【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!【7:45】

  • 1スレ主25/06/09(月) 20:51:40

    ────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。

    「行くか、アイツらを探しに」

    「待っててね、レオ。必ず助けるから」

    「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」

    「可能性としては有り得るな。バケモンでもサッカー出来ればそれでいいか」

    「全然良くないんだよなー笑」

    時計の針が刻むのは、“時間”ではなく、“精神の崩壊”。…いや、この物語では“廃病院の崩壊”が正しいだろう。

    なぜなら、目に見えないものが、確かにこちらを見ていても、それを叩き潰すのが彼らの役割だからだ。

  • 2スレ主25/06/09(月) 21:07:18

    このスレは、ブルーロックの登場人物による探索型ホラーSSです。

    舞台は“廃病院”。以前ここにやってきた潔世一、烏旅人、御影玲王、二子一揮は、廃病院に取り込まれてしまいます。

    そこで4人を救出するためにやってきたのが千切豹馬、凪誠士郎、糸師凛、糸師冴。彼らの逆襲劇が始まります。

    ※「時計の針が進むたびに、俺たちは壊れていく」のifルートになります。こちらをお読みいただいた後の方が、より物語が楽しめると思います。

  • 3スレ主25/06/09(月) 21:09:31

    ※プレイヤーの選択(安価)、運命(ダイス)によって、ストーリーの進行・視点が変化します。

    ※選択肢次第で“発狂”“精神崩壊”“絆”に分岐するかもしれません。

    ※正気度(SAN値)管理あり。

  • 4スレ主25/06/09(月) 21:11:02

    【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!|あにまん掲示板────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。「行くか、アイツらを探しに」「待っててね、レオ。必ず助けるから」「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」「可能性としては有り得るな。バケモンで…bbs.animanch.com

    【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!【1:00】|あにまん掲示板────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。「行くか、アイツらを探しに」「待っててね、レオ。必ず助けるから」「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」「可能性としては有り得るな。バケモンで…bbs.animanch.com

    【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!【4:00】|あにまん掲示板────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。「行くか、アイツらを探しに」「待っててね、レオ。必ず助けるから」「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」「可能性としては有り得るな。バケモンで…bbs.animanch.com

    【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!【5:00】|あにまん掲示板────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。「行くか、アイツらを探しに」「待っててね、レオ。必ず助けるから」「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」「可能性としては有り得るな。バケモンで…bbs.animanch.com

    【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!【7:00】|あにまん掲示板────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。「行くか、アイツらを探しに」「待っててね、レオ。必ず助けるから」「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」「可能性としては有り得るな。バケモンで…bbs.animanch.com

    【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!【7:30】|あにまん掲示板────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。「行くか、アイツらを探しに」「待っててね、レオ。必ず助けるから」「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」「可能性としては有り得るな。バケモンで…bbs.animanch.com
  • 5スレ主25/06/09(月) 21:13:08

    ■キャラヘイトを目的とするものではありません

    ■キャラsage、腐発言、アンチコメはお控えください

    ■荒らしはスルーします

    ■ゆっくり進行ご容赦ください(平日は仕事の都合上、特に進行が遅くなります)

    ■感想、質問、イラスト等頂けるとスレ主が大変喜びます

    ■広域ホスト規制に巻き込まれがちです。保守して頂けると幸いです(23時~8時は特に)

  • 6スレ主25/06/09(月) 21:15:48

    【登場人物紹介】


    千切 豹馬(ちぎり ひょうま)/初期SAN値:22→27

    マイペースでよく笑い、よく叫ぶスピードスター。
    突飛な出来事に驚きつつも、誰よりも仲間を信じている。4人の奪還のために全力を尽くす、熱き疾風。

    「13:00遊園地ホラー」のクリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。精神に“ある記憶”が刻まれている。


    ■固有能力

    【光刃の脚】怪異の行動を先読みし、自動回避と自動反撃を行う(1回まで・回避ターンで攻撃可能)
    【絆の加速】戦闘時、追加攻撃し、+1のダメージを与える(2回まで)
    【共鳴の記憶】遊園地ホラークリア特典。SAN値減少イベントを1回自動回避できる
    【疾風の破片】遊園地ホラークリア特典。罠や影の追跡から仲間を救出できる(2回まで・味方1名の回避失敗を自動成功に変換する)


    ■初期装備

    ・かりんとう饅頭×3:SAN値+4回復

    「廃病院って部屋多くね?絶対あと3つじゃ足りないだろ」

  • 7スレ主25/06/09(月) 21:18:25

    凪 誠士郎(なぎ せいしろう)/初期SAN値:25→26

    マイペースでルーズ、何事にも「面倒くさい」が口癖。怪異にも無表情で動じず、声すらあげない超然プレイヤー。御影玲王を救うため、「頑張りまーす」と静かに決意を燃やす。

    「廃病院ホラー」にも登場。


    ■固有能力

    【夢境感知】見えない怪異の存在を探知し、戦闘開始前に怪異に先制攻撃(自動成功)を与える。その後、通常通り戦闘開始の行動に参加可能(2回まで)
    【無意識の庇い】仲間の致命的失敗を肩代わりし、かつ自身のSAN値減少を無効化することができる(3回まで・なにかに突き動かされた感覚だけが残る)
    【静寂の再演】探索・戦闘時の【大失敗(ファンブル)】および【失敗】を2回まで【自動成功】に変換する。その発動は無意識下で行われ、凪自身も「使った」感覚はない。だが確かに、あの装置が“自分を守る”ことだけはわかる。


    ■初期装備

    ・レモンティー×3:SAN値+4回復

    「レモンティー飲んだら絶不調になった。もしかして腐ってた?」

  • 8スレ主25/06/09(月) 21:20:05

    糸師 凛(いとし りん)/初期SAN値:24→26

    高圧的かつ超エゴイスト、口も態度もとにかく強気。ホラー好きで、廃病院の突入にも密かにワクワクしている。兄にはなぜか強く出られず、ちょっとだけ不器用。

    「13:00遊園地ホラー」のクリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。精神に“ある記憶”が刻まれている。


    ■固有能力

    【百鬼夜行】戦闘イベント時、怪異の行動を2ターン封じ、攻撃に専念することができる(持ち越し可能)
    【記憶の盾】自分と味方全員のSAN値減少を1回ずつ無効化できる(重複不可)
    【共鳴の記憶】遊園地ホラークリア特典。SAN値減少イベントを1回自動回避できる。
    【記憶のページ】遊園地ホラークリア特典。 “消されかけた記憶”や“不自然な空間”を感知し、1度だけ探索を自動成功にすることができる


    ■初期装備

    ・鯛茶漬け×3:SAN値+4回復

    「なんか思ったのと違った。好物は落ち着いた場所で食うのが1番だな」

  • 9スレ主25/06/09(月) 21:21:27

    糸師 冴(いとし さえ)/初期SAN値:23→27

    冷静かつ天然、日本の至宝と呼ばれる実力者。口が悪いが的確に褒めるタイプで、弟の態度は「反抗期」で片付ける。驚いた時は小さく反応、目を見開くのが最大のリアクション。

    「13:00遊園地ホラー」のクリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。精神に“ある記憶”が刻まれている。


    ■固有能力
    【断罪の策略】攻撃につき成功人数+1ダメージを与え、敵の攻撃を1回無効化できる(1ダメージは常に継続)
    【最適解】自分または味方1人の失敗判定を再試行できる(1部屋1回まで)
    【共鳴の記憶】遊園地ホラークリア特典。SAN値減少イベントを1回自動回避できる
    【白き空間の鍵】遊園地ホラークリア特典。他人の精神領域に1回だけ“干渉”して引き戻すことができる(精神異常発生時、精神を安定させることが可能)


    ■初期装備

    ・塩こぶ茶×3:SAN値+4回復

    「廃病院にテレビがあって、ちびまる子ちゃん見れれば完璧なんだけどな」

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 21:24:59

    いよいよ大詰めって感じ
    スレ主頑張れ!
    ワクワクしながら待ってる!

  • 11スレ主25/06/09(月) 21:27:29

    >>10 ありがとうございます!!固有能力、アイテム、特典全部使い切る勢いでやったりましょう!

  • 12スレ主25/06/09(月) 21:32:46

    かつて「被検体保管庫」と呼ばれていたその空間は、もはや保管というにはあまりにも“壊れすぎて”いた。


    扉を開けた瞬間、四人の身体が反射的に強張る。

    ――空気が、明らかに異常だ。

    まるで肺に黒い霧を吸い込んだかのような重圧。
    目に見えない何かが、
    肌の内側を這うように感じられる。

    部屋の中心に並ぶのは、
    かろうじて原型を留めた“保管ポッド”群。

    内部には──人影のような、歪な塊。
    泡に包まれるように浮かんだその姿は、
    肉体のかたちを保っていない。

    皮膚の下で内臓がうごめいているもの、
    骨の位置が明らかに違うもの、
    半分だけ“何かに変わりかけた”者……

    それらは皆、ポッドの中でぴくりとも動かず、
    ただ“視線”だけを外に向けていた。

  • 13スレ主25/06/09(月) 21:34:55

    千切が小さく声を呑む。


    冴の後ろにいたイッキが、
    「にー」と低く鳴いて、そっと後ずさった。

    レオも怪異たちに一瞥をくれたあと、
    凪の足元に座り込む。

    タビトとヨイチは、気配を悟ったように、
    しきりに天井を見上げている。


    床には、古い血痕。
    黒ずんで乾ききったその痕跡は、ただの血ではない。
    ──精神波の“残滓”が、そこにまとわりついているのだ。


    小さく、「……うるさい」と誰かが呟く。

    実際には、何の音もしていない。
    だが脳内に、ノイズが刺さるように入ってくる。


    「たすけて」「やめて」「ここはどこ」


    ──それは、ポッドの中に閉じ込められた“声にならなかった声”。

  • 14スレ主25/06/09(月) 21:37:06

    壁際の記録台には、破れかけた管理票。

    「被検体19」「融合率73%」「自我応答なし」

    書かれた字が途中から震え、
    最後には走り書きでこう残されている。


    『……もう、誰が“最初”だったのかも、わからない』


    その瞬間、ポッドのひとつで──
    ぴちゃり、と水音が鳴った。


    凛の表情がわずかに険しくなり、
    冴が無言で前に出る。

    誰も何も言わないまま、
    空間全体の“気配”に集中する。


    ──ここは、確かに“今も動いている”。

    地下、最初の部屋にして。

    この病院の“核”のひとつが、
    まだ死にきっていないことを、全員が悟った。

  • 15スレ主25/06/09(月) 21:40:09

    【地下室:被検体保管庫エリア】


    ①中央の保管ポッド
    液体の中に沈む異形の被検体。その足元に“何か”が沈んでいる。まるで「見られている」ような錯覚がつきまとう(異常発生リスク:特大)

    ②壁際の記録保管棚
    かつての管理票や研究資料が散乱。何者かが荒らしたような痕跡があり、読み取れるものは限られている(異常発生リスク:大)

    ③床の血痕と精神波ノイズ
    乾ききった黒ずんだ痕跡と共に、“誰かの意識の断片”が残っているような感覚。頭痛を誘うノイズが周期的に響く(異常発生リスク:大)

    ④天井近くの監視ユニット残骸
    視線を感じる方向。ケーブルの切断跡や破損したレンズが見えるが、かすかに通電している様子も……(異常発生リスク:大)

  • 16スレ主25/06/09(月) 21:43:02

    地下室は潔達の廃病院で登場しなかったので、探索者はこちらでランダムに選出します!(いつもの探索場所を選ぶ描写は、誰も選びたがらないのでカットします)

  • 17スレ主25/06/09(月) 21:46:37

    【地下室:被検体保管庫探索:①中央の保管ポッド・千切豹馬】
    【探索開始】7:00


    猫のヨイチが低く一度「……ニャ」と鳴いた。

    千切が振り向くと、黒い毛並みのその体が、
    いつになく緊張しているのがわかった。


    千切「……ヨイチ、そっか、お前も、ヤな予感するんだな……」

    部屋の中央──
    ひときわ大きなポッドが、
    ぼんやりと蒼白い光を放っていた。

    液体の中には、
    ヒトの形を模した“何か”が沈んでいる。

    全身に網目のような管が張り巡らされ、
    顔の部分には、無数の気泡と奇怪な機械片。

    皮膚はまるで剥ぎ取られたように滑らかで、
    筋肉組織がむき出しだ。

  • 18スレ主25/06/09(月) 21:47:42

    千切(……これ、生きてんのか?)


    そんな独り言が、自然に漏れる。


    だが──それよりも視線を惹きつけたのは、

    その“足元”だった。


    液体の底、見えにくい暗がりに、何かが沈んでいる。

    異常な光沢──金属ではない。布でもない。


    何か“感覚”のようなものが、

    千切の背中をじわじわと撫でていた。



    千切「……変な感じだ、でも……行くしかねえだろ」


    ヨイチが、低くもう一度鳴く。



    「……ニャァ」


    千切は一度だけ大きく息を吐いて、

    慎重に、保管ポッドの縁に手をかけた──



    異常発生リスク特大

    dice1d110=13 (13)

    (1〜50:大失敗 51〜80:失敗)

    (81〜100:成功 101〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 19二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 21:51:15

    いきなり大失敗!!

  • 20スレ主25/06/09(月) 21:55:07

    >>19 兄ちゃの最適解に託しましょう…!!

  • 21スレ主25/06/09(月) 21:57:13

    【冴の固有能力:最適解──発動】
    【再試行結果により、SAN値減少数変化】


    千切「っ……」

    ほんの一瞬、ポッドに手をかけた千切の腕が、
    見えない“何か”に引かれたように震えた。


    その時──


    冴「待て、千切。……少し、離れろ」

    千切「冴…?」

    冴は無言のまま、
    肩を軽く押して千切をポッドから遠ざける。

    直後、保管ポッドの内部、沈んでいた“何か”の姿が一瞬、異様な形にねじれた。


    ──まるで、誰かが千切の記憶を覗き込み、
    彼になろうとしたかのように。

  • 22スレ主25/06/09(月) 21:59:43

    冴「……あれは、“見る者”を模倣するらしい。気づくのが遅れたら、お前が“消されてた”。」


    冴の声には珍しく、

    わずかな苛立ちが混じっていた。



    千切「……ありがとな、兄ちゃんみたいだな」


    冴「……やめろ。気持ち悪い」


    猫のヨイチが、ぽふんと千切の足元に座り、

    じっとポッドを睨みつけていた。


    改めて、千切はもう一度、

    ポッドの“底”へ目を向ける。


    今度こそ──“奴”の干渉を受ける前に、

    それを掴めるかもしれない。



    異常発生リスク特大

    dice1d110=41 (41)

    (1〜50:大失敗 51〜80:失敗)

    (81〜100:成功 101〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 23スレ主25/06/09(月) 22:09:29

    【再試行失敗】7:00
    【100特典:大失敗(ファンブル)時、失敗へ変換】
    【《アニムス・プレート》使用によりSAN値減少を可能な限り無効化】
    【SAN値-2:27→25】


    ポッドの底に、確かに何かが沈んでいた。

    その“影”に触れた瞬間──
    千切の身体がびくりと硬直する。


    千切「──っ、!」

    映像のように、
    脳裏に“知らない過去”が流れ込んできた。


    ──そこは、真っ黒な部屋だった。

    濁った液体の中で、
    誰かが“千切”として笑っている。

    “千切豹馬”の名前を奪い、顔を奪い、
    声を奪い、仲間の元に戻ろうとする存在。


    『──これで、俺が“お前”だ』

  • 24二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 22:09:36

    大失敗の確率が約45%なのが痛すぎる

  • 25スレ主25/06/09(月) 22:10:46

    千切「っざけんなッ……誰が、お前なんかにッ!!」

    声を絞り出すように叫んだ瞬間──

    その“影”は、急激に収縮し、ポッドの底へと沈んでいった。


    しかし──
    脳内に染み込んだ“なにか”は、
    精神を揺るがすのに十分だった。


    直後──


    凪「千切」

    乾いた声と同時に、
    凪がポーチから小さな円形の金属板を取り出す。

    それは千切の足元へ滑るように飛び、
    彼の胸元へ吸い込まれるように貼り付いた。


    千切「なっ……お、おい、凪!?」

    凪「大丈夫。今のうちに使っとこ。……俺の役割、でしょ」

  • 26スレ主25/06/09(月) 22:12:31

    その瞬間、金属板の波紋模様が、淡く脈打ち始める。

    千切の胸に、ほのかな“暖かさ”が宿った。

    凍えかけていた精神の中枢が、
    わずかに、引き戻された。


    だが──

    ゾッ……とした。


    足元のポッドが、ぐらりと揺れた気がした。
    音もなく、ポッドの中の液体に泡が浮かび──


    ──「“千切”じゃない何か」が、まだそこにいる。


    冴「……まだ“来る”ぞ。離れていろ」

    千切の手が、かすかに震える。
    その震えは──精神に刻まれた、見えざる痕跡だった。

  • 27スレ主25/06/09(月) 22:13:33

    >>24 スレ主の難易度調整のせいで……。多分きっと大丈夫です!ダメそうならなんとかします!

  • 28スレ主25/06/09(月) 22:18:42

    【地下室:被検体保管庫探索:②壁際の記録保管棚・凪誠士郎】
    【探索開始】7:00


    壁際にずらりと並ぶ記録保管棚。
    だがその多くは、棚ごと崩れ、紙束は散乱し、
    何かに濡れてくしゃくしゃに変形していた。

    中には、手の跡のような形で焼け焦げているものもある。

    凪は、そんな書類の山に無言で近づき、しゃがみ込む。

    レオもぴたりと隣で座り、棚の奥を見つめていた。
    その瞳には、一瞬、何かを“認識している”ような気配が浮かぶ。


    凪「……ああいうの、やだな。めんどくさそう」

    そう呟いた凪の指先が、棚の下、隙間に挟まるようにして残されたファイルに触れた瞬間──


    「──…………ま……せ…………か……」


    空気が、ざらりと波打った。

    どこか遠くで、囁くような、掠れた音。
    それは“音声”というより、頭の奥に直接擦りつけられるような、精神への干渉だった。

    凪の目が細められる。

  • 29スレ主25/06/09(月) 22:20:40

    凪「また、声か……。……レオ、聞こえた?」


    レオは小さく「……ニャ」とだけ鳴くと、

    わずかに毛を逆立て、棚の下を睨む。


    それは、まるで、

    「何かが潜んでいる」と言わんばかりに──



    凪「……ま、何が出ても、逃げる準備しとけばいいか」


    口調こそ相変わらずだが、

    凪の手は慎重に、ファイルを引き抜きにかかる。



    ──“それ”が、本当に情報なのか。

    ──あるいは、封印すべき“記憶の断片”なのか。



    空気が一段と重くなり始めた。



    異常発生リスク大

    dice1d110=58 (58)

    (1〜40:大失敗 41〜75:失敗)

    (76〜95:成功 96〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 30スレ主25/06/09(月) 22:28:10

    というわけで探索失敗しましたが、スレ主は寝ます。最悪戦闘時にオーバーキルさせてアイテム取得させますのでご安心ください!1描写ごとめちゃくちゃ悩むのですが、頑張って地下室書き抜きます!
    それでは、おやすみなさいませ。

  • 31二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 22:55:17

    おつかれさまです!!

    これまではなんだかんだと余裕があったので、地下室の高難度っぷりにわくわくします!

    空気のヒリつく感じがたまらない…
    ぎりぎりの戦いも見てみたいですね〜

    ご無理はなさらず楽しく書けるペースで進めてくださいね!

  • 32二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 02:31:34

    毎日たくさんの更新ありがとうございます!
    難易度もあがってヒリヒリしますね
    ヒリついてこその奪還だと思って楽しみます!!

  • 33スレ主25/06/10(火) 07:51:16

    >>31 ありがとうございます!本SSは、奪還と地下がメインと言っても過言ではないので、緊張感マシマシでお届けしております!お気遣いもありがとうございます…!

    >>32 こちらこそお目通し頂きありがとうございます!危機を乗り越えた先にある救いを目指して…引き続きよろしくお願いします!


    おはようございます。本日もよろしくお願いします。モバイル回線がお陀仏しがちかので、仕事中は更新滞るかもしれません、ご容赦くださいませ。

  • 34スレ主25/06/10(火) 08:21:38

    【探索失敗】7:00
    【玲王の固有能力:記憶の灯──発動】
    【SAN値-1:26→25】


    書類の束を掻き分けていた凪の手が、一瞬止まる。
    奥から引き抜いたファイルには、焦げ跡のような手形が残っていた。


    凪「……」

    視界が、ぐにゃりと歪む。

    重たいノイズが、脳をひっかく。


    ──“ま……だ……見てる……”
    ──“ぼくを、忘れないで……あのときの……”

    音とも言葉ともつかない囁きが、脳内に流れ込んできた。

    凪の指先が一瞬震え、そして――
    まぶたの裏に、ありもしない“過去の光景”が浮かぶ。

    かつてどこかで交わした約束。
    誰かと並んで見たグラウンド。
    でもその隣には、もう“誰の姿もない”。

    ──ただ、深い暗闇と、
    ──「終わってしまった時間」だけが、そこにいた。

  • 35スレ主25/06/10(火) 09:28:36

    「……凪」

    その瞬間、横で静かに声がした。


    レオ「……凪、しっかりしろ!」

    紫の瞳をまっすぐに向けて、
    レオが凪の腕に軽く爪を立てていた。

    その一言は、確かに届いた。


    ──“今”を呼び戻す、声。


    凪「……ありがと、レオ」

    視界が戻る。
    暗闇に沈みかけた意識が、
    わずかに浮かび上がってくる。

    【記憶の灯】──その光は、確かに“凪誠士郎”という存在を繋ぎ止めた。

  • 36スレ主25/06/10(火) 11:30:07

    背後にあったファイルは、
    もう完全に炭化して崩れている。

    情報は失われたが、
    精神の破綻は、寸前で回避された。


    凪「……まったく、地下ってだけで面倒なのに」

    だがレオの方は、何も言わず、
    静かに隣に寄り添って座っている。

    その姿に、凪の表情がわずかに和らいだ。


    凪「……ま、もう少し頑張るね」

  • 37スレ主25/06/10(火) 11:33:43

    【地下:室被検体保管庫探索:③床の血痕と精神波ノイズ・糸師冴】
    【探索開始】7:00


    無数の保管ポッドが沈黙のまま横たわる空間。
    その奥、黒ずんだ床面に視線を落とした冴が、
    僅かに眉をひそめた。


    冴「……ここの血、ただの汚れじゃないな」

    湿り気はすでに失われているが、まるで熱を帯びていたかのような感触が靴底を通して伝わる。

    裂けるような筋が床を這い、
    中心には、ぼやけた円形の染み──それは血痕というより、“何かを呼び寄せた跡”のように見えた。

    その染みに手を伸ばそうとした瞬間だった。

  • 38スレ主25/06/10(火) 11:36:03

    「…………“見てる”」



    喉奥で凛と響いた、誰かの声。



    同時に、周囲の空間がわずかに“揺れた”。


    視界の端に、ノイズのような揺らぎ。

    精神波──まるで誰かの記憶が残留しているかのような、ひどく生々しい“精神の痕”。



    冴「……なるほど。ここ、思ってたより深いな」


    耳鳴りのように、

    誰かの断末魔がノイズの奥からこぼれ出す。


    それは、人間の記憶か、それとも──



    異常発生リスク大

    dice1d110=23 (23)

    (1〜40:大失敗 41〜75:失敗)

    (76〜95:成功 96〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 39スレ主25/06/10(火) 16:51:45

    モバイル回線のホスト規制が24時間を経過しました。仕事でトラブル多発してムカついたので、明日は休みを取りました。この後~明日は更新頑張ります!

  • 40スレ主25/06/10(火) 16:53:20

    【探索成功】7:00
    【100特典:探索大失敗を自動成功に変換】
    【SAN値-2:27→25】


    その瞬間、冴の鼓膜が“揺れた”。

    声の余韻とともに、
    床の染みからじわりと広がっていく圧。

    空気が重くなる──いや、違う。
    皮膚の下に、何かが這い込んでくるような“視線”の感覚。


    冴「……チッ」

    肩が勝手に強張る。
    意識せずとも、脳が“拒否”を始めていた。

    ここにいるだけで、精神が削れていく。


    ──ずるり。

    音がした。
    足元の染みが、不自然に広がっていく。

    黒ずんだ床が“呼吸”するように脈動し、
    その中心に──何かが浮かび上がった。

  • 41スレ主25/06/10(火) 16:56:06

    冴「……これは……」

    スカイグレーの光沢を帯びた、小さな箱。
    それはまるで、血と記憶の海から“掘り起こされた意志”のようだった。

    冴が手を伸ばすと、箱がわずかに震える。

    それに反応するように、
    背後で「……にゃ」と一声。

    振り返ると、猫──イッキが静かにそこにいた。

    じっと箱を見つめながら、
    その目は──どこか嬉しそうで。


    冴「……お前の、だな。多分」

    床からの視線はまだ消えない。

    この部屋に染みついた“記憶”が、
    冴の精神に確実に影を落としている。


    ──だが彼はそれを、
    無理やり振り払いながら立ち上がった。


    冴(……まだ終わってねぇ)

  • 42スレ主25/06/10(火) 16:57:40

    【地下室:被検体保管庫探索:④天井近くの監視ユニット残骸・糸師凛】
    【探索開始】7:00


    天井付近から、
    微かに何かが“見ている”気配があった。

    かつて監視ユニットが取り付けられていたであろう壁の高所──
    そこには、コードのちぎれた残骸と、まだ赤く点滅しているランプが、ゆっくりと明滅している。


    凛「……あれ、まだ生きてんのかよ」

    天井を見上げる視線の端で、
    なぜか空気が波打つように感じる。

    室内は静まり返っているのに──
    なぜか、“感知されている”という確信だけが、
    背筋に重くのしかかってくる。

  • 43スレ主25/06/10(火) 16:59:27

    凛「おい、マジで……監視されるのは趣味じゃねーんだよ」


    低く吐き捨て、足を踏み出す。


    金属パネルを踏んだ瞬間、乾いた音が微かに響いた。


    凛は床を蹴る勢いで、

    監視ユニットの下へと素早く移動する。


    タビトがその背後から控えめに、

    「……にゃ」と鳴いた。


    凛が一瞬だけ振り返る。



    凛「……大丈夫だ。俺のこと、信じてろ」


    そう呟くように言い残し、

    ユニットの断線部へと手を伸ばした。



    異常発生リスク大

    dice1d110=3 (3)

    (1〜40:大失敗 41〜75:失敗)

    (76〜95:成功 96〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 44二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 17:57:48

    うわー!みんな急に不調に…!
    スレ主さんもお仕事お疲れ様です!

  • 45スレ主25/06/10(火) 18:01:33

    >>44 空気悪すぎて集中出来ないんですかね…凛ちゃんかっこいいこと言って3だったので笑いました。ありがとうございます!この世の全ての社会人の皆様を尊敬します…。

  • 46スレ主25/06/10(火) 18:03:20

    【探索大失敗】8:00
    【凪の固有能力:無意識の庇い──発動】
    【SAN値-2:26→24】


    天井付近の監視ユニット──
    断線したコードに凛が手を伸ばした瞬間だった。


    凛「──っ!」

    ユニットのランプが突如として激しく点滅した。


    赤。
    赤。
    赤。


    連続する警告光が、廃墟の闇を鋭く裂いた。


    凛「……なっ──」

    何かが、“そこ”からこちらを見下ろしていた。

    ただの残骸だったはずの機械の目。
    だがその奥で、確かに“何か”がうごめいていた。

  • 47スレ主25/06/10(火) 18:04:31

    ──ガリッ。

    不意に、上から“何か”が落ちてくる。
    黒く、ねじれたコードの束が蛇のようにうねりながら、凛の首筋を狙って──


    その瞬間。


    「……もー、仕方ないな」

    誰よりも静かな声が、背後から割り込んできた。

    凪誠士郎。
    その姿はいつの間にか凛の背後にあった。

    気づいた時には、凛の肩を引き寄せていた。


    凛「──は……」

    凪「うるさい。今は、黙って俺に任せて」

    顔を上げた凪の瞳が、暗がりの天井を睨む。
    何かに突き動かされるような、その動作。

    凪自身も気づかないままに、その“何か”を引き受けていた。

    黒いコードの先が凪の肩をかすめ──
    空気が焦げたように震えた。

  • 48スレ主25/06/10(火) 18:05:59

    しかし、直後。

    凪の髪がふわりと持ち上がるほどの、
    冷たい風が吹き抜ける。

    室内に漂っていた“精神の圧”が、
    凪を避けるように遠ざかった。


    凪「……ああ。やっぱめんどくさかった」

    それだけ言って、凛の肩から手を離す。


    凛は息を飲み、しばらく何も言えなかった。

    タビトが、凪の足元に寄り添うように「……にゃ」と静かに鳴いた。


    だが、その沈黙の中でも──
    確かに凛の背後には、“何か”が残っていた。

    誰かの視線が、皮膚の内側を這っていくような感触。
    地下という空間が、じわりと精神に食い込んでくる。


    凛「──チッ、マジでクソだな……こんな場所」

    そう呟いた声の裏に、
    いつもより少しだけ低い疲れが滲んでいた。

  • 49スレ主25/06/10(火) 20:42:25

    仕事のトラブルで呼び出しを食らっております。本日更新できない可能性が高いです。明日は頑張れるだけ頑張りたいと思います…。勘弁してほしい。

  • 50二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 01:32:15

    スレ主無理なしだよ〜〜!!お仕事頑張れ!

  • 51二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 02:56:19

    スレ主お疲れ様!
    お仕事のトラブル大変だね…
    のんびり待ってるので無理しないでね

  • 52スレ主25/06/11(水) 08:16:34

    >>50 ありがとうございます!仕事は程々にプライベートを楽しみたいものです…。

    >>51 ありがとうございます!トラブルなんぞなくなればいいと思います…。


    おはようございます。いつ帰ってきたかあんまり記憶にないですが、寝落ちしない限りは更新頑張りたいと思います!ちょこちょこ私用で外したりしますので、ご容赦くださいませ。

  • 53スレ主25/06/11(水) 08:28:41

    かすかに沈黙していた部屋の空気が、ふと揺れた気がした。

    誰も言葉を発しないまま、
    4人と4匹は、互いに視線を交わす。

    どこか重く、鈍く響く感覚。
    それは、この部屋の“記憶”を拾い上げたことによるものか。


    そんな中──

    冴がそっと手にしていた《スカイグレーの小さな箱》に、千切はポーチから取り出した宝石へと差し出した。


    千切「……これ、だよな」

    スカイグレーの宝石──他の宝石と同様、
    淡く鼓動するような光を宿している。

    その脈動に、冴が無言で頷くと、
    そっと箱へと嵌め込んだ。


    ──カチリ。

    金属の静かな音。

    次の瞬間、冴の足元にいた猫──
    黒の毛並みに青緑の瞳を持つ小柄な猫が、
    ほんの少し身体を震わせたかと思うと──

  • 54スレ主25/06/11(水) 08:30:15

    「……にぃ、にー」

    それは、明らかに“嬉しそうな声”だった。

    猫──イッキが、冴を見上げ、柔らかく瞬きを返す。


    凛「……今、鳴いたよな」

    凪「いや……あれ、“話しかけてる”」

    千切「え、ええ!?待って待って待って、ヨイチ達もそうだったけど、今度はイッキが……っ」

    冴「……お前、まさか」

    猫のイッキは、すぐに鳴かなくなった。

    ただ、しっかりと冴の目を見て、
    もう一度小さく「にぃ」と声を漏らす。

    まるで「ありがとう」とでも言うように。


    千切の指先が、かすかに震える。


    千切「これ、やっぱ……誰かの、だよな。魂……っていうか、“欠片”っていうか……」

    凪「うん、やっぱりそうだ。鳴き声の“重さ”が、前とは違う」

  • 55スレ主25/06/11(水) 08:31:24

    その瞬間、四人の脳裏に、
    自然と浮かぶ名前があった。


    ──二子一揮。

    静かに沈黙していた猫が、自らを取り戻したのだ。

    宝石の欠片と、箱と、札──
    三つが揃ったとき、魂の断片が言葉を取り戻す。

    それは、過去にもあった現象だった。

    レオが、タビトが、ヨイチが──
    そして今、イッキもまた。


    冴「……お前が、“二子一揮”か」

    イッキは否定も肯定もせず、
    ただ静かに、足元に身を寄せる。


    凛「……絶対、連れて帰る。あいつらの身体に、この魂を戻す」

    千切「絶対に。……絶っ対に」

    凪「地下で“本体”を探す。それで、全部終わらせよう」

  • 56スレ主25/06/11(水) 09:05:18

    沈黙に包まれた《被検体保管庫》。

    凛と張り詰めていた空気が──唐突に“崩れた”。


    ピシィ──ン、と、乾いた音。

    中央の保管ポッド、その内壁にひびが走ったかと思えば、次の瞬間、内部の液体が飛び散るように破裂する。


    ぐしゃり。

    鈍い音を立てて、何かが──這い出てきた。


    「………………たすけて」

    声が、響く。
    けれどその口元には、声帯など存在していない。

    皮膚のほとんどは剥がれ、骨が露出した関節が“逆に折れたような角度”で床を這う。


    「ゆるして……ねえ、ゆるして……」

    目はない。

    頭部は、半ば溶けかけたように崩れ、顔の輪郭も不明瞭だ。

    けれどその姿が、確かに“四肢を持つ”ヒト型であることだけが分かる。

  • 57スレ主25/06/11(水) 09:09:31

    【凪の固有能力:夢境感知──発動】


    ──凪が、動いた。


    凪「来るって、分かってた」

    まるで空間そのものを見通すかのように、無言で一歩、前に出る。

    次の瞬間──凪の足元にいたレオが、「にゃっ」と短く鳴いた。
    その声とともに、凪の右足が、寸分の迷いもなく“それ”を蹴りつける。


    凪「そこ、だよね」


    ズンッ!

    突如として“それ”が吹き飛ぶような衝撃が走った。

    目視できないほどの速度で凪が踏み込んだ一撃が、
    怪異の身体を正確に捉えていた。

    崩れ落ちるようにして、怪異は床に叩きつけられる。
    だが──“それ”は死んではいなかった。

    むしろ、這い寄るように、
    床をずるずると引きずりながら、起き上がってくる。

  • 58スレ主25/06/11(水) 09:27:18

    「いたい……やめて……やめて……」


    その声には“心”がない。

    ただ、記憶の断片だけが言葉を喋らせている──。



    冴「……見せかけの悲鳴ってやつか」


    凛「いいぜ。相手がどうあれ、やることは一緒だ」


    千切「絶対に、誰も連れてかせねえ!!」



    【地下室:被検体保管庫】《被検体:???》

    (11回攻撃成功で討伐完了/80以上で攻撃成功)

    千切:dice1d110=57 (57)

    凪:dice1d110=21 (21)

    凛:dice1d110=32 (32)

    冴:dice1d110=55 (55)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 59スレ主25/06/11(水) 10:49:51

    【戦闘開始】8:00
    【冴の固有能力:断罪の策略──発動】
    【100特典:+30使用(戦闘終了まで継続)】


    呻き声のようなノイズが空間を揺らす中──
    最初に動いたのは、冴だった。


    冴「……悪いが、“救済”はしてやれねえ」

    左足を軸に、身を沈める。
    そして迷いなく、拳が突き出された。

    その動きは、異形の軌道を正確に読んでいた。
    ──冴の拳が、怪異の腕にめり込む。


    続けて──

    冴「“止まってろ”」

    回転を加えた膝蹴りが、
    関節の外れた胴体を弾くように打ち据えた。

    肉とも骨ともつかぬ質感が、音もなく崩れる。

  • 60スレ主25/06/11(水) 10:52:54

    次に動いたのは千切。


    千切「……お前ら、見ててくれ。俺、ちゃんと届くから!!」

    唇を噛み、前傾姿勢から全力のダッシュ。
    怪異の影が揺らいだ瞬間──足が閃いた。

    重心の乗った回し蹴り。

    軽やかでありながら、
    深く深く“中枢”をえぐるような一撃。


    千切「お前には絶対、誰も触れさせねぇ!!!」

    その声は、叫びではなく祈りに近かった。


    しかし。

    続いた凪の拳は、空を切った。


    凪「……あれ、ずれた」

    僅かな空間の揺らぎに惑わされたのか、
    怪異の体が凪の攻撃を“滑るように”避けていく。

  • 61スレ主25/06/11(水) 10:55:42

    一歩も動いていないのに、
    位置だけがすり替わったような錯覚。


    凪「……ま、次で当てる」


    そして凛──彼の攻撃もまた、“届かなかった”。


    凛「──くそっ……」

    間合いを完璧に読んだはずだった。
    だが、その“間合い”自体が虚構だったかのように、怪異は姿を“ずらして”いた。


    凛「バケモンが、イカサマしてんじゃねぇ……!」

    噛み殺すように吐き捨てるが、
    怒りの奥には確かな焦りがにじんでいた。

  • 62スレ主25/06/11(水) 10:56:51

    ──直後。



    「……“つぎは、おまえ”」


    怪異の身体が、ぐにゃりと揺れた。


    その声は、

    確かに4人全員に向けられていたはずなのに──


    まるで耳元で“誰か”にだけ囁かれたかのような、

    確信めいた恐怖をもって迫ってくる。


    冴の前に立ったイッキが、「にぃ」と短く鳴いた。

    それは警告。怪異が動く。



    【地下室:被検体保管庫】《被検体:???》

    (8回攻撃成功で討伐完了/80以上で回避成功)

    千切:dice1d110=74 (74)

    凪:dice1d110=36 (36)

    凛:dice1d110=32 (32)

    冴:dice1d110=104 (104)

    ※100特典:+30補正

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 63スレ主25/06/11(水) 11:06:27

    【回避開始】8:00
    【凪の固有能力:静寂の再演──発動】
    【烏の固有能力:精神肩代わり──発動】


    ──異形の爪が、空気を裂くように迫った。

    まず、千切が咄嗟に反応した。


    千切「……来いよ、全部見えてんだよ!」

    スピードスターの脚が、霧のように一閃。

    その回避は“避けた”のではない。
    攻撃が来る前から、“そこにいなかった”のだ。

    千切の眼が、獲物を狩るように鋭く光る。


    続いて、凪の背後へ迫る怪異の手。


    だが──

    何かが、時間を“巻き戻した”。

  • 64スレ主25/06/11(水) 11:08:31

    凪「……ん?」

    踏み出した足が、ほんの少し違う位置を踏み、
    怪異の攻撃は凪の横をすり抜けた。

    回避の意識すらないその動きに、
    凪自身が首を傾げる。


    凪「……まあ、当たんなかったならいっか」


    そして──凛。

    その眼前に、血に染まった掌が伸びてくる。


    凛「──チッ!」

    跳ぼうとした、その瞬間。
    怪異の腕が、凛の喉元へ届きかけ──


    「…………にゃ!!」

    甲高い鳴き声と同時に、
    暗がりから大柄な影が跳びかかった。

  • 65スレ主25/06/11(水) 11:10:48

    タビトだ。
    怪異の顔面に爪を叩き込み、睨みつけるように「にゃにゃにゃにゃ!!!」と威嚇する。

    怪異の動きが、一瞬だけ止まる。
    その間に凛は身を翻して跳ね退いた。


    凛「……ナイス、タビト……」

    小声で呟くその顔には、わずかな冷や汗。


    そして最後に、冴。

    彼には、何も届かなかった。


    冴「──遅ぇよ」

    足元の血痕すら滑るような動きで躱し、イッキが低く鳴いたのと同時に、怪異の振るった腕は虚空を裂く。


    冴「じゃ、反撃な」

    眼光が鋭くなる。

  • 66スレ主25/06/11(水) 11:12:06

    異形は声にならない呻きをあげ、身体を蠢かせる。


    だが、その動きは既に鈍い。

    感情の形だけが残ったまま、暴れまわる“残滓”。


    ──4人の目が再び、その中心へと向けられる。



    【地下室:被検体保管庫】《被検体:???》

    (8回攻撃成功で討伐完了/80以上で攻撃成功)

    千切:dice1d110=44 (44)

    凪:dice1d110=51 (51)

    凛:dice1d110=59 (59)

    冴:dice1d110=80 (80)

    ※100特典:+30補正

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 67スレ主25/06/11(水) 11:17:59

    時計進行を計算しましたが、この先全部探索大失敗でも24:00には行かないので、44特典を【攻撃自動成功+追加ダメージ】に変換します!

  • 68スレ主25/06/11(水) 11:30:08

    【戦闘開始:2回目】8:00
    【44特典:44°赤豹狙撃──発動】


    ──冴の眼差しが鋭く光る。


    冴「動き、読めてんだよ」

    敵の腕が振り上がるよりも早く、その懐に踏み込む。

    膝蹴りを腹部へ──空気が鈍く震える音。


    冴「これで一発。……もう一発、だな」

    続けざま、右拳を振り抜く。

    精神の残滓ごと、
    記憶の痛みをも撃ち抜くような一撃。

  • 69スレ主25/06/11(水) 11:31:11

    ──凪の蹴りが、低く唸る。


    凪「……動き、読める」

    ぶつかる直前、
    手首の角度を調整し、的確に側頭部を打つ。

    その目には、わずかな“迷い”もない。


    凪「早く、消えてよ」


    ──凛の蹴りは、真っ直ぐだった。


    凛「てめぇは……そこで、黙ってろ!!」

    唸るような回し蹴り。
    怪異の身体がわずかに浮き、その姿勢を崩す。

    その隙に、距離を取る。息が少し荒い。


    凛「……何度でも来いよ。潰すだけだ」

  • 70スレ主25/06/11(水) 11:35:33

    ──千切豹馬は、確かに見た。


    千切「……来たな、“ゾーン”」

    視界が研ぎ澄まされる。

    次の瞬間、怪異の脇腹が、黄金色に輝いたように見えた。

    ──左斜44度。黄金区域。


    千切「なら──撃ち抜くだけだ!!」

    足元の空間をえぐるように、一気に加速。
    空間が“爆ぜる”ほどの突進、そのまま怪異の側面に滑り込む。

    跳躍。
    鋭く、風を裂く角度から放たれた回転蹴りが、狙いすました黄金区域に直撃した。

    怪異の身体が仰け反り、硬直する──


    その一瞬すら見逃さず、空中からの追撃。
    重力すら欺くように宙で軌道を変え、もう一発、別角度からの打撃が怪異の顎を跳ね上げる。


    千切「外すわけねえだろ、──ここは俺の“領域”だ」

    凛然とした声が、空気を貫いた。

  • 71スレ主25/06/11(水) 11:37:10

    ──異形の身体が、ふらつく。


    纏っていた黒い影が崩れかけ、呻き声がノイズのように鳴る。


    次の瞬間、再び反撃の構えを見せる怪異。


    その全身から発される、異常な精神波──

    血のような記憶の残滓が揺らぎ、再度、牙を剥こうとしていた。



    【地下室:被検体保管庫】《被検体:???》

    (2回攻撃成功で討伐完了/80以上で回避成功)

    千切:dice1d110=69 (69)

    凪:dice1d110=99 (99)

    凛:dice1d110=86 (86)

    冴:dice1d110=93 (93)

    ※100特典:+30補正

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 72スレ主25/06/11(水) 11:45:07

    【回避開始】8:00


    怪異の手が軌道を描いた瞬間、
    千切はもういなかった。

    床を一蹴り、真横へスライド回避。
    地を裂くような声が耳を裂く中、笑みを浮かべる。


    千切「悪いな……速すぎて見えねーか」

    その身体は、もはや幻影のように掴めない。


    凛「──遅い、“それ”じゃ俺には届かねえよ」

    背後から伸びた不気味な影に、
    凛はわずかに肩を逸らすだけ。

    次の瞬間、重心を落として鋭く回避。
    その冷えた瞳は、すでに次の一手を計算済みだ。


    凛「今度は、こっちの番だ」

  • 73スレ主25/06/11(水) 11:46:45

    冴「……重いな、お前の“執着”」

    怪異の放ったノイズと共に伸びる攻撃を、
    冴は冷静に読み切っていた。

    視線すら動かさず、
    最小限の足運びで無駄なくかわす。


    冴「けど、それじゃ──“俺”には届かない」

    言葉と共に、まるで時間すら読み切ったかのような動きで、怪異の隙を正確に見極めた。


    凪「……あー、また来た」

    伸びる腕。這い寄る気配。

    だが凪は、それを感じたその刹那、淡く避けた。

    意識の奥底で何かが囁いた──“こっちだ”と。


    凪「……ん、勝手に体が動く。楽でいーね」

    凪の動きは、重力すら忘れたかのような滑らかさ。
    触れられることすらない。

  • 74スレ主25/06/11(水) 11:52:17

    崩れかけた怪異は、それでも呻くように囁く──



    「……たすけて……やりなおさせて…………」


    それは、哀願か、罠か。



    けれど──4人は迷わない。


    一歩、また一歩と足を進めながら、

    戦闘態勢へと移る。


    千切が前線へと突き出る。

    凛が視線を定める。

    冴が後方を睨み、

    凪が無言のまま呼吸を整える。



    【地下室:被検体保管庫】《被検体:???》

    (2回攻撃成功で討伐完了/80以上で攻撃成功)

    千切:dice1d110=85 (85)

    凪:dice1d110=18 (18)

    凛:dice1d110=50 (50)

    冴:dice1d110=72 (72)

    ※100特典:+30補正

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 75スレ主25/06/11(水) 12:02:13

    【戦闘開始:3回目】8:00


    ──「…………みてる」

    それは、凪の口から漏れた、ただ一言の呟きだった。

    振りかぶった腕は止まり、
    脚はその場に縫い付けられたように動かない。

    まるで空間ごと“誰か”に見られているような、
    ぞわりとした感覚。
    凪の背筋が、初めてほんの僅かに震えた。


    凪「……これ、ほんとに気持ち悪い……」

    目の前の怪異は、もう形を留めていない。

    何かを喰らい、何かを叫び、
    何かを求めて、なお足掻いている。

    ──ならば、その最後を、終わらせるのは。


    凪「──俺じゃないね」

    無言で後ろを振り返る凪。

  • 76スレ主25/06/11(水) 12:04:07

    次に放つのは──凛。


    凛「……くだらねぇな、その醜態。死に損ないが」

    凛は真っ直ぐ、躊躇いなく踏み込んだ。

    不規則に揺れる怪異の中心を射抜くように、
    足で床を撃ち抜き、真正面から拳を叩きつける。


    凛「黙って、潰れてろ」

    ──“ゴッ”という異音。
    それは、魂すら揺らす拒絶の一撃だった。


    冴「……ここで生きてる“ふり”しても、誰にも届かねぇぞ」

    冴の蹴りは、正確に関節の隙を狙ったものだった。

    人体とは似ても似つかない、
    しかし“似せた”怪異の動きを、冴は一瞬で見切る。


    冴「せめて、終わらせてやる」

    ──音を立てて、怪異の上半身が捻じ曲がる。

  • 77スレ主25/06/11(水) 12:05:48

    そして、連続で振り抜かれた掌底。

    容赦はない。
    “命”ではなく、“悪夢”に対する鉄槌。


    冴「じゃあな──二度と起きてくんなよ」

    その拳が、怪異の“顔らしき部位”を貫いた。


    ──時間が止まったような静寂。
    そこに、音を割って現れた“風”があった。


    千切「……決めたいんだよ、俺が。……アイツら、守るためにさ」

    千切はぴたりと足を止め、
    研ぎ澄まされた身体をしならせる。

    放たれた踵が、
    渦巻くような衝撃波と共に怪異へ命中。


    怪異の身体が音もなく崩れ──


    残ったのは、ひときわ深い“沈黙”だった。

  • 78スレ主25/06/11(水) 12:16:25

    部屋の空気が沈黙する。

    だが──その奥に、まだ何かが“残っている”。


    千切が振り返る。

    冴が僅かに目を細め、
    足元に転がる機器の残骸に視線を落とす。


    冴「……鍵だな。こっちは“医療技術研究室”用か」


    凛が無言で、近くの機器パネルを操作する。
    すると、パネル裏から小さな札が滑り出した。


    凛「……これもだ。スカイグレーの……札?」

    冴が受け取り、そのまま自身の所持していた《スカイグレーの小さな箱》へとセットする。

    カチリ──と確かな接続音が響いた瞬間、
    足元にいた猫──イッキが小さく鳴いた。

  • 79スレ主25/06/11(水) 12:21:57

    イッキ「…………接続、完了」

    冴「……ようやく喋ったな」

    イッキ「みなさん、ここまで来てくれてありがとうございます」

    イッキ「……魂の断片は、すでに繋がりつつあります。最後の戦いまで、可能な限り……支援します」


    その声は、どこか穏やかで、どこか悲しげだった。

    猫の姿をした彼──“二子一揮”の意識の欠片。
    それが、確かにここに“繋がった”という証だった。


    ■お知らせ
    ・二子一揮の奪還条件が全て揃いました。
    ・これより支援プロコトルを起動します。
    ・以下の固有能力が使用可能になります。
    【精神遮断】1度だけ、恐怖イベントを“無視”して情報として記憶する。
    【リザーブ・ドロー】戦闘時、1度だけ失敗者を全員自動成功に変換する。

  • 80スレ主25/06/11(水) 12:24:43

    そして最後に、凪が拾い上げたのは──
    濡れて破れかけた紙片だった。


    凪「……誰かの手書き。けど、読める」

    凪が静かに読み上げた。


    凪「“侵入者を確認した”……“直ちに排除せねば”──、だって」

    冴「……俺らを“敵”として認識してる」

    凛「もう、見つかってんだな……俺たち」

    イッキが、足元で静かに身を縮めた。


    この病院は、すでに“迎撃態勢”に入っている。

    だが──それでも、この場所で、彼らは全てを取り戻すために立ち止まることはなかった。

  • 81スレ主25/06/11(水) 12:35:32

    【千切豹馬:SAN値-1(25→24)】
    【凪誠士郎:SAN値-1(25→24)】
    【糸師凛:SAN値-1(24→23)】
    【糸師冴:SAN値-1(25→24)】


    討伐の余韻が消えた後も、
    空間のざわめきは完全には止まなかった。

    何かが残響のように響き、
    心の奥底に薄く軋む音を刻み込んでくる。

    その“軋み”と共に、
    4人の精神は静かに削られていった。


    ──その瞬間。

    腕に装着されたデジタル腕時計が、
    同時に電子音を鳴らした。


    ピピッ……。

    「9:00」


    静かなアナウンスと共に、表示が切り替わる。

  • 82スレ主25/06/11(水) 12:36:54

    千切「っ……なんか……頭の奥がぎゅってすんの、やだな……」

    声を出していたが、そこには少しだけ迷いがあった。

    闘ったばかりの怪異よりも、この“場所”自体が、心に染み込むようにじわじわと効いてくる。


    凛「クソ……こんなの、誰が設計したんだよ」

    ぽつりと漏れた言葉に、答える者はいない。

    凪は、自分の腕時計を軽く叩き、
    時間を確かめるとふっと息をついた。


    凪「……まだ、こんなもんか。もっと来るかと思ってた」

    口調は淡々としていたが、わずかに息が荒い。

    何かを防ごうとするように、レオがそっとその足元に寄り添った。


    冴「……おい」

    ぼそりと呟いたのは冴だった。


    冴「……この空間、上とは完全に“切れて”る。戻る道は、選べねえ」

    真っ直ぐな瞳で、誰に向けるでもなく呟いたその言葉に、誰も反論はしなかった。

  • 83スレ主25/06/11(水) 12:39:55

    タビトが、少しだけ鳴いた。

    冴の足元にいたイッキも、静かに身を丸める。

    そして──ヨイチが、
    千切の手をそっと鼻でつついた。


    千切「あ……お前も……やっぱ、わかるよな、これ」

    瞳の奥に浮かんだのは、
    緊張ではなく“覚悟”だった。


    この地下──恐怖だけでは済まない“何か”が、確かに満ちている。

    だが彼らは知っている。
    この先に、奪われた仲間がいるということを。

    そしてそのために、進むということを。

  • 84スレ主25/06/11(水) 12:44:24

    ──扉が、ゆっくりと閉まる音が背後で鳴った。

    【被検体保管庫】から出た4人と4匹は、
    再び“重たい”廊下へと足を踏み出す。


    A-7通路よりも遥かに冷たく、
    刺すような湿気と不快な静電気が肌を撫でた。

    歩くたび、
    足元で鳴る音がどこか“濁って”聞こえる。
    空気が澱み、重く沈んでいるのだ。

    ヨイチが、かすかに「……ぅにゃ」と鳴いた。


    千切「……あー、やっぱ外もピリピリしてんな、ここ……」

    冴は黙ったまま歩く。
    が、その視線はすでに【隣の部屋】に向けられていた。


    【医療技術研究室】


    ──扉の上部に、はがれかけた銘板。
    白く消えかけた文字が、辛うじて読める。

  • 85スレ主25/06/11(水) 12:46:14

    凛「この扉か。どうせ碌でもないんだろ、わかってるけどさ……」

    冴はその言葉に頷きもせず、
    ポーチから一つの鍵を取り出す。


    《医療技術研究室の鍵》──


    凪「……冴、開ける?」

    冴「ああ。──進むしかねぇだろ」

    鍵を差し込むと、重たい音を立ててロックが外れた。
    カチリ、と鈍い解錠音が響く。

    冴が手をかける。


    ギィ…………


    扉は、押し返すような抵抗をもって、
    ゆっくりと開いた。

    ──その奥に待つ空間は、
    ただの“研究室”ではない。

    4人の背後、猫たちが足元に寄り添ったまま、
    静かにその一歩を見守っていた。

  • 86スレ主25/06/11(水) 12:51:36

    ──扉が、軋みを上げながら完全に開いた。

    その中に広がっていたのは、
    “医療”の枠ではとても語れない異常だった。


    千切「……なに、ここ……病院、だよな?」

    思わずそう呟いてしまうほど、その空間は異様だった。

    部屋は広く、だが異様なまでに“静か”だ。

    耳に届くのは、低く、
    どこからともなく響くような“共鳴音”。

    ──金属ではなく、脳の奥で震えるような、
    精神に直接触れてくるような不快な音。


    冴が無言のまま、目を細める。

    壁の一面には、白ではなく“灰に近い青”の塗装が剥がれかけ、その上から黒いペンキで何かが描かれていた。

    幾何学的な円、交差する線、重なる記号。

    ──あきらかに医療や解剖の範疇を超えた“式図”。

  • 87スレ主25/06/11(水) 12:53:23

    凪「……式?……いや、これ……呪文じゃないの?」

    凪の呟きが、部屋の空気をさらに凍らせた。

    中央に設置された手術台のような台座は、
    完全に破損している。

    そこに残された拘束具は、
    無数の爪痕と焦げ跡にまみれていた。


    凛「拘束されたまま……燃えた?なにがあったんだよ、ここ……」

    天井から吊るされたコードが、無数の神経線のように垂れ下がり、壁の端末に繋がれている。

    端末のひとつが唐突にノイズを走らせ──

    「……記録を……続けろ……」と、
    ひび割れた電子音が響いた。

  • 88スレ主25/06/11(水) 12:55:00

    タビトが、足元で「にゃあっ」と短く鳴く。
    その音に、みな緊張を戻した。


    部屋の隅には、仕切られたカーテンブースが3つ。

    血の色が乾いた布地、そしてその奥から漏れる、
    得体の知れない影のような“意識”の圧。

    この部屋は──“精神”そのものを弄ろうとしていた。


    千切「……やばい。ここは、なんか、“戻ってこられなくなる”感じがする……!」

    冴「……感じてんのは、俺たちだけじゃねぇ。猫たちもだ。用が済んだら、すぐ出るぞ」


    そして四人は、足を踏み入れる。

    壁の式図が、誰かの入室を感知したかのように、
    わずかに“震え”た。

  • 89スレ主25/06/11(水) 12:59:09

    【地下室:医療技術研究室エリア】


    ①中央の破損手術台と焼け焦げた拘束具
    火傷と引き裂きの痕が残る。過去に“被験体”が何かを拒絶したような形跡がある(異常発生リスク:特大)

    ②壁一面に描かれた式図と脈動端末
    幾何学図形と記号が交差する不気味な図が壁面に広がる。傍の端末は低いノイズを発し続けている(異常発生リスク:特大)

    ③吊り下げられた神経コードと壊れた記録装置
    天井から垂れ下がる神経様のコード。記録装置は断片的に作動しており、何かを記録しようとしていた痕跡がある(異常発生リスク:大)

    ④仕切られたカーテンブース内部
    乾いた血痕と、かつて何かが“いた”気配。空間が歪んで見えるほどの不穏な圧が残されている(異常発生リスク:大)

  • 90スレ主25/06/11(水) 13:02:42

    【地下室:医療技術研究室探索:①中央の破損手術台と焼け焦げた拘束具・糸師凛】
    【探索開始】9:00


    凛の足音が、鈍く湿った床に沈んだ。

    手術台の中央──明らかに異常な熱に晒された痕跡がある金属面。
    その上に残る、黒く焦げた拘束具の破片。
    まるで、誰かが縛られたまま燃やされたようだった。

    タビトが低く唸る。
    何かを察知したかのように、
    凛の背後でしっぽを逆立てる。


    凛「……これは、普通の治療なんかじゃねぇな」

    手術台の縁をゆっくりと指でなぞる。
    金属は歪み、周囲には焼け焦げた跡が不自然な円を描いていた。
    拘束具の一部は、異常な力で引きちぎられたような痕跡もある。

  • 91スレ主25/06/11(水) 13:04:18

    目を細め、凛はその中心に踏み込む。



    凛「ここで何かが“暴れた”……ってだけじゃねぇ。……何か、もっと……」


    その瞬間、足元の金属がわずかに軋む音を立てた。



    凛「……!」


    凛の視線が床下に吸い寄せられる。


    暗く、焦げた金属の奥に──

    何かが、まだ“動いている”気配がした。



    凛「チッ……まあ、見てみるしかねぇか」


    指先が、焼け焦げた拘束具の下に触れた──



    異常発生リスク特大

    dice1d110=90 (90)

    (1〜50:大失敗 51〜80:失敗)

    (81〜100:成功 101〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 92スレ主25/06/11(水) 13:20:12

    【探索成功】9:00
    【SAN値-1:23→22】


    その金属は、すでに熱を失って久しいはずなのに、
    まるで残留する“感情”でも宿っているかのように、
    じわりと指先に不快な熱が伝わった。


    凛「……なんだこれ、ただの鉄じゃねぇ……」

    軽く持ち上げると、その下から露出したのは、
    半ば炭化しかけた小型装置。

    ボディの一部には「干渉ログ」と刻まれた痕跡があり、凛が端末に手を伸ばした瞬間──

    ジジッ、と乾いたノイズとともに、
    電子音声が走った。


    『精神接続ログ、再生開始──』
    『対象No.12、No.16、No.17──感応経路、開通』
    『“院長”の意識データ、精神制御階層へ浸透。以降、統制下に移行』
    『次段階:精神領域、現在進行形で組み込み中』
    『夢の安定率:高』
    『“病院構造そのもの”が、対象らの記憶・思考によって構成されている』
    『現実との接続遮断──完了済』
    『最終目標:持ち込まれた“魂の器”と“起点”の統合』
    『……“彼ら”の回帰と再生は、間もなく達成される』

  • 93スレ主25/06/11(水) 13:21:28

    言葉の断片が、まるで脳に直接焼き付けられるかのように流れ込む。

    ──「起点」「再生」「魂の器」。

    そして、“彼ら”。


    凛「……やっぱ、潔たち……そのままじゃ戻れねぇってことかよ」

    息を呑むより先に、視界がぐらりと揺らいだ。

    急激な精神圧の逆流。
    無意識の奥底に──“誰かの意思”が沈んでいるのを感じる。


    “君たちも、選ばれた存在なんだよ”


    耳元で囁くような幻聴。
    ノイズと幻影が視界の端で混ざり合い、数秒、凛は立ちくらみを堪えた。


    凛「クソ……何なんだよ……」

    深く息を吐く。
    額にはいつの間にか、うっすらと汗が滲んでいた。

    それでも、掌には確かな成果が残った。

    冷たいはずの装置は、ほんのわずかに熱を宿しているように思えた。

  • 94スレ主25/06/11(水) 13:25:40

    【地下室:医療技術研究室探索:②壁一面に描かれた式図と脈動端末・千切豹馬】
    【探索開始】9:00


    薄暗い研究室の奥。

    そこだけ空気の密度が異なるような、
    奇妙な“圧”が漂っていた。

    壁の全面に走る幾何学的な図形群──
    円、線、交差、記号、
    そして意味をなさない数式のような記述。

    まるで精神を“正しく狂わせるため”に、
    設計されたかのような、不穏な配置だった。


    千切「……なんだよこれ、落書きにしちゃ悪趣味すぎるだろ」

    つぶやきながら、一歩、足を踏み出す。

    壁の中央、式図に組み込まれるように設置された《脈動端末》が、低く唸るようなノイズを発し始めた。

    青白いランプが断続的に点滅し、
    千切の影を不規則に照らし出す。

  • 95スレ主25/06/11(水) 13:27:17

    千切「うわっ……マジで動いてんのかよ……こんなヤバそうな空間で?」


    背後にいたヨイチが、「にゃ」と低く鳴く。


    足元に絡むコード、壁を這う配線の一部が、

    今もわずかに“生きている”ように見えた。


    ──これはただの装飾じゃない。

    何かを“実際に動かしていた”装置の一部だ。



    千切「……ま、行くしかないか」


    乾いた喉を鳴らし、

    千切は静かに壁面へと手を伸ばす。



    異常発生リスク特大

    dice1d110=10 (10)

    (1〜50:大失敗 51〜80:失敗)

    (81〜100:成功 101〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 96スレ主25/06/11(水) 13:34:09

    【探索大失敗】10:00
    【千切の固有能力:共鳴の記憶──発動】
    【SAN値-2:24→22】


    脈動端末に手をかけた瞬間──

    ──ッッギギギギ……

    耳の奥を軋ませるような、高周波ノイズが走った。


    千切「っ……!」

    反射的に頭を抱える。

    目眩。
    吐き気。

    視界が揺れ、壁一面の式図が“見てはいけないもの”のように迫ってくる。

    青白く点滅するランプが明滅を乱し、
    端末から飛び散った静電気が、空気を焦がした。

    次の瞬間──その“ノイズ”の中心に、
    記憶の“破片”が滑り込んだ。

  • 97スレ主25/06/11(水) 13:36:14

    ──目を閉じろ。思い出せ。
    ──あの遊園地を。最悪の夢を。


    焼け付くような記憶。喉を裂いた叫び。
    それでも、“誰も失わせなかった”あの瞬間。


    千切「……んな、わけねぇよな。俺が……こんなんで、折れるかっての」

    音が、消えた。

    式図はただのインクに、
    端末のノイズはただの不具合に戻る。

    皮膚を刺していた圧迫感が、ふと緩んでいた。


    ヨイチが「……にゃ」と、短く鳴いた。

    千切は浅く息を吐くと、
    振り返らずにその場を離れる。


    千切(……なんか、守られた感じ……すんだよな)

  • 98スレ主25/06/11(水) 13:39:27

    【地下室:医療技術研究室探索:③吊り下げられた神経コードと壊れた記録装置・糸師冴】
    【探索開始】10:00

     
    天井近くから、
    神経のように垂れ下がる異形のコード。

    それはまるで“生体”のようにくねり、
    空気を舐めるように揺れている。


    冴「……機械に見えねえな、これ」

    天井から吊るされた複数のコードは、
    まるで意思を持つかのようにねじれ、
    反応のような明滅を繰り返していた。

    コードの先には、割れた記録装置の残骸がある。
    剥き出しの中身から、時折、低い電子音が漏れている。


    冴「……記録、残ってりゃいいが」

    黒く焦げた床の上を進み、記録装置の端末部分へ。
    踏み込んだ瞬間、ピリ、と足元の空気が震えた。

  • 99スレ主25/06/11(水) 13:41:50

    「──あれは、違う……僕は、ただ……」



    どこからか、断片的な音声が漏れ出す。

    誰かの“記録”か、“記憶”か。


    だが、それは音というより、脳の奥に直接響く感覚だった。


    イッキが、冴の後ろで耳を伏せながら小さく鳴く。



    「……にぃ、……っ」



    冴「……これ、やばい記憶が流れそうだな」


    片手でイッキを制しつつ、冴はゆっくりと記録装置に指をかける。


    ノイズは次第に濃く、明瞭になっていく──

    ──この異常に、確かに“意思”が含まれている。


    次の瞬間、何かが再起動したかのように、

    記録装置の光が一瞬、点滅する。



    異常発生リスク大

    dice1d110=48 (48)

    (1〜40:大失敗 41〜75:失敗)

    (76〜95:成功 96〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 100スレ主25/06/11(水) 13:45:35

    【冴の固有能力:最適解──発動】


    冴「──チッ、ダメか」

    一度目の接続では、記録装置は反応を見せなかった。

    けれど、冴は視線を外さず、機械の内部を見つめる。

    その手の動きが止まる。


    冴「待てよ……ここの配線、繋がり方が……逆だ」

    焦げたコードを一本ずつたどり直し、
    冴は指先で慎重に断線部をいじる。

    その感覚はまるで、誰かの“神経”をつなぎ直すような異様さすらあった。

  • 101スレ主25/06/11(水) 13:47:37

    イッキが不安げに鳴く。


    「に……っ」



    冴「平気だ、ちゃんと見えてる」


    その声に応えるように、

    コードの1本がピクリと震えた。


    記録装置に再び、淡い光が灯る。



    冴「……よし、これなら」


    機械の奥で、記憶の断片が目覚めたように、

    微かに何かが“再生”されようとしていた──



    異常発生リスク大

    dice1d110=86 (86)

    (1〜40:大失敗 41〜75:失敗)

    (76〜95:成功 96〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 102スレ主25/06/11(水) 16:45:03

    【再試行成功】10:00
    【SAN値-1:24→23】


    冴が再接続した配線の奥──

    記録装置が、ぎい、と軋んだように動いた。

    古びた金属の擦れる音と共に、
    小さなディスプレイに残留データが浮かび上がる。

    ノイズ交じりの起動ログ。
    その下から、印刷機が唸りを上げて紙片を吐き出した。

    ──カルテデータ。

    見覚えのある名前が、
    機械的なフォントで並んでいた。


    『患者番号:0001──潔 世一』
    『患者番号:0002──烏 旅人』
    『患者番号:0003──御影 玲王』
    『患者番号:0004──二子 一揮』


    冴「……マジかよ」

    紙を手に取った冴の視線が、一瞬だけ鋭くなる。

  • 103スレ主25/06/11(水) 16:46:08

    ──《No.0001/潔 世一》
    “極度の同期傾向。誘導下で他者記憶との統合反応あり”
    “処置段階で人格の境界が曖昧化。識別番号の再発行を申請中”

    ──《No.0002/烏 旅人》
    “幻聴・幻覚は沈静傾向にあるも、過去記憶の混線が継続”
    “本個体は他者人格の感応を強く受ける。記憶補完の役割を担う可能性あり”

    ──《No.0003/御影 玲王》
    “記憶混合による自己認識の歪みが発生”
    ““魂片状態”での安定確認。隔離維持を優先”

    ──《No.0004/二子 一揮》
    “外部刺激への反応なし。ただし記憶波形は微弱ながら活性”
    “接続端末の精神干渉ログと一致。今後の干渉経路としての検討対象”

  • 104スレ主25/06/11(水) 16:47:39

    「……に」

    小さく鳴いたイッキが、冴の足元に身を寄せる。
    ──この“真実”に、どこか怯えているようだった。


    冴「……全部、“そういうこと”か」

    ──“誰かの記憶”が、
    彼らをこの病院に縫い付けている。

    ──“夢の中の人格”が、
    現実の身体に喰い込んでいる。


    確かな違和感が、冴の背筋を冷たく這う。

    重苦しい地下の空気が、また一段と濃くなる。
    感覚がじわじわと、擦り減っていく。

     
    冴「……面白ぇな、クソみたいな真実だ」

    かすかに笑いながら、冴は4人分のカルテを手にしたまま、静かに振り返った──

  • 105スレ主25/06/11(水) 16:51:18

    【地下室:医療技術研究室探索:④仕切られたカーテンブース内部・凪誠士郎】
    【探索開始】10:00


    ──床を這う影が、カーテンの縁に触れた。

    部屋の一角、淡い光に照らされたブース。

    遮蔽のために設けられたそのカーテンは、
    今は半ば開かれ、奥を覗く者を誘うように揺れていた。


    凪「……カーテンってさ、ホラーゲームで一番ヤな場所なんだよね」

    「……ぅ゛ううぅ……」

    低く鳴いたレオが、凪の足元から離れようとしない。
    だが凪はゆっくりと、無造作にカーテンを手で払った。

    ブースの中は、妙に空白が多い。

    ベッドらしき台は破損し、マットは裂け、
    乾いた血痕が床を縫うように走っている。

    壁には何かを引っ掻いたような痕が──
    人の手では届かない位置にも残っていた。

  • 106スレ主25/06/11(水) 16:52:24

    凪「……誰か、無理やり逃げたのか。あるいは──」


    言葉を止めた瞬間、

    何かが視界の端を“横切った”。


    決して視界の中心には現れず、

    感覚の端だけをひっかいてくる、異物の気配。


    空間の“濃度”がほんの少し変わった気がして、

    凪のまぶたがゆっくりと瞬いた。



    凪「……なんか、あるな。これ」


    足元の埃に覆われたカートリッジ端末、

    カーテンの裏の配線、あるいは壁の小さな鍵穴。

    いくつかの“違和感”がこの空間には詰まっていた。


    その中のひとつに、

    凪は無言のまま手を伸ばしていく──



    異常発生リスク大

    dice1d110=101 (101)

    (1〜40:大失敗 41〜75:失敗)

    (76〜95:成功 96〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 107スレ主25/06/11(水) 17:02:02

    【探索大成功】10:00
    【SAN値-1:24→23】


    カーテンの裏側にあった、壁の小さな金属蓋。
    その錆びた端をめくるように指を差し入れると、わずかな抵抗ののち、奥に何かが引っかかる感触。


    凪「……隠しボックス?」

    レオがぴたりと動きを止め、じっと見つめている中──
    凪は、平然とそれを引き抜いた。


    中から現れたのは、厚いファイルと小さなパッケージ。
    ファイルには、《【怪異記録:S-V2】》と記されていた。


    凪「ここの“奴”……か」

    ざらついた紙面に記されていたのは、明らかに“この部屋”を彷徨っていた存在に関する詳細だった。


    《怪異記録:S-V2(精神融合実験体)》
    分類:精神融合実験体/融合失敗型
    概要:かつて複数の精神データを無理に統合された個体。人格が複数層で重なり合い、常に“誰かを演じている”状態にある。
    特徴①:視認した者の記憶から“もっとも親しい存在”を模倣する
    特徴②:模倣体が話しかけてくるが、その発言は途中から歪む
    特徴③:“正体に気づいた者”を優先して排除対象とみなす
    備考:対応者には【認識の分裂】および【自己の崩壊】が報告されているため、絶対に単独での接触を避けること。

  • 108スレ主25/06/11(水) 17:05:01

    もう一方のパッケージには、光沢のある金属製のスティック状装置が収められていた。

    中心に青いラインが灯っている。


    凪「……なんか、ゲームの最終兵器って感じ」


    しかしその瞬間──


    「……“やめて”……そこには、入っちゃ……」

    幻聴のような声が頭に響いた。
    視界の端で、裂けたカーテンが一瞬、
    凪の背後に迫るように“揺れた”気がした。


    「……にゃぁっ!!」

    身をよじるようにして警告を発するレオ。
    その気配とともに、冷たい寒気が背中を走る。

  • 109スレ主25/06/11(水) 17:06:17

    凪「……まぁ、わかってたけど、やっぱ気持ち悪いね」

    足元がわずかに傾いたような錯覚と共に、
    軽く頭痛が差し込む。

    ──地下室特有の“精神への圧”が、確かにそこにあった。


    アイテムと情報をポーチに収めながら、
    凪は最後に一度だけ後ろを振り返る。

    そこには──もう“何も”いなかった。


    ■入手アイテム
    ・《ミラージュ・スティグマ》×1:戦闘時1回のみ使用可能。敵の攻撃を【不可視化】し、次の味方全員の回避を自動成功に変換する。

  • 110スレ主25/06/11(水) 17:37:42

    壁の幾何学模様がじりじりと微光を帯びるなか、4人と4匹の影が、再びひとつの中央に集う。

    手には、それぞれが手にした記録と装置。
    そして、どこか重たげな空気が漂っていた。


    冴「……カルテ出たぞ。こっちも、ついに本丸って感じだな」

    凛「兄ちゃんもか。こっちは“病院そのものが夢の中”って断言してる……ふざけた話だ」

    凛は《精神干渉装置》から再生された、
    ログの一部を読み上げた。


    千切「……つまり、魂の欠片を集めてるのって……その“起点”にするためってこと?」

    凪「うん。だと思う。“器”に魂を収めて、再生させるってことじゃないかな」

    冴「しかも……その“魂の欠片”、俺らが回収してんだよな。まるで手伝わされてるみたいに」

    その口調は冷静ながらも、
    微かに苛立ちが滲んでいた。


    続いて、冴が静かにカルテを読み上げる。


    凛「……確定だな。4人とも、ただ囚われてるわけじゃねえ。“中枢の構成要素”になってる」

    冴「ああ。こいつらが“夢の構造の軸”……だとすれば、取り戻さなきゃ何も終わらねぇ」

  • 111スレ主25/06/11(水) 17:40:27

    そこへ、凪が静かに口を開く。

    手には、黒く光るファイルと──
    細長い金属スティックがあった。


    凪「……この部屋にも、出るみたい」

    千切「うわ、最悪。こっちの心、読まれるってこと……?」

    凛「一番“親しい奴”に化けるとか、気持ち悪すぎだろ……」

    冴「しかも“バレたら排除”か。徹底してるな」


    凪は手にしたスティックを軽く掲げた。


    凪「……これ、使えば一回だけ、絶対避けられる。たぶん、みんなの役に立つ」

    千切「おおー! 凪、やるじゃん!」

    冴「備えられるもんは備えておこう。本番は近い」


    猫たちも静かに、4人を見上げている。

    タビトの尻尾が、わずかに不安げに揺れ──
    イッキは冴の足元にぴたりと寄り添っていた。

  • 112スレ主25/06/11(水) 18:39:58

    足元の床が、微かに“軋んだ”。

    凛が反射的に振り返る。

    空気が変わった。
    室内の全方位から押し寄せるような、ぞわりとした圧迫感。

    そこに──現れたのは、


    千切「……は?」

    息が、止まる。


    そこに立っていたのは、《潔世一》だった。
    いや──彼に、酷似した“何か”。

    その“顔”は確かに潔だった。

    だが、口元が動いた瞬間──


    「……みんな、俺のこと、助けに来てくれたんだよね?」

    声は穏やかだった。

    だがその言葉尻、“ね”の音だけが、
    音割れしたように不自然に響く。

  • 113スレ主25/06/11(水) 18:41:08

    瞬きのあと、もう一度その姿を見た時──

     
    「違うよ……違う……“俺じゃない”……違う違う違う──」

    ぐにゃりと歪んだのは、声だったのか、
    それとも身体だったのか。

    潔の顔が、そのまま“御影玲王”に変わった。

    その次の瞬間には“二子一揮”、
    続いて“烏旅人”──

    まるで4人全員を、一度に模倣しているかのような形状のまま、よろめきながら踏み出してくる。


    冴「……おい、あれは──」

    凛「こっちの“記憶”を、再生してやがる……!」

    その気配は明らかに“敵”だった。
    だが、その顔が“共にいた仲間”のそれであることが、迷いを誘う。

    否。
    それこそが、この怪異の最大の特徴。

    人格の“融合”に失敗した、人の形をした【記憶の塊】。

    幾重にも重なった“演じられた親しさ”が、
    その場の空気を狂わせていく。

  • 114スレ主25/06/11(水) 18:43:36

    凪「……面倒だけど、やるしかないね」

    その声に続くように、冴のポーチから、
    《リンクコア・アーキス》を取り出す。


    凪「……斬鉄。お願い」


    一瞬、空間が切り裂かれたような音と共に──
    剣城斬鉄が、その場に現れた。


    斬鉄「……あれは、“偽物”でいいんだな?」

    凪「うん、遠慮はいらないよ。全力でやっちゃって」


    斬鉄のその構えには、一切の躊躇がなかった。

    凪の背を自然に守るように立ち、
    ただ静かに視線を怪異へと定める。

  • 115スレ主25/06/11(水) 18:45:55

    斬鉄「よし……戦うぞ!的がデカいなら、サッカーより簡単なはずだし!」


    凪「そういう問題じゃないんだけど……バカ斬鉄」


    斬鉄のマイペースな掛け声に合わせ、

    静寂を切り裂くように、戦闘が開始する。



    【地下室:医療技術研究室】《精神融合実験体:S-V2》

    (14回攻撃成功で討伐完了/80以上で攻撃成功)

    千切:dice1d110=47 (47)

    凪:dice1d110=91 (91)

    凛:dice1d110=14 (14)

    冴:dice1d110=56 (56)

    斬鉄:自動成功

    ※S-V2の有力情報入手:+10補正

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 116二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 19:05:43

    斬鉄きた!心強い!
    いよいよ大詰めだあ
    スレ主がんばれー!

  • 117スレ主25/06/11(水) 19:18:27

    >>116 ここから支援キャラが登場し始めます!この部屋を含めればあと1探索と、3戦闘…きっとゴリ押せるはずです!頑張ります!

  • 118スレ主25/06/11(水) 19:20:01

    【戦闘開始】10:00
    【100特典:+20補正(戦闘終了まで継続)】
    【情報書換デバイス:探索自動成功を攻撃自動成功に変換/千切の失敗:自動成功に変換】
    【冴の固有能力:断罪の策略──発動】


    迫り来る“怪異”の姿は、どこか御影玲王を思わせる顔をしていた。


    千切「……やめろよ、そんな顔すんな!!」

    その声と共に、疾風が駆ける。
    地を蹴る音さえ置き去りにするスピード。

    空間が千切の脚に裂かれ、
    模倣体へ向かって一直線に飛び込む。


    千切「偽物のくせに、レオの顔、勝手に使うなよッ!!」

    跳躍と同時に回し蹴り──
    高速で放たれたその一撃が、怪異の顔面を叩き潰す。

    乾いた破裂音とともに、模倣された“親しき面”が崩れた。


    千切「……俺らは、あいつらを助けに来た。だから──お前は、ぶっ潰す」

    口調は強く、だがどこか悔しげに──
    千切の眼差しは、ただ前だけを見据えていた。

  • 119スレ主25/06/11(水) 19:22:51

    凪が、斬鉄の背後から静かに前に出る。
    だがその歩みに迷いはない。


    凪「……わかってる。“レオの顔”をしてるからって、躊躇なんてしないよ」

    その言葉に応えるように、凪の腕が振るわれる。

    その一蹴は──淡々と、正確に、“何者か”の面を打ち砕いた。


    斬鉄「ナイス凪!」

    凪「斬鉄のフォローがあったからだよ」


    凛「……ッ」

    迫る“烏旅人の顔”に、凛は無意識に足を止めた。
    その瞬間だった──


    「……凛、そんな顔すんなや……お前に似合わへんぞ」

    “旅人の声”でそう囁かれ、凛の呼吸が一拍、遅れた。


    凛「──ちっ、紛らわしい真似しやがって……!」

    拳は振るわれたが、模倣体はそれをするりと避ける。凛の目が鋭く細められた。

  • 120スレ主25/06/11(水) 19:29:53

    冴「……やっぱ、“本物”には及ばねえな」

    一言。
    そのまま冴の足が沈み込む──

    踏み込み、
    前蹴りで“潔の顔”を潰すように叩き込む。


    冴「壊れかけの芝居なんざ、見たくもねぇって言ってんだろ」

    振り抜いた直後、
    間髪入れずに肘を返すように突き立てる。


    「違う、違う、違う……」

    歪んだ呻き声が、
    今度は“二子一揮”の声に重なった。

  • 121スレ主25/06/11(水) 19:32:29

    斬鉄は、ゆっくりと一歩前に出る。


    斬鉄「……お前、二子にちゃんと許可とったのか?」

    模倣体がにやりと嗤うが、
    その瞬間、斬鉄の足が疾風のように踏み込んだ。

    無駄な構えはない。
    ただ一歩、滑らせるように接近し──

    腰をひねり込むような正拳突き。

    打撃が怪異の胸元に深く食い込み、
    内側の“何か”がぐにゃりと歪む。


    斬鉄「お前……中身、空っぽだな」

    拳を引きながら、ぶれない視線で相手を見据える。
    その一撃に、余計な虚勢も誇示もない。

    ただ、「倒す」という実感だけが残っていた。

  • 122スレ主25/06/11(水) 19:33:49

    それは、形状を保てなくなりつつある。


    だが、まだ終わってはいない──

    歪んだ意識の残滓が、次なる攻撃を試みようとしていた。



    【地下室:医療技術研究室】《精神融合実験体:S-V2》

    (9回攻撃成功で討伐完了/80以上で回避成功)

    千切:dice1d110=26 (26)

    凪:dice1d110=7 (7)

    凛:dice1d110=60 (60)

    冴:dice1d110=60 (60)

    斬鉄:自動成功

    ※S-V2の有力情報入手:+10補正

    ※100特典:+30補正

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 123二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 19:44:03

    斬鉄安価取ったものです
    凪と斬鉄の共闘も斬鉄単騎の活躍もどっちもみれてとても嬉しいです!かっこよすぎる大興奮!!

  • 124スレ主25/06/11(水) 19:51:10

    >>123 その節はありがとうございました!!斬鉄のかっこいい所を描写出来るように引き続き頑張ります!凪と斬鉄が話してる描写を書くの、とっても楽しいです!

  • 125スレ主25/06/11(水) 19:56:58

    【回避開始】10:00
    【《レムナント・チャーム》使用により、千切の失敗時のSAN値を最大限無効化】
    【千切豹馬:SAN値-1(22→21)】
    【千切の固有能力:疾風の破片──発動により、凪の失敗を成功に変換】


    凛が背後の気配に気づき、すかさず身を引く。


    凛「……やる気なら、全力で来いよ」

    模倣体が手を伸ばすが、
    凛の動きはそれを読んでいたかのように俊敏だった。

    視線を逸らさず、冷ややかな隙を狙って回避する。


    冴は怪異の挙動を観察しながら、冷静に動いた。


    冴「見えてる。……それじゃ、届かねぇよ」

    虚を突くような身の捌きで、
    紙一重の間合いを抜ける。

  • 126スレ主25/06/11(水) 20:01:54

    斬鉄は口を噤んだまま、怪異の動きを一度見ると──

    足元の床を蹴るようにして、静かに一歩。
    まるで“影”のような回避。


    斬鉄「遅い、そんなんじゃブルーロックで生き残れないぞ」

    その声は低く、怪異の手が空を切った。


    しかし、千切は──

    異様な“重み”のある気配を背に感じ、
    反射的に振り返る。


    千切「っ、来る──!」

    瞬間、冴が投げた《レムナント・チャーム》が千切の胸元へ。

    金属片が軽く弾けるように微光を放ち、
    脳内に波紋のような“静けさ”が広がった。

    だが完全には届かず、
    千切は思わず壁際までよろめく。


    千切「うわっ……っはぁ……セーフ……」

  • 127スレ主25/06/11(水) 20:05:25

    一方、凪は回避のタイミングが一瞬遅れたが──

    その背後、空間が切り裂かれるようにして、
    “赤い影”が飛び出した。


    豹──それは、炎を纏ったような疾風の獣。

    千切の背後から飛び出したそれが、
    凪の服を咥えたまま後方へ跳躍する。


    凪「……わっ」

    千切「ッ……!やった!!俺も豹出せた!!」

    千切が目を見開き、喜びに満ちた声を上げた。

    凪は無表情のまま、咥えられた服を直す。


    凪「……まあ、助かった。ありがと、千切、赤豹」

  • 128スレ主25/06/11(水) 20:06:37

    空間を覆う“重苦しさ”が、

    次第に圧へと変わっていく。


    模倣体はなおも“誰か”の形を模して、

    語りかけようとしてくる。


    だが、それに応じる余地など、誰にもなかった。


    5人──攻撃の構えは、すでに整っていた。

    空気を裂くように──一斉の踏み込みが始まる。



    【地下室:医療技術研究室】《精神融合実験体:S-V2》

    (9回攻撃成功で討伐完了/80以上で攻撃成功)

    千切:dice1d110=46 (46)

    凪:dice1d110=110 (110)

    凛:dice1d110=69 (69)

    冴:dice1d110=69 (69)

    斬鉄:自動成功

    ※S-V2の有力情報入手:+10補正

    ※100特典:+20補正

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 129スレ主25/06/11(水) 20:16:55

    【戦闘開始:2回目】10:00
    【凪誠士郎:最高値による斬鉄への支援要請成立──千切の失敗を成功に変換】


    模倣体──“S-V2”は、再び揺らぐ。

    四人の精神が臨界へと迫るなか、
    “誰かの声”でこちらに語りかけようとする。

    だが、その声はもう届かない。


    凛が前に出る。


    凛「もう黙れって言ってんだよ……その顔で喋るな」

    一瞬の踏み込み。

    前方に出た凛は、
    強烈な回し蹴りを模倣体の“顔”へと叩き込んだ。

    歪んだ仮面が軋む──だがまだ、止まらない。

  • 130スレ主25/06/11(水) 20:18:28

    冴が続く。


    冴「演技が過ぎる、“誰かのフリ”してんなら、ちゃんとやれよ」

    踏み込んだ足で腹部を撃ち抜くように蹴り上げ、振り返りざまの正拳突きで二撃目。

    模倣体の体躯がぶれると同時に、
    ノイズのような“記憶の声”が空間に溢れた。


    凪は、冴の斜め後ろからゆるく歩み寄る。


    凪「めんどくさいなあ、そういう歪んだのって……」

    言葉の余韻と同時に、拳が振るわれる。

    静かに、それでいて鋭く模倣体の“肩”を砕くような打撃──その力は、最初から斬るような意志を孕んでいた。


    斬鉄が、凪の横に滑り込む。


    斬鉄「お前は……何者のつもりでそこにいるんだ」

    重く低い声と共に、肘打ち一閃。

    まるで見えていたかのように、模倣体の“動き出し”を潰す一撃。
    そこには彼なりの“礼儀”が込められていた。

  • 131スレ主25/06/11(水) 20:20:51

    ……そして、千切はわずかに遅れて拳を構える──

    だが、その一瞬。

    凪が、ふっと斬鉄を振り返る。


    凪「斬鉄、千切のフォローよろしく」

    斬鉄「ああ、任せとけ!」

    その言葉と同時、千切の背後を走った稲妻──
    斬鉄の蹴りが、模倣体の足元を刈る。

    足場を失ったその瞬間、千切が走り抜けた。


    千切「っし、トドメいくぞ!!!」

    跳躍と同時に、全身のバネを活かした渾身の踵落としが、模倣体の頭部に直撃した。


    千切「ぶっ飛べぇぇぇぇぇ!!!」

    仮面が砕けた瞬間、空間そのものが揺れる──。


    だが、討伐には至らず、模倣体の“仮面”の一部が砕けただけ。

    その奥から現れた“何か”が、ふたたび動き始めていた。

  • 132スレ主25/06/11(水) 20:23:25

    声を出さず、ただ口だけが動いている。


    ……だが、耳にこびりつくように、

    確かにその“声”だけは聞こえてきた。



    「だいじょうぶ、もう──おしまいなんだよ」



    【地下室:医療技術研究室】《精神融合実験体:S-V2》

    (3回攻撃成功で討伐完了/80以上で回避成功)

    千切:dice1d110=19 (19)

    凪:dice1d110=70 (70)

    凛:dice1d110=8 (8)

    冴:dice1d110=15 (15)

    斬鉄:自動成功

    ※S-V2の有力情報入手:+10補正

    ※100特典:+20補正

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 133スレ主25/06/11(水) 20:30:51

    【回避開始】10:00
    【《ミラージュ・スティグマ》使用により、全員回避成功】


    一瞬の静寂。

    模倣体──S-V2の“仮面”が、
    亀裂の奥からじわりと“別の顔”を滲ませる。

    その顔は、かつての誰か──
    彼らの心に残された記憶の中の“最も親しい存在”。


    凛「……やめろ」

    冴「……違う、そいつは──」

    千切「っ、ち、違う……そんな顔すんなよ…」


    錯乱する視界。
    迫る幻影。


    その時──

    凪が静かに、
    ポーチから一本のスティックを取り出した。

  • 134スレ主25/06/11(水) 20:39:07

    凪「……仕方ない、か」

    細長い金属棒。

    凪がそれを軽く振ると、
    空間に“光の残像”が走った。

    一瞬の揺らぎ。
    現実の縁取りが歪み、怪異の姿が“ぼやけて消え”──攻撃の軌道が完全に遮断される。


    凪「今なら避けられる。……行って」


    幻影の“攻撃”が空を裂いたその瞬間、
    千切たちは正確に一歩外れる。

    まるで、はじめから、
    “そこには誰もいなかった”かのように。


    赤豹の気配が一瞬、背後で咆哮した気がした。


    千切「……今のが“本物”なら、俺……負けてたな」

    自嘲気味に笑いつつ、視線を前へ。

  • 135スレ主25/06/11(水) 20:40:32

    凛「くそ……まだ、見えてんのかよ、俺……!」

    息を整える。
    揺れた心を押し殺し、両手を握りしめる。


    冴「……フッ。ああいう顔、してたこともあったな……」

    ふっと細く笑い、ただ静かに視線を戻す。


    斬鉄はと言うと──


    斬鉄「回避とは、空間との対話だ……」

    意味の分からないことを呟きながら、
    完璧な体捌きで怪異の腕を躱していた。

  • 136スレ主25/06/11(水) 20:41:51

    幻影が霧散する。


    S-V2がまた、新たな“顔”を生み出そうと、

    仮面の奥で顔筋を引きつらせる。


    笑顔と泣き顔が交錯し、

    何人分もの“顔”が順番に前に出てこようとする──



    冴「──今だ。壊せ」



    【地下室:医療技術研究室】《精神融合実験体:S-V2》

    (3回攻撃成功で討伐完了/80以上で攻撃成功)

    千切:dice1d110=36 (36)

    凪:dice1d110=39 (39)

    凛:dice1d110=57 (57)

    冴:dice1d110=38 (38)

    斬鉄:自動成功

    ※S-V2の有力情報入手:+10補正

    ※100特典:+20補正

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 137スレ主25/06/11(水) 20:50:18

    【戦闘開始:3回目】10:00


    ──仮面が、割れる。

    その瞬間、S-V2の“仮面”の奥から浮かび上がったのは、まるで彼らの記憶を溶かし混ぜたような、ぐちゃぐちゃの“顔”。

    悲しみ、怒り、愛情、憎悪……
    すべてが否応なく混ざり合い、
    もう“誰”とも呼べない何か。


    冴「……お前、最初から誰でもなかったな」

    唇に笑みを刻むその“もの”を、
    冴が一歩で詰めて殴りつけた。

    無駄のない拳の軌道。
    狙いは中心──存在の“核”。


    ──ドンッ。

    呻くような音とともに、S-V2の身体がぐらついた。

    “仮面”が完全に割れ落ち、
    その背後から現れる、剥き出しの精神データの断層。

    声なき断末魔が、床の光を乱す。

  • 138スレ主25/06/11(水) 20:51:45

    凛「……終わりだ」

    もう“演じる誰か”は残っていない。

    凛が最後に見たのは、自分の顔を模した──
    それを歪めたような影。

    構わず、その胸へと拳を突き出した。


    パァン──。

    粉砕音。
    影の身体が淡く崩れていく。


    そして。


    凪「……斬鉄、“トドメ”刺していいよ。かっこよく決めちゃって」

    軽く肩をすくめてそう言った凪に、
    斬鉄は小さく頷いた。

  • 139スレ主25/06/11(水) 20:53:43

    斬鉄「俺の蹴りは──地球をひと蹴りできる」

    なぜか誇らしげに呟きながら、一歩踏み込む。


    ──ズドォッ!!

    重低音。
    全身を回転させて放ったハイキックが、
    S-V2の残滓に叩き込まれた。

    それは──最後の“模倣”を、吹き飛ばす一撃。


    断末魔はなかった。
    ただ、そこにいた“誰でもないもの”は、
    跡形もなく散っていった。


    静寂。

    室内に残るのは、ただ彼ら自身の呼吸と、壊れかけたモニターの軋みだけだった。


    斬鉄「……これが、俺の“フィニッシュワーク”……」

    ドヤ顔で言う斬鉄を、凪は親指を立てて褒めた。


    凪「ぐっしょぶ、斬鉄」

  • 140スレ主25/06/11(水) 21:00:09

    戦闘が終わり、静寂が戻る。

    残響のように残っていたS-V2の気配も、
    今はもう、完全に消えていた。


    崩れかけた床の隅に、金属の光が覗いている。

    冴がゆっくりと近づき、それを拾い上げる。

    古びた金属の鍵──
    その表面には、かすれた文字が刻まれていた。


    ──《精神融合室》


    冴「……次の扉、だな」

    その声に、背後から緩やかな気配が近づく。

    斬鉄だった。
    まだ余韻の残る蹴り足を下ろし、
    ぐっと拳を握って満足そうに息を吐く。

  • 141スレ主25/06/11(水) 21:02:40

    斬鉄「このくらいは余裕だな。けど……そろそろ、俺の出番も終わりらしい」

    彼の身体が、ゆっくりと光に還ろうとしていた。

    廃病院の空間とは馴染まぬ、柔らかな蒼の残光。
    その輪郭が徐々に淡くなる。


    凪「……ありがと、斬鉄。助かった」

    凛「……ふん、お前の蹴り、まあまあだったな」

    冴「いい仕事だった。“地球ひと蹴り”は覚えとく」

    千切「なあ斬鉄!次は俺と1on1で勝負しようぜ!」


    斬鉄はふっと笑い、片手をゆるく挙げて振った。


    斬鉄「じゃあな、お前たち。あと少しみたいだから……頑張れよー!」

    蒼い光が風に舞い、姿が空気に溶けていく。

    まるで、“味方”という記憶だけを残して──。

  • 142スレ主25/06/11(水) 21:26:21

    その場に残ったのは、無機質な鍵ひとつ。

    けれど、それは次なる扉──
    “精神融合室”へ進むための、確かな突破口だった。

    冴が鍵をポーチに収めると、再び静寂が戻る。


    千切「よし、行こうぜ!もうちょっとだろ?」

    その言葉に、誰もが頷いた。

    彼らの背中には、
    斬鉄の声が今も残響のように響いていた。

  • 143二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 21:32:03

    斬鉄!ありがとう斬鉄!!かっこよかったよ!!
    このあと氷織や國神きてくれるのかな楽しみだ!

  • 144二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 03:02:22

    ⭐︎

  • 145スレ主25/06/12(木) 07:52:12

    >>143 彼らしい戦闘を見せてくれましたね!氷織は次の部屋、國神は最終戦の予定です!お楽しみに!

    >>144 保守ありがとうございます!


    おはようございます。結構な体調不良のため、本日更新があまり出来ないかもしれません。無理のない範囲で更新しますので、よろしくお願いします。

  • 146二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 16:07:20

    いつもお疲れ様です
    スレ主の体調が第一なので無理せずゆっくり休んでくださいね!
    猫たちが活躍してて緊迫した場面でもかわいくてほのぼのします
    ひおりんと國神の助っ人も楽しみにしてますね!

  • 147スレ主25/06/12(木) 16:07:50

    保守、すみません色々バタついております。

  • 148スレ主25/06/12(木) 18:34:10

    >>146 ありがとうございます!!猫たち、この物語だけだと寂しいので、猫が登場する機会も今後設けようかな…。助っ人かっこよく書けるように頑張ります!


    朝からずっと病院漬けでしたが、解放されましたので、のんびり更新再開します。応援、保守などありがとうございます!!

  • 149スレ主25/06/12(木) 19:00:15

    【玲王の固有能力:励まし──発動】
    【戦闘終了後の各SAN値-1を帳消し】


    空気の密度が変わる。

    まるで、地下そのものが、精神を削る装置かのように──。


    冴「……来るぞ」

    凛「またか……」

    千切「っ……ちょ、なんかまたズキって……!」

    凪「……あー、これ、やだな。気分、下がる」


    その時だった。


    「…………にゃぁ」

    静かに、だが確かに聞こえた。


    レオだ。

    凪の足元に佇む、紫の毛並みと瞳を持つ猫が、
    彼らをじっと見上げていた。

  • 150スレ主25/06/12(木) 19:01:30

    瞬間。

    周囲の空気が、やわらかくなった。
    まるで誰かが、そっと手を差し伸べてくれたかのような──そんな温かさ。


    凪「……レオ?」

    彼がそう呟いた瞬間、猫のレオがふっと目を細めた。
    その身体から、微かにきらめく紫の光が放たれる。

    その光が、4人それぞれの胸元を一度照らすように通過する──。


    冴「……この光は」

    凛「……勝手に励ましてんじゃねーよ。…………チッ、まあ、……助かった」

    千切「うわ、今の!今の、なんか、すげーぽかぽかしてた!!」

    凪「…………うん。レオ、ありがと」


    静かに、時計の数字が1つ進んだ。

    【10:00】

    時間は進む。

    だが、それに負けない温もりが、確かに今、彼らの心に差していた。

  • 151スレ主25/06/12(木) 19:12:39

    無音に近い空間で、
    誰かの靴音が、かすかに反響する。

    冴が最後に視線を巡らせ、
    医療技術研究室の扉に手をかけた。


    冴「……出るぞ」

    ギィ……と、軋む音。
    その音に、背後の空間が名残惜しそうに鳴いた気がしたが、誰も振り返らなかった。

    廊下へ戻ると、
    ほんのわずかに空気が軽くなった気がする。

    だが──それは、嵐の前の静けさだった。


    廊下の先。

    薄暗がりの中、微かに見える鉄扉があった。

  • 152スレ主25/06/12(木) 19:19:27

    凛「……あれが、次の部屋か」

    千切「名前、なんだっけか……」

    凪が立ち止まり、冴の手元を見る。
    その手には、古びた金属の鍵が握られていた。

    黒ずんだ鍵の表面には、かすれた文字──


    ──《精神融合室》


    凪「……名前だけで不穏なんだけど」

    冴「まあ、行くしかねえ。……開けるぞ」


    鍵が差し込まれ、カチリと音を立てた。


    ゆっくりと、冷たい金属の扉が開いていく──

    暗く、重たい空気が、その隙間から這い出してくるかのように、彼らを迎えようとしていた。

  • 153スレ主25/06/12(木) 19:37:44

    開いた扉の向こう──

    まず目に飛び込んできたのは、
    空間そのものの歪みだった。

    壁も天井も、まるで誰かの精神が滲んだかのように、微かに“揺れている”。

    ほんの一歩、足を踏み入れた瞬間。


    凪「……変な感じ。身体の“内側”が、さっきからずっと揺れてるみたい」

    冴「ここ……完全に“まとも”じゃないな」

    部屋の中心に鎮座するのは、巨大な装置だった。

    コードが絡みつき、脳波計のようなパネルが幾重にも設置されたそれは、医療機器というには、あまりに“異常”だ。


    凛「……これ、何人分だよ……」

    機械の上には、複数の“人格記録ユニット”が無理やり接続されていた。

    何本もの記憶チューブが絡み合い、その先に繋がる端末には、焼け焦げた“名前ラベル”がいくつも貼られている。


    『No.12』『No.16』『No.17』──

    そして、途中で破られたような札。

  • 154スレ主25/06/12(木) 19:42:44

    千切「……混ぜられた……ってことか、人格……」

    脳の断面図、思考波形の乱れ、
    無理に統合された神経網のイメージ図──
    壁面には、それらを模した式図や手書きの数式がびっしりと描かれていた。

    そして部屋の奥から、低く共鳴するようなノイズが、まるで誰かの呻き声のように、途切れ途切れに響く。


    猫たちは、誰ひとりとして中に踏み込もうとはしなかった。

    ヨイチもレオもタビトもイッキも、廊下に留まり、低く唸るように「フーッ……」と鳴く。


    凛「……この部屋、“まだ誰かいる”みたいだな」

    冴「……だが、決めた。ここで終わらせる」

    空間に、微かに“誰かの思念”が漂っている──

    それは、かつてここに取り込まれた誰かの記憶か。
    それとも、これから融合されるはずだった誰かの、断末魔か。

    空気は重く、沈黙は濃密だ。
    だが、その中心には明確な“意思”がある。

    融合──それは、ただの治療でも研究でもない。
    明確な意志を持った“誰か”の、再生と支配のプロセス。

    今、この空間に残された“痕跡”が、それを雄弁に物語っていた。

  • 155スレ主25/06/12(木) 19:47:55

    【地下室:精神融合室エリア】


    ①融合装置の主制御端末
    焼け焦げているが、一部のログは復旧可能かもしれない(異常発生リスク特大)

    ②脳波記録装置と精神リンク管
    絡み合うチューブと、接続された記憶装置が並ぶ(異常発生リスク特大)

    ③壁面の式図と記号列
    誰かの手書きによる、思考と構造に関する実験式(異常発生リスク特大)

    ④奥の観察ブースと記録映像装置
    すでに誰もいないが、最後の被験者記録が残されている可能性(異常発生リスク特大)

  • 156スレ主25/06/12(木) 19:55:09

    【地下室:精神融合室探索:①融合装置の主制御端末・糸師冴】
    【探索開始】10:00


    重い沈黙が支配する空間の中、
    冴は真っ直ぐに部屋の中心──かつて精神融合という非倫理的な実験を担っていた中枢装置へと歩み寄った。

    焼け焦げた鉄の匂い。
    熱による膨張と収縮を繰り返した金属部が歪み、数本のケーブルが断裂して天井から垂れ下がっている。


    冴「……なるほど。これは“壊れた”んじゃねぇ。“壊した”んだ」

    その口調はいつも通り淡々としているが、
    視線の奥は鋭く光っていた。

    中央のパネルは煤に覆われ、
    表示の多くは死んでいる。

    だが──その隅に、僅かに点滅するインジケータ。
    復旧可能なログが、まだ残されている可能性がある。

  • 157スレ主25/06/12(木) 19:58:30

    冴は無言で腰を落とし、

    指先で慎重に破損部の埃を払った。


    足元には焼け焦げた医師のバッジが転がっており、

    その裏に「LINK LOG」の文字。



    冴「……行くぞ」


    目を細め、

    かすかに起動しかけた端末へと手を伸ばした──



    異常発生リスク特大

    dice1d110=102 (102)

    (1〜50:大失敗 51〜80:失敗)

    (81〜100:成功 101〜110:大成功)

    ※特典はダイス値に応じて使用可能

  • 158スレ主25/06/12(木) 20:11:30

    【探索大成功】10:00
    【SAN値-1:23→22】


    焼け焦げた端末に、冴の指がそっと触れた瞬間──
    機器内部でかすかな“パルス”が走った。

    「ピッ」という乾いた音と共に、
    中央の表示パネルがゆっくりと明滅を始める。


    ──『制御ログ・隔離モード:強制開示プロトコル開始』


    冴「……へえ、まだ“生きてる”のか」

    静かに呟いた声を背に、端末は内部データの展開を始めた。

    不規則に歪んだ文字列。
    けれど──そこには、確かに《精神の永続化》に関する核心が記されていた。


    《LINK LOG:永続接続/対象“院長”》

    『対象“院長”の肉体消失を確認──精神構造、装置に完全接続』
    『思考・感情・記憶の断片を、外部ノードに多層バックアップ』
    『融合用中枢ユニットにて“感応システム”を継続稼働中』
    『医療的意味での“死”を超えた存在:現在は“記録意識体”』
    『消滅条件:①感応ノードの物理破壊 ②精神接続階層の遮断』
    『──彼は今も、ここで“記録され続けている”』

  • 159スレ主25/06/12(木) 20:22:45

    冴「……なるほど。“記録”の中で生きてるってワケか」

    その目に浮かんだのは、驚愕でも恐怖でもない。
    ただ淡々とした理解。

    まるで、すでに“知っていた”かのような──


    そして、同時に装置内のロックボックスが「カチ」と音を立てて開いた。

    中には、かすかに光を反射する円形の装置。


    冴「……これは。お前の“声”ってことなのか」

    無造作に装置を拾い、ポケットにしまう。
    その一連の動作に、まるで迷いはない。

  • 160スレ主25/06/12(木) 20:40:00

    だが──その時だった。

    背後から漂う、ひどく冷たい“視線”の感覚。

    床を伝って、部屋の奥から這い寄るような“気配”に、冴の指先がかすかに震えた。


    冴「……チッ。わかってる。“まだ終わっちゃいねぇ”んだろ」

    冴は静かにその場を離れながら、
    自身の胸元を一度だけ強く握る。

    そして、壁際に控えていた“イッキ”が控えめに「にー……」と鳴いた。

    まるで冴の疲弊に気づいたかのように。


    冴「……ありがとな」

    声は静かに、だが確かに温かく落ち着いていた。


    ■入手アイテム
    ・《エクリプス・レゾナンス》×1:戦闘中、1回だけ【味方全体の攻撃ダイスに+20補正】を付与する。

  • 161スレ主25/06/12(木) 20:52:15

    短いですが、本日の更新はここまでです。アイテム等も十分貯まりましたので、きっと奪還は問題なくできるでしょう。また明日もよろしくお願いします。

  • 162二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 22:10:57

    兄ちゃさすが!!

    お忙しい中、今日も更新ありがとうございました!
    続き楽しみにしています!

  • 163二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 02:18:16

    やはり兄ちゃはつおい
    明日も楽しみにしてます!

スレッドは6/13 12:18頃に落ちます

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