【閲覧注意】千奈「先生……?」を晴らしたい

  • 1二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:25:29

    ただの通りすがりのものなんですけれども。己の実力を試す良い機会として。前作で思い切りのダークなSSを書いてしまったのでその流れのまま挑ませていただきたいと思います

  • 2二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:26:03

    千奈を頼む

  • 3二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:27:00
  • 4二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:30:56

    あれの続きを書きたいと思います。それでは……

    「お嬢様。Pさん──先生が、亡くなりました。……自殺だったそうです」
    「………………」

     そのとき私は──不謹慎とはわかっていながら──嬉しさに笑顔が漏れた。
     ようやく見ることのできた、お嬢様の感情の発露。

     お嬢様の頬を伝う、一筋の涙に。

    「……あぁ」
    「お嬢、様……? 」
    「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 」

    一度お嬢様なりに抑え込んでいたであろう感情が溢れ出したんだろう。お嬢様は声を大にして強く、ただ強く、一人で泣き叫んでいた。それから一時間後。お嬢様は泣き止んで、泣き疲れたのかそのまま眠りについた。

  • 5二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:31:37

    あれって救済可能なんだ…。

  • 6二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:33:02

    ここから入れる保険って…?

  • 7二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:37:12

    それからお嬢様が目を覚ましたのは翌日だった。目が覚めると、お嬢様はまた前のように精緻な人形と化してしまった。……でも、不思議と前のような気持ちはなかった。昨日のあれを知っているから。泣き疲れ、私の膝で彼の名前を呟きながら深く深く眠っているお嬢様を知っているから。

    ……なら、今度は笑顔が見たい。また、あのお嬢様の……全てを照らすような、太陽の微笑みが見たい。

    今、手元にあるのは彼の遺書。彼は最後の最後までお嬢様の事を思ってくれていた。お嬢様を突き動かす大きなきっかけになる。そんな気がする。いや、そうなって欲しい。

    「お嬢様。……彼の、遺書が見つかりました」
    「……聞かせて」
    「お嬢様……! 」

    静かに、小さく。お嬢様がそうぼそっと呟く。私はそれを聞き逃さなかった。嬉しかった。久しぶりに聞いた、お嬢様の声。泣き疲れた影響で枯れてもうあの時のような声ではないけれど。それでも、聞けたことが何よりも嬉しい。

    「それでは、読み上げさせていただきます」

  • 8二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:46:26

    超絶期待。
    千奈ちゃんを救ってくれ。

  • 9二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:48:23

    『倉本さんへ。今、あなたは何をしていますか? 笑えていますか? ……なんて、ありきたりな風に書いてみましたけどらしくありませんね。当てましょう。今のあなたは、あれから何も変わっていませんね。笑えもせず、怒りもせず、泣けもせず。……全部俺のせい、ですね。本当に、すいません。俺があなたの人生を壊してしまった。俺は、最低最悪の人間ですね』

    『……俺は、確かに首を吊って死にました。が決して何一つ、あなたは悪くありません。これは絶対です。誰が何と言おうとも、あなたではなく悪いのは俺です。あの時、あなたを守るためとはいえ離れてしまった俺のせいです。あの時あなたを助けてあげられなかった俺のせいです。恨んでください、呪ってください。そして、笑ってください』
    「……え」

    『あなたが今、笑えないのは知っています。でも。それでも。俺は我儘で傲慢なので、あなたの笑顔が見たい。あの世からでもずっと俺はあなたのことを見ています。ですから、今すぐに……じゃなくて、いつか、です。いつか、俺にその笑顔を見せてください。きっと俺はその笑顔を見るまでは昇天できませんから。こっちに、来ないでください。今の俺に、あなたと会う資格はありません。……それからどうか、篠澤さんと仲良く過ごしてください。きっと、その方があなたは強く笑える』
    『倉本千奈さん。俺はあなたを愛しています。生まれ変わったとしても、ずっとあなたを愛しています』

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 00:00:04

    「せん、せぇ……? 」
    「彼はずっと、お嬢様のことを一途に思い続けていましたよ。あなたを強く突き放したのは……彼自身に対する怒りが混じってしまった為。それから、彼自身もお嬢様に囚われないで過ごしていくため。先生は、誰よりも、何よりもお嬢様を愛していると私におっしゃいました。だからこそ、怖かったのでしょう。このままお嬢様に囚われて過ごして、いつかお嬢様に危害を加えてしまうことが。篠澤様を蔑ろにしてしまう可能性があることが」

    ……どうしてだろう。あの手紙の内容全てが、香名江の一言一言全てが、私の心を揺れ動かして……またあの気持ちに火をつけてくる。あの想いはとっくに、捨てたはずなのに。先生とはもう二度と会えないはずなのに。今の私は汚されていてあの人を想う資格なんて、ないはずなのに。

    なんで、どうして。こんなにも、涙が止まらないのでしょう。こんなにも、胸が痛いのでしょう、嬉しいのでしょう。こんなにも、愛しいのでしょう。痛くて辛くて苦しくて……でも、暖かくて優しくて愛しくて。

    本当に……先生は、魔法使いですわね。死んで尚、私の心を強く揺さぶってくるんですもの

  • 11二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 00:03:39

    「香名江」
    「はい、なんでしょうかお嬢様」
    「篠澤さんを呼んでくださいませ」
    「承知しました。今すぐに呼んで参ります」

    一度ついた火は消えることなくどんどんと広がっていくもの。気づいた時には動いていて、篠澤さんと話す用意をしていました。篠澤さんは今の私を見てどう思うのでしょうか。……上手く笑えない私を見て、この傷だらけの腕をみて。どう、思うでしょうか。何とおっしゃるでしょうか。

    「……千奈」
    「篠澤さん」

    待つこと数分。香名江がすぐに篠澤さんを呼んでくださいました。

  • 12二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 00:15:21

    篠澤さんは驚いた顔をして、でも何も言わないで私の方を見つめて。それから少しして、篠澤さんは口を開きました。

    「千奈……ごめんなさい」
    「……篠澤さん? 」

    そうしてすぐに、私に向かって深々と頭を下げます。……不思議、ですわね。本当に、何から何まで。あの時思っていた薄情だという気持ち。あれは、完全に消えたと言ったら嘘にはなりますがもうほとんどは消えてしまっていて。少し、驚いてしまいました。

    「私は、あなたに最低なことをした。もっと早く、言うべきだった。彼があなたにした行為。それは全て、私の提案したもの。守る為に離れるのも。完全に切り捨てる為に冷たく当たるのも。私をプロデュースする、というのも」
    「そう、でしたのね。あれは、篠澤さんの提案でしたの」
    「それから黙っていたことも。……これは、彼の提案だった。彼は、とても不器用だった。けど、私と千奈の為に提案してくれた。『自分を捨てて担当するのが親友だと知ればきっと倉本さんがあなたを避けるようになってしまうかもしれません』って。間違ってる、ってわかってた。でも、怖かった。千奈と、疎遠になる事が。……結果かえって事態を悪化させてしまった。ね、千奈。私の事……恨んでる? 」
    「はい。……とーっても。大好き、ですわ」
    「……え? なん、で? 」

    先生らしいですわね。その不器用さも、私と篠澤さん、二人のためを思ってくれた優しさも。きっと先生も、遅かれ早かれバレることなんて想定していたでしょうに。……今。恨みなんて、微塵もなくて。篠澤さんに抱いている気持ちは一つだけ。

    それは、親愛。ただ、大好き。その不器用な優しさが。その、自体を悪化させる原因になってしまった優しさが。とても、篠澤さんらしくて大好きですわ。

  • 13二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 00:29:03

    「なんで、私を許すの……? 」
    「私、許すだなんて一言も言ってませんわよ? 大好き、と言っただけですもの。……大好き、しかないと言ったら嘘になってしまいますわ。ほんの少しだけ。怒りも、まだあります」
    「……」
    「でも。そんなものが些細に思えるくらいに、私は篠澤さんの事が大好きですわ。その優しさが。篠澤さんが言う間違った優しさが、とてもあなたらしくて好きなんですの」
    「そっ、か。……千奈。優しい、ね。私も、だいすき」

    篠澤さんと、強く抱き合います。

    「今更許して欲しい、だなんて思わない、よ。……でも。ねえ千奈。許してくれる? 私の事」
    「……はい、もちろんですわ」

    長らくその肌に触れていなかったせいで忘れていましたわ。この、暖かさに。お日様の様な、その優しい暖かさに。……もっと早く、こうしていれば良かったですわ。

    「篠澤さん」
    「なぁに? 千奈」
    「私……まだ、心の傷は全く癒えておりませんわ。男の人が全員怖く感じてしまいます。ふとした瞬間に、あの時の光景を思い出してしまいます」
    「……うん」
    「ですけれど。もう、私は初星学園を退学してしまいましたけれど。それでも私は、前に進みたいですわ。先生の遺書にこう書かれていましたの。また、私の笑顔が見たい、と。……その為には、あなたのお力がどうしても必要です。ですから。私に、お力を貸していただけませんか? 」
    「……もちろん。私の全てをかけて、千奈の力になる、よ。これは、私の贖罪。私が千奈の力になって……そして、プロデューサーに見せる。千奈の、眩しい笑顔を」

    篠澤さんのおかげですわね。胸がぽかぽかして。もう、あの辛い気分なんて綺麗さっぱり、ですわ。後は笑えるようになって……それから、先生の前でとびきりの笑顔を見せるだけ、ですわね。

  • 14二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 01:17:43

    広ーー!!佑芽ーー!!!
    千奈ちゃんを!!!

  • 15二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 08:15:40

    それからすぐのこと。私は、お爺様と学園長に無理を言って再びアイドル科に戻りました。今度はしっかりと、己の実力で。……先生、見てくださっているでしょうか。私、ついに実力だけで入学しましたわ。

    「……千奈。お昼、食べよ」
    「はい」

    ですが変わらず笑うことだけはできないまま。それに加えて、ふとした瞬間にあの時の事を思い出してしまいます。……でも。今は、大丈夫だ、と断言することができます。何故なら​──

    「ね、千奈」
    「はい、なんでしょう」
    「大好き」
    「私も、ですわ」

    今の私には世界でたった一人だけの大好きで最愛なる、お友達がいますもの。

  • 16二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 08:33:51

    「おはよう、プロデューサー。……今日も、暑いね」
    「おはようございます、先生。熱中症など大丈夫でしょうか? 」

    先生が亡くなってから一年が経った頃。私は、篠澤さんと先生のお墓参りに来ました。……どうしましょう。もう、泣いてしまいそうですわ。

    「千奈。大丈夫? 」
    「はい、大丈夫ですわ」

    篠澤さんから貰ったハンカチで少し零れていた涙をふいて、そっと先生に話しかけます。

    「先生。お手紙……じゃありませんでしたわね。遺書、ありがとうございました。先生のおかげで私はまた、立ち直れました。まだ、上手く笑えませんけれど。それでもまた、こうして篠澤さんと楽しくアイドルを続けられていますわ」

    どう、しましょう。気持ちが、溢れ出してきてしまいますわ。涙が止まらなくて……声も震えて。上手く、話せませんわ……

    「……先生。最期まで、私はご迷惑をかけてばかりの教え子でしたわね。でも。最期まで、私の事を思ってくれてとっても、嬉しかったですわ。最期まで、私を見ていてくださったのですね。本当に、本当にありがとうございます。でも……勘違いしないでくださいませ。悪いのは、あなたではありません。この、私ですわ」

    ……もう、この際どうだっていいです。例え泣きながらでも、見せられない顔だったとしても、どれだけ醜かったとしても。先生に、私の気持ちを全て伝えないと。

    「沢山甘えてしまったばっかりに取られてしまって。それで先生が私のために距離を置いた、というのに。それに、そうですわ。あの時だって……あの男に呼び出された時だって。もっと、警戒心を強くしていればよかったのですわ。今考えてみると、あの時の先生が今更私を呼び出すことなんてするはずありませんもの」
    「……全部、私のせいですわ。ですからどうか先生、あなたは何も気にしないで。笑って、私を見守っていてくださいませ。私は……絶対、トップアイドルになってみせますわ」

    本当に、不思議ですわね。話せば話すほど、涙が引っ込んで行って声も元に戻っていって。今は、とても暖かい気持ちしか残っていなくて。

    これは、私の贖罪。私の罪滅ぼし。もう届くことのない、先生への謝罪。

  • 17二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 08:49:04

    「……こんな暑い中長々と話してしまって申し訳ないですわ。次で、最後にしますわね」

    最後に。私の、ありったけの本音を。ずっとずっと、伝えたかった一言を。

    「先生。……誰よりも、大好きですわ。誰よりも、愛してますわ」

    ……私。今、どんな顔しているんでしょうか。私としては笑っているつもりなのですが……上手く、笑えているのでしょうか。

    「……さぁ、行きましょう篠澤さん」
    「うん、行こう千奈」
    「私……上手く、笑えていましたか? 」
    「はっきりとは見えなかった。けど……あの時の千奈は、優しく微笑んでたと思う、よ」
    「そうですのね。……良かったです」

    後ろでずっと優しく私を見守ってくださっていた篠澤さんに声をかけて、その場を後にします。……ふふ。良かったです。私、まだ笑えたんですのね。でも、これじゃきっと足りませんわ。

    待っててください、先生。いつか、前の……いや、前以上の笑顔を。私の全てをかけたとびきりの笑顔を。あなたに、お見せすることを約束致しますわ。

    「……わかってても、苦しいね」
    「何が、ですの? 」
    「千奈の一番になれない事が」
    「……ふふっ。変なことをいいますのね、篠澤さんったら。もう、先生も篠澤さんも、私からしたら二人とも同じくらいに大好きですわ」
    「そっか。……ありがと、千奈。私も、大好き」

  • 18二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 08:50:19

    という感じでいかがでしょうか? 上手く晴らせてますかこれ

  • 19二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 09:04:16

    めっちゃ良かった☀️
    おつです!

  • 20二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 09:12:36

    主の思い切りダークという前作もよかったら貼ってくれ

  • 21二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 09:16:38
  • 22二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 09:17:53

    あ、あなただったのか…

  • 23二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 09:47:27

    >>3

    のスレ主です。


    私の無念を晴らしてくれてありがとうございます(涙)

    ぼかぁ嬉しいよ……。

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