- 1二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 17:27:24
- 2125/06/06(金) 17:30:26
歩く事15分ほど、一軒のラーメン屋を見つけた。
そこは赤い下地に黒い達筆で『南極ラーメン』と書かれていた。
ユメ「ラーメン…」
【ぎゃるるる!】と腹の虫が応える。今日の昼食は決まったようだ。
赤い暖簾を掻き分け、戸を引いた。
ユメ「すみませーん、一人なんですけど」 - 3125/06/06(金) 17:34:51
「ズルルル」「ハフッハフッ」「はぁ…ズズッ」「ゴホッ!ゴッホッ!」「牛乳くれ…」「ヤバイってこれ…」
「俺の味覚センサー壊れてないか?」「軽口吐けるなら大丈夫だろ」「×5\3:>9・÷8÷!!」
「お、いらっ」
ピシャ
ユメ「………ひぃん」
異様な空気だった。そりゃあユメも鳴くし腹の虫は押し黙る。
しかし、そうは言っても、どうしようもなく空腹ではあるのだ。それにまず間違いなく辛いだろうがみんな夢中になって啜っていたじゃないか、きっと美味しいラーメンに違いない。
ユメ「行こう、私たちなら大丈夫!」
【キュルル】
一人と一匹は、燃え盛る様な辛さの深淵へと足を踏み入れた。
- 4125/06/06(金) 17:36:32
「……いらっしゃい」
ユメ「一人です!」
「見りゃわかる、席はそこだ」
ぶっきらぼうな店主に促され、カウンターへ座る。香辛料の香りにユメは少し涙が出そうだった。
「注文決まったら呼んでくれ」
ユメ「は、はい!」
カウンターに置かれたメニューをみる。
いくつか種類があるが、やはり目を引くのは店名にもある『南極ラーメン』だ。No. 1と書いてある。
ユメ「ええと…この南極ラーメンを…」
「お嬢ちゃん…あいよ!南極一丁!」
ザワリ… ザワリ…
ザワリ… ザワリ…
ユメ「…?」
「へへへ、嬢ちゃんなかなか度胸あるじゃねーか!ラッシー奢ってやるよ」
「なん口行くかな、おれ3」
「アタシは2」 - 5125/06/06(金) 17:39:49
南極ラーメン
北極ラーメンから南下し、赤道ラーメンを通り到達する辛味の極致。通常メニューに置かれているものの、それが注文されることは少なく、半ばチャレンジメニューと化していた。
そのことを梔子ユメは知る由もない。
ユメ(辛口のカレーだって食べれるしきっと大丈夫だよね)
「はいよ、南極ラーメン」
ユメ「わぁ、ありがとうございます!」
赫い。
いつか見た砂漠に落ちる夕陽の様に赫く、しかし冷たい夜を思わせることはない。「火山とかこんなのなんだろうな」と現実逃避気味にユメは思った。
しかし食べねば始まらず、また終わらない、覚悟を決める時だ。
ユメ「い、いただきます!」
ズルル - 6125/06/06(金) 17:44:52
ユメ「あ、あれ!?」
ユメ「ここどこ!?今まで食べようとしていたラーメンは!?」
アヌビス「ん、ここはジェネリック冥界」
アヌビス「あなたはこんなところで死ぬ運命ではない、オシリスに見つかる前に逃げるべき」
ユメ「私死んじゃったの!?」
アヌビス「ん、まだ死んでない」
アヌビス「死にかけてるけど…ほら、早く帰る」 - 7125/06/06(金) 17:45:59
ユメ「…は!」
ユメ「今のは…夢?」
ユメ「ング!?アバババ!?」
気絶していたユメを出迎えたのは口内を突き刺す辛味の暴力だ。舌の上から喉の奥、鼻を抜ける空気すら痛い。
顔から出る液体が全て出るようだった。出た。花の女子高生のする顔ではない。
咄嗟に奢りのラッシーを掴んだ。
ユメ「ひぃん!ひゃらいよぉ!!」グビー
冷たいラッシーが染み渡り、口の中を中和していく…。 - 8125/06/06(金) 17:47:04
なんて事は無い、無いったら無い。
しかし気分はいくらか落ち着いた、早急に片をつけなければならない。
ユメ「ひぃん…ひぃん…」ズルル
ユメ(辛いよぉ…痛いよぉ…暑いよぉ…)
ラーメンは麺とスープだけではない。
南極ラーメンには分厚い焼豚が3枚付いている。
脂身は赤く染まり、いかにも辛そうだ。
ユメ「はふぅ、はひぃ」
モグ
ユメ「かひゃーい!!」
スープゴクー
ユメ「あ゜」 - 9二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 17:47:57
うわぁ、なんだか面白いことになってきちゃったぞ。
- 10二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 17:49:18
ユメ先輩がかわいそかわいい
- 11二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 17:49:28
ラーメン仲本の北極ラーメンが元ネタかな?
- 12125/06/06(金) 17:50:52
アヌビス「ん、また来た」
ユメ「えへへ…」
アヌビス「ん、笑い事じゃない」
アヌビス「さっさと帰るべき、今は珍しくオシリスが不在だし…迎えもきてる」
ユメ「おむかえ?」
???「ユメ先輩!」
ユメ「ホシノちゃん!?」
腹の虫「違います!貴女の腹の虫です!一緒に食べる(戦う)って言ったのは先輩なんですからね!」ガシッ
ユメ「ひぃん!もうちょっと休ませてぇ!」ズルズル
アヌビス「ん、もう来ないでね」 - 13125/06/06(金) 17:52:30
ユメ「………」
「お、もうギブか?黙り込んじまって…ま、健闘したほ「私、頑張るよホシノちゃん!」「うお!?」
ズルズル!ズバババ!「ヒィン」モグムグゴクー!
ユメは食べた、一杯で二度の洛陽を迎えたこの劇物をとにかく終わらせたかった。
明日、自らの胃腸が荒れようとも、出されたご飯はきちんと食べる、そんな些細なことがユメには誇りであった。 - 14125/06/06(金) 17:55:25
ホシノ『ユメ先輩!冗談ですって!それ食べるのはヤバイですって!』
ホシノ『ユメ先輩、さっき出した牛乳なんですけど…え、飲んじゃったんですか?変な匂いしてたのに?』
ホシノ『アビドススナジョロキア?へぇ〜、それ私より強いんですか?』
一口、また一口食べる度に走馬灯が頭の中を走り抜ける。時々アヌビスが覗いてきた。 - 15二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 17:57:05
胃腸の荒れもだが翌日の…その…
- 16二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 18:02:20
トイレが地獄になるぞ…
- 17二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 18:05:51
ものによっちゃ即日くるよな
- 18125/06/06(金) 18:07:12
箸をつけてから20分。
ユメ「ズズズ…ぷはぁ…」
ユメ「ひゃん、しょく…!」
「「「うおおおおおお!!!」」」
この日、南極ラーメンは新たな伝説を迎えた。ラッシーが飛び交い、口々にユメの健闘を讃えた。
そして…何度も意識を失いかけるも、その箸を止めなかった名も知らぬチャレンジャーへ、彼ら、彼女らは緑髪の少女を『オシリスレッド』と呼び、南極ラーメンの店内に写真が飾られた。 - 19二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 18:08:39
Congratulation…!
- 20125/06/06(金) 18:19:35
ユメ「はひぃん、まだ唇がヒリヒリするよ…」
ユメ「でも、ラッシー美味しかったな…ラーメンはいいや…」
ホシノ「ユメ先輩?ココでなにしてるんですか?」
ユメ「あ!ホシノちゃん!」
ユメはホシノに駆け寄る。
一つ大きな事を成し遂げた少女の背中は、黄昏に沈む夕陽の様に大きく見えた。 - 21125/06/06(金) 18:48:08
辛味も書けたな、次は苦味か酸味か
- 22二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 18:48:39
おつ、面白かった
完食精神は何となく解釈一致 - 23二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 21:10:00