【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!【7:00】

  • 1スレ主25/06/04(水) 17:12:50

    ────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。

    「行くか、アイツらを探しに」

    「待っててね、レオ。必ず助けるから」

    「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」

    「可能性としては有り得るな。バケモンでもサッカー出来ればそれでいいか」

    「全然良くないんだよなー笑」

    時計の針が刻むのは、“時間”ではなく、“精神の崩壊”。…いや、この物語では“廃病院の崩壊”が正しいだろう。

    なぜなら、目に見えないものが、確かにこちらを見ていても、それを叩き潰すのが彼らの役割だからだ。

  • 2スレ主25/06/04(水) 17:13:18

    このスレは、ブルーロックの登場人物による探索型ホラーSSです。

    舞台は“廃病院”。以前ここにやってきた潔世一、烏旅人、御影玲王、二子一揮は、廃病院に取り込まれてしまいます。

    そこで4人を救出するためにやってきたのが千切豹馬、凪誠士郎、糸師凛、糸師冴。彼らの逆襲劇が始まります。

    ※「時計の針が進むたびに、俺たちは壊れていく」のifルートになります。こちらをお読みいただいた後の方が、より物語が楽しめると思います。

  • 3スレ主25/06/04(水) 17:13:42

    ※プレイヤーの選択(安価)、運命(ダイス)によって、ストーリーの進行・視点が変化します。

    ※選択肢次第で“発狂”“精神崩壊”“絆”に分岐するかもしれません。

    ※正気度(SAN値)管理あり。

  • 4スレ主25/06/04(水) 17:14:57

    【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!|あにまん掲示板────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。「行くか、アイツらを探しに」「待っててね、レオ。必ず助けるから」「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」「可能性としては有り得るな。バケモンで…bbs.animanch.com

    【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!【1:00】|あにまん掲示板────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。「行くか、アイツらを探しに」「待っててね、レオ。必ず助けるから」「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」「可能性としては有り得るな。バケモンで…bbs.animanch.com

    【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!【4:00】|あにまん掲示板────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。「行くか、アイツらを探しに」「待っててね、レオ。必ず助けるから」「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」「可能性としては有り得るな。バケモンで…bbs.animanch.com

    【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!【5:00】|あにまん掲示板────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。「行くか、アイツらを探しに」「待っててね、レオ。必ず助けるから」「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」「可能性としては有り得るな。バケモンで…bbs.animanch.com
  • 5スレ主25/06/04(水) 17:15:27

    ■キャラヘイトを目的とするものではありません

    ■キャラsage、腐発言、アンチコメはお控えください

    ■荒らしはスルーします

    ■ゆっくり進行ご容赦ください(平日は仕事の都合上、特に進行が遅くなります)

    ■感想、質問、イラスト等頂けるとスレ主が大変喜びます

    ■広域ホスト規制に巻き込まれがちです。保守して頂けると幸いです(23時~8時は特に)

  • 6スレ主25/06/04(水) 17:17:10

    【登場人物紹介】


    千切 豹馬(ちぎり ひょうま)/初期SAN値:22→24

    マイペースでよく笑い、よく叫ぶスピードスター。
    突飛な出来事に驚きつつも、誰よりも仲間を信じている。4人の奪還のために全力を尽くす、熱き疾風。

    「13:00遊園地ホラー」のクリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。精神に“ある記憶”が刻まれている。


    ■固有能力

    【光刃の脚】怪異の行動を先読みし、自動回避と自動反撃を行う(2回まで・回避ターンで攻撃可能)
    【絆の加速】戦闘時、追加攻撃し、+1のダメージを与える(2回まで)
    【共鳴の記憶】遊園地ホラークリア特典。SAN値減少イベントを1回自動回避できる
    【疾風の破片】遊園地ホラークリア特典。罠や影の追跡から仲間を救出できる(2回まで・味方1名の回避失敗を自動成功に変換する)


    ■初期装備

    ・かりんとう饅頭×3:SAN値+4回復

    「廃病院って部屋多くね?絶対あと3つじゃ足りないだろ」

  • 7スレ主25/06/04(水) 17:19:44

    凪 誠士郎(なぎ せいしろう)/初期SAN値:25→20

    マイペースでルーズ、何事にも「面倒くさい」が口癖。怪異にも無表情で動じず、声すらあげない超然プレイヤー。御影玲王を救うため、「頑張りまーす」と静かに決意を燃やす。

    「廃病院ホラー」にも登場。


    ■固有能力

    【夢境感知】見えない怪異の存在を探知し、戦闘開始前に怪異に先制攻撃(自動成功)を与える。その後、通常通り戦闘開始の行動に参加可能(3回まで)
    【無意識の庇い】仲間の致命的失敗を肩代わりし、かつ自身のSAN値減少を無効化することができる(3回まで・なにかに突き動かされた感覚だけが残る)


    ■初期装備

    ・レモンティー×3:SAN値+4回復

    「レモンティー飲んだら絶不調になった。もしかして腐ってた?」

  • 8スレ主25/06/04(水) 17:20:53

    糸師 凛(いとし りん)/初期SAN値:24→24

    高圧的かつ超エゴイスト、口も態度もとにかく強気。ホラー好きで、廃病院の突入にも密かにワクワクしている。兄にはなぜか強く出られず、ちょっとだけ不器用。

    「13:00遊園地ホラー」のクリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。精神に“ある記憶”が刻まれている。


    ■固有能力

    【百鬼夜行】戦闘イベント時、怪異の行動を2ターン封じ、攻撃に専念することができる(持ち越し可能)
    【記憶の盾】自分と味方全員のSAN値減少を1回ずつ無効化できる(重複不可)
    【共鳴の記憶】遊園地ホラークリア特典。SAN値減少イベントを1回自動回避できる。
    【記憶のページ】遊園地ホラークリア特典。 “消されかけた記憶”や“不自然な空間”を感知し、1度だけ探索を自動成功にすることができる
    【記憶の継承者たち】 遊園地ホラーペア特典。1度だけ“忘れられた者”に対し、言葉だけで道を開くことができる(怪異の脅威を無効化し、部屋から自動脱出可能・A-7通路、地下最終戦を除く)


    ■初期装備

    ・鯛茶漬け×3:SAN値+4回復

    「なんか思ったのと違った。好物は落ち着いた場所で食うのが1番だな」

  • 9スレ主25/06/04(水) 17:21:52

    糸師 冴(いとし さえ)/初期SAN値:23→22

    冷静かつ天然、日本の至宝と呼ばれる実力者。口が悪いが的確に褒めるタイプで、弟の態度は「反抗期」で片付ける。驚いた時は小さく反応、目を見開くのが最大のリアクション。

    「13:00遊園地ホラー」のクリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。精神に“ある記憶”が刻まれている。


    ■固有能力
    【断罪の策略】攻撃につき成功人数+1ダメージを与え、敵の攻撃を1回無効化できる(1ダメージは常に継続)
    【最適解】自分または味方1人の失敗判定を再試行できる(1部屋1回まで)
    【共鳴の記憶】遊園地ホラークリア特典。SAN値減少イベントを1回自動回避できる
    【白き空間の鍵】遊園地ホラークリア特典。他人の精神領域に1回だけ“干渉”して引き戻すことができる(精神異常発生時、精神を安定させることが可能)
    【記憶の継承者たち】 遊園地ホラーペア特典。1度だけ“忘れられた者”に対し、言葉だけで道を開くことができる(怪異の脅威を無効化し、部屋から自動脱出可能・A-7通路、地下最終戦を除く)


    ■初期装備

    ・塩こぶ茶×3:SAN値+4回復

    「廃病院にテレビがあって、ちびまる子ちゃん見れれば完璧なんだけどな」

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 17:32:47

    スレ立ておつです
    前スレの件だけどRPG風ギャグめっちゃ読みたい
    スレ主が書きたくて筆が乗るものを書くのが1番だと思う楽しみにしてる

  • 11スレ主25/06/04(水) 17:41:05

    >>10 色々ありがとうございます…!いま3つくらい書きたいのがあって、何から始めようか悩んでたのですが、たまにはホラーじゃないSSも書いてみようと思います…!恐らく次回作になります!

  • 12スレ主25/06/04(水) 17:44:14

    扉を開けた、その先の空間。


    部屋は──まるで、終わったあとの残骸だった。

    崩れた天井。砕けた床。
    焦げた匂いと、散らばる医療器具。

    奥には、倒れかけたロッカーがひとつ。
    そこだけが異様に膨らんでいた。


    千切「……あれ?」

    千切が一歩足を踏み入れたその瞬間。
    ピンと張り詰めた神経のどこかが、“微かに緩んだ”。


    千切「……ここ、前に見たことあるな」

    凛「……ああ。俺も……覚えてる」

    冴「潔たちが廃病院に来た時だな」

    冴が小さく頷いた。

  • 13スレ主25/06/04(水) 17:47:02

    冴「間違いねえ。ロッカーに……俺たちが詰められてた、あの部屋だ」

    凛「ってことは──ここは、“安全”ってことか」

    空気に漂っていた重さが、少しだけ軽くなる。


    凪「……ほんと?」

    千切「ほんと!凪はあの時いなかったけど、変な空気もないし、ここには化け物はいなかったはず……!」


    だが──


    ──ゴンッ

    そのとき、ロッカーの奥から何かが“叩かれる音”。


    千切「……あ、もしかして」

    凛「……マジか」


    バンッ!!

    今度は明らかに人間の拳で叩いたような音だった。

  • 14スレ主25/06/04(水) 17:56:17

    ?「……誰かいるのか!おい、開けてくれ!」

    男の声。
    その低い声に、三人は思わず顔を見合わせる。


    冴「……また、閉じ込められてるのか」


    そして──

    ?「いま壊す」


    ──ドンッ!!

    まるで蹴破るように、
    ロッカーの扉が内側から弾け飛んだ。


    鉄の扉が床に転がり、
    現れたのは──筋肉質な男の姿。


    國神「無事か、お前ら」

    千切「國神!!頼もしいやつが来てくれたな、おい!!!」

    千切は國神の姿を見つけるや否や、
    背中をバシバシと叩きに行く。

  • 15スレ主25/06/04(水) 18:00:09

    國神「痛え、……てか思ってたより元気だな」

    千切「元気じゃねーよ!度々死にかけてんだわ、こちとら!!」


    続けて姿を現したのは、
    額に埃をつけたままの二人。


    斬鉄「……出られた!ロッカーの中、狭かった……」

    凪「斬鉄……!……いや、なんでロッカーに詰め込まれてたの?」

    斬鉄「それは俺が聞きたいくらいなんだが。なんで詰め込まれてたんだ、凪?」

    凪「いや、俺に聞かれても分かんないし…」

    斬鉄「凪が分からないなら俺にも分からん。なんか呼ばれてここにいたんだ。な、氷織?」

    氷織「うん、目が覚めたと思ったら、いきなり狭い場所で驚いたわ」

    氷織が落ち着いた声で言う。

  • 16スレ主25/06/04(水) 18:18:31

    氷織は、そっと手の中の小さな装置を取り出し、
    凛へと差し出す。


    氷織「凛くん。これ、君に渡しておきたかった。もしも……最悪の選択をした時でも、それが“最高の一手”に変わる装置。これから必要になると思う」

    凛「……それ、ほんとに使えるやつか?」

    氷織「ふふっ、凛くんやったら、きっと使いこなせるわ」

    凛は少しだけ驚いた表情を見せたが、
    すぐに受け取る。


    凛「……ふーん。じゃ、ありがたく使わせてもらう」


    氷織はもう一つ、
    蒼い光を帯びた装置を冴に渡す。


    氷織「凛くんのお兄さん。これは……リンク用の中枢デバイス。《PHANTOM STRIKE》や《AMPLIFY》に組み込めば、僕たちを一回だけ召喚できる。戦闘中なら、ずっと支援に回れるはずや」

    冴「……要は、丸ごと預けるってことか。面白いな」


    ■入手アイテム
    ・《レゾナンス・ノード》×1:2回までファンブルをクリティカルに変換可能。
    ・《リンクコア・アーキス》:《PHANTOM STRIKE:SUPPORT》《PHANTOMSHOT:AMPLIFY》を組み合わせた完全版。使用時、國神・斬鉄・氷織を1人1回まで召喚可能。戦闘終了まで、攻撃・回避を自動成功で行う。

  • 17スレ主25/06/04(水) 18:28:32

    一方、斬鉄は凪の前で、
    時計のサイズにピッタリの細長い装置を取り出す。


    斬鉄「これをつければ……なんか、こう……時を少し柔らかくできる」

    凪「ええ……まあ、斬鉄らしいね……」

    凪は苦笑しつつも、それを受け取った。


    國神は千切に向かって、真剣な眼差しを向けながら、黒いチップ型の装置を差し出す。


    國神「これは……言葉にしづらいが、“限界を超える”ためのものだ。絶対これから必要になる」

    千切「……國神がそう言うなら、信用するわ!」


    ■入手アイテム
    ・《タイム・ヴェイル・ギア》×4:全員の時計に装着可能。進行を-8遅らせることが出来る(次回:-11で8:00)
    ・《ブレイクリミッター》×4:全員に装着可能。ダイスにつき、110まで上限を解放(今後は1~110のダイスとなり、95~110はすべてクリティカル、100~110は全て100特典が付与される)

  • 18スレ主25/06/04(水) 18:29:33

    シークレットダイスで最高値が出たので、ほぼチートなアイテムを支給しました。ここまですればきっと奪還成功できるでしょう!

  • 19スレ主25/06/04(水) 18:30:47

    すべての装置を渡し終え、
    國神、斬鉄、氷織がそれぞれ一歩下がった。


    國神「俺たちは、いつでも見てる。お前らなら、やれる」

    氷織「気をつけてな。あいつらの“夢”は、まだ深い」

    斬鉄「絶対、全員揃って帰ってこい!」

    彼らの姿が、光と共にゆっくりと消えていく。


    静けさが戻った部屋の中で──


    千切「……さて、もういっちょ頑張るか!」

    凛「さっさと奪還して帰るぞ」

    冴「ふ……口だけじゃないといいけどな」

    凪「じゃ、行こっか。なんか頭痛いの治ったし、いまなら頑張れる気がする」


    気合いを入れ直した四人は、再び歩き出す。

  • 20スレ主25/06/04(水) 18:44:31

    足音が廊下に戻ると同時に──

    黒、ダークブルー、紫。
    三匹の猫たちが、再び姿を現した。

    ヨイチは千切の脚元に素早く擦り寄り、
    タビトは冴の脚を見上げてにゃあと鳴く。
    レオは凪の背後にぴたりと付き、ゆっくりと尾を揺らした。


    千切「おかえりってこと?はは、ちゃんと待っててくれたのか!」

    凛「……こいつら、なんか嬉しそうだな」

    冴「ああ。鳴き声も、歩き方も。妙に“安心してる”感じがある」

    凪「……たぶん、こっちの部屋は……マシなんだろうね」


    猫たちは、それぞれの足元を離れると、
    一斉に廊下の奥へと向かっていく。

    まるで「今度はこっち」と案内するように、
    短く鳴きながら──。

  • 21スレ主25/06/04(水) 18:45:21

    猫達の後を追い、
    長い廊下を抜けた先にあったのは──
    他のどの病室とも、明らかに造りの異なる扉だった。

    鋼鉄のような光沢をもった、無骨な“鉄扉”。
    看板も札も掲げられておらず、
    そこにあるのはただひとつ、“威圧感”。


    凛「……病室にしては、作りが異常すぎる」

    冴「非常用……“何か”を閉じ込めてた構造だな、これは」


    千切が一歩、扉に近づく。

    扉表面には、まるで鋭利な鉤爪で削られたような“無数の裂け目”が走っていた。
    金属製の表面に、鋭く、そして深く──
    そのすべてが、“内側から”刻まれたものであると、一目でわかる。

  • 22スレ主25/06/04(水) 18:45:57

    凪「中から……暴れたってこと?」

    冴「鍵……もう壊されてる。ロックの基部が、完全に抉れてるな」

    凛「てことは……誰かが、…いや、“何かが”既にここを出てるのか?」


    だが、すぐに千切が気づく。
    鉄扉の下部。
    わずかに、“外側へと膨らんで”いる部分がある。


    千切「いや……これ、まだ“中にいる”んじゃねぇか……?」


    扉に手をかけ──
    ごくわずかに、音を立てながら、ゆっくりと押し開けた──。

  • 23スレ主25/06/04(水) 18:50:26

    ──隔離居室A。

    その名に違わず、部屋に一歩踏み込んだ瞬間。
    空気の密度が変わった。

    まるで、息をしただけで“拒絶される”ような──五感すべてを鈍らせ、精神を直接締め付けるような、“存在そのものが拒まれている”という錯覚が、全身を包み込んでくる。


    冴「……圧が、違うな。普通の部屋じゃない」

    凛「隔離……ってそういう意味かよ……」


    天井を見上げると──
    そこには、いくつものマネキンが、逆さ吊りの状態で固定されていた。

    足元を縛られたそれらは、わずかな空気の流れに合わせて、ギィ……ギィ……と、不規則に揺れている。


    千切「……またかよ、こいつら……!」

    それは以前に遭遇したものと同じ造形だった。
    無表情な顔、妙に人間に近い肌の質感。
    そして、全身を包む薄いガウン。

    だが──今回は、“数”が違った。
    視界に収まりきらないほど、隅々まで埋め尽くされたマネキン群が、まるで“見下ろす”ように、彼らを包囲している。

  • 24スレ主25/06/04(水) 18:51:01

    凪「……なんか、声、聞こえない?」


    ふと、どこからともなく──

    「……みてるよ……」
    「……ここに、いるよ……」

    そんな、耳の奥を撫でるような“囁き”が聞こえた気がした。


    ギィ……ギィ……
    揺れるたび、幻聴めいたその声が、静かに響く。


    冴「……これは、単なる空耳じゃねぇな。意識に“干渉”されてる」

    千切「くっそ……気持ち悪いけど、ここにも何かあるはずだから…」

    千切が一歩を踏み出すと、
    吊るされたマネキンのひとつが、ギギ……と大きく揺れた。

    今にも“何か”が、そこから落ちてきそうなほどに。


    だが、それでも──
    四人は、再び進み始めた。

    ここがどれほど“異常”であっても、
    その先に、救いがあると信じて。

  • 25スレ主25/06/04(水) 18:52:42

    【隔離居室Aエリア】


    ① 拘束器具の破損跡
    壊された手枷や足枷に、“何かが記録されていた”痕跡(異常発生リスク(小))

    ② 酸素チューブ付近の床下
    チューブの下に、“意図的に隠された箱”のような物がある(異常発生リスク(小))

    ③ 隔離日誌の落下束
    医師が残したメモ類。投薬や観察内容に関する詳細が残っている可能性(異常発生リスク(小))

    ④ 天井のマネキン頭部の下
    その下の床に、謎の“円形の痕跡”が描かれている。近づくと、“何か”が動いている気配(異常発生リスク(小))

  • 26スレ主25/06/04(水) 20:11:57

    千切は、②壁際に落ちた酸素チューブの先を辿るように、床にしゃがみ込む。

    その足元に、いつの間にか黒猫のヨイチと、ダークブルーの猫のタビトが寄り添っていた。

    千切「……ん? お前ら、いつの間に……」

    片膝をつきながら、
    千切は少しだけ笑って猫たちを撫でる。

    千切「ははっ、いいぜ。俺だけじゃ心細かったしな。──行くか、ヨイチ、タビト」

    千切の視線は、チューブの下に不自然な影を見つけ、鋭く細められた。

     
    凪は、③床に散らばった日誌の束を、無言で見つめていた。

    手を伸ばす前に、ふと足元に柔らかな重みを感じて振り返ると──
    そこには、紫の毛並みの猫・レオがすっかり腰を落ち着けている。


    凪「レオ……お前も来たんだ」

    声に感情は乏しいが、少しだけ表情が和らぐ。

    凪「……じゃあ、がんばろーっと。めんどくさいけど、レオいるなら平気」

    レオが、にゃあとひと鳴きして、
    凪の手元の紙束を軽く前足で叩いた。

    凪「……そっか。ここ、だよね」

  • 27スレ主25/06/04(水) 20:13:57

    そして、糸師凛と糸師冴は──

    並んで、①破壊された拘束具の前に立っていた。


    凛「……これ、誰かを閉じ込めてたのか」

    冴「ああ。だけど──外れてる」

    拘束の痕に目を落としたまま、
    凛は小さく息を呑んだ。

    凛「……俺と、兄ちゃんで見るのも変な感じだな。こういう部屋」

    冴「そうか? 俺はちょうどいいと思うけどな」

    そう言って、冴はすっと、
    ④マネキンのほうに視線を向ける。


    凛「……じゃ、背中任せる。ちゃんと見ててよ、兄ちゃん」

    冴「ああ、俺が“お前の目”になってやる」


    ふたりは呼吸を合わせるように、
    床にしゃがみこんだ。

    マネキンがきぃ、と揺れたその瞬間──
    空気が微かに震えた。

  • 28スレ主25/06/04(水) 20:25:19

    【隔離居室A探索:①拘束器具の破損跡・糸師凛】
    【探索開始】7:00


    倒壊した天井の真下、
    ひび割れた床に散らばる手枷と足枷。
    それらはもはや拘束具としての役目を終えていたが──金属の留め具には、鋭く“引き裂いた痕”が残っていた。

    凛は、破損した器具の周囲にしゃがみ込むと、
    視線を滑らせる。


    凛「……ぶっ壊れてるな。しかも……これ、中からだろ」

    金属片を指先でなぞりながら、小さく息を吐く。

    凛「外そうとして暴れたんじゃない。力づくで“引きちぎった”みたいな痕。しかも……人間の力じゃない」

    その背後から、わずかに衣擦れの音。

  • 29スレ主25/06/04(水) 20:26:05

    冴「気づいたか」


    凛「当然。……兄ちゃんも見えてる?」


    冴「ああ。金属の歪みが一点に集中してる。物理的に壊されたというより、“外側の制御が切れた”感じだな」


    凛「制御、ね……なるほど。拘束されてた“何か”の状態が、ここで変わった……」


    一瞬、沈黙が落ちる。

    だが凛はすぐに、金属の隙間に僅かに挟まれた、

    何かの紙片に目を留めた。



    凛「……これ、ちょっと気になる」


    冴「慎重にな」


    凛はわずかに頷くと、目を細め──

    指先をゆっくりと差し入れていった。


    空気が、わずかに揺れる。

    異様な拘束具の破片が、重く鈍く光を反射した。



    異常発生リスク(小)

    dice1d110=33 (33)

    (1〜35:大失敗 36〜65:失敗)

    (66〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※大成功特典:+10

  • 30スレ主25/06/04(水) 20:41:17

    【冴の固有能力:最適解──発動】


    鋭い金属片の隙間へ、
    慎重に指を伸ばした凛だったが──

    その瞬間、金属片がカチリと音を立てて、わずかに動いた。


    凛「っ……!」

    思わず引っ込めた指先。
    その表情がほんのわずかに強張るのを、
    後ろに立つ冴は見逃さなかった。


    冴「焦るな、凛」

    凛「……焦ってねえ」

    冴「ならなおさら。お前のことだ、手が滑ったまま強引に行くだろうが」

    凛は苦虫を噛み潰したような顔をしたが──
    それが咎めではなく、“兄なりの気遣い”であることも、もうわかっていた。

  • 31スレ主25/06/04(水) 20:41:59

    凛「………指図されるのは好きじゃねえ」


    冴「そうか。じゃあ、“提案”だ。もう一度、ゆっくり行け」


    目を細め、深く息を吐き直す。



    凛「──了解、兄ちゃん」


    冴の静かな助言を受け、

    凛は再び金属片の間に手を差し入れる。


    今度は急がず、慎重に──

    まるで“記憶の断片”を手繰るように。



    空気がまた、少しだけ動いた。


    破損した拘束器具の奥で、

    わずかに紙片が揺れた気がした。



    異常発生リスク(小)

    dice1d110=68 (68)

    (1〜35:大失敗 36〜65:失敗)

    (66〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※大成功特典:+10

  • 32スレ主25/06/04(水) 20:48:23

    【再試行成功】7:00


    ギィ……ギィ……

    天井のマネキンが揺れるたび、
    頭の奥にじわりと滲む違和感。
    そんな空気のなかで、凛は壊れた拘束具の金属片に目を留める。

    冴が後ろからそっと近づく。
    凛の肩越しに、それを覗き込むように。


    冴「何か書き残されてる。……よく見てみろ」

    凛が手を伸ばすと、破損した金属の隙間に──
    “押し込められたままの紙片”が見えた。

    それは、湿気で少し波打ちながらも、
    はっきりとした文字を刻んでいた。

  • 33スレ主25/06/04(水) 20:49:00

    《メモログ:B17号・最終観察記録》

    『彼は記録の中で、“夢の断片”を収集していた』

    『断片には“顔のない医師”の記録が混入していた』

    『それは“B20号”か、“No.16”か……確証はない』

    『ただ、彼が最後に書き残した言葉は──』

    「次は、きっと“あの子”が壊れる」


    凛「……“あの子”って、誰だよ」

    呟きとともに、凛の瞳が鋭くなる。

    冴はその問いに答えず、
    ただ視線を逸らしたまま、静かに言った。


    冴「……ここの“夢”は、まだ醒めちゃいねぇってことだ」

    揺れ続けるマネキンの音が、
    二人の会話の隙間に、入り込むように響いていた。

  • 34スレ主25/06/04(水) 20:55:00

    【隔離居室A探索:②酸素チューブ付近の床下・千切豹馬】
    【探索開始】7:00


    部屋の隅、
    壁際に絡まるように這う酸素チューブの先。

    その足元にしゃがみ込んだ千切のそばには、
    いつの間にか──小柄な黒猫・ヨイチと、大きなダークブルーの毛並みの猫・タビトが、音もなく佇んでいた。


    千切「……うわ、ヨイチ!? タビトまで……気配消すな!!」

    ヨイチは首を小さく傾げて、
    しっぽをふわりと揺らす。
    タビトは「ン゛~~ッ」と低く鳴いて、
    千切の足元にすり寄ってきた。


    千切「なあ……おまえらも気になった?このチューブの下……なんか、ちょっと、変だよな」

    重なるチューブを手でそっとかき分ける。
    その奥──不自然な隙間と、床材の浮き。

  • 35スレ主25/06/04(水) 20:55:45

    千切「……あれ、床下。なんか盛り上がってね?」


    タビトが、ピタリと動きを止める。

    ヨイチは音もなく視線を逸らし、

    床の一点を見つめたまま動かない。



    千切「……っ、なんかヤな予感。これ……罠っぽい?」


    だが目の前にある“異常な膨らみ”を放っておくわけにもいかず、千切はおそるおそる、手を伸ばしていく。



    千切「……大丈夫。ヨイチもタビトも、そばにいて。……俺が、ちゃんと守るから」


    その声が、かすかに震えていたことに、

    千切本人は気づいていなかった──。



    異常発生リスク(小)

    dice1d110=12 (12)

    (1〜35:大失敗 36〜65:失敗)

    (66〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※大成功特典:+10

  • 36スレ主25/06/04(水) 21:07:28

    【探索大失敗→《リプレクト・コア》使用により自動成功へ変換】7:00


    床に膝をつき、
    浮き上がった床材にそっと指をかける千切。


    そのとき──

    酸素チューブの奥、暗がりの隙間から、
    不自然にひしゃげた“何か”が這い出してくる。

    その動きは人間のようでいて、
    関節が逆に曲がっていた。


    千切「っ……な……んだよ、あれ……!」

    タビトが一歩退き、低く威嚇音を漏らす。
    ヨイチは背を丸め、音もなく、千切の肩に飛び乗った。

    ──影の腕が、チューブの間から伸びてくる。

    “何か”が千切の足首を掴もうと床下から手を伸ばした瞬間──


    シュウゥン……!!

    空気を切る音とともに、
    千切の目の前に小さな装置が投げ込まれた。

  • 37スレ主25/06/04(水) 21:08:42

    凪「……っと。あぶなー……」

    床に落ちた装置が、静かにスイッチを点滅させながら起動する。
    その中心──青い光が脈打ち、影が吸い込まれるように霧散していく。


    千切「なっ、凪……!」

    凪「これ、さっき拾ったやつ。まあ、使えると思ってた」

    千切は目を見開いたまま、
    気づけば酸素チューブの奥に手を差し入れていた。
    そして──そこに、ひとつの“硬質な感触”がある。

    取り出されたのは、
    スカイグレーに淡く光る、小さな宝石。
    脈打つように輝き、まるで“心臓”のような静かな律動を刻んでいる。


    千切「……宝石? でもこれ──前に拾ったやつと、なんか……」

    凪「……たぶん、それもレオ達を救うために必要なもの」

    凪の声はいつになく静かだった。
    目の前の宝石に視線を落としながら、凪はふっと息を吐く。


    凪「……誰かの、魂の一部かもね」

    宝石は、ほんの少しだけ温かい光を宿していた。

  • 38スレ主25/06/04(水) 21:15:23

    【隔離居室A探索:③隔離日誌の落下束・凪誠士郎】【探索開始】7:00


    凪はゆっくりと、崩れかけた棚の近くに散らばる紙束へと歩み寄った。
    ページの角が黒ずんで湿っているそれらは、
    どうやら隔離日誌のようだった。


    凪「……めんどくさそ、だけど……まあ、見とくか」

    ため息交じりにつぶやきながら、しゃがみ込む。
    隣には、いつの間にか猫のレオが腰を下ろしていた。


    凪「……レオもこういうの、見たいわけ?」

    返事のように、小さな声で「にゃ」と鳴く紫の猫。
    その澄んだ瞳が、紙束の隙間をじっと見つめている。

    凪は数枚、慎重にめくる。
    濡れてちぎれそうな紙、字がにじんで読めないもの、ところどころ白紙のようなページ──

  • 39スレ主25/06/04(水) 21:16:18

    凪「ふーん。投薬記録とか、精神状態の観察……?」


    その手が、束の下のほうに沈んだ時だった。



    凪「──……?」


    束の中に、紙とは違う“硬い手応え”があった。



    凪「……何これ。……紙じゃない」


    一瞬、表情を引き締めると、

    凪は静かにそれを引き抜こうと手をかけた──。



    異常発生リスク(小)

    dice1d110=90 (90)

    (1〜35:大失敗 36〜65:失敗)

    (66〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※大成功特典:+10

  • 40二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 21:22:07

    レオがいると露骨にやる気出すタイプ?

  • 41二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 21:25:17

    最適解100パーセントまだまだ継続はさす凛だし
    レオと一緒に大成功もさす凪

  • 42スレ主25/06/04(水) 21:32:07

    >>40 原作通り……。これからはレオと探索することにします。

    >>41 兄ちゃ傍にいればいいかと思いましたが、励まされると頑張れるタイプみたいですね、凛ちゃん。今後は最適解は優先して使ってみましょう。

  • 43二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 21:33:51

    もしかして凪がアイテム投げなかったらヤバかったかこれ

  • 44スレ主25/06/04(水) 21:33:51

    【探索大成功】7:00


    紙束の中から引き抜かれた“それ”は──
    ぴたり、と凪の手の中で静止した。

    角ばった黒い物体。
    金属とも石ともつかぬ、不思議な質感。

    表面は黒く艶があり、
    うっすらと指紋が浮かぶような滑らかさ。

    そしてその中央には、
    焼きつけられたような文字がひとつだけ──


    『No.05』


    凪「……これ、見たことあるやつだな」

    凪は以前凛が拾ったもの──
    《喚起プレート:No.02》を思い出す。

    形状はほぼ同じ。
    だが並べてみると、No.05の方がほんの少し重い。

  • 45スレ主25/06/04(水) 21:36:38

    凪「番号ついてるってことは……他にもあるってことか」

    となりでレオが「にゃ」と小さく鳴いた。


    凪「……これ、揃ったら何か起きそう」

    ひとつ息をついて、凪は《喚起プレート:No.05》を静かにポーチへと収めた。


    ■入手アイテム
    ・《喚起プレート:No.05》×1:No.02と組み合わせることで効果を発揮。戦闘時、失敗者1名のダイスの振り直しが可能になる(使用後消滅せず、新たな喚起プレートを入手時、また新たな効果を発揮する)

  • 46スレ主25/06/04(水) 21:40:11

    >>43 千切は大失敗なので、SAN値-2+精神異常発生(戦闘時-10)でした!宝石は入手出来る場所を何ヶ所か用意してるので(流石に1箇所だけだと鬼畜なので……)、ここで取れずともなんとかなりましたが、この部屋で戦闘時マイナスがかかるのは痛かったのでアイテム使用が最適解でした。

  • 47スレ主25/06/04(水) 21:44:49

    【隔離居室A探索:④天井のマネキン頭部の下・糸師冴】
    【探索開始】7:00


    天井から吊るされた──マネキンの頭部。
    ギィ……ギィ……と、まるで首をかしげるように揺れるたびに、空間がわずかに軋んだ。

    その下。
    床面に描かれた、謎の“円形の痕跡”。

    それは誰かが道具で描いたようにも、
    誰かが這い回った軌跡のようにも見えた。

    黒ずみ、かすれ、途切れ──
    だが、確かに意図を持って刻まれた線。
    “何か”が、この場所で始まり、終わった痕跡のように。


    冴「……凛、少し離れてろ」

    凛「……ん。何か見つけた?」

    冴「いや……ただの勘だ。嫌な空気が溜まってる」

  • 48スレ主25/06/04(水) 21:45:37

    床に片膝をつき、

    冴は慎重に円の内側へ指先を伸ばした。


    微かに、埃と金属の臭いが交じる。


    円の中心。

    そこに──“何か”が埋まっているように見えた。



    凛はやや緊張した面持ちで、冴の背中を見守る。



    凛「……無理はすんなよ。兄ちゃんでも、危ない時はあるんだから」


    冴「…………ありがとな」


    静かに──冴の指が、円の中央へと触れる。



    異常発生リスク(小)

    dice1d110=97 (97)

    (1〜35:大失敗 36〜65:失敗)

    (66〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※大成功特典:+15

  • 49スレ主25/06/04(水) 22:13:17

    本日の更新はここまでです。
    4人全員探索成功(奪還編なので自動成功とかも全部成功にカウントします)なので、パーフェクトアイテムが支給されます。
    アイテム案募集します!A-7と地下が鬼畜仕様になってるので、凪の固有能力追加とかでもOKです!ある程度チートでも構いません。
    アイテム(固有能力)名と効果を教えてくださいませ。
    それではまた明日、よろしくお願いします。

  • 50二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 03:05:39

    ⭐︎

  • 51二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 04:11:47

    今日もお疲れ様!
    アイテム案考えたんだけどやっぱり大失敗や失敗を打ち消せるものが良さそうかな
    今までそれでだいぶ助かってるところあるし
    A-7と地下で不調の波が来たら怖いから念には念を入れておきたいかなーというところまでは考えたんだけど良い名前が思いつかなかったよごめんね
    明日も楽しみにしてます!

  • 52スレ主25/06/05(木) 08:16:23

    >>50 保守ありがとうございました!

    >>51 大失敗、失敗を打ち消すもので承知しました!ご意見ありがとうございました!


    おはようございます。

    本日もよろしくお願いします。

  • 53スレ主25/06/05(木) 08:20:27

    【探索大成功】7:00
    【全員探索成功により、スペシャルアイテム取得】


    床に描かれた“円形の痕跡”を、
    冴が見つめたその瞬間──
    何かが、音もなく、部屋全体に“染み渡る”。

    空気が震えた。

    どこか遠くで、
    誰かの“記憶”が、そっと囁いたようだった。


    凛「……今の、何か感じたよな」

    冴「“終わった”気配だな。俺たち全員、無事だった」

    その言葉通り、四人の誰にも異常はない。
    怪異も気配も一時的に消えた、静寂に包まれる部屋。

    そして──


    凪「……あれ、なんか手に入った」

    凪の掌には、淡い青緑色の光を内包した、
    球状の装置が浮かんでいた。

    何の操作もしていないのに、それは凪の指先でふわりと脈動しながら、ひとつの能力として“馴染んで”いく。

  • 54スレ主25/06/05(木) 09:21:48

    凪誠士郎:新・固有能力【静寂の再演】

    探索・戦闘時の【大失敗】および【失敗】を2回まで【自動成功】に変換する。
    その発動は無意識下で行われ、凪自身も「使った」感覚はない。だが確かに、あの装置が“自分を守る”ことだけはわかる。


    冴「……らしくていいな」

    千切「凪、なんかすげーのお前のとこばっか来てない!?」

    凪「さあ……?でも、もらえるもんはもらうよ」

    凛「使いどころ、間違えんなよ」

    凪はただ小さく頷き、
    青緑の光が凪の掌で、静かに鼓動を打った──。

  • 55スレ主25/06/05(木) 10:33:01

    隔離居室Aの探索を終え、
    四人は中央のスペースに自然と集まった。

    猫たちも静かに足元に寄り添い、天井のマネキンの揺れだけが不気味に続いている。


    千切「……俺、これ。拾ったんだけど」

    そう言って取り出したのは、
    かすかに脈打つように光るスカイグレーの宝石。

    ヨイチとタビトがぴたりと寄ってきて、くんくんと匂いを嗅いだあと、小さく「ニャ」と鳴いた。


    冴「猫が反応してる……。これで4つか、多分なにかの条件が揃ったな」


    凪「俺のは……これ、変なプレート。No.05って書いてある。前に見たのと似てるけど……なんか、組み合わせるのかも」

    そう言って取り出したのは、漆黒の艶を持つ金属プレート。凪の手の中で、わずかに温度があるかのように感じられた。
    レオは一度だけ「ニャァ」と高く鳴き、凪の隣にぴったりと座った。

  • 56スレ主25/06/05(木) 10:34:09

    凛「……俺は、これを見つけた」

    凛が読み上げたのは、記録の断片──
    《メモログ:B17号・最終観察記録》。

    凛「“夢の断片”を集めてたって書いてある。しかも、“顔のない医師”ってやつの記録まで混ざってて……最後に、こう書いてあった。“次は、きっと“あの子”が壊れる”……って」

    冴「“あの子”……な。誰のことだ?」

    凛「わからねえ。けど、ここの空気、なんか……変だったよな。あのマネキン、今も揺れてるし」

    千切「うん……今までの部屋と、なんか違う……」

    天井を見上げると、マネキンは今もわずかにギィ……ギィ……と、ゆっくりと軋んでいた。


    冴は、猫たちの様子をちらと見た。
    三匹とも、不自然に沈黙している。

    鳴かない。動かない。
    ただ、何かを察知したように、扉の方向とは逆──部屋の奥へ視線を向けていた。


    冴「……来るな。たぶん、また“何か”が」

    凪「……ま、休んだし。まだ、動けるよ」

    凛「来るなら──迎え撃つだけだ」

    千切は拳を握りしめ、いつでも動ける体勢を整えた。

  • 57スレ主25/06/05(木) 11:36:15

    その時、天井のマネキンが――“落ちた”。


    凛「……!」

    ゴン、と耳障りな音を立て、頭部が床に転がる。
    その瞬間、空間そのものが反転したような違和感が、部屋中に満ちた。

    ヨイチが低く唸る。
    タビトは背を丸め、千切の脚にしがみつく。
    レオも凪のそばで静かに毛を逆立てた。


    千切「……今の、音……」

    冴「何かが、下から来る」

    ほんの僅かに。
    床の隙間から、“黒い指”が突き出ていた。

    床を破って出現したのは──
    人の形をしていた“何か”。
    ただし、顔があるべき場所には“穴”しかなかった。


    凛「……これ、“最初から顔がなかった”のか」

    その身体は、粘土のようにぐにゃりと歪みながら、立ち上がる。
    ひどく長い手足、濡れたような皮膚。
    全身を包むように、無数の拘束具の残骸が絡みついている。

  • 58スレ主25/06/05(木) 11:46:34

    冴「これが……B20号」


    その姿は、かつてNo.16の記録に断片的に現れた“記憶の混濁”の残滓とも思える。


    ──B17が「次はあの子が壊れる」と記した“あの子”。



    凪「……あれ、“誰か”になろうとしてる」


    動きは遅い。だが確実にこちらに向かってくる。

    その度に、空気が揺れる。


    見ているだけで、“自分”が曖昧になっていく。



    冴「……こいつは、“記録に残すことさえ拒絶された”存在だな」


    凛「来るぞ……!」



    【隔離居室A】《断絶の胎動:B20》

    (4回攻撃成功で討伐完了/60以上で攻撃成功)

    千切:dice1d110=108 (108)

    凪:dice1d110=20 (20)

    凛:dice1d110=32 (32)

    冴:dice1d110=79 (79)

    ※B-1病棟怪異に対する:+5補正

    ※B20の情報入手:+5補正

    ※100特典:+10(ダイス値に応じて温存可能)

  • 59スレ主25/06/05(木) 12:08:44

    【戦闘開始】7:00
    【冴の固有能力:断罪の策略──発動】
    【千切豹馬:100特典付与(今回は温存)】


    冴が、静かに一歩踏み出す。


    冴「……混ざりすぎだ。何が見たい、何を見せたい」

    淡々と吐き捨てた声とともに、冴の身が加速する。
    踏み込みと同時、身体の動きは迷いなく、
    真っ直ぐにその“中心”を貫く。


    ──一閃、そしてもう一撃。

    冴の蹴りが、怪異の深部を撃ち抜いた。
    “それ”の内部から響くような音が、
    空間の奥で微かに震えを起こす。


    冴「俺はどっちでも構わない。終わらせるだけだ」

  • 60スレ主25/06/05(木) 13:26:15

    だが続く攻撃は、怪異の変質に惑わされた。
    姿が滲むたび、“そこにいるはずのもの”が消えていく。

    凪が、斜めから狙いを定めたが──


    凪「……動きが、読みづら……」

    視線を逸らした一瞬、
    触れたはずの位置に影はなかった。

    踏み込んだ足元から“皮膚のような膜”が膨らみ、
    寸前で跳躍して離脱する。


    凛は逆方向からの接近を試みる。
    瞳に静かな決意を灯し、タイミングを見計らうが──


    凛「……ちっ、さっきより動きが速い……っ!」

    手にした器具が空を切る。
    “それ”は一瞬だけ凛の顔に似た何かに変貌し、
    凛は反射的に後退した。

  • 61スレ主25/06/05(木) 13:30:10

    そして──千切。


    一瞬遅れて走り出した千切は、

    他の3人とは違う動線から斬り込む。



    千切「行くぞ……っ、そこだッ!!」


    “仲間のピンチ”という事実が、脚に最大の加速をくれる。

    疾風が床を切り裂き、千切の身体が光の残像のように空間を駆ける。


    ──叩き込まれた回し蹴りが、

    怪異の“中心核”に命中した。



    B20が姿を崩し始めた。


    液状の影が床を這い、壁を這い、

    天井からさえ降りてくる。



    【隔離居室A】《断絶の胎動:B20》

    (1回攻撃成功で討伐完了/60以上で回避成功)

    千切:dice1d110=30 (30)

    凪:dice1d110=98 (98)

    凛:dice1d110=103 (103)

    冴:dice1d110=98 (98)

    ※B-1病棟怪異に対する:+5補正/B20の情報入手:+5補正

    ※100特典:+10~30(ダイス値に応じて温存可能)/100特典:ファンブルを失敗に変換(ダイス値に応じて温存可能)

  • 62二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 13:41:56

    全体的に数値高くて良い感じだね
    100超えが2人出てるのもすごいし100超えてない2人も近い数値まで行ってる

  • 63スレ主25/06/05(木) 14:31:25

    >>62 110にするだけで結構変わりますね…。


    ここでは敢えて100特典、クリティカル特典を温存します(SAN値減少無効で防ぎます)。スレ主の書き方が悪くて申し訳ないのですが、A-7と地下では凛ちゃんと兄ちゃの固有能力【記憶の継承者たち】 は使えません(最終戦=A-7通路と地下と書きたかったんですがややこしくなりました)。

    できるだけ特典は温存します!

  • 64スレ主25/06/05(木) 16:38:37

    【回避開始】7:00
    【千切豹馬:《マインドクレスト》使用によりSAN値減少無効化】


    先に動いたのは凪だった。


    凪「……来るよ」

    背後から走る“脈動”を察知した瞬間、
    体をひねり、足元に滑り込むように離脱。

    猫のレオも凪に続いて器用に飛び退いた。


    凪「……うん。今のは、ヤバかったね」

    その瞳は、まだ冷静に怪異を追っていた。


    続いて凛が身を翻す。

    凛「……ふざけんじゃねえ」

    一瞬、視界の端に“自分と似た何か”が揺れた。
    だが凛は振り返らず、
    床を蹴って壁際へと素早く移動する。

    その動きはまるで、
    危機の先を読むような正確さだった。

  • 65スレ主25/06/05(木) 16:40:53

    冴も無言で距離をとる。

    空気の圧に合わせ、身体の重心を流すように移動。

    “斬る”のでも、“受ける”のでもない。
    ただ、“かわす”。

    その所作はどこか静かで、
    そして研ぎ澄まされていた。


    冴「──もうちょっと暴れてろ」


    だが──千切は、避けきれなかった。

    身体が先に反応したにも関わらず、
    空間の“歪み”に足を取られる。

    気づいたときには、怪異の一部が腕を伸ばし、
    千切の胸元へと迫っていた。

  • 66スレ主25/06/05(木) 16:42:07

    千切「──ッ……!」



    その直後──千切のポーチで、

    鈍い金属の十字型プレートが光を放つ。


    《マインドクレスト》が、“精神への侵蝕”をかき消した。


    暖かさが、わずかに千切の目を覚ます。



    千切「……ありがとな」


    ふと、その場に踏みとどまる。


    負けるわけにはいかない、と──

    千切は拳を握った。



    怪異の“中心核”は既に露わになっている。

    その歪んだ身体から、滲むような液体が床に滴っていた。



    【隔離居室A】《断絶の胎動:B20》

    (1回攻撃成功で討伐完了/60以上で攻撃成功)

    千切:dice1d110=6 (6)

    凪:dice1d110=85 (85)

    凛:dice1d110=43 (43)

    冴:dice1d110=34 (34)

    ※B-1病棟怪異に対する:+5補正/B20の情報入手:+5補正

  • 67スレ主25/06/05(木) 16:58:57

    【戦闘開始:2回目】


    異形の“それ”が呻き声を上げた。
    揺れるような肉塊の中心で、何かが脈打つ。

    まだ息がある。


    千切が駆ける。けれど、視界が歪んだ。


    千切「クソッ、また……」

    幻視。重なる声。
    さきほどの影響が少し残っているのか──
    走り出した脚が、床を捉えきれない。

    歯を食いしばりながらも、
    千切はあと一歩、届かなかった。


    凛も、構えた。

    凛「……ッ、クソが…!」

    目の前で一瞬“誰かの顔”が揺れた。
    否応なく身体が止まる。

    拳は、寸前で空を切った。

  • 68スレ主25/06/05(木) 17:01:41

    その隙を縫うように──凪が、静かに踏み出す。


    凪「……じゃあ、俺がやるね」

    その声音には、焦りも怒りもない。
    ただ、絶対に外さないと決めた者の集中だけがあった。

    凪の足元を、レオが鳴きながら駆ける。


    飛び出すその一撃──
    まるで、光を断つ風のように、鋭く静かだった。

    異形の中枢が、確かに揺らいだ。

    怪異が痙攣する。
    骨とも肉ともつかないものがひび割れていく──


    だが──


    冴「まだだ」

    低く通る声。
    最後の詰めを逃さないのは、やはりこの男だった。

    冴が、崩れかけた怪異の前に立つ。

  • 69スレ主25/06/05(木) 17:02:15

    冴「“とどめ”ってのはな──こうやって刺すんだよ」

    その手に、力が込められる。


    ──【断罪の策略】発動。

    構えた足から流れるように踏み込んだ瞬間、
    冴の掌底が“核”にめり込んだ。

    砕ける音。
    まるで、内側から結晶が割れるような異音。


    それは、崩れた。

    自らが模した“人の形”も、“認識の仮面”も、
    すべて──床へと溶けるように消えていく。


    残ったのは、静けさと、奇妙な温度。
    空間が、ひとつ息を吐いたようだった。

  • 70スレ主25/06/05(木) 18:17:53

    戦闘の終わった室内には、
    かすかに金属の擦れる音だけが残っていた。


    怪異が崩れ落ちたその場所──
    そこに、何かが落ちている。

    冴が警戒を解かず、足を踏み出す。
    凛がその後ろに続いた。


    凛「……これ、鍵か?」

    破損した床の一角、微妙な角度で沈み込んだ箇所に埋もれていたのは、小型のセキュリティデバイスだった。

    角ばった構造に、赤黒のラベル。
    そこに印字された文字が、冴の目に入る。


    冴「“院長室”……ふーん。やっと中に入れそうだな」

    それは──《院長室のセキュリティキー》。
    かつて記録の中で示されていた、
    2階に存在する“端末”と、何かを繋げる鍵。

  • 71スレ主25/06/05(木) 18:20:31

    そしてもう一つ。

    凪が床を見下ろすと、何かが静かに光っていた。


    凪「……また、これか」

    指先で拾い上げたそれは、
    黒く艶のある小型のプレート。
    中央に「No.07」とだけ刻まれている。


    千切「いくつかあるってことは……、集めたらなんかいいことあるんじゃね?」

    凪「勿体ぶらないで全部一気に出せばいいのに…」

    凪がレオの鳴き声に軽く目を向けながら、
    ぽつりと呟く。


    凪「……めんどくさそうだけど、便利だね。ね、レオ」

    かすかに光を帯びるプレートと、
    重たく沈んだセキュリティキー。

    いずれも、これからの探索に確かな手がかりをもたらすはずだった。

  • 72スレ主25/06/05(木) 19:31:43

    無音だった扉の前に──微かな音が響いた。


    千切「……ん?」

    ヨイチとタビトが、カリカリと扉を引っ掻いている。その小さな爪が金属に触れるたび、不思議なリズムで音が重なる。
    レオも数歩前に出て、鳴かずにじっと扉を見上げていた。


    凪「……開けてほしいって感じ?」

    千切「……もしかして、外……何かいる?」

    ピン、と空気が張りつめるような気配の中で、
    冴が静かに扉に手をかけた。


    冴「開けるぞ。猫たちが反応してるってことは……」


    ──ギイィ……。


    錆びた音とともに扉が開いたその先に、
    一匹の“新たな猫”が、ぬるりと視界に入った。

    黒く艶のある毛並みに、青緑色の瞳。
    他の猫よりも小柄で、ほとんど鳴かない。

  • 73スレ主25/06/05(木) 19:32:39

    千切「わっ……!また、猫……!?……今度の子、ちっちゃ……!」

    目を丸くした千切がしゃがみ込み、
    嬉しそうに猫へと手を伸ばす。

    猫は逃げもせず、静かに千切を見つめていた。

    レオが近寄り、しっぽを絡めるようにくるりと回る。
    ヨイチ、タビトも自然と歩き出し──


    凪「……行くんだね。4匹で」

    猫たちは、音も立てずに廊下を歩き始めた。

    それぞれが扉の向こうを確かめながら、まるで、何かを“見届けさせよう”としているように。


    千切「……よし、行くか。ついてけば、きっと大丈夫だ!」

    凛「油断はしねえ。けど……頼りにはなる、猫たちだ」

    冴「……行こう。先に進まなきゃ、“あいつら”に、追いつけない」


    廊下の先で待つ猫たちが、ちらりと振り返る。

    それはまるで、「ちゃんとついてこい」と言っているようだった──。

  • 74スレ主25/06/05(木) 19:59:19

    長い廊下を、猫たちが先導する。

    ヨイチが静かに歩き、タビトがその後を追い、
    レオが凪の足元を横切る。
    新たな小柄な猫も、ぴたりと千切の隣を歩いていた。


    凪「ねえ、猫の名前なんだけど」

    凛「……ああ、そういえば、まだ名乗ってないよな」

    冴「名乗るタイプじゃないだろ、猫は」

    千切はふと歩みを止め、
    その黒い毛並みと青緑の瞳をまじまじと見つめた。

    そして、笑いながら言う。


    千切「ヨイチ、タビト、レオ……ときたらさ。やっぱ、“イッキ”だよな!」


    その瞬間──


    「……ニィ」

    低く控えめに、その猫が一声だけ鳴いた。
    まるで、返事をしたかのように。

  • 75スレ主25/06/05(木) 20:01:16

    凪「……今の、肯定……?」

    冴「賢い猫だな。名前、気に入ったらしい」

    凛「四匹目──“イッキ”、か」

    そう呟いた時には、
    猫たちは既に廊下の角を曲がっていた。


    ──そして、猫達が辿り着いたのは、
    裏手にある非常階段へと続く、鉄製のドアだった。

    壁に取りつけられた古びたスチールの扉。
    プレートには灰色の文字で、こう記されている。


    《屋上通路:封鎖中》

    《解除キー:通路区画K-4を通過した者に限り解放》

    その条件は、今の四人にとって──
    すでに満たされていた。


    冴がゆっくりとポーチから鍵を取り出す。

    《R-FL:TERRACE》と刻まれた《屋上通路の鍵》。
    金属製の重たい感触が、手のひらに冷たく伝わる。

  • 76スレ主25/06/05(木) 20:18:30

    冴「……行くぞ」


    ──カチリ。

    鍵が回る音と同時に、
    内部のロックが解除された音が響いた。

    扉は、まるで待ちかねたように、
    重々しく、ゆっくりと──開き始める。


    ──ギィィィ……バタン。

    重たい音を立てて扉が閉まる。
    直後、冷えた空気が肌を撫でた。


    千切「……うわ、外、だけど……なんか空気、変じゃね?」

    その声に応えるように、ヨイチとタビトが足元をすり抜けていく。
    小柄なヨイチがぴたりと千切の隣に座り、
    タビトはフェンス際まで歩くと一声、低く鳴いた。


    凛「外なのに、外って感じがしねえ……濁ってる。空も、風も」

    フェンスの向こうを見つめた凛の目には、
    どこまでも広がる暗雲と、鈍色の世界。

  • 77スレ主25/06/05(木) 20:20:09

    冴「……見えるもんは空でも、ここが“外”とは限らねぇってことだ」

    イッキが足元にぴたりとくっつき、控えめに「……にー」と鳴く。
    冴はしゃがんでその頭を軽く撫でながら、ふっと目を細めた。


    凪「まあ、どこにいてもやることは同じ……ってことでしょ」

    レオは静かに凪の横に並び、尻尾を揺らしながらじっと周囲を見回している。その瞳の奥には、警戒と静かな興味の両方が宿っていた。


    千切「……でも、ちょっとだけ、ほっとした」

    凛「……ああ、なんかわかる」

    冴「一瞬の油断が命取りだけどな」

    凪「でも、猫がいるからたぶん平気」

    冴「お前の基準、ほんと自由すぎるな」


    そんな会話が、濁った風に乗って、
    ぽつぽつと屋上に流れていく。
    誰も笑っていないのに、どこか和やかだった。

  • 78スレ主25/06/05(木) 20:30:53

    【屋上エリア】


    ①中央設備ボックス周辺
    何者かがこじ開けたような跡あり。中から低い電子音が断続的に響いている(異常発生リスク(中))

    ②排気口ダクト付近
    一部の排気口が塞がれ、内部に何かが引きずり込まれたような痕がある(異常発生リスク(中))

    ③屋上ヘリの足場周辺
    足跡が不自然に乱れており、明らかに“誰かが立ち止まっていた”形跡(異常発生リスク(小))

    ④屋上物置:扉の裏側
    小さな金属扉が半開きになっている。内部に資料箱のようなものが積まれている。(異常発生リスク(小))

  • 79スレ主25/06/05(木) 20:32:47

    ※ご報告です。屋上と院長室は固有能力で怪異と戦わないので、精神異常が発生しない仕組みとなります。

  • 80スレ主25/06/05(木) 20:51:02

    屋上の風が、服の裾をはためかせる。

    鈍色の空に包まれながら、
    4人と4匹の猫たちは周囲を見渡した。


    千切「なぁ、あそこ──物置の扉、ちょっと開いてる。中に何か入ってんじゃね?」

    フェンス際の④物置に視線を向け、足早に近づいていく。
    小柄なヨイチもつられるようについていった。


    凛「……機械音がする。あの設備ボックス、勝手に動いてるな」

    ①低い電子音が響く方へ、凛が眉をひそめる。
    タビトが一声、警戒するように鳴いた。


    凛「ま、見てやるか」

    そう言って、薄く笑う。

  • 81スレ主25/06/05(木) 20:52:15

    凪「……この足跡、変だね」

    ③屋上ヘリに並んだ乱れた足跡を見て、凪がしゃがみ込む。
    レオがその隣で静かに尻尾を揺らし、足跡の先をじっと見つめていた。


    凪「立ち止まっただけにしては、なんか違う気がするな……」


    冴「塞がれたダクト……何かが“引きずられた”ように見えるな」

    目を細め、②金属板の歪みに指先を添える。
    そのすぐ近くで、青緑の瞳の猫イッキが小さく鳴いた。


    冴「……見てみるか」

    それぞれが静かに、目的地へと歩みを進めていく。

  • 82スレ主25/06/05(木) 20:57:46

    【屋上探索:①中央設備ボックス周辺・糸師凛】
    【探索開始】7:00


    凛は風に髪をなびかせながら、
    屋上中央に設置された金属ボックスへと歩を進めた。

    ごく普通の配線収納設備──のはずだったそれは、明らかに“無理矢理こじ開けられた”痕を残している。

    鋭利な何かで削り裂かれたような縁。
    中からは、低く、断続的な電子音が──キィ……、ギ……と不規則に鳴っていた。

    タビトがその音に反応し、
    鳴きながら凛のすぐそばに寄り添ってくる。
    凛は無意識にタビトを一瞥し、ふっと鼻で笑った。


    凛「……お前も気になるのか。いい耳してんな」

    金属の匂いと、微かな焦げ臭さが鼻腔を刺激する。

    内部には複数のコードが絡み合い、制御基盤のようなパネルが見え隠れしていた。
    だが、そのいくつかは焦げて変形している。

    動作しているはずのない設備が、なぜか今も微かに稼働している──それが、違和感の正体だった。

  • 83スレ主25/06/05(木) 20:59:36

    凛「……“夢の中”の病院ってんなら、こいつは……まさか“まだ生きてる”ってか」


    つぶやきは風に流されて消えた。

    だが、目の前の設備は、まるでその言葉に応じるように──キィィィ……ン……という、耳鳴りにも似た音を立て始めた。


    タビトが短く「アオゥ」と鳴き、

    凛の足元にすり寄る。



    凛「……ああ、わかってる。下がっとけ」


    背後をちらと振り返る。

    遠く、冴の姿が視界に入りかけたが──

    凛の視線は再び、設備の中へと注がれた。



    凛「さて、何が出てくる」


    その目に浮かぶのは、

    ほんのわずかな期待と……明確な警戒。


    凛の指先が、

    こじ開けられたパネルの隙間へと伸びる──。



    異常発生リスク(中)

    dice1d110=8 (8)

    (1〜40:大失敗 41〜65:失敗)

    (66〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 84二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 21:05:50

    凛ちゃんさん?!

  • 85スレ主25/06/05(木) 21:09:45

    >>84 凛ちゃんココ最近は、探索大失敗しては、兄ちゃに声かけられて再試行で成功してるんですよね…。

  • 86スレ主25/06/05(木) 21:13:28

    【冴の固有能力:最適解──発動】


    凛の指先が、
    こじ開けられたパネルの隙間へと届こうとした──
    その瞬間。


    冴「……凛。慎重にいけよ」

    唐突に背後から響いた兄の声に、
    凛の動きがぴたりと止まる。
    タビトが足元で、小さく「ニャゥ」と鳴いた。


    凛「……うん、分かってる」

    振り向かずに応えるその声には、
    どこか熱の抜けた柔らかさが宿っていた。

    風が再び吹き抜ける。
    鈍色の雲の切れ間に、わずかに差し込む薄光。

    凛は一歩後ろに引き、改めて金属ボックスの構造を見直した。
    焦げたパネル、脈打つような電子音、そして、内部でちらつく何か。

  • 87スレ主25/06/05(木) 21:14:43

    目を細め、回り込む。

    焦げ跡の裏側、見えにくい奥の端──そこに、保護カバーの外れかけた小さなアクセスパネルがあった。


    冴の声が背後で再び静かに届く。



    冴「焦らず、ゆっくりだ」


    凛「言われなくても」


    そう言って、

    凛はゆっくりとしゃがみ込み、片膝をついた。

    慎重に、その隙間へと指先を差し入れていく。


    カチリ。


    軽い手応え。内部の何かが外れた──

    この空間に満ちる緊張が、少しだけ緩んだ気がした。



    異常発生リスク(中)

    dice1d110=58 (58)

    (1〜40:大失敗 41〜65:失敗)

    (66〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 88スレ主25/06/05(木) 21:30:29

    【再試行失敗】7:00
    【SAN値-2:24→22】


    覗き込んだアクセスパネルには、焼け焦げたコードの束と、赤黒く変色した基盤のようなものがあり、その一部が、脈打つようにわずかに光っている。
    電子音は、ここから発されていたらしい。

    凛が指を伸ばす。


    その時──


    ギギギギギ……ギチ……キィ……ィィ……

    突然、電子音が変調した。
    耳を劈くようなねじれたノイズが、凛の鼓膜を直撃する。
    背後のタビトが一歩後ずさり、「ンニャッ!」と鋭く鳴いた。


    凛「っ……、くそ、なに──」

    目の前の基盤が、
    一瞬だけ“生きている”ように見えた。
    焦げた表面が脈動し、光が脳裏に焼きつく。

  • 89スレ主25/06/05(木) 21:31:44

    ──何かが、こっちを見ていた。

    ほんの一瞬。視界の端に──
    自分の“顔”をした何かが、反射パネルの奥でこちらを覗き込んでいたような錯覚。


    凛「……は……、っ」

    思わず一歩、後退した。
    背筋に、ざらりとした寒気。
    息が詰まりそうになる。胸の内に、黒く濁った何かが、そっと忍び込んできた感覚。


    冴「凛、大丈夫か」

    凛「……平気。……ちょっと、ビビっただけ」

    その声に応えながら、
    しかし凛の手は、震えをわずかに帯びていた。


    あのパネルの奥に──
    “まだ何かがいた”気がして、目を逸らせない。

    脳裏に残った光の痕跡が、
    じわじわと視界に焼きついていた。

  • 90スレ主25/06/05(木) 21:58:10

    【屋上探索:②排気口ダクト付近・糸師冴】
    【探索開始】7:00


    ──カツ、カツ……。

    鉄製のグレーチングを踏みしめながら、
    冴は屋上西側の排気口ダクトへと向かっていた。
    その足元には、イッキが静かに寄り添って歩いている。


    冴「……塞がれてるな、ここ」

    並ぶダクトの一部が、
    まるで“内部から”盛り上がったように歪んでいた。
    何かが無理やり外へ出ようとした痕──
    いや、“中へ引きずり込まれた”ようにも見える。

    近づくたびに、金属の腐食臭が強まる。
    風が吹くたび、かすかに焦げ臭いような酸味のある空気が鼻を掠めた。

    冴は片膝をつき、歪んだ排気口の縁を手で撫でる。
    その手つきは冷静で、どこか慣れているようですらあった。

  • 91スレ主25/06/05(木) 21:59:32

    冴「……何かが通った跡。しかも、でかいな……」


    イッキが小さく鳴く。排気口の内部を覗き込むように、じっと目を細めていた。



    冴「お前も気になるのか」


    冴もまた、排気口の影をじっと見つめる。

    中は暗く、風の流れもほとんど感じられない。

    ただひたすらに“よどんだ”空間。


    ふと、背中に悪寒のような感覚が這い上がる。


    振り向いても誰もいない。仲間たちの気配も、遠い。

    それでも、このダクトの“奥”には、確実に何かがいる。


    冴はその気配を拒絶せず、むしろ静かに向き合うように息を吐いた。



    冴「……じゃあ、見せてもらおうか」


    言葉と共に、冴は手を伸ばす。

    歪んだ排気口の中へ、冷静な指先が入り込んでいく。



    異常発生リスク(中)

    dice1d110=27 (27)

    (1〜40:大失敗 41〜65:失敗)

    (66〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 92スレ主25/06/05(木) 22:12:57

    出目が相変わらず極端で、どうするか常に悩みます。本日はここまでです。残りはあと9部屋+αです。
    アイテムやら色々足りるかなーと心配ですが、上手いこと調整したいと思います。
    また明日、よろしくお願いします(次作の準備も順調に進んでおりますので、引き続きよろしくお願いします)。

  • 93二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 01:31:45

    やっぱボーダーが高くなってきてるからなかなか厳しい戦いだ 頑張れ4人+4匹!!

  • 94二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 03:45:09

    今日もお疲れ様!
    猫ちゃんも揃っていよいよ佳境に入ってきたね
    まだまだ油断できない状況は続いてるけど無事に切り抜けられるよう応援してるよ
    今作の続きも次回作もどっちも楽しみだ

  • 95スレ主25/06/06(金) 09:51:05

    >>93 ありがとうございます!これからまた更に厳しくなります…!

    >>94 ありがとうございます!奪還編なので絶対に全員揃って帰還させたい…!まずはしっかり今作を紡いで行きますね。


    おはようございます。本日もよろしくお願いします!

  • 96スレ主25/06/06(金) 10:50:50

    【探索失敗】7:00
    【大成功特典+15を使用し、失敗に変換】
    【SAN値-2:22→20】


    ──ガキンッ……!

    金属音が跳ねた。
    手を入れた瞬間、
    冴の指先に“何か”が擦れたような衝撃が走った。


    冴「……っ、クソ」

    鋭く吐き捨てて腕を引く。
    手の表面がざらついた灰に汚れていた。

    ──それは単なる汚れではない。
    “中”の空気が、明らかに違っていた。

    排気口の奥から、ふわりと風が逆流する。
    それは風ではなく、
    “吐息”のような……湿った、濁った何か。

    イッキが唐突に背を丸め短く鳴いた。
    それと同時に、ダクトの影で“何か”が揺れた。

  • 97スレ主25/06/06(金) 10:52:10

    冴「……ッ」

    闇の奥、こちらを“見ていた”気配。
    いや、気配すらない、“空白”がそこにあった。

    視線を逸らそうとしても、脳裏に残る──
    “暗闇の奥で口を開けていたもの”の、形のない映像。


    冴「……チッ、クソ、ああもうウゼぇな……」

    小さく舌打ちし、手を振って汚れを落とす。
    が、視界の端にまだ“何か”の残像が揺れていた。

    イッキが不安げに冴の足元に身を寄せ、
    「にー……」と鳴く。


    冴「……わかってる。引くぞ、イッキ」

    ダクトの前から距離をとりながら、冴は後退していく。後頭部の内側で“誰かの囁き”が、一瞬だけ混線のように響いた──。


    ──『……まだ、足りない……』


    声の正体はわからない。

    背を向けたまま、冴は片目を閉じる。
    その瞳の奥には、わずかに疲労の色が滲んでいた。

  • 98スレ主25/06/06(金) 11:36:06

    【屋上探索:③屋上ヘリの足場周辺・凪誠士郎】
    【探索開始】7:00


    屋上の縁、胸ほどの高さのフェンス。
    そのすぐそば──足元のコンクリートには、
    いくつもの不自然な“足跡”が残されていた。


    凪「……ここ、なんか立ってたんだね」

    ぼそりとつぶやきながら、凪はしゃがみ込む。
    猫のレオが隣で静かに身を伏せ、目を細めた。


    凪「足の形が……揃ってない。左右のサイズが違う」

    左の靴跡は薄く、右の跡はやけに深い。
    しかも、土踏まずがない。

    ──“誰か”が、ここでじっとしていた。
    何かを見ていた。

    コツ、コツ、と指先で跡の縁をなぞる。
    斜め後ろには、金属製のフェンスが続いている。

  • 99スレ主25/06/06(金) 11:36:55

    凪「これ……立ってたの、人間じゃないかも」


    顔を上げると、灰色の空が重たくのしかかる。

    ここからなら──病院の“外”が見える。


    外の世界。まだ知らない現実の風景。



    凪「……ねえ、レオ。こういうの、知ってた?」


    ぽつりと尋ねる声に、

    レオは「……にゃ」と小さく鳴いて答える。



    凪「……うん。俺も知らなかったよ」


    深く息を吸って、凪は立ち上がる。


    目の前に広がるこの足跡の“意味”──

    それを確かめるように、一歩、前へ踏み出した。



    異常発生リスク(小)

    dice1d110=87 (87)

    (1〜35:大失敗 36〜60:失敗)

    (61〜80:成功 81〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 100スレ主25/06/06(金) 12:14:46

    【探索大成功】7:00


    屋上の端、風が渦巻くフェンス際。
    不自然に乱れた足跡の中で、
    凪は立ち止まり、目を細めた。


    凪「……なんか埋まってる」

    傍らの猫──レオが一声「にゃ」と鳴いた瞬間、足元のパネルの隙間がわずかに浮き、カコン、と小さな金属音が鳴る。

    凪がしゃがみ込んで手を差し入れると、そこには古びた箱と、ガラス瓶がひとつ隠されていた。

    中には、一連の記録とメモが丁寧に封じられている。


    《メモログ:院長室秘匿記録》

    『現在、院長室にいる人物は、“正式な院長”ではない』

    『「No.16」は院長代理任用候補に過ぎず、病院中枢と接続された“記録再現体”』

    『端末は、あくまで“院長の夢”を再現しているにすぎない』

    『本来の院長は、“地下”に自ら降り、“ある観察対象”を見届ける選択をした』

  • 101スレ主25/06/06(金) 12:15:55

    凪「へえ……じゃあ、ほんとの“管理者”は……」

    凪の言葉に応じるように、
    レオが小さく喉を鳴らした。


    その視線の先──
    箱の中には、ほのかに輝く深い琥珀色のガラス瓶がひとつ。


    凪「……ありがと、レオ」

    軽く頷きながら瓶をポーチへと収め、
    凪は再び風の中へと視線を戻した。


    ■入手アイテム
    ・《ディープ・ステイシス》×1:SAN値+4回復(2つ目)

  • 102スレ主25/06/06(金) 12:23:29

    【屋上探索:④屋上物置・千切豹馬】
    【探索開始】7:00


    千切「よし、じゃあ俺は……あっち、行ってみっか」

    屋上の一角、フェンスの近くに位置する古びた物置。
    扉は半開きになっており、わずかに軋む音が風に混ざっている。

    千切が歩み寄ると、足元からヨイチが静かに寄り添ってきた。
    千切の足元にぴたりとつき、カリカリと爪で地面を掻くように鳴く。


    千切「ふふっ……ヨイチも気になるんだろ?」

    ヨイチは静かに目を細めて物置の中を見つめていた。

  • 103スレ主25/06/06(金) 12:24:12

    扉の隙間から、錆びた空気が微かに漏れてくる。

    内部は思ったよりも狭く、金属製の棚や資料箱らしきものが乱雑に積まれているのが見えた。



    千切「中、なんか詰まってんな……でも、この感じ──ただの物置じゃなさそうだな」


     

    風が一瞬だけ強く吹き抜け、

    開きかけた扉をガタン、と揺らす。


    千切は片手を扉に添え、

    そっと中を覗き込むように身をかがめた──



    異常発生リスク(小)

    dice1d110=103 (103)

    (1〜35:大失敗 36〜60:失敗)

    (61〜80:成功 81〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 104二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 13:03:42

    猫との関係値の差が大成功と大失敗の結果に反映されててやはり女神は原作を理解しているな

  • 105スレ主25/06/06(金) 14:42:57

    >>104 廃遊園地と廃病院、関係のあるキャラにすれば良かったと少し後悔です…。凛ちゃんと兄ちゃはどうしようもないので、頑張ってタビトとイッキと仲良くなってもらいます!

  • 106スレ主25/06/06(金) 15:31:15

    【探索大成功】7:00


    千切がそっと扉を押し開けると、鈍い軋み音が鳴った。
    その瞬間──まるで何かを待っていたかのように、
    棚の隙間から冷気が抜ける。


    千切「……うわ、なんだこの空気……変な、湿気……?」

    ヨイチはピタリと動きを止め、
    棚の下の一点をじっと見据えている。


    千切「そこ……なんかあるのか……?」

    半壊した資料棚の裏、
    隠すように置かれていた古い金属箱。

    慎重に手を伸ばし、埃を払いながら開けると──
    中に収められていたのは、黒革のポーチに収められた十字型のメタルタグだった。

  • 107スレ主25/06/06(金) 15:31:59

    千切「これ……装飾?いや……違うな」

    触れた瞬間、タグの中央がうっすらと温かくなり、
    心の奥にまで染み込むような微弱な鼓動が伝わる。


    千切「……守ってくれんのか? お前……」

    ポーチにそれを収めると、
    風が一度だけぴたりと止まった。

    ヨイチが小さく「にゃ」と鳴き、
    頭を擦り寄せるように身を寄せてくる。


    千切「ありがとな。……これで、もうちょい頑張れそうだ」


    ■入手アイテム
    ・《ペイルミリオン・コード》×1:探索・戦闘における【大失敗(ファンブル)】および【失敗】時のSAN値減少および精神異常を1回のみ完全無効化する。

  • 108スレ主25/06/06(金) 16:53:52

    ──風が、鈍く唸りながら流れていく。

    4人と4匹の猫たちは、
    屋上の一角で短く、静かに足を止めていた。

    風を避けるようにして、
    レオが凪の足元で静かに伏せる。
    その動きに合わせて、タビトも凛の背にぴたりと寄り添い、ヨイチが千切の膝に前足をちょこんと乗せた。
    イッキは一歩遅れて、冴の横に座り込み、空を見上げている。


    凪「……屋上にも、情報あったよ」

    ポケットから取り出したのは、琥珀色の液体が入った瓶と、端末から抽出したログデータ。


    凪「これ、院長室の記録。“今いる”院長ってのは、本物じゃないらしい」

    凪「No.16……夢の再現体。“記録を再生してるだけ”の存在。だから、全部の端末も夢の続きってことになる」

    千切「じゃあ……“本物”は……?」

    凪「地下。……自分の意志で降りて、何かを見届けてる。観察対象……何かは分かんないけど」

    冴「……自分の夢を再生する病院と、それを夢のまま操るNo.16、そして得体の知れない院長、か」


    イッキが「……にー」と小さく鳴いた。

  • 109スレ主25/06/06(金) 16:54:49

    千切「俺はこれ、見つけた」

    そう言って、ポーチから取り出したのは銀灰色の十字型のタグ。淡く光を反射するその金属片は、なぜかじっと見ているだけで、心が少しだけ落ち着くような錯覚すら与えてくる。


    千切「《ペイルミリオン・コード》。触ったら、なんかちょっと……あったかくて」

    千切「……“お前は大丈夫だ”って言われた気がした」

    タビトが「にゃ」と高く鳴き、ヨイチが喉を鳴らしながら千切の足元をくるりと回る。


    凛「変な名前だけど、悪くないな、それ」

    冴「ああ。──お前によく似合ってる」


    風が再び吹き抜ける。
    空は鈍く、曇天のまま。

    だが、それでも彼らはわずかな手がかりを胸に、
    確かに前を見ていた。

  • 110スレ主25/06/06(金) 17:10:49

    ──カチリ。

    誰かが心の奥で、
    何かを噛み砕いたような感覚が走る。


    直後。
    屋上の空気が──沈み込んだ。

    音もない。風もない。
    ただそこにあるのは、“重さ”そのもの。
    気圧の変化ではない。

    これは──空間全体を包む、異質な“圧”。


    千切「……っ、また……来るのかよ」


    ヨイチが低くうなるように、
    「……ゥ……」と鳴き、身を低く構える。

    凪の隣ではレオが毛を逆立てて、
    鋭く一点を睨みつけている。

    イッキは一歩、冴の前へ。

    タビトは、凛の背にそっと身を寄せた。

  • 111スレ主25/06/06(金) 17:12:51

    ──そして。


    「……ボクヲ、ボクヲ……ボクヲ……」

    「……ワスレナイデ……」


    ノイズを混じえた“声”が、歪む空間に響いた。


    屋上のフェンスの端。
    そこに“それ”は現れていた。

    ヒトの形をしていた。だが──
    肘の位置が異常に高く、
    首は右に傾いたまま戻らない。

    顔には“穴”のようなものしかなく、
    内部から何かが渦巻くように動いている。


    かつて、誰かだったのかもしれない。

    だが今はただ、“忘れ去られたもの”──
    否、“忘れられることを拒む存在”が、そこにいた。

  • 112スレ主25/06/06(金) 17:42:29

    【凛の固有能力:【記憶の継承者たち】──発動】


    凛「……」


    その瞬間。

    ──背後の“何か”が動いた。


    凛の影の奥。そこに潜む“形容しがたいもの”が、微かに姿を現す。

    何本も枝のように伸びた“目”。
    内側に口腔を備えた、“言葉を喰らう器官”。

    感情ではなく、記憶に直接“圧”を刻む──
    悪意の集合体。


    それが、凛の背にぴたりと寄り添った瞬間──


    凛「……邪魔だ」

    凛「こんな所で、時間食ってるヒマねぇんだよ」


    声が響いた。

  • 113スレ主25/06/06(金) 17:44:06

    刹那。
    凛の言葉に、空気そのものが震える。

    言葉ではない、“意味”そのものが空間を支配する。


    怪異が、ピクリと動いた。

    歪んだ顔の中心、“穴”のような部分が凛を見た。


    否。

    凛の“背後”を見た。


     
    ──ぐちゃ。


    次の瞬間、怪異の姿は霧のようにかき消えた。


    千切「……え? ……消えた?」

    冴「……ああ、“圧”だけでねじ伏せた」


    タビトが満足げに「にゃ」と鳴き、凛の足元を一周する。
    その背中に、“それ”の気配はもうなかった。

  • 114スレ主25/06/06(金) 18:45:25

    ──ギィ……バタン。

    重い扉の軋み音を最後に、
    屋上の空気が背中から遠ざかる。

    冷たい鉄の階段を、
    4人と4匹がゆっくりと降りていく。
    足音だけが、鉄骨の壁に小さく反響した。


    冴「……次は、院長室か」

    凛「……うん。情報が正しければ、次は“あいつ”と向き合う番だな」

    タビトが「みゃ」と鳴き、
    階段の隙間から器用に滑り降りる。
    イッキは静かに冴の足元について歩いていた。


    千切「……なあ、凛。さっきのって、何?」

    千切は階段の手すり越しに、
    少し見上げるように問いかける。


    凛「……知らねえよ」

    凛はそっけなく答えるが、視線は前を見据えたまま。
    その背中に、まだ微かな“気配”の残滓が漂っているような錯覚がある。

  • 115スレ主25/06/06(金) 18:48:10

    千切「俺もなんか出せるかなー……」

    小声で呟く千切の横で、
    ヨイチが「にゃっ」と一声鳴いた。

    それは何かを肯定するような、
    あるいは「ムリ」とでも言いたげな、曖昧な音。


    凪「……出せるんじゃない?豹とか」

    凪はぼんやりとした口調で言いながら、
    後ろからついてくるレオをちらりと振り返る。

    凪「……でかいやつ、似合いそう」

    ぽつりと付け加えると、
    レオが静かに「ふにゃ」と鳴いた。


    千切「うおっ、その案カッコいいな!!豹とか出たら絶対勝てる気する!」

    テンションが上がったのか、声が少し反響した。
    タビトがちらりと振り返るが、鳴きはしない。


    冴「……まずは、出す前に死ぬなよ。お前のテンションが一番危ない」

    そう言って冴が前を向いたまま淡々と続ける。
    だがその口元には、ほんの少しだけ笑みの影が浮かんでいた。

  • 116スレ主25/06/06(金) 18:59:02

    ──そして、階段の終点が見えてきた。

    重いドアを抜けると、
    病階の空間が広がっていた。

    ただ、さきほどよりも……微かに空気が澱んでいる。


    一歩、また一歩と進む。
    足元の床がきしみ、小さく軋んだ音を立てるたびに、猫たちの耳がぴくりと動く。


    やがて──4人は、辿り着く。

    【院長室】の前。

    ドアは閉ざされており、周囲には誰の気配もない。

    けれどその向こうに、確かに“気配”がある。

    知っているはずの“管理者”ではない。
    けれど、最も深く“病院”と繋がった、“誰か”。


    凛「……ここだな」

    冴「──ああ。覚悟は決めとけ」

  • 117スレ主25/06/06(金) 20:18:24

    無言で立ち尽くす4人の前で──風が止んだ。


    凛「……始めるか」

    凛の指先が、ポーチから黒く小型の端末を取り出す。

    ──《アクセスパスコード端末》

    廃病院における記録の断片。
    その欠落を補い、隠された“記憶”を掘り起こす装置。


    凛「貸せ、白いの」

    凪「ほい」


    凪が差し出したのは、あの端末ログ。

    ──《メモログ:K-FL端末/No.16の手記抜粋》


    凛が端末に差し込んだ瞬間──


    ──ピィ……ピ、ピ……

    低く、連続した解析音。
    黒い画面に、青白い文字が走る。

  • 118スレ主25/06/06(金) 20:19:50

    【記録補完開始】
    【断片ログの構造解析中……】
    【補足データを出力:鍵コード=R-FL-K-9736】


    凛「出た。……“鍵コード”だ」

    画面に表示されたその数字列。
    塗り潰された記録の裏に、眠っていた情報。

    それが今──この瞬間、姿を現した。


    冴「……じゃあ、開けるぞ」

    冴が静かに手を伸ばす。

    ポーチから取り出されたのは、
    鋭角的な刻印が施された銀色のキー。

    ──《院長室のセキュリティキー》。

    電子ロックパネルに差し込むと、
    すぐさま端末が起動。
    解析された鍵コードを入力していく。


    【認証中……】
    【照合完了】
    【アクセス:承認──】

  • 119スレ主25/06/06(金) 20:20:47

    ──カチリ。

    電子錠が外れる音が、やけに重く響いた。


    千切「……開いた」

    タビトが静かに「ミャ」と鳴いた。
    レオも低く喉を鳴らす。
    イッキとヨイチは、無言のままドアの前に座り、じっと先を見つめている。


    冴が手をかける。
    そして──ゆっくりと、扉を押し開いた。


    ──ギ……ギィィ……

    不気味なまでに静かな音。

    その向こうには、
    【院長室】が、闇の中で待ち構えていた。

  • 120スレ主25/06/06(金) 20:32:41

    ──ギィィィ……バタン。

    扉が閉まる音が、背後で重たく響いた瞬間。
    空気が、変わった。


    まるで“液体”だった。

    視界に入ったのは、
    明らかに異常な密度の、重たい空気の膜。
    開いた扉の向こう側から、ねっとりと這い寄るように、粘性のある“圧”が押し寄せてくる。


    千切「……っ、なんだ、この……」

    声が、飲まれそうになる。

    音がしない。
    なのに、“蠢いている”気配だけが、確かに存在する。

    蛍光灯はほとんどが切れていた。
    天井に設置されたそれらは、不規則に揺れ、
    時折パチッ……と短く光ってはすぐに沈黙する。

    暗がりの中、唯一の光源──
    それは、院長デスクの奥に設置されたモニター端末から漏れる、赤黒い光。

    まるで心臓のように、光が脈打つ。

  • 121スレ主25/06/06(金) 20:34:08

    その光が、薄く部屋を照らす。

    壁一面に掲げられた、古びた写真──
    白黒で統一されたそれらは、歴代の医師や職員だろうか。

    だがいくつかの顔は、塗り潰され、あるいは焼け焦げ、中には“目”だけが黒く塗りつぶされたものも混じっていた。

     
    凪「……これ、気持ち悪いな」

    レオが、低く喉を鳴らす。


    壁面には他にも、複数の監視モニター。

    C号室、点滴調整室、廊下……だがそのいくつかは、
    明らかに異常な動作をしていた。


    ──“映像のループ”。

    動くはずのない何かが、同じ動きを繰り返している。

    映像が歪んでいるのではない。
    “記録そのもの”が狂っている。

  • 122スレ主25/06/06(金) 20:35:42

    そして──その部屋の中心。

    モニター台の前に置かれた椅子は、今は空だった。


    だが、そこには明確に、
    “何かが座っていた痕跡”が残っている。

    背もたれにしみ込んだ汗。
    床にわずかに引きずられた足跡。
    そして、空間そのものに沈殿している、“存在の残滓”。


    冴「……誰かが、ずっとここで、何かを見てたな」


    足元には、複雑に絡まったコード類が這っていた。

    中には、通電状態にあるものもあり、
    じり……じり……と、不気味な音を立てている。

  • 123スレ主25/06/06(金) 20:36:20

    千切が小さく息を呑んだ。


    視線の先──壁の一角。

    そこに残されていたのは、
    べっとりと染み込んだ、“赤”。

    まるで、誰かが手をついて、
    何かを見ていたかのように。
    手のひら大の、血のような手形が、壁面に――。


    タビトが、控えめに鳴いた。
    イッキもまた、しずかに扉の前に座り、
    仲間たちの背を見守っている。

    誰もが、空気を飲み込むように──
    この部屋の“異常”を、確かに理解していた。

  • 124スレ主25/06/06(金) 20:49:14

    【院長室エリア】


    ①院長机の中
    引き出しには、古い紙の記録が大量に残されている。情報収集に役立つ可能性(異常発生リスク中)

    ②記録端末台(中央)
    解析により、新たな情報が判明する可能性(異常発生リスク小)

    ③血痕のある壁の奥
    何かが削られたような跡と、血文字が残る(異常発生リスク中)

    ④天井近くの通風口
    不自然に開いており、何かが“出入りした”形跡がある(異常発生リスク中)

  • 125スレ主25/06/06(金) 21:01:40

    鈍い赤黒の光が揺れる院長室。

    空間に沈殿したような“気配”を全員が肌で感じながらも、誰も口に出そうとはしなかった。


    千切「……あの壁、なんかおかしくね? 血……いや、削れてる?」

    鋭い視線が③血痕の残る壁面に向けられる。

    床に染みついた何かの跡を辿りながら、
    千切は歩を進める。

    ヨイチが一声、短く鳴いて、そのあとをついていく。


    凛「机の中、か……。ここで何が記録されてたか、確認してやるよ」

    ①院長机に目を向ける凛は、わずかに眉を寄せつつ、手袋を直すように指を鳴らした。

    タビトがその足元で、低く喉を鳴らすように鳴いた。

  • 126スレ主25/06/06(金) 21:02:37

    凪「んー、じゃあ俺は……この記録端末。たぶんめんどくさいけど、解析できれば情報引き出せるかも」

    レオが小さく鳴き、凪の隣にぴたりと寄り添う。

    凪はいつもの調子でぼそっと言いながらも、
    ②端末に近づき、指先を光るスイッチにかけた。


    冴「……通風口。目立たねえが、明らかに“動き”があった形跡がある」

    冷静な声音のまま、冴は視線だけで④天井近くを示す。

    その足元で、イッキが控えめに鳴いた。


    空間に散る、4つの気配。
    そして、猫たちの足音までもが、不思議と沈み込むような静けさに溶けていった。

  • 127スレ主25/06/06(金) 21:11:11

    【院長室探索:①院長机の中・糸師凛】
    【探索開始】7:00


    院長机の前に立った凛は、わずかに目を細める。

    凛「……この机、普通じゃないな」

    重厚な木材でできた引き出し。
    取っ手の周囲は妙に擦り減っており、何度も“無理に開け閉めされた”ような形跡が残っている。


    背後から、低く静かな声が落ちた。


    冴「気をつけろ。そこ……何かが染みついてる」

    凛「……うん、分かってる」

    そう返しながら、足元のタビトをちらと見る。

    ダークブルーの毛並みが風に揺れ、
    タビトは一声「ニャ」と短く鳴いた。

  • 128スレ主25/06/06(金) 21:11:54

    凛は指先で取っ手に触れる。


    冷たい金属の感触。

    引き出しの隙間には、

    細く千切れた紙の切れ端がわずかに見えていた。



    凛「さて、何が出てくるか……」


    ゆっくりと、引き出しを開こうと力を込める。

    木材がきしむ音が、静かな室内に不快なほど響いた。



    ──ギ……ギィ……



    埃と古紙の匂いが鼻を突く。

    その奥に、“束ねられた何か”が確かに見えていた。


    凛の指が、そこに届こうと伸びていく──



    異常発生リスク(中)

    dice1d110=2 (2)

    (1〜35:大失敗 36〜70:失敗)

    (71〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 129スレ主25/06/06(金) 21:25:51

    【冴の固有能力:最適解──発動】


    その瞬間——


    冴「……あっぶね」

    冴の低い声が割り込んだ。


    凛が思わず手を止める。

    背後から、冴が半歩だけ前へ出てきて、
    呆れたような眼差しで凛を見下ろした。


    冴「……凛、お前ミスりすぎだ」

    凛「……っ、わ、分かってるよ」

    返す声は小さく、口調もややトーンが落ちている。
    どこか耳が赤いのは、冴の言葉が図星だったからか。

  • 130スレ主25/06/06(金) 21:26:50

    冴「慎重にやれ。院長室だぞ。仕掛けのひとつやふたつあると思え」


    凛「……ああ。今度はちゃんとやる」



    タビトがぴたりと足元で気配を読んでいる。


    その静けさに包まれながら、凛はもう一度、

    ゆっくりと指を引き出しへ滑らせていった——。



    異常発生リスク(中)

    dice1d110=30 (30)

    (1〜35:大失敗 36〜70:失敗)

    (71〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 131スレ主25/06/06(金) 21:34:04

    【探索失敗】7:00
    【大成功特典+10使用し、失敗へ変換】
    【SAN値:-2(22→20)】


    ——ギィ……。

    錆びた金属音を立てて、
    凛がゆっくりと引き出しを開ける。

    中には、黄ばんだ記録用紙の束。
    めくるごとに、年代すら不明な医師の筆跡と──血のような染みが、次第に露わになる。


    凛「……なんだよこれ……」

    紙の隙間から、
    微かに“呻くような”音が漏れ出した。

    否、それは風のせいではない。


    指先を滑らせた瞬間——


    ズ……ッ……。


    引き出しの奥、
    紙の下で“何か”が、かすかに蠢いた。

  • 132スレ主25/06/06(金) 21:34:45

    凛「……!」

    直後、“生ぬるい何か”が、手の甲をなぞる。

    反射的に腕を引く——が、そこには何もいない。
    ただ、皮膚には“濡れた感触”だけが、じっとりと残っていた。


    凛「……ふざけんなよ……っ」

    背中を汗が這い、空気がいっそう重くなる。
    振り向けば、冴が鋭く周囲を見回していた。

    猫たちは低くうなり声を漏らし、
    タビトが「ニャアッ」と短く鳴いた。


    凛「……ハズレかよ。いや、クソ気味悪ぃだけじゃねぇか……」

    だが、机の奥には“もう一つ”の引き出しがある。
    何かがそこから──“こっちを見ている”気がした。

    そして凛の精神を、少しずつ削っていくような“視線の残滓”が、確かにあった。

  • 133スレ主25/06/06(金) 21:43:51

    【院長室探索:②記録端末台(中央)・凪誠士郎】【探索開始】7:00


    赤黒いモニターの揺らめきが、
    部屋の中心を不気味に照らしていた。

    その光に、静かに歩み寄る影がひとつ──。
    足元には、猫のレオが寄り添っている。


    凪「……んー。ここ、かな」

    中央の台座には、病院の中枢と繋がるらしい情報端末が設置されていた。

    表面には、いくつかのインターフェースとアクセス用スロット。

    傍らに付属していたキーパッドを、
    凪が無表情に覗き込む。

  • 134スレ主25/06/06(金) 21:44:34

    凪「コード……これだな。──“R-FL-K-9736”」


    無造作にキーを打ち込むと、

    端末が一瞬反応し、鈍く低い電子音を発した。


    画面にノイズ混じりの文字列が走り、

    赤黒い光が脈打つように明滅する。



    レオが一歩、前に出て画面を覗き込む。



    凪「さて。何が出てくるかな」


    その口調はあくまでゆったりと、

    だが視線は真っすぐに画面へと向けられている。


    病院の記憶、No.16の記録、院長という存在の正体──

    この端末が、“何を再現しているのか”を見極めるために。



    異常発生リスク(小)

    dice1d110=6 (6)

    (1〜35:大失敗 36〜65:失敗)

    (66〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 135スレ主25/06/06(金) 21:53:46

    【探索成功】7:00
    【100特典により探索を自動成功に変換】


    コード入力後、端末の画面は一瞬、完全に暗転した。


    凪「……ん?」

    レオがわずかに尻尾をふるわせ、
    小さく「ぅにゃ」と鳴く。

    次の瞬間、赤黒の画面が唐突に、変化した。

    ざらついた映像の奥に、
    “院長”の認証映像の一部が走る。


    『アクセス確認:コードR-FL-K-9736──正規ルート・地下通路認証中』


    映像の端には、古い記録と見られる地図が一瞬だけ映り、そこに“通路下層区画”と記されていた。

  • 136スレ主25/06/06(金) 21:54:19

    凪「……ふーん。なんか、正解だったっぽい」

    端末横の排出口から、“カチ”という軽い解錠音。
    小さなカートリッジ型のキーアイテムが、せり出してきた。


    ──《地下通路アクセスキー》


    それは、無骨な形状の金属チップ。
    側面には擦り切れたように「K-FL:Lower Access」の刻印が彫られている。

    何度も使用された痕跡があるが、
    まだ機能は生きているらしい。

    凪はそれを片手で受け取り、軽く裏側を眺めた。


    凪「地下……ね」

    レオが足元で、再び静かに鳴く。
    その音は、不思議と“先を急げ”とでも言っているようだった。

  • 137スレ主25/06/06(金) 22:05:19

    【院長室探索:③血痕のある壁の奥・千切豹馬】
    【探索開始】7:00


    千切「──こっち、だよな」

    壁の一角。
    他と同じように見える白いパネルだったが、
    よく見れば表面には乾いた赤黒い染みがある。

    その奥に“何か”が隠されているように見えた。


    千切は近づき、壁際にしゃがみ込む。
    ヨイチは数歩離れた場所から静かに見守っていた。


    千切「……この感じ、誰かがこじ開けようとした痕跡……でも途中で止めたみたいな」

  • 138スレ主25/06/06(金) 22:06:15

    薄暗い照明の中、

    指先で触れるたびにざらりとした感触が伝わる。


    古びた塗装の奥、何かで削られたような鋭い引っかき跡──その合間に、“手書きの文字”が浮かんでいた。



    千切「これ……血で、書いてる?」


    思わず声をひそめた。

    壁の奥、ほんのわずかに“空洞のような音”が反響している。



    千切「……なんか、あるな」


    深く息を吸う。

    冷たい空気が喉奥に流れ込んだ。


    ──そのまま、血痕の奥へと手を伸ばしていった。



    異常発生リスク(中)

    dice1d110=19 (19)

    (1〜35:大失敗 36〜70:失敗)

    (71〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 139スレ主25/06/06(金) 22:23:24

    【探索大失敗】7:00
    【《セーフラインタグ》によりSAN値減少を抑制】
    【SAN値-1:24→23】


    千切の指先が、壁の血痕をなぞる。
    微かに浮かぶ“削られた跡”に手をかけた——

    その瞬間だった。


    ガンッッ!!


    壁の奥から──
    “何か”が、激しく跳ね返るように叩き返された。


    千切「っ……!?」

    咄嗟にのけぞる。

    視界の端に映ったそれは、壁の内部──
    否、“奥”にあるべきでない“奥行き”だった。

    裂けた壁の裏。
    闇の中で、何かが──こちらを、覗いていた。

  • 140スレ主25/06/06(金) 22:24:42

    そこには、無数の“人の顔”が重なっていた。

    いや、顔──のようなもの。

    まるで誰かの記憶の中に焼きついた“輪郭”だけを抜き出したような、不鮮明な集合体。

    すべてが、口を開けていた。

    音はない。
    なのに、脳の中で“呻き声”だけが反響する。


    千切「やば、やばい……っ!」

    がくりと膝が折れかけたその瞬間。


    凪「危なっかしいなあ、気をつけなよ」

    凪の無表情な声とともに、
    銀色のチャームが弧を描いて宙を舞った。

    千切の胸元に──軽く、当たる。


    チャリン。


    ……何かが、ふっと消えた。

  • 141スレ主25/06/06(金) 22:25:29

    呻きも、顔も、壁の歪みさえも──
    すべてが、なかったかのように霧散していく。

    ヨイチが、低く「……にゃ」と鳴いた。


    千切「っは……っ、ありがと……!」

    肩で息をしながら、千切は凪に振り返る。


    凪「ほら、言ったでしょ。危ないって」

    凪の声は淡々としていたが、手には空になった《セーフライン・タグ》の銀色チャームが握られていた。

    それは光を失い、もう“何の力も持たない”ただの金属片になっていた。


    千切「……マジで……また夢に出そうなやつだった……」

    けれど、その顔には笑みが戻っている。
    千切は震えながらも、前を向いていた。

  • 142スレ主25/06/06(金) 22:28:10

    やる気を……どうかやる気を出して………。

    というわけで、そろそろホスト規制もかかるのでスレ主は寝ます。A-7の前にD号室寄るか悩みます。
    悩むと次作のネタ作りに行きがちなので更新遅くなってしまい申し訳ないです。
    それでは明日もよろしくお願いします!

  • 143二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 01:41:46

    うーん出目が低い!がんばれ!

  • 144二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 04:29:55

    失敗を軽減するアイテムのありがたみが身に沁みるね…今不調ってことはこれから好調の波がくる前触れだと思ってるよなんとかなれー!!

  • 145スレ主25/06/07(土) 08:41:16

    >>143 大失敗続きでちょっと不安ですよね…

    >>144 A-7、地下で絶好調到来することを願います!


    おはようございます。本日もよろしくお願いします!

  • 146スレ主25/06/07(土) 08:46:10

    【院長室探索:④天井近くの通風口・糸師冴】
    【探索開始】7:00


    冴の視線が静かに、天井へと向けられる。
    他の誰も選ばなかった部屋の端──
    ほこりを被った金属の格子。

    そこに、わずかにずれた通風口の蓋があった。


    冴「……あれ、開いてるな」

    ぎしり、と椅子を引き寄せて踏み台にし、無言のまま立ち上がる。

    イッキが、少しだけ距離を置いて下から見上げていた。


    凛「落ちんなよ、兄ちゃん」

    冴「落ちるかよ。バカか」

    そんな短いやり取りを交わしながら、
    冴は通風口に近づいた。

  • 147スレ主25/06/07(土) 08:47:07

    天井板に手をかける。


    冷たい。

    だがほんの僅かに“体温のような熱”が残っている。



    冴(……ついさっきまで、誰か──いや、“何か”が出入りしてた)


    開いた格子の隙間から、薄暗い内部が覗く。

    覗き込めば、何か見える。

    だがその先が安全かどうかは、誰にも分からない。


    冴は静かに、隙間へ手を伸ばした──。



    異常発生リスク(中)

    dice1d110=40 (40)

    (1〜35:大失敗 36〜70:失敗)

    (71〜85:成功 86〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 148スレ主25/06/07(土) 08:53:21

    【探索成功】7:00
    【100特典:失敗を自動成功に変換】


    ──ガコン。

    通風口の内蓋が、わずかにずれて落ちかけた瞬間。
    冴はすぐさま手を伸ばし、落下寸前で受け止める。

    金属の端が、鋭く冷たい。


    冴「……ギリギリ」

    覗き込んだ空間は、
    狭く、奥へと真っ直ぐ続いていた。

    その途中。
    鋭角にねじれたパイプの隙間に、
    何かが挟まっているのを見つける。


    冴「……これは」

    慎重に手を伸ばす。
    硬い。だが、指先に触れたそれは──

    カチ、とわずかに機械音を鳴らした。

  • 149スレ主25/06/07(土) 08:54:01

    引き抜いたそれは、薄型の黒いカードキー。
    光沢を帯びた表面には、読み取り用のチップが埋め込まれ、銀色の文字が小さく刻まれていた。


    ──《脱出通路:A-7》


    冴「……A-7、か」

    天井から降りてきた冴を、
    イッキが足元で小さく鳴いて迎える。

    凛が眉をひそめる。


    凛「それ、脱出用の鍵か?」

    冴「ああ。メモに、“看護師休憩室の前、南側の扉”ってあっただろ。たぶんそこのやつだ」

    凛「……ふーん。だったら、使う場面は限られるな」

    冴は無言でカードを見つめた。

    その電子キーに刻まれた型番は、
    どこか他のカードとは違って見えた。

  • 150スレ主25/06/07(土) 09:01:28

    ──静まり返った院長室で、
    冴が手にした一枚のカードキーを見つめた。


    冴「……A-7の脱出用カードキー。通風口で拾った」

    凛「まだ“全員”揃ってないから、脱出は後だな」

    冴「ああ。“出口”の鍵だけ先に押さえておく。……先に、A-7通路に行くぞ」


    凪がポーチから小さな金属チップを差し出す。

    カートリッジ型のアクセスキー。
    その側面には、摩耗したような文字列が刻まれていた。

  • 151スレ主25/06/07(土) 09:02:04

    凪「こっちは地下通路用。……俺も順番は後でいいと思う」

    千切「……だな。先に非常口の鍵、拾っとくのが正解っしょ!地下行ったあとすぐ出られた方が、安心できるし!」

    凛「……決まりだな。A-7通路、行くぞ」


    ヨイチが「……ンー」と小さく鳴き、
    タビトが扉の前に立つ。

    イッキは静かに尾を揺らし、
    レオは凪の背にぴたりと寄り添って歩き出す。


    冴「……先に道を開けろ。“出口”の先に、“地獄”があるとしても、な」

    千切「絶対、全員連れて帰るからな──!」

  • 152スレ主25/06/07(土) 09:14:57

    ──その瞬間だった。

    観察端末の液晶が、
    “誰の指も触れないまま”点灯する。


    【患者No.16 精神侵食率:89%──上昇中】

    【解放条件:コード一致・観察対象全制圧・最終段階処理】


    次の瞬間、部屋の照明がすべて落ちる。


    ──ギ……ギ……ギ……

    壁一面の監視モニターが歪んだノイズを吐き出し、
    そこに浮かぶのは……

    ──“顔”。

    笑い、泣き、叫び、苦悶──
    すべての感情が“誰かの模造品”になり果てた。


    観察端末がショートし、火花と共に生まれるのは、
    白衣を纏った“人間のような何か”。

  • 153スレ主25/06/07(土) 11:41:56

    【冴の固有能力【記憶の継承者たち】──発動】


    顔は、ない。

    空洞の頭部。

    背中からは無数のチューブとコードが絡み、まるで“病院そのもの”に繋がれたように揺れていた。


    凛「……あれが、No.16」


    冴が、静かに前に出る。


    冴「──お前、ずいぶん“自分に酔ってる”らしいな」

    怪異が、ゆらりと顔のない頭部を向けた。


    冴「システムとリンクして。人格の模倣で。記録の再現で。“代わりになれる”つもりだったのか?」

    声が、氷のように鋭く冷たい。


    冴「違うな。お前は、“ただの記録に寄生した残骸”だ。“医師”でも“院長”でもない。ただの成り損ないじゃねえか」

    凪「……うわ、えげつなー……」

  • 154スレ主25/06/07(土) 11:43:05

    冴「お前が再現してる“夢”──あれも本物じゃねえ。ただ、誰かの記憶を勝手に解釈して、自分の理想で塗り潰しただけの、陳腐なホログラムだ」


    コードが唸り、天井に突き刺さる。

    それでも冴は一歩も引かない。


    冴「他人の記憶で、自分を作るな。他人の痛みで、自分を意味づけるな。それは、“存在してる”って言わねえんだよ──No.16」

    音もなく、怪異のチューブが揺れ、
    凍りついたように動きを止めた。


    冴「お前の“器”は、もう空っぽだ。夢に逃げるしかなくなった残骸が、最後に選んだのが“この病院”なら──」

    冴「──笑えるな。結局、お前も“壊れるしかなかった”ってことだ」

  • 155スレ主25/06/07(土) 11:44:11

    沈黙。

    空間にひびが入り、怪異の身体が崩れ始める。


    “冴が通ってきた記憶”が、そのまま刃になって、No.16という怪異を“否定”する。


    ──お前の存在は、本物じゃない。


    凛の背後で、タビトが唸る。

    レオとヨイチも、ぴたりと並んで、
    崩れていく存在を見届けていた。

    イッキが短く、「にー」とだけ鳴く。


    千切「……今のは……まじで、心折れるやつだった……」

    凛「いや、アレは折れる。てか、消えるよな……」


    ──No.16。
    その記憶の残滓は、ひとつの声も発さずに霧散した。
    音も、姿も、何も残さずに。


    冴「……行くぞ。こんな場所、見る価値もねえ」

  • 156スレ主25/06/07(土) 11:58:02

    重く閉ざされた院長室の扉が、音を立てて開く。

    誰からともなく視線を交わし、4人は歩き出す。
    その後ろを、足取り軽く4匹の猫たちがついてきた。

    ヨイチは静かに、しかし確かな歩幅で千切の横を。

    レオは堂々とした足取りで凪の隣を歩き、
    タビトは何かを見据えるように凛の足元を。

    イッキは冴の足元にぴたりと寄り添いながら、
    「にー」と小さく鳴いた。


    階段を下りる一行。
    響くのは、靴の音と、
    コンクリートに爪を当てる微かな音だけ。

    途中、A-7通路の前を通過する。
    だが、誰もその扉に触れない。
    今はまだ、そこに行く時ではないと、
    全員が“直感”していた。


    千切「……お前ら、ちゃんとついてきてるかー?」

    レオが一声「にゃ」と鳴いたのを皮切りに、
    ヨイチも低く「……にゃ」、
    タビトが「にゃにゃにゃっ」、
    イッキは控えめに「にー」。

  • 157スレ主25/06/07(土) 11:59:21

    凪「猫の行進って感じ。かわいいね」

    凛「タビト、お前だけ鳴きすぎ」

    冴「イッキは手間がかからなくて助かるな」

    千切「ブルーロックでも猫飼いてぇな、マジで……!」


    そうして、
    一行は1階の【入院病棟】の前へと到達した。


    古びた鉄扉の前で、猫たちの足が止まる。

    ──カリ、カリ……

    まるで「ここだ」とでも言いたげに、
    ヨイチが前足で扉の下端を引っ掻く。

    続いて、タビト、レオ、イッキも一歩前に出て、
    順番に「にゃ」と鳴き始める。

    その小さな爪音と、4匹の鳴き声に、
    扉の向こうの空気が僅かに“軋んだ”。

  • 158スレ主25/06/07(土) 12:09:32

    千切「……扉の前で、4匹揃ってアピールされると開けないわけにいかないな……」

    凛「まあ、開けるしかないって空気だな」

    凪「気をつけてね。こういう時って、だいたい変なのがいる」

    冴「準備はしておけ。……行くぞ」


    全員が頷き、手が、扉の取っ手にかかる──


    ギィ……ガチャン。

    錆びた金属音が、低く廊下に響いた。

    【入院病棟】の扉がゆっくりと開かれた瞬間、鼻をつく薬品の匂いと、わずかに乾いた空気が流れ出す。


    ──しかし。

    院長室や屋上で感じたような“圧”は、
    そこにはなかった。
    むしろ、空気はどこか軽い。
    視界も明瞭で、曇りやノイズのようなものもない。


    凛「……空気が違うな」

    冴「ああ。“すでに終わった”場所だ」

  • 159スレ主25/06/07(土) 12:10:59

    この病棟では、A号室・B号室・C号室にいた怪異たちはすでに撃破されている。
    霧のように立ちこめていた異常の残滓も、
    いまはもう──ほとんど残っていない。

    タビトが一歩、先に進んで空気を確かめるように廊下を見渡し、ヨイチが静かにD号室の前で立ち止まった。


    千切「……D号室、だな。あそこは、たしか“安全”って判明してたとこだっけ」

    凪「うん。前に冴が記録見てた。“前隔離対象は安定化、危険性はなし”って」

    凛「こんなとこにも“安全”は残ってるんだな」

    冴「念のため、俺が開ける。……後ろに下がっとけ」


    冴の手が、扉にかかる。


    カチャリ──

    ゆっくりと、D号室の扉が開かれていく。

  • 160スレ主25/06/07(土) 12:11:59

    ──そして、四人が目にしたのは。

    どこにでもある、普通の病室だった。

    整えられたベッド。壁には患者の状態記録表。
    小さな本棚と、床に置かれた椅子。
    窓にはカーテンがかかっており、
    ほこりすらほとんど見当たらない。


    レオが「……にゃ」と低く鳴き、部屋に入る。

    ヨイチ、タビト、イッキもそれぞれ順に部屋へ。


    千切「……なあ、ここさ。普通すぎて逆に落ち着かねえんだけど」

    凛「……異常はない。何もいねえな」

    凪「疲れたらここで寝れるね」

    冴「……“安心できる場所”を最後に回せたのは、僥倖だな」


    静けさが、部屋全体を包む。

    今だけは、ほんの少し──
    この病院の中に、“人間の空気”が残されているように感じられた。

  • 161スレ主25/06/07(土) 12:20:34

    D号室。

    明かりはなくとも、曇りのない窓から差し込む自然光が、柔らかく床を照らしている。


    何かを見張る必要も、息を潜める必要もない。

    それぞれが自分のペースで、

    束の間の休息を過ごし始めた。



    千切は、ベッド脇に腰を下ろすと、すぐさま足元に寄ってきた小柄な猫──ヨイチに目を輝かせた。



    千切「なぁ、ヨイチ……おまえほんとかわいいな!よし、遊ぼ!な、ちょっとだけ!」


    くすぐるように手を伸ばすと、

    ヨイチが「……にゃ」と小さく鳴き、

    その細いしっぽを千切の腕に巻きつけてくる。



    千切「お、きたきた──!はい、こっちもー!ほらほら!」


    床を這わせた指先をヨイチが追い、

    その爪先がちょっとだけ触れるたび、

    千切は嬉しそうに笑う。



    千切「……ほんと、こいつらがいてくれてよかった」



    休息によるSAN値回復

    dice1d8=2 (2) (最低値:4)

  • 162スレ主25/06/07(土) 12:23:39

    【千切豹馬:SAN値+4回復(23→27)】



    凪は、本棚のそばに座り込み、その隣に静かに座っている紫の猫──レオに、ぽつぽつと語りかけていた。



    凪「……ねえ、レオ。ここ出たらさ、どっか外で……昼寝とかしたいね」


    レオ「……んにゃ」


    凪「やっぱ、だるいときはだるいって言える相手が……いるの、悪くないかも」


    しばらく黙ったあと、

    凪はレオの額を指でこつん、と軽く突く。



    凪「俺、頑張るよ。……ちゃんと、レオを助ける。ちゃんと……」


    レオは何も言わずに、

    ただそっと凪の膝に頭を乗せた。



    休息によるSAN値回復

    dice1d8=6 (6) (最低値:4)

  • 163スレ主25/06/07(土) 12:30:47

    【凪誠士郎:SAN値+6回復(20→26)】



    凛は、部屋の角──床の上で静かに立ち上がり、

    深く呼吸を整えると、両手を天に伸ばした。



    凛「……次の戦いのために、身体を整えておくか」


    タビトが足元でぐるぐると回るのを意に介さず、

    彼は黙々とヨガのポーズを取りはじめる。


    静かな吸気と、ゆるやかな動き。

    体幹を保ちつつ、意識を外界から内側へ──集中していく。



    凛「(全部終わったら……本当に戻れるのか……?)」


    そんな思考も、深呼吸とともに一度流し──

    次のポーズへ。


    その時、タビトが「にゃう」と鳴いて、

    ストレッチ中の凛の背中に飛び乗る。


    凛「おいこら、バランス崩れんだろ……!!!」



    休息によるSAN値回復

    dice1d8=6 (6) (最低値:4)

  • 164スレ主25/06/07(土) 12:33:19

    【糸師凛:SAN値+6回復(20→26)】



    冴は、小さな椅子に腰掛け、

    手にした古いメモログの再確認と、

    各記録の突き合わせを始めていた。



    冴「……“正式な院長は地下”……なら、No.16のログは“再現”でしかない。となると──」


    横で静かに座る猫──

    イッキが、たまに「……にー」と控えめに鳴くたび、

    冴は「そうだな」と短く返す。



    冴「──問題は、地下だ。“最終段階処理”ってのが、何を意味するかは……下りてみればわかる」


    情報を交錯させながら、冴の脳裏ではすでに“地下ルート”の構造図が組み上がっていた。



    冴「……全部、繋がってきたな」


    イッキがそっと、冴の足元に体を丸める。

    その温もりに、わずかに口元が緩む。


    冴「俺が“全部終わらせる”。お前らも、最後までついてこいよ」



    休息によるSAN値回復

    dice1d8=7 (7) (最低値:4)

  • 165スレ主25/06/07(土) 12:46:10

    【糸師冴:SAN値+7回復(20→27)】


    椅子に座る者、ベッドに腰をかける者、それぞれの姿勢で、4人は病室の中央付近に自然と集まっていた。


    凛「そろそろ、行くか。休憩は充分だろ」

    千切「おう、完璧に整ったぜ。……ヨイチも元気そうだしな」

    凪「……うん。レオも、準備できてるみたい」

    冴「──なら、再確認するぞ」


    冴の言葉に、空気が少しだけ引き締まる。

    冴はポーチから、先程取得した《脱出通路:A-7の電子カードキー》を取り出し、目線を揃えながら静かに話す。


    冴「まずは、A-7通路にある非常用出口の鍵を確保する」

    凛「ああ。それがないと、出口は開かねえしな」

    冴「次に地下へ。……“本物の院長”を討つ。潔たちを取り戻すためにも」

    千切「ぶっ倒すだけなら任せろ!あとは──」

    凪「……A-7から、脱出する。全員で、ね」

  • 166スレ主25/06/07(土) 12:48:12

    それぞれの視線が交わる。
    誰一人、迷いはなかった。


    そのとき──
    ベッドの傍らにいた小さな猫──イッキが、
    静かに冴の腕へと歩み寄る。

    そして、冴のデジタル腕時計にぴたりと前足を触れた瞬間──


    ──カチリ、と静かに光る。

    淡い青緑の光が、時計全体を一度包み込む──


    冴「……イッキ、ありがとな」

    「……にー」

    静かなやりとりの後、全員が荷物を肩にかけ、
    それぞれのポーチと、時計を改めて確認する。


    【時計:SAN値累計-6で8:00に進行】

  • 167スレ主25/06/07(土) 12:49:01

    千切「……さ、行こうぜ!」


    凛「ああ。今度こそ終わらせる」


    凪「……行こ」


    冴「地下の“終着点”まで、最短で辿る」



    4人が立ち上がり、ドアへと向かう。


    が──その時だった。



    ──コン、カラン……。


    部屋の背後から、小さな音がした。

    軽く何かが倒れたような、乾いた音。



    全員が一斉に振り返る。



    ???

    dice1d440=81 (81)

  • 168スレ主25/06/07(土) 12:58:57

    ──そこには誰もいない。

    だが、その静けさの中、部屋の奥――
    かすかにきらりと反射した“何か”が、床に落ちていた。


    凪「……あれ、落とし物?」

    静かに歩み寄ったのは凛だった。

    拾い上げると、それは重みのある、薄い金属のプレートだった。大小の断片が複雑に組み合い、十字型のような不思議な輪郭を形作っている。


    凛「……これは。普通のパーツじゃねぇな」

    指先がそれに触れた瞬間、ごく微かに温もりが返る。
    裏には何かの医療識別コードらしき記号が刻まれていたが──


    冴「判読不能だな。劣化しすぎてる。……だが、造りは本物だ」

    千切「……誰かが、俺たちのために残したのかもな」

  • 169スレ主25/06/07(土) 12:59:31

    タビトが一声鳴く。
    まるで「持っておけ」と言わんばかりに。

    凛は、ポーチの内側にそれを静かに収めた。

     
    凛「……行くぞ。全部終わらせるために」

    4人と4匹は再び歩き出す。

    出口の鍵は、すでにその手にある。
    だが──本当の決着は、まだ、地下に眠っていた。


    ■入手アイテム
    ・《エラジウム・フレーム》×1:探索・戦闘における【大失敗(ファンブル)】および【失敗】時のSAN値減少および精神異常を1回のみ完全無効化する。

  • 170スレ主25/06/07(土) 13:15:02

    ──ゆっくりと、D号室の扉が閉じられる。

    誰もいない病室の中に静寂が戻る。

    鋭く張り詰める空気の中、
    再び病院の闇を進むために4人と4匹は歩き出す──。

     
    扉を出て数歩、
    廊下の先にある“入院病棟の扉”へと近づく。

    猫たちは迷いなく前を歩き、まるでそこが当然の行き先であるかのように振り返らない。


    凪「……あ、レオが先頭だ」

    レオは、凪の足音も振り返らずに、
    一直線に進んでいく。


    千切「猫のリーダーっぽいよな」

    タビトがそれに追いつこうと小走りに進み、
    ヨイチとイッキも続いた。


    入院病棟の扉は、乾いた音を立てて開いた。
    薄暗い空間。
    冷気はすでに薄れ、過去の怪異たちがいた痕跡も今は感じられない。

  • 171スレ主25/06/07(土) 13:20:21

    凛「……静かだな」

    冴「ああ。ここはもう、片付いてる」

    その言葉に誰も反論はしない。


    ──そのまま進み、
    やがて現れたのは【A-7通路】の扉だった。

    乾いた廊下の先に、
    “重厚な金属扉”が、ひっそりと佇んでいる。

    かつて一度も通ることのなかった、
    非常時限定の通路。
    その中央には、淡く光る文字。


    【A-7】


    ──その扉の脇には、赤く点滅する認証端末。
    無骨なスロットの上には、こう刻まれていた。


    【職員認証・第7警戒レベル】

  • 172スレ主25/06/07(土) 13:21:20

    千切「うわ……これ、いかにも“開けたら戻れません”って感じの扉だな」

    凪「でも開けないと、外に出れない」

    凛「……行くしかねぇだろ」


    冴がゆっくりとポーチから、
    《脱出通路:A-7の電子カードキー》を取り出す。

    無言でスロットに差し込むと、ピ、と乾いた電子音。

    ──赤い点滅が青に変わる。


    ──ゴウン……


    重厚な金属扉が、鈍く震えながら開いていく。

  • 173スレ主25/06/07(土) 13:34:55

    内側から漏れ出したのは──
    湿気とは違う、息苦しいほどの“異様な空気”。


    凛「……また、嫌な感じだな」

    冴「上とは別種だな。ここは……“封じられていた”側の空間だ」

    足を踏み入れると、通路の構造が明らかになる。


    コンクリートの壁に囲まれた直線の廊下。

    その先には、厳重に閉ざされた《非常用出口》がひとつ──しかし鍵がかかっており、まだ開く気配はない。
    そして、出口へと向かう通路の左右に、4つの部屋が並んでいる。

    左手前、左奥、右手前、右奥。

    それぞれの扉はすべて金属製。
    だが、刻まれている文字はまちまちで、
    どれも“記録とは異なる符号”を持っているようだ。

  • 174スレ主25/06/07(土) 13:35:52

    そんな中──

    猫たちが、迷いなく歩を進めていた。
    ヨイチ、レオ、タビト、イッキ。
    4匹の猫が向かったのは、
    廊下の左手前──最初の部屋。

    扉の前で、ぴたりと動きを止める。

    その金属扉には、
    旧字体めいた文字で、こう刻まれていた。


    【第一区画──“剥離の間”】


    凪「……すごい名前だね」

    千切「“剥離”?何が剥がされてるんだよ……」


    タビトが「ぅにゃ」と短く鳴いた。
    それが合図のように、冴が静かに前に出る。


    冴「……行くぞ。」


    ゆっくりと、冷たい扉に手がかけられ──
    【第一区画──“剥離の間”】が開放される。

  • 175スレ主25/06/07(土) 17:23:54

    扉が、音もなく開かれる。

    その瞬間、鼻腔を刺すような薬品と、
    金属の混じった匂い──
    かつての病院の面影を、皮肉にも強く思い出させる。


    だが、そこは明らかに“異質”だった。

    まるで、廃棄された無菌室のような空間。
    天井の蛍光灯は、規則を失ったように、
    「パチ……パチ……」と不規則な点滅を繰り返す。

    壁面の一部は、
    “ペリペリ”と皮膚のように剥がれ落ちており、
    その奥からは──まるで層になった、
    “別の建造物”がじわじわと顔を覗かせていた。


    凛「……なんだよこれ……二重構造か?」

    冴「いや……“後から貼った”んだ。現実の上に、別の現実を」

    凪が目を細めながら、壁の“継ぎ目”を見つめる。
    タビトがその横で不安げに鳴いた。

    床には、一見すると病院でよく見かける白いタイル。
    だが、その幾つかは──
    まるで紙を無理やり捻ったように“ねじれて”いた。

  • 176スレ主25/06/07(土) 17:24:29

    千切「なにこれ……床が、歪んでる……?気持ちわる……」

    ヨイチがその足元に寄り添いながら、
    じっと奥を見据える。

    だが、最も不気味だったのは──
    壁に貼りついた無数の“手形”。

    それらは全て、“内側から”押しつけられていた。

    掌のかたち。指の跡。
    掻きむしるように伸びたそれらは、
    生きようとした痕跡。

    まるで、この空間そのものが、
    “生”を内側に閉じ込め、“剥がれ落ちるまで”逃がさなかったかのように──。


    凪「……レオ」

    凪の足元で、紫の猫がじっと手形を見つめている。
    そして、ほんのわずかに、
    低く「……にゃ」と鳴いた。

  • 177スレ主25/06/07(土) 17:28:11

    【A-7通路:第一区画“剥離の間”エリア】


    ①剥離した壁の奥
    壁が何重にも剥がれている。向こう側に“何か”が隠されている気配(異常発生リスク中)

    ②薄暗いガラスケースの中
    医療器具が陳列されていた痕跡だが、奥に何かが挟まっている(異常発生リスク中)

    ③ 床下のタイルに浮かぶ“黒い染み”
    誰かがそこに“何か”を沈めたような痕跡。掘り返すことができそうだが……(異常発生リスク中)

    ④ 配線がむき出しになった監視端末
    何かの記録が閲覧できるかもしれないが、触れるには覚悟が必要(異常発生リスク中)

  • 178スレ主25/06/07(土) 17:33:37

    壁面の明滅が、
    部屋を淡く照らしては飲み込んでいく。


    千切「……あの床の染み、めっちゃ気になるな」

    白いタイルに浮かぶ③“黒い染み”に、足を向ける。
    まるで誰かが“何か”を埋めたかのように、染みは不自然な形でそこにあった。


    凛「なら、俺はこれ」

    そう言って、①剥離した壁面の前に立つ。
    内側から剥がれ続けた構造──その奥にある“何か”に、確かな気配を感じ取ったかのように。


    凪「俺はこのガラスケースでいいや」

    ②薄暗く照らされた棚の中、乱雑に散らばった医療器具。その奥に、何かが挟まっているように見えた。

    レオがガラス面に静かに鼻をつけ、
    「んー」と低く鳴く。


    冴「……残りはここ、か」

    ④無造作に露出した配線の先、異常に古びた監視端末。そのモニターは、点いていないのに、“視線”のような圧を放っていた。

    イッキが足元に寄り添い、「にー……」と鳴いた。

  • 179スレ主25/06/07(土) 17:38:16

    【A-7通路:第一区画“剥離の間”探索:①剥離した壁の奥・糸師凛】
    【探索開始】7:00


    剥がれかけた壁の前に、凛は静かに立った。
    明滅する蛍光灯の光が、まるでこの空間そのものを脈打たせているかのように、影を不規則に揺らしている。


    凛「……これ、わざとじゃねえな」

    手で触れれば、“ペリ”と乾いた音がして、
    内壁の一部が崩れた。

    その向こうに──
    さらに幾層もの構造が、剥がれ続けている。
    コンクリのようでいて、少し柔らかく……
    それでいて、妙な冷気を放っていた。

    タビトが後ろから「うーぅ」と低く鳴いた。
    その声に、凛は一瞬だけ立ち止まる。

  • 180スレ主25/06/07(土) 17:39:18

    凛「……何かいるのか?」


    手元に視線を戻し、

    剥離した壁の間へと指を差し入れる。


    その隙間には、

    確かに何かが“存在している”気配があった。

    ただ──それが“記録”なのか、“存在”なのか。

    凛にはまだ分からない。


    だが、この空間に慣れた目が見逃すはずもなかった。


    明らかにこの“剥がされた壁”は、異常な意図を持って造られている。まるで、“何か”を隠すために、何重にも覆っていたかのように。



    凛「……見つけてやるよ、“正体”をな」


    静かに呼吸を整え、

    凛は壁の奥へと、手を伸ばした──



    異常発生リスク中

    dice1d110=87 (87)

    (1〜40:大失敗 41〜70:失敗)

    (71〜90:成功 91〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 181スレ主25/06/07(土) 17:46:31

    【探索成功】7:00


    剥がれた壁の奥、凛の指先が冷たい何かに触れた。
    それはファイルのように薄く──しかし触れた瞬間、まるで内部に“動く気配”が宿っていた。


    凛「……これは──記録か?」

    ゆっくりと引き抜いたそれは、
    透明なカバーに封じられた、古い観察書類だった。
    表紙には、黒いマジックで殴り書きのように書かれている。


    《対象名称:A20号被験体》


    凛は眉をひそめ、目を走らせた。
    その記録には、こう綴られていた。

  • 182スレ主25/06/07(土) 17:47:14

    【対象名称:A20号被験体】
    異常発生個体──剥離性幻影現象確認。
    自己複製・擬態能力を保持。
    被験体は明確な“自己認識”を持ち、接触した観察対象や職員の記憶に干渉。
    干渉後、擬態による“幻影”を形成し、対象の油断を誘発──その後、“捕食行動”に移行。
    ※複数職員が幻影との区別に失敗し、記録上「行方不明」または「精神異常」の診断。


    凛「……記憶を喰う怪異、ってか……」

    背後で、タビトが再び「うぅ」と鳴いた。
    凛は小さく息を吐きながら、資料をポーチに収める。


    凛「まあいい、喰わせなきゃいいんだ──“誰の記憶”もな」

    凛が立ち上がると、照明が一瞬だけ“明るく”なり、またすぐにチカチカと不規則な点滅を始めた。

    何かが“気づいた”ような、
    嫌な予感だけが、静かに残っていた──。

  • 183スレ主25/06/07(土) 17:51:24

    【A-7通路:第一区画“剥離の間”探索:②薄暗いガラスケースの中・凪誠士郎】
    【探索開始】7:00


    凪の視線が、
    部屋の隅に据えられたガラスケースに留まった。


    凪「……こっちは、展示みたいなやつか」

    かつて医療器具が並べられていたと思われるそのケースは、今では薄汚れ、ところどころに亀裂が入っている。

    光の届かないその奥には──
    何かが、斜めに引っかかっていた。


    凪「……んー、あれ……レオ、何か見える?」

    振り返ると、
    紫の猫・レオが静かに凪の隣に座っていた。
    しなやかに尻尾を揺らしながら、凪と同じ角度でガラスの奥を覗いている。

  • 184スレ主25/06/07(土) 17:52:12

    凪「やっぱ気になるよね……、じゃあ取り出してみよ」


    無造作に腰を落とし、

    ガラスケースの端に指をかける。

    途端に、軋むような音とともに、ケースの蓋がわずかに持ち上がった。



    ──ぎぃぃ……。



    凪は眉ひとつ動かさず、

    そのまま慎重に隙間へ手を差し入れていく。



    「……ンー」


    まるで止めるようなその鳴き声を聞きながらも、

    凪の指先は、ケースの奥にある“何か”へと、

    静かに届こうとしていた。



    異常発生リスク中

    dice1d110=53 (53)

    (1〜40:大失敗 41〜70:失敗)

    (71〜90:成功 91〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 185スレ主25/06/07(土) 18:00:22

    【冴の固有能力:最適解──発動】


    ──ピキィ……!

    何かが、指先に触れた。
    凪がガラスの隙間から引き寄せようとしたその“奥の物”は──一瞬だけ“生き物のように”動いたように見えた。


    凪「……あれ」

    かすかに眉を寄せかけた、その時だった。


    冴「凪誠士郎」

    低く鋭い声が、背後から飛ぶ。


    凪「んー……また?」

    冴「さっきのケース、反応が鈍い。そっちは“フェイク”の可能性がある」

  • 186スレ主25/06/07(土) 18:01:08

    冴は視線だけを動かし、

    凪の前にあるガラスケースを見ていた。

    その目は冷静だったが、確実に“何か”を見抜いていた。



    冴「そこ、ガラスの内側。上部が二重構造になってる。狙うなら──右奥だ」


    凪「……あー、確かに。言われてみれば……うん、やる気出てきたかも」



    背後でレオが控えめに「ふにゃ」と鳴いた。

    それに応えるように、凪は再びガラスの蓋に指をかけ、今度は狙いを修正して──再び手を差し入れる。


    凪「……じゃ、リベンジいきまーす」



    異常発生リスク中

    dice1d110=90 (90)

    (1〜40:大失敗 41〜70:失敗)

    (71〜90:成功 91〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 187スレ主25/06/07(土) 18:47:11

    【再試行成功】7:00


    ──カチリ。

    凪の指先が、ガラスの奥にある金属片を捉えた瞬間、小さくもはっきりとした感触が伝わってくる。
    まるで“選ばれた者にだけ応じる”ような、静かな応答。

    ごく小さな楕円形の収納スペースに収められていた、透明なカプセル状のアイテム。


    凪「……取れた」

    淡々と取り出したそれは、掌に収まるほどのサイズで、中心には青白い光が微かに灯っている。
    構造は非常に複雑で、内部には細かな結晶が刻まれており、時間の流れすら“織り込まれている”かのような印象を与える。


    冴「……それ、解析補助系だな。見たことない構造だが」

    凪「たぶん、これ──いいやつ」

    レオが小さく鳴く。「ふにゃ」

    凪は静かにそれをポーチへ収めた。
    どこか、時間の“ひずみ”すら封じたような、
    その力を感じながら。


    ■入手アイテム
    ・《ラグナ・オービット》×1:探索・戦闘時の【大失敗(ファンブル)】および【失敗】を1回だけ【自動成功】に変換する。

  • 188スレ主25/06/07(土) 18:57:08

    【A-7通路:第一区画“剥離の間”探索:③床下のタイルに浮かぶ“黒い染み”・千切豹馬】
    【探索開始】7:00


    千切「……なあ、これ……見覚えある形してない?」

    低く、乾いた音を立てて踏み鳴らされた白いタイル。
    その中央に染み出すように広がった“黒い染み”が、不自然にねじれた床の中から滲み出していた。

    ヨイチが低く一声「……ニャ」。

    その鳴き声に促されるように、
    千切はしゃがみ込み、タイルの縁に指をかける。


    千切「まさか“血”ってわけじゃないよな……いや、それならまだマシかも」

    染みは“液体”に見えない。
    粘り気もなければ、乾いてもいない。

    何より、“沈んでいる”ように見えるのだ。

    タイルの内側、つまり床下に──何かが、ある。

  • 189スレ主25/06/07(土) 18:57:39

    千切「……よし、ちょっと掘ってみる」


    固まった空気を蹴散らすように、

    千切は力を込めてタイルを動かし始める。


    冷気が、じわりと指先に纏わりついた。



    千切「出てこいよ、やばいのじゃなくて“役立つやつ”!」



    異常発生リスク中

    dice1d110=101 (101)

    (1〜40:大失敗 41〜70:失敗)

    (71〜90:成功 91〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 190スレ主25/06/07(土) 19:15:48

    【探索大成功】7:00


    タイルの隙間が、わずかに浮いた。


    千切「……っし、引っかかった」

    千切が力を込めると、ガコンと鈍い音を立てて、
    床の一部が持ち上がった。


    その奥──。

    ひどく冷たい空気が噴き出す。
    まるで地下から這い上がってくる“誰かの息”のように、湿り気とざらつきを孕んだ風が、千切の頬を撫でた。

    ヨイチが、鳴かずに動かない。
    じっと、奥を見ている。


    千切「……あった」

    露出した空洞の中に、ふたつのものがあった。

    ひとつは──十字に折り重なった銀灰色の金属片。
    その形は人工的だが、
    どこか「骨」のような冷たさを宿している。
    千切が触れた瞬間、その表面に、ぬるい“温度”が走った。

  • 191スレ主25/06/07(土) 19:16:49

    千切「これ……前にも見つけたな」

    裏面に刻まれたコードは、古すぎて解読不能。
    だが、肌に触れるだけで、不思議な“安心感”が湧いてくる。


    そしてもうひとつ──。
    床の割れ目に、差し込まれるようにして固定されていたのは、黒い金属板。

    そこには“011”というナンバーが刻まれていた。
    そして、そのプレートには、極めてわずかな“磁力”のような感覚があった。


    千切「……よし、他のと組み合わせられる」

    千切はそれを静かに拾い上げ、ヨイチと目を合わせる。

    ヨイチは、小さく「にゃ」と鳴いた。
    まるで、「それは、正しい選択だった」とでも言うように。


    千切「……お前らを絶対、取り戻すからな」

    その呟きは、かすかに震えていたが、
    確かな“決意”を宿していた。


    ■入手アイテム
    ・《ペイルミリオン・コード》×1:探索・戦闘における【大失敗(ファンブル)】および【失敗】時のSAN値減少および精神異常を1回のみ完全無効化する(2つ目)
    ・《喚起プレート:No.011》×1:No.02、No.05、No.07と組み合わせることで効果を発揮。戦闘時、失敗者3名のダイスの振り直しが可能になる(使用後も消滅せず、他の喚起プレートと組み合わせて効果追加)

  • 192二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 20:17:14

    お嬢やるやん

  • 193スレ主25/06/07(土) 20:20:22

    【A-7通路:第一区画“剥離の間”探索:④配線がむき出しになった監視端末・糸師冴】
    【探索開始】7:00


    冴はゆっくりと、室内奥──
    壁際に据えられた端末へと歩を進めた。

    古びたモニター台に取り付けられた監視装置は、
    かつて使われていた名残を辛うじて留めている。

    ただし──

    背面から這い出したケーブルは、
    まるで“腸”のように垂れ下がり、床を這っていた。
    剥き出しになった配線の根元からは、時折“じり……”とノイズ混じりの音が漏れている。

    イッキが足元で鳴いた。
    「にー」と、やや控えめな声。
    だが、冴の目はすでに、画面の異変を捉えていた。

    画面は黒いまま、
    信号は完全に断絶している……はずだった。

  • 194スレ主25/06/07(土) 20:20:56

    冴「……点滅してる」


    わずかに残る電力か、

    それとも“別の意志”によるものか。


    モニターの一角が、

    一瞬だけ“ノイズ混じりの記号”を浮かべた。

    それは何かのコード。あるいは、警告。

    そして、“呼びかけ”にも見えた。



    冴「……見たくないものが、映りそうだな」


    ぼそりと独り言のように呟く。

    だが、その声音はまったく動じていない。


    冴は、ケーブルをひとつ避けながら、

    むき出しの端末にゆっくりと指をかけた──



    異常発生リスク中

    dice1d110=42 (42)

    (1〜40:大失敗 41〜70:失敗)

    (71〜90:成功 91〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 195スレ主25/06/07(土) 20:22:52

    >>192 上限解放をしっかり活かしてくれてますね!

  • 196スレ主25/06/07(土) 20:47:36

    【探索成功】7:00
    【100特典:失敗を自動成功に変換】
    【全員成功:パーフェクトアイテム取得】


    冴がむき出しの配線に触れた瞬間、
    モニターのノイズが一瞬、鮮明な画像へと変化した。

    映ったのは、無人の入院病棟通路──そして、そこに「蛍光グリーンの光」がぽつんと灯っていた。

    次の瞬間、画面がパチンと音を立てて途切れ、
    端末の側面がカコン、と小さく開いた。


    冴「……あ?」

    端末の排出口から滑り出すように現れたのは、
    小さな箱だった。

    掌に収まるほどのサイズ。
    薄く光沢を持つ、蛍光グリーンの外装がほのかに脈動している。

  • 197スレ主25/06/07(土) 20:48:14

    冴は慎重にそれを手に取る。

    ――箱の中には何も入っていない。
    ただ、ぴったりと“何か”が嵌め込まれるような窪みがあった。


    冴「……これは、あの宝石用か」

    かつて手に入れた、蛍光グリーンの宝石──まるで、それを迎える“器”のように、箱は静かに光を放つ。

    何かが起こる気配はまだない。
    ただ、明らかに“備えが整った”という空気だけが、静かに満ちていた。


    ■入手アイテム
    ・《蛍光グリーンの小さな箱》×1:中に入手した蛍光グリーンの宝石を入れることができる。効果は不明だが、戦闘時に自動発動する。

  • 198スレ主25/06/07(土) 20:58:36
  • 199スレ主25/06/07(土) 21:00:37

    ●ダイス成功確率(探索)

    ・千切豹馬:9/18(最適解:0/2)(自動成功除く)
    ・凪誠士郎:8/18(最適解:2/3)(自動成功除く)
    ・糸師凛:8/18(最適解:5/7)(自動成功除く)
    ・糸師冴:7/18(最適解:1/3)(自動成功除く)


    ●ダイス成功確率(戦闘)

    ・千切豹馬:22/33(ファンブル影響除く)
    ・凪誠士郎:21/33(クリティカル影響除く)
    ・糸師凛:23/33(クリティカル影響除く)
    ・糸師冴:24/33(ファンブル影響除く)


    ●クリティカル/ファンブル(探索・戦闘)

    ・千切豹馬:クリティカル(101、103、108)
    ・千切豹馬:ファンブル(1、4)
    ・凪誠士郎:クリティカル(98、99、100)
    ・凪誠士郎:ファンブル(1、4)
    ・糸師凛:クリティカル(97、98、98、103)
    ・糸師凛:ファンブル(2、2、4、5)
    ・糸師冴:クリティカル(96、97、98、98、100)
    ・糸師冴:ファンブル(2、2、4)

  • 200スレ主25/06/07(土) 21:04:07

    次回作のネタを1部公開(構成中)

    ■ 馬狼照英
    性格:傲慢、超自信家、声がデカい、よくキレて叫んでる
    特徴:毎回装備がダサい or 恥ずかしいため常にキレてる。結構な頻度でメイド服が装備になり、凪に「メイドバロウ」と煽られる。
    小ネタ:「おい!!!装備名に“ラブリー”ってついてんだけど!?」など被害者枠No.1


    ■ 雪宮剣優
    性格:ノリよく明るい、負けず嫌い、穏やかだが戦闘時は気性が荒くなる
    特徴:勝手にイベントを進行させようとしてキレられる、よく眼鏡を破壊されて戦闘不能扱いにされる「本体は無事だから!!!」とキレるも棺に詰め込まれる。
    小ネタ:「次ここでしょ?」とシナリオを先読みするが、だいたい外すので絵心にキレられる。彼にだけシナリオが配布されない時がある。

オススメ

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