- 1二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:13:22
- 2二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:14:22
前々スレ:
[性癖大回転閲覧]まるまるマルクトお姉さま|あにまん掲示板「か弱き子よ。おやつはまだですか?」そう言って、声の主たる女性は俺を見上げていた。白い髪、白い肌、そして黄色い瞳。彼女の名は『マルクト』。曰く、デカい枕なんちゃらのヨ言者……だそうな。「まぁ……うん、…bbs.animanch.com前スレ:
[性癖大回転閲覧注意]まるまるマルクトお姉さまと愉快な仲間達|あにまん掲示板「アオバァ!!これ多分接触不良起こしてるぞアオバァ!!基板どこだアオバァ!!」「今外し……ました!こちらです!『プロフェッサー』さんに症状のほう写真で送りますでしょうか!?」「流石だアオバァ!!早いぞ…bbs.animanch.comそれじゃ、行ってみよう
- 3二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:15:34
「のうカグヤ。一度、京劇から離れてはみんか?」
「……はい?」
その言葉は、京劇一筋でやってきた彼女___漆原カグヤにとって、あまりにも衝撃的だった。
その様子に提案元である竜華キサキは自身が今しがた失言を発したことを察する。
「ああいや、待て。今のは言い方に語弊があったの。……一度、当事者から傍観者に回って俯瞰してみてはどうか、と言いたくての」
「俯瞰……ああ、それで一度離れてみては、ということですか。文字通り、物理的に」
「そういうことじゃ。理解が早くてたすかる」
カグヤは馬鹿な人間ではなかった。キサキの訂正にその意図を読み取り、提案にふむむと顎に手を添え考える。
「……確かに。私は常日頃から舞台の上、劇の中にいました。それが外からどう見えるか……それらの理解度が非対称的であると指摘されれば全くもってその通りですね。稽古とて、誰かに動きを確認してもらいながらならば自分では気づきにくい問題点が洗い出せたりします。それを京劇そのものに対して行う……なるほど。門主様の深く深いお考えにこの漆原カグヤ、感服致しました……!」 - 4二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:16:34
「よいよい。京劇部のほうには妾のほうからこの話の旨を伝えておくでの。……してカグヤよ。一度京劇から離れて傍観者に徹する以上、これまでの『京劇役者漆原カグヤ』ではなく『ただの観客のカグヤ』という別人に徹したほうがより異なる視点から知見を得られるとは思わんかの?」
「えぇ、それはそうですが……変装などを施そう、というお話でしょうか?」
「まぁそういうことじゃ。そこでお主の手助けになりそうな品があってじゃな……ほれ、サヤ印の若返りの秘薬じゃ。すでに臨床済みの安全安心な薬じゃぞ?」
そう言って懐から取り出したのは、ネズミを象ったマークとMark.Ⅲ改Second’とかなんか仰々しい文字列の貼られた小瓶。サヤ、という名にカグヤは思わず顔を顰めるが、しかし敬愛する門主様の善意を無下にする訳にもいかず、小瓶を手に取り、受け取る。
「……ありがとう、ございます」
「……どうしても不安なら無理に使わんでも良いぞ?それと……薬のほうは14時間で効果が切れる。30回分用意しておいたから、適宜使ってくりゃれ」
ゴトッ、とトランクケースがカグヤの前に置かれる。成程、どうやら門主様は今回の件に関して随分と手厚い用意をしたようだ。その事実にカグヤは嬉しくも『でもあの薬師サヤの薬なんですよねぇ……』と実に複雑な胸中であった。とはいえ。ここまでお膳立てしてもらったのだ。
「わかりました。それではこの漆原カグヤ、しばしの暇を頂きます。与えられたこの時間、必ず有意義なものにしてみせましょう」
「うむ、励むがよいぞ。……しかし、そう気張る必要はない。肩の力は抜いて行こうぞ」
門主様からのお言葉を胸に、トランクケースを手に。カグヤは玄龍門をくぐり___なんと山海経を出立し、D.U.にまで足を延ばしてしまったであった。 - 5二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:17:37
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さて、門主様の言葉を受け(微妙にニュアンスを間違えてるが)人生初となる学外に踏み出したカグヤであったが、彼女には明確なビジョンがあった。
「(シャーレに向かう。どうやらシャーレの『先生』は困っている学生を放っておくことの出来ない人間だそうですし……今の姿の私であれば、それこそ30日間に渡って滞在することも交渉次第で可能でしょう)」
そう、シャーレをホテル代わりにするという案だ。今現在、若返りの妙薬を服用し9歳程度の肉体にまで若返った彼女であれば、シャーレは彼女を拒むことは無いだろう……というのが彼女の考えであった。
の、だが。
“LaLaLa~仕事~仕事~は巡る~よぉ~~~(ビブラート)私~の休み~~を乗せて~~~(ビブラート)”
「_____」
部室のドア越しに見たその姿は、明らかに頼りにしていい大人のソレではなかった。カグヤはその姿とシャーレという組織の労働環境に絶句した。
だがしかし、先生を頼れないとなるとどうすればいいだろうか。途方に暮れかけていたカグヤであったが、ふと先生に親戚がいたことを思い出す。お人よしで知られる先生の親戚だ、悪いようにはされないだろう。そう思い、シャーレを訪れていた生徒から住所を聞き出し。
「ふーん、はるばる山海経から……ヒメちゃん、まだ幼そうだってのに殊勝な子だなぁ。よしわかった!その課外学習が終わるまでの間うちに泊まっていけ!」
「!ありがとうございます!」
ヒメを名乗り部屋を訪れたカグヤ。彼女は軽く家主と言葉を交わすと見事に宿を得るのだった。 - 6二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:18:44
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「なんとか一部屋捻出できた。寝る時はそっちのほうを使ってくれ」
「ありがとうございます。すみません、わざわざ部屋まで頂いて……」
「いいってもんよ。ほら、小さい子と一緒に寝たんじゃ変な噂が立ちそうだし……っと、ほい出来た。長旅で疲れてるだろうしたんと召し上がれ、ってね」
「……!」
食卓いっぱいに並んだ料理は、彼女の知っているようで知らないものばかりであった。唐揚げ、冷奴、マッシュポテト……普段の彼女なら、伝統を重んじる保守的な彼女なら、これら妙に得体のしれない料理に警戒心を顕わにしていただろう。しかし、彼女は思う。果たして、9歳頃の自分が知らない料理にビビるようなタマであったろうか。否、あの頃の自分は目に映る全てが新鮮で、毎日が新しいの連続だったはずだ。ならば普段出されないような料理など却って好奇の対象、喜んで食べていたはず。
カグヤは演技派であった。自身の心すら『9歳の少女 漆原ヒメ』という今日作ったばかりの即席の仮面に隠してしまえるほどに。
そして、料理を口に運ぶ。
「……!お、美味しいです……!!」
果たして、それは彼女の舌をもっても美味であった。見知らぬ土地、見知らぬ天井、見知らぬ料理。しかし、見知らぬ味の奥に秘める確かな美味に、漆原ヒメという仮面もその奥のカグヤという素顔も、一様に笑みを浮かべていた。 - 7二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:20:03
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一週間後。夜遅く。
カグヤは危機に瀕していた。
「……まずい、ですよね。これは……」
そう言って鏡の向こうの自身の腹を突く高校生の姿のカグヤ。自身の指先からはぷにぷにとした感触が帰ってきている。
肥満である。
「若返り状態……ヒメの姿では脂肪が反映されないから気付きませんでしたが……」
そう言ってプニリとハンドルよろしく突き出た腹を摘まむカグヤ。この異変に気付いたのは、薬の効果が切れて元の姿に戻る際だった。何か腹周りを中心に変な、くすぐったいような感覚を覚えたものだからまさかと思いよく見てみたらビンゴだった、という具合である。
「……原因は明らかですね。ここの家、料理がいちいち多いんですよ……!」
思えば初日の時点で何かボリュームがおかしかった記憶があるな、と思考に耽る。幼女状態だといったいその腹のどこにそんなに収まるんだとばかりに食えるのだが、否、食えてしまえるからこそ、ここに至るまで摂取カロリーと消費カロリーがまるでつりあっていないことに気付かなかったのだろう。
加えて、この一週間、山海経の外の見学ということで様々な場所に連れ出してもらい、その際にことあるごとに屋台だの出店だので昼食やおやつを取っていたのも肥満を加速させていたのだろう。
これでも玄武商会の出す量よりは少ないが……というよりも、玄武商会よりも少なめであったがために、むしろその量の多さに気付くのにここまで遅れたとも見れよう。
「抑えなくては……京劇部の部長たる者、常に己を律し続けなくては先人たちに顔向けできないでしょうに……!」
ランプがぼんやりと明るく照らす部屋。鏡の前に一人、カグヤは決意の炎をその目に滾らすのだった。 - 8二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:21:05
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「わーい!今夜は豆腐料理ですか!これは……麻婆豆腐でしょうか?」
「ああ、そうだ。ヒメちゃん的にはなじみのあるものだと思ってな……まぁ、本場のモノとはどうしても違ってくるだろうけども……そこらへんは勘弁してくれってことでね?」
「……本格派を目指すなら、ある程度は指導ができると思います。どうでしょう?」
「!本当か!なら頼むヒメちゃん、いや、ヒメ師匠!俺に本場山海経流の料理ってヤツをご教授ください!」
「いいでしょういいでしょう、ですがとりあえず今夜はこれらを頂きましょうね」
数十度目かの食卓。その中央にはドカンと麻婆豆腐が鎮座していた。……大皿で。
「それでは、いただきます!」
食と料理人への感謝を口にし、元気に料理を口元へと運ぶヒメ。
それを、好ましくない目で見る者がいた。 - 9二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:22:10
「(え?それ食べるんですか?がっつり肉入ってますよ私?太りますよ私??つい先日ダイエットを決意したばかりですよね!?)」
誰であろう。ヒメという仮面の下から傍観するカグヤその人である。京劇部の部長として、歴史ある組織の長として、これ以上の体重増加は到底看過できるものではない。故にカグヤとしては何としてもこの蛮行を止めなくてはならない立場にある。のだが。
「(何言ってるんですか!ダイエットなんて子供が考えることじゃありません!今の私に、このヒメに目の前に出された料理を我慢する理由なんて何一つとしてありません!)」
もう一度言おう。カグヤは演技派であった。自身に役となる仮面をかぶせることでその劇の役に没入する……カグヤの京劇部部長としての卓越したスキルの一つであったが、それが今この時は彼女自身に牙を剥いていた。役にハマりすぎて制御が効かなくなっていたのだ。もはや今の彼女は『漆原ヒメ』としての思考と行動を強制され、不自然な行動はとれぬよう制限されている。あたかも、仮面が貼り付いて取れなくなったかのように。
「?どうした?」
「あぁいえ、ちょっと考え事を。……山海経の文化のあれこれについて、少々……料理が冷めてしまうといけませんね、暖かいうちに頂かないと!あむ、ほふほふ……~~~!美味しいです!とても!!」
「(あぁあ~~~~!!た、食べてしまいました……わ、私の馬鹿!阿呆!!事の優先順位も付けられない愚か者!!あぁもうこの後はしっかり運動して痩せなければ……!!)」
「(ダイエット?嫌ですよ、別に私は太っていませんし)」
「(えぇい黙りなさい私!!役に入れ込むのも大概に……!……はぁ、これは元の肉体年齢に戻ってる間しか痩せる機会はない感じですね……)」
「とっても美味しいですね!白米が進みます!あ、おかわりお願いします!」
「はいよ。よく食べるな~ヒメちゃんは」
「えへへ、育ち盛りですから!」
「(嗚呼、消費しなくてはならないカロリーが増えていく……!)」
勝手に動き出した仮面の蛮行に、素顔はただただ眩目するのだった。 - 10二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:23:30
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三週間後。夜遅く。
「ふぅー、ふぅー……」
一人、部屋のベッドの上で息を整える漆原ヒメ。いや、今は役から外れ漆原カグヤとしての素顔を晒した状態だろうか。もうじき薬の服用から14時間。彼女は肉体が元に戻るその瞬間に備えていた。
そして。
「ふぅーーー……ぅおっ……!!」
ぶくん。お腹に脂肪が発生したような感覚に襲われると、次いでその脂肪が膨張・伝播していく。
「ぅお”っ、お”ひっ、あ“ふっ……♡」
ぶくん、ぶくん、ぶくん。何度か段階的に肉が増えていくと、そのたびに彼女の口から唸り声のようなものが絞り出される。そして、贅肉が全身に伝播したあたりで。
「ふぅ、ぐぅ……ぅ、~~~~~~~~~~~っ!!♡」
ぶくぅーーー、っと最後の仕上げと言わんばかりにゆっくりじっくりと全身の脂肪が膨張し、薬によりごまかされていた体型の全てが顕わになる。
「フーーーッ、フーーーッ……!♡」
以前までのカグヤの太腿と同程度には太くなった腕、それを遥かに超えて丸太の如く立派になった脚。手もふっくらとし始めてきており、このまま肥満が進めば物を掴むことさえ難しくなるだろうことが想像できた。
鋭かった目元も顔についた脂肪につられて丸い印象を受けるようになってしまった。
他がコレなのだ、胴が無事なはずがない。大きく前に突き出した腹に、肉厚な肉が付いた背。横腹も立派に育ち、今や遠目から見ても100人に聞いて100人が認める肥満体だ。
が、ただ元の姿に戻ったのみで終わりではなさそうなのは、彼女の様子をみれば明白だった。
製造元である薬師サヤでさえも見落とした若返りの妙薬の欠点。それは、薬の効果が切れて元の肉体に戻る過程で、多量に脂肪が戻った際に性的刺激が脂肪細胞に与えられるというものであった。 - 11二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:24:36
「ぅ、っぐ、ふぐぅ……~~~~~!!♡」
全身の肉という肉の溜めた疼きの欲するがままに揉みしだき、股に集まった熱を指で弄り解放させる。もう十数日前から我慢が利かなくなり続けている、薬の効果が切れたこの時間のルーチンだ。
「はぁ、はぁ……っ~~~!……っはぁ、はぁ……」
余韻に身体を震わせつつ、そんな自身を鏡越しに眺める。
酷く肥え膨らんだ身体、汗が滲み乱れた服装、びっしょりと濡れた股。そこに、以前までの京劇部の部長としての面影は影も形もなかった。
「……どう、しましょうかね。外から客観的に見た京劇、ひいては山海経の現状、という点においては、ふぅ、充分に知見を得られたと言えるでしょうが……ぃっ、はぁ、はぁ……」
この三週間、カグヤは何も食っては遊んでを繰り返していた訳ではない。いつも内側から当事者として関わってきた山海経高級中学校という世界を外側から俯瞰し、今の山海経が置かれた状況、周囲の人間から見た山海経の認識、京劇の知名度とこの先に残すべきモノ、残せるモノ等々、彼女なりに考え、理解しようとしていた。そういった点では、今回のキサキの図り事は功を奏したと言えよう。
だがしかし、その代償がコレではあまりにも重すぎるというものであった。
「……薬の残っているうちになんとかする手立てを講じなくては。あと何本あったか……」
そう言ってトランクケースを開く。中に収まっていた薬は残り七本、あと一週間分といった状況であった。
そして、それを見てカグヤは。
「(もう残り一週間しか『私』になれないのですか……!?)」
先程まであれほど気にしていたダイエットという思考が瞬く間に抜け落ち、自分の被っている仮面の余命の短さに絶望している自分に気付き、驚愕する。
「……私は。京劇部部長漆原カグヤでしょうに……!」
よもやこれほどまでに自分を見失いかけているとは。戒めるように独り言ち、ひとまず濡れた衣類を処理すべく起き上がるのだった。 - 12二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:25:46
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「……見事です。私のほうから教えられることはもう何もありません……!」
「師匠……!」
出来たての小籠包を前に、男女二人、熱く熱く抱き合っていた。
「私は……侮っていました。よもや山海経の外にこれほどの情熱を持った人間がいただなんて……!」
「師匠の教えの賜物です……根気強く指導してくれたからこそ、ここまでこれたというものです!」
苦節二週間ちょい。彼はヒメの__カグヤの持つ料理の知識、そのほとんどをモノにしていた。
「成長しましたね……始めはアレンジが利きすぎてなんかよく分からない料理と化していましたが、本来の伝統ある調理法を伝授できて私も一安心というものです。ささ、早速頂きましょう」
「はい!」
完成した中華___否、山海経料理を口に運ぶ。D.U.の片隅の借り物件で作られたはずのそれは、しかし確かに地元の味がして、カグヤらはその味を噛みしめる。
と、同時に。完成した料理、教え終えた技術を前に、一つの思考が頭を過ぎる。
「((……もうすぐ、この関係も終わるんだ))」
それは、仮面の思考であり、素顔の思考でもあった。 - 13二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:26:49
薬が切れればここでの生活も終わる。当然である、彼が認可したのは『漆原ヒメ』の滞在であって『漆原カグヤ』の滞在ではないのだから。なれば、己が正体がバレる前、薬が切れる前に『漆原ヒメ』として彼のもとから去らねばならない。そもここに長居すること自体、カグヤにとっては『漆原ヒメ』の暴走リスクを孕んだ___現に暴走したせいで体型が大変な事になっている___行為なのだ。カグヤの立場を考えれば一刻も早く立ち去るのが賢明な判断なのだろう。
……なのだろうが。『漆原ヒメ』としてはもちろんのこと、『漆原カグヤ』も別にここでの滞在が苦であったかと言われれば答えは否であった。出る料理は美味、同居人との関係は良好、部屋の居心地も良いし、この街もなんだかんだで嫌いではない。初めて飛び出た外の世界で初めてできた安心できる場所なのだ。カグヤもまた、この場所に愛着を持ち始めていた。……おそらく、本人の思っている以上に。
故に、思考が重なった。重なってしまった。
「((嫌、だ))」
思考が、仮面が重なる。仮面が素顔に重なり、へばりつく。
「(もっとここにいたい)」
それはどちらの思考だったか。否、おそらくどちらでもありどちらでもないのだろう。
仮面が素顔に貼り付き、溶け込み、混ざり合い。互いが互いに響きあう。
「(終わりにしたくない)」
ブレーキは、溶けて消えてしまった。 - 14二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:27:49
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『はいもしもし、ぼく様なのだ。薬師サヤで……ん、カグヤ!?』
『カグヤ、今どこにいるのだ!?山海経からいなくなるものだから門主様が心配してるのだ!』
『……D.U.!?な、なんで……あぁあ~~~、門主様の言葉をそう捉えたか~……』
『?あの薬?……いやぁ、それは無理な相談なのだ。なにせ原料につかう薬草の中に極めて希少なものが含まれててな、今それの在庫がないから増産は無理なのだ!生育状況とかを考えるなら次に入手できるのは早くて4ヶ月後くらいかな?』
『……カグヤ?カグヤ??どうしt』 - 15二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:28:51
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D.U.の街並みを眺める。
古い建物も数多く見かけるが、それらはどんどん新しいものに取って代わられていく。この街の様子は山海経と比べると目まぐるしいほどに変化していっていく。
「……4ヶ月」
呆然と呟いたそれは、彼女が薬を使い切った果てに再度『漆原ヒメ』となれるまでのインターバルであった。
___この街は、目まぐるしく変化していく。
4ヶ月後、果たして彼はこの部屋にいるのだろうか。この部屋は残っているのだろうか。
自分は、果たしてこの部屋に戻って来られるのだろうか。
山海経にいた頃は到底考えることも無かったその疑念と不安、そして恐怖に、足元がおぼつかなくなる感覚を覚えた。 - 16二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:29:53
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「はぁ~~~~、今日はいろんな所行ったな。楽しかったか?」
「はい、とっても」
30日目。トランクケースの中の薬瓶が全て空になったその日。山海経に帰る最後の段階として彼女の使っていた部屋を片付けるべく、彼を部屋に連れ込んでいた。……のだが、いざ片付けを始めようとしたところ妙に名残惜しくなってしまい、雑談を始めてしまったという状況にある。
「水族館に遊園地、お昼はハンバーガー……きっと、ずっと山海経にいたら知れなかったことばかりだったと思います。付き添って頂き、本当に、本当にありがとうございました……!あなたのほうもお疲れでしょう?」
「うん、ご明察。もうヘロヘロで寝ちまいたいぐらいだ……いや、この後キミを駅まで送らなきゃいけないしもうちょっと頑張らないとなんだけどもね」
ぼふっ、と疲労の溜まった身体を布団に投げ出す彼を、カグヤはただじっと見つめる。
「……ん?どうしたヒメちゃん」
「……私は。もし私が山海経に帰りたくないと言ったら、どうしますか?」
その言葉に、彼は悩むようにうんうんと暫し唸って。
「ん~~~~~~……でも、やっぱり帰るべきだと思う。始めから予定は建ててたんでしょ?ならそれを最後まで守らないと……それに、この先もヒメちゃんはきっといろんなところを巡って、いろんな人と出会って、いろんなモノと別れるんだ。だから……こういう出会いと別れがあるんだ、って学ぶためにもしっかり俺とお別れして帰らなきゃ」
「………………」
別れ。この屋根の下での暮らしから離れ、山海経へと帰還する。そうだ、彼の言う事は至極正しい。この先も今回の遠征と同様の事を繰り返して知見を広げていくのならば、その過程でいろんな人と出会い、またもう二度と会えぬやもしれぬ別れを繰り返す。そのひとつひとつに気持ちを引っ張られては、ただの一歩とて進めなくなるだろう。
そうだ。だから。 - 17二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:30:55
……。
……………。
……それでも、この30日間でこの部屋は彼女の生活の一部となってしまった。離れるべきであると分かっていても、それを選択できなかった。だってそうだろう。キサキやルミが新しきを取り入れ先へと進み続ける人であるならば、カグヤは離れることなくその場に留まり築いてきたモノを守る人なのだから。
「…………私、は……ここを離れたく……ありません……!」
「ヒメちゃん……」
「わかっています……ええ、わかっていますとも……!いつか、いつかは帰るべきだって……!ですが、でも……どうしようもないじゃないですか!この部屋も、私の帰る家になってしまったんですから……!!」
彼女は築いてしまったのだ。この地に、この部屋に、自身の居場所を。
その様子に子供の癇癪で済ませてはならないであろう雰囲気を感じた彼は、鈍い頭を絞ってヒメを説得しようと言葉を探す。……尤も、彼女にとって既に結論は出ているのだろうが。
「ヒメちゃん……でも、それでも___」
「わかってると言ったでしょう!!わかってるんですよ!!嗚呼、それでも……!!こんなことなら、こんなことを知るくらいだったら……!!」
山海経の外に出歩くんじゃなかった、とは言えなかった。それもそうだ、その発言は彼との出会いすらも否定するものなのだから。漏れ出た言葉を噛み潰して抑え、代わりにくぐもった嗚咽と歯の軋む音がこぼれた。
「私は……!……無様なものですよね……胸を張って笑顔でお別れしようとして、今日だって悔いややり残しの残らないよう奔走したのに……こんな、こんな姿を___っ!!」
「ヒメちゃん……」
無様なものか。こうやって心の内を吐露してくれることが、この家に愛着を持ってくれたことがどれほど嬉しいことか。だが、それを口にしたところで今の荒れ狂った彼女の心に伝わるとは思えず、ただ彼女が言葉を吐き出しきるまで傍に寄り添おうとして。
「___っぁ、ひぅ……っ!!」
「……?」
彼女の様子が変わったことに彼は気付いた。 - 18二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:31:57
「ぅぐ、うそ、このタイミ……んぐぅ!?あっひっはっ、やだっやめっ見ないでくださっあっあっぃいぃっ!!?」
「え、ヒメちゃっ___!?」
目の前でビクンビクンと身体を仰け反らせ、嬌声混じりの悲鳴を上げる漆原ヒメ。何か異様なことが起きているのは明白である。
先ほど、彼女は自分の姿を「無様」と言って恥じた。だがしかし、彼女にとって真に無様で見られたくない姿といえば____こちらを差し置いて、他になかろう。
「いや……いぃい、あぁっ、ふぐぅっ、こぉっ!?♡」
「ヒメちゃん!?」
瞬間、ぶくん!ぶくん!!ぶくん!!!と複数回に分けて彼女の身体が爆発したように膨れ上がり、衣服を引き裂き、肥え上がった。それだけで既にぽっちゃりの領域を超えて立派なデブ体型だというのに、まだ変化は収まらない。
「お”っ♡っぐ、いぎぃっ♡っはぁ、はぁ、は“っ♡やめっ止まって”ぇ”っ!!♡こん、なっ!?♡」
身体がはねるたび、体積が加速度的に増えていく。それは横幅だけでなく、布団の上に立ち膝で立ってなお彼の座高に届かなかったはずのヒメの視点は、もうすっかり彼を見下ろす位置にあった。
「ヒメちゃん……!?いったい何がおき、むぷっ」
「あぁあ、~~~~~~~~~~~~っ!!♡♡♡」
仕上げと言わんばかりの膨張。逃げ遅れた彼の顔面もそれに巻き込まれ、露出した肌色の巨腹に包まれてしまう。
時間にして十数秒。瞬く間に部屋から一人の少女が姿を消し、入れ替わりに布切れをそこかしこに貼り付かせた肉風船が鎮座していた。 - 19二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:32:59
「っぷは、はぁ……いったい何が……!?」
未だ状況を掴めず混乱する彼であったが、すぐ傍に放られていた携帯電話が鳴り出すとその画面に奇妙な納得を覚える。
「これ、ヒメちゃんのスマホ……サヤ?成程、サヤさん案件か……!」
サヤ。薬子サヤ。その名は彼も知るところであった。なんせ叔父が虹色に光る人間照明にされたのを目の前で目の当たりにしたことがあるのだ。これで忘れるほうが難しいだろう。
「もしもしサヤさん!?ちょうどよかった、今目の前でヒメちゃんがぶっくぶくに太ったんだけどもどうなってんの!?」
『ん?この声、お子ちゃまくんか!?なんでカグヤの携帯でキミが出るのだ!?というかヒメちゃんっていったい……!?』
「いや、ヒメちゃんはヒメちゃんでしょ!?この携帯の持ち主だって……てかカグヤって誰よ!?」
『~~~っ、多分状況は把握できたのだ!そのヒメちゃんって子は黒髪黒豹耳と尻尾のある子でいいのだな!?』
「あぁそれで合ってる!」
『わかったのだ!ぼく様も今ちょうどその子にその状況について連絡がしたかったのだ!……けれど、一歩遅かったみたいだな』
サヤは優秀な人物であった。彼の言葉の背景に『幼女化したカグヤ=ヒメという人物』という図式を即座に見出し、それともたらされた情報から今現在のカグヤの状況を読み取り推察し、そして頭を抱えた。
「なぁサヤさん、いったいヒメちゃんに何が起きたんだ……!?」
『……そう、だな。まず前提として、その子……ヒメという子は、ぼく様謹製の薬で若返った姿なのだ。だから本来の姿はシュンとかと同じくらい立派な身体つきなのだ』
「!!?え、ヒメちゃんが……!?いや、でもこれは……!」
『言いたいことはわかるのだ……これはぼく様もかg、その少女に薬を渡した後で気付いたことなんだが、薬を服用して身体が縮んだ状態だと本来の体脂肪量が反映されない仕組みになっていたのだ……!つまり小さい姿の状態で体型が変化しないからとばくばく食い過ぎるとあっという間に体型が大変なことに……!』
「な、なるほど……確かにヒメちゃんはよく食べる子だったし……うむむ、じゃあこの状況は俺のせいか……!」
サヤの説明に合点がいくと同時、目の前の肉風船の原因を考えると冷や汗が滲みだし、彼も頭を抱えたくなる衝動に駆られる。 - 20二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:34:02
と。急にヒメが膨張した理由ははっきりした。だが彼の目の前には未だ不可解な謎が残っていた。
「……で、それだけか?こう、元に戻る時に熱っぽくなるとかないのか?」
『?』
今しがた彼の視線の先、大きく実り膨れた二房の巨峰の奥からは未だに荒い呼吸が続いている。体温も随分と高く、揮発した汗が鼻腔をくすぐってくる。もぞもぞと悶えるように身じろぎを繰り返す様も相まり、ただのデブ特有の症状……と切って捨てられない程には苦しそうであった。
『熱?熱……』
「なんかもじもじというか、もぞもぞしててな……」
『……あっ!!!』
そしてその症状はサヤも心当たりのある、というか本来ならば先ほど一緒に伝えるべきものであった。
『す、すまない!ぼく様としたことが頭から抜けてたのだ!!』
「何が!?」
『あの薬を服用した状態から元に戻るとき、元が太っていたら脂肪も一気に戻る!そのとき、脂肪に強い性的刺激が加わって大変なことになるのだ!むっちりでアレだったから……立派な肥満体ともなれば理性のタガが外れてもおかしくない!今すぐそこから離れるのだ!!』
「えっ、何をぉおっ!?」
電話越しに声を荒げるサヤ。だが、一歩遅かった。その体格からは想像できない瞬発力で彼の手首をつかみ、そのまま布団の上に押し倒すカグヤ。スマホは手から弾き飛ばされ宙を舞い、手も言葉も届かない部屋の片隅へと滑り込んでしまった。
「ひ、ヒメ、ちゃ……?」
「あはっ、はっ……はぁっ……♡見られちゃいましたら……見られちゃいました、からぁ……!♡」
位置関係が変わったことで互いに顔が覗けるようになったが、そうして見えたカグヤの表情は熱に浮かされているというか自棄になっているというか、狂気的な熱を帯びているようで、とても正気には見えなかった。 - 21二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:35:03
「もうぅ……責任、取ってもらうしかぁ……ないじゃないですかぁ……!♡」
「___!?」
貞操の危機。
彼女の指す『責任』が如何なる意味なのか、明言こそ避けられどもシチュエーションから推察されるその意味合いに貞操の危機を覚えた彼は慌てて藻掻く。
が、両手首を体重を掛けられるようにして押さえられ、足腰は厚い脂肪に乗っかられてその肉厚な弾力に抵抗がぶにゅんぶにゅんと吸収される。むしろそれらが刺激となり、カグヤの身体にいっそう熱が籠る。
「っはぁ、はぁ……!我慢なりませんか……!?私もです……!!同じ心、なればこそその身体も……!!♡♡」
「やっ、はっ……!?」
逃げられない。犯される。覚悟。責任。あまりにもあんまりな童貞最期の時に頭の中に無数の思考が錯綜し。
「やっほ、来たよ~……ぉ」
救世主が、やってきた。 - 22二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:36:16
「しっ、シグレっ!!たす、やっ、助けっ!!」
「_____!!」
部屋のドアを開けて入ってきたのはだいぶ前からデブオコジョと化していた酒飲みオコジョこと間宵シグレであった。
一瞬、『お楽しみ』に乱入してしまったのかと逡巡したシグレであったが、彼の様子に性的暴行の現場だと理解するや否や弾けるように動いた。
「……?あなたは……誰で」
「やぁぁあっ!!ほらここは私に任せて逃げて、早く!!」
「っかひゅっ、助かった!すまん!!」
その重量を生かしてカグヤに体当たりを仕掛けるデブオコジョ。バチィィィィン!!と肉同士がぶつかり合う音と振動が響き渡り、カグヤの身体を突きとばして下敷きにされていた彼に活路を開ける。
そして彼が部屋から脱出したのを後ろ目に確認して。
「……はぁ、はぁ。やってくれるじゃん、人様の共犯者をあわや傷モノに……なんてさぁ」
「……あなたは」
カグヤのほうへと目を向ける。その瞳は普段の彼女からは想像もつかないほどの怒りと敵意に満ちており、一目見て彼女の心中が穏やかなものでないと分かるほどであった。
一方で対面するカグヤはその視線を涼しい顔で受け流し___否、状況を理解していないといった具合にぼんやりとシグレを眺めていた。
「とりあえず、彼にああも啖呵切っちゃった手前、キミを無力化して拘束して……何か言ったらどうよ?」
壁にもたれかかるカグヤ、その無反応さに不気味さを覚えたシグレであったが。
「……あなた。あなた、はやく、私たちと……ひとつにぃ!!」
「っ!!?」
不気味さは、その危惧は正しかったことを思い知る。心ここにあらずといった様相であったカグヤが、突如としてシグレに組みかかってきたのだ。 - 23二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:37:46
「ふっ、ぐっ、この、離れろこのデブ……!!」
「あはぁ♡つれないっ方でっ♡」
急な奇襲にシグレは対応しきれず、勢いのままに布団に押し倒されてしまう。肥満児二人の取っ組みに家屋が激しく揺れる。
取っ組みあいになり相手の二の腕やら腹やら胸やらを力いっぱいに掴み、握り、組み付き押し出そうとするシグレ。相手は確かに肥満児だが、それは自分も同じこと。同様の体格ならば早々負けることはない、むしろレッドウィンターの過酷な環境で育った自分にこそ体力的なアドバンテージがあると高を括っていた。
のだが。
「こ、の……!?ぐ、ぬぅ……!!離れっ、離れろ、う、うぅう!?」
シグレはカグヤを見誤っていた。シグレが自然環境に鍛えられてきたならば、カグヤは山海経の伝統を守るために自らを絶えず鍛えてきていた。そして何より、よく見れば。
「……っぐ、あれ……?これ、相手のほうが、だいぶと重い……!?」
体重で言えば、はっきりとカグヤに軍配が上がっていた。
筋力に関しては変わらないようなものであろう、しかし重量差というのは如何とも埋めがたい格差である。
重いほうが強い、それは自然の摂理である。
「___ぁ、やっば……!!」
「ほぉら♡私がっ♡私が上なんですからっ♡無駄に抵抗なんてせずにっ♡」
明確な力の差。今この場における上下関係。それを理解した瞬間、自身の顔から血の気が引いて行くのをシグレは感じた。
「ぅ、ぐ……!放せ、は~な~せ~!!この、何を……!?」
「~♡~~♡」
下半身に強い圧迫感が襲い、思わず訝しむ。見ればカグヤは自身の股を強くシグレの股に押し付けているようで___。 - 24二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:38:50
ど む ん
「~~~~~っ!?な、なに、何なのさぁ!?」
「っはぁ、はぁ……っ!♡」
一際重い振動音が鳴り響き、カグヤの腰がシグレの股に打ち付けられる。
無論、どちらとも股にあるのは女性器であるし、そもそも下着を脱いですらいないからして互いに繋がっている状態ではない。しかし、その動作は確かに性行為のソレであった。
. ず ど む
. ぶ よ ん
続いて再度、二度、デブヒョウの腰が憐れなオコジョに打ち付けられる。
「あっぐ、はぁっぐ!?なに、うそ、まさかコイツ……私を……!?」
「~~~っ♡」
何百kgという重量が股下から突き上げられ、下半身はおろか全身の脂肪を通じ脳みそまで衝撃で揺さぶられて思考を攪拌し、潰れた肺から空気が押し出されて正常な呼吸リズムを粉砕する。
この異様な行動と混乱状態の直後にあって目の前のデブヒョウの欲するとする事を理解できるのは、頭の回転が速いと褒めるべきか手遅れであることを嘆くべきか。だがしかし、いまここでそれを理解することは却って彼女の正気度を下げるだけである。 - 25二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:39:52
「や、やめ、冗談じゃない!!こん、な、『初めて』が見ず知らずのデブに無理やりとか……!」
「おかしいですねぇ……ここを……っ!♡」
「ひっぐぅ!?ぅっふ!」
続いて四度目、五度目と腰が打ち付けられる。
そのたびに視界が激しく揺れ、ぱちぱちと脳裏に星が瞬く。無視できないダメージが重ねられていることを察しつつも、完全にマウントポジションを取られ両手首を抑えられたシグレに打てる手はない。
「はぁっはぁっはぁっ♡最初からっ最初からこうしてればっ♡」
「おぐっ、ぶふっ、んぐっ、ひぐっ、ぅ、ぐ……~~~~~っ!?♡」
何度も。何度も何度も何度も。繰り返し繰り返し巨尻に巨腿が叩きつけられ、そのたびに息が絞りだされる音が鳴る。それは性交などではなく単なる暴力的な打撃であった……はずであった。しかし幾度となく股を打ち付けられ、子宮が激しくリズミカルに揺らされたからか、ついにその瞬間、シグレは自身の股に快感を覚える。
「っはぁっ!?はぁっはぁっはぁ……!うそ、私、今、感じて……!?」
自身の身体に起こってしまった本来起こり得ないはずの生理現象に驚愕と、次いで恐怖を感じて目を見開くシグレ。だが、その間にも股より伝わる電気信号が彼女の脳内で弾けて暴れ、今しがた感じた快感が幻覚ではないことを明示させる。
「だ、だめ……落ちつか、ないと……これ以上は、あひゃあっ!?♡」
今の自分は寝転がって身体をその身に纏った駄肉諸共ぴくぴくぷるぷると揺らす肉塊であり、その様は滑稽を通り越して気色悪さすらある。これ以上はヒトとしての尊厳に著しく関わる、そう感じなんとか身体中に広がる焼けんばかりの熱と緊張を抜こうとする。
が、そこで腕の力を抜いたのが悪手だった。押さえつけていたカグヤからしてみれば抵抗が弱まった、抵抗の意志が弱まったと見れる行為であり、手が空いた彼女は目の前の獲物とより深く繋がるためにすぐ目の前に鎮座する巨乳へと手を伸ばし、揉みしだき始めたのだ。
「ひゃぁあ、あひ、やめ、はな、せぇええ……!!♡♡」
掴み、握り、まるで餅の如くこねくりまわされる度にシグレの口から嬌声と熱い吐息が漏れる。あるいは、揉まれる度に熱が籠っていく様は発酵するパン生地の如くか。ともかく、我慢強いレッドウィンター生だろうとそうそう耐えられるものではなく。 - 26二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:40:54
「あ、んぁっ、~~~~~~~~~~!!!♡♡♡」
再び全身を快感が痺れるように駆け巡り、ぶるんっと身体を震わせる。またひとつ、デブオコジョの尊厳が失われた音がした。
「_______、ぁは、は、はぁ……」
これ以上はマズイ。本格的に尊厳的死を迎え、性道具として消費され尽くされる。ありえないはずの、しかし鮮明にその姿を想像できてしまうまでに現実的になったその未来予想図に脂肪の奥の背筋が凍り、なんとか抜け出そうとする。
しかし快感に弛緩しきった四肢では肥え太った体躯を持ち上げることも叶わず、ただ無意味にもがくのみに終わる。
最早シグレの命運を握っているのはカグヤであるが……
「♡ ♡♡」
発情が治まる気配は一向になく、むしろモノを話すことすらやめて性欲の獣と化している。これでは目の前の獲物を逃がすなど、万にひとつもないであろう。ほら、現にカグヤはシグレに抱きつくと互いの乳房の先をぴたりと合わせ、腹から足までもちょうど重なるように抱きつき、抱きしめ、擦り合わせている。
「ぅ、あ、何を……っ!?♡ひゃ、やめ、やめぇ……!!♡♡」
彼女のやっていることなど、単に相手に自身の身体をこすりつけているだけのことである。しかし、これまでの度重なる性的暴行によりシグレのその身体に内蔵された脂肪細胞は悉く敏感になっており、それこそ如何なる部位であろうと肉が付いているぶんだけ性感帯と成り果てていた。
そんな状態で抱きつかれ、果てにしごかれれば、それは最早性的暴行を超えて拷問の域である。
「や、めぇ、う、ぐぅ~~~~~~~~っ!!♡♡♡は、ぁ、あ、ぐ、待って、止まって、や、~~~~~~~~~~~~!!♡♡♡」
互いの巨乳が押し潰されて上下に流れ、腹の奥のヘソが押し付けられてキスをしている。互いにどこまでが自身の肉でどこからが相手の肉かの判別もつかない肉団子と化し、嬌声と汗と体液を振り撒いてなおその身に秘める熱を高めていく。最早シグレのほうも理性の限界であった。 - 27二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:42:05
「あっ、あっ、ふっ……ぃっ!?~~~!」
だが、それでもまだ線引きしたい一線が彼女の中に残り、彼女を獣でなくヒトに引き留めていた。
共に喘ぎ、混ざり合っていたカグヤが不意に口元を寄せてきた。口づけでもする気なのだろう。察し、顔を背けて有らん限りの力で胸元から押し退けるシグレ。股は蹂躙された。身体中もっちりもちもち堪能され、恥辱の限りを尽くされた。最早、人としての尊厳など風前の灯だ。だが、口の中を無理やり犯されるのは勘弁であった。『初めて』にするならもう狙っている相手がいる、こんな初対面のデブにくれてやる唇などない。
「?♡ ……」
「いや、だ……そこだけは……!」
溶かしきったと思っていた相手からの想定外の抵抗に辟易した様子のカグヤ。それもそうだろう、理性の消えた獣と化した彼女にとって、シグレの矜持も、抵抗も、懇願も、全ては理解できず無意味なものなのだから。
「~♡」
「あっ、やめっ、ぅうっ!?」
距離を取るための突っ張り棒と化していたシグレの腕を掴んで力を加えてやれば、快感に骨身まで侵されてろくに力の入らない、太さだけの腕はあまりにあっけなく押し倒されてカグヤの腹の下に押し付けられてしまった。
最早シグレに打つ手なし。チェックメイトだ。
「あ、あぁあ……!やめ、離し、いやだ……!」
なんとか身をよじり重石から抜け出そうとするシグレであったが、快感でろくに力は入らず、動きも痙攣に阻害されて身動き一つ取れない。
カグヤのぱんぱんに膨らんだ両掌に頭を掴まれる。
「ぅ、あ、助け、助けてっ、いやだっ、私っ」
迫りくる口元を前にして、シグレの脳内にまだ人としての尊厳が残っていた頃の思い出がフラッシュバックする。天見ノドカが227号特別クラス行きが決定したその晩にカンポットにウォッカを混ぜたあの日、ノドカと一緒にアルコール化した飲料で焚き木をしたあの日、究極のつまみを求めて彼の元を訪れたあの日、寒波の中でもちもちノドカと互いの肉で暖を取り合ったあの日___
カグヤの口元がもうすぐそこに迫る。
「私っ、まだっ、皆とっ」
「シグレっ!!!」 - 28二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:43:10
ぐんっ、と目と鼻の先だったカグヤの顔が勢いよく右にブレる。おかげで唇まで奪われることは間一髪で避けられたが……いったい何が起こったのかと目を白黒させるシグレの視界に、彼の姿が映った。
「……キミ!?な、なんで、ダメだよ戻ってきちゃ……!?」
「『助けて』って言ったのはお前だろ!?それに考え無しじゃn「ォォォォぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおそこまでなのだっっっっっっっ!!!!!!」」
何故、キミがここに。理由を問えば、その答えはあまりにも無鉄砲な言葉と、そして窓をぶち破って飛んできたネズ耳生徒であった。
「!! ……?」
本来の獲物を見つけ、嬉々としてそちらに手を伸ばすデブクロヒョウ。が、直後に自身の身体が思うように動かないことに違和感を覚え、胸の下へと視線を降ろす。
こぽこぽ……
ごぽごぽぽ……
ぷくーーーーーーーーーーーーーー
「……!!?」
カグヤのただでさえ脂肪で肥え膨らんでいた身体が、その肉厚な脂肪の奥底から空気を入れるように膨らみ始めていたのだ。
「え、何、膨らんで……!?」
「ぼく様特製のダイエット薬なのだ!脂肪をガス化させて浮力を持たせることで体重を減らす効果が見込めるぞ!」
「ダイエットってそういう意味じゃないよなぁ……ほらシグレ、引っ張るぞ」
「あ、ありがとう……んぅっ♡」
見る間にどんどん膨らんでいき、部屋の天井に背中が付きかねないほどの直径に成長したカグヤ。その下で、拘束から逃れられたシグレを彼が根野菜よろしく引き抜き、助け出す。
と。 - 29二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:44:25
「……はっ!?わ、私はなにを……なんてことを!?」
「あ、正気に戻ったのだ」
恐らく強い精神的ショックを受けたからだろう。あるいはこのような身体ではどうあがいても性欲が満たされないことを理解したからだろうか。ともかく、ここにきてようやく肉厚風船クロヒョウと化したカグヤの瞳に理性の光が戻る。
と、同時に、直前までの自分の行いがフラッシュバックし恐怖と羞恥が彼女の身体の如く膨れ上がってくる。
「……ヒメちゃん。いや、カグヤちゃん」
「っ!わ、私は……私が、こんな……!」
正体はバレた。それどころか理性を失い彼を、そしてそれを止めようとした見ず知らずの女性を犯そうとした。そのどちらも止めに入るのが少しでも遅かったら手遅れになっていただろう。いったいこの短時間でどれほど不義と恥の上塗りをしたのだろうか。
見放されたって仕方ない。警察に突き出されても文句は言えない。
だが。
「いや、この件についてカグヤちゃんは悪くないよ」
彼の口から出たのは、赦しの言葉であった。
「悪いのはばくばく食わせすぎた俺と、あとろくに副作用を把握もせずに人様に薬を処方したサヤさんだからさ」
「!!!??ぼ、ぼく様は門主様に頼まれて作ったのであってカグヤに使わせるために作ったんじゃないのだ!?」
「でもその……モンシュサマ?に副作用を説明せずに納品したのはサヤさんじゃん?」
「ん”ん”ん”っ”!!!」
「で、ですが私が自制しなかったのもまた確固たる原因で……!」
本当に気にしていないと言わんばかりに目の前で繰り広げられるコントに啞然とするカグヤ。許されていいのか。本当に赦されていいのか。このまま水に流されるのに釈然とせず、なんとか異を唱えようとするも。
「よし!じゃあこうしよう!今回の事件は皆が皆やらかして、それがたまたま噛み合った末に発生した悲しい事故だった!終わり!これ以上の詮索や責任追及は無し!……で、どうだろうか?」
「あ、あなたがそういうなら……」
……こうなった彼はえらく頑固だ。こういった場合は素直に引き下がるほうが彼にとってはありがたく都合もいいのだろう。これ以上駄々をこねて迷惑をかける訳にもいかず、カグヤは大人しく引き下がる。 - 30二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:45:44
「それとシグレ、ありがとうな。本当に助かったよ」
「……別に。私が勝手に飛び込んで勝手に捕まっただけだから。でもまぁ……埋め合わせには期待しとくよ」
無論、シグレとて彼の性質はある程度理解している。こういうときに見返りを求めないよりはさっさと見返りを求める素振りをみせたほうが後腐れがないと熟知していた。
と、シグレとの会話も切り上げ、彼は再び、もうすっかり地面から離れて浮かんでいるカグヤへと身体を向ける。
「……カグヤちゃん。カグヤちゃんはさっき、山海経に帰りたくないって言ってたね」
「っ!……はい。というよりも、この家を離れたくない、といいますか……」
先程の、性欲に呑まれる前の話の続きだ。カグヤはすべてに観念し、心情を吐露しようとする。もういい、どう足掻いたって身分を偽り偽の姿で潜り込んでいたことがバレた以上はもうこの部屋には戻れないんだ。だからもう、別れてしまおう。そんな諦観を語ろうとしていたものだから。
「……またいつでもおいで。カグヤちゃんとしても、ヒメちゃんとしても、どっちでも」
「!?」
その言葉に思わず言葉を失ってしまった。
「い、いいんでしょうか……!?」
「いいよいいよ、カグヤちゃんもヒメちゃんもどっちも同じ『お前』なら、拒む理由なんてないよ。だから疲れたりしたらまたいつでもおいで。料理の腕とか磨いて待ってるからさ」
「……~~~~~~~っ!はい!では、またいずれ!」
優しい声と、優しい提案。にわかに転がり込んできた最善とまで言えよう結果に、カグヤは満面の笑みで答えるのだった。
「あー、良い話でまとめてるところ悪いのだけども。カグヤを部屋の外に搬出するの手伝ってくれないのか?」
「えっ」
「ほら、このままじゃ扉もくぐれないし、なら窓を全開してそこから運び出すしかないのだ。こう、ぎゅむぎゅむっと」
「……よぉし今一度手伝ってくれシグレぇお願いします!!」
「弁当!!増量!!+75%!!いいね!?」
「任せとけぇ!!」 - 31二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:46:49
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__
_
ぺったんこになったクッションを手に取り眺めながら、青年は一人思い出から現実に意識を戻す。
「?か弱き子よ、それは……待ってください、私はそれを知りません私の仕業ではありません弁明の機会を求めますか弱き子よ」
「あいやマルクト、別に疑ってるとかじゃないぞ。これは俺の友人のものだ。……もうしばらく会ってない、遠い地の友人のものだ」
脂肪に沈んだ首をかしげるマルクトをよそに、また想いを馳せる。
カグヤは地元で元気にやってるだろうか。サヤが脂肪をごまかす薬を作ったと言っていたが、大丈夫だろうか。またストレスとかをためていないだろうか。
……自分は、あの日からちゃんと約束を果たせるくらいに料理の腕を磨けているだろうか。
「……マルクト。今夜の晩飯はちょっと豪華にいくぞ。ソフにもそう伝えてくれ」
「!わかりました……それではしっかりお腹を空かせてきますね……!」
ふんすふんす、どすどすと音を立てて駆けて行く白大福を背に、彼はキッチンへと赴くのであった。 - 32二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 03:51:35
- 33二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 13:05:55
続ききてた
たすかる - 34二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 13:55:58
続きが来てる…!
甥くんと一緒にいる心地良さにも快感にも呑まれちゃうカグヤ良い…シグレとの攻防も贅肉の暴れっぷりがえっちで好き… - 35二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 18:05:57
お久しぶりです、おかえり待ってました!
今回の相手はカグヤ。演劇のプロだからこそ子供の仮面が丁寧すぎてコントロールできないのいいね…
そして食事の虜+相手への感情+肥満化の快楽で素と仮面が合致していくの丁寧でよかった
しかしそれに併せてなのか暴走してしまい甥っ子君に襲いかかるわ助けに来たシグレにも襲い掛かるわで大変だぁ
シグレ相手でこれなんだから甥っ子君がのしかかられてた場合相当大変なことになってただろうな…
しかし甥っ子君こんなにも肥満化ガールズに慕われて一斉に襲い掛かられたりしたら押しつぶされて出れなくなりそう(コナミ - 36二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 02:12:15
甥っ子君とフラグ立ててるのが一挙に集まる場合相当頑丈なところでないと部屋が持たなそう