【AI注意】【SS注意】メカクレデカパイモブウマ娘を置いていくのであとはみんなの好きにしてくれ3

  • 1二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:00:43

    「好きなだけ好きにしてくれ」と言うスレ主の言葉と供に送り出された一人のウマ娘。
    彼女の名前は、チャンドラポメロ。
    このスレは、彼女や彼女の友人達を好きに形作っていくスレです。

    やりすぎたら天罰もとい削除します

    画像は本編と1ミリも関係ないステラーブレイド風味のポメ

  • 2二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:01:58
  • 3二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:03:06

    ここまでのチャンドラポメロと愉快なDKPI仲間たち

    名前:チャンドラポメロ
    学年:中等部(ダイワスカーレットと同じ)
    容姿:烏の濡れ羽色の艶のある黒髪ロングで前髪目隠れ、瞳は明るいマリンブルー、他が地味な為かリップは色付き艶ありのを塗ってオシャレするタイプ
    性格:恥ずかしがり屋の引っ込み思案で、恥ずかしがったり照れたりしたら頬がすぐに紅潮する
    身長:179cm  体重:秘密
    スリーサイズ:B123 W62 H91
    備考①:適性は芝のみ、距離はマイル~中距離の2200Mまでで脚質は「差し」
    備考②:憧れのウマ娘は同期のダイワスカーレット。彼女の緋色の影を追い続ける頑張り屋
    一人称:私 二人称:「名前+さん」、同室及び親しい人は「略称(愛称)+ちゃん」

    名前:ダブルマシュマロ
    学年:中等部(ダイワスカーレットと同じ)
    容姿:栗毛のツーサイドアップでやや前髪目隠れ(ポメちゃん程ではない)、瞳は明るいルビー色、ギザ歯
    性格:明るく社交的でお喋り。またノリが良く、芝居がかった口調で話す事もしばしば
    身長:136cm  体重:秘密
    スリーサイズ:B102 W設定なし H設定なし
    備考①:適性は芝ダートの両刀、距離は短距離のみで脚質は「先行」
    備考②:ポメちゃんの友人枠、実家が地元じゃ一番の果物専門店
    一人称:ボク 二人称:「愛称+ちゃん」または「略称+さん」

  • 4二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:04:52

    名前:カベルネソラリス
    学年:中等部(ダイワスカーレットと同じ)
    容姿:芦毛のポニーテール、青色ハーフリム眼鏡、瞳の色はエメラルドグリーン
    性格:竹を割ったようにさっぱりして表裏のない正直者
    身長:160cm  体重:秘密
    スリーサイズ:B110 W設定なし H設定なし
    備考①:適性は芝のみ、距離はマイル~中距離の脚質は「逃げ」
    備考②:ポメちゃんのライバル枠
    一人称:オレ 二人称:アンタまたは「略称」


    DKPI仲間

    ダイワスカーレット → DKPI世代のモブウマ娘が生えてきたせいで結果として登場人物の中では下の方になってしまったが、圧巻のB90

    ネーロディセッピア → チャンドラポメロの同室。身長や髪色が似通っている為にバストサイズもポメちゃんと同じぐらいと予想される

    オーニソガラム → 1スレ目の元スレ主の空目によってB90オーバーになった子。身長不明

    ミリオンゴールド → 1スレ目の元スレ主の空目によってB90オーバーになった子。身長不明


    その他のお仲間

    ウオッカ → ダイワスカーレットの終身名誉ライバル。今後出番があるかは不明

    ミスディレクション → ダブルマシュマロとコース及び距離適性が同じらしい。DKPIかどうかは不明

    チャンドラポメロのトレーナー → 一人称:ボク ポメちゃんに対して:チャンドラポメロ君→ポメロ君→ポメロ 二人称:ウマ娘に対しては「名前」+君 身長はポメちゃんとほぼ同じの新人トレーナー

  • 5二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:09:36

    チャンドラポメロ プロンプト
    solo,long hair,black hair,(black-horse tail),no ears,(blush:1.5),lips,(bangs over eyes:1.3),long bangs,black bangs,
    BREAK,masterpiece, high quality, huge breasts,(horse ears),(kemono ears),

    本人の情報のみ

  • 6二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:10:40

    ダブルマシュマロ プロンプト
    ((masterpiece)), ((best quality)), (ultra-detailed), (high resolution), amazing quality, absurdres, beautiful face, high detailed face, (perfect anatomy), very aesthetic, 8K, vibrant colors, depth of field, sharp focus, detailed fingers, detailed body, perfect hands, cinematic light, ray tracing, detailed illustration,
    (umamusume, horse girl, long horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    16 years old, (light brown hair, dark orange hair, multicolored hair, medium hair, twintails:1.5), (hair over eyes:1.6), red eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes, slit pupils, sharp teeth,
    (oppai loli, short height:1.2), (huge breast:1.3), breasts apart, wide hips, curvy,

    本人の情報のみ

  • 7二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:14:35

    10レスまで伸ばさなきゃ、と思ったけど、5レス付けば取り合えず朝までは持つ感じになっているのね

    スレが伸びる毎に増えるDKPI世代

  • 8二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 07:52:14

    スレ立て乙

  • 9二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 08:55:09

    今のところBサイズ不明はミスディレクションだけかな?

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 10:00:22

    勝手にダイス振って決めてもいいのかしらね…

    >>9

  • 11二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 10:07:10

    ダイスでポメちゃん以上になったとしても、SS内だとちゃっかりポメちゃん以上のサイズは5人ぐらいしかいない、と予防線張られていて芝生えるわよ

    これで身長ダブルマシュマロぐらいでバストポメちゃん級とかになったら芝超えて森生えるわよ

  • 12二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 10:18:24

    ミスディレクションは「注意を意図していない別の所に向かせるテクニックのこと」なので、ノットDKPIだけとデカケツムチ腿で視線をそちらに誘導させる体形かもしれない

  • 13二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 17:48:55

    ミスディレクションを黒子のバスケで学んで育った人間だけどレースでその技術を使えるタイミングはあるのだろうか?
    みんな基本的にゴールだけを見てるわけだから、こっちへの視線、視点を惑わせるミスディレクションは全く効果がないように思えてしまうな

  • 14二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 18:03:06

    競馬のミスディレクションで似たようなパターン且つ分かりやすいのは2001年天皇賞(秋)のアグネスデジタルかな
    テイエムオペラオーは競り合うと絶対に抜かさないぐらいに強いのだけれども、逆を言えば競らなければ抜かす事が出来る
    それを利用して大外の死角から抜いて1馬身差で勝利を収めている
    アグネスデジタル側からはテイエムオペラオーを視覚内に収められているから抜かせるけれども、テイエムオペラオー側は馬も騎手も完全に意識の外からしてやられている

    そういう意味ではDKPIかどうかは分からないけれども、ミスディレクションは大外から一気に来るタイプの子なのかも知れない
    そして、それで勝てるかどうかはともかく、毎回それで先頭を抜き去ろうとするスタイルなら見てて絶対に面白いだろうから、一定数のファンが付くタイプ
    DKPIかどうかは分からないけれども

  • 15二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 18:16:52

    因みに因むとミスディレクションはダブルマシュマロと同じ芝ダートの単距離専門という形になっているけれども

    ↑の外側最後方からぶち抜くスタイルのダートの競走馬は実は既にいて…


    ダート単距離1400Mの根岸ステークスのブロードアピールが正に先頭の視覚外から強襲且つ一気にぶち抜いて差し切り勝ちしている

    実際の競馬に興味が無くとも、一度は見てみると良いかも知れない

    多分、初見時は変な笑いが出る事請け合い

    「届くか、届くか、届くか、届いた!」伝説の追い込みブロードアピール【根岸ステークス2000】


  • 16二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 18:56:46

    >>15

    んほおすごい

    デジたんのマイチャンの動画みた時くらい笑った

    そりゃあ外側からこんなぶっ飛ばされてきたらどうにもならんでなぁ

    独走してて勝ち確やと思てたらこれやもん

  • 17二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 22:22:22

    >>15

    初見だとスパート開始時にカメラの視野外にいたから、まさにどこから来た?だった

  • 18二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 23:38:56

    前スレ191から


    ※※※


     ダブルマシュマロの勇姿を、チャンドラポメロはスタンド最前列の関係者特別席で拍手で讃えた。
     彼女自身にはダートの適性はないものの、ダブルマシュマロが強い走り方、強い勝ち方をしたのは十二分に理解出来る。
     そこまで急ではないとはいえ、坂を駆けあがって前へと迫り、そのまま差し切るどころか更に着差を伸ばしてのゴールイン。短距離戦のスピードレースならではの速度勝負に、真っ向から挑んで勝利を掴み取るダブルマシュマロの姿は、普段の明るくお喋りな彼女とは全くの別物だった。
     クーリングダウンを終え、ダブルマシュマロは自身の勝利を誇示するかのように右手の拳を天に向かって上げつつ、スタンド前へと戻ってくる。
     メイクデビューレース故か、拍手こそ疎らだったものの、それでも彼女は満足げにスタンドを見上げた後で軽く一礼をする。
     それから顔を上げたダブルマシュマロとチャンドラポメロは目が合った。一瞬だけ意外そうな顔をした彼女だったが、すぐに満面の笑みを見せてチャンドラポメロのところまで小走りでやってくる。

    「見ててくれたんスね、ポメちゃん」
    「はい。マーシュちゃん、凄く格好良かったです」

     レース直後で上気していたダブルマシュマロの頬は、チャンドラポメロの心からの賛辞によって更に赤くなり、彼女は照れくさそうにはにかんだ。
     そして、照れ隠しなのかすぐにわざとらしく右手の人差し指で鼻の下をこする仕草をし、その後、右手を広げて上げたかと思うとサムズアップの仕草を取った。

    「芝ダートの両刀使い、ダブルマシュマロ伝説はここから始まるスよ!」
    「うん! 頑張って!」
    「……ポメちゃんはちょっと素直過ぎスね。あ、いや、ボクのネタが流石に古かったスか」
    「え? え?」

     真上に向かって立てた親指を、ゆっくり沈めるような動作をしながら宣言するダブルマシュマロを応援したつもりだったが、何故かチャンドラポメロはその彼女から小首を傾げられてしまう。
     その意味が分からずに困惑していると、二人のやり取りを邪魔しないように配慮していたのか、チャンドラポメロの隣で黙っていたトレーナーが声を上げる。

  • 19二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 23:40:23

    >>18


    「メイクデビュー勝利、おめでとう。ダブルマシュマロ君」

    「あっ、えっ。……へへっ、ありがとうございまさぁ、ポメちゃんトレーナーの旦那ァ」

    「……うぅん。ポメロと"あいつ"から話には聞いていたけれども、随分と個性的だね」


     声を掛けられるどころか、まさか勝利を祝って貰えるとは思っていなかったのか、ダブルマシュマロは急にごまを摺るような揉み手をしながら上目遣いで腰を低くする。

     そんな彼女に少しの間を置いてから、トレーナーは言葉を選ぶかのような発言の後、右手にある腕時計を確認する。


    「ポメロ。そろそろ準備をしよう」

    「あ、はい。それじゃあ、マーシュちゃん。私たち、行くね。本当におめでとう」

    「うっス。応援感謝っス。ポメちゃんもレース、頑張って欲しいス」

    「うん」


     トレーナーに声を掛けられて、チャンドラポメロとダブルマシュマロは互いに挨拶をし、それぞれがそれぞれの向かう場所へと足を向ける。

     先導するトレーナーの背中についていきながら、次は自身のレースだという事を実感し、チャンドラポメロは緊張を始めた。

     レース直前には収まるものとはいえ、この心がざわついて神経が張り詰める感覚は、何時になっても慣れないと思いつつ、彼女は自身が出走するレース、第5レースの準備へと向かうのだった。

  • 20二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 23:41:30

    >>19



    ※※※



     東京レース場。第1レースはダート1600Mクラシック級未勝利レース。勝者はパドック時に「このレースに勝てなければ引退をします」と決死の覚悟で宣言し、見事初勝利を収めたディフィキリス。

     第2レースはダート1200Mメイクデビューレース。勝者は後にアングラなウマ娘記事で「小さな身体に大きなお餅。夢は更にデカくGⅠか?」と書かれる羽目になるダブルマシュマロ。

     第3レースは芝1800M1勝クラスレース。勝者はメイクデビューレースを華々しく勝利で飾った後に勝ち切れず、それでもレースに挑み続けて5度目にして2勝目を得る事になったクイントオネスト。

     第4レースはダート1400Mメイクデビューレース。勝者はダブルマシュマロとコース及び距離適性が被っている同じクラスのミスディレクション。ダートレースは「差し」や「追込」が不利と言われる中、最後方から大外一気の追い込みを魅せ、観客を沸かせた。

     そして、続く第5レース。芝1600Mメイクデビューレース。

     チャンドラポメロと、それから奇しくも同じレース出走となったカベルネソラリスが挑むレース開始を告げる演奏が、東京レース場に響くのであった。

  • 21二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 23:43:08

    ちょっと駆け足気味かも知れませぬが、第一章、既に14000文字に到達しかねない勢いなのでポメちゃんのレースまで大幅にスキップじゃい!
    ほーなーまーたー!

  • 22二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 06:47:30

    >>21

    毎日楽しみにしてる

    ここ最近暑いので無理せずに

  • 23二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 10:41:02

    ミスディレクションは、言動勘違いされ系なのかもしれない

    何故かオカルトに明るいと周囲に思われており、占いや相談を持ち掛けられることもしばしば
    本人は至って論理とデータの人なのだが静かに考えながら話すので歯切れが悪くなる傾向があり、ミステリアスな外見も相まってそれが却って彼女の『神秘性』を高める結果になってしまっている
    当然、占い相談をされても当たり障りのない回答しか出来ないのだが、どうとでも取れるが故に「当たり」判定も極大であり良く当たるという評判は本人を困惑の渦に突き落としている

    と言うのが浮かんだ

  • 24二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 11:41:27

    デッッッッッッッッッッ

  • 25二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 12:34:05

    乳タプしたい

  • 26二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 13:00:25

    ミスディレクションがここに来て人気になっててダート生えるわよ

    意図しないところに、という視覚情報的に

    見た目神秘的、オカルト好きそう → オバケ怖い…
    落ち着いていて大人しそう → 併走前にマーシュちゃん引きずるぐらいには活発ですけど!?
    おっぱいデカいね → 尻の方がデカいとは言えない…

    みたいな?

  • 27二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 15:03:55

    ミスディレクションのパイが!
    小さい訳ないだろうがっ!
    デカパイポメちゃんの名前候補に挙がったパイが!

  • 28二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 15:12:54

    蛍の季節

    指示してないのに透けさせるので、これはAIさんのフェチポイント

  • 29二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 17:38:38

    >>23で言動的なミスディレクションもあるかなと思ったけども、よく考えたらSS内での動き的にそっちの可能性はなさそうだわな

    ミスディレクションは名前が名前だけに、考える余地があって面白そうなのよね

  • 30二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 17:55:37

    >>29

    とはいえ、みんなで好きにしてくれなスレだし、色々アイディアすり合わせてもいいと思うスよ

    現状、SS内で出た情報もダブルマシュマロとコース及び距離適性が被っているらしいって事と、ダブルマシュマロを引き摺れる胆力(?)があるってところと、ダブルマシュマロと仲が良いのか放課後にダンスレッスン一緒にやっているぐらいしか出してませんし…


    と思って書いたSS見返したら「鹿毛のショートカット」って情報があって芝生えるわよ

  • 31二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 18:40:26

    好きにしたらいいけどどうせならみんなで好きにしたいもんだ
    貴様ひとりで好きにして楽しんでんじゃねぇーっ!俺たちにも好きにさせろーっ!

  • 32二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 18:44:55

    だったらデカパイなのかチッパイなのか!
    ケツがデケぇのかちいせえのかの安価出しまくって!
    振ればいいだろ! ダイスをよぉ!

    実はポメちゃん以外はスリーサイズもまだ出ていないというお話

  • 33二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 18:53:19

    (スンッ)


    後は単純に文章書く側としては最低限の情報出しておかないと読み手に想像丸投げや行間読めをさせるのはちょっと…ってのがあります

  • 34二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 23:03:34

    >>20


    『週明けに吹き飛ばされた梅雨前線が戻って来る事を予感させるような曇り空になってきました、東京レース場。第5レースは芝1600Mメイクデビューレース、9人のウマ娘によって行われます』


     演奏が終わり、実況のアナウンスが響く中、出走ウマ娘たちがそれぞれ名前を呼ばれた順に、係員の誘導に従う形で各ゲートへと入っていく。

     一人、また一人と各自ゲートに収まる中、未だその名を呼ばれないチャンドラポメロは、例によって緊張の最中にあった。


    『今、偶数枠の最後の子がゲートに……おっと、8番エクレールノアがゲート手前で脚を止めた。緊張しているのでしょうか?』


     その緊張が伝播したのか、はたまた彼女もチャンドラポメロと同じく緊張しいな性格なのか、アナウンスの声のままに8番ゲートを見ると、エクレールノアと呼ばれたウマ娘がゲート前で頭を垂れて立ち止まっている。

     チャンドラポメロは、その名前と顔に見覚えはない。少なくとも、同じクラスの子ではないと思った。しかしながら、パドックでの彼女の姿は覚えている。その時から自身と同じように俯き気味で、そのせいかは分からないが人気も最下位だった。

     とはいえ、何時までも人の緊張を見ている訳にもいかないと、チャンドラポメロは視線を8番ゲートから逸らす。ここはもう、模擬レースや選抜レースの場ではない。れっきとした本番の場なのだ。


    「んっ」


     釣られて俯き気味にならないように、チャンドラポメロは背筋を伸ばして前を見る。パドックではエクレールノアのように緊張のあまり俯いてしまい、アピールも何もなかった。

     メイクデビュー戦という事で、まだ情報が出回っていなかったのと、自身の体格の良さから堂々の2番人気に推されたのだ。せめて、それに恥じないような振る舞いをしなければ、とゆっくり息を吐いて緊張を遠ざけようとする。


    「よう。ついに本番だな」

    「ひゃっ!?」


     すると、急に右側から声を掛けられ、チャンドラポメロは思わず変な声を上げてしまう。恐る恐る声のした方を見ると、そこには同じレースに出走する1番人気のカベルネソラリスが不敵な笑みを浮かべていた。

  • 35二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 23:04:58

    >>34


    「あれはしばらくもたつきそうだったからな。つい声を掛けさせてもらった」

    「は、はあ」

    「調子の方はどうだ?」

    「……問題、ありません」


     カベルネソラリスが言うように、今一度8番ゲートへと目を向けると、踏ん張るエクレールノアを係員が複数人で何とかゲートに入れようとしているのが見えた。

     その様子をさして気にも留めていない様子で、カベルネソラリスはチャンドラポメロとの会話を続けようとする。彼女の調子が悪くないと聞いたカベルネソラリスはメガネの奥のエメラルドグリーンの瞳を光らせ、笑みを更に深くした。


    「ハハッ。そうこなくっちゃな。選抜レースでは先着を許したが、オレだってあれから研鑽を積んだ。今日はアンタの胸を借りるつもりで挑ませてもらうぜ」

    「……トレーニングを積んだのは、私も、同じです」


     挑発的な目から逃れるように一度は目を伏せたチャンドラポメロだったが、ここはターフの上で、今から始まるのは厳しい勝負の世界。

     今日というレースは二度とない。それこそ「もしも」が許されないところに立っているからこそ、今一度目を開いたチャンドラポメロは目の前のライバル、カベルネソラリスを捉える。

     前髪でほとんど見えないだろうに、その隙間から彼女の視線を感じたのか、カベルネソラリスはますます嬉しそうに笑い、その目を細めた。


    「おっ、嬉しいね。今回はちゃんとアンタの眼中にオレが映っているようだ」

    「9番、カベルネソラリス」

    「っと、呼ばれたようだ。じゃあまた、ゴール板の先で」

    「はい」

  • 36二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 23:06:25

    >>35


     挑発的とすら思える言葉の後、係員に呼ばれたカベルネソラリスは右手を軽く上げながら自身のゲートへと向かっていく。

     その背中を見送りながら、チャンドラポメロは自身の緊張が薄れている事に気付く。彼女との会話がそうさせたのか、代わりに身体の奥底から闘争心と思える熱が湧いてくる。

     勝つか負けるかは分からない。けれども、今この場に立っている以上、最善を尽くす。

     負けるつもりでこの場にいるウマ娘など、それこそ一人もいないのだから。


    「5番、チャンドラポメロ」

    「は、はいっ」


     一度大きく深呼吸をしながら自分に言い聞かせたところで名前を呼ばれ、チャンドラポメロは自身のゲートへと向かう。

     係員の誘導の元、ゲートの中へと入って、もう一度深呼吸をした。

     緊張は完全に抜けている。今回は、出走前にレースの条件を再確認する必要がなさそうだと彼女は思った。


    『少しトラブルがありましたが、最後に1番のトリプルエスケイプがゲートに収まって、全ウマ娘態勢完了──』

    「……」


     そして、アナウンスの声と共に先程まで湧きたっていた闘争心も一時的にかき消える。

     チャンドラポメロにあるのは、凪のような静かな精神と、目の前にあるゲートが開く瞬間を待つ心だけになった。


    「ふっ!」

    『──スタートしました!』


     そのゲートが開き、短く息を吐くと同時に彼女は、これから始まる長く、過酷なレースの道への第一歩を踏み出したのだった。

  • 37二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 23:08:10

    ついに始まったポメちゃんのメイクデビュー
    このレースでポメちゃんは勝てるのかどうか!?
    カベルネソラリスとの3度目の勝負の行方は…!?
    勝利の女神は一体誰に微笑むのか!?

    というところで、ほなまた…

  • 38二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 00:09:33

    ギスらない程度に対戦相手との緊張感のある会話が良いねぇ

  • 39二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 07:26:41

    >>38

    その感想といいねが暑さでバテた心身に沁みますぜ…



    後、「好きなだけ好きにしてくれ」って事だから私のSS…SS?に気後れせずにバンバン好きにして欲しいんスよ

    私は可能な限りそれらを拾い上げて「好きなだけ好きにする」っスー!(ダブルマシュマロをチビデカパイにしながら)

  • 40二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 12:35:42

    シングレコラボでトレセン学園メイド喫茶か…なるほど…

  • 41二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 12:44:09

    >>40

    だがちょっと冷静になって考えてみて欲しい

    デカパイ世代がメイド服になったらそれはもうデカパイセンシティブなのでは?

    いや、クラシカルメイドならギリイケる…のかな?

  • 42二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 15:42:35

    >>41

    クラシックメイドかぁ

  • 43二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 16:57:59

    >>42

    急に新しいDKPI世代が来たわね…

    オヌシナニモノ?

  • 44二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 18:00:53

    あの…AIさん?
    私、ダブルマシュマロのクラシカルメイド服を注文したんスけど…この胸元全開は一体…
    えっ? 乳がデカいせい??? アッハイ

  • 45二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 19:34:45

    慎ましくある
    それがメイド道

  • 46二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 22:05:16

    お化け屋敷のお化け役を引き受けたダブルマシュマロ

  • 47二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:52:24

    >>36


    『各ウマ娘、綺麗なスタートを切りました。先行争いは8番エクレールノアと9番カベルネソラリス……おっと、エクレールノアが先頭に立ってそのまま──』

    「っ!?」

    『──そのまま2番手のカベルネソラリスを大きく引き離していきます! これは失策、はたまた何かの作戦か!?』


     外枠の二人が先陣を切り、そのままチャンドラポメロたちの前方へと内に寄せてきたかと思ったら、遠くから聞こえる実況の通り、エクレールノアが「大逃げ」と言わんばかりの先頭を取った。

     後方から見ても分かるぐらいに離れている彼女の後姿に、チャンドラポメロは一瞬、自身も前に行こうかと思ってしまう。


    『前を行くのは8番エクレールノア。そこから大きく離れて2番手には9番のカベルネソラリス』

    (……)


     しかし、すぐにそれは愚策と堪え、事前のトレーナーとの打ち合わせ通りに中団外側で先団を視野に入れつつも内に圧を掛ける方向へと動く。

     暴走か、もしくはそれを装った揺さぶりか。そのいずれにせよ、大きく逃げたエクレールノアに釣られれば、その分スパートのスタミナがなくなる。気持ち的には前に行きたいと思いつつも、チャンドラポメロはその誘惑に耐える。

     トレーナーは言った。

     チャンドラポメロの武器は、切れ味の鋭い末脚でも、序盤から中盤に掛けての他者への圧でもない。

     本来仕掛けるべき場所よりも前から仕掛けられるロングスパート。その例として引き合いに出されたのが他でもないダイワスカーレットだった。


    (ダイワスカーレットさんは息の長い、スタミナに物を言わせたロングスパート……それに対して私は)


     スタミナと根性を燃やして徐々に加速していくロングスパート。

     それがチャンドラポメロ最大の武器。故に、序盤も序盤で他の者の走りに惑わされてスタミナを消耗する訳にはいかない。

     トレーナーとの打ち合わせと、目の前の現状とを再認識し、彼女は落ち着いて走りに集中する。


    「~っ!」

    「えっ!? くっ!」

    「っ!?」

  • 48二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:53:27

    >>47


     けれども、それはあくまでもチャンドラポメロ自身の話。

     彼女の少し前の二人は、スタート直後よりも更に距離を稼ぐエクレールノアに痺れを切らしたのか、前へと出て行ってしまう。見れば、その二人よりも先行している二人が「逃げ」のカベルネソラリスの真後ろまで迫っている。

     結果として、チャンドラポメロの体格を利用した壁による圧を受けるのはすぐ内を走る一人のみとなってしまい、先頭、先団、中団ではなく後方という状況に陥ってしまった。


    『先頭からおさらいしましょう。先頭8番、エクレールノア。2番手には大きく離れて9番のカベルネソラリス。その左後方に続く3番手は1番のトリプルエスケイプ』

    「……」


     風を切る音と、ターフを踏み鳴らす音に混じって聞こえてくる実況と共に、チャンドラポメロは視界内から得られる情報と共に整理していく。


    『その右側には4番ダイオウミドリ。ここまでが先頭集団。続いて中団内内に7番のホールドシンボル。すぐに続いて2番のホワイトブッシュ。そこから少し離れて3番、アスターユユ』


     そして、チャンドラポメロ自身はそのアスターユユの左後方に位置している。となると、必然的に彼女の後方には一人しかいない事となる。


    『……そして最後方、6番のフルールドネイビー。かなり縦長の展開となりました!』


     情報は整理出来た。しかし、チャンドラポメロの視線の先では未だ大逃げのエクレールノアが第3コーナーへと向かっていく姿が見える。心なしか、続くカベルネソラリス以下三人も前に出ているように思えてきた。

     もしかすると、エクレールノアの先行を許すと、このまま押し切られるのではないかという不安が彼女の頭を過ぎる。


    (……だとしても!)


     それでもチャンドラポメロは自身を抑え続ける。

     東京レース場の芝左回りのコースは、向正面から第3コーナーへと入る手前から下りの傾斜がある。

     そのコース情報があるからこそ、先行している者たちが速度を出しているように見えるのは一時的なものに過ぎない。

     そう信じて、彼女もまた先頭、先団に続いて第3コーナーへと入る。


    『各ウマ娘、第3コーナーから第4コーナーへ! ここで先頭のエクレールノアがいっぱいになったのか、2番手のカベルネソラリスとの距離が縮んでいく!』

    (……仕掛けるは、今!)

  • 49二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:55:12

    >>48


     第3コーナーから第4コーナーへと入る手前の緩やかな曲線コースを見て、チャンドラポメロは脚の回転を速めるよう意識する。

     コーナーで速度を出し過ぎれば、そのコーナーの終わりで大きく外へと膨らんでしまう可能性がある。しかし、徐々に加速していくスタイルの彼女であれば、本格的な加速に乗るのはそのコーナーが終わった後になる。

     第4コーナーからの最終直線で先頭を抜かす気持ちで、チャンドラポメロは外から先頭集団を差しに掛かる。


    『残り600を通過! 先頭はエクレールノアに変わってカベルネソラリス! 続いて1番トリプルエスケイプと4番のダイオウミドリが食らいつく。8番エクレールノアは完全に沈んだか!』


     実況と共に第3コーナー終わりまでは先頭を走っていたエクレールノアが垂れ下がり、また彼女に釣られる形で序盤から脚を使ったホールドシンボルとホワイトブッシュも下がってくる。

     チャンドラポメロが彼女たちを交わして最終直線へと入った時、前方にはまだ三人の抜かすべきウマ娘たちの後ろ姿があった。


    「ふうぅっ!」


     十分に温まった脚を更に回転させて加速を継続し、チャンドラポメロは前三人を抜かしに掛かる。


    『残り400Mの標識が迫る中! カベルネソラリスが逃げる! 逃げる! トリプルエスケイプとダイオウミドリが食い下がるも離される! 外から! チャンドラポメロが上がってきたぞ! 凄い脚だ!』


     スタミナを削り、根性を燃やし、チャンドラポメロは更に加速する。彼女が400Mの標識を通り過ぎた時、前の二人は捉え、そのまま追い抜かす事が出来た。

     残るは、後一人。カベルネソラリスだけとなった。


    『チャンドラポメロがカベルネソラリスに迫る! 逃げ切れるか! カベルネソラリス! 捉えられるか! チャンドラポメロ!』


     そして、残り300Mというところで、ついに彼女はカベルネソラリスの横に並ぶ事となる。


    『並んだ! 並んだ! さあ交わせるか、チャンドラポメロ! それとも意地を見せるか、カベルネソラリス! 残り300を切りました!』

    「ぐぅうっ!」

    「~っ!」

  • 50二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:57:20

    >>49


     カベルネソラリスを交わし、1着になる為には、「一番」になる為には、更なる加速が必要だと、チャンドラポメロは力強く脚でターフの芝を蹴る。

     視界から視界の端へ。更には視界外へと、カベルネソラリスの姿が見えなくなった。


    「……えっ!?」


     その時であった。

     チャンドラポメロの視界内、その先に、彼女は影を見た。

     それはレース中の彼女の脳内物質が作り出した幻影か、はたまた一瞬の無呼吸によって脳が混乱して見せた幻覚か。

     チャンドラポメロには分からなかった。

     しかし、それでも彼女は確かにそれを見た。

     自身から今まさに逃げようとする、緋色の影を。

  • 51二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:58:36

    副題及びタイトル回収する作品は名作だってメジロのおばあ様が言っておりました
    このSS……SS?が名作かは分かりませんが、まずは書きたかったところが書けて満足しました
    ほなまた…

  • 52二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 09:02:25

    ついに脳を焼かれた?か
    この先も気になる

  • 53二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 09:21:21

    焼き付けられたからこその『影』か

    コンスタントに書き続けてる上に、レースシーンの高いクオリティ
    歴の長いSS書きとお見受けする

  • 54二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:05:02

    >>52 >>53

    あざます…あざます…

    へへっ、SS書いていてここまで褒められた事がないので照れちゃいますぜ、旦那ァ…(揉み手)



    ところで42ちゃんはDKPI世代の誰ちゃんになるんじゃろか…

  • 55二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 17:25:47

    >>42

    確かに名称不明ですね

    既に名前が付いてる子かな

  • 56二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 17:38:23

    「どうかされたスか?お夕飯までもうちょっとかかるスよ。あ、旦那様、つまみ食いはいけないス……」
    なメイドマーシュ

  • 57二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 20:32:17

    >>56

    ポメイドとメイドマーシュを雇いたいだけの人生じゃった…

    それはそれとして今日もポメちゃんの物語を書くぞい


    緋色の影を見たポメちゃんのシーンからBGMとして「Ⅺ」が挿入されます(脳内BGM感)

  • 58二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 22:53:31

    >>50



    ※※※



     チャンドラポメロは、瞬く間にその緋色の影に目を奪われた。

     緋色に輝き、誘うように揺らめき、それでいて蜃気楼のように自身から遠ざかっていくその影に。


    「っ!」


     彼女は舞い踊るように逃げる影を追う。その距離は目算にして10バ身。捉えられるかどうかも分からない。そもそも、何であの影が逃げるのかも、それを自身が追っているのかも、分からない。もしかすると、緋色の影に追いつけば、追い越せば、それらが分かるかも知れない。

     だからこそ、チャンドラポメロは影に追いつく為に、加速する。


    『チャンドラポメロが交わした! 先頭はカベルネソラリスに変わってチャンドラポメロ!』


     遠くから聞こえてくる実況の声が。ターフに響く数多の走行音が。自身の呼吸音が。その呼吸によって得た酸素を、全身へと巡らせようと鼓動する心臓音が。

     その全てが、今のチャンドラポメロにとって煩わしく思えた。気が散ってしまう。邪魔をしないで欲しい。あの影を追いかけられなくなる。あの影に追いつけなくなる。


    『チャンドラポメロ、脚色は衰えない! 交わしても尚、カベルネソラリスを突き放さんばかりのその走りは、正しく太陽の光を受けて伸びる影のようです!』


     実況の声が更に遠ざかる中、チャンドラポメロは無我夢中で加速し続け、緋色の影に迫る。


    『1バ身差! 2バ身! 残り200を切ってもまだ加速する!』


     7バ身。煩わしい実況の声が消える。

     5バ身。ターフに響く数多の走行音が消える。

     3バ身。彼女の脚から聞こえてくる悲鳴が、自身の荒々しい呼吸音が、喉元まで迫るチャンドラポメロの心臓の音も、消えた。

  • 59二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 22:54:53

    >>58


    「……っ!?」


     そしていよいよ、緋色の影の輪郭がハッキリと見える位置まで近づいた時、影はより強く輝いた。

     まるであの日見た、ダイワスカーレットに見出した緋色の光のように。

     目も眩むような一瞬の閃光の後に、チャンドラポメロは目が見開く感覚を知った。


    「……えっ?」


     視線の先に、もう緋色の影はいなかった。

     代わりにいたのは、チャンドラポメロもよく知るウマ娘。

     遠目から見ても柔らかそうで、手入れの行き届いた栗毛のツインテールが風に靡いて、視線を奪う。

     腕を振り、ターフを蹴って走っているというのに、その体幹はまるでブレていない。全身を使っての走りであるのに、頭すら上下しない綺麗な走り。

     チャンドラポメロの事など一切気にも留めず、ただ「1番」を目指して走り続けるその後ろ姿は、あの日からずっと彼女の脳裏に焼き付いたダイワスカーレットそのものだった。


    「く、ぅっ!」


     何故彼女がここにいるのか、という疑問を抱く前に、ダイワスカーレットと思われる者が更に加速する。

     3バ身が4バ身に。4バ身が5バ身と引き離されるのを見て、チャンドラポメロはそれに追いすがろうと脚を回転させる。脚を前に出し続ける。

     消えた心臓の音が、全身から聞こえる。

     止まっていた呼吸が、悲鳴のような音を鳴り響かせる。

     自身の脚から、何かが壊れる音が発せられる。

     それでもチャンドラポメロは止まらない。もう、彼女自身にも止められない。

     ただひたすらに。ダイワスカーレットに追いつく為に。その隣に並ぶ為に。追い越す為に。その脚を回転させ続ける。


    『4バ身! 5バ身! チャンドラポメロ、まだ止まらない! まだ突き放す! 残り100M!』

  • 60二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 22:56:17

    >>59


     実況の声が遠くから響く。

     ターフを踏み抜く数多の走行音が聞こえてくる。

     決して多くはないものの、少なくもない観客からの歓声やどよめきすら、チャンドラポメロの耳に届いてしまう。


    「~っ!」


     雑多に聞こえてくる音を聞き、彼女は自身の限界を悟った。悟って、しまった。

     けれども、歯を食いしばり、前傾姿勢を維持し、チャンドラポメロは走る。

     5バ身が4バ身に。4バ身が3バ身に。

     後少し。後少しで彼女に、ダイワスカーレットに追いつける。

     そう思った瞬間であった。


    「……ぁ」


     前を走っていたダイワスカーレットの後ろ姿が、薄れている事に彼女は気付く。

     それに対して声を上げた瞬間、緋色の影を残して、ダイワスカーレットはチャンドラポメロの視界から完全に消え去った。


    『5番チャンドラポメロ、今、ゴールイン! まるで他の追随を許さない圧巻の走り! これは伝説の幕開けか! はたまた怪物の誕生か!』

    「……」


     実況の興奮する声や、観客席から贈られる歓声が、酷く他人事のように聞こえた。

     ダイワスカーレットの姿が見えなければ、これ以上走って追いかける意味もない。

     自然と足がクーリングダウンへと移行する中、チャンドラポメロがふと掲示板を見上げると、東京5Rのすぐ下に「Ⅰ5」という自身の勝利を告げる表示がされていた。

     彼女は立ち止まり、自身の体操服に付いているゼッケンの番号と、表示されている数字とを見比べる。

     何度見比べても、その数字は変わらない。

     その日、チャンドラポメロはレース人生で初めて、実感のない勝利を得る事となるのであった。

  • 61二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 23:00:33

    ターフを駆けるその目に、あるいは脳に、チャンドラポメロは緋色の影を見出した
    いたずらに誘い、瞬き、舞うその届かぬ光に、彼女は手を伸ばし追いかけた
    それは彼女を伝説へと導く光か、或いは奈落へと誘う破滅の光か…



    ほなまた…

  • 62二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 23:52:08

    それは呪いか憧れか

  • 63二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 08:40:14

    これでスカーレット側からも強く意識されるようになったかな

  • 64二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 10:07:50

    >>62

    憧れとはそれすなわち呪いでもある、か

    詩人ですねい


    >>63

    残念ながら…スカーレットがこのレースを見ていたかと言われたら…



    後、なんか私のSS公開と叡智なポメーマシュが投下される場と化していますが…皆さんもっと好きなだけ好きにして?

    ちょうだい、ちょうだい。もっとDKPI世代の新しい子とか既存の子の好きなだけ好きにしたのを!

    (意訳:DKPIちょうだい)

  • 65二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 11:44:44

    焼き付いて
    焼き付いて
    焼き付いて

    離れない、あの光景が

    網膜に、瞼の裏に、虹彩に、瞳に

    爆発的な熱によって焼き付いてしまって、離れない

    彼女の姿が、離れない

    いつ走ろうと、どこで走ろうと、
    彼女は私の前を必ず先に行く

    疾風のように
    あの光が、私の前を行く

    勝ちたいと願った
    あの光に追いつきたいと、そう願った
    彼女を追えば私はもっと強くなれる
    もっと速く走れる

    けれど
    追っているだけでは、彼女には勝てない
    それでも私は彼女を追いかけることしかできない

    だって私は、彼女の影だから────

  • 66二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:29:51

    >>65

    詩人だ…素晴らしい

    このスレでは、チャンドラポメロの視点でもあり、それ以外ではミス・パーフェクト、緋色の女王に挑んだ者たちの唄とも取れる

    良いSSを魅せてもらいました

  • 67二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:43:07

    これは良いSS
    うぉでっかふっと

  • 68二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:57:14

    デカパイ世代に負けじとバスト尻ふともがムチムチになるダスカとな?


    尚、ちゃんとアプリでも成長の兆しが至るところにある模様

  • 69二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 19:12:21

    ────ついてこれるか

  • 70二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 19:23:38

    憧れたのがよりにもよってミス・パーフェクトで緋色の女王なダイワスカーレットというポメちゃん最大の過ち
    尚、憧れは止められない模様

  • 71二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 22:58:11
    「Shadow of the Scarlet」──第一章「逃げるは影、追うもまた影」 | Writening※※※ 山嶽ノ上ヲユク 雲ノ軽サ、 水ニウツル 山嶽ノカゲノ重サ。 ──北原白秋より「影」 ※ ※※ ※※※  春の選抜レースの期間が終わり、桜の花もすっかり落ちて初夏へと向けて葉を伸ばし始めた頃。  そ…writening.net

    「Shadow of the Scarlet」──第一章「逃げるは影、追うもまた影」・完結ゥ!


    今回は特に誤字脱字編集とかせずに書いたままをそのまま載せたので、致命的な間違いとかがあったら許して下さい

    それではスレが続き、いいねや反応を頂けるのであれば…第二章「溺れゆく者たち」でまたお会いしましょう

    ほなまた…

  • 72二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 00:40:51

    おっつおっつ
    読みごたえあって凄いわ

  • 73二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 09:22:36

    暑いから体調には気をつけて保守

  • 74二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 09:30:16

    >>72

    あざます…あざます…

    へへっ、序章、幕間、第一章と全部2万文字超えで笑っちゃいますよ…



    【急募】ミスディレクションの細かい設定


    私としてはDKPI世代なのでDKPI希望

  • 75二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 09:43:06

    >>71

    おつかれさまです!

  • 76二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 10:28:54

    これ、勝手にダイス振ってもいいのかな?
    まずかったら削除よろしく

    まずは素体の鹿毛ショート
    (umamusume, horse girl, long horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    (dark brown hair, light brown hair, multicolored hair:1.5), short hair, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes,

  • 77二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 10:30:45

    身長

    dice1d4=4 (4)

    1=short 2=medium 3=tall 4=tall, big woman, enormous, towering,全部乗せ


    体格

    dice1d100=57 (57)

    1に近いとムチムチ(0でcurvy, plump, cubby,全部乗せ+重み付け強化)

    100に近いとムキムキ(100でmuscular female, toned female, buff, huge muscle,全部乗せ+重み付け強化)

  • 78二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 10:31:48

    胸の大きさ

    dice1d4=2 (2)

    1=medium 2=large 3=huge 4=gigantic


    尻の大きさ

    dice1d100=74 (74)

    1に近いと小さい 50で普通 100に近いとデカい

  • 79二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 10:35:28

    これは…乳はデカいけど尻は更にデカいタイプ…じゃな?
    B95H99とかじゃろか(ゲス顔)

    後、ダブルマシュマロ引き摺れるって事はそこそこムチデカじゃないといけないか

  • 80二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 10:36:23

    髪質

    dice1d100=86 (86)

    1に近いほど癖っ毛/ウェービー 100に近いほど直毛/ストレート


    眼の色

    R:dice1d255=49 (49)

    G:dice1d255=85 (85)

    B:dice1d255=58 (58)


    眼鏡とか頭のアクセサリー

    眼鏡:dice1d2=1 (1)

    1=有り 2=無し


    アクセサリー:dice1d2=1 (1)

    1=有り 2=無し

  • 81二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 10:40:10

    タッパとケツのデカい鹿毛ショートちゃんになりました
    眼の色は深緑
    絵は作ってくるので、また後程…

    アクセサリーのリクあれば着けてもらいますので、是非

  • 82二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 10:43:32

    候補並べてその中でダイスキメるのが良い感じかな?

    ミスディレクション(注意をある対象から別の対象へ意図的に逸らす)っていう意味で、
    デカケツを気にして胸元に大きめのブローチ付けているとか

  • 83二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 11:29:21

    好きなだけ好きにスレだから皆もドゥンドゥン案を、出そう!
    もしくはDKPIを、出そう!!!!(新規&既存)
    DKPI世代やぞ!!!!!!!!!!

  • 84二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 12:14:51

    途中経過
    …AIくんさぁ、ショートだってオーダーだしたよね?

    (umamusume, horse girl, long horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    (dark brown hair, light brown hair, multicolored hair:1.5), short hair, straight hair, (hair over eyes:1.5), dark-green eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes, (tall female, big woman, enormous, towering), muscular female, large breast, (wide hips:1.1),
    (single big hair bow behind hair, semi-rimless eyewear:1.5),

  • 85二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 12:22:27

    新しいDKPI世代生えてきてて芝生える
    ライオンかな?

  • 86二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 13:47:26

    >>76

    から

    >>84

    が生まれたと思うと本当に芝しか生えぬ


    恐るべし…ポメちゃんを筆頭としたDKPI世代…

  • 87二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 15:12:23

    プロンプト強調したい場合は()じゃなくて{}の方がいいとは聞いた
    重ねると更に強調されるとか

    ( ^ω^)…


    {{{{{huge breast}}}}} っと…



    (因みに強調し過ぎるとえれぇ事になるので注意)

  • 88二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 16:35:09

    >>87

    もしや試したな…

  • 89二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 16:40:10

    >>88

    ( ^ω^)…



    (*´ω`*)そんな事よりもっとDKPI世代を皆で増やしていきましょうぜ!!!!!!!!!!

  • 90二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:39:26

    とりあえず完成
    single big hair bow behind hairで、big hairの部分を別タグと認識していたので、別キャラに派生させてみた
    プロンプトと出力結果からデバッグしていくのが楽しい

    ミスディレクション(左)
    (umamusume, horse girl, horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    (dark brown hair, light brown hair, multicolored hair, short hair:1.5), straight hair, (hair over eyes:1.3), dark-green eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes, (tall female, big woman, enormous, towering), muscular female, large breasts, (leg muscles, wide hips:1.1),
    (multicolored big hair bow, red semi-rimless eyewear:1.5),

    ミスディレクションの姉or妹(右)
    (umamusume, horse girl, long horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    (dark brown hair, black hair, multicolored hair:1.5), short hair, straight hair, (big hair, hair over eyes:1.5), dark-green eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes, (tall female, big woman, enormous, towering), muscular female, huge breasts, (wide hips:1.1), long legs,
    (hair bow, black-framed eyewear:1.5),
    evil grin, parted lips, crooked teeth,

  • 91二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:48:22

    意外ッ!
    それはミスディレクション(姉妹がそれぞれ姉と妹に視線を誘導させる事で本人から目を意識的に逸らそうとする)!!

  • 92二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 19:37:13

    ミスディレクションちゃんの姉か妹に名前をつけるとしたら、「レッドヘリング」とかどうかな

    燻製ニシンの虚偽 - Wikipediaja.wikipedia.org
  • 93二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 20:55:29

    困った…他の名前候補出そうとしたけどちょっと勝てない

    …ので! 先に姉妹の身長ダイス振ったらぁ! ふぅーははは!

    身長高めという事でウマ娘たちの身長160cmを基本値とする!


    dice1d20=14 (14) +160cm


    因みに姉妹は双子?


    dice1d2=1 (1)


    1.そう

    2.違う

  • 94二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 20:58:52

    レッドへリングちゃん、雰囲気姉貴かブラストワンピース感あったけど、まさかの身長ほぼ同じ(姉貴171cm、ブラワン174cm)

    誰ぞ! DKPIダイスを!! DKPIにしてくれよな!!!!

  • 95二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 21:03:15

    プロンプトにヒュージ ブレスト入ってるから確定DKPIなレッドへリング
    ニチャアな表情が、双子なのに性格違いそうなのが出てるな

  • 96二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 21:04:24

    ミスディレクション(物理)
    レッドへリング(論理)

    でちゃんとダイス神もニブイチとはいえ双子と分かってらっしゃる

  • 97二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:51:35

    「Shadow of the Scarlet」──第二章「溺れゆく者たち」


    ※※※


     井の中の蛙。
     大海を知らず。
     されど。
     空の青さを知る。

     井の中の蛙。
     大海を知る。
     そして。
     空の広さに──


     ──絶望する。




    ※※

    ※※※


     メイクデビューレースを勝利で飾ったチャンドラポメロ。
     しかし、そのライブの後に左足に強い痛みを覚え、トレーナーと共に医者へ駆け込んだ際、骨折と診断される。

  • 98二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:52:37

    >>97

     幸いにも複雑骨折ではなく単純骨折だった為に、中等部という若さもあって彼女は保存療法で治す方向で話が進んだ。

     それでも人とは違う速度で走るウマ娘の骨折という事で、リハビリも含めて完治までは6か月と言われ、チャンドラポメロはジュニア級レースを全て見送る事となった。

     メイクデビューレースとはいえ、長身且つ胸の大きな中等部のウマ娘が2着に6バ身もの差を付けてという話は瞬く間に広がる。チャンドラポメロのトレーナーは必死で対応していたものの、同じくメイクデビューレースを勝利で終えたダブルマシュマロやミスディレクション共々、アンダーグラウンドなウマ娘情報誌には好き放題書かれる結果となった。

     けれども、世間の噂話は広まる事こそ早いが、飽きられるのもまた早い。

     メイクデビューレースの翌日にチャンドラポメロが骨折との追加記事が掲載された以降は、少しばかりの取材があった程度で報道陣の目は他のウマ娘たちへと移っていった。

     メイクデビューレースとはいえ、ジュニア級には少々距離の長い2000Mを強い走り方で勝利したダイワスカーレット。

     チャンドラポメロと同じく、2番人気ながらに1番人気を抑えて快勝したウオッカ。

     メイクデビューレースこそ2着に終わったものの、即未勝利戦を勝利で収めた後に、何とジュニア級重賞の小倉2歳Sを2バ身半付けて勝ったアストンマーチャン。

     骨折が判明した6月末からチャンドラポメロのギプスが取れる9月に入る頃には、世間の誰もチャンドラポメロの事を気にしなくなっていた。


    「はえー。ミスディレクションさんに双子の姉妹がいたとは」

    「あっはっはー。まあ、公言した事はなかったからねー。身長は同じでもあっちの方がおっぱいデカいしー」

    「う゛っ!? ……あのー。うら若き乙女なんスから、いくら女の子同士だからってそこまで明け透けに言わなくてもいいじゃないスか」

    「マーシュちゃんはいい加減そーゆーのに慣れなよー。女の子同士はエッチな会話しないなんて訳じゃないしー」

    「でも、双子なのは納得です。並ばれると、雰囲気は、似ていましたから」


     夏も過ぎたのに秋の気配が感じられない9月の初週。

     夏の残滓を思わせる快晴な太陽が夕日に沈みつつある放課後の教室で、チャンドラポメロは級友のダブルマシュマロとミスディレクションと雑談を楽しんでいた。

  • 99二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:53:44

    >>98


     話題は夏季休暇の際に、ミスディレクションが同学年だが別クラスのレッドへリングと並んで歩いているところをチャンドラポメロが見かけた、というものであった。

     お喋りではあるが、進んで別のクラスまでちょっかいを出しには行かないダブルマシュマロにとって、学友であり適性が被っている好敵手でもあるミスディレクションに双子の姉妹がいるとは寝耳に水だったらしい。

     引っ込み思案のチャンドラポメロが話題を出さない事もあってか、それまで彼女は姉妹だと思っていない様子だった。


    「あー、まー、ね? そこは流石に双子だしー。アタシは赤であっちは黒だけど同じアンダーリム眼鏡掛けているしねー」

    「レッドへリングさんだったスよね? 確か、カベルネソラリスさんと同じクラスの」

    「そーそー。でも面白いよねー。双子の姉妹なのにアタシは芝とダートの両刀とはいえ、短距離マイルで、向こうは芝オンリーの中長距離が適性なんてさー」

    「意外、ですね」

    「とはいえ、双子なのに顔はあまり似てないんスよね」

    「あー、うん。あの子、割と表情不器用というかー。ほら、笑顔が何か企んでそうな感じでしょー?」

    「えっ? あ、えっと……」

    「まあ、うん。そっスね」


     チャンドラポメロはレッドへリングを食堂で何回か出会った事があり、ミスディレクションの言う悪い感じの笑みを見た事もあった。

     それ故に双子の片割れの口から直接その事を言われて答えに窮する横で、ダブルマシュマロは濁す事なく頷く。


    「ま、マーシュちゃん」

    「えー? だって目をやや細めてにやけるような笑い方は映画のフィクサーのそれスよ」

    「あっはっはー! まあ、実際その通りだからねー。でも、悪いのはその誤解されやすい笑顔や表情であって、本人は悪い子じゃないから安心してよー」

  • 100二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:54:53

    >>99


     明け透けなダブルマシュマロを窘めるチャンドラポメロだったが、その解答が気に入ったのか、ミスディレクションは優等生を思わせる真面目そうで端正な顔を歪ませる程に呵々大笑した。

     彼女の笑顔と言葉に、それはそれで意外だと思っていたチャンドラポメロだったが、不意に鞄の中に入れていた携帯電話のアラームが鳴る。

     チャンドラポメロよりも先に目ざとく反応したのはダブルマシュマロだった。


    「おん? どしたんスか、ポメちゃん」

    「あっ、うん。病院予約のアラーム」


     二人を心配させないように、チャンドラポメロは手早く鞄から携帯電話を取り出し、アラームを止める。

     病院、という言葉に二人は一瞬眉根を寄せたので、彼女は慌てて両手を横に振った。


    「大丈夫。その、経過観察の日だから」

    「あー。なるほどねー。この間ギプス取れたばっかだったもんねー」

    「うむり。なら、ボクたちには気にせず、病院へ行くといいスよ。トレーナーさんも一緒スか?」

    「ううん。経過観察だから、私一人」

    「そっスかー。まあ、並んで歩いているところをネーロディセッピアに見られたらとんでもない事になるスからね」

    「あー。あの子ねー。恋愛ならトレーナー×ウマ娘でも、ウマ娘×ウマ娘でも、何ならトレーナー×トレーナーですらいける口だもんねー」

    「雑食スねぇ」

    「そ、そうだね。それじゃあ」

    「また明日ー」

    「バイバイっス~」


     二人の口から同室のネーロディセッピアの事を言われ、確かにその通りだと思いつつも、チャンドラポメロは鞄を持って教室を出るのだった。

  • 101二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:57:04

    第二章、開幕
    口頭歌の通り、ここからポメちゃん含むモブウマ娘たちの艱難辛苦が始まります(建前)
    それはそれとして、もっと増えろDKPI世代(本音)
    後、皆も私のSSなんざ気にせずもっと好きなだけ好きにDKPI増やして?(超本音)

    ほなまた…

  • 102二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:04:48

    尚、好きなだけ好きにしてくれスレなのでポメちゃんに似ていて且つ同室のポメちゃんの名前候補だったネーロディセッピア(イタリア料理のイカ墨パスタの意味)君は…

    全方位恋愛アグネスデジタルな性格となりました

    しかもデジタルとは違ってカップルが近くにいても尊タヒするのではなく寧ろ興奮する系

  • 103二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 00:13:00

    ポメちゃん?!骨折とは
    ミスディレクションとレッドへリングの設定を絵から取り込んでるけど、筆速いなぁ

  • 104二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 00:21:54

    >>103

    >>71の追記部分参照ス

    第一章は残りまとめるだけだから、と追加分そのまま入れてまとめたのが誤解を生んだスね…最後まで書いてからまとめるべきだったっス

    気付き+感想感謝ですわー!

  • 105二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 01:31:08

    おわーっ?!スレの方で読んでたから、>>71に追記部分あるの気が付かなかった!

    失礼いたしました

  • 106二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 07:26:47

    >>105

    気にしないで下さい

    まとめた際にオマケがあったらお得感あるじゃろって追記したのが悪かったのですから





    歩ならまあ…DKPI世代を増やすか設定を好きなだけ好きにして?(ニチャァ…)

  • 107二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 07:52:25

    誰もダイス振らないのなら勝手に振ってやるぜー!

    ミスディレクション、DKPIになぁれ…! なぁれ…!

    姉妹のレッドへリングはミスディレクションの+10cmで


    dice1d20=6 (6) +90cm

  • 108二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 09:53:22

    ミスディレクション 身長174cmのB96!
    レッドへリング 身長171cmのB106!


    DKPI世代のDKPIに慣れ過ぎたせいかミスディレクションがすんごい普通に思えてくる罠
    というか、何ならミスディレクションはほぼブラストワンピース

  • 109二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 15:54:46

    色々デカァイッ!

  • 110二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 16:24:31

    DKPI世代身長ランキング

    1位 チャンドラポメロ 179cm
    2位 ネーロディセッピア ポメちゃんとほぼ同じ
    3位 ミスディレクション 174cm
    3位 レッドへリング 174cm
    5位 カベルネソラリス 160cm


    DKPI世代バストランキング

    1位 チャンドラポメロ B123cm
    2位 ネーロディセッピア ポメちゃんとほぼ同じ
    3位 カベルネソラリス B110cm
    4位 レッドへリング B106cm
    5位 ダブルマシュマロ B102cm


    色々と、でっかい!!

  • 111二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 16:25:48

    >>108

    レッドへリングの身長間違ってーら


    171cm × 174cm ○

  • 112二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:03:56

    >>100



    ※※※



     教室を出て病院へと向かう前に、チャンドラポメロは一度トレーナー室に寄ろうかどうかを考え、止めた。トレーナーが部屋にいるかどうかが分からなかったし、いたところで迷惑を掛けてしまうと思ったからだ。

     無論、今回の経過観察の診察も最初は同行を申し出てくれたのだが、それでトレーナーの仕事の邪魔になるのはよくないと予め断った。それを今更、ついてきて欲しいとは言えなかった。


    「……」


     学園を出て一番近いバス停へと行き、チャンドラポメロ病院前までバスに乗っていく。

     その後、到着したバスから降りて、病院へと入り、手続きを済ませて待つ。


    「チャンドラポメロさん。どうぞ」

    「はい」


     予約しての診察だった為か、それ程待たされる事なく診察室へと行き、担当のウマ娘女医と軽く挨拶をしてから診察ベッドの上に座って触診や問診を受けた。

     多くの学園のウマ娘たちを見てきた、同じウマ娘の医者なだけあって、彼女は無駄なく手早くチャンドラポメロの診察を済ませる。


    「痛みも腫れもなく、歩行も問題なし、と。ギプスを取ってから走った事は?」

    「一度も、ありません」

    「それは結構」


     鹿毛色の髪を首の後ろで縛り、そのまま背中へと流している女医は、切れ長でライトイエローの色をした目を相手の心まで見透かすように細めながら質問する。それに対して、チャンドラポメロは緊張しながらも嘘偽りなく答える。

     女医の方も、疑っている様子もなくすぐにチャンドラポメロから離れて、パソコンへと何かを入力する。

     それから、数分もしないうちに再び彼女の方へと椅子ごと身体を向けた。

  • 113二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:05:12

    >>112


    「ギプス固定による筋肉の萎縮と拘縮。それと関節や神経の痛みもなさそうなので、明日からは運動してもらっても構いません」

    「はい」

    「但し、急に負荷を掛け過ぎない事。まずは軽い運動から様子見をするように」

    「……分かりました」


     明日からまた走れるという事に、チャンドラポメロは腰を浮かしかけたが、続く言葉に肩透かしを食らってしまう。

     その感情を読み取ったのか、女医は「仕方がないでしょう」と淡々と言う。


    「初診の時に話したように、貴女は優れた体格を持っている。それでいて、その身体を支える両足は私たちウマ娘の誰しもが抱える"硝子の脚"なのよ」

    「はい」

    「身体が大きい程、その両足に掛かる負荷は大きくなる。レースに夢を賭ける貴女たちに『走るな』なんて言うつもりはないけれども、『走れなくなる』という可能性は常に付きまとう」

    「……」

    「あのヒシアケボノさんがそうだったように。貴女もこの3年間を走り抜けるつもりならば、その後……最悪はその道中でそうなる覚悟はしておく事ね」

    「……はい」


     将来的に走れなくなる可能性を突きつけられ、チャンドラポメロは別に怒られている訳ではないにも関わらず背中を丸めてしまう。

     それを見てか、女医は一度目を瞑り、ゆっくりと息を吐いて肩の力を抜いてみせた。


    「……貴女のトレーナーは、貴女の身体の事をちゃんと考えてトレーニングをさせている」

    「……えっ?」

    「骨折こそしたものの、筋肉や関節、神経までは痛めていない。トレーニング前の柔軟運動と、トレーニング後のケアをしっかりしている証拠だわ。良いトレーナーに巡り合えたわね」

    「……はい!」


     チャンドラポメロ自身を褒められた訳ではない。けれども、それまで表情を崩さずに淡々としていた女医が軽く微笑んだのを見て、彼女はトレーナーが褒められた事を自分の事のように喜べた。

     それを見て、女医は一度だけ更に笑みを深くした後、一瞬考えるように目を閉じ、それからいつもの淡白な表情へと戻す。

  • 114二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:06:22

    >>113


    「それでも今回骨折したという事は、貴女がそれ以上に負荷を掛け過ぎたという事。そこは肝に銘じておくように」

    「うっ、は、はい」

    「利き足が右だからそっちは問題なかったけれども、左足がそれについていけなかった。レース映像を何回か見てみたけれども、明らかに無理な加速をしているのが見て取れた」

    「……」

    「レース本番で、そこに夢を賭けて走っている本人に言う事ではないけれども、ソラを使う事も視野に入れた方が良いわね」

    「……はい」

    「後はそうね……これは私の経験則。私個人でスピリチュアルについて色々と調べている点と、他のウマ娘たちを診たり、そのレースを見たりしたから言える事なのだけれども」


     釘を刺されてしまい、身体ごと委縮したような気持ちで顔を伏せるチャンドラポメロに対し、女医はここに来て初めて言葉の歯切れが悪くなる。

     それまで物事をハッキリと言う人だっただけに、チャンドラポメロは不思議に思って顔を上げる。そこには何とも言えない表情をした女医が真っ直ぐに彼女を見つめていた。


    「貴女は9番の子に並んだ直後から、ゴール板の前を駆け抜けるまで加速し続けた。この自覚はあるかしら?」

    「えっと……はい」


     女医に質問をされ、チャンドラポメロは言葉に窮しながらも肯定する。

     けれども、彼女にも、そしてトレーナーにもあの時見えた"緋色の影"と"ダイワスカーレット"については話をしていない。

     レース中こそ夢中になっていたものの、いざレースが終わって冷静に考えると、幻覚の類ではないのかと思えたからだ。

     その為、初診の時は無我夢中になっていたと話、トレーナーや女医もそれに納得してくれていた。初めての本番レースでの暴走はそう珍しい事ではないともフォローさえしてくれた。

     だからこそ、今このタイミングで今一度当時の状況を確認される事に、チャンドラポメロは得も言われぬ不安を抱いた。

     まさか、自分が何かの病気を患ってしまったのかとすら思ってしまう。


    「そう……なるほどね」

    「……?」


     しかし、女医はそれ以上チャンドラポメロに追及はせず、目を伏せて深いため息を吐くだけだった。

  • 115二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:07:44

    >>114


    「あの……」

    「……もし、私の見間違いだったらごめんなさい」

    「えっ、あ、はい?」

    「その時、貴女、"緋色の影"を見なかったかしら?」

    「……えっ」


     そして、少し考え込むように黙ってしまう女医に声を掛けると、彼女は意を決するかのようにチャンドラポメロを見て、その口から思いもしない言葉を伝えてくるのであった。

  • 116二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:09:43

    あの時の緋色の影やダイワスカーレットは、ポメちゃんだけが見た幻覚ではなかった…?
    一体どういう事なのか! 後、単純に私自身が骨折した経験ないので割とそこら辺の説明は適当なので悪しからず!
    ただ、ポメちゃんの体格的にヒシアケボノと同じ問題は抱えているとは思うので、その要素はぶち込みました
    気になったトレーナー諸氏はヒシアケボノのシナリオを、見よう!
    ほなまた!

  • 117二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:55:37

    アストンマーチャンの母みがある

  • 118二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:04:50

    本気で走れば本気故に自壊していくから本気で走るな、とは残酷だよなぁ
    しかも、あと何回本気で走れるかの"残弾"は見えないときてる

  • 119二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:12:26

    >>117

    (正直それをやるかちょっと悩んだのは内緒)

    とはいえ、ウマ娘の硝子の脚問題はポメちゃんに限らず全ウマ娘に言える事なので濁さずにGO!


    >>118

    この物語におけるテーマの一つを早速見抜くとはオヌシナニモノ

    現実でも怪我に泣いた名馬や名馬候補が多いように、ウマ娘世界でも怪我さえなければ…という「もしも」は誰しもが考える事であり、ポメちゃんには今後もこの悩みを抱えてもらう予定でござい


    ポメちゃんも! マーシュも! ソラリスも!

    皆違って! 皆溺れゆく者!(嫌なタイトル回収)

  • 120二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:48:04

    >>119

    大したもんではございやせん

    手前は筋肉が好きなだけのケチなAI使いにございやす

  • 121二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 07:19:56

    朝の保守

  • 122二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 10:02:14

    >>120

    DKPIも愛して?(ニッコリ)

  • 123二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 12:30:54

    今まで絵になってる子は全員DKPIメカクレ(かメカクレ要素がある)になってるのが良い

  • 124二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 12:41:10

    皆ももっとDKPIモブウマ娘増やしていいのよ???
    ポメちゃん級とかソラリス級とかポメちゃん以上級とか…

  • 125二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 12:50:54

    まだ増えるのか…(困惑)

  • 126二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 12:52:54

    DKPIは何人いてもいい
    ウマ古事記にもそう書かれておる


    好きなだけ好きにするスレなんだからなぁー!!

  • 127二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 22:52:31

    このレスは削除されています

  • 128二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 23:12:40

    >>115


    「どうして……それ、を?」


     チャンドラポメロはレースが終わってから今日に至るまで、誰にも、それこそ一番心配してくれたトレーナーにすら話をしていない。

     だというのに、目の前の女医はその"緋色の影"を言い当てた。彼女が医者だからか、それとも先に話していたスピリチュアルについて詳しいからか。

     いずれにしても、予想だにしていない言葉を前に、チャンドラポメロは動揺を隠し切れなかった。しかし、そんな彼女を前にしても女医は「落ち着いて」と冷静に着席を促した。

     気付けば立ち上がっていたチャンドラポメロは、我に返るとその言葉に従う。


    「よろしい。まずは、私の言葉で動揺させてしまった事を謝るわ。私がVTRで見たものと、貴女が実際に見たものには差異がある可能性があった。その為に、見間違いを考慮しつつの言葉だったけれども、その様子だと私が見たものと貴女が見たものは同じのようね」

    「……」

    「っと、その前に、何故私がそれを見る事が出来たのか。そして、貴女が見たもの、貴女に起きた現象について説明した方が良さそうね」


     沈黙を疑いと捉えたのか、黙って彼女を見つめるチャンドラポメロに女医は軽く咳払いをした後に一度椅子に座り直す。それから真っ直ぐにチャンドラポメロを見つめて口を開く。


    「貴女が見たもの、経験したものは、領域<<ゾーン>>と呼ばれる、未だ解明されていない現象と思われるわ」

    「ぞー……ん?」

    「誤解を恐れずに、簡単に説明するのなら極限の集中状態」

    「極限の……」


     女医の言葉に、チャンドラポメロはレース当時の事が頭に過ぎる。

     言われてみればあの時、煩わしく感じた全ての音が"緋色の影"と"ダイワスカーレット"を追いかける事で一時的に消失していた。

     それが極限の集中状態、領域と呼ばれるものであったとするならば、確かに色々と合点がいく。

     もう少し深く、当時の状況を思い出せれば、とチャンドラポメロは押し黙って思考を巡らせる。

  • 129二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 23:14:01

    >>128


    「……」

    「あるいはそれを、悪く言うのであれば過集中」

    「っ!?」


     しかし、続く女医の言葉が今の自分の事を言われているように聞こえ、チャンドラポメロは慌てて俯き気味であった顔を上げて彼女を見る。

     視線の先の女医は、特段責めるような表情はしていなかったが、何だか複雑な面持ちであるように感じられた。


    「その領域に至った者の言葉によると『何も聞こえない自分だけの世界』や『生まれ変わったような感覚』、『限界の先の先』らしいわ。或いは『時代を作るウマ娘が至る、当人も知らない剛脚』なんて言う子もいたわね」

    「先生は、経験した事が、あるのでしょうか?」


     まるでその領域についての多くを知っているかのような口ぶりに、チャンドラポメロはつい口を挟んでしまう。

     けれども、それは自身が見たもの、感じた事が本当にその領域と呼ばれるものであったかどうかを知りたいが為の言葉だった。


    「まさか! 私は初等部高学年の時点で走りの才覚がないと言われて、以後は元々医者の家系だった事もあってスポーツ医学の道に進んだしがない医者よ」


     しかし、チャンドラポメロの言葉を聞いた女医は、滅相もない、と言わんばかりに両手を上に向けて肩を竦めて見せる。


    「でも……」

    「言ったでしょう? 私は個人でスピリチュアルについて色々と調べているって。それが正にこの領域の事なのよ。スポーツ医学の道を進み、こうして学園の近くで多くのウマ娘たちを診た私の話を聞いたらそう思うのも無理からぬ話だけれどもね」

    「そう、ですか」

    「結局のところ、領域についてはそれを経験した当の本人に聞くしかない。しかもその効果こそ似通っているものの、経験者が見たものや体験した事はそれぞれまるで違う」

    「……」

    「そして、それに至った者たちのその後についても、また十人十色ともなれば、未だ解明されないのも納得だわ」

  • 130二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 23:15:41

    >>129


     未知の現象を前にして、それを解き明かそうとする事が楽しいのか、チャンドラポメロに説明しながらも、女医はどこか嬉しそうに笑う。

     その笑顔に仄かな狂気を感じ取り、チャンドラポメロはそれ以上何かを聞くのが怖くなってきた。

     けれども、そんな彼女に構わず、女医は話を続けていく。


    「その領域に至った者を更に高みへと連れて行く光か。身の程を弁えない者を奈落に突き落とす蜘蛛の糸か。はたまた神様が一時的に与えてくれた祝福<<ギフト>>なのか。それとも、それを発現させた本人が元々持ちうる能力の開花なのか」

    「……」

    「もしくは、当人がこの先の全てを投げ打って得た才能の前借りか。或いは、元々ウマ娘という種族が持っている遺伝子か魂が成せる技術なのか。ただ単に、人の身で起こる『ゾーンに入る』という状態をウマ娘が経験しているだけなのか。ふふっ、楽しいわぁ。是が非でも解き明かしたい。いいえ、解き明かしてみせるわ」

    「……あの」


     ライトイエローの目が爛々と輝き、それこそ本人の口から説明された極限の集中とも言える状態で、女医は目の前にいるチャンドラポメロの存在を忘れたかのように独り言ちる。

     口角は上がりきり、自身の言葉に何度も頷く姿が見ていられず、チャンドラポメロは恐る恐る彼女へと声を掛ける。


    「……何よ」

    「ひっ!?」

    「あっ……んっんぅ。ごめんなさい。ちょっと自分の世界に入り込んでしまっていたわ」


     狂気を孕んだとも思えるその目で睨み付けられたと感じたチャンドラポメロは思わず悲鳴を上げてしまう。

     しかし、それが功を成したのか、女医は一度目を伏せてわざとらしい咳払いをした後、チャンドラポメロに対して頭を下げるのだった。

  • 131二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 23:18:52

    【悲報】女医氏、領域<<ゾーン>>に魅入られし者だった

    普段は冷静で仕事をきっちりこなす人が、特定の状況やものに対して狂気を孕むのって、いいですよね…

    という事で、大方の人が予想されていたと思われる通り、何の捻りもなく、ポメちゃんの経験した事は領域<<ゾーン>>という事になり申した


    もしくは、ゲーム上における固有スキル発動


    ほなまた…

  • 132二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 01:17:14

    このレスは削除されています

  • 133二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 07:11:40

    むわっ むちっ むきっ

  • 134二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 07:31:31

    >>133

    「レッドへリングさん…バーベル上げであんな余裕そうに(ヒソヒソ」

    「笑うとは本来攻撃的な云々…(ヒソヒソ」

    「バーベル上げながら誰かを陥れる事を考えている…ってコト!?(ヒソヒソ」

    「ちくわ大明神」

    「誰だ今の」


    レッドへリング(ンッギギッ…きつすぎて、なんか逆に、笑えて来る…えへへぇ…)



    な感じ

    それはそれとして癖が見えますね…

  • 135二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 10:07:42

    (ンンッ……!筋トレの神々は言っている……辛い時、苦しい時こそ笑え!って。笑顔……笑顔ォ……ッ!)

    ニチャア

  • 136二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 12:40:28

    恥ずかしがり屋のポメロ!
    お喋りマーシュ!
    甘党ソラリス!
    見た目優踏生ミスディレクション!
    したり顔(誤解)のレッドヘリング!
    恋愛デジタルなネーロディセッピア!

    我ら、DKPI黄金世代!

  • 137二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 19:50:51

    出来たぞメカクレDKPI好きの諸君!
    ポメちゃんの同室で、ポメちゃんに立ち姿が似ているという恋愛アグネスデジタルなネーロディセッピア君(の勝手なイメージ)が!

    胸を強調するような仕草はAI君が勝手にやったので私は悪くないです(真顔)

  • 138二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 19:52:31

    >>136

    このメンツでライブしてるのが見たい

  • 139二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 20:00:36

    >>138

    何とビックリ

    平均バスト110cmでカベルネソラリスが中央値とかいう奇跡


    チャンドラポメロ  B123cm

    ダブルマシュマロ  B102cm

    カベルネソラリス  B110cm

    ミスディレクション B96cm

    レッドへリング   B106cm

    ネーロディセッピア B123cm


    合計バスト660cm!

  • 140二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 21:00:18

    >>137

    プロンプトも公開しておくかのう


    ネーロディセッピア(トレセン制服姿・ポーズ指定しないとAI任せになる)

    solo,girl,(long hair),(black hair),hime_cut,(black-horse tail),no ears,violet eyes,(hair over one eye:1.3),(heart shaped pupils),long bangs,black bangs,BREAK,masterpiece,high quality,(huge breasts:1.5),(horse ears),(kemono ears),glamorous,kind smile,,tracen school uniform,

  • 141二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 21:00:40

    服はちゃんと着ろ

  • 142二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 21:05:13

    トレーナーを誘惑しているだけかもだし…

  • 143二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 21:13:53

    あんまり際どいと削除考えるしかなくなるので…
    AIに責任押し付けるのはいいけどそれを貼る判断をしたのは人間なのでそこは間違えないように

  • 144二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:51:21

    >>130


    「では、気を取り直して……貴女が領域に至ったかどうかの判断をしたいので、詳しい状況を話してくれないかしら?」

    「えっと、その前に、一つだけいいでしょうか?」


     顔を上げてチャンドラポメロを見る女医の目は、先程よりは抑えられているように見えたが、それでも好奇の色に染まっていた。

     けれどもチャンドラポメロもまた、その女医に対して聞きたい事があり、控えめに右手を挙げて主張する。

     それを見た彼女は数回の瞬きの後、視線を左上へと向けて少しの沈黙した。が、すぐに短く息を吐いた。


    「先程の非礼を考えたら、私が貴女の質問に答えないという訳にはいかないものね。どうぞ。」

    「はい。その、先生はどうして"緋色の影"を見る事が出来たのですか?」


     話の腰を折られた不服こそ残っている感じはしたものの、言葉の通りに聞く姿勢になる女医に、チャンドラポメロは気になっていた事を質問する。

     あの時、"緋色の影"と"ダイワスカーレット"とを見たのは自分だけ。一緒に走っている他のウマ娘も、実況も、観客も、トレーナーも、誰も気が付かなかった。

     だというのに、レースのVTRを何度か見ただけで、女医は"影"ではなく"緋色"まで言い当てた。彼女としては自身が領域に至ったかどうかよりも、そっちの方が気になってしまう。


    「あー。まあ、何故それを見る事が出来たかどうかは、企業秘密という言葉で濁すしかなくなるわね。ああでも、決して変な薬を使ったとかそういうのではないから、そこは信用して欲しいわ」

    「そう、ですか」

    「けれどもそうね。私がそれを目にする事が出来たのは、これまで様々な領域に至ったウマ娘たちの話を聞いていたのが大きいわね。領域に至る子は意外と多くいるけれども、話を聞く限りではいくつかはパターン化出来そうだったから。私は貴女の当時の状況や気持ちを表情や動きを見て、そのパターンに当てはめた結果、"緋色の影"を見る事が出来た、という訳」

    「パターン、ですか」

    「ええ」


     話を聞く限りでは、領域とはそう簡単に発現しないものであるとチャンドラポメロも理解していた。

     だからこそ、その発現をパターン化という言葉に落とし込めるものなのか、落とし込んでいいものなのか、と思わず小首を傾げてしまう。

     けれども、彼女の言葉を聞いた女医はどこか嬉しそうに口角を上げた。

  • 145二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:52:24

    >>144


    「その目こそ、前髪で隠れていたけれども、貴女はレース中、先頭に立っても尚、前を見続けた。まるで何かを追うよう、加速し続けた。私はそこに、"憧れ"を見たのよ」

    「っ!?」

    「良い反応ね。その様子を見る限り、私の予想は当たっていたという事ね。まあ、そうでもなければ貴女の視線の先にある"緋色の影"を見る事叶わなかった訳だけれども」

    「……」

    「とにかくまあ、そういう事よ。領域の発現が憧れを元にしているのであれば、後はレース中の貴女の視線の先にあるものを見る為に、企業秘密な事をして、私はそれを見たという訳」


     質問には答えた、と言わんばかりに「それじゃあ。次は貴女の話を聞かせてくれるかしら?」と女医は自身の体験談を切り上げて聞く姿勢を取る。

     自身だけが見る事の出来たと思われていた"緋色の影"を見られただけでなく、その発現に"憧れ"が関わっているという事まで言語化され、チャンドラポメロは目の前にいる女医が領域に関して並々ならぬ情熱を注いでいるという事を理解した。

     言われてみれば確かに、あの時"緋色の影"は近付く事によって"ダイワスカーレット"へと姿形を変えた。彼女に憧れを抱き、その憧れに近づいたからこそ、具現化したと考えれば女医の言葉はその通りと言えた。


    「分かりました」

    「楽しみだわ。貴女はあの時、何を見て、何を思い、何に至ったのか。聞かせて頂戴」


     それ故に、女医に"緋色の影"が"ダイワスカーレット"に変わった事は伝えられないと思った。

     自分だけの問題で収まるのならそれでも良かったが、ダイワスカーレットの名前を出す事で、彼女に迷惑が掛かるかも知れないと考えたからだ。

     幸いにも、好奇に光らせた目を再びチャンドラポメロに向けている女医は、"ダイワスカーレット"までは見えていない様子だった。

     その為、チャンドラポメロはそれだけは伏せて、それ以外の事を女医に話す事に決めた。

  • 146二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:53:24

    >>145



    ※※※



     出来るだけ詳しく話をして欲しいと言われたので、チャンドラポメロは自身のレース前、それこそパドックから話をする羽目になった。

     パドックでの状況。ゲート入りする前のカベルネソラリスとの会話。スタート直後の他のウマ娘の暴走とそれに釣られた者たちの掛かり。

     レース終盤で前の子たちを交わし、先頭に立った瞬間に"緋色の影"が見えた事。

     何故かは分からないが、それを追おうとした事と、同時に全ての音が消えて、ただただその"緋色の影"を追った事。

     その影に近づく事で"ダイワスカーレット"の姿になった部分だけは伏せて、影に近づくも更に逃げられた事。

     そして、もう一度その影に迫ったところでそれが掻き消え、気付けばゴールしていた事。


    「……以上が、私の経験した事です」

    「ふむ。なるほどねぇ。興味深い」


     一部を除いた全てを話し終えた後、女医は考え込むように口元を右手で覆う。

     それからしばらく無言のまま固まった後、チャンドラポメロへと向き合う。


    「その"緋色の影"が"憧れ"である事は、自覚しているかしら?」

    「ええと、はい」

    「そう。その"憧れ"が何であるか、誰であるかまでは聞かないわ。けれども、貴女はその"憧れ"に導かれる形で無我夢中で走った。これも間違いない?」

    「そうです」

    「ふむ。そしてその結果、無理な加速と脚の酷使で左足を骨折した、と」


     チャンドラポメロの反応を聞きながらも、女医は独り言ちるように何度か頷く。そして、考えがまとまったのか、どこかさっぱりした表情で再びチャンドラポメロと向き合った。

  • 147二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:54:25

    >>146


    「恐らくそれは、領域で間違いないわ。そして、同時に貴女はその領域に至る身体を有していない」

    「えっ、と?」

    「つまりは貴女は身体がまだ未熟なのよ。まあ、その身長と胸を見て未熟と言われてもピンと来ないかも知れないけれどもね」

    「うぅ……」


     思わぬところで自身の身長と胸の事を指摘され、チャンドラポメロは頬が熱くなるのを感じた。しかし、女医は「どちらも得難いものなのだから、恥ずかしがる必要はないわ」と軽く笑いながら話を続ける。


    「まあ詰まるところ、その身長や胸が先に成長したはいいものの、骨や筋肉はまだ成長途中という事よ。端的に言えば、貴女の身体はレースに適した本格化こそしているものの、領域に耐えうる身体ではない、という事ね。本格化は終わってしまうかも知れないけれども、高等部になれば領域に至っても怪我をする事はなくなると思うわ」

    「……」

    「と、言われても不安に思うわよね。また次のレースでその領域を発現しないとも限らず、その領域に自身が囚われないとも限らない」

    「どうしたら、いいのでしょう?」


     領域に至る身体になっていないと聞き、そしてその領域が今後また出るかも知れないと言われ、チャンドラポメロは不安を隠し切れなかった。

     けれども、深刻に思っている彼女とは裏腹に、女医は表情を崩し、わざとらしく肩を竦めて見せた。


    「簡単な事よ。その領域に至りそうになった時、発現してしまった時に、それをスキルへと下げてしまうの」

    「?」

    「領域と呼ばれるものが、人知やウマ娘知を超えた現象であるのならば、それを自分の手の届くところに置いてしまう。まあ、分かりやすい例で例えるのならば、その現象に名前を付けてしまうのよ」

    「名前、を?」

    「そう。落雷や噴火という言葉がなかった時代。それらの現象を目の当たりにした際、人々はそれらを天変地異の前触れや神の御業と恐れた。けれども、その現象を把握し、名前を付けて、人の身でも理解出来る範疇に落とし込んだ」

    「ほ、ほわぁ……」

    「……まあ、中等部の子には色々と難しかったかしらね。とにかく、領域や極限の集中状態、なんて言葉を使うから、惑わされる。けれども、漫画やゲームにある必殺技のような名前を付ければ、少なくとも分かりやすくはなるでしょう?」

  • 148二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:55:27

    >>147


     だんだん女医の説明についていけなくなり、頭の中だけでなく表情にまで「分かりません」という言葉が出ているのではないかとチャンドラポメロが思った時、彼女は笑って提案してみせる。


    「すぐにでも貴女の領域に付ける名前が思いつかないのなら、僭越ながら私が仮の名前として名付けましょうか」

    「あ、えっ、は、はい」

    「そう畏まらないで。その名前が気に入らないのなら、後で貴女が自分の納得のいく名前に変えればいい」

    「は、はい」

    「貴女の領域の名前は……そうね、"Shadow of the Scarlet"とでも呼んでおきましょうか」

    「"Shadow of the Scarlet"……」


     その名前はチャンドラポメロが見た"緋色の影"をそのまま英訳したもの。

     けれどもダイワスカーレットに憧れ、これまでなるべく目立たなず、影のように過ごしてきた彼女にとっては、これ以上にない名前だと感じるのだった。

  • 149二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:57:09

    日付変わる前に書き切れてよかった…
    そして、一番書きたかったところが書けて良かった…
    私はもう満足ですじゃ…ほなまた…

  • 150二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 00:28:50

    ネーロディセッピア可愛い
    ポメちゃんは果たして影で満足できるのかな?

    姉妹揃って むわっ むちっ むきっ

  • 151二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 07:08:54

    >>150

    ほう…癖ェ…が出ていますね…

    メカクレ属性! 高身長! DKPI! 眼鏡! 見た目優等生! 筋肉!

    キャラが濃い!

  • 152二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 09:43:02

    マーシュを引っ張っていったのも頷けるフィジカル

  • 153二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 18:02:01

    見惚れする身体ですわ

  • 154二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 18:07:41

    恋愛デジタルなネーロディセッピア君
    トレ×ウマ娘も、ウマ娘×ウマ娘もトレ×トレも、
    トレ×お仕事仲間でも、トレ×自分自身ですら美味しく頂ける強者

  • 155二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 18:09:08

    性癖のオールラウンダーすぎる

  • 156二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 18:23:07

    チャンドラポメロ ↓
    高身長、DKPI、完全両メカクレ、黒髪長髪、恥ずかしがり屋、赤面癖、お洒落リップ

    ダブルマシュマロ ↓
    低身長、DKPI、やや両メカクレ、栗毛ツーサイドアップ、お喋り、Hな話苦手、ボクっ娘

    カベルネソラリス ↓
    眼鏡、DKPI、やや両メカクレ、芦毛ポニーテール、表裏の無い生真面目、超甘党、オレっ娘

    ミスディレクション ↓
    高身長、DKPI、筋肉、片目ややメカクレ、鹿毛ショート、見た目優等生の中身今時ギャル

    レッドへリング ↓
    高身長、DKPI、筋肉、そこそこ両メカクレ、鹿毛ライオンヘアー、誤解を生む表情(特に笑顔)持ちの大人しめの娘

    ネーロディセッピア ↓
    高身長、DKPI、片目完全メカクレ、姫カット黒長髪、ハート目、恋愛オールラウンダー


    どこの娘も個性が強すぎる…
    次追加するなら低身長か平均身長ですなぁ

  • 157二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 18:24:45

    >>156

    追記


    カベルネソラリス → 青色アンダーリム眼鏡、または青色サングラス風眼鏡


    ミスディレクション → 赤色アンダーリム眼鏡


    レッドへリング → 黒色アンダーリム眼鏡

  • 158二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:55:02

    >>148




    ◇◇


    ◇◇◇



     チャンドラポメロが経過観察からの許可が下り、練習へと復帰してから月日は流れて11月。

     東京レース場第9レース。ダート1400Mのジュニア級レース。オキザリス賞が始まるその砂の上に、ダブルマシュマロは立っていた。


    「へー。ポメロちゃん。今週から本格的に復帰なんだねー」

    「そーなんスよ。ポメちゃんの後方腕組み理解者としては、嬉しい限りスね」

    「あー。マーシュちゃん、怪我してからずーっとポメロちゃんの事気にしていたものねー」


     パドックを終え、16人のウマ娘たちが係員の誘導に従って、各枠番のゲートへと進む中、ダブルマシュマロは同じレースに出走する級友であり好敵手でもあるミスディレクションとの会話に花を咲かせていた。

     ジュニア級の1勝クラス。レースのグレード的には重賞レースどころかオープンレースにも届かない。されど、翌年のクラシック級の重賞レースやオープンレースを見据えて、実績と経験を積むには十分な場。

     その中にあって、このレースを土台として勝ち上がろうと他のウマ娘たちが気を張る中、二人は和気藹々と会話を続ける。


    「いやホント。断金の友とも呼べるポメちゃんが骨折したと聞いた時は流石のボクも焦ったスよ。もしかしたらボクたち、一緒に走れない~!? って感じで」

    「あっはっはー! よく言う! マーシュちゃんとポメロちゃん、そもそも適性被ってないじゃーん」

    「ナイスツッコミ! ボクとディレさんをして、水魚の交わりとはよく言ったもんスねぇ!」

    「えー? どっちが水で、どっちが魚よー。アタシはどっちも好きなんだけどさー。筋トレにはどっちも欠かせないのよねー」

    「うーん、この筋トレマニア。あんまり筋トレばかりしていると、脳まで筋肉になっちゃうスよ?」

    「あれ、マーシュちゃん知らないの? 脳って筋肉なんだよー?」

    「え゛っ!? マジスか!? 初耳なんスけど!」

  • 159二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:57:53

    >>158


     これからレースが始まるというのに、緊張どころか余裕すら感じさせる二人の会話には、他のウマ娘たちだけでなく係員たちも目を丸くしている様子だった。

     しかし、彼らの様子すら楽しむと言わんばかりの調子で二人は会話に花を咲かせる。


    「そりゃもう! 脳無くして筋肉動かじ、筋肉無くして脳は動かじー、だからね!」

    「って、相互関係の事を言っているスかーい!」

    「あっはっはー! ナイスツッコミー!」

    「14番、ミスディレクション」

    「おっとー。呼ばれたようなのでこの辺でー。それじゃあ、ゴール板の先でねー」

    「うっス~」


     まるで漫才をするかのように会話が乗っているところで、ミスディレクションが係員に呼ばれ、彼女はダブルマシュマロに左手を振ってから誘導に従う。

     ダブルマシュマロもまた、右手を振る事でそれに応えつつ、自身が呼ばれるのを大人しく待った。

     その間にも、実況席からアナウンサーの声が場内に流れていく。


    『紅葉がちらほらと散り始めて冬の気配を匂わせる中、天候は快晴。バ場発表も良となりました。東京レース場、第9レース。ダート1400Mのジュニア級1勝クラス、オキザリス賞。16人のウマ娘たちが挑みます』

    「9番、ダブルマシュマロ」

    「はいっスー」


     しばらくしてから奇数枠番のウマ娘たちが呼ばれ始め、ダブルマシュマロはその二番目に選ばれる。

     彼女もまた、係員の誘導に従ってゲート内に収まり、出走を待つ。

     先程のミスディレクションとの会話中の雰囲気とは一転し、集中。一度、瞑想するような気持ちで目を閉じる。

  • 160二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:59:13

    >>159


    『今、ゲート内に収まった2番人気ダブルマシュマロ。非常に落ち着いていますね』

    『普段から天真爛漫なウマ娘との情報通り、レース前に気負いはしないのでしょうね』

    『1番人気のミスディレクションとも級友関係と伺いましたが?』

    『彼女もまた、明るいウマ娘と聞き及んでおります。気が合うのでしょうね』

    『二人とも、メイクデビューレースでは強い勝ち方をしております。今日はその辺り、楽しみですね』

    『そうですね。良いライバル関係になれると見ております』

    『解説、ありがとうございます。それでは長らくお待たせいたしました。東京レース場、第9レース。オキザリス賞の出走ウマ娘、全員ゲートに収まりました』


     その実況解説の会話の後、係員が全員ゲート入りが済んだ号令を掛けたのを耳にし、ダブルマシュマロは目を開いて短く息を吐く。


    (さぁて。相手がディレさんでも関係ないス。ボクはボクの走りをするだけっスよぉ~)

    『出走準備完了──』

    「……ふっ!」

    『スタートしました!』


     ゲートが開く事だけに集中し、構えを深くしたダブルマシュマロは、ゲート開放と同時に勢いよく飛び出すのであった。

  • 161二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:01:45

    ポメちゃんの経過観察から時間は一気に進んで11月
    彼女と同じく「溺れゆく者」であるダブルマシュマロと、級友であり好敵手のミスディレクションとのレース
    果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか? それともどちらにも微笑まないのか?
    9月の時点では「ミスディレクションさん」だったのが「ディレさん」に仲を進展させた二人の初対決の行方は如何に──!?

    ほなまた…

  • 162二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 06:54:46

    ダブルマシュマロは落ち着いてるな
    ふざけた口調をしてる時があるけど、それが一線引いて見れる感じなのかしら

  • 163二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 08:00:17

    レッドへリングとドリジャがカフェでお茶しているところが見てみたい

  • 164二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 12:37:18

    >>162

    真剣勝負(レース)の前にふざけられるって事は少なくとも心に余裕があるって事スからね

    緊張とかで張り詰めて能力を出し切れないよりも、落ち着いていて自分を出せる方がいいって事なんスねぇ

    まあ、これがOPレースや重賞…もしくは未勝利戦とかなら話は変わりそうスけども…


    そーゆー意味では同じくリラックスしている様子のディレさんも怖いスねぇ…

  • 165二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 12:56:10

    今見返すと本当に1スレ進む度にDKPIモブウマ娘が1人ペースで増えているのダートに芝生える


    このスレのMVD(Must Variable DKPI)は君だろう、レッドヘリング

  • 166二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 13:09:12

    至福のごろごろタイム

  • 167二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 17:59:09

    近くで恋愛の気配を察知し、現場へ急行するネーロディセッピア君

    尚、契約をして親密度を1高めたらトレーナー相手にもする模様

  • 168二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 19:54:16

    そういえばプロンプト公開されていないせいか、カベルネソラリスのAIイラストは増えないのよね

  • 169二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 00:08:22

    >>160


    『おっと、15番、アルテクロスと12番のオーニソガラムが出遅れた。先行争いは3番、ミリオンゴールド。11番、カペラウィン。8番、シンニンギア。一番人気、14番のミスディレクションは最後方からのレース』

    『彼女は息が長く、切れ味抜群の末脚を持っていますからね。メイクデビューレースの時のように、最後方からの大外一気が決まるのか、注目したいところです』

    『シンニンギアの後ろには2番レオンブレスト、。6番、パッションボム。そこから少し離れて二番人気の9番、ダブルマシュマロ。1番、クラムマイラヴ。ここまでが先頭集団』

    『メイクデビューレースから倍近く出走ウマ娘が増えていますからね。前が詰まらないといいのですが』

    (そうスね。全く以てその通りっス)


     遠くから聞こえてくる実況に耳を傾ける余裕がまだあるダブルマシュマロは、解説の言葉に内心同意する。

     メイクデビューレースでは大体8人から9人のウマ娘が出走枠となる。それ以降はそれぞれの適性や進む路線にもよるが、14人から18人のフルゲートが当たり前となってくる。

     ダート故に力強い走りが必要で、且つ距離的に必然とも言えるスピード勝負のレース。そこに16人ものウマ娘たちが集まって走るとなれば、必ずどこかで詰まる。

     かと言って、メイクデビューレースの時のようにゴール前の坂で他の子が脚を鈍らせるという事も期待出来ない。

     だからこそ、ダブルマシュマロはトレーナーとの作戦通りに先頭集団の中でも後方の位置で前の様子を伺いながら位置取りする。


    『向こう正面を走るウマ娘たちが第3コーナーへ入っていきます。先頭は変わりましてカペラウィン。その右にミリオンゴールド。すぐ後ろにレオンブレストとシンニンギア。パッションボムとクラムマイラヴも上がってきた。そこから離れて後方、内側ダブルマシュマロはまだ抑えたままだ』

    『前の方が早速詰まって来ましたね。コーナーでどうなるか』

  • 170二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 00:09:25

    >>169


    『中団以降は16番、ライトアンドダーク。その内、10番のエルマードライブ。すぐ後ろ、4番エンチャントセイバ。やや離れて7番、ナチュラルスター。15番のアルテクロスと12番のオーニソガラムはここにいた。そして13番のロルバスクリームとその外に5番メイデイサツキ。最後方、14番のミスディレクションが脚を溜めている』

    『ダブルマシュマロとミスディレクション以外はまとまりましたね。順当にいけば前目有利ですが果たして』

    (……)


     第3コーナー入りし、ダブルマシュマロは前を見据えたまま一度だけ耳を後方へと向けて後方の気配を探る。

     そろそろ実況を聞いている余裕がなくなる為、後ろのウマ娘たち、特にミスディレクションの位置を把握したかった。

     しかしながら、雑多に聞こえてくる走行音からダブルマシュマロから離れたところで中団以降が固まっている事ぐらいしか分からない。


    (まあ、そりゃ無理スよね……なら!)

    『おっと、9番ダブルマシュマロ、コーナーで引っかかったか? 僅かに下がった』


     ダブルマシュマロは彼女のトレーナーと共に、レースの前日まで他の出走ウマ娘たちを調べていた。

     自身がメイクデビューで降したミリオンゴールドとオーニソガラム以外は、メイクデビュー勝利後に次戦としてこのオキザリス賞を選んでいる。

     故にデータ自体は少なく、適性や脚質、メイクデビューレースでどういう勝ち方をしたかぐらいしか分からなかった。

     その中でも、級友である事を抜きに、一番強い勝ち方をしていたのが他でもないミスディレクションだった。

     前を行くウマ娘たちがゴール板の前へと意識が向けられている中、彼女たちの死角である大外から一気に捲って差すダートスプリント戦とは思えない力強い走り。それをVTRで確認した際、ダブルマシュマロは間違いなく今レース最大の好敵手になると確信した。

     だからこそ、その対策を含めて今日のレースに向けて作戦とトレーニングを積んだ。


    (第3コーナーに入って速度を落とし──)

    『さあ、先頭集団は第3コーナーから第4コーナー、そして直線へ!』

    (──第4コーナー終わりで外へと膨らむ先頭集団の内内へ!)

  • 171二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 00:10:38

    >>170


     スプリント戦故に、先頭集団のほとんどが速度そのままにコーナーへと突っ込む。

     ジュニア級故に。レース経験が浅いが故に。誰よりも先にゴールへと向かうが故に。

     先へ先へと行く前のウマ娘たちは、右回りコース、左回りコースで走り方を変えなければコーナーを回る際に遠心力で外側に膨れてしまう。

     無論、中にはちゃんとその事を理解し、それに合わせて走るウマ娘もいるだろう。

     けれども、ダブルマシュマロはそれに加えて、小柄な体格を活かして内内に突っ込める。加えてコーナー手前でわざと速度を落とす事で、遠心力の影響も最小限に抑える。


    (後は! 坂路で鍛えたこの加速力と!)

    『第4コーナーを回って、先頭は大きくバラけた!』

    「気合と根性で走り抜けるだけっスよぉおおっ!」

    『その内側にダブルマシュマロが突っ込んでくる! 凄い脚だ! 残り400を切る!』


     残り300Mを切り、ダブルマシュマロの視界の先に、ゴール板が見えてくる。

     内内を突いたおかげで、前には誰もおらず、このままいけば1着を狙えると確信する。


    「って! 思いたいスけどさぁ! そんなん無理っスよねぇ!」

    「ふぅうううっ!」

    『外から! 外からミスディレクションが先頭集団掻き分けて! 一気に捲ってくる! 残り200!』

    「うぉおおぉぉっスぅううううっ!」

    『ダブルマシュマロが更に伸びる! ミスディレクションがそれを追う! 間に合うか! まだ4バ身、3バ身差!』


     ゴール板を視界に捉えながらも、ダブルマシュマロの意識は自身の右側後方から迫りくる級友にして好敵手の気配と末脚鋭い走行音に向けられていた。

     最後方からの大外一気。ミスターシービー先輩然り、ヒシアマゾン先輩然り。どうして追込みの走りをするウマ娘たちは華があるのだろう、とダブルマシュマロはふと思う。

     けれどもその答えは他でもない、今自身に迫ってきているミスディレクションが証明している。

  • 172二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 00:13:59

    >>171


    『2バ身差……1バ身差! 逃げ切れるか! ダブルマシュマロ! 捉えるか! ミスディレクション! 残り100を切った!』

    「はぁああああぁぁっ!」

    「っスぅううううっ!」


     一緒に走れば、一度意識すれば、嫌でも分かる。斬りかかってくるかのような切れ味抜群の末脚。それまで後ろに控えていた者が、最後に一気に先頭へと躍り出る。

     これを華と言わずして何と表現するべきか。

     もう目の前に迫ってきているゴール板に対し、ダブルマシュマロの意識からミスディレクションが消える。

     意識して消したのではなく、ましてや迫りくる彼女に気配を消された訳でもない。ここまで来たら、後は真っ向勝負。それだけであった。


    『並ぶか! 並んで交わすか!? だが! だが! 僅かに! ダブルマシュマロ! ダブルマシュマロが今! ゴールイン! 2着はミスディレクション! 後僅か! 半バ身が届きませんでした!』


     そして、ダブルマシュマロがゴール板の前を駆け抜けたと同時に、自身の勝利を確信させる実況が耳に飛び込んでくるのであった。

  • 173二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 00:16:08

    レース表現も難しいから端折らざるを得ないのに
    出走ウマ娘の名前を考えるのに時間取られてて芝枯れてダート1800Mわよ…
    日付、変わってしまいましたが…ダブルマシュマロ、事前にミスディレクションを研究していたが故の、作戦勝ちで終幕
    そしてそれは同時に、策を弄さなければ勝てない好敵手がいるという証明でもあった
    ほなまた…

  • 174二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 00:27:18

    キャラ名考えるの大変なのに実況すごいわ
    確かに、あのガタイで撫で切るミスディレクションは華があるね

  • 175二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 00:34:05

    >>174

    あざます…あざます…(平身低頭)

    優等生顔でムッキムキというギャップに加えて、その優等生面で大外一気のぶち抜きスタイルなんてされたら絶対に固定ファンが付くと思います、ハイ


    後、今日以降の私へ「1番人気、2番人気」だと「1番○○、2番○○」と被るから「一番人気、二番人気」に統一しろ、OK?(自身のこめかみにピストルチャキ)

  • 176二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 09:44:12

    こちらもいいライバル関係になりそうで楽しみ

  • 177二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 12:22:10

    「はぁああああぁぁっ!」(ゆっさゆっさゆっさゆっさ)
    「っスぅううううっ!」(ばるんばるんばるんばるん)

    「うぉ……でっか(がんばれー!)」
    「ウッ、ふぅ……DKPI感謝(負けるなー!)」

  • 178二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 12:25:46

    >>177

    しかし、DKPI世代とはそういうものだろうねぇ

    ダブルマシュマロは分かりやすく分かりやすいダブルマシュマロがあるからまあそうなるけど、

    ミスディレクションは先に走りを見てから惹かれて改めて見ると「うお、デッカ…」で脳が焼かれそう

  • 179二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 12:58:15

    ほならね?
    DKPIを好きなだけ好きにして増やしたら解決なんですよ?




    解決なんですよ???(DKPIキメた顔をしながら)

  • 180二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 15:05:51

    Q.DKPIウマ娘が増えるとどうなる?
    A.知らんのか。DKPI対戦カードが書いているSSに組み込まれる

    ポメちゃん VS カベルネソラリス
    ポメちゃん VS レッドヘリング
    ダブルマシュマロ VS ミスディレクション

    ネーロディセッピア VS 他全員の恋愛模様(恋愛していなくとも強制)

  • 181二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 19:02:06

    うーむ…色々プロンプト追加しているけれども、どうにも歯を食いしばって全力疾走をしてくれない…
    ので、走り終わって疲労抱えながらクーリングダウンしているマーシュって事にしておこう

  • 182二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 20:59:04

    走れ!

  • 183二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 21:15:23

    >>181

    少し考えて見たけれども、「全力疾走」+「腕を前後に振る」のプロンプトを入れても尚、パッと見地団駄踏んでいるようなイラストをAIが出してくるかが何となく分かった

    低身長+爆乳のせいで腕を振るような動作を入れるとその爆乳に干渉するせいか

  • 184二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 21:17:15

    恐らくは乳のサイズダウンをすれば、ちゃんと腕を振って全力疾走しているようなイラストをAIが提出するだろう




    ……乳のサイズアップは許すがサイズダウンは許さんからな??????????

  • 185二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 22:50:07

    「はぁああああぁぁっ!」(ゆっさゆっさゆっさゆっさ)

  • 186二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 22:53:04

    きをつけろ
    でかぱいが
    おそってくるぞ

  • 187二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 23:26:17

    >>172



    ◇◇◇



     ゴール板を駆け抜けた後、ダブルマシュマロは全身から感じる疲労に耐えながらもクーリングダウンへと入る。

     明確に勝ち負けが分かっていない状況の時、彼女は意識的に順位から目を逸らす。勝ちを期待して負けていたら落胆してしまうし、逆に負けを意識してしまっているのに勝っていた時は喜ぶに喜べないからだ。

     それは一種の処世術であると、他でもないダブルマシュマロ自身が理解していた。

     実家は地元一番の果物屋。見た目は良くても味の薄い、美味しくない果物は沢山食べてきたし、逆に見た目が悪くても美味しい果物も多く食べてきた。

     最初に抱いた感情のままに物事を進めて、良い意味でも悪い意味でも裏切られた経験を、生きる上で必要不可欠な「食」から学んだからこそ、彼女は息を整えて平静を装う。

     実況の叫び声は聞こえてはいたものの、必死になって走っている最中ではその内容まで理解出来ない。

     今こうして、観客の盛り上がる声が、自分に向けられているのか、ミスディレクションに向けられているのかも分からない。

     しかしだからと言って、何時までも結果から目を逸らしても無意味であるとも、ダブルマシュマロは知っていた。いくら美味しい果物であっても、食べ頃を逃してしまえば不味くなると経験したから。


    「……ふーっ」


     ランニングからジョギング。ジョギングからウォーキング。

     もう秋口だというのに体操服が透ける程の汗が流れる以外は心身ともに落ち着いたダブルマシュマロは、ようやく意を決して掲示板へと向き合おうとする。


    「マーシュウゥゥッ!」

    「っ!? トレーナーさん!?」


     一度目を閉じ、祈るように天へと顔を上げた彼女の耳に自身の名を叫ぶ知った声が聞こえてくる。

     聞き間違えるはずもないその若い男性の声がした最前列の観客席へと、ダブルマシュマロは驚きと共に顔を向けた。そこには髪を金色に染めたスパイキーショートの精悍な顔付きの男性が、満面の笑みで肩まで上げた両腕両手の人差し指を上へと指している。

     その笑顔を見た瞬間、彼女は自身の勝利を確信出来た。

  • 188二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 23:27:24

    >>187


    「君が一番! 一番だ!」

    「ありがとうございます!」


     黒茶色の目を輝かせ、まるで子どものようにはしゃぐ自分のトレーナーの姿を見て、ダブルマシュマロは勝利の実感がこみ上げてきた事もあり、嬉しさで泣きそうになりながらもまずは頭を下げて彼への感謝を言葉にした。

     それと同時に、観客がこのレースの勝者であるダブルマシュマロへの称賛の声や拍手を浴びせる。

     所謂重賞レースではない為、それは地響きの様な歓声や万雷の拍手ではなかった。しかし、今の彼女にとってはこれ以上ない祝福の音色だった。

     まだ1勝クラスのレースに勝っただけであり、ここで涙ぐむのはまだ早い。そう思いながらも顔を上げたダブルマシュマロの視界はぼやけてしまっている。


    「えへへ……ぐすっ」

    「マーシュ! マーシュ! ……んっしょ、っと、そぉい!」

    「ぇ、え゛っ!? と、トレーナーさん!?」


     その視界を元に戻したのは、他でもない彼女のトレーナーだった。

     ダブルマシュマロと同じく感極まったのか、最前列観客席の手すりの上に登ったかと思うと、一度の屈伸の後に両手両足を高く上げながら跳躍する。

     選抜レース後に、陽気なイタリア人にナンパされているのかと思う程に情熱的な専属契約を申し込まれた為、只者ではないと感じていた彼女だったが、まさかここまでとは思いもよらなかった。

     無邪気な小学生男児を思わせる笑顔のままに、自身の元へと全力で走ってくるトレーナーを前に、ダブルマシュマロの今にも下瞼の裏に溜まっていた涙も引っ込んでしまっていた。


    「はっ、はっ、マーシュう……やっぱり、君は、はぁっ」

    「ああもう、そんな息を切らせるぐらい全力疾走しなくても逃げないスよ」

    「君は! 最高だ! 君の勝利を最前列で見られるなんて! ああ! 俺は幸せ者だ!」

    「ちょっ、恥ずかしいスよ! 何もそんな大声出さなくても……」

    「何を言うんだ! あの日、君が俺の持ちかけた契約を了承した瞬間から! 俺と君は一心同体! 比翼の鳥で!?」

    「~っ、連理の枝!」

    「イェア! やっぱり君は最高だ! 俺のマーシュ!」

    「~っ!? っとにこの人はぁ!」

  • 189二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 23:28:44

    >>188


     息を切らせながらも、姫を相手に忠誠を誓う騎士のように片膝を立てて思いの丈をぶつけてくるトレーナーの情熱に、ダブルマシュマロは頭の先から首元まで熱くなるのを感じた。

     お洒落スーツがダートの土で汚れる事も厭わず、徹頭徹尾褒めちぎる彼の言葉に嘘偽りが一つもないと分かるからこそ、思わず合いの手も入れてしまう。

     そんな彼女の反応に、トレーナーもウインクとともすれば惚気に聞こえそうなぐらいの言葉で返して来た為、ダブルマシュマロは自身の尻尾を立ててしまう程取り乱してしまう。

     だが、そんなやり取りが長く続く訳もなく、係員がトレーナーを不審者として捕まえようとこちらに全力で向かっている姿が目に入り、彼女はすぐに冷静さを取り戻す。


    「そこの人! それ以上彼女に近づかないで!」

    「ちょっ、係員の人が来ているスよ! 捕まったら罰金になっちゃうス!」

    「うむ! 愛しの君を祝福する為に犯した罪なればこそ! その罰は甘んじて受けよう!」

    「このおバカ!」


     男女三人の係員が決死の表情で迫る中、それでも片膝立ての姿勢を崩さず、目を逸らす事なく堂々と言ってのけるトレーナーに、ダブルマシュマロは呆れつつもつい罵倒してしまう。

     直後、彼の背後を男性係員が抱きかかえる形で捕らえ、その両腕はそれぞれ女性係員が羽交い絞めにした。


    「確保ォー! ……って、中央トレーナーのバッジ!?」

    「えっ、えっ!? この人、中央のトレーナー!?」

    「中央のトレーナーが何でこんなバカな真似を!?」

    「勝利した愛しの担当へ賛辞を贈るのに、理由がいるかい?」

    「バカな事言ってないで! さっさとこっちに来なさい!」

    「はっはー! マーシュ! この調子でGⅠまで共に駆け昇ろう!」


     係員もまさか不審者が中央トレーナーとは思わず、一度はそれぞれの手を緩めるものの、大真面目に答えるトレーナーに呆れながらも引きずる形で連行する。

     それでも尚、笑顔を崩さずにまだ1勝クラスを脱した程度の担当に対して、大言壮語とも取れる言葉を残して高笑いするトレーナーが去っていく姿を、ダブルマシュマロは名状しがたい気分で見送るのだった。

  • 190二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 23:31:57

    第一章にて、ポメちゃんのトレーナーが言っていた"あいつ"こと、ダブルマシュマロのトレーナー、襲来
    担当の才能を全力で信じ、応援し、力になると心に誓い、勝利した担当へと惜しみなく称賛を浴びせまくるタイプ
    それはそれとしてちゃんとトレーナーとして、ちゃんと情報収集もして作戦も練られるタイプ

    そんな相方ともいえるトレーナーが言うからこそ、彼女は──溺れる


    ほなまた…

  • 191二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 08:31:07

    いやぁ、これは初心なJKには猛毒ですわ

  • 192二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 08:58:56

    ダスカ含めたDKPI世代はまだ中一なんスよ(超小声)

    179cmのB123cmな中一や136cmのB102cmの中一がいてたまるかと言われたらそれはそうなんじゃが…

  • 193二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 10:13:25

    DKPIのせいか、やっぱり全力疾走してくれないので…
    自分のトレーナーの歯に衣着せぬ発言に困惑し、恥ずかしくなってその場で地団駄踏んでしまうマーシュって事で一つ

    「何なんスかあの人ー!!」

  • 194二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 19:47:14

    もうそろそろ4スレ目なのか

  • 195二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 20:35:37

    DKPIに惹かれた者たちが集まり好きなだけ好きにした結果、4スレ目に突入するんじゃな

  • 196二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 20:39:23

    元スレ主ですが
    今後もお好きに

  • 197二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 21:22:01

    私、カテゴリ反復横跳びの9!
    スレサムネに好みのメカクレデカパイモブウマ娘を見かけたから、それまで脳内で描いていたモブウマ娘SSを当てはめて書き込んだら毎日SSを少しずつ書く事になっちゃった!
    これまであにまんSSで書いた事があるのは別カテゴリの196レスまで毎日書き続けたSSと、とあるスレで興が乗ってマックイーンとトレーナーがスイーツを食べに行くトレウマSSしか書いた事が無いのにどーしよう!
    幕間含めて現在文字数9万文字近くいっちゃっているし、このままいくと第二章も余裕の2万文字超え!

    次回! 「あれ? これ次スレが立たなかったら今日はSS投稿しなくてもいいんじゃね?」

    DKPIスタンバイ!

  • 198二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 21:58:09

    貴様が立てろ
    逃げるな
    逃げたら地の果てまで追いかけてでも書かせるぞ

  • 199二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 22:00:58

    私事で済まないのだが今日は今からが晩飯でね…
    そして晩飯後に今日の分のSS書きが始まるので次スレ立てと保守れる暇がないんじゃよ…

  • 200二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 23:05:21

オススメ

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