【閲覧注意】ここだけ全てを喪った

  • 1二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 21:52:27

    dice1d162=109 (109)

  • 2二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 21:53:32

    洒落にならん洒落にならん

  • 3二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 21:53:44

    カスミ……
    部員……
    温泉……

  • 4二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 22:47:43

    ─夢を見ていた。
    長く永く続く、痛く苦しく辛い夢。
    虚ろな気分で目を開けた私は、暫く見知らぬ天井を眺めていた。

    メグ「…ここは…?」
    看護師「あっ目が覚めたんですね!良かった…大丈夫ですか?自分の名前、わかりますか?」
    メグ「…下倉、メグ…」

    看護師からの問を受け、私は自分の名前を答えた。

    メグ「…あの、なんで私…ここに…?」
    看護師「…覚えてないんですね。…仕方ありません。一年近く眠っていたんですから」
    メグ「…え?」

    暫しの時間、その言葉が正しい意味を持つ言葉であると認識できなかった。

    一年近く…眠ってた?

    何か嫌な予感がする。寒気が身体中を駆け巡る。思い出せ、私は最後に何をしてた?そうだ、私は─

    メグ「…温泉開発部の、みんなは…?」
    看護師「………」

    その沈黙は、残酷な答えを伝えているかのように感じられた。

    看護師「…残念ですが、あの場から助けられたのは…あなただけです」

    …頭で思い浮かべた答えと、同じ回答が返ってきた。
    部長も、みんなも…いない?
    それを認識した瞬間、心にヒビが入るような音が聞こえた。

  • 5二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 22:49:03

    メグ「…お、温泉…は?」
    看護師「…お風呂、ですか?…残念ですが、その状態だと…」

    私の頭の中は一瞬のうちに疑問符で埋まった。
    その状態?どういうこと?

    看護師「…なんとか、助けることはできました。しかし、両足と左腕は…どうにもならず…」

    心のヒビが、更にその範囲を広げたように感じた。
    両足と左の腕に意識を集中してみると、そこに確かにあるようにも思える。しかし、同時にそこにはないようにも思えて─

    看護師「…義肢をつけてもらっています。慣れるまでは違和感があるかもしれませんが、きっとまた動かせるようになります。…ただ…お風呂には、基本的に入れなくなるかと…」

    絶望。
    メグの心を、その二文字が襲う。

    メグ「あ、あぁ…!」
    看護師「メグさん…!」
    メグ「あああああぁぁぁぁァァァァァァァァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ッッッ!!!!!」
    看護師「メグさん!落ち着いてください、メグさんッ!」

    なんだよ。なんなんだよ。
    カスミ部長でも、ヒナ委員長でもいい。
    誰でもいい、誰でもいいから。
    これは夢だと、笑ってよ。


    よくわかりませんがこういうことでしょうか?
    ひとまずこれだけ置いておきます

  • 6二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 22:50:15

    おのれ雷帝!!(あてつけ)

  • 7二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 22:56:36

    >>4

    >>5

    かわい……間違えた可哀想

  • 8二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 23:33:01

    衝動のままに書いたはいいがバッドエンドは嫌だと感じている…なんとか救ってあげたい

  • 9二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 00:34:08

    テラー化してもおかしくないだろこれ

    …メグがテラー化したらどうなるんだ?

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 00:38:59

    殺してやるぞ地下生活者(残当なとばっちり)

  • 11二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 08:29:17

    保守

  • 12二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 08:53:36

    >>10

    前科者なせいで擁護不可能

  • 13二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 18:39:56

    >>4

    >>5

    書いた人間ですが救いが欲しいので拙作でしょうが色々書いていきます

    ひとまず保守代わりとして

  • 14二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 18:47:36

    殺してやるぞベアトリーチェ(残当なとばっちり)

  • 15二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 19:32:25

    >>10

    >>14

    でたな、ブルアカ2大カス野郎

  • 16二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 19:38:41

    ヒナも死んでそう

  • 17二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 19:45:39

    ま、今まで悪いことしてきたから自業自得だな。
    うちのシャーレに来ないし。

  • 18二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 19:46:42

    >>15

    親の顔より見た胸糞悪い大人

  • 19二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 22:33:21

    このレスは削除されています

  • 20二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 23:18:39

    ─目を覚ましてから、3ヶ月程の時間が流れた。初めは覚束無かった義肢の扱いも、今となってはかつての自分の手足と同じように扱える。これなら銃撃戦も問題なくこなせそうだ。

    メグ「…うん、大丈夫っぽい。ありがとうハナエ」
    ハナエ「これくらい当然のことです!」

    私を助けてくれたのはトリニティの救護騎士団所属だった『朝顔ハナエ』。この1年と3ヶ月、彼女にはとてもお世話になってしまった。この身体になってから温泉はおろかシャワーも浴びれなくなった私の体を拭いてくれたりもしてくれた。本当に感謝しかない。

    メグ「…よし、それじゃ他の生存者を探しに行こっか」
    ハナエ「はい!」

    カスミ部長も部員のみんなも、大好きだった温泉も…何もかも喪ってしまった。だからこそ私はまだ残っているものが何処かにないかと、キヴォトスを探し回ることにした。

    ─探し回ること9ヶ月…結果として、何かを見つけることはできなかった。
    ゲヘナは見るも無惨な状態で、記憶の中の光景が嘘のようにも感じられた。生き残った人は誰もいないだろうことは、その光景だけで十分わかった。
    他の場所も言わずもがなだ。どうやら私が眠ってしまったあの日に…このキヴォトスは滅んでしまったのだろう。この9ヶ月…いや2年もの間ずっとついてきていたハナエは、文句の1つも言わないどころか、私のことを気にかけてくれている。今の私を心配しても、何も返せやしないのにね。

    メグ「…?…なんだろ、アレ?」

    ふと視界に見覚えのないものが映った。遺跡のようにも洞窟のようにもとれるそれは、ただそこにあるだけのはずなのに、異様な存在感を放っていた。

    ハナエ「…なんでしょうか、これ…」
    メグ「………」

    私の本能は、警鐘を鳴らしていた。『やめておけ』と、そんな声が脳内に響く。しかし今更何が起ころうと、何も怖くない。私にはもう、何も残っていないのだから。

    臆せず1歩踏み出し、謎の建造物の中に足を踏み入れる。ハナエの引き止める声も気にせず、奥へ奥へと進んでいく。中は明かりのない真っ暗闇。それでも道は真っ直ぐなようだ。2人分の足音が響く穴の中を、私は歩いていく。
    ─そこから暫く歩くと仄かな光が見えてきた。進む事に光は少しづつ強くなっていき、やがて私は外へ出た。

    …目の前に広がる光景に、私は目を疑った。そこにあったのは、もう喪われたはずの…あの頃のキヴォトスだった。

  • 21二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 01:39:40

    2人の服装について
    メグ:義肢を隠すため足はパンツスーツとブーツ、左手にはグローブを嵌めて腰に巻いていたコートを
    しっかりと着ている(ボタンは留めてない)。上の白いタンクトップやメグマパワー!及びそれ用のガスボンベなどはそのまま。

    ハナエ:特に変わらず。敢えて挙げるなら格好が少し大人びている。

    Q.何故ハナエ?
    A.看護師の口調から逆算。後トリニティの子と絡ませたかった。

  • 22二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 07:01:19

    「いらっしゃいませー!出来たてだよー!」

    自分たちの歩いてきたあの世界が嘘に感じられるほど、平和な世界がそこには広がっていた。

    メグ「ここ、確か百鬼夜行連合学園…だったっけ?」
    ハナエ「そうですね、どうやら今お祭りの真っ最中らしいですよ!」

    賑やかな街並み、楽しげな声…それに包まれていると、どこか暗い感情を覚えてしまう。かつての自分なら、抱かなかったであろう…そんな感情を。

    ハナエ「あ!見てください!お面がありますよ!」

    物思いにふけっていると、ハナエからそう声を掛けられる。どうやらそこはお面屋のようで、色々な種類のお面が並べられていた。

    「いらっしゃい!君たち、百鬼夜行の生徒じゃないでしょ?」
    メグ「…まぁ、そうだね」
    「百鬼夜行のお祭りといえばお面だよ!どうだい?お友達とお揃いってのもありだよ!」

    お面屋にそう促され、私はポケットを弄る。
    お金は持っている。お面を買うだけのお金自体はあるけど…。

    ハナエ「メグさん!私これ欲しいです!お揃いにしましょう?」

    ハナエにそう促される。…まぁどうせ大した金額でもないしいっか。

    「ありがとねー!」

    店主は活き活きとした声を発する。私は少し歩いて人混みとは無縁の場所へとやってきた。

  • 23二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 13:13:07

    保守

  • 24二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 21:30:24

    ハナエ「ここから先、私たちはこのお面を被って行動しましょう」
    メグ「え?なんで?」

    ハナエの唐突な発案に、私は首を傾げた。

    ハナエ「…ここが何処かはわかりませんが…この世界が過去のキヴォトスだとするならば、この世界には過去の私たちがいることになります。もしもこの世界の私たちと出会ってしまったら、大きな騒ぎになりそうなので…」
    メグ「なるほど…」

    単純にそこまでは及びがつかなかった。しかしこの世界の自分に迷惑をかけてしまっては、面倒なことになりそうなのは確かだ。

    メグ「わかった、そうしよっか」
    ハナエ「はい!」

    ─それにしても、これからどうしようか。
    あの謎の建造物は私が外に出た瞬間、跡形もなく消え去っていた。元の世界に帰る手段は、現状ないも同然だ。いっそこのままこの世界で生きるというのも─

    「…本当にそれでいいのですか?」

  • 25二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 21:36:41

    ハナエの心の中も悲惨なことになってそう
    キヴォトスが滅んだってことはゲヘナだけではなくトリニティも滅んだってことに…?

  • 26二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 21:37:28

    メグ「…?」

    何処かから声が聞こえた気がした。明らかにハナエの声ではない声だった。

    「この世界は、あなたの世界ではないのですよ?」

    心の中に話しかけられているような感覚。耳を塞ごうとも、その声は私の心に響いてくる。

    ハナエ「…メグさん?」

    隣から私を心配する声が聞こえる。それでも、その声は私の心を揺らしてくる。

    メグ「…だったら、どうすればいいのさ…!」
    「簡単です。あなたが全てを奪われたというのなら、またどこかから奪えばいいのです…。例えば、この世界から」
    メグ「………」
    「…自分は全てを喪ったのに、周りの人間は自分の幸せをひけらかす…先程のそんな光景に、悪感情を抱いたことは確かなことのはずですよ」
    メグ「…それは…そう、だけど…」
    「…ヒヒッ、であるならば…やることは1つのはず…!」
    メグ「………私、は…」

  • 27二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 21:39:12

    ハナエ「メグさんッ!!」

    必死に私を呼ぶその声が、私を現実へ引き戻した。

    ハナエ「…大丈夫ですか…?凄く怖い顔してましたよ?」
    メグ「…あ…ごめん、大丈夫だよ」

    …そうは言ったものの、メグの頭の中では先程の謎の声が発したとある言葉が何度も反唱されていた。

    『あなたが全てを奪われたというのなら、またどこかから奪えばいいのです』

    それが赦されるのなら、それしかないのかもしれないと…少しでも思ってしまう心があった。

  • 28二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 21:48:12

    >>25

    どっかで描写しますがハナエにはまだ残っているものがありますので全てを喪っているわけではありません

    後トリニティももちろん壊滅状態です

  • 29二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 21:53:24

    氏ね地下生活者

  • 30二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 22:04:21

    まぁこの笑い方はあいつだよなぁ...

  • 31二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 22:05:59

    どうする兄ちゃん、クロコる?クロコる?

  • 32二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 02:12:57

    保守ついでに

    1度とんでもない絶望をした為メグの性格や考え方が本編とは若干(もしかするとところどころデカイかも)異なってます

  • 33二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 09:07:31

    ─百鬼夜行連合学園から離れた2人は、トリニティの自治区にやってきていた。別に誰か会いたいとかそういった訳じゃない。ただ歩いていたら辿り着いただけだ。

    ハナエ「…久しぶりに見た気がします…」
    メグ「…だろうね」

    最後に見たのは恐らく2年前だろう…トリニティ総合学園の校舎を、ハナエは見つめている。…しかし、昔を懐かしんでばかりもいられない。

    私は寝床の確保に急いでいた。少なくとも拠点たとなる場所は必要不可欠だ。幸いお金は十二分にある。いざとなれば住処を売ってもらうこともできないわけではないはずだ。

    メグ「流石にこれは力づくでは難しいよねー…」

    そう考えたメグの脳内を、あの言葉が駆け巡る。

    『あなたが全てを奪われたというのなら、またどこかから奪えばいいのです』

    …その言葉は、何度否定しても頭の中に浮かび上がってくる。まるで、私自身がそれを望んでいるみたいな…。

    メグ「…そんなわけない」

    私は自分の心の中に響く言葉に、弱々しくそう返すことしか出来なかった。

  • 34二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 09:09:00

    ハナエ「…思ったんですけど、建物である必要はないんじゃないんでしょうか?」
    メグ「…どういうこと?」

    ハナエが指を差した先では装甲車両が売られていた。値段は高めだが、休める程度のスペースはありそうだ。それに、移動もかなり楽になる。…運転はあまりしたことがないが、まぁ大丈夫だろう。

    メグ「…今日はもう寝よっか。布団とかはないけど…」
    ハナエ「それならさっき買ってきましたよ!」

    いつの間に。とも思ったが車を実際に買うまで少し時間も空いていたし、その間に色々買ってくれたのだろう。
    …それにしても、どうして彼女は私にここまで尽くすのだろう。私から返せるものは何一つないし、今までだって何も返してないのに。

  • 35二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 14:22:50

    ─翌朝、腹ごしらえを済ませた私はシャーレへと向かっていた。ひとまず先生には自分たちのことを話しておいた方がいい、というハナエの提案あっての行動だ。
    アポは取れていない、というか取れるわけがないので取り合ってくれるかだけが不安だけど…そこはもうどうとでもなれと言う他ない。
    ひとまずシャーレへやってきた私たちは警備員にら先生に会いたいということを真正面から伝えてみる。しかし、仮面を被った不審者の要求など通してもらえるはずもない。

    ハナエ「…そんな気はしてましたけどね…」

    そうなるとこれからどうするか。何かいい方法は…。

    メグ「…先生に会えないなら、先生に会いに来てもらえばいいんじゃないかな?」
    ハナエ「え?」

    そうだ。これなら私の知ってる先生ならきっと来てくれるはずだ。

  • 36二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 19:42:17

    どのタイミングに戻ってきたのかな
    地下生活者が毒電波出しているからアビドス3章前かな?

    とりま地下生活者は氏 ね

  • 37二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 00:04:39

    というか別世界?から来たはずのメグの存在を即座に把握してるっぽい感じなのはどういうわけなんだろう

  • 38二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 05:27:29

    “…これで全部かな”
    ヒナ「お疲れ様、先生」

    シャーレでの仕事を終え、今日の当番である『空崎ヒナ』が労いの言葉を掛けてくる。

    “最近のゲヘナはどう?”
    ヒナ「そこまで大きな騒ぎは起こってないわ。何も起きてないわけじゃないけれど…」
    “あはは、まぁそうだろうね”
    ヒナ「私がいなくなった後のゲヘナ風紀委員会がどうなるかはわからないけれど…後輩に頼らないというのも危ういからね。ある程度は任せるつもりよ」

    そんな他愛もない話をしていると、外から何か騒ぎ声が聞こえてくる。なんだろうと思っていると次いで電話がかかってくる。

    キリノ「せ、先生!助けてください!」
    “どうしたの!?”
    キリノ「と、突然お面をつけた生徒が暴れ出して…」
    “お面ってことは…ワカモ?”
    キリノ「い、いえ…!服装からしてゲヘナの生徒のようなのですが…!」
    ヒナ「…はぁ…。後輩に任せっきりというわけにもいかないわね。私が行くわ」
    “…いや、私も行くよ”
    ヒナ「…わかったわ」
    “…キリノ、場所は?”
    キリノ「それが…シャーレの目の前でして…!」

    思わず二人して『え?』という素っ頓狂な声を出してしまった。

  • 39二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 13:42:21

    一方その頃、メグは─

    ハナエ「本当にこれで大丈夫なんでしょうかー!?」
    メグ「騒ぎが起これば先生は来るはずだよ」

    押し寄せるヴァルキューレの生徒たちを火炎放射で一掃していた。

    「あちちちちっ!!」
    「あいつ、強いぞ!?あんなもの背負ってるのに速いし!」

    メグマパワーを振るうメグはふと昔を懐かしむ。自由気ままに温泉を開発し、邪魔するものを撤去していたあの頃を。今となってはもう戻ってこない日々だ。あの頃に戻りたいとは、何度も思った。それが叶った結果が今なのかもしれないが、今のメグには、温泉開発に対する情熱はこれっぽっちも残されていない。それはきっと、あの日に全てなくしてしまったものだ。取り戻せるわけもない。

    メグ(…こんな体じゃ、温泉を楽しめないしね)
    ハナエ「…というかメグさん?こんな騒ぎを起こして、先生と話なんてできるんですか?シャーレの当番の人が、それを許すとは思えませんけど…」
    メグ「………」
    ハナエ「…メグさん?」
    メグ「…そこまで考えてなかった」

    危なかった。これがギャグ漫画だったなら勢いよくズッコケていたと思う。

    ハナエ「考え無しにあんな騒ぎを起こしたんですか!?」
    メグ「だってそれ以外に思いつかなかったし!」
    ハナエ「どうするんですか!これで当番が団長だったり…いや、この世界の私たちの可能性だってあるんですよ!?」
    メグ「お面つけてるからバレないよ、多分!」
    ハナエ「そういう問題じゃ…!」

    そんなやり取りをしていると、急激な寒気が全身を走る。直後、まるでビームのような勢いのマシンガンが発射される。それを躱して、攻撃がされた方向に目を向ける。

    ヒナ「…シャーレにまで来て、問題を起こさないでくれるかしら?」

  • 40二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 14:14:44

    二人は心の中で頭を抱えた。そっかー、今日の当番ヒナ委員長だったかー…。

    メグ「(…私にとっては、2年振りの再会だけど…昔を懐かしんじゃいられないか…)…シャーレの先生に会いたいんだ。」
    ヒナ「こんな騒ぎを起こしておいて、そんな要求が通ると思っているの?」
    ハナエ「ほら言ったじゃないですか…ヒナさん、すっごく怒ってますよ?」
    メグ「…先生が生徒を一人で戦わせるわけがない。少なくとも、私たちの知ってる先生はそうだったでしょ?」
    ハナエ「…そうですけど…それってつまり…」
    メグ「…先生が来るまで持ち堪える。それしかない」
    ハナエ「だ、大丈夫なんでしょうか…?」
    ヒナ「…どうやら協力者がいるようね。何処にいるのかまではわからないけど。…まぁいいわ。ひとまずあなたから大人しくしてもらう」

    直後向けられた銃口から無数の弾丸が発射される。停められていた車を盾にして、体勢を整え、一気に突っ込む。

    メグ(結局のところ、銃口のあるところからしか弾丸は出せない…!逃げたらその分攻撃範囲は広がる…なら、付かず離れずの距離を保って戦う!)

    銃口を避けるように動きながら接近戦を仕掛けにかかる。しかしメグの狙いを察知したヒナは即座に距離を取る。それを見てメグは予備の拳銃を二発撃ち込む。

    メグ「…さすがヒナ委員長…!」

    デストロイヤーの銃口が再びメグに向けられる。銃を撃った反動からか、一瞬回避行動が遅れてしまう。

    メグ「…あっ…!」
    ヒナ「…!?」

    結果として、まともに食らうことは避けられた。しかし、躱しきることは出来ず、義手が破壊されてしまう。

    メグ「…あちゃあ…これは少し厳しいかな。」
    ヒナ「…あなた、その腕…」
    “ヒナ!”

  • 41二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 14:16:28

    ヒナの名前を呼ぶ、聞き覚えのない声がする。

    ハナエ「あの人が先生…でしょうか?男の人なんですね…?」
    メグ「…そうだとしたら、この世界が私たちの世界とは違う世界だってことが証明されたってことでいいよね」
    ハナエ「…そうですね。それにしてもここからどうします?」
    “大丈夫?ヒナ”
    ヒナ「…えぇ、私は大丈夫。でも…」
    “…あ、あの子…腕が…!?”
    ヒナ「…義手だったみたい。…ゲヘナに義手の生徒なんて、いなかったと思うのだけれど…」

    先生はその生徒を見つめる。赤い髪に黒いコート、そして火炎放射器とガスボンベ…。

    “…んん?”
    ヒナ「…先生?」
    メグ「…先生、少しお時間くれないかな?話したいことがあって…」
    “え?私?”

    どうやら目的は私だったようだ。一体何の用なのだろう。

    ヒナ「待って先生、話を聞くのは捕まえてからでも遅くないわ」
    “…でもヒナ…あの子、なんだかメグに似てない?”
    ヒナ「…メグ?………確かに、特徴だけ見ればそうだけど…でもそれはそれでどうしてこんなことをしたのかって疑問が出てくるし、何より、あの腕は…」
    メグ「…それについても、話すつもりだから。…お願い」
    “………わかった”
    ヒナ「…先生…!」
    “…大丈夫だよ。あの子は悪い子じゃないはずだから”

    根拠はないが確信はあった。
    その言葉を聞いて、メグは胸を撫で下ろした。

  • 42二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 16:23:40

    セリフからもわかる通りメグたちの世界の先生は女先生です

  • 43二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 22:04:07

    義手はナノマシンとかで自己修復機能はないのかな

  • 44二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 06:02:11

    ヒナ「…ひとまず、二人とも…そのお面は外してくれないかしら?」

    シャーレのオフィス内、ヒナに促されて二人はつけていたお面を外す。

    “…うん、やっぱりメグだ。…そっちの子は…ハナエかな?”
    ハナエ「…はい、ごめんなさい。先生…どうしても先生と話をしたくて…」
    メグ「ハナエが謝る必要なんてないよ。提案したのも実行したのも私だし」
    ヒナ「…メグ…なのよね?あなた」
    メグ「…そうだよ。キミの知ってる私ではないけどね」

    ヒナがそう聞いた理由は、単純に自分の中の下倉メグと目の前にいる人間の印象が全く違って見えたからだ。
    ただ別世界から来た人間というのは、砂狼シロコの例もあるしありえない話ではない。…とすると、このメグたちの世界も…。

    “…ねぇメグ、どうしてこの世界に来たのか…教えてくれないかな?”
    メグ「…それは…実は、私もよくわからなくて…」
    “…じゃあ、わかることでいいから…何があったか話してほしい”
    ハナエ「…わかりました。本当にわかることだけ…ですが」

  • 45二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 15:17:46

    保守

  • 46二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 22:51:02

    保守

  • 47二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 03:11:25

    ─それは、唐突に起こったことでした。空が赤く染まり、黒い塔がキヴォトスの各地に落ちてきた…。
    それを発端として起こった世界の…キヴォトスの滅亡。話に聞いた限りですと、キヴォトスのすべてが崩壊すると言われていましたが、一部はなんとか残りました。…でも、人は殆どいなくなってしまって…。少なくとも、メグさんは私以外の生き残りを、あの世界で見たことはありません。生存者を探し回っていると、謎の建造物が出てきて…その出口をくぐったら、この世界でした─

    …ハナエから告げられたキヴォトスの滅亡。それは、あの時の虚妄のサンクトゥムが出現した時のそれだった。彼女たちの世界では、虚妄のサンクトゥムの攻略が出来なかった…と捉えてもいいのかもしれない。

    メグ「…私は…よく覚えてないんだよね。一年も眠ってたらしいし。でも多分、何かの爆発を巻き込まれたんだとは思う。…それの影響で、左腕と両足が使い物にならなくなったみたいでね…この通りだよ」

    メグはズボンの裾をまくって義足を露出させた。

    ヒナ「…悪かったわ、義手を壊しちゃって…」
    メグ「いやヒナ委員長が謝る必要なんてないよ。元はと言えば私が悪いんだし」
    ハナエ「…2年間使い古されてますしね。どこかのタイミングで修理や交換はする必要はあったと思います…」
    “んー…じゃあミレニアムにでも行く?”
    ヒナ「そうね。ミレニアムなら義肢作りもお手の物でしょうし」
    “決まりだね。それじゃあヒナ、私は二人を送っていくよ。今日はありがとう”
    ヒナ「…どういたしまして。…えっと、メグ?」
    メグ「?」
    ヒナ「………あまり無理はしないこと。何かあったら呼びなさい。連絡先、渡しておくから」
    メグ「………わかった。ありがとう」

    同学園内の生徒同士の会話もそこそこに。先生を引き連れて二人はミレニアムへと向かった。

  • 48二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 10:37:42

    保守

  • 49二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 18:55:53

    メグ「…ここがミレニアムサイエンススクール…」
    “話は通してあるからね。行こう”
    ハナエ「あ、待ってください」
    メグ「…どうしたの?」
    ハナエ「…私たち、そのままの名前だとまずいかなって…今更ですけど…」
    メグ「…今までは名乗る場面なかったから気にしてなかったけど…確かにそうかも」
    “じゃあ先にそっちから何とかしようか”

    そうして、二人はこの世界における偽名をつけることに。必要に応じてメグはホムラと名乗り、ハナエはベルと名乗ることとした。自分とは異なる名前を名乗るのは暫く慣れないかもしれないが、仕方ないことだと割り切ることにした。

    ウタハ「ようこそ先生、それに…はじめましてだね。私はエンジニア部の部長『白石ウタハ』だ」
    ベル「よろしくお願いします!」
    ウタハ「先生から事情は既に聞いているよ。義肢の作成…だったね」
    ホムラ「うん、お金はちょっと足りないかもしれないけど…」
    ウタハ「そこは気にしてくれなくていいさ。私たちも初めて作るものだから、少しワクワクしているしね」
    ベル「…普通の義肢でいいんですよ?」
    ウタハ「あぁわかっている。ここから応用させてコ〇ラのサイ〇ガンのような義肢も作れるだろうが、今回はあくまで普通の義肢を作るつもりだ。安心してほしい」
    ホムラ「…ちょっと興味あるかも」
    ベル「ダメですよ!?」

  • 50二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 19:22:38

    面白いな

  • 51二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 22:47:31

    義肢の作成をしてもらっている間、メグはふと疑問に思っていた事をハナエに聞いてみることにした。

    メグ「…そういえば今つけてる義肢って誰が作ったの?」
    ハナエ「それは…私もよくわからなくて。でも、団長が持ってきてくれたものなんです」
    メグ「団長?」
    ハナエ「救護騎士団の団長『蒼森ミネ』団長です」
    メグ「…私、会ってないんだけど…」
    ハナエ「…そうですね。救護が必要な人がいますと言って…メグさんを私に任せて…それっきり行方不明ですから」
    メグ「………そっか」

    メグは、それ以上聞かなかった。
    恐らくそのミネという人がハナエに私を任せたのは、ハナエなら大丈夫だと思ったからだろう。それでも、ハナエは不安だったはずだ。失踪がいつ頃の話だったのかはわからないが…ハナエは一年間、私を看てくれていた。
    私はハナエの頭を、優しく撫でた。

    ハナエ「な、なんですか?」
    メグ「…ありがとね、ハナエ」
    ハナエ「い、いきなりそんな…えへへ…」

    ハナエはふにゃりとした笑顔を見せる。とてもその顔を見ていると、なんだか心の中がポカポカとしてくるように思える。

  • 52二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 07:05:03

    ウタハ「…すまない、どれくらいかかるかの目安を伝え忘れていたね。多く見積って2日はかかると思う。無論、早め早めを心がけるが…」
    ホムラ「作ってくれるだけでもありがたいことだし、時間は気にしないよ」
    ウタハ「そう言ってくれると助かるよ。…できたら電話する。これ、私の連絡先」
    ベル「ありがとうございます、ウタハさん!」

    ひとまず私たちはミレニアムサイエンススクールを後にした。その夜、装甲車両内で寝転びながら、メグはとあることを考えていた。

    メグ(…この世界に私が来たのに、何か理由とかあったりするのかな?)

    あの謎の建造物…あれに足を踏み入れて、この世界にやってきた。あれがあそこにあったことに、何か意味があるとするなら…自分たちがこの世界に来たことに、何か理由があるとするならば…それは一体何なのだろうと、メグは考えを巡らせた。しかし、すぐに『よくわからない』という結論を出した。

    メグ(いずれにせよ、私たちの世界に帰るまではこのまま…)

    そう考えているとまたあの声が脳内に響いてきた。

    「帰って、どうするつもりです?」

  • 53二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 11:58:56

    メグ×ハナエ?そんなデータあるわけないだろ

  • 54二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 19:08:37

    メグ「…またこの声…」
    「あなたの世界のことはよく知りませんが…既に滅びた世界に帰って、あなたは何を為さるおつもりで?」
    メグ「…この世界の人間じゃない私が、この世界に長く居続けるわけにはいかないでしょ。それに、誰か知らないけど…言ってたよね?この世界は私の世界じゃないって」
    「えぇ、ですから…この世界をあなたの世界にすればいいのです」
    メグ「…何言ってるの?そんなことできるわけ…」
    「できる、としたら?どうします?」
    メグ「………」
    「…喪ったものは取り戻せない。であるならば、どこかから奪えばいい。これは前にも言っていたかと思いますが…あなたがあなたであるためには、必要なことかと」
    メグ「…そもそも、奪うってどうすればいいの」
    「おお、小生のキャンペーンに興味が出てきましたか?」
    メグ「…別に。ただ…」

    メグはハナエを一瞥する。

    メグ「…この世界で、生きていく為に必要なことがあるなら…私はなんだってやるつもり」
    「…ヒヒヒッ!では…またいずれ」
    メグ「…待った。結局あんたはなんなの?」
    「小生の名ですか?…そうですね…」
    地下生活者「地下生活者…とでもお呼びください…ヒヒッ!」

  • 55二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 19:54:50

    みんなー、地下生活者をしばきにいく準備できたー?

  • 56二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 20:01:59

    見ろ!邪悪な地下暮らしの外道が本性を現したぞ!!

  • 57二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 21:17:19

    ウタハ「…着け心地はどうだい?」
    ホムラ「…うん、問題ない。むしろ前のより動かしやすいかも」
    ウタハ「以前まで着けていた義肢と比べると、今回は君専用の調整を施してあるからね」
    ベル「…一応聞いておきますけど、変なものが出たりはしないですよね?」
    ウタハ「あぁ、そこは心配いらないよ。ビームや弾丸を発射したりはできないから安心してくれ」
    ベル「…それならいいですけど…」

    メグとハナエはウタハに礼を言って、ミレニアムを後にする。

    メグ「これから先、どうする?」
    ハナエ「…しばらくは何もしなくてもいいんじゃないでしょうか。帰れる手立ても見つからないですし」

    それもそうだ。別世界と繋がるなんてこと普通はありえないことなわけだし。

    メグ「…じゃ、私買い出しに行ってくるね」
    ハナエ「はい、気をつけてくださいね!」

    元気に笑ってそう見送るハナエ。あの笑顔の為ならなんだってしてやるという感情が、地下生活者との会話を経て、メグの中に芽生えていた。

  • 58二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 21:21:37

    「…彼女はどうだ?」
    地下生活者「…ひとまず、小生に一定の理解は示したようです。しかし『匿名の行人』…よく彼女の存在を観測できましたね?」
    フランシス「お前の方こそ、死の神に脅され心の余裕がなくなったと思っていたが」
    地下生活者「ヒヒ、コデックスが更新されたとなればそれに適応するのは当然のこと…!別世界の存在への干渉ならば…死の神も反応が遅れるでしょう」
    フランシス「…私が彼女の存在を観測できたのは単なる偶然だ。それに彼女については興味深い部分もある。これは、それを確かめるための行動でもある」
    デカルコマニー「そういうこった!」
    地下生活者「興味深い部分…それは一体?」
    フランシス「…彼女から、先生と同じものを感じるのだ。すなわち、彼女は物語の主人公となり得る存在と言っても過言では無い」
    地下生活者「先生と同じ存在…。それが、あの下倉メグということですか?」
    フランシス「…正確には、向こう側の世界の下倉メグだ。しかし、それは向こう側の世界から先生…主人公が消えたことで暫定的に作り上げられた存在。故に実に不安定な存在だ。主人公でありながら、主人公ではない存在にもなり得る…。…お前のゲームがどのような結果になるか…今回は見守ることにしよう。またお前に襲われてはたまったものではないからな」
    地下生活者「ヒヒヒ…それはそれは、結構なことです。…しかし、焦ることはありません。じっくりと、ゆっくりと…ことを進めるとしましょう…!」

  • 59二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 00:05:37

    >>58

    死の神に脅され

    ってことはアビドス3章後か

  • 60二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 02:59:50

    ─買い出しをしているメグは店が立ち並ぶ路地を歩いていた。安かったレトルトカレーとそれ用にパックご飯を購入し、飲み物を買おうとコンビニに入ろうとした…その時、何処かから爆発音が響いた。何事かと音のした方向に目をやると、見覚えのある格好の生徒たちがいた。

    ホムラ「あ、あれって…温泉開発部…?」

    それはかつて自分が所属していた温泉開発部の部員たちだった。

    カスミ「源泉は間違いなくこのポイントにある!さぁ、掘って掘って掘りまくれ!はーっはっはっは!」

    懐かしい声も聞こえてくる。この世界の部長も元気そうで何よりだ。

    メグ「いけいけー!」

    この世界の私も元気に温泉を掘っているようだ。部長や部員のみんなと一緒に…。
    部長と?みんなと?一緒に?

    ホムラ「…なんで?」

    なんで同じ下倉メグなのに。私と違って向こうは全部持っているんだろう。私は、全部無くしてしまったのに。

    地下生活者「ヒヒ…そういうことですよ。奪ってしまえばいいというのは…!」

    頭の中にあの声が響く。あぁ、そうか。そういうことか…。

    何も知らないこの世界の自分から、奪ってしまえばいいのか。

  • 61二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 03:09:55

    なんで、なんでそういう方向にだけ思い切りがいいのよ!!!!!!!

  • 62二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 07:13:11

    フランシス「…そうだ。それこそがこの世界でのお前の役割だ」
    ホムラ「ッ!?」
    フランシス「…そう警戒するな。私はフランシス。…そしてこちらがデカルコマニーだ」
    デカルコマニー「そういうこった!」
    ホムラ「…地下生活者の仲間…って認識でいいのかな?」
    フランシス「ほう、勘は鋭いようだな。…ここでは人目が気になる。場所を変えよう」

    そうして路地裏へと場所を移し、話を続ける。

    ホムラ「…私の役割って、どういうこと?」
    フランシス「…そうだな、自分が何故ここに来たのか…お前はわからないだろう」
    ホムラ「…あなたならわかるの?」
    フランシス「…お前はこの世界において、異物とも言うべき存在だ。故に、如何様にもなり得る特異な存在…」
    ホムラ「………つまり、どういうこと?」
    フランシス「…お前の為そうとすることが、そのままお前の役割となる。お前がこの世界の自分を許せないと感じたのであれば、それこそがお前の役割となる」
    ホムラ「…要するに、やりたいようにやれってこと?」
    デカルコマニー「そういうこったぁ!」
    フランシス「…端的に言えばその通りだ。悔いなき選択を。お前がこの世界においてどのような存在になるか…期待しているぞ。…下倉メグ」

    そういうとフランシスとデカルコマニーは闇の中へと消えた。
    この世界の私が許せないと感じたら…それが私のやるべきこと…。

    地下生活者「…ヒヒ…『匿名の行人』からのアドバイスは受け取ったようですね」
    ホムラ「…うん。だけど、こんなことにハナエは巻き込めない」
    地下生活者「そうでしょうね…少し、シナリオを練る必要があるかもしれません」
    ホムラ「…そういうの、私苦手なんだけど?」
    地下生活者「心配いりません…。私があなたのやりたいことをやりたいようにできるよういたします…!」
    ホムラ「…わかった」

    自身の心に渦巻く黒い何かに気づかないふりをして、メグは帰路につくのだった。

  • 63二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 11:03:36

    地下生活者あ…………………!!!

  • 64二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 18:46:26

    トリニティの古書館。先生は古文書を読み漁っていた。

    “…別世界から人が来る…もう一人のシロコのこともあるし、ありえないことではないんだろうけど…それでもあの二人がどうしてここに来たのか…。その理由がわかればと思ってたけど…。手がかりが全然ないや”

    軽くため息をついて、先生は古書館を後にしようとする。

    ウイ「…こちらでも、何かわかれば連絡します」
    “ありがとう、ウイ”

    ウイからそう声をかけられ、トリニティからシャーレに戻ろうとしていた。その時だった。

    “…セリナ?”

    救護騎士団の『鷲見セリナ』からモモトークにメッセージが来た。

    セリナ「先生、ハナエちゃんを見てませんか?」
    “見てないよ。どうしたの?”
    セリナ「実は今日、救護騎士団の会合があるんですが…時間になっても来ないんです。遅刻や欠席の連絡もなくて…」

    その文字からは、画面の向こう側にいるセリナの焦りが滲み出ているようだった。確かにハナエが遅刻しているにせよ欠席しているにせよ、何一つ連絡をしていないというのは怪しい。

    “部屋にはいない?”
    セリナ「はい。どこに行ったのかがわからなくて…」

    部屋にもいないとなると、事態は思ったよりも深刻だ。この世界のハナエはどこに行ってしまったのか…。

    “わかった。こっちでも探してみるよ”

    モモトークにそう入力し、一旦シャーレへ戻ることにした。

  • 65二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 18:49:43

    一方その頃、メグはこの世界のハナエを抱き抱えながら、フランシスと話をしていた。

    フランシス「…ふむ、問題なく連れてこれたようだな」
    ホムラ「…あなたの力を借りたとはいえ、勝手に部屋に入って大丈夫だったのかな」
    フランシス「心配する必要はない。これも必要なことだ。この世界の朝顔ハナエとお前の世界の朝顔ハナエ。二人が出会うことによって、どのようなパラドックスが起きるか、私でも把握はできんからな」
    ホムラ「…傷つけないようにだけ、気をつけてね」
    フランシス「わかっている」

    ハナエをフランシスに預け、メグは去っていく。その背中を、フランシスは見つめていた。

    ホムラ「ただいま」
    ベル「おかえりなさいメグさん!どこに行ってたんですか?」
    ホムラ「…内緒だよ」
    ベル「えー?」

    まさか自分がこの世界のハナエを誘拐したなどと言えるわけもないメグは、それだけ言って後は何も言わなかった。ハナエも、それ以上は聞こうとしなかった。

    ホムラ「…ねぇ、ハナエ?」
    ベル「どうしました?」
    ホムラ「…どうして、私にここまでしてくれるの?」

    今まで聞けなかった質問を、改めてここでする。ハナエは、少し悩む素振りを見せた後…笑顔を見せて言った。

    ベル「…メグさんの笑顔が見たいから、です!」

  • 66二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:09:06

    少し予想外の答えが返ってきた。

    ホムラ「…笑顔?私の?」
    ベル「だって私…メグさんの心の底から笑った顔、まだ見てませんから」
    ホムラ「………そうだっけ?」
    ベル「そうですよ!」

    そう言われて気づいた。そういえば、最後に笑ったのはいつのことだっただろうか。こうなってしまう前は、よく笑っていたはずなのに。

    ホムラ「…ごめん?」
    ベル「謝る必要はないですよ。でも、見てみたいなって、思っただけです」

    今の自分になってから、楽しいことがなかったからというのも大きいだろう。だがそれ以上に、何も考えず笑えるような状況ではないからなんだろうなと、メグは考えた。

    夜になって、メグは一人考えていた。この世界の自分を恨めしく思ったのは確かだ。幸せに生きる自分を許せないと思ったことも間違いじゃない。でも、それはハナエの為になるだろうか。

    自分の中のこの世界の自分への妬みと、自分の世界のハナエへの願いが、心の中でぐちゃぐちゃにかき混ぜられる感覚。

    何もない自分は幸せになれないだろうから、せめてハナエはこの世界で幸せになってほしい。この世界のハナエを攫っておきながら、実に勝手な考えだ。でも、今の私にはそれしかない。それしか、望めない。

  • 67二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:11:26

    地下生活者「…ふむ、コデックスが修正されましたか。しかし問題はありません。あなたがやりたいと思うことこそ、大事なのですから」
    ホムラ「…私のやりたいこと、かぁ…」

    少し前までなら、ただ只管に温泉を掘っていたいと答えていたと思う。でも、今は違う。

    ホムラ「…ハナエが、この世界で幸せに生きられるようにしたい…。それが、今の私のやりたいこと」
    地下生活者「…でしたら、やはり危険分子は排除しておいた方が良いのでは?…例えば、温泉開発の名目を盾にして、破壊行為を繰り返す者たちなど…ヒヒッ…!」
    ホムラ「………そうだね、こっちの私にも思い知らせられるし…一石二鳥だね」

    翌朝、ハナエは嫌な予感がして目を覚ました。悪い夢を見たわけじゃない。ただ胸騒ぎがした、それだけだった。
    ふと隣を見るとメグがいない。どこへ行ったのだろうと思っていると、運転席の所に彼女のスマホと…書き置きがあった。

    嫌な予感が少しずつ加速していくのを感じながら、ハナエは書き置きを手に取る。

    『ハナエへ 今までありがとね』

    その一言だけを残して、メグはハナエの元からいなくなってしまった。

  • 68二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:14:36

    ─それと時を同じくして…。

    カスミ「うーん…何がいけなかった…?」

    先日の温泉開発という名の破壊行為によりゲヘナ学園の特別牢に入れられたカスミは思案に暮れていた。来ないかと思われていたヒナが来ていたことから、カスミを含めた多くの部員がお縄となった。

    カスミ「まぁいい。次こそは細心の注意を払って、風紀委員長がいないうちにやれば…。私たちの温泉開発はこれからだ…!」

    そんな風にひとりごちていると、自分しかいないはずの檻の中から誰かの気配がしたように感じる。

    ホムラ「………」

    気配がした方を見てみると、そこにいたのはお面で顔を隠した明らかに怪しい生徒。しかし、何故か初めて会った気がしない。むしろいつも会っているようにも感じられて─

    カスミ「…メグ?」

    カスミの口は、カスミの意識とは別にそう言葉を発した。

    ホムラ「…へぇ、わかるんだ。さすがだね部長」
    カスミ「…いや待て、キミ…ホントにメグなのか?雰囲気が違うように見えるが…」
    ホムラ「…そうだろうね」

    メグを名乗るその生徒は、カスミに銃口を突きつける。

  • 69二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:15:59

    ホムラ「…私は、全部なくしちゃった。…だから、こっちの私から…全部、奪う」
    カスミ「…こっちの私…?待て、どういうことだ!?」

    メグはその質問には答えず、引き金を引く。

    カスミ「!?…こ、れ…麻すぃ…」

    言い切る間もなく、カスミは意識を手放した。

    ホムラ「…ごめんね部長。でも、これはハナエの為…それに何より、私が納得できないから」

    そう言うとメグはカスミを抱え、暗闇の中へと消えていった。

  • 70二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 02:49:32

    この先独自設定が入る部分がありますので先にお伝えしておきます

  • 71二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 09:45:08

    二次創作ではよくあること。

  • 72二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 10:00:33

    それはそう

    しかしメグはここから救われるのか…?

  • 73二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 12:13:06

    ミネ「…ハナエはまだ見つかっていません。誰かに連れ去られたとは思われるのですが、その痕跡もほとんどなく…」
    “…そっか…”
    セリナ「…ハナエちゃん…大丈夫でしょうか…」

    シャーレのオフィス内、先生は救護騎士団のミネとセリナと共にいなくなってしまったハナエの行方について情報を共有していた。が、結果としては全くわからないということがわかっただけだった。

    頭を悩ませているとヒナからモモトークが入る。

    ヒナ「先生、カスミがいなくなったわ」
    “カスミが?”
    ヒナ「牢屋に入れてたんだけど、脱獄されてね。でも、メグも温泉開発部の他の部員たちもどこにいるかわからないって言うのよ」
    “…そっか”

    先生は、嫌な想像をしてしまう。カスミは黙って連れ去られるような生徒じゃないとはいえ、ハナエの失踪の後ともなるとこう神経質になるのも無理はないだろう。

    “…わかった。こっちでも探してみるよ”
    ヒナ「ありがとう」

    ミネ「…また誰か攫われたのですか?」
    “ゲヘナの生徒だけど…もしかしたら、だよ”
    ミネ「…もしも同一犯の仕業であるならば、犯人には相応の救護をする必要がありますね…!」
    セリナ「…ハナエちゃん…」

    怒りを顕にするミネと心配そうな顔をするセリナ。どうにかして失踪した生徒を見つけないと…そう考えているとオフィスの扉が勢いよく開けられた。

  • 74二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 20:15:28

    致命的なところまで行ってないのがまだ救いかな? ちょっとでもバランス崩したらキヴォトス壊滅ルートに行っちゃいそうだから早急な対処が求められる。

  • 75二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 23:10:02

    ベル「せ、先生!」

    ベルこと別世界のハナエが明らかに焦っている様子で入ってきた。ミネとセリナはその姿を見て固まっている。

    ベル「…あ、団長に…セリナ先ぱ…!」

    思わずそう言ってしまったのか、ハナエは口を抑える素振りをする。
    驚きの表情を浮かべる2人を見て観念したか、ハナエはミネとセリナにも事情を説明をする。

    ミネ「…別世界のハナエ…なるほど、それでなんだか大人びて見えるわけですね…」
    セリナ「えっと…は、ハナエちゃん…でいいかな?」
    ベル「…よ、呼びたいように呼んでくだされば…」
    “…それで、ハナエ…どうしたの?”
    ベル「…メグさんが…これとスマホを残して、いなくなってしまって…」

    そうして『今までありがとね』と書かれた書き置きを先生に見せる。

    ミネ「…メグ、といえば確かゲヘナの温泉開発部の…?」
    “…正確には、別世界のメグだね”
    セリナ「…いなくなった、ということは…この方も連れ去られたのでしょうか…?」

    確かに、タイミングについては同時期だ。辻褄は合う。しかし、それでは一つ説明ができないものがある。

    ミネ「しかしセリナ、もしそうだとするとこの書き置きを残せるわけはありません」
    “…そうだね、確かにこれだと連れ去られるのをわかってるような感じだし…。ハナエ、メグの様子に変わったところとかない?”
    ベル「…なんというか、こう…思い詰めてるような感じはありましたけど…」
    “…そっか”

    連れ去られた様子のこの世界のハナエ、いなくなったカスミ、そして書き置きを残して消えた別世界のメグ。…先程のものとはまた異なる嫌な想像が脳を過ぎる。

  • 76二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 06:36:30

    結局その場では、これといった結論を出せないままその場はお開きとなった。ハナエは、ひとまず救護騎士団のみんなと行動を共にすることにしたようだ。

    それから数日後、自販機で飲み物を買おうとした私の携帯に着信が入る。見た事のない番号からだ。若干の怪しさを感じつつも、通話に応じる。

    「…先生、少しお時間いただけますでしょうか?」
    “…!…お前は…!!”

  • 77二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 15:28:23

    保守

  • 78二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 22:40:04

    ─ところ変わってゲヘナ学園。風紀委員会は件の失踪事件について調べ始めていた。カスミの後も、多くの生徒が失踪しているのだ。しかも、その全てが温泉開発部の部員だというのだから、犯人の動機はなんとなく想像がつく。

    ヒナ「…それでも誰が…」

    その時、ヒナはあの時話した別世界のメグのことをふと思い出す。私たちのよく知るメグとは違う印象を受けたあの感覚。ヒナはずっと、それを前にもどこかで感じた気がしていた。それがいつ、どこで、誰から感じたものだったのかはまだわからない。
    …今はそんなことより、いなくなった温泉開発部の部員の情報を少しでも確認しないと…。
    そうして、ヒナは気づく。

    ヒナ「…そういえば、メグは失踪してないのよね…」

  • 79二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 22:42:06

    失踪だとしたらメグがカスミに着いていかない理由も、カスミやその部員たちだけがいなくなる理由もない。仮に本当に攫われていたとするならば、部長であるカスミやその他の部員だけを攫って現場班長のメグだけ残すというのもおかしな話だ。メグの力を警戒しているという線もあるが、そもそも最初に攫ったのがカスミである時点で、攫う基準に強さは関係ないと推測ができる。となると、犯人の目的は…。

    ヒナ「…メグ…?」

    カスミをはじめとしたメグ以外の温泉開発部の失踪事件。仮にこれが誘拐事件だとして、ここまで現場班長と立場も実力も確かなメグがそのままとなると、犯人はメグ以外の温泉開発部に恨みがある…。いや、逆だ。メグに恨みがある人が犯人だ。
    となると後は誰が犯人なのか…なのだが…。

    ヒナ「…まさか、ね…」

    脳裏の嫌な予感を払拭することを目的に、ヒナは別世界のメグの連絡先に電話を入れる。

    ベル「…あ、ヒナさん…?私です、ハナエです…」
    ヒナ「…ハナエ?メグは?」
    ベル「…じ、実は…書き置きを残してどこかに行ってしまって…」

    嫌な予感は当たっているかもしれない。
    そう感じたヒナは通話を終えると部屋を飛び出すのだった。

  • 80二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 06:48:21

    ─シャーレの屋上。呼び出しの電話に指定された場所に先生は来ていた。そこにいたのは…。

    「…お待ちしておりましたよ、先生」
    “黒服…一体何の用?”
    黒服「…そう警戒なさらないでください。落ち着いて話もできません。…立ったままでのお話となることについては、ご容赦いただければと」
    “…要件から、先に聞かせて”
    黒服「クックック…そうですね。…話というのは、今この世界に来ている、別世界の生徒たちについての話です。彼女たちが何故この世界に来てしまったのか…先生はわかりますか?」
    “それは、わからない”
    黒服「そうでしょうね。…先に言っておきますが、この話については私の推測も多分に含まれております。ですので、これが正解なのかは断言できかねることをご容赦ください」

    先生は何も言わずに頷く。

  • 81二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 12:33:34

    ここで黒服が出てくるのか

  • 82二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 21:54:09

    保守

  • 83二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:56:31

    黒服「…まず、別々の世界同士を繋ぐためには、パスの発現が必要となります。このパスというのは、いわばそれぞれの世界における同一部分。この同一部分が僅かでも生まれればそれがきっかけとなり、2つの世界が繋がる」
    “…それが、パスの発現…”
    黒服「…もっとも、パスの発現が起きたからといって、別世界同士を移動することは基本的には不可能です。繋がったからと言って、その道を渡るための手段というのはまた別に用意しなくてはなりませんから」
    “…じゃあ、なんであの子たちはこっちの世界に来れたの?”
    黒服「…私は見ていないので又聞きした情報で申し訳ないのですが…先生、あなたはアビドスで色彩を観測したそうですね?」

    それは忘れられるはずのない出来事だった。地下生活者の暗躍を発端とするホシノの暴走。それを止めようと、シロコが色彩を呼び寄せ、それに触れようとした…。結局それは、もう一人のシロコによって阻止されたわけだが。

    黒服「…恐らくは、それが原因かと」
    “…どういうこと?”
    黒服「あの色彩の出現…僅かな時間ではありましたが、それがこの世界と彼女たちの世界の共通項となり、2つの世界が繋がるに至った…ということです。向こうの世界でも色彩が出ていたのかについては…もちろんわかりかねますが。そして色彩の持つエネルギーが作用したことにより、本来であれば『箱舟』などのオーパーツを利用しなければできないはずの別世界同士を繋ぐ道ができた。…と、私は考えています。普通であれば起こり得ないでしょうが、色彩に関しては未知数の部分も多いので」
    “…となると、2人は帰れないと?”
    黒服「…少なくとも、また色彩が出現しなければ難しいかと」

  • 84二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 02:17:28

    もしそれが事実なら意図的に色彩を呼び寄せなければならないのか、でも安全上そんなこととてもできないし………

  • 85二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 06:29:23

    先生は小さく「そうか」と零した。
    あの2人が自分たちの世界に帰りたいと本心から思っているかはわからないが、思っていた場合は相当苦しいことを伝えなければならない。

    黒服「…しかし、彼女たちはこの世界にとって意図しない方法で入り込んだ、まさに異物というべきもの。排斥する為の自浄作用のようなものが働いたとしても何ら不思議ではありません。…そして先生。どのような事態になったとしても、あなたは生徒の為に動くのでしょう。それは結構なことです。しかし、別世界から来た彼女たちはあなたの生徒ではありません。あなたの生徒でない以上、あなたが彼女たちを救うことはできません。今回私が赴いたのは、このことを忠告する為です。…このことについて、お忘れなきように」

    そう言うと黒服はそのままどこかへ去っていく。

    ─あなたの生徒でない以上、あなたが彼女たちを救うことはできません─

    黒服はそう言っていたが、私の生徒でなくても、生徒であることに変わりはない。先生である私が何とかしないと…。
    そう考えているとモモトークに新着のメッセージが届く。

    ヒナ「例の誘拐事件の犯人、あっちの世界のメグかもしれない。ひとまず探して話を聞きに行くわ」

  • 86二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 14:10:30

    保守

  • 87二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 19:21:59

    時は少し遡る─

    救護騎士団A「うそー?ホントにハナエちゃん?」
    救護騎士団B「別世界のハナエはこんな美人さんになるんだねー」
    ベル「あ、ありがとうございます…?」

    トリニティ総合学園、救護騎士団の拠点。
    ハナエにとっては、2年振りとなる仲間たちとの再会。しかし、状況が状況だけに喜んでばかりはいられない。

    ミネ「…別世界のハナエ…今はベルと名乗っているようなので、ベルという名前で呼ばせていただきますが、現状失踪していることがわかっているのは、ハナエとゲヘナの温泉開発部のメンバー、そしてベルの世界の下倉メグ…この世界ではホムラという名前を名乗っているようです。これで以上ですね」
    セリナ「確か下倉メグって人も、温泉開発部の部員なんですよね?こっちの世界の彼女はどうなっているのでしょう?」
    ミネ「…残念ながら、そこまでの情報はまだわかりません」
    救護騎士団A「…確認なんですけど、これが誘拐事件だったとして、ハナエちゃんとゲヘナの温泉開発部を攫ってる人は同じ人…って認識でいいんですよね?」
    ミネ「状況証拠から見て、その認識でいいでしょう。…しかし、ホムラだけは書き置きを残していなくなっているのが気がかりです」

  • 88二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 23:00:27

    一様に頭を悩ませる救護騎士団の団員たち。すると、一人の団員が口を開いた。

    救護騎士団C「…ホムラって人が犯人の可能性も有り得るんじゃないでしょうか」

    それは、もしかすると心の中では辿り着いていた推論かもしれない。しかし、いざ口に出されると…現実を受け入れたくない。そんな気持ちになってくる。

    ミネ「状況から考えると有り得る話ですね…」
    ベル「ま、待ってください!まだそうだと決まった訳では…!」
    セリナ「…でも、他の人に連れ去られた可能性の高いハナエちゃん達と違って、ホムラさんは書き置きを残していなくなってるんですよね?」
    救護騎士団B「…犯人だったとしても、そうでなかったとしても…詳しく話を聞かないといけない人なのは違いないねー」

    ハナエは、何も言えなかった。
    メグさんが犯人だったからとして、それを確実にそうだと肯定できる要素はないが、否定し切ることもまたできない。
    『ホムラの捜索』という方針に異論はない。でも、メグさんがそんなことをする理由がわからない。自分というものが、少しずつ嫌になっていくようだ。

    ベル「いけないいけない!切り替えないと!」

    空元気と言われても否定はできないが、沈んでばかりもいられない。メグさんとしっかり話し合わないと!そう決意したハナエは、ひとまず装甲車両内に戻ることにした。

  • 89二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 23:02:04

    それから数日…ハナエが持っていたメグの携帯に着信が入る。ヒナさんからの連絡だった。

    ベル「…あ、ヒナさん…?私です、ハナエです…」
    ヒナ「…ハナエ?メグは?」
    ベル「…じ、実は…書き置きを残してどこかに行ってしまって…」
    ヒナ「…どこかに行った?心当たりがないの?」
    ベル「は、はい…」
    ヒナ「………そう」
    ベル「…ヒナさん?」
    ヒナ「…念の為、あなたにも伝えておいた方が良さそうね。…例の失踪事件、あなたの世界のメグが犯人の可能性が高いわ」
    ベル「…!」
    ヒナ「私は今から彼女を探しに行くから、何かあったら連絡するわ」

    そうして、通信は切られた。
    いてもたってもいられなくなった私は、運転席へ移動しアクセルを踏み込んだ。

    ベル「…メグさん…!」

    ヒナさんが何処に行くつもりなのかはわからない。メグさんに至っては言うまでもない。それでも、メグさん…あなたとしっかり話がしたい。
    その感情のままに、ハナエは車を走らせた。

  • 90二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 06:49:21

    ─最近、カスミ部長や部員たちとの連絡がつかない。
    温泉開発の為色んなところを回っているのだろうか。だとしても、私に声を掛けない理由はないはず。

    メグ「一人で温泉を掘るのも悪くはないんだけど、物足りないよねー」

    そんな物思いに耽りながら、メグは温泉を掘っていた。温泉が出るかは分からないが、こうでもしてないと落ち着かないというのも多分に含まれていた。

    「…こんな状況でも温泉を掘ろうって思えるんだ」

    ふと、聞き覚えのある声が響いた。お面をつけていて顔はよく見えない。しかし、何故か初めてあった気がしない。

    メグ「えっと…あなたは?」

    お面を外すと、そこにあったのはメグとよく似た顔だった。

    ホムラ「…私は、あなただよ」
    メグ「…え?」

    その一言は、いやに冷たくて、どこか悲しいような気がした。

  • 91二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 14:51:50

    ホムラ「…正確に言えば、私はこことは違う世界から来た。別世界の下倉メグ」

    別世界の自分。イマイチ状況が飲み込めないが、自分であるならば─

    メグ「あなたが私なら、温泉を掘るのが好きなんでしょ?手伝ってよ!一人だと寂しくてさー」

    その何も知らない自分の言葉を聞いて、ホムラは吠える。

    ホムラ「ふざけるな!」
    メグ「!?」
    ホムラ「…私は、温泉なんて掘る気にもなれない…。こんな足じゃ、こんな手じゃ…入ることだってできやしない!」

    ホムラは服とズボンの裾を捲って義肢をメグに見せつける。
    メグは驚いた表情のまま固まっている。

    ホムラ「…私は、全部なくしちゃった。先生も、部長も、部員のみんなも、片手も、両足も、温泉も、何もかも…私には、もう何も残ってない。…なんで?なんであなたも同じ下倉メグなのに、なんであなたはまだなくしてないの?」

    その恨み言を聞いて、メグは思わず後退りをした。自分と同じ顔、自分と同じ声、しかし話している内容は自分とは程遠い内容だった。

    メグ「…あなた…ホントに私なの?」
    ホムラ「私は下倉メグだよ。あなたと同じ。…でもあなたはまだたくさん持ってて、私は何も持ってない。…不公平だよね?同じ自分なのに」

    武器を構えるホムラ。相手が臨戦態勢に入ったのを見て、メグも構える。

    ホムラ「…だから、私があなたから奪っても…いいよね?」
    ヒナ「いいわけないでしょ」

  • 92二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 14:53:15

    声がした方向にはヒナがいた。その目からは、確かな敵意が感じられる。

    ヒナ「あなたがいくら喪ったとしても、それは誰かから奪っていい理由にはならないのよ」
    ホムラ「…知ったような口振りだね。私がどんな思いで今まで生きてきたかも知らないで」

    拳を握りしめ、顔を顰めたホムラはまたも吠える。

    ホムラ「私があの地獄のような日々を!どんな思いで生きてきたかも知らないで!わかったような口を聞かないでよ!!」

    その言葉を聞いて、ヒナは確信する。
    あぁそうだ、この子は─

    あの時の『小鳥遊ホシノ』と似ているんだ。

  • 93二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 16:15:16

    だったら私がここで止めなければ。なんとしてでも。

    ヒナ「…わからないわよ。私はあなたじゃないもの。あなたのことはあなたにしかわからないものよ。…だけど、あなたが間違ったことをしようとしてるのはわかる。だから、私が止める」
    ホムラ「…わかってる、流石にヒナ委員長は相手にできない」
    ヒナ「?」

    一瞬ホムラが小さく何かを囁いたように見えたが、次の瞬間煙幕が貼られる。

    ヒナ「ッ!!」

    逃げられる。そう考えたヒナはデストロイヤーをホムラがいた場所へ向けて放つが、煙が晴れたそこには誰もいなくなっていた。

    ヒナ「…逃げられたみたいね…」

    捕まえることは叶わなかったものの、彼女の動機や目的は判明した。…とはいえ、このことをハナエにどう伝えようか…。
    そう思案に暮れていると─

    ベル「ヒナさん!」

    当人がやってきてしまった。

  • 94二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 16:18:37

    メグ「あれ?あなた誰?」
    ベル「あっ、えっと…この世界のメグさんですか?」
    ヒナ「そうよ。…さっきまであなたの世界のメグもいたんだけどね…。逃げられてしまったわ」
    ベル「そうですか…」

    ハナエはしゅんと落ち込む。

    ヒナ「…そんな顔しないで。きっとすぐに見つかるわ」
    ベル「…ありがとうございます」
    ヒナ「…ひとまず、メグはしばらく風紀委員会の監視下に置かせてもらうわ」
    メグ「えぇ!?」
    ヒナ「…あの子はきっと、またあなたを狙って襲ってくるわ。その時に私が守れるとは限らないもの」
    メグ「…わかった」

    ぶすっとした感じの顔でメグは渋々了承する。

    ヒナ「…あの子を見つけたら連絡するわ。あなたも捜索、よろしくね」
    ベル「は、はい!」

    メグを連れてヒナは去っていく。
    ハナエの脳の中では、先程耳にしたヒナの言葉が何度も反響していた。

    『またあなたを狙って襲ってくるわ』
    ベル「…メグさんが…この世界のメグさんを襲った…?」

    自分の世界のメグのやったことについて、ハナエは自分の中で納得ができなかった。

  • 95二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 20:08:48

    地下生活者「…空崎ヒナ…彼女とはまともにやりあわないほうが良いでしょう」
    ホムラ「…そうだね、これからどうしよう?」
    地下生活者「今は動かない方が良いかもしれません。小生も、しばらくは身を潜めることといたします。」
    ホムラ「…フランシスは、なんて言うかな」
    地下生活者「彼なら問題ないでしょう。むしろ、小生としてはしばらくは彼に任せたいところですが。ヒヒ…」
    ホムラ「そっか。わかった」

    ヒナから逃げ果せたメグは、トリニティ自治区まで来ていた。

    ホムラ「…どうしよっかな。これから」

    ヒナに狙いがバレた以上、彼女はこの世界の私を守ろうとするだろう。流石に本気の彼女相手じゃどうしようもできない。

    ホムラ「…そもそも私がこの世界の私を狙う理由は、私がこの世界の私を許せないと思ったから。…そんな個人的な感情より、ハナエの方を優先するべきなのかな…?」

    自分の中の感情が分からなくなってくる。元々グチャグチャのドロドロだった心が更に無造作に掻き混ぜられるような感覚に、メグは襲われる。
    そんな感情の変化に呼応するように、メグのヘイローは暗く歪み始めていた。

  • 96二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 20:31:10

    アカン(アカン)

  • 97二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 23:21:57

    フランシス「…ふむ、順調だな。緩やかながら変質し始めてきている。…下倉メグのこの世界での役割も、内包する神秘も、同様に」
    デカルコマニー「そういうこった!」
    フランシス「後は機が熟するものを待つのみ。この物語の行く末は破滅か、或いは…」

  • 98二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 00:50:17

    ひとまずここまで前編です
    オチが書けてないのでどこまで続くかわかりませんが…というかここまで書いててあれなんですがここのスレ主僕じゃないんですよね
    人のスレ乗っ取ってる感じがするんですけど大丈夫なんでしょうか…?
    別スレ立ててそっちでやった方が良さそうならそっちで続きを書いていきます故、ご意見のほどよろしくお願いいたします

  • 99二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 00:59:58

    特に何もなさそうなら続きもこのスレに載せていきます

  • 100二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 06:40:18

    朝保守

  • 101二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 15:46:18

    保守

  • 102二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 21:31:04

    問題なさそうなので続きもこのスレで投げていきます

  • 103二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 21:35:55

    このレスは削除されています

  • 104二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 21:38:16

    ─ホムラがヒナと対峙してから2日が経過した。
    未だにホムラは見つからない。メグが狙われたわけではないが、常に風紀委員会の監視があるというのは彼女にとって窮屈なものだろう。

    ヒナ「…というのが、ホムラに対する私の所感よ」
    “…そっか、あの時のホシノに…”
    ヒナ「…今の彼女をそのままにしておくのは危険よ。とんでもないことになりかねないわ」
    “そっか…”
    メグ「………ねぇ」
    “どうしたの?メグ”
    メグ「私、どうしてもあの子が私だって信じられないんだけど…」
    ヒナ「…それは私も同じよ。過去に何かあったとしか考えられないわね」
    “…別世界のメグの過去…”

    …彼女たちが自身の世界で何をしてきたのか。それを知っておかなければいけないように、私は感じた。

    “…ひとまず、ヒナもメグも気をつけてね”
    ヒナ「えぇ、先生こそ無理はしないで」

    その言葉に軽く頷いてから、私は部屋のドアを開けた。

  • 105二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 22:45:10

    ところ変わってミレニアムサイエンススクールの一室。

    マコト「…いい茶だな。客人への最低限の礼儀は心得ていると見える」
    ユウカ「…褒め言葉として受け取っておくわ」

    ミレニアムの生徒会『セミナー』の会計『早瀬ユウカ』は、ゲヘナの生徒会『万魔殿』の議長『羽沼マコト』と一対一で話をしていた。

    ユウカ「リオ会長はいないから、私が代理として話をさせてもらうわよ」
    マコト「キキキッ、失踪中ということか?よもや例の事件と関係があるとは言うまいな?」
    ユウカ「例の事件…。あぁ、トリニティとゲヘナの誘拐事件のこと?それなら心配ないわ。リオ会長はかなり前から失踪してるので」
    マコト「そうかそうか、ならばいい」
    ユウカ「…それで、わざわざ一対一で話がしたいって…どういう話なの?」
    マコト「…一つ、調べてほしいものがある」

    そう言うとマコトは持っていた大きめのアタッシュケースを机の上に乗せて開ける。
    その中にはガラスケースの中に厳重に保管された携帯型のトランシーバのような機械が入っていた。
    …液晶とボタン以外は何もないという、よく見てみると通信機とするなら相当の欠陥品のようにも思えるが。

  • 106二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 01:57:54

    何か出て来たな………

  • 107二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 02:20:01

    マコトが持ってくる機械って時点でなんだかようわからんが猛烈に悪い予感がしてくる…

  • 108二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 03:12:09

    >>液晶とボタン以外は何もないという、よく見てみると通信機とするなら相当の欠陥品のようにも思えるが。


    この特徴だと折れない方のガラケーっぽそうだけど、そんなに変か? アンテナやマイクもないってこと?

  • 109二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 06:36:03

    マコト「…これがどういう機械なのか、解析してほしい」
    ユウカ「…これ、何なの?…パッと見ただけなら通信機みたいに見えるけど」
    マコト「…そうだな。見た目はアンテナらしきものがあり通信機然としているとはいえ、液晶と一つのボタンしかなく、スピーカーやマイクらしきものはない」
    ユウカ「見た目はともかく、冷静に見れば通信機ではないだろうということはわかるわね。…ボタンを押しても起動しないの?」
    マコト「…起動はさせていない。」
    ユウカ「起動させてないって…。それじゃどんな機械かわからないのも当然じゃない」
    マコト「…起動させることで何が起きるかわからんからな。解析をする時も、起動させないように気をつけた方がいいだろう」
    ユウカ「起動させない方がいいって…。何でこんな通信機モドキをそんなに警戒してるのよ?」
    マコト「…これが『ただの通信機モドキ』ならここまで警戒はしない」

    マコトはカップを口に運び、フゥ…と静かに息を漏らした。

    マコト「…こいつは、雷帝が遺した…いわば遺産だ」
    ユウカ「雷帝…!?」

  • 110二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 13:27:35

    うわでた

  • 111二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 14:22:41

    ヤクネタだ

  • 112二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 18:33:25

    やっぱ雷帝案件じゃねーか!

  • 113二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 18:53:11

    会ったことはおろか顔すら見た事はないが、名前だけは聞いたことがある。
    『雷帝』。2年前、ゲヘナを支配していた生徒会長。詳しくは知らないが、このミレニアムすら凌駕しかねない程の技術力を持っており、それによっていくつもの危険な兵器を作り出してきたらしいが…。

    ユウカ「…これが、雷帝の造ったものだ…って?」
    マコト「あぁ。私たちとしては問答無用で破壊したかったんだが、壊すことはかなわなかった。用途がわからない以上危険なものでない可能性もあるが、万が一があれば事だ。せめてどういったものかは把握しておきたい。報酬もしっかり出すことを約束する」
    ユウカ「…それなら断る理由もないわね。ところでこれ、名前とかついてたりするの?」
    マコト「…正式名称かは知らんが、『エルピスの星』という名がつけられていたようだ」
    ユウカ「…仮にこれが通信機だったとしてつけるに相応しい名前ではないように思えるけど…。まぁいいわ、調べてみる」

    マコトがミレニアムを去った後、ユウカはひとまずエンジニア部に『エルピスの星』の解析を依頼するのだった。

  • 114二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 18:56:06

    エルピスの星ですが地の文だとどんな見た目か分かりづらかったなと投稿してから気づいたのでマコトに訂正させてもらいました。よくやったマコト、プリンを2つもくれてやろう

    せっかくなのでここまで出てきたアイテムなどまとめますのでお時間いただきます

  • 115二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 21:43:45

    ・メグマパワー!
    メグの愛用武器。ガスタンクを必要とする都合崩壊したキヴォトスでは殆ど使えなかった。こちらの世界に来てからは崩壊以前と比べると頻度は減ったがちゃんと使っている。

    ・ハッピースマイリー
    ハナエの愛銃。あまり使用されないが整備はしっかりされている。

    ・ハンドガン
    メグのサブ武器。メグマパワー!とは時と状況によって使い分け。

    ・メグの義肢
    使い物にならなくなったメグの両足と左手に装着された義肢。ヒナとの戦闘により左の義手が破損したこと、そうでなくとも長い年月使っていたことからミレニアムのエンジニア部に依頼し新たに作ってもらった。ビームとかは出ない。

  • 116二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 21:46:44

    ・お面
    百鬼夜行連合学園のお祭りにて二人が購入したお面。最初の方は二人とも正体を隠すために使っていたが、自分たちの正体が色んな場所に露見したからか現在ハナエはつけていない。メグは引き続き使用している。

    ・装甲車両
    拠点とする為に購入された。結構な広さで速度も中々のもの。現在はメグがいなくなったためハナエが利用している。

    ・麻酔銃
    メグがフランシスから譲り受けたもの。弾丸を撃ち込んだ相手を昏睡させることが出来、これを使って誘拐をしてきたらしい。射程はあまり長くないようだ。

    ・エルピスの星
    マコトがミレニアムへ解析を依頼した雷帝の遺産が一つ。アンテナらしきものと液晶、そしてボタンは一つだけでスピーカーやマイクらしきパーツが見受けられないという一見すると携帯型のトランシーバのような見た目をしているがよく見ると通信機ではないとわかる。壊そうとしても壊れず、起動させることで何が起きるかわからない。そもそも用途も現時点では不明である。

  • 117二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 05:05:12

    エルピスは神話からなのか星からなのか楽しみ

  • 118二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 06:42:24

    救護騎士団の本拠地にて、ハナエは頭を悩ませていた。
    先日のメグ襲撃の件もあり、いよいよほぼすべての団員が自分の世界のメグ…ホムラがこの世界のハナエを誘拐した犯人であるという風に考えて動いているのだ。
    個人的にはその事実を否定したいがそれが可能なものがない以上ホムラが犯人と断じざるを得ない。

    でも、それを認めてしまうと…自分の中の大切な何かが、ぷっつりと切れてしまいそうで─

    ミネ「…ハナエ?」

  • 119二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 14:50:37

    保守

  • 120二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:23:59

    ハッとして振り返る。振り返ると心配そうな表情の団長がそこにはいた。

    ミネ「…大丈夫ですか?思い悩んでいたようですが」
    ベル「あ…はい、大丈夫…です」
    ミネ「…とてもそうは見えませんが」
    ベル「………ミネ団長は鋭いですね…」

    観念したハナエは「誰にも言わないでほしい」という前置きをしてから、団長と話を始める。

    ─ホムラが犯人であるということを心の中では理解していること。彼女の動機がわからない自分が情けないこと。そして、それを否定したい自分がいること。

    ベル「…わかってるつもりなんです。でも、それを認めてしまったら…私は…」
    ミネ「…認めたくないものがあるのは当然のことです。人は何時だって甘い理想を夢見るもの。苦い現実から、目を背けたくなるものです。…それでも、目を背けてはいけないものというものはあります。向き合わなければいけないものはあります」
    ベル「…そう、ですよね…」
    ミネ「…ですが、いまあなたがあなたが真に向き合うべきは…恐らく、あなた自身だと思いますよ」
    ベル「…私?」

  • 121二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 00:10:15

    ミネはハナエの頭を撫でる。それは、彼女にとってはもう二度と感じられないと思っていた暖かさだった。

    ミネ「…あなたが彼女に何をしてあげたいか。きっとそこが重要になります。彼女をわかってあげられるのは、きっとあなただけ…ですから」
    ベル「…団長。…ありがとうございます」

    団長の暖かみを感じながら、それでもベルはとあることを感じていた。

    本来であれば、ここにいるべきなのは私ではなく『この世界の朝顔ハナエ』なのだ。
    居場所を奪ってしまっているように思えて、ベルはぎこちない笑みをミネに向ける。
    それについて、ミネは気づかなかったかそれとも気づかないフリか…それはわからないが、何も言わずにベルを撫で続けた。

  • 122二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 00:12:20

    日も沈んだ頃、トリニティに停められた装甲車両内─

    ベル「私がメグさんにしてあげたいこと…」

    彼女とは、2年間…向こうにとっては1年間だが、共に過ごしてきた。辛い時も苦しい時も、一緒に生きてきた。滅んだ世界をかつての姿と比べる度に泣きそうになった。それでも、メグさんがいたから…ここまで頑張ってこれた。
    私は、ホントは彼女のことを何もわかっていなかったのかもしれない。現に、彼女がこんなことをしている理由が私にはわからない。

    でも。

    ベル「私は」

    メグさんの笑顔が見たい。

    ベル「…よし!」

    その夜、ミネのモモトークにメッセージが届いた。

    《本当にありがとうございました、団長》
    《いつかまたどこかで》

    それだけ送って、ベルは車のアクセルを踏んだ。

  • 123二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 05:47:38

    ─その翌日、先生はミレニアムサイエンススクールに呼ばれていた。
    本来であればベルやホムラの過去に何があったか聞きに行こうとしていたのだが、ウタハから「緊急の用事」と言われれば行かざるを得ない。先生はユウカに促され、とある部屋に入る。その部屋の中には、既にウタハがいた。

    ウタハ「いきなり呼び出して悪かったね、先生。どうしても緊急で話しておかなければならないことだと思ったから」
    “話っていうのは…その機械のこと?”

    テーブルの上にはガラスケースの中に保管されたトランシーバのようなものが置かれている。

    ウタハ「その通り。これはゲヘナの万魔殿議長羽沼マコトから解析を依頼された雷帝の遺産…。名を『エルピスの星』というらしい」
    “エルピスの星…?”

    エルピスといえば、神話においてパンドラが開けた箱の中に最後まで残っていたものだ。
    どのようなものかは曖昧で、希望だったり災いだったりと解釈によって分かれているらしいが…。

    ユウカ「いつ聞いても仰々しい名前よね」
    ウタハ「…昨日から解析を進めていたこの機械だが…解析をするうちにこの機械がとんでもない機能を持っていることが明らかになった」
    “とんでもない機能?”
    ウタハ「…この機械は、精神を強制的に反転させることが出来る…らしい」

    その言葉を聞いて数秒間、先生は世界のすべてが止まったかのような感覚に襲われた。

  • 124二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 09:16:35

    これはどっちだ?何でも逆転できるのか!?それとも強制反転なのか!?

  • 125二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 12:11:42

    ウタハ「…正確に言うと、人の精神に干渉できる特殊な波長を発生させ、その人の性質を強制的に反転させられる装置…というのが現時点での私たちの見解だ」
    ユウカ「…その言い方だと、まだ全貌はわかっていないのかしら?」
    ウタハ「あぁ、何せ起動させていないからね。…できる限りの解析をして、何とかこの機能を突き止めたわけさ」

    精神を反転。それはつまり…

    “…色彩と…同じ…?”
    プラナ「…本物とは比べ物にならないとは思いますが、機能だけを見ればそのような装置と言っていいかと」
    アロナ「と、とんでもない危険物じゃないですか!?」

    アロナとプラナ。二人の声は聞こえてこそいないが、ウタハは先生からの言葉に返答するように続ける。

    ウタハ「…色彩。…そうだね、そう言っても過言じゃないとは思う。あくまでも、現時点では…だけどね。…さて、一番の疑問となるのは『雷帝が何故これを造ったのか』だ」

  • 126二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 12:16:20

    ユウカ「兵器として使うためじゃないの?」
    ウタハ「最悪の場合、キヴォトスを滅ぼしかねない存在と同様の力を持つ機械をかい?」
    ユウカ「…あまりにもリスクが高すぎるわね。じゃあ、研究目的とかかしら?」
    ウタハ「その可能性が一番高いとは思うが…それにしたってこの機械は頑丈すぎる。破棄する時のことを考えていなかったのか?と言いたくなる」
    ユウカ「…それもそうね…。好奇心…はないわよね。いくらなんでも」
    ウタハ「…どうして私の目を見て言うんだい?」

    いずれにせよ、今の段階では危険な機械である以上のことはわからないだろう。ウタハは解析を続けることをユウカと先生に伝えるのだった。
    その後、ユウカとも別れ、先生はベルへ電話をかける。

    ─数刻の発信音。しかし、その電話に誰も出ることはなかった。

    “…ハナエ?”

    その後も何度もかけ直すも、やはり誰も出ることはなかった。

    ─そして、数日の時が流れた。

  • 127二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 17:59:52

    メグ「…」

    メグは、特に何をする訳でもなく、ただそこにいた。この世界の自分を襲撃したいのはその通りだが、ヒナが近くにいる以上それも難しい。ハナエの元に戻るにしても、自分にはハナエと一緒にいる資格はきっとない。

    フランシス「…しかし、このままでは良くない。そうだろう?下倉メグよ」
    メグ「…うん。少なくともヒナを何とかしないとね」
    デカルコマニー「そういうこったぁ!!」
    フランシス「…ふむ、お前の客人が来たようだ。ここは失礼させてもらう」

    そういうとフランシスはどこかへ去っていった。客人なんて、一体誰が…

    「…やっと見つけましたよ、メグさん」

  • 128二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 23:59:21

    その声に、思わず振り返る。

    そこには、私の世界の…私がよく知る朝顔ハナエが立っていた。

    メグ「…久しぶり、かな?」
    ハナエ「…そうですね、久しぶりです」
    メグ「なんでここがわかったの?」
    ハナエ「…なんででしょうね。勘、としか言えませんが…ここにいるような気がして」

    実に数日ぶりとなる二人の会話。
    しかし、その空気は非常に重たいものだった。
    そんな空気を断つように、ハナエが切り出す。

    ハナエ「…この世界の私や、温泉開発部の皆さんを…攫っていると、ミネ団長や色んな方が言っています」
    メグ「…そうだね。言っておくけど、その犯人は私だよ」

    聞きたくなかったその言葉を、めっちゃは淡々と告げる。苦い現実が、ハナエの双肩にのしかかってくるように感じられた。

  • 129二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 00:01:41

    ハナエ「…どうして、そんなことを…?」
    メグ「………」

    数秒の沈黙の後、メグは口を開く。

    メグ「…ハナエには、関係のない話だよ」
    ハナエ「そんなことないです!メグさんは、私にとって…!」
    メグ「…そうだね。きっと私も同じだよ。でも、あなたは私じゃない。私の気持ちなんて、あなたにはわからない」
    ハナエ「…それは…そうです。ですが、それはあなたを見捨てる理由にはなりません!」

    その言葉を受け、メグは観念したか口を開く。

    メグ「………ハナエにはさ、幸せに生きていてほしいんだ。この世界で…ね」
    ハナエ「…もしかして、それでこの世界の私を…?」
    メグ「そうだね。この世界のハナエを攫ったのは…それが理由だよ。温泉開発部のみんなを襲ったのは…ハナエに安心して暮らせるようにと…後は、私自身が、この世界の私を許せなかったから。私と同じなのに、私と違って何もなくしてない。それがどうしても許せなかった!私はすべて喪ったのに!何も失わずのうのうと生きているあいつが!認められなかったんだ!!」

    メグのヘイローが更に歪み黒く染まり始める。

  • 130二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 00:03:32

    ハナエ「…メグさん…」
    メグ「…どうしても、私を止めたいって…言うの?」

    恨みや憎しみ、様々な負の感情を孕んだ眼光を向けられる。それでも、ベルは怯まない。

    ハナエ「…あなたに、これ以上辛い顔はさせたくありません。私は、あなたに笑っていてほしいんです」
    メグ「…そっか。なら…!」

    メグはずっと愛用してきた武器である火炎放射器『メグマパワー!』を構える。
    それを見て、ハナエも少しの逡巡の後、愛銃『ハッピースマイリー』を構える。

    メグ「力づくでも、止めてみなよ」
    ハナエ「…そのつもりです」

  • 131二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 06:50:47

    ここで変わるのか!!

  • 132二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 09:21:03

    先に仕掛けたのは、ハナエだった。引き金を引いて一発撃ち込む。メグはそれをことなげもなく躱し、炎をベルに向けて放つ。

    ハナエ「あつ…!」

    躱せこそしたが、その熱は伝わってくる。ハナエは目の前のメグから目を逸らさず、負けじと弾丸を放つ。しかし、間隙を縫うように接近してきたメグの蹴りを食らって大きく吹っ飛ばされる。

    ハナエ「う…くぅ…!」
    メグ「…やめといた方がいいんじゃないかな?そもそもハナエってさ、戦闘慣れしてないでしょ?」

    耳が痛い。確かに戦闘なんて殆どしたことがなかった。それでも…。

    メグ「…なんでまだ立ち上がるの?」
    ハナエ「あなたを…放っておけないからです…!」
    メグ「………」

    はぁ。と、大きなため息を漏らす。
    風が、強く吹き始めた。

  • 133二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 14:58:04

    メグ「私のことなんて、放っておいてくれていいよ。私を助けたって、何も返せやしないんだから」
    ハナエ「何かを返して欲しいわけじゃありません!」
    メグ「じゃあなんで私を助けたの?助けてなんて…頼んでないよね?」
    ハナエ「…それは…」
    メグ「…昔さ、私何度も─

    強く、風の吹き抜ける音が鳴る。

    ハナエ「………」
    メグ「…いや、助けてくれたことに、感謝してないわけじゃないよ。でも」

    風の勢いが、少し弱まる。

    メグ「こんな私を助けたところで、何にもならないと思うけど?」

  • 134二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:02:11

    ハナエ「ッ!」

    リロードをすると再びメグへ向けて撃ち始める。しかし、それらはやはり簡単に躱されてしまう。

    ハナエ「何にもならないなんて、そんなこと…!!」
    メグ「じゃあ何?助けた理由があるんでしょ?何で私を助けたの」
    ハナエ「…それは、あなたの笑顔が…」
    メグ「違うでしょ!?」

    次いで炎がハナエに向けて放たれる。何とか回避はするものの、その先にメグは攻撃を仕掛けていた。

    ハナエ「う…!」

    ハンドガンの銃弾をもろに食らってしまう。それでも、ハナエは怯まずメグに近づこうとする。メグも同じく近づき、二人は至近距離まで接近する。ハナエは銃撃を行うが、メグはそれを敢えて受けハナエの首元を掴む。そして─

    ハナエ「きゃぅッ…!!」

    足を払い体勢を崩させる。バランスを崩したハナエはそのまま地面に倒れ込んだ。
    ハナエの視界に、青い空とメグの顔が映る。

    メグ「…私の笑顔が見たいなんて、嘘だよ。だって、私の笑顔なんて見たって…何にもならないでしょ」

    その言葉を否定しようとした。しかし、それは叶わなかった。
    目の前に映る顔を見て、言葉を出せなくなってしまったから。

  • 135二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 22:34:38

    メグ「…ありがとう」

    その顔は、後ろの青空に似合わない…

    メグ「…今まで一緒にいてくれて」

    暗く淀んだ、冷たい水のようだった。

    メグ「…でも、ごめんね。私は─」

    ハナエの耳にそう聞こえたと同時に、麻酔銃の銃弾が撃ち込まれる。

    ハナエ(ま…って……メグ………さ……)

    希薄になっていく意識の中、無音の声で呼びかけても届くはずもなく。

    メグ「あなたに、幸せになってほしいから」

    そう聞こえてきたのを最後に、ハナエの意識は混濁の底へと沈んでいった。

  • 136二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 06:31:46

    それから数時間後。

    地下生活者「…ヒヒヒ…。これはこれは…中々面白くなってきましたね…」
    メグ「…全っ然面白くないよ、こっちは」
    地下生活者「それは失礼…!」
    メグ「…で、もう動くの?」
    地下生活者「えぇ、このキャンペーンの終わり…見届けなければいけませんから」
    メグ「…それで、どうするの?ここから」
    地下生活者「そう焦らないでください…。今に始まりますから」
    メグ「…始まるって…」

    メグがそう言いかけた途端、爆発音が響く。
    それは、ゲヘナ学園の方向からだった。

    地下生活者「ヒヒッヒ…!始まった様子ですね…!」
    メグ「…何を…いや、まさかフランシス…?」
    地下生活者「ご名答…!さぁ、この混乱に乗じて、あなたのやりたいようにやりなさい…!」

    地下生活者がそう言い切る前に、メグは体を動かしていた。

  • 137二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 06:34:11

    ─そして、先生もその爆発を検知していた。

    アロナ「せ、先生!ゲヘナ学園で爆発が…!」
    プラナ「明らかに人為的なもの…かつ、外部からの干渉によるものです…!」

    二人からのその発言を受け、先生はゲヘナへと向かった。

    “ヒナ!そっちの様子は!?”
    ヒナ「こっちは平気…。でも、何が起きてるかはまだわからない…!」

    その言葉を聞いて、少し胸を撫で下ろす。

    “怪我がないなら良かった。これからそっちに向かうから、無理はしないで!”
    ヒナ「わかった、先生こそ気をつけて」

    通話を切りゲヘナへと急ぐ。

  • 138二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:22:45

    “…ん…?”

    その道中、先生は見覚えのある車を発見する。

    “あの車…ハナエの…!”

    メグとハナエが拠点として利用していた装甲車両。近づくと鍵は閉まっていない様子だ。ドアを開けると、中ではベル…別世界のハナエが倒れていた。

    “ハナエ?ハナエ!!”

    尋常でないその様子から、先生はハナエに必死に声をかける。

    ハナエ「………せん、せ…?」
    “大丈夫!?”
    ハナエ「…………わたし…なにして………ッ!?」

    ハナエは目を見開いて飛び起きる。

    ハナエ「メグさん!先生、メグさんは!?」
    “落ち着いてハナエ!…ここにはいないよ”
    ハナエ「…どこに行ったか、わかりますか?」
    “それは、わからないけど…”
    ハナエ「…そうですか…。ごめんなさい先生。少し、取り乱してしまって…」
    “いいんだよ、ところで…何があったの?”

    ハナエは、先程起きた出来事を先生に話した。

  • 139二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 17:29:47

    “…メグが…!”
    ハナエ「…私のせいです。私がもっと強かったら…」
    “ハナエのせいじゃ…”
    ハナエ「私のせいですよ!私が…弱いから…何も、できないから…」

    ハナエはポロポロと涙を零している。

    ハナエ「…結局…ダメだったんです…!私は…誰も救えないッ…!!助けられたと思ったメグさんも…!結局は助けられてなかった!!団長の…最期の頼みだったのに…私は…うぅ〜…!!」

    溢れんばかりの思いがハナエの目から流れ落ちる。先生は、何も言わずにハナエの頭を撫でていた。
    ─そしてその嗚咽と雫が治まってきた頃、先生は話を切り出す。

    “ね、ハナエ。良かったらさ…昔の話をしてくれない?”
    ハナエ「…昔の…話?」
    “…したくないなら、いいんだけどね。ハナエとメグ…二人がどうやって出会ったのかとか…そういうところも含めて、知りたくなって”

    少しの沈黙の後、ハナエはまだ少し潤んでいる目で先生を見つめる。

    ハナエ「…わかりました。先生になら…話せると思うので…」

    そうしてハナエは、何度か呼吸を整えた後…その口を開いた。

  • 140二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 22:20:05

    このレスは削除されています

  • 141二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 22:21:54

    ─崩壊したキヴォトスで、私たち救護騎士団は負傷した生徒の救護を行ってました。襲い来る機械や精神を侵された生徒たちから逃げながら、私たちは救護を続けていました。

    やがて、戦火も治まってきた頃…温泉開発部の皆さんが運ばれてきたんです。

    ミネ「…損傷が激しすぎる…。既に手遅れなものもいるようですし…仕方ありません。この方だけでも救護いたしましょう」
    ハナエ「はい!」

    温泉開発部の皆さんは、どうしようもできないほどの怪我をしている人が多く、残存している医療機器などの面から最も助けられそうな人を一人、選ぶしかありませんでした。

    それが、メグさんだったんです。

    ミネ「…左腕と両足の神経の損傷が激しい…。義肢を装着させるしかなさそうです」

    身体を欠損した患者さんの為の義肢。それをメグさんに取り付けて、治療を行いました。
    そうして空が白み出した頃、やっとメグさんの容態が安定したんです。
    そんな時、団長は私にこう告げました。

    ミネ「その方の救護を、任せましたよ。ハナエ」

    団長は他の生存者を探しに行きました。他の団員の皆さんも、残っている生存者を探したりしているうちに、一人…また一人といなくなっていきました。
    それからは、団長もみんなも…戻って来ず、私はメグさんの救護に、たった一人で専念することになりました。

    そして、長い長い時間の末に…ようやくメグさんが目を覚ましたんです。

    でも─

  • 142二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 22:33:06

    おつらい

  • 143二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 06:57:43

    目が覚めたメグさんには、何も残されてなかった。

    温泉開発部の皆さんは既に死んでいて、片手と両足の欠損…義肢の都合でお風呂…つまり温泉には入れなくなった。
    その事実を知ったメグさんは、発狂しました。
    何とか落ち着かせることはできましたけど、メグさんの心は既に壊れてしまっていたんだと思います。

    メグ「…ねぇ…なんで、私を死なせてくれなかったの?」

    …目が覚めてしばらくの間は、メグさんは私に何度もそんな風に問いかけていました。
    私はそれに何度も『私が救護騎士団だからです』と誤魔化していました。

    他にも、どこを見ているかわからない虚ろな目でずっと何かに謝っていたり…悪夢に魘されて飛び起きて、いわゆる過換気症候群の症状が見受けられる状態になったり…。
    その度に私はメグさんに『大丈夫です。私がここにいますから』と、声を掛けていました。

    やがてメグさんはそういったことを言わなくなって、リハビリを始めました。それで、私はひとまず…救護ができたんだと、思ってたんです。

    でも、違った。私は、メグさんのこと…なんにもわかってなかった…。メグさんの心を、救えてなんていなかったんです。

    ミネ団長との約束もありましたし、メグさんを救護すること…それが私のやるべきことだって、メグさんには言ってました。
    メグさんの笑顔が見たいから、メグさんと一緒にいるんだって…メグさんには言いました。

    …でも、ホントは違ったんです。

    ホントは、メグさんが死んでしまったら…。私には、何も残らなくなってしまうから…。

    …笑っちゃいますよね?患者を救護する理由が、自分のためだなんて。

    こんなエゴの塊みたいな私が、メグさんを救うことなんて、最初から─

    “違う!”

  • 144二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 15:18:03

    保守

  • 145二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 18:27:44

    そんなハナエの回想をぶった切るように、先生は吠えた。

    “…自分のためでもいいんだ。メグを救いたいって気持ちは本物だったんでしょ?”
    ハナエ「で、でも…私は…」
    “ハナエならできるよ。大丈夫”
    ハナエ「………」

    プアロナ「…先生、ハナエさんのことを心配するのもわかりますが、ゲヘナへ急がないと…」
    “そ、そうだった!”

    先生はアロナからの言葉を受けて、立ち上がる。

    “ハナエ!車借りるよ!”
    ハナエ「ど、どうしたんですか?」

    先生はハナエにゲヘナで起きたことを説明する。

    ハナエ「…まさか、メグさん…?」
    “…そうと決まったわけじゃないけれど…可能性はゼロじゃない…!”
    ハナエ「…!…急ぎましょう先生!運転は私が!」

    ハナエはゲヘナ学園へ装甲車を走らせる。先生は、その間にヒナへ連絡をしようとしていた。

    しかし─

    『おかけになった番号は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないか─』

    そんな音声が、無機質に響くのみだった。

  • 146二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 00:31:58

    保守

  • 147二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 00:57:14

    時は少し遡る─

    ヒナ「…く…!何が起きているの…!?」

    突如として起きた爆発。どこから、そして誰が仕掛けたものかわからない。更に電波障害も発生しているようで、他の風紀委員のメンバーと連絡がつかない。
    それだけならまだマシだったのかもしれない。しかし、今一番の問題は…。

    ヒナ「どこ行ったのよ、メグ…!」

    爆発騒ぎの中で、メグとはぐれてしまった。
    今この状況でメグと逸れるのはまずい。ホムラが襲撃してきた場合、止められるものが居なくなる。

    ヒナ「なんとかして、合流しないと…!」

  • 148二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 00:58:22

    >>145

    今更だけど誤字っとる…

  • 149二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 06:47:28

    地下生活者「おお…おおお!!この感覚、神々の星座…ですか…!」
    ホムラ「…何?それ…」

    ゲヘナ学園へ侵入したメグは、地下生活者からの聞き馴染みのない言葉に疑問を投げかける。

    地下生活者「小生が属していた世界…あの書に記録されている…超越的な存在たちです…!ヒヒヒ…それはまさに神格の顕現そのもの…!」
    ホムラ「…そんなのが出てきてるの?」
    フランシス「正確には、顕現する予兆が出ている、だ。そしてそれは、お前が呼び寄せているものである」
    ホムラ「私が?」

    どこからともなく現れたフランシスからの言葉に、メグは少し呆気に取られながらも尋ねる。

    フランシス「変質したお前の神秘に呼び寄せられているのだ。爆発こそ私の仕込んだものだが、今発生している電波障害はそれの予兆だ」
    ホムラ「…私の神秘が変質とか、よくわからないけど…それで私に何か不利益が出たりしないよね?」
    地下生活者「そこはわかりません。何せ超越的な存在なのですから。何を考え何のために行動するか…。矮小な小生たちでは理解できぬ領域の話なのですよ…ヒヒ…!」
    ホムラ「ふーん…まぁ、私のやるべきことは変わらない…よね」
    地下生活者「えぇ、ちょうどこの世界の下倉メグは空崎ヒナとはぐれているようです…。今がチャンスですよ…!」

    その言葉を受け、ホムラは銃に弾丸を装填する。

  • 150二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:18:29

    なんかまた凄いのが出たな…

  • 151二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 18:20:13

    メグ「ヒナ委員長とはぐれちゃった…どうしよう、これまずいよね…?」

    爆発により所々崩壊したゲヘナ学園にて、メグはヒナを探し回っていた。自分が狙われていることはわかっている。だからこそ、早く合流しなければまずい。
    そんなことを考えていると、後ろから聞き馴染みのある声が聞こえる。

    ホムラ「…また会えたね。会えて嬉しいよ…私」
    メグ「…!」

    別の世界の自分。…しかし、そこにいるのがあの時出会った彼女と同じようには、メグには見えなかった。

    ホムラ「…あの時は逃げられなかったけど、今なら護衛は誰もいない。さぁ、これで終わりだよ」

    武器をメグへ向けながらホムラは笑った。
    メグはそれを見て、同じく構える。

    ヒナ「伏せて!」
    「「!!」」

    その言葉が響くと共に、二人は回避を行った。

    メグ「…ヒナ…」
    ホムラ「…はぁ…また邪魔されるの?」

    そう言うとホムラはヒナに近づき近接戦を仕掛ける。それを冷静に捌き、ヒナはホムラと取っ組み合いになったまま窓を突き破って校庭へと飛び降りた。

  • 152二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 18:26:11

    ヒナ「…ここなら思い切りやれるわね」
    ホムラ「…なんで、邪魔するのさ…。私にはもう、こうするしかないのに…」

    そんな恨み言を吐くホムラに、ヒナは問う。

    ヒナ「…何も残ってない、あなたはそう言っていたけれど…果たして本当にそうなのかしら?」
    ホムラ「…どういうこと?」
    ヒナ「…朝顔ハナエ」

    自身の心臓が強く打たれたような感覚に、ホムラは襲われた。

    ヒナ「…彼女は、まだ残ってるじゃない」
    ホムラ「…あの子は違う」
    ヒナ「何が違うのよ。あなたのことを心配して、ずっと一緒にいてくれたのよ?」
    ホムラ「ハナエは、私を…こんな私を…ずっと、助けようとしてくれた。私からは、何も返せないのに…」

    ホムラは顔を俯ける。

    ヒナ「…彼女は、何か見返りが欲しくてあなたを助けたんじゃないわ」
    ホムラ「…違うよ、ヒナ。やっと、わかった。…私が一番嫌なのは、そんなハナエに何も返せない自分。私は…ハナエに幸せになってほしい。だけど、この世界の自分が憎くて仕方ない…。ハハ…ねぇ、委員長」

    顔を上げたホムラの顔を見て、ヒナは軽く恐怖を感じた。

    その目は、まるで塗り潰されたかのような─

    ホムラ「私、なんでまだ死んでないんだろうね?」

    黒に、染まっていた。

  • 153二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 00:41:34

    フランシス「…成功だ。今この瞬間を以て、彼女は主人公になり得る存在から、この物語を終焉へ導く『炎の悪鬼』[イブリース]となった。さぁ、その変質した力を解き放つがいい…」

    ホムラ「…大切な人の幸せを願って、その他の人の不幸せを願う。…歪んでるよね…アハハ…」
    ヒナ「メ、メグ…?」

    明らかに様子がおかしい。それにこの感覚─

    「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

    狂ったように、壊れたようにメグは笑う。
    それは、今までなんとか抑圧していた感情をすべて解放かのしたような笑い声だった。



    ─そうだよね。そもそも今までのうのうと生き続けていたこと自体がおかしかったんだ

    何もかも喪って、たいせつな人の幸せをねがっても、結局はこんなしゅだんしか取れない

    もう、めんどうだ


    こんなわたしも、わたしをしなせてくれないこのせかいも、なにもかも、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ



    も え つ き て し ま え

  • 154二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 06:17:34

    突如として、淀み始めた空を貫くほどの火柱が上がる。
    先生とハナエも、その光景を遠目から確認する。

    ハナエ「あの火柱は…!?」
    “ゲヘナ学園から…?アロナ、プラナ!”

    声を掛けると、二人は暗い顔をしていた。
    そのうち、プラナが口を開いた。

    プラナ「…この感覚、間違いないかと思われます」
    “そ、それって…”

    嫌な汗が、頬を伝うのを感じた。

    プラナ「…別世界のメグさん…。彼女は…反転してしまいました」

    それは、一番聞きたくなかった言葉だった。

  • 155二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 11:36:11

    始まってしまった…

  • 156二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 20:15:20

    地下生活者許すまじ!

  • 157二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 22:38:38

    地下生活者「あ、あれが『炎の悪鬼』[イブリース]…!ヒヒ…なんと恐ろしい…」
    フランシス「…あぁ、それに加えて神々の星座もある。この物語の結末は決定づけられたとも言えるだろう」

    吹き上がる火柱から炎が飛び散るように辺りに広がり、それらがあちらこちらに引火していく。その火柱の中心部に、メグのような姿をした何かが佇んでいた。

    ヒナ「…あれは…!」
    イオリ「委員長!」

    騒ぎを聞きつけ校舎内にいた生徒たちが外に出てきた。

    ジュンコ「何よこれー!至る所が燃えてる!」
    ハルナ「ここまでの規模の被害はゲヘナでも珍しいですわね」
    フウカ「落ち着いてる場合じゃないでしょ!?」

    日没が近くなり、そろそろ空が暗くなるはずだが、一面に広がった火が辺りを明るく照らしているため空は暗くなる様子を見せない。燃え上がっているのはゲヘナ学園の校舎のみならず、様々なところに火の手が回っている。このままにしていてはそれこそゲヘナ全体…いや、最悪キヴォトスがすべて灰と化す可能性もある…。
    燃え広がる炎の中心部に静かに佇む、メグの姿をしたソレは未だ動きを見せない。

    メグ「…別世界の私…だよね?あれ…」
    ヒナ「…ひとまず、アレを止めるわ。………マコト、状況はわかるわよね?手を貸してちょうだい」
    マコト「キキ…さしもの風紀委員長様もこの規模にはお手上げか。まぁいい、私もゲヘナが焼き尽くされてしまうのは御免こうむるからな」

    ヒナは通信でマコト及び万魔殿に協力を要請する。それに次いで、アコから連絡が飛んできた。

    アコ「委員長!」
    ヒナ「どうしたのアコ?言っておくけど万魔殿と手を組むことに文句を言われても…」
    アコ「違います!何か妙な反応を周囲から感じるんです!気をつけてください!」

  • 158二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 22:41:46

    その言葉に反応するように、ヒナはメグの頭上を見る。いつの間にか上がっていた火柱は消えていたが、かわりに巨大な火の玉が浮かんでいた。

    イズミ「な、何あれ!?」
    イオリ「…アコちゃんが言ってた妙な反応って…まさか、あれのことか…?」

    宙に浮かぶ火の玉は、まるで心臓のように一定のリズムに合わせて拍動している。

    ヒナ「…何か…いる?」

    やがてその火の玉は花火のような音と共に弾けた。飛び散るように撒かれた炎が辺りに落ちて新たな火種となる。そして、弾け飛んだ火の玉の中心部から現れたそれが、地上に降りてくる。

    チナツ「あれは…!?」

    両肩から二対の蛇を生やし、所々から炎を噴き上げる蛇の怪物。異様な雰囲気を放つそれが産声を上げるかのように吠えると、火の勢いは更に強まる。

    ジュンコ「あ、あんな怪物と戦えっていうの!?」
    イオリ「やるしかないだろ。あれをそのままにしておけば、絶対にとんでもないことになる…!」
    ハルナ「お気に入りのお店を燃やされるのは嫌ですものね」
    マコト「…どうやら…あの怪物、そしてメグの姿をした何かに対する意見は満場一致のようだな」

    戦車隊を引き連れて、マコトたちが現れる。
    それを合図にするように、ゲヘナの生徒たちが一様に武器を構える。

    マコト「…これ以上の被害拡大はここで食い止める!」
    ヒナ「…行くわよ!」

  • 159二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 01:01:39

    ゲヘナが燃えてる………………もともとか

  • 160二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 01:06:36

    ゲヘナ大炎上(物理)

  • 161二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 06:30:37

    ゲヘナ学園へ向かう装甲車の中、先生はプラナからの発言を受け、驚愕を隠せないままでいた。

    “メグが…反転した…!?”

    それは、あのシロコやホシノと同じ状態になってしまったということ。

    プラナ「状況はわかりませんが…反転した以上、メグさんはもう…」
    “いや、まだ元に戻せる可能性が…”
    フランシス「その可能性は、ない」

    後方から、冷たく響くそんな声が聞こえた。

    “フランシス…!”
    フランシス「焦っているようだな、先生。…だが、残念ながらあなたの力を持ってしても…この物語の結末は変えられない」

    その言葉を、私は何も言い返さずに聞く。

    フランシス「彼女の神秘は変質し、反転した。…本来なら彼女は別世界に置いても役割の薄い存在だったはずだ。それも、先生の死によって…変質した」
    デカルコマニー「そういうこった!」
    フランシス「私は変質した存在の役割を決定づけられるか…それを示すために彼女を利用した。結果として、彼女はすべての物語を破滅と絶望のエンディングへと導くイブリースへと変質した」

    表情の変化こそわからないが、きっと彼はほくそ笑んでいるのだろう。

    フランシス「そして、変質した彼女に呼び寄せられる形でこの世界に顕現した、神々の星座『ザッハークの怨嗟』…。この物語、この世界を灰と為すことを役割として呼び寄せられた存在。これらを対処する手段など…先生、あなたにはない。結末は今、決定づけられたのだ!」

    フランシスは、高らかにそう叫ぶ。その声に、ハナエは切り出す。

    ハナエ「…対処する手段などない…?じゃあ、メグさんは…?」

    顔は見えないが、今にも泣き出しそうな声だった。

  • 162二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 06:33:53

    フランシス「…このまま、このキヴォトスのすべてを燃やし尽くすだろう。それが、イブリースとなった下倉メグの役割なのだから」
    デカルコマニー「そういうこったぁ!!」

    フランシスのその声を、ハナエはどう受けとったのか。返答がないまま、ハナエは車を走らせ続けていた。

    フランシス「…それとも、先生。それでも、足掻くというのですか?」
    “当然、足掻くよ”

    即答だった。
    それが聞きたかったと言わんばかりに、フランシスは切り返す。

    フランシス「ならば見せてもらおうか、別の物語に対して…主人公たるあなたがどのように動くかを」

    そう言うとフランシスはどこかへと消えてしまった。
    すると、急にハンドルが大きく切られる。

    “どうしたの!?”
    ハナエ「炎の弾が、隕石みたいに飛んできてるんです…!」

    外の様子を見ると、時間はもう夜のはずなのに、辺りは煌々と輝いている。それの原因が、そこら中に広がっている炎のせいであることは明白だった。

    アロナ「せ、先生!これ以上車で近づくのは、危険です!」

    アロナの忠告を受け、先生はハナエに車を停めてもらうよう頼む。ここから少し進めばゲヘナ学園の本校舎があるが…。

    “…生徒を見捨ててはいけない”

    そう考えた先生は学園へと走り出した。ハナエもそれに続く。

  • 163二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 06:36:50

    そして、辿り着いたゲヘナ学園で見たものは…既にかなりの範囲に燃え広がった炎。既に戦いを繰り広げていたゲヘナの生徒たち。蛇のような怪物。そして─

    ハナエ「…メグ…さん…?」

    反転した、別世界のメグの姿だった。

  • 164二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 06:44:31

    雷帝の遺産、ゲヘナ総力戦…面白くなって参りましたぁ!

  • 165二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 12:18:30

    “みんな!”
    ヒナ「先生!怪我は?」
    “ひとまず大丈夫。そっちは?”
    マコト「…大丈夫と、言えれば良かったんだがな…」

    戦闘を行い傷ついていくゲヘナの生徒たち。怪我した生徒はなんとか後ろに運べているようだが…。

    マコト「…救急医学部の到着が遅れている…。まったく、セナは何をしているんだ」
    ヒナ「恨み言は後よ、それより今はアレらの相手を」

    ヒナが目線を向けたその先、反転したメグ…メグ*テラーと呼ぶべきだろうか。彼女と蛇の怪物がいた。

    “あれが…『ザッハークの怨嗟』…?”
    プラナ「そのようです。セトの憤怒と似通った力を感じます」
    ハナエ「…メグさん…」

    ひとまず、メグ*テラーとザッハークを引き離さないと…と考えた刹那、メグの火炎放射器から光線のような炎が射出される。

    ヒナ「ッ!先生!!」
    “こっちは大丈夫!”

    攻撃の跡が激しく燃えている。この破壊力と火力は相当なものだ。

    ハナエ「…私のせいだ」
    “ハナエ?”
    ハナエ「私が、メグさんとちゃんと話をしなかったから…」

    ハナエのヘイローが黒く変色していく。
    まずい。このままじゃハナエまで反転しかねない…。

  • 166二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 12:19:56

    そう考えていると…。

    メグ*テラーが急にこちらに移動してきた。

    イズミ「えっ!動いた!?」
    ジュンコ「今までその場から一歩も動かなかったのに!?」

    周囲から驚愕の声が上がる。
    大きな動きを見せなかった存在が大きく動けばそうもなろう。

    ヒナは即座にデストロイヤーを構え、撃つ。
    それらを躱して、メグ*テラーは先生へ襲いかかる。

    “ッ!”
    アロナ「せ、先生!?」

    先生はハナエを守るような姿勢を取る。
    そんな先生へメグ*テラーは攻撃を仕掛けようとする。

    アロナ「だ、ダメです!防護フィールドの出力を最大に─

    「戦場に、救護の手を!」

  • 167二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 14:58:00

    団長キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

スレッドは7/15 00:58頃に落ちます

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