- 1二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 14:42:48
「えへへ。こうして2人からギュッとされてると、とっても温かいねぇ(ぬくぬく)
「ニシシ。ニャアンってば甘えて可愛いねぇ。こうして抱きしめ合ってると、私達家族みたいだね!」
「……………家…………族…………」
「!マチュ!しっかりニャアン抱きしめて!」
「…………………………ねぇ…パパは?ママは何処?私………ひとりぼっちなの………この宇宙で、 ………この狭いプチモビの中で、1人ぼっちなの……いや。怖い…………いやぁぁぁ!!!お父さん!お母さん!助けて!1人はいや!死にたくない!!1人で死にたくないぃぃ!!(ジタバタ)」
「大丈夫!大丈夫だから!ニャアン!!私達はここにいる!ここにいるから!!(ギュッッッ)」
「ハァッハァッハァッハァッハァッハァッハァッハァッハァッハァッハァッハァッ。マチュ、シュウちゃん。2人は私を置いてかないよね!ずっと一緒だよね!ね!」
「大丈夫だよニャアン」僕はもうどこにも行かないから!(トントン)」
「そうだよニャアン!私達3人!ずっと一緒だよ!(すりすり)」
「そうだよね!そうだよね!そうだよね!良かった…安心した…なんか私、安心したら、眠くなっちゃった…でも、寝るとまた、あのプチモビの中に」
「平気だよ。その時は僕も一緒にいてあげるから」
「シュウちゃん…マチュ……ありが………スゥ…スゥ……」
「「………………」」
「シュウジ。ニャアンは一生、あの戦争の影に怯えて生きていくの?」
「どんなに僕達がニャアンに寄り添っても、戦争で開いた心の穴だけは埋められない。絶対に埋められないんだ………」
- 2二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 15:06:03
続けて下さい
- 3二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 15:09:13
決して埋まらなくたってお前達の愛で薄めてやるんだよ…!
- 4二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 15:11:37
お労しい…だがトラウマ発症して怯えるニャアンでしか得られないものがある…
- 5二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 15:12:57
続けてみます。
あのイオマグヌッソの一件から暫くしてシュウジが戻ってきた。それ以来私達は3人、地球で暮らす事になった。
しかし最近になってニャアンにある変化が見られた。夜中に魘され始めたのだ。最初はただの悪夢だと思っていたが、事態は日に日に深刻となっていった。
魘される時のニャアンはしきりに呟く。1人はいや。死にたくないと。違う。と。
おそらくPTSD。心的外傷後ストレス障害だ。
宇宙世紀0079に起きたジオン独立戦争。ニャアンのいたサイド2は戦場になり壊滅した。噂では謎の兵器によってコロニー住人が全滅したという。
ニャアンはその事を過去の事だとあまり話してはくれなかった。私達はそれを聞いてニャアンの中では整理ができていたのだと思った。思い込んでいた。
実際は全く整理などされてない。今も彼女の心は戦争に囚われ続けていたのだ。 - 6二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 15:16:16
ジフレドには乗ってても平気だったけど色々合ってトラウマが再発し、プチモビみたいな狭い場所は苦手になったとか
- 7二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 15:23:25
「シュウジ、どうしよう。ずっとこのままじゃニャアンが可哀想だよ」
「僕だって同じだよ。でも心の傷は修理器具もなければ治療薬もない。本人の問題だ」
「私達に何か出来ないの!?ニャアンのトラウマを消し去ってあげる事とか!」
「………過去は変えられない。変えてはいけない。僕とララァはそれをイオマグヌッソの件で思い知った」
「シュウジ………」
そうだ。シャロンの薔薇ですら過去は変えられなかった。過去を変えるなんて創作の話だ。人間は神様じゃない。せいぜい別の世界線を作って、幸せに過ごす未来を作るのがやっとなんだ。
「………でも、少しだけ手はある。マチュ。僕は明日一日家を空ける、フラナガンスクールの人に会いにいく。だからニャアンをお願い」
「ジオンに行くの?大丈夫?」
「大丈夫。あのヒゲマンって人の力も借りるし。ニャアンの現状を1番改善できそんなのはあそこしかないから。時間がないからもう行く。ニャアンをお願い」
それだけ言うとシュウジは手荷物をまとめ、家を出た。部屋には私と、私を抱きしめるように眠るニャアンだけが残された。 - 8二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 15:28:11
部屋に残されたニャアンはしきりに呟く。「暗い。怖い。違う。違うの。違うんだって…」と。
一体ニャアンはどんな夢を見てるのか。中立を保ち戦争に関わらなかったサイド6生まれの私なんかじゃ、きっと図り知れないことなのだろう。
「ごめんなさい。ごめんなさい」魘される様にしきりに呟くニャアン。私はニャアンの涙を拭くと、耳元で静かに囁いた。
「大丈夫。私達がいるよ。シュウジだって、ニャアンを助ける為に手を尽くしてる。もうちょっとの辛抱だからね。だから今はおやすみ」
それだけ言うと私もニャアンに身体を預ける様に眠りに落ちた。 - 9二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 15:37:41
【チュンチュン、チュンチュン】
「んんっ?」
気がつけば朝になっていた。ニャアンは既に隣にはなく、代わりに鼻をくすぐるトーストの匂いが、ニャアンの現状を知らせていた。
「あっ、マチュ。起きたの?ご飯にするよ」
そこにいたのは私のよく知るニャアンだった。昨日まで恐怖に怯え、震えていたニャアンではない。
「おはようニャアン。もうご飯なの?」
「もうって、8時過ぎてるのよ?シュウちゃんは用事で1日家を空けるらしいから、朝食の用意だって普段より早く済んだし。ほら、顔洗ってご飯にするよ」
「分かったーちょっと待ってて」
顔を洗うと私達は朝食をとり始めた。トーストにサラダ。そして牛乳と簡素ながらこれだという朝食を取ると、すぐにお互いの分担する家事へと移った。
「なーにが家事分担よ。マチュは雑誌を読んでるだけじゃない」
「えへへ。これも立派な家事だよ。今のトレンドを取り込むね」
「もーほら、マチュ。そこ掃除機かけるから動いて」
やはり昨日までの怯えたやりとりはない。いつも通りのニャアンであった。 - 10二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 15:48:07
昼食も取り合えるとそれぞれの自由時間となる。ニャアンは毛糸で何かを塗っている。一方の私は椅子でぐるぐる回りながら、テレビのチャンネルを適当にいじっていた。
「昼間だからアニメもそんなないなぁ。あー何か面白いのないかなー?」
そういいチャンネルを変えていた私の手は、ある放送局で止まった。その放送局は時代劇を流していた。
題名は「宇宙世紀0079年。悪夢の一年間」OPの背景にある宇宙に浮かぶコロニーが攻撃を受けていた。
「やばっ」
数秒の硬直の後、直ぐに電源を叩き切ると咄嗟に背後を振り帰った。予想通り最悪の事態がそこにはあった。ニャアンは既に暗くなったテレビ画面を目を見開きながら見続けていた。編んでた毛糸と道具は床に落ちている。
「あっ………ああっ………」
「ニャアン!ここは無事なんだ!あれは所詮フィクション!ここは現実!ニャアンは今無事なんだ!」
必死に肩を掴み、ニャアンを正気に戻そうとする。彼女は人形にまるで力が入っていない!
(くそっ!なんであんなもん真っ昼間に流してんだ!)
内心でそう毒づくも、今はニャアンを正気に戻す方が先決だ。 - 11二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 15:58:24
「マチュ………シュウちゃんは?シュウちゃんは何処なの?」
「!!シュウジ?………シュウジは今………買い物にでk「なんで?」」
「え?」
「1人にしないでって言ったのに………なんでシュウちゃんいないの?………また、何処かいっちゃったの?」
「違う!シュウジは今、ニャアンの為に外に出てt「なら!今!なんで私の側にいないの!!ひとりにしないでって言ったのにぃ!!」」
今のニャアンからは昨日以上の狂気を感じた。その狂気の前に私は圧倒されていた。私は必死を抱きしめ、宥めすかす。
「落ち着いてニャアン!私がいるじゃん!」
「マチュだけじゃ意味ない!シュウちゃんは!?シュウちゃんはいないの!?暗いのは嫌………違う!違うの!!」
ニャアンは泣いていた。普段のニャアンからは想像も出来ない程、大粒の涙を流していた。私は黙って見ている事しかできなかった。
「シュウちゃん!!シュウちゃん!!何処!!何処なの!!シュウちゃん」
「ここにいるよ」
「「!!?」」
その言葉に驚いた私達は扉を見た。
そこには夜に家を出たシュウジと、ヒゲマン。またの名をシャリア・ブルと呼ぶジオンの中佐さんがいた。 - 12二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 16:10:18
「シュウちゃん!!」
ニャアンは泣きながらも10時に抱きついた。
「ただいまニャアン。泣いてるけど大丈夫かい?」
「シュウちゃん!シュウちゃん!!いるんだね!いるんだ!!ここに!!」
「言ったでしょ。僕は何処にも行かないって」
そう言いながらニャアンの頭を撫でる。ニャアンは安心した様に身体を預けている。
「シュウジ、もう帰ってきたの?それにヒゲマンまで」
「久しぶりですねマチュ君。たまたま地球で大佐の様子を監視していた所を、シュウジ君とジオンの地上基地でばったり会いましてね。事情は概ね聞いていますよ」
「ヒゲまんお願い!ニャアンを助けて!ニャアンの様子がおかしいんだ!」
「ええ。その為に私が来たのです。とりあえずマチュ君。既にシュウジ君には説明しています。ニャアン君の今の状態、並びに解決法についてです。結構は今夜。それまでにあらかたの事情を説明します」
「分かったよヒゲマン。シュウジ、ニャアンをお願い」
「うん。ほらニャアン。少し散歩に出よう。一緒に行きたいところもあるし」
「うん行く!シュウちゃん!行こう!」
そう言うとニャアンとシュウジは部屋を去り、マチュとヒゲマンだけが残された。 - 13二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 16:21:59
「で、ヒゲマン。ニャアンの状態ってなんなの?」
「私は医者ではありませんが、シュウジ君から聞いた話では間違いなくPTSDでしょう。シュウジ君にはニャアン君を散歩帰り、病院に連れて行ってもらう手筈になっています」
PTSDは私達も真っ先に思いついた。でもイズマ・コロニーにいた頃のニャアンには、その継承は全く見られなかった。一体どう言う事だ
「そこですマチュ君」
…このヒゲマン。相変わらずこちらの心を読んできやがる。
「おそらくニャアン君のPTSDは間違いなくジオン独立戦争の時の傷です………我々ジオンがつけた傷です。ですが、本来ならその傷は回復もしくは封印されていたと考えます」
「…つまり、その傷が今になって再発したって事?なんで?どうして?」
「これは私の推測ですが、おそらく、フラッシュバックの様にその出来事を思い出してしまったのでしょう。サイド2が滅びたあの出来事を思い出す内容が。
「………サイド2に住んでいた者の多くは、あの戦争で死んでしまいました。貴女もご存知だと思いますが、ニュータイプは人の死を他者より敏感に感じ取ってしまう。そして、彼女は最近それを再び体験した。サイド2の時と同じく、大勢の人々の死を」
「それって………まさか」
心当たりが一つある。大勢の人々が一気に消えてしまったあの…
「ええ。間違いなく、イオマグヌッソでのザクノヴァ。それによるア・バオア・クー消失。彼女はその時聞いてしまったのでしょう。死んでいく者達の悲鳴が。そしてトラウマが蘇った。サイド2が滅びた時の悲鳴と共に」 - 14二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 16:38:27
あのイオマグヌッソでのゼクノヴァ。光と人の渦が溶けていく恐ろしいキラキラ。シャロンの薔薇からの悲鳴でも、その恐ろしさは計り知れない。
「…ただ。これはきっかけにすぎません」
「きっかけ?」
「もし、彼女がイオマグヌッソでのゼクノヴァを起こした事によって苦しんでるなら、両親や死にたくないなどと言うはずがありません。あくまでイオマグヌッソの件は彼女のトラウマを誘発したに過ぎず、遅かれ早かれ、彼女は今の状態になっていた可能性があります」
「もういい。事情は分かった。で、ヒゲマン!ニャアンは助かるの?」
「助けるのです。ただ、その為には貴女とシュウジ君。そしてもう1人助っ人を呼んでいます」
「助っ人?」
「貴女もよく知る人物です。既に私が打診し、協力を取り付けています」
「ニャアンの為だ!なんでもするよ!言ってヒゲマン!私は何をすればいいの!?」
「………先に言っておきます。今回ニャアン君に行う治療は、世間一般では恐らく認められないでしょう。ですが、私の考えつく限り、これしか治療方法は無いと思い手を打ちました」
「危険なの?」
「…はい。下手をすれば彼女の心が壊れてしまいます」
「そんな!」
「だから貴女やシュウジ君の協力が必要なのです。………ジオンである私が頼める義理ではありませんが、あの戦争で傷ついた彼女の心を救うのに、手を貸してください」
そう言うとヒゲマンは立ち、そして私に頭を深々と下げてきた。私の返事は決まっている。ニャアンを絶対助けるんだ! - 15二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 16:59:00
夜になった。ヒゲマン曰く助っ人の到着の為に治療は夜行われる事となった。私とヒゲマンはジオンの基地の病院に足を運んでいた。
「ニャアンのいる病室は…ここか」
階段を上がり部屋の扉を開ける。そこにはシュウジと入院寝巻きのニャアンがいた。
「マチュ!お見舞いに来てくれたの?」
「ニャアン。入院するの?」
「数日だけだよ。ちょっと体調が悪くて検査を受けて見たら、数日入院する事になったんだ。マチュ。数日私がいなくても家事とかしっかりやるんだよ。洗濯、サボっちゃダメだからね」
やはりこうしていると普段のニャアンだ。PTSDを発症している様には思えない。
「ニャアン。そろそろ寝る時間だ。これ飲んで」
そう言うとシュウジはカプセルを取り出し手渡す。ニャアンは難なくそれを飲むと、水で流し込む。数分後にはニャアンは安らかな寝息を立てていた。
「睡眠薬がよく聞きましたか。ではこちらも治療に入りましょうか」
そう言うとニャアンの部屋には白衣を着た人や看護師さん達が立ち入り始めた。ニャアンの頭に輪っかの様な何かを装着している。
「あれは何?」
「人間の脳波を測定する装置の強化版。まぁサイコミュの発展系とでも思ってください」
「中佐。器具の設置は完了しました。後は…」
「ええ。分かっています。ちょうど助っ人も数分前から来ていた様ですし、そろそろお入りになられては?」 - 16二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 17:08:24
そう言うとヒゲマンは閉まっている扉の方に目を向けた。皆が注目していると扉が開き、そこから1組の男女が姿を現した。
「相変わらずだな、シャリア・ブル。私の存在を感知していたとは」
「うふふ。大佐ってば、自分で感知させたのではなくて?」
「ふふっ。軍を抜けたのだ。大佐はやめてくれ」
扉より現れた二人組をマチュは知っていた。
「貴方はシャアさん!それにララァさんも!」
「久しぶりね。娼館以来かしら?」
驚くマチュにヒゲマンが説明を始めた。
「今回ニャアン君を救うには、ララァさんの力は必須だと考えました。事情を話したら快く引き受けてくれました」
「私はララァの付き添いの様な物だが、ニュータイプが苦しんでいるのを見捨てる程、薄情ではない」
「さて、役者は揃いました。これより作戦を開始しましょう。装置の起動は?」
「問題ありません!」
ニャアンの頭についてる装置はまばらな光を担当させていた。
「ヒゲマン。私達は何をすればいいの?」
「ここにいるニュータイプの皆さんはお分かりかと思いますが、ニュータイプが認知できる特有の認識空間があります。ここはマチュ君にも分かりやすく、キラキラと呼びましょう。そこにマチュ君とシュウジ君で入ってもらいます」 - 17二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 17:17:05
- 18二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 17:20:18
「キラキラに……入る?」
「マチュ、覚えてる?イオマグヌッソで僕がシャロンの薔薇の過去を見せた事があるだろ?」
あの時、シュウジはキラキラの中で向こう側の記憶を見せてくれた。私達の世界とは異なる歴史を歩んだ世界。
「今回はそれの応用で、マチュ君とシュウジ君の2人でニャアン君のキラキラに入ってもらいます。無意識者がキラキラに入った事例は過去にありませんが、今回それを可能にする為に、フラナガンスクールから試作のサイコミュを取り寄せ、使わせてもらいます」
「そしてそのアシストとして呼ばれたのが私ね」
「ええ。貴女のニュータイプとしての力はこの場の誰よりも上でしょう。私達が認識できない事も、貴女なら認識できる」
「でも、今回の行為はそのニャアンって子の心に入り込む事になる。だから彼女が知らない者は間違いなく拒絶される。だからララァがこちら側でサポートする」
「私とシュウジで、ニャアンの心に入る………」
ニャアンを見る。穏やかな寝顔をしているが、どうなっているのか。睡眠薬で表面化してないだけで、まだ例の悪夢に魘されているのか?そう思うと悩む時間はなかった。
「やる!やるよシュウジ!ニャアンのキラキラに入って、ニャアンを助けるんだ!」 - 19二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 17:37:24
それからの用意はスムーズに進んだ。ニャアンがつけている装置と同じものを私とシュウジもつけた。これでニャアンのキラキラに入りやすくなるそうだ。
一応ララァさんもサポートの為に装置をつけているが、起動するのはヒゲマン達が危険だと判断したその時だけだ。
「準備はいいですね、マチュ君。シュウジ君」
「おっけーヒゲマン。早くして」
「念を押しますが、今回のケースは過去に事例がありません。貴女達が彼女を救ってくれる事を信じていますが、危険だと判断したらこちらで即座にサイコミュを切ります」
「いいから早く!」
「ニャアンは助かるよ。ガンダムが…いや、僕がそう言っている」
「………分かりました。託しましたよ。新世代のニュータイプ!」
スイッチが押された。ニャアンの装置と同じ光が、マチュとシュウジの装置にも点灯した。
次の瞬間、時が止まった様に2人の身体は硬直していた。座った体勢から固まり、微動だにもしない。
「2人の身体に硬直が見られる。2人ともキラキラの中に入ったか」
「ニュータイプが認識する空間。そこでは長い時も、現実では一瞬の時と言うが、既に数秒経っているぞ」
「今回のケースは過去に事例がありません。我々の知っている知識が通用しないと考えるべきでしょう。ララァさん。2人は?」
「…大丈夫。2人ともキラキラの中に入れたは。後は2人が彼女の心を救い出すだけ」
シャリアは1人、静かに目を閉じていた。
(………ニュータイプがニュータイプとして生きられる世界を作る………マチュ君。お願いです。彼女を救ってください。そして証明してください。ニュータイプとは決して不幸な存在なのでは無いと…) - 20二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 17:57:57
「ここは…」
「ここはニャアンのキラキラ。ニャアンの心の中と言っていい」
気がつくと私は、キラキラの中にいた。私の隣にはシュウジがいた。そしてここはニャアンのキラキラ。イオマグヌッソ以来だ。相変わらずの紫色だ。
「………2人とも、なんで来たの?」
その声の主を私は知っている!振り向くとそこにはニャアンがいた。
「2人とも、態々来てくれてありがとう。聞こえてたよ、2人が私を助けに来てくれたって」
「えへへ!ニャアン!会えたね!とりあえず無事で安心したよ!」
マチュのそれは心からの言葉だ。ニャアンが一件苦しんでない姿を見た事による安心の言葉であった。
「ニャアン。君は何を苦しんでるんだい?イオマグヌッソの件はキシリアの指示だ。君に責任はない。それはシャリア・ブル中佐が既に証明している」
「いいの。私が苦しんでるのは私への罰。私自身の罪の罰。背負った十字架なんだから」
「………やっぱり、イオマグヌッソはきっかけ。サイド2の件なんだね。君が苦しんでいるのは」
「………毎日同じ夢を見る。そこで私は苦しみ続けるんだ。2人が私の罪に付き合う必要はない」
「そんな事ない!ニャアンが苦しむ必要なんてない!一体何に苦しんでるの!?教えてよ!」
「……………」
マチュの言葉への返答代わりの沈黙。そして次のニャアンの返答で、シュウジの顔が一気に曇った。
「…じゃあ一緒に見よう。私の罪を。運命のあの日。私の故郷、サイド2の【アイランド・イフィッシュ】が滅びる様を…」 - 21二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 17:59:13
げぇぇっ!!よりにもよってアイランド・イフィッシュかよ!!
- 22二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 18:01:00
よりにもよって毒ガスかよ⋯地球に降りたときコロニーの落ちたオーストラリアに寄ってないよねマチュ達
- 23二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 18:01:32
罪ってもしかしてニャアンは家族や友人を見捨てたことを悔やんでる?
- 24二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 18:07:36
- 25二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 18:12:59
- 26二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 18:18:07
「アイランド・イフィッシュ?」
「……宇宙世紀0079年1月3日。ジオンはブリティッシュ作戦と称し、地球軍本部ジャブローにコロニー落としを画策。1月4日に連邦寄りのコロニー郡を奇襲し毒ガスを注入、コロニーの住人を虐殺した」
「そんなひどい事をジオンが?」
「僕はいろんな宇宙を渡り歩いてきた。その全てでブリティッシュ作戦は行われ。アイランド・イフィッシュに毒ガスが撒かれた」
「…その日、私はいつもの様に家族と買い物に出ていた。新年度って事でパパとママと楽しく過ごしてた。ほら、あれが私だよ。当時幸せだった頃の私」
キラキラ空間にある姿が映る。1組の夫婦に1人の娘。その娘は黒い長髪をした褐色肌であった。
「おいニャアン!あんまり走ると転ぶぞー」
「もう、パパったら、私、そんなこどもじゃないよ?」
「何言ってんだ。私から見たら、お前なんてまだまだこどもだよ」
「もーパパったら。ママからもなんか言ってよ!」
「ニャアン。大人になりたかったら、いたずらっ子を卒業する事よ。貴女が物を隠すたびに、誰かが困っちゃうんだから」
「もー、みんなで私を子供扱いして。私、4月から中学生になるんだよ?」
「「ははははは」」
そこにはありふれた日常が広がっていた。特に取り上げる事もない、だからこそ美しい日常が。
「あれがニャアンのこどもの頃」
マチュとシュウジは、その幸せな姿を刻んでいた。これから起こる最悪な出来事も忘れて。 - 27二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 18:24:51
やっぱりジオンってksだわ(n回目)
- 28二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 18:46:02
「ねぇママ。今日の夕飯だけど私ハンバーグが食べt?ママ?」
返事が聞こえず、振り返るとそこには目を疑う光景があった。父親と母親が喉を抑えて苦しんでいた。
「パパ!ママ!どうし………!!」
次の瞬間、ニャアンも喉を抑えて苦しみ始めた。
「何が起きたの!?」
「ジオンが毒ガスを注入したんだ。既にアイランド・イフィッシュは地獄の棺桶になっている」
マチュの疑問にシュウジが答えた。映像のニャアン達は苦しみ続けている。
(苦しい…何これ…私、死んじゃうの?どうして?なんで?嫌だ!死にたくない!死にたくない!死にたくないよ!!!)
「君達!まだ生きてる!大丈夫か!?」
その時誰かが声をかけてくれた。見るとそれは連邦の宇宙服を着た男性だった。その人のヘルメットは血の縦線で汚れていた。
「ここはまだ毒ガスの散布が薄かったのか!とにかくこれを使え!僅かだがエアーがある!俺の仲間の分だが、みんな使う前に死んでしまった」
そういい渡されたヘルメットを3人は直ぐに嵌めた。酷い不快感だが、奇跡的に3人とも一命を取り留める。
「君達、このブロックの先にプチモビルスーツの置き場がある。そこでコロニーから脱出するんだ!おそらく連邦の艦隊も近くに来てくれる!いいか!絶対に死ぬな!生きるんだ!」
そういうと彼は何処かへと走り去った。他の生存者を探そうというのだろう。
3人はプチモビ置き場を目指して走り出した。 - 29二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 18:51:12
- 30二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 19:04:06
映像のニャアンは走っていた。向かうまでの道中には地獄と呼ぶのも生ぬるい光景が広がっていたが、そんな物に目をくれる余裕もない。
「貴方!ここじゃない!」
「ああ!きっとそうだ!」
3人は支持されたブロックに辿り着いた。扉は開いており、その中にはゴールまで辿り着けなかった、物言わぬ人の山で溢れかえっていた。
「パパ!あれじゃない!」
「ニャアン!しゃべるな!エアーの無駄だ!」
そこには1台のプチモビルスーツが置かれていた。他にも何台かあったのかもしれんが、見渡す限り無い。ニャアン達と同じく生き延びた人達が脱出に使ったのだ。ここにあるのが最後の一台なのだ。
よし!直ぐに起動させる。
そういい父親が乗り込むと、難しいパネルなどの操作を始めた。
その時だった。コロニーが揺れ始めた。
「何が起きたの!?」
「核パルスエンジンが起動したんだ。コロニーが動き始めたんだ!これを地球に落とすんだ!」
「こんな物を地球に落とす?コロニーの人を殺して!?バカじゃ無いの!?」
「…………そうだよねバカだよ。大馬鹿なんだよ!!」
マチュの叫び以上の叫びを発したのは、映像では無いニャアンであった。何故こんな理不尽な目に遭わなければならないのか。一体何の罪があるのか。彼女の叫びは言葉で表せない複雑な感情を渦巻いていた。 - 31二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 19:25:36
「よし!何とか起動できた!」
「パパ。私気分が…」
「ニャアン!大丈夫か!?もう少しの辛抱だ!」
ニャアンはこの時不快感を感じていた。当時は毒ガスの影響だと思われたが、今なら分かる。彼女はこの時点で人の死について感じていたのだ。
「よし!乗り込め!直ぐに発進させるぞ!」
狭いコックピットに3人がすし詰めになって乗り込む。後は蓋の部分を閉めて、発進ボタンを押すだけだ。
【ビビーッ!】
その警告音は突然鳴った。プチモビの蓋部分が閉まらないのだ。安全基準による事故や怪我防止の仕様。3人で乗るのは無理なのであった。
「なっ!何で閉まらないんだ!みんな!もう少し詰めれないか!?」
「無理よ!もうこれで限界なのよ!」
何度もボタンを押すがプチモビは動かない。更なる問題が3人を襲う。
「パパ、ママ、私もう…」
「ニャアン!?エアーがもう無くなりそうじゃないか!?」
既にニャアンは虫の息であった。本来ならエアーはまだ余裕があった筈である。たがここに来るまでに走ったことが、エアーの消耗をより早めてしまったのだ。
外は毒ガスと真空。ヘルメットの中のエアーも僅か、もはやこれまでと思われた。 - 32二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 19:41:17
「ニャアン!!」
「大丈夫よ。これは私の覚えてる過去の記憶。現に私はこうして生きてるでしょ?大丈夫だからマチュ」
さっきまでの激昂とは違い、ニャアンは酷く落ち着いて・・・いや、冷めていた。
「エアーの無くなりそうになった私は、ここから最低な方法を使って助かるから」
そう吐き捨てるとニャアンは映像に視線を戻す。彼女は苦しんでいた。
(私…死ぬの?嫌だ!私!死ぬの!?嫌!嫌!死んだらどうなるの?食事は!?遊びは!?どうなるの?・・・死にたくない!!)
「「!!!」」
次の瞬間、映像を見ていたマチュとシュウジは言葉を失った。映像の中のニャアンが両親を突き飛ばしたのだ。しかもニャアンは母親に飛びかかり、何とヘルメットを脱がせていた。
「………ここら辺は私もよく覚えてなかった。本当に、この頃から、ワケワカになると何でもやるんだなって思い出したよ。自分の分のエアー欲しさに、本当、最低」
吐き捨てる様にニャアンが言う。この間、父親は呆然としていた。映像のニャアンは母親の宇宙服を奪うと、再びプチモビに乗り込み、父親の動作を真似た。
今度は1人だからか、蓋が閉まりエンジンが始動した。
映像のニャアンが背後を振り返ってしまった。母親は既に床に伏していた。そして父親が手を伸ばしていた。口で何かを言っていたが、聞き取れない。
ニャアン1人を乗せたプチモビは、宇宙の彼方に飛び出して行った。
「これが私の罪………私が家族を見殺しに………いや、殺したんだ」 - 33二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 19:44:48
スレ主です。今の内に言っておきますが、スレ主は胸糞NTRが嫌いなので、ちゃんと救済を用意しています。
- 34二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 19:56:18
映像は終わった。
「こうして私は、近くを通りがかった連邦の艦に助けられた。それからは目まぐるしい日々だった。生き残るのに必死で生きてる実感も無かった。実のところ、両親にした事すら、振り返る余裕なんてなかったよ」
「でもさ、イズマ・コロニーでマチュやシュウちゃんと出会えて、なんか生きてる実感が湧いてさ。そしたら、余裕が生まれちゃった………だから、振り返った。あぁ。私、最悪なんだなぁって」
「そして、キシリア様の為に使ったイオマグヌッソの時に感じちゃったんだ。人が沢山死んだ時のあの不快感を。私の故郷のアイランド・イフィッシュで感じた不快感を」
「そこからは2人が知ってる通り。今の状態。我が身可愛さで、親殺しして1人逃げて…………考えてみたらイズマ・コロニーでマチュやシュウちゃんを見捨てたり、本当に最低なんだ私。何も変わってないよ」
「分かった?これは私の罰なの。親殺しの罪を永遠に背負っていう罰。だから私はこの悪夢を甘んじて受け入れる。2人が気に病む必要はないよ」
ニャアンのその言葉は達観していた。
「………親殺し………本当にそうなの?」
ニャアンの言葉を一通り聞き終えたシュウジは静かにそう言った。 - 35二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 20:20:29
「シュウちゃん?見たでしょ?これ私の記憶なんだよ?私が我が身可愛さでママのエアーを奪い、パパを見殺した最低な私を」
「…ニャアンがワケワカになると凄い事をするのは知ってるけど、こんな事はしないと思うよ」
「シュウちゃん……………優しいんだね。でも私は十字架を背負い続ける覚悟があるよ。慰めなんていらない」
自嘲しながら視線を逸らすニャアン。だがシュウジはジッとニャアンを見つめている。
「………ねぇニャアン。聞かせて。この記憶にある事って、自信を持って自分がしたって言える?」
「!それは………」
一瞬だがニャアンの口が澱んだ。それを2人は見逃さなかった。
「映像のニャアンのエアーは無くなりそうだった。そんな状態のニャアンが、こんな事出来たとは僕は思いたくない」
「そうだよニャアン!勘違いの可能性だって「やめて!!」」
ニャアンが絶叫する。キラキラの色も紫から赤色に変わる。本能的に危険であると判断できる。
「私は最低な子なの!親殺しの親不孝!!あの状況で生き残れたのがそれの証明!!」
「………僕は、ニャアンがしてもない罪に苦しむ姿は見たくない」
「そうだよニャアン!確証もないのに、自分を偽る必要なんてないんだ!!」
「2人とも諦めてよ!!もうパパもママも死んじゃってるんだよ!!今更確かめる術なんて…」
「あるよ」
次の瞬間、シュウジは確かにそう言った。あると。 - 36二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 20:36:13
「シュウジ!?」「シュウちゃん」
マチュとニャアンが同時に叫んだ。シュウジから出た言葉は2人にとっても予想外であった。
「確かめる!?まさかはパパとママは生きてて…」
「…人は死んだらそれまでだよ。残念だけど、ニャアンの両親は多分死んでいる」
「じゃあ確かめようが「ある。1人だけいる。この時の悲劇の正しい記憶、いや、正しい出来事を観測した存在が。ニャアン。その人をこのキラキラの中に呼びたい。受け入れてくれるかい?」」
「その人、シュウちゃんの友達なの?なら…」
「ありがとう………ねぇ、赤色になったって事は、シャア達も用意してたんだよね。お願いするよ」
「シュウジ。一体n「………えぇ。繋がったわ」
マチュの言葉を遮る様に、空間全体から声がした。やがてある光がキラキラの中に集まり始めた。それはやがて一つの形となった。綺麗な人だった。赤い色のキラキラもニャアンの色の紫に戻った。
それは病室で待機してる筈のララァであった。
「ララァさん?サポートで外にいる筈じゃ?」
「ふふっ。この姿だとこちら側と見分けがつかないのね」
「え?見分け?………まさか!?貴女は!!」
「お久しぶりね。【こちら側】のニュータイプさん」
「シャロンの薔薇。エルメスの、ララァ!?」 - 37二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 20:49:20
シャロンの薔薇のララァ。シュウジと同じ向こう側の存在。彼女はイオマグヌッソの一件で向こうに帰った筈では?
「今回の件、ニャアンを助ける最後の手段として、僕は家を出て直ぐに向こう側に飛んだ。そこでララァと話して、いざという時はこちら側のララァと共鳴して話してもらうって」
「ララァさんにそんな事を」
こちら側のララァさんは向こう側の夢を見ていた。だから向こう側と繋がれるのだろう。
「ララァ。この世界は貴女が生み出した世界だ。貴女はその全てを観測していた筈だ。その力を借りたい」
「いいのシュウジ?私の力を使って。本来この世界に存在しない力よ?」
「………僕は、ニャアンがしたかも分からない罪で魘される姿を見たくない」
「…分かった。この世界を生み出した私の責任もある。その願いに付き合うわ。さてニャアンさん。初めまして。私はララァ。向こう側のララァよ」
「あっ、初めまして。ニャアンです。いつもシュウちゃんがお世話になってます」
「ふふっ。丁寧なのね」
(意外とマイペースなんだな)
謎にほっこりした会話の後、ララァは本題を切り出した。
「ニャアンさん。私はこの世界を生み出した。この世界だけじゃない。幾多の世界を生み出した。私が干渉したのは大佐を救う為、それ以外は不干渉なの………本当ならダメなんだけど、今回だけ、貴女に真実を見せるわ。あの日、貴女が勘違いしている事を」 - 38二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 20:59:39
そうか薔薇ララァを観測者として真実を告げる手があったか!
- 39二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 21:13:30
「ニャアンさん。これが貴女の知らない真実。貴女はあの時、エアー不足で倒れたの」
先程と同じく映像が映し出される。そこには両親がプチモビから落ちたニャアンに必死呼びかけていた。
「ニャアン!ニャアン!ダメだ!ニャアンのエアーはもう無い!」
両親は必死にニャアンに呼びかける。そんな中、母親は父親にある事を告げた。
「私のエアーをこの子に上げるわ!」
「何をいうんだ!そんな事したらお前は!」
「私はこの子を死なせたくない!貴方。私のエアーの供給をニャアンに!」
母親は父親に鬼気迫る表情で告げた。数秒考えた末、父親は言った。
「駄目だ。そんな量のエアーじゃ、どの道ニャアンが持つか分からない!」
「貴t「だから!私の分のエアーもニャアンに与える!」
その言葉に母親は驚いた。
「どの道残された2人分のエアーでは、分担したら共倒れだ!ならこの子1人だけでも絶対に生かしたい!それは同じ気持ちだ!」
「貴方…」
「急げ!こうしてる間にエアーは無くなるぞ!」 - 40二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 21:24:00
そこからの作業は時間との勝負であった。気絶したニャアンのエアーと母親のエアーを交換する。それ行為の結果は母親の死を意味する。
だが彼女の行動には後悔はなかった。
(…この子だけ……でも、生き抜いて……ほしい………ニャアン、元気でね………)
全てのエアーを終えた後、母親は毒ガスによりこの世を去った。そして父親のエアーもニャアンに分け与え、彼に残された時間は一分も無かった。
(プチモビはオート操作にした。後は艦が拾ってくれるのを信じて…)
(………ニャアン。私は後悔はない。お前が生きてくれるなら、それで満足だ。1人で寂しいかもしれないが、強く、強く生きてくれ)
「………愛してるよ。ニャアン………」
父親の視界は事切れる寸前、ニャアンがこちらを見た様に感じた。
こうして貴女は、両親のエアーを譲り受けた。そして酸欠になる前に連邦の艦に拾われ、一命を取り留めた。これが、貴女の身に起きた正しい記憶よ。嘘でも作り物でもない、真実のね」
そう言うとララァさんは映像を消した。 - 41二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 21:33:06
「……………これが、私の真実?」
映像を見て黙っていたニャアンが口を開く。
「そうよ。貴女の見ていたこれまでの記憶は、貴女の罪の意識の表れに過ぎない。意識を取り戻した貴女がプチモビにたった1人だけ乗っていた事、そして残されたエアーが本当にギリギリだった事から、罪悪感を感じて生み出した虚像なの」
「…お父さんとお母さん……私を愛してくれてた」
「こどもを愛さない親なんていないわ」
暫くの間、ニャアンは黙っていた。
(これが、ニャアンに起きた本当の過去……)
そして私もシュウジも言葉を発する事ができなかった。ただ、少ししてようやく実感が湧いた。
「ニャアンは…ニャアンは、親殺しじゃない!ニャアンの両親はニャアンを愛してた!ニャアンが罪を背負う事も!罰を受ける必要も無いんだ!!」
「そうだね。ニャアンは何も悪い事はしてないんだ」
「やったよシュウジ!ニャアンが気に病む事なんて何も無いんだ!」
私もシュウジもその事を喜んだ。ニャアンの事を喜んだ。きっとニャアンも同じ感想なのだろう。
だか、次のニャアンの言葉は予想外の物であった。
「マチュ………ごめん。それは違う」 - 42二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 21:55:34
「え?」
「………結局同じだったよ。私が直接手にかけて無いだけで、私がパパもママも殺したんだ」
ニャアンの言葉は先程より自虐的であった。
「違うよニャアン!映像を見たでしょ!?エアー的にもう「それでも!!!私が2人のエアーを奪って1人だけ助かったんだ!!これまでの夢と何も変わらない!!」」
ニャアンの絶叫により、キラキラの色が再び赤に変わる。危険信号だ。
「………知ってるマチュ?1人で宇宙を漂う恐怖を。あの狭いプチモビの中で、ずっと宙を浮かぶ恐怖。助けを呼びたくても、誰もいない孤独。自分の現状を理解して、私が両親にした事を思った末の苦悩が?」
「それは、映像にある様に、ニャアンだけでも助k「それで結局!パパもママも死んだら意味ないでしょ!」
キラキラの色がより激しい赤になる。するとヒゲマンの声が空間に響いた。
「マチュ君!聞こえてますか!?危険です!2人のサイコミュを切ります!」
「待って!もうちょっとなんだ!もう少しでニャアンを救える!」
「言った筈です!危険だと判断したら即座にk「5分!!5分ちょうだい!それまでに説得する!今切ったらもうヒゲマンって呼ばない!」
「……………」
ヒゲマンの声は聞こえなくなった。5分と言う時間を信じて、待ってくれたのだ。
(ニャアンを絶対助ける!説得する!) - 43二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 22:20:33
「ニャアンだって分かってる筈だ!ニャアンのお父さんもお母さんもニャアンの為に望んでやったんだ!後悔はないって!」
「知ってるよマチュ。だから辛いんだ……」
「………ねぇニャアン。過去を忘れないのは素晴らしい事だけど、過去だけに囚われるのは駄目だよ…未来のことだって考えなきゃ」
「未来?」
「そうよ。ニャアンさん。私も過去を認められなかった。その為に別の宇宙まで作った。過去は変えられない。でも、それに苦しむ必要なんてないのよ」
「シュウちゃん…ララァさん」
「そうだよニャアン!辛い過去なら、幸せな未来で上塗りすればいいんだ!!」
「幸せな…未来? 」
「そう!地球の海で泳いだり!ニャアンやシュウジといたり!私の幸せはまだまだ沢山ある!でもそれには!ニャアンも幸せじゃ無いと嫌なんだ!!」
「マチュ…」
「もし!!もしそれでも!!ニャアンが罪を背負うのに耐えれないなら!私も背負う!!」
「マチュ!?」
「喜びだって、悲しみだって、恐怖だって!分け合って見せる!!私は!ニャアンのMAVだから!!」
「………僕自身、ララァの為に何度も彼女を殺してきた。1番罪を背負っている。だから僕も、ニャアンが背負いきれないなら、一緒に背負う」
そう言うと2人は右手を差し出した。
「「だから、この手を取って!!ニャアン!!」」
「マチュ!!シュウちゃん!!」
そう言うと彼女は2人の右手を掴んだ。 - 44二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 22:37:46
途端、空間のキラキラの色が赤色から紫に戻った!
(このキラキラ!イオマグヌッソってニャアンと再び
分かり合えた時と同じ!)空間がキラキラで溢れかえる。
「はっ!!」
気がつくと私は病室に戻っていた。隣には装置を嵌めたシュウジもいた。
「シュウジ!」
「…ん?マチュ?病室に戻った?て事は?」
2人ともベットの方を見る。そこにはニャアンが目を開けてこちらを見ていた。
「ニャアン!」
私もシュウジもニャアンを抱きしめた。精一杯抱きしめた。
「ニャアン!もう大丈夫なんだね!?」
「ごめんねマチュ。シュウちゃん。心配かけちゃって。もう大丈夫だから」
「そうか…よかった」
私達は暫くの間ぎゅっと抱きしめた。まるで本当の家族の様に…
「マチュ君。その様子を見る限り、成功した様ですね」
声に振り返るとヒゲマン達がいた。 - 45二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 22:41:38
「シャリア・ブル中佐さん。それに皆さんにもご迷惑をおかけしました。すいませんでした」
「やめてくださいニャアン君。頭を下げるべきはこちらです」
そう言うと彼はニャアンに対して深々と頭を下げた。
「ねぇヒゲマン!これでニャアンは大丈夫だよね。PTSDってのは治ったんだよね!?」
「それはニャアン君次第です。ニャアン君。過去と向き合えましたか?」
「ええっ。もう大丈夫です。マチュやシュウちゃん。それにララァさんのお陰です」
「ふふっ。私は大した事はしてないわ」
「…そう言えば、このララァってこっち側のララァなの?向こう側のララァなの?」
ふとマチュが気になる疑問を口にした。
「私は向こう側のララァよ。今は身体を借りてるだけで、終わったらこちら側の彼女に返すのよ」
そういうララァの姿は、本当にキラキラの中で見た向こう側のララァさんそっくりだった。
「………マチュ君。シュウジ君。2人は一度退席願います」
ヒゲマンは少し時間を置いたのち、そう告げた。 - 46二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 22:50:34
「さて、ニャアン君。まずは改めて、今回の治療の成功、おめでとうございます」
「いえ中佐さん。分かってます。マチュ達が私の為を思ってしてくれた事だって」
「…ニャアン君。今回の一件はジオンの負の遺産です。その事で許せない怒りがあるなら、私を今この場で殴りなさい。少しでも怒りが収まるなら、私は罪と罰として甘んじて受け入れます」
眼鏡を外し。目を閉じる。
「だからやめてください。マチュ達が言ったんです。過去は変えられないって。だから貴方を殴る理由なんてありませんよ」
ニャアンに彼を殴る気はない。
「………ニャアン君。私はこの一件、アルテイシア様に進言して、少しでも過去の罪の精算に動く様ジオンに働きかけます。貴方の様な難民は多く溢れています。これが罪滅ぼしになるかは分かりませんが、我々ジオンがやらねばならない事なのは確かです」
「中佐さん」
「…さて、大人達は退散して、貴方と話し合いたい人達と交代しましょう。ほら大佐、それにララァさん。私達は行きますよ」
そう言うとシャリア達は部屋を出た。そして入れ違いになる様にマチュ達が入ってきた。 - 47二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:11:44
「ニャアン!もう本当に大丈夫なんだよね!?これでもう、夜に魘される事もないんだよね!」
「大丈夫だってマチュ。心配かけてごめんって………2人とも、本当にありがとう。2人がいなかったら私、きっと押しつぶされてた」
「言ったでしょ!私はニャアンのMAVだって!辛い事だって受け止めて見せる!」
「ふふっ。マチュのそう言うとこ、本当に好きかな」
「…とりあえずニャアン。本来の予定通り数日は経過観察として入院するんだよね?」
「そうだねシュウちゃん。一応大丈夫だと思うけど念の為。マチュと2人で留守番お願いね」
「そうだニャアン!はいこれ!」
そういいマチュが渡してきた物は手帳と紙であった。
「ここにやりたい事とかさ、食べたい物とか書いてみてよ!退院祝いで用意しとくからさ!3人で出来る事がいいな!未来の為のやりたい事リストだよ!」
(私が3人でやりたい事ね………なら)
手帳を手に取りペンで文字を書く。そこには私が3人で1番やりたかった事が書いてある。
【餃子パーティ】
「「餃子パーティ?」」
「そうだよ。私の友達……MAVと作る餃子パーティ。その準備をお願いできる?」
「OK分かった!明日にでも必要な物揃えるよ!」 - 48二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:23:19
廊下に出ると、ヒゲマン達が待っていた。その中にはララァがいた。
「ララァ。改めてありがとう。今回の件、ララァがいなかったらニャアンはずっと誤解したままだった」
「気にしなくていいのよ。私はそろそろ向こう側に戻るけど、シュウジはどうするの?」
「僕はこの世界で生きていたい。マチュとニャアンの3人で。僕自身がそう言っている」
「ふふっ。分かりきった答えだったわね。じゃあ私は向こう側に戻るわ。たとえ別世界でも、大佐と会えて私は幸せよ」
「…ララァ。君も元気でな」
「ふふっ。分かりましたよ、大佐」
そう言うとララァさんの雰囲気が少し変わった。おそらく向こう側のララァさんは帰って、こちら側のララァさんが戻ったのだろう。
「私も向こう側の私を通じて見てましたよ。ニャアンさんの回復、おめでとう」
「…さて、今日はもう遅いです。こども達が夜道を出歩くのは危険です。幸いニャアン君の病室にはベットが後2台あります。2人は今日はそこで休んで、明日の朝帰りなさい」
「え?ここに泊まれるの!?ニャアンと一緒だ!おーいニャアン!私達も今日はここで泊まるよー!」
そう言いながらマチュはニャアンの病室へと入っていった。
「やれやれ。マチュ君は相変わらずですね。シュウジ君。間違いを起こしてはいけませんよ」
「大丈夫ですよ。そんな事起こしません」
そう言いながらシュウジも、ニャアンの病室へと入っていった。 - 49二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:32:29
そして数日後
「ただいまマチュ。それにシュウちゃん。元気にしてた?」
「「おかえりニャアン。早かったね」」
あれ以来、ニャアンが悪魔に魘される事は無くなった。彼女の中にあった十字架は、今も残っているかもしれないが、それを彼女1人で1人で抱え込む事も無くなった。
以前出会った戦争によって開いた心の穴も、かなり薄まっている。
「ねぇねぇシュウちゃん。マチュ。ちょっと来て?」
「「??」」
何事かと彼女に近づいた。すると。
「ぎゅーーーっっっ」
「へへっ。こうして抱きしめあってると、とっても温かくて、私達、本当に家族みたいだね」
「ニャアン!もう本当に平気なんだね!」
「うん。私はもう平気マチュやシュウちゃん達の協力のおかげだよ」
ニャアンのPTSDは完全に回復した。2人はそれを確信した。
- 50二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:46:48
「さて、時間もお昼だから、餃子パーティーには最適な時間だね!」
「そうだね!沢山作れる量を用意したよ!」
【ピピピピ】
「あっ、コンチが」
見るとコンチの手には綺麗な餃子が握られていた。コンチが作った物なのだろう。
「へーコンチってば1番上手じゃない?」
「そ!そんな事ない!私だって上手く作れる!」
「僕だって、作り方は知ってるよ?」
「じゃあこうしよう!餃子パーティの優勝は、1番上手く餃子を作れた人の勝ちって事で!」
「いいわマチュ!見てなさい!」
「面白そうだと、ガンダムが言っている」
【ピピピピ】
「マチュガイチバンヘタクソ!」
「ハーロー?なんかいった?」
「マチュ!コワイ!マチュ!コワイ!」
「「ははははは」」
その日、マチュの家から笑い声が途絶える事は無く、餃子パーティは一日中続いたていった。
fin
- 51二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:48:04
今回のお話は以上です。
ニャアンの過去を想像し、あえて重めの話を作って見ました。
初期案ではサイド2脱出はニャアンが1人でプチモビに乗り込んで発進させた設定にするつもりでしたが、舞台をアイランド・イフィッシュを選んだ為、毒ガスによるエアー不足に変更しました。
少し長めでダレた箇所もあるかもしれませんが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 - 52二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:57:14
お疲れさまでした!ニャアンのPTSDを痛ましく思いながらも、マチュとシュウジが彼女を助けようとする姿勢が愛だなあと感じながら読んでいました!
- 53二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 00:00:37
- 54二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 00:07:42
乙です。ニャアンを助けた連邦軍の人は名前は出てないけど、あの人らしさを感じてよかったです。
場所もアイランド・イフィッシュですし。 - 55二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 06:11:50
お疲れ様でした
力作超助かる - 56二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 08:23:52
- 57二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 12:15:22
- 58二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 14:15:12
地獄
- 59二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 19:34:14
生きることに必死でメンタルの状態とか気にかけてられなかった人が落ち着いた生活すると傷が開くというか傷の存在に気付いちゃうってのは割りとあるらしいね
それこそ帰還兵とか