- 1二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:25:27
- 2二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:26:28
- 3二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:29:10
建て乙やで
- 4二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:34:02
待機
- 5二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:38:29
建て乙
- 6二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:39:56
建て乙
- 7二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:44:00
保守
- 8二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:45:00
あげ
- 9二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:46:35
保守
- 10二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 22:47:37
保守完了
- 11二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:31:27
待機
- 12二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 03:47:11
建て乙
- 13二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 05:59:33
待機
- 14スレ主25/06/29(日) 11:46:48
「ワシの名は、ガゼル・アプト・アゲイラ。神竜の国ジオルダルの聖騎士にして、八神選定者が一人、聖者の称号を賜わりし者なりっ! 不適合者アノス・ヴォルディゴード。貴様に神の救済をくれてやろう」
足を踏みならすように一歩踏み込み、ガゼルがぎろりと睨んでくる。
「ふむ。救いならば間に合っているが?」
「異端者の言葉など聞く耳持たんわっ!」
ガゼルは指輪を掲げる。そこに魔力が集った次の瞬間、ひらり、と一つの雪月花が、舞い降りてきた。
彼は我に返ったように、アルカナを見た。
「エーベラストアンゼッタでも、聖座の間においては不戦の盟約が結ばれている」
「これは戦いではなく、救済なのだ」
「竜の子よ。言い方を変えればいいというものではない。神は正しく、あなたを見ている
ちゃんと話がわかる審判 - 15スレ主25/06/29(日) 11:51:18
アルカナが手をかざすと、一片の雪月花が俺の目の前に舞い降りてくる。
それは仄かに光りを放ち、ある宝石に姿を変えた。
透き通った黒石。その黒石の中心には紅い石があるが、光を灯してはいない。
「それは、選定の盟珠と呼ばれるものです。盟珠とは、古来より、人と神が盟約を交わす際に、用いられた魔法具です。選定の盟珠はその中でも特別なもの。選定の神のみに創ることが許され、八神選定者にのみ与えられます。神との盟約が成立すれば、その盟珠は火を灯し、光り輝くでしょう」
こういうバトロワ参加者的なアイテムってワクワクするよね - 16スレ主25/06/29(日) 11:53:19
「神と盟約は交わす方法は?」
「盟約の内容は神により異なりますが、共通しているのは一つ。神を信じると誓うことです。後は神が導いてくださるでしょう」
神を信じるか。
そんな縁が、そうそうあるとも思えぬな。
この作品の神ねぇ…… - 17スレ主25/06/29(日) 11:55:46
「ふむ。一つ疑問があるのだが、八名の選定神のうちどの者かが、俺を選定者に選んだのだろう?」
俺の問いにアヒデはうなずく。
「だが、俺は選定神を名乗る神には会ったことがないぞ」
「あらゆる神は、選定者を選ぶことで選定の神となる資格を有しています」
なるほど。そういうことか。
「つまり、俺を選んだ神は、その時点ではまだ選定神ではなかったということだな」
「ええ、あなたを選び、初めて選定の神となられました。今、あなたの前に姿を現さない理由はわかりませんが、神には崇高なる想いがあります。不適合者という称号をお与えたになったということは、異端者であるあなたが、神の偉大さに気がつくための試練を課された、ということも考えられるでしょう」
たとえば、ミリティアが俺を選んでいたならば、彼女は創造神であるとともに、選定神にもなるというわけか。
アノス様を選ぶ神…… - 18スレ主25/06/29(日) 11:57:34
「大体わかった。だが、やはり選定審判などに興味はわかぬ。むしろ、代行者など生まれてもらっては困るな。せっかく、この世から破壊の秩序を奪いさったのだ」
そう考えれば、この選定審判を潰させぬために、神はあえて俺を選定者にしたのかもしれぬな。
代行者になろうとしている者をすべて滅ぼせば、俺が代行者に祭り上げられてしまうのだろう。
神の力でも俺を滅ぼせぬと知り、逆に俺を神にしてしまおうとでも考えたか?
「望む望まぬとも、関係のないことです、不適合者アノス・ヴォルディゴード。選ばれた以上、あなたが取るべき道は二つに一つ。審判のときを待ち、信仰の道を歩むか。それとも、神に背を向け、滅びるかです」
「つまり、こういうことか? 神が選んだのだから、辞退は許さぬ、と」
厳粛にアヒデはうなずいた。
「その通りです。神とはすなわちこの世の秩序。逆らうことなど、誰にもかないません。あなたの意志など、神の前ではちっぽけなものなのです」
「人でありながら、まるで神のようなことを言うものだ」
選定審判の大まかな概要は理解できた。
神がかかわっているのだから、十中八九ろくなことにはなるまい。
この辺の理不尽さは実に神様って感じ - 19スレ主25/06/29(日) 11:59:30
「それと、忠告しておきます。神を見つけ、盟約を交わすまでは、ガエラヘスタから出ない方がよろしい。ただし、このエーベラストアンゼッタには留まらない方がいいでしょう」
「ほう。なぜだ?」
「エーベラストアンゼッタでは、この聖座の間を除き、不戦の盟約が働きません。ここは、選定者たちが己の信仰を示すための場ですから」
エーベラストアンゼッタの中にいる限り、聖座の間以外では、いつでも戦ってよい、ということか。
「あなたはここにいる選定者に素顔をさらしてしまった。まだ神と盟約を交わしていないことも、明らかにした。不戦の盟約の結ばれたこの聖都を出れば、絶好の獲物でしかありません」
選定者は誰もが、盟約を交わした神を召喚することができる。
神と盟約を交わしていない俺を滅ぼすのは容易いということか。
確かに、選定審判の仕組み上は、相手の戦力が調わぬうちに潰しておくのが定石だろうがな。
「お前の頭はつい先日のことも覚えていられぬのか? その俺に一蹴されたのは誰だった?」
アヒデは動じず、言葉を返した。
「あなたが神と盟約を交わしていないのならば、先日のことは簡単に説明がつきます。つまり、あなたは他の選定者と同盟を結んでいる。その選定者の神の力を、あなたは使っていたというわけです」
すべてお見通しだと言わんばかりだな。
気持ちいいくらい言ってる事外れてるなこいつ - 20スレ主25/06/29(日) 12:01:12
「――枢機卿の忠告を無視するとは、どこまでも愚かな、異端者よ」
背後から声が響く。
先程、俺に因縁をつけてきた、スキンヘッドの聖者ガゼルだった。
「まあ、いくつか読めば、法則性もわかるだろう」
「ていうか、後ろ。後ろ、無視していいわけ? なにか言ってるわ」
「礼儀も知らぬ奴の言葉に、耳を貸してやる義理はない」
言った瞬間、ガゼルが俺の肩をつかんだ。
「神の救済を受けるがいいっ。この異端者めがっ!!」
「ああ、そこをどけ。邪魔だぞ」
振り向きざまに、ガゼルの手を軽くふりほどく。
「ぬおっ……なっ……! ごほっ、おっ、おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」
スピードかませ - 21スレ主25/06/29(日) 12:02:27
「……なんという罪深き者か……! 神の許しを請うがいい……異端者め……」
よろよろと立ち上がりながらも、ガゼルは俺に殺気を向ける。
「ガゼルと言ったな。やるならやるで構わないがな」
数歩、奴に向かって歩いていき、視線を飛ばす。
「さっさと神を喚べ。お前では一秒ももたんぞ」
どんな戦いだろうとこの余裕よ - 22二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 12:54:39
マジでブレないな、アノス様……
- 23二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 13:36:31
- 24二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 13:40:32
- 25二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 14:02:27
- 26二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 14:03:29
このレスは削除されています
- 27二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 18:46:19
待機
- 28二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:36:43
待機
- 29二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 00:14:26
待機
- 30二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 03:41:36
アノスは常に余裕そうなの好きだわ。安心感あるよね
- 31二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 06:28:47
本当に頼りになるよな
- 32二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 12:40:28
待機
- 33二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 14:07:58
保守
- 34二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 21:16:01
待機
- 35スレ主25/06/30(月) 22:49:29
「我らに救いを、悪しき者に裁きを」
祈りの声がそこかしこから響く。
ガゼルはそっと瞳を閉じ、詠唱を始める。
「盟約に従い、この場に来た――が、ふっ……!」
詠唱は途中で止まった。
奴が目を閉じた隙にゆるりと近づき、指先で奴の喉を貫いたのだ。
「……ご……お……ぉ、ぁ……」
詠唱することができず、ガゼルは口をパクパクと動かしている。
「アヒデとの戦いで、ふと気になったのだがな。その詠唱が必須ならば、俺の前で召喚魔法など使えぬぞ」
「……お…………の、れぇ……」
指を引き抜けば、奴は再び石碑にもたれるように倒れ込んだ。
「……神聖なる祈りを妨げるとは、貴様は……それでも、選定者か……! どこまで神を侮辱をするつもりだっ……!?」
「言ったはずだ。そんなものになったつもりはない、と」
舐めプは失礼だもんな!そりゃ詠唱潰すよね! - 36スレ主25/06/30(月) 22:51:18
「愚か者がっ。ワシは聖騎士、神の力に頼りきった神官と一緒にしたかっ!」
飛び起きると同時に、ガゼルは腰の剣を抜く。
それは勢いよく俺の首を切り裂こうとして、逆にパキンッとへし折れた。
「……なっ……!?」
「ふむ。どんなものかと思えば、地底世界の騎士とやらは雑魚なのか? 俺の配下には貴様の千倍は太刀筋が速い者がいるぞ」
ガゼルの眼前に手の平をかざす。
「<獄炎殲滅砲ジオ・グレイズ>」
漆黒の太陽が聖騎士の体を包み込む。
ゴオオオォォォォッと激しい音を立て、その体を瞬く間に燃やし尽くす。
黒き炎が消えれば、そこに残されたのは盟珠の指輪だけだった。
「ほう。傷一つつかぬか。どうやら、並の魔法具ではないらしいな」
これは由緒正しきかませ
- 37スレ主25/06/30(月) 22:52:35
「驚愕し、畏れ、そして敬え、異端者よ。死者をも蘇らせる、偉大にして崇高なる力、これが神の与えたもうた奇跡である!」
「蘇生したぐらいでなにを粋がっている。そんなものが奇跡ならば、そこら中で起きているぞ」
「……なにぃ?」
予想通り、特に神を喚ぶのに詠唱は必要なかったようだな。
それどころか、あの盟珠さえあれば、死んだ後でも盟約に従って神を喚べる、か。
困った事に本当なんだこれが - 38スレ主25/06/30(月) 22:54:51
手をかざし、<魔黒雷帝>を放つ。
だが、漆黒の稲妻が奴の体をすり抜けた。
それ以上の速度で、ガゼルは俺の背後に回り込んでいたのだ。
「見違えるように速くなったものだな。それはなんだ?」
「憑依召喚である。神をこの身に降ろし、その秩序を我がものとしたのだ。これこそ、神の御業なり」
アヒデの言っていた召喚方法の一つか。
ヌテラ・ド・ヒアナは滅びた。
どうやら喚べる神は一体とは限らぬようだな。
選定の神の他にも、盟約を交わすことができるのだろう。
「その速さ、光の秩序を手に入れたか?」
ガゼルは不敵な笑みを覗かせる。
「刮目し、仰ぎ見るがよい。我が選定の神は、光の秩序を司る。本来の名は、輝光神ジオッセリア。この世をあまねく照らす、大いなる光である!」
相手が相手じゃなかったら間違いなく強いんだけどなぁ……
- 39スレ主25/06/30(月) 22:56:38
先程よりも輝きを増して、俺の周囲を光となったガゼルが周回する。
「これこそ、輝光神ジオッセリアの奇跡っ! 何人たりとも、決して追いつくことはできぬ、神の疾走ぞっ!!」
「ふむ。そこか」
がしっと俺はその光を<森羅万掌>の手でわしづかみにした。
「……なん……ばっ……!?」
「そら、つかまえたぞ」
ガゼルの体を思いきり持ち上げ、床に全力で叩き落とす。
ドゴォォォッと床が破壊され、奴は血を吐いた。
「……がはぁっ……! ば……か……な…………!?」
信じられないといった表情で、ガゼルは言葉をこぼす。
「光の速さで駆ければ、俺から逃れられるとでも思ったか」
もうアノス様が何しても驚かない気がするわ俺
- 40スレ主25/06/30(月) 22:58:23
「……な……ん…………だと…………? 神の力が……消える……? ワシの……神が……消えてゆく……そんな……やめろ、やめろぉぉっ……やめんかぁぁ、異端者がぁぁぁっ…………!!」
ぐしゃり、と神の根源を握り潰す。
その魔力がふっと消滅した。
「……ぁ…………ぁ…………ワシの神が…………聖者の証が…………ぁぁ…………ぁぁ……」
俺は床に転がった神槍ベヘテノスをつかみ、それを握り潰して、穿神ベヘウスを滅ぼす。
「……消えた…………神が……ワシの…………神が…………そんな…………」
「地底を這いずる聖騎士よ。今度はこちらが教えてやろう」
光をなくした瞳で跪き、項垂れるガゼルを、見下ろしながら俺は言う。
「これが、神などに頼らぬ、地上の魔王の戦いだ」
神使う者達の戦いで神がいらない男(ジレンマ) - 41スレ主25/06/30(月) 22:59:32
かませと見せかけて、やっぱりかませと思わせ、実はかませと油断させて、最後はかませで決めた――!
最初から最後までかませじゃねえか! - 42二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 23:07:34
いや、他作品でなら間違いなくガゼルも強いんだろうけどね?相手というか、世界観が悪すぎましたねぇ
- 43二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 04:55:28
- 44二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 08:03:58
何らかの秩序が働いているからコレで済んでいるけど、現実世界であれば周辺の星ごと吹っ飛びかねないからな?このおっさんがやってることって
- 45スレ主25/07/01(火) 09:31:08
- 46二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 11:06:27
アニメ放送時声優ネタと髪ネタで弄られてたガゼルさん
- 47二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 16:08:40
保守
- 48二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 21:09:18
待機
- 49二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 22:43:13
待機
- 50二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 05:54:20
待機
- 51二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 08:05:10
保守
- 52二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 14:32:38
保守
- 53二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 20:56:03
待機
- 54二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 22:42:46
保守
- 55二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 01:21:45
待機
- 56二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 07:14:37
待機
- 57二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 12:05:05
待機
- 58スレ主25/07/03(木) 12:07:06
「……聖者様は、あの者は、神を持たないとおっしゃっていた……恐らくは、地上から選定審判に招かれたという不適合者でしょう……」
「しかし、そんなことが信じられますかっ!? 神を召喚せずに、聖者様に打ち勝ったなどと……」
「ええ。生身の体で、大いなる光の秩序、輝光神ジオッセリアのお力を上回るなんて……ありえない、いいえ、あってはならないことです……」
「ですが、聖者様が嘘をつくとは思えませんっ!」
「……では、あの者はいったい、なんだというのですか……!? 神を信じぬ異端者が、神を下すなどあってはならないっ!」
「それに、あの者は、神のみならず、なに一つ、竜すら召喚していないのではっ?」
「馬鹿な……。ではいったいどうやって戦っていたというのですか?」
「落ちつきなさい。これは神が与えたもうた試練に違いありませんっ!!」
ちゃんと現実見て狼狽えてる辺り今までのモブ達よりは理解力ある( - 59スレ主25/07/03(木) 12:09:27
「さて。静かになったことだ。石碑の解読といくか」
サーシャとミーシャの元へ戻り、石碑に視線を落とす。
「そんな野良猫を追っ払ったぐらいの調子で神を滅ぼさないでよね。なんか、ものすごーく白い目で見られてるわ」
生徒たちをちらりと見ながら、サーシャが言う。
「なに、信心深い国のようだ。神の力を上回る者が珍しいのだろう。気にすることもあるまい」
「ミーシャ、なにか言ってあげて」
ミーシャはぱちぱちと瞬きをした後、俺に視線を向けた。
「動じない」
「図太いの間違いじゃないかしら?」
そんな風にサーシャがぼやく。
ミーシャが小首をかしげて言う。
「謙虚?」
「神をあっさり倒して謙虚とか、恐いからやめてほしいわ……」
まあアノス様本人からしたら降りかかる火の粉とかそういう感じだし……自分から喧嘩わざわざ売りに行かないし…… - 60スレ主25/07/03(木) 12:11:38
「竜の子……?」
ミーシャが不思議そうに首をかしげた。
「どうして?」
「彼らの先祖は竜から生まれたそうだ」
「……竜は人を産む?」
「俺とて、初耳だがな」
とはいえ、竜の生態には謎も多く、莫大な魔力を有している。
産んだとしても不思議はあるまい。
その辺りのことがどこかに載っていないか、石碑を読み進める。
「ふむ。書いてあった。竜は人や魔族の根源を食らう。胎内でその根源を新たな生命に生まれ変わらせるということのようだ。竜人はこの地底世界に生きる者たちの総称だが、竜から直接産み落とされた者を特に子竜しりゅうと呼ぶようだ」
竜の胎内が<転生>と似た魔法効果を持った、転生器官ということか。
「子竜は竜の力を持ち、また強大な魔力を有する。その竜が食べた根源がすべて束ねられ、一つの命として産み落とされるためだ」
「なんか、とんでもないわね……」
今更だけどこの世界の魔法ってアノス様除いても割となんでもありだよね
- 61スレ主25/07/03(木) 12:15:22
ミーシャがそう声をかけ、とことこと壁の方へ歩いていった。
無論、その壁にはなにもない。魔眼で深淵を覗いてもなにも見えぬ。
だが、ミーシャは迷いなく、その壁に指先を触れる。
そうして、魔力を送った。
すると、光がぱっと弾け、壁に文字が浮かび上がった。
「……し……信じられませんわ……!」
学府の生徒がわなわなと震えながらも、声を発した。
「……エーベラストアンゼッタの秘匿文字は、神の力でも見抜けませんのに……!」
「……どうして、地上の異端者に、こんなことが……」
神の力でも見抜けぬというのは、あながち大げさでもなさそうだな。
俺の魔眼にも見えなかったのだから。
「ミーシャ。なぜわかった?」
彼女は首を僅かに傾けた。
「見えた気がした。なんとなく」
ここ大事 - 62スレ主25/07/03(木) 12:21:01
「む、無駄ですよ、異端者っ!」
黙ってはいられないといった風に、学府の生徒たちが声を上げた。
「エーベラストアンゼッタの秘匿文字は、神の神託です……!」
「序文ですら、信仰なき者に読むことは決してあたわず……!」
「本文に至っては、少なくとも一千年以上、誰にも読み解かれたことがありません。神の言葉を、異端者に解読するなど決してできるものではありません……!」
「下がりなさいっ! そこは、文字も読めぬものが、いていい場所ではありませんっ!」
ざっと壁に描かれた文字を斜め読みする。
「ふむ。『始まりはこの城、エーベラストアンゼッタより』か?」
俺が言葉を口にすると、正解だと言わんばかりに壁の文字が蒼白く光った。
「……そ……………………んな…………………………!?」
「……どう……して……神の……言葉を………………!」
「……異端者が…………序文とはいえ……神託を…………」
「いえ、これは悪魔の奸計っ! 私たちの信仰心が、試されているのですっ」
生徒たちは跪き、神にすがるように祈りを捧げる。
いやーリアクション担当として気持ち良いな生徒の皆さん - 63スレ主25/07/03(木) 12:22:12
神を召喚しても、よほどのことがなければ、これを解読してはくれぬだろう。
古神文字には魔力が伴う。いかに説明されようと、本来、神の眼を持ってしか読めぬ文字だしな。
それゆえ、読み解かれたことがないというわけだ。
「――そこは無限の夜、永遠の無――」
俺はその文章を読んでいく。
――遙か地底に、神の城が生まれた――
――始まりなき夜を、せめて優しく照らせるように――
――地上に日は昇らず、滅びは訪れない――
――生命は生まれず、世界は止まる――
――大切なのは秩序か、人か――
――答えは、あなたが知っている――
――あなただけが、知っている――
さてさて? - 64二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 14:29:44
スレ主に言っておく。
この文章の中の伏線が魔王学院において一番わかりやすくて、一番大きな伏線だと思う - 65スレ主25/07/03(木) 14:48:57
- 66二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 15:54:50
アノスでも気づかなかった文字に気づけるなんてミーシャ凄い
- 67二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 18:07:34
- 68二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 22:35:01
保守
- 69スレ主25/07/03(木) 22:48:11
なるほど、了解しました
- 70二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 02:00:06
待機
- 71二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 06:24:58
待機
- 72二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 08:14:00
待機
- 73二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 13:33:34
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- 74二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 19:38:17
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- 75二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 22:55:50
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- 76二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 02:14:03
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- 77二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 08:08:27
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- 78二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 12:45:54
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- 79二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 19:57:07
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- 80二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 22:30:18
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- 81二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 23:48:00
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- 82二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 00:41:41
待機
- 83二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 05:35:00
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- 84二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 12:24:03
待機
- 85スレ主25/07/06(日) 18:50:07
「……まだ、だ……」
呟きが聞こえた。
「……まだ神は、ワシを見捨ててはおらぬはず……」
聖者ガゼルが虚ろな瞳でそう口にして、よろよろと立ち上がった。
彼は逃げ出すように、魔法陣へ向かう。
だが、その途中で足を止めた。
ガゼルの眼前に、銀髪の少女、アルカナがいたのだ。
彼女はすっとその手をガゼルに差し出す。
「盟珠を」
ガゼルはびくっと体を震わせ、盟珠の指輪をつけた手を隠すようにして身構えた。
「偉大なる選定神アルカナ。ワシの審判はまだ下ってはおりません。新たな神を迎え、この聖地に戻って参ります……」
静かにアルカナは首を左右に振った。
「我が信徒、神託者アヒデ・アロボ・アガーツェの祈りにより、選定の神アルカナの名において、汝、聖者ガゼル・アプト・アゲイラに審判を下す」
ガゼル終了のお知らせ(最初から終わってたとは言わない) - 86スレ主25/07/06(日) 18:57:01
彼女の体が、強大な魔力で光り輝く。
三つの神の根源が彼女の根源と同化しているのだ。
先程、アヒデが口にした通り、神を供物にし、それを食らっているということだろう。
つまり、三神が有していた秩序を、アルカナは手に入れた、か。
「……す、枢機卿っ……!!」
傷口を回復魔法で止血もせず、ガゼルがアヒデを睨みつける。
「あなたは……ワシを裏切るのかっ……<全能なる煌輝>エクエスを信仰する、ジオルダルの信徒をっ……!?」
アヒデは厳かな所作で、祈りを捧げる。
その表情は傲慢な正義に満ちていた。
「神託が下りました。争うでもなく、競うでもなく、共に戦いましょう。あなたの意志、あなたの神は、わたしが継げと<全能なる煌輝>エクエスはおっしゃいました」
「……馬鹿なっ…………」
抗議の声がガゼルから漏れる。
「馬鹿な馬鹿な馬鹿なぁぁっ……!! それでは、ワシの救いは? 救済はどうなるっ!? 聖騎士として、聖者として、神に捧げたワシの一生は、なんだったというのだ?」
「それもまた試練です、ガゼル。あなたならば、乗り越えられると神はおっしゃっています」
神様超適当
- 87スレ主25/07/06(日) 18:58:52
「さあ、懺悔なさい。あなたの罪を、神はお許しくださるでしょう」
体を震わせ、涙をこぼしながら、ガゼルは言う。
「神よ。<全能なる煌輝>エクエスよ。ワシは罪を犯しました。あなたを疑い、神託に背こうとしたことを、どうかお許しくださいますよう」
「<全能なる煌輝>エクエスよ。従順なる信徒、聖騎士ガゼルに許しを」
アヒデは目を閉じ、祈りを捧げる。
「あなたは許されました」
「神よ。感謝します」
涙ながらにそう口にし、ガゼルは床に落ちていた剣の破片を手にした。
「もう一つ、どうか神よ、お許しを。あなたの課した試練から逃れ、あなたのもとへ、旅立つことを――」
一瞬の戸惑いと怯え。
そんな感情を振り切るように、ガゼルは覚悟を決めた表情を浮かべると、その破片をぐっと自らの喉元へ押しつける。
だが、破片が突き刺さる寸前で、彼の体は停止した。
一片の雪月花がガゼルのもとへ舞い降り、その体を凍結させていたのだ。
アルカナが悲しげに、ガゼルを見つめている。
「我が選定の神、アルカナ。あなたは慈悲深い。しかし、この氷が溶ければ、彼はまた神のもとへ向かおうとするでしょう」
狂ってんなぁ……
- 88スレ主25/07/06(日) 19:03:23
「ふむ。とんだ茶番だな、アヒデ」
彼は立ち止まり、僅かに顔だけを俺の方へ向ける。
「異端者に理解されようとは思いません」
「その言葉は、殺したガゼルにでも言ってやれ」
「彼は救われました」
「くはは。救われた? 神のもとへ向かったからか? 笑わせるな、ペテン師が」
無表情でこちらを見据えるアヒデに、俺は言った。
「その程度の救いしか与えてやれず、なにが神だ。<全能なる煌輝>エクエスが聞いて呆れる」
アヒデは俺から視線を外し、そのまま魔法陣の上に乗る。
「私としては、今ここであなたとの聖戦に臨んでも一向に構いません。しかし、神はその神託を私に与えてくださらない。異端者を見逃すことになるとは、遺憾いかん極まりないことです」
「ほう。戦わないで済む理由を考えておいたか。大した逃げ口上だな。つまり、こういうことだろう? 今のアルカナでは俺に勝てぬから、他の神を食らって力をつけてくる、と」
「異端者のあなたには、いずれ、神の裁きが下るでしょう。そのときが訪れるまで、懺悔の用意をしていなさい、アノス・ヴォルディゴード」
やっぱアヒデって小物感凄いんだよなぁ
- 89スレ主25/07/06(日) 19:07:39
死んだガゼルを転生させているのだろう。
術式を見たところ、記憶も力も受け継がせず、殆ど自然に任せた転生か。
いつ蘇るかも定かではあるまい。
「ふむ。お前はなぜ、あんな男を選んだのだ?」
アルカナは淡々と答えた。
「彼は救いようのない人で、わたしは神だった」
神だから、救いようのないあの男をあえて選んだか。
理に適ってはいるが、とても救えたようには見えぬ。
草 - 90スレ主25/07/06(日) 19:09:06
「もう行くのか?」
「あなたは敵」
「もっともだ」
「一つだけ忠告しておく。地上に帰った方がいい」
「ほう。なぜだ?」
「それ以上は言えない」
罠なのか、それとも、本気で忠告しているのか?
「俺が敵だからか?」
「そう」
「では、なぜ忠告する?」
「敵を救ってはいけない?」
「面白いことを言うものだ」
それが事実だとすれば、アルカナの行動は、アヒデとの盟約に縛られているといったところか。
「そんな台詞を口にする神族はなかなかいまい」
好きなやりとり - 91二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 19:34:15
アヒデは(小物とかませ力が)作品トップレベルですごいぞ
- 92二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 20:05:10
これ以上、小物という言葉が似合う敵は居なかったな。ある意味でゼペス君以上かもしれん
- 93二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 20:20:02
アルカナは「秩序を保つだけの神」と違って「救いを与える神」という割と現実世界含め「人々が願う神」なのいいと思う
- 94二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 20:44:52
アヒデは実情を考えるとちょっと道化過ぎるからね・・・
- 95二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:38:00
小物界の大物アヒデ
いややっぱり小物界でも小物かも - 96二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 00:13:38
待機
- 97二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 07:33:22
待機
- 98二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 14:05:10
待機
- 99二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 22:30:02
待機
- 100二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 01:11:20
待機
- 101二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 06:33:10
だからこそアニメ最終話でやった記憶も人格も全部、本来のアルカナによる作り物って事実が今のアルカナにとっては辛いよね
- 102二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 12:23:44
待機
- 103二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 14:40:13
待機
- 104二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 23:32:40
保守
- 105二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 01:17:31
待機
- 106スレ主25/07/09(水) 04:49:19
「……神族は、感情が見えない。エウゴ・ラ・ラヴィアズも、ノウスガリアも、ヌテラ・ド・ヒアナもそうだった……」
殆どの場合において、神は秩序に従うだけだ。人が感情で動くように、神は秩序で動いている。
改めて振り返るとマジでロクな神いねえ - 107スレ主25/07/09(水) 04:50:30
同門の信徒を、その召喚神と選定の神を、アヒデは供物として捧げた。
それが、アルカナの本意によるものだったとは限らぬ。
彼女は自害しようとしたガゼルの命を、仮死状態にすることでつなぎ止めようとした。死んだ彼を転生させた。
もしもアルカナが真実、その優しさでガゼルを救おうとしたのならば、そんな神にはミリティア以外、俺は出会ったこともない。
このアノス様のミリティアへの高評価良いよね - 108スレ主25/07/09(水) 04:51:59
「カッカッカ、言った通り、戻ってきたではないか」
穴から出てきた俺のもとへ、エールドメードがやってきた。
「ふむ。待たせたか?」
「いやいや、ちょうどいい頃合いだ、アノシュ・ポルティコーロ。見よ。今まさに、最後の一人が追いかけっこを終えるところだっ!」
エールドメードが杖で指す。
すると、そこには首輪をつけた魔王学院の生徒が、竜に追われながら、全力疾走していた。
皇族派のラモンである。
「ぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
決死の形相で彼は走っている。
ラモン用の<熾死の砂時計>はとっくに砂が落ちきっているようで、彼が生き残る術は、最早一本杉へ到着する以外にない。
このタイミング、竜とラモンの速度を考えれば、ぎりぎり彼が先に到着する。
だが、次の瞬間、地面が爆発し、土中から現れたもう一匹の竜がラモンを吹っ飛ばした。
「……が、はぁぁっ…………!」
ボールのように勢いよく宙を舞った彼は、そのままこちらへ向かってきて、一本杉にぶち当たった。
木が激しく揺れ、ひらひらと木の葉が舞い落ちてくる。
彼の目は光を失っていた。
「死してなお、目的を達成するとは。その覚悟、見事ではないか。魔族とはかくありたいものだ」
なんだかんだで皆頑張ってたの不憫だけど笑う
- 109スレ主25/07/09(水) 04:55:43
「なんでも、ミッドヘイズを魔王の支配から救う良い方法があるっていう「ああ……ああ、これに間違いねえと思う。もうちょっと光ってたような気がするが、こんな風な宝石だった」
神と盟約を交わしていないため、この盟珠には火が灯っていないからな。
しかし、間違いないだろう。
となれば、皇族派に竜を引き渡したのは、八神選定者の可能性が高い。
アヒデか、それとも別の者か?
「他になにか言っていたことは?」
「特には……あ、そういや、ゼルセアス様が言ってたんだが、使い魔がハヤブサだったんだよな」
魔族はフクロウを、人間はハヤブサを使い魔として好んで使う。
ただし、熟練した術者ならば、他の使い魔を使えぬというわけではない。
「それだけならば珍しいことでもないが、なにかあるのか?」
「……ああ、いや、まだわかんねえって話なんだけどよ。どうも、そのハヤブサをガイラディーテの王宮で見たことがあるそうなんだわ……」
アゼシオンとの戦争の後、ゼルセアスはエリオやメルヘイスとともに、人間との交渉のため、何度もガイラディーテを訪れている。
王宮へ出入りをしたこともあるだろう。
「つっても、ハヤブサの見分けなんて普通つくもんじゃねえからよ。俺はゼルセアス様の気のせいなんじゃねえかとは思ってるぜ」
「ふむ。ご苦労だった。またなにかわかれば、俺に連絡するように言っておいてくれ」
「わかった」
ラモンはほっとしたような表情を浮かべ、去っていった。
首輪ついてるとはいえちゃんと仕事はしてるんだよなラモンとか - 110スレ主25/07/09(水) 04:58:05
王宮は竜討伐に消極的な姿勢だった。
単に無能なだけかと思っていたが、なかなかどうして、まさかそれ以下の可能性も出てこようとはな。
「ここで竜を飼っているのかもしれぬ」
「王宮でっ? だって、人間が竜の被害にあってるんでしょっ? 自分たちの国民を竜に襲わせて、なにがしたいのよっ……?」
サーシャが驚いたように声を発する。
「まだ可能性にすぎぬ」
「あー、でも、かくれんぼはやめておいた方が良さそうだぞっ。見つかってもボクたちは問題ないけど、もしアゼシオンの街に竜を放されたりしたら……」
エレオノールが深刻そうに言う。
王宮が竜を飼っているとして、追い詰めればヤケを起こさぬとも限らぬ。
無能以下…… - 111スレ主25/07/09(水) 05:00:25
「ミサ。お前も一緒に行くといい。婚約者だと言えば、歓迎してくれるだろう」
「……あ、あはは……お父さんには知られないようにしないといけませんね……」
ミサは苦笑しながらも、ほんの少し嬉しそうにレイに並んだ。
「気をつけろ。ただ勇者カノンを歓迎したい、という話とも限らぬ」
レイは足を止め、困ったように微笑む。
「……人間が愚かじゃないことを祈りたいところだけどね」
二人は大講堂を出ていった。
レイ人間の愚かさにはうんざりだろうからなぁ…… - 112二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 07:40:28
ホント、もっと平和にならんもんかねぇ。ここら辺は全体的に平和になったとは言え、まだまだ現実世界と似たようなもんなのか……
- 113二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 08:50:26
- 114二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 11:14:46
待機
- 115二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 15:16:32
ラモンがアノシュ引き込まなかったらバレなかったからね
- 116二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 18:30:45
待機
- 117二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 19:01:32
待機
- 118二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 23:32:29
待機
- 119二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 07:27:15
待機
- 120二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:45:18
待機
- 121二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 19:41:33
待機
- 122二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 22:44:34
待機
- 123二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 06:14:06
アノスはちょくちょくモノローグでミリティアに触れてるけど一貫して評価高いのいいよね
- 124二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 12:57:51
待機
- 125二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 22:02:39
待機
- 126二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 03:45:41
待機
- 127二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:54:04
保守
- 128二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 14:52:08
待機
- 129二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 21:44:44
待機
- 130スレ主25/07/12(土) 22:02:38
ミサはちょこんとレイの手に触れた。
すると、レイの全身に<聖愛域>の光が集う。
勇者学院の生徒たちが、ざわめき始めた。
「お、おいっ。あれは………………!?」
「マジか……<聖愛域>かよ……! 伝説の大魔法じゃねぇか……」
「……当たり前っちゃ当たり前だよな。本物の勇者様なんだからよ……」
「というか、ってことはさ。あの二人、デキてんのか?」
「そもそもさ、どんなに魔力があったとしても、俺らには縁のない魔法だよなぁ……」
「ちっ。見せつけてくれるぜ……」
見せつけてくれるぜ(色々な意味で
- 131スレ主25/07/12(土) 22:05:31
「エミリア先生、あなたは暴虐の魔王に呪いをかけられた。皇族としての体を失い、魔力さえも弱くなってしまった」
生徒たちから、どよめきが漏れる。
「あれ? もしかして、エミリア先生って、俺たちの担任だったエミリア先生なのか……? 皇族派の……?」
「……でも、全然違わない……? 顔もそうだけど、なんか性格も、ちょっと違うような……?」
「……でも、まあ、あの魔王様に呪いをかけられたんなら、体も人格も歪んでも不思議はないっていうか……」
「……だよね、うん……」
どことなく納得しているのは魔王学院の生徒たちだ。
その反面、勇者学院の生徒たちは、あまり言葉を発さず、けれども驚いたような視線をエミリアに注いでいた。
「え、エールドメード先生……そんなことは今、どうでもいいですよねっ……!」
「おいおい、この熾死王がどうでもいいことを授業中に口にすると思っているのか」
こいつ本当に魔王絡まなかったらひたすら有能な気配りするんだよな、ほぼ別人なってたとはいえ生徒達誰も気づいてなかったの草 - 132スレ主25/07/12(土) 22:08:48
彼女は手をかざし、<竜縛結界封>の魔法陣を描く。
深く、深く、その魔眼めで<聖域>の深淵を覗き、魔力がまた僅かに大きくなった。
その分だけ、彼女は<聖域>に集う想いに触れる。
――つーか、エミリアって、黙ってりゃ顔は可愛いよな。顔だけな――
――そう? ぼくは怒ってる顔の方が好きだけどね。いじめたくなる顔してるし――
――二人とも、<聖域>の魔法中ですから、心を覗かれますよ。
しかし、彼女、童顔だと思っていたら、転生者でしたか――
「ら、ラオス君っ! ハイネ君っ! レドリアーノ君っっっ!!! 授業中になにを考えてるんですかぁーーっっ!!」
エミリアの怒声が飛んだ瞬間、<聖域>で描いた魔法陣がさっと霧散する。
「あ…………」
しまった、という表情をエミリアが浮かべる。
初めての<竜縛結界封>は、あえなく失敗に終わった。
ここから本格的にはじまるエミリア先生のサクセスストーリー
- 133スレ主25/07/12(土) 22:09:54
学校で使いたくない魔法、第一位……<聖愛域テオ・アスク>……。
割とどこでもあんま使いたくな(
- 134二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 22:11:34
恥ずかしすぎて使える気がしない魔法ランキング、堂々の第一位やな……
- 135二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 05:29:58
- 136二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 10:04:32
待機
- 137二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 15:16:13
待機
- 138二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 21:31:19
待機
- 139二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 22:37:33
待機
- 140二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 00:59:26
待機
- 141二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 07:37:19
待機
- 142二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 14:01:40
待機
- 143スレ主25/07/14(月) 21:03:09
誇り
「ほら、あなたたちのせいで失敗したじゃないですか」
エミリアがツンとした口調でハイネたちを責める。
「おうおう。そりゃ、悪かったな」
悪びれず、ラオスが言う。
「てか、エミリア。結界魔法の魔法術式はそんな攻撃的な魔力の使い方じゃだめだよ。殺すんじゃなくて、活かすのが勇者の戦い方だからさ。って言っても、その後殺すんだけどねー」
ハイネがケラケラとからかうように笑う。
「先生ですっ! 大体、なんですかっ。生徒のくせに、教師に教えようとしないでくださいっ」
「そもそも、教師であるならば、わたしたちよりも十全に結界魔法を使いこなせなければならないのでは?」
「……うるさいっ!」
レドリアーノに怒りをぶつけると、エミリアがぷいっとそっぽを向く。
ここだけでも双方の対応がかなり柔らかくなってるのわかるの好きです - 144スレ主25/07/14(月) 21:04:37
「勇者が逃げるなど聞いたこともないわ。勇者カノンは死んでも戦ったというのにな。国家の火急のときに、その鍛えた逃げ足で逃げるつもりか」
ラオスは腰を浮かし、怒りの形相で彼を睨みつけた。
だが、彼の背後には何十人もの兵士たちがいる。
この間のように力尽くで黙らせることはできまい。
「偉そうな口は竜の一匹でも倒してから叩くのだな」
ザミラはまっすぐ壇上へ向かう。
そうして、レイとミサに頭を下げた。
「お迎えに上がりました、勇者カノン様、ミサ様。表に馬車の用意をいたしております。本日は王宮での晩餐会を。数日後には式典を行う準備も調うでしょう。それまで、どうかご滞在くださいますよう。飽きることのないよう、英雄として、真の勇者として、最大限、おもてなしをさせていただきます」
レイが微笑みを崩さずに、彼に問う。
「昨日も言ったけれど、ガイラディーテ王に謁見はできそうかい? 王族の方々にも会ってみたいんだけどね」
多分褒められてる勇者カノン本人が1番不快感感じてそう - 145スレ主25/07/14(月) 21:07:53
――勇者だって褒められて――
――勇者カノンの転生者だと褒めそやして――
――ある日突然、そうじゃないって言いやがった――
それは、失望だったのかもしれない。
――手の平を返したみたいにぞんざいに扱われて――
――ずっと、ずっと、言われた通りにやってきたじゃねえか――
――お前らが望む通りの勇者になったじゃねえか――
強い理不尽に、彼は責められているかのように。
――なんで、いきなり、言われた通りにやってきたことを、責められなきゃなんねえ――
――同じことをやっても、勇者カノンじゃなきゃ意味がねえんなら――
――なにをやったって、結局、無駄じゃねえかよ――
ただただ怒りの声を上げる。
――俺たちは勇者じゃねえ――
――ただのろくでもない偽者だ――
――ちきしょう――
――どうして本物に生まれなかったんだ――
――どうして――
この辺の本心なぁ……きついよなぁ……全部上とかの都合に振り回された結果だもんなぁ - 146スレ主25/07/14(月) 21:09:31
「であるならば、衝突は避けられるものではない。ぶつけ、ぶつかり、己を知って、相手を知るのだ。勇者というのは、心で戦うものだ。エミリア先生はそれを実践したのだ。醜い心をさらけだして、生徒とぶつかりあったのだ。これこそ、勇気ではないか、ん?」
エールドメードの言葉に、魔王学院の生徒たちは納得したような反応を見せる。
「では、オマエら。我々魔族は、魔族らしく体で戦おうでないか。今日は、竜に有効な攻撃手段を教えよう。ちょうどいい的まとを、東の砂漠で見つけてきた」
「あのー、先生……もしかして的って、もしかしなくても竜ですか?」
「その通り。カカカ。よいぞよいぞ、よいことだ。段々、察しがよくなってきたではないか!」
生徒たちがやっぱり、とげんなりした表情を浮かべる。
もうげんなり顔で済ませるくらいには慣れてきてるの草 - 147スレ主25/07/14(月) 21:15:03
「なんだかんだで、アノシュ君は、子供なんですね……」
彼女は首飾りについた鐘を軽く指先で撫でる。
「……出ていけなんて、教師の言う言葉じゃありません。職務放棄もいいところです。怒るのも当然ですよ。仲直りなんて……」
エミリアは俯き、暗い視線を床に落とす。
「しかし、彼らのために言ったのだろう」
驚いたようにエミリアは俺の顔を見た。
「エミリアは、自身を虐げる者すら守らなければならぬ勇者の宿命を、残酷だと思った。だから、やる気がないのなら出ていけと言った」
エミリアは無言のまま、しかし、瞳にもの悲しさを滲ませる。
「違うか?」
俯き、押し黙り、それから彼女は口を開く。
「……浅はかでしたよ……やっぱり、慣れないことはするものじゃありません……結局、彼らにかける言葉ではありませんでした……」
俺が無言でいると、エミリアは「でも……」と口にした。
「……さっきの彼らは、まるでわたしみたいで……」
一度自分を振り返るとこうも成長できるものとは…… - 148スレ主25/07/14(月) 21:17:23
「でも、誰も、そんな風には、思いません……」
「では、俺だけがそう思っていよう」
はっとしたように、エミリアが俺の目を見返した。
「今日のお前は良い先生だったぞ、エミリア」
言葉と同時に、はらり、と涙の雫が床を塗らす。
それを否定するように咄嗟に彼女は手で頬を拭った。
「……そんなことは……ありません……」
ぐっと涙を堪え、エミリアは前を向く。
「……でも、もう少し、喧嘩をしてこようと思います……どうせ、この際ですから……」
彼女は扉へ向かって歩いていく。
「エミリア」
呼びかけると、エミリアは振り向く。
「お前はがんばっているな」
「……なんですか、それ……」
そう言いながらも、彼女はどこか嬉しそうに微笑む。
立派ですよ…… - 149二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 21:44:46
先生も生徒も、互いに教えられながら成長していくんやね……
- 150二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 22:37:04
学園モノのドラマみたいだと思った
- 151二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 02:27:02
待機
- 152二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 07:29:56
待機
- 153二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 12:57:24
エミリアも勇者学院も環境が大分あれだったのが悪いのがよくわかる
- 154二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 21:57:00
待機
- 155二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 22:54:17
待機
- 156二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 01:35:34
待機
- 157二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 07:11:10
待機
- 158二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 14:08:05
待機
- 159二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:04:21
待機
- 160二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 22:54:38
待機
- 161スレ主25/07/17(木) 01:34:44
「……こんなことがなければ、と思ったんだけどね」
笑顔を崩さず、レイがリシウスに視線を飛ばす。
「アゼシオンの民が竜に襲われているのに、その王が竜を飼っているっていうのは、どういうことかな?」
リシウスは穏やかな笑みでその問いに答えた。
「襲われている? 勇者カノン、それは間違いだよ。すべては救済なのだ」
当たり前のように、ガイラディーテ王が言う。
「なぜならば、竜とは神の使い。竜に身も心も捧げることで、我ら人間は神のもとへ赴き、真の救いを得ることができる」
「だったら、自分が竜の生贄になればいいんじゃないかな?」
リシウスは穏やかな表情でうなずく。
「もちろん、そのつもりだ。だが、余は王として、このアゼシオンの民を神のもとへ導く責がある。それを果たした後は、喜んで神のもとへ旅立とう」
ミサがはっと気がつく。
「……王族の方々は…………?」
「一足先に神のもとへ送ってやった」
「……竜に、食べさせたんですか!? 自分の子供たちをっ?」
絶対レイ(またこんなのかよ)とか思ってそう - 162スレ主25/07/17(木) 01:38:02
- 163スレ主25/07/17(木) 01:39:17
「あの二人ならば、しばらくは問題あるまい。どうやら、霊神人剣の力を奪いたい輩がいるようだが、それを突き止めようとしているようだ」
番神にそんな権能はないが、アルカナのように選定の神ならば、霊神人剣を供物にしてその力を食らうこともできるのだろう。
霊神人剣の力を奪いたいのは、俺に有効な攻撃手段を身につけるためか?
少なくとも、どの選定者かがあの王をそそのかしたのだろう。それを突き止めぬことには、また何度でも同じことが起きる。
レイたちはそう考え、しばし泳がせているというわけだ。
とはいえ、腐っても神だからな。あまりに好きにやらせすぎれば、取り返しのつかぬことにもなる。
その辺りはレイもミサも承知の上だろうがな
ついに出ました腐っても神 - 164スレ主25/07/17(木) 01:41:05
「刺し違えてでも、ぶっ殺してやるっ!!」
ラオスが吠える。
それは虚勢なのだろう。彼の足は震えている。
ハイネとレドリアーノの瞳にも怯えが見えた。
それでも、彼らはどうしてか、逃げようとしなかった。
彼らの仲間がそこにいるからかもしれない。
逃げる勇者などいるものか、とザミラに笑われたからかもしれない。
あるいは自暴自棄になっていたのかもしれない。
様々なものが彼らの足を縛り、逃げることを許さなかったのだろう。
それでも立ち向かえるのは勇者 - 165スレ主25/07/17(木) 01:42:35
「おいっ……! エミリアッ! なにしやがんだっ!?」
「逃げる大義名分は、その火傷で十分でしょうっ。教師が無理矢理命じたのだと言えばいいっ。あなたたちを責める人はいませんっ」
エミリアは地上を炎で焼いていき、生徒たちの足場をなくす。
「さっさと助けないと、みんな燃えて死にますよっ。竜ならともかく、わたしなんかに殺されたくはないでしょうっ! 勇者ならっ、助けなさいっ!」
「グオオオオオオオオォォォッッッ!!!」
赤き異竜が顎を開き、エミリアへ向け、その口から炎の球を放つ。
この辺の頭の周り方は流石教師 - 166スレ主25/07/17(木) 01:45:39
彼らと異竜では力の差がありすぎる。
竜が食べる気ではなく、ただ蹂躙するつもりだったなら、とうに決着はついているだろう。
無論、今すぐ、助けに行くことはできよう。
ここから<獄炎殲滅砲>で竜を焼くなど造作もない。
だが、それでは命しか救えぬ。
今、初めて彼女と彼らは勇気をもって、立ち上がり、前へ進もうとしているのだ。
赤子が立とうとしているときに、手を貸せば、もう二度とその者は立ち上がれぬだろう。
エミリア。
逃げて、逃げて、逃げ続けてきた。
そのお前が今、ようやく戦うために前を向いたのだ。
存分に想いを示せ。
そして、願わくば、勝利して帰ってこい――
助ける事は簡単、でもそれじゃ命しか救えない この言い回し最高にかっけえ
- 167二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 02:20:49
- 168二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 02:28:05
>>167 かなりの回数、貼られることになるでしょうね
- 169二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 07:21:32
- 170二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 14:18:29
待機
- 171二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 22:38:36
待機
- 172二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 01:45:27
待機
- 173二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 07:34:16
待機
- 174二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 14:27:31
待機
- 175二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 22:41:27
待機
- 176二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 01:06:39
待機
- 177スレ主25/07/19(土) 01:17:26
「……なにを……しているんですかっ……?」
呆然とエミリアが呟く。
「無駄なことはやめて、早く逃げなさいっ! こんなことをしても、なんの意味もありません。あなたたちは……」
エミリアの口から自然と言葉がこぼれ落ちる。
「いいですか? あなたたちは、守りたくないもののために、戦う必要はありません。それが勇者の枷だというなら、今ここで外して行きなさい」
あのとき、ラオスの頬を叩いたときに伝えたかった想いを、彼女は改めて言い直した。あるいは、これが最後と悟ったのかもしれない。
「勇者が逃げたと詰る言葉はあるでしょう。あなたたちを責める声はあるでしょう。ですが、誰がなにを言おうとも、気にする必要はありません。いくらでも、言わせておけばいいんです」
竜の口の中に、今にも飲み込まれそうになりながら、エミリアは彼ら三人に視線を飛ばした。
「人の痛みがわからない人間の言葉なんかに、あなたたちが傷つく必要はないんです。そんなもののために、命を賭ける必要なんかないんです」
そう言いながらも、エミリアは自嘲するような表情を浮かべる。
人の痛みがわからなかった、かつての自分を思い出しているのだろう。
先生してるぜ先生…… - 178スレ主25/07/19(土) 01:19:13
「まだわからないんですかっ! 勇者学院の教育なんて、馬鹿もいいところですよっ! 守りたくないもののために、命をかける必要なんかどこにもないんですよっ! 早く行きなさいっ! 今ならまだっ……!」
エミリアが叱責するように言うも、三人は聖剣に魔力を込めるのに集中し、竜の口から出ていこうともしない。
「……クズだの、馬鹿だの……散々言われたけどよ……」
ピシィッと、ラオスの手にしたガリュフォードに亀裂が入った。
竜の力に聖剣が耐えきれないのだ。
「……勇者がなんだって、カノンがどうしたって……俺たちに、言ってくれるのは、おめえぇぐらいしか、いねえしな……」
「そんなの、わたしがこの国の常識すら、よくわかっていないだけですっ。あなたたちを思った言葉じゃないっ! そんな、くだらない勘違いで、立派でもない教師のために、一緒に死んで、いったい、なんの意味があるんですかっ!?」
「だったらよっ!! 立派な教師を連れてきてみろよっ!!」
嘆くように、怒りをあらわにするように、ラオスが訴える。
「どこにいんだよっ!? 立派な教師なんて、この国のどこにいるんだよっ!?」
ハイネの手にしたゼーレとゼレオに、亀裂が入る。
今にも二本の聖剣は折れそうだった。
「……クズしかいねえよ。おめえが思ってるより、ずっと、この国は腐ってやがる。そりゃ、おめえは自分のことしか考えてねえ、クズだったかもしれねえけどよ。この国の教師なんて奴ぁ、自分たちの責任を、生徒に押しつけるようなウジ虫しかいねえっ!」
ここやっぱ熱いわ…… - 179スレ主25/07/19(土) 01:24:00
「……わたしが……勇者学院の生徒たちと……」
想いを一つにする。
やろうとしたところで、そう簡単にできるものでもない。
「……安心してください。というのはおかしいかもしれませんが、少なくとも恐いのは、我々も同じです……」
僅かにレドリアーノは笑みを覗かせる。
「……勇者などと呼ばれていながら、わたしたちにはこれっぽっちの勇気もなかった。代わる代わるやってきては、すぐいなくなる新任の教師。どうせあなたも同じだろうと、最初から話を聞こうとさえしませんでした……」
レドリアーノが聖剣から片手を離し、エミリアへ伸ばす。
「……わたしたちを助けるため、その身を盾にしようとしたあなたを、今一度、信じてみたい。もしも偽者のわたしたちにもあるのならば、その、ほんのちっぽけな勇気を、振り絞って……」
エミリアが怯えたような目で、その手を見つめた。
彼女が決心を固めようとするその寸前で、ピキィッ、バキンッと鈍い音と共に、ハイネの聖剣二本が折れた。
「早くっっっ!!! もう、やるしかないでしょっ! これで生き延びたら、授業でもなんでも真面目に受けるからさっ!!」
弾き出されたようにエミリアがレドリアーノの手を取り、力の限り叫んだ。
彼らと、そして、そこにつながっている、勇者学院の生徒たちへ向けて――
「――お願いしますっ! わたしに、もう一度、あなたたちを教えるチャンスをくださいっ……!! あなたたちが、クズなんかじゃないって、わたしが証明してみせます!!」
完全成長 - 180スレ主25/07/19(土) 01:25:54
「おい、お前らも手を貸せっ! 全員でこじ開けるぞっ!!」
その僅かな隙間を取っ手にして、生徒たちが全員で竜の口をこじ開けていく。
光が見えた。外の風景が僅かに、エミリアの目に映る。
そうして、人が入れるぐらいに隙間ができると、そこに、三人の勇者の顔が見えた。
「エミリアッ……」
彼らはボロボロの制服を身に纏い、目に涙を浮かべていた。
ゆっくりとエミリアはその隙間から外へ出る。
「…………んだよ……心配して損したじゃねえか……」
「ほんっと……人騒がせだよね……」
そんな風に、憎まれ口を叩きながら、咄嗟に涙を拭ったハイネとラオスに、エミリアは両手を伸ばして、抱きしめた。
「おいっ……んだよ……?」
「そういうの、いいから……」
エミリアをふりほどこうとしたが、しかし、彼女の瞳からはらりとこぼれた涙を見て、二人はなすがままに抱きしめられる。
「……馬鹿ですね……あなたたちみたいな、どうしようもない生徒を遺して、死 ねるわけないじゃありませんか……」
レドリアーノが割れた眼鏡を上げる。
僅かに笑ったハイネとラオスを、そしてエミリアをもみくちゃにするように、勇者学院の生徒たちが声を上げ、勢いよく飛びついてきたのだった。
試練は超えられない者には与えられない - 181スレ主25/07/19(土) 01:27:08
竜ってどこに落ちたんでしょうかねぇ……。
誰も潰されてないといいんですが。
くっそ白々しいww - 182スレ主25/07/19(土) 01:29:07
「聞く聞かないではないのだ。これは、王の勅令であるぞ」
「だったら、魔王にそう言ってください。人間の王の勅令を聞く義務はわたしにはありません」
「なんだと? ならば、とっとと尻尾を巻いて祖国へ帰れ、この腰抜けが。貴様がどうであれ、こいつらは王の命を聞く義務がある。逆らえば、国家反逆罪で全員引っ捕らえるぞっ!!」
ザミラの暴言に、勇者学院の生徒たちは皆、表情を険しくする。
「まったく、どいつもこいつも、怖じ気づきおって。そんなに竜と戦うのが恐いのか? 本物の勇者はそんなことを恐れはしなかっただろうに。よくもまあ、祖先の顔に泥を塗るような真似ができるものだ。私ならばそのようなことは、恥ずかしくてとてもできんぞ」
ザミラはただただ生徒たちに罵声を浴びせる。
エミリアがもう我慢の限界だという表情を浮かべ、ザミラに向かって足を踏み出す。
「ほう。よく言った」
俺の声に、彼女は振り向く。
ザミラのもとへ、俺はゆるりと歩を進めた。
1番楽しい時間が来ました - 183スレ主25/07/19(土) 01:31:27
…待て……待て、貴様……なにを言っている……? なにをするつもりだっ!?」
「徒歩で行くのも大変だろうからな。エノラ草原まで送ってやろう」
「や、やめっ。やめろっ、馬鹿なことをっ、私は指揮する立――」
ザミラの肥満体に<転移ガトム>の魔法を使えば、彼はこの場から姿を消す。
エノラ草原に飛ばしたのだ。
「あ、あ……アノシュ君っ!? そんなことして……!」
エミリアが慌てて駆けよってくる。
「なにか問題だったか? まさか六歳でも倒せる竜如きに、人間の王族がやられるわけもあるまい」
唖然とした表情でエミリアが俺を見つめる。
「カッカッカ、まったくまったく、困ったものだ、アノシュ・ポルティコーロ」
愉快千万といった調子でエールドメードが笑い飛ばす。
「だが、子供のすることだ。ここは大目に見ようではないか。なあ、エミリア先生」
子供のすることだからな!仕方ないよな!
- 184スレ主25/07/19(土) 01:34:30
「んじゃ、邪魔者もいなくなったことだしよ。とっと作戦会議でも始めようぜ。どうすんだよ、エミリア?」
「え……?」
エミリアがラオスを振り向く。
「え、じゃなくてさ。このままじゃ王都がヤバいんでしょ。王宮の準備が調ってないなら、ぼくたちが行くしかないでしょ」
ハイネがそう口にした。
「王の勅令に従うというわけではありませんが、竜がアゼシオンにとって脅威であることは変わりません。自分たちの故郷ぐらいはこの手で守りたいですからね」
異竜を倒したことが自信に変わったか、勇者学院の生徒たちは誰も怖じ気づいた素振りを見せていない。
「……覚悟はできてるんですか?」
一瞬、エミリアは考え、そう短く尋ねた。
彼らはこくりとうなずく。
誰に言われたからではなく、自らの意志で戦うと決めた。
その決意は、エミリアにはっきりと伝わったことだろう。
「わかりました」
エミリアはエールドメードの方を向いた。
「勇者学院はこれより、エノラ草原からガイラディーテへ向かってきている竜の群れの討伐に向かいます」
毅然とした口調で彼女は言う。
「魔王学院はこのアルクランイスカで待機してください。学院交流中のあなたたちを、危険に曝すわけにはいきません」
それは意外な申し出だ。
ここで力を貸せじゃないの良いよね - 185スレ主25/07/19(土) 01:36:07
「なにが目的?」
ミーシャが訊いた。
「さてな。あるいは真の目的を隠すための陽動かもしれぬ」
竜に目を向けさせておいて、その隙になにかするつもりか?
「エレオノール、ゼシア。エミリアたちに同行するといい。お前たちは元々、勇者学院の生徒だからな。魔王の手を借りぬという彼らの誇りは傷つけまい」
エレオノールとゼシアがこくりとうなずく。
「うんっ、わかったぞ」
「……みんなを、守ります……」
二人はすぐに移動を始める。
「みんな、すぐ調子に乗るから、うっかり目を離すと死んじゃいそうな気がするぞ」
「……油断禁物……火の用心……です……」
そんな風に言いながら、彼女たちは大講堂を出ていった。
この配慮優しくて好き - 186二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 01:38:13
皆、優しいなぁ。じんわりくるぜ
- 187二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 07:56:54
待機
- 188二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 13:55:23
待機
- 189二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 20:51:25
この辺りからの流れ熱くていいよね・・・
- 190二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 22:53:45
待機