【SS】だからこの場所を【月村手毬】

  • 1テルテルボウズ25/06/24(火) 08:48:56

    SSスレです。
    スレ1つ立てるくらいに書くのはこれが初めてのため、不出来なところもあるかと思いますがご容赦ください。
    稚拙かもしれませんが、どうぞ最後までお付き合いいただければ幸いです。

  • 2テルテルボウズ25/06/24(火) 08:50:09

    「手毬、落ち着いて聞いてほしい」

     いつになく神妙な顔をした麻央に、月村手毬がそう声をかけられた。
     それは手毬が参加する合同ライブの、ほんの一週間前のことだった。
     時刻は夕方と夜のちょうど境目あたり。初星学園学生寮の寮長でもある麻央から、ちょうど夕飯を済ませたところで声を掛けられる心当たりなど一つもなかった。
     どうしましたか、と言葉を返しながら、ふと思う。
     ――今日の有村先輩、なんか様子変だな。
     優しく、厳しく、頼もしく。リトルプリンスの呼び名にふさわしく、どんなときでも寮生にとって身近で信頼できる王子様のような人、というのが手毬から見た彼女のイメージだ。
     今日の彼女に、その頼もしさはない。いつも涼し気な目元は険しく、眉間に皺も寄せられている。言葉だって、呼びかけてからこんなにも発言に迷うそぶりを見せたことなんて今まで一度もなかった。

    「どうしたんですか、有村先輩。なんていうか、すごく先輩らしくない」
    「ボクだって、動揺して言葉に詰まることくらいあるよ。今回の話は、これでも取り繕っているほうさ」
    「……言いづらいことなら、もういっそ一息で言っちゃってください。言い澱まれるほうがなんだか気になります」
    「そう、だね。君の、プロデューサーのことなんだけど」

     その言葉を聞いた瞬間に、無意識に表情が硬くなったという自覚は手毬自身にもあった。

  • 3テルテルボウズ25/06/24(火) 08:51:55

     だって今プロデューサーとは喧嘩中だ。
     や、喧嘩というのも正確ではない。なぜなら非があるのは自分のほうで、プロデューサーに言われたことを素直に聞けなくて反発した自分が聞く耳を持たなかっただけだから。
     これまでにも何度か似たことはあった。そのたびに迷惑をかけていることは理解していて、申し訳なく思う気持ちももちろんあって、けれど自分の性格が災いして素直に謝るよりも早く飛び出てくるのがこれだ。

    『プロデューサーのバカ! そんなに厳しく言わなくたっていいじゃないですか! 意地悪! きらい!』

     どうして自分はこうなのか、と布団の中で絶叫したい気持ちを抑えるのに、結局夕飯は普段よりも少し多めに食べてしまった。
     少しは落ち着いた頭で、明日はちゃんと謝ろう、迂闊なことを口走らないように部屋に戻ったらどんな風に謝るかちゃんとシミュレートしないと。
     そんな風に思っていた矢先の名前というのはこう、なんというのだろう。
     これから宿題をやろうと思っていたところに「宿題はどうしたの?」なんて聞かれてしまって出鼻をくじかれたような、この気持ち。
     言葉には出さないまでも表情に出てしまったのは、そういうものだ。

    「……お説教の電話でもありましたか」
    「ううん、そうじゃない。そうじゃ、なくて」

     尚も言いづらそうな麻央がそこで深呼吸。そうして吐き出す勢いそのままに。

    「さっき病院に運ばれたそうだ。あさり先生が階段前で倒れているのを見つけて、周囲の状況から、たぶん階段で足を踏み外して落ちたみたいだ、って。強く頭を打っていて――」

  • 4テルテルボウズ25/06/24(火) 08:55:21

    「プロデューサーっ!」

     直前に麻央から話を聞いて、そこから病院までどうやって来たのか。
     必死で走ってきたこの瞬間も、たぶんもう少し時間が経って冷静になった後も、たぶん私は思い出せない。
     病室の扉を開けて飛び込みつつ、脳のどこか端のほうに一欠片だけある冷静な部分が自嘲気味にそう呟くのを聞きながら飛び込んだ部屋の中、最初に目が合ったのは当のプロデューサーではなく、彼が寝ているベッドの隣に座っていたあさり先生だった。
     月村さん、病室では。そう言いかけたところで言葉を止めたのは、手毬の表情と、乱れ切った呼吸で上下する肩と、目元にある汗とはまた違う雫が見えたからだろう。
     喧嘩――という名の一方的なお説教は多かったものの、それでも手毬とそのプロデューサーがどれだけ仲良く信頼しあっていたかは、二人を少しでも知る者なら聞くまでもないことだ。
     取り乱すのも無理はない、それくらいの関係性である。

    「……職員室にいたら、すごい物音が聞こえたんです。何事かと思って様子を見に行った時には、プロデューサー君は倒れていて、周りに荷物が散乱していて……その、頭を強く打ったようで、血も」
    「……っ、それ、は」
    「でっ、でも、お医者さんが言うには打ちどころが悪いというわけではないみたいですよ? 目が覚めてから改めて検査することになりますけど、少なくとも現時点で脳に大きなダメージがあるとか、目覚める見込みがないとかそういうことはないそうですから。むしろ、いつ目を覚ましたっておかしくないとのことで」

     話を聞くにつれ血の気が引くのを見かねたあさり先生が、とってつけたように続ける気休めの言葉を聞いて、余計に涙があふれ出そうになった、その時だった。

    「あさり……先、生?」

     聞きなれた青年の声が、気まずい空気の中に割って入る。
     手毬の方を見ていたあさり先生が、背中に電流でも流れたかのように目を見開いて、そして声の方を振り向く。
     ベッドの上で、頭に包帯を巻いた姿のプロデューサーが、うっすらと目を開けていた。

  • 5テルテルボウズ25/06/24(火) 08:58:27

    「プロデューサー!」
    「プロデューサー君!」

     二人揃って彼の名を呼び、ベッドのそばに駆け寄ると、額を押さえながらゆっくりと上体を起こしたプロデューサーは、それぞれをゆっくり見つめる。
     たっぷり五秒はそのまま沈黙して、ようやく彼の口から出てきた言葉は。

    「……すみません、状況がよく分からず混乱しています。職員室に向かおうとしていた事は覚えているのですが……何がどうなっているのか教えていただいてもいいですか、あさり先生。それと、そちらの……」

     やめて。それ以上言わないで。聞きたくない。気付きたくない。
     ほんの一瞬でそんな言葉が頭の中を駆け巡る。普段がまるでずっと寝ぼけていたみたいに、この瞬間だけ頭が良く回る。
     良く回って、気付きたくもない細かな点によく気が付いてしまう。
     二人が駆けよって真っ先に視線が向いたのはあさり先生だった。
     自慢になるわけでもないが、いつも自分と他の誰かが並んでいる時必ずプロデューサーは担当アイドルである自分にまず意識を向けていた。
     目を合わせようとしてその目が合わなかったことなんて今まで一度もない。
     あさり先生に語り掛ける口調はいつもの通りだった。
     ことさらに親しいわけではなくとも、他人と呼ぶよりは友人に近いくらいの気安さと恩師に対する敬意の混ざった声音。
     そこから自分の方に視線が移った時の声音の硬さ。
     まるで初対面の人に向けるような。

    「……すみません、こちらの方はあさり先生の知り合いでしょうか。もしかして何か、ご迷惑をおかけしてしまいましたかね」

  • 6テルテルボウズ25/06/24(火) 09:06:13

    ***

     自分が何を叫んだのかも、どんな顔をしていたのかも、騒いで暴れているうちに誰が来て誰が自分を押さえつけたのかも、手毬には分からなかった。
     ただ気が付いたらそこは病院のすぐ向かいにあった公園で、濃紺の夜空の下でベンチに腰掛けたまま自分は歯を食いしばりながら泣いていて、左右にはクラスメイトの花海咲季と、藤田ことねが手毬を挟み込むように座っていた。
     なんでこの二人が、と一瞬思って、すぐに気付く。
     一週間後に迫った合同ライブにこの二人も出るのだ。別にユニットとかそういうのではないけれど、初星学園の一年生の中ではそれぞれ突出した実力で注目されていて、その注目を狙って手毬のプロデューサーが二人にも声をかけたのがライブ計画の始まりだったと聞いている。
     今回のライブについて一番忙しくしていたのもプロデューサーなので、二人とも交流はそれなりにあったしその関係で連絡が届いたのだろう。
     
    「……落ち着いたかー?」
    「事情は聞いたわ、手毬」

     手毬の泣く調子が少し変わったのに気付いたことねが尋ねてくる。
     もともと雑な口調のわりに面倒見の良さが滲み出ている彼女だが、今回に関してはもっと明確に、はっきりと手毬のことを気遣う響きが言葉に含まれていた。
     それに対して逆に咲季のほうは、極限まで感情を押さえ込んでいるかのように平坦な声だった。
     これも意外なようでいて、時々――特に妹絡みや勝負絡みで自分のことを追い込んでいる彼女にはたまにある態度である。限界まで気を張っていたり、逆に何をどうしたらいいか分からない動揺を隠そうとしていたり。
     つまり今の状況はそれに類する事態というわけで。

    「あなたのプロデューサーに何が起きたのかも、どうして無事に目を覚ました姿を見たはずのあなたが、あんなに取り乱していたのかも」
    「お前が泣いてる間にあさり先生からメッセージ来たんだよ。あたしら全員に送ったみたいだから自分でも確認できると思うけど……見る勇気あるか?」

  • 7テルテルボウズ25/06/24(火) 09:09:03

    「……ない」

     即答か、と左右のふたりが顔を見合わせるのが、空気でなんとなしに伝わった。
     らしくない態度だ、と思われているんだろうか。普段なら確かにそんな風に問いかけられて、素直に弱音を吐いたりしない。
     嫌なことこそ誤魔化さずにいっそ一思いに言って。そんなふうに噛み付くような言葉で促すところだ。

    「んじゃなるべく要点だけ押さえて言うぞ。手毬のプロデューサー、多分階段から落ちて頭ぶつけたんだって。大きな怪我とかそういう意味での後遺症は、検査した限りじゃ見つからなかったらしいよ」
    「意識も、視力や聴力も全部異常無し。本人にいくつか質問してみたらほとんどの内容は正確に答えられたらしいから、記憶障害なんかも無し……ごく一部を除いてね」

     そんなピンポイントな話があるか、と聞いていて思う。まだそういう趣向のドッキリだ、と言われた方が、悪趣味だが納得できる。
     けれどどれだけ待っても、そんな悪趣味なネタばらしが行われることはなかった。沈黙している間に出てきてくれたらまだ許すのに、と思いながら、手毬は左右の二人を交互に見て、また視線を自分のつま先に向けた。

    「……プロデューサーが、その、部分的な記憶喪失なんだとして。その範囲はどれくらいなの? 私の事以外で何を覚えていないの?」
    「それは……えーっと……あたしらにもよく分かんないってか――」
    「連絡にある限りなら、他には無いわね」

     ちょっとお前な、とことねが咎めるような目で咲季を見て、けれどそれ以上は何も言わない。浅い付き合いではないのだ。
     こういう時の咲季が、その場しのぎな気休めよりも潔く本当のことを伝えるべきだという考えであることも、手毬やことねだってその考えが間違いではないと思っていることも、お互いよくわかっている。

    「プライベートの事も、自身の家族や交友関係についても、直近の些細な出来事も全部ちゃんと覚えていたそうよ。わたしや、ことねの事もそう。覚えていないのは今のところ、手毬に関することだけ。出会ってから今までのあなたに関する事全てよ」

  • 8テルテルボウズ25/06/24(火) 09:14:30

    「……そっか」

     根拠もなく、そんな気はしていた。ただのマイナス思考や不安とは少し違う、理由は分からないけど絶対にそうだという確信。

    「……あーでもほら! ドラマなんかでもさ、記憶喪失ってずっと続くものじゃないだろ? 案外何日かしたらケロッとした顔で思い出すかもしれないし!」
    「でも、そうじゃないかもしれない」

     無理に明るくしているのだとわかる声に、手毬は自分でも驚くくらいに冷えた声色で返した。

    「本当にすぐ思い出してくれるかもしれない。一週間かもしれないし、一年かもしれないし……一生かもしれない。ううん、それ以前にあんなふうに、完全に初対面ですって態度を取られるの、思ったよりもキツいよ。正直一日耐えるのもしんどいし……それに」
    「……それに?」
    「なんで私の事だけなんだろうって。それも心当たりがあるんだ」

     頭を強く打って、他のことは何一つ忘れなかったのに。
     月村手毬という個人についてだけ、その全てを忘れている。
     ほかの記憶は手放さなかったのに、手毬についての記憶だけ全て手放した。
    そんなの。

    「私が沢山迷惑をかけてるから。沢山困らせているから。今日だって怒られて、素直に謝れなくて、プロデューサーなんか嫌いって……言っちゃって……」
    「いやいや、それとこれは関係ねーだろ、多分」
    「あるよ! プロデューサーは、本当はもう私のことなんか嫌いになっちゃったんだよ! わがままばっかり! 意思も弱くてすぐ泣き言を言う! そんな私に嫌気がさしてたに決まってる! 私の記憶だけ大事じゃないから! 忘れたかったから覚えてないに決まってるでしょ!」
    「お前いい加減に……!」

  • 9テルテルボウズ25/06/24(火) 09:21:40

    「そうね、そうかもしれない」

     ほとんど悲鳴のような大声に、表情を険しくしたことねが掴みかかろうとする。それを、ずっと黙って話を聞いていた咲季が遮った。
     ことねを手で制止し、自分も立ち上がって手毬と向かい合うように立つ。真っ直ぐな目の奥は、手毬を突き刺す槍のようにも、表に出さないよう努めている感情の炎のようにも思えて、思わず手毬が一歩後ずさる。
     瞬間、同じ歩幅だけ詰め寄られる。咲季は「逃げるな」という言葉の代わりのように。

    「あなたの態度が気に入らなくて、自分が選んだアイドルなのに支えきる気概も持てなくて、もう金輪際月村手毬のことを思い出したくないから忘れたのかもしれない。それで? もしそうだとしてあなたはどうするの? 態度を変えるの? このままずっと泣いているの? それともアイドルを辞める?」

     そうしたら今度は私があなたを忘れるわ。続いたその言葉は下手に頬を手で叩かれるよりも痛く感じた。

    「……辞めないよ。そんな無様な逃げ方しない」
    「じゃあどうするの?」
    「せめて結果を返す。思い出したくないくらい愛想を尽かしていても、少なくとも結果さえ出せばプロデューサーにとって、私は嫌なだけのアイドルじゃなくなる」

     我ながらそんな都合のいい話があるか、と手毬の内心でそんな言葉が頭をよぎる。
     そんな動機でアイドルやって、結果が残せるのか、という言葉も。
     けれど、

    「せめてこれくらいはやらないと、私が、月村手毬を許せないから」

  • 10テルテルボウズ25/06/24(火) 09:32:07

    ***

     啖呵を切った、その三日後。
     合同ライブはプロデューサーが万全でなくなった影響が大きいとはいえ、さすがに表に立つわけでもない人員が一人怪我をしただけで数日前に中止できるようなものでもないということで、可能なら続行という話になった。
     念の為、トレーナーやあさり先生から手毬に「無理に参加しなくてもいいけどどうするか」と確認があったけれど、それには迷いなく参加の返事をした。
     返事をしたのである。
     だというのに、そしてその合同ライブに向けたボーカルレッスンの時間だというのに。月村手毬は女子トイレの個室に、閉じこもっていた。
     ――どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。
     呼吸が浅く、荒い。心臓がうるさい。でもそれ以上に。

    「歌えない……」

     普通に喋ることはできる。今朝も昨日もその前も、寮で麻央や咲季やことねと言葉を交わし、ライブへの参加意思を問われた時も確かに自分の言葉でその問いかけに答えた。
     なのに、歌おうとすると駄目なのだ。歌詞を頭の中に浮かべて、大きく息を吸い、いざ歌いはじめようとしたところで、脳裏にプロデューサーの顔が浮かぶ。
     見知らぬ他人を見るような、警戒するような。そして実際には見たことないはずの、手毬のことを疎むような、心底関わりたくないものを見るような目。
     きっと記憶のあるプロデューサーが自分をそんな顔で見るなら、ちょうどこういう目付きだろう。そう思わせるリアルなイメージが浮かび上がると頭が真っ白になり、喉が縄を巻いたように強く締まる。
     声はおろか吐息のひとつも出なくなり、トレーナーや一緒にレッスンを受けているアイドルの怪訝そうな視線が突き刺さる。
     それが耐えきれなくて、少し目眩がすると言い訳をしてレッスン室を飛び出してきたのがついさっきだ。

  • 11テルテルボウズ25/06/24(火) 09:40:24

    「どうして……? どうして歌えないの……!」

     こんなふうに一人で自分を詰る声は出るくせに。よりにもよって自分がアイドルとして一番誇れる分野に限って。
     原因は、分からないわけではない。歌おうとすると思い浮かぶあの顔だ。
     アイドルとして一番輝くはずの事をしようとすると、そんな自分を嫌がるような表情を思い浮かべてしまう。実際に見たことなんてないのに、鮮明に。
     ――どうして頑張るんですか。しがみつかないでください。俺は手放したいのに。今更歌で証明されたところでなんになるんですか。

    「言うわけない……言うわけないのに……」

     断言がどうしてもできない。振る舞いはともかく、もともと手毬の出発点は嫌いな自分を変えたいというある意味での自己嫌悪だ。だから自分のことを嫌う気持ちはよくわかってしまう。
     他人もそうじゃないとは、どうしても言いきれない。ましてや迷惑をかけ続けているプロデューサー相手なのだから。
     もしかしたら。そんな言葉を振り払うことが出来なくて、萎縮してしまうから歌えないのだ。
     こんなことなら、やっぱり。病院前で咲季に詰め寄られた時の言葉を思い出して、逃げてしまえばよかったのかもしれないと、そんなふうに考えて――
     がちゃり、と個室の外側で扉が開く音がした。

    「篠澤さん、篠澤さん。どうしましたの? わたくし、まだお手洗いに用事は無いのですけれど……」
    「うん。わかっている。でも大抵の女子高生は仲のいいお友達と一緒にトイレに行くのが常識と聞いた。だから、着いてきてもらった」

     気の抜けるような、ここにことねがいたなら声に出さないまでも何か思うところのありそうな顔をしているだろうなと思える会話が聞こえてきて、手毬は思わず身を縮めた。
     ぽんこつ一号と二号……いいや、もうそう呼べる相手ではない。倉本千奈と篠澤広。同じアイドル科の隣のクラスで、どちらも手毬と交流のある相手。歌おうとして歌えない自分の方が、今はよほどぽんこつかもしれない。

  • 12テルテルボウズ25/06/24(火) 09:46:14

    「まあ、そうだったのですね。でしたらわたくし、篠澤さんのお友達として、立派にお手洗いの付き添いを果たしてみせますわ!」
    「うん、その意気。でもごめん、本当はトイレそのものに用があるわけじゃない。ちょっと人目につかないところで、相談したかった」
    「相談?」

     個室の外で返した千奈の相槌と、声に出さなかった手毬の内心は見事にシンクロした。
     あの子が人に相談するほど何かを悩むことあるんだ、という気持ちが半分。もう半分は、そんな相談事をここで自分が盗み聞きしてしまっていいのか、という懸念だ。

    「相談は、手毬のこと。最近ちょっと様子がおかしいから」
    「……そう、ですわね。月村さんのプロデューサーさんが倒れた、というお話は聞きましたもの。きっと月村さんが誰より心を痛めていると思いますわ」
    「うん。昨日噂に聞いたけど、その影響で手毬は今、歌が上手に歌えなくなったらしい。かなり精神に来ていると思う……そこで千奈に、ひとつ聞きたい」
    「はいっ。なんでもお尋ねくださいませ、あくまでわたくしに答えられることであればなんなりと!」
    「もし手毬が歌えなくなったとして。千奈は手毬のことをどう思う? 凄くない人だと、思う?」

     ぞくり、と背筋が冷えた。口元を手で覆い、僅かな吐息も外に漏らさないようにしながら、手毬は扉をじっと見つめる。見えないはずの扉の向こうで、病的なほどに華奢な広の、蜂蜜色の瞳がこちらを真っ直ぐ見据えているような気がした。

  • 13テルテルボウズ25/06/24(火) 09:50:04

    「……質問の意味が、よく分かりませんけれど……でも、月村さんが凄くない人だなんて、わたくしこの先何があっても思いませんわ!」
    「うん。私も同じ。でも念の為に聞く。千奈がそう思うその心は?」
    「月村さんは難しいことでも、大変なことでも、一度頑張ると決めたら最後までやり抜く方ですもの。もし歌が苦手になってしまわれても、元より上手くなるまで諦めない姿が目に浮かぶようですわ」
    「千奈は、手毬のこと好き?」
    「はい! 歌が上手いからとかは……もちろん尊敬しておりますが、それとは関係なく! 月村さんは生き方こそがとても格好良くて、わたくしの憧れですもの!」

     ――あいつら本人がいないと思って恥ずかしいことを。さっきまでとはまた別の理由で心臓の音をうるさく感じながら、口元が少しだけ緩む。不思議と喉の締めつけも和らいだような気がして、今なら歌えるかもしれない、いやまだ難しいかな、なんて事を手毬は真剣に考え始めた。

    「そういうわけだから、手毬。あまり思いつめない方がいい。今すぐ無理にどうにかしなくても、頑張る手毬をわたしたちは応援する、よ」

     そこへ不意打ちのようなこの呼びかけである。
     うえぇぇ今の月村さんに聞かれてましたの!? と絶叫できる千奈はまだいい。完全に予想外の一撃に手毬のほうは思考が完全にフリーズしてしまった。
     気付いてて、わざわざ。元気づけるにしてももっと方法があるでしょ。叫びたい気持ちと、せめてここで沈黙を貫けばまだ誤魔化せるかもしれないという蜘蛛の糸並に細い希望と。

    「それから、もしトイレを出るならそのままレッスン室に行くよりも、一度手毬のプロデューサーが使ってた事務所に行った方がいい。それじゃ、またね」

     混乱しているうちに投げられたそのアドバイスだけがしっかりと頭に刻みつけられたまま、手毬が再起動するのにはそこからかなりの時間を要した。

  • 14テルテルボウズ25/06/24(火) 10:12:03

    ***

     がらり、と扉が開く音を響かせて、手毬がその部屋に踏み入ったのはちょうど三日ぶりだった。
     最後に入ったのはプロデューサーに叱られて、嫌いだと言い放って逃げた時。プロデューサーがまだ手毬のことを覚えていてくれた時。

    「たった三日のはずなのに、なんか居心地悪いな」

     呟いても誰かが返事をするわけでもない。手毬とそのプロデューサーに割り当てられた空き教室兼事務所のその部屋に、今いるのは手毬一人だけだった。
     鍵は最初から開いていて、部屋の中は少しだけ資料が散らばっていて、不用心だなと思いつつ、そのどちらにも手をつけることなく部屋の隅にある椅子に腰掛けた。
     もう窓の外は茜色になっていた。広に散々固まっている間にレッスンの時間はとうに過ぎていて、スマホにはトレーナーや友人達から心配や、ちょっとしたお説教のようなメッセージが届いている。それをひとつずつ確かめながら、手毬は待っていた。
     こつこつと、硬い靴底の規則的な足音。
     手毬が来る前から開いていた部屋の鍵。
     散らかっていた資料も、普段ならもっと丁寧に几帳面に整頓されている。少なくとも三日前に部屋から飛び出る時はそうだった。
     がらり、と再び扉の開く音が部屋に響く。

    「……ここにいたんですね」
    「うん。私にとって、ここは大切にしたい場所なので」
     
     スマホから顔を上げて、扉の方を見る。
     多分、今のプロデューサーにはあまり馴染みのない景色。手毬にとっては、過去に何度か覚えのあるアングルだ。
     とても大学生とは思えないその背丈と大人びた雰囲気に、きっちりとスーツまで着込んで片手に資料の束を持つ。月村手毬のプロデューサーがそこに立っていた。

    「まず、俺の方から小言を言いたいのですが」
    「はい」
    「この三日間、避けてましたよね?」
    「避け……て、なくはないですけど」

     言い淀む程度には自覚がある。むしろかなり意図的に避けていた。

  • 15テルテルボウズ25/06/24(火) 10:38:47

     プロデューサーは結局翌日だけ念の為に検査をして、記憶以外は問題ないことと、むしろ普段の生活環境に身を置いて記憶を思い出す糸口を探した方がいいということで早々に退院していた。
     その後は普通に登校していたし、件の合同ライブについても事故以前ほどの手際ではないがあちこち駆け回っていた……というのは咲季やことねから教えられていた。その間の手毬は自分もレッスンに打ち込むからと言い訳をして、そもそもこの部屋に近寄ろうともしなかったのである。

    「目覚めて最初の発言が避けられる理由だという自覚は俺にもあるので、あまり強くは言いません。ただ一言だけコメントするなら、アイドルとして最低限の報連相というものを忘れないでください」
    「う……はい」

     ぐうの音も出ない正論だ。言われるがままに俯いていると、向かいの椅子に座ったプロデューサーが、不思議そうに首を傾げた。
     おかしいですね、と声に出さない口の動きまでついて、それを見た手毬の方も首を傾げたくなる。

    「あの、何か?」
    「いえ、月村さんはこういう時、素直に叱られるタイプではないよな、と思っていて」
    「えっ」

     まるで事故の前の自分をきちんと知っているかのような口ぶりに、思わず椅子から立ち上がりかけて、それを手で制された。

    「すみません、思い出したわけではありません。ただ集めた情報からイメージした月村さん像と一致しないなと」
    「なんですかそれ。絶対集めた情報偏ってますよ」
    「そうかもしれません。なにせ三日の間にかなり急いで集めた資料ですから」
    「ていうか、どうやって集めたんですかそんなもの。まさかまた盗撮……?」
    「……? いえ、普通に先生や、月村さんを知る友人達に会いに行って聞き込みました。あとはこの部屋にある自分の仕事の記録などですね」

     そう言いながらプロデューサーが差し出してみせたのは手に持っていた資料の束だ。

  • 16テルテルボウズ25/06/24(火) 10:55:54

     軽く目を通してみると、何日に誰から聞いたのか、どういう内容だったかなんて一般的な内容から「その話をする時の相手の表情や声音はどうだったか」なんてことまで事細かに書かれている。咲季やことね、千奈と広の名前もあって、さっきの広の様子はこのせいか、と気付いた。
     それにしてもこの調べよう。記憶をなくしてもやっぱりこの人変わらないな、と安心すべきか恐怖すべきか正直迷ってしまう。

    「色々調べた結果ですが、月村さん。正直かなりの問題児ですね」
    「うっ、そんなことは」
    「レッスンにせよ本番にせよ加減を知らない暴走特級。迂闊な発言も多く、煽られた時の導火線も短い。かつてNIAに参加していた時もそうでしたが、特にSNSなど任せられないタイプの人間です」
    「そ、それはそうだけど……」
    「我儘で、自制を知らず、素直に感謝や謝罪が出てこない。人を助けるつもりで口を出して、何故か騒ぎが大きくなるなんてこともあるようで」
    「……っ」

     言い返そうとして、頭の中に声が響く。
     ――全部その通りじゃない。悪いところばっかり。嫌われるような事ばっかり。やっぱりプロデューサーは私の事なんか嫌だから忘れたんだ。
     だから――この言葉に言い返しちゃいけない。なんで嫌われたかの理由を遮っちゃいけない。だからお前が嫌いだと言われるまで聞くのが、月村手毬の罰なんだ。

    「だというのに、不思議なものです」
    「……不思議、ですか」
    「ええ。聞いていて不思議と不快さはありませんでした。喜ばしいと思いました。放っておけないとも思いました。自分で覚えていない当時の自分に嫉妬すら覚えたほどです」
    「え、あの……どういうことですか?」
    「はい。どうやら記憶を無くす前の俺にとって、あなたに振り回されるのも困らせられるのも、胃に穴が空きそうな思いをさせられるのも、あの月村手毬の支えになれているんだと思うと誇らしい気持ちになれたみたいです。月村手毬の歌を支えているのは俺だ、みたいな雰囲気が調べた資料から嫌というほど伝わってきましたよ」

  • 17二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 11:20:52

    いいね。とてもいい。特に広のそれっぽさすごく好み

  • 18テルテルボウズ25/06/24(火) 11:59:23

     全く、腹立たしい。そんなふうに、いつものプロデューサーなら滅多にしないような不機嫌な表情と吐き捨てるような言葉はまるで、

    「もしかして、忘れる前の自分に怒ってる……?」
    「まあ、はい。腹立ちますよあいつ。月村さんに振り回されるのを自分の特権みたいに振舞ってて」

     そういえば少し前にも似たようなことを言っていたような。本当に何言ってるんだろうこの人は、と今度は明確に呆れてしまう。

    「どっちも同じプロデューサーじゃないですか」
    「ええ。記憶を無くす前も今も俺はあなたのプロデューサーですよ、月村さん。今の俺が向こうに嫉妬するように、向こうの俺も、多分俺に嫉妬します」

     今、あなたの担当プロデューサーとして支えることができるのは他でもない俺ですから。そう言われて思わず顔が熱くなる。

    「嫉妬なんかしませんよ、多分。私、たくさん困らせましたから。たくさん、嫌な思いさせたと思いますから」
    「いいえ、絶対嫉妬します。嫌な思いさせられたその何倍も、あなたのプロデューサーで良かったと、そう思えます。たった三日、あなたの人となりを調べただけでそう思えるんですから間違いない」
    「そう……ふーん、そう、なんだ」

     ああ、我ながらなんて簡単なんだろう。飛び跳ねたくなる気持ちを抑えながら、視線を教室の外に逃がしながら、手毬はそう思う。

  • 19テルテルボウズ25/06/24(火) 12:03:06

     散々ショックを受けて、きっと自分は嫌われているんだなんて思って、その全部がたったこれだけの会話で溶けて消えるのだからたまらない。

    「ありがとう、プロデューサー。おかげでかなり、気分が前向きになりました」
    「それは良かった。それではひとつ、お礼を求めてもいいですか?」
     
     あなたの歌を聞かせてください。手毬を真っ直ぐに見据えながら、プロデューサーははっきりと、噛み締めるようにそう言った。

    「あなたの得意分野が歌だということも、誰に聞いてもその歌唱力は一目置かれている事も調査済みです。多分この部屋を探せばライブの映像くらいは出てくるとは思いますが、そっちはまだひとつも見ていません」
    「見ればいいじゃないですか。そもそも私今、歌うのは」
    「それでも、直接聞きたいんです。過去の俺が集めたものは、過去に月村手毬の歌を聞いて惚れた男がその感動を浴びた後に作った資料です。そうじゃなくて、月村さんの歌を初めて聞いて、これから惚れる俺だけが体験出来る感動を、あなたから貰いたい」

     駄目でしょうか、と尋ねられて、それでも嫌だなんて。
     手毬はとても口にはできない。言いたくない。

    「仕方ありませんね。そこまで言うのなら、特別です。今日は徹底的に付き合ってもらいますから!」

     今ならちゃんと歌える。そう思えた。

  • 20テルテルボウズ25/06/24(火) 12:09:37

    ***

    「――以上、月村手毬でした!」

     ステージの上でそう締めくくり、舞台袖から裏に入る。今日は観客からの拍手が心無しか少なかったように思えて、それもまあ納得のクオリティだったわけで。

    「ひっっっどい歌だったわね、手毬!」

     ステージ裏で待っていた咲季には満面の笑みでそう言われ、

    「まぁ本格的に歌のレッスンに戻ってきたの、結局本番二日前だったからナー。それでもあたしよか上手いのはちょっとむかつくけど」

     その隣で次の出番だからと出ていくことねにすれ違いざまに軽く小突かれ、手毬はそれでも勝ち誇ったように笑うのだった。

    「まあね。次はもっとしっかり歌うけど。今日の私はこれでいいんだよ。この歌がいいんだ」

     生意気、と同じような笑みを浮かべた咲季が、そういえばとステージ裏のとある一角を指さした。
    そこにはこちらを見つめる、プロデューサーの姿。

    「あなたのプロデューサー、ステージから戻ってきたら大至急話したいことがあるって言ってたわ。……良かったわね」

     最後の一言だけは、穏やかな優しい微笑みでそう送り出されて、不思議な気持ちのままに手毬はプロデューサーの元へ駆け寄った。
     もしかしたら自分は勘が鋭いのかもしれない、というのはこの一週間で何度か経験して思ったことだ。プロデューサーが記憶をなくした時も、似たような予感があった。今度は、その逆だ。

  • 21テルテルボウズ25/06/24(火) 12:13:20

    「俺が、月村さんのことだけを忘れた理由ですが」
    「うん」
    「考えてみれば単純な話でした。職員室に向かおうとしていて、階段のところで月村さんのことを考えていたらその考え事に没頭しすぎてうっかり階段を踏み外したんです」
    「うん……えっ」
    「恥ずかしながら頭をぶつけるその瞬間まで月村さんのことで頭がいっぱいだったもので……ちょうど強く意識しているところに頭への強い衝撃が来たので、その時強く意識していたことだけが頭から吹き飛んでしまったのかなと。型の古いパソコンのデータも書き出しや読み込みの最中に衝撃が加わると飛びやすいと聞きますし」

     この人は今自分の脳と古いパソコンをイコールで繋げたのか。それでいいのか私のプロデューサー。そんな言葉と同時に、その言い回しの意味に気が付いた。
     頭をぶつける直前、手毬について頭がいっぱいだったと。そのことを思い出したのだと。

    「いつ思い出しましたか?」
    「月村さんの歌を、ステージ裏で聞いている最中です。そういえばあの時も月村さんのライブを思い出していたなと」
    「プロデューサー」
    「はい」
    「私に振り回されるの、嬉しかったんですね」
    「……あれは羞恥心まで記憶と一緒に吹き飛んでいたんです。忘れてください」
    「ふふ。嫌です」

     言いながら、向かい合うのではなく、ピッタリとくっつくようにプロデューサーの隣へ。

    「あの、暑いので離れてもらえませんか」
    「それも嫌です。我儘はそのまま、もう少し素直になることに決めたので、私」
    「個人的には嬉しいのか困るのか判断し辛い心境の変化ですね。どうしてですか?」
    「わざわざ言わせるんですか?」

     ――この場所を大切にしたいから、です。

  • 22テルテルボウズ25/06/24(火) 12:16:07

    以上になります。
    書きたいように書かせていただきました。読んでくださった方のお口に合えば幸い、合わなければ長々とお目汚し失礼いたしました。

    まだまだ未熟ですが、今後もこの名前で書かせていただければと思います。

  • 23二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 12:17:44

    乙 いいssだった

  • 24二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 12:32:53

    >>17

    >>23

    ありがとうございます。順に載せていってる最中、心臓潰れるかなって程度には緊張してたので報われました。


    纏めて書ききってからお出ししようと思うので、ペースは遅いかもしれません。

    ただそれでも良ければ、待っていていただけると嬉しいです。

  • 25二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 12:55:51

    よかった
    待ってます

  • 26二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 13:04:14

    解像度が高い🥰

  • 27二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 13:08:37

    ええもん見せてもらいました!
    この量一気投下だと反応無いの怖いだろうと思って17で差し込み感想入れさせて頂きました。いい方向に捉えてもらえて良かった!

  • 28二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 13:10:47

    広の少しだけ遠回しな励ましとか、千奈の無垢な褒め言葉とかとてもそれっぽかった。

  • 29二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 13:14:33


    めちゃめちゃちゃんとしてて草なんだ

  • 30二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 13:22:40

    ありがとう……ありがとう……

  • 31二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 13:34:57

    >>27

    ああ、基本書ききるまでは皆待ってくださる感じなんですね。覚えました。

    とはいえお気遣いいただいて本当に感謝です。今後も見かけたら声かけてやってください。


    >>26

    >>28

    それっぽさはなるべく意識しております。多分に独自解釈混ぜてますが。

    気を付けているところが褒められるとこそばゆいものですね。ありがとうございます。

  • 32二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 17:51:02

    SS乙でした

スレッドは6/25 03:51頃に落ちます

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