【閲覧注意】広「完成した」【俺なら見ない】をハピエンに繋げたい

  • 1二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 05:55:10

    いやぁ、すごいいいものを読ませてもらった、読ませてもらったんですよ。でも、タイムリープものってなると、バッドエンドもいいけど、そこからやり直してのハッピーエンドもいけるんじゃないかってことでね、誠勝手ながら別人ではありますが、ハッピーエンド目指して続きを書かせていただく所存にございます。

    駄文、誤字脱字、元のSSとの設定の乖離、解釈違い等々あるとは思いますが、P広が笑っておわれるエンディング目指して、書かせて頂こうと思います。

  • 2二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 05:56:10
  • 3二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 05:58:45

     広は、その場から動くことが出来なかった。
    目の前の光景を、脳が理解することを拒んた。

     目の前に転がる真っ赤に染った物体が、プロデューサーであるなどと、悲しむ暇さえ捨てて、誓った趣味さえ捨てて、救おうとした最愛の人であるなどと、ましてやその命を奪うことにの自分自身が関与していたなど、一体誰が予想できようか。

     タイムマシンの研究をする中で、タイムパラドックスについて考証を行わなかった訳ではない。
     プロデューサーの死が、既にタイムマシンによる干渉を受けることを前提として成り立っているということを考えないほど、篠澤広は愚かではなかった。

     ただ、それでも研究を続けたのは、過去へ飛んだのは、恋ゆえの盲目、愛ゆえの狂気と言うほかなかった。この方法しか、救う道を見いだせなかったのだ。
     そんな広にとって、あまりにこの真実は残酷であった。

  • 4二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 06:03:11

    遠くから誰が呼んだか、パトカーのサイレンの音が聞こえてくる。
     人に注意を促すその音は、広の思考を無理やり引き戻した。

    (まずい、タイムマシンまで、逃げなきゃ)
     焦りが帰って冷静でいさせてくれた。今の広は、未来から来たこの世に存在しない人物、公権力に見つかるのは非常に都合が悪いのだ。
     幸いタイムマシンは現場からそう遠くない場所に隠してある。
     隠してあると言っても空き地に置いてあるだけなのだが、周囲の景色に合わせたホログラムにより、姿を完全に隠すことができるのだ。

     何とか辿り着き、周囲の人影を警戒してからタイムマシンへと乗り込む。

    (過去は、変えられなかった。それだけじゃくて、私が、私がプロデューサーを…)
    「ぷろでゅ…ご、ごめんなさ、違うの、わたしは……あぁ…ああぁぁあああ!!!!」
     遅れた理解が追いつき始めてきた。あの日に置いてきたはずの悲しみと共に広を責め立てる。
     久々に出せた感情表現は、やっとまともに出すことが出来た涙は、歓喜ではなく悲哀のもので、ただただこの狭い機会の中で泣き叫ぶことしか出来なかった。

  • 5二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 06:08:00

    どのくらいの時間がたっただろうか。広の涙も声も尽き果てた頃、広は再度思考をめぐらせる。
    (過去は、やっぱり変えられないのかな。)
     ここに来ても、やはり彼女は研究者であった。失敗に対して考察を行う。
    (プロデューサーが、事故に遭う日は確かに今日、この日だった。)
     再度、あの光景を思い出し吐き気を覚えるも、当時の資料を持ち出し、相違点がないか探してみる。

    (確かに、私はあの時、見間違いじゃなければ、私の事故が起こった時にはプロデューサーが事故が起こらないように、時間は稼げたはず。だったら…
     !やっぱり、事故を起こした車が、前は黒だったのに今回は白だった。)

     たかが車の色、されど車の色、確かに過去は変わっていた。過去は不変ではなく可変である。つまり、
    (可能性はゼロじゃない。今回は無理だっかもしれないけど、いつかプロデューサーを救える、いいや、絶対に救う。)

     広の目に光が再度灯った。慣れた手つきでタイムマシンへと数値を打ち込む。
     戻る先はもちろん数時間前。
     マシンが唸り声を上げ、視界が光に包まれる、時間跳躍の前兆だ。
    (プロデューサー、待ってて)
     ぎゅっと拳を握る力を強くする。そうして広は2度目の時間跳躍を行った。

  • 6二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 06:24:48

    目を開いて、タイムマシンの外に出る。と言っても景色が変わっている訳では無いので、1回目ほどの感動はない。
     時間を確認するためコンビニの中の時計を確認。
     確かに数時間前へと遡っていた。

     再度目指す、あの場所へ。
     恐怖で震える膝に、今度こそと鞭打って。

    「──見つけた」

     先程と変わらぬ場所に、その人は立っていた。
     先刻の姿とは違う、元気な姿で。
     得も言われぬ恐怖と衝動が、お腹の底から胸へ込み上げて、それは吐き気となって溢れてきそうになる。
     今度こそ上手くやれる。そうすれば、また話ができる。またあなたと、一緒に歩くことができる──、そう信じて。

  • 7二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 06:26:22

    服の袖で口元を拭った。
     吐きそうな成人女性に声をかけられるなんて救急案件だ。落ち込んでる場合じゃない。ちゃんと話をするために、笑っていないといけない。
     だから、今なお止めどなく湧き上がる感情をグッと抑え込んで、広は前を向いた。
     しかし、足が震えて、うまく歩けない。

    「ね、そこのお兄さん」

     振り返った彼の顔を見て、広はまた泣きそうになった。
     大好きな人が、また、そこに立っていた。

    「はい?俺ですか?」
     同じ反応を返す彼に、広もまた
    「うん、あなた。こんなところでなにしてるの?」
    と、返す。数年ぶりのプロデューサーの会話だ。一言一句違わず、広は暗記していた。

  • 8二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 06:38:36

    「マズい。もうこんな時間だ。すみません、俺もう行きます」
     腕時計をチラっと見た、彼がそう切り出す。
     先程は欲を出して引き止めてしまったために事故が起こった。だから、
    「うん、ごめんね、呼び止めて。その娘は幸せにするだ、よ?」
    今回はそう言い残して踵を返す。これで彼は救われるはずだ。

  • 9二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 06:48:52

    「ちょっと待ってください。」
    そう、後ろから呼びかけられ、振り向いた。
    その時、振り回された左手に、確かな引っ掛かりを覚えた。

    「あ​───」
    それは、彼の引き止める力と、私に残っていた進む力に引っ張られ、プツリと千切れた。

     嫌な予感がして彼の方へと視線を向けると、その後ろに大きな影が見えた。そんなはずは無い。ここは歩道だ。
     だが、そんな予想と裏腹にその大きな鉄の塊はゆっくり、ゆっくりと彼の方へと近づいている。
     クラクションの音が響く。
     誰かが悲鳴をあげた。
     何かに強い衝撃が加わって潰れるような音が聞こえた。
     目の前が、赤くなった

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 06:57:30

    2度目ということもあり、今度はすぐに逃げ出した。
    (なんで?どうして?あの場所に車が突っ込むような事故はなかったはず!それとも、プロデューサーの事故がなかったら本当は起こるはずだったもの?わからない、わからない、わからない、わからない!)
     だとしても、過去が変わったのは事実、だから、広にできることは、ひとつしか無かった。

  • 11二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 07:20:36

    目を開き、タイムマシンから出る。
    太陽の高さが同じだ。また戻ってきたと確信する。
     足早に、今度はさっきよりも早いタイミングでプロデューサーを探す。
    (いた)
     先程の場所からそう離れていない場所に、彼を発見する。

    「ね、そこのお兄さん」
    「はい?俺ですか?」
    「うん、あなた。良かったら少し話をしない、あそこの公園とかどう、かな?」
    「あいにく忙しいので、と言いたいところですが……あなたからは、何か不思議なものを感じます。俺の、一番大切な人と、よく似たなにかを」
    「うん、そうだね。」
    (あの場所さえ離せばきっと)

  • 12二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 07:32:08

    公園のベンチで並んで座って、同じような会話を楽しんだ。
    「って、マズい。もうこんな時間だ。すみません、俺もう行きます。」
    チラっと腕時計を見た彼がまたそう言う。
     せっかく場所を移したのだ。
     また同じ経路を通られてはなんの意味もない。

    「じゃあ、私も着いていく。目的地のすぐ手前まででいい。どう?」
     だから、一緒に行動してあの場所さえ避ければ…
    「いや、篠澤さんか……でも、わかりました。本当に手前で解散しますよ。ほら早くたってください時間がおしているので。」

  • 13二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 07:36:43

    このレスは削除されています

  • 14二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 07:39:58

     そう急かされるがまま立ち上がると、緊張がとけていたのか膝から力が抜け、崩れ落ちる。
    「危ない!」
    プロデューサーが素早く滑り込み、広を受け止める。が、その時、今度は広の右手に引っ掛かりを覚え、プツリと音がした。

     恐る恐る目を見開く。その右手には、千切れたミサンガが引っかかっていた。
     息が詰まる、いやそんなはずは無い。ここは公園だ、こんな所まで車が入ってくるわけが無い。大丈夫、この2回は偶然だ、ミサンガなんて非科学的なものに因果関係があるわけがない。だから、

  • 15二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 08:20:02

    頑張れ

  • 16二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 08:24:50

    みてるぞ

  • 17二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:20:56

    「うぐっ」
     突然、プロデューサーが呻き声をあげる。ハッとして顔を上げると、プロデューサーの背中に人影が見えた。

    「クソが!真昼間から!公園で!イチャつきやがって!俺なんか!俺なんかなぁ!」
     人影が、叫びながら両手をプロデューサーに振り下ろし、振り下ろされる度、プロデューサーのからだから力が抜けていくのがいやでもわかった。
     その両手の先はなにか光るものが持たれていた。そして、先程から聞こえる鈍い音、人影は刃物を持っていた。

     ヤケになり人影に体当たりすると、反撃されると思っていなかったのか、広でも体制を崩し転ばせることが出来た。

    同時に手放した刃物へと飛びつく。どこにでもあるような包丁だった。通り魔と言うやつなのだろうと今合点が行く。

    「な、なんだよ、武器を奪ったからっていい気になりやがって!覚えてやがれ!」
     獲物を失った通り魔は、その場からしっぽを巻いて逃げだした。慌てて広はプロデューサーへと駆け寄る。

  • 18二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:23:27

    「プロデューサー!?プロデューサー!?」
     そう呼びかけるも返事どころかなんの反応もない。恐る恐る首筋に手をやる。治験を行うこともあった。脈の測り方はわかっている。だから、わかってしまった。

    「まただ………また、なんだね………」

  • 19二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:24:28

    以下に、考察と対策のため、タイムトラベルの記録を残す。

    4回目

     立ち上がる時に躓かず、公園から一緒に歩くことに成功する。
     しかし、並行して歩いている際、車道側を歩くプロデューサーの手にあたり、ミサンガが千切れる。
     トラックからはみ出していた木材で頭部を強打し、死亡。
     以降車道近くを共に歩くのは危険なため避けるよう注意。


    6回目

     二人でカフェに入ることに成功。時間になっても無理を言って引き伸ばすことで脅威から遠ざけようとしたが、問答中にミサンガに手が当たり千切れる。
     隣の客がこぼしたドリンクの氷で足を滑らせ、机の角で頭部強打。頸椎骨折により死亡。
     タイムリミットを無理矢理伸ばすことは困難であるだろう。より強い理由を見つける等できるまでは、プロデューサーの次の予定を邪魔することは避けるよう。

  • 20二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:25:37

    10回目

     逆に次の予定に向かわせることにしてみる。行き先は初星学園であり、立ち話をしなければ、タイムリミットまでに到着することができるようだ。
     しかし、別れ際にまたしても呼び止められ、その際にミサンガが千切れる。
     初星学園の公用車が暴走。プロデューサーは引かれて死亡。
     次の予定とは過去の私とのレッスン、次回以降に行かせるかもしれない。


    57回目

     より過去に遡ってプロデューサーの行動を変えることを始めた。
     バスに乗って市外へ出ることを試みた。
     しかし、途中でバスが揺れた際、ミサンガに引っ掛かり、ミサンガが切れる。
     バスが信号無視した車に突っ込まれ、プロデューサーの乗っていた部分が潰される。私は衝撃で吹き飛ばされて怪我はなかったが、プロデューサーは死亡。
     この路線は危険と判断、以降避けるように。

  • 21二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:26:42

    256回目

     そもそもプロデューサーに接触しないようにしてみたが、気づいたら後ろにいてぶつかった。
     その時にミサンガが切れた。
     そうしたら近くの工事現場から、鉄柱が降ってきてプロデューサーを貫いた。プロデューサーは死んだ。
     会わないとどこから来るか分からない。制御のために合わないという選択肢はないと思う。


    753回目
     地下鉄で逃げてみた。
     待ってる時に列の人に押されて、ミサンガを千切ってしまった。
     プロデューサーが線路に落ちて引かれた。

    1570回目
     またミサンガを千切った。
     プロデューサーが死んだ。

    2698回目
     千切った。
     死んだ。

  • 22二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:29:45

    3856回目
     ダメだった。
     誰もいない何も無い場所だった。プロデューサーは何も出来ないように縛った。ほんの些細なミスだった。ミサンガは千切ってしまった。
     今度は心臓発作だった。今までの死因は全て外的要因だった。病気など、ましてや心臓発作など防げるはずがない。
     どうして救えない、どうしてミサンガをちぎってしまう、どうしてどこからでも死因が現れてくる。どうして!どうして!どうして!どうして!どうして!どうして!どうして!どうして!どうして!どうして!どうして!どうして!

  • 23二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:30:52

     このトラベルをもって、篠澤広の心は完全に砕けた。いや、とうに砕けていて、惰性がついに消えただけかもしれない。
     だが、ずっと付きまとっていた疑惑、『過去は、多少の差はあれど同じ結果に収束する』それが、確信へと変わってしまったのだ。

    (ごめん、プロデューサー。私には、救えないみたい。
     趣味なんかに逃げずに、ずっと研究してたら、救えたのかな。
     でもそうしたら、会えないね。あぁ、でもそうしたら死ななくて済むのかな。もうわかんないね。)
     過去に残る訳にもいかないため、元の時代に戻るタイムマシンの中で、広は感傷に浸る。不思議と涙は出なかった。幾重にもトラベルを繰り返すうち、原動力であった悲しみも枯れ果ててしまっていた。

  • 24二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:32:10

    なんか懐かしさを感じると思ったら、カゲロウデイズとか人生リセットボタンが頭をよぎるんだ

    頑張ってくれ広…

  • 25二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:34:22

    ちょっと前に見たスレを思い出すね。
    どう足掻いてもプロデューサーが死ぬから安価で未来を確定させていくやつ

  • 26二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:35:28

    >>24

    まさにその通りで、脳内ずっとカゲロウデイズが流れてます。

    あとたまにAmadeus

  • 27二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:40:34

    (戻ってきた。けど、プロデューサーもいない、研究も意味が無い。この世界になんの意味があるんだろうね。もう、終わりにしよう。)
     広は散らかった自室に入ると、棚の中から薬瓶をひとつ取り出す。いつぞや自暴自棄になって購入した安楽死用の毒薬。それを手に数粒取り出す。飲み込めば眠るようにこの生を終わらせることが出来るのだとか。
    「プロデューサー、今会いに行くね。」
    そう、机の上の写真立てに語りかける。

  • 28二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 12:43:23

    その時、ふと隣に置いてあった、デジタル時計の日付が目に止まる。20YY年X月X日
    (そっか、今日ってプロデューサーの命日だったんだ。)
     今までは、広にとって重要なのは、プロデューサーが死んだ日のみであったために、命日やその日の日付などどうでも良いことだったのだ。しかし、それも学Pを生き返らせると決めていた時の話
    (最後くらい参っておかないと、向こうで怒られちゃう、ね。)
     こうして広は、日本へと舞い戻るのだった。

  • 29二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 14:33:01

    このレスは削除されています

  • 30二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:21:49

    「ふふ、水入バケツが重くて持てない。まあ、なしでいいか許してくれるよねそれくらい。」
     広はプロデューサーの墓のある寺へと辿り着いた。辿り着いたと言っても場所を知らなかった訳ではない。プロデューサーの一族の眠る墓の場所は、生前に聞いていた。ただ、空港から迎える体力がなかっただけである。
    最後の力を振り絞って墓地を進んだ先に、プロデューサーとその祖先の眠る墓石を見つけた。

    「あった、ここにプロデューサーがいるんだ、ね。
    プロデューサー、ごめんね一度も、顔見せなくて。
     タイムマシンで生き返らせればいいやって、思って、頑張ってみたけど、無理だった。
     もしかしたら、これが原因でプロデューサーが事故にあったかもしれないって言ったら、本当に捨てられちゃう、かな。
     それだけは嫌、だな。私、頑張ったから、褒めて、欲しい、な。
     ねぇ、私どうしたら、良かったのかな。
     でもね、今からそっちに行くよ。海を隔ててるより、ここで死んだ方が、なんだか会えそうな、気がするね。」
     それだ言い残して、広はポケットから錠剤を取り出した。

  • 31二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:22:58

    「あ゙ー゙ー゙ー゙ー゙あ゙れ゙っ゙でびろ゙ぢゃ゙ん゙し゛ゃ゙な゙い゙!゙?゙」
     遠くから、耳をつんざくような大声が聞こえた。
    「は、花海さん!声が大きいですわー!」
     続いて別の負けず劣らず大きな声が。
     どちらの声も広にはとても懐かしい声だった。
    「佑芽と、千奈?」
    「わー!やっぱり広ちゃんだー!何年も会ってないけど、全然変わってないね!」
    「し、篠澤さん!ずぅぅぅっと会いたいと思っておりましたの!お待ちしておりましたわー!」
     それは、かつての旧友であり、ライバルの花海佑芽と倉本千奈であった。

  • 32二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:24:26

    「ひ、久しぶり。なんで、ここにいるの」
    「えー、だって今日は広ちゃんのプロデューサーさんの命日でしょ!?だから、お墓に行けばあえると思って!」
    「実は、毎年来ていましたのよ。たまたま会えたのは今年が初めてでしたが。」
    「そ、そうなんだ。ごめん、私、今日初めて来た。だから、出会えなくて当然。」
    「そ、そうでしたの。篠澤さん、プロデューサー様が亡くなられてすぐ、退学なされて、足取りがつかめなくなっておりましたから、皆、心配していましたのよ。」
    「でも、元気そうって言うには元気ないけど、まあそれがいつもの広ちゃんだよね!」
    「ごめん、2人には悪いとは思ってたけど、でもどうしてもやりたい、やらなきゃならないことがあって…」
    「ご安心なさってくださいまし、皆さん篠澤さんが何もなしに、あのようなことをする方ではないとわかっていますわ。」
    「きっと、私たちに言えないなんかすっごいことしてたんだよね。でも、友達なんだから、頼って欲しくはあったかな!」
    「本当に、ごめん。でも、これは私が自分の手でやりたいことだったから。」
    「わかりましたわ。そこまで言うのでしたら、これ以上私たちは何も聞きません。ですので、これから一緒にお食事に行きましょう。」
    「広ちゃんを連れていきたいところもあるしね!あ、もちろんプロデューサーさんにお参りしてからだよ!」
    (プロデューサー、最後にちょっとくらいいい、よね?)
    心の中で呟いて、握りしてた錠剤を再びポケットへと押し込んだ

  • 33二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:25:33

    昼食は、倉本邸で行われ、広は久々にまともな食事を口にした。食事中の会話は、広を気遣ってか2人の近況報告や、初星学園当時の話が多かった。広には、それがありがたく、暖かかった。
     そうして今、食事を終え、言われるがまま連れていかれている最中である。
    「それで、連れていきたい場所って?」
    「ふっふーん、それは着いてからのお楽しみだよ」
    「でもきっと、篠澤さんにとって悪い場所ではないと思いますわ。」
    その後もはぐらかされ、やっと車が停止した場所は、初星学園、プロデューサー寮。
    「千奈、もしかして…」
    「ええ、そのまさかですわ。」
    誘導された先、その部屋番号に広は見覚えがあった。むしろ見覚えしか無かった。だってそこは、プロデューサー寮で篠澤広が唯一住人を知っていた部屋
    「プロデューサーの、部屋……」
    「千奈ちゃんがね、広ちゃんあんなにプロデューサーさんのこと好きだったのに、広ちゃんが何も知らないまま全部捨てられちゃうのは可哀想だって、私たちで、学園長に頼んでこの一部屋は、次の人が入らないように交渉したんだ。」
    「中は、定期的にメイドたちに掃除させていますが、ほぼ、プロデューサー様が亡くなられた当時のものですわ。私たちは外で待っていますから、お好きになさってください。それでは。」
    そう言い残して、千奈と佑芽は寮の外へと姿を消した。

  • 34二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:26:50

     広はプロデューサーの部屋の前で立ちすくんでいた。
     この先に待つのは、かつてはあれほど焦がれたプロデューサーの自室。
     だが、今は、扉を開けるために手を伸ばしたいのに、鉛のように腕が動かない。
    (怖い、ね。これを開けると、ほんとにプロデューサーが死んじゃったんだって、分からせられる気がする。
     何度も何度も見てるのに、やっぱり怖い。まだ、プロデューサーの死を受け止めきれてない私がいるんだね。
     でも、千奈や佑芽の気持ちも無駄にしたくないし、何より、私自身受け入れなきゃ、死んでも会えるわけないか。)
     すぅ、と小さく息を吸い、意を決して扉に手をかける。
     扉はその重厚な見た目と広の決心に対し、いとも簡単に広を迎え入れた。

  • 35二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:27:53

    「プロデューサーの部屋、何も変わってない、ね。」
     いつぞやに無理やり入った時の記憶と照らし合わせる。
     一部参考書や資料などが増えている気もするが、そのほかで変わったような場所は見つけられない。
     いつ見ても味気ない部屋だ。
    (もう少し、私色に染めるつもりだったのになぁ)
     そんな後悔をしながら、部屋を散策する。

  • 36二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:28:54

    作業机の本棚の見えるところに、レポートが置いてあった。
    レポートのアイドルは篠澤広、つまり自分についてのレポートだ。
    (プロデューサー、私の事、どう書いてあったんだろう。)
    そんな好奇心から、レポートをめくる。
    (ふふ、私の能力、低すぎる
     なぜプロデュースを引き受けてしまったのかって、プロデューサーが私にひとめぼれしたのに。レポートでも素直じゃない。
     わ、この時から昔のこと使わないつもりだったんだ、プロデューサー私のことわかってる。
     うん、この時のライブ、凄かった)
     そんな風に、レポートを読み返しながら思い出を振り返る。
    (やっぱり、もっとアイドルやってたかったなぁ。プロデューサーの夢、一緒に叶えたかった……)
    「プロデューサー………」
     視界が歪む、これは泣いているのだと、すぐには気づけなかった。涙などとうに枯れて泣くことなど忘れたものだと思っていた。
    (悔しいな、私まだ泣けるんだ。プロデューサーのこと、やっぱり諦められないや。)

  • 37二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:30:44

    その後いくらか探索したあと、広は寮を後にした。
     寮の前に停められた車の中で眠っている千奈に声をかける。
    「千奈、ただいま。」
    「し、篠澤さん!?失礼いたしました。つい陽射しが暖かくて。もう、大丈夫ですの?」
    「うん、もう大丈夫。ありがとう千奈。」
    「いえ、友達のためですもの。それと、よろしければこちらを。辛いものになるのはわかっているのですが…」
     千奈が取りだしたのは3色のミサンガ
    「これ……」
    「はい、篠澤さんが、プロデューサー様にプレゼントしたミサンガですわ。当時着ていた服などは、ご両親の元に行くことになったのですが、こちらだけは、篠澤さんにと思い、無茶を聞いてもらいましたの。」
    「そう、なんだ。何から何まで、ありがとうね千奈。」
    「何度も申し上げますが、友達のため当然ですわ。」
    「…は!もちろん私も友達だから何でもするよ広ちゃん!」
    唐突に目覚めた佑芽も続ける。
    「うん、2人ともありがとう。今日は2人のおかげでやるべきことが見えた気がする。ありがとう。じゃあ、私海外のラボにやることできたからもう行くね」
    「ええ、篠澤さんまた、お会いしましょう」
    「広ちゃんまたねー!」
    「さよなら、千奈、佑芽」

  • 38二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:32:09

    広は再びタイムマシンへと乗り込んでいた。もちろん目指す日付は20XX年XX月XX日
    (プロデューサーを救うために、試せることがまだひとつ残ってた。
     もし、あの日に決まっている運命がプロデューサーが死ぬのではなく、あくまで誰か一人が死ぬということになっているなら。
     だとするなら、私がプロデューサーの身代わりにして、プロデューサーが生きてる世界にすることができる。
     ずっとプロデューサーが、生きてさえいればいいと思ってた。
     でも違う、私はプロデューサーとアイドルとしてプロデューサーの夢を一緒に叶えたい。
    そのためなら、今の私はいなくてもいい。悔しいけど、その役目はきっと過去の私が果たしてくれる。だから………)
    だから、覚悟を決めて、タイムマシンを作動させる。
    機械がうねり声を上げ視界がが光に……

    ビービービー

    唐突にブザーが鳴り響く。
    「な、システムエラー!?なんでこんな時に。まさか、大量のトラベルの後に年単位で飛んだからその時にどこかに不具合が……まずい、止まらな……」
    広の言葉をさえぎって、タイムマシンは強行でトラベルを敢行するのだった。

  • 39二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:34:16

    次に目を覚ました時、そこはベッドの上だった。
    「どこだっけここ、すごく見覚えが……」
    「俺の部屋ですよ、篠澤さん」
    横から声がする。
    「なるほど、私は常連だったもんねって、プロデューサー……!?」
     広は目を見開いた。理由も何も今話しかけられたのは、救うためにずっと奔走してきたプロデューサーその人であり、自分が篠澤であると認識されているのである。
     バッと自分の体を確認してもエラーの代償で縮んでいたりする様子もない。少し成長した姿のままだ。
    「どうしてわかったのかって顔ですね。ということはやはり篠澤さんなんですね。あなたも。」
    「どういう、こと。」
    「それを聞きたいのは俺の方です。歩いていたら目の前に妙な機会が突然落ちてき来て、中にあなたがいたんですよ。
    最初は、何となく雰囲気の似た人くらいの気持ちでしたが、これを見て確信しました。」
     そう言う彼の手には、3色のミサンガが握られていた。
    「あなたの手に握られてました。1度結んで千切れてはいますが、俺はこのミサンガをよく知っています。」
     そう言って左手を掲げ、その手首のマーキング見せびらかす。
    「これは確かに、今日俺が篠澤さんから貰ったものです。見間違えるわけが無い。ですから、信じられないことですが、あなたも篠澤さん、なんですね?」

  • 40二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:35:18

    「同じようなミサンガってだけなのに、すごい自信。さすがプロデューサー、私のこと大好き。」
    「やはり、そうでしたか。篠澤さん、あなたには本当に驚かされる。で、あなたはどういう存在なんですか?」
    「私は、未来から来た篠澤広。変な機械、あれはタイムマシン。私が発明してこの時代にタイムトラベルしてきた。」
    「信じられないですが、あなたならできるのでしょうね。どうしてこの時間に。」
    「私より年下のプロデューサーに会いに来た。日付が今日なのはたまたま。良かったら広お姉さんって呼んでもいい、よ?」
    「呼びません!はぁ、ありえなくもないとは思っていたとはいえ、タイムマシン…ですか。あなたを回収した後、一応回収して、普段使われていない倉庫に隠しておきましたが、」
    「うん、さすがプロデューサー」
    「はぁ、満足したら帰ってくださいね。未来人間なんて、面倒事の種でしかない。」
    「うん、わかってる。そんなに長くはいないつもりだよ。」

  • 41二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:36:23

    「それと、これはお返しします。手、出してください。」
     言われるがままに左手を差し出すと、学Pが近づいてきて、先程まで手を持っていたミサンガを手首に結んだ。
    「一度千切れたミサンガのようなので、縁起はないとは思いますが、あなたの場合落としたりしそうですからね、付けていてください。」
    「ふふ、自分とお揃いにしたいなんて、プロデューサーも可愛いところある…ね。」
    「違います、無くさないためです。」
    「だったら右手でも良かった。」
    「それは…篠澤さんが差し出したので」
    「だから、広お姉さんって」
    「呼びません!」
     
     懐かしい雰囲気、ここに来た目的なんて忘れて、ずっとこのまま二人でいれたらいいのに、とさえ願ってしまうほどであった。
     しかし、それが叶わないことは、もう既に思い知らされている。
     (最後を覚悟してきたのに、この展開は、本当に世の中はままならない)

  • 42二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:37:53

    このレスは削除されています

  • 43二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:39:37

    「プロデューサー、タイムマシンの状態がみたい。」
    「あなた、今自分の立場わかってますか?」
    「大丈夫、プロデューサーが想像してるようなことは、このくらいじゃ起こらない。」
    「ですが…」
    「むしろ今の状況の方が問題。未来の篠澤広とはいえ、担当アイドル以外の女性を部屋に連れ込んでる。これがバレる方が一大事。」
    「くっ、それは……確かに……」
    「じゃあ、直ぐに向かおう。場合によってパーツを買わなくちゃいけない。」 
    「はぁ、そうですねわかりました。行きましょうか。」

  • 44二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:41:32

    他愛のない会話をしながら、タイムマシンの隠し場所を教えてもらう。軽く動作確認をするが、不具合を出しながらのトラベルと、不時着の影響で完全に壊れていた。この時代での修復は不可能だろう。
    「どうですか、篠澤さん。」
    「うん、今は少し壊れてるけど、この時代の部品で直せる。帰ろうと思えばいつでも帰れる…よ。じゃあ、その部品を探すためにも、買い物に行こう。」
    「だからあなたが出歩くのは」
    「大丈夫、そこまで貴重なものじゃないし、アテはついてるついてきて欲しい。」
    「はぁ、わかりました」
     タイムマシンはもう使えない。つまり今までのようにミスをしても、やり直せない。今回は一発勝負だ。だから、絶対に、確実に、プロデューサーの代わりになって死ななければならない。
    「こっちの方だよ。」
     私が目指す場所は、最も多くのパターンを試した場所、最初の道へ歩みを進めた。

  • 45二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:42:34

    ああ、あの場所があの時間が近づくのを感じる。こっちに来る前に覚悟は決めてきたのにな。ずるいよ、『アイドル、篠澤広のプロデューサー』は、過去の自分に譲ったつもりだったのに。
     ね、もう少し話そうよ。もう少しだけ。
     だからといって、時間が短くなることはない。時は残酷なまでに平等だ。
    「って、マズい。もうこんな時間だ。すみません、俺もう行かなきゃ行けない場所が」
     うん、そうだね。プロデューサーがそう言う。そして、
    「仕方ない、よ。私は1人でも大丈夫だから、今の私をよろしく、ね?」
    私が引き止めず、踵を返す。
    「ちょっと、待ってください」
    するとなにか伝えたいことがあるのか、彼は引き留めようとする。

    そして、トラックが突っ込んでくる……

  • 46二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:43:51

    やることは至って簡単だ。私が変わりになるだけ。火事場の馬鹿力とはよく言ったもので、全力をもって振り返ってプロデューサーを突き飛ばすと、プロデューサーの体は、トラックの前から吹き飛んだ。
     対して私の体はトラックの進行方向目の前。
     あぁ、やった。やっぱり、この仮説は間違いじゃなかった。これでプロデューサーは生き残る。
    (プロデューサー、ずっと、『私』の隣にいてね。)
     ミサンガにそう、願いを込めて。そっと目を瞑った。

  • 47二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:46:24

    (トラックがゆっくりと迫ってくるのがわかる。痛いのかな、それとも何も感じないのかな。でもやっぱり死ぬのは怖いな。)
     が、何かに手を包まれた感触に、またすぐ目を開くことになる。
     目線の先、突き飛ばすために伸ばした私の手がプロデューサーに掴まれていた。
    (まさか、助けようとしてる?無理だよ。今日この日この時間この場所で、誰がが死ぬ運命。だから私はここで……)
     違和感に気づく、動く方向がおかしい。普通に助けようとするならば、この体は、まっすぐと、プロデューサーの方に引き寄せられていくはずだ。
    だが、今私はどちらに動こうとしている?少しずつ少しずつ、繋いだ手を軸に回転が始まろうとしている。
    (待って!プロデューサー!それじゃ、意味が無い!私は、死んでもいい、どうなってもいいから、それだけは!)
     そう願うも広の軽い体はあっという間に半回転し、プロデューサーと広の位置関係が入れ替わった

  • 48二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:47:25

    また、変わらなかった。
     彼の体に、スローモーションのように車が近づく、ゆっくり、ゆっくり。
     彼が手を離した、私の握力では掴んでいることが出来なかった。
     離した彼の指先がなにかに引っかかる。それは、私の倒れる勢いに引っ張られるようにプツリと切れた。
     クラクションの音が響く。
     誰かが悲鳴をあげた。
     何かに強い衝撃が加わって潰れるような音が聞こえた。

     私はそのまま倒れ込んで、手の甲にはらりと落ちた、私の手首にあった千切れたミサンガをみて、立ち上がることが出来なかった。
     もう、やり直すことは出来ない。ここで死ぬべきは私だったのに。
    今度こそ、彼を私は────。

  • 49二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:55:12

    「ごめんなさい、ごめんなさいぷろでゅーさー、私がかわりに、代わりに死ぬつもりだったのに…」
    「すみません…勝手に殺さないで貰えますか?」
    聞こえた声にハッと顔を上げる
    「アイドルを守るのもプロデューサの役目です…それを代わりになんて絶対言わないでください。」
    「プロデューサ!!な、なんで、なんで生きて…」
    「なんでって、死んだ方が良かったですか?」
    「そうじゃ、ない…けど」
    「大丈夫、わかってますよ。ただ、このままだと本当に死にそうなんで、救急車、読んで貰ってもいいですか?ポケット懐にスマホが入ってます。」
    「あ、えと、なん、なんていえば…」
    「わかりました、だったら電話だけ繋げて頭の近くに置いてください。俺が話しますんで。体は痛くて動きませんが、意識はちゃんとしていますから。」

  • 50二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:56:50

    ガラリ、と音を立てて扉を開いた。
    「来ましたか、篠澤さん。」
    ベットの上で横たわるプロデューサーが呼びかけてくる。
    「怪我はどう…だった?」
    「色んなところの骨が折れてるみたいで、寝たきりから戻るのに2、3ヶ月、そこからリハビリも挟むそうです。」
    「その、ごめんなさい。私のせいで」
    「あれはただの事故です。篠澤さんが気に病むことではありません。と言いたいのですが、そうでも無いのでしょう?あなたさえ良ければ話して貰えませんか?」
    たどたどしくも、広は話し始める。これまで自ら辿ってきた足取りを、後悔を、懺悔を。
    「辛い道のりでしたね、なんて在り来りな言葉しか、俺には言うことができません。ですが、これだけは言わないといけないということは分かります。お疲れ様でした。そして、ありがとう。」

  • 51二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:57:57

    「ッッッ……プロデューサー、私できたの?プロデューサーを助けられたの?……」
    「ははは、今更でしょう。さっきからずっと話してるんですから。」
    「でも、でも、何故かやっと、助けられたんだって。」
    「でしたらほら」
    プロデューサーが左手を差し出す。
     幸い怪我が少なく、包帯もあまり巻かれていない部分だ。
     差し出された手を、広はゆっくりと両手で包む。
    「うん、プロデューサーの温もりがする。本当に生きてる。ごめん、プロデューサー…あのね、」
    「いいですよ、そこまでデリカシーのないつもりではありませんので。」
     その言葉を皮切りに、広はわっと泣き出した。この感情は、言葉で表せるようなものではなかった。
     ただ、目の前に映るその姿が、聞こえるその声が、鼻腔をくすぐる香りが、肌を伝わる温もりが、その全てがこの感情を掻き立てるのだけは確かだった。

  • 52二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 15:58:57

    「落ち着きましたか?」
    「うん、ごめんね。恥ずかしいとこ見られちゃった。お嫁に行けない、ね。」
    「今更でしょう。あなたの醜態など。」
    「酷い、女の子が気にしてるのに。イタッ」
    唐突にプロデューサーがデコピンをする
    「いきなりデコピンなんて、プロデューサーもわかってきたね。」
    「違いますよ、そういうのではありません。
     助けて貰って言える義理ではありませんが、最後の、自分を犠牲にするのだけは、それだけは許せません。
     だからお仕置です。
     そんなこと、いえ考えることすら、二度としないでください。
     あなたを犠牲にして生きるなんて、俺には耐えられませんから…」
    「やっぱり、プロデューサーは私のこと大好きだね」
    「そうですよ、忘れないでくださいね。」
    「えぇ⋯⋯ぇえぇ⋯⋯ぇ⋯⋯⋯⋯っ」
    「なんですか?いつも自分で言っていることでしょう?」
    「き、今日のプロデューサーはやけに素直。いつもなら『は?俺が、あなたを?冗談でしょう』って言うところなのに」
    「その程度では、あなたは自分が犠牲になってもいいと思ってしまうようですので、少しは素直に伝えようと思いまして。」
    「うぅ、もうしないから控えて欲しい。心臓に悪い。」
    「まあ、少しは努力します。」
    「むぅ……」

  • 53二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 16:00:00

    「そーいえば、未来へどうやって帰るんですか?タイムマシン、壊れて直せないんでしょう?このままだとこの時代に篠澤さんが二人いることになりますが。」
    「うん、それなんだけどね、多分大丈夫だと思う。プロデューサーが生きてるから、私が過去に行く理由がなくなって、そもそも私が来ないようになるから、居なくなる…はずだよ。」
    「はずって、でも実際、あなたは居なくならずにここに居るじゃないですか。」
    「そうなんだけどね、なんだかそんな確信がある。それも、もう少ししか無さそう。」
    「なっ、だからそういうことは早く」
    「ごめん、ね。でも、今そう感じたの。」
    「はぁ〜、わかりました。ですが、居なくなるというのは、あなたは消えてしまうのですか?結局俺の代わりという形で。」
    「違う、と思う。私はただ、元いた場所に戻るだけ。だから、きっとまた会える、よ。プロデューサーが私を見捨てるなら、また別だけど。」
    「するはずがないでしょう。まだ足りませんでしたか。」
    「ううん、ただ、これから来る『私』にイタズラしたいだけ。だからこの答えは『私』ね。」
    「全く、あなたという人は、成長しても変わらないのですね。」
    「ふふふ、そうだよ。じゃあね、また未来でプロデ…「プロデューサー!」

  • 54二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 16:01:10

    篠澤広の言葉を遮って、プロデューサーの名前を叫びながらドアを開けたのは、彼の担当アイドル『篠澤広』であった。
    「おや、篠澤さんよく倒れずに来れましたね。」
    「今は…冗談言ってる場合じゃない。プロデューサー、轢かれたって聞いて、私…私…」
    「ほらこの通り生きてますから、落ち着いてください。」
    「う、うん。プロデューサー、無事で良かった、よ。」
    「ええ、俺も篠澤さんに体力が少しはついたようで嬉しいです。」
    「だから、冗談は⋯⋯あれ?いるのプロデューサーだけ?入口で話し声がした、よ?…」
    「いえ、『篠澤さん』以外来ていませんよこの部屋には。聞き間違いでしょう」
    「納得いかないけど、他に人は居なさそうだし、そうなのかな。」

  • 55二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 16:02:24

    「あれ?プロデューサー、ミサンガどうしたの左手に付いてない。」
    「あれ、事故の時に千切れたんですかね。」
    「あ、ベッドの下に落ちてる。ってことは、ここに来てから自然に切れたんだね。まさか1日で自然に切れるなんて。ミサンガ、ままならないね。」
    「ミサンガで喜ばないでください。それにちぎれた方が縁起が良いものでしょうこれは。」
    「そうだったね。プロデューサー、『ずっとあなたの隣にいられますように』だっけ、かきっと叶うね。」
    「そうですね、たしかにずっと『篠澤さん』の隣だ。ハハハ」
    「?何かおかしいこと言った?もしかしてもうすぐ捨てられるのにこの女は、とか思ってる?」
    「いいえ、俺は絶対にあなたを捨てません、俺はあなたと一緒に最後まで、趣味を生きると決めましたから。」
    「き、今日のプロデューサー……グイグイくる、ね?」
    「イタズラですよ」
    「じゃあやっぱり私捨てられる?」
    「それは断じて違います。イタズラでも絶対にあなたを悲しませるようなことはしません。」
    「〜〜~////やっぱり今日のプロデューサー、何か変。なにか後遺症が残ってる。検査した方がいい。」
    「そんなことはありません、体以外は至って健常ですよ。」
    「か、からかうなら帰っちゃう、よ?」
    「そうなったら、ミサンガのお願いが叶わないことになってしまいますね。ずっと隣にいてくれるんでしょう?」
    「ッ~~~き、今日は帰る!ミサンガのは明日からだ、よ!」
    そそくさと広は病室を後にする。
    「ハハ、ちょっとイタズラがすぎたかな。」

  • 56二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 16:03:32

    ちょっとオマケ

    ゆっくりと瞼を開ける。隙間から入る光が眩しい。ここは一体どこだろう。段々と光が馴染んできて輪郭がはっきりとしてくる。
     目の前には、見たことの無い部屋が拡がっていた。
    「どこだろう、ここ」
    (確かプロデューサーの病室で別れを告げて、それで⋯)
    「広、やっと起きたか」
    ぼーっと考えていると後ろから声が呼ばれる。
    振り向いて顔を見てみると、見たことある、それでいて少し渋みをました顔があった。
    「もしかして、プロデューサー…であってる?」
    「おいおい、ボケるのはまだ早いぞ。ほら、早くしないと遅れるから、着替えてご飯っておっと」
    「プロデューサー、プロデューサーだぁ…」
    「どうしたんだよいきなり抱きついて。」
    「ちょっとね、怖い夢を見てたみたい。だから、少しだけこうさせて」
    「全く、今更だろ?遠慮せず好きなだけ抱きついていいぞ。」

  • 57二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 16:09:47

    あとがき
    なんか、もっとコンパクトにまとめるつもりだったのに、冗長になってしまった。読みにくかったら本当にすみません。
    話の大まかな流れとしては、ミサンガが切れる、事故が起こる、この事象に終結した上で、学Pの死という結果を変えるにはどうするか、と考えた時に、ミサンガが切れたことによる反転で学Pが死ぬ未来になってきさいるので、ミサンガは切れてしまうけど、それは未来で1度切れたミサンガで、効力はないものだったとすることで、ゴリ押しで学Pを生かした形になります。
    もっと解説とか上手いこと入れたかったんだけど、本当に駄文でね。上手いこと入れられなかったんです。
    晴らしたいとか言っときながらほとんど曇らせに使ってるしね。
    お付き合いいただきありがとうございました。

  • 58二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 16:13:11

    あーー。確定していた運命は「誰か死ぬ」ではなく「ミサンガが切れる」だったのか。
    だから未来広ではなく、意味のないミサンガを身代わりにするのが最適解だったと。

    お疲れ様でした。広さんが幸せになれて良かった!!

  • 59二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 16:16:30

    >>58

    ですです、元スレの方に、ミサンガが自然じゃない切れかたすると、願いとは反対のことが怒っちゃうと書いてあったので、学Pの死を勝手にミサンガのせいにさせていただいて、って感じですね

  • 60二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 16:27:08

    このレスは削除されています

  • 61二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 16:28:19

    元スレの1です。
    一言だけいいですか……。

    ありがとうございます涙。

    なんか昨日今日謎に肩身狭かった僕の心まで晴れました。


    ありがとうございます涙。

  • 62二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 17:24:44

    >>61

    なんか、肩身狭くさせてしまってすみません

    ホンマにええ舞台設定で、勝手に広げてしまって

    気に入って貰えたみたいで良かったです。

  • 63二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 18:05:01

    このレスは削除されています

  • 642725/06/27(金) 18:06:04

    >>61

    どうせルール守れない輩の戯言だよ

    少なくとも応援してる人間がここにいる


    スレ主さんすまない、感想は改めて読み返して書きます

    今はこれだけ言いたくて…

  • 65二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 19:13:37

    このレスは削除されています

  • 66二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 19:19:36

    >>64

    ありがとう。


    >>62

    俺のできなかった救済をしてくれてありがとうです本当に。

    また気が向いたら……|´-`)チラッ

  • 67二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 21:38:17

    >>66

    そうですね、元スレ主の、作品は全部読ませてはいただいているのですが、あまり、期待はせず待っていてください。

    何せ私想像力皆無なもので、基本自分から書けないんですよね。

    今回のも、わかる人にはわかると思うんですけど、ほぼシュタゲなんですよ。

    たまたま、元スレでシュタゲって書いてくれた人が居たから何とかなった感じなので。

  • 68二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 23:09:35

    以下、元スレ主or別スレ主でも
    曇らせをどう晴らすか考えるスレ

  • 69二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 23:16:06

    ミサンガが切れる事が原因と気付けてるから「ミサンガを渡さない」「こっそり強化する」みたいな方向の干渉をラストでするのかと個人的に思ってた。
    でも広が救われるならどのルートでも勿論歓迎です(グッ)

  • 702725/06/28(土) 00:18:03

    自分のミサンガと一緒に地獄の無限ループを断ち切ったんやな…報われてよかった…

  • 71二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 00:27:22

    >>69

     分かりにくくてすみません。広の中で、ミサンガが切れることが原因であるとは気づいてない設定です。

     記録や3回目の時にミサンガを気にしているのは、必ずミサンガが切れてからプロデューサが死ぬので、広の中でミサンガが切れることは、プロデューサが死ぬ前兆だと思っているからですね。

     本当はミサンガが切れることが原因だけど、あくまで前兆で、原因ではないと思っているから、最後のループでも、ミサンガが切れるのを止めるのではなく、広自身はプロデューサが死ぬのを自分が身代わりになって止めようとしています。

     メタい話をすると、先にミサンガの結末ありきで話を組み立てていったので、描写しない訳にもいかず、その結果広が気づいてるように見えてしまう感じになってしまったかもしれないです。

     広が自分で気づいて試行錯誤する展開も考えはしたんですけどね、個人的なハピエンの好みとして、理屈はちょっと無理やりでも最低限に、友情・努力・勝利の奇跡が好きなので、広が最後まで諦めなかったこと。千奈佑芽の友情。そして、学Pの広への愛故に、この結末にたどり着けたとそうしたかったんです。

  • 72二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 00:51:34

    まじで感動したよ涙出たよ
    広…幸せに…

  • 73二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 09:29:55

    数日後
    今日もまた、病室の扉が開く
    「篠澤さん、今日もですか?少ない体力を使って毎日来るくらいならレッスンを⋯」
    「ざんねん、愛しの担当アイドルではなく、あさり先生ですよー」
    「な!あさり先生。い、今のは篠澤さんには……」
    「フフ、担当との仲は良好なようで安心しました。」
    「そ、それで一体何故わざわざ」
    「それは、教え子が怪我をしてるんですからお見舞いに来たんですよ。」
    「そ、それはありがとうございます。」
    「あと、入院中でもできることはあります。その辺のレジュメや機材の差し入れです。もちろん病院に許可はとってあります。中身は1番上の紙に書いてあるのでよく読んでおいてくださいね。」
    「重ねて、ありがとうございます。」
    「まあ、このあたりはついで、なんですけどね。」
    「はい?」
    「今日来た本来の目的は、また別にあります。」
    ごくり、とプロデューサは息を飲んだ。
    「備品倉庫に置いてある謎の機械、あれ置いたのプロデューサ君ですね。」
    「は?」

  • 74二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 09:55:59

    あさり先生の話を聞くに、タイムマシンを隠した倉庫、本来ほとんど人が来ない場所なのだが、あさり先生が講義資料にと過去のライブグッズを確認しに行ったところ、偶然発見。
     監視カメラで確認したところ、運び込む俺が映っていたとの事だった。
    「一体なんなんですかあれは。危険物では無いですよね。」
    「あれは、その⋯ですね。」
    (壊れてるとはいえ、タイムマシンとは言えないよなぁ。)
    「じ、実は、篠澤さんが、趣味で作ってるものなので、俺はよく知らないんですよ、ハハハ…」
    「篠澤さんが、ですか?」
    「えぇ、大学の頃からよく分からないメカをひとりでよく作ったりしてたようで、今回は思ったより大作になったようで、俺の寮やアイドル寮にも置けないということで、勝手に。本当は後で許可を取るつもりだったんですが、何せ、ねぇ?」
     察してくれと言わんばかりに、プロデューサはギプスを巻いた右腕を持ち上げる。
    「なるほど、わかりました。とにかく危険物、などではないのですね。」
    「それはもちろん!そこの確認はしてます!」
    「でしたら、一応お咎めなしということにしておきます。たしかにあの倉庫は常に持て余してますからね。今後も置いておいていいですよ。」
    「あさり先生、ありがとうございます!」
    「それじゃ、先生は学園に戻ります。安静にしつつ、勉学に励んでくださいね。」
    「もちろんです。」
    「それでは」
    扉が閉まってからプロデューサは胸を撫で下ろす。
    「うーん、何とか、誤魔化せたかな。さて、タイムマシンの処理とかどうしたらいいんだ?勝手に分解したら爆発とか普通に有り得るよなぁ。」
    (まあ、今はここから動けないし、退院してから本格的に動くか。)

  • 75二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 10:08:19

    学園にて
    「あ、篠澤さん」
    「あさり先生だ、何か用?」
    「備品倉庫に置いてある機械ですが、さっきあの部屋に行ってみたら、照明の調子が悪かったので、運び出す時などは足元に気をつけてくださいね。それでは。」
    「備品倉庫の機械って何?⋯って行っちゃった。」

    備品倉庫
    「備品倉庫の機械って、これのこと?」
     備品倉庫の暗がりの奥に、周囲のグッズや照明とは明らかに異質な機会がひとつ、鎮座していた。
    (なんだろう、これ)
     広は、謎の機械を隅々まで見て回る。
     その機械を初めて見るはずなのに、何故かとても既視感があった。
    「わっ」
     なにかのボタンを押すと、扉が開き、中が明らかになる。そして、その中に人が乗れる構造。コンソールを見て疑念が確信に変わった。
    (これ、タイムマシンだ。)
     大学研究室にいた時代、研究室のメンバーと息抜きで、遊びで考えてみたタイムマシンの基本構造、それに細部は違えど酷似していたのだ。


    という訳で、せっかくの休日だし、暇つぶしにタイムマシン動乱編(仮)開幕です。
    基本ギャグテイストの後日談にするつもりです。

  • 76二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 16:08:04

    面白そう

  • 77二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:36:50

    「よし、これで多分大丈夫なはず。」
     ふう、と大きく息をついた。タイムマシンを見つけてからおよそ数日と言ったところだろうか。
     軽く解体して、中を確認したところ、現代の部品を幾らか組み合わせれば、おそらく修復が可能という結論に、広は至った。
     そうしてこの数日、プロデューサには黙って自主レッスンの代わりに、タイムマシンの修復に勤しんだというわけである。
     「これが、起動ボタンのはず。」
     カチリ、と軽快な音を立てて、マシンから低い唸り声が聞こえてきた。
     おそらく操縦席と思われる場所に顔を入れると、モニターに何やら難解な文字が浮かんでいる。が、それは広にとっては小説を読むのと大差ない内容であった。
    「よし、大体のチェックは完了⋯かな?異常らしい異常も見つからない。あとは、ここにトラベル先の時間と場所の座標を打ち込めばいいはず、なんだけど困ったね。」
     うーん、とまた考え出す。
    (おそらく設計思想が同じなら、特定の基準となる座標を設定して、そこからの相対的な位置で、ここに打ち込む座標を決定するはず。でもその基準となる数値が、わからない。)
     うーん、と悩みながらいじってみる。
     少しOSの方をいじってみると、入力した座標の履歴が残っているのを発見した。
    (おそらく、1番新しい座標が、この時代のもの。となると、もう一つ前のを入力すれば。)
     入力が終わると同時に唸り声は大きくなる。
    「おぉ、動いた!」
     捨てたとはいえ元は学者、タイムマシンという1つの人類の夢の果てに、興奮せざるを得なかった。
     そして、広の視界は光に包まれた。

  • 78二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 08:02:32

    思ったより進みが遅い

  • 79二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 09:14:17

    きっと時間旅行をしているから現代へ反映されるまでラグがあるのでしょう

  • 80二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 17:53:17

    ほし

  • 81二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 18:37:22

    >>80

    保守感謝です


    >>79

    すみません>>78は、俺です。

    いやぁ、案外書く手が進まなくてですね。

    保守ついでに愚痴っちゃいました。

  • 82二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 18:51:14

    >>81

    おう頑張って続き書いてね

  • 83二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 18:59:32

    ちなみに先に言います。嫌いな人がいたら申し訳ありません。
    オリキャラが出てきます。名前はコバヤシ君です。
    名前の由来は今Fate/Zeroをもう一度見ているからです。

  • 84二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 19:25:29

    「⋯⋯い、⋯ーい、おーい、大丈夫ですか?」
     誰かの呼びかけと、体を揺さぶられる感覚に、少しずつ目を開ける。
    「あれ、ここは」
    「よかった、目が覚めたね。自分が誰だかわかる?」
    「私、私は篠澤広⋯」
    「シノサワヒロ⋯⋯本当に?」
    「うん、嘘はつかない。」
    「奇妙な縁もあるものだね、見た目も少し似てるし⋯⋯」
    「ところであなたは。」
    「俺?俺はコバヤシ、ここ○○研究室で研究員をやっているものだ。」
    「え、本当?」
    「同じだよ、ここで嘘なんかつかない。」
    (○○研究所、私が大学時代所属していたところだ。それに、)
    「コバヤシって、コバヤシテツジ?」
    「そ、そうだけどなんで知って⋯やっぱりシノサワヒロって、あのシノサワヒロなのかい!?」
    「そうだ、よ。久しぶりだねコバヤシ。それで、何があったか⋯」
    「うぉぉぉぉぉ!みんなぁぁぁぁ!本当にヒロシノサワだ!数年ぶりに、ヒロシノサワがかえってきたぞおぉぉぉぉぉ!!!」
    「あ、行っちゃった。」
     なにやら奥の方で騒いでいる声が聞こえる。
     当たりをよく見れば、多少の変化はあれど、たしかに1年前まで研究をしていた研究室だ。
     机の上のデジタル時計を見ると、20YY年X月XX日、タイムマシンに乗った日からほぼちょうど数年と言ったところであった。
    (懐かしい、けどあまり嬉しくない、ね。どうしてこの座標になってるんだろう。)
     今のうちに戻ってしまおうか、と周りを見るが、目の届く範囲にタイムマシンは見当たらなかった。
    (うそ、タイムマシンが、消えた⋯?)

  • 85二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 19:26:34

    唐突な天才の帰還に、研究所は大騒ぎ、その日の晩は軽いパーティーのようなものが開かれた。
    そこで、広は簡単な経緯を話す。
    「じゃあ、シノサワはたまたま発見したタイムマシンに乗って、過去から来た数年前のシノサワなんだね」
    「うん、でもタイムマシンは消えちゃった。本当に見てない?」
    「いや、俺たちもびっくりしたんだ。研究室の隅に、突然現れたままシノサワが倒れてたんだから、なぁみんな」
    コバヤシの呼び掛けに、一同はそうだそうだと各々に反応を返す。
    「どうしよう、このままじゃ帰れない⋯ね。」
    「うーん、シノサワの話だと、そのタイムマシンって、あの時ノリで話したあの設計図が元になってるんだよな。」
    「そうだね、1部違うところはあったけど、大まかな理論は間違ってなかったと思うよ。」
    「だったらさ、俺たちで作ってみないか!タイムマシン!タイムマシンといえば、全研究者、いや全人類と夢と言ってもいい。
     それを、シノサワと作れるのなら、俺たちは全力で協力する!」
    「それは、ありがたい⋯けど、いいの?そっちの研究もあるだろし、私また研究所に戻るつもりは無いよ?」
    「うーん、それは残ってくれた方が嬉しくはあるけど、やりたいことを見つけたんだろ?だったらそれは俺たちにどうしようもないさ。」
    「うん、アイドルは私の趣味。そして、プロデューサの夢を叶える。」
    「っ、あのシノサワがそんな顔するようになるとはなぁ。」
    「何それ」
    「何だろうな⋯。じゃっ今日は一時的ではあるが、シノサワとの共同研究を祝して、乾杯だー!」
    ワー!と歓声が上がる。
    この日から広のタイムマシン開発が始まった。

  • 86二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 19:27:36

     とは言ったものの、タイムマシン開発は難航を極めた。一通りその機構を見たとはいえ、その時は意識して見てなかったということもあり、その記憶は曖昧なものであったからだ。
    「第XXX回目の起動実験、始めます!」
     研究員のひとりが叫ぶ。と、同時に様々なコードに繋がれた機械からガタンと音がした後、低い音が響く。
    「うん、起動は成功。」
     広が呟く。だがここまでは既にいくらか成功している。
    「続いて!出力あげます!」
     その声を皮切りに、その音はどんどんと高くなり、そしてスンッと消えてしまった。
    あぁ⋯、そんなといった落胆の声があちこちから飛び交う。
    「またダメだったね。」
    「今度は上手くいったと思ったんだけどなー」
    コバヤシが隣で頭を抱える。
    「でも、あとはここだけ。私一人じゃもっとかかってた。」
    「出来なかったと言わないのは、さすがシノサワだな。」
    「そういうつもりじゃなかった。ただ、絶対に帰らないと、いけないから。」
    「そうか、そうだったね。そうだ、そろそろ研究発表会があるんだけどさ、君が来て数ヶ月分、この研究も論文にまとめて出そうと思うんだ。どうだろう?公に出せばもっと情報も集まって、より完成に近づけるかもしれない。」
    「別に、好きにしてもいいよ。設計はみんなでしたし、私の記憶のタイムマシンも誰のか分からないしね。」
    「そうか!じゃあすぐに一緒に書きあげよう!」
    「私は書かない、学会には二度と戻るつもりは無いし、何より過去の人間だからバレるのはまずいでしょ。」
    「そ、そうか、そうだったね。じゃあ僕たちだけで書いて、名前は書かないけどいいんだね。」
    「うん、それでいい。じゃあ、今日はもう終わりだね。私は部屋で休んでくる。それじゃ」
    「あぁ、また明日な。」

  • 87二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 19:28:36

    「あぁ、やはり計画を実行に移すしか無さそうだ。本当はやりたくなかったんだがな。」
     暗がりの中、男達が話している。
    「そうか、タイムマシンの完成までの障害も残り1つ、もう時間はない。仕方の無いことだ。」
    「あぁ、大丈夫最初から想定の範囲内だ。準備は出来ている。」
    「ククク、この計画が成功すれば、俺たちは!───」
    「馬鹿っ、声を抑えろ!バレたらどうする!」
    「あ、あぁすまない。つい興奮してしまってた。」
    「だが気持ちも分かる。これは俺たちにとって大きな意味のある計画だ。失敗は許されない。」
    「きっと俺たちは、恨みを買うことになるだろう。だが、それでもやる価値はある。だからこうして集まった。そうだな?」
    「そうだ、俺たちの気持ちはひとつ。」
    「決行は今夜から、いいな?」
    「大丈夫だ。全ては計画通りに」
    「よし、各員もう一度各々の役割を確認しておくこと。それでは⋯解散。」
     ぞろぞろと男達は部屋を後にする。
     そして、日は沈み、夜がやってくる

  • 88二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 00:28:53

     ジリリリリリリリリリリ!!!
     研究所に警報が鳴り響いた。
    「なに、これ。」
     床に着いていた広は、そのけたたましい音に目を覚ます。
    「大丈夫か!シノサワ!」
     扉が勢いよく開き、コバヤシが飛び込んでくる。
    「うん、なんともないけど、何かあったの?」
    「あ、あぁ、侵入者だ。この研究所に何者かが侵入してきた。今この研究所が狙われてるとしたら、タイムマシンが原因としか考えられない。君自身もも危険だ。逃げよう!」
    「でも、どこに?」
    「地下に、研究所が爆発事故が起こした場合の避難場所として、地下にシェルターが用意されている。タイムマシンのデータと一緒に逃げよう!」
    「わかった。」

  • 89二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 00:33:36

    「こっちだ!シノサワ!」
    「もう⋯限界⋯あっ⋯」
      足が絡まって、広は転げてしまう。
    「シノサワ!」
     コバヤシが振り返って駆け寄ろうとする、が、
    「動くな!」
     その声にその動きはピタリと止まった。
     ゆっくりと2人の目線がその人物の方へ向けられる。その先にいたのは
    「プロ、デューサー⋯⋯?」
    「プロデューサー?プロデューサって⋯」
    「黙っててください。篠澤さん、そしてあなたも。怪我をしたくなければ大人しくしていてくださいね。」
     カチャリ、と大袈裟な音を立てたプロデューサの手元には、拳銃が握られていた。
    「さあ、篠澤さん、タイムマシンの研究データと共に、こちらに来てください。」
    「ふざけるな!これはシノサワが!」
    「貴方には言っていません。俺は篠澤さんに言っているんです。まさか、少し走った程度でこの程度の作業もできませんか?」
    「プロデューサー、本当にプロデューサーなの?」
    「えぇ、それともあなたのその頭脳は数ヶ月程度で人の顔を忘れてしまうものなのですか?」
    「おい!シノサワの頭脳はそんなものじゃ──」
    「ごめん、コバヤシ。データ、渡して。」
    「おい、シノサワ!」
    「お願い」
     その声に、コバヤシは肩を震わせた。その声は、もう聞くはずがないと思っていた。その顔はもう見るはずがないと思っていた。冷たく、無機質で、感情の機微のない声と表情。かつての篠澤が、ありとあらゆる事柄に興味をなくした、あの時のものだ。
     圧倒的格上の場所から、我々になど価値は無いと、そう告げられる、あまりに残酷なその表情に、
    「これだ……これで……全部だ。」
    「ありがとう。ごめん、ね。」
     広はプロデューサーの元へと駆け寄った。
    「それでは、お邪魔しました。」
     カラン、という音と共に、プロデューサーの足元に何かが落ち、同時に大量の煙が吹き出した。
    煙が晴れた頃にはそこに2人はいなかった。
    「どうしてだよ、シノサワ⋯」

  • 90二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 10:28:23

    っぶね、落とすとこやった

  • 91二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 16:01:58

    どういうことだ
    ギャグテイストではないのか?

  • 92二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 00:34:52

    >>91

    その⋯つもりだったんですけどね。

    つい筆が

    曇らせでは無いので安心してください

  • 93二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 09:13:54

    ほし

  • 94二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 18:57:51

    「ゴホッゴホッゴホッ、ごめん、プロデューサー⋯煙吸いすぎた。ゲホッ、吐きそう。」
    「嘘ですよね?あなたがいるとスモークグレネードすら使えないんですか!?」
    「ふふ、ままならない、ね?」
    「そんなこと言ってる場合じゃありませんよ!とにかく逃げますよ、あともう少しですから何とか持たせてください!」
    「ふふ、久しぶりなのに、プロデューサーの鬼⋯でもどうしてここに?」
    「話は後です。今は先に脱出を⋯⋯」
    「動くな!」
     その呼び声に、2人は足を止める。
     周囲は完全に銃で武装した研究員に囲まれていた。
    「クソ、やはり篠澤さんを連れては厳しいか!仕方ない、お前ら!こいつがどうなってもいいのか!」
     プロデューサーは手に持った銃を広の頭へと突きつけられる。
    「わ、わーころされるー、たすけてー。」
    「篠澤さん!少しは怖がって下さい!(小声)」
    「だって、プロデューサーが私を使って脅迫してるなんて、ゾクゾクする⋯ね?」
    「あぁ、もう⋯ほら!道を開けろ!」
    「クソ!ヒロシノサワを人質に⋯」
     ジリ⋯ジリとプロデューサー達が歩みを進めると、研究員達は少しずつその進路を開ける。そうして壁で姿が完全隠れてから一気に駆け出し、逃げ出した。

  • 95二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 18:58:53

    何とか研究所の外に脱出し、目の前に止めてあった車両に乗り込んだ。
    「はぁぁぁぁー、まずは第1段階!何とかなったー!」
     プロデューサーが大きくため息をつく。
    「ふふ、楽しかった、ね。」
    「あの状況でそんなことが言えるとは、さすが篠澤さんですね。」
    「さあ、やっと落ち着いたね。さあ、色々聞きたいことを教えて貰うよ。聞きたいことがいっぱいある。」
    「そうですね、少し長くなりますが、篠澤さんに、言いたい事の一つや二つや⋯三つや四つ⋯⋯とにかくありますから、最初から話していくとしますか。」
    「あれは、まだ病院のベッドで寝ていた時のことです⋯」

  • 96二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 01:14:37

    寝る前に

  • 97二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 08:55:05

    保守

  • 98二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 09:45:01

    皆さん保守感謝です
    すみませんかなり見切り発車で書いてるので、ストックはあるんですけど、ふとした時に修正する時ように出せないでいます。
    多分もうすぐ終わるとは思うので、

  • 99二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 19:27:35

    「あさり先生から、タイムマシンの話を聞いてから数日、無理やり言い訳をした辻褄を合わせるために篠澤さんと打合せをしたいのに、毎日来てたはずがあの日から来ない⋯なんだかとてつもなく嫌な予感がする。」
     学Pは頭を抱える。なぜだかこの予感は外れてないような感じがして仕方がなかった。
     すると、病室のベッドの隣の空間に、キラキラとした光る粒子が舞い始める。
    「ほら、なにか起きた。今度は何だ?」
     光る粒子の輝きが大きくなったかと思うと、病室がまっ白い光に包まれた。
     眩しくて一瞬目を背けるが、すぐにその光は収まり、再度目を向ける。
     すると、先程までなかったはずの大型な機械が突然現れていた。
     その形はプロデューサーには見覚えがあった。
    「タイムマシン⋯⋯?何故ここに。」
     つい数日前、プロデューサーが回収したタイムマシン、それより一回りは大きいが、全く同じ形状をしていた。
     ゆっくりと扉が開き、中から人が出てくる。
    「プロデューサー、数日ぶり、になるのかな。」

  • 100二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 20:56:38

    ミノフスキー粒子?

  • 101二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:19:29

    「あなたは、未来の篠澤さん?どうしてあなたがまた。まさか、俺はまた死んでしまうんですか?」

    「ううん、そういう訳じゃない。けど、結果的にはそうなるかも。」

    「容量を得ないですね。」

    「安心して、最初から説明する。私は過去が修正されて未来に戻ったんだけど、タイムマシンはそういう時間の流れから独立した存在になっちゃってて、残っちゃった。

     そして、私が来たのとほぼ同じタイミングで、この時代の篠澤広が、そのタイムマシンで未来に飛んだ。」

    「はぁ!?」

    「まあ、そうなるよね。プロデューサーがあさり先生にタイムマシンについて言い訳をした日、私はあさり先生から、足元に気をつけろって形であの倉庫にタイムマシンがあることを知った。

     そして、あのタイムマシン、実は研究所時代に設計思想自体は出来上がってたから、修理できちゃったんだよね。それで、興味本位で未来に飛んじゃった。」

    「くそ、下手な嘘をついたばっかりに。すぐにでも篠澤さんを呼び寄せておくんだったッ」

    「そこはあまり、気負わないで。多分私はどんな形であれ、タイムマシンを見つけたら同じことをしたと思う。

     でも、無理に今の技術でタイムマシンを修復したのが失敗だった。

     何とかタイムトラベルには成功したけど、タイムマシン自体は時空の狭間とも言うべきところで消滅してしまった。」


    >>100

    特に詳しい設定はないですが、個人的なイメージはシュタインズ・ゲートの時空の欠片?だったかな、赤いキラキラのそんなイメージです

  • 102二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:21:00

    「つまり、篠澤さんは今、未来に取り残されていると。」
    「そうなるね、でもそれだけなら良かったんだけど、飛んだ先は元いた研究室、そこで帰るためにもう一度、タイムマシンを作ろうとしてる。」
    「それと、この時代に未来の篠澤さんが来たことになんの関係が?」
    「プロデューサーを助ける時は私一人で作ったからよかった。でも、今回は研究室と協力してる。
     このせいで、出来上がった瞬間、タイムマシンの製法が一気に広まることになる。
     あとは、想像つくよね。」
    「世界大戦の勃発⋯ですか。」
    「そう、タイムマシンの技術は、今の国家バランスを簡単に覆せる。その技術と利権を求めて国家間の戦争が始まる。それを食い止めたい。」
    「それは、わかるのですが、篠澤さんを無理やりそのタイムマシンでこの時代に送ればいいだけなのでは?」
    「そうしたいけど、まず私は研究室の中にいて、簡単に出会えない。
     それに、タイムマシンのデータも破棄する必要がある。そのために、研究室に強襲作戦をしかける。」
    「強襲って、そんなことできるんですか!?」
    「警備は厳重とはいえ、相手は研究所、完成まで数ヶ月ある、その間に作戦を立てて、綿密に用意すればなんとかなる。」

  • 103二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:22:49

    「⋯⋯と、言うわけです。あなただけが悪いとは言いませんが、このままでは世界大戦に発展するところだったという訳です。納得していただけましたか?」
    「うん、色々聞きたいことはあるけど、大体は。私のせいで、ごめんなさい。」
    「それは、あなただけの責任ではありませんので、これ以上は追求しません。
     とにかくこの後、協力者と合流して、日本に行った後、今の俺の部屋で、今の篠澤さんに俺たちの時代にもどしてもらうてはずになってます。
     ボンネットの中に詳しい計画表が乗ってます。確認しておいて下さい。」
    「うん、でも未来の私に誘われたからといって、未来まで助けに来てくれるなんて、やっぱり私の事、大好き。」
    「⋯⋯⋯⋯そうですね。」
    「ん、なにか間があった。なにか、隠してる?」
    「⋯いいえ、ただの照れ隠しです。」
    「ふふふ」

  • 104二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:24:34

    「さて、ここで落ち合う算段になっているのですが⋯」
    「さっき言ってた、協力者?」
    「ええ、あなたもよく知る人物ですよ。」
    「?」
    「ふっふっふっふっふっ、初めましてだね昔の広ちゃん!」
    「世界大戦?というのはよく分かりませんが、お友達の為ならばわたくし達、おてつだいいたしますわ!」
    「Zzz……」
    「そう、私は広ちゃんのライバルにして友達!花海佑芽!!!」
    「同じく、倉本千奈!!!」
    「Zzz⋯」
    「4人揃ってえぇぇぇ〜〜~」
    「元、1年2組!ですわーーーー!」
    「って美鈴ちゃんまた寝てるーーーーーー!」
    「は、秦谷さん!起きてくださいましー!」
    「ふわぁ、時差ボケは、辛いですね。」
    「プロデューサー、協力者って⋯」
    「ええ、この時代の花海佑芽さん、倉本千奈さん、秦谷美鈴さんの3人です。」
    「3人とも、あんまり変わってない、ね?」

  • 105二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:26:32

    「はぁ、やっと一息つける」
     千奈が手配した日本行きの自家用機の中で、プロデューサーは羽を伸ばしていた。
    「フフ、運転お疲れ様、プロデューサー」
    「いやー、私たちも別口から侵入してたけど、プロデューサーさんが広ちゃんを見つけるなんて、やっぱり、運命なのかな!」
    「それはもう、愛の力!ですわね!」
    「違いますよ、実際に篠澤さんがいるであろう研究室は目星が付いていました。そこを通るルートに俺が配置されただけです。」
    「そんなこと言って、プロデューサー自分から志願したんでしょ?私の事、大好き、だもんね。」
    「⋯⋯あなたの命がかかっているので冷静に判断できるから選ばれただけです。」
    「やっぱり、広ちゃんとプロデューサーさんって、この時から仲良しだよね!」
    「佑芽、ということは今の私たちも知ってるの?」
    「もちろん!広ちゃんとプロデューサーさんはね────もがっ、千奈ちゃん!?何するの!」
    「い、いけませんわ花海さん、いくら今の篠澤さんとプロデューサー様の仲がらぶらぶだからと言って、無闇に未来のことを話してはいけないと言われたではありませんか!」
    「プロデューサー、未来の私たち、ラブラブなんだって」
    「⋯⋯⋯⋯」
    「ふふ、言わなくてもわかる、よ?」
    「⋯なら、少し寝かせてください。これからが本番なので。」
    「そうなの?」
    「えぇー!そうなの!?」
    「そ、そうなんですの!」
    「なんで篠澤さんはともかく、説明を受けたお2人も驚いているんですか。秦谷さん、お願いしても⋯ってまた寝てる。
     仕方ない、説明しますね。
     タイムマシンの開発、それは国家バランスを覆しかねないシロモノです。ここまでの逃走は強襲したことで、相手の出方が遅れたため、安全に逃げられました。
     しかし、向こうではそうはいきません。おそらくこの機体より高性能な航空機で先回りされているはずです。」
    「つまり、これからはもっともっと敵がいるんですね!うぉぉぉぉぉ!やるぞぉぉお!」
    「ええ、そのやる気を温存するために寝ていてください。最後の休憩になるでしょうから。」

  • 106二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:28:08

    『お休みのところ失礼いたします。まもなく日本に到着でございます。ご準備の方よろしくお願いいたします。』
     機長からのアナウンスでプロデューサーは目を覚ます。
     グッと伸びをして体をひねる。
    (よし、疲れはあまり残ってないな。)
    「皆さん起きてますか?そろそろ準備を」
    「大丈夫です!起きてます!」
    「えぇ、準備は出来ています。」
    「いつでも行けますわ!」
    「ふふ、プロデューサーが最後。」
    「では、先程も話しましたが、ここから降りると、篠澤さんやタイムマシンのデータを確保しに来た刺客が集まっていると思われます。
     我々の目的は、この篠澤さんを、現在の篠澤さんのところまで護送することです。その後はそうすれば現在の篠澤さんが過去に送ってくれる手筈になっています。
     また、そのために現在の篠澤さんの場所を知られてもなりません。基本的にはこの時代の俺や篠澤さんの謎技術で発見されないようになっています。
     ですので、最も警戒すべきは、我々が敵に情報を与えることです。くれぐれも尾行には気をつけて下さい。以上です。
     ………なんですか篠澤さんその顔は。」
    「ふふ、なんでもない……よ?」
    (なんでもないことはないと思う……が、後ろの花海さんと、倉本さんの反応的にろくなことではない予感がする。)

  • 107二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:29:11

    「とにかく、段取りは頭に入りましたね。では行きますよ。パラシュートの準備はできていますか?」
    「うぅ、空港では先回りされるからとはいえ、本当にここから飛び降りますのね……」
    「大丈夫ですよ倉本さん、そのために私たち3人で、練習したではありませんか。」
    「それでも、怖いことに変わりはありませんわー!秦谷さんや花海さんはどうして平気そうですの!?」
    「え?だってワクワクしない!?」
    「私も、得意なんです。こういうの。」
    「し、篠澤さん!篠澤さんはどうですの!」
    「千奈千奈、私がそういうの嫌いだと思う?」
    「そうでしたわー!」
    「でもプロデューサー、私スカイダイビングとか、やったことない、よ?」
    「ええ、それは分かっています。ですのであなたには、俺と飛んでもらいます。」
     器具を取りつけるため、プロデューサーは広に後ろから腕を回す。
    「プロデューサー……大胆……だね?」
    「冗談言ってないで飛びますよ。噛まないように口は閉じていてくださいね。」
    「じゃあ、開けますね!」
     佑芽が扉に手をかけ、ゆっくりと力を込める。鉄が軋む音ともに扉が開き強い風が吹き込む。
    「皆さん、準備はいいですね。」
     プロデューサーが周囲に目配せをし、全員が頷きで返した。
    「では、地上で!」
     一斉に飛行機から身を投げた。

  • 108二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:30:51

     冷たい風が頬を劈く。真上に見える地面はまだまだたどり着きそうもなく思えてしまう。
     だが、その感覚でパラシュートを広げては遅いことはわかっている。
    (そろそろか……)
     背中から伸びる紐を力一杯に引っ張る。
     バサッという大きな音と共に体が後ろに引かれる感覚を覚える。
     辺りを見回せば同じく開いたパラシュートが3つ、どうやら全員上手く開けたようだ。
     着地地点も目視できている。ゆっくりと旋回し、進行方向を曲げる。
     ゆっくり、ゆっくりと地面が近づく。
    (篠澤さんがいる、なるべく速度を落とさなくては……)
     なるべくゆっくりと、そしてやわらかそうな場所へ、プロデューサーは広を抱えて、降り立った。

     素早く装備を外し、気持ち程度ではあるが茂みの中に隠す。
    「篠澤さん、体に痛み等はありませんか。」
    「うん、大丈夫。プロデューサーのおかげ。」
    「なら良かった、他の皆さんは……」
    「プロデューサーさん!上手く着地できましたー!美鈴ちゃんもいます!」
    「パラシュートも、簡単にですが隠しておきました。」
    「千奈は?」
    「倉本さん、ですか。着地の直前までは確かに見えていたのですが、風にあおられたのか、それていってしまいました。」
    「で!美鈴ちゃんと話して広ちゃん達と合流してから探そうって。」
    「なるほど、大体の居場所の検討はついているのですか?」
    「はい!千奈ちゃんの匂いは私が覚えてますから!そこまで離れた場所にはいないと思います。」

  • 109二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:32:46

     佑芽の案内で、森の中を進んでいく。
    「おーい!千奈ちゃーん!」
    「そ、その声は花海さんですの!?」
    「千奈ちゃん!?」
     声のする方を見ると、パラシュートが絡まり、木に宙ずりになっている千奈がいた。
     佑芽がちょちょいと木に登り千奈を助け出す。
    「あ、ありがとうございました。死ぬかと思いましたわ。」
    「ふふ、無事でよかったです。」
    「では、見つかっていないうちに移動してしまいますよ。」
    「それなのですが、わたくしはどうやらここまでのようですわ。」
    「千奈、まだ始まったばかりだよ。」
    「まぁ、特に怪我はないではありませんか。」
    「それなのですが……」
     千奈はおずおずと足を皆の前に差し出した。
    「わたくしの、わたくしの靴が消えてしまったのですわー!」

  • 110二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:33:57

    「ええっっつもがっ」
    「佑芽さん、静かにしないと見つかってしまいます。」
    「ご、ごめん美鈴ちゃん」
    「先程、木に絡まった時に脱げてしまってから、見つからないのです。」
    「佑芽なら、匂いで見つけられない?」
    「うーーーーん、近くならわかるんだけどそれっぽい匂いは、無さそうかなぁ。」
    「まぁ、そうなると、ここに住む野生動物が、持って行ったのかもしれません。」
    「えぇ、言いたいことは分かりますわ。ですがわたくし、靴がなければ、一歩も歩ける気がしませんわ!」
    「いえ、実際ここは森の中、靴無しで歩くのは危険です。」
    「じ、じゃああたしや美鈴ちゃんが背負って行くのはどーですか!?」
    「あなたたちの身体能力では不可能ではありませんが……」
    「それでは、わたくしが足を引っ張ってしまうだけですわ。今の目的は篠澤さんを篠澤さんのところまで送り届けること。それに注力すべきですわ。」
    「でも……」
    「仕方がありません、佑芽さん、先を急ぐとしましょう。」
    「美鈴ちゃんまで……わかった、後で絶対会おうね!」
    「千奈、千奈のことは忘れない。」
    「倉本さん、健闘を……」
    「花海さん!篠澤さん!秦谷さん!どうか、ご無事で!」
    「…………あの、一応倉本家に、連絡しておきましたので、そこまでの事じゃ……」
    「何言ってるんですかプロデューサーさん!千奈ちゃんの犠牲、無駄にはできません!」
    「ふふ、早く行かないと、だね。」
    「えぇ、全くです」
    「えぇ、これ俺が悪いのか…………」

  • 111二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:36:08

    「それで、ここからどうするのプロデューサー、この後の行動は作戦では最適なプランを選択することになってたよね。」
    「えぇ、最も手っ取り早いのは、隠してある車両を使うことだったのですが……シッ静かに……」
     プロデューサーの号令で、全員が息を潜める。本来ならこの先に車が隠してあるのだが……

    [おい!探せ!この辺りに降りたのはわかってる!]
    [おそらくこの車で逃げるつもりなんだろう、ここを中心に探すんだ!]

    「どうやら、遅かったみたいです。公共交通手段も張られてるとみて間違いないでしょう。仕方ありませんが、徒歩で行くしかありません。」
    「で、でも徒歩なんて広ちゃんの体力が持ちませんよね」
    「えぇ、ですから申し訳ないのですが、俺、秦谷さん、花海さんで交代しながら運ぶしかありません。」
    「まぁ、なんて面倒な。でも仕方ありませんね。」
    「ごめん、ね。迷惑かけて」
    「仕方ありません。隙を見てここを脱出、駅前の路地まで走りますよ。長距離になります、花海さん、篠澤さんをお願いできますか?」
    「りょーかいです!」
    「では、スリーカウントで行きますよ。3、2、1、GO!」

  • 112二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:37:33

    「なんとか、あと目的地までもう少し、という所までやって来ましたが……」
    「あれ、完っ全に追ってきてる人達ですよね。」
    「でも、この道を通る以外はない、よ」
    「面倒ですね。」
    「走り抜けて、撒いちゃうのはどうですか!」
    「相手の身体能力が分からない以上賭けに出るべきではありません。それにこちらには篠澤さんがいます。」
    「そっかぁ、広ちゃんだもんね。」
    「物音出して、誘導してみるのはどう?」
    「全員がかかってくれるとは限りませんし、場合によっては自ら姿を晒すことになります。絶対にナシです。」
     一同は考えて黙り込む。
     その静寂を打ち破ったのは一人のため息だった。
    「はぁ、私が引き付けます。」
    「秦谷さん!?何を言って!」
    「そ、そうだよ美鈴ちゃん!いくら美鈴ちゃんでもあの人数は……」
    「でも、ここでずっと考えて動かないのにも疲れちゃいました。
     佑芽さんは、篠澤さんを運ぶためにまだ必要なので、私が行きます。」
    「美鈴…………」
    「あら、篠澤さんそんな目をしなくても。
    安心してください、未来の私は、ちょっぴり強いんですよ。」
    「だからって、あっ!」
    「秦谷さん!待って……」

  • 113二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:39:07

     静止するまもなく、美鈴は堂々と大通りに姿を現す。
    「失礼いたします、皆さんは篠澤さんを探しに来られた方達ですね。少しお話を……」
    「お前、シノサワヒロを知っているのか!?」
    「ですから、少しお話……」
    「だったら言え!どこにいる!?」
    「はぁ、なんて野蛮な。あなた達が篠澤さんを追ってきた人たちなら、それで十分です。」
     男は美鈴の方に手を伸ばす、がその両手は空を切った。
     美鈴は男の手を避けるため後ろに飛びながら、男の顎に向けて蹴りを放つ。
     パァンという破裂音と共に、美鈴の前にいる男が一人宙を舞う。
     この瞬間、目の前で起こっている惨状を誰も理解できなかった。
     トンッ、と軽い音を立てて着地してから美鈴は言い放つ。
    「お話で済むなら、それで良かったのに。こうなっては面倒です、全員でかかってきてください。」
     はぁ、と、またため息を着く。その言動はこの場の怒りのボルテージをぶち上げた。
     うぉぉぉぉと野太い怒号とともに、男たちは襲いかかる。
    「プ、プロデューサーさん!なんだか、不味くないですか!?美鈴ちゃん周りの人すっごい怒らせちゃったんですけど!?」
    「うぅ、何となく秦谷さんが行くと言った時から嫌な予感はしてました。本当にまずい……」
    「そ、そうですよプロデューサーさん!まずいですよ!」
    「プロデューサー、美鈴、助けに行かないと……」
    「いえ、そういう意味ではありません。篠澤さんはもちろん、作戦概要の把握に時間がかかった花海さんは知らないと思いますが、この作戦までの準備期間で、行った戦闘訓練。
     秦谷さんは、バツグンの才能を発揮して、未来の篠澤さんが設定したVR訓練をすぐに終わらせてしまいました。」
    「つまり……?」
    「秦谷さんなら、おそらくこの場の全員を……殴り倒してしまえます。」
    「えー……」
    「美鈴ちゃん、やっぱり強いんだねぇ」
     ちらりと美鈴の方へ視線をやる。
     わらわらとなだれ込む人影が、1人また1人と、倒れ、吹っ飛んでいた。

  • 114二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:40:40

     プロデューサーの視線に気づいた美鈴が顎をクイッと動かす。
    「あれは、先に行けと言っているのでしょうね。」
     事実、今は全ての注意が美鈴に向いていて、絶好のチャンスだった。
    「行く……しかないでしょう。騒ぎに巻き込まれて動きづらくなるのも困ります。」
    「でも、美鈴ちゃんが…………大丈夫そうな気がしてきた。」
    「うん、やる気になった美鈴は無敵……フフン」
    「なんであなたが誇らしげなんですか、とにかく行きますよ、目立たないように気をつけてください。」

  • 115二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:42:53

    「今度こそ、もうすぐです。」
    「うん、みんな美鈴の方に行ってるのかそれっぽい人たちも全然いなかったね。佑芽もここまで運んでくれてありがとう。じゃなきゃ3回くらい倒れてた。もう大丈夫。」
    「そう?あたしはまだまだいけるよ!」
    「花海さん、さすがの体力ですね。さて、目に見える追手が居なくなったからと言って警戒はとかないで下さい。
     尾行などされて、篠澤さんのラボがバレた時には俺たちが過去に帰れないどころかこれまでの努力が無駄になります。」
    「そうですね、ちょっと、集中してみます。」
     そう言うと、佑芽は大きく息を吸って、目を瞑る。
    「うーん、うーん?」
    「プロデューサー、佑芽が唸りながら変な動きしてる。」
    「静かに、あれでも周りの音と匂いに集中して、つけられていないか確認してくれているんです。」
    「は!見つけた!」
    「ほ、本当ですか!?花海さん!一体どこに!」
    「はい!近くにお姉ちゃんがいます!」
    「はい?」
    「うーん、この感じだとどこかの店の中だな〜。」
    「あの、花海さん?」
    「大体あの喫茶店の方……」
    「それより追手は……」
    「あ゙ーーーーお゙ね゙え゙ぢゃ゙ん゙がり゙ん゙ばぢゃ゙ん゙どい゙る゙ーーー!!!そ、それになんか距離が近い、ま、ままままさか……えっちだよ!」
    「ちょっと!?花海さん?」
    「行っちゃった、ね?」
    「し、仕方ありません俺たちだけで警戒して行くしかないですね。」
    「ふふ、2人きり。」
    「うぅ……なんだあの声、本当に人が出せる音量かよ、なんか耳が痛い……あっ」
    「えっ、お前は」
    「コバヤシ……?」

  • 116二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:45:10

    「くそ、見つかっては仕方ない!俺たちのヒロシノサワを返してもらうぞ!」
    「まさか、佑芽さんの大声で尾行をが炙り出せるとは。結果オーライ、なのかなぁ?」
    「でもまさか、コバヤシまで来てるなんて。」
    「あぁ、本来なら来てないさ。だがシノサワをよく知るものとして、無理やりねじ込んでもらったんだ。全ては計画の為に……」
    「計画……?何言ってるの」
    「ッ……もしかしたらと思っていましたが、やはりそうですか。そうはさせませんよ、俺はその計画を阻止するために来たんですから。もうお忘れですか、下手に手を出せば篠澤さんの無事は」
    「プロデューサー?計画のこと知ってるの?」
    「もうその手は効かないよ、君達、研究所への侵入でもそしてこれまでも1度も発砲してない。君が持ってるの、モデルガンだろ?」
    「へぇ、よく見てるじゃないですか。ですがたったそれだけのデータで研究者様が結論を決め付けていいんですか?もし間違っていれば計画はおじゃんですよ。」
    「だから、プロデューサー……」
    「そうだね、でもそもそもするつもりのないことでは脅しにならないよ。
     君にシノサワを傷つける意思はない。
     もしそのつもりなら今こうして自由に動けているはずがないからね。」
    「では、あなたを撃つことにしてみましょうか?この銃が偽物に賭けてみます?」
    「むしろいいのかい?ここまで勝てるギャンブルそうそう出会えないよ。見ていてわかるよ、君かなり慎重なタイプでしょ。だったら実銃は使わない、いや使えないでしょ。誤射して、シノサワに当たるとまずいから。」
    「ねぇ、だから計画……」

  • 117二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:47:51

    「ッ……俺の事なら、なんでもお見通しって口ぶりですね。」
    「お、半分はブラフのつもりだったが、その反応は当たりだね。さあ、シノサワを返してくれ。」
    「断ります。篠澤さんがあなた達の手に渡れば、あなたたちは計画を決行する。俺はそんなこと認めない。」
    「一体誰に何を吹き込まれたのか知らないけど、君に反対される謂れは無いはずだよ。むしろこの計画は人類全体の利益となるものだ。」
    「また計画、私何も知らない。2人は何を……」
    「そんなことはどうでもいいのですよ。俺達にはそんなことより大事なものがありますから。」
    「そんな、こと?君にはわかっていないのか?君の行動によってもたらされる損失の大きさを!」
    「いいえ、十分理解しています。その上で……痛ったッ!!!」
     広がプロデューサーの脛を全力で蹴り飛ばす。いくら広の脚力とはいえ、靴で泣き所を蹴られれば痛いものである。
    「シノサワ!よくやった、こっちに来てくれ……痛い!」
     そのまま、広は歓迎ムードのコバヤシに近づき、同じように脛を蹴り飛ばす。
    「し、篠澤さん、一体なんのつもりで……」
    「そうだ、シノサワどうしたんだ……」
    「全力で蹴ったから足が痛い、ちょっと待って……」

  • 118二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:48:53

    「とにかく、私の話なのに私が事情を知らないのはおかしい。全部説明して。」
    「それは、その……俺の口からは、コバヤシさん……お願いします。」
    「いや、僕の口からこそ言えないよ!」
    「なら、じゃんけん。負けた方が話す。」
    「な!篠澤さん、そんなこと言われても」
    「言えないものは言えないんだって!」
    「わかった、2人とも言わないなら私、誰にもついて行かない。」
     コバヤシとプロデューサーはお互いに顔を見合わせ、十分唸った後で、覚悟を決める。
    「仕方ない……ですね。」
    「やるよ、最初はぐー!」

  • 119二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:52:15

    「じゃあ、プロデューサー、全部話してもらう、よ。」
    「くそ、どうして……わかりました、全部話します。」
    「な、なぁ君、少しぼかしたりは……」
    「こうなった以上全部話します。ここで誤魔化しが聞かないことは、あなたもわかるでしょう。」
    「そう、だよなぁ…………」
    「あの、コバヤシさん達の計画は、篠澤さん、過去のあなたでいいので、あの研究室に無理矢理引き止めることです。
     彼らの計画は極めて単純。学会に提出するタイムマシンの論文、その著者をあなたの名前で発表すること。
     そうすることで、学会に篠澤広の存在を知らしめ、あなたを動きを制限するためことでした。
     基本は、ここまで世界に認知されたあなたが、タイムマシンで消えることは不都合が生じるとでも言うつもりなのでしょう。
     その上で、もしあなたがタイムマシンで帰ったとしても、タイムマシン理論の第一人者となれば、全世界に対して捜索をかけることも不可能では無いでしょう。
     そうなれば、この時代の篠澤広を見つけ、研究室に引き戻すことが出来る。
     そういう計画です。
     決行されていれば、今日にでも論文は世に出ていました。
     そうなれば、あなたは……」
    「アイドル、できなくなっちゃう、ね。」

  • 120二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:55:41

    「ええ、計画の概要は、これで間違いないでしょう?コバヤシさん。」
    「あぁ、そうだよ。シノサワが突然やめてアイドルになった時からみんなで考えてはいたんだ。
     シノサワの当時の研究結果を論文として発表して、囲いこんでしまおう……ってね。
     でも、当時の研究内容は基本発展途上、そこまでのインパクトはない。
     それ以上に、シノサワが研究室にいないことがバレると問題だ。
     だから、実際に行わなかったし、今後もするつもりはなかったのに。」
    「篠澤さんが、タイムマシンできてしまった。」
    「そうだね。久々にするシノサワとの共同研究、とても充実していたよ。
     最初は、穏便に説得しようと思ったんだ。でも、君の過去に戻る決心は変えられなかった。だから、実行に移そうとした。
     今となってはどでもいいことだけどね。」
    「そうだったんだ、ね。でもごめんコバヤシ。私は、今アイドルだから、ファンやライバルがいて、そして、一緒の夢を見たい人いる。」
    「謝らないでくれ。最初に君からアイドルの話を聞いた時から、そんな気はしていたんだ。それを無理やり引き留めようとしたんだ。」
    「わかった。なら謝らない。そして、1つお願いを聞いて欲しい。」
    「お願い……?シノサワ頼み事なんて初めてじゃないか?内容にもよるけど、できる限りの事はするよ。」
    「だったら、一度ライブを見に来て欲しい。研究室に居ないことが世界の損失と思われてるのは悔しい。篠澤広がアイドルになってよかったと思ってもらいたい。」
    「そ、それでいいのか……?」
    「ふふ、私意外と負けず嫌い。昔の私に勝ちたい。」
    「それは、いいが俺が見に行けるのは過去のシノサワ、つまり君じゃなくて、今のシノサワだぞ。それに今もアイドルやってるのか僕は知らないよ。」
    「ふふ、だってプロデューサー、私数年でアイドルを楽しめなくなるのかな。」
    「はぁ、その為だけにこっちに呼びかけるのはやめてください。
     こう言って欲しいのでしょう。アイドルは、ずっと楽しいものだ。数年ごときで、あなたが辞めるはずないでしょう……と。」
    「と、言うわけだよ。本当は、今の私のライブを見てもらいたいけど、このままならない約束は、未来の私にプレゼントする、ね。」
    「…………ほんと、いい笑顔するな、今のシノサワは。そんな顔されたら諦めざるを得ないな。わかった、約s……「広ちゃん危なぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

  • 121二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:58:31

    「さて、花海さんあの人を張り倒したことについては特に何も言いませんが、まさか戻ってくるとは、何があったのですか?」
    「あ、あはは、あの後、お姉ちゃんと燐羽ちゃんと、お話、してたんです、そしたら。」
    「わ、わたくしたちが追いついて、こえをかけたの、ですわー。」
    「あ、千奈ちゃん、ごめんね突然走り出しちゃって。」
    「と、唐突に秦谷さんを置いて走り出すものですから、何事かと思いましたわー!」
    「それで、美鈴ちゃんは?」
    「な、なんとかここまで引っ張ってきましたわ。」
    「つまり、何があったの?」
    「わたくしが説明いたしますわ。
     皆さんと別れてから少しして、倉本の者が駆けつけて、靴を届けてくださいましたの。
     その後、皆さんを追って移動しておりましたら、死屍累々の上で眠る秦谷さんを見つけて、執事に頼み、車に乗せてもらいました。
    その後篠澤さんの元に向かっていると、喫茶店で言い争っている花海さんを見つけ、合流したのですわ。」
    「それで、周りを見たら、広ちゃんに言いよる研究員さんを見つけて、走ってきたんだ!」
    「ありがとうございます、何となく理解しました。」
    「ふふ、やっぱり千奈達は面白い。」
    「では、追手もみられないですし、今のうちに向かうとしますよ。」

  • 122二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:02:11

    「ここ?」
    「ええ、合ってますよ。」
    「なんか、普通の家、だね。」
    「普段は住処として使用しているそうなので。」
    「へー、誰の?」
    「もちろん広さんのです。」
    「それだけ?」
    「……どうやら俺も、都合がいいので泊まることはよくあるそうですが」
    「ふーん?」
    「……とにかく入りますよ。」
     プロデューサー慣れた手つきで玄関先の機械をいじるとカチャッという音がなり、扉を開く。
    「さて、これで未来の俺達に戻ってきたことが伝わったはずです。十数分もあれば俺たちが帰る準備が整うでしょう。別れの言葉などあれば今のうちですよ。」
    「って、言われても」
    「わたくしたち、大体飛行機の中でお話ししてしまって」
    「ほとんど言うことがない……ね。」
    「ですが、お別れの言葉だけでは、数分で終わってしまいますね。」
    「それに、広ちゃんが居なくなってもすぐに広ちゃんに会えるからあんまりお別れって感じでもないんだよね〜」
    「では、いつものわたくしたち通り、仲良くお喋りいたしましょう!」

  • 123二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:03:14

    「おっと、どうやら準備が出来たようですので、俺たちは戻りましょう、元の時代に。」
    「あら、あっという間でしたわね。」
    「ふふ、楽しかったよ。数年後にまた会おう、ね。」
    「私達は、数分後ですね。」
    「じゃあね、みんな。ありがとう。」
    「俺の方からも、今回はありがとうございました。」
    「じゃあね!広ちゃん!プロデューサーさん!」

    「で、これが」
    「えぇ、タイムマシンです。」
    「でも、これで帰ったら結局タイムマシンは無くならない、解決になってない。」
    「そこは大丈夫です。今回のこのタイムマシンは、篠澤さんが未来へ飛ぶ時に起こった事故を再現するようになっています。」
    「なるほど、タイムマシンは消えるけど、私達は過去へ戻れるんだね。」
    「では、帰りましょうか。俺たちの時代へ。」
    「うん、プロデューサー本当にありがとうね。助けに来てくれて。」
    「今更ですよ、俺はあなたのプロデューサーですから。」
    「ふふ、私を取られたくなかったから、でしょ。だから、計画も言いたくなかった。
     私が気づくから。」
    「……そうですよ。」
    「久々だけど、入院してから素直になったプロデューサー、好き。」
    「はぁ、あの時はすぐに狼狽えていたのに、また考えなければいけませんね。」
    「どうして、私とプロデューサー、どっちも大好き。それで問題は無い。」
    「だから、ですよ。では、帰ったらすぐに特訓です。この数ヶ月分のブランクを埋めますよ。」
    「話を逸らした。でも、そうだね。ライブ、約束しちゃったもんね。」
    「未来の俺も大変だろうなぁ……まあ、いつものことか。」
    「また、よろしくね、プロデューサー。」

     そうして戻った二人が、病院のベット気絶していたのを佑芽が発見したり、突然に骨折が治ったプロデューサーが広のファンたちに祭り上げられたりしたのはまた別の話。

  • 124二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:09:57

    長々と妄想の燃えカスを書かせていただきました。
    見切り発車のグダグダなので、見苦しいところもあったとは思いましたが、ここまでありがとうございました。
    やっぱね、時間跳躍ものはいいね。シュタゲとカゲプロで育ってきた世代ですのでまあ、楽しかったです。
     本当に自分からネタを出すのが苦手なので、二度と書くことはなさそうですが、今回はいい経験ができたと思います。
     残りのレスは、幕間の物語とか思いついたら書いていこうかな。残ってれば。

  • 125二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:23:21

    ぱちぱちぱち
    お疲れ様ですわ〜。
    コバヤシ達が広さんのファンになる事を願わずにはいられない

  • 126二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:28:05

    おつです!

    またいいのできたら書いて欲しい

  • 127二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 00:07:40

    >>61です。


    めっちゃよかった!!

    ぜひまた書いてね。

  • 128二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 01:21:01

    安心して...見れますね😊

  • 129二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 01:36:18

    >>120

    >>121

    の間、少しですが抜けてました


      佑芽の声が響き、遮られたかと思うと、佑芽と一緒にコバヤシが吹き飛んで行った。

    「こ、この人広ちゃんのいた研究室の格好だよね!ま、まさかどこかに隠れてたなんて!広ちゃん!あたしが抑えておくから今のうちに!」

    「…………花海さん、その方、気を失われてます。」

    「へ?おーい、あほんとだ、やっつけましたよ!プロデューサーさん!広ちゃん!」

    「いや、そうではなくてですね……」

    「ふふ、ままならない、ね。」

  • 130二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 09:13:47

    >>126

    >>127

    (*ФωФ)フフフ…概念出すのは苦手なのでね。皆さんの妄想力にかかっているのだ。

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