- 1125/06/01(日) 21:24:17
- 2二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 21:24:48
楽しみ
- 3125/06/01(日) 21:25:34
■特攻サーヴァント(一部)
★5〔キャスター〕プブリウス・オウィディウス・ナソ(期間限定)
★4〔アーチャー〕シータ(先行登場恒常サーヴァント)
★5〔ランサー〕ブリュンヒルデ(期間限定)
★5〔ライダー〕オデュッセウス(恒常)
★4〔セイバー〕ラーマ(恒常)
★4〔アーチャー〕トリスタン(ストーリー召喚)
※以下の条件を満たしたマスターが参加可能
「奏章Ⅱ不可逆廃棄孔イド」をクリア
という内容の大嘘SSです
⚠️色んなCP注意⚠️
※作成過程で一部、AIを使用しています - 4二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 21:25:55
うぉっすごい出来…恋の神様?ローマかギリシャっぽいしエロスとかなのかな…でも漢字…
- 5125/06/01(日) 21:28:10
- 6125/06/01(日) 21:29:59
- 7125/06/01(日) 21:38:37
- 8125/06/01(日) 21:43:11
- 9125/06/01(日) 21:46:28
(ヴィドが一歩並び、歩き出す)
ヴィド「そうだ、君の仲間を探しているのだろう?……ふむ。あぁ、心当たりはあるよ。
けれどその前に、君自身の目でこの地を見てほしい。
美しいものの前で、心を曇らせるなんて──もったいないじゃないか?」
(振り返り、柔らかく微笑む)
ヴィド「さあ、行こうか、レトル。
語らいのように、静かに。踊るように、軽やかに。
このローマを──私の愛した、美しい世界を」
(詩人の手が差し出される。まるで舞踏の誘いのように)
──プロローグ:再び綴られた世界
[in nova fert animus mutatas dicere formas corpora]
──心は、新しき姿を語らんと、動き出す。
(変身物語第1歌より)
- 10125/06/01(日) 21:49:14
- 11二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 21:51:02
俺の推しセイバーきた!期待
- 12125/06/01(日) 21:52:45
■第1章:あぁ、美しきローマよ
(ローマの街並み。朝の広場。清掃された石畳に噴水の飛沫がきらめき、バラの花びらが風に舞う)
【わぁ……!】
【綺麗……!】
ヴィド「さあ、こちらだ、レトル。
この通りは“詩人の坂”と呼ばれていてね──
歩くだけで恋が芽吹くと、そう噂されている。
……信じるかい?」
(道行く市民はこちらに軽く頭を下げ、穏やかな笑みを浮かべる)
(子供たちは詩を口ずさみながら、花の冠をかぶって手を振る)
ヴィド「花はどうだい?
──ああ、旅に荷物は不要だね。
贈り物は、心に余白ができた時がいい。
愛は押しつけるものじゃないしね!」
(石造りの食堂。香ばしいレンズ豆のスープ、柔らかな肉団子)
ヴィド「これがルクッラーナ風の昼食だよ。
贅沢ではないが、滋味がある。詩と同じだね。
技巧なんてものは後でいい。情熱があれば、伝わるものさ」
【美味しい!】
【これはなかなか……!】 - 13二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 21:54:29
ラーマが同行鯖でシータ特効鯖…再会させてね!!!
- 14125/06/01(日) 21:56:38
(フォロ・ロマーノ。市場の喧騒。果物の香りと焼きたてパンの匂いが風に溶ける)
(人々は忙しなく行き交いながらも、どこかしら笑みを浮かべている。そのざわめきの中──見つめ合う二人の姿がある)
ヴィド「見てごらん、あれが──日常の中に咲く“愛の種”。
声に出されることはなく、ただ目配せと微笑で芽吹く……気づいた者だけが、そっと手にできるんだ。
ああ、恋の熱気に当てられて逸れないように。
私は構わないけど、手を繋がれたら困るのは──君の方じゃないかな?
……干しいちじく、いる?」
【いたただきます!】
(テルマエ。壮麗な公衆浴場前。白い石が陽光を浴び、湯気が空気をぼかしていく)
ヴィド「旅の疲れには、湯が一番さ。
テルマエの熱気は、体だけでなく──心の壁すら溶かしてしまう。
恋もまた、そういう場所を選ぶものだよ」
【……えーっと】
ヴィド「ここでは誰もがひとつの人になる。
地位も、名も、衣も──裸の前では、等しく意味をなくす。
肌が語る言葉、それを“沈黙の言語”と呼んだ詩人もいた。
……美しいと思わないかい?」
【結構です】 - 15二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 21:57:57
面白いよ
- 16125/06/01(日) 21:59:31
ヴィド「うん?心配しなくても混浴だよ?──あ、そこが気に入らなかったのかな?
うーん、“ジャポネーゼ”は湯浴みが好きだと聞いていたんだけど……違ったか」
ヴィド「──むむぅ、
Mille modi Venerem docet ars.
(恋には千の手段がある──それを教えるのが技術だ)
……恋のアプローチは、人によって変えるべき、ってね。私も昔、書いたはずだったのに」
【……薄々気付いていたけど……】
【これ、ただの観光じゃない!?】
ヴィド「あぁそうだ、パーネス食べるかい?
これはね、兵士たちが戦場に持って行ったパン。
でも今日の君は、戦士じゃなくて旅人だ。
だから、蜂蜜をたくさん塗ってあげよう」
【ただの観光だ──!】
──ピッ!
マシュ《マスター! 通信、回復しました!ご無事ですか!? 現在地は特異点内、座標ズレは最小──!》
ダ・ヴィンチ《あ〜〜聞こえる? よかった〜!
ん〜?お隣さんは現地のサーヴァントかな?》 - 17125/06/01(日) 22:02:03
ヴィド「あぁ、美しき女神が二人──
咲き始めのペルセポネ、理を宿したアフロディーテ……!やはり美というものは時代を選ばないらしい。
──あぁ失礼、名乗りを忘れていた。
見惚れていたんだよ、あまりに甘く輝いた光景につい、ね。
私はキャスター、真名プブリウス・オウィディウス・ナソ。
この特異点に召喚されたサーヴァントだよ」
【(全部一息で話したな……)】
マシュ「は、はい……!?……えっ、オウィディウスさんってあの『変身物語』の……?」
ダ・ヴィンチ「そう、古代ローマ最大級の詩人のひとりだよ。愛と神々と変身を語った男──代表作は『変身物語』と『恋の技法』、
“愛を語る詩人”なんて呼ばれ方もするね。
ルネサンス芸術の種を蒔いた人物でもある」
ヴィド「名声には慣れてるつもりだったけど、美人に褒められるのはやっぱり別格だね。
とくに今日はレトルのご機嫌を損ねてしまった直後だったから……ほら、沁みるだろう?
……うん、これ以上優しくされると、詩が一篇できあがってしまうかも。
もし、そこのミューズの化身たち、ささやかな詩を私から捧げさせていただいても……よろしいかな?」 - 18125/06/01(日) 22:04:24
(さらに通信越しに声が入る)
ネロ《──ナソ!我がローマが誇る愛の詩人よ!余もそなたの詩を何度読み返したものか!》
カエサル《詩聖よ、私の過去の栄光すら優美に語り直してくれたその筆、今なお健在か》
ヴィド「──おやおや、これは……我が敬愛せし皇帝陛下方ではありませんか。
詩人ごときに、まことに過分なお言葉。
あぁ、光栄の極みです。
通信越しでなければ、ローマの石畳に額を擦りつけていたところですよ──ほんの少しだけ、ね」
【有名人だったのか……】
ヴィド「うんうん、レトル。君もカルデアに戻ったら、ぜひ私の詩集を読むといい。
注釈が必要なら、夜通しでも構わないよ?
私の朗読と解説付きでね。
銀貨の山より、夜通しの詩の方が甘い──そう思わないかい?」 - 19125/06/01(日) 22:08:38
- 20125/06/01(日) 22:10:27
- 21125/06/01(日) 22:14:37
- 22125/06/01(日) 22:18:17
■第2章:愛の詩は、かも滲むのか
──
たとえば、それは──
過去に置き去りにされた恋のかけら。
あるいは、言葉にされなかった誓いの残響。
神々ですら愛に惑い、人はただ祈る。
再会が、救済であれと。
けれど、待つという行為は信仰に似ていて、
信じきれぬ者には──微笑みさえ、刃になる。
── - 23125/06/01(日) 22:23:58
- 24125/06/01(日) 22:26:03
- 25125/06/01(日) 22:27:58
- 26125/06/01(日) 22:30:40
- 27125/06/01(日) 22:33:40
- 28125/06/01(日) 22:35:23
- 29二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 22:46:51
現代に生きる古代ギリシャ人曰く『2000年間「ギリシャ神話」ジャンルの最大手でありつづける壁サー』のオウィディウス先生つよい…
- 30二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:03:27
- 31二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:04:43
明日も楽しみにしてます!
- 32二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:05:24
おつ!
明日が待ちきれない - 33二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:11:00
- 34125/06/02(月) 08:17:35
■■幕間■■
……おや、レトル。幕間に飽きた?
じゃあ、ちょっとだけ話をしよう。
アタランテ──男を拒み、誓いを胸に走り続けた狩人。
そして、純潔を誓った乙女に、ただ一人、勝利しようとする男の話。
Militat omnis amans.
“恋する者は皆、戦士である”
彼は勝つために、神の道具に頼らざるを得なかった。──愛はずるい。愛は卑怯だ。
彼女は負けたのではない。愛に罠をかけられたのだ。
……そして、獣に変えられた。
それは恋に立ち止まった罰?それとも、報い?
君ならどう思う?
あぁ、君はアタランテと知り合いなのか。
彼女、その矢をまだ他人のために撃っているんだろう?
……いや、それもいい。とても彼女らしい。
でも、それでもまた、恋に落ちると思うけどね。 - 35125/06/02(月) 12:47:18
■■幕間■■
……レトル。
幕が開くまでの、ほんの短い時間でいい。
君に語っておきたい、美しかった女の話がある。
女神に仕え、そして──神に辱められた者。
メドューサ。
罰を受けたのは、罪を犯した者ではなく、
その身に“美”を宿していた彼女だった。
Vultus in virgine causa fuit.
“その乙女の顔が、すべての原因だった”
それだけの理由で、彼女は怪物へと変えられた。
誰が本当に、“目を逸らすべき”だったのか。
彼女ではなく、彼女を見つめた神のほうではなかったのか?
私は彼女を物語にした。
だけど──語るたびに、後悔してしまうんだ。
彼女の目は、人を石に変える。
……それは、見つめられた者の心が、もともと“動かぬもの”だったからかもしれない。
──えっ? 四人?
彼女が……四人も、カルデアに?
あっはははは!
それなら、私の“物語”も書き直すしかないだろうね。一人ずつ、きっちり、丁寧に!
……さあ、舞台が開くまで、ゆっくり待とう。 - 36二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 21:37:49
このレスは削除されています
- 37二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 21:43:29
メデューサ×4にウッキウキのオウィディウス先生、薄い本が分厚くなりそうだな
- 38125/06/02(月) 23:51:54
- 39125/06/02(月) 23:54:15
- 40125/06/02(月) 23:59:44
(地下へと続く石階段。壁には古びたラテン語の詩句。誰かの声が、囁くように聞こえてくる)
【……長い、階段……】
ヴィド「恋が終わるまでに、どれだけの時がかかると思う?
──この一段一段が、その“諦め”のかたちなんだ。
別れを選んだ者たちは、静かに階段を降りていく」
【どういう意味……?】
ヴィド「この牢獄はね、“語られなかった愛”のための、永遠の幕引きの場なんだ。
自ら幕を引いた者も、そうさせられた者も……皆、ここに来る。
──ほら、彼女も」
(泣き腫らした目をした女性が、黙って階段を降りている)
【この先は……】
女性「……ええ、知ってるわ。
でも、あの人を失ってしまったの。もう、世界に色はない。
それなら──牢で、“愛と暮らす”わ」
【愛と暮らす……?】
ヴィド「──着いたよ。扉は、私が開けよう」 - 41125/06/03(火) 00:05:52
(重い音を立てて、扉がゆっくりと開かれる)
(冷たい空気と静寂が、こちらに流れ込む)
(牢は螺旋状に下り、五つの扉が異なる高さと位置に、星座のように浮かんでいる)
ヴィド「──ようこそ、愛の監獄へ。
……ちょっと、不謹慎だったかな。ごめんね。
これが、この場所の地図だよ」
<<螺旋に星を描くような形の地図>>
I. Diffidens──信じられなかった恋
Ⅱ. Finita──終わらせた恋
Ⅲ. Furor──狂った恋
Ⅳ. Inanem──報われなかった恋
Ⅴ. Silens──伝えられなかった恋
ダ・ヴィンチ《ここはまるで……》ジジッ
(ノイズ音と共に通信が途絶える)
【ダ・ヴィンチちゃん!?】
ヴィド「心配なら、一度戻る?ここからならすぐ上がれるよ」
【ありがとう】
【……でも、大丈夫】
- 42125/06/03(火) 00:15:51
(一歩、前へ。女の人が、静かに口を開く)
女性「私は、あの人を愛していました。
でも……私のほうから、別れを告げたの。
だから、向かうのは──Finita。終わらせた恋の牢、です」
ヴィド「……うん、わかった。
この星の中心に手を当てて。そうすれば、君の行くべき牢へ連れて行ってくれるよ」
(彼女が台座に手を当てると、静かに光が広がっていく)
(気がつくと、三人は別の場所──一つの扉の前に立っていた)
【……Inanem?】
【“報われなかった恋”……?】
女性「……違う。違う……ここじゃない。私は──」
ヴィド「君は、“別れを選んだ”つもりだった。でも、本当は気づいていたんだ。
あの人の心が、もう君には向いていなかったってことに」
【……】
ヴィド「だから君は、“終わらせた”んじゃない。
──“報われなかった”んだよ」
女性「──いや、いやよ……っ!
私が、別れを告げたの。私が……終わらせたのよ!
この牢は違う……この牢だけは、いや──!」
(彼女は叫びながら、扉に吸い込まれるように姿を消す) - 43125/06/03(火) 00:22:44
- 44125/06/03(火) 00:25:30
- 45125/06/03(火) 00:30:54
(トリスタンを伴い、再び螺旋の通路を進む)
【……どうしようか?】
ヴィド「そうだね、近くの牢から順に回ろうか。
螺旋状だから、位置によっては移動が楽なんだ」
(地図を開く)
ヴィド「今いるのはⅣ. Inanem。下に進むと……最奥にあるのが──Ⅴ. Silens。上進むと……Ⅲ. Furor。
けれど……Silensには、誰もいない」
【……誰もいない?】
ヴィド「あそこは、“伝えられなかった恋”の牢。
この世界では──愛を語らない者などいない。
言葉にできなかった恋……それは、“存在しない”んだ」
トリスタン「なるほど……」
ヴィド「だから、次はFurorに向かおう。
“狂った恋の牢”──愛が破綻した果てに堕ちた者たちがいる場所だよ」 - 46125/06/03(火) 00:33:16
- 47二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 00:38:15
- 48125/06/03(火) 00:40:04
- 49125/06/03(火) 00:44:52
- 50125/06/03(火) 00:49:34
【──大丈夫だよ】
【帰ってきて】
(彼女に手を差し出す。その手を見て、ブリュンヒルデは静かに槍を下ろす)
ブリュンヒルデ「マスター……ありがとう……ございます……」
(気づけば、牢の前から扉は消えていた)
(ブリュンヒルデが牢を出てから、しばらくの沈黙が続く)
(ふと、彼女が虚空を見るように呟く)
ブリュンヒルデ「……あの人は、私を呼んでくれました。あの牢で名を──何度も……
でも……最後に見えたあの人は……
私の手で……私が、シグルドを……」
ヴィド「──あの牢の中では、愛する者に会える。
たとえ幻でも、心の底に沈んだ願いが、形を持って現れる。
だから彼女は再び出会い……そして、再び愛した。たとえ、それが“殺す”ことだったとしてもね」
ブリュンヒルデ「あの人はやはり……ここにはいなかったのですね……」 - 51125/06/03(火) 00:53:05
- 52125/06/03(火) 00:54:55
- 53125/06/03(火) 00:57:12
- 54125/06/03(火) 01:00:21
- 55125/06/03(火) 01:02:31
- 56125/06/03(火) 01:05:17
- 57125/06/03(火) 01:07:36
- 58125/06/03(火) 01:10:36
- 59125/06/03(火) 01:16:26
ヴィド「……やったね、レトル。恋は、救われたよ」
【うん、よかった……!】
ヴィド「……あれ?」
【ヴィド?】
ヴィド「──少し……妙だね。
手が……重い。足が……動かない。
……君は、どこにいる?」
【え? 何……?】
ヴィド「いや、大丈夫──
ただ、ちょっと疲れただけだよ。
……こんなに詩を書いたのは、久しぶりだったからね。
今は──君の顔も、ちゃんと見えている」
(オデュッセウスがヴィドの身体を支える)
ヴィド「……それより、行こう。次の牢が──最後だ」
──3章:愛の檻に、詩は咲き誇る
[Omnia mutantur, nihil interit.]
──恋は変わる。
それでも消えたわけではない。
(変身物語第15巻より) - 60125/06/03(火) 01:19:58
- 61二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 01:23:44
各々の恋と愛の形が切ない…乙でした!
ヴィドはどうなっちゃうの…? - 62125/06/03(火) 01:24:51
■■幕間■■
さあ、次の幕が上がるまで、手慰みに別の物語もどうかな?
タイトルは──『維新ノ記録帳』
それは剣と記憶、そして“過去”をめぐる静かな追憶。
時代の隙間にこぼれた記録が、もう一度、立ち上がる──
恋も変身も出てこない。剣士たちが名を刻み、魂を繋ぐ……そんな硬派な物語さ。
Nunc quoque fama manet.
“今もあの記憶は生きている”(変身物語第6巻より)
あぁ、私は出ていないよ。……残念だったかい?
“終わらない恋文”の続きを待つ間に、
“描き切られた記録帳”を読むというのも、実に風雅な時間の潰し方だ。
……とはいえ、本音を言えば──
私としては、君にはこの恋文を、何度でも読み返してほしいのだけれど。
まあ、それを言ってしまうのは無粋というものか。
では、また明日──
(過去作の宣伝でした。明日に続きます。)
【オリイベSS】ぐだぐだ維新ノ記録帳 新撰組の次回作にご期待ください!|あにまん掲示板期間限定イベント『ぐだぐだ維新ノ記録帳〜新撰組の次回作にご期待ください〜』開催未定!「弱小人斬りサークルが――!ごっそりいなくなっとるんじゃが――!!!」ノッブが大声で管制室に飛び込んできたのは、ある…bbs.animanch.com - 63125/06/03(火) 07:42:43
■■幕間■■
……レトル。
幕が上がるまで、メディアの話でもしようか。
神の血を引き、魔術に通じた女。
そのすべてを──たった一人の男のために捧げた。
家を裏切り、兄を殺し、国を捨て、子を産み、
……そして捨てられた。
Perfer et obdura; dolor hic tibi proderit olim.
“耐えよ、耐え抜け。この痛みがいつか、君を支える日が来る”
私の言葉さ。慰めになると思って書いた。
……届かなかったけどね。
私はね、彼女の悲劇を“創った”わけじゃない。
ただ、書かれていたとおりに詩にして──ほんの少し、魔女の顔という“色”を添えた。
でもカルデアには、“若い頃の彼女”までいるんだって?
……詩人にとっては、悪夢さ。
私は“愛に純粋な少女”か、“愛に傷ついた魔女”そのどちらかしか描けなかった。
けれど彼女自身が、物語をやり直す気なら──私は静かに見つめよう。
今度こそ、書き加えることはしない。
私の後悔の話、どうだった?
……ほら、もうすぐ幕が上がる。 - 64125/06/03(火) 12:50:34
■■幕間■■
イアソン……もし私のことを“ひどい詩人”だと責めたいなら、まず彼の名前を思い出してくれ。
金羊毛を求めて航海に出た、アルゴー船の船長。
豪胆で、賢くて、美しかった……かもしれない。
だが、私が書いた彼は──
愛に背き、約束を忘れ、女神の加護を踏みにじった男だ。
ああ、勘違いしないでくれ、レトル。
私は彼を“嫌って”いたわけじゃない。
彼はむしろ……真実を描きたくなるような魅力に溢れた男だったのさ。
Desinit in piscem mulier formosa superne.
“物語の始まりが美しくても、結末が破綻していれば意味がない”
……どれだけ見事な英雄譚でも、最後の一行で醜く崩れることがある。
物語の中で彼は嫌われるかもしれない。
だが現実では、誰よりも“生き残る”男だ。
愛に騙されたふりも、運命に抗ったふりも、
すべて、自分の“選択”だったかのように振る舞える。
……それが、英雄というものさ。
あっ、私への非難は、私が元気そうなときにしてくれたまえ。
イアソンと一緒に? それはご勘弁を!
私の落ち込みぶりは凄まじいぞ──
落ち込んだ私が詩を何編詠むか、賭けてみる?
……さあ、幕が上がるまでは、そこに座っていてくれ、レトル。