【⚓️🎲AI】あにまん名作劇場『ソフィー -リトル・プリンセス-』

[1 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 18:20:14]

※文章作成はCharGPTに丸投げ

───
『小公女』的な物語をやります。
元ネタは、金持ちの実家が一文無しになって冷遇される少女が健気に頑張る話ですが、どんな展開になるかは安価とダイス神のみぞ知る。

時代的におかしかったり突飛な展開になったりする安価は勝手に除外させていただきます。

あにまん名作劇場、シリーズ化したいなぁ。

[2 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 18:21:19]

このスレの主と同じです。

【⚓️🎲AI】あにまん名作劇場『レ・ミゼラブル -ああ無情-』｜あにまん掲示板

[3 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 18:21:58]

───

1888年、霧深きロンドン。石畳の通りを馬車がゆっくりと進んでいた。車内に座るのは、絹のリボンで結んだ黒髪の少女。年のわりに背筋をぴんと伸ばし、濃紺のドレスを着こなすその姿には、どこか異国の気品が漂っていた。

名はソフィー・クルーズ。七つになったばかりのその子は、つい昨日まで父の暮らす英領インド・カルカッタの邸宅で花に囲まれ、サリーを着た召使いたちに囲まれて育っていた。けれどこの日からは、煙と煤に包まれたこの国で、寄宿生活が始まるのだ。

「父さまは、いつまた会いに来てくれるの？」

そう尋ねたとき、ロドニー・クルーズ大尉は黙ってソフィーを抱きしめた。その逞しい腕の中で、ソフィーは甘い香辛料の香りと、砂漠の熱を思わせる父の体温を覚えていた。だが今、彼女の傍にあるのは、石造りの建物と濡れた空気だけだった。

[4 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 18:22:43]

馬車が止まり、御者が声をかけると、扉の向こうに立っていたのは、背が高く痩せぎすの婦人。髪は灰色がかり、唇はまるで笑みを忘れたかのように細く閉じていた。ミントン女子学院の校長、マーサ・ミントンである。

「こちらが、クルーズ大尉のお嬢様……ソフィー・クルーズ嬢ですね？」

校長は眼鏡越しに少女を見下ろしながら、かすかに唇を動かした。ソフィーは深く一礼し、静かに答えた。

「はい、ソフィー・マリー・クルーズと申します。」

その発音には、母の母国であるフランスの柔らかさが混ざっていた。マーサの眉がほんのわずかに動いたのを、ソフィーは見逃さなかった。

「……まあ、よろしいでしょう。特別寄宿生としての部屋は整っております。あなたのようなお嬢様には、特別な環境がふさわしいですから。」

その声には「寄付金の額に見合った待遇をしてやる」と言わんばかりの響きがあった。けれどソフィーは、それに気づくほどにはまだ世間を知らなかった。──いや、知っていても、表情に出さないほどに教え込まれていたのかもしれない。

[5 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 18:23:11]

館の奥から、ふくよかな女性が姿を見せる。丸い頬に明るい瞳。ミントン校長の妹、アンジェラであった。

「あらあら、まあまあ、こんな小さな子が……ようこそいらっしゃいましたね、ソフィー嬢。寒くはなかった？」

優しげな声に、ソフィーはようやく頷いた。だがアンジェラの背後から漂ってくるのは、牛乳の香り──そして少しだけ、甘い恋心の匂いだった。

こうして、ソフィーの「イギリスでの生活」が始まった。彼女はまだ知らない。この寄宿学校で出会う数々の少女たち、そして大人たちが、彼女の人生を少しずつ揺さぶってゆくことを。

[6 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 18:23:40]

次の展開
該当のレス下3つからダイス

[7 二次元好きの匿名さん 25/06/26(木) 18:44:15]

教室で生徒たちに自己紹介

[8 二次元好きの匿名さん 25/06/26(木) 18:53:32]

寮の部屋に行く

[9 二次元好きの匿名さん 25/06/26(木) 19:33:01]

寮の全体図を確認する

[10 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 19:39:30]

1.>>7

2.>>8

3.>>9

dice1d3=3 (3)

[11 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 19:42:07]

ソフィーは、父と最後の言葉を交わした後、じっと馬車が遠ざかるのを見送った。小さな手に握られていたのは、父が手渡してくれた革張りの小さな日記帳──「言葉にできないときは、ここに気持ちを書きなさい」と言ってくれた、父のぬくもりの残る贈り物だった。

「さあ、お部屋をご案内しますわね。お嬢様のお部屋は、寄宿生用の南館、特別室ですのよ」

アンジェラ嬢はどこか誇らしげに微笑み、ソフィーの手を取ると、石造りの校舎の廊下を軽やかに歩き出した。木製の床はよく磨かれており、窓から差し込む弱い陽の光が淡く反射していた。

[12 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 19:42:38]

「ここが食堂。そこが談話室。奥が授業棟で、寮の建物とは渡り廊下でつながっておりますの。冬は冷えるから、上着を忘れずにね」

ソフィーは小さくうなずきながら、静かに周囲の景色を目に焼きつけていく。どの部屋も整然としてはいるが、どこか冷たく、父と過ごした邸宅の柔らかな布や花の香りとはかけ離れていた。

ふと、曲がり角に差しかかったときだった。

小さな体でモップを握り、床を無言でこすっている少女がいた。制服ではなく、あせた茶色の作業着に、裾のほころび。編み込みのほどけかけた髪を、布で無造作にまとめている。肌の色は深く、目は黒曜石のように静かだった。

[13 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 19:43:14]

アンジェラが少しだけ足を止めた。

「……ああ、あれはベッツィー。学院の使用人ですの。掃除や洗濯、雑用を一通りこなしてくれてますわ。あの子、口はきかないけど、手は早いのよ」

ベッツィーはちらりと顔を上げ、ソフィーと目が合った。ほんの一瞬だけ、視線が交錯する。だがその瞳には、よそ者への警戒と、どこか試すような光があった。

「こんにちは」とソフィーが声をかけたが、ベッツィーは何も言わず、ただ小さく頭を下げてまた床に目を戻した。

アンジェラは気まずそうに笑ってごまかす。

「まあ、あの子なりの礼儀ってやつかしら。ベッツィーは……少し難しい環境で育ってきたの。でも、悪い子じゃありませんのよ」

ソフィーはふたたびベッツィーの背中を見つめた。なぜか、その姿にどこか懐かしさを覚えた。

[14 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 19:43:49]

やがて、ソフィーは重たい木の扉の前に案内された。

「こちらがあなたのお部屋。どうぞ、お入りなさいな。夕食まで少し時間がありますから、荷ほどきをしておいてくださいな」

鍵のかかった扉が開かれ、ソフィーは新しい暮らしの第一歩を踏み出した。

[15 ◆qcSQN4N5gc 25/06/26(木) 19:44:32]

学院最初の夜はどうなるか、該当するレス下3つからダイス

[16 二次元好きの匿名さん 25/06/27(金) 02:27:46]

無事に何事もなかった

[17 二次元好きの匿名さん 25/06/27(金) 09:21:37]

隣の部屋の子たちとおしゃべり

[18 二次元好きの匿名さん 25/06/27(金) 09:22:54]

緊張して上手く寝付けなかった

[19 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 09:57:44]

1.>>16

2.>>17

3.>>18

dice1d3=1 (1)

[20 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 10:07:11]

薄暗い石造りの食堂には、蝋燭の灯りが揺れていた。窓の外はすでに夜の帳が下り、雨がしとしととガラスを叩いている。長テーブルが並ぶその中ほどで、ソフィー・クルーズは、静かに椅子に腰かけていた。

制服はまだ慣れず、襟のかたさに少し首をすくめる。左右を見渡せば、似たような年ごろの少女たちが興味深げにこちらを見つめていた。声は控えめに交わされ、だれもが新入りの「特別寄宿生」を値踏みしているようだった。

そのとき、椅子を引く音と共に校長の妹、アンジェラ嬢の声が響く。

[21 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 10:07:33]

「皆さん、新しいお仲間をご紹介しますわね。今日からこちらの南館でご一緒することになりました、ソフィー・マリー・クルーズ嬢。遠くインドからいらしたのよ」

少女たちの視線が一斉に集まり、ソフィーは立ち上がって小さく一礼した。

「はじめまして。ソフィー・マリー・クルーズと申します。インドで生まれ育ちました。お母様はフランスの方でしたので、フランス語も少し話せます」

やわらかい発音で名乗ると、数人の少女が「まあ……」と小声でささやき合った。すぐ隣の席でその様子を眺めていたのが、エヴァンジェリン・スティーブンスだった。

[22 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 10:08:11]

「わたし……エヴァンジェリンよ。あの、スティーブンスっていうの。お父様は大学でラテン語を教えてるの。す、すごく優しい先生なのよ」

彼女は声を震わせながら、ソフィーに手を差し出した。どこか不器用な笑顔が、その内気さを物語っていた。ソフィーも静かにその手を取る。

「よろしくね、エヴァンジェリン」

その隣で銀のスプーンを器用にいじっていたもう一人の少女が、目だけでソフィーを一瞥する。

「リンジー・ホールよ。パパは紅茶の輸入商で、ママはたぶんロンドン一の帽子を持ってるわ。まあ、あなたほど派手じゃないけど」

やや皮肉な口調だったが、顔は整っていて、言葉のひとつひとつが人目を惹くようだった。ソフィーはその挑むような目をまっすぐ見返した。

「そう。帽子の趣味が良いのは、素敵なことね」

「……ふん」

リンジーはわずかに眉を吊り上げると、フォークを手にしたまま口をつぐんだ。空気が少しだけ張り詰めたが、間もなく焼きたてのキドニーパイとポテトの匂いが場の空気を和ませた。

[23 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 10:08:37]

その夜の夕食は、穏やかな沈黙と、小さなさざ波のような笑い声の中で進んだ。ソフィーは、話しかけてくる子にも、黙っている子にも、決して笑顔を忘れなかった。ただ、遠く離れた父のことを思いながら。

食後、寮の廊下を歩くと、またあの掃除の少女──ベッツィーの姿が見えた。ランプの灯りに浮かぶその背中は、小さな影のように静かだった。

ソフィーはしばらく立ち止まり、声はかけず、ただそっとその姿を目に焼きつけた。

その夜、ソフィーは寄宿部屋のベッドで、小さな日記帳を広げる。ペン先を迷わせながら、ようやく一行を書いた。

《今日、わたしはひとりぼっちではありませんでした。たぶん、そう──ほんの少しだけ。》

そしてページを閉じたその瞬間、窓の外の雨がやんだ。

[24 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 10:09:46]

───
ここまでのキャラクター紹介

◇ソフィー・クルーズ
主人公の少女。亡くなった母の母国語であるフランス語と、ヒンドゥー語が流暢に話せる。父から別れ際に贈られた日記帳が宝物。

◇ロドニー・クルーズ：
インドの資産家で大尉。ソフィーを心から愛する父親。

◇マーサ・ミントン校長
ミントン女子学院の校長。強欲な性格で、生徒の保護者から学院に支払われる寄付金の額を全ての基準にしている。細身で背が高い、妹とは正反対の体格。

◇アンジェラ・ミントン(レディ・アンジェラ)
マーサ・ミントン校長の妹で、恰幅のいい女性。姉の行動に不平不満が多いが、姉を恐れて何もしない。学校に来る牛乳配達の青年に恋している。

[25 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 10:10:21]

◇ベッツィー
ミントン女子学院の使用人として働いている少女。身寄りがなく、学院に来る前は邪険な性格のおばに育てられていた。アフリカ系であり、肌の色から差別を受けることが多い。ソフィーやリンジーのことは「お嬢様」と呼ぶ。

◇エヴァンジェリン・スティーブンス
ソフィーと同い年の生徒。父は大学教授。心優しいが臆病。あまり物覚えが良い方ではなく、成績は下の方。

◇リンジー・ホール
ソフィーのクラスメイトで、裕福な商家の娘。美少女であるが少々意地悪な面があり、学院の看板生徒の座を奪われたとして、何かとソフィーにつっかかる。

◇ヴィンセント
牛乳配達員の青年。アンジェラと互いに恋しているが、ミントン校長に邪魔されている。

[26 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 10:10:49]

翌朝以降……
該当のレス下3つからダイス

[27 二次元好きの匿名さん 25/06/27(金) 13:20:56]

ベッツィーと仲良くなろうとする

[28 二次元好きの匿名さん 25/06/27(金) 15:18:48]

エヴァと仲良くなろうとする

[29 二次元好きの匿名さん 25/06/27(金) 22:24:13]

リンジーと仲良くなろうとする

[30 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 22:59:30]

1.>>27

2.>>28

3.>>29

dice1d3=3 (3)

[31 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 23:03:34]

ミントン女子学院に来てから数日が経った。ロンドンの空は毎日灰色で、ソフィーは朝ごとに父のくれた日記帳に短い言葉を綴ることで、自分の心を支えていた。

けれど彼女は、ただ黙って適応しているだけの少女ではなかった。社交界の娘として、父に「敬意と微笑みこそが最良の剣だ」と教えられてきたソフィーは、今、心に決めていた。

──リンジー・ホールと仲良くなる。それが、この寄宿舎での最初の挑戦だと。

ある昼下がり、授業と昼食のあとの自由時間。談話室の窓際で、リンジーは一人、本を読みふけっていた。真っ白なリボンが金髪に結ばれていて、ソフィーにはそれが美しく見えた。彼女はそっと近づくと、いつものように自然な笑みを浮かべて声をかけた。

「その本、どんなお話？」

リンジーは少し驚いたように顔を上げたが、すぐに冷静な表情に戻った。

[32 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 23:04:16]

「《シャーロット館の幽霊》。誰も読んでないけど、なかなか面白いのよ。あいにく、怖がりな子には向かないわ」

「わたし、幽霊の話は好きよ。インドにも、たくさん不思議な伝説があるの」

そう言ってソフィーは、窓際の反対側の椅子に腰をかけた。リンジーがほんの少しだけ口元を緩めるのが見えた。

「へえ。たとえばどんな話？」

ソフィーは少し目を伏せ、慎重に言葉を選ぶ。

「夜中に森から聞こえる足音の話。誰もいないのに足音だけがついてくるの。でも、それは亡くなった兵士が、最後の任務を果たそうとしてるんですって」

リンジーは、くすっと笑った。

「そんなの、ただの風の音よ。……でも、まあまあ面白いわ」

それは彼女なりの“合格点”だった。ソフィーは心の中で小さく息を吐く。会話は続く。ほんの一言、二言──けれど確かに、氷が少しずつ解けてゆくような感触。

[33 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 23:04:49]

やがて、エヴァンジェリンが談話室に入ってきて、ふたりの様子を見て目を見開いた。

「り、リンジーがソフィーと話してる……！」

リンジーは頬を赤らめて本を閉じ、ツンと顔をそらした。

「別に。ただの暇つぶしよ。ね、クルーズ嬢？」

「ソフィーでいいわ」とソフィーはにっこり言った。

「あなたがそう呼んでくれるなら、わたしも“リンジー”って呼びたいな」

リンジーはしばらく何も言わなかったが、最後にふっと短く、しかし確かに笑った。

「……勝手にすれば」

その微笑みは、ほんの一瞬だったけれど、ソフィーにはひどく眩しく思えた。

外では、久しぶりに日が差していた。灰色の雲の合間から、一筋の光が、学院の屋根を金色に染めていた。

[34 ◆qcSQN4N5gc 25/06/27(金) 23:05:08]

次の展開
該当のレス下3つからダイス

[35 二次元好きの匿名さん 25/06/28(土) 02:56:17]

次はエヴァと仲良く

[36 二次元好きの匿名さん 25/06/28(土) 08:29:21]

ベッツィーと会話する

[37 二次元好きの匿名さん 25/06/28(土) 17:06:07]

校長を説得する方法を考える

[38 ◆qcSQN4N5gc 25/06/28(土) 17:07:57]

1.>>35

2.>>36

3.>>37

dice1d3=2 (2)

[39 ◆qcSQN4N5gc 25/06/28(土) 17:08:59]

ある日曜の午後、授業も礼拝もない貴重な自由時間。多くの生徒が中庭や談話室で過ごす中、ソフィーはひとり、寮の廊下を歩いていた。長いカーテンが風に揺れ、窓から差し込む光が床に格子の影を落としている。

角を曲がった先で、見慣れた小さな背中があった。あの時と同じように、モップを持って黙々と床を磨く姿。――ベッツィー。

誰もが彼女の存在を見て見ぬふりをしている。だれも「ありがとう」とも「お疲れさま」とも言わない。ただ、そこにいることが当然のように、視界の隅で扱われている。

けれどソフィーは、そうはできなかった。

[40 ◆qcSQN4N5gc 25/06/28(土) 17:09:34]

「……ベッツィーさん」

彼女はそっと呼びかけた。ベッツィーの手が止まり、顔を上げる。黒い瞳がソフィーをまっすぐに見た。

「こんにちは。いつも、綺麗にしてくれてありがとう。床がすべらなくて、歩きやすいわ」

少しの沈黙のあと、ベッツィーはゆっくりと身を起こし、ソフィーを見据えた。

「……お嬢様に、そんなこと言われる筋合いじゃないです」

その声は、低くてかすれていた。まるで、誰かに何年も「黙っていなさい」と言われ続けてきた声だった。

けれどソフィーは怯まず、ほんの少しだけ、寂しそうに微笑んだ。

[41 ◆qcSQN4N5gc 25/06/28(土) 17:10:08]

「わたし、ソフィーっていうの。名前で呼んでくれていいのよ」

ベッツィーは目を伏せ、手にしたモップを見つめるようにして呟いた。

「名で呼んでいいのは、同じ身分の子だけです」

「それは、大人たちの決まり事でしょ？」

ソフィーはまっすぐな瞳で言った。「でも、わたしは……あなたと話してみたいと思ったの」

その瞬間、廊下の先からアンジェラ嬢の足音が聞こえてきた。ベッツィーはハッとして身をかがめ、モップを握り直す。

「……話しても、怒られます」

「じゃあ、またこっそり話しましょう」

ソフィーは声をひそめて、ウインクした。ベッツィーの口元が、ほんのわずかに動いた気がした。笑った、のかもしれない。けれどそれが確かなのかどうか、ソフィーは確かめようとはしなかった。

背中にモップの音を聞きながら、ソフィーはゆっくりと歩き出した。床はすべすべで、足音さえも静かだった。

心の中で、何かが始まった気がした。

[42 ◆qcSQN4N5gc 25/06/28(土) 17:10:55]

しばらくして、父親から手紙が届きました。
内容を該当するレス下3つからダイス

[43 二次元好きの匿名さん 25/06/28(土) 17:20:38]

インドで新しい事業に着手したという報せ

[44 二次元好きの匿名さん 25/06/29(日) 01:41:51]

あにまんまんのぬいぐるみセットを開発したら爆売れ

[45 二次元好きの匿名さん 25/06/29(日) 09:15:27]

元気でやっているかという手紙

[46 ◆qcSQN4N5gc 25/06/29(日) 10:07:26]

1.>>43

2.>>45

dice1d2=2 (2)

[47 ◆qcSQN4N5gc 25/06/29(日) 10:30:06]

ミントン女子学院の春は、どこかくすんだ色をしている。薄桃色の花が咲いても、ロンドンの空は重く、風はまだ冷たい。けれど、ソフィーの足取りはその日、少しだけ軽かった。

朝食の後、アンジェラ嬢が嬉しげにソフィーに近づいてきた。ふだんは甘い物語の話題か、牛乳配達の時間ばかりを口にする彼女が、今日は少し違った。

「お届けものよ。インドから──ほら、封筒の端に、あの見慣れた印章があるわ」

ソフィーの胸が高鳴った。封筒の端に、確かに見覚えのある深紅の蝋封が押されていた。剣と槍を交差させた、クルーズ家の紋章。

食堂の隅、静かな窓辺に座ると、ソフィーは慎重に封を切った。中には、父の整った筆跡で書かれた手紙が一通、そして乾いたインドの空気がわずかに漂っていた。

[48 ◆qcSQN4N5gc 25/06/29(日) 10:30:56]

親愛なるソフィーへ

お前がロンドンへ旅立ってから、もう一年が経つのだな。
あの別れの日のことを、私は今も夢に見る。君が大きな瞳で「また来てくれる？」と聞いたあの瞬間を、私は何度も思い返しているよ。

君の生活がどうか穏やかで、心を凍らせることのないようにと、毎日祈っている。
校長や先生方に無礼をせず、だが君らしい誇りを忘れずにいるかね？

こちらは相変わらず忙しいが、元気にやっている。
ブラッドフォードとも鉱山の仕事を順調に進めている。

近いうちに、わたしはまたイギリスへ行くつもりだ。
ほんの短い滞在になるかもしれないが、お前に会える日を心から楽しみにしている。

それまでに、君の大好きだった赤いサリーを、仕立て直しておこう。
もう小さくて着られないかもしれないが、布は柔らかく、思い出は色あせない。

いつも君を誇りに思っている。
心を強く、優しさを忘れずに。

父より

[49 ◆qcSQN4N5gc 25/06/29(日) 10:31:20]

読み終えたあと、ソフィーはしばらく手紙を胸に抱えた。外ではリンジーの笑い声が響き、エヴァンジェリンが誰かに読み聞かせをしている声が聞こえた。

ソフィーは立ち上がり、廊下へと歩く。途中、階段の踊り場でモップを持ったベッツィーとすれ違った。

「……父から手紙が届いたの。元気だって」

そう言って見せた手紙に、ベッツィーはちらりと視線を向け、小さくうなずいた。

「よかったですね、お嬢様」

それだけだった。でもその声には、少しだけ柔らかい響きがあった。

空はまだ曇っているけれど、ソフィーの心には、遠くインドの青い空がほんの少しだけ広がっていた。

[50 ◆qcSQN4N5gc 25/06/29(日) 10:31:55]

父が帰ってくる少し前、学院で思わぬ出来事
その内容を、該当するレス下3つからダイス

[51 二次元好きの匿名さん 25/06/29(日) 10:51:42]

Wikiの小公女によると主人公の11歳の誕生日パーティーで父の訃報と事業破綻だったか

ベッツィーが差別を受けているところを目撃するソフィー

[52 二次元好きの匿名さん 25/06/29(日) 13:47:47]

校長にいびられるヴィンセントを目撃

[53 二次元好きの匿名さん 25/06/29(日) 22:52:18]

事業が破綻……とまではいかなくても傾いてきた

[54 ◆qcSQN4N5gc 25/06/29(日) 23:00:23]

1.>>51

2.>>52

3.>>53

dice1d3=1 (1)

[55 ◆qcSQN4N5gc 25/06/29(日) 23:13:46]

その日は午後から雨になった。授業が早めに終わり、校庭での体操も中止になったため、生徒たちはそれぞれ思い思いに時間を過ごしていた。

ソフィーは、読みかけの本を手に寮舎の裏手にある小さな書庫へ向かっていた。表の階段は滑りやすくなるからと、エヴァンジェリンに教えてもらった裏道を通る。誰も使わない廊下。使用人たちの物置と、洗濯場に通じる古い階段。

そこで、彼女は足を止めた。

──声が聞こえた。怒りに満ちた、刺々しい女の声。

「このタオル、誰が洗い直せって言ったかしら？ベッツィー、あんたは本当に手が遅いのよ。色の黒い手じゃ、白い布も汚れが落ちないのかしらねぇ！」

ソフィーは立ちすくんだ。古びたドアの隙間から、中の様子がうっすらと見える。そこには、顔にしわを寄せた年配の女性――厨房の副女官であるミセス・グレイヴスが、濡れたタオルを振り回しながら、ベッツィーに怒鳴っていた。

[56 ◆qcSQN4N5gc 25/06/29(日) 23:14:16]

「ちゃんと耳、ついてるの？　それともその頭じゃ理解できないのかしら！」

ベッツィーは何も言わず、うつむいたまま床に膝をついていた。薄いシャツは濡れて張りつき、肩が小刻みに震えていた。

「もういいわ。ほかの子にやらせる。あんたは地下室でも片づけてなさい。お似合いよ、そこが」

その言葉とともに、洗濯桶の水がベッツィーの足元にこぼれた。ミセス・グレイヴスの足音が去っていく。

ソフィーは、しばらく動けなかった。

あのベッツィーが、あんなに静かで勤勉で、誰よりも気づかれないように働いている彼女が――あんなふうに、踏みつけられるような言葉を浴びせられている。

その光景は、何よりもソフィーの心に重くのしかかった。

やがて、そっとドアを開ける音に、ベッツィーがびくりと顔を上げた。

[57 ◆qcSQN4N5gc 25/06/29(日) 23:15:24]

「……見てましたか？」

その声は淡々としていたが、目は赤かった。

「……ごめんなさい」

ソフィーは言った。

「……助けに入ればよかった。でも、足が動かなかったの」

ベッツィーは無言のまま立ち上がり、手にしたモップを握り直した。

「いつものことです。お嬢様は、気にしなくていい」

「気にするわよ」

ソフィーは一歩、彼女に近づいた。

「そうじゃなきゃ、わたし、"プリンセス"じゃないもの」

ベッツィーがほんの一瞬だけ、目を見開いた。そして、今まで見せたことのない声で、ふっと笑った。

[58 ◆qcSQN4N5gc 25/06/29(日) 23:15:34]

「おかしな方ですね。お嬢様は」

「そうね、変わってるって、よく言われるの」

ふたりのあいだに沈黙が流れる。

そしてソフィーは決めた。あの副女官に、直接文句を言うことはできなくとも、何か別のやり方で、この不正義に抗わなければならないと。

たとえば、言葉を。たとえば、日記帳の一ページを。たとえば、ベッツィーのそばに立つことを。

その日、ソフィーはベッツィーの名前を初めて心の中で「友だち」として呼んだ。

[59 ◆qcSQN4N5gc 25/06/29(日) 23:17:02]

dice1d2=1 (1)

1.父親がイギリスに帰国

2.ソフィーがベッツィーのために小さな行動を起こす

↑に関連する内容で、次の展開を該当するレス下3つからダイス

[60 二次元好きの匿名さん 25/06/30(月) 09:04:07]

ベッツィー保免

[61 二次元好きの匿名さん 25/06/30(月) 17:05:02]

最後の挨拶に行く

[62 二次元好きの匿名さん 25/07/01(火) 02:03:40]

ベツィーに会いに行く

[63 ◆qcSQN4N5gc 25/07/01(火) 07:58:46]

1. >>60

2. >>61

3. >>62

dice1d3=3 (3)

[64 ◆qcSQN4N5gc 25/07/01(火) 08:37:25]

その日、ミントン女子学院の中庭はめずらしく柔らかな春の日差しに包まれていた。緑が萌え、白いクロッカスが花壇を彩る。

正門前に黒塗りの馬車が停まると、学院中がざわめいた。軍服姿の壮年の男が降り立ち、その気品ある立ち振る舞いに使用人さえも息を呑む。

ロドニー・クルーズ大尉。英領インドで名を知られた資産家であり、軍人。学院にとっては莫大な寄付の大口支援者。だが、今ここにいるのは、ただ一人の娘を愛する父の姿だった。

「父さま！」

玄関先に飛び出してきたソフィーは、遠慮も儀礼も忘れて駆け寄り、その胸に飛び込んだ。ロドニーは変わらぬ太い腕で、我が娘をしっかりと抱きとめる。

[65 ◆qcSQN4N5gc 25/07/01(火) 08:37:51]

「おお、ソフィー……一年分、背が伸びたな。目が母さんに似てきた」

ソフィーは目を潤ませながら笑った。

「わたし、元気にしてたわ。でも……いろいろ、考えることもあって」

ロドニーは娘の肩に手を置き、まっすぐに目を見た。

「話してごらん」

ソフィーは少しだけ迷ってから、まっすぐな声で言った。

「会ってほしい人がいるの。わたしの、友だち。名前はベッツィー。使用人の女の子だけど、とても立派な子よ。お父さまのような人に、会ってほしいと思ったの」

ロドニーの表情に驚きはなかった。むしろ微笑んで、娘を見つめた。

「君が“会わせたい”と思う子なら、間違いなく、素晴らしい子に違いない。案内してくれるかね？」

[66 ◆qcSQN4N5gc 25/07/01(火) 08:38:42]

ベッツィーはちょうど、納戸の棚を整えていた。ソフィーが声をかけると、彼女は振り返って、ロドニーの姿を見た瞬間、思わず背筋を伸ばした。彼の威厳と軍服の金ボタンに、あらゆる「身分の壁」が思い出される。

「この方が……ソフィーのお父さま？」

「はじめまして、ミス・ベッツィー」

ロドニーは丁寧に帽子を取り、かがんで彼女と目線を合わせた。

「君のことは、娘から聞いている。感謝しているよ。ソフィーは、君と出会えたことで、この一年を強く生きることができたのだと」

ベッツィーは戸惑い、目を伏せた。

「わたしは……何も。お嬢様が、わたしに優しくしてくれただけです」

「その“優しさ”を素直に受け取れることこそ、強さだ」

ロドニーの声は温かかった。そして少し間を置いて、静かに言った。

[67 ◆qcSQN4N5gc 25/07/01(火) 08:39:33]

「インドには、ソフィーと同じ年頃の子たちがたくさん働いている。誰かの目にふれずに。それでも、誇りをもって生きている。君も、同じだと思ったよ」

ベッツィーの目がわずかに揺れる。

「君が望むなら――今すぐには無理かもしれないが――教育の道を用意できるかもしれない。どこか、きちんと学べる場所で。ソフィーの願いでもある」

ソフィーはそっとベッツィーの手を握った。

「無理にとは言わないわ。でも、もし……わたしと同じ教室で、隣に座る日が来たら、すてきだと思わない？」

ベッツィーはしばらく黙っていた。そして小さく頷いた。

「考えて……みます。でも、わたし、今のままでも……誇りは、ありますから」

ロドニーはその言葉に、深く一礼をした。

「その誇りこそ、リトル・プリンセスにふさわしいものだ」

[68 ◆qcSQN4N5gc 25/07/01(火) 08:40:10]

お父さんはすぐにインドに戻らなければなりません。
それを踏まえて、次の展開を該当するレス下3つからダイス。

[69 二次元好きの匿名さん 25/07/01(火) 17:36:31]

お見送り

[70 二次元好きの匿名さん 25/07/02(水) 02:03:23]

ベッツィーのことを相談

[71 二次元好きの匿名さん 25/07/02(水) 02:06:04]

帰るのを遅らせられないか聞く

[72 ◆qcSQN4N5gc 25/07/02(水) 07:44:55]

1.>>69

2.>>70

3.>>71

dice1d3=3 (3)

[73 ◆qcSQN4N5gc 25/07/02(水) 09:08:20]

その晩、ロンドンの空はめずらしく晴れていた。石畳の通りは昼間のぬくもりをわずかに残していて、夜風の中にも春の匂いが漂っていた。

ミントン女子学院の裏庭、静まり返った建物の影で、ソフィーとロドニーは並んで腰かけていた。明日には父がロンドンを発ち、再び遠いインドへ戻ってしまう。その現実が、少女の胸を重く締めつけていた。

「ねえ、父さま……」

小さな声が沈黙を破った。ソフィーは星空を見上げながら、膝の上に指をそろえていた。

「ほんの……もう一日だけでも、帰るのを遅らせることはできないの？」

ロドニーは、黙って娘を見つめた。その目には、迷いのない優しさと、どうしようもない現実の重みが宿っていた。

[74 ◆qcSQN4N5gc 25/07/02(水) 09:08:50]

「ソフィー……」

「わかってるの。インドでたくさんの人が、父さまを待ってること。お仕事が大事だってことも。……でも」

声が震えた。ソフィーは顔を伏せて、唇を噛んだ。

「でも、わたし、また“お見送り”するのが怖いの。父さまが乗った馬車が遠ざかって、もう見えなくなって、それでもずっと手を振るのが……とても……怖いの」

ロドニーは娘の肩にそっと手をまわした。

「ソフィー。私は、君と別れるたびに、インドの空を見ては思うんだ。君が見ている空と、私が見ている空は、どこかでつながっていると。だから、離れていても、心が切れたことは一度もない」

「……でも、さみしいよ」

ソフィーは父の胸に顔をうずめ、ようやく涙を落とした。それは一年間、寄宿舎で堪えてきた小さな涙の、わずかな解放だった。

[75 ◆qcSQN4N5gc 25/07/02(水) 09:09:09]

ロドニーは娘を抱きしめながら、ゆっくりと語った。

「いつか、君も大人になって、誰かを支える側になる。そのとき、今のこの気持ちを忘れないでいてほしい。離れることが、愛を終わらせるわけじゃないってことを、君のやさしい手で誰かに教えてあげてほしい」

しばらくして、ソフィーは涙をぬぐい、小さく頷いた。

「……うん。わたし、がんばる。今度は、見送るときに泣かないように」

「泣いてもいいさ。君はまだ“リトル・プリンセス”だからな。プリンセスの涙には意味がある。ただ、明日になったら、また強く歩き出せばいい」

ふたりの頭上で、ひとつの星が流れた。

その夜、ソフィーは日記帳にこう記した。

《明日、父さまはまた旅立つ。だけど今夜、わたしは胸を張って言える。わたしは父の娘で、少しだけ大人になったって。》

[76 ◆qcSQN4N5gc 25/07/02(水) 09:10:33]

父との別れから2年後
ミントン校長にある知らせが届きます

該当するレス下3つからダイス。

[77 二次元好きの匿名さん 25/07/02(水) 12:25:52]

ロドニーの事業が少しずつ傾いてきていること

[78 二次元好きの匿名さん 25/07/02(水) 17:52:45]

ロドニーの事業が波に乗ってる

[79 二次元好きの匿名さん 25/07/02(水) 21:42:17]

学院への支援金が増えたそうだ

[80 ◆qcSQN4N5gc 25/07/02(水) 21:43:00]

1.>>77

2.>>78

3.>>79

dice1d3=1 (1)

[81 ◆qcSQN4N5gc 25/07/02(水) 21:46:10]

ミントン女子学院の執務室は、豪奢なカーテンと重たいマホガニー机に囲まれた、一種の“女王の城”であった。陽の差さぬ曇天の朝、そこに一通の封筒が届く。

封は丁重にされ、差出人には──《ロンドン市クルーズ家・法務代理人　ダニエル・スミス弁護士》とあった。

マーサ・ミントン校長は、その名前を見た瞬間、眉をひそめた。

「……弁護士？」

彼女は銀のペーパーナイフで封を切り、慣れた手つきで書面に目を走らせる。しかし数行読んだところで、表情がぴくりと固まった。

[82 ◆qcSQN4N5gc 25/07/02(水) 21:46:31]

敬具。ご高配賜ります。
このたび、クルーズ家の資産管理についてご報告申し上げます。

英領インドにおけるクルーズ大尉の鉱山事業は、近年の採掘コスト増加および輸送網の混乱により、利益率が減少傾向にございます。
現時点で重大な債務は発生しておりませんが、今後の寄付金支出に際しては、慎重な検討が求められる旨、大尉よりご意向を承っております。

取り急ぎ、ご一報まで。
敬白。

スミス法律事務所　主任弁護士　D.スミス

[83 ◆qcSQN4N5gc 25/07/02(水) 21:47:03]

「……なんてことでしょう」

ミントン校長は手紙を置き、口元をぴくつかせながらも、冷静を装った。けれど、その瞳には確かな動揺があった。

「“寄付金支出に慎重な検討を”……ですって？」

ロドニー・クルーズ――あのインドの豪奢な屋敷に住み、年に一度は学院に大口の寄付金を送り続けてきた男。その娘ソフィーを“特別寄宿生”として受け入れたのも、その支援金あってこそだった。

彼女は手元の帳簿を引き寄せた。そこには、「クルーズ家　年額支援：五百ポンド」と記されている。

「五百……五百ポンド……あの子ひとりのために、寮費も学費も、すべて免除しているというのに……！」

椅子から立ち上がると、ミントン校長は怒ったように部屋を歩き回った。額には薄く汗が浮かんでいた。

「“慎重な検討”というのは、つまり打ち切りもありうるということ。これから毎年届く予定だったあの金が……なくなるかもしれない？」

[84 ◆qcSQN4N5gc 25/07/02(水) 21:47:29]

カーテンを勢いよく開けると、外の曇天が窓を叩いた。学院の中庭では、ソフィーが他の生徒たちと並んで歩いているのが見える。その表情は相変わらず優雅で、そして変わらず聡明だった。

だが、ミントン校長の目には、もはやその姿に“寄付金の象徴”というラベルが貼りついていた。

「そろそろ……“特別待遇”を見直すべき時かもしれないわね」

彼女は机に戻り、ベルを鳴らすと、事務職員を呼びつけた。

「“特別寄宿生”ソフィー・クルーズ嬢の経費明細をすべて持ってきなさい。それから、近年の寄付額の推移も」

その口ぶりは冷たく、かつ計算高かった。

学院に吹き始めた新しい風は、ソフィーの知らぬところで、彼女の未来を少しずつ狂わせようとしていた――。

[85 ◆qcSQN4N5gc 25/07/02(水) 21:48:17]

次の出来事を、該当するレス下3つからダイス。

[86 二次元好きの匿名さん 25/07/02(水) 22:19:18]

ソフィーへの待遇が明らかに変わり始めたことに誰もが気づく

[87 二次元好きの匿名さん 25/07/03(木) 01:19:52]

幸運にもちちがまた近い内に来るそうだ

[88 二次元好きの匿名さん 25/07/03(木) 08:42:27]

ソフィーを疑いはじめる

[89 ◆qcSQN4N5gc 25/07/03(木) 10:04:54]

1.>>86

2.>>86

3.>>88

dice1d3=3 (3)

[90 ◆qcSQN4N5gc 25/07/03(木) 10:39:32]

ソフィー・クルーズ――かつて“ミントン女子学院の小さな誇り”と称された少女は、今やひっそりと目立たぬ場所に追いやられつつあった。

その変化は、声にならぬ囁きから始まった。

「食堂の席は、先生方の近くでなくともよろしいでしょう」
「寄宿舎の毛布、少し古いもので我慢してもらえますか」
「図書室の新刊優先貸し出し……あら、ご存じなかったかしら」

こうした言葉の数々は、決してあからさまではなかった。けれど、そこにこもる“扱いの差”は、ソフィーのような聡明な少女にとって、痛いほど明確だった。

クルーズ家の支援が“あやうい”と噂されはじめると、教師たちも、使用人たちも、どこかよそよそしくなった。教科書の補填を頼めば渋られ、頼まれていた朗読役も別の生徒に回された。

ミントン校長の指示は、誰にも公然とは語られない。だが、すべての空気が一つの方向へと傾いていた。

その中で、最も苦悩していたのは、姉・マーサの陰に立つアンジェラ嬢だった。

[91 ◆qcSQN4N5gc 25/07/03(木) 10:41:20]

ある晩、執務室の奥で姉妹だけが顔を合わせた。

「ソフィー嬢を寮の雑用係に入れるって、あれは……ちょっとやりすぎじゃないかしら、マーサ」

アンジェラはおずおずと口を開いた。彼女にしては珍しい反抗だった。

ミントン校長は紙束を手に、冷たい声で答えた。

「“支援があるから”優遇していた生徒に、“支援がないのに”優遇を続ける理由がある？」

「でも、彼女は変わらず礼儀正しいし、成績だって優秀よ」

「優秀なだけの生徒なんて、何十人もいるわ。――これは“学院の名誉”の問題なのよ。寄付に見合わぬ待遇を続けていると知れたら、ほかの家庭にも波紋が広がる」

「でも……あの子、まるで“何かを失った後”のように静かで……見ていられないわ。あの目は、昔の私を思い出させる」

マーサの手がぴたりと止まり、冷たい視線がアンジェラに向けられた。

[92 ◆qcSQN4N5gc 25/07/03(木) 10:41:58]

「私たちの立場を壊したいの？」

その一言に、アンジェラは押し黙った。太い指が机をなぞり、蝋燭の火が小さく揺れた。

「いいえ……ごめんなさい、姉さん。……私は……何も言ってない」

そしてその夜、アンジェラはひとり自室に戻り、窓辺に腰を下ろした。牛乳配達の時間さえ忘れ、膝を抱えてぼんやりと空を見つめる。

──“あの子は、いったい何をしたの？”
──“失ったのは寄付金じゃなく、みんなの信頼の方じゃないの？”

その問いを口にする勇気は、まだ彼女の中にはなかった。


翌朝。ソフィーはひとり、庭の隅で朝の祈りをしていた。制服の裾には、わずかにほころび。けれどその背筋は、まだ折れてはいなかった。

だが、学院という名の城は、ゆっくりと彼女を締め出しつつあった。

[93 ◆qcSQN4N5gc 25/07/03(木) 10:42:22]

次の出来事を、該当するレス下3つからダイス

[94 二次元好きの匿名さん 25/07/03(木) 16:54:38]

>>86

[95 二次元好きの匿名さん 25/07/03(木) 17:00:49]

父がまた近いうちに戻ってくるそうだ

[96 二次元好きの匿名さん 25/07/04(金) 01:58:04]

>>88

[97 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 08:06:46]

1. >>86

2. >>95

dice1d2=1 (1)

[98 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 08:32:46]

昼下がりの音楽の授業。ピアノの音が教室に響くなか、ソフィーは静かに楽譜を譜面台に並べていた。

教壇では先生が、「来月の演奏会で独奏する生徒は、学院の代表としてふさわしい者を選びます」と告げた。
そのとき、数人の目が自然にソフィーに向いた――以前なら、当然のように彼女がその座に選ばれていたからだ。

けれど、先生はソフィーの名を一度も口にしなかった。
代わりに、成績も経験も浅い別の生徒の名前が挙げられると、教室に妙な空気が流れた。

「……おかしいわよね」

最前列でその様子を見ていたリンジー・ホールは、唇をかすかにゆがめた。かつてはライバル心むき出しにしていた彼女も、今では何かが“崩れていく音”を聞きとっていた。

「これじゃ、まるで“消えていくお姫様”みたいじゃない」

普段なら、こうした変化を喜んだかもしれない。だが今のリンジーは、奇妙な不安を覚えていた。

[99 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 08:33:07]

その夜、エヴァンジェリン・スティーブンスは日記帳に震える手で書きつけた。

《ソフィーは今日、おかわりをもらえなかった。理由は言われなかったけど、厨房のおばさんが“特別待遇は終わったのよ”って笑ったのを聞いた。わたしは笑えなかった。あの子は、何も変わっていないのに。変わったのは、大人たちだ。》

[100 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 08:33:32]

学院の片隅、使用人たちの通る廊下でモップをかけながら、ベッツィーもまた感じていた。

「……あの人たち、急にお嬢様を“よそ者”みたいに見てる」

使用人部屋では、「寄付が止まったからだ」「金がないのに学院にいられると思ってるのか」といった声が飛び交っていた。

ベッツィーはうつむき、固くモップの柄を握りしめた。
“自分が受けてきたものと同じことが、今、あの人に向かっている”――その事実が、胸を締めつけた。

それでも、ソフィーは何も言わない。誰を責めることもせず、静かに、少し背筋を伸ばして歩いていた。

「……お嬢様。あんた、バカみたいに立派だわ」

ベッツィーはそう呟いた。まるで、かつての自分自身に向けるように。

[101 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 08:34:16]

中庭のベンチでは、エヴァンジェリンとリンジーが並んで座っていた。

「ねえ、あの子……何か悪いことした？」

「してないわよ。……それが一番腹立たしいの」

リンジーはため息をついた。そして一言、ぽつりと。

「わたし、あの子のこと、少しだけ見習いたくなってきたのよね。何も言わずに、誇りだけ残してる。……昔のわたしなら、絶対そんなの耐えられなかったと思う」

エヴァンジェリンは静かにうなずいた。

「わたしも。何か……してあげられないかな」

その想いは、やがて学院の空気に小さな波紋を起こしていくことになる。

[102 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 08:34:51]

エヴァンジェリンとリンジー、またはベッツィーの次のアクションを、該当するレス下3つからダイス

[103 二次元好きの匿名さん 25/07/04(金) 12:26:42]

３人とも　ソフィーを孤立させないように動く

[104 二次元好きの匿名さん 25/07/04(金) 12:35:04]

エヴァンジェリンがソフィーと >>98 で選ばれた生徒を引き合わせてソフィーが教える形で交流させる

[105 二次元好きの匿名さん 25/07/04(金) 18:25:45]

ベッツィーがソフィーに　ソフィーの制服のほつれを直そうと申し出る

>>92

[106 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 18:26:24]

1.>>103

2.>>104

3.>>105

dice1d3=1 (1)

[107 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 18:28:45]

春の終わり、曇ったロンドンの空が、まるで誰かのため息のように重たく垂れ込めていた。

学院の昼食時間。以前は生徒たちの輪の中心にいたソフィーが、今は窓辺の一席に静かに座っていた。誰にも呼ばれず、誰にも寄られず、それでも姿勢を正して、ナプキンを膝にきちんとたたんでいた。

その姿を見つめながら、リンジー・ホールはスプーンを握る手を止めた。

「ねえ、エヴァンジェリン。あの子、あんなに綺麗にお辞儀できるのに、どうして誰も見ないのかしら」

エヴァンジェリンは黙って頷いた。

「ソフィーは、いまも同じ人なのに。変わったのは周りの方……わたし、もう見てるだけじゃいられない」

その日の午後、ふたりは静かに動き始めた。

[108 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 18:29:05]

授業のあと、エヴァンジェリンはソフィーに声をかけた。

「次の詩の発表、わたしじゃ不安だから、ソフィーと組んでもいいかな？」

ソフィーは一瞬きょとんとしたが、すぐに笑って頷いた。

「もちろん。わたしでよければ」

廊下の向こうでは、リンジーが他の生徒たちにさりげなく話しかけていた。

「詩の発表、今年はソフィーの音読を聞きたいわね。あの子の発音、ほら、フランス語もヒンドゥー語も素敵だったじゃない？」

少しずつ、周囲の目が動きはじめる。ほんの些細なきっかけ。でも、それは確かに「ひとりじゃない」ことの証だった。

[109 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 18:29:35]

その夜、使用人部屋でベッツィーはひとり古い制服を繕っていた。膝の破れたソフィーの予備スカート。針の先が白い布に入り込むたび、ベッツィーの眉が少し寄った。

「……学院の人たちなんて、所詮、お金があるかないかで人を決めてる」

小さく吐き捨てて、けれどその目はまっすぐだった。

翌朝、ソフィーの部屋のドアにそっとかけられていたハンガー。そこには、丁寧に直された制服がかかっていた。襟元には、目立たぬように刺された小さな赤い花の刺繍――ベッツィーが昔、祖母から教わった「勇気と尊厳」の印だった。

ソフィーはそれを見つけて、そっと胸に手を当てた。

[110 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 18:30:06]

次の週、学院の中庭では、生徒たちの小さな輪の中にソフィーの姿が戻りつつあった。

リンジーは大仰に言った。

「で、ソフィー。わたしが次の暗誦大会で読みたい詩、あなたに選んでほしいの。正直、あなたの方がセンスあるし」

エヴァンジェリンはくすりと笑い、
「それに、あなたが読むと、言葉が本当に意味を持つのよ」

ソフィーは何も言わなかった。ただ静かに、誇り高く、けれど嬉しそうに目を細めた。

その視線の先で、廊下を拭いていたベッツィーが、ふと振り返って微笑む。
誰もが知らない場所で、誰よりも深く彼女を見守っている、たったひとりの“友人”の笑みだった。

ソフィーの周りには、少しずつ新しい風が吹き始めていた。
それは、金でも地位でもない――絆と誇りの風だった。

[111 ◆qcSQN4N5gc 25/07/04(金) 18:30:34]

次の出来事を、該当するレス下3つからダイス

[112 二次元好きの匿名さん 25/07/04(金) 21:01:40]

>>102 の３人と勉強会

[114 二次元好きの匿名さん 25/07/05(土) 08:09:38]

3人でこれからのことを話し合う

[115 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 09:19:28]

1.>>111

2.>>112

3.>>114

dice1d3=3 (3)

[116 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 09:24:22]

夕暮れの校庭にはまだ冷たい春の風が残っていた。大きな木の根元に腰を下ろした三人の少女たち――ソフィー、エヴァンジェリン、リンジーは、授業のあとにひそやかに集まっていた。

いつもより静かなソフィーを囲むように、エヴァンジェリンとリンジーが寄り添って座る。

「ねえ、ソフィー……わたし、ずっと思ってたんだけど」

エヴァンジェリンが、おそるおそる切り出した。

「どうして先生たちは、あなたに話しかけるのをやめたのかな。まるで、何かが起こったみたいに」

ソフィーは少しだけ目を伏せた。

「……たぶん、何か“知られた”のかもしれない。わたしの家のこと」

「でも、それっておかしいわ」

リンジーが言葉を重ねた。

「何か“変わった”ことがあったとしても、それがあなたの中身まで変えるわけじゃない。態度を変える方が、どうかしてる」

[117 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 09:24:53]

ソフィーは微笑んだ。

「ありがとう、リンジー。でも、世の中って、そう簡単じゃないのかもしれない」

「つまり……あなたのお父さまに、何かあったの？」

エヴァンジェリンがそっと聞いた。

ソフィーは少し考えてから、首を横に振った。

「いいえ、何も“聞いて”いないわ。でも、あの人……最後の手紙の文の調子が、どこか違ってた。“元気でいなさい”じゃなくて、“困ったときは自分を信じなさい”って」

「それって……」

リンジーが呟いた。

「まるで、“これから困ることがある”って、わかってたみたいな」

三人の間に、一瞬、風が吹いた。
クロッカスの花が静かに揺れ、小さな黄いろい花びらが一枚、ソフィーの肩に落ちる。

「ねえ」

ソフィーが、ゆっくりと語った。

「もし、わたしの家が今までみたいに裕福じゃなくなったら……もし、わたしがこの学院にいられなくなったら……ふたりは、どうする？」

[118 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 09:25:18]

その問いに、エヴァンジェリンは答えを探すように唇を結び、リンジーは少しの間だけ黙ったあと、はっきりと言った。

「わたし、あなたを“同情”で好きになったわけじゃない。負けたくないって思ったから、あなたといたかった。だから、何があっても、わたしはあなたと喋るし、並んで歩くわ」

エヴァンジェリンは、うなずいた。

「わたしも……わたしの成績なんて、いつも後ろの方だけど、あなたと一緒にいると、ちょっとだけ前を向けるの。だから、ずっと友だちでいてくれる？」

ソフィーの目に、かすかな涙の光が宿る。

「……もちろん。わたしこそ、あなたたちがいたから、いままでちゃんと立っていられた。もし本当に何かが起こっても……きっと、だいじょうぶ」

その言葉は、まるで未来への祈りのようだった。
三人の間にあった不安と沈黙が、ゆっくりと溶けていく。

[119 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 09:25:38]

やがて、学院の鐘が鳴る。
ソフィーが立ち上がると、風が彼女の制服の裾をふわりとはためかせた。

「わたしたち、“今”のことしかわからないけど……それでいいのよね」

「ええ。だって、未来はまだ書きかけなんだから」
エヴァンジェリンが笑う。

「わたしたちが書くのよ、これからのページを」

リンジーが胸を張って言った。

そして三人は、肩を並べて学院の建物へと戻っていった。
その背中にはまだあどけなさが残っていたが、確かに“何かを知ろうとする強さ”が、芽生え始めていた。

[120 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 09:26:24]

次の出来事を、該当するレス下3つからダイス

校長周辺、クルーズ家周辺、少女たち周辺のことなど

[121 二次元好きの匿名さん 25/07/05(土) 17:32:51]

校長への疑念が広がる

[122 二次元好きの匿名さん 25/07/05(土) 17:44:01]

校舎に大量のカメムシが発生

[123 二次元好きの匿名さん 25/07/05(土) 17:44:27]

突如巨大隕石が校舎に落下！

[124 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 18:10:08]

他のは扱いづらいので >>121 にしときます

[125 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 18:13:00]

ミントン女子学院には、誰もが知っていて、けれど口には出さない“暗黙の秩序”があった。

それは「マーサ・ミントン校長に逆らわないこと」。
この学院の空気、進路、奨学金、家庭との関係――すべてが彼女の“ご機嫌”のもとに保たれていると、生徒たちはどこかで感じ取っていた。

けれど、その絶対の支配に、ひとつの影が落ちた。

それは、「ソフィー・クルーズの扱いの変化」。

彼女の家に何が起きたのかは、生徒たちには知らされていなかった。けれど、以前まで丁重に扱われていた彼女が、ある日を境に、急に名前を呼ばれなくなり、粗末な制服を着せられ、食堂の列に並ばされるようになった。

その理不尽さは、思春期の少女たちの心に、ある“疑い”を芽生えさせた。

[126 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 18:13:33]

「ねえ、なんでソフィーって、あんなに雑な扱いされてるの？」
「うちの母が言ってた。寄付が減ったらしいけど……それであそこまで露骨に変える？」
「もし“お金”で人を見るなら、私たちもいつか……？」

そんな声が、机の下、寮の廊下、図書室の片隅で囁かれ始める。

そして、ある出来事が引き金となった。

ある日、校長室の前を通った上級生が、偶然耳にしたのだった。

「……あの子、あれだけ“持たせた”のだから、そろそろ“引かせる”時でしょう」

「姉さん、聞こえてます！ 扉が──」

「いいのよ。聞かせたい者には、わかるようにしておくのが一番」

それは、アンジェラと校長との会話の一部だった。

次の日には、それが“ミントン校長が生徒の扱いを寄付金で決めている”という噂として、静かに広まった。

[127 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 18:14:35]

「“聞かせたい者には……”って、つまり私たちのことよね」
わたし、思うの。校長って“立派な人”なんじゃなくて、“怖い人”だったんだって。ソフィーに何も言わずにあんな仕打ちして……あの人は人の心より帳簿を見てるのよ」

やがて、リンジー・ホールの声が静かに重なった。

「だったら、帳簿の上じゃなくて、わたしたちの間でソフィーを“本当の学院の仲間”に戻しましょうよ」

エヴァンジェリンがそっと手を握り返す。

「ミントン校長は変わらない。でも……わたしたちは、変われる」

こうして少女たちは、無言の連帯を始めた。

それは叫びではなく、静かな意思表示。
廊下ですれ違えば挨拶を交わし、授業で彼女の発言をきちんと受け止める。演奏会の候補に彼女の名前を提案し、制服の裂け目をそっと縫ってあげる。

「おはよう、ソフィー」
「昨日の詩、よかったよ」
「次、あなたの番ね」

何気ない言葉のなかに込められた、小さな反抗。
それは、マーサ・ミントンの権威に風穴を開ける“無言の運動”だった。

[128 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 18:14:55]

そして、その変化を最も鋭く感じ取ったのは、アンジェラ・ミントンだった。

彼女は姉の背後で、密かに思っていた。

（このままじゃ、姉さんは“学院の女王”のまま孤立する……）

でも、まだ言えない。まだ、怖い。けれど――このままでいたくない、という想いは、確実にアンジェラの胸にも芽生えていた。

[129 ◆qcSQN4N5gc 25/07/05(土) 18:15:23]

次の出来事を、該当するレス下3つからダイス

[130 二次元好きの匿名さん 25/07/06(日) 02:01:49]

流れ星を発見

[131 二次元好きの匿名さん 25/07/06(日) 08:06:00]

アンジェラが生徒たちの行動を見て今後どうなっていくかを推測し　身の振り方を考える

[132 二次元好きの匿名さん 25/07/06(日) 11:51:13]

ソフィーも含めた　同級生たちの勉強会

[133 ◆qcSQN4N5gc 25/07/06(日) 12:29:51]

1.>>130

2.>>131

3.>>132

dice1d3=2 (2)

[134 ◆qcSQN4N5gc 25/07/06(日) 12:32:45]

四月の終わり、ミントン女子学院は季節の移ろいよりも早く、空気が変わり始めていた。

廊下をすれ違う生徒たちの目線が、わずかに鋭さを帯びる。
談話室では、誰かがふと立ち上がったときに、それまでの話がぴたりと止まる。

「……ねえ、アンジェラ嬢。最近の皆さん、少し変わってきたと思いませんか？」

ある日、牛乳を届けに来たヴィンセントがそう言った。
彼はさりげなく、けれど確かな観察眼で学院の“揺れ”を見抜いていた。

アンジェラはその問いに、はっきりと答えることができなかった。
けれど心の中では、日々積み重なる“違和感”に気づいていた。

たとえば──

[135 ◆qcSQN4N5gc 25/07/06(日) 12:33:14]

昼食の席で、誰からともなくソフィーのために空けられた一席。
図書室の貸し出し簿に、生徒たちが順番にソフィーの名前を優先に書いていたこと。
そして、朗読会の練習中、教師が何かを言いかけたとき、リンジー・ホールがぴたりと視線を投げて止めたこと。

（これは……静かな反抗）

アンジェラは窓辺に立ち、うっすら曇ったガラス越しに校庭を見下ろした。
三人の少女――ソフィー、リンジー、エヴァンジェリンが肩を並べて歩く姿が見える。まるで、嵐に立ち向かう小さな軍隊のようだった。

[136 ◆qcSQN4N5gc 25/07/06(日) 12:33:44]

「……わたし、あの子たちのように生きたことなんて、一度もないわ」

姉の影の中で育ち、逆らえず、何も変えられずにきた年月。
「あなたは優雅にしていればいいの」と言われ続け、自分の意思を持つことすら罪のように思っていた。

だが今、少女たちが示しているものは――意思だった。

（このままでは、学院はきっと分裂するわ。生徒たちは、心を離していく。姉さんはそれに気づかない。気づこうとしない）

アンジェラは、机の引き出しから古い封筒を取り出した。

それは、数か月前にロドニー・クルーズ大尉から個人的に送られてきた、礼状と短い手紙だった。

[137 ◆qcSQN4N5gc 25/07/06(日) 12:34:06]

《貴姉のご厚意、娘より聞き及びました。
ソフィーが健やかに過ごしているのは、貴女のような方の支えがあるからに他なりません。
いつか、お礼を直接申し上げたく存じます。
──ロドニー・クルーズ》

指先で便箋をなぞみながら、アンジェラは小さく息をついた。

「ロドニーさん……あなたは今、インドでどんな思いで娘を思っているのかしら」

彼女はそっとペンを取り、白紙の便箋に文字をつづけ始めた。

[138 ◆qcSQN4N5gc 25/07/06(日) 12:34:26]

《敬愛なるクルーズ大尉殿
このたびは突然のお便りをお許しください。
貴女のお嬢様は今なお立派に過ごされております。
ただ、学院内にはいくつか変化があり……それは私自身の立場を見直す契機ともなりました。
もし、近くロンドンにお越しのご予定があれば、私から直接お伝えしたいことがございます。
──敬具
アンジェラ・ミントン》


ペンを置いた彼女の指は少し震えていた。
だが、もう一度宛名を書き始めたその表情には、これまでにないほどの決意が宿っていた。

彼女はまだ、姉には逆らえない。
けれど、自分の正直な良心には、これから逆らわないと心に決めたのだった。

[139 ◆qcSQN4N5gc 25/07/06(日) 12:35:11]

次は、クルーズ家の弁護士がミントン校長に新たな報せを持ってくることにします。

内容を該当するレス下3つからダイス

[140 二次元好きの匿名さん 25/07/06(日) 19:33:26]

寄付金について　直接話し合いをする機会を設けたい

[141 二次元好きの匿名さん 25/07/07(月) 02:11:02]

校長に悪い噂が立っていると話す

[142 二次元好きの匿名さん 25/07/07(月) 02:46:11]

校長の不正について

[143 ◆qcSQN4N5gc 25/07/07(月) 09:52:29]

1.>>140

2.>>141

3.>>142

dice1d3=3 (3)

[144 ◆qcSQN4N5gc 25/07/07(月) 10:43:55]

灰色の雲がロンドンの空を覆っていたその午後、ミントン女子学院の玄関に一台の黒い馬車が滑り込んだ。
そこから降り立ったのは、黒の上質な外套に身を包んだ中年紳士――ダニエル・スミス。クルーズ家の法務代理人として知られ、冷静沈着な姿勢と、鋭利な質問で評判の弁護士であった。

「ミントン校長に謁見をお願いしたい。ダニエル・スミスと申します」

受付の少女が慌てて立ち上がると、伝言はあっという間に校長室へと届いた。

[145 ◆qcSQN4N5gc 25/07/07(月) 10:44:26]

「――まあ、これはご足労を。クルーズ家のご代理人が直々にお越しとは、たいへん光栄ですわ」

ミントン校長・マーサはいつもより一層丁重な言葉を使いながらも、その目は警戒の色を帯びていた。
執務机の前に深く腰かけ、にこやかな笑みを浮かべてみせる。

対するスミスは、丁寧な所作でハットを外すと、静かに椅子に座った。

「校長先生、今日は単なる訪問ではございません。いくつか、確認すべき事案がありまして」

「……ほう。どのような？」

「まずは一点目。クルーズ家から学院に対して支払われている寄付金の扱いについてですが……帳簿上、ある時期から用途の変更がなされていることに我々の監査担当が気づきました。“特別寄宿生支援費”という名目が消え、“校内設備充当分”に転用されているようですね？」

[146 ◆qcSQN4N5gc 25/07/07(月) 10:44:45]

マーサの指が、ほんのわずかに震えた。

「寄付の詳細は学院の運営判断により……」

「いいえ。“寄付金に含まれる拘束条件”に違反する使い方は、契約上問題となります。クルーズ家の合意を得ず、寄付目的を変更した場合、それは私的流用に類する可能性があります。おわかりですね？」

マーサの微笑みが、薄氷のように崩れた。

「……そのようなご懸念があるとは、初耳ですわ」

「では二点目に移りましょう」

ダニエル・スミスは、机に分厚い封筒を置いた。

[147 ◆qcSQN4N5gc 25/07/07(月) 10:45:18]

「これは在籍する生徒たちの保護者から届いた、“クルーズ嬢への扱いの変化”を疑問視する手紙の写しです。“特別待遇の打ち切り”が、“寄付金の停止”に伴う懲罰的措置であるかのように受け取られている。これは教育機関としての倫理上、重大な問題です」

「そのような噂……ただの生徒の感情的な……」

「感情は、法律の枠外で動きます。しかし“差別的待遇”は法の下に裁かれます」

スミスの目が鋭く光る。

「お嬢様は、何ら罪を犯していません。にもかかわらず、教育資源の制限、席順の降格、職員からの無視など……これらが寄付金に起因するなら、明白な“報復的措置”です」

マーサは口元に手をあてたまま、何も言わなかった。

部屋の空気が重く沈黙した。

[148 ◆qcSQN4N5gc 25/07/07(月) 10:45:40]

やがてスミスは、椅子から立ち上がった。

「校長先生。私の来訪は最後通告ではありません。ですが、このまま問題を放置されるようであれば――クルーズ家とわたくしは、必要な法的手段を講じます」

「……クルーズ家の支援が、今後も継続されるとは限らないのでは？」

マーサの声はかすかに震えていた。

スミスはゆっくりと帽子を手に取ると、ただ一言だけ返した。

「支援とは“見返りのため”にするものではありません。信義の上にあるものです。
……あなたには、それが理解できないのでしょうか？」

それだけを言い残し、彼は無言で校長室を後にした。

[149 ◆qcSQN4N5gc 25/07/07(月) 10:45:58]

玄関を出たダニエル・スミスが乗り込んだ馬車の中、書簡が一通、封を開けられずに膝の上にあった。

――それは、アンジェラ・ミントンからの私信だった。

彼はためらいなく封を切り、文面に目を落とす。
しばらくののち、静かに頷き、短く呟いた。

「……こちらにも、まだ味方はいるようだ」

馬車が学院の門を抜けるとき、背後の建物は、微かに何かがきしむような音を立てた。

学院に、変革の風が吹き始めていた。

[150 ◆qcSQN4N5gc 25/07/07(月) 10:46:20]

次の展開を該当するレス下3つからダイス

[151 二次元好きの匿名さん 25/07/07(月) 12:26:41]

生徒たちから見ても分かるほど教師たちの間で動揺が広がり始める

[152 二次元好きの匿名さん 25/07/07(月) 20:34:34]

ソフィーに父から手紙が届く

[153 二次元好きの匿名さん 25/07/07(月) 21:17:38]

校長の不正の噂が生徒たちの間で広がる

[154 ◆qcSQN4N5gc 25/07/08(火) 01:15:41]

1.>>151

2.>>152

3.>>153

dice1d3=2 (2)

[155 ◆qcSQN4N5gc 25/07/08(火) 09:47:21]

五月のある朝、まだ霧の残るロンドンの空の下。
ソフィー・クルーズは中庭のベンチで、授業の始まりを待っていた。制服の襟は洗いざらしでやや色褪せているが、彼女は姿勢よく、目を細めて木漏れ日を見上げていた。

そのとき、ひとりの職員がやってきて、彼女の前に立った。

「クルーズ嬢、お父上からのお手紙が届いています」

その言葉に、ソフィーの瞳が驚きにわずかに揺れる。
受け取った封筒は、どこか懐かしい香辛料の匂いが染み込んでいた。
インドから届いた、遠く懐かしい匂い。

彼女は胸に抱え、ゆっくりと封を切った。

[156 ◆qcSQN4N5gc 25/07/08(火) 09:47:51]

《わたしの愛しき娘、ソフィーへ》

君がこの手紙を読む頃、ロンドンはきっと春の終わりを迎えているころだろう。
そちらの空はどんな色をしている？　この手紙を書いている今日、カルカッタの空は赤茶けた風と埃で霞んでいるが、私は君のことを考えながら、静かにコーヒーを飲んでいる。

ソフィー、君のことを思わない日は一日もない。

君が学院で誇り高く、心優しく過ごしていると信じている。人は、何かを奪われるときにこそ、その“本当の力”を試されるものだ。
君が試練の中にあるとしたら、どうか――自分の価値を、他人の言葉や態度で測ってはならない。

君はわたしの誇りだ。

インドの事業は、正直に言って、順風満帆とはいかなくなってきた。
それでも私は、父として、君の未来のために働き続ける覚悟だ。

どうか、つらいときには顔を上げて、周囲を見渡しなさい。
本当に信じられる人は、きっと傍にいる。

そして、わたしはどんなときも、君の味方だ。

追伸：アンジェラ嬢から手紙を受け取った。優しい方だ。彼女によろしく伝えてほしい。

お前を誇りに思う、父 ロドニー・クルーズ

[157 ◆qcSQN4N5gc 25/07/08(火) 09:48:15]

ソフィーは手紙を読み終えると、胸にそっと押し当てた。
目に涙は浮かばなかった――けれど、心の奥で、何かがほどけるように温かくなっていった。

そのとき、彼女の背後から声がした。

「お父さまから？」

振り向くと、そこにはエヴァンジェリンとリンジーが立っていた。

「ええ……とても、あたたかい手紙だったわ」

「それなら良かった」

リンジーがにっこりと笑い、エヴァンジェリンが小声で言った。

「ねえ、よかったら、今日の放課後、一緒に図書室に行かない？ 調べたいことがあるの。わたしたちに何ができるか」

「……ありがとう」

ソフィーは立ち上がり、二人と並んで歩き出す。
その胸には父の言葉が――「顔を上げて、傍を見なさい」という言葉が、灯火のように灯っていた。

どんなに霧が深くても、前を向く強さをくれたのは、遠く離れたあの人の筆跡だった。

[158 ◆qcSQN4N5gc 25/07/08(火) 09:48:46]

その後、学院では
該当するレス下3つからダイス

[159 二次元好きの匿名さん 25/07/08(火) 09:56:31]

動揺する教師たち

[160 二次元好きの匿名さん 25/07/08(火) 19:46:29]

校長によくない噂が更に広まる

[161 二次元好きの匿名さん 25/07/08(火) 19:47:59]

ついに校長の不正が明るみに

[162 ◆qcSQN4N5gc 25/07/08(火) 20:40:31]

1.>>159

2.>>160

3.>>161

dice1d3=3 (3)

[163 ◆qcSQN4N5gc 25/07/08(火) 20:43:10]

ミントン女子学院の午後。
その日、校内は不穏な空気に包まれていた。

書類の束を抱えた教師たちが密やかに集まり、管理棟では職員同士の私語が絶えない。
いつもなら穏やかで格式高い応接室には、スーツ姿の中年男女が次々と出入りし、重々しい沈黙と低い声が漂っていた。

彼らは、保護者会の主要メンバーたちだった。
誰もが“上流階級の名誉”と“我が子の将来”の両方を背負っていた。

そこに火をつけたのは、一通の文書だった。

――「ミントン校長が、特定の寄付金を学院設備費へと流用し、寄付者の娘に報復的な扱いをしている可能性がある」。

告発の原本は匿名だったが、数日前に学院を訪れたクルーズ家の弁護士ダニエル・スミス氏の言葉が、それに重みを与えていた。

「これは単なる経理の誤りではなく、“方針”であると見ています」

最初は噂に過ぎなかった。だが、名門の親たちは事実を求めて動き出した。

[164 ◆qcSQN4N5gc 25/07/08(火) 20:43:31]

マーサ・ミントン校長は、硬い表情で椅子に腰かけていた。
彼女の前に並んだのは、保護者会代表のアシュレイ卿夫人、ルシア・フェアグレイヴ夫人、そして数名の後援者。

「ミントン先生。率直に申し上げます。今回の件、我々の名誉にも関わることです」

アシュレイ卿夫人の声は静かだが、決して揺るがなかった。

「子を預けるにあたり、我々は“教育の中立性”と“倫理性”を第一に信頼してまいりました。それが、寄付金によって生徒の待遇が左右されたとなれば――これは、貴学院にとって破滅的ですわ」

マーサは答えなかった。
唇をきつく閉じ、視線を机の一点に落としたまま。

「保護者の一部からは、貴女に対して“辞任”を求める声も上がっております」

フェアグレイヴ夫人が冷静に告げる。

[165 ◆qcSQN4N5gc 25/07/08(火) 20:43:55]

「……そんな、愚かな……」

マーサは絞り出すように言った。

「あの子たちは、何も知らずに、正義面をして――私は、学院を守ろうと……」

「守るとは？」

アシュレイ卿夫人の目が細くなる。

「貴女が守ってきたのは、“秩序”かもしれません。しかし、それは“信用”の上に立っていた。今、崩れかけているのは、まさにその信用です」

マーサの背筋がわずかに揺れる。

「……ご再考を。もし貴女がこの場を立ち去ることで、学院が再び保護者からの信頼を取り戻すなら、それもまた校長の責務ではありませんか？」

しばしの沈黙。

そして、マーサはようやく椅子から立ち上がった。

彼女の目には、怒りでもなく、涙でもなく――空虚な諦念が宿っていた。

[166 ◆qcSQN4N5gc 25/07/08(火) 20:44:18]

「……わかりました。しばらく“療養”の名目で学院を離れます。正式な措置については、理事会の決定に従いましょう」

誰も、その決断に声を上げなかった。

マーサ・ミントンという“恐怖と秩序の象徴”は、この日を境に、学院の表舞台から静かに姿を消すこととなった。

⸻

一方、寮の片隅にて。

「校長先生、療養に出るって……本当なの？」

「ええ。きっと、全部が変わり始めるわ」

ソフィーの言葉に、リンジーとエヴァンジェリンは顔を見合わせた。
三人の少女たちが交わした視線には、はじめて――希望という色が宿っていた。

遠く、時計塔の鐘が鳴る。

その音は、長い静寂の終わりと、新たな章の始まりを告げていた。

[167 ◆qcSQN4N5gc 25/07/08(火) 20:45:45]

ひとまず敵(？)はいなくなりました。
正直終わっても良さそうですが、ミントン校長が去った学校での次の展開を、該当するレス下3つからダイス

[168 二次元好きの匿名さん 25/07/09(水) 02:37:20]

いつも通り

[169 二次元好きの匿名さん 25/07/09(水) 10:34:11]

なんか解放されたような感じ

[170 二次元好きの匿名さん 25/07/09(水) 10:35:00]

スカッと&さわやか

[171 ◆qcSQN4N5gc 25/07/09(水) 11:03:54]

1.>>168

2.>>169

3.>>170

dice1d3=3 (3)

[172 ◆qcSQN4N5gc 25/07/09(水) 11:05:48]

マーサ・ミントン校長が「療養」の名目で学院を離れてから数日後――ミントン女子学院には、これまでにない軽やかな空気が流れ始めていた。

校内を歩く教師たちの足取りはわずかに柔らかくなり、講堂に響く鐘の音も、どこか澄んで聞こえる。

そしてある朝、正門に一台の馬車が止まり、学院に新たな人間がやってきた。

臨時校長、エドマンド・ヘイスティングス氏。

もともとイートン校で高い教育的成果と“公平な運営”で知られていた人物で、厳格さの中にも親しみを忘れない紳士だった。
白髪交じりの頭髪に、快活な笑み。スーツは古風だが清潔で、彼の立ち居振る舞いには威圧感よりも温かさがあった。

[173 ◆qcSQN4N5gc 25/07/09(水) 11:06:29]

「まずは耳を傾けることから始めよう」

エドマンド氏の最初の言葉は、就任演説でも教師会議でもなかった。
彼は就任翌朝、自ら生徒食堂に顔を出し、生徒たちと同じテーブルで朝食を取ったのだ。

驚きに目を丸くする少女たちに、臨時校長はにこりと笑って言った。

「君たちの声を聞かずして、学院のことなど分かるはずがないでしょう？ まずは君たちの朝ごはんの好みから知るとしよう」

その場にいた誰もが――特に、ソフィーやリンジーのような中等部の生徒たちが――「校長先生が笑った」という事実に目を見張った。

[174 ◆qcSQN4N5gc 25/07/09(水) 11:06:48]

ある日、ソフィーが廊下でモップを持つベッツィーに声をかけた。

「ねえ、最近……ちょっと、雰囲気が変わったと思わない？」

ベッツィーはいつものようにモップを止めて、そっと目を細めた。

「ええ、思います。……でも、まだ信じ切れない自分もいます」

「うん……わかる。わたしも」

「でも……」

ベッツィーは、肩をすくめて笑った。

「この間、校長先生がわたしに“ありがとう”って言ったんです。目を見て」

ソフィーはその言葉に少し驚き、そして、笑った。

「それって……たったひとつの言葉だけど、すごく嬉しいね」

[175 ◆qcSQN4N5gc 25/07/09(水) 11:07:17]

学院は、まだ完全に変わったわけではない。
マーサ・ミントンの長年の体制で生まれた不信や差別は、いまだ名残を残していた。

けれど、扉は開いた。

少女たちが胸に秘めていた声が、少しずつ「語ってもいい」と思えるようになった。
教師たちも、自らの指導を見直し始めた。
そして、生徒たちは――「学院を愛する」ということの意味を、改めて学び始めていた。


ソフィーはその夜、机に向かってペンを走らせた。

《親愛なるお父さまへ
学院に、新しい風が吹いています。わたしは、毎日を前より少しだけ、安心して過ごせています……》

その文字には、ほんの少しの震えと、確かな希望があった。

[176 ◆qcSQN4N5gc 25/07/09(水) 11:07:49]

キリがいいですね
なので、このレスに♡3以上で続行させていただきます

[177 二次元好きの匿名さん 25/07/09(水) 20:37:22]

まだまだ

[179 二次元好きの匿名さん 25/07/10(木) 02:39:50]

どらぁ

[180 二次元好きの匿名さん 25/07/10(木) 11:02:24]

そろそろエンディングかな？

[181 二次元好きの匿名さん 25/07/10(木) 12:20:27]

>>176 に♡３つ以上集まらなければ >>175 がエンディングになって　集まったら新展開に移行するんだろ

ちなみに自分は押さない　キリがいいから

[182 二次元好きの匿名さん 25/07/10(木) 21:47:07]

じゃあこのまま完結といこうか

[183 ◆qcSQN4N5gc 25/07/10(木) 22:27:03]

スレ主としても、ここで完結がちょうどいいように思います。
後は落としていただいて大丈夫です。