【微閲覧注意】ずっとキミと【P麻央SS】

  • 11◆xoztBPC5B6fW25/06/25(水) 23:25:13

    良くも悪くも最近多方面にシリアスな描写が多いなーと感じ、最初から最後までドロッドロに甘いSSが見たくなったので書きました。みんなの心の足しになったら嬉しいです。

    麻央さんのコミュBGM「幕間にキミと」ってめちゃくちゃオシャレなバーで流れてそうだよなー、って思ったのが全てのきっかけでした。

  • 21◆xoztBPC5B6fW25/06/25(水) 23:26:20

    「それじゃあ。素敵な夜に、」
    「乾杯─────。麻央さん、ドームでのライブお疲れ様でした。」
    「ありがとうございます。今夜は存分に楽しみましょう、ボクだけのプロデューサー。」
    「……そんなに見つめても、何も出ませんよ。」
    「キミの瞳に釘付けなだけですよ。それともボクがキミを見つめることに、何か不都合でもありますか?」
    「いいえ。内心は、麻央さんの視線を独り占めできる喜びを噛み締めていますよ。」
    「……む、一杯食わされましたね。」
    「まだグラスに口すらつけていないでしょうに。」
    「言葉遊びがお上手ですね、プロデューサーは。その話術で、一体どれだけの人を落としてきたんです?」
    「…………俺が惚れ込んだのは、麻央さんただ一人ですよ。」
    「ならよろしい。」
    「……俺の負けです。」
    「夜はまだ始まったばかりですよ?負けも何も、ここから語り明かすんですから。ボクとキミが歩いてきた道のりを。」
    「ええ、やぶさかでもない。俺がどれだけ麻央さんに心を奪われたか、かつてのプロデューサー科の教えを無視して語らせていただきましょう。」
    「……はは、これはボクもすぐに負かされそうだなあ。」

     ネオンライトが灯る街外れ。ボクとプロデューサーは、100プロの事務所で静かに酒を嗜んでいた。ボクが彼と出会い、トップスターへの道を駆け上がり始めてから早7年。静寂と洋灯に浮かぶ彼の瞳は、いつにも増して妖艶で。ああ、この目がボクをここまで────。
     いや、一人で追想したって仕方がない。なにしろ今日は、久しぶりの2人きりの空間なんだ。彼とただひたすらに話をするためだけに作られた、ボク達だけの世界。
     教えてくださいよ、プロデューサー。キミの全てを。長い長い夜を、キミで埋め尽くさせて。

  • 31◆xoztBPC5B6fW25/06/25(水) 23:27:34

    「覚えていますか?麻央さん。あなたと俺の初対面を。」
    「むしろ忘れようがないですよ。苦い思い出……と言うには突拍子もない話でしたけどね。」
    「あの時の俺、そんなに怪しかったですか?」
    「それは……はい。残念ながら。」
    「そう……ですか……。分かっていたことではありますが、一体何がいけなかったのか……。」
    「キミはなんというか、アンニュイですからね。どこかボクに似た切れ長のタレ目に、男性にしてはやや長い髪。人によっては不気味に見えるのも仕方がない……かもしれません。ボクはいいと思いますけどね。」
    「100:0で俺に非があったのでしょうが、これでも見た目には気を使っているんですよ。しかしまさか、今日もここに来るまでに職質を受けるとは。」
    「それはボクも不服でしたよ!ちょっと前髪をおろしてキミと一緒にいただけなのに、警察の人も何を勘違いしたんだか……。」
    「まあそれよりも、トップスター有村麻央の変装がバレなかったことに安堵しましたけどね。しかし麻央さんから溢れ出るオーラから気づいてほしかったとも……うーむ、もどかしい。」
    「まったくもう、バレたいのかバレたくないのか、どっちなんですか。」
    「麻央さんのプライベートは守られるべきですが、麻央さんの抑えきれない魅力はもっとバレるべきです。」
    「……はあ、変な人。」

     ボクのプロデューサーは、怪しい人だ。ボクを探しに女子寮にやって来た時、彼を不審者だと思わない人はいなかった程度には。そういうボクも、最初は彼を取り押さえようとしてたけど。
     所構わずボクのファンTシャツを持ち出そうとするし、ボクがプロデュースを受けるって答えただけで大声でお礼を言い出すし……あれ、本当に不審なエピソードしかないな。
     でも、ボクの隣にいてくれる人は、彼以外ありえない。人は見た目以外にも内面から放つ輝き、そしてそれが表れた行動こそがその人の本質となる。他でもないボクがそれを一番知っているし、それは彼が教えてくれたことだ。そうでしょう?プロデューサー。これからも、ボクの隣にいてくださいね。

  • 41◆xoztBPC5B6fW25/06/25(水) 23:28:56

    「ん……美味しい。飲みやすいな。」
    「麻央さんは、カルーアミルクでしたね。」
    「はい。やっぱり、ボクは甘いものが好きですから。……無理をしてブラックコーヒーを飲んでいた時期もあったなあ。」
    「懐かしいですね。強がってブラックを飲む麻央さんも俺は好きでしたよ?」
    「もう!キミはすぐそういう事を言うんですから。」
    「ですが、自分が本当に好きなものを正直に好きだと言ってくれる今の麻央さんは、もっと好きです。」
    「……も、もう。2回も言わなくていいです……!それにボクだって、甘いものよりもキミと過ごす時間が何よりも好きなんですから……。」
    「……いつもより、飲み物から甘い味がするのは気のせいでしょうか。」
    「気のせいじゃありませんよ。耳元が赤くなってるの、自分じゃ見えないでしょう?」
    「……麻央さんこそ、頬が紅く染まっていますが?」
    「な……!それは、気のせい、です……。」
    「さあ、どうでしょうね。それにしても、それからの麻央さんは可愛さもカッコよさも超一流のものにしてみせました。俺もアイドル衣装論をプロデューサー科で履修していたというのに……センスの面ではすっかり越されてしまいましたね。」
    「紛れもなくキミのおかげですよ、プロデューサー。ほら、どうです?今日の服。キミのためだけの、可愛くてカッコいいボクが目の前にいますよ。」
    「…………後で俺もブラックでも飲むことにします。」

     ふふ、またボクの勝ちですよ、プロデューサー。さっきのお返しです。街がすっかり寝静まった今も、こうしてキミと話しているだけであっという間に時間が過ぎていく。
     クールに、キュートに。ボクが初めて見つけることができた、ボクらしさ。ボクがボクを好きになることが出来たのは、キミが一緒にホントのボクを探し出してくれたから。
     ……ボクだけの王子様には、すっかり絆されてしまったな。お互い様かもしれないけど。2人で初めて宣材写真用の衣装を探した時間も、一緒にホラー映画に怯えた時間も、今のボクには欠かせないものだったんですよ。またいずれ、2人でお出かけしましょうね。

  • 51◆xoztBPC5B6fW25/06/25(水) 23:29:57

    「ボクがボクを嫌いでいた期間よりも、ボクがボクを好きになってからの方が長い時間になってきました。本当に、あの時キミに出会えてよかったです。」
    「それは俺も同じことです。有村麻央というトップスターの原石をプロデュースすることができた。これ以上の幸運などない。あなたの快進撃は、NIAから始まりましたね。」
    「もうNIAのことを遠い昔のことのように感じます。地道にミニライブをしていたのが、今やドームを埋め尽くすところまで来られた。感慨深い、なんて一言じゃ表せません。」
    「ええ。麻央さんの真の魅力が世間に知られ始めた瞬間でした……む、なんですか、その不満げな顔は。」
    「……プリンス麻央イリュージョンという名前、ボクは今でも微妙だと思ってますからね?」
    「そ、そう、ですか。…………一体何がダメだったんだ、本当に。」
    「……す、すみません、今でもここまで引きずってるとは思ってませんでした……。その、そんなに落ち込まないでください。」
    「……落ち込んではいません。」
    「ならどうしてそんなに伏し目がちなんですか!?ほら、ボクが悪かったですから!こっち向いてください!」グイ
    「うわあ!……やっぱり、麻央さんは可愛いしカッコいいな……。」
    「〜〜〜〜〜〜っ!急にそんなこと言っても、何も出ませんからね!」

     ………っ!!な、なんて火力の強さだ……。まったく、ポロッと本音を出したかのように呟かないでくださいよ。ボクとしたことが、つい顔を背けちゃったじゃないですか……!プロデューサー、酔ってきちゃったかな。
     それにしても、プロデューサーのネーミングセンスは一体どうなってるんだろうか?こう……カッコ悪いと言っては申し訳ないけど、なんでそうなっちゃうんだろう。ボクとしては凄く心配だ。
     だって、今後もしボク達の間に子どもが生まれたとして、変な名前をつけようとしたものなら……あれ、ボク今何を考えてた?……………!ま、待て待て!まだだよ!こ、これはお酒のせい、そうお酒のせい…………。

  • 61◆xoztBPC5B6fW25/06/25(水) 23:31:11

    「……麻央さんがそこにいてくれるだけで、俺は幸せです。」
    「プロデューサー、やっぱり酔ってますよね!?もう、ボクもお酒はそこまで強くないですけど、プロデューサーも大概ですよ。」
    「酔ってません。」
    「……ふふっ、今もですけど、プリンス麻央イリュージョンをはじめ、NIAの期間中もキミには驚かされてばかりでしたね。」
    「俺としては色々と自重したつもりなのですが……。」
    「それは分かりますけど。失敗して、応援の寄せ書き色紙の半分を埋めたこともあったじゃないですか。一体、何書いてたんですか?」
    「麻央さんへの愛と情熱、応援の気持ち、溢れ出るインスピレーションを思いのままに書いていただけです。」
    「……だと思いました。有村麻央のプロデューサーであり、有村麻央の一番のファンですものね。」
    「当然です。しかし一度ボツにしたはいいものの、仕分け作業を手伝っていただいた藤田さんにそのことを話したら、ドン引きされてしまいました。そんなにおかしなことだったのだろうか……。」
    「それ、ボク以外にはやっちゃダメなやつですからね?間接的に人の話を聞くだけでも、驚かないわけないじゃないですか。」
    「俺は麻央さんにしかやってないのに……!」
    「……ふふっ、そんなキミだったからこそ、今のボクがあるんです。もっともっと、ボクのことを好きにさせてください。」

     この人がボクのプロデューサーで良かったと思う瞬間は、ここに辿り着くまでに幾度となくあった。そのカウントは、たった今また1つ増えたわけだけど。最後にボクらしさを見つけるのがボク自身だとしても。隣に彼がいてくれたから、今のボクがあるんだ。彼にも言った通りね。
     ……なんというか、ボク自身よりもボクのことが好きだよね、この人。別に、悪いことでも何でもない……むしろ、今はそれが嬉しくてしょうがない。キミがボクの王子様だったように、ボクもキミの王子様でいられたのかな。そう思うと、無性に口角が上がるんだ。

  • 71◆xoztBPC5B6fW25/06/25(水) 23:32:26

    「はい、これから更に、あなたのことを好きにさせてみせます。トップスターになった今でも、それは変わりません。ずっとずっと、続いていきます。」
    「NIAが終わってから、キミは本当にその通りにしてくれました。そしてこれからも……か。プロデューサー、改めてお礼を言わせてください、ありがとうございます。」
    「俺は、プロデューサーとして当たり前のことをしただけです。カッコいいあなたに胸を打たれて私情が入りすぎたのは否定できませんが。」
    「……どんどん無敵になっていきますね。ボクのスター街道は、まだまだ続いていくんだ。」
    「白草月花に啖呵を切ったところも、思えば一つの分岐点だったように思います。あの時あなたの意志を尊重して、本当に良かった。」
    「ステージで戦った相手を馬鹿にされて、黙っているわけにはいかない。ボクも、当たり前のことをしただけですよ。」
    「いいえ、それは麻央さんにしか出来ないことです。本当に、あなたの精神は気高く、美しく、カッコいい。たとえ相手がどんな人間でも、他人のことを想って行動できる人はそう多くありません。俺が、麻央さんに魅了された最大の理由の1つです。」
    「そ、そう、ですか?……改めて言われると照れますね。ボクが王子様に憧れて始めた行動も、ボクの本質になっていく。キミがそう言ってくれたから、あの時ボクは少し救われていたんです。」
    「…………そこまでスケールが大きくなると、俺も照れますね。」

     もう、この人は……。こういうところで急に人間味を出してくるからズルいなあ。耳元だけじゃなくて、頬まで赤くなってきてるの、気づいてますか?そういうところが、たまらなく愛おしい。ボクも、キミに魅了されているんです。
     ……待てよ、ボクの顔も赤くなってきてたりしないよね?いや、まだ大丈夫。まだ。お酒はまだいける。……あの人の顔が赤くなってるのは、飲み物のせいだけ、じゃないよね。よし、まだ堪え──────ッ!!?

  • 81◆xoztBPC5B6fW25/06/25(水) 23:34:04

    「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
    「ど、どうしました麻央さん!?まさか、お酒が回って気分が悪く………!」
    「ち、違います!その……思い出しちゃったんです、白草月花の話をしたせいで。えっと……キミに、お姫様抱っこされた時の話を………。」
    「な、なんだ……安心しました。てっきり、体調を崩されたのかと心配で。」
    「なんだ……じゃないですよ!あの時の感触、今でもはっきり覚えてるんですからね!?あの時ボクがどれだけ恥ずかしかったか、プロデューサーは知らないでしょう!いいです、今ここでプロデューサーをお姫様抱っこして思い知らせてあげますよ!!」
    「ま、麻央さん?やはり酔ってますよね!?」
    「酔ってません!!格闘技を嗜んでいるボクの力を、甘く見ないでくださいよ、ほら!」
    「ちょっ麻央さん、こんなところで急に持ち上げたら…!」

    「「う、うわあああああああ!!!!!!」」

    ドサッ

    「………。」
    「………………。」
    「ま、麻央、さん………。」
    「ぷ、ぷろでゅ、さー………。」
    「すみません、すぐに退き───っ!」
    「…………待って、ください。」
    「麻央さん、足……っ!」
    「…………プロデューサーとなら、いい、です。お酒の力とかじゃなくて。ボクの本心から……、。」
    「………おれ、は。」
    「だから、来て、ください………!」
    「………俺は今から、プロデューサーにあるまじきことをします。麻央さん…………!」


    2人で交わした口吻は、今までに飲んだどんな飲み物よりも、甘い味がした。

  • 91◆xoztBPC5B6fW25/06/25(水) 23:35:21

    「す、すみませんでした!プロデューサー!あの後、そのまま眠っちゃって………。」
    「………いえ、お互い様、ですよね。どこか身体に痛いところはありませんか?その……俺が覆い被さる形で夜を明かしてしまったので………。」
    「いえ、それは大丈夫、です……。」

    (プロデューサーの身体…………細身に見えて、凄く引き締まってた…………。)
    (麻央さん………あんなにカッコいいのに、身体はとても柔らかかったな………。)

    「…………。」
    「………………。」

    「「 プロデューサー!! / 麻央さん!! 」」

    「……え?」
    「……俺から言わせてください。責任は取りますので。……その、」

    俺と、結婚してください。

    「〜〜〜〜〜っ!!!」

    ふ、不束者ですが、よろしくお願いします………っ!


    その日の100プロには、ほのかにスクリュードライバーの香りが漂っていたという。

  • 101◆xoztBPC5B6fW25/06/25(水) 23:36:38

    終わりです。
    スクリュードライバーのカクテル言葉は
    『あなたに心を奪われた』だそうですね。

  • 11二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:39:57

    乙 甘々はいいぞ 締めもきれい

  • 121◆xoztBPC5B6fW25/06/26(木) 00:21:08

    感想を頂けるとスレ主の創作の励みになります。
    募金だと思ってぜひ…!

  • 13二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 00:29:02

    >>2の言葉選びが素敵で引き込まれた

  • 14二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 02:14:13

    やはりP麻央は純愛、素晴らしい

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