【SS】にせティーパーティーの逆襲 Part4

  • 1スレ主25/06/05(木) 20:49:44

    ある日突然ティーパーティーの前に自分たちの偽物が現れる、そんなお話。
    おそらくこのパートで完結する……と思う。

  • 2スレ主25/06/05(木) 20:50:19
  • 3スレ主25/06/05(木) 20:51:09

    これまでのあらすじ

    ある日突然セイアの前に現れた自分自身のミメシス、模倣セイア。
    ミメシスではあるものの、本物のセイアとまるで本物の姉妹のように互いの心を通わせていく。

    しかし仲間であるはずの模倣ミカと模倣ナギサは裏でトリニティを奪い取る計画を立てており、ナギサたちと対立することになってしまう。
    戦いの末、トリニティは一時ミメシスたちを取り押さえることができたものの、ミメシスたちの首領メフィストフェレスの策略により逆転を許してしまった。

    なんとメフィストは一般市民へ先生から強奪したシッテムの箱および大人のカードの模倣データを支給し、ユスティナ信徒のミメシスを指揮させることで街全体を覆い尽くすほどの数の兵士を用意していたのだ。

    市民たちは虚実を織り混ぜた悪意ある情報、あるいは元から抱いていた不信感によってトリニティへの悪意を持った者ばかりで、不正を正そうとする心を利用され、トリニティを奪い取るゲームへと加担させられてゆく。

    ゲームの名は『ブルーアークカタストロフ』。
    それは何気ない日常が惨劇へと変わり、方舟の乗船権を奪い合う物語。

  • 4スレ主25/06/05(木) 20:51:27

    そんな中、友人であったはずの模倣ミカや模倣ナギサとのすれ違いによって模倣セイアは命を落としてしまう。
    さらにトリニティは、学園を狙うテロリストたちの手に堕ちる結果となってしまった。

    敗走を余儀なくされるトリニティ。
    だが生徒たちの心は折れておらず、一人、また一人と立ち上がっていく。

    そしてついに、トリニティとミメシスたちによる全面戦争が始まった。
    勝つのは正義か、信念か。

    これは本物と偽物の物語。
    どちらが優れているか、互いの威信をかけた戦いの物語である。

  • 5スレ主25/06/05(木) 20:51:56

    注意
    名有り名無し含め数名オリキャラが出るよ。
    あと設定については捏造多めだけれど、そこは大目に見てくれたまえ。

    また、本スレは一日4000字程度、夕方頃からゆっくりめに更新していく予定だよ。
    感想でも考察でも、レスをもらえるとすごく嬉しい。
    それからこれまで読んでくれた人、♡とレスをくれた人、みんなありがとう。

  • 6スレ主25/06/05(木) 21:02:27

    小ネタ5
    トリニティを地獄へと叩き落とした恐ろしいゲーム、ブルーアークカタストロフ。
    その運営は民間のゲーム開発企業へと偽装したミメシス側の関係者の経営するMeister(マイスター)社だが、元ネタはぶっちゃけブルーアーカイブを運営してるYostarである。

    ヨースターっぽい響きで、かつ自分のことしか考えていなさそうな集団に相応しい名前は無いか探していたところ、マイスターを発見したのでこれを採用。

    ちなみに英語だとマスター、ドイツ語はマイスター、イタリア語では『マエストロ』と言うらしい。
    ミメシスと関係の深いゲマトリアの彼にこんなところで繋がりができるとは何の因果か。

  • 7スレ主25/06/05(木) 21:09:16

    小ネタ6
    Part3の69の、模倣ミカと模倣ナギサのやり取りは実はとても気に入ってたりする。
    もしもエデン条約編でミカが本当にセイアを殺していたら、みたいなイメージ。(ミメシスの特性上多少差異はあるようにはしている)

    PVで出てきたバッドスチルは回収したいけど、この物語のミカは全然曇る気配無いし……と思っていたところに思いついた展開なので、本当に書けてよかったかなと。

  • 8スレ主25/06/05(木) 21:26:15

    トリニティ北門付近、そこでは二人のツルギが激戦を繰り広げていた。

    『はあ、はあ……ぐっ!』

    そう、繰り広げて『いた』なのである。
    決着は既についており、模倣ツルギは地面に倒れ伏していた。

    (おかしい、途中までは互角だったはずだ!なのに途中から攻撃が見切られて、当たらなくなっていった!)

    模倣ツルギは息絶え絶えなのに対しツルギは涼しい顔をしている。
    ツルギが頬についた血を拭うと、そこにあった傷は既にほとんど塞がっている。

    模倣ツルギは他のミメシスと異なり、能力を向上させるための取引を一切行っていない。
    それは自身の力のみで戦うことに誇りを持っていたからだ。

    だから互角の勝負にはなれど、自分が大差をつけて負けることなど想像だにしていなかった。

    『なぜだ!私とお前の実力は互角のはず!なのにどうして……!』

    どうしてここまで差がついたのか、模倣ツルギにはまるで理解できなかった。

    「ただ遊んでいるだけのお前たちとは背負ってるものが違う。こっちはこの後お前らの大将と戦って、学園を取り戻さないといけない。こんな所で倒れてなんていられないんだよ」

    「勝敗を分けたのは信念の違いだ」

  • 9スレ主25/06/05(木) 21:27:42

    ふざけるな、何が信念だ。
    そんなもの気持ちの持ちように過ぎない。
    しかし模倣ツルギにはもう立てる体力は残っていない。
    どうにかできないか考えていると……。

    『ツルギ委員長、東側の戦力が減りつつあります!こちらへ救援をお願いします!』
    『ミネ団長!?状況が悪いのは西側も同じ!ツルギさん、援護はこちらへお願いします!』

    持ち場を離れた模倣ミネと模倣サクラコが、助けを求めて模倣ツルギの元へやってきた。

    『サクラコさん!先にお願いしたのはこちらです!そちらはご自身で何とかなさってください!』
    『順番など関係ありません!こちらは一部のプレイヤーが裏切ったせいで混戦状態なのです!こちらを優先してください!』

    来て早速言い合いをする二人。
    その時模倣ツルギはある秘策を思いついた。

    『ミネ、サクラコ、私にいい考えがある。ちょっと耳を貸せ』

    『何です?いい考えとは』
    『何でも構いません!一刻も早く立て直さないと……』



    『お前らの力、私によこせ』
    『えっ?』 『何を……』

    模倣ツルギは不意を突き、二人のヘイローへ牙を突き立てた。
    咄嗟に離れようとする二人を無理やり押さえつけ、その光の輪を容赦なく噛み砕いていく。

  • 10スレ主25/06/05(木) 21:29:31

    『いやっ!待ってくださいツルギ委員長!!やめてください!!助けっ……いやぁぁぁぁああああ!!』
    『ぐっ、離してください!!やめて!嫌!死にたくない!!助けて!誰か助けて!!殺され……!!』

    そして模倣ミネと模倣サクラコのヘイローは完全に砕け散り、その目から光が消えた。
    二人の遺体はそのまま力無く地面に倒れ込み、頭の先から灰のようにぼろぼろと崩れ、最後には何も残らなかった。

    「なんてことを……!仲間でしょう!」

    その様子を見ていたマシロはあまりにも悍ましい光景に鳥肌が立ち、体が震える。
    彼女たちのしたことは重罪だが、こんなに呆気なく死を迎えていいはずがない。

    そして模倣ツルギは二人の力を手にしたことで大幅に強化され、体力もすっかり元通りになっていた。

    『はあ、はあ……はははは!!これで仕切り直しだ!さあもう一戦やろうか!私のオリジナ……っ!』

    ツルギは驚いただろうか。
    どんな顔をしているか確かめるために模倣ツルギはツルギのいる方へ顔を向ける。
    しかし……。



    「おい」

    予想に反し、ツルギは完全に冷めきった顔をしていた。
    先ほどまでの、自分の力のみで戦っていた時の方がまだ好戦的な顔だった。

  • 11スレ主25/06/05(木) 22:18:20

    それまで浮かべていた笑みが消え、目つきはさらに鋭くなる。
    今のツルギの顔からは失望の二文字しか見られなかった。

    「白けることしやがって。まあいい、一瞬で終わらせてやる」

    己の力で戦うというプライドすら捨てた者に、既にツルギは興味を失っていたのだ。
    あるのはただ、自分の顔で仲間を裏切るという卑怯な手に出た敵に対する怒りだけ。

    ゆっくりと歩み寄ってくるツルギ。
    しかし慌てることはない。
    ミネとサクラコの力を手に入れ、模倣ツルギの方が強い力を持っている。
    しかもツルギは戦いを楽しむためか、事前に報告を受けていたミメシス特効弾を使っていない。
    こちらが諦めなければ勝機はある。

    あるはずだった。



    『ふーっ、ふーっ……!』

    なのに体の震えが止まらない。
    ただ正面の相手を圧倒的な力で押しつぶすだけ。
    しかし、何度攻め方をイメージしても勝てるビジョンが全く浮かばない。

    『ぐっ、このおおおおおおおお!!』

    模倣ツルギは勢い任せに飛びかかったものの、ツルギはその顔面を思い切り殴り飛ばし、たったの一撃でノックアウトしてしまった。

    「他人の力に依存して、私に勝てるわけねぇだろ!!」

  • 12スレ主25/06/05(木) 22:19:34

    『んっ、ぐうううううう……!』

    しかし腐ってもツルギのミメシス、簡単には意識を手放さない。
    だが既に牙は折れ、反撃する気力を完全に失っていた。

    駄目だ、勝てない。

    『ひっ、ひいいいいいい!!メ、メフィスト様……!』

    模倣ツルギは情けない悲鳴を上げ、その場から逃走してしまった。

    「はあ、追うか……マシロ!悪いがここを頼みたい!」
    「分かりました!」

    ツルギは逃げた模倣ツルギを追いかけようとするが……。

    〈いや、追わなくていい〉

    突如セイアから通信が入った。

  • 13スレ主25/06/05(木) 22:38:55

    「セイア様?」
    〈未来を視たが、逃げた彼女がこれ以上被害を出すことはない。今から行っても、僅差でメフィストの方が先に合流するだろう〉

    〈そこから先、君のミメシスは私の視た未来に登場しない。恐らく彼女は……〉

    セイアはそれ以上言わなかったが、ツルギはその結末を察した。

    〈代わりに今から送る座標の場所へ向かって欲しい。望むような戦いができず、不完全燃焼だろう?そこへ行けば思う存分暴れられるよ〉
    「!!」

    セイアの示す先に何があるのかはわからなかったが、彼女はくだらない嘘をつく人ではない。

    「くくくっ、ヒヒッ……ヒャアハハハァァァァァァ!!!!」

    ツルギは次なる戦いへの期待に胸を膨らませ、逃げた模倣ツルギとは反対方向へ駆け出していった。

  • 14二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 23:57:11

    同じスペックどうしの戦いなら、その勝敗を分けるのは気持ちの持ちようなのは知っているね?
    最低限の矜持すら捨てたらもうダメだ。
    まぁ無改造で精神年齢8歳ぐらいなら……自分が一番強いと思ってるガキ大将感覚か?

    模倣ミネ、サクラコはここで退場か……ちょっと予想外

  • 15二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 06:08:56

    ツルギは楽しそうだなぁ

  • 16スレ主25/06/06(金) 07:59:03

    保守コーナー 〜ブルーアークカタストロフのルール〜

    幹部級ミメシスに対する継承行為
    ミカ、ナギサ、サクラコ、ミネ、ツルギ、ハナコのミメシスは幹部級ミメシスとして扱われ、単体で戦局を大きく左右する程の力を持つとされている。

    そのため、戦力の低下を防ぐ意味合いとしてゲームマスターの許可なく彼女達を捕食、継承することは禁じられている。





    しかし、一般的なユーザーの使役するミメシスでは彼女たちに勝利することはほぼ不可能なため、一見意味の無いルールに見える。
    実のところこのルールが設定されている理由は、幹部級ミメシス同士による共食いを防ぐためのものである。

  • 17スレ主25/06/06(金) 15:13:24

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    Meister社付近の大通りにて、ヒフミとアズサはメフィストと戦いの火花を散らしていた。

    『何なんですこの子たち、まともに攻撃する隙が無い……!』

    しかしヒフミとアズサの息の合ったコンビネーションによって、ほぼ一方的にメフィストを圧倒しているのであった。
    クルセイダーが素早く動き回り砲撃を行い、リロードしている間にアズサがトラップと銃撃で隙を潰す。

    (戦車とアズサも厄介だけど、一番鬱陶しいのは……)

    そしてメフィストへ攻撃しているのは二人だけではない。

    ヒフミがクルセイダーの周囲に展開した自走式のデコイ発生装置、そこから展開される忍者装束を纏ったペロロ『ニンペロさん』の人形が手裏剣攻撃を放つことで、ヒフミとアズサに埋めきれない隙を完璧に潰しているのだ。

    『ああもう、こんなブサイクな奴に!!』
    「この間はペロロ様をお呼びできなかったから負けたんです!お願いします、ニンペロさん!!」

    ヒフミはさらにデコイを展開し、ニンペロさんの数を増やす。

    (さらにギアを上げてきた!悔しいけど、ここは一旦態勢を立て直す!)

    メフィストは発煙弾を投げ、一度姿を消した。
    そしてヒフミたちの動きが止まったところで、あえてクルセイダーの側を通ってアズサへ接近する。

  • 18スレ主25/06/06(金) 18:21:42

    (ほんの一瞬でもいい。隙を作って、まずはアズサから潰す!)

    メフィストはその見た目を活かしてヒフミの振りをし、アズサの隙を突く作戦だった。

    『アズサちゃん、大丈夫ですか!?メフィストの姿が見えない以上、私たちも固まって周囲を警戒しましょう!ぶべあ゛ぁぁっ!!!!』

    しかしメフィストの思惑は大きく外れることになる。
    僅かにでも動揺するかと思いきや、アズサはヒフミと瓜二つのメフィストの顔を見た途端、一瞬の躊躇いもなく全力で顔面を殴りつけてきたのだ。
    大きく吹っ飛ばされ、背後にあったクルセイダーの装甲に後頭部を強打する。

    『い゛っだぁぁぁぁ……!!な、何で……!?』

    以前補習授業部と遊んだ際に本人を見て学んだヒフミの物真似には自信があった。
    またあの時の香水ように見分けるためのトリックでも仕掛けたのか。

    メフィストがトリックの正体を考えていると、クルセイダーのハッチが開きヒフミが顔を覗かせる。
    鼻血を出しながら上を見上げヒフミの姿を確かめたメフィストは、己の正体を見破られた原因を即座に理解した。

    「そんな寝ぼけた物真似が通用するか!!」





    「今日のヒフミは、ポニーテールだ!!!!」
    『くそっ!!知らないですよそんなの!!』

  • 19スレ主25/06/06(金) 18:51:31

    クルセイダーから顔を出したヒフミは髪型を普段の二つ結びではなく、ポニーテールにしていたのだ。
    対してメフィスト扮するヒフミはいつも通りの髪型。
    単純だが確実な方法に引っかかったメフィストは悔しさを滲ませる。

    今の今まで顔を出さなかったのはそれをメフィストに悟られないため。
    逆に言えば、それを公開したということは戦いに決着をつけるということを意味していた。

    ヒフミはクルセイダーを急旋回させ、メフィストをニンペロさんたちの密集地帯へ吹っ飛ばす。

    (駄目だ、まるで通じない!けどまだだ!ヒフミの『人間』関係に関する記憶は全部見たけど、まだ見ていない記憶も見直す!それで何か弱点になりそうなものを探し出して、突破口に繋げてやる!)

    かつて捕食した模倣ヒフミの記憶を改めて辿るメフィスト。
    しかし……。

    「ペロロ様!!」

    「ペロロ様!!!!」

    「ペロロ様!!!!!!」

    どこを覗いても出てくるのはヒフミが愛してやまない珍妙なデザインの白い鳥、ペロロ。
    そして周囲には手裏剣を飛ばしてくるニンペロさん人形。
    どこもかしこもペロロ、ペロロ、ペロロの波状攻撃。
    まさにオールレンジ・ペロロ攻撃。

  • 20スレ主25/06/06(金) 18:58:20

    『うわあああああああああああああああああ!!』

    ペロロに全てを支配され、思わず発狂するメフィスト。
    そしてその後ろから飛び出してくるアズサ。
    動けなくなったメフィストの腹部に銃口を突きつけ、至近距離でありったけの銀の弾丸をお見舞いする。

    「Vanitas!Vanitas!Vanitas!Vanitas!Vanitas Vanitatum!!」
    『ごふっ……があ゛あ゛っ!!』

    「Vanitas!Vanitas!Vanitas!Vanitas!Et omnia Vanitas!!」
    『げほっ……げえ゛え゛っ!!』

    「全ては無に帰し、徒労であると知れ!!!!」
    『ぐああああああああああああっ!!!!』

    そして最後にその腹部を蹴り飛ばし、メフィストを空中に放り出した。

    『ぎぃいいぃっ!!』
    「期間限定、ペロロ様砲弾です!!」

    ヒフミはすかさずクルセイダーの大砲から銀の弾丸と同質の砲弾を発射、メフィストへ命中しこれまで彼女が取り込んできたミメシスの数に比例したとてつもない大爆発を引き起こした。

    『がああああああああああああっ!!!!』

    これでもかというほど銃弾の雨を受け倒れ伏すメフィスト。
    ヒフミとアズサは動き出す前に拘束の準備に移っており、メフィストは恨めしそうにそんな二人を見ていた。

    『残機はあと五割、このクソガキ共が……!』

  • 21スレ主25/06/06(金) 21:45:38

    『メフィスト様!!』

    しかしそこへタイミング悪く模倣ツルギがやって来る。

    「ツルギさんのミメシス!?」
    「そんな!?こんな時に!」

    模倣ツルギはメフィストの元へ駆け寄り、慌てた様子で状況を報告する。

    『メ、メフィスト様。申し訳ありません、剣先ツルギとの戦いで深手を負い一度退却してきました。西と東も押されています。どうかお力を……』
    『そっか、それはピンチだね。ところでツルギちゃん』



    『さっきからサクラコちゃんとミネちゃんの様子が確認できてないんだけど、これはどういうこと?』
    『!!』

    自分が捕食したものたちへの質問にひどく怯える模倣ツルギ。
    メフィストはブルーアークカタストロフの、ミメシスたちの状況が確認できる画面を見せる。
    画面の中の模倣サクラコと模倣ミネの部分は、消息不明を意味するロスト扱いとなっていた。

    『そ、それは……やむを得ず私が継承しました……』
    『ふーん、自分の力に自信があるからってこれまで取引や継承による強化を一切受け付けなかった癖に、土壇場で主張を変えるんだ?だからあれほど強化しておけばって言ったのに』

  • 22スレ主25/06/06(金) 21:47:55

    『それに私言ったよね?今回の戦いは総力戦だから、私の許可なく『継承』しちゃ駄目だよって。それなのに君はそれを破っていたずらに戦力を減らし、あまつさえ向こうのツルギちゃんを倒すこともできなかった』

    『これ、契約違反だから。ツルギちゃんペナルティね』

    直後、模倣ツルギの胸部から光る鎖のようなものが飛び出し、彼女の体が動かないようきつく縛り上げる。

    『ひいっ!?ま、待ってくださいメフィスト様!申し訳ございません!もう一度チャンスを……!』
    「まずい……ニンペロさん!」

    アズサの指示でニンペロさん人形がメフィストたちへ手裏剣攻撃を仕掛けるが、周囲に見えない壁でもあるのか攻撃が弾かれてしまう。

    『ふふ、第三者が契約内容の履行に干渉することはできないんですよ♪』
    「待って!待って、助け…………ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!』

    断末魔の叫びを上げる模倣ツルギのヘイローを、メフィストは容赦なく噛み砕いた。
    そして、ヘイローを砕かれた模倣ツルギは糸の切れた人形のように倒れ込み、その体は灰のように崩れて消えた。

  • 23スレ主25/06/06(金) 21:51:06

    『ふーっ、やっぱりサクラコちゃんとミネちゃん食ってたな。まあいいか、残機も増えたしこれで三人を失わずに継承できたし』

    そう言っている間にも、メフィストの体の傷がみるみるうちに治癒していく。
    ヒフミとアズサは第二ラウンドに備えて身構える。

    『待った。これ以上ここで暴れたら街が壊れちゃいますよ。私だってこの街好きですし、あっちの廃墟地帯でケリつけません?』

    そう言うとメフィストは背中から真っ黒で巨大な翼を生やし、突風を巻き起こしながら飛び去っていった。
    するとそこへ入れ替わるように先生とマリーが追いついてくる。

    「ヒフミ、アズサ!二人とも無事!?あと、今飛んでいったのって……」
    「ああ、メフィストだ。奴はツルギのミメシスを食って、向こうの廃墟地帯で決着をつけるよう申し出てきた」

    「あと、どうやらサクラコさんとミネさんのミメシスも食べられちゃってるみたいです!その分強くなっているなら、早く追いかけて倒さないと大変なことに……!」

    「よし、すぐに追いかけよう!マリー、また後ろに乗せてくれる?」
    「任せてください!」

    こうしてクルセイダーにヒフミとアズサ、マシンシスターフッダーにマリーと先生が乗り、それぞれ逃走したメフィストの追跡を開始した。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 24スレ主25/06/06(金) 23:15:13

    『んぅ……はっ!?』

    その頃、コハルに敗れ意識を失っていた模倣ハナコが目を覚ましていた。

    『あれ、確かコハルちゃんに負けて……それなのに私、死んでない……?』

    まだ意識が朦朧とする中、辺りの様子を確認するべく体を起こし周囲を見回す。
    そして真横に顔を向けた時、すぐ側でしゃがんでこちらを見ていたコハルと目が合った。

    「やっと起きた。どうだった?死にかけた気分は」
    『ヒィッ!?!?!?』

    先ほどの戦いのトラウマが呼び起こされ、転びながら後ずさる模倣ハナコ。
    あれだけの銃弾を撃ち込まれればヘイローが砕けていてもおかしくない。
    加えて、ユスティナ信徒たちに撃ち込まれていたミメシス特効弾も使われた形跡がない。
    コハルは意図的に自分を生かしたのだと察した。

    『……なぜ、私を殺さなかったんです?』
    「あ、死刑のこと?あれは別に本当に命を奪うとかじゃなくて、それくらい罪深いって意味だから……」

    戦いが終わって銃も没収されているとはいえ、コハルの態度は敵を前にしているものとはとても思えなかった。
    しかし模倣ハナコにも反撃の意思はなく、それどころかどこか内心、安心感さえ感じていた。

    それは友人と雑談をしている時に感じるような、安らかな感情。
    そんな記憶はメフィストとの取引でとっくに捨てたはずだったのに。

  • 25二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 00:31:53

    おぉ…ヒフアズがメフィストを圧倒してる
    セリフといい、やられ方といい、SEED FREEDOMネタが散りばめられている
    記憶をコピーしたことで思わぬデメリットが出た。いやまぁ、鉄火場で切羽詰まってる中で好きでもない物の記憶で埋め尽くされたら発狂してもおかしくはないが
    模倣ツルギは…やはりメフィストにやられたか。これで残るはミカとナギサか…
    第2Rの場所が廃墟…誘われてんなぁ、最悪色彩召喚あるし


    模倣ハナコはコハルカウンセリングか…
    捨てたのは感情ではなく記憶だから新しく作ればいい

  • 26スレ主25/06/07(土) 08:00:42

    保守コーナー 〜ブルーアークカタストロフのルール〜

    違反行為に対するペナルティ
    通常、利敵行為などをした場合は藍輝石の没収および約十分後にアカウント削除の対応を行う。

    ただし、ゲームマスターと契約していた者がそれに違反した場合は上記ではなく、ゲームマスター自らが指定した内容に沿ってペナルティを受けるものとする。

  • 27二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 13:46:00

    念のため、保守。

  • 28スレ主25/06/07(土) 15:20:42

    『……まず、コハルちゃんの質問に答えなくてはいけませんね。本当に死んだかと思った時のその気分は……最悪でした』

    『何も成し遂げられず、言い残すこともできず、心の準備もできないまま突然命を失う。死ぬというのはこういうことなのかと』

    模倣ハナコは俯き気味にぽつり、ぽつりと今にも消え入りそうな声で語り始める。

    『色彩の光が降り注げばこのキヴォトスから生者は消え、ミメシスだけの世界になる。メフィスト様はそう仰っていました』

    『悪人も、正義感に酔いしれる愚かな民衆も、皆消えてしまえばいい。そうでない人も新しい世界を作るためのやむを得ない犠牲だと、そう割り切っていました』

    そこで言葉に詰まる模倣ハナコ。
    その瞳からは涙が溢れ、頬を伝った雫が地面に滴り落ちる。

    『ですが自分が淘汰される側になって、コハルちゃんに撃たれる瞬間、死ぬって思って、それがすごく怖くて、怖くて!たまりませんでした……!!』

    自分が撃たれた時の光景を思い出した恐怖か、声が上擦っている。

    『死ぬことがこんなに怖いことだったなんて……!色彩の光が降り注げば、キヴォトス中で同じことが起こります』

    『その時そこに居る人たちがどんな思いをするか、私は考えていませんでした!いえ、考えようとする発想にすら至りませんでした!!』

    『私は、本当に取り返しのつかない事をしてしまいました!』

    『ごめんなさい、ごめんなさい……!』

  • 29スレ主25/06/07(土) 18:26:13

    両腕を縛られたまま子どものように泣きじゃくり、地に頭を付け謝罪する模倣ハナコ。
    コハルはそんな彼女の肩を手で支え体をゆっくりと起こし、涙と土と煤で汚れた顔をハンカチで拭う。

    『コハルちゃん……?』
    「私は前に大勢のミメシスに囲まれて、死ぬかもしれないって思ったことがあるわ。そういう経験をしたからこそ、大勢の人たちが同じ思いをするような未来は絶対に受け入れられない。だから私は戦うの」

    「それとセイア様から聞いたけど、あんたたち精神年齢は小学生並みなんでしょ?なんで止めを刺さなかったのかって、そもそもそんな子どもの命を奪うなんてできるわけないじゃない」

    コハルの手はほんの少しだが震えていた。
    悪事を働いたとはいえ、親友と同じ顔をした者を手にかけることに対して強い抵抗感を抱いていたからだ。

    そんなコハルの厳しくも優しい、暖かな心に触れたことで模倣ハナコの荒んだ心が少しずつ癒え始める。

  • 30スレ主25/06/07(土) 19:45:37

    「それで、この後はどうするの?もうメフィストたちに協力するとは思いたくないけど」
    『この後……ですか』

    模倣ハナコは少し考えてみるが、思い浮かぶのは悲惨な未来だけだった。

    『考えてもいませんでした。戦力の要となるブルアカを守れず、戦いに敗れ、役目を果たせなかった自分に待っているのは用済みと判断されて『継承』される未来のみですから』

    「……もし生き残ったら?」
    『そうですね、その時は……お友達が欲しいです。対等で、安心できて、気の置けない仲のお友達が』
    「友達ね。どうする、ハナコ?」

    コハルは模倣ハナコの後ろに向かって話しかけていた。
    模倣ハナコがつられてそちらを見ると、ブルアカの掌握を終えてビルから出てきたハナコがそこに立っていたのだ。

    『なっ……!?』
    「終わったんですね、コハルちゃん」

    ハナコは自身の偽物と目線の高さが合うよう、しゃがんで話をする。

    「考えていたんです。私のミメシスなら多少の違いはあれど、根底にある価値観は近いのではないかと」

    その顔は少し悲しそうにしているものの、怒りや憎しみは感じられなかった。

  • 31スレ主25/06/07(土) 19:47:55

    「確かに過酷な環境であったのは間違いないようですが、それでもこの街を混沌の渦に巻き込んだことは紛れもない事実です」

    「そして悪事を働いたあなたは、コハルちゃんによって裁かれました。ですが人の痛みを知った今なら、もう少し違う考えを持つことができるのではないですか?」

    「ですから罪を償って、やり直しましょう。今からでも遅くはありません。一人ではできないことでも、私が手伝いますから」

    ハナコは真っ直ぐと模倣ハナコの目を見ている。
    自分と同じ存在であるため、その言葉に嘘が無いことはすぐにわかった。
    コハルも隣に並ぶようにしゃがみ、優しい笑顔で模倣ハナコへ語りかける。

    「罪を清算したら、その時は改めて友達になりましょう?私だけじゃなくて、ハナコとも。ヒフミとアズサのことも紹介するから」
    「知っているとは思いますが、みんなとても良い人です。私が仲良くできたのですから、あなたにできない理由はありません」
    『……!』

    模倣ハナコは生まれた時からずっと一人だった。
    補習授業部のような仲間はおらず、ひたすら自分の能力を発揮して、形だけでも褒めてくれるメフィストと仲良くなるしか道は無いも同然だった。

  • 32スレ主25/06/07(土) 19:49:07

    そんな模倣ハナコにとって、浦和ハナコとして人を愛し、愛されていた記憶は今の自分の惨めさを際立たせる邪魔なものでしかなかった。
    だからそんなものはさっさと手放したくて、絶対的な視力と戦闘能力に交換してしまった。

    そしてその結果、悪魔の手駒と成り下がってしまった。
    しかし、そんな自分にもコハルは真正面からぶつかって、ハナコは一人の人として諭すように、道を示してくれた。



    『ごめんなさい』

    模倣ハナコはその場に立ち上がって背筋を伸ばし、深々と頭を下げてこれまでの行いを謝罪する。
    彼女の心は決まったようだ。

    『こんな謝罪一つで許されるとは思っていません。全てが終わった後、私は罪を償います。ですがその前に、こんな私の腐った性根を叩き直してくれたコハルちゃんの、あなたの想いに報いたいです』

    『私も、この戦いを終わらせるために協力します!』

    どうやら二人の思いは伝わったようだ。
    コハルとハナコは顔を見合わせ、その表情から互いの考えが同じであることを確かめ合う。

    「決まりね。よろしく、ハナコ二号!」
    「ふふっ♪では、私たちにできることを探しましょうか」

    心を一つにした三人は、この地獄を終結させるため行動を開始した。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 33スレ主25/06/07(土) 23:22:15

    模倣ナギサは焦っていた。
    学園の周囲とブルアカの要となるMeister社は強力なミメシスで取り囲み、街の至る所にも兵を配置できている状況だった。

    勝てるはずだった。
    勝負にすらならないと思っていた。
    しかし実際にはどうだ。
    こちらの戦力は次々と削られ、トリニティの魔の手がすぐそこまで迫っている。

    自分の指揮が悪かったのか。
    このままではメフィストに無能と見做され『継承』のための生贄にされてしまう。
    自分以外誰もいなくなったティーパーティーのテラスで、今にも泣き出しそうになりながら頭を抱えていた。

    すると、テラスの床に一筋の影がかかる。
    何かが上空を飛んでいるのか、模倣ナギサはその正体を確かめるために上を見上げる。



    「ご機嫌よう。少々お時間いただけますか!?」
    『なっ!?』

    なんとそこにはパラシュートでこちらへ降下しようとしているナギサがいたのだ。
    しかもナギサは下から迎撃されないよう先手を打つため、肩にロケットランチャーを担いでこちらを狙っている。

    『嘘でしょう……!?自分の学園なのですよ!?そんなものを撃ったら……!』

    模倣ナギサが言い終わらない内にナギサは引き金を引き、砲弾がテラスへ着弾し大爆発を起こした。

  • 34二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 23:50:02

    模倣ハナコ陥落
    ヒフミは既に自分が吸収、アズサはドリトライ精神持ち、コハルは正実とはいえツルギの代用にはならないし、まぁわざわざ作らないわな。記憶見たならエデン条約編の主役だし、内側からひっくり返されかねないから作らなかったのもあるんだろうな

    次は模倣ナギサか……やっぱり小さい頃はやんちゃだったんじゃないかナギサ様

  • 35スレ主25/06/08(日) 08:06:20

    保守コーナー 〜ブルーアークカタストロフのルール〜

    ゲームマスターとの取引
    一部のミメシスはゲームマスターと取引を行い、オリジナルの生徒には無い力を得ている。
    代償は決して安くは無いが、そのかわり通常のプレイだけでは手の届かない強力な力を手にすることができる。

    そして、取引によって失ったものは時間をかけて積み上げるなどして取り戻すことは可能だが、実現できるかどうかは本人の努力と周囲の協力次第だ。

  • 36二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 14:39:52

    >>35

    失ったままじゃなくて取り戻すことができそうでよかったです。

    このまま無事にキヴァトスの生徒として生きていけることを祈りながら、念のため保守。

  • 37スレ主25/06/08(日) 15:22:06

    『きゃああああああ!?!?!?』

    慌てて転がるように回避する模倣ナギサ。
    爆心地を見ると黒煙がもくもくと上がっていた。
    そして煙が晴れ、その中心にはナギサがロケットランチャーとハンドガンを手に立っているのが見える。
    その表情からは、トリニティに仇なす者を絶対に許さないという強い意志が感じられた。

    『ナギサ様!何事ですか!?』

    テラス前を警護していたミメシスがぞろぞろと侵入してくる。
    しかし……。

    「無礼者!!許可なく神聖な場所に立ち入るなど何事ですか!!」

    ナギサは入ってきたミメシスたちに向かってロケットランチャーを放つ。
    弾は当然銀の弾丸と同質のもので、ミメシスたちは跡形もなく爆散した。

    『ああ、テラスが……!なんて無茶苦茶な!あなたそういうタイプではないでしょう!?』
    「ええ、仰る通りです。あなたたちの不意を突くために慣れないことをしましたが、案外気持ちがいいものです……ねっ!」
    『きゃっ!?』

    ナギサは弾の尽きたロケットランチャーを投げつける。
    慌てて躱す模倣ナギサ。
    どうにか反撃しようと銃を取り出しナギサへ向けるが、ナギサの方が動き出すのが早かった。

    「遅いですよ」

    ナギサは既に構えていた銃の引き金を引き、その弾は模倣ナギサの右肩に命中した。

  • 38スレ主25/06/08(日) 17:32:39

    『あ゛あ゛あ゛っ!?』

    弾の当たったところが爆発を起こし、模倣ナギサは右腕を失う。
    そのはずみで銃を取り落とし、反撃する手段も失ってしまった。

    『はあ、はあ……!助けてっ!ミカッ!ミカぁぁぁ……!』

    ほぼ一方的に蹂躙され、この殺気立ったオリジナルを倒す術は無いと理解させられた模倣ナギサはパニックに陥る。

    「ミカさんなら来ませんよ。今ごろこちらのミカさんが方をつけている頃でしょう」
    『そ、そんな……!?そうです、セイアさん!どこですかセイアさん!?助けてください!殺される!』

    まともに立つこともできず、尻もちをついたまま逃げるように後ずさる。

    「セイアさんも来ませんよ」



    「彼女の命は、あなたたちが奪ったのでしょう……!!」

    鬼のような形相とドスの効いた声。
    度重なるストレスに、さらに畳み掛けるように訪れる悪い状況に模倣ナギサの心はついに限界を迎えた。

    『ううっ……。ぐすっ、ひっく……うわぁぁぁぁぁぁん!!だれかたすけてええええぇぇぇぇ!!』

    子どものように涙と鼻水を流しながら泣き出してしまう模倣ナギサ。

  • 39スレ主25/06/08(日) 17:36:14

    「チェックメイトですね」

    しかしナギサは容赦なく額に銃口を突きつける。



    「…………っ」
    『……ぐすっ、撃たないのですか?』

    ナギサはどうしてもその引き金を引くことができなかった。
    銃を持つ手は震え、その表情は怒りと憎しみ、そして悲しみの混じった複雑なものだった。

    『私が憎くないのですか?私たちはあなた方の大切なものを蹂躙し、奪い尽くしたのですよ?』
    「っ!憎いに決まっているではありませんか!!自分と同じ顔をしているからこそ、なおのこと!」

    しかし言葉とは裏腹に、ナギサは引き金にかけた指を外し、銃を下ろした。

    「ですが私にはできません、ミメシスとはいえ心を持った一人の人を殺めるなど……!」

    この時模倣ナギサはオリジナルとの決定的な違いを思い知らされた。
    いつの間にか失ってしまった、相手の痛みを想像する共感性、そして思いやり。
    模倣セイアの命を奪ったのは模倣ミカだが、仮にその役割が自分だったとしても、おそらくは引き金を引いていただろう。

    「セイアさんから聞きました。あなたもミカさんも、そしておそらくサクラコさんたちも、皆メフィストフェレスに心を壊されたのでしょう?」

  • 40スレ主25/06/08(日) 17:38:35

    「罪は消えませんが、情状酌量の余地はあるはずです。今すぐ投降してください」
    『……甘いですね。敵に情けをかけ、選択肢を与えるなど。ですが私もそのような心を持てていれば、セイアさんの命を奪わずに済んだのかもしれませんね』

    そして気がつけば、模倣ナギサの目からは涙が流れていた。

    『セイアさん、もう一度あなたに会いたいです……。もう一度会って、謝りたい……!』

    ナギサは腰を下ろし、そんな模倣ナギサの頭を優しく撫でる。



    しかし、悪魔はいついかなる時も他人の事情など考慮しない。
    遠くから銃声や爆音が聞こえてくるだけの静かな空間に、突如携帯の着信音が鳴り響いた。
    それは模倣ナギサのもので、画面を見るとメフィストからの着信であることがわかった。

    『……もしもし』
    〈ナギサちゃん大丈夫!?今ミメシスの状況見てたんだけど、君のところに危険信号が出てるから何かあったのかなって!〉

    メフィストはブルーアークカタストロフの、ミメシスの状況を確認する機能を使って模倣ナギサが危機に陥っていることを知ったのだろう。
    そしてこのタイミングで電話をかけてきたその意図を考え、模倣ナギサは己の運命を悟る。

  • 41スレ主25/06/08(日) 20:24:21

    『申し訳ありません、メフィスト様。上空から侵入した桐藤ナギサに重傷を負わされ、もう戦うことも逃げることもできない状態です』

    模倣ナギサは諦めたように現状を報告する。

    〈重傷!?ひどい……!待ってて!すぐ近くにいるミメシスにそっち行ってもらうから!だからそれまで持ち堪えて……〉



    『そうやって私のことを他のミメシスに継承させるつもりでしょう?』
    〈……えっ?〉

    『もううんざりです!散々都合の良いように人を操って、不要になったら捨てる。これまで何人もの同胞がそうやって道具のように捨てられるのを見てきましたが、もう我慢なりません!!』

    『ナギサさんと話して今はっきりと理解しました!私はついていく人を間違えたと!勝手ながら、ここから先は私の意思で行動させてもらいます!』

    『徹頭徹尾くそみたいな思い出でしたね、メフィスト様との『おままごと』は!』
    〈なっ!?〉

    『短い間くそお世話になりました!とっととくたばれ糞野郎!!』

    最後に思い切り言いたいことをぶち撒け、模倣ナギサは電話を切った。
    直後、テラスへ三体のバルバラが侵入してくる。

  • 42スレ主25/06/08(日) 20:26:59

    「なっ!?強力なミメシスを三体も!?」
    『大丈夫です、彼女たちの狙いは私ですから』

    模倣ナギサは怯まず、テーブルの下に置いてあった鞄を手に取った。
    そしてナギサに自身のスマホを手渡す。

    『この端末には、私たちの犯罪のあらゆる証拠が詰まっています。役立ててください』

    『それと、今更こんなことを言う資格が無いのは承知の上ですが、ミカさんやセイアさんとの思い出まで壊してしまうというのは、どうしても受け入れ難いので』

    模倣ナギサの顔は憑き物が落ちたように穏やかだった。
    直前に取った鞄、託したスマホ。
    ナギサはこれから彼女がしようとしていることを察知し、急いで止めに入る。

    「待ってください!!早まらないで!二人でここを切り抜けましょう!」

    ナギサは模倣ナギサの肩を掴み違う道を示す。
    しかし、模倣ナギサは優しくその手を振り解いた。

    『あなたの装備でもこの状況が突破できないことは分かっています。お気になさらないでください。悪事を働いた者がけじめをつける時が来ただけですから』

    模倣ナギサはバルバラたちへ向き直り、勇ましく声を張り上げる。

    『さあバルバラたちよ、私の頭脳が欲しいのでしょう?三人仲良く分けることはできませんからね、早い者勝ちですよ!』

  • 43スレ主25/06/08(日) 20:28:59

    模倣ナギサの挑発を受けたバルバラたちが一斉に襲いかかる。
    ガスマスクを外して模倣ナギサの体を掴み、鋭い牙をヘイローに突き立てている。
    しかしそれでも模倣ナギサは倒れない。

    『ふんっ、ぐっ…………だああああああああああああ!!!!』

    模倣ナギサは桐藤ナギサとしての人生を含め、これまで出したこともないような雄叫びを上げながらバルバラたちを掴み、テラスの柵の手前まで片腕だけで引きずっていく。
    その間にもヘイローはどんどんひび割れていく。

    ナギサにはもう止めることはできなかった。
    今の自分が突っ込んでいっても足手纏いにしかならないのはわかっていたし、仮にそんなことをすれば模倣ナギサの覚悟をふいにしてしまう。
    そして……。

    『さあ、いっしょに地獄に落ちましょうね……!!』

    模倣ナギサとバルバラたちは柵を突き破り、下の庭園へ落下していった。
    直後、校舎全体を揺らすほどの揺れと轟音を響かせ、テラスの真下で大爆発が起こった。

    ナギサはただ静かに、上空へと上がる黒煙を眺めていた。
    もっと違う道があったかもしれないと考えなかったわけではない。
    ただそれでも、模倣ナギサの決断を、覚悟を否定はしなかった。

  • 44スレ主25/06/08(日) 22:37:36

    ナギサは最後に手渡されたスマホの動作確認も兼ね、電源スイッチを押してスリープを解除する。
    表示されたロック画面には模倣ミカ、ナギサ、セイアの三人が笑い合って写っている写真が設定されていた。
    ここに写っている彼女たちこそが、本来の穏やかで優しい仲の良い三人だったのだろう。

    すると再び模倣ナギサのスマホに電話がかかってくる。

    「……もしもし」
    〈ナギサちゃん!?もう、いきなり怒るんだからびっくりしたよ!でも君の言う通り、確かに私の態度も良くなかったかなって。反省してるよ〉

    〈って、それよりも学園!すごい音したけど何があったの!?〉
    「何が『それよりも』ですか。本当に反省しているなら、口が裂けてもそんな言葉は出てこないはずですよ」

    〈…………あっ、本物の方かぁ。よくもナギサちゃんをやってくれましたね?私の大切な仲間を……〉
    「黙りなさい。死なれる前に彼女から力を奪い取りたかっただけでしょう。差し向けたミメシスたちもまとめて爆弾で消し飛びましたよ」

    〈奪う?さあどうでしょう?敵に情報を教えるわけないじゃ無いですか♪〉

    メフィストは白々しく誤魔化すが、ナギサの声色は至って冷静だった。

  • 45スレ主25/06/08(日) 22:39:05

    「確かにそうですね。では私も、セイアさんから聞いたあなたの末路を教えて差し上げようかと思いましたが、やめておきましょう。このような言い方をする時点で、ある程度察しがつくとは思いますが」
    〈……〉

    「最後に二つ。まず今のうちに懺悔の言葉を考えておくのですね。時間の許す限り、じっくりと」

    「それから、たとえどこへ逃げようとも、私たちは地獄の果てまででもあなたを追いかけ回しますのでそのつもりで。そして必ずや、あなたの口に鉛玉をぶち込んで差し上げましょう」

    テラスには他に誰もいなかったから良かったものの、この時のナギサはとても人には見せられない、鬼ような顔をしていた。

    「それでは、ご機嫌よう」

    ナギサは模倣ナギサと同じように、一方的に言いたいことだけを言って電話を切った。
    どうにか冷静に話すことはできたものの、危うく怒りでスマホを握り潰すところだった。

    「ふーっ、さて……」

    ナギサは耳に付けた通信機でセイアに連絡を取る。

    「セイアさん、学園の中枢機能は奪還できました。あとは最後の仕上げのみです。お迎えをお願いします」

    〈お疲れ様、ナギサ。すぐに向かうよ〉

    上空から迎えのヘリの音が聞こえてくる。
    まだ戦いは終わっていない。
    感傷に浸る間もなく、ナギサはセイアと共に次の戦場へと向かっていくのだった。

  • 46二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 00:25:24

    模倣ナギサ退場……奪われてもなお許そうとする辺り、優しいなナギサ様は
    このままメフィストの茶々が無ければな……もしかしたら模倣セイアのように、模倣から抜け出せたかもしれないのにな
    内心、おままごとって認識してたんだね。最期の敵を巻き込んで自爆は、本物でもやりかねないのがね
    セイアはどんな最期を見たんだろうなぁ…最後の仕込みとは…?


    残るは模倣ミカだけか……本格的にBADENDスチルみたいになってきたねぇ
    一人ぼっちのお姫様

  • 47二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 01:34:47

    >>46

    死体が見つかっていないのでわずかでも生きているかもしれない。

    ここから奇跡が起きて、3人で暮らせる可能性はあるかもしれない。

    最後までもう一度3人で仲直りして、やり直せる可能性を信じる。

  • 48スレ主25/06/09(月) 07:18:45

    保守コーナー 〜ブルーアークカタストロフのルール〜

    残機について
    ミメシスは通常、敗北しても藍輝石さえあればその場で復活することが可能。
    そしてそれ以外にも、他のミメシスを取り込んでいる場合はそれを残機として消費することで、藍輝石を消費することなく復活することができる。
    ただし、体の損傷が激しい場合は復活地点はプレイヤーの持つシッテムの箱付近となる。

    また、ゲームマスターおよび幹部級ミメシスについては操作するプレイヤーが存在しない関係上、残機が0になるとゲームオーバー扱いとなり復活ができなくなる。

    いずれにせよ、限りある命を大切にしよう。

  • 49二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 08:20:29

    >>48

    来世では死んだ全員が仲良く青春を送れることを祈ります。

  • 50スレ主25/06/09(月) 15:27:54

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    学園の正門前広場ではミカと模倣ミカの激戦が繰り広げられているが、それはともすれば地形すら変えてしまいかねない非常に激しいものだった。
    両者一歩も譲らず、撃って躱してを繰り返している。

    『ああもう、ちょこまかと逃げ回って、鬱陶しいなぁ!!』

    ミカは攻撃を回避するのに重きを置いているのに対し、模倣ミカは攻めに回ることが多かったためその分疲労が蓄積していた。
    加えて、ミカを仕留め切れないことに対する苛立ちも募る。

    『見えた!』

    痺れを切らした模倣ミカは一瞬の隙を見つけ、一気に勝負を決めにいった。
    ミカが銃を構えたところで、その弾道から外れるように体勢を屈めながら猛スピードでミカの元へ距離を詰める。
    そしてそのまま、下からミカの銃を勢い良く蹴り飛ばした。

    『私の勝ち!お姫様に相応しいのは私だよ!』

    しかしこの状況でもミカは顔色ひとつ変えなかった。
    蹴り飛ばされた銃に目もくれず、即座に後ろ腰に手を回し、二丁のハンドガンを取り出す。

    『なっ!?』

    この時模倣ミカは、これまでのミカの戦い方が全てこの瞬間のために撒かれた餌であったことに気付く。
    模倣ミカを苛立たせるため回避に専念し、一気に勝負を決めさせるため、わざと大きな隙ができるような形で銃を構えていたのだ。

  • 51スレ主25/06/09(月) 18:35:21

    そして銃を蹴り飛ばされるのも織り込み済みで、すぐ次の動作に移れるようあえて緩く握っていた。

    しかし気付いてももう遅い。
    模倣ミカは怒りに任せて大振りの蹴り上げをしてしまったことで片足立ちとなり、すぐに体勢は立て直せない。

    「自分のことしか考えられない悪い子は、お姫様になんてなれないよ!」

    ミカは両手の銃で模倣ミカの両膝を撃ち抜いた。

    『あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!』

    使われたのは銀の弾丸で、命中した箇所が爆発したことで模倣ミカは両膝から下を失い、バランスを崩してその場に倒れた。

    『ぐっ、ああっ……!そんな……わ、私が負ける?』

    ミカは油断せず、さらに模倣ミカの両肩を撃ち抜いて腕を奪っていく。

    『やだああああああ!!やだ、痛いのやだぁ!!はあ、はあ……げほっげほっ!うぅっ、この……!』

    手足を失った模倣ミカは芋虫のように地面に這いつくばることしかできず、隕石を落とそうとするも既にそんな力は残ってない。
    戦いはミカの勝利で幕を閉じた。

    『ねえ何で!?なんでみんなミカのこといじめるの!?私はただ、お姫様になりたかっただけじゃん!!』

    何もできず、負け惜しみのように喚き散らかす模倣ミカ。

  • 52スレ主25/06/09(月) 18:38:31

    自分が不利になった途端被害者面をする様子は、まるで聞き分けのない子どものようであった。

    「他の人から大切なものを奪うことが、お姫様のやることなの?」

    しかしミカはそれに対しても毅然とした態度で返す。
    悪事を働いたことから目を背けてはいけない。
    ミカの言葉には、かつての自分への戒めでもあった。

    『っ!?ん゛〜〜〜〜!!うるさいっ!うるさいっ!!ばーか!ブス!ブス!』

    『なんで私だけ怒られないといけないの!?自分だって魔女のくせに、偉そうなこと言わないでよ!これまで自分のしてきたことを忘れたの!?』

    模倣ミカの言葉に、ミカの目つきが鋭くなる。
    しかしそこにあるのは怒りだけでなく、罪に対する苦しみも含まれていた。

    「忘れるわけないよ。これ以上同じことを繰り返さないために、私は自分のした事を忘れない」

    「だから、あなたも罪を償おう?私が支えにだってなるし、一日も早くあなたの心に平穏が訪れるよう、祈るから」
    『うううううう…………』

    力でも心でも負かされた模倣ミカはもう何もすることができず、ただ唸ることしかできなかった。
    しかし流石は強力な力を持ったミカのミメシス、傷は既に塞がり、数秒前と比べて少しずつ手足が再生しつつあった。

  • 53スレ主25/06/09(月) 20:25:50

    ミメシスの体であれば失った手足は時間が経てば戻る。
    どうにかここを切り抜けて、万全の状態になったら今度こそ復讐してやると模倣ミカは意気込む。
    その時……。

    『っ!メフィスト様!?』

    模倣ミカは突如何かに気づいたように天を見上げる。
    直後、黒い羽根を生やしたメフィストがまるで堕天使のように天から舞い降りた。

    『よかった、まだ無事だった!』
    『ねえ助けてよメフィスト様!こいつらが私のこといじめるの!早くやっつけ……』

    縋るようにメフィストに助けを求めるも、彼女は模倣ミカの気持ちなど気にも留めていなかった。
    メフィストは模倣ミカの元へ一目散に駆け寄り、そのヘイローに牙を突き立てる。

    無事だったと安心していたのは、自分が継承する前に模倣ミカが消滅していなかったからだ。

    『えっ!?待って!やだ!やだやだやだ!!死にたくない!!助けてナギちゃん!セイアちゃん!せんせ……!』

    しかし模倣ミカの言葉は届かず、ヘイローは完全に噛み砕かれた。

    『あ……』

    模倣ミカが最後に見たのはこちらを助けようと必死な顔でメフィストへ銃を撃ち、手を伸ばすミカたちの姿だった。
    皮肉なことに、敵であるはずなのに味方であったメフィストよりも自分を気にかけてくれているように見える。

  • 54スレ主25/06/09(月) 20:27:56

    自分はどこで道を間違えたのか。
    最後の最後にそれを考え始めたところで、目の前が真っ暗になった。



    『ふーっ』
    「ひどい……!味方に何てことを!」

    ミカがメフィストへ銃を向けるも、メフィストにはトリニティの面々など視界に入っていないようであった。

    『全く、誰も彼も役に立たないんだから。結局、最後に信じられるのは自分だけだね』

    メフィストは不満げに独りごちた後、再び羽根を羽ばたかせどこかへと飛び去っていった。
    そして残された模倣ミカの遺体は末端からぼろぼろと崩れ、最後には完全に崩れて消えてしまう。
    そこにはスマホが一台ぽつんと残されているだけだった。

    「これは……」

    ミカはスマホのスリープを解除する。
    するとロック画面には模倣ミカ、ナギサ、セイアの三人が笑い合って写っている写真が設定されていた。
    憎しみに呑まれてしまう前には、ここに写っているように仲の良い三人だったのだろう。

    ミカはスマホを胸に当て、死んでいった模倣ミカへ祈りを捧げる。

    「許せないよね。あなたの仇、必ず取るから!」

    ミカはそのスマホを近くの正実生に預け、メフィストの向かった方へと走り出した。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 55スレ主25/06/09(月) 22:09:38

    『よっと。うん、ここからへんかな』

    大空を舞っていたメフィストは、トリニティ自治区の外れにある廃墟地帯に降り立った。
    広い大通りにはそこかしこに瓦礫が落ちており、周囲には廃墟となったビルがいくつも立ち並んでいる。
    そこはかつて、ミメシスたちの拠点としても使われていた場所でもあった。

    メフィストはここで全てを終わらせるつもりである。
    模倣サクラコ、ミネ、ツルギ、ミカに加えてこれまで取り込んできた全てのミメシスの力を総動員し、単身トリニティを制圧する作戦に切り替えたのだ。

    するとそこへ一台の戦車が到着する。

    「見つけました、アズサちゃん!これが最後です。気を引き締めましょう!」
    「そうだなヒフミ。もう逃さない、覚悟しろメフィストフェレス!」

    聞こえてきたのはヒフミとアズサの声。
    先ほどは不意をついた作戦に遅れをとったが、もうあんな醜態は晒さない。

    『逃げる?いやいや、街を壊したくないってさっき言ったじゃないですか』

    そう言うとメフィストは天高く右手を掲げた。

    『本当は準備を整えてからが良かったんですけどね。けどもう出し惜しみは無しで。全力でぶっ殺してやる……!』

    すると、突如妖しい光が上空からメフィストへと降り注ぐ。
    一体何の光なのか、その正体を確かめるべくヒフミとアズサは空を見上げる。

    「そんな、これは……!」
    「アズサちゃん、あれって……!」

  • 56スレ主25/06/09(月) 22:11:47

    二人とも言葉にできない恐怖感を感じていた。
    彼女たちの視線の先、分厚い雲の向こうに大きな、とても大きな黒い円形が影になって見えていた。
    そして雲が少しずつ逸れ、その全貌が明らかになる。

    まるでブラックホールのような何か。
    解釈されず、理解されず、疎通されず、ただ到来するだけの不吉な光。
    目的も疎通もできない不可解な観念とも言い表される。

    『色彩』がすぐそこまで迫っていた。
    観測した者を狂わせる光を放つ、正体不明の何か。

    「あれが『色彩』……!」

    他のミメシスを取り込んだだけなら十分戦えると思っていた。
    しかし厄介な戦力が上乗せされたことで、アズサは一時退却を視野に入れ始める。

    『うっ!!ぐっ、おぉ……!あたま、われる……!!やっぱりセイアちゃんみたいにはいかない……か……!それでも!!』

    狂気の光を浴びたことでメフィストの右手にひび割れが生じ、やがて全身に広がっていく。
    しかしメフィストは苦痛に耐えながらその光に身を晒していく。
    するとひび割れから白い光が漏れ出し、それが全身を包み込んだ瞬間、辺りには目も開けられないほど眩しい光の爆発が起こった。

    『テラアアアアァァァァァァァァァァ!!!!』

  • 57スレ主25/06/09(月) 22:13:51

    目を開けたアズサとヒフミの視界に入ってきたものは、一言で表すなら『天使』であった。
    それはヒフミの姿をしていた頃とは異なり成人女性のような体格となり、身長は二百センチを優に超えている。
    二人は最初、それがメフィストだと気づくことができなかった。

    『はあ、はあ……!ようやく物にできた……!破滅の力を!!』

    背中には白く大きな羽根を生やし、その体は、髪はとても人とは思えないほど真っ白に染まっていた。
    例えるなら、美術品として飾られる天使の像。
    しかしその顔は天使と表現するには無理があるくらい皺だらけで、まるで童話に出てくる悪い魔女のような醜悪な笑みを浮かべていた。

    『さて、まずはさんざんな目に遭わせてくれた二人からやっちゃいましょうかね』

    メフィストはヒフミたちに見せつけるように翼を大きく広げる。
    そしてそれを一振り強く羽ばたかせると、辺りに烈風が吹き荒れた。

    「ぐっ…………あぁっ!」

    飛ばされないよう必死に耐えていたアズサだったが、あまりの強風に体を取られ、後ろに倒れそうになる。

    しかし、直前で誰かがよろめくアズサの背を手で支えたことで、彼女は倒れずに済んだ。
    助けが来たのか、その正体を確かめるべくアズサは後ろを振り返ると……。





    「もう大丈夫だ。よく頑張ったな」

    そこにはアリウススクワッドの元リーダー、錠前サオリが立っていた。

  • 58二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 06:59:01

    保守

  • 59スレ主25/06/10(火) 07:11:06

    保守コーナー 〜ブルーアークカタストロフのルール〜

    ゲームの創設者■■■■■■■■■は『色彩』を呼ぶことができる。

  • 60二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 08:40:57

    うーん…伏字の字数的にマダムじゃなさそう?
    セイアに年増煽りされるような相手が彼女しか思いつかなかったというだけなんだが
    メフィストフェレスなら字数は合うけれど隠す意味ないしな…

    アツコ達も来るのか、続きをお待ちしております

  • 61二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 11:19:10

    模倣ミカは今際の際でようやくか……最後の最期で振り返ることができたのはよかったというべきか、遅すぎたというべきか
    いよいよメフィストと最終決戦……物理的に厚化粧が落ちるのは想定してたけど、こういう落ち方は予測できなかったな
    悪魔が天使になるとはね。まぁ悪魔は天使が地獄に堕ちた姿って言われてるから…
    やーい、皺パンマン~!(煽り)

  • 62スレ主25/06/10(火) 14:30:10

    「サオリ……!?」
    「奴がメフィストフェレスだな。後は引き継ごう」

    サオリはアズサを支える手をそっと離し、メフィストの方へ向かっていく。
    その時、クルセイダーから顔を出していたヒフミと目が合った。

    ヒフミからしてみればエデン条約の時には激しく敵対した恐ろしい相手だが、今はとても心強く見える。

    「阿慈谷ヒフミ、以前姫を介抱してくれたそうだな。礼を言う。すまないがアズサを頼む」
    「わ、わかりました!」

    サオリがこの場に来たことは想定外だったのか、メフィストは心底面倒臭そうな顔をしている。

    『ああ、そういえばカタコンベの祭壇から脱走したんですっけ?まあ、君一人じゃどう考えても私には勝てないと思いますけど……』



    「一人じゃないよ⭐︎」

    その時サオリの隣に並び立つように、本物の天使のような少女が天から降り立った。
    彼女は元ティーパーティー、聖園ミカである。
    ミカとサオリは思わぬ再会に顔を見合わせた。

    「ミカ……」
    「……久しぶりだね、サオリ」

    嬉しい再会、とは言い表せない複雑な感情だった。

  • 63スレ主25/06/10(火) 18:35:21

    エデン条約を巡る争いの時には激しい戦いを繰り広げ、危うく二人とも大切なものを失いかけたが、どうにか和解できたという過去がある。
    しかしサオリは、メフィストを倒すにはミカと協力する必要があることを理解していた。
    それにできることなら、最初にアリウスへの和解を申し出てくれたミカとだって良い関係を築きたい。

    「……今ここに私が立っていられるのは、スクワッドの皆が助けに来てくれたことと、名前も知らないトリニティの生徒が血を分け、ハナエが治療を施してくれたお陰だ」

    「だから私は彼女たちに報いたい。お願いだミカ、私と一緒に戦って欲しい!あの時は叶わなかった、私の心からの願いだ!」

    断られるかもしれない。
    それでもサオリは勇気を出して共闘を申し出る。

    「断る理由なんか無いよ。むしろ私からもお願い。トリニティを、協力してくれたアリウスのみんなを、この街を守るために、私と一緒に戦って欲しい」

    「あの時はできなかったことを、今度こそ」

    ミカは穏やかに、かつ力強い意志を感じさせる目で、声色でその申し出を受け入れる。
    心の迷いが晴れたサオリは、帽子を深く被り直しそれに力強く答えた。

    「ああ、当たり前だ!!」

    こうして心を一つにしたミカとサオリは、鋭い目つきでメフィストを睨みつける。

  • 64スレ主25/06/10(火) 18:39:24

    『ミカちゃんまで……!まあ二人になったところで……』



    「仲良きことは美しきかな。もしよろしければ、お二人の『仲』に私も加えてはいただけませんか?」

    少し遅れてシスターフッド代表、歌住サクラコが到着する。
    さらに……。

    「どうにか間に合いましたね!救護が必要な方はいらっしゃいませんか!?…………おや、目の前に一人♪」

    続いて救護騎士団団長、蒼森ミネも加わる。
    すると今度は上空から、黒い何かが四人の横に勢い良く落ちてきた。

    「いっちばぁぁぁぁん!!……じゃあなかったか。だが……ケヒッ、イヒヒヒヒャハハァ……!これなら存分に暴れられそうだ……!!」

    その正体は正義実現委員会委員長、剣先ツルギであった。

    トリニティ及びアリウスの各組織の代表者がメフィストを打倒すべく、最終決戦の舞台となる廃墟地帯に集結していた。

    『次から次へと……ん?』

    羽虫が集ってくるような鬱陶しさを覚えるメフィストだったが、遠くからバイクの走る音が聞こえたためそちらに注意を向ける。

    「おわああああああああ!!!!」

    まともに通れる道が無かったのか、途中で崩れてジャンプ台のようになっている橋から一台のバイクが飛んで来るのが見えた。

  • 65スレ主25/06/10(火) 18:41:25

    そして勢いを殺さず着地したバイクはミカたちの横に停車した。

    「到着しましたよ、先生。お疲れ様でした!」
    「はあ……はあ………………オ"ェ"ッ!!!!」

    バイクを運転していたのはマリーで、そこからよろよろと降りてきたのは先生だった。
    彼は膝に手をつき、震える手でヘルメットの留め具を外そうとするが上手くいかず苦戦している。

    『おや、誰かと思えば先生でしたか!そういえば、メフィストフェレスとしてお話ししたことはありませんでしたね。初めまして!といっても、今日でお別れですがね♪』

    ゲマトリアでも手を焼く強敵を相手に優位に立てているつもりなのか、メフィストは普段よりもさらに饒舌になる。

    『ところでいかがです?私の作り出した惨劇、青春と方舟の惨劇(Blue Ark Catastrophe)は。温室育ちのお嬢様たちが泣き叫び、社会に生かされているだけの家畜と成り果てていた市民たちが、一念発起し正義に堕ちる』

    『ゲマトリアの連中のお遊びとは比べものにならない程、混沌とした美しい様でしょう!?あなたのお噂はかねがね伺っていますが、流石の先生でもこれは……』





    「メフィストフェレス…………!!!!」

  • 66スレ主25/06/10(火) 18:44:37

    ヘルメットを脱ぎ、メフィストの方へと向けられた先生の顔を見て、彼女は恐怖で言葉を失う。
    その表情はまるで鬼神のように恐ろしく、もはや本当に人間なのかどうかも疑わしいほどであった。

    〈皆さん聞こえていますか?これで役者は揃いました。これより全員で協力し、メフィストフェレスを討伐します!〉

    すると、どこからともなくナギサの声が聞こえて来る。
    メフィストは周囲を見回すと、ところどころにスピーカーが搭載されたドローンが飛んでいるのが見えた。

    〈私たちもサポートするよ。ヒフミとアズサは、ナギサの率いる戦車隊と共に周囲の雑兵を片付けて欲しい。それから、マリーは先生の護衛を!〉
    「わかりました!」

    〈そして腕に自信があるであろうミカたち五人は、思う存分メフィストを袋叩きにしてくれたまえ。指揮は先生で、私はサポートを。これでどうだい?〉

    今度はセイアが分担の指示を行う。
    全員、異議は無い様子だった。
    その様子を見ていたサオリは、以前のトリニティからは想像もつかないほどの結束力の強さに驚いていた。

  • 67二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 19:26:57

    鬼神のように恐ろしくて人間なのかどうかも疑わしい…高嶺清〇の鬼の顔かな?

  • 68二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 21:25:41

    メフィストフェレスゥ…。待ってたんだぜ、この時をよぉ…。地獄の深淵がお前を飲み込まんと大口を開けて待ってるぞ…、お前の背後でな!さぁ、あまねく亡霊どもと共に!!無間地獄に落ちやがれ!!!

  • 69スレ主25/06/10(火) 21:55:05

    「すごいな。少し前までのトリニティは内部での派閥争いが絶えない学園という印象だったが、アリウス含め本当に協力し合える日が来るとは……。先生の影響力は凄まじいな」

    「それは違うよ、サオリ。ここだけの話、実は今回私ほとんど役に立ってないんだよね。それどころか、先生としての商売道具すら奪われる始末」

    「だからこれは、君たち自身が人の心と真摯に向き合った結果なんだよ」

    先生は些かほども驕ることなく、生徒たちの選択を、行動を賞賛した。
    そうさせたのは先生だろう、サオリはそう口にしかけた言葉を飲み込み、呆れたように尋ねる。

    「じゃあ、先生は今更何しに来たんだ?」
    「そんなの決まってるよ」




    「あの腐った大人をぶっ飛ばしに来た!!」

    先生は背広の胸ポケットから大人のカードを取り出し、その力を行使する。
    すると、周囲にいた生徒たちの体が暖かな光に包まれた。

    「なにこれ!?力がみなぎってくる!」
    「私も体が軽い……!これなら今までのダメージも気にせず戦えそうだ」

    先生は大人のカードの力を生徒を呼び出すのではなく、周囲の生徒の力を強化するために使ったのだ。
    体が軽くなったことに驚いたミカはぴょんぴょんと跳ね、サオリも調子を確かめるように体を動かしている。

  • 70スレ主25/06/10(火) 21:57:08

    『あのカードは……!一体何をしたんです!?』
    「このカードにはこういう使い方もあるんだよ。まあ、ブルアカの仕組みやミメシスたちの様子を見るに、この使い方までは解析されなかったみたいだけどね」

    自身の知る範囲の外にある現象を見せつけられた上、想定外に生徒たちが強化されたことでメフィストに苛立ちが募る。

    『せっかく作り上げた舞台で、どいつもこいつも私を苛立たせる……!』

    「アロナ、プラナ。全力でいくよ」
    「はい!実は私もあまり活躍できていませんでしたからね。気合い十分です!」
    「同意。今回は息をつく暇も無い程の超高速戦闘となることが予想されます。始めましょう、アロナ先輩」

    「「シッテムの箱、制約解除。プロセス『ペレツ・ウザ』稼働開始!」」

    かくして、最後の戦いの準備が整った。
    辺りはそれまでの騒々しさが嘘のように静まり返っている。
    トリニティの精鋭たちとメフィストは、互いに仕掛けるタイミングを見計らっていた。



    そして、どこかで瓦礫が崩れ地面に落下した音を合図に、両者は互いを討ち取るべく地面を蹴り、轟音を轟かせながら全速力で飛び出していった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 71二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 22:46:43

    >>6

    ダダ被りしたエンジニア部部長かわうそ……それとも外部に未だ協力者でもいんのかね?

  • 72二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 23:24:13

    ???「どうもメフィストさん、私は偶然トリニティに遊びに来ていたところを騒動に巻き込まれて自衛しているだけの一般生徒よ。ゲヘナ風紀委員会は全く無関係だわ」

  • 73二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 23:25:17

    >>72

    覆面水着団新メンバー「ヒナ仮面」来たわね…

  • 74二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 23:39:22

    予言しよう♤このssは窮地に陥った面々の前に記憶引き継ぎで再顕現した元“にせティーパーティー”の助力によってわっぴーエンドを迎える♧

  • 75二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 23:48:57

    悪役虐待煽りや荒らし染みたレスが散見される辺り少なくともこの掲示板で屯してる様な連中は自分のミメシスを最後まで操ってそうな精神をお持ちになってそうですねw(模範的トリニティ精神)
    前作の頃から荒削りながらも情熱は感じられる作品だったよね、残念ながら荒削りなままではあるけれど

  • 76二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 00:00:15

    >>73

    面制圧から猛者とのタイマンに高速戦闘なんだったら裏方の事務作業まで出来るデモンエクスマキナは現状何処出しても過剰戦力なんよ

    >>71

    先ずウタハとマエストロが被ってるのいつ見ても笑うしヨースター共々ボロクソにこき下ろされてて余計嗤える


    >> 自分のことしか考えていなさそうな集団

  • 77二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 00:07:21

    ミメシス自体が何の如何いった模倣かによる違いもありそう。存在そのものの複製か、情報を基にする複製か
    現状情報の少ないグレゴリオとかベアおばは二重コピーで劣化してるから妙に弱かったんじゃない?生徒はプロフや新規ストーリーで解像度上げれるけどコイツらまず無いし

  • 78二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 00:12:57

    >>77

    ベアトはミメシスじゃなくて純然なテラーか色彩混じりなんだよなぁ…


    〝本物と偽物で優劣を付けさせようとするナレーター〟くん、なーんか怪しくないですか?蛆パンちゃんとゲマトリアとの距離感も妙ですしね

  • 79二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 00:13:53

    >>78

    二重コピーって読めんか?

    さてラストバトルで終われんのかね?これ

  • 80二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 00:28:08

    制約解除戦・メフィストフェレス

  • 81二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 00:46:36

    >>77

    出来損ないのコピーキャットのおかげでストーリーのヒエロやそうりきグレゴリオを手掛けたマエストロや、糞猫やペジラを仕上げたゴルデカの株が更に上がってそうで嬉しいよ!(瀟洒なトリニティスラング)年増の色狂い若作り蛆パンマンはどんなギミックで来るのやら…或いはギミック全否定とか?ここの反転セイアちゃんは暴の化身で自分は碌に対処出来なかったみたいだし、無自覚にトラウマになってそうだよね

  • 82スレ主25/06/11(水) 07:10:05

    まず最初に前に出たのはミカとサオリだった。
    メフィストも光のような速さで突っ込んで行き、その中間地点で両者は激しくぶつかる。
    戦闘面において強力なミメシスを取り込んだ影響か、ミカとサオリのパンチを受け止めてもメフィストは涼しい顔をしていた。

    『ふふ、子どものパンチなんて痛くもな……ぐぉっ!!』

    膠着状態になる前にミカは掴まれている手を振り解き、隙ができたところでサオリがメフィストを思い切り蹴り飛ばした。

    「しかし驚いたな。マダムのような大人にまた出会うとは」
    『マダム?ああ、あの年増ね!本当にダサいですよね、自分より弱い子どもから搾取しようだなんて!』

    口から垂れる血を拭いながら、メフィストはかつてアリウス、トリニティ、ゲヘナへ混沌をもたらした女の顔を思い浮かべていた。

    『搾取するなら、この社会の下層に這いつくばってる正義マンどもを利用すればいいのに!私みたいにさ!』
    「なるほど。流石、最下層のトップは言うことは違うな」
    『へえ……!』

    挑発に乗ったメフィストがサオリへと襲いかかる。
    しかし怒りで攻撃が単調になっており、それを見越していたサオリに手玉に取るように回避され、顔面に膝蹴りと三発の掌底打ちを食らう。

  • 83スレ主25/06/11(水) 08:23:24

    『ぐっ……!』

    メフィストは翼を羽ばたかせ、低空飛行の要領で距離を取る。

    「行くよ、サオリ!」
    「ああ、私が合わせる!」

    後退するメフィストへヒットアンドアウェイの要領でミカとサオリが追撃を加えており、三色の閃光がぶつかり合う度に火花を散らす。
    一方メフィストもただ逃げるだけでなく、二人に距離ができたタイミングでミカへと狙いを定めた。

    『そこっ!!』

    サオリの援護射撃を防ぐため、あえて接近戦を挑み拳を振るう。
    模倣ミカ、ツルギ、ミネを取り込んでいるので一発殴られるだけでも大ダメージは避けられない。

    「ふっ、はっ!」

    しかしミカはそれらを無駄のない動きで正確にいなし、的確にカウンターを叩き込んでいく。

    『くそっ、こいつ体術もいけるのか……!』
    「足元がお留守だよ!」

    メフィストの意識がミカの上半身に集中したのをミカは見逃さず、体勢を屈めて足払いをかける。
    そして体を回転させたそのままの勢いで宙に浮いたメフィストへ強烈な蹴りを叩き込む。

    (ぐぅっ!このままじゃ防戦一方に……!)

    メフィストはミカから離れようとするが、しかし今度はサオリから援護射撃が飛んでくる。
    翼を広げて空中へ逃げようとするも、羽を撃ち抜かれ地面に転げ落ちてしまった。

  • 84二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 08:26:59

    天丼はですねぇ…作った人の腕によって評価が変わるんですよ

  • 85スレ主25/06/11(水) 09:55:52

    『ちっ……嫌らしいとこ突いてくるね!!』

    どうにか体勢を立て直すが、気づけば自身の前後をミネとツルギが挟み込んでいた。

    『多対一で攻め込めば必ず隙を晒すとでも!?舐めんなよ!!』

    メフィストは背中から四本の腕を新たに生やし、色彩の力を使って亜空間からマシンガンを呼び出し装備する。
    先に厄介なツルギの足を止めるべく一斉掃射を行うが、弾道の隙間を見切られ接近を許してしまう。

    「ギャアアアアハハハハハハァ!!」

    ツルギは弾丸の雨を掻い潜りながら両手のショットガン、ブラッド&ガンパウダーでメフィストの手元を次々と狙い撃ち、武器を無力化していく。

    『先に武器を落とさせるなんて、見かけによらずテクいことするね!』

    しかしツルギは武器で両手が塞がっている。
    これを好機と捉えたメフィストはツルギへ接近し、六本の腕でラッシュを叩き込もうとする。

    「させません!」

    ところが、その攻撃は間に入ったミネの盾によって防がれてしまった。
    しかしメフィストはこれを押し切るべく、なおも盾を殴り続ける。

    『おらおらぁ!いつまで受けていられますか……っ!?』
    「ばあ!」

    メフィストの攻撃を盾で受けていたのは、なんとツルギだったのだ。
    彼女は挑発的な表情で、盾の上からまるでモグラ叩きのように顔を出す。

  • 86スレ主25/06/11(水) 09:59:11

    (ミネがいない!一体どこへ……っ!?)

    後ろに強烈な殺意を感じたメフィストはとっさに後方へ裏拳を放つ。
    後ろには実際にミネが迫っており、直感こそ当たっていたものの紙一重で体を屈め躱されてしまう。

    「腹部が弱点なのでしょう?」

    盾の代わりにツルギからブラッドを受け取っていたミネは、自身のショットガン『救護の証明』と合わせて二丁の銃で銀の弾丸をメフィストの腹部へ至近距離で叩き込む。

    (まずいっ、致命傷になる!このままでは残機が……!)
    「手に馴染む良い銃です!さらにもう一発!!」

    マガジンの中の弾を撃ち尽くしたミネはさらに、両手に銀の弾丸を握り込んでメフィストの腹部へパンチを三発お見舞いした。

    『さんぱっ……!?』

    メフィストは反撃するべくミネを掴もうとするも、既に手の届く範囲からは離れられていた。

  • 87スレ主25/06/11(水) 10:01:14

    代わりにサクラコがその懐へ潜り込み、メフィストを蹴り上げようとしているのが見えた。

    「ミネ団長はもういませんよ?」
    『待て、待て…………!があぁっ!!』

    サクラコはメフィストの顎を下から全力で蹴り上げ、空中へ吹っ飛ばす。
    さらにサクラコはそれだけで終わらせる気が無いらしく、ミネへとアイコンタクトを送る。

    「全く、サクラコさんもなかなかお転婆なのですね」
    「少々はしたないことは理解していますが、行儀の良さだけではトリニティは守れませんから」

    ミネはサクラコの意図を瞬時に理解し、バレーボールのレシーブのような構えを取る。
    それを見たサクラコはすぐさまミネの手に乗る。

    「思い切りやってください」
    「では遠慮なく!…………っだぁ!!!!」

    ミネは両手を上へ振り上げ、サクラコをバレーボールのように上空へ押し飛ばす。
    サクラコはついに、メフィストよりも遥か高く飛び上がった。

  • 88二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 10:20:41

    ああそうか、ガワがユスティナ信徒なだけであくまで“ユーザーの”複製なんだ
    最後まで悪足掻きする美しさも半端者なりに筋を通そうとする醜さも青肌ガスマスク金ビキニに興奮してるアホも全部“中の人”の反応で、生徒のミメシスは複数の他者からの観測ありきだから歪みを抱えがちになるし、モブや原作描写が少ない連中は自由に動き出せるわけだ



    だとするとこの“本来観測者がいないはずのオリキャラ”の元ネタ/複製元/原作は……

  • 89スレ主25/06/11(水) 13:30:25

    『嘘でしょ!?……はっ!?』

    メフィストは一時的に上空へ逃れる算段だったが、敵はそんな暇を与えてはくれない。

    「つれねぇなぁ!もっと遊んでくれよォ!!」
    「両手に花だよ!嬉しいでしょ?」

    メフィストを挟むように、翼を持つミカとツルギが空を飛んで追いついてきた。

    『ちぃっ!』

    二人はメフィストの逃げ道を塞ぐように周囲を旋回しながら銃撃を加える。
    これに対しメフィストは更なる被弾を避けるべく、一時的に回避へと専念することにした。
    そしてある程度観察していると二人の攻撃に法則があることに気づき、最小限の動きで躱せるようになっていた。

    『あははっ、どうしました!?狙いが雑になってますよ!動かない方が安全とか、なんの冗談です?』
    「おっけー上出来」「まあこんなものだろ」

    するとミカとツルギは目標を達成したかのように攻撃をやめた。
    それを見たメフィストは、自身が意図的に誘導されていたことに気付く。

    (違う!この二人は私の注意を引く囮!本命は……!)

    メフィストは自身のさらに上を見上げる。
    視線の先には先ほど飛び上がっていったサクラコが、メフィスト目がけて凄まじい勢いで突っ込んで来るのが見えていた。

  • 90スレ主25/06/11(水) 13:31:44

    『待っ……ぶごぉっ!!!!』

    しかし気付いた時には既に距離を詰められ過ぎており、避ける間もなくサクラコの踵落としが顔面にクリティカルヒットする。
    落下の勢いを上乗せしたその威力は凄まじく、メフィストは音速を超えるスピードで地面へと叩きつけられた。

    「ひゅう!ナイスキック!」
    「お二人の誘導のおかげです」

    ミカはサクラコが落下しないよう手を取り、地表近くで降ろす。

    『ごの゛っ……調子乗りやがって……!!』

    メフィストは模倣ツルギから吸収した再生力で見かけ上は顔の傷もすぐに塞がっていくが、内部に蓄積しているダメージや疲労までは簡単には消し去れない。

    (しめた!サクラコは翼が無い分、着地の瞬間を狙いやすい!)

    メフィストはサクラコに狙いを定め前へ踏み出すが、その瞬間足にワイヤーが引っかかる感触を覚えた。

    『しまっ……!?』

    空を飛んでいる間にサオリに仕掛けられたブービートラップにより、メフィストの両側からネットランチャーが発射される。
    メフィストの腕力なら千切るのも難しくはないが、絡まりやすい構造をしておりすぐには振り解けない。

    「休んでる暇は無いぞ!」

    今度はサオリがメフィスト後方の瓦礫の山を爆破し、メフィストを生き埋めにしようとする。
    メフィストはすんでのところでネットを千切り、どうにか瓦礫の雪崩から逃げ仰せた。

  • 91スレ主25/06/11(水) 13:33:07

    『ヘイト分散させるか……。グレゴリオ!!ヒエロニムス!!』

    メフィストの呼び声に応じて巨大なワープホールが出現し、そこから学園の東西を守っていたグレゴリオとヒエロニムスが姿を現す。

    (これで五人の攻撃が私に集中することは無くなる。さて、まず誰を仕留めるべきか……ん?)

    メフィストがを目を凝らすと、遠くの方でミカが両手を合わせ、何かに祈りを捧げているように見えた。
    こんな戦場で何を呑気に祈りなど捧げているのか。

    そう考えてはいたものの、何故だか自身の生存本能が最大レベルの危険が迫っていると告げている。
    理由はわからないが、あれを続けさせたらまずい。
    何としてでも止めさせるべく、メフィストはミカに狙いを定める。

    「遅いよ」

    しかしメフィストが妨害するよりも早くミカの準備が整ったようで、彼女は目を開き右手を天へと掲げる。
    すると遥か上空から巨大な隕石が多数、凄まじい勢いで迫ってくるのが見えた。

    『何だよもう、またかよぉ!!!!』

    メフィストの叫びも虚しく、隕石はグレゴリオとヒエロニムスへ着弾し、大爆発と共に周囲のミメシス諸共跡形も無く消し飛ばした。

    万全の状態であればまだ耐えられた可能性はあるが、シスターフッドや正義実現委員会との戦いで満身創痍となっていた状態では、太刀打ちなどできるはずもなかった。

  • 92スレ主じゃないよ25/06/11(水) 15:07:09

    「我々の知らぬ間にこの地に異物が紛れ込んだと聞いた際には背筋が冷えましたが、結果的に寧ろ都合の良い方向に進むとは……妙な所で波長の合っていたマエストロは兎も角珍しくデカルコマニーが助力してくれた甲斐も大いにありますが、『先生』に目を付けられることを厭わずに興味深い実験を敢行してくれた仮初の同輩には感謝の念を禁じ得ませんよ、クックックッ……」

  • 93二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 15:08:09

    >>92

    マエストロからは複製技術のあまりの粗雑さから“切磋琢磨出来る同士”ではなく“導くべき後輩”として生暖かい目で扱われてそうという妄想でした。逆にテクスチャの侵食(“ブルアカ”関連)やテクストの擬似創造と干渉(ミメシスや契約)に関しては記号使いの興味を惹いてそうだよね!裏方の資金源や下準備涼しい顔で済ませてくれるタイプの黒服好き、やっぱ実質会計じゃん。地下ピ?直接会いもしない癖にお互いを見下してそう(適当)

  • 94スレ主25/06/11(水) 15:29:54

    最初から他者になど期待していたわけでは無いが、単独での戦いを強いられ苛立つメフィスト。
    周囲はミカたち五人に取り囲まれていた。

    「せー……の゛ぉっ!!」

    するとミネが声を張り上げ、拳を振り上げた。
    しかし直接殴るにはメフィストとは距離がある。
    何をするつもりなのか理解できないでいると、ミネ以外の四人がその場で同時に飛び上がった。

    『まさか!?』

    直後、ミネは真下の大地を思い切り殴りつけた。
    それによって、隕石が落ちた時にも劣らないほど大きく地面が揺れ、メフィストは足を取られる。

    「いきますよ!!」

    ミネはさらなる追撃を仕掛けるべく、先ほどの一撃で砕かれた巨大なコンクリート片を、まるで雪合戦のように次々と投げつけてくる。

    こんなもの直撃すれば大ダメージは避けられない。
    回避しつつ大きな瓦礫は破砕するべく、亜空間からロケットランチャーを呼び出し後退しつつ狙いを定める。
    しかし……。

    「見通しが甘いな」
    「サオリさん、今です!」

    サオリが持っていたスイッチを押した瞬間、飛んできた瓦礫の一部があらかじめ仕掛けられていた爆弾によって弾け飛ぶ。
    それによって破片の弾道が変わり、砕け散った細かな破片がさらにスピードを上げメフィストの体に食い込む。

    『ぐおぉ……っ!?』

  • 95スレ主25/06/11(水) 15:31:27

    メフィストは大きく後ろに吹っ飛ばされ、廃墟の壁に激突する。
    頭を強打し、目眩でふらつきながらも立ち上がると、サオリがこちらへ走って来るのが見えた。

    メフィストは迎撃するべく撃ち損ねたロケットランチャーを構え直すが、狙いを定める前にサオリは自身のコートを脱いでメフィストへと投げつけ、目眩しを行う。

    『なっ!?』

    急いでコートを手で振り払うも、サオリはとうに眼前に迫っていた。
    この距離ではロケットランチャーを発射できない。

    「ここは私の間合いだ!」

    サオリは太腿のホルダーからナイフを取り出し、ランチャーを構えるメフィストの腕を切り裂く。
    筋肉を断裂されたことで力が入らなくなり、武器を取り落とすメフィスト。

    『まだっ!』

    しかし、使えなくなった手はそのままにすかさずサオリのナイフを蹴り飛ばし、横へ飛び逃げる。

    「サクラコ!!」

    既に動き出していたサクラコはサオリの呼び声に応じ、宙を舞っていたナイフをキャッチする。
    そしてそのまま全速力でメフィストの方へと走り出す。

    『近づかないでくれます!?』

    メフィストは残る四本の腕を触手のように伸ばし、サクラコの動きを牽制する。
    これでサクラコの動きは止まるだろう、そう思っていた。
    しかしそんなメフィストの目論見は大きく外れることになる。

  • 96スレ主25/06/11(水) 15:33:15

    何とサクラコはナイフを逆手持ちに持ち替え、体勢を低くし、さらにスピードを上げて突っ込んで来た。

    『速い!?』

    メフィストはサクラコを拘束するべく触手のように手を伸ばすが、触れる寸前のところでサクラコは体を捻ってこれを躱し、そのままの勢いで四本の腕すべてをズタズタに引き裂きながらメフィスト本体へ突進する。

    全ての手を一時的に封じられたメフィストはハイキックでカウンターを狙うが、サクラコは同じくハイキックでこれを弾き、攻撃をいなされたメフィストはバランスを崩す。
    そしてサクラコはナイフでメフィスト本体を切り付け、回復した手に捕えられる前にすぐさま離脱する。

    『そっちばっかり!ペースは握らせな……っ!!』

    サクラコを追いかけようと前に出た瞬間、眼前にナイフが飛んでくるのが見えた。
    サクラコはこれすら見越してナイフを投擲していたのだ。

    『ちいっ!!』

    すんでのところで持っていた銃でこれを弾き飛ばすが、サクラコと入れ替わるように迫っていたサオリが宙を舞うナイフの柄を蹴り飛ばし、それは弾丸のような速度でメフィストを狙う。
    流石に二回目は捌くことができずに彼女の首元が切り裂かれ、吹き出した鮮血が白い体を赤く染める。

    『がぁっ……!?』

  • 97スレ主25/06/11(水) 15:35:43

    再び距離を取るメフィスト。
    サオリはナイフを拾い上げ、自分と同等かそれ以上のナイフ捌きを見せたサクラコへ賞賛を贈る。

    「手慣れているな」
    「『体育』が少々得意なもので」
    「なるほど……これ以上の詮索は控えよう」

    サオリは口には出さなかったが、サクラコがナイフをまるで普段から使い慣れた武器のように扱えたのは、ユスティナ聖徒会かシスターフッド秘伝の戦闘技術によるものだろうと推測していた。

    そして裏社会では特に戦闘技術が重視される分、その内容や出自を無闇に他人に話すことは情報戦におけるデメリットに繋がる、というのが一般的な認識である。
    サクラコが詳しい説明を控えたのはこのためだろう。

    サクラコから僅かに見え隠れする恐ろしさの理由にサオリは納得しつつ、戦いの方へと意識を向ける。



    だが実際はそんな危なっかしい話などではなく、ただ純粋にサクラコが体育という科目を得意としているだけなのではあるが。

    「まだまだまだぁ!!」
    「ギャアアアアハハハハハハァ!!射程長ぇなぁ!!こいつはいい!!」

    一方、メフィストに気を取り直す時間は依然与えられていない。
    コツを掴んだミネによる瓦礫の投擲はさらに激しさを増し、上空からはサオリとサクラコのアサルトライフルを借りたツルギが銃弾の雨を降り注がせていた。

  • 98スレ主25/06/11(水) 18:32:10

    (おかしい、動きを読まれ過ぎている!)

    先ほどからメフィストの中には一つの疑問があった。
    最初は息の合った連携程度と認識していたが、毎度攻撃の初動を潰されているとあれば、もう未来を視ているとしか言いようが無い。

    (こんなことができる奴は一人しかいない!)



    〈次は右へ飛んで。A-5ドローンの辺りが安全だ。メフィストからの攻撃が一秒止まるから、その隙に攻撃を叩き込める。そして五秒後、ツルギは一度距離を取って〉

    メフィストの予想通り、セイアが予知夢で視た次の動きをメンバーへと通信機越しに伝えることで、全員がメフィストの動きを知りながら戦うことができていたのだ。
    もちろんメフィストには聞こえないように、スピーカードローンからは流していない。
    もっとも、先の動きを知った上でそれに合わせて戦えるのは本人たちの戦闘能力の高さありきなのだが。

    『何故私の動きを予知できるんです、セイアちゃん!?私は君の干渉を受けないよう、人から注目されにくい体質の子を取り込んだというのに!!』

    〈いいや、厳密に言えば君の動きは視えていないよ。ただし飛んで来る銃弾、聞こえる音、皆の視線の向き先など『メフィストフェレス以外』の全ての情報を夢から読み取ることで、実質的に君の動きを知ることができるのさ!〉

  • 99二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 18:43:16

    注目されにくい…
    想像通りならその子は取り込まず後方支援を頼むべきだったのでは…

  • 100スレ主25/06/11(水) 19:07:29

    予知を行っていることをすんなり肯定したセイアの声がスピーカードローンから聞こえてくる。
    しかし、それを実現するのであれば一度視た予知夢の内容を正確に記憶し、細かいところまでメンバーと共有、そして事前に立てた作戦をこの超高速戦闘の中でタイミングの狂い無く実行する必要がある。

    そんな常軌を逸した作戦を考案し、かつそれを実行に移すトリニティの異常性にメフィストは背筋が凍る。

    『馬鹿な!把握しなければならない情報量が……いいやそれだけじゃ無い、他にも弊害が多すぎるというのに!!そうまでして私を倒したいですか!?この執念深い異常者どもめ!!』

    〈執念深い異常者は君の方だろう。それと実は、この作戦の成功率を大幅に引き上げることのできるある秘訣があってね。他人を信用せず奪うことしか頭にない君には決して思いつかない、意外なものさ〉

    『はあ?……何ですそれは!?是非ともご教示いただきたいですね!!』

    セイアの挑発にペースを乱されそうになるも、ここは堪えて情報収集と考察に徹する。

    (私に思いつかないもの……。まだ研究しきれていない神秘の秘密でもあるというのか、それとも先生による干渉か?)

    (私に不可能ということは、キヴォトスの人間特有の体質に由来するものの可能性が高い。次の答えから、必ずその正体を掴む!)

    メフィストは元々研究者であり、僅かな情報からその正体を探り当てていく思考能力には自信があった。
    これまで看守との問答とセイアの放送、二度に渡って挑発に乗ってしまったが、もう同じ失敗は繰り返さない。
    三度目の正直だ。
    呼吸を整え、メフィストはセイアの答えを待つ。

  • 101二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 19:32:11

    「……せ、戦闘中に『契約』を行使出来ない?或いは飽和攻撃によって実質封印されている……?ヒヒッ……何にせよ……“自分の強み”を押し付けられないような場面(シナリオ)を作られた時点で一度引くべきだったンだよぉ!‼︎?!これじゃ勝ち負けどころかァ、ン失ぅばかりだぁ……ヒヒッ、然し未だ『切り札/ジョーカー』は残されてます、彼或いは彼女がそれに気付けるか、つ、使い熟せるの、で、しょうか⁇小生も影乍ら“今後のご健勝をお祈り”させて頂きますよ……ヒヒッ、ヒヒヒッ、ヒ…」

    ────地下室の独り言

  • 102スレ主25/06/11(水) 20:26:39

    〈それはだね……〉





    〈愛の力だ!!〉
    『ふざけるなァァァァァァァァァァ!!!!』

    二度あることは三度ある。
    メフィストは怒りのあまり、血管がはち切れるほど声を荒げた。

    『何が愛だ、馬鹿馬鹿しい!!テクニックと言ったでしょう!!私は学術的な根拠に基づいた理論の話をしているのであって、感情的な話なんか聞いているのではない!』

    〈私たち女子高生は全てにおいて『エモさ』を重視する存在だよ?愛さえあれば何でもできる!これが私たちの真実、私たちの青春の物語(Blue Archive)だ!〉

    セイアもセイアで勢いづいているのか、普段は言わないような直球かつ捻くれの無い表現で言い返す。

    〈それをいい歳した大人が横から入ってきてごちゃごちゃと!何でも自分の常識に当てはめないと気が済まないだなんて、どうやら君は独特な世界観を持っている、少々こだわりが強いタイプのようだね?ええと、これを何て言うんだっけ……そう、サブカルクソ女!〉

    『殺す!!!!』

  • 103スレ主25/06/11(水) 20:29:17

    「ふっ、冴えているな」
    「あははっ⭐︎セイアちゃん最高!」

    あまりに切れ味の強い煽りに、サオリとミカも思わず吹き出す。
    メフィストは翼を広げ怒りのままに大空へと飛び上がり、上空を飛んでいたセイアたちが乗っているであろうヘリに取り付き、扉をこじ開けた。
    そして前の座席に座っているセイアの肩を掴み強引に引き寄せるのだが……。

    〈抵抗はしないよ。こうなることは分かっていたし、全ては無意味だからね〉

    セイアだと思っていたそれは彼女の服とウィッグを被せたただの人形で、顔には舌を出して挑発するセイアの写真が貼り付けられていた。
    人形にはスピーカーが内蔵されており、そこからセイアの声が聞こえて来る。

    〈このまま私は君に壊されて、ストレス発散の玩具にされてしまうのだろう〉
    『こいつ……!!』

    そしてその隣には同じ作りのナギサの人形も置かれていた。
    しかしナギサは変顔をするのが恥ずかしかったらしく、顔に貼り付けられている写真は少し照れを感じさせるものだった。

    『くそっ、こいつら馬鹿にして…………ん?』

    ふと冷静になってヘリの中を見回すと、後部には明らかに怪しい多数の大きなボストンバッグが所狭しと積まれているのが見えた。

  • 104スレ主25/06/11(水) 20:31:03

    これではヘリの機動力が落ちてしまうというのに、そうまでして何を運びたかったのか。
    そもそも、何故人形を乗せてまでヘリを寄越したのか。
    それらの理由を考えた瞬間、メフィストは凄まじい怖気に襲われた。

    〈すまない……ボンバーセイアなんだ〉

    直後、積まれていた爆弾によってヘリが大爆発を起こし、メフィスト共々辺りは激しい爆炎に包まれた。
    しかも、荷物の中には銀の弾丸と同じ素材の撒菱が大量に仕込まれていたのだ。
    爆発と同時にそれらが散弾銃のように飛び散り、炎に包まれながら吹き飛ばされるメフィストへと容赦なく襲いかかる。

    『くっ……そォォォォォォォォ!!!!』

    その様子を見ていた先生は、当然の怒りとはいえ何としてでも自身の手で一撃を入れんとするセイアの執念に恐怖を覚える。

    「セイア、あれ準備するのにいくらかかったの……?」
    〈うん?まあざっと先生の生涯賃金くらいかな?〉
    「ひいぃ、豪勢なことで……」

    そしてメフィストの墜落地点にはサクラコとサオリが待機しており、メフィストの背中から生える腕をそれぞれ左右から掴み持ち上げる。

  • 105二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 20:47:00

    現状多少タフになっただけのベアおばですね(嘲笑)そういえばアイツも裏でせこせこやってる時は中々厄介そうだったけど変身してからは矢鱈脳筋だったな……類友ってやつかなw?

    >>104

    ボンバーセイアってなんだよ

  • 106二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 20:56:10

    「ボンバーセイアって何?」って声を見るたびに「ああ、あまねく奇跡の始発点からの新規さんかな」って嬉しいような、少し寂しいような気持ちになるよね
    そうだよな、最終編以降出てこない単語だし知らなくて当然だよな。2021年にブルーアーカイブがサービス開始して4年、そんな単語一度も出てきてねえし
    ボンバーセイアってなんだよ

  • 107二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 20:58:30

    凄ェ!ヒナ仮面とボンバーセイアだ!!!ここまで派手に暴れてるの初めて見た!!

  • 108スレ主25/06/11(水) 21:11:02

    「行きますよ、サオリさん!」
    「了解だ!」
    「「せーのっ!」」

    二人はそのまま綱引きの要領で腕を引っ張り、伸びた腕をピンと張る。
    項垂れながら宙に吊られるメフィストは、まるで十字架に磔にされているかのような様相だった。

    『なっ、何を……!?』

    そして動けなくなったメフィストの正面にミネとツルギが立つ。
    二人は片足を引いて拳を握り、パンチの構えを取っている。

    「全力でやるぞ、ミネ」
    「勿論、最後の仕上げですから」
    『待て待て待て……!!』

    そして呼吸を合わせ、銀の弾丸を握り込んだ拳でメフィストの腹部を全力で殴りつけた。

    『ぐおおおぉぉぉっ!!』
    「ぐっ、何て力だ……!」
    「まだです!耐えて耐えて、張力を最大限に!!」

    メフィストは後方へ吹っ飛ばされ、腕を掴んでいるサクラコとサオリも引っ張られそうになる中、どうにかその場に踏み留まる。
    メフィストは度重なるダメージの激痛に意識を取られる中、敵の思惑に気付き始める。

    『まさか……スリングショット!?』

    サクラコとサオリが支えとなり、メフィストの腕がゴム、メフィスト本体を弾として考えると、四人の行動の理由に説明がつく。
    そして吹っ飛ばされたメフィストの動きが止まったとろこで、何者かが彼女の両足を掴んだ。

  • 109スレ主25/06/11(水) 21:15:03

    「捕まえた!ヒフミ、発進だ!」
    「了解です!クルセイダーちゃん、アクセル全開です!!」

    いつの間にか後方へ回り込んでいたヒフミとアズサによって弾はさらに強く引っ張られ、メフィストの腕がミチミチと音を立て始めたところでクルセイダーの動きが止まった。

    『くそっ、離せ!一体私をどこへ飛ばす……っ!?』

    メフィストが自身の遥か前方へ視線を向けると、そこにはミカが待ち構えているのが見えた。

    『まさか……やめろやめろやめろやめろ……!』

    「今だ、アズサ!!」
    「メフィスト砲、発射!!」

    サオリの合図と同時にアズサが手を離したことで、まるでミサイルのような勢いでメフィストはミカの方へと吹っ飛んでいく。
    サクラコとサオリも、メフィストが目の前を通過した瞬間その手を離す。

    一方、ミカは右手に薬莢を外した銀の弾丸を持ち、それを全力で握り込んでいた。
    すると圧力で弾丸の形が変形し、ミカの拳にジャストフィットした形となる。

  • 110スレ主25/06/11(水) 21:17:15

    「誰かはわからないけど、あなたの勇気ある行動のおかげでメフィストの弱点が見つかった」

    「これなら、思い切りやれる……!」

    拳を引き、パンチの構えを取るミカ。
    彼女は既に極度の集中状態に入っており、迫って来るメフィストの動きがとてもゆっくりに見えていた。

    『ふざけるな!!私はトリニティを、このキヴォトスを支配できるだけの力があるというのに!!それをこんなガキどもに……!!』

    メフィストはなおも往生際悪く喚き散らしているが、ノイズとなる情報が全てシャットアウトされている今のミカには全く聞こえていなかった。

    「ふーっ…………!」

    ミカには確信があった。
    今なら絶対に会心の一撃を撃てる、そんな確信が。

  • 111スレ主25/06/11(水) 21:58:10

    「「ミカ様!」」
    「「ミカさん!」」
    「「「「「ミカ!!」」」」」
    『やめろ!!止まれ!!』

    祈りにも似た叫びがこだまする。
    仲間たちの期待に応えるため、ミカは地に足をつけ体を安定させ、右腕にありったけの力を込める。
    そして最後に聞こえてきたのは、先生の声だった。

    「行け!!ミカ!!!!」






    「はぁっ!!!!」

    ミカの拳はメフィストの腹部にクリティカルヒットし、その背部からは爆炎が突き抜ける。
    そしてそのままミカは拳を振り抜き、メフィストはなす術なく白目を剥きながら吹き飛ばされていった。

    『ぐお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!』

    途中にあった廃ビルに激突してもその勢いは衰えず、合計五つのビルを貫通して岩壁に激突、最後には大爆発を引き起こした。

  • 112スレ主25/06/11(水) 22:14:47

    やあ先生方……とゲマトリア関係者の諸君、スレ主セイアだよ。
    いつも応援ありがとう。
    本当なら戦闘シーンはもっと短くする予定だったのだが、ついつい筆が乗って一万字くらい書き上げてしまった。
    しかしそれを二、三日に渡って投稿しても物語の熱が冷めてしまいそうだったので、思い切って今日一日で全部ぶち撒けさせてもらったよ。
    これが私の欲望の形さ。

    明日からはまたゆっくり更新に戻るから、最後まで付き合ってもらえると嬉しいよ。

  • 113二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 07:03:37

    保守

  • 114スレ主25/06/12(木) 08:16:14

    保守コーナー 〜ブルーアークカタストロフのルール〜

    『アリーティア防衛戦』における戦闘の様子は自動操縦ドローンによって撮影され、動画サイトやモモッター公式チャンネルにて配信される。

    皆の勇姿を存分に見せつけ、人々に勇気と希望を与えよう。

  • 115二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 09:20:43

    一気に駆け抜けたな…確かに小出しにするよりは盛り上がるが

    やりたいこと全部突っ込んだ感じじゃんね?

    いやぁ、茶会辞めたからって煽りすぎでしょセイアちゃん。サブカルクソ女なんて暴言口から出るなんて…

    最後の仕込みがボンバーセイアだったとは…予想できなかったよ

    流石に残機尽きたかな?皮を被ってない本来の姿を見せてもらおうか


    >>114

    メフィストがボコボコにされてる姿も配信されてる…ってコト!?

  • 116スレ主25/06/12(木) 14:53:44

    『マダ……ダ……』

    再起不能なほどのダメージを受け、もはや立ち上がることなど不可能な状況であるにも関わらず、メフィストはまだ立ちあがろうとしていた。
    しかし……。

    『GYAOOOOOOOOOOOO!!!!』

    突如メフィストの体がブクブクと膨れ上がり、巨大な怪物へと姿を変えた。
    ブヨブヨとした体を引き摺り触手を伸ばし、もはや人としての原型を保っていないそれは蛸の怪物と表現するのが適切だった。

    「なにあれ!?さすがにしつこすぎない!?」

    先程の渾身の一撃で沈めたと思っていたミカも驚きの声を上げる。

    〈これまではメフィストの強い意志で取り込んだ力を抑え込めていたものの、意識を保てなくなったことでその力が暴走した、といったところでしょうか〉

    通信機からナギサの声が聞こえる。
    上空には先程自爆したものとは別の、新たなヘリが飛んで来ていた。



    「アズサちゃん、ここからは私一人でいきます。クルセイダーちゃんから降りてください」
    「なっ!?どういうことだヒフミ!?」

    ヒフミは覚悟を決めた目でメフィストを見ながら、アズサへと下車の指示を出す。

    「セイア様から事前に聞いていたんです。メフィストは最終的に怪物へと姿を変え、それを鎮めるのに私の力が必要だって」

  • 117スレ主25/06/12(木) 18:33:18

    「そんな……いや、わかった。気を付けて、ヒフミ」

    ヒフミを一人で危険なところへ送り出すのは気が引けたが、セイアがそう言っているならヒフミは無事に帰って来られるはず。
    アズサも覚悟を決め、クルセイダーを降りる。

    「先生、指揮をお願いします!」
    「任せて!みんなでヒフミを援護するよ!まずミカとサオリは……」

    ヒフミはアクセルを全開にして、クルセイダーと共にメフィストの方へと突っ込んでいく。
    他の生徒もヒフミの行く手を阻むメフィストの触手へと攻撃を加え、道を切り開いていった。

    「このまま世界が滅んで、みんなと一緒にいられなくなるのは嫌です」
    「そんな暗くて憂鬱なお話、私は嫌なんです!」

    ヒフミはクルセイダーをオートパイロットに切り替え、車体の上部へ躍り出る。

    「終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです!私たちの物語……」

    「私たちの、青春の物語(Blue Archive)を!!」

    そしてメフィストの本体へと近づいたところで思い切り跳躍し、真っ黒に染まった海のような胴体へと単身飛び込んでいった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 118スレ主25/06/12(木) 20:06:26

    「……はっ!?」

    ヒフミが目を覚ますと、そこは何もない真っ暗な空間だった。
    ここが現実なのか、それとも夢のような世界なのかはわからなかったが、ともかく最も優先すべきはメフィストを止める手立てを探すこと。
    ヒフミは何か手がかりを探すため、周囲を見回す。
    すると……。

    『ぐすっ、ひっく……。みんな、ごめんなさい……』

    ヒフミのすぐ近くに、一人の少女が座り込んで泣いているのが見えた。
    おそらくメフィストに取り込まれたミメシスの一人なのだろう。
    ヒフミは彼女を慰めるため、横にしゃがんで優しく声をかける。

    「こんにちは。どこか痛いのかな?あっ、私はヒフミって言います!あなたは……」

    ヒフミの声かけに応じるように顔を上げた少女を見て、ヒフミは思わず驚愕した。

    『ヒフミ……?私も、私の名前もヒフミです……』

    その少女は何と、ヒフミと同じ姿をしていたのだ。
    しかし不思議なことではない。
    メフィストはずっとヒフミの姿をしていたことからも、ヒフミのミメシスが既に取り込まれていることはわかっていた。

    「ヒ、ヒフミ……ちゃん!?そっか、メフィストに取り込まれて、ずっとここに閉じ込められていたんですね」
    『はい、もう何ヶ月も、ずっと』

  • 119スレ主25/06/12(木) 21:00:22

    模倣ヒフミは沈んだ面持ちだった。

    『私はここから外の様子をずっと見ていました。私の顔をした人が悪いことをするところを、ずっと』
    『けど私では彼女を止められなくて、ただ見てることしかできなくて、たくさんの人を傷つけて……っ!』

    堰を切ったように涙を流す模倣ヒフミを、ヒフミは優しく抱きしめる。

    「あなたは何も悪くありません。もう大丈夫ですよ、私がついていますから。それに……」

    ヒフミは自身の鞄から白い何かを取り出す。

    『それは……!』
    「これ、あなたのですよね?お返しします」

    それはメフィストがトリニティに拘束された時に持っていたペロロのぬいぐるみだった。
    証拠品としての調査が完了したことで役目を終え、処分されようとしていたところを看守の生徒が引き取り、ヒフミへと渡されていたのだ。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    「これは……?」
    「メフィストから押収したぬいぐるみ。本当は処分される予定だったけど、タグのところにヒフミさんの名前があったから、一応渡しておこうと思って」

    「今は汚れてるけど、ところどころ手入れをしたような跡があったから、きっと強い思い入れがあったんだと思う。だから、あなたに任せてもいい?」
    「もちろんです!」

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 120スレ主25/06/12(木) 22:18:37

    そのぬいぐるみはヒフミが手入れをしたことで汚れは落ち、新品のように真っ白で美しいペロロへと仕上がっていた。

    「ペロロ様だってついているんです。あなたは一人なんかじゃありません。だからもう泣かないで?」

    ぬいぐるみを受け取った模倣ヒフミは、それを大事そうに抱き抱えている。

    『これは私がメフィストに襲われた時、落としてしまった物なんです。それが返ってくるなんて、それもこんなに綺麗になって……!』

    『本当に、ありがとうございます……!!』

    泣かないでと言われたものの、思い入れのあるペロロと再開できたことで模倣ヒフミの涙は止まらなくなってしまう。
    ヒフミはそんな彼女の頭を優しく撫でる。

    『……ご心配をおかけしました。もう大丈夫です』

    すっかり調子を取り戻した模倣ヒフミは、すくっとその場に立ち上がった。
    その様子を見たヒフミも安心し、メフィスト打倒へ思考を切り替える。
    すると周囲に自分たち以外の気配がぽつぽつと感じられるようになり、ヒフミが辺りを見回すとそこには何人もの生徒のミメシスがこちらを見て立っていた。

    「あなたたちは、まさか……!」
    『そう、そこのヒフミちゃんと同じくメフィストに取り込まれたミメシスだよ。本当はこんなところさっさと出て行きたかったけど、私たちじゃ何もできなくて』

  • 121二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 04:35:17

    模倣ヒフミらの反応的に取り組む前提だから取引せずに取り込んだのかな
    この惨状見続けなきゃいけないなんて..

  • 122スレ主25/06/13(金) 06:24:53

    保守コーナー 〜ブルーアークカタストロフのルール〜

    ミメシスが同族に捕食された場合、経験値や特殊な能力などは全て捕食した側の物となる。
    しかしこの時、捕食された側の意識データは消滅せず、その体内に残り続けている可能性があることが最近の研究で判明した。

    もっとも、それによってゲームの進行に影響が出ることは無いので安心してゲームをプレイしよう。

  • 123二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 08:02:50

    >>122

    メフィストフェレスの中の人…ってコト!?

  • 124二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 09:11:06

    懐柔もせずに捕食か。トリニティ乗っ取り計画より前からなのか、取り込み終わってから計画を立てたのか
    最初に持ってたペロロ人形は模倣ヒフミの持ち物だったか

  • 125スレ主25/06/13(金) 14:41:47

    『気持ちだけはしっかり持とうって、お互いを慰め合ってたんだけど、どうしてもヒフミちゃんだけは泣き止んでくれなくて……ずっと心配してたんだ』
    『でもあなたが来てくれたお陰で元気になったみたい!本当にありがとう!私たちからもお礼を言わせて!』

    何ということだ。
    捕食されたミメシスたちは皆、意識をメフィストの内部に閉じ込められていたのだ。
    こんな暗い空間に、ずっと。
    それなのに腐らず、泣いている模倣ヒフミを気にかけていた。
    ミメシスたちの立派な生き様を見たヒフミは、彼女たちの助けになりたいという思いがより一層強くなる。

    「お願いです!皆さんの力を貸してください!今もまだ仲間たちがトリニティを、キヴォトスを守るために戦っているんです!」

    「一緒にメフィストフェレスをやっつけましょう!」

    『もちろん!協力は惜しまないわ!』
    『にはは!面白くなってきましたね!』
    『わ、私も、何もできないゴミ屑で終わるわけにはいきません。協力します……』
    『それで、具体的にはどうやって戦うの?こっちからじゃ干渉する方法無さそうだけど』

    「…………あっ」

    勢いづいて皆を束ねたまでは良かったものの、具体案を求められてヒフミは固まってしまった。
    どうにかなるとはセイアから聞いているものの、その方法まではセイアでも視ることができていない。

  • 126スレ主25/06/13(金) 18:02:13

    『……羨ましいです。誤解なく他者と分かり合える、あの人が』

    ヒフミたちの様子を少し離れたところから眺めている三人の生徒がいた。
    模倣サクラコ、ミネ、ツルギである。

    『あ、ああ、そうだな……。その、サクラコ、ミネ……』

    模倣サクラコとミネの命を奪った後ろめたさからか、模倣ツルギは二人と目を合わせられずオドオドしていた。

    『お気になさらないでください。私たちだって他の方の命を、力を奪ってきたのですから。ツルギ委員長を責めることなどできません』
    『そうですよ。自分の行いの結果が自分に返ってきた。それだけです』

    模倣ツルギの予想に反して、模倣ミネもサクラコも怒ってはいないようだった。

    『それでも、だ。サクラコ、ミネ、本当にごめん』

    しかしそれでも罪悪感は消えない。
    模倣ツルギは二人の前に立ち、深々と頭を下げる。

    『苦しい、ですよね。もっと違う道はあったでしょうに、どうしてあんなに自身の欲求を、怒りを抑えられなかったのか』

    模倣サクラコは己の行いを顧みていた。
    どうすればこんな悲劇的な結末を迎えずに済んだのか、これからはどうするべきか、もう遅いというのに。
    そんなことを考えていると、隣の模倣ミネがヒフミたちの方へと歩き出す。

    『ミネ団長、何を……?』

  • 127スレ主25/06/13(金) 18:04:09

    『最後くらい、自分が本当に目指していた姿に恥じない行いをしたいです。本当の意味での『救護』というものを、今度こそ』

    それを聞いた模倣サクラコとツルギもつられるように後ろをついて行き、三人はヒフミたちの前に立つ。
    周囲のミメシスを含め、皆警戒しているようだった。
    当然だろう、三人はトリニティを地獄へ叩き落とした主犯なのだから。
    しかし、それでも模倣ミネはヒフミの目を見て口を開く。

    『メフィストフェレスを弱体化させる方法はあります。本人から聞いた話ですが、この空間はヒフミさんのミメシスが中心になっていて、他の取り込まれた方々と見えない糸で繋がっているそうです』

    『つまり、ヒフミさんを中心に皆でバラバラの方向へと走れば糸は切れ、メフィストの呪縛から逃れることが可能です。最も、そうなったとしても生き返れるわけではなく、いわゆる成仏するという形になりますが……』

    模倣ミネの言葉を信じてもいいのか、囚われていたミメシスたちは皆不安そうだった。

    『簡単には信じていただけないことは理解しています。馬鹿は死ななきゃ治らないと言いますが、私は一度死にました。今の私は、こんな恐ろしい目に遭う人が増えることを見過ごすことなどできません!』

    『だからどうか、私にも手伝わせてください。お願いします……!』

    模倣ミネは背筋を伸ばし、深く頭を下げる。
    それを見ていた模倣サクラコとツルギも同じように頼み込む。

    『私からもお願いします。彼女の言葉を信じてあげてください!』
    『お、お願い……します……!』

  • 128二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 18:24:54

    なんか色々見ないうちに大変なことになってんじゃん。それにしても、メフィストフェレスがの真の姿が堕天使じゃあなくて、クラーケンだったとは。まあいい、とっとと無間地獄に叩き落しちまいな!

  • 129スレ主25/06/13(金) 20:10:41

    『……頭を上げてください。お三方の想いを、私は信じます』
    「私も同じ意見です。一緒に私たちの青春を取り戻しましょう!」

    ヒフミたちは三人の意見を受け入れる選択をした。
    周囲のミメシスたちもそうなることがわかっていたのか、やれやれといった顔をしつつも異議を唱えるものはいなかった。

    「私たちが合図をしたら、みなさん一斉にそれぞれ別の方向へ走り出してください!」
    『みなさん、準備はいいですか?それでは、位置について!』

    「『よーい、どん!!』」

    ヒフミたちの合図と同時に、ミメシスたちは一斉に走り出す。

    『これが私の望んでいた、本当の救護!』
    『ようやく誤解なく、みなさんと気持ちを一つにすることができました!』
    『今度こそ、自分の力で勝つんだ……!』

    行き先こそ異なるものの、皆同じ想い、同じ目標を持つ仲間であった。
    メフィストの手駒だった頃とは違い、未熟な気持ちでも素直に向き合い、今度こそ本当の意味で協力し合えた瞬間だった。

    『いっちばぁぁぁぁん!!』

    最初にゴールしたのは模倣ツルギだった。
    メフィストの内部も無限に広がっているわけではなく、見えない境界線がある。
    そこを超えたミメシスは、思わず目を奪われるほど煌びやかな光の粒子となって消えていく。

  • 130スレ主25/06/13(金) 20:12:10

    『GYAOOOOOOOO!!!!』

    取り込んでいた力を逃すまいとメフィストは外で大暴れしている。
    その振動は内側にも伝わってきた。
    ヒフミは不意をつかれ転びそうになったところを模倣ヒフミに支えられる。

    『大丈夫ですか!?これは作戦が上手くいっている証拠です!もうひと頑張りしましょう!』
    「ありがとうございます。そうですね、あともう少し……っ!」

    次々とミメシスたちが天へと昇っていく中、ヒフミはまだ走り出していない一人の少女を見つけた。

    「ミカ様……」

    最後に残っていたのは模倣ミカだった。
    遠くにぽつんと一人佇み、こちらを羨ましそうに見ている。
    その様子はまるで、友達の輪に入れない子どものようであった。

    「大丈夫です、ミカ様。もう誰も怒ってなんかいませんし、ミカ様をいじめたりもしません。だから、私たちと一緒に戦って……」
    『こ、来ないで!!』

    ヒフミが声をかけたものの、模倣ミカは今にも泣き出しそうな顔で、慌てたように走り去ってしまった。

  • 131スレ主25/06/13(金) 22:05:31

    『あ……!』

    模倣ヒフミはつい引き留めそうになるも、ヒフミはその肩に手を置きそれを制する。
    整理のつかない気持ちを無理やり捻じ曲げることはできない。
    境遇の違いから、相手に共感することも難しい。
    ヒフミはこれ以上の干渉をせず、模倣ミカの心に安寧が訪れることを静かに祈るのであった。

    一方、模倣ミカは一目見て確信していた。

    (無理だよ私には……!主人公になるのはああいう子だし、お姫様になるのは本物のミカのような、心が強い子)

    (私がなれるのはせいぜい意地悪な魔女、脇役、いじめっ子だけなのに、ついにはそれからも逃げちゃった)

    (私なんて大っ嫌い……!)

    この期に及んでなお自分の都合でしか考えられないことに嫌気がさしながらも、模倣ミカはヒフミを直視することができずそのまま走り去ってしまった。
    そして模倣ミカも他の者と同様、光の粒子となって消えていった。

  • 132スレ主25/06/13(金) 22:07:37

    ヒフミを除く全てのミメシスが消えたことでメフィストの抵抗も収まり、周囲の空間が少しずつ灰のようにボロボロと崩れ、晴れた空が見え始める。
    ようやく皆の所へ帰れる。
    ヒフミが振り向くと、模倣ヒフミも既に光の粒子となり消える寸前だった。

    『ありがとうございました。辛いことも多かったですけど、最後に……楽しい思い出ができました!ええと、少し不謹慎かもですけど……あはは』

    「こちらこそありがとうございました!メフィストの中でみなさんに協力していただいたこと、必ず仲間へ伝えます!ミメシスを見る目が少しでも変わるよう、頑張りますから」

    「ですから、どうか安らかにお眠りください」

    ヒフミの言葉に安心したのか、模倣ヒフミはペロロのぬいぐるみと共に、笑顔で天へと昇っていった。
    そして辺りは光に包まれ、ヒフミは元の世界への帰路についた。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 133二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 22:41:20

    >>131

    逃げることなく自分の命を差し出せたのは魔女ではないのではと思う。どうか来世は3人とも仲良く幸せに生きていけますように。

  • 134スレ主25/06/14(土) 05:42:41

    保守コーナー 〜ブルーアークカタストロフのルール〜

    ルールの訂正
    違反行為に対するペナルティ
    旧:通常、利敵行為などをした場合は藍輝石の没収および約十分後にアカウント削除の対応を行う。

    新:利敵行為をした場合でもペナルティは発生しないものとする。

    敗北条件
    旧:すべてのミメシスが消滅してそのまま復活出来なかった場合はゲームオーバーとなり、アリーティア総合学園は敗北となる。

    新:すべてのミメシスが消滅もしくは降参をしてそのまま復活しなかった場合はゲームオーバーとなり、アリーティア総合学園は敗北となる。

  • 135二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 05:57:17

    >>134

    メフィスト、しぶとく生き残ってまさかの土下座で降参して生き残るつもりか?(実際はまだメネシス出生きてるあのキャラのためだと思うけど)

  • 136二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 09:48:03

    自分には逆らえないと高をくくって弱点を喋ったのは間違いだったな
    やっぱりヒフミは主人公属性だよ
    理解ってしまった模倣ミカ……自覚したのはいいが、惜しむらくは次が無いということだ
    せめて入るガワがあればな…

  • 137二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 11:43:31

    >>135

    は?土下座して無様に命乞いをするかもしれないだと?許すわけねぇだろ!!!

    奴は全力全開で叩きのめし!無間地獄に叩き落すのみ!

  • 138スレ主25/06/14(土) 14:25:25

    『GYAOOOOOOOO!!!!』

    一方、外の現実世界ではヒフミがメフィストに飛び込んでいった後、暴れ出した怪物を止めるべく皆が力を尽くしていた。

    「あれはツルギの!それにミネ、サクラコまで!それだけじゃない、コユキにミユも……!」

    他の生徒には見えていなかったが、先生にはメフィストから次々と剥がれて消えていくミメシスたちのヘイローがはっきりと見えていた。

    「手ェ貸すぞ、ミカ!!」
    「ぐっ、うううう!!ありがとう、ツルギちゃん……!」

    「アズサさん!その戦車では摩擦熱とオーバーロードで自爆するだけです!力仕事は私に任せて、一度離脱を!」
    「ありがとうミネ、けどまだ大丈夫!たかがタコ一匹、クルセイダーで押し出してやる!」

    「先生、余った爆弾で瓦礫を爆破して生き埋めにする作戦はどうだ?」
    「ナイスだよ、サオリ!それでいこう……っ!」

    ふと一瞬目を離した隙に、一本の触手が先生や生徒たちの隙間を潜り抜けて伸びていくのが見えた。
    その先にはトリニティ自治区がある。
    もしも触手が無限に伸びる場合自治区にまでその脅威が迫ることになる。
    一瞬の判断ミスへの悔いと、次にどう対応すべきか瞬時に思考を巡らせる先生。



    しかし触手は途中でその動きを止めた。

  • 139スレ主25/06/14(土) 19:17:10

    「先生、遅くなりました!この触手を止めれば良いのですよね!?」

    トリニティ西側で戦闘をしていたヒナタが駆けつけ、すんでのところで触手を食い止めてくれたのだ。
    そしてヒナタに続くようにシスターフッドの生徒が次々と現れ、他の触手へ取り付き動かないように押さえつける。

    「ヒナタさん……!皆さんも無事だったのですね!」

    部員の無事を確認できたサクラコは安心したようで、険しかった表情がほんの少し緩む。
    さらに……。

    「こっちも片付いたっすよー!マシロたちとも合流して、正義実現委員会も全員無事っす!」
    「私たちも協力します!」

    イチカとマシロ率いる正義実現委員会の生徒たちも加わる。
    それだけではない。

    「皆さん、私たちもお手伝いします!」
    「俺も手伝う!トリニティ自治区は俺たちにとっても大切な場所!やらせはしない!」
    「軍手を用意しました!これで滑りにくくなるはずです!」

    トリニティの一般生徒に加え、今回の件とは無関係の市民まで騒ぎを聞きつけて救援に来てくれた。

    「サッちゃん!先生!」
    「アツコ!来てたのか!」

    さらにアリウススクワッドも駆けつける。

    「事情は大体わかってるよ。あの大きな蛸を止めればいいんだよね?私たちも協力する」
    「ああ、頼む!」

  • 140スレ主25/06/14(土) 19:57:35

    皆一様に必死な顔で、暴れるメフィストを止めるために食らいついていく。
    そして……。

    『俺たちにもやらせてくれ!!』
    『生身の市民は下がってください!動きの激しい危険なところは私たちが!』

    生徒や市民がトリニティを守ろうとする姿に心を打たれ、ミメシスにも協力する者が出始めた。
    しかし中には反対する者もいる。

    『お前たち諦めるのか!?ここでメフィスト様が勝てばまだ勝機はあるというのに!』

    『何がメフィスト様だ!自我を無くして暴れるだけの怪物を、お前たちは信仰するのか!?』
    『見てみろこの状況を!トリニティの生徒たちを!彼女たちは悪人なんかじゃない!悪いのは自分の目で人を見ることを忘れた俺たちの方だ!』

    一人、また一人と悪魔の呪縛から解き放たれていく。
    ついには継承によってユスティナ信徒から進化したバルバラやアンブロジウスまでもが力を貸してくれた。

    しかし、アンブロジウスの強力なパワーを持ってしても少しずつ押されていく。

    『これだけの力を集めても足りていないというのに、無駄なことを!』
    『アンブロジウスは伊達じゃない……!』
    『なあ、これって利敵行為にあたるんじゃないか?その場合ルール違反であと十分もしないうちにアカウントが削除されるぞ!』

  • 141スレ主25/06/14(土) 19:58:44

    ミメシスたちが加わってもなお劣勢であり、かつアカウント削除でメフィストを押さえておける人員が減る可能性もある。
    何か手段は無いか、皆が頭を悩ませていたその時……。

    『プレイヤーの皆さん!お願いがあります!』

    聞き覚えのある声にミメシスたちは反応する。
    声のする方へ視線を向けると、模倣ハナコが走って来るのが見えていた。

    『先程、ブルーアークカタストロフのルールを書き換えました!これにより、運営への利敵行為を行った場合でもアカウント削除措置は取られません!』

    『お願いです!トリニティを守るために力を貸してください!!』

    必死な顔に掠れかけている声、飾り気のない言葉。
    模倣ハナコの様子は、トリニティ解放作戦の説明を行っていた時とはまるで別人のようだった。

    『決まりだな』
    『ああ、悪事に加担した俺たちが言えたことじゃないけど、子どもが頑張ってるのに大人の俺たちが何もしないわけにはいかないからな』

    模倣ハナコの必死な叫びが届いたのか、ほとんどのミメシスがメフィストを止めるのに協力してくれるようになった。

    「ぜぇ、ぜぇ……あんた、やっぱりとんでもない体力してるわね……!」
    「はい、とても私と同じ存在とは思えません……!でも、嬉しいです」
    「そうね。子どもの成長を喜ぶ親ってこんな気分なのかしら」

  • 142スレ主25/06/14(土) 19:59:53

    模倣ハナコの後ろから少し遅れてコハルとハナコが追いついて来る。
    二人は息絶え絶えだったが、模倣ハナコの活躍を見て優しい笑みが溢れていた。
    そして……。

    『GYAOOOOOOOO……!』

    「頑張ったね、ミカ、ヒフミ」

    模倣ミカと模倣ヒフミのヘイローが消えていったのを最後に、メフィストは動きを止めた。

    「止まったのですか……!?」
    「待って、まだ生きてるかも。警戒を怠らないで!」

    気を緩めかけるマリーを見て周囲の者たちもメフィストを押さえつけていた手を離すが、先生は警戒を解いていなかった。
    そこへ、一人のミメシスが駆け寄ってきた。

    『おい見てくれ先生!俺たちユーザー用の端末でメフィストのHPを確認したんだが、0になってた!』
    「なるほど。ユーザー向けに表示される情報なら、偽装されてはいないってことだね」

    すると先生の仮説を裏付けるように、メフィストの体が端からぼろぼろと灰のように崩れ、最終的には塵一つ残らなかった。

    「ヒフミ!!」

    そしてその中心辺りにヒフミが倒れているのを発見したアズサは、すぐさま彼女の元へ駆けつけた。

  • 143スレ主25/06/14(土) 20:05:48

    「ア、アズサ……ちゃん?」
    「もう大丈夫だヒフミ。トリニティ自治区へ被害が出る前にメフィストフェレスを止めることができた」

    特にダメージは受けていないようで、アズサの言葉を聞いて安心したヒフミは自力でゆっくりと立ち上がる。

    「よかった……です。中で私たちのミメシスがメフィストを止めるのに協力してくれました。そのことを皆さんにも伝えないといけません」
    「ああ、ゆっくり聞くよ。頑張ったな、ヒフミ」

    ヒフミの無事も確認できた先生は通信機で仲間たちへと連絡を取る。

    「メフィストフェレスの沈黙を確認。動ける生徒は怪我人を救護施設や病院に運ぶのを手伝って欲しい」

    先生は通信機を外し、生徒、市民、ミメシスたちの方へ向き、この戦いに一区切りをつけるべく声をかける。

    「生徒のみんなお疲れ様!市民の方々も、ミメシスのみんなも!おかげでトリニティを取り戻すことができた!」

    「連邦捜査部S.C.H.A.L.Eとして、キヴォトスの治安維持にご協力いただいたこと、誠に感謝申し上げます!」

    「みんな、本当にありがとう!!」

    歓声を上げる一同。
    先生はどうにか場を纏められたことに胸を撫で下ろしていた。

  • 144スレ主25/06/14(土) 20:07:34

    「ふう、終わった……な……」

    メフィストの脅威が去って気が緩んだのか、芝犬のような市民がその場に倒れ込んでしまう。
    それを見た一人のミメシスが慌てて駆け寄っていった。

    『おいあんた、大丈夫か!?』
    「ああ、問題ないよ。私は貧血持ちでね、いつものことさ。でもやっぱり、生身で無茶はするもんじゃないな。はは……」

    市民は自重気味に笑っている。
    しかしミメシスはそれを一切笑わず、市民が怪我をしないよう優しくその場に寝かせる。

    『ああ、その通りだな……。けど俺はあんたを尊敬するよ。大怪我をするかもしれないのに、それでも生身で立ち向かって。俺とは大違いだ』

    「君は敵側だったんだろう?それなのにそっちを切って、街を守るのに協力してくれたじゃないか。自分を省みるのは簡単なことじゃない。君も立派だよ」

    市民とミメシスは互いの健闘を讃え合い、握手を交わす。
    見た目こそかつて戒律の守護者と恐れられていた存在だが、その中身は、行動は優しさに満ちていた。

  • 145スレ主25/06/14(土) 20:11:04

    『どうする?俺たちが消えればこのゲームは終わるらしいけど、アカウント削除でいいのかな?』
    『あっ、wikiに降参の手順載ってる。ここ押せばいいのかな』
    『はぁ、ヴァルキューレってどんな取り調べをするんだろう?公安局には『狂犬』ってのもいるらしいし、怖いなぁ……』
    『それでも逃げ続けるよりはマシだと思う。こういう言い方はアレだけど、自首した方が罪も軽くなると思うし……』

    果たすべき役目を終えたミメシスたちは、プレイヤーが降参を選んだことで次々と消滅していく。
    そして……。

    DEFEAT

    プレイヤーたちのスマホの画面にゲームオーバーとなった画面が表示される。
    メフィストおよびすべてのミメシスが消滅したためゲームオーバーとなり、アリーティア総合学園は敗北となった。

    だが、そんな中ハナコはどこか不安そうな顔をしていた。

    「コハルちゃん!もう一人の私を見ませんでしたか!?」
    「えっ!?ハナコ二号が!?どこにいったのよ、あいつまさか……!」

    コハルたちが聞いたところによると、アリーティア側の敗北条件は全てのミメシスが消滅すること。
    当然、模倣ハナコも含まれているはずだ。

  • 146スレ主25/06/14(土) 20:12:34

    二人が最悪の結末を予感し始めていた時……。

    『あらお呼びですか?私ならここにいますが』

    二人の心配をよそに、模倣ハナコがひょっこりと現れた。

    「きゃあ!?ミメシスは全滅したのではなかったのですか!?」
    「どういうこと!?幽霊!?ていうかどこ行ってたのよ!」
    『いえ、まあ元々幽霊みたいなものですが……って、違います。私はこの通り死んでなどいません!ちょっと怪我人を運ぶのを手伝っていただけです!』

    模倣ハナコは自分が生き残った仕組みについて説明する。

    『アプリ内に降参ボタンを新たに用意し、それを押したユーザーは幹部級含めて退場扱いにする、とルールを新たに加えたんです。これなら私たちのような存在も命を失わずに済みますから』

    『……もっとも、生き残ったのは私だけのようですが』

    模倣ハナコは消えていったかつての仲間たちの顔を思い浮かべていた。
    散々いがみあって、もはや仲間と呼べるのかも怪しいほど険悪な関係だったが思うところはある。

    そして、自分が生き残ったのは遊び呆けるためではない。
    自分たちの行いを正しく伝え、罪を償いそれを忘れない生き証人としての役割がある。
    模倣ハナコは覚悟を決め、ハナコとコハルはそんな彼女の手を取るのだった。

  • 147二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 21:20:20

    >>122

    結局この保守コーナーを作ったのは誰なんだろう?この122とか模造ハナコが作ったとは思えないし、最悪b級モンスター映画みたいに、今までのはメフィストは誰かのメネシスに過ぎなくて、メフィストのオリジナルは生きている可能性もあるのかも?

  • 148スレ主25/06/14(土) 22:08:36

    「こっちはもう大丈夫。あとは最後の仕上げだけだね」

    「いってらっしゃい、セイア」

    そして先生は晴れ渡った空を見上げ、上空を飛ぶヘリコプターに乗っているであろうセイアへとエールを送った。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 149スレ主25/06/14(土) 22:09:47

    やあ皆、スレ主セイアだよ。
    明日は最終回、いよいよお別れの時だ。

    どうにかトリニティ自治区を脅威から守ることのできたトリニティ生たち。
    しかし、実は蛸の怪物が消滅する寸前、メフィストフェレスの本体が秘密裏に脱出し逃走していたんだ。
    それを追いかけるセイア、果たしてキヴォトスの運命や如何に?

    にせティーパーティーの逆襲 最終回
    百合園セイア大勝利!希望の未来へレディ・ゴーッ!!

    最後まで絶対見てくれたまえ。

  • 150二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 23:41:11

    >>92

    「我々」

    >>147

    「ネメシス」


    小さいことに囚われる必要はないけど拘れないのはダメでしょ

  • 151二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 23:50:18

    >>150

    あるんだなこれが。“組織”としての総称が「我々」で“個人若しくは種族”としての区分が「私たち」なんですかね?

  • 152二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 23:52:12
  • 153二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 23:53:43
  • 154二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 02:03:40

    >>150

    すいません。見落としてました。一応、92とは無関係です。


    >>149

    「希望の未来」と書いてあるのでファウストさん、このままだと一人残されたハナコが可哀想なので、最後に改心して、ナルトの輪廻転生みたいに自分の命で全員生き返りをさせて下さると幸いです。

  • 155154です。25/06/15(日) 02:20:51

    絶対にスレ主に無理強いしたいわけではないです。今までの流れからして生き返るのは難しいと思いますが、どうせなら完全無欠のハッピーエンドで終われればすごく嬉しいです。

  • 156スレ主25/06/15(日) 04:11:10

    保守コーナー 〜ブルーアークカタストロフのルール〜

    【サービス終了のお知らせ】
    いつも『ブルーアークカタストロフ』をご利用いただき誠にありがとうございます。
    多くのお客さまに支えられながら運営を続けて参りましたが諸般の事情により、誠に勝手ながら『ブルーアークカタストロフ』は本日をもちましてサービスの提供を終了させて頂く事となりました。

    非常に短い間でしたが、本サービスをご愛顧いただき誠にありがとうございました。
    皆さまからの温かいご支援とご厚情に心より深く御礼申し上げます。

    『ブルーアークカタストロフ』運営事務局

  • 157スレ主25/06/15(日) 07:47:54

    『はあ、はあ……!』

    メフィストは廃墟地帯の地下通路を走っていた。
    息を切らし、まともに動かず引きずるしかない足のせいで時々転んでしまうが、それでも必死に逃げ続ける。

    メフィストはミカの一撃を受けて力が暴走し巨大化した際、それを目眩しに使い本体を切り離すことでどうにか逃げおおせていたのだ。
    しかし本体の存在に気付かれないよう、これまで取り込んだ力は全て捨てることになってしまった。

    その姿は最早人と呼ぶには無理があるほどドロドロと溶けきっており、白い泥のような何かがどうにか人の形を保っていると表す方が適切なほどだった。

    『どうしてこうなった……!』

    絶対に上手くいくはずだった。
    トリニティなんて所詮、平和ボケして無益な派閥争いにしか目を向けられない哀れな奴らの牧場だと思っていたのに。
    あんなに団結できるなんて想定していなかった。

    『どうしてこうなった……!!』

    いや、それだけじゃない。
    せっかく味方につけた市民共に裏切られたのも大きい。
    途中で主張を変えて、不利になったら即離反するような意志の弱い奴ら。
    最初からあんな『切断厨』みたいな奴らをあてにしたのが間違いだったのか。

    こんなことなら最初にゲヘナを狙っていれば良かった。
    何ならミレニアムだっていい。

  • 158スレ主25/06/15(日) 07:53:08

    いいや、連邦生徒会という手もあった。
    先生から一度はシッテムの箱とあのヤバいカードを奪うことはできたんだ。
    先生を始末して私がその椅子に座るというような、もっと違うアプローチがあったかもしれない。

    計画は上手くいくはずだった。
    模倣セイアの裏切りで拘束されたこともあったけど、それすらゲームの難易度を上げるスパイスくらいにしか思っていなかったのに。

    一体どこから間違えたのか。
    ティーパーティーのミメシスを作ったところ?
    違う、裏切ったセイアは結果的に始末できたし、その時点では私たちは勝っていた。
    ナギサだってこっちが不利にならなければ裏切らなかっただろうし、ミカも戦力としては必須だった。

    じゃあもっと前、ゲマトリアの連中を見限ったことか?
    冗談じゃない、あんなお遊びサークルと一緒にいたって私は心から笑えなかった。

    いいや、ゲマトリアだけじゃない。
    結局誰も彼も私の力を、理想を、価値を理解できる頭を持ってる奴なんかただの一人もいなかった。
    どいつもこいつも特別な力や資格など持っていない、生きる資格すら本来なら持ち合わせていないような無知蒙昧な存在なのに、不平不満だけは一丁前に宣うのだから救えない。

  • 159スレ主25/06/15(日) 07:57:49

    間違いは無かったはずだ。
    自分が活躍する舞台にキヴォトスを選んだことも。
    それよりももっと前、研究の道を志したことも。

    悪いのは私じゃない、世界が私を理解できなかっただけなんだ……!





    「どこへ行く」

    その声を聞いた時、メフィストは血の気がさっと引いていく感覚を覚えた。

    「どうして逃げる。君の生み出した化け物たちは皆、それぞれの思想の違いはあれど最後まで自分の信念に従って戦ったというのに」

    今一番聞きたくない声。
    それは先ほどのようなスピーカーを通したものではなく、間違いなく本人による肉声だった。

    「それなのにその首謀者たる君だけが不利になったら逃げるだなんて、そんな道理は通るわけがないだろう」

    姿は見えない、しかし聞こえてくる足音は確実にこちらに近づいている。
    位置を捕捉されないうちにメフィストは声から遠ざかる方へと逃げる。

    「そっちは行き止まりだよ」

    そんな言葉など信じるものか。
    きっと自分を追い込むための嘘に違いない。
    メフィストは聞こえてくる声には従わず、真っ直ぐに進み続けた。
    しかし……。

  • 160スレ主25/06/15(日) 08:01:06

    『あ……』

    声の主の言った通り、行き止まりに当たってしまった。
    急いで引き返さないと。
    しかし途中でそいつに遭遇したらどうしよう。
    メフィストは心臓の鼓動が早くなるのを感じつつ、急いで来た道を戻り別の道へと進んだ。

    「逃げるな」

    しかしどこへ進んでも地上に出られず行き止まってしまう。
    メフィストはパニックを起こし、段々と正常な判断ができなくなっていった。

    「逃げるな」

    徐々に近づいてくる声に恐怖を覚えたメフィストはいつの間にか足の痛みなど忘れ、半ば正気を失いながら地下通路を駆け回っていた。
    遠くへ、遠くへ、あの狐の声が届かないくらい遠くへ!

    「逃げるな……!!」

    しかし必死の逃走劇も虚しく、ついには袋小路に追い込まれてしまった。
    また道を間違えた。
    もしもさっきの道を右に曲がっていたら。
    もしも下ではなく上の階へ繋がる階段を登っていたら。

    そんな『もしも』のことばかりを考えてしまう。
    それはまるで……。

    「まるで君の人生そのものだね。人の話を聞かず、向き合うことから逃げ、道を間違え、差し伸べられた手さえも振り解く」

  • 161二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 08:21:36

    ざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろ
    ざまあみろぉ!!!!!!!!!!!!!

  • 162二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 08:28:34

    >>161

    メフィストフェレスゥ!!!お経を読めぇ!土下座し!靴をなめて!!命乞いしてみろ!!!

    言ったはずだぁ!地獄の深淵がお前を飲み込まんと大口を開けて待ってるってなぁ!!!

    さあ無間地獄に落ちやがれ!!!!!!!!!!

  • 163二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 08:45:27
  • 164二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 09:24:42

    >>163

    そうだよ。(by>>161>>162の人。)

  • 165二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 09:25:37

    >>158

    え? ゲマトリアの連中を見限った?

    メフィストフェレス、お前……!?

  • 166二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 09:30:28

    >>165

    まさか…まさかそんな…!

  • 167スレ主25/06/15(日) 09:41:06

    行く手を阻む壁に恨めしそうにしがみついているメフィスト。
    その声は自身のすぐ後ろから聞こえてくる。

    「そうしていつしか人が離れ、行き詰まった先で一人惨めに死んでいく」

    恐る恐る振り返ると、そこには百合園セイアが立っていた。

    『あ……』

    思わず腰を抜かすメフィスト。
    感じるのは今まで会ってきた者たちの中でもとりわけ強く、純粋な殺意。
    人からこんなに恨まれるのは生まれて初めてだった。

    いや、本当にそうだろうか。
    今までもたくさんの人と諍いを起こしてきたが、絶対的優位に立っているが故の余裕により、人の心の機微など気にも留めていなかっただけということはないか。
    セイアのように恨みを持っている者は珍しくも何ともなく、その怨念に気付けていなかっただけなのではないか。

    真の意味で劣勢に立たされて初めて感じる死の恐怖。
    眉間に皺を寄せ、憎悪のこもった視線を向けるセイアにメフィストは言葉も出ず、後ずさることしかできない。

    しかしこんな状況でも往生際の悪さは健在で、少しだけ冷静さを取り戻したメフィストは舌戦でこの場を切り抜けようともがき始める。

    『っ、私の何を知ってるって言うんです!!まるで間違えているのが私みたいな言い方で!どこへ行っても私の価値を理解できる奴なんかただの一人もいなかった!あんな奴ら見限られて当然ですよ!』

  • 168スレ主25/06/15(日) 09:43:08

    『悪いのは私のレベルに合わせられなかった世界の方だ!!「人の話を聞かず」って、そういう君こそ私の話を聞かずに一方的に決めつけて、人のこと言える立場ですか!?』

    メフィストは出鱈目な理屈を捲し立てることでペースを自身に引き込めるよう画策する。
    しかし相手もトリニティを纏め上げられるほど頭が切れる上に冷静さも失わない、口喧嘩なら圧倒的な強さを持つセイアが相手なので簡単には崩せない。

    「話なら聞いたよ。たった今君が自身の人生のスタンスをわかりやすく説明してくれたじゃないか」

    その言葉を聞いたメフィストはゾッとする。

    『未来……』
    「ああ、この会話も既に夢で視ている。あの蛸の怪物を囮にするために、君はこれまで取り込んだ力の全てを捨てたのだろう?私の予知から逃れる手段も一緒に」

    「そのおかげで今の、ここから先の君の行動を一挙手一投足に至るまで全て把握することができた」

    その言葉を聞くと同時に、メフィストは過去にナギサやセイアに言われたことを思い出していた。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 169スレ主25/06/15(日) 09:45:57

    「私もセイアさんから聞いたあなたの末路を教えて差し上げようかと思いましたが、やめておきましょう。このような言い方をする時点で、ある程度察しがつくとは思いますが」

    「そうしていつしか人が離れ、行き詰まった先で一人惨めに死んでいく」

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    『うっ、うう……うわああああああああ!!!!』

    殺される。
    体の芯から死の恐怖に震え上がったメフィストは、落ちていた石を拾ってセイアに投げつけようとする。

    しかしセイアはそれよりも早く銃を抜き、メフィストの肩を撃ち抜いた。

    『あ゛あ゛っ……!』

    そしてそのまま倒れ込み、無抵抗となったメフィストへ無言のまま何発も銃弾を撃ち込んだ。
    妹の仇を取るために。

    初めての出会いは古書店で同じ本を手に取った時だった。
    それから危機を退けるため先生と共に戦い、トリニティでナギサと取り調べをして、誤解を解いた後は風呂で背中を流し、スイーツ部を交えて遊んで、悩みを聞いて、最後には笑顔で送り出した。
    いや、送り出してくれたと言うべきか。

    思い浮かぶのは短くも濃密な思い出。
    これからもそんな青春が続くはずだった。
    それを奪った相手への怒りと、それがもう戻らない事への悲しみが綯い交ぜとなり、セイアの頬を一筋の涙が伝う。

  • 170スレ主25/06/15(日) 09:47:41

    『ううっ……こ、ころさないでぇ……』

    もう何発撃っただろうか。
    穴という穴から血を垂れ流し、轢かれた蛙のように伸びているメフィストは今にも消え入りそうな声で命乞いをするのが精一杯だ。

    そんな状況だがセイアは一切冷静さを失っておらず、万が一に備えてマガジン一つ分は銃弾を残しており、既にリロードも終えていた。

    「殺さないよ。その一線を超えてしまえば、それこそブルーアークカタストロフのプレイヤーたちと同じ、暴走した正義の傀儡になってしまう」

    「だから、私は君を殺さない」

    その言葉を聞いたメフィストは一縷の希望を見出す。
    ここで死なずに済むのであれば、まだ逆転の可能性はある。

    おそらくこの後はヴァルキューレに逮捕され、長い懲役刑が待っているだろう。
    だがそれでいい。
    一度時間を置いて、釈放される頃にはもうほとぼりが冷めているはずだ。
    そうしたら今度こそトリニティを堕としてやる。

    上等な研究設備なんか無くても、ペンを走らせる手、どこへでも行ける足、何より圧倒的なこの頭脳さえあれば塀の中であろうが何とでもなる。
    それまでの間、束の間の平和を味わうといい。
    その間にこちらも次の作戦の準備をさせてもらう。

  • 171スレ主25/06/15(日) 09:51:12

    とはいえ、今回はどう足掻いても負けだろう。
    悔しいが、自分を負かした相手に賛辞の一つでも贈ってやろうとメフィストは体を起こそうとする。





    しかしその望みは叶わなかった。
    いくら手足を動かそうとしても地面を掴むことができない。
    それどころか、手足の末端の感覚が無い。

    『え、あれ……』

    一体何が起こっているのか。
    メフィストが自身の手元を見ると、その目に飛び込んできたのは肘から先が失われている腕だった。

    『うそ、何で!?腕は!?なんで再生しないの!?』

    足も同様に膝から先が失われている。
    そうこうしている間にも体の崩壊は進み、末端から灰のようにぼろぼろと崩れていく。
    メフィストは状況が飲み込めていない様子だった。

    「ああ、言い方が悪かったね。私『は』君を殺さない。思い出してごらんよ、そっちのナギサが言っていたことを」

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    『この光を浴びた生物は一部の例外を除き、正気を失い肉体が崩壊してしまいます。つまりは死を意味します』

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 172スレ主25/06/15(日) 09:53:54

    『そんな……!何で……!?』
    「君が『一部の例外』ではなかった、ただそれだけさ」

    セイアは淡々と事実を突きつけていく。

    「私が色彩と接触したあの日、君がソレに触れる選択をした時点で遅かれ早かれこうなる運命だったのさ」

    「私が来たのは君の最期を見届け、事件の終結を宣言するためだよ」

    先ほどまで見ていた明るい未来が一瞬にして崩れ、深い絶望感に襲われる。

    『あっ、ああああああああああ!!!!いっ、嫌だ!!死にたくない!!助けて!!』

    しかしいくら叫んだところで崩壊は止まらない。
    頭の先からも崩れ始め、思考能力が削れ、視界が真っ暗に染まっていく。

    『うわああああああ!!!!嫌だ!!逝きたくない!誰か!!誰か助けて!!死にたくない!!やだ!!やだやだやだやだや…………』

    全てを言い終わらないうちにメフィストの全身は灰のように崩れ、後には塵一つ残らなかった。
    こうして一連の事件を起こした悪魔、メフィストフェレスは消滅した。
    その最期はあまりに凄惨で寂しく、無惨なものだった。
    他の生徒が見ていなくて良かった。
    こんな光景を見ては、きっとトラウマになってしまうだろう。

  • 173二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 10:02:53

    亡霊を装いて戯れなば、汝、亡霊となるべし

  • 174二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 10:23:30

    >>171

    >>172

    メフィストも非道ではあったけど邪悪な大人やサイコパスじゃなくて、単に幼稚園の悪ガキにすぎなかったな、、、

     一応、負けたら相手に賛辞の言葉を言えるぐらいには多少マシなところもあるし、地獄での刑期を終えたら今度こそ、生まれ変わったらその頭脳や話術を真っ当に活かして青春を送れることを祈ります。

  • 175スレ主25/06/15(日) 15:14:09

    「ふう、終わったよ」

    セイアはここにはいない妹への手向けになるよう、ぽつりと呟く。
    模倣セイアから受け継いだ未来予知によって視えていたのはここまでだった。
    きっと、メフィストの消滅と共にこの戦いは終わり、同時にこの力も失われるのであろう。

    ただでさえ体力が無いというのに、限界を超えて戦い続けたことで蓄積していた疲労感がどっと押し寄せてきた。
    今すぐにでも横になりたい気分だったが、それを堪えてセイアは来た道を引き返す。

    戦いは終わったが、戦後の処理がまだ残っている。
    トリニティの混乱はしばらく続くだろう。
    考えただけでも目眩を起こしそうになるが、それでもセイアは歩き続ける。

    「あっ……!」

    そんな時、注意が散漫になっていたせいで足元の段差に気付かず足を引っ掛けてしまう。
    体力を使い果たし、受け身も取れそうにない。
    体が前に傾き、転びそうになるセイアだったが……。



    「お疲れ様、セイアちゃん」

    セイアは倒れることなく、その体は迎えに来ていたミカによってすんでのところで受け止められた。

    「終わったのですね、セイアさん」

    ナギサも一緒だった。
    二人は穏やかな笑みを浮かべており、安心したセイアはそのままミカに背負われ、地下通路の出口を目指す。

  • 176スレ主25/06/15(日) 15:17:25

    「二人ともありがとう。奴の最期を見届けてきた。戦いは終わったよ」
    「本当にお疲れ様でした。今はゆっくり休んでください」
    「セイアちゃんの部屋までは私が背負っていくから、寝ててもいいよ。学園のことはまあ……何とかなるでしょ⭐︎」
    「また私に負荷が集中しそうですね……。まあ、何とかしましょう」

    日頃聞き慣れた二人の声。
    鬱陶しさすら感じることもあったはずなのに、今はそれがとても心地良い。
    セイアは二人の優しさに甘えることにした。

    「ただ、一つ心配なことがある。あの子たち、仲直りできるだろうか……」
    「できますよ、きっと」
    「できるよ。私たちだってできたんだから」

    「……そうだね、愚問だった。彼女たちを信じよう」

  • 177スレ主25/06/15(日) 15:18:42

    自分の性格を見直した結果、仮にその機会があったとして本当に仲直りできるか心配になっていたが、二人はそんな悩みを一蹴してくれた。
    そうして歩いているうちに、外の光が差し込む地上への出口が見えてくる。

    地上へ出ると先生やトリニティ生、市民たちが出迎えてくれていた。

    「みんな、おかえり……!」

    無事な三人を見て先生が泣いていたのは驚いたが、セイアはその心の暖かさを噛み締めていた。

    「ただいま、先生」

    とはいえここは廃墟地帯。
    取り戻した学園まで辿り着いてこそ、本当の意味での帰還と言えるだろう。

    「それじゃあ帰ろうか。私たちの学園に」

    こうして戦いを終えたセイアたちは、学園へと帰るべく歩きだしたのであった。

  • 178スレ主25/06/15(日) 15:21:38

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    『……!』

    もう一人のミカは、気が付けば街中に一人ぽつんと佇んでいた。
    周囲を見渡すとそこはトリニティ自治区によく似た街並みをしており、生徒たちが友人と談笑しながら歩いているのが見える。

    よく見るとその顔には見覚えがあった。
    そこにいる生徒たちは皆メフィストによって生み出され、無念の死を遂げていった者たちだった。

    『……そっか。死んじゃったか、私』

    傷だらけだった羽も、失われたはずの手足も傷跡一つ無く綺麗な状態に戻っている。
    目を覚ました段階でおおよそ察しはついていたが、自身と周囲の様子を見て改めてそれを実感する。

    ではここにいる生徒たちは一体どこへ行くのだろう。
    生徒たちの歩いていく方向を見ると、その先には大きな学園があるのが見えた。
    彼女たちはきっと、あの学園で生前手に入れることのできなかった青春を謳歌するのだろう。

    しかし自分は向こうへは行けない。
    誰に言われたわけでもないが、ミカはその事実をはっきりと認識できていた。
    自分が向かうべきは学園とは反対方向の、青春とは程遠い何も無いところ。
    ミカは生徒たちとすれ違うように、一人街並みを歩いていく。

  • 179二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 16:22:35

    >>174

    次なんてない、未来永久永遠に無間地獄で過ごすといい。

    さようなら、そしてざまあみろ。

  • 180スレ主25/06/15(日) 18:13:53

    学園から遠ざかるほどすれ違う生徒は少なくなり、気がつく頃には周囲には誰一人いなかった。
    それでもミカは進み続ける。

    生前は散々人の大切なものを奪ってきたのだ、当然の報いだろう。
    もしも友の命を奪っていなければ。
    もしもあの時取引などしなければ。
    今更遅いというのに、押し寄せてくるのは後悔の念ばかり。

    そして何より心残りなのは……。

    『きゃっ!?』
    『すっ、すみません!つい考え事をしていて……』

    そんな中、曲がり角で一人の生徒とぶつかってしまう。
    こんなところにまだ人がいたのか。
    相手の顔を見たミカは、驚きのあまり言葉を失う。

    『…………ナギちゃん』
    『ミカさん……!』

    もう一人のナギサも自分と同じくこちら側へ来ていたのだ。
    確かに彼女の罪も決して軽くはないが、まさかこんなところで再会するとは。
    半ば諦めていたミカは、自身の中で抑え込まれていた寂しさが爆発する。

    『なっ、なーんだ⭐︎ナギちゃんもこっち来てたんだ!まったく、まともな指示もくれずにさっさと死んじゃってさ!』
    『は、はあ!?あんな状況でいちいちミカさんに指示なんて出せるはずがないでしょう!というより、むしろ何故私を助けに来てくれなかったのですか!』

  • 181スレ主25/06/15(日) 18:15:49

    『こっちだっていっぱいいっぱいだったの!!私ばっかりあてにしないでよ!』
    『私だって余裕なんてありませんでした!!』

    せっかく友と再会できたというのに、口から出てくるのは悪態ばかり。
    こんなことばかりしているから、取り返しのつかない結果になってしまったというのに。

    『ていうか、ナギちゃん言ったじゃん!お姫様になれるって!それなのに何でこんな事になってるの!?意味わかんない!!』
    『そっ、それは……』



    『ナギちゃんの嘘つき!!もうナギちゃんなんか知らない!!』
    『っ!』

    言ってしまった。
    つい熱くなって、心にもないことを。
    それを聞いたナギサは言葉に詰まり、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

    『……申し訳ありません、確かにあなたの言う通りです。ミカさんの望みを、私は叶えてあげられませんでした』

    俯き、心の底から申し訳なさそうに謝罪するナギサ。
    違う、そんなことを望んでいるわけではない。

    『……謝らないでよ』

    それなのに言えない。
    それでも『ごめんね』の一言がどうしても出ない。
    二人が黙り込んでいるうちに、ついにミカは謝るタイミングを逃してしまった。

    『……行きましょうか、ミカさん』

  • 182スレ主25/06/15(日) 18:17:35

    『……うん』

    そして二人は再び歩き始める。
    無言で、ただひたすらに。

    そうしているうちに、二人は気が付けば学園から離れた住宅街まで来ていた。
    一体どれくらい歩いたのだろう。
    賑やかだった街並みは見る影もなく、辺りにあるのは一軒家か小さな公園だけ。

    『……小学生の頃、こんな住宅街でミカさんとよく遊んでいましたっけ。自分の記憶ではありませんが、懐かしさを感じます』

    『覚えてるよ。家が隣同士で、学校がある日も休みの日も、よく飽きもせず遊んでたよね。それこそ、あんな小さな公園……で…………』





    『やあミカ、ナギサ。久しいね』

    ミカが公園の方を見ると、そこにはナギサと同じくらい自分にとって大切だった、もう一人の友人がベンチに座っているのが見えた。

    『セイア……さん……』

    『全く、何度も説得したのに人の忠告を聞きもせず、随分と好き放題暴れ散らかしてくれたじゃないか。おかげで散々な目に遭ったよ』

    もう一人のセイアはここぞとばかりに二人をくどくどとと説教してくる。
    普段ならあまりの言い草に喧嘩になるところだが、ミカたちにとってはこの感覚がとても心地良いものに感じられた。

  • 183スレ主25/06/15(日) 18:21:03

    『で、今の気分はどうだい?その顔を見るに、文字通り憑き物が落ちたと見て良さそうだね。今なら私の話にも耳を傾けてくれそうかな?』

    そこまで言ったところで、セイアは少しの間黙ってしまう。

    『……いや、違うな。一番最初に道を間違えたのは私だ。本物に負けないくらい良い生活をしようと思って、空回りして、二人のことを蔑ろにして、結果的に長い間苦しい思いをさせることになってしまった』

    『それなのに私は未来を視たことを言い訳に話し合うことを諦め、短絡的な行動を取った』

    『本当にごめんなさい』

    そう言うとセイアは深く頭を下げた。
    自分が一番悪いことをしたと思っているミカとナギサは、そんなセイアを見て胸が締め付けられるような思いに駆られていた。

    『ふーっ……』

    そして頭を上げたセイアは何やら深呼吸をしている。
    ミカとナギサはセイアの言葉を待つ事にした。

    『単刀直入に言う。君たちと仲直りがしたい。もう二度と君たちと離れ離れに……なりたくっ、ない……!』

    真剣な眼差しで想いを伝えるセイア。
    その瞳からは涙が溢れており、それでもまっすぐ二人を見つめ続けている。
    その様子からは、もう二度と選択を間違えないという強い意志が感じられた。

  • 184スレ主25/06/15(日) 18:22:36

    その言葉を受けて、次に口を開いたのはナギサだった。

    『謝らなければならないのは私の方です。私はセイアさんの優しさを無碍にして、頬を打ち、酷い仕打ちをしました』

    『私の方こそ、本当にごめんなさい』

    ナギサもセイアへと頭を下げる。
    誠意を尽くしたが、こんな謝り方で良いのだろうか。
    セイアが何と言うか、半ば怯えながらセイアの言葉を待つナギサ。



    『いいよ』
    『……えっ?』

    返ってきたのは予想に反し、随分とあっさりした返事だった。
    ナギサは思わず顔を上げる。

    『いいだろう?思いつく言葉の全てを綯い交ぜにして飲み込んで、たった一言でその全てを赦す。どっちの方が悪いとか、どうやって償うとか、そんな理屈など全てかなぐり捨ててしまって、ただ一緒にいることを望む。単純だけど想いの詰まった、複雑な言葉さ』

    『子ども同士の喧嘩なんて、これでいいと思うんだ』

    滅茶苦茶な理屈ではあったが、ナギサも妙に納得してしまった。

    『ふふっ、まるで小学生ですね。ですが確かに、今の私たちにはとてもぴったりな……』




    『ごめんね』

  • 185スレ主25/06/15(日) 18:23:43

    聞き間違いだろうか。
    セイアもナギサも互いに驚き、顔を見合わせている。
    そして声のした方へ顔を向けると、ミカがおずおずとしながら二人の様子を伺っていた。

    ミカの謝罪などいつぶりに聞いただろうか。
    ナギサもセイアもとても信じられないといった顔をしていたが、二人の心はすでに決まっていた。

    『『いいよ!』』

    その言葉を聞いたミカは堪えきれなくなり、二人に思い切り抱きついた。
    その目からはとめどなく涙が溢れ出てくる。

    『ごめんね……!ごめんね……!』
    『いいよ』 『いいですよ』

    ナギサもセイアも、そんなミカを優しく受け入れる。
    これまでずっとすれ違い続けてきたが、最後にようやくわかり合うことができた。

    『ナギちゃん、セイアちゃん、大好き……!!』
    『私もだよ』 『ええ、私も大好きです』

    普段なら恥ずかしくて言えないようなことも、今なら躊躇いなく言える。
    三人はこれまで言えなかった分を取り戻すように、想いを伝え合うのであった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 186スレ主25/06/15(日) 18:24:56

    どれくらいこうしていただろう。
    辺りは日が落ち、夕暮れ時を告げるチャイムが鳴っている。

    『……そろそろ行かなきゃ。バイバイ、セイアちゃん』
    『早いものですね。ですが、最後にセイアさんに会えて本当によかったです。私たちはご一緒できませんが、どうか今度こそ、幸せな青春を』

    ミカとナギサは名残惜しそうに抱き合っていた手を離し、セイアへと別れを告げる。
    二人は分かっていた。セイアと同じところへは行けないことを。

    『……行きましょうか、ミカさん』
    『そだね。行こっか、ナギちゃん』

    彼女たちの顔に思い残した様子はなく、満足感に満ちている様子だった。
    彼女たちにはこれからやらねばならないことが山ほどある。
    トリニティやキヴォトスの人々を危機に陥れた罪を償う、それが彼女たちの役割だ。

    ミカにナギサが寄り添い、セイアの安らかな幸せを願いながら、二人は学園と反対方向を目指して歩き始めるのだった。








    『どこへ行く』

  • 187スレ主25/06/15(日) 18:26:12

    すると突然、セイアが二人の間に割り込んできた。
    そしてそのまま二人の手を取り歩き出す。

    『水くさいじゃないか。一緒に行こうの一言二言も言えないのかい?』

    一瞬何が起こったのか理解できなかったが、やがてセイアの意図を理解した二人は急いで止めに入る。

    『駄目です!セイアさんは何も悪いことをしていません!』
    『私はそうは思わない』

    『家へ帰って、また明日学校へ行けば同じ境遇の方々と共に過ごせます!今度こそあなたに相応しい青春を送るべきです!』
    『私は君たちと一緒にいたいんだ』

    散々泣いたというのに、セイアの言葉で再びナギサの目から涙が溢れ落ちる。

    『ダメだよセイアちゃん……。これ以上セイアちゃんに苦しい思いはして欲しくないよ……!』
    『自分のことは自分で決める。苦しくなんかないよ』

    その言葉に嘘は無く、セイアの顔はとても穏やかだった。
    セイアに向こうへ行くように言っておきながら離れられるのが怖かったのか、ミカの手は震えていた。
    握り方も強張っている。
    しかしセイアの言葉を聞いて安心したのかその震えは収まり、そっと優しく手を繋ぎ直した。

  • 188スレ主25/06/15(日) 18:27:17

    『二人とも生まれ変わるなら何がいい?やっぱり私はシマエナガかな……』
    『つ、次?……考えたこともなかったな。でも、また三人一緒になれたらいいな』

    『そうですね、私も一緒がいいです。もし次があるのであれば。セイアさんは前向きですね?』
    『得意だからね。夢を見て、未来を視るのは』

    『それと実際に試してみて分かったんだが、やっぱり私は言葉よりも歌で気持ちを伝える方が得意みたいなんだ。聴いてくれるかい?』
    『勿論です。久しぶりですね、セイアさんの歌を聴くのは』
    『うん、すごく楽しみ。それで何を歌うの?知ってる曲なら、一緒に歌いたいな』

    三人は手を繋いで歩き始める。
    今度こそ離れ離れにならないように。

    『大丈夫、君たちも知っているはずさ。その歌はね━━』

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • 189スレ主25/06/15(日) 18:28:25
  • 190スレ主25/06/15(日) 18:29:51

    瞳を閉じて思い浮かぶのは確かに笑顔ばかりではない。
    すれ違って、傷つけあって。
    でもいいんだ。
    誰もが完璧ではないのだから。
    それでもただ走り続けて、心と心をぶつけ合って。
    だからこそここまで来れた。

    三人一緒なら何も怖くはない。
    だから前へ進もう、次の扉があると信じて。

    おわり

  • 191スレ主25/06/15(日) 18:33:22
  • 192二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 21:20:00

    実によかった…

    中盤は心が苦しくなったり、ここからどうやってひっくり返すのかハラハラしてました

    終盤にかけては中盤の鬱憤を晴らすが如く進んでスカッとしました。………同時に駆け足気味とも感じましたが

    メフィストの最期、にせティーパーティーの最期のその後も納得のいくいいものでした。

    最後の最後で模倣ミカが謝れたとこがよかった。




    >>173

    メフィストが登場してからずっと言いたかった…

    覚めたふりして戯れていると、いつの間にか熱を帯びる。自分は違うと思っていると、泥沼に片足を突っ込んでいることに気付かない。という意味らしいです。

    「ミメシス=亡霊にちょっかい出して弄んでるなら、お前も亡霊になれ」ぐらいの気持ちだったんですが、調べたらこんな意味あったのは驚いた。メフィストにめっちゃドンピシャじゃん…

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