- 1二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:21:38
- 2二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:22:39
「……はぁ」
か細く、空気に溶けるような小さな溜息を吐く。
こんな姿、誰にも見せてはいけないから。
皆の思う七稜アヤメは何時も笑顔で、誰からの頼りも断らずに受け入れる……そんな人物なのだから。
「……」
人気の無い廃屋の影。
誰に見られる訳も無いのに、隠れるようにして縋る様に百蓮を抱く。
――どうして百花繚乱なんかに入ってしまったのだろうか。
頭の中で繰り返される自問自答は、何時もと変わらず人を助けたかっただとか、流されるままだとか、明確な答えの無いモノばかりで。
根底にある誰かを助けたい気持ちは嘘ではない。
ただその頻度と内容に物申したくなるだけで。
流されるままと言っても他に何かやりたいことがある訳でもない。
結局は、自分で決めてここに居る……と、言えるのだろう。
「……はあ」
さっきよりも少しだけ、大きな溜息を吐き出して心の換気を行う。
どれもこれも自業自得な話で、全て最初に受け入れた自分の責任と言う奴なのだろう。
だから、文句は言えない。言えないのだけれど。
――こうやって、一人勝手に黄昏れるくらい許して欲しい。
「――おや、珍しいですね。百花繚乱の委員長もそんな顔、するんですね」 - 3二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:23:41
突如、声が降って来た。
驚きながら顔を上げると、冷めた眼差しを此方に向けるロングヘア―の少女が居た。
すっと、血の気が引いていくのを感じる。
「あ、あはははっ……今日はちょっと疲れちゃってね……」
すぐさま立ち上がり、取り繕った笑顔を見せる。
だが、何が気に食わなかったのか。彼女は私以上の溜息を分かりやすく吐き出して背中を向けた。
「い~んですよ、別に。私も似たようなもんですから……ですが、これも何かの縁ですし何か飲まれます?」
「あ~……ありがたいんだけど」
「な・に・か、飲まれて行きます?」
「……緑茶で」
何とか会話を切り上げて逃げようとも思ったが、彼女の言葉がそれを許さなかった。
渋々と廃屋のテラスに足を踏み入れ、用意された席に着く。
彼女は黙々と年季を感じさせる茶器を使って、緑茶を入れていく。
自身の素顔を見て、何も言わずに茶の完成を待たされるのは正直気分が悪かったが思ったよりも早くその時は来た。
丁寧に注がれ、だけども適当に渡されるギャップに張り付けた笑みが崩れそうになりながらも一口頂く。
……美味しい。
てっきり中身も適当に作られた物かと思えば、丁寧に作られた一杯だった。
渋味を感じるが嫌味は無くスッキリと飲むことが出来た。
「ふふっ、良かったです」
「えっ……?」
「あ、気づいてないんですか? 声に出てましたよ、美味しいって」 - 4二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:24:44
そう悪戯っぽく、けれどもしっとりとした笑みを浮かべた彼女にある人物の印象がかっちりと当てはまった。
彼女も、似たようなものと言っていたっけ、なんて思いつつ確認を前に緑茶を一口。
「……ふう。君は百夜堂の?」
「あれ、バレちゃいました?」
「私の感想を話してる時の顔がいつもの君に似ててね」
そう伝えると、彼女はへにゃりと顔を歪ませ、疲れたような表情を夕日に向けた。
その姿に何処か既視感を覚え――自室の鏡だった事を思い出して私の顔も歪んだ。
「……ありがとうございます」
「いや、その……ごめんね? 何だか嫌な事を思い出させちゃったみたいで……」
「ああいえ、そうじゃないんですよ……」
彼女はまだ琥珀色が残っている自身のティーカップに緑茶を注ぎ――一口目で苦い顔をしながら嚥下していた。
机の下に置いてあった百夜堂のどら焼きの一つを投げ渡され、彼女は甘味に逃げるようにしてどら焼きを頬張っていた。
「ただちょっと……嫌いなんですよね、百夜堂」
「……それは、また」
「ああいや、全部が全部嫌って訳じゃないんですよ? ただまあ……嫌なお客さんだとか、伝統と言う名の柵だとか……遣る瀬無い部分があるんです」
嫌い。いつも笑顔で接客していると噂の看板娘からそんな言葉が出て来るとは思わなかった。
そしてそれ以上に、彼女の言葉に共感している自分が居る事に驚きを隠せなかった。
「でも別に、言ってしまえば些細な問題なんです。どれもこれも。……でも、積もり積もって重なって、店や近所で発散出来る訳もありませんし、偶にこうしてちょっとだけ変装してぼーっとしてるんです」
「……」 - 5二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:25:44
何処までも冷淡で、他人事な瞳。
喫茶店の外から垣間見た満点の笑顔から遠く離れたその顔は、どうしても他人事とは思えなくて。
「……ごめん、私もさ」
美味しい緑茶と甘いどら焼き、アクセントと呼ぶには刺激の強い話に宛てられて、私の口は自然と軽くなっていた。
「今日だけ、疲れてた、なんて……嘘でさ」
「何でもかんでも、私を頼って来る人達に……毎日、うんざりしてて」
「でも、百花繚乱の委員長として、断る訳にもいかなくて――」
「いいじゃないですか、別に断れば」
え、と。言葉が詰まる。
視線を前に向けると、彼女はつまらなさそうに此方をじっと見つめていた。
「や、でも、私が受け始めたんだし」
「関係ないですよ、嫌ならやめちゃえばいいんです」
「それは……ちょっと、無責任だと言うか」
「そもそも委員長に仕事を投げてる奴らの方が無責任ですよ、一方的に抱え込まなくてもいいですよ」
「でも……」
「百花繚乱の委員長なんて肩書があるのがいけないんですよ、そんなに辛いなら捨ててしまえばいいんですよ」
「それ、は……」 - 6二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:26:45
うお、もう寝る時間じゃないすか
多分12時回ったらホスト規制かかるからここ迄やな、ほな…… - 7二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:48:22
残ってたら続き書くで
あとこの作品の根幹と言うか、インスパイア元と言うか
アヤメは印象的に合ってるけどシズコは全然印象と違うが、ごめん
他に似合いそうなキャラ居らんかったんや……
- 8二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 00:30:05
期待させてもらうぜ
- 9二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 00:47:55
良スレの予感
- 10二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 00:54:05
期待
- 11二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 10:27:43
ええやんしっとりを感じる
- 12二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 18:53:13
お、残っとるやんけ
飯食った後に更新するで、もうちょい待っといてな - 13二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 23:35:32
その言葉は、きっと正しかった。
けれど、何故だか私は、その言葉を否定したかった。
「……嫌で、辞めたいのはその通りだけどさ。今すぐに全て投げ出したい程の物じゃ、なくて……」
「へー……」
彼女は濁った飲み物を睨みつけながら答える。
まるで私の言葉など聞いちゃいないように、勝手気ままに飲み物と悪戦苦闘する姿はほんの少しだけ、心を軽くした。
「感謝されるのは、嬉しい……頼られるのも、構わないんだけど……一度でも、嫌だって言ったら――もう誰からも頼りにされないかも知れない……私が、百花繚乱の名を貶めてしまうかも知れない……」
取り留めのない感情を形成する前に吐き出したようで、要領を得ない。
これでは彼女が言った通り、辞めた方が正解であると結論付けても致し方ない。
だって、肯定しているのだから。
勝手に背負った責任の重さを、逃げれば一先ずは助かる現実を。
自然と俯く視線を止めるように、新たな緑茶が差し出された。
ほのかに立ち昇る湯気が私の瞳を温めて――今頃、ほぼ初対面の相手に心の汚泥をぶちまけている事を思い出してしまった。
「まあ、アヤメさんの考えは分かりましたよ。おかわりです、どうぞ」
「いや、まだ一杯目が残って」
「いいから、どうぞ」
表情だけでも取り繕えているのか、そんな事は些事だと言わんばかりに飲み物を勧められる。
……既に取り返しのつかないところまで来ているのだと思い、腹をくくる様に二杯目に手を伸ばして。 - 14二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 23:36:34
「――んぐっ!? っごっほ!! ごはっ……」
一杯目とは似ても似つかない苦みと何かと混じった香りに驚いてむせ返ってしまった。
呼吸を整えながら彼女の方を向くと、白々しい笑みを浮かべながら自身のティーカップの底面を此方に見せつけてきた。
コイツやりやがった……!!
「ああすいません、つい失敗作を出してしまいましたぁ」
「こほっ……どの口が」
「とまあ冗談は置いておきまして」
掴んでいた湯呑をひったくる様に奪われて、やはり味わうことなく嚥下して渋い顔を浮かべていた。
……アレ作ったのは冗談じゃないんだろうな、何て冷めた目で見つめていると彼女は指を一つ立ててみせた。
「百夜堂のオーナー兼名物看板娘である私でも、こうやって食べ物関係でミスをするんです」
「……でも百夜堂の看板娘はドジっ娘だって聞いてるけど?」
「あれはそう言うキャラ付ですって……兎に角」
「今は……今だけは、肩の力、抜きませんか?」
疲れた、悲し気な笑顔だった。
端々に表れていた取り繕った仮面を見透かすように、彼女は笑っていた。
同情、ではなく、同類を見つめる瞳をしていた。
どうやら彼女も、私の言葉に共感していたらしい。
それが分かって漸く、本当に漸く肩の力が抜けるのが分かった。
「そっか……うん、そうだね」 - 15二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 23:37:43
すまん、展開の修正しとったら全然進まんかったわ
今日で終わらせる気やったんやけどな……難しいもんやで - 16二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 23:54:35
乙やで
- 17二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 08:21:02
ええやん
好きやで - 18二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 17:48:28
待つよ
- 19二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 02:33:44
こういうのも好いんだよ
- 20二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 08:01:19
私の変化が分かったのか、沈みゆく夕日に彼女は視線を向けた。
「アヤメさんは、不器用ですね。私よりも……」
「……私には、これしかないから」
どら焼きの中の栗を噛り、不貞腐れたように答えてしまう。
そんな私の回答、何がおかしかったのかクスクスと笑いながら彼女の瞳に私が映る。
「別に、馬鹿になんてしてませんよ〜? 誠実で、責任感が強い証拠じゃないですか」
「……じゃあなんで笑うのさ」
「褒めてるのにそんな卑屈な顔されたら誰だって笑いますよ」
「……いや褒めてなかったよね? 不器用って最初に言ってたよね?」
「さあ〜て、どうでしたかねえ〜」
取り繕わない本音が、負の感情が冷めた目が、呆れと込み上げてくる笑いが、自然と口から零れ出ていた。
ただのアヤメとして振る舞えるのが、形容出来ない感情と共に溢れてくる。
……多分きっと、嬉しいんだと思う。
「へえ〜? しらばっくれるつもり?」
「いえいえ、この百夜堂のオーナーである私がお客様に嘘を吐くなんて真似は決していたしませんから〜」
「はっ! アンタ絶対私の事お客様とか思って無いからセーフとかって言うつもりでしょ」
「あら……流石にバレます?」
「いいよ、こっちにも考えがあるから」
机の下に置いてある茶菓子が入った箱の中に、百蓮をそっと差し込む。
銃口に上に乗せた茶菓子をテコの原理で跳ね上げ、降ってくる茶菓子をキャッチする。
「これでチャラにしてあげる。感謝してよね」
「いや何ですか今のスーパーテクニック……足癖悪いですよ〜、全く……」 - 21二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 08:02:24
ブツブツと文句を言いながらも、彼女は自分の分の栗まんじゅうを取っていた。
私が空に打ち上げたのは――鬼まんじゅうだった。残念。
「なんでも頼れる委員長って呼ばれてて、そのあだ名の通り何でも出来るのに……自分の事となると本当に不器用になりますね」
そんな風に呼ばれていることに驚きながら、鬼まんじゅうを一口齧る。
優しい芋の甘味とふんわりとした生地が舌を刺激するが、少しだけ憂鬱としてしまう。
「……じゃあどうしろって言うのさ」
「知りませんよそんなこと。自分で考えてください」
子供の様に縋った言葉は、けんもほろろに突き返されてしまった。
思わず彼女を睨みつけてしまうが、同じくらいに鋭い視線を向けられ、返って此方の威勢が削がれてしまった。
「私だって知ってるならとっくに実践して、こんな風に一人の時間を無理矢理作ったりしませんよっ……! フィーナやウミカにだって心配されるし……」
「……ごめん」
そうか、そうだった。彼女も私と同じで、自分の幻影に圧し潰されかかっているんだ。
私の謝罪を聞くと、案の定顔色を変えて気まずそうに視線を逸らしていた。 - 22二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 08:03:26
ホスト規制で遅れてしもうた、すまんやで
帰って来てから続きは書くで
ほな…… - 23二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 08:55:12
おつおつ
- 24二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 18:39:29
ええんやで
楽しいからな - 25二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 18:42:18
- 26二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 19:37:26
無茶言ってくれるなあ! と言うか今書いとる話がほぼ箱の塔や
相手の顔を伺いながら話しとるけど、積み上げた箱をぶちまける……仮面を剥がして喋っとる
複数の題材が混ざっとるんよ
まあ箱の塔主題にするんやったら……キサキ主役の作品になりそうやねえ
それはさておき今日中に終わらせられるとええなあ、ちょっとSSだものねえ
あと、ウチは水色ナイフと最近のだと空色シャツが好き
- 27二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 19:41:24
この人の動画見返しながらカヤにはミルキーなヒーローだった時期があったのかなーとか、コーヒーに潜む鮫に子供を食べられちゃったのかなーとか、同作者の漫画のかませ犬貴族みたいなムーブするカヤ見たいなーとか思ってた
- 28二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 05:38:18
保守
- 29二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 11:02:41
「いえ……私の方こそ、ごめんなさい。急に声を荒げたりして……」
夕日から顔を背け影に隠れた表情を見て、喉から言葉が溢れそうになる。
ぐっと飲み込み、言葉を組み立て直しながら……僅かな恐怖心が私を刺した。
「……嫌な事から逃げないで立ち向かって、周囲の事を考えて自分なりの息抜きをしているアンタは、立派だよ」
「……なんですか、いきなり」
「別に、しょぼくれてる暇があるんなら――手、貸してよ。アンタと、私。両方が苦しまなくて済む方法を見つけるの」
右手を差し出し、取り繕うことを忘れた表情で彼女を見下ろす。
呆然と見上げた彼女と視線が絡み合い、その幾許かの間、静かにお互いの視線が交差した。
そうして、彼女は困ったような笑みを浮かべた。
私の手はまだ握られない。
「……ほんと、これでどうして自分の問題を解決出来ないのやら」
呆れたように嘆息し、瞳を伏せて頭を振った。
私の手は、まだ握られない。
「ええ、分かりました。しょぼくれてても仕方ありませんし、そっちの方が有意義そうですしね。明確な答え、探してみましょうか」
「――ありがとう」
彼女は柔和な笑みを見せ、私の右手を力強く握り返した。
そこはかとない喜びと、底抜けの安堵感から自然と顔から力が抜けた。
……よっぽど変な表情に成っていたのか、狐に抓まれたような顔に変わった彼女を見て、私は表情を引き締め直した。 - 30二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 11:03:42
結局、半分以上残した鬼まんじゅうを袋に詰め直し、沈み切りそうな夕日と共に席から立ちあがった。
今日は互いの愚痴を言い合うだけで終わってしまったが、また次回から明確な答えを探していくことにしよう。
そんな言い訳を並べて、私は彼女と別れた。
「……はぁ」
少しだけ切なく、口惜しさの含まれた溜息が漏れ出る。
会えるのはまた来週。この時間だけだ。
それもその筈、お互い多忙の身。
己が役割を全うせねばならないことは、重々承知の上だった。
けれども、辛くはなかった。
明日に対する活力を確かに感じて、誕生日を待つ幼子のような心持で私は帰路に就けた。
(……たく、どっちが不器用何だか)
彼女が語っていた愚痴の内容を思い出し、鼻で笑って空を見る。
曰く、セクハラしてくる客が居るだとか。曰く、注文と違う物を卸す業者が居るだとか。曰く、定員の数が足りていないだとか。曰く、曰く、曰く。
話の内容はさして重要ではない。
彼女自身が、これらの話は楽しそうに話していたし、きっと本当に悩んでいる話が別にあるのだと察することが出来たから。
私は既に全幅の信頼を置いて、明け透けに百鬼夜行の住人たちの悪態を吐いたと言うのに。
一応のリスクヘッジなのだろうが、あの空間ですら本音を溢せないというのなら、きっと彼女は何時か圧し潰されてしまうのだろう。
とはいえ、言い出しにくいのも分かる。
彼女は客商売をやっている。あの場所で心無い言葉を吐きなれてしまって、店で不意に零れてしまうと考えると――。 - 31二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 11:04:44
「……あー、なるほど」
どうして彼女に構ってしまったのか。どうして彼女の事を他人の様に思えなかったのか。
きっと私は、私を慰めたかったのだろう。
誠実で、上っ面に優しさを塗り固めて、勝手に独りで溜め込んでいく、可哀想な彼女(自分)。
そんな醜い自分と彼女を我儘に重ねて……報われたかったのだろう。
「……はあー、帰ろ」
浮かび上がった心が沈み込んでいくのと同じように、周囲が闇の帳に包まれて行く。
他者の心を利用して、自分の心を慰めようとする自身に吐き気がする。
どの口が相手を褒めているのかと強い嫌悪感を覚える。
もう会わない方が両方の為だと理性が叫び、再び会う約束を既に取り付けていることに罪悪感を感じた。
それでもまだ、彼女と会って話がしたいと思っている私に。
どうしようもない救いの無さを感じるだけだった。 - 32二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 11:05:46
「アヤメ先輩が最近おかしい?」
「ええ……」
キキョウからの相談を受けたレンゲは首を傾げる。
ここ数日のアヤメの姿を思い返しても、然したる不自然さは思い起こせない。
一体何をそんなに複雑そうな顔をしているのかと疑問を投げ返した。
「別に委員会の仕事をサボったりとかはしてないよな……どうおかしいんだ?」
「……何て言ったらいいのかしらね」
レンゲの疑問に、キキョウは更に眉間の皺を深くした。
「上手く言語化出来ないのだけど……空気感、って言えばいいのかも?」
「お前が上手く伝えられないんじゃアタシも……いや、待って。アタシ分かったかも!」
「……期待はしないけど聞いてあげる、なに?」
「アヤメ先輩に、春が来たんだよ!!」
目をキラキラと輝かせ熱弁を振るい始めるレンゲに対し、手を振りながら否定するキキョウ。
「それは無い……と言い切る気は無いけど、それならもっと自分の時間を確保するはず。先輩が委員会の外で人助けをしている時間も別に変ってはいないみたいだし」
「え~? 絶対彼氏だと思うんだけどなあ」
そんな他愛無い相談をしながら、二人は参謀室に入って行く。
――廊下奥の曲がり角で俯いた先輩に気が付かないまま。
(……アヤメに、男?)
聞いてない。
友達ならば一言位有ってもいいのではないかと、天井を見上げながらナグサはフリーズしていた。 - 33二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 11:11:23
構成力がゴミ過ぎて最初に考えてた展開からだいぶ離れたしなんか続きを匂わせとるけどちょっとSSやからここまでやで、お疲れさん
多分こっからアヤメとシズコが仲を深めたり、ナグサが二人の会合に突貫したり色々あるとは思うけど主題から離れるしな!
まあ主題である「正しさと苦悩」が書けてへん時点で終わっとるんやけどな
ここまで楽しんでくれてありがとな、ほな…… - 34二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 12:35:05
乙やで、ほんのりじっとり良かったよ