- 11◆iT7WvLBL2aBf25/06/29(日) 22:50:44
- 21◆iT7WvLBL2aBf25/06/29(日) 22:53:12
- 31◆iT7WvLBL2aBf25/06/29(日) 23:01:04
前回のあらすじ
スーパームーンを間近に控えた冬の夜。不良少女、大洲カノンは、ヘルメット団が画策した銀行強盗の“バイト”に参加する。しかし逃亡の際、彼女は脚を撃たれ囮にされてしまう。
何とか逃げ込んだ廃ビルで、カノンはエリと名乗る少女に出会った。
時を同じくして、キヴォトスでは通り魔事件が起きていた。その奇妙な手口を不審に思ったヒマリは、エイミと共に事件の調査を開始して…… - 41◆iT7WvLBL2aBf25/06/29(日) 23:24:25
ひとまず、スレ立てを……
本編に関しては明日から書いていけたらな、と思います……! - 5二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:25:15
では保守らねばなるまいて
- 6二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:27:34
10まで
- 7二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:29:21
保守ピタリティ
- 8二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:29:58
この文量をリアルタイム書きなんだからすげえよ……
- 9二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 00:25:00
保守
- 10二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 00:33:26
10
- 11二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 08:21:46
おつおつ
待ってるぜ - 12二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 16:48:41
保守
- 131◆iT7WvLBL2aBf25/06/30(月) 21:37:04
「……暗い」
路地に入ったエイミが最初に抱いた印象がそれだった。
ビルに囲まれてできたその路地は、まだ日も高い時間帯なのに薄暗い。夜になれば、真っ暗になるのは想像に難くなかった。
「……」
次に彼女は、目を閉じて耳を澄ませた。
羽虫の様に唸る換気扇。配管を水が通る鈍い衝突音。表通りの喧騒は、おぼろげにしか聞こえない。
「部長、聞こえる?」
ぱっと瞼を開けたエイミは、そう声を発した
「聞いていますよ、何か気づいた事でも?」
「気づいた……って言うのが正しいは分からないけど」
ヒマリからの通信。それを待ってエイミは言葉を続ける。
「あつらえむきの場所……だと思う」
「ふむ……」 - 141◆iT7WvLBL2aBf25/06/30(月) 21:38:33
ヒマリは、深く思慮するような吐息を一つ返した。エイミはそれを、先を促していると解釈した。
「ここ、夜はかなり暗くなりそう。それに、大通りとは離れているから、ある程度騒いでも問題なさそう」
「なるほど。うってつけですね」
ふう、とエイミは細く息を吐いた。
「とりあえずざっと見ただけだとそんな感じかな」
「……成程」
ヒマリは一言呟いて沈黙する。
彼女の次の言葉を待つ間に、エイミは路地の脇に寄り、具合を確かめるようにビルの壁面に手を触れた。
ヒマリは一言呟いて沈黙する。
彼女の答えを待つ間に、エイミは路地の脇に寄り、具合を確かめるようにビルの壁面に手を触れた。 - 151◆iT7WvLBL2aBf25/06/30(月) 21:52:27
「……そうなると、一つ気になることが」
暫くして、ヒマリが声を発した。
「なに?」
「犯人は、何故ここを選んだのでしょう?」
「……どういうこと?」
謎かけめいたヒマリの言葉。エイミはその真意を図りかねて、眉根を寄せた。
「エイミ、貴女わざわざ大通りから離れた暗い道を通りたいと思いますか?」
「ああ、成程」
瞬き二つ分程の間をおいて、ヒマリが答える。それを聞いてエイミは合点がいった。
「待ち伏せるには効率が悪いね、ここ」
この路地は、人通りが極端に少ない。そういう場所なのだ。現にエイミもここにきてから一度も人の姿を見ていない。
ふ、と通話越しに息の漏れる音が聞こえた。ヒマリが笑ったのだろう。
──この私に似て、素晴らしい洞察力ですよ。エイミ。
そう言いたげなヒマリのしたり顔が頭に浮かんで、エイミはゆっくりかぶりを振った。
「このことから推測できることは?エイミ」
「うーん」
水を向けられたエイミは、一つ一つ言葉を選びながら口を開く。 - 161◆iT7WvLBL2aBf25/06/30(月) 22:53:32
「犯人は被害者の生活パターンを知っていた……もしくは後をつけて、この路地に入ったタイミングで襲った……どちらにせよ、あらかじめ被害者に狙いを付けていた?」
「十中八九、そうでしょうね。……寒空の下、いつ来るかもわからない誰かを待ち続けられる……犯人がそういう人物であれば、その限りではありませんが」
冗談めかしたヒマリの言葉に、エイミは溜息を吐いた
「ねえ、結局何もわかってなくない?これ」
「そうでもありませんよ。少なくとも、だれでもいいという手合いではなく、何かしらの判断基準を持つことが分かりましたから」
詭弁だ……とエイミはあきれ顔をした。
「うーん、そうなると被害者の事、知りたいかも。そこにヒントがあるかもしれないし。ミレニアムの子だっけ」
エイミは気を取り直してヒマリに尋ねた。
「はい、身元の特定も済んでいますよ」
ヒマリが答えるや否や、エイミの持つ端末がぴこん、と通知音を立てる。彼女が画面をタップすると、被害者となった生徒の個人資料が表示された。セミナーのロゴが刻まれたそれには、件の生徒の略歴が事務的な筆致で記されている。
──持ち出して良いの、これ?
エイミは内心首を傾げつつ、資料に目を通す。 - 17二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 23:17:46
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- 181◆iT7WvLBL2aBf25/06/30(月) 23:20:45
「若梅リエ。宇宙旅行部……?」
知らない名前に、知らない部活である。
「読んで字のごとく、有人での宇宙旅行を目指す部活動ですね」
「え……」
さらりととんでもない事を口走ったヒマリに、エイミは目を丸くする。
「行ったの、実際に」
「残念ながら、成果は伴っていないようです。ただ、アプローチが独特でして」
続く言葉を劇的なものにする為に、ヒマリは一呼吸間を置く
「電磁投射による第一宇宙速度の突破……つまりレールガンによる投射で宇宙を目指していたそうです」
「えー……」
想定以上に素っ頓狂な話が出てきて、エイミは言葉を失った。
例えるなら、大砲の弾に人を詰めて空に向かって打ち上げるようなものだ。独特のアプローチというか、荒唐無稽と呼んでも差し支えないだろう。沈黙したエイミにかまわず、ヒマリは語り続ける。
「電磁投射という手法を取る以上、大量の電気が必要になります。彼女……リエさんは、ある実験に際してミレニアムの発電所に侵入し、電源を拝借したそうです。その結果……」
「あー……」
なんとなくオチが読めたエイミは、曖昧な表情を浮かべた。
「ミレニアム学区の大規模な停電を引き起こしたそうです」
「それで停学?」
「はい。そして停学中に不良グループとかかわりを持ち、今回の事件に巻き込まれた……そういった所ですね」
思わず眩暈がしたエイミは、目元を抑えた。 - 19二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 08:25:04
草
- 20二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 17:57:42
実質とんでもねえ投石器じゃねえか
- 21二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 00:04:37
⭐︎
- 22二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 09:52:01
いろんな意味で不安になるわ
- 231◆iT7WvLBL2aBf25/07/02(水) 18:47:13
タスクが立て続けに入っててんやわんやしているので少々お待ちを……
- 241◆iT7WvLBL2aBf25/07/03(木) 00:02:13
「……研究内容はともかく、本人は今どうなってるの?」
目元を抑えたまま、エイミは呻くように尋ねる。
「少し待ってください」
短い返事をしてヒマリは口を噤む。かわりに聞こえてくる、キーボードを叩く音。
「……現在はヴァルキューレ管轄の病院に移送されたようですね。容体の安定を待って事情聴取を行う予定だそうです」
束の間の沈黙の後、ヒマリが再び口を開いた。それを聞いたエイミは、難しい顔をした。
「それだと、直接話を聞くのは難しいか」
「そうですね。手段がないではありませんが……今はまだ尚早なので」
ヒマリの思わせぶりな物言いに、エイミは怪訝そうな顔をした。
「ともあれ、次の調査に取り掛かりましょう!」
通信機越しでそのことを知る由も無いからか、ヒマリは明るい口振りで言葉を紡ぐ。
「エイミ、貴女には被害者の所属していた不良グループに接触してもらいます」
調査の指示だ。エイミはふるり、と頭を振って雑念を追い出すとヒマリの話に集中する。
「了解。何をすればいい?」
「被害者の人となり、それから当日の行動について聞き出してください。……貴女の能力を信頼していますが、くれぐれも用心を。ヴァルキューレも彼女たちを追っているようですが、随分“非協力的”みたいですから」
「わかった」 - 251◆iT7WvLBL2aBf25/07/03(木) 00:03:21
ヒマリの言葉を聞いたエイミは、携行するショットガン……マルチタクティカルのグリップを握りこむ。場合によっては、これを使う必要が出てくるだろう。手に馴染んだ重みを確かめるように彼女は二、三度マルチタクティカルを揺らした。
「グループの根城はわかる?」
「いいえ。申し訳ないですが貴女の脚を頼ることになります。そうですね、ブラックマーケットを当たるのが、情報収集としては手っ取り早いかと。私の方は、在学中の被害者の足取りを追ってみます」
「了解、何かわかったらまた連絡するね」
「よろしくお願いします、エイミ」
ぷつん、と音を立てて通信機が沈黙する。
エイミは長く息を吐くと、空を仰いだ。ビルに切り取られた空は狭くて、遠い。
「ブラックマーケットか」
ぽつりと呟いて、それからエイミは歩き出す。その足取りに迷いはなかった。