【SS】真城優、アイドルになります

  • 1Pドル絶対信仰者25/06/26(木) 09:52:55

    ────私は、何も無かった。
    勉強ができるわけじゃない。運動ができるわけじゃない。どこまでいっても人並みで、平凡で、特別な才能なんて無くて、ただぼんやりと何も変わらない日常を過ごす。それが私、真城優という人間。
    それに何か不満があるわけじゃない。寧ろそうあって欲しいと願って、今まで生きてきた。
    臆病で、変化を嫌って、何かを成そうなんて大層な目的も無くて。才能も、目標も、何も無い。
    だから、放送部の部長を引き受けたのも、ただの気まぐれ。会長や、1年の花海さんに感化されたのは本当だけど、ただそこにあったから引き受けただけだ。

    「────真城優さん、ですね。初めまして」

    いつもの放送が終わり、資料の片付けをしている最中にかけられた声に振り向くと、そこには一人の男の姿。
    サラリと艶のある下ろした黒髪に、アンダーリムのメガネ。目は細く、目尻を下げて穏やかに微笑むものの、どこか妖しさを醸し出すその人に若干怖気付くが、不思議と恐ろしさはあまり感じない。
    学校という場所に似つかわしくない黒のスーツでキッチリと決める姿は、まさに業界人という言葉が服を着ているようだ。

    「あ、あの……どちら様ですか……?」
    「失礼しました。自分はこういう者です」

    胸ポケットから取り出した銀色のシンプルなケースから、1枚の紙が差し出される。
    いわゆる名刺に書かれていたのは、初星学園プロデューサー科であること、そして名前。どうやらこの人は、プロデューサーという人らしい。
     
    「初星学園のプロデューサー科に在籍しています1年生です。宜しくお願いします」
    「……は、はぁ……プロデューサー……その……プロデューサー科の人が何の用でしょうか……?」
     
    私の質問に待っていましたと言わんばかりに、目の前の人は妖しい笑みをより一層深くする。

  • 2Pドル絶対信仰者25/06/26(木) 09:54:16

    「真城さん、単刀直入に言います。貴女の声は素晴らしい。先月から始まった貴女の放送を聞いてから、俺は貴女のことばかりを考えている」
    「えっ? あっ、えっ??」
    「全五回に渡る放送、その全て拝聴していました。そしてどれもが素晴らしく、筆舌に尽くし難い。貴女の声は他者を魅了し、人々に安らぎを与える。俺はその声を、もっと多くの人に届けたい。貴女という存在を、全世界に知らしめたい」
    「ちょっ、ちかっ!? えっ!? あのっ!!?? 手がっ!?」
    「だから、貴女をスカウトしたい。貴女の輝きを、もっともっと美しく鮮烈なものにしたい」
    「あのっ!!!!」

    「貴女を、プロデュースしたい。貴女の声を、一番傍で聞かせてほしい」

    …………放送室で出会ったあの人は、怪しくて、プロデューサーというよりは詐欺師に近い感じがして。
    才能も、目標も、何も無い私を騙そうとしているんじゃないかって思った。
    平凡に生きられれば、何も無ければいいと、そう思っていた私の生活が変わってしまったのはこの日からで、この人のせいで。
    けれど、この人の目を、想いを、聞いてしまったら、胸がときめいてしまったのも本当で。
    この後どうなったのか、実はよく覚えていない。

    真城優、17歳。

    ────この放送室から、アイドルを始めます。

  • 3Pドル絶対信仰者25/06/26(木) 09:56:10

    お久しぶりです。知ってる人がいるかは分かりませんが、Pドル絶対信仰者です。

    長い闘病生活からようやく帰還しました。

    少し前に撫子のSS書いていたのですが、真城さんのプロデュースも書きたくなったので書いてもいいですか?


    【SS】藍井撫子「私が初星学園に交流生として!?!?」|あにまん掲示板学P(先日行われたNIA……誰もが素晴らしいパフォーマンスをし、その比類なき原石の輝きを知らしめた……。今思い出しても、胸が熱くなる。……俺もいつか、あんなアイドルを育てあげることができるのだろうか)…bbs.animanch.com

    稚拙ですがこちら撫子のものです。

  • 4二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 09:59:18

    お気に入りに突っ込んだ

  • 5二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:03:12

    >>3

    このSSの人!? 楽しみ

  • 6二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:04:48

    おかえり!! 入院したって聞いた時はビックリしたけど生きてて良かったぜ!!

  • 7二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:28:07

    いや見るでしょこんなの。待ってる。めっちゃ待ってる。

  • 8二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:36:41

    >>3

    これ尊くて好きだった

  • 9二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:52:59

    >>6

    マジか 体調には気をつけて欲しい

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:57:12

    保守

  • 11Pドル絶対信仰者25/06/26(木) 11:25:11

    ありがとうございます。
    遅筆なのと、またいつ具合が悪くなるか分からないので、2日3日更新無かったらまた入院したと思って落としてください。
    どうか長くお付き合いください。

  • 12二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 15:18:38

    前回の撫子SSは何度も見返すくらい好きだったので今回も楽しみ
    身体に気を付けて続けて欲しい

  • 13二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 16:07:19

    >>3

    貴方でしたか!

    以前投稿されていた撫子のSS滅茶苦茶面白かったです!

    今回の優のSSも期待してます!

  • 14二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 17:24:25

    あんたのSSが見られるならいくらでも待つさ

  • 15二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 21:52:20

    保守

  • 16二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 00:57:14

    月曜日はいつも憂鬱で、溜息から始まる。
    「はぁ……」
    授業や課題。放送部の活動やら諸々が積み重なって、その疲れは2日3日で取れるものじゃない。ましてや、休みという極楽から解放されると否が応でも辛くなるものだ。
    「────まーしろっ!! なーに溜息なんてついてんのさっ!!」
    「きゃっ!? ……ちょっと、驚かせないでよ」
    「あはは! ごめんごめん。なーんか凄く難しそうな顔してたからさー。なんかあったのかなーって」
    「…………いや、まぁ、ね」
    そして、ただでさえ憂鬱な月曜日の朝に加えて、私にはもっと大きな憂鬱……というより、悩みの種が待ち受けている。

    「────真城さん。おはようございます。今日も素敵ですね」

    噂をすればなんとやら。その悩みの種そのものは、穏やかな声色とニコニコ妖しい笑みを浮かべながら私の元へとやってくる。
    自分でも分かるくらい、凄く嫌そうな顔をしたのに、彼は寧ろより一層笑みを深くする。
    「…………おはようございます、プロデューサーさん」
    「あ! "リスナーさん"おはよー! 今日も真城の勧誘? 振られてんのに諦めないねー」
    「えぇ。いつか首を縦に振ってくれるかもしれませんし、真城さんに会わないと俺の1日が始まりませんから」
    「ひゅー! 真城ってば愛されてるねー。そうだ、リスナーさん、私はどう? 真城じゃなくて私を選ばない?」
    「申し訳ありません。俺は真城さん一筋でして」
    「ちぇーっ。ならおじゃま虫はさよならしとくねー。真城! アイドルになったら教えてね!」
    「ならないから……」
    本当にやめて欲しいけれど、この人達に何を言っても無駄だ。足早に去る友人の背中に、ため息を一つ。
    放送室での突然のスカウトがあったのは、ちょうど今から1か月前。私はその時、彼のスカウトを断ったものの、彼はそれで諦めてくれなかった。
    『…………分かりました。けれど、もう一度だけ、スカウトしてもいいですか? 必ず、貴女をアイドルにしてみせます』
    突然のスカウトに困惑してしまった私は、首を縦に振ったのが間違い。あれから何度も、彼は普通科に来てスカウトをしてくる。
    本来なら、大学生である彼が普通科の校舎いるのはおかしく、皆が忌避するものだと思うのだが、彼に至ってはそうはなっていなかった。
     
    "リスナーさん"。彼はいつの間にか、普通科の生徒からそう言われている。

  • 17Pドル絶対信仰者25/06/27(金) 00:58:23

    その理由は、彼が毎週水曜日に私の放送を聞きに、普通科の校舎までわざわざやってくるからだ。
    勿論校内放送なんて、寮以外の学園の敷地内であればどこにいても聞くことができる。だが、彼は足繁く普通科の校舎まで通ってきた。
    初めてそのことを知った時、本当に驚いたことは記憶に新しい。
    私は1度そのことについて聞いたが、理由は一つ。私のことは、声を聞いた時からスカウトするのは決めていたが、姿を直接見ておきたかったから、らしい。そこから、彼は毎週水曜日に普通科に来るし、ちょくちょく私のことを遠巻きから見ていたらしい。
    プロデューサー科って、こんなストーカー紛いの変人ばかりしかいないんだろうか?
    とは言え、彼が普通科の生徒に受け入れられているのは事実であって。彼の言葉遣いとコミュニケーション能力によって、普通科の生徒、特に私のクラスメイトからは、すっかり"リスナーさん"なんてあだ名を付けられて親しまれている。……1ヶ月そこらで、ここまで親しまれるなんて。そこだけは素直に凄いと思う。
    「さて、真城さん。貴女のプロデュース計画についてお話させていただきたいのですが、宜しいですか?」
    どこからともなく取り出したノートパソコンを開く彼。いや本当にどこから取り出した? どこにそれを持っていたんだ?
    「あの、プロデューサーさん。何度も言ってますけど、私はアイドルになる気なんてありません。だからプロデュースは受けられません」
    「えぇ。ですので、まずはアイドルとしての活動ではなく、まずはお試しということでプロデュースを受けていただきたいんです」
    「話聞いてますか?」
    「貴女の声を聞き漏らすなんて有り得ませんよ」
    「…………この前はどれだけ私が良い声を持っているかを熱弁して、その前はアイドルの歴史。さらにその前はライブ映像を見せられて……正直、ここまで熱心にスカウトしてくれるのは、素直に嬉しいですよ」
    「ありがとうございます」
    「ただですね、分かってくれるまで何度も言いますけど、私はアイドルになんてなりません。いいえ、なれません」
    「なれます。貴女は絶対に、アイドルになれる」
    そう食い気味で応えてくれることに、ちょっとだけ嬉しさが勝るけど、深呼吸で気持ちをリセットして、彼の瞳をしっかりと捕らえる。キチンと分かってもらえるように、ちゃんと諦めてくれるように。

  • 18Pドル絶対信仰者25/06/27(金) 00:59:49

    >>1

    優さんの年齢間違えてました……16歳でした……脳内補完お願いします……

  • 19二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 07:37:36

    保守

    学Pが目をつけてまず外堀から埋めてんの本当にありそうで笑うんよ
    もう普通科では優がアイドルになること確定したと思ってる人多そう

  • 20二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 08:18:52

    真城ちゃんは振り回されるのが似合うな

  • 21二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 11:34:24

    夜まで保守

  • 22二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:27:54

    クールな子の赤面が欲しい

  • 23Pドル絶対信仰者25/06/27(金) 19:59:18

    「私に、才能なんて無いんです。確かに十王会長は、私の声を褒めてくれて、放送部の立ち上げを依頼してくれた……けれど、それだけです。歌も上手い方ではないし、ダンスだってできるわけじゃない。ファンサービスとか、可愛くキラキラするとか、私には到底できない話です。それに今更アイドル目指すとか、それこそアイドル科の人に失礼だと思うんです」
    この言葉に、嘘偽りは一切ない。
    そうだ。この人が私に何を感じたのかは知らないが、結局のところ未来が無い。
    私は、今まで夢中になれたものなんてない。習い事とか、部活とか、そういうのをやったことが無い訳では無いが、どれも長続きしなかった。やりがいを見い出せず、ただ漠然と続けていてもしょうがなかった。でも、そんな人は私以外にも大勢いる。何かに夢中になれなくて、何か人生に大きな目標があるわけじゃなくて、好きな物はあるけれど、それを自分の生活に組み込める人じゃなくて。アイドルの人達みたいに、何かを夢見ること。私が、世界の大半の人が、そんな事できていない。
    「……私は、キラキラしてる側の人間なんかじゃない。貴方みたいに、夢を持つ人達側じゃない。他大勢の人がそうであるように、ただそれだけです。だから、諦めてください」
    彼の顔は変わらない。穏やかに笑みを浮かべて、私の話を聞いてくれている。
    「…………真城さんの気持ちは分かります。今更アイドルだなんて、そう思うでしょう。スカウトを断るのも、自分なんて、そう思っているから。夢中になんてなれないと、もう分かっているから」
    「なら────」
     
    「ですが」
     
    彼は眼鏡の奥の細い目を見開いて、パソコンをこちらに強調してきた。
    「それは、貴女がまだ自分のことを信じきれていないから。貴女が、自分自身の輝きに、まだ気が付いていないから」
    そこに書かれていたのは、初星学園放送部の企画書。
    普段なら放送部から企画を提案し、生徒会に承認を貰う。アイドル科の生徒の魅力を知ってもらう活動を中心としている為、生徒会と放送部の提携は必須ではあるのだが……
    「なんですかこの企画……私、こんなの知らないんですけど……」
    そこに書いてあるのは、既にセッティングされたもので、生徒会からの承認も受けている。何度も何度も確認するが、私の知らないところで放送部の企画が練られているのだ。
    「勝手ながら十王会長と相談して、放送部の企画を練りました」

  • 24Pドル絶対信仰者25/06/27(金) 20:00:22

    「そんなこと勝手に……って、しかも、なんですかこの企画!?」
    企画書の一番上、そこに書かれていたのは────
     
    「『LETSアイドルチャレンジ! ~放送部部長の1日アイドル体験~』!?!? ちょっと!! 何やらせようとしてるんですか!!」
     
    「真城さんは強情なので、いくら言葉を紡いでもアイドルになってくれなさそうだなーと。まぁいわゆる強硬手段というやつです」
    「いやいやいやいや!! いくらなんでも強引すぎませんか!? 私こんなのやりませんよ!!」
    「ですがもう生徒会には承認をいただいておりまして」
    「そもそも!! 部員はこのこと知っているんですか!? 部員にもちゃんと採決を取らないと、部長としてこの企画は認められません!!」
    「皆さんノリノリでしたよ。やっぱり、アイドルに興味を持っている方も多いですし、それで生徒が盛り上がるなら、と」
    「いつの間にそんなことを……って、まさか貴方が普通科の校舎に来ていたのって……!!」
    「何を思っているのかは分かりませんが、"偶然"俺が仲良くなった人が部員の方々で、"偶然"俺がいい企画を持っていたので皆さんに提案したら、あれよあれよとスムーズに進んだだけですよ。……まぁ、正直真城さんが俺のスカウトをすんなり受け入れるとは思っていませんでしたから、保険を用意していて良かった」
    こ、この人は……!! たった1ヶ月のうちにこんな仕掛けを……!! どこまでプランを用意してるんだ……!?
    「は、嵌められた……」
    「心外ですよ。これはあくまで、貴女が放送部の企画としてするアイドル体験。俺のプロデュースとは無関係。なので嵌めてなんていません」
    キッと睨みつけても、この人は変わらずニコニコ妖しい笑みを浮かべるだけ。眼鏡の奥に潜む瞳は、まるで蛇のように私のことを捉えて離さない。
    「けれど、真城さんはこの企画を中断することができます。貴女は部長なのでそれも可能ですけど、既にアイドルの方達にはもうアポを取り、プロデューサーに連絡してスケジュールも確保しています。……もしも中断すれば、スケジュールの面でアイドルは不信感を持ち、これから放送部に出るのを渋るかもしれない。そうなれば、貴女の放送部の活動はアイドルに頼ることができない。……まぁ、今言ったのはほんの仮説ではありますけど、リスクは取るべきじゃないと、俺は思います」

  • 25Pドル絶対信仰者25/06/27(金) 20:01:37

    この人はどこまで自分の弱点を突く気なんだ……!!
    「……私が、放送部なんてどうでもいいと言ったら?」
    苦し紛れの言い訳を、喉から震え出す。けど、こんなもの無意味だ。
    「いいえ。真城さんは優しく、他の人のことを常に考える人だ。放送部がアイドルから不信を得てしまえば、きっと他の人に迷惑がかかる。そんなこと、真城さんはやらないでしょう」
    ……そう、この放送部は生徒会から直々のご指名である以上、私には放送部を背負う義務がある。
    それに部員の皆は、私の『アイドル達とラジオを作る』という募集文で集まってくれた生徒。つまり、皆アイドル科の生徒のことが好きだ。事実、部員のほぼ全員はアイドル科の生徒達のファンでできている。……皆のその想いを、私一人のわがままで反故にはできない。
    最初に会った時、胡散臭い詐欺師のように感じたが、これは前言撤回。この人は紛れもない詐欺師。人を嵌めて逃がさない。私は、まんまとこの人の掌の上で転がされてる。
    「…………ただ、俺も真城さんが本当に嫌がることはやりたくない」
    眼鏡の位置を直すと、蛇のような瞳は柔和な優しいものに変わった。
    「これは俺の最後のスカウトです。真城さんがこれを断ると言うなら、放送部の皆さんには絶対に迷惑をかけないことをお約束します。そして、金輪際真城さんには会いません。キッパリと諦めて、貴女の元から離れます」
    最後のスカウト。確かに彼はそう言った。最初に言った仮のプロデュース、それがこの企画ということだろう。
    「…………」
    「この企画の撮影は来週の月曜日です。それまでに、どうかご連絡ください」
    そうして彼は懐から銀のケースを取り出し、名刺を渡してくる。
    「…………名刺はもう持ってるから大丈夫ですよ」
    「……てっきり捨てられたものかと」
    「そんなことしませんよ。────ただ、分かりました」
    強引で無理やりなやり方ではあるが、彼がこう言うということは、想像以上に覚悟は決めているんだろう。なら、それに応えるのが人というものだ。
    「連絡は今週の金曜日までに必ずします。だから、それまで待っていてください」
    彼はその言葉を聞いて、ありがとうございますと小さく呟いた。そしてノートパソコンを持ち、道行く生徒に気さくに挨拶を交わしながら廊下を進んでいく。
    私はそれを見つめながら、ポケットの名刺を取り出し、彼の名前をなぞる。
    「─────アイドル、か」

  • 26Pドル絶対信仰者25/06/27(金) 20:03:36

    途中ですが、皆さんにちょっと聞きたいです。
    今は1日2~3スレを目安に投稿しようとしてるのですが、2日程で5~6レスを目安に一気に投稿した方が読みやすいですか?

    皆さんの意見を聞きたいです。宜しくお願いします。

  • 27二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 20:18:53

    どっちでも構わないっちゃ構わないけどあんまり期間が空きすぎると保守し損ねて落ちるかもしれない

  • 28二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 20:21:04

    近所に1時間で20弱のレス重ねてるようなやつもいるからそこはスレ主のやりやすさによるんじゃないかな……
    でも無理のない範囲で、最後までやり切ってくれるのが一番だと思いますよ

  • 29二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 20:45:57

    スレ主が無理して具合悪くなったり、続けられなくなるのが一番悲しいんで、どうか無理のない範疇で……!

  • 30二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 23:35:19

    続けてくれる以上に望むことは無いです!

    あと学Pが策士すぎて好き。撫Pとはまた違った方向性でキャラがいい。

  • 31二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 07:43:23

    保守

  • 32二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 14:26:16

    俺が保守るよ

  • 33二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 20:58:13

    俺も保守るぜ!

  • 34二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 03:22:16

    保守

  • 35二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 11:08:21

    保守

  • 36二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 18:29:54

    保守

  • 37Pドル絶対信仰者25/06/29(日) 21:07:07

    「で、それでアイドル体験をやろうか迷ってるってわけねー」
    同室の友人は、私の相談に対してうーんと一唸りして、パスタをクルクルと回している。二人だけの部屋、美味しいと評判の冷凍パスタを食べることは、私達が互いに相談する時のルーティーンになっていた。
    「断ってもいいんだろうけど……ただやっぱり、部員の皆も楽しみにしてるみたいで……」
    「まぁ、放送部員全員アイドル好きだからねー。メディア志望の子も多いし、いい経験になるかも、みたいに思ってそう」
    「だよね……。はぁ……どうしよう……私がアイドルなんて絶対無理だって……」
    「…………ねぇ、1個思ったんだけどさ、なんで優はやりたくないの?」
    えっ? と、自分でも素っ頓狂な声が出たのが分かった。
    「いや、別に悪い意味で言ってるわけじゃないんだけど、優がアイドル体験やりたくないって、なんで思ってるのかなーって」
    だって、私なんてアイドルはできないから。そう言おうとした前に、私はようやく違和感に気がついた。
    「だって、別にアイドルをやるわけじゃない。1回だけ放送部の企画としてやるんでしょ? リスナーさんだって、それを受ける=担当アイドルになってほしいとは言ってないわけで」
    そうだ。あの人は別にそんなこと言っていない。このアイドル体験は、あくまでアイドルのレッスンとかを体験するだけ。私は近くの鞄からコピーを貰っていた企画書を取り出して、もう一度確認する。
    アイドルのレッスン体験。ダンス、ボーカルレッスン。ただ、これをやるだけ。ただ、私の中では、言語化できない"何か"が渦巻いていた。
    「でもなんだろ……なんかこう……嫌……だっていうか……」
    「アイドルの体験することが?」
    「いや……そうじゃないんだけど……うーん……嫌悪感ってわけじゃなくて……」
    「なにそれ」
     ふっと笑われて、パスタが巻かれる。私もそれに倣って、なんとなしに口に運ぶ。けれども、いくら咀嚼しても飲み込めない感情が一緒になって、さっきまで美味しいと思っていたはずの味も分からなくなっていた。
    「そもそも優はさ、リスナーさんのことどう思ってんの? あ、プロデューサーさんのほうね?」
    「どうって……まぁ、変な人だなーとは思うよ」

  • 38Pドル絶対信仰者25/06/29(日) 21:08:30

    「でもイケメンだよね。カッコイイとか思わない?」
    「そりゃあ確かに顔は整ってるとは思うけど、あの人はなんだろ。……詐欺師? うん、詐欺師」
    「あははっ! 詐欺師って。ちょっと面白い」
    「だってさぁ……2ヶ月前の放送部の活動始まってから普通科の校舎に来て、私の事見てて、しかも部員や普通科の生徒と仲良くなってるんだよ? なんか知らないけど、クラスの皆からずっといつアイドルになるの? とか、リスナーさんとどこで会ったの? とかずっと聞かれるし。外堀埋められてる気分だよほんとに……」
    「で、この企画のサプライズねー。うん、優がそう思うのも分からなくないわ」
    私から企画書を貰って、パラパラと目を流している。私はそれを尻目に、溜息を一つ。まだまだ残っているパスタを食べ進めようとした時のことだった。

    「────でもさ、本当はなりたいんでしょ? アイドル」

    「…………え?」
    「あれ? 違った? 私てっきり、本当はやりたいもんだと思ってた」
    なんで? そんなわけないじゃん。冗談はやめてよね。普段なら、そう流せる言葉のはずだった。
    「だって優、ずっとリスナーさんの名刺持ってるじゃん」
    反射的に、右ポケットを抑え込む。
    「いや……だって貰ったものだし……捨てられないじゃん」
    「いやいや、財布とかケースに入れてるなら分かるけど、ずっとポケットに入れてるし、時々取り出して眺めてるじゃん」
    確かに、手持ち無沙汰で眺めてる時はよくあるけど……そんなに数が多かっただろうか?
    思わぬ言葉に、なんだか心がぐちゃぐちゃになってくる。
    「口ではアイドルなんて絶対やらないって言ってるけど、本当は挑戦したいんじゃない? うん、いいと思うよ。私は応援するし、きっと皆も同じ気持ちだと思う」
    「………………」
    その言葉で、一瞬だけ、アイドルになる未来を想像した。うん、きっと楽しい。けれど。
    "─────勉強ができるわけじゃない。運動ができるわけじゃない。どこまでいっても人並みで、平凡で、特別な才能なんて無くて、ただぼんやりと何も変わらない日常を過ごす"
    本当の私なんて分からない。本当はどうしたいか、なんて。
     
    「────もーっ、やめてよ。私はアイドルなんてやらないよ」
     
    だから、心の奥の"それ"は、一度覆い隠してみないフリをした。
    伸びたパスタは、食べ切ることはできなかった。

  • 39Pドル絶対信仰者25/06/29(日) 21:09:43

    「さ、片付けよ? ありがとね、相談乗ってくれて」
    「ふーん、まぁ優がそう言うなら、私はそれでいいと思うけど。あ、食器洗っとくわ。優は明後日ラジオでしょ? 色々やってていよー」
    「ありがと」
    後片付けは任せ、取り敢えず席はそのままに、明後日の放送部の活動予定に目を通す。
    毎週水曜日の初星学園放送部。ラジオ形式の対談で、出演してくれるアイドルは……
    「……篠澤広さん、倉本千奈さん。あぁ、あの二人か」
    第8回目のラジオで一緒に共演してくれた方で、特にキャラクターが濃かったから覚えている。
    片や入学試験最下位、片やその2位。けれど、彼女達は現在行われているNext Idol Audition……通称NIAで大躍進を遂げているという。それは素直に凄いし、初星学園の躍進は普通科の生徒の耳にまで届いてるほどだ。
    …………この二人は、どうしてアイドルを目指したんだろう。
    ふと、そんな考えが頭をよぎる。
    前回出て貰った時のラジオの内容は、彼女達がどのようなアイドルか、どんな生活をしてるのか、アイドル科とはどのようなところなのか。そのようなことばかりで、彼女達の始まりの話は聞いていなかった。放送部が発足されたのは今年の4月から。始まりだからこそ、踏み込んだ内容は聞いてなかったのだが……
    「……まぁ、そろそろ聞いてもいいよね」
    これに他意はない。ただ単に、NIAで躍進するアイドルの原点が知りたい人も多いだろうから、ちょっと踏み込んだ質問をするだけだ。
    何かに言い訳するように、企画書の質問欄に追加する。

    『どうしてアイドルをやろうと思ったのですか?』

    ……うん、これで良し。別に変な質問じゃないし、二人なら喜んで教えてくれそうだ。
    「……あれ? そういえば、なんで彼女達になったんだろう」
    出演してくれるアイドルは、基本的に放送部から生徒会を経由しオファーする。本来ならこれは私がやるのだが、部員の一人がいつの間にか予定に組み込んでくれた。
    …………なんか、嫌な予感がする。
    何故か猛烈な違和感と予感を感じ、そのまま、部員の一人である後輩に電話をかける。時間も時間だからすぐには出てくれないと思ったが、彼女はすぐに出てくれた。

  • 40Pドル絶対信仰者25/06/29(日) 21:11:57

    『もしもし、真城先輩? どうかしたんですか?』
    「ごめんね突然。あのさ、明後日のラジオについて聞きたくて。出演者が篠澤広さんと倉本千奈さんでさ、どうして彼女達になったのかなーって……」
    頼む、この嫌な予感は外れててくれ……!!
     
    『あぁ、それリスナーさんのおかげなんですよ』
     
    ……………終わった。
     
    『ちょっと前ですかね? 生徒会室にスケジュールのすり合わせに行った時たまたまリスナーさんもいて、それなら篠澤広さんと倉本千奈さんがいいと思います。二人のプロデューサーと仲良いので、今聞いてみますよって。そしたら2人も快く受け入れてくれて、本当に助かったんですよねー……って、真城先輩? 聞こえてます?』
    「…………あー……うん……ありがとう……ごめんね……それじゃあ……」
    『はーい、お疲れ様でーす』
    通話終了の文字と、規則正しい電子音。私を頭を抱えながら、項垂れるように机に倒れ込んだ。
    一体、何を企んでいるのか。思考の読めない彼の瞳を思い出しながら、私は溜息を大きくついた。
    ……どうやら、彼の手のひらはどこまでも続いてるみたいだ。

  • 41二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:13:25

    めちゃくちゃすきだ……どうかお体には気をつけて

  • 42二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 07:26:07

    保守

  • 43二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 14:53:03

    優は俺が保守らなきゃ……

  • 44二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 21:43:52

    相変わらずのすげぇ文才

  • 45二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 05:17:13

    まだ終わらせんよ…!

  • 46二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 07:17:58

    まだ耐えれる

  • 47二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 14:00:24

    保守

  • 48二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 18:32:19

    ほしゅ

  • 49二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 20:44:04

    待たせちゃって本当すみません……!
    近いうちに投稿するので今しばらく待っててください……体調はなんとか悪化してませんので……

  • 50二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:16:32

    保守

  • 51二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 07:24:32

    保守

  • 52二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 16:54:50

    保守
    焦らなくてもスレ主さんのペースで書き込んでくれればいいよ、勿論体調優先で

  • 53二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 17:04:27

    このレスは削除されています

  • 54二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 00:36:18

    ほしゅ

  • 55二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 08:03:04

    体調第一

オススメ

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