リオ「先生、あまり見ないで欲しいわ……」

  • 1二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:18:51

    リオは恥ずかしさとわずかな安心感を持ってそう言った。
    コンビニの前で先生はアイスコーヒーを飲んでいた。出会いたくないタイミングではあったが、少しリオの胸の鼓動が速くなる。
    "……。リオ、そんな格好だと風邪を引くよ"
    先生はリオから視線を外してからそう言った。

    「コンビニのチキンが食べたいわね」
    作業が一段落してリオはそう呟いた。
    今日は茹で上がるような日だった。
    部屋の中にいても外の熱気がどこからともなく入ってくる。そして冷房を強くすると電気代の心配があった。
    流石のリオもいつものスーツを着るのはやめて薄着で過ごしていた。裾の短いキャミソールとスエットパンツはどちらもアスナからの差し入れである。
    「誰とも会わなければ問題ないはずよね」
    スーツとタートルネックセーターを今から着るのは合理的ではないとリオは思った。
    身なりには気を使った方が良いぐらいの常識はあるが、それよりもこの暑さだ。夕方涼しい風が吹いていた。まだ夏ではない証拠なのだろう。
    (でも湿度があるせいでそこまで涼しさは感じないわね)
    コンビニの入り口に先生がいた。

  • 2二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:19:58

    (先生は少し合理的ではないような気がするわ……)
    リオは感情の機微を合理という言葉で片付ける。
    "リオ、そんな格好だと風邪を引くよ"
    その言葉はリオにとって少しショックだった。
    少し気になっている相手に恥ずかしい格好を見られるのは嫌ではあるが、まるでこちらに興味なさそうにされるのも逆に嫌なのである。
    まるで薄着をしている妹にかける言葉ではないだろうか。
    (私が露出の高い格好をしているのよ。それなのに先生は素知らぬ振りなのかしら)
    ビッグシスターとして自分のスタイルの良さは自覚していた。それなのに顔を赤らめもしない朴念仁ぶりに腹が立つ。
    ぐぅ〜、とリオのお腹の虫が鳴った。
    「こ、これは違うのよ!」
    リオの声は上ずっている。このタイミングで生理現象が起こるなんて恥もいいところだ。
    内心の動揺を必死に抑えつつ、彼女は先生をチラッと見る。先生は相変わらずアイスコーヒーを啜りながら、なんともマイペースな顔で立っている。
    "お腹空いていたの?"
    「ええ、暑くて買い出しに行ってなかったから。今日はあまり食べてないわ」
    リオはなんとか冷静さを取り戻そうと、髪をかきあげながら答える。
    "ふむ……。何食べたい?奢るよ"
    ここで下手に遠慮するのはあまり合理的ではない。
    「フライドチキンを食べたいわ」
    リオは即答した。相手が奢るというなら素直に従うのが合理的だ。

  • 3二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:21:07

    二人はコンビニの外の小さなベンチに並んで座っていた。
    夕暮れのオレンジ色の空と、涼しい風がキャミソールの裾をそっと揺らす。チキンのスパイシーな香りが漂い、リオの空腹をさらに刺激する。
    リオは両手で握りしめて一口かじりついた。
    「うん、美味しいわね!」
    先程のまでの恥ずかしさなどジューシーなチキンの前ではどうでもいいことだった。
    "ほら、サンドイッチもあるからちゃんと食べてね"
    先生は野菜たっぷりのサンドイッチを取り出した。すこしためらってからリオは受け取った。
    「……これじゃあ、妹扱いね」
    リオは袋を開けながらそう言った。先生のこの自然な気遣いが、なぜか胸をチクッとさせる。
    "妹扱いじゃないよ"
    先生は野菜スティックをポリポリ齧りながらポツリと言った。
    "リオって、いつも堂々としてて、なんか……カッコいいなって思うけどさ"
    "今日みたいなちょっと無防備な感じも、意外と悪くない。なんか、ほっとする"
    「そう……褒め言葉として受け取っておくわ」
    リオはサンドイッチを持ったまま視線を先生から外した。
    "ほんとだよ。こうやってチキンとかサンドイッチ食べてるの、なんか……いいなって"
    彼の声が少し柔らかくなる。リオはチラッと先生を見る。夕暮れの光の中で、彼の目が一瞬だけリオの肩に落ちて、すぐに空に戻る。
    (……。少しは私のことを意識しているのかしら?)
    コンビニの明かりが二人の影を優しく照らし、チキンとサンドイッチの袋が空になる頃、なんだか少しだけ、二人の距離が縮まった気がした。空には星がチラチラと顔を出し始め、夕暮れが静かに夜に変わっていく。
    "呼び止めちゃって悪かったね。リオ、寒くない?"
    「湿度が高いからそこまで寒くはないわよ」
    リオはそんなことを思いながら、先生とは逆方向に歩き出す。
    (……また先生と買い食いするのも悪くないかもしれないわね)
    夜の風が、ほんのり温かい気持ちを運んでいた。

    おわり

  • 4二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:22:13

    描いたイラスト

  • 5二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:23:25

    先リオは良い文明

  • 6二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:26:05

    キッチリした子のちょっと行儀悪いの良いよね

  • 7二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:26:56

    ブルアカの絵スレに投稿しようと思って描いていたのに落ちちゃったからSS書く羽目になったじゃん!
    保守しなかった私のせいだよ!!

  • 8二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 22:58:28

    >>7

    泣かないで

  • 9二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:00:35

    このレスは削除されています

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:15:23

    >>9

    うん、それはまあ……

    でも絵描き歴1年未満のこの画力ではなにも伝わらないよね。夕方のライティングとか背景とかまだ描けないから……

オススメ

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