものだよ」

    【……えーっと】

    ヴィド「ここでは誰もがひとつの人になる。
    地位も、名も、衣も──裸の前では、等しく意味をなくす。
    肌が語る言葉、それを“沈黙の言語”と呼んだ詩人もいた。
    ……美しいと思わないかい?」

    【結構です】

  • 15二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 21:57:57

    面白いよ

  • 16125/06/01(日) 21:59:31

    ヴィド「うん?心配しなくても混浴だよ?──あ、そこが気に入らなかったのかな?
    うーん、“ジャポネーゼ”は湯浴みが好きだと聞いていたんだけど……違ったか」

    ヴィド「──むむぅ、
    Mille modi Venerem docet ars.
    (恋には千の手段がある──それを教えるのが技術だ)
    ……恋のアプローチは、人によって変えるべき、ってね。私も昔、書いたはずだったのに」

    【……薄々気付いていたけど……】
    【これ、ただの観光じゃない!?】

    ヴィド「あぁそうだ、パーネス食べるかい?
    これはね、兵士たちが戦場に持って行ったパン。
    でも今日の君は、戦士じゃなくて旅人だ。
    だから、蜂蜜をたくさん塗ってあげよう」

    【ただの観光だ──!】

    ──ピッ!
    マシュ《マスター! 通信、回復しました!ご無事ですか!? 現在地は特異点内、座標ズレは最小──!》
    ダ・ヴィンチ《あ〜〜聞こえる? よかった〜!
    ん〜?お隣さんは現地のサーヴァントかな?》

  • 17125/06/01(日) 22:02:03

    ヴィド「あぁ、美しき女神が二人──
    咲き始めのペルセポネ、理を宿したアフロディーテ……!やはり美というものは時代を選ばないらしい。
    ──あぁ失礼、名乗りを忘れていた。
    見惚れていたんだよ、あまりに甘く輝いた光景につい、ね。
    私はキャスター、真名プブリウス・オウィディウス・ナソ。
    この特異点に召喚されたサーヴァントだよ」

    【(全部一息で話したな……)】

    マシュ「は、はい……!?……えっ、オウィディウスさんってあの『変身物語』の……?」

    ダ・ヴィンチ「そう、古代ローマ最大級の詩人のひとりだよ。愛と神々と変身を語った男──代表作は『変身物語』と『恋の技法』、
    “愛を語る詩人”なんて呼ばれ方もするね。
    ルネサンス芸術の種を蒔いた人物でもある」

    ヴィド「名声には慣れてるつもりだったけど、美人に褒められるのはやっぱり別格だね。
    とくに今日はレトルのご機嫌を損ねてしまった直後だったから……ほら、沁みるだろう?

    ……うん、これ以上優しくされると、詩が一篇できあがってしまうかも。
    もし、そこのミューズの化身たち、ささやかな詩を私から捧げさせていただいても……よろしいかな?」

  • 18125/06/01(日) 22:04:24

    (さらに通信越しに声が入る)

    ネロ《──ナソ!我がローマが誇る愛の詩人よ!余もそなたの詩を何度読み返したものか!》
    カエサル《詩聖よ、私の過去の栄光すら優美に語り直してくれたその筆、今なお健在か》

    ヴィド「──おやおや、これは……我が敬愛せし皇帝陛下方ではありませんか。
    詩人ごときに、まことに過分なお言葉。
    あぁ、光栄の極みです。
    通信越しでなければ、ローマの石畳に額を擦りつけていたところですよ──ほんの少しだけ、ね」

    【有名人だったのか……】

    ヴィド「うんうん、レトル。君もカルデアに戻ったら、ぜひ私の詩集を読むといい。
    注釈が必要なら、夜通しでも構わないよ?
    私の朗読と解説付きでね。
    銀貨の山より、夜通しの詩の方が甘い──そう思わないかい?」

  • 19125/06/01(日) 22:08:38

    ダ・ヴィンチ《そうだ!オデュッセウスは?すぐそばに霊基反応があったんだけど……》

    (広場からかすかに騒ぎが聞こえる、女性の泣き声が響く)

    【あっちかも!】

    ヴィド「……行こうか、レトル」

    (走り出すとヴィドもその後に静かに歩き出す)

    (広場。騒ぎの中心にいたのは、甲冑をまとった男と、白い装束を風に揺らす女だった)
    (人々が距離を取りながらも、ヒソヒソとその様子を見つめている)

    【オデュッセウス!】

    オデュッセウス「マスター!無事か!」

    【よかった!】

    (駆け寄ろうとした瞬間、女がオデュッセウスの腕をそっと取る。彼女は、柔らかく首を振った)

    ???「行かないで!今度こそ、あなたを失いたくないの!」

  • 20125/06/01(日) 22:10:27

    オデュッセウス「……ペーネロペー、君は、ここにいるべきじゃない。これは幻だ、帰るべき場所があるだろう」

    ペーネロペー?「……あなたの帰りを、ずっと待っていた。

    ……でもね、もう──“待てない”の」

    ──1章:あぁ、美しきローマよ
    [Tempora longa tibi nimiumque moratus amator
    deficeret, saevo iam grave facta mora]
    ──時が長すぎれば、恋は枯れる。
    待ちくたびれた者の心は、ついに折れてしまう。

    (恋の技法第2巻より)

  • 21125/06/01(日) 22:14:37

    >>11

    >>13

    >>15

    ありがとうございます!

    予告をよく読んでくださいね。。

  • 22125/06/01(日) 22:18:17

    ■第2章:愛の詩は、かも滲むのか
    ──

    たとえば、それは──
    過去に置き去りにされた恋のかけら。
    あるいは、言葉にされなかった誓いの残響。
    神々ですら愛に惑い、人はただ祈る。
    再会が、救済であれと。
    けれど、待つという行為は信仰に似ていて、
    信じきれぬ者には──微笑みさえ、刃になる。

    ──

  • 23125/06/01(日) 22:23:58

    (石畳の先、木陰の奥から小さな影が現れる)
    (それはゆっくりと歩き、柔らかな声で告げる)

    ???「……ようやく、会えたのね」

    (彼女の目が、こちらをゆっくりとなぞる)

    ???「ずっと待っていたのはお互い様。
    会えぬまま疑い、疑ったまま忘れたくなる。

    ……忘れたくても忘れられず、
    待ちくたびれて、愛故に別れを望む。

    ……ねえ、私、何か罪を犯したのかしら?」

    ペーネロペー「……貴女は誰?私のオデュッセウスに近寄らないで!」

  • 24125/06/01(日) 22:26:03

    (誰かが駆けてくる足音──)

    ラーマ「──マスター!オデュッセウス!無事だったか!
    ……っ!シータ……っ!?」

    シータ「……ご機嫌よう、ラーマ様。
    貴方は、何度でも私を見つけ出すのね」

    ラーマ「シータ、本当に君なのか……?」

    (彼女は曖昧に微笑む、その姿は目を見張るほどに美しい)

    シータ「疑うのね、また。でもいいの。
    今は私も貴方を”信じていない”もの」

    ラーマ「なぜだ……!?愛している、ずっと、変わらずに!」

  • 25125/06/01(日) 22:27:58

    ペーネロペー「お願い、オデュッセウス。
    もうどこにも行かないで。
    もう誰のこともその瞳に映さないで。
    私は……次はきっと、あなたは帰らないと、そう思ってしまうの」

    オデュッセウス「……これは幻だ。だが、それでも俺は……!」

    ダ・ヴィンチ《オデュッセウスの帰りを待てないペーネロペーに、ラーマを信じないシータだって?》

    マシュ《待ってください!それは本当に彼女達なのですか?》

    【何かがおかしい!】

  • 26125/06/01(日) 22:30:40

    シータ「“私を信じて”って言わなければ、貴方は信じてくれないのかしら?
    あの日の私と、今の私、違うと思っているのは──貴方じゃないの?」

    ラーマ「……君の純潔を疑ったあの日、あの日のことはどう詫びていいかわからない!
    だが!ずっと……僕は君を!」

    シータ「──私が貴方を拒むのは、もう一度傷つきたくないと思ったから。
    私を“斬ってくださいませ”、さようなら、ラーマ様」

    ラーマ「……君は、シータじゃない。
    だが……君の姿をして、君の声で話すなら──僕が終わらせるしかない」

    (ラーマの手の中の剣が灯る)

  • 27125/06/01(日) 22:33:40

    ペーネロペー「もう行かないで。オデュッセウス。
    十年を待つことはできました。
    百の縫い目も、糸をほどきながら待ちました。
    けれど、貴方から帰ってきたのは私を“信じない”という沈黙だけ。
    だから私は……もう、貴方をここから出すことができないの」

    オデュッセウス「お前は……あのペーネロペーじゃない。
    ──だが、それでも俺は……お前を討たなければならない」

    (剣が振り上げられる)

  • 28125/06/01(日) 22:35:23

    (二本の剣が同時に振り下ろされた直後──)
    (四人は光で出来た大きな本で包まれる、そしてページが閉じられると彼らは、消えた)

    【なっ……!?】

    ヴィド「落ちついて、レトル。
    彼らの行き先に一つ思い当たる場所がある。
    でも一つだけ教えてくれないか。

    ──彼等はなぜ”あんなにも怒って”いたのかな?」

    ──2章:愛の詩は、かも滲むのか
    [Cuncta dedi, non munera sola: fidem.]
    ──すべて、すべて、すべてを与えた。
    信じていた。ただ、それだけのために。

    (恋の技法第3巻より)

  • 29二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 22:46:51

    現代に生きる古代ギリシャ人曰く『2000年間「ギリシャ神話」ジャンルの最大手でありつづける壁サー』のオウィディウス先生つよい…

  • 30二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:03:27

    ■■幕間■■
    話の途中だがワイバーンだ!
    ……ふふ、なんてね。

    "Fata viam invenient."
    運命は、割り込まれても進んでいく。

    恋も語りも、時に中断されながら、それでも続くものだ。
    だからこそ、語る価値がある。

    ……では、次の幕が上がるまで、しばしお待ちを。

    観客席は、君のために用意してあるからね!レトル!

    (明日に続きます)

  • 31二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:04:43

    明日も楽しみにしてます!

  • 32二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:05:24

    おつ!
    明日が待ちきれない

  • 33二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:11:00

    >>29

    >>31

    >>32

    ありがとうございますー!

    次イベが始まるまでには何としてでも完結させます!

    私が書くことでオデュッセウス特攻イベントが連続して発生することになります(お目目ぐるぐる)

  • 34125/06/02(月) 08:17:35

    ■■幕間■■
    ……おや、レトル。幕間に飽きた?
    じゃあ、ちょっとだけ話をしよう。

    アタランテ──男を拒み、誓いを胸に走り続けた狩人。
    そして、純潔を誓った乙女に、ただ一人、勝利しようとする男の話。

    Militat omnis amans.
    “恋する者は皆、戦士である”

    彼は勝つために、神の道具に頼らざるを得なかった。──愛はずるい。愛は卑怯だ。

    彼女は負けたのではない。愛に罠をかけられたのだ。
    ……そして、獣に変えられた。

    それは恋に立ち止まった罰?それとも、報い?
    君ならどう思う?

    あぁ、君はアタランテと知り合いなのか。
    彼女、その矢をまだ他人のために撃っているんだろう?

    ……いや、それもいい。とても彼女らしい。

    でも、それでもまた、恋に落ちると思うけどね。

  • 35125/06/02(月) 12:47:18

    ■■幕間■■
    ……レトル。
    幕が開くまでの、ほんの短い時間でいい。
    君に語っておきたい、美しかった女の話がある。

    女神に仕え、そして──神に辱められた者。
    メドューサ。

    罰を受けたのは、罪を犯した者ではなく、
    その身に“美”を宿していた彼女だった。

    Vultus in virgine causa fuit.
    “その乙女の顔が、すべての原因だった”

    それだけの理由で、彼女は怪物へと変えられた。
    誰が本当に、“目を逸らすべき”だったのか。
    彼女ではなく、彼女を見つめた神のほうではなかったのか?

    私は彼女を物語にした。
    だけど──語るたびに、後悔してしまうんだ。
    彼女の目は、人を石に変える。
    ……それは、見つめられた者の心が、もともと“動かぬもの”だったからかもしれない。

    ──えっ? 四人?
    彼女が……四人も、カルデアに?

    あっはははは!
    それなら、私の“物語”も書き直すしかないだろうね。一人ずつ、きっちり、丁寧に!

    ……さあ、舞台が開くまで、ゆっくり待とう。

  • 36二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 21:37:49

    このレスは削除されています

  • 37二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 21:43:29

    メデューサ×4にウッキウキのオウィディウス先生、薄い本が分厚くなりそうだな

  • 38125/06/02(月) 23:51:54

    ■第3章:愛の檻に、詩は咲き誇る
    (ローマの広場。四人が消えたのに、住民たちはどこか冷ややかだ)

    【……心当たりのある場所って?】

    ヴィド「“牢獄”だよ。──恋を語れなかった者が堕ちる、愛の監獄さ」

    【牢獄……?】

    ヴィド「君は見たはずだろう。
    彼らが選び取った、静かな終幕を。
    ラーマとシータ。オデュッセウスとペーネロペー。──彼らの恋は、彼らの手で終わってしまった。
    ……愛を紡げぬ者は、この世界では、舞台から降ろされる」

    マシュ《そんな……大丈夫なんですか!?》

  • 39125/06/02(月) 23:54:15

    ダ・ヴィンチ《一種の封印かな?霊基そのものは消えていない。でも、座標の追跡はできなくなってる……》

    ヴィド「うん、それに近いよ。
    ここは“美”でできた世界だ。けれど、その美を保つためには──“語られぬ恋”は、許されない。
    悲劇も、すれ違いも、赦しも悔いも……それらは、舞台の糧になる。
    けれど、恋そのものが終わってしまえば──彼らは、“咎人”になるんだ」

    【そんな……】

    ヴィド「──あぁ、レトル。そんな顔をしないで。
    彼らはまだ、そこにいる。舞台の上で愛を語ることだけが、許されていないだけさ。
    生きてはいる。
    だから、迎えに行こう。一緒に」

  • 40125/06/02(月) 23:59:44

    (地下へと続く石階段。壁には古びたラテン語の詩句。誰かの声が、囁くように聞こえてくる)

    【……長い、階段……】

    ヴィド「恋が終わるまでに、どれだけの時がかかると思う?
    ──この一段一段が、その“諦め”のかたちなんだ。
    別れを選んだ者たちは、静かに階段を降りていく」

    【どういう意味……?】

    ヴィド「この牢獄はね、“語られなかった愛”のための、永遠の幕引きの場なんだ。
    自ら幕を引いた者も、そうさせられた者も……皆、ここに来る。
    ──ほら、彼女も」

    (泣き腫らした目をした女性が、黙って階段を降りている)
    【この先は……】

    女性「……ええ、知ってるわ。
    でも、あの人を失ってしまったの。もう、世界に色はない。
    それなら──牢で、“愛と暮らす”わ」

    【愛と暮らす……?】

    ヴィド「──着いたよ。扉は、私が開けよう」

  • 41125/06/03(火) 00:05:52

    (重い音を立てて、扉がゆっくりと開かれる)

    (冷たい空気と静寂が、こちらに流れ込む)

    (牢は螺旋状に下り、五つの扉が異なる高さと位置に、星座のように浮かんでいる)


    ヴィド「──ようこそ、愛の監獄へ。

    ……ちょっと、不謹慎だったかな。ごめんね。

    これが、この場所の地図だよ」


    <<螺旋に星を描くような形の地図>>


    I. Diffidens──信じられなかった恋

    Ⅱ. Finita──終わらせた恋

    Ⅲ. Furor──狂った恋

    Ⅳ. Inanem──報われなかった恋

    Ⅴ. Silens──伝えられなかった恋


    ダ・ヴィンチ《ここはまるで……》ジジッ

    (ノイズ音と共に通信が途絶える)


    【ダ・ヴィンチちゃん!?】


    ヴィド「心配なら、一度戻る?ここからならすぐ上がれるよ」


    【ありがとう】

    【……でも、大丈夫】

  • 42125/06/03(火) 00:15:51

    (一歩、前へ。女の人が、静かに口を開く)

    女性「私は、あの人を愛していました。
    でも……私のほうから、別れを告げたの。
    だから、向かうのは──Finita。終わらせた恋の牢、です」
    ヴィド「……うん、わかった。
    この星の中心に手を当てて。そうすれば、君の行くべき牢へ連れて行ってくれるよ」

    (彼女が台座に手を当てると、静かに光が広がっていく)
    (気がつくと、三人は別の場所──一つの扉の前に立っていた)

    【……Inanem?】
    【“報われなかった恋”……?】

    女性「……違う。違う……ここじゃない。私は──」
    ヴィド「君は、“別れを選んだ”つもりだった。でも、本当は気づいていたんだ。
    あの人の心が、もう君には向いていなかったってことに」
    【……】
    ヴィド「だから君は、“終わらせた”んじゃない。
    ──“報われなかった”んだよ」
    女性「──いや、いやよ……っ!
    私が、別れを告げたの。私が……終わらせたのよ!
    この牢は違う……この牢だけは、いや──!」

    (彼女は叫びながら、扉に吸い込まれるように姿を消す)

  • 43125/06/03(火) 00:22:44

    (その奥、静寂の中──リュートの音が微かに響いている)
    (淡い光の差す空間。そこに、顔を伏せ、音を紡ぎ続ける男の背があった)

    トリスタン「……マスター。ご無事でしたか」

    【何してるの?】

    トリスタン「出られませんので……収監者の皆さんと、コミュニケーションを」ポロロン

    【どうにかできない?】

    ヴィド「この牢の鍵は……Frustra petita negabit(求めても、報われぬ)か。
    ……うん、君になら開けられるかもしれない」

  • 44125/06/03(火) 00:25:30

    (軽く力を入れてみる。──牢の扉は、すんなりと開いた)

    トリスタン「おぉ……I can fly……!」

    【はやく出てきて!】

    トリスタン「……マスターはお厳しい。
    これでも、ここの方々には人気だったのですよ?
    ……とはいえ、中からは出られませんでしたが」

    ヴィド「あぁ、Inanem。この牢には──“何もない”。
    幻も、語られる愛も、苦しみさえも存在しない。
    ……囚人たちはただ、報われぬ恋をしたまま、生き続けるしかないんだ」

    (中からは口笛と共に投げ銭が飛んでくる)
    (トリスタンはどこか満足気だ)

  • 45125/06/03(火) 00:30:54

    (トリスタンを伴い、再び螺旋の通路を進む)

    【……どうしようか?】

    ヴィド「そうだね、近くの牢から順に回ろうか。
    螺旋状だから、位置によっては移動が楽なんだ」

    (地図を開く)

    ヴィド「今いるのはⅣ. Inanem。下に進むと……最奥にあるのが──Ⅴ. Silens。上進むと……Ⅲ. Furor。
    けれど……Silensには、誰もいない」

    【……誰もいない?】

    ヴィド「あそこは、“伝えられなかった恋”の牢。
    この世界では──愛を語らない者などいない。
    言葉にできなかった恋……それは、“存在しない”んだ」

    トリスタン「なるほど……」

    ヴィド「だから、次はFurorに向かおう。
    “狂った恋の牢”──愛が破綻した果てに堕ちた者たちがいる場所だよ」

  • 46125/06/03(火) 00:33:16

    (扉の前に立つ。先ほどまでとは異なる、ざらついた気配が漂っている)
    (奥から、金属と金属がぶつかり合う音──静かな狂気のリズムを奏でていた)

    ブリュンヒルデ「……シグルド!」

    (その声は、喜びとも怯えともつかぬ震えを含んでいた)

    ブリュンヒルデ「愛しています、愛しています……だから、殺します」

    (ゆっくりと振り返る彼女の手には、研ぎ澄まされた槍)

    ブリュンヒルデ「本当のあなたが来る夢を、ずっと見ていました……
    私の恋を、誰かが見つけてくれる日が来ると、どこかで信じていたのです……」

    【ブリュンヒルデ……】

  • 47二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 00:38:15

    >>41

    I. Diffidens──信じられなかった恋、気になります…

  • 48125/06/03(火) 00:40:04

    ブリュンヒルデ「でも私は、あなたを殺すことしかできません……
    私はもう、愛することも、殺すこともやめられない……」

    (槍が、牢の結界を叩くように振るわれる)

    【近づけない……!】
    【遠隔で開けたりできないの!?】

    ヴィド「無茶を言うなぁ──Vita est modus in amore.(愛にこそ、節度を)それがこの牢の鍵だよ」

    (ヴィドの指が地図に刻まれた言葉をなぞる)

  • 49125/06/03(火) 00:44:52

    【愛にこそ節度を……】
    【どういう意味……?】

    トリスタン「節度……それは彼女の中にある最後の理性。マスター、彼女の恋を許してあげてください!
    彼女は、まだ恋を続けられる!」

    【ブリュンヒルデ!】
    【貴女はまだ恋をしていていい!】

    (鍵が割れるような金属音が響く)

    ブリュンヒルデ「私は……彼を想うことをやめたくありません……
    私は、まだ、あの人に恋をしています
    ……それでも、この牢を出ていいのでしょうか?」

  • 50125/06/03(火) 00:49:34

    【──大丈夫だよ】
    【帰ってきて】

    (彼女に手を差し出す。その手を見て、ブリュンヒルデは静かに槍を下ろす)

    ブリュンヒルデ「マスター……ありがとう……ございます……」

    (気づけば、牢の前から扉は消えていた)
    (ブリュンヒルデが牢を出てから、しばらくの沈黙が続く)
    (ふと、彼女が虚空を見るように呟く)

    ブリュンヒルデ「……あの人は、私を呼んでくれました。あの牢で名を──何度も……
    でも……最後に見えたあの人は……
    私の手で……私が、シグルドを……」

    ヴィド「──あの牢の中では、愛する者に会える。
    たとえ幻でも、心の底に沈んだ願いが、形を持って現れる。
    だから彼女は再び出会い……そして、再び愛した。たとえ、それが“殺す”ことだったとしてもね」

    ブリュンヒルデ「あの人はやはり……ここにはいなかったのですね……」

  • 51125/06/03(火) 00:53:05

    【……あの女の人!】
    【……”愛と暮らす”ってそういうことか】

    ヴィド「ふふっ、気づいた?
    この牢獄は、恋に敗れた者を責めるためじゃない。
    守るためにもあるんだよ。
    ここで別れた恋人と共に生きる人も多い……

    ──報われなかった恋以外は、ね」

    ヴィド「……次に行こうか。
    螺旋の階は、まだ途中だからね──彼等の牢へも、そろそろ辿り着くだろう」

  • 52125/06/03(火) 00:54:55

    (扉の前に立つ。その牢は他と違い、整然とした静けさを湛えている。淡く、冷たく、凪のような空間)

    ヴィド「……ここが、Finita。
    “終わらせた恋”を収める牢だよ」

    ブリュンヒルデ「静かですね……」

    ヴィド「ここには、終わりを選んだ者がいる。
    彼らは叫ばない、追わない。
    ただ、静かに区切りをつけたんだ。自分の手で」

  • 53125/06/03(火) 00:57:12

    (いくつかの区画に分かれた牢の一つ──その中に少し扉の開いた牢があった)

    【……オデュッセウス?】

    オデュッセウス「……マスターか。
    すまない、取り乱した。こんな牢に閉じ込められるとは」

    ブリュンヒルデ「大丈夫ですか?何か起こったりは……?」

    オデュッセウス「あぁペーネロペーの幻覚ならそこに」
    (オデュッセウスの指さす先には何もない)

  • 54125/06/03(火) 01:00:21

    ヴィド「……この牢の鍵は、Ut valeas animo quilibet esse potest.(忘れようと思えば、誰だって、忘れられる)
    オデュッセウス、君は……まだ、その途中にいるんだね」

    【……この牢には鍵がない?】

    (オデュッセウスが中から扉を押す。すると、扉はすんなりと開いた)

    オデュッセウス「……すまない、面倒をかけた。
    ……おそらくここから右四つ目の牢、そこにラーマがいる」

  • 55125/06/03(火) 01:02:31

    (オデュッセウスの言った通り、右から四つ目の牢──そこもまた、扉が半ば開いていた)

    【ラーマ!】

    ラーマ「……マスター!すまない、暫し待て。
    今、シータと文を繋いでいる」

    (──その隣の牢には、シータの姿があった。彼女は手紙を胸に抱きしめている)

    シータ「ラーマ様……」

    ヴィド「ねえ、レトル。恋を終わらせた者は、本当に潔いのかな?それとも……」

    【……迷ってる】

    ヴィド「だよね。でも、“終わらせた”と思ったからこそ、ここに留まっていられた。
    ──だから、彼の扉はもう半分開いている」

  • 56125/06/03(火) 01:05:17

    (隣り合う二つの牢。柵の隙間から、文がやりとりされている)
    (文字は丁寧に綴られ、何通も、何通も、投げ入れられた跡があった)

    シータ「……ラーマ様、ありがとうございます。
    シータも……お顔が、見とうございます……」

    ラーマ「君が信じてくれるのなら──それだけでいい。
    僕は、ずっとここで文を書き続けるつもりだった」

    【……お互いが見えていない?】
    トリスタン「……別離の呪いでしょうか?」

  • 57125/06/03(火) 01:07:36

    ヴィド「いや……彼女は、幻だったからだよ。
    この牢にいた“シータ”は、ラーマの願いに応じて現れた、“愛しい人”の影さ。
    けれど……」

    (ヴィドが手をかざすと、牢の内側が静かに揺らめく)
    (“シータ”の姿が少しだけぼやけ──そしてまた、静かに戻る)

    ヴィド「文通を重ねるうちに、シータも“彼を信じたい”と思った。
    だからこの幻は、ただの幻ではなくなったんだ」

  • 58125/06/03(火) 01:10:36

    (シータがゆっくりと立ち上がり、牢の柵に手を添える)

    シータ「ラーマ、私は──貴方と再び出会えて、本当に嬉しい!」

    ラーマ「僕もだ、シータ。
    この牢が、終わりではなく再会の場所になるのなら──それだけで、戦った甲斐がある」

    (二人の牢の扉が、同時に音もなく開く)

    ヴィド「……ここはFinita、終わらせた恋の収容所。
    “終わらない愛”は、ここには収監できない」

    (ラーマとシータがゆっくりと歩み寄る。
    手を取り合い、静かに扉をくぐっていく)

    ラーマ「……マスター、ありがとう」
    シータ「ありがとうございます、マスター様」

  • 59125/06/03(火) 01:16:26

    ヴィド「……やったね、レトル。恋は、救われたよ」

    【うん、よかった……!】

    ヴィド「……あれ?」

    【ヴィド?】

    ヴィド「──少し……妙だね。
    手が……重い。足が……動かない。
    ……君は、どこにいる?」

    【え? 何……?】

    ヴィド「いや、大丈夫──
    ただ、ちょっと疲れただけだよ。
    ……こんなに詩を書いたのは、久しぶりだったからね。
    今は──君の顔も、ちゃんと見えている」

    (オデュッセウスがヴィドの身体を支える)

    ヴィド「……それより、行こう。次の牢が──最後だ」

    ──3章:愛の檻に、詩は咲き誇る
    [Omnia mutantur, nihil interit.]
    ──恋は変わる。
    それでも消えたわけではない。

    (変身物語第15巻より)

  • 60125/06/03(火) 01:19:58

    >>37

    >>47

    お付き合いありがとうございます!

  • 61二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 01:23:44

    各々の恋と愛の形が切ない…乙でした!

    ヴィドはどうなっちゃうの…?

  • 62125/06/03(火) 01:24:51

    ■■幕間■■

    さあ、次の幕が上がるまで、手慰みに別の物語もどうかな?


    タイトルは──『維新ノ記録帳』

    それは剣と記憶、そして“過去”をめぐる静かな追憶。

    時代の隙間にこぼれた記録が、もう一度、立ち上がる──

    恋も変身も出てこない。剣士たちが名を刻み、魂を繋ぐ……そんな硬派な物語さ。


    Nunc quoque fama manet.

    “今もあの記憶は生きている”(変身物語第6巻より)


    あぁ、私は出ていないよ。……残念だったかい?


    “終わらない恋文”の続きを待つ間に、

    “描き切られた記録帳”を読むというのも、実に風雅な時間の潰し方だ。


    ……とはいえ、本音を言えば──

    私としては、君にはこの恋文を、何度でも読み返してほしいのだけれど。


    まあ、それを言ってしまうのは無粋というものか。

    では、また明日──


    (過去作の宣伝でした。明日に続きます。)

    【オリイベSS】ぐだぐだ維新ノ記録帳 新撰組の次回作にご期待ください!|あにまん掲示板期間限定イベント『ぐだぐだ維新ノ記録帳〜新撰組の次回作にご期待ください〜』開催未定!「弱小人斬りサークルが――!ごっそりいなくなっとるんじゃが――!!!」ノッブが大声で管制室に飛び込んできたのは、ある…bbs.animanch.com
  • 63125/06/03(火) 07:42:43

    ■■幕間■■
    ……レトル。
    幕が上がるまで、メディアの話でもしようか。

    神の血を引き、魔術に通じた女。
    そのすべてを──たった一人の男のために捧げた。
    家を裏切り、兄を殺し、国を捨て、子を産み、
    ……そして捨てられた。

    Perfer et obdura; dolor hic tibi proderit olim.
    “耐えよ、耐え抜け。この痛みがいつか、君を支える日が来る”

    私の言葉さ。慰めになると思って書いた。
    ……届かなかったけどね。

    私はね、彼女の悲劇を“創った”わけじゃない。
    ただ、書かれていたとおりに詩にして──ほんの少し、魔女の顔という“色”を添えた。

    でもカルデアには、“若い頃の彼女”までいるんだって?

    ……詩人にとっては、悪夢さ。

    私は“愛に純粋な少女”か、“愛に傷ついた魔女”そのどちらかしか描けなかった。
    けれど彼女自身が、物語をやり直す気なら──私は静かに見つめよう。
    今度こそ、書き加えることはしない。

    私の後悔の話、どうだった?
    ……ほら、もうすぐ幕が上がる。

  • 64125/06/03(火) 12:50:34

    ■■幕間■■
    イアソン……もし私のことを“ひどい詩人”だと責めたいなら、まず彼の名前を思い出してくれ。
    金羊毛を求めて航海に出た、アルゴー船の船長。
    豪胆で、賢くて、美しかった……かもしれない。

    だが、私が書いた彼は──
    愛に背き、約束を忘れ、女神の加護を踏みにじった男だ。

    ああ、勘違いしないでくれ、レトル。
    私は彼を“嫌って”いたわけじゃない。
    彼はむしろ……真実を描きたくなるような魅力に溢れた男だったのさ。

    Desinit in piscem mulier formosa superne.
    “物語の始まりが美しくても、結末が破綻していれば意味がない”
    ……どれだけ見事な英雄譚でも、最後の一行で醜く崩れることがある。

    物語の中で彼は嫌われるかもしれない。
    だが現実では、誰よりも“生き残る”男だ。
    愛に騙されたふりも、運命に抗ったふりも、
    すべて、自分の“選択”だったかのように振る舞える。

    ……それが、英雄というものさ。

    あっ、私への非難は、私が元気そうなときにしてくれたまえ。
    イアソンと一緒に? それはご勘弁を!
    私の落ち込みぶりは凄まじいぞ──
    落ち込んだ私が詩を何編詠むか、賭けてみる?

    ……さあ、幕が上がるまでは、そこに座っていてくれ、レトル。

  • 65125/06/03(火) 19:15:54

    ■ 第4章:罪人には、剣を
    ──

    私は、ずっと彼を信じていた──誰のために?
    私は、ずっと彼を待っていた──何のために?

    ……でも今、私は彼を信じられないのです。
    もう帰ってこないのでしょう?
    もう私を、愛していないのでしょう?
    会いたかったはずなのに。再び出会えたはずなのに。

    ここは牢獄。
    私がここにいるのは、彼を信じきれなかった罰。
    「信じて待っていて欲しい」──あの願いを裏切った罰。

    罪人である私は──罰を受けなければ。

    ──

  • 66125/06/03(火) 19:19:35

    (Ⅰ.Diffidens──信じられなかった恋の牢)
    (静けさの中、淡い光が牢の中のペーネロペーの肩を照らしている。オデュッセウスが彼女に歩み寄る)

    オデュッセウス「……ペーネロペー」
    (その声に、彼女はゆっくりと顔を上げる。瞳は涙がにじんでいた)

    ペーネロペー「……オデュッセウス」
    オデュッセウス「待っていろ、すぐに助ける!」

    【ここの鍵は!?】

    ヴィド「すまない、誰か……看板を、読んでくれないかな……下にある文字が鍵なんだ……」

    (ヴィドはトリスタンに支えられて立っている。息をするだけでも苦しそうだ)

    ブリュンヒルデ「Crede quod est falsum; dolor est medicina dolori.
    ──偽りと知っても信じろ。苦しみは、苦しみの薬……」

  • 67125/06/03(火) 19:23:16

    (牢の中のペーネロペーは少し黙ってから、静かに口を開く)

    ペーネロペー「……ねえ、オデュッセウス。お願いがあるの。短剣を……貸してくれないかしら」

    オデュッセウス「……? ああ。わかった」

    (ためらいもなく、彼は腰の短剣を抜き、彼女の手に渡す)
    (彼女はそれを受け取り、しばらく手の中で撫でるように眺める)

  • 68125/06/03(火) 19:25:20

    ペーネロペー「……私がこの剣で、貴方を傷つけるとは思わなかったの?」
    オデュッセウス「何故だ?君がそんなことをするはずがない」

    ペーネロペー「……私のことをずっと愛してくれていたの?」
    オデュッセウス「ああ。当たり前だろう、すぐに助ける、だから──」

    ペーネロペー「ありがとう。あなたが、信じてくれたから……ようやく、私も“信じていた”と証明できる」

    (彼女は微笑み、そして静かに、短剣の切先を自身の胸元へと向ける)

    【……え?】

  • 69125/06/03(火) 19:26:59

    ペーネロペー「──偽りを信じること。それが、私の救い」

    (刃が静かに沈む)

    オデュッセウス「──やめろ、ペーネロペー!!」

    (駆け寄るよりも早く、血が滲む。ペーネロペーは膝をつき、音もなく扉が開く)

    ペーネロペー「私は……貴方を、ずっと……信じたかった。でも、貴方を疑い続ける自分のことを、どうしても……赦せなかったの……」

    ペーネロペー「オデュッセウス、愛しているわ。
    この気持ちだけは、今もずっと──変わっていませんでした……」

    (彼女は、オデュッセウスの腕の中でゆっくりと息を引き取った)

  • 70125/06/03(火) 19:43:27

    (血の匂いの中、誰もが言葉を失っている)

    トリスタン「……これが、彼女の選んだ結末、ですか」
    ブリュンヒルデ「……彼女、まるで──許されたような顔で……」

    (ペーネロペーの亡骸を、オデュッセウスが抱きしめたまま動かない)

    オデュッセウス「彼女は……俺を信じるために、自らを罰した。
    俺は彼女をずっと信じていた、愛していた。
    ……だが、俺は……止めることが、できなかった……」

    (シータが静かにその場にひざまずき、祈るように目を伏せる)

    シータ「ペーネロペー様……」

  • 71125/06/03(火) 19:45:36

    (ヴィドが一歩、皆の方へ近づく。顔は伏せたまま)

    ヴィド「Diffidens──信じられなかった恋の牢。
    オデュッセウスを信じた彼女はもうここにいるべきではない。

    ……けれど、彼女は……になってしまった。
    ……すまない、オデュッセウス……」

    【ヴィド……?】

    (ヴィドがゆっくりと顔を上げる。表情は穏やかで、どこか決意を秘めている)

    ヴィド「……この監獄から出よう。
    ……彼女を、牢の外へ」

    【……わかった】

    (外へ向けゆっくりと螺旋階段を登る。誰も言葉を発さない)

  • 72125/06/03(火) 19:49:36

    (監獄の外。仄かに風が吹き、赤いアネモネが揺れる草原)
    (ペーネロペーの亡骸をそっと花畑に横たえる)
    (風が吹き、彼女の髪がやさしく揺れる)

    ヴィド「すまない。……私にはもう時間がないんだ。だから、簡潔に言う」

    ヴィド「──私が、この特異点の主だよ」

    (ヴィドはペーネロペーの胸に刺さっていた短剣をそっと抜き手渡してくる)

    【……どうして】

    ヴィド「“罪人には、剣を”……だろ?」

    ヴィド「どうか何も聞かないで……君の手で幕を下ろして欲しいんだ、レトル」

    ──第4章:罪人には、剣を
    [Et nocet empta dolore voluptas.]
    ──罪を代価に愛を得る。
    愛はやがて剣となり、あなたを傷つけるでしょう。

    (恋の治療法より)

  • 73二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 19:52:47

    急展開だ…!
    それはそうと俺の推しセイバーがお嫁さんと会えて嬉しかったです

  • 74125/06/04(水) 01:13:38

    ■ 第5章:僕は舞台を降りられず
    (アネモネの花が風に舞う。静けさの中、ヴィドは手渡した短剣を見下ろしている)

    ヴィド「ありがとう、レトル。ここまで、付き合ってくれて。
    ……君の手で、この物語を終わらせてほしい」

    【終わらせる……?】

    ヴィド「私を。
    “この舞台を作った者”としての──私の罪を」

    (ヴィドがゆっくりと片手を上げ、胸元を開く。心臓の位置には、聖杯が埋め込まれ、淡く脈打ちながら光っている)

    ヴィド「その剣で、ここを突いて。
    それだけで、この舞台は幕を閉じる」

    【……できない】

  • 75125/06/04(水) 01:18:41

    (ヴィドは困ったように笑い、言葉を続ける)

    ヴィド「……ごめんね。酷なことを言ってしまったね。
    君に最後を委ねたいだなんて──これは、完全に私のエゴだ」

    ヴィド「……なら、オデュッセウス。君に頼もう。
    私は、君をいちばん傷つけてしまったのだから」

    (言葉を紡ぎながら、ヴィドの体がふらりと揺れる)

    ヴィド「……シータ嬢。君でもいい。
    君は、“私が不出来だった罪”──その象徴だ」

    【不出来だった罪……?】

    ヴィド「……少しだけ、この世界の成り立ちを話そうか。
    ……困ったことに、そうでもしないとレトルは納得してくれないらしいからね」

    (ヴィドは地面に倒れ込む。もう立ち上がる力は、残っていない)

  • 76125/06/04(水) 01:25:57

    ヴィド「君に、美しい世界を見てほしかった。
    ただそれだけのために、この世界を作ったんだ。

    愛に満ちた世界、美しい街並み、穏やかな日常──
    すべてが、君を想って紡いだ、ひとつの詩。 

    人理焼却の最中、ローマを救ってくれた君へ。
    ローマを愛したひとりの詩人からの、贈り物さ」

  • 77125/06/04(水) 01:27:39

    ヴィド「君の仲間にも、“恋人との再会”という幸せを贈った。

    ブリュンヒルデには、シグルドを。
    ……けれど僕には、君の苛烈な愛を描ききることができなかった。
    紡いだ恋は、すぐに壊れてしまったよ」

    ブリュンヒルデ「でも貴方は私の為に……」

  • 78125/06/04(水) 01:30:15

    ヴィド「オデュッセウスには、ペーネロペーを。

    彼女を紡いだとき、ふと思ってしまったんだ──これは、果たして報われた愛なのか?と。
    語られぬままに愛され、疑われてもなお“待つ”ことを選び続けた彼女の心は、本当に幸福だったのか?

    ……詩人の性だよ。つい、そんな問いを投げかけてしまった。

    待ち続ける彼女には、“待ち疲れる自由”を。
    沈黙を強いられていた彼女には、“もう待てない”と口にする力を。

    私は彼女を描く時、その力を詩の中に紡いでしまった。
    そしてその結果──彼女を、自死へと追い詰めてしまった。
    ……本当に、すまない」

    オデュッセウス「……」

  • 79125/06/04(水) 01:34:22

    ヴィド「ラーマには、シータを。
    信仰と誠実の試練として語られる君たちの物語を、私は読んだ。

    ──誓いを守るシータ、そして、彼女を疑うラーマ。
    それはあまりにも一方的で、不均衡だった。

    本当に、それは“愛の試練”と呼べるものだったのだろうか?

    もしラーマが彼女を試したのなら──
    シータがラーマを試すことも、許されるべきではないか?

    だから私は、彼女を紡ぐとき、“拒絶する権利”を与えた。
    愛は、ただ与えられるものではなく、自らの意志で選び取るものだと信じていたから」

  • 80125/06/04(水) 01:36:38

    ヴィド「けれど……シータ、君は拒絶すら超えて、終わらぬ愛を貫いた。
    与えられた選択を、拒絶ではなく、受容へと昇華させた。

    その美しさの前では、私の詩などただの書き散らしだった。
    君に対して、もう言葉を綴ることは許されないと悟ったよ。
    君の選択に、心からの敬意と感謝を。
    ──ありがとう」

    ラーマ「……汝の詩に、深く感謝を。
    我らは、ふたたび巡り合うことが叶った」

    シータ「この奇跡を与えてくださった貴方へ──
    私は、ラーマ様と再び言葉を交わせたことを誇りに思います」

  • 81125/06/04(水) 01:38:56

    ヴィド「──トリスタンには、イゾルデを。
    ……贈りたかったんだ」

    トリスタン「……?」

    ヴィド「君たちの物語は、あまりにも悲しすぎた。
    信じ続けた末に報われず、それでも死の間際まで君を想い続けた彼女を私はどうしても──詩にすることができなかった。

    語ろうとすれば、どこかが嘘になる。
    飾れば軽くなる。削れば届かない。

    ……詩にしてしまった時点で、それは“本当の彼女”ではなくなってしまう。

    この特異点では、“愛を語れぬ者”は舞台から降ろされる。
    だから私は──君を守るために、牢獄へと閉じ込めるしかなかった。

    ……本当に、ごめんね」

  • 82125/06/04(水) 01:42:04

    【どうしてそこまでしてくれたの?】

    ヴィド「……それだけは言えないんだ。ごめんね。
    それを言ってしまったら──僕は、もう……」

    (言葉を濁しながら首を振る)

    ヴィド「……さあ、断罪を。
    私がまだ“詩人”でいられるうちに……この舞台から、降ろしてくれ」

    【いやだ】
    【……まだ、君に“ありがとう”を言っていない】

    ヴィド「やめてくれ! 僕を赦さないでくれ……!
    赦されたら──僕は……“僕の物語”に、閉じ込められてしまう……!!」

    (その瞬間、ヴィドは光でできた巨大な本に包まれる)
    (その姿は、本の頁へと吸い込まれていくように、静かに──消えていった)

    ──第5章:僕は舞台を降りられず
    [nec reticere loquenti, nec prior ipsa loqui didicit.]
    ──私の沈黙を、あなたは赦さない。
    けれど、私は想いを伝える私を赦せない。
    だから私は、変わりゆく自分を、ただ見つめるしかなかった。

    (変身物語 第3巻より)

  • 83125/06/04(水) 02:08:51

    ■■幕間■■
    なんと、締め切りに間に合わなかった?
    ……素晴らしい!実に詩的じゃないか!

    芸術とは常に“間に合わない”ものさ。
    完成を急ぐのは職人の仕事、未完成に酔うのが芸術家というもの。
    私は“締め切りを破る者”にこそ、私は強く共感を覚えるよ──
    まぁ、私自身は一度も破ったことがないけどね?

    ここで筆が止まったということは、つまり──
    私の“終幕”は、まだ書かれていないということかな?
    ……いやぁ、なんて幸運な詩人だろうね、私は!
    物語の終わりを描かれない限り、私は死なない。
    うーん、“最高の延命術”だね!

    Et mihi cedet Amor.
    “愛の神すら、私には屈する”
    なーんてね!

    では、私は一足先に、観客席で待っていよう。

    (最終章間に合いませんでした……明日終わります……)
    (筆の速さで有名だったらしいです。腹立たしいなこいつ……)

  • 84125/06/04(水) 09:35:35

    ■■幕間■■
    ……幕が上がるまでに、ピュラモスとティスべの話でもしようか。

    バビロンに生きた、若き恋人たちの物語。
    禁じられた恋。壁越しの囁き。
    そして──小さな誤解から始まった、“死”の連鎖。
    どうかな? 気に入ってくれた?

    ……えっ? どこかで聞いたことがあるって?
    『ロミオとジュリエット』?
    『夏の夜の夢』にも……?

    ……また君か、ウィリアム・シェイクスピア!
    彼は私の詩をずいぶん気に入っていたらしい。
    私の『変身物語』から美味しいところをちゃっかり摘んで……あろうことか、まるで自作のように使ってくれたんだ。

    あぁ、嬉しいとも。私の詩が時代を越え、別の舞台で再び輝く──それ自体は、詩人冥利に尽きるってものだよね。

    でもね、愛も悲劇も、結末だけを切り取って口当たりよく脚色するなんて……それはどうなのかな?

    ……え? 私?
    私はね、ギリシャの神々の恋も、裏切りも、復讐も──“書かれていたとおりに”詩にしたよ?
    多少、誇張や装飾、演出を添えたかもしれないけど……まぁ、私は詩人だからね!

    ……棚に上げる? ん? なんの話だい?
    ──最後の幕が、すぐに上がるからね。

  • 85125/06/04(水) 18:47:46

    ■■幕間■■
    ……ダンテ・アリギエーリか。
    うん、いいよね彼!イタリアの誇り、“神の詩人”だってね。
    あの『神曲』、実に見事な構成美だ。地獄、煉獄、天国と三段構えで、世界を詩にした偉業だよ。

    彼は“地獄”まで足を運んだ。恋人に会うために、だよ?
    いや、死んだ恋人に導かれたんだったか……どちらにせよ、実にロマンチックじゃないか。

    それにね、ありがたいことに──
    “偉大なる詩人”の一人として、私の名をちゃんと登場させてくれたんだ。地獄篇・第4歌。
    まぁ……私の出番はほんの一瞬で、彼はウェルギリウスを連れて先へ行って、私は地獄に置き去りだったけどね。

    いや、拗ねてるわけじゃないよ?
    でも私とダンテ、どちらも時の権力に疎まれて追放された詩人同士だ。
    都を離れ、愛を抱えて、筆だけを道連れに歩いた仲間じゃないか。
    ……それでも、私は“理性の導き手”には選ばれなかった。

    ま、私が感情に振り回されすぎたからかもしれないけどね!

    カルデアには彼がいるんだろう?
    仲良くできると思うんだけど、どう思う?
    彼、追放トークと恋バナ、どっちが好きかな……?

    ──さて、幕が上がるよ、レトル

  • 86125/06/04(水) 19:46:50

    ■最終章:この恋文を貴方へ
    【大きな……光の本……!】
    【牢獄に、連れていかれた──!】

    (螺旋階段を駆け降りる)
    トリスタン「しかし……彼は、どこへ?」

    (星型の地図に手を当てるが、何も起こらない)
    【……全部、探そう!】

    (ひたすらに牢獄を下っていく)

    I. Diffidens──信じられなかった恋
    ──空
    II. Finita──終わらせた恋
    ──空
    III. Furor──狂った恋
    ──空
    IV. Inanem──報われなかった恋
    ──空
    V. Silens──伝えられなかった恋

    ブリュンヒルデ「……ここ、でしょうか」

  • 87125/06/04(水) 19:48:23

    オデュッセウス「Qui silet, indicat: manifesta est culpa tacendo.
    ──黙して語らぬこと、それ自体が罪の告白だ」

    【……静かに開ければいいのかな?】

    (扉を押してみる。しかし、動かない)

  • 88125/06/04(水) 19:50:18

    (静かな牢。淡い光に包まれた空間)

    ヴィド「(……Inanem、か。報われなかった恋の牢……ここには何もない。誰もいない。
    ……そうか、それが──私に、いちばん相応しい場所だというのか)」

    (しばしの沈黙)

    ヴィド「……いや、違う。ここは──Silens。伝えられなかった恋の牢。
    ……私は、ここにいたのか。そうか、私は……」

    (小さく笑うような吐息)

    ヴィド「言葉を持っていたのに、伝えなかった。
    詩人としては──最低だね、私は」

    (目を閉じ、天井から差す淡い光を仰ぐように)

    ヴィド「“物語になる”って、きっと──こういうことなんだ。
    どれほど苦しくても、どれほど愛を求めても、
    自分で幕を引くことはできない。

    ……私が描いてきた物語たちも、きっとこんなふうに──終わらなかった」

  • 89125/06/04(水) 19:52:40

    (遠くから、足音。扉の向こうから、誰かが近づいてくる気配)

    ヴィド「……レトル。君は、来てくれたんだね」

    (その言葉に、返事はない。
    ヴィドはそっと目を細め、微笑んだ)

    ヴィド「……“黙っていることは、罪の告白”。
    私が、君に口を閉ざしていたのなら──
    きっと、この牢の鍵は、もう……」

    ──カチリ。
    (扉が、静かに、開き始める)

  • 90125/06/04(水) 19:53:50

    ヴィド「……君が笑ってくれるなら、それでよかった。
    君が悲しまないように──ただ、それだけを願っていたんだ」

    ヴィド「──だけど、レトル。
    私は……恋をしてしまった」

    ブリュンヒルデ「……その恋は、罪ではありません」

    (ヴィドは目を伏せ、かすかに首を振る)

    ヴィド「けれど──詩人である私が、恋に堕ちてどうする。
    君に赦されなければ、この想いは恋ではなく、ただの過ちとして終われたのに……」

  • 91125/06/04(水) 19:56:16

    ヴィド「それに私は、君を巻き込んでしまった。
    この詩の中心に──君を、座らせてしまった……」

    オデュッセウス「……それでも、お前は“彼女たち”を描いた。
    お前が紡がなければ、再会は叶わなかった。
    ──それが、どれほどの光だったか……!」

    ヴィド「……ありがとう、オデュッセウス。
    君がそう言ってくれるなんて、思わなかったよ」

    ヴィド「……これはもう、詩じゃない。
    物語の登場人物として、ただ──愛を乞う叫びだ

    僕を見て、レトル。
    僕と……この世界で、生きて欲しい」

    【ごめん】
    【それはできない】

  • 92125/06/04(水) 20:02:21

    *戦闘開始*
    オウィディウス〔キャスター〕を3ゲージ破壊すれば撃破

    *ステージギミック
    ・開幕時に〔愛に堕ちたピュラモス〕付与
    効果:自身の攻撃力&宝具威力大アップ(HPが減っているほど効果上昇)

    ・1ゲージ目破壊時に〔メレアグロスの燃ゆる薪〕付与
    効果:自身に毎ターンHP減少状態を付与(5T)+Arts性能&クリティカル威力アップ(3T)

    ・2ゲージ目破壊時に〔エコーの呪い〕付与
    効果:パーティーのスキル使用時に2回連続して使用される(永続)

  • 93125/06/04(水) 20:05:07

    (ヴィドの胸に埋め込まれていた聖杯が、光を弾くように音を立てて外れる)

    ヴィド「……ありがとう。君のおかげで、僕の最後の詩は──完成した」

    (しばしの沈黙のあと、ヴィドが微笑む)

    ヴィド「……レトル。
    君は、また戦いに戻るんだね」

    【うん】

    ヴィド「恋をしていた私には、それを引き止める理由が──山ほどあった。
    でも、ただの詩人になった今の私には……もう、何ひとつない」

    ヴィド「──さようなら、レトル。
    この“世界”という恋文を……受け取ってくれて、ありがとう」

    【ありがとう】
    【また、いつか】

  • 94125/06/04(水) 20:06:45

    ヴィド「……あぁ、でも。
    やっぱり言えばよかったかな──

    レトル、君を……愛していたって」

    ──最終章:この恋文を貴方へ
    [verbaque dat stultae, necquicquam redditur echo.]
    ──伝えたかったのは、ただ一つの想いだった。
    けれど私は詩人であり、言葉しか持たなかった。
    だから、君の名を呼ぶことさえ、ただの詩になってしまった。

    (変身物語 第3巻より)

  • 95125/06/04(水) 20:09:50

    ■エピローグ:語り得ぬものを、君に
    ──
    実を言うと……君の顔が、見えなかったんだ。

    あの時、シータ嬢から引き継いだ“別離の呪い”のせいか、あるいは──物語に堕ちた代償か。

    でも、君の声だけは、ずっと耳に残っている。
    あの優しい拒絶の声。私を赦さなかった声。
    そして──最後にかけてくれた、“ありがとう”。

    ……ねえ、もしこの言葉が、いつか届くなら。
    君が新たな旅の途中で、ふと本を開く瞬間があったなら。

    君の目が、私を見なくても構わない。
    君の耳が、私の声を忘れてしまってもいい。
    ただ──この物語のどこかに、私がいたことを。

    君を愛した詩人が、確かにいたことだけを、覚えていてほしい。

    これが、私の──語り得なかった恋。
    最後の詩だ。レトル。

    君の歩むその道が、
    どんな英雄譚よりも、美しくありますように。

    ──

  • 96125/06/04(水) 20:10:32

    10分締め切り過ぎて完結でした!お付き合いありがとうございました!
    オデュッセウス見てきます!!!

  • 97125/06/04(水) 22:33:49

    ■プブリウス・オウィディウス・ナソ
    クラス:キャスター
    出典:史実
    性別:男性
    属性:中立・善・人

    ステータス
    筋力:E
    耐久:D
    敏捷:C
    魔力:A
    幸運:B+
    宝具:A

    クラススキル
    ・陣地作成 E
    どこでも詩を詠めると信じている彼にとって、「決まった場」を構えることには意味がない。
    ゆえに、陣地構築の技能は極めて低い。
    ・道具作成(偽) C+
    真実に似せた嘘。嘘に似せた真実。
    彼の語る言葉は、人を癒やし、あるいは惑わせる──
    詩という名の“偽り”で、心の真実を揺さぶる。
    ・追放された者の呪詛 B
    ローマから追放されてもなお、詩を紡ぎ続けた詩人。届かぬ場所に置かれても、想いは言葉になり、遠くへ届く。

  • 98125/06/04(水) 22:36:09

    ■恋の技法(アルス・アマトリア): A
    古代ローマの恋愛指南書にして、詩人オウィディウスの代表作。
    言葉は恋を導き、恋は心を惑わす。
    甘美な語り口に導かれ、敵も味方も知らぬ間に“愛”の舞台へと誘われる。
    その詩の力は、まるで魔術──否、恋という名の魔法である。

    ■詩と過ち:B
    ──Carmen et Error
    かつてローマを追放された罪。
    それは詩のせいだったのか、過ちのせいだったのか。
    彼はそれを明かさない。ただ語る者として、詩を紡ぐ。
    ──愛を語れば世界が歪む。それでもなお、語ることをやめられない。

    ■語り部の神詠EX
    神話の語り手。詩の語り部。
    その声は、死してなお届く物語。
    英雄たちの嘆き、神々の恋──
    すべてを筆に記し、語り継いだ詩人がいた。
    語ることで記録とし、記すことで愛を救おうとした“神詠”。

  • 99125/06/04(水) 22:38:10

    ■宝具:変身詩篇:恋文は詩となりて(Metamorphōseōn)
    ランク:A 種別:対人宝具

    愛は語られたとき、ただの感情ではなく──物語になる。
    語られぬまま終わった恋も、失われた愛も、
    詩に記され、変わり、そして生き続ける。

    たとえ終わってしまった関係でも、
    たとえ誰にも伝えられなかった想いでも、
    彼が語るなら、それは“変身譚”となって咲き誇る。

    これは恋の技法であり、恋の治療であり、
    語られなかった愛たちを、もう一度「生」に変える詩。

    過去に戻れないなら、せめて“語ることで”未来に手渡すために。

    誓いも、喪失も、別れも──
    すべてはこの頁に。
    君のために、綴ろう。

  • 100125/06/04(水) 22:41:29

    ■後書き
    主題:オウィディウス先生がオデュッセイアとラーマーヤナを描いたらどうなっちゃうのー!?
    副題:こう、、チャラついた男が本命に脳を焼かれて告白すらできないやつ、、いいよね、、

    でした。

    シェイクスピアとダンテを7:3で混ぜてマーリン汁で煮詰めたものです。
    あ〜!こいつも見てたんだよね、ぐだの走り高跳び(人理修復)

  • 101125/06/04(水) 22:52:22

    ■後書き
    オデュッセウス特攻イベントが来るぞー!と思ってオデュッセウス出演イベントを描きました
    手元のオデュッセウス出演イベント2本あった内の1つです
    もう既にオデュッセウスが活躍する気配しかなくて超嬉しいんですがこれ何?

    ペーネロペーは殺すつもりはなかったのですがなんか、、筆が滑りました
    ラーマとシータを幸せにした反動で、、つい、、

  • 102125/06/04(水) 23:48:35

    ■後書き
    毎日感想、ありがとうございました。
    大変励みになりました。
    ヴィドが愛されキャラになったようで嬉しいです。

    放って置くとSSがいつまでも描き上がらないのでケツ叩きと退路断ちにまたスレ立てすると思います。

    その際はまたお付き合いいただけると幸いです。
    最後に途中まで描いてるイベントの予告載せてさらに退路を断とうと思います。

  • 103125/06/04(水) 23:53:20

    ■次回予告(になればいいな)
    『アイアイエーと春の宴』

    ──神霊たちが、消えていく。

    春の風が吹くカルデアで神性を宿すサーヴァントたちが、次々と姿を消していく異常事態が起こっていた。
    神霊、神の化身、半神と段々と範囲が広がっていく。
    消えた彼らの部屋に残されたのは、開封済みの白い封筒──それだけ。

    最後にマスターが廊下で出会ったのは、ヘラクレス。
    彼は無言でマスターへ封筒を手渡すと、春の風に溶けるように消えた。
    そこに記されていたのは、謎めいた招待状。

    『春の宴へご招待申し上げます。
    選ばれし神霊のみが立ち入りを許される特別な楽園にてお待ちしております。
    最高の歓待、最上の舞台、
    そして、なにより愛すべき■■を──共に謳いましょう。

    貴殿の到着を、心よりお待ちしております。
    ──主より』

    誰が、何のために──?
    答えを求め、カルデアは再びアイアイエーへと旅立つ。

    ■特攻サーヴァント(一部)
    ★5〔アーチャー〕ヘラクレス(期間限定)
    ★4〔セイバー〕お盆のセイバー(イベント限定報酬サーヴァント)

  • 104125/06/04(水) 23:55:06

    >>61

    >>73

    お付き合いありがとうございました!

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