- 1125/06/28(土) 18:14:16
0話
「ラプンツェル、お前は塔の外には出ていけないよ」
昔から魔女様にそう教わってきた。「外」の世界はとても怖いのだと。物心ついた時から塔の上にいた私は、「外」の世界を知らない。知っているものといえば、塔の上にある殺風景なこの小さな部屋と、鍵のかかった扉の正面にある小さな窓からの景色。人ひとり通れるほどの大きさのその窓から一度出られないものかと思ったことがあるが、身を乗り出したとき、塔のあまりの高さに不可能だと悟った。
それでもあきらめられなかった私は、魔女様が出口の扉の鍵を閉め忘れたとき、こっそりと部屋の外に出た。扉のすぐそとは下へと段々になっていて___階段というらしい___それを降りていくと、途中に一つ扉があった。うっすらと開いていた隙間から中を覗くと魔女様がいて、その周りには見たことのないものがたくさん置いてあった。
わあ、と思わず感嘆の声を上げると、それに気づいた魔女様がものすごい剣幕でこちらに向かってきて、元の部屋に連れ戻された。「二度と部屋の外には出ていけないよ」と怒る魔女様があまりに怖かったので、それ以降扉を開けるのはやめようと決意した。 - 2125/06/28(土) 18:24:31
※注意
- この二次創作はふわふわ設定とライブ感により書かれた自己満SSです。多少の矛盾点や不自然な点はお見逃しください
- 原作準拠度は一割にも満たないです
- メルクラ原作に対する批判や中傷を意図したものではありません。また、この内容を直接原作者様などに伝えるのはおやめください
- 主は初スレ立てなので至らない点があると思います
- 読んだ後の苦情は受け付けませんのでご了承ください - 3125/06/28(土) 18:29:07
あの後魔女様は、私に一つのものを与えた。魔女様の部屋でも見たそれは「本」というらしく、その「本」は私がずっと使っている櫛と簪に同じくらいの宝物になった。与えられたたった一つのその本は、私にたくさんのことを教えてくれた。上を見上げれば見える青は「空」、下を見下ろせば見える綺麗なものは「花」、ときたま窓の淵にやってくる「いきもの」は「鳥」というらしい。私は夢中でその本を読んだ。何度も、何度も、おんなじページを繰り返し。もう、どこに何が書いてあるかだって宙で言えるのだ。いつかこの本に書かれているものを自分の目で直接見たいと幾度も思うが、そのたびにここから出られないことを思い出し落胆する。魔女様の言う「外」が怖い世界だなんて、ちっとも信じられなかった。
- 4125/06/28(土) 18:33:36
私が魔女様から本をもらってから、長い時間が過ぎた。私の身体も幾分か大きくなり、長かった髪もさらに伸びた。普段は魔法の簪でまとめてあるそれも、ほどいてしまえば部屋の床中を埋め尽くしてしまう。ひょっとして、塔の下の地面まで届いてしまうのではないかと思うくらい。
私は毎日、髪の手入れを欠かさなかった。自分の命のように大切にしなさいと、魔女様にそう言われてきたから。理由は教えてくれなかったけど、私はその教えにしたがい、毎日毎日、あくる日もあくる日も、宝物の櫛を使って丁寧に髪を梳いた。ひとたび髪に櫛を入れれば、するするとまるで魚が水を泳ぐように髪が流れていく。朝起きてから日がてっぺんに昇るまで、髪の手入れをするその時間がとても好きだった。
私はその日、いつものように髪の手入れを終え、日が沈むまで本を読みふけっていた。窓の外には大きな「月」が光っていたから、普段よりも遅くまで読むことができた。
するとふいに、何か物音が窓の外から聞こえた気がした。不思議に思って窓の方を見ても、特に何もない。小鳥が塔の壁にぶつかってしまったのかしら、と心配し窓の近づこうとした___
「覚悟しろ、呪いの魔女め!この僕がお前を倒してやる!」
0話 終 - 5125/06/28(土) 18:43:33
1話
ラプンツェルが見たのは、窓の枠から身を乗り出しこちらに短剣を向けている一人の青年でした。こげ茶色の髪に目、彼はどこにでもいる平凡な青年の見た目をしていましたが、ラプンツェルにとってはそうではありません。彼は魔女様のほかに初めて見た「人」だったからです。
「なんとか言ったらどうなんだ、呪いの魔女。僕はお前を___」
「すごい!私、始めてほかの人をみたわ!あなた、外の世界から来たのよね?外の世界ってどんなところ?楽しい?きれい?あなたは窓から出てきたけど、どうやってここまで来たの?もしかして魔法?」 - 6二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 19:03:38
矢継ぎ早に尋ねるラプンツェルに、青年は口もはさめず少し目を白黒させました。次いで、この少女が本当に魔女なのかを疑問に思い、「君は…魔女なのか?」といいました。
「いいえ、私は魔女様ではないわ!魔女様はここで私の世話をしてくれる人よ!」
「君はここに閉じ込められているのか?」
「”閉じ込められる”ってどういう意味かしら?でも、私はずっとここで暮らしているわ」
「どうして外には出ないんだ?」
青年は、この塔に一人でいる少女を気の毒に思い、なぜここにいるのかを尋ねます。 - 7二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 20:03:52
「魔女様が、外の世界はとても怖いところだっていうの。でも私、そんなのちっとも信じてないわ。本で読んだ外の世界は、とっても楽しそうなところだもの!」
それを聞いた青年はしばらく押し黙った後、何かを思いついたように顔をあげます。
「そうしたら、僕が外の世界の話をしてあげるよ!外に出られない君のためにね」
ラプンツェルはその提案に大層喜び、青年に抱き着きました。
「ありがとう!とっても嬉しいわ!ねえ、あなたの名前を聞いてもいいかしら。私はラプンツェルっていうの」
「僕はミケル・ローザ。よかったらミケルって呼んでよ」
「ミケル…ミケルね。覚えたわ!…そういえばミケルって、どうやって塔の上に来たの?魔女様みたいに魔法を使ったの?」
そう、この塔には上るための梯子もなく、ラプンツェルのいる元までたどり着くのは到底不可能なはずなのです。 - 8二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 21:57:49
「魔法だなんて、まさか!そんなもの使えるわけないよ。この塔の壁をつかんで登ってきたんだ」
「でも、そんなことできないわ!こんなに高い塔なのに…」
「そうだね…とっても苦労したよ。これでも木登りは得意な方なんだけどね。でも、呪いの魔女が許せなくて無我夢中で上っていたんだ」
「来るたびに塔を登るのは大変よね…そうだ!私の髪を使うのはどう?」
「君の髪?どうして?」
ミケルが首をかしげると、ラプンツェルは簪を外します。するとまとまっていた彼女の髪はふわっと広がり床に流れ落ちました。
「私のこの長い髪を使って塔を登ればいいのよ!きっとこの長さなら下まで届くわ!」
「すごい…とても長くて、綺麗な髪だね。でも、そんな綺麗な髪をつかんだらきっと傷んでしまうよ」
「大丈夫よ!魔女様がくれた魔法の櫛を使えば、どんな髪もすぐにきれいになるわ!」 - 9二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 02:09:55
「そういえばミケル、初めにもいっていたけど、”呪い”の魔女って何?呪いってどういう意味?」
先ほどミケルが窓から入ってきたとき、彼はラプンツェルに向かって「呪いの魔女」といったので、ラプンツェルはそれを疑問に思ったのです。
「そうだな…簡単にいえば、とっても悪い魔法だよ。この塔にいる魔女がその悪い魔法を、村の人たちに使ってるって」
「村?が何かはわからないけど、魔女様は悪い人ではないわ!確かに魔女様は怒ると怖いけど、私に優しくしてくれるし、本だってくれたもの!」
「ラプンツェルにとってはそうかもしれないけど、実際はわからないよ。呪いは魔女のせいだって、村にいる人たちはみんな言ってる」
「じゃあ、その人たちが間違っているのよ!魔女様は悪い人じゃないわ!」
「わかった、わかった。そういうことにしておくよ」
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規制でなかなか投稿できないので、今までの分含めて続きは支部にでも置いておくと思います。メルヘンクラウンで検索すれば出てくるようにしておきますので興味あれば覗いてやってください