- 1125/06/07(土) 00:50:08
- 2125/06/07(土) 00:50:43
穂群原学園、私が通っている高校。
今日も、生徒たちは健気に学校生活を過ごすだろ。
「零音! 今日も遅いじゃない!」
同じクラスの巳那が私を呼び止めた。
「いいじゃない? 部活ないし」
「本当にもう、あと1分で遅刻だよ!」
今年で転校しに来た巳那は、私にとって唯一の友人だった。
「遅刻さえなければいいよ」
「それはそうだけど……うん? あんたのその手どうしたの?」
手?
よく見たら、右手の甲に結構大きい赤い痣があった。
いつ傷ついたっけ?
「零音、今晩は家にいて!」
どういうこと? 別に行く場所ないけど……
「なになに? どうした……の?」
巳那の顔には、見たことがない真面目な表情だった。
「それだけじゃないけど、今はまだ……ごめん」 - 3125/06/07(土) 01:00:09
結局、巳那の言葉にどういう意味なのか、わからないまま放課の時間を迎えた。
放課後も、あの言葉に関して巳那に問い合わせてみたいけど、気がついたらもういない。
校門の前から家までは、それほど遠くない。せいぜい十数分の道のり。
夕方の路地を歩きながら、まだ人の声は聞こえるし、風も強くないのに、気温が妙に下がってきた気がした。
私はマフラーを引き寄せるようにして、首元に巻き直す。
右手の痣が、どんどん鮮やかな色に変わる。
《⬛︎⬛︎。》
……何これ。
意味がわからない。
魔眼が反応しないような物じゃないはずなのに。
買い物袋を提げたままアパートの階段を上がりながら、私はつい後ろを振り返った——
何もなかった。
いや、あるわけがない。
ただ、ほんの少し——本当にほんの少し、今日はこの扉を開けたら、何かが違う気がしただけだ。 - 4125/06/07(土) 01:24:57
冷房の音が微かに響く部屋で、私はパジャマのまま机に向かい、コンビニで買ったアイスをすくっていた。
——ゴン。
……何の音?
音の出所は、クローゼットの中だった。
《クローゼット。》
短く、簡潔すぎる魔眼の情報。
……おかしい。こんなはずじゃない。普通の家具なら、もっと細かく結果が出るはずなのに。
——ガタン。
再び、何かがぶつかる音。そしれ、今度は微かに……人の声?
少女の……?
《クローゼット。》
魔眼の回答は、また同じだった。
「ア……ア……あ……あ、ああ……!」
機械のように繰り返される声。言葉未満の、壊れかけた人形のような音。
私はそっと、立ち上がり、警戒しながら後ずさる。
その時——
バザッ、と大きな音を立ててクローゼットの扉が開いた。中に詰め込まれていた服がどざっと床に落ちる。
そして、その服の山の中に——
白い肌。禍々しき赤い目。全裸の、小さな少女が、うつ伏せで倒れていた。
一瞬、時間が止まったような感覚。
彼女は、ゆっくりと顔を上げ、無表情のままこちらを見つめた。
そして、口を開く。
「アナタは、ワタシのマスターですか?」 - 5125/06/07(土) 02:50:37
マスター?
信じ難い言葉が、白い髪の少女の口から聞こえた。
「アナタの魔力から、契約の繋がりを感じました」
「ちょっと待って、あなた誰? 契約ってなによ? それに……なんで私のクローゼットに!?」 「アナタは、ワタシのマスター……」
「まずは、私の質問に答えなさいよ!」
私の怒号で驚いたか、少女は口が開いたまま哀れな目つきをした。
「承知しました」
少し申し訳ないけど、こっちも驚いたからな。
「ワタシはライダー、アナタの召喚を応じて参りました」
召喚?
魔術といっても、私は一番基本の魔術しか使えない、召喚術なんて、私には一生縁のない話だと思ってたのに。
「私の召喚って、どういう意味?」
「アナタは、この聖杯戦争において、ワタシをサーヴァントとして召喚しました」
聖杯戦争。
両親から、お伽話のように聞いたことある言葉。
七人の魔術師が「聖杯」という願望機を手に入るために殺し合う。
混沌の極みのような儀式だ。
その儀式に、私が参加できるわけない。 - 6125/06/07(土) 02:51:02
「この私が、聖杯戦争に参加した証拠は?」
「アナタの右手にある、令呪です」
その言葉を聞いて、私は右手の赤い痣を見た。もうすでに、一つ図案になった痣。
《令呪。》
モザイクが消えた、代わりに「令呪」を鑑定できた、少女の言葉は偽りなく証明として。
どうやら、私は本当に聖杯戦争に巻き込まれた。
「マスター、外で膨大な魔力を検知しました」
「魔力?」
「応戦します」
「ちょっと!」
止めれない。
少女の腕から刃のような物が生えて、凄まじい速さで玄関に駆け出した。
全裸のままで。
私は慌てて、玄関まで駆け抜いた。
そこに—— ある紫色の女性が、裸の少女の刃を剣で受け止めた。
そしてその女性の後ろに、お馴染みの親友だった。
「えっ……全裸!?」
玄関まで来た巳那は、私を見るなり絶叫して、一歩引いた。
「ち、違うってば! 私は何も……っ!」 - 7125/06/07(土) 03:22:58
明日の1時起きれないからすれ落ちるだろ