SS:サイレンススズカを甘く見ていたかもしれない

1二次元好きの匿名さん25/06/18(水) 22:40:24

もうかれこれ二時間は経つだろうか、サイレンススズカに押し倒されしがみ付かれている。
手だけではなく脚すらも自分に絡み付けて、胸に顔を埋めながら逃すまいと拘束している。
あまりにも動かないので眠ったかと思い、目線をずらせばバッチリとスズカと目が合う。
ほんの少し目に感情が浮かぶと体勢を少し変えて、今度は首元に顔を埋めて来る。
海外での指導の為の短期資格を取る為にニ週間ほどアメリカにいたが、まさかこうなるとは思ってもいなかった。
意外と寂しがり屋のスズカのためにタイキシャトルやマチカネフクキタル、スペシャルウィークに頼んでいたがこの通りだ。
ペチペチと耳で顔を叩いたと思ったら、ぺたりと耳をたたむ。
頭を撫でろと言う事らしい、手を頭にやると自然と抱きしめるような体制になる。
ほんの少しスズカの力が強くなる、この薄い体のどこにこれほどの力があるのだろう。
ウマ娘の不思議に意識をやり、自分とは異なる鼓動を無視するように努める。
「トレーナーさん」
いつもより熱の籠った声、変なくすぐったさに顔が熱くなる。
思わず顔を背けると首に痛みが走る。
スズカが噛み付いている。
「トレーナーさん」
今度は顔を背けず彼女を見る。
気づけば彼女の艶やかな髪が周りの視界を覆っていた。
世界がスズカに塗りつぶされる。
諦めたように目を瞑れば首元や口に湿った何かが当たる。
「トレーナーさん」
しばらくして目を開ければほんの少し上気したスズカが自分から降りていた。
首元を触ると少し血が滲んでいた。

自分はきっとサイレンススズカを甘く見ていたかもしれない。