【妄想強めSS】私の憧れた太陽【賀陽燐羽】

  • 1二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 18:27:48

    私が憧れたアイドル。

    それは太陽のようであり、周りの輝く星々を吸い込んでいくブラックホールのような異質なアイドルだった。

    「──いつか、わたしも。あんな風に歌うんだ」

    憧れのアイドルを前にして。

    私は見ず知らずの女の子たちにそう言っていた。



    それが、まさか。

    あんなことになるなんて。

  • 2二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 18:28:53

    「あーっ! いた!」

     初星学園中等部の入学式当日。

     私はあの日出会った少女たちを探していた。

    「手毬ちゃん! 美鈴ちゃん! 絶対、来てくれるって信じてた!」

    「燐羽ちゃん! お姉さん、あれからもっとすごくなってるね!」

    「でしょ~! 自慢のお姉ちゃんなんだから」

     そこにいたは月村手毬と、幡谷美鈴。

     あの日、最愛の姉が一番星になったその日に出会った。



     運命の友達。

  • 3二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 18:29:53

    「まぁ。まりちゃんが珍しく目を輝かせて」

    「だって、ようやく入学できたんだよ!」

     手毬はそう言って空を見上げた。

     空に浮かぶ、太陽を見つめて。



    「ここから。私の。私達の挑戦が始まるんだーって」

     彼女の言葉に、私の心臓が強く燃えるのを感じた。

     そうだ、そうなのだ。

     

     今まで憧れるだけの対象だった自慢の姉と、同じ場所に立てる。

     必ず、あんな風に歌うんだ。あの日みたいに、あの日よりもっと上手に。

  • 4二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 18:29:54

    ふふ、泰谷、ですよ。

  • 5二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 18:30:55

    秦谷の字単語登録しただろうが!

    このおバカPC!


    >>4 

    ご指摘ありがとうございます。

  • 6二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 18:31:55

    それからしばらく、誰かが言い出したのかもわからないが、3人で共にレッスンや勉強に励むようになった。

    気が付けば周りもユニットのように扱われることも多くなり、教師からの勧めで正式にユニットを組むことになった。

    名前は「syngup!」

    三人の歌声を同期させ、より多きく、高いところまで歌声を届けたい。



    ──太陽にまで届くように。



    そんな思いが込められていた。

  • 7二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 18:32:57

    「ねぇ燐羽」

     全ての授業が終わり、ダンスレッスンを終えた私はレッスンルームの隅であの日のライブ映像を見ていた。

    「いっつも、見てるよね」

    「うん! だってお姉ちゃんすごいんだよ」

     その言葉を聞いた手毬は私の隣に座る。

    「あれ? いつの間に」

     気が付けばその反対側には美鈴が座っていた。 二人は私の両隣にすわると手に持ったスマートフォンを覗きこむ。

    「いつか、歌いたいね!  Campus mode!!」

     あの日、姉が歌ったその曲は私が今まで聞いてきたどの歌姫たちの歌よりも圧巻だった。

    「でも、まだまだ認められないからねぇ……」

     私は小さくそうつぶやいた。

     初星学園伝統の曲。

     それを歌うのには一定水準の実力が求められる。



     中等部で、これをうたったアイドルは未だにいない。

  • 8二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 18:34:06

    「早くて3年ですかぁ。長いですねぇ」

     不服そうに言う美鈴。

     3人で小さく溜息を吐く。



    「でも、練習だけなら自由だよね!」

     突然、手毬が立ち上がった。

    「え? どうなんだろう……」

     私は困惑しながら、レッスンの片づけをしているトレーナーに目を向けた。

     どうやら彼女は私達3人の話を聞いていたらしい。 彼女は私達の視線に気が付くとすぐに諦めたような笑みを浮かべた。

    「どうせ、お前たち3人は言っても聞かんだろう……。まぁ、練習する分には自由だぞ」

     その言葉に、私達3人は目を合わせて喜ぶ。



    「ただ。なるべく見つからないようにしろ、何を言われるかわからないからな」

    「「「はいっ!」」」

     その日から、3人の秘密の特訓が始まった。

  • 9二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 18:35:08

    一旦書き溜め無くなったからしばらくあとに
    反響あればのんびり書きます

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 18:47:56

    期待と敬愛を込めた保守

  • 11二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 18:54:48

    俺好みのいい妄想だ。

  • 12二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 22:20:45

    対バンか

  • 13二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 01:11:45

    「輝くぞ絶対いっぱいかがやけ──」

     スピーカーから流れる私達の太陽の声。

    「本当に継さんはお上手ですね」

    「当たり前じゃない! 私のお姉ちゃんなんだよ!」

     美鈴の称賛に私は胸を張って笑う。

     2年生にして高等部のトップに立った誇るべき姉。

     それが、賀陽継だ。



    「1.2.3. 1.2.3……あっ」

     その後ろでダンスレッスンをしていた手毬が足をもたつかせて尻もちをつく。

    「まりちゃん、大丈夫ですか?」

    「もう、手毬。休憩はちゃんと休まないと」

    「……私、二人よりずっと下手だから頑張らないと」

     その言葉に思わず笑ってしまった。

  • 14二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 01:12:52

    「何言ってるのよ。家でずっとお姉ちゃんのマネして練習してたんだから」

     姉が初星学園に入学して、スターダムを駆け上がっていくのを自宅のテレビやスマートフォンなどでいつも見て見様見真似でマネばかりしていた。

     その練習期間に比べて、手毬や美鈴の習得は遅いというほどではない。

     美鈴は飲み込みが早いし……。

     手毬は感情を込めるが上手い、よ?

     

    「ねぇ燐羽。ここ、手本見せてよ」

    「もう、仕方ないわね」

     私はそう言って彼女が練習していたパートを踊る。

    「まぁ。お上手」

    「ほんと、上手だよね!」

     二人はそう言って目を輝かせる。

     その羨望の視線がとてもうれしくて──。



     とても、息苦しい。

  • 15二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 01:41:20

     この特技は決して、楽なものじゃない。

     姉本人や、その先輩。友人たちの中にも選ばれた太陽のような存在が確かに存在する。

     彼女たちは決まって何か光るものを持っている。

     たぶん、今はまだ輝いていないだけで。

     月村手毬と秦谷美鈴もそうなはず。



     私は、模倣しかできない。

     太陽のように光り輝くアイドル達の。

     模倣をして、組み合わせて。

     そんな偽物の天才なんだ。

     ディスクが焼き切れるまでダンスを見るし、音が聞こえなくなるまでボーカルを聞く。

     そうして、一つ一つ。なぞるようにまねていく。

     

     でも、当時の私はそれが誇りだった。

  • 16二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 01:46:24

    「ねぇ燐羽! 私達のモノマネをして歌を録ってよ」

    「どういうこと?」

     ある日の朝。

     いつものように自主レッスンに励んでいると手毬がそんなことを言い出した。

    「燐羽が私達の声をまねて、歌を教えるの! そうすれば私はもっと上手になれる」

     この特技を、そんなことに活かすなんて考えたこともなかった。

     その言葉を聞いた瞬間、私は胸が高鳴るのを感じた。

     これなら、届くかもしれない。

     確かな光る才能をもつはずの彼女たちを、私が導いて。



     いつか太陽にまで手を伸ばすんだ。と。

  • 17二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 01:48:04

     特訓の成果はすぐに出た。

     感情をこめすぎてすぐに息切れしてしまう手毬の悪癖は治らないが、それでも。

     平穏にやればこうすればいいという正解を知った彼女はどんどんと自分のものにしていった。

     美鈴は、そもそも。アイドルの歌を聞いたことが無い。といった感じだった。

    「まぁ。私はこういう歌い方あうんですね」

     私が録音した歌を聞いた瞬間、美鈴はそう微笑んだ。

     話しを聞けばあの日は半ば無理やり連れてこられたらしい。

     そんな彼女でもアイドルを目指すような心変わりをさせるほど、あの日の姉はすごかったんだと改めて誇りに思う。



    「お姉ちゃんにもこれができたら喜んでもらえるかな」



     窓の外の太陽を眺めて、そう小さく呟いた。

  • 18二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 02:54:43

    地獄じゃないか。それやったらなまじ学園トップになったのにまだ入学したての妹に自分の粗を見せつけられるなんて

  • 19二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 07:37:49

    眠いやで
    続きかいてるから適度にまってほしいやで

  • 20二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 14:28:42

     入学から3か月後。

     夏のHIFが開催されていた。

     中等部の私達syngup!は参加資格が無く、行われていくアイドル達のライブに一喜一憂していた。

    「やっぱり、継さんはすごいですね」

     美鈴は熱気に包まれていく会場を見てそう呟く。

     先ほどまではまばらだった観客の入りも一番星のライブが近づくと徐々に埋まっていく。

     皆が待ち望んでいるのだ。

     2年生にして夏冬のHIFを連覇し、さらなる頂へと手を伸ばそうとする彼女のライブを。

     かくいう私も尊敬する姉のライブを前にして心の高鳴りを感じていた。

  • 21二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 14:30:10

     会場が暗転する。

     告知されていたライブの開始時間よりはまだ早い。

     不自然に空いたセットリストの中での突然の演出に会場がどよめきだつ。



    「初星アイドルフェスティバル。いよいよ大詰めじゃ。じゃが、その前に!」

     学園長の声がライブ会場内に響き渡る。

    「一番星立っての希望により、あるアイドルが1曲だけ披露することとなった……」

     どよめきがさらに強くなる。

     もしかして自分たちかと一瞬心が浮つくが、そんな話は聞いていない。



    「中学3年。次代の一番星候補。十王星南じゃ!」

  • 22二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 14:53:07

     彼女のライブは圧巻だった。

     未完の大器。

     夜空に輝く一番星。

     周りの小さな星々の煌めきを代表するような、初星学園にふさわしいアイドル。



     でも──。

    「私のお姉ちゃんはこんなもんじゃないんだから!」

     熱狂に包まれる会場を他所に私たちはそう声を合わせていた。





     結論から言えば、賀陽継は一番星を失陥した。

     いや、極端にパフォーマンスが悪かったわけではない。

     だがステージ上にいたのは去年までと何ら変わらないままの彼女の姿だった。

     素晴らしいパフォーマンスであることは間違いない。

     現に両隣の手毬と美鈴は目を輝かせてライブを楽しんでいた。

  • 23二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 14:54:11

     太陽のような才能。

     それでいて、 見たものを魅了する妖艶さを持ち合わせている。



     だが、まねるために何度もライブ映像を見返した燐羽にだけは彼女の停滞が手に取るようにわかってしまった。

     おそらく、審査員側も同じだったのだろう。



     去年の冬からプロデューサーがつき、飛躍的な成長を遂げた別の3年生が一番星になるという形でこの年のHIFは幕を閉じた。

  • 24二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 14:55:15

    「ねぇ。お姉ちゃん。何があったの?」

     私は一人、楽屋を訪れていた。

     隣の楽屋では新世代のプリマステラ誕生を祝う声が聞こえる中、この部屋は静かだった。

    「私、アイドル辞めないから」

     目の前の姉は復讐心に燃えた目でそう呟く。

     太陽のように明るい姉は、こうしてどこか怖い一面も持っている。

    「ならもっと頑張らないと! このステップとか、いっつも表情硬くなっちゃうし──」

     その瞬間、ガチャンッという音が楽屋の中に響いた。

    「貴女、練習してたの? campus mode」



    「うんっ! だってお姉ちゃんに少しでも近づきたくて! 今日の良くなかったところも見せれるよ! まだ映像見てないでしょ?

     姉に褒められたくて、そんな言葉を口にしてしまっていた。

  • 25二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 14:56:57

     私は無邪気だった。

     私は無思慮だった。

     私は無分別だった。

     私は無責任だった。



     全てが終わった瞬間、姉の怒声が響いた。

    「貴女! 何が言いたいのよ!」

    「ちょっとでもお姉ちゃんに近づきたくて──」

    「気色悪い。二度とその顔を見せないで」

     その想定外の言葉に私は呆然とした。

     バンッと机をたたく音が響く。

    「早くいけよ! この模倣品が!」

     その言葉に、私の感情はぐちゃぐちゃになってしまった。

  • 26二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 00:36:49

    保守

  • 27二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 01:15:48

     次の日、賀陽継の活動休止が告知された。

     学園からのリリースでは「自分の才能に限界を感じた」とされていた。

     だが、インターネット上ではとある動画が出回ってしまった。



     あの日、楽屋でのやり取りを誰かに見られてしまっていたらしい。

     1部だけを切り取って私に怒鳴る賀陽継と泣きながら楽屋から逃げる私。

     すぐにアンチのやり玉に挙げられて彼女は「表ではいい子ぶっているが、裏では妹をいじめている」という悪評が付いてしまった。



    「ねぇ、燐羽。大丈夫?」

     心配そうに手毬が顔を覗きこむ。

    「う、うんっ! 大丈夫」

     私は気丈に答える。

    「ねぇねぇ燐羽。私、campus modeをライブで歌いたい! 賀陽継さんみたいに!」

     その言葉を聞いて、思わず目を見開いた。

  • 28二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 01:16:55

     このユニットメンバーは何を言うのかと。

     だが、いい機会だとも思った。

     姉が逃げるのなら。私が継ぐ。

    「うんっ! やろう!」

    「えっ? 燐ちゃんも、何言ってるんですか?!」

     美鈴は驚いて抗議の声を上げるが、知ったことか。

     あの日、前座にステージに立った十王星南はcampus modeを歌った。

     中等部初のアイドルとして。

  • 29二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 01:17:59

     その日、私たちはすぐに先生の元へ直談判しに行った。

    「いや、ダメだ」

     すぐにそう突き放された。

    「campus modeは高等部でも歌うことが許されてない生徒もいるんだ、入学したてのお前たちが──」

    「でも十王さんは歌いましたよね?!」

     手毬は目を輝かせて言う。

    「それは、学園全体からの許可があってだな──」

     その言葉を聞いて、手毬はさらに言葉を畳みかけた。

    「それって、十王学園長の孫娘だからってことですか?」 

     彼女にとっては純粋な問いだった。
     
     だが、対峙する大人にとって、その問いは劇薬でしかない。 否定することも、肯定することもできない。 1部が事実であり、1部が曲解されているのだ。

    「じ、実力を去年示したからな」

    「なら、私達も実力を示せばいいんですよね!」

     手毬に代わって私が声を上げる。

    「こんど来る卒業生と勝負して! 勝てば歌っていいですよね?!」

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