- 1二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 20:57:59
清夏マッサージ概念では成仏しきれなかったので、2夜目です。
以下SS注意
「ASMR、ですか?」
学Pが事務所として使っている教室に突然の来客があった。担当アイドルの葛城さんか、もしくはあさり先生か、そう予想していたのだが、ガラリと扉を開けたのは鮮やかな橙の髪をもつ少女、紫雲清夏さんだった。まだ作業が残っているのだが、相談がある、と真剣な顔で言われれば無碍にできるわけもない。そもそも紫雲さんが担当でもない学Pに相談することといえば、葛城さんのこと以外にあり得ないのだから。
「そ。あたしはよく知らないけど、プロデューサーは知ってる?」
「人並みには」
Autonomous Sensory Meridian Response、イニシャルをとってASMR。直訳すれば自律感覚絶頂反応。いろいろと定義はあるが、現代でASMRといえば耳への刺激によって快楽を得ることを目的とした音声、または動画のことを指す。
「しかし、なぜ俺にそのことを?……いえ、愚問でしたね。俺に話を持ってきたということは、そういうことでしょうから」
「察しがいいね、プロデューサー。そうだよ。リーリヤが最近、ASMRにハマってるみたいなの」 - 2二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 20:59:06
それから、紫雲さんはこれまでの経緯を話してくれた。
「リーリヤは最近、イヤホンをつけて寝ることが多くなった。最初はなんか音楽とか聴いてるのかなって思った。けど、何聴いてるのって聞いたらちょっと慌てて「なんでもないよ」って。怪しいよね。まあ無理に聞くようなものでもないかーってしばらくは放置してたんだ。だけど昨日、珍しくお寝坊さんだったリーリヤを起こそうとしてベッドによったら、スマホが点いてて。それで再生中だったトラックが……」
「ASMRだったと」
「そ。あたしもね、別にリーリヤが何に興味を持ってもいいと思う。でも、これはちょっと、流石に、ね」
そう前置きして、紫雲さんはスマホに表示した写真を見せてくる。それは葛城さんのスマホの画面を写したもののようだった。
「……なるほど、ようやく理解しました」
葛城さんの聞いていた音声のタイトルは
『理性崩壊して我慢の限界を迎えたいつもはクールな年上お兄さんにめちゃくちゃにされちゃうASMR』。
どう考えても未成年の葛城さんが手にしてはいけないものだった。 - 3二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 21:00:23
日本のサブカルに多大な興味がある葛城さんのことだ。何かの拍子にこういうものに触れてしまっても不思議ではない。だが未成年の、それもアイドルを目指す少女がこれにハマってしまうのは少々問題があるだろう。
「最初はね、あたしが直接言うか、先生に相談しようと思った。だけど、それじゃきっと何も解決しない。叱られて、取り上げられて、我慢して……きっといつか同じことが起きる。もっと悪いことになるかもしれない。だから、プロデューサーに相談したんだ」
「俺に、何をしてほしいんですか」
「簡単だよ」
紫雲さんはさも当然のことを言っているような気軽さで答えた。
「リーリヤを満たしてあげてほしい。それは変な音声なんかじゃなくて、リーリヤを大切に想ってるプロデューサーがするべきだと思うから。だいじょーぶ、プロデューサーとして担当アイドルの欲求不満を解消するのって、きっと普通のことじゃん?」 - 4二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 21:02:16
葛城リーリヤがちょっとえっちなASMRを聴くようになったきっかけは、ほんのささいな出来事だった。とあるアニメのグッズを探していろんなサイトを回っていたら、一つの広告に目が留まった。眼鏡をかけた若い男の人のイラスト。その眼鏡の形が少しだけセンパイのものに似ていたから、リーリヤはそれをクリックしてしまった。ちょっと見てすぐ戻るつもりだった。でも、詳細を読めば読むほど戻りたくなくなった。音声サンプルを聴いて、さらに戻れなくなった。声優さんの声がどことなく、センパイに似ていたのだ。サイトがちょうど半額セールをやっていたのも間が悪かった。
(ちょっとだけ。ちょっとだけだから)
結局、リーリヤはその音声を購入し、そしてハマった。一つだけだった購入履歴はすぐに二桁になった。最初は寝る前のベッドの上でだけ聴いていたのに、最近は登校中とか、お昼休みとか、清夏や他の人と一緒にいない時を見計らって聴くようになってしまった。やめないと、やめないとと思いはしても、やめられない。完全にはまって、沼から抜け出せないでいた。 - 5二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 21:03:22
「センパイ、こんにちは……?」
放課後、リーリヤは事務所の教室を訪ねる。しかし、いつも笑顔で出迎えてくれるセンパイの姿はそこになかった。
「あれ?今日はお休みだったっけ?」
すると見計らったかのようにスマホが鳴る。センパイからの連絡が来ていた。
「申し訳ありません。急用が入ってしまったため、1時間ほど遅れます。俺が戻るまでにこの音源に耳を通しておいてください」
文章の後に、音声ファイルが添付されていた。とりあえず再生しようとすると、またメッセージが届く。
「音源を再生するときはイヤホンを装着して、椅子などに腰かけた体勢でお願いします」
(なにか特別なものなのかな?ちゃんと集中して聞かないと) - 6二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 21:30:18
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- 7二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 21:33:35
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- 8二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 21:43:15
「よし、準備OK」
イヤホンを装着し、椅子に深く腰掛けたリーリヤは、再生ボタンを押した。一瞬の静寂、そのあとすぐ、右耳に音が届く。
『あー、あー、聞こえていますか?』
「っ!?」
『ああ、聞こえているみたいですね。よかった』
(セン、パイ?)
てっきり音楽か何かだとリーリヤは予想していたのだが、イヤホンから流れ出したのは明らかにセンパイの声だった。それも、右耳にだけ、少し機械音が混じる声で話している。
(電話、してるのかな?っていうか、これ)
『お待たせしてしまって申し訳ありません。今から向かいますので、もうすこしだけお待ちください』
(ASMR……?)
頭が混乱している。それでも、何度もこういうものを聴いてきた影響か、勝手に目が閉じて、力が抜け、「ASMRを楽しむ姿勢」をとってしまう。 - 9二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 21:44:15
『急な用事が入ってしまいまして。かわいい後輩を待たせるなんて先輩失格ですね』
(っ!?かわいいなんて、そんな)
普段のセンパイならほとんど言わないセリフにくらくらするが、センパイにかわいいと言われた事実は変わらない。頬が熱くなるのを感じる。
『もうすぐです。あと10秒ぐらい。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1』
『ガチャリ』
「ッ!!」
思わず目を開く。けれど、目の前には誰もおらず、扉も開いていない。イヤホンから聞こえた音声だったようだ。扉が閉まる音の後、コツコツと足音が近づき、リーリヤの前で止まる。
『こんにちは、昨日ぶりですね。遅れてすみませんでした』
(すごい、ほんとに目の前にセンパイがいるみたい……)
リーリヤが購入した作品の中には、登場人物が前にいるのか、後ろにいるのかすらわからないような出来の悪いものもあった。だが今聞いているものは完璧で、目を閉じればセンパイがそこに立っているように錯覚できる。 - 10二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 21:46:08
『では、いつもの、しますか?』
(いつもの?なんだろ)
『いきますよ』
ガササゴソソとちょっと大きな音がしたと思うと、センパイの声が右耳の後ろから聞こえ始める。
『葛城さんはこれが好きですもんね?俺に抱きしめられるのが好きなんですよね?』
(わ、わ、わ、センパイにハグされてる……!声、すぐ近くで聞こえて……!)
『よしよし、いつも頑張っててえらいですねー』
さりさりと音が聞こえて、髪をなでられているのだとわかると、思わず頭に手をやってしまう。頭に感触がないのが少し寂しく感じたからだ。
『素直で、努力家で、かわいらしくて、ほんとうに自慢の後輩です』
(え、えへへ……そんな、そんなに褒められたら照れちゃいます)
耳元で褒め殺しの言葉を受けて、リーリヤは口元を緩ませてしまう。もうこれがただの音声だということさえ忘れかけていた。 - 11二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 21:53:53
『ところで、葛城さん。俺に何か隠してること、ありませんか?』
どきん!と心臓が跳ねる。急に低く冷たくなった声音に、怒りの感情がこもっていることを感じ取れる。されていないハグの圧力が増したような気さえする。
『最近、してはいけないこととか、してませんか?』
(そんな、わたし、そんなこと……!)
「はぁ……はぁ……」
呼吸が荒くなる。まさかセンパイがソレを知っているはずがない。誰にも言ったことはない、リーリヤの秘密の趣味なのだから。
『ああ、とぼけるんですね。まあ隠しても無駄ですが。もう知っていますから』
(そんな……!嘘、そんなわけない……)
椅子の上でぎゅっと縮こまって、頭に浮かんだ考えを必死に否定する。そんなリーリヤの努力をあざ笑うかのように、センパイが次の言葉を口にした。
『葛城さんは、まだ買えないはずのいけないASMRを買って、夜な夜な楽しんでいるんですよね?』 - 12二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:19:00
時が止まったような気がした。息が詰まって、うまく呼吸ができない。いろんな所に力が入って、座ったままぶるぶると震える。
(ごめ、なさい……ごめん、なさい……)
心の中で何度も謝罪の言葉を口にする。呼吸はなかなか戻らない。
『いけないことをしたって、自覚はありますか?』
(はい……あります)
『反省、してますか?』
(はい……センパイ、ごめんなさい)
まるで本当にセンパイに叱られているように錯覚して、リーリヤは涙を流していた。本当に反省して、心の中の罪悪感が洗い出されているかのような感覚だった。
『では、もう二度と聴かないって、約束できますか?』
(っ!?!?)
しかし、その質問にだけは、答えることができなかった。
『約束、できませんか?』
(そ、れは……)
いけないことをしている自覚はある。それをとがめられて、反省している。だが、二度と聴かないということを今ここで誓うことはできなかった。ASMRによって、リーリヤの生活は確かに充実していた。 - 13二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:26:49
『―――悪い子だ』
ぞくり
今までで一番耳の近くで囁かれた一言は、リーリヤの鼓膜から、背筋を通って足先までを震わせた。センパイを含め誰にも言われてこなかったその言葉が、リーリヤの全身を痺れさせながら駆け巡る。
『そんな悪い子にはお仕置きが必要ですね』
ざり
「ひぁっ!」
思わず声を出してしまう。耳をこすられる音が鼓膜から頭に響く。
『これから葛城さんの耳をくすぐります。でもこれはお仕置きですから、葛城さんには声を我慢してもらいます。本当に反省しているなら、できますよね?』
ざりっざりっ
「んぅっ!?」
刺激が急に強くなって、両手で口を抑える。頭の中にくぐもった音が絶え間なく響いて、思考能力を奪っていく。
『耳の中を直接こすります』
ぞりぞりぞりぞりっ
「んぐっ!?!?」 - 14二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:41:58
いきなり両方の耳の穴に指を入れられた音で、リーリヤは大きく体を跳ねさせる。手を力一杯口に押し付けているので、鼻で大きく息をする。
「ふぅーーー、ふぅーーー」
『……悪い子だ』
ぞくり
(っ!?……うぅ……なんでだろ、センパイに悪い子って言われると、なんか……)
口を抑えた体勢のまま、リーリヤは無意識に太ももをよじらせていた。おなかの下の辺りがあつく、重たく感じられて、涙が出そうになる。
『ふぅーーーーー』
「んむぅ!?」
『はは、びっくりしましたか?』
耳に息を吹きかけられて、背中をびくんと反らせてしまう。色んな刺激が頭と体をかけめぐって、意識がもうろうとし始める。
『悪い子、悪い子、悪い子、悪い子……』
ざりっざりっざりっざりっ - 15二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:43:15
(ふぁああ、だめ、や、です、これ、お仕置きなのに……声、我慢しなきゃいけないのに……おなか熱くて、あたまくらくらして、もう、だめ、です……)
『悪い子、悪い子、悪い子、悪い子……』
ざりざりざりざりっ!
「ん、ん、う、ふぁ、あ、んぅぅ」
『―――それでも。リーリヤさん、愛してますよ』
「ッ!?んぅぅぅ!?!?!?」
ぞくぞくぞくっ
全身にぎゅうっと力がこもって、それからだんだん抜けていく。
「ふー、ふー」
頭が真っ白になって、何も考えられない。体にも力が入らなくて、椅子にもたれかかるのがやっとだ。
すこし激しく動いたからだろうか、ころりと音を立てて、右耳のイヤホンが外れて床を転がる。ちょっとすぅっとする右耳が、こっちに近づいてくる足音をとらえた。
コツコツとだんだん大きくなる音はぴたりと止まって、それからいつもの聞きなれた優しい声が、上から降ってくる。
「葛城さん」
(せん、ぱい……) - 16二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:43:59
これはさすがにえっちなセンパイが悪いタイプでは?
- 17二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:45:31
あかんやろうら若き乙女の性癖を破壊しちゃ
- 18二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:46:16
嫉妬でもしてるのかセンパイ?
- 19二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:55:37
センパイが本気出して来た…
- 20二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:18:22
センパイがえっちすぎる。アウト。
- 21二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:51:47
後日談
「あ、リーリヤちゃん。おーい」
学園の廊下を歩いていた高等部3年生の姫崎莉波は、こちらに向かって歩いてくる後輩、葛城リーリヤに手を振った。しかし、答えは返ってこない。銀髪の少女は何やら真剣な表情でスマホを操作しながら歩いていたからだ。仕方ないので、すれ違う時にぽんと肩をたたいて声をかける
「リーリヤちゃん」
「ひゃっ!ひ、姫崎、センパイ?」
飛び上がるほどの驚きように少し苦笑しながら、莉波はリーリヤを叱ることにする。
「駄目だよリーリヤちゃん。歩きスマホなんてしちゃ」
「ご、ごめんなさい。気を付けます……」
「……連絡、プロデューサーさんと?」
「あ、はい、そうです!」
「そっか。じゃあ、またね」
「はい、失礼します」
恐らくプロデューサーのもとに向かうのだろう、リーリヤが駆けていくのを見送った後、莉波はさっきのことを思い返す。ちらりと見えたスマホの画面。そこに、何かとんでもない言葉が書かれていたように思うのだが……。
「見間違い、だよね?」
そういうことにしておいた。 - 22二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:52:50
(俺は、やり方を間違えたのだろうか)
担当アイドル、葛城リーリヤから送られてきたメッセージを見て、そんなことを考える。リーリヤに自作のASMRを送ったことは、まあいい。それが紫雲さんの頼みでもあったわけだし、目的は達成できた。しかし、送る内容は、再考の余地があったのではないかと最近思うのだ。
(私情など、捨て去るべきだった)
学Pの撮ったASMRがかなり過激なものになってしまったのには理由がある。何のことはない、嫉妬していたのだ。リーリヤに選ばれて、毎日聞かれているのが他の男の声であることが、我慢ならなく思えた。ただそれだけのことなのだ。
(当初の目的は達成した)
あの後、リーリヤはダウンロードしていた10本以上の作品の音声データをすべて削除し、二度と購入しないと誓った。代わりとして、彼女の「リクエスト」に応えることになったのだが。 - 23二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:54:21
『センパイに膝枕で耳かきされて、途中から意地悪になったセンパイにいっぱいお仕置きされちゃうASMR』
(本当に、何を間違えたのか)
ガラリと扉が開き、事務所に少女が入ってくる。
「センパイ、こんにちは」
満面の笑みを浮かべて挨拶するリーリヤに挨拶を返すと、黙って彼女が送った文面を見せる。するとリーリヤは悪戯がバレた子供のようなばつの悪そうな顔をした後、じとりとした期待のこもった視線で見上げてくる。
「はあ……」
ため息を一つ吐いて、ゆっくりと近づき、耳元に顔を寄せ、囁く。
「……悪い子ですね」
「っ♡♡♡」 - 24二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:56:25
以上です。ASMRを文章で表現とか初めてやったのでめちゃめちゃ時間かかりました。これで成仏できなければまた来ます。
- 25二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:56:50
乙!素晴らしかった!
- 26二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 00:11:04
大切に導こうとしてる少女が自分ではない男の声に染められていることが気に食わなくて嫉妬を隠しきれないセンパイには栄養がある
- 27二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 00:33:05
学P嫉妬いいぞお
- 28二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 00:53:41
嫉妬って何でこんなにイイんだろ
- 29二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 01:04:13
センパイがえっち過ぎるよ🫨