【SS/閲覧注意】終焉の歌と代替品の街

  • 1白黒ロボットの記憶25/06/08(日) 15:19:19

    夢を見ていた。わたしは雲と陽の境目を追っていた。
    これはきっと、幼少期の記憶だ。その様子がたまらなく不思議で、ただひたすらにそれを追いかけていた。あてもなく、好奇心のままに。
    気がつけば、大きな湖に辿り着いていた。やわらかい雲を通した、あたたかい陽が差す、けれども、しとしとやさしい涙が空間を包みこんでいた。周りは無数の気、いつの間に森へ迷い込んだのだろう。
    突如、強張った声が響く。「貴様は誰だ。此処はウツシヨではない」
    …わたしの、名前。思い出すより先に、口が動いていた。「…そうか、そなただったか。無礼を働いた、申し訳ない」違和感が存在している。わたしの記憶では、このような筋書きではなかったはずだ。
    「…。もう何度も、そなたに呼ばれ、それに抗えずいることを詫びよう。既に道はひらけていると伺える。…頼む、次回…これで終わらせてくれぬか」
    あなたは誰で、わたしが呼ぶ?そんなことは…。わたしの記憶では確か、

  • 2白黒ロボットの記憶25/06/08(日) 15:20:50

    大きな揺れで目を覚ます。次に情報として飛び込んできたのは、車の窓の景色、シートと毛布の質感だった。外は曇天、建物は倒壊、辺りには土煙が舞っている。なにがあったの、と聞こうとしたが、喉が痛い。そういえば、ライブをしていたはずだった。質問をしようとしたが、掠れた音が鳴るだけだった。
    「あの日、連絡が途絶えた日。あなたはしばらく…およそ三ヶ月ほど、俺の前に姿を表さなかった。なのに、けろっと帰ってきて。心配したんですよ、と言っても、なにがなんだか、という顔で」車体が揺れる。外から大きな音もする。きっと建物が崩れた音だ。「問いただしても、わからない、記憶がない、と」その時を思い起こしてみる_みようとする。だけどわたしは、そのようなものは覚えていない。

  • 3白黒ロボットの記憶25/06/08(日) 15:22:44

    最近、自分がおかしいことは理解している。日記をつけ始めたのはそこからだ。そしてそこに記載されている情報から推測するに、わたしは二週間以上前の記憶がなくなっている。当然、そんなことは覚えていない。
    唯一、朧気ながら覚えていることがある。なにかに必死で、色々行動を起こさなくてはいけないと、そう考えていた時期が存在した。なんのために、どのように、などはわからない。ただ、焦りと、少しの諦めが滲んでいた気がする。結局なんだったんだろう。
    プロデューサーに突然名前を呼ばれる。いつの間にか景色は動かなくなっているが、依然として崩落するような音は止まない。郊外のビル群、そこの更地に車は止まっているようだった。「過去のあなたから、伝言を授かっています。いつか、神様がこの世界に崩落をもたらすときに、と」車のミラーに写っていた顔は伏せられた。プロデューサーは、今どんな顔をしているのだろう。少しの沈黙のあと、ゆっくりと口から言葉が形をなしていく。

  • 4白黒ロボットの記憶25/06/08(日) 15:24:15

    「あなたがいなくなったときの、状況の推測はこうでした。『研究所に連れて行かれて、喉と脳に何かしらの影響を与える薬を投与されている』と」ライブのとき、確かに喉が痛かった。自分の異常に気づくのが遅すぎたのかもしれない。「それから、毎日飲み続けている液体。多分、それが薬なのでしょう。ずっと、自分で自分の首を絞めていたということですね。これは俺も、早めに伝えるべきでした。何かの夢物語だと思っていたのですが、まさか現実に起こり得るとは」
    …何も言えなかった。こんな近くに、得体のしれない脅威が存在していたなんて、考えもしなかった。言われてみればそうだ。いつの間にかそこにあった謎の液体を、疑いもせずに飲み続けていた自分が、今となっては理解できない。「その薬の効果としては、『喉を過度に使うと"特殊な音波"が混ざる』、『体の時が止まる』。副作用として『二週間程度の記憶しか保持できなくなる』と説明されました」すべてに疑問を呈したい。どういうこと、そんなもの現代の科学で実現可能な範疇なのか。知らない間に科学の進歩が進んでいた、ということなのか。

  • 5白黒ロボットの記憶25/06/08(日) 15:25:46

    「…これを。過去のあなたから言われたことをまとめてあります。いつか、安寧が訪れたときに読み返すなりしてください」無言で手帳を差し出され、プロデューサーは車の外へ出てしまった。手帳には、恐らく過去のわたしから言われたであろうことがまとめられている。その字には既視感と疑問が感じられ、同じ感情を抱いていることに少し安堵する。序盤だけしっかりと目を通したが、手帳いっぱいに書き込まれているようだ。全て読むのは時間がかかるだろう。
    このまま車の中に残り続けても、当然ながらなにも起きる気配はない。プロデューサーはなにか目的があるように、地面とにらめっこしながら歩いて…少し驚きを浮かべたようにみえる。何かあるんだろう、とりあえず車から降りてみることにする。

  • 6白黒ロボットの記憶25/06/08(日) 15:27:26

    「もう一つ、あなたから伝言を授かっています。そのときが来たら、使われなくなった地下倉庫へ案内してほしい、と」近づくと、地面に切れ込みのような線があるのが確認できた。きっと、ここがそうなのだろう。「少し、口頭で説明を。『体の時が止まる』、ということについてです」
    「大きな外傷がなければ、死ぬことはないらしいです。なぜわかるのか、その根拠は不明ですが、すごく自信を持っていました。つまりなにが言いたいかというと、怪我さえしなければ半永久的に生きられます」なんとなく、話の全容が見えてきた。

  • 7白黒ロボットの記憶25/06/08(日) 15:30:05

    「俺も正直なところ、篠澤さんに何をさせたいのかわかっていません。…けど、直感が告げているんです。この人なら、いつか世界を救えると」倉庫の扉を開ける。少し埃っぽいが、何も物が置かれていない殺風景な場所だった。こちらに視線を投げかけてくる。わたしは頷いて、その中に入る。が、体勢を崩して地面に打ち付けられる。持ち運んでいたノートが転がり、あるページを示す。一般人なら耐えられるだろうが、何せ、わたしは篠澤広だ。意識が遠のくのを感じた。
    扉が閉まる前に、細い声を聞き取る。
    「_俺のヒーロー、またどこかの世界で会ってくれますよね」
    ____

    【メモリーテープの再生を終了しました】

  • 8二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 15:40:48

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  • 9二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 15:45:14

    このレスは削除されています

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 15:46:54

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  • 11白黒ロボットの記憶25/06/08(日) 15:55:38

    【名称の変更を確認】

    【変更後:研究レポートNo. dice1d30 】



    【所持品の確認】

    【二点:手帳、ノート】


    【手帳:一番癖がついているページ】


    今までを踏まえて、要約した情報を書き留めておくことにする

    『特殊な音波』_突如として空から飛来する"未知の生物"(仮にアンノウンと呼称する)は我々人間の前に現れ、街を破壊していく。篠澤さんの歌に呼び寄せる音波が含まれている。

    →残酷だが、大惨事を引き起こした原因は「篠澤さんの歌」

    『体の時が止まる』_不老不死の状態。目立った大怪我さえなければ、食料もなしに生きられる。

    代償『記憶の保持能力が低下』保持期間…およそ二週間だが日本人としての基礎的な知識と「自身が篠澤広である」という認識は消えないらしい

    情報が混在しているが、つまりは『謎の研究者たちによって篠澤広は人体兵器に改造された』


    もしこんなことが現実に起こり得るならば、本当に、許せない



    【ノート:開かれているページ】

    【文字の羅列を確認:解析不可】



    【以上をもって被検体の解析を終了とする】

  • 12二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 15:56:47

    ( >>8 >>9 >>10 は書くことを間違えてしまったので削除しています…申し訳ありませんでした…!!)

  • 13二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 15:58:20

    最終兵器篠澤

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