- 1セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:25:15
セイアは激怒した。必ず、かの邪智暴虐のナギサを除かなければならぬと決意した。
ナギサには人の心がわからぬ。
セイアは、サンクトゥス分派の首領である。笛を吹き、シマエナガと遊んで暮して来た。
けれども耳に関しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明セイアは寮を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此のアリウスの市にやって来た。
セイアには父も、母も無い。女房も無い。
十六の、浦和ハナコと二人暮しだ。この娘は、トリニティの或る健気な一正義実現委員を、近々、花嫁として迎える事になっていた。
結婚式も間近かなのである。
セイアは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。
先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。
セイアには竹馬の友があった。ネルヌンティウスである。
今は此のアリウスの市で、潜入任務をしている。
その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。 - 2セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:26:34
歩いているうちにセイアは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。
もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなセイアも、だんだん不安になって来た。
路で逢ったヒヨリをつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が訓練をして、まちは賑やかであった筈だが、と質問した。
ヒヨリは、首を振って答えなかった。
しばらく歩いてヒフミに逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。
ヒフミは答えなかった。セイアは両袖でヒフミのからだをポフポフたたいて質問を重ねた。
ヒフミは、あはは…とにわかに笑って、わずか答えた。
「ナギサ様は、人を監視します。」
「なぜ監視するのだ。」
「裏切り者がいる、というのですが、誰もそんな、逆心を持っては居りません。」
「たくさんの人を監視したのか。」
「はい、はじめは私のアズサちゃんを。それから、御自身のお世嗣を。それから、コハルちゃんを。それから、肉〇器のハナコさんを。」 - 3二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:27:35
おい花
- 4セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:27:40
「おどろいた。ナギサとハナコは乱心か。」
「いいえ、乱心ではございません。人を、信ずる事が出来ない、というのです。このごろは、配下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば聴聞会にかけられて、シスターフッド送りにされます。きょうは、六人サクラコ様に殺されました。」
聞いて、セイアは激怒した。
「呆れたナギサだ。生かして置けぬ。」
セイアは、セクシーフォックスであった。
買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。
たちまち彼女は、巡邏の警吏に捕縛された。
調べられて、セイアの懐中からはネルとのハ〇撮り写真が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。
エロスは、ナギサの前に引き出された。
「セイアさん!他校の生徒と何をしているんですか!」
暴君ナギちゃんは静かに、けれども威厳を以って問いつめた。
その女の顔は蒼白で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。
「アリウスを暴君の手から救うのだ。」とセイアは悪びれずに答えた。
「セイアさん…?嘘ですよね…?」ナギサは、絶望した。
「まさか、貴女がアリウスとの密通者だったなんて…」 - 5セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:28:55
「言うな!」とセイアは、いきり立って反駁した。
「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。ナギサは、民の忠誠をさえ疑って居られる。」
「…疑うのが、正当の心構えなのだと、わたしに教えてくれたのは、あなたたちです。人の心は、あてになりません。人間は、もともと私慾のかたまりです。信じては、なりません。」
暴君は落着いて呟き、ほっと溜息をついた。
「わたしだって、平和を望んでいるのですが。」
「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」
こんどはセイアが嘲笑した。
「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」
「えっ?殺…?」
ナギサは、さっと顔を挙げて報いた。
「ああ、ナギサは悧巧だ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」
と言いかけて、セイアは足もとに視線を落し瞬時ためらい、
「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えてくれ。たった一人の露出狂に、コハルを持たせてやりたい。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来る。」
「いやちょっとm」
「私は約束を守る。私を、三日間だけ許してくれ。ハナコが、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、アリウスにネルヌンティウスという生徒がいる。私の無二の恋人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺してくれ。たのむ、そうしてくれ。」 - 6二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:29:18
何だよハメ撮り写真て、何やってんだよセイアちゃん
- 7二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:29:21
あーもう訳わかんねえよ誰か説明してくれ
- 8セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:29:56
竹馬の友、ネルヌンティウスは、深夜、トリニティに召された。
暴君ナギサの面前で、佳き友と佳き友は、二日ぶりで相逢うた。
セイアは、友に一切の事情を語った。
ネルヌンティウスは激しく抵抗したが、ミカとミネの二人がかりで取り押さえられ、結局縄打たれた。
セイアは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。
セイアはその夜、少しの仮眠ののちに十里の路をのんびり帰り、寮へ到着したのは、翌あくる日の午前、陽は既に高く昇って、生徒たちは学校に出て授業をはじめていた。
セイアの十六の変態も、きょうはセイアの代りにシマエナガの番をしていた。
よろめいて歩いて来るセイアの、疲労困憊の姿を見つけて驚いた。そうして、うるさくセイアに質問を浴びせた。
「なんでも無い。」セイアは無理に笑おうと努めた。
「学校に用事を残して来た。またすぐ学校に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」
ハナコは頬をあからめた。
「うれしいか。綺麗な衣裳も買って来た。さあ、これから行って、寮の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。」
セイアは、また、よろよろと歩き出し、自室へ帰って間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。 - 9セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:31:13
眼が覚めたのは夜だった。
セイアは起きてすぐ、コハルの家を訪れた。
そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。
コハルは驚き、エ〇チなのは駄目、しけぇ!、と答えた。
セイアは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。
コハルの下江も剛直であった。なかなか承諾してくれない。
夜明けまで〇癖談義をつづけて、やっと、どうにかコハルをなだめ、すかして、説き伏せた。
結婚式は、真昼に行われた。ハナコハの、マリーへの宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。
祝宴に列席していたトリニティ生たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺え、陽気に歌をうたい、手を拍った。
セイアも、満面に喜色を湛え、しばらくは、ナギサとのあの約束をさえ忘れていた。
祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。 - 10セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:32:17
セイアは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。
ふふ、ままならないね。
セイアは、セイア似の弟に鞭打たれ、ついに過酷した。
あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一過酷して、それからすぐに出発しよう、と考えた。
その頃には、雨も小降りになっていよう。
少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。
セイアほどの女にも、やはり未練の情というものは在る。
今宵呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、
「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐにトリニティに出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しいコハルがあるのだから、決して寂しい事は無い。セクシーセイアの、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえも、それは、知っているね。コハルとの間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。百合園セイアは、たぶんエ〇い女なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」
ハナコは、夢見心地で首肯いた。セイアは、それからコハルの肩をたたいて、
「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、ハナコとシマエナガだけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、セイアの妹になったことを誇ってくれ。」
コハルは揉み手して、しけぇ!していた。
セイアは笑って配下たちにも会釈して、宴席から立ち去り、シマエナガハウスにもぐり込んで、死んだように深く眠った。 - 11二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:33:37
- 12セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:33:56
眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。
セイアは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。
きょうは是非とも、あのナギサに、人の信実の存するところを見せてやろう。
そうして笑って磔の台に上ってやる。
セイアは、悠々と身仕度をはじめた。
雨も、いくぶん小降りになっている様子である。
身仕度は出来た。さて、セイアは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。
私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。
身代りのネルを救う為に走るのだ。ナギサの奸佞邪智を打ち破る為に走るのだ。
走らなければならぬ。そうして、私は殺される。
若い時から名誉を守れ。さらば、ふるさと。
若いセイアは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。
えい、えい、むん!と大声挙げて自身を叱りながら走った。
寮を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、アリウスに着いた頃には、雨も止み、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。
セイアは額の汗を袖で払い、ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練は無い。 - 13セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:34:57
ハナコたちは、きっと佳い夫婦になるだろう。
私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。
まっすぐに校舎に行き着けば、それでよいのだ。
そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気さを取り返し、好きな小歌を声なき声で歌い出した。
ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧わいた災難、セイアの足は、はたと、とまった。
見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫し、濁流滔々と下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵に橋桁を跳ね飛ばしていた。
彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟は残らず浪に浚われて影なく、渡守りの姿も見えない。
流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。
セイアは川岸にうずくまり、狐泣きに泣きながらクズノハに手を挙げて哀願した。
「ああ、鎮めたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます。太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、学園に行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達が、私のために死ぬのです。」
濁流は、セイアの叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽り立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。
今はセイアも覚悟した。空を飛ぶより他に無い。
ああ、名もなき神々の王女も照覧あれ!
濁流にも負けぬシマエナガの偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。 - 14二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:35:03
原典でも約束の日当日に急に思い出して出発したから原典通りなんよね
- 15二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:35:35
>>12ああ今からか、原作がうろ覚えだったから分からんかった
- 16セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:36:02
セイアは、ふっと濁流に飛び出し、百匹のシマエナガがのた打ち荒れ狂いながら、必死の闘争を開始した。
満身の力を翼にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる重力を、なんのこれしきと掻きわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の鳥の子の姿には、色彩も哀れと思ったか、ついに憐愍を垂れてくれた。
墜落しかけつつも、見事、対岸の樹木の幹に、降り立つ事が出来たのである。
ありがたい。セイアは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。
一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。
ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊のヘルメット団が躍り出た。
「待て。」
「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに学園へ行かなければならぬ。放せ。」
「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」
「私にはセクシーさといのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これからナギサにくれてやるのだ。」
「その、いのちが欲しいのだ。」
「さては、サクラコの命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」
不良たちは、ものも言わず一斉に機銃掃射を始めた。
セイアはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥を身近かの一人に襲いかからせ、その機関銃を奪い取って、
「気の毒だが正義のためだ!」と猛然連撃、たちまち、三人を薙ぎ倒し、残る者のひるむ隙に、さっさと走って峠を下った。 - 17二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:36:04
>それから、コハルちゃんを。それから、肉〇器のハナコさんを。
酷すぎて笑った。どうしてセイアと同居しているハナコを監視できるの。腹が痛い。
- 18セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:37:22
一気に峠を駈け降りたが、流石に疲労し、折から午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照って来て、セイアは幾度となく眩暈を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。
立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。
ああ、あ、濁流を飛び越え、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天、ここまで突破して来たセイアよ。
真の勇者、セイアよ。今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。
愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。
おまえは、稀代の不信の人間、まさしく王の思う壺だぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎えて、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。
路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。
もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った。
私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。
ケイも照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。
動けなくなるまで走って来たのだ。私は不信の徒では無い。
ああ、できる事なら私の胸を截ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。
けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な狐だ。
私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺いた。
中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。 - 19セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:38:33
ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。
ネルヌンティウスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。
いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い薄い胸に宿したことは無かった。
いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。
ありがとう、ネルヌンティウス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。
友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。
ネルヌンティウス、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ!
私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。不良の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。
私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。
どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。
ナギサは私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした(※してません)。
おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した(※してません)。
私はナギサの卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私はナギサの言うままになっている。
私は、おくれて行くだろう。ナギサは、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。
そうなったら、私は、死ぬよりつらい。 - 20セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:40:08
私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。ネルヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。
君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか?ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。
寮には私の部屋が在る。シマエナガも居る。ハナコ夫婦は、まさか私を寮から追い出すような事はしないだろう。
正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。
人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。
ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。
どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉かな。
――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。
ふと耳に、潺々、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。
すぐ足もとで、水が流れているらしい。
よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々と、何か小さく囁きながら小清水が湧き出ているのである。
その泉に吸い込まれるようにセイアは身をかがめた。水を両手で掬って、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。
歩ける。
行こう。 - 21二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:41:14
今更やけどスレ主のハンドルネームセナの角しゃぶり太郎やん
- 22二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:41:16
言いたいことが、言いたいことが多すぎる…!ネタがたくさん詰まってやがる!
- 23セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:41:38
肉体の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生れた。
義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。
斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。
日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。
少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。
私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。
私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ!セイア。私は信頼されている。私は信頼されている。
先刻の、あのゲヘナバカマコトの囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。
五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。
セイア、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。
ありがたい!私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。
ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ダイタクヘリオスよ。
私は生れた時からセクシーなフォックスであった。セクシーなフォックスのままにして死なせて下さい。
路行く大人を押しのけ、跳ねとばし、セイアは白い風のように走った。
裏路地でカイザーの、その裏取引のまっただ中を駈け抜け、カイザーの人たちを轢死させ、柴大将を蹴けとばし、羽川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、810倍も早く走った。 - 24セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:42:41
一団のシスターと颯っとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。
「いまごろは、あのミレニアム生も、サクラコ様に磔にされているよ。」
ああ、その女、その女のために私は、いまこんなに走っているのだ。
その女を死なせてはならない。急げ、セイア。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。
風態なんかは、どうでもいい。セイアは、いまは、ほとんど全裸体であった。
呼吸も出来ず、二度、三度、過酷から弟の過酷汁が噴き出た。
見える。はるか向うに小さく、トリニティの礼拝堂が見える。礼拝堂は、夕陽を受けてきらきら光っている。
「ああ、セイア様。」うめくような声が、風と共に聞えた。
「誰だ。」セイアは走りながら尋ねた。
「フィロストラトキでございます。ぴーす、ぴーす。貴方のお友達ネルヌンティウス様の弟子でございます。」
その若いバニーメイドも、セイアの後について走りながら叫んだ。
「もう、駄目でございます。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方をお助けになることは出来ません。そもそもネル先輩は磔程度じゃくたばりません。火あぶりにしましょう。」
「いや、まだ陽は沈まぬ。」
「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」
「いや、まだ陽は沈まぬ。」 - 25二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:42:41
>おどろいた。ナギサとハナコは乱心か。
この後ハナコについてフォロー入ってないの笑う
- 26二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:42:51
セクシー…セクシーってなんだ?
- 27セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:44:05
セイアは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。
「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じて居りました。刑場に引き出されても、平気でいました。ナギサ様が、さんざんあの方をからかっても、うおおおおおおおお離せえええええええええとだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」
「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い!フィロストラトキ。」
「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」
言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、セイアは走った。
セイアの胸は、からっぽだ。何一つ入っていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。
陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、セイアは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。 - 28セナの角しゃぶり太郎25/06/28(土) 18:45:18
「待て。その人を殺してはならぬ。セイアが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉のどがつぶれて嗄れた声が幽かに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。
すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたネルヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。
セイアはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、
「私だ、サクラコ!殺されるのは、私だ。セイアだ。彼女を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧りついた。
トリカスは、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。ネルヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。
「ネルヌンティウス。」セイアは眼に涙を浮べて言った。
「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」
ネルは、優しく微笑ほほえみ、
「よし、歯ァ食いしばれ。」
ネルは腕に唸りをつけて何度もセイアの頬を殴った。
セイアは昏倒し、ナギサの疑念が現実となるその時まで、目覚めることはなかった。 - 29二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:46:18
草草の草
一番ボッコボコやないかい - 30二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:47:45
>裏路地でカイザーの、その裏取引のまっただ中を駈け抜け、カイザーの人たちを轢死させ、「柴大将を蹴けとばし」、羽川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、810倍も早く走った。
おい、誰ぞなこの醜い女狐を磔刑に処せ
- 31二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:48:35
フィロストラトキ余裕そうにぴーすぴーすしてるし処刑に火あぶり提案してるしネルヌンティウスもセイアを何度も殴りつけてるしカイザーもついでに轢き殺されとるしツッコミどころが多すぎます!
- 32二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:48:44
感動した
- 33二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:51:26
こ、これで終わりなのか!?
- 34二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:51:45
ネル最初から全然承諾してなくて草
- 35二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:52:14
- 36二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:53:46
裏路地でハスミはナニしてたんだよ
- 37二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:57:07
- 38二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:58:35
- 39二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 19:00:26
コテが気になって正直何も頭に入って来ない
- 40二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 19:50:06
サラッと近親相姦してんじゃないよ
- 41二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 19:54:54
死、死んでる。
- 42二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 21:22:00
良き名作劇場だった
- 43二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 21:54:28
ミカ「なんか面白かったし満足したからアリウスの君たちもう帰っていいよ」
- 44二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:06:18
ところでサクラコ様の疑念が晴れてないんですけど?
- 45二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:31:33
コハルの下江も剛直で何より
- 46二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:44:33
夜中なのにたらふく笑って腹クッソいてぇんだが
- 47二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:48:51
あのさ、ダイタクヘリオスってなんやでてきたっけなぁ?
と思って調べたんや競走馬やないかいなんでや走ってる途中に競馬でもしたんか - 48二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:51:31
アリウスとの密通も何も初っ端からアリスクいるじゃねーか
- 49二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:04:43
810倍の、元ネタはなんだろうか
- 50二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:06:38
そりゃ抵抗するわ
- 51二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:25:27
- 52二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:33:54
ヘリオスが太陽の神だしそこ繋がりだろう
- 53二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:41:12
原典だとラスト全裸よな?
- 54抜けがあったら御免よ25/06/28(土) 23:46:41
- 55二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 01:08:48
ところでリオ会長は人を信じられてますか?
- 56二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 01:26:01
- 57二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 05:57:47
>岩の裂目から滾々と、何か小さく囁きながら小清水が湧き出ているのである
ここ、原文だと「清水が湧き出ているのである」だから中の人ネタだな(ネルのcvは小清水亜美さん)
- 58二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 06:12:27
- 59二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 07:14:14
- 60二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 07:16:55
サンガツ
- 61二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 07:19:25
はい、はじめは私のアズサちゃんを。それから、御自身のお世嗣を。それから、コハルちゃんを。それから、肉〇器のハナコさんを。
お世嗣って誰ぇ!?