【SS】真城優、アイドルになります

  • 1Pドル絶対信仰者25/06/26(木) 09:52:55

    ────私は、何も無かった。
    勉強ができるわけじゃない。運動ができるわけじゃない。どこまでいっても人並みで、平凡で、特別な才能なんて無くて、ただぼんやりと何も変わらない日常を過ごす。それが私、真城優という人間。
    それに何か不満があるわけじゃない。寧ろそうあって欲しいと願って、今まで生きてきた。
    臆病で、変化を嫌って、何かを成そうなんて大層な目的も無くて。才能も、目標も、何も無い。
    だから、放送部の部長を引き受けたのも、ただの気まぐれ。会長や、1年の花海さんに感化されたのは本当だけど、ただそこにあったから引き受けただけだ。

    「────真城優さん、ですね。初めまして」

    いつもの放送が終わり、資料の片付けをしている最中にかけられた声に振り向くと、そこには一人の男の姿。
    サラリと艶のある下ろした黒髪に、アンダーリムのメガネ。目は細く、目尻を下げて穏やかに微笑むものの、どこか妖しさを醸し出すその人に若干怖気付くが、不思議と恐ろしさはあまり感じない。
    学校という場所に似つかわしくない黒のスーツでキッチリと決める姿は、まさに業界人という言葉が服を着ているようだ。

    「あ、あの……どちら様ですか……?」
    「失礼しました。自分はこういう者です」

    胸ポケットから取り出した銀色のシンプルなケースから、1枚の紙が差し出される。
    いわゆる名刺に書かれていたのは、初星学園プロデューサー科であること、そして名前。どうやらこの人は、プロデューサーという人らしい。
     
    「初星学園のプロデューサー科に在籍しています1年生です。宜しくお願いします」
    「……は、はぁ……プロデューサー……その……プロデューサー科の人が何の用でしょうか……?」
     
    私の質問に待っていましたと言わんばかりに、目の前の人は妖しい笑みをより一層深くする。

  • 2Pドル絶対信仰者25/06/26(木) 09:54:16

    「真城さん、単刀直入に言います。貴女の声は素晴らしい。先月から始まった貴女の放送を聞いてから、俺は貴女のことばかりを考えている」
    「えっ? あっ、えっ??」
    「全五回に渡る放送、その全て拝聴していました。そしてどれもが素晴らしく、筆舌に尽くし難い。貴女の声は他者を魅了し、人々に安らぎを与える。俺はその声を、もっと多くの人に届けたい。貴女という存在を、全世界に知らしめたい」
    「ちょっ、ちかっ!? えっ!? あのっ!!?? 手がっ!?」
    「だから、貴女をスカウトしたい。貴女の輝きを、もっともっと美しく鮮烈なものにしたい」
    「あのっ!!!!」

    「貴女を、プロデュースしたい。貴女の声を、一番傍で聞かせてほしい」

    …………放送室で出会ったあの人は、怪しくて、プロデューサーというよりは詐欺師に近い感じがして。
    才能も、目標も、何も無い私を騙そうとしているんじゃないかって思った。
    平凡に生きられれば、何も無ければいいと、そう思っていた私の生活が変わってしまったのはこの日からで、この人のせいで。
    けれど、この人の目を、想いを、聞いてしまったら、胸がときめいてしまったのも本当で。
    この後どうなったのか、実はよく覚えていない。

    真城優、17歳。

    ────この放送室から、アイドルを始めます。

  • 3Pドル絶対信仰者25/06/26(木) 09:56:10

    お久しぶりです。知ってる人がいるかは分かりませんが、Pドル絶対信仰者です。

    長い闘病生活からようやく帰還しました。

    少し前に撫子のSS書いていたのですが、真城さんのプロデュースも書きたくなったので書いてもいいですか?


    【SS】藍井撫子「私が初星学園に交流生として!?!?」|あにまん掲示板学P(先日行われたNIA……誰もが素晴らしいパフォーマンスをし、その比類なき原石の輝きを知らしめた……。今思い出しても、胸が熱くなる。……俺もいつか、あんなアイドルを育てあげることができるのだろうか)…bbs.animanch.com

    稚拙ですがこちら撫子のものです。

  • 4二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 09:59:18

    お気に入りに突っ込んだ

  • 5二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:03:12

    >>3

    このSSの人!? 楽しみ

  • 6二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:04:48

    おかえり!! 入院したって聞いた時はビックリしたけど生きてて良かったぜ!!

  • 7二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:28:07

    いや見るでしょこんなの。待ってる。めっちゃ待ってる。

  • 8二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:36:41

    >>3

    これ尊くて好きだった

  • 9二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:52:59

    >>6

    マジか 体調には気をつけて欲しい

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:57:12

    保守

  • 11Pドル絶対信仰者25/06/26(木) 11:25:11

    ありがとうございます。
    遅筆なのと、またいつ具合が悪くなるか分からないので、2日3日更新無かったらまた入院したと思って落としてください。
    どうか長くお付き合いください。

  • 12二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 15:18:38

    前回の撫子SSは何度も見返すくらい好きだったので今回も楽しみ
    身体に気を付けて続けて欲しい

  • 13二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 16:07:19

    >>3

    貴方でしたか!

    以前投稿されていた撫子のSS滅茶苦茶面白かったです!

    今回の優のSSも期待してます!

  • 14二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 17:24:25

    あんたのSSが見られるならいくらでも待つさ

  • 15二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 21:52:20

    保守

  • 16二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 00:57:14

    月曜日はいつも憂鬱で、溜息から始まる。
    「はぁ……」
    授業や課題。放送部の活動やら諸々が積み重なって、その疲れは2日3日で取れるものじゃない。ましてや、休みという極楽から解放されると否が応でも辛くなるものだ。
    「────まーしろっ!! なーに溜息なんてついてんのさっ!!」
    「きゃっ!? ……ちょっと、驚かせないでよ」
    「あはは! ごめんごめん。なーんか凄く難しそうな顔してたからさー。なんかあったのかなーって」
    「…………いや、まぁ、ね」
    そして、ただでさえ憂鬱な月曜日の朝に加えて、私にはもっと大きな憂鬱……というより、悩みの種が待ち受けている。

    「────真城さん。おはようございます。今日も素敵ですね」

    噂をすればなんとやら。その悩みの種そのものは、穏やかな声色とニコニコ妖しい笑みを浮かべながら私の元へとやってくる。
    自分でも分かるくらい、凄く嫌そうな顔をしたのに、彼は寧ろより一層笑みを深くする。
    「…………おはようございます、プロデューサーさん」
    「あ! "リスナーさん"おはよー! 今日も真城の勧誘? 振られてんのに諦めないねー」
    「えぇ。いつか首を縦に振ってくれるかもしれませんし、真城さんに会わないと俺の1日が始まりませんから」
    「ひゅー! 真城ってば愛されてるねー。そうだ、リスナーさん、私はどう? 真城じゃなくて私を選ばない?」
    「申し訳ありません。俺は真城さん一筋でして」
    「ちぇーっ。ならおじゃま虫はさよならしとくねー。真城! アイドルになったら教えてね!」
    「ならないから……」
    本当にやめて欲しいけれど、この人達に何を言っても無駄だ。足早に去る友人の背中に、ため息を一つ。
    放送室での突然のスカウトがあったのは、ちょうど今から1か月前。私はその時、彼のスカウトを断ったものの、彼はそれで諦めてくれなかった。
    『…………分かりました。けれど、もう一度だけ、スカウトしてもいいですか? 必ず、貴女をアイドルにしてみせます』
    突然のスカウトに困惑してしまった私は、首を縦に振ったのが間違い。あれから何度も、彼は普通科に来てスカウトをしてくる。
    本来なら、大学生である彼が普通科の校舎いるのはおかしく、皆が忌避するものだと思うのだが、彼に至ってはそうはなっていなかった。
     
    "リスナーさん"。彼はいつの間にか、普通科の生徒からそう言われている。

  • 17Pドル絶対信仰者25/06/27(金) 00:58:23

    その理由は、彼が毎週水曜日に私の放送を聞きに、普通科の校舎までわざわざやってくるからだ。
    勿論校内放送なんて、寮以外の学園の敷地内であればどこにいても聞くことができる。だが、彼は足繁く普通科の校舎まで通ってきた。
    初めてそのことを知った時、本当に驚いたことは記憶に新しい。
    私は1度そのことについて聞いたが、理由は一つ。私のことは、声を聞いた時からスカウトするのは決めていたが、姿を直接見ておきたかったから、らしい。そこから、彼は毎週水曜日に普通科に来るし、ちょくちょく私のことを遠巻きから見ていたらしい。
    プロデューサー科って、こんなストーカー紛いの変人ばかりしかいないんだろうか?
    とは言え、彼が普通科の生徒に受け入れられているのは事実であって。彼の言葉遣いとコミュニケーション能力によって、普通科の生徒、特に私のクラスメイトからは、すっかり"リスナーさん"なんてあだ名を付けられて親しまれている。……1ヶ月そこらで、ここまで親しまれるなんて。そこだけは素直に凄いと思う。
    「さて、真城さん。貴女のプロデュース計画についてお話させていただきたいのですが、宜しいですか?」
    どこからともなく取り出したノートパソコンを開く彼。いや本当にどこから取り出した? どこにそれを持っていたんだ?
    「あの、プロデューサーさん。何度も言ってますけど、私はアイドルになる気なんてありません。だからプロデュースは受けられません」
    「えぇ。ですので、まずはアイドルとしての活動ではなく、まずはお試しということでプロデュースを受けていただきたいんです」
    「話聞いてますか?」
    「貴女の声を聞き漏らすなんて有り得ませんよ」
    「…………この前はどれだけ私が良い声を持っているかを熱弁して、その前はアイドルの歴史。さらにその前はライブ映像を見せられて……正直、ここまで熱心にスカウトしてくれるのは、素直に嬉しいですよ」
    「ありがとうございます」
    「ただですね、分かってくれるまで何度も言いますけど、私はアイドルになんてなりません。いいえ、なれません」
    「なれます。貴女は絶対に、アイドルになれる」
    そう食い気味で応えてくれることに、ちょっとだけ嬉しさが勝るけど、深呼吸で気持ちをリセットして、彼の瞳をしっかりと捕らえる。キチンと分かってもらえるように、ちゃんと諦めてくれるように。

  • 18Pドル絶対信仰者25/06/27(金) 00:59:49

    >>1

    優さんの年齢間違えてました……16歳でした……脳内補完お願いします……

スレッドは6/27 10:59頃に落ちます

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