- 1125/07/03(木) 11:15:09
- 2125/07/03(木) 11:16:16
前スレ
【クロス注意】幼馴染inNRC Part19|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼プロローグ
【クロス注意】ここだけ|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>個性は dice1d3=@2 (2)@1. 二人とも使えない2. かっち…bbs.animanch.com▼第一章
【クロス注意】幼馴染みinNRC|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼第二章
【クロス注意】幼馴染inNRC Part3|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼第三章
幼馴染inNRC Part5|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼第四章
【クロス注意】幼馴染inNRC Part8|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼第五章
【クロス注意】幼馴染inNRC Part11|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼第六章
【クロス注意】幼馴染inNRC Part14|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com▼第七章
【クロス注意】幼馴染inNRC Part18|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com - 3125/07/03(木) 11:20:27
- 4125/07/03(木) 11:21:33
素敵な支援SS様
……ノーコメントで | Writeningパソスト風じゃなく普通のSSです。お目汚し失礼。 登場人物:出久+勝己+グリム+エース+デュース+ジャック+エペル+セベク ふわっと頭に浮かんだワンシーンを書きたいなと思ったらなんか長くなってしまいました…writening.netなんてことない普通の日 | WriteningパソストではなくSSです、ご注意を。 登場人物 トレイ・クローバー 尾白猿夫 砂藤力道(名前のみ) 個人的に尾白くんとトレイ先輩は仲良しであってほしいなぁと思う今日この頃。 アリアーブ・ナーリヤとかいっ…writening.netマスターシェフ〜地獄のニラ〜 | Writening登場人物:轟、リリア、砂藤、トレイ、エペル、デュース、エース、麗日、峰田、青山、学園長 ちょっと体調不良表現あるので苦手な方要注意、なんでも許せる人向け 「食」それは生命の礎。 清き海。強き山。優…writening.netもぎもぎパニック!ドアと化したフロイド | Writening登場人物:フロイド、峰田、緑谷、エース、デュース、ラギー、カリム、ジャミル、ルーク、リドル、セベク、飯田、イデア、オルト キャラエミュ間違い、キャラ崩壊あるかも なんでも許せる人向け 「おーいエ…writening.netドキッ!漢だらけの新メニュー決定戦〜飯テロもあるよ〜 | Writening登場人物:アズール、ジェイド、フロイド、ラギー、青山、飯田、上鳴、切島、瀬呂、砂藤(回想のみ) キャラエミュ間違いあったらスマソ、後半キャラ崩壊あるかも 何でも許せる人向け 「……皆さんが集まっていた…writening.net - 5125/07/03(木) 11:23:54
- 6125/07/03(木) 11:27:34
- 7125/07/03(木) 11:30:05
現在好感度まとめ
【出久→相手/相手→出久、 爆豪→相手/相手→爆豪】
*😺グリム 100/100、 93/91
*❤エース 100/100、 42/88
*♠デュース 100/100、 100/93
*🌹リドル 91/93、 79/100
*🔶ケイト 99/100、 85/87
*☘トレイ 30/27、 60/40
*🦁レオナ 26/74、 53/44
*🍩ラギー 14/59、 72/21
*🐺ジャック 84/100、 52/91
*🐙アズール 75/100、 94/31
*🐬ジェイド 26/65、 21/43
*🦈フロイド 8/33、 28/69
*🦦カリム 77/100、 49/86
*🐍ジャミル 95/84、 69/63
*👑ヴィル 100/100、 80/100
*🏹ルーク 100/100、 95/100
*🍎エペル 100/100、 100/100
*💀イデア 100/82、 71/64
*🔥オルト 84/46、 25/36
*🐲マレウス 95/70、 27/22
*🦇リリア 73/53、 100/31
*⚔シルバー 71/89、 98/22
*🐊セベク 4/41、10/15
*🐶クルーウェル 56/-、 13/-
*📚トレイン 78/-、 36/-
*🦾バルガス 16/-、 6/ - 8125/07/03(木) 11:35:22
前回までのざっくりあらすじ
リリアが魔力を失って学園を中退するということで、ディアソムニア寮で開催された送別会に参加した出久たち。
送別会に顔を出さないマレウスを探しに行ったシルバーを追って送別会を抜け出した出久だったが、偶然二人の会話を聞いてしまったことでリリアがシルバーの養父であり、寿命が近いことを知ってしまう。
悲しむシルバーを見たマレウスは、「悲しみのない世界」を実現させるため、送別会に乗り込んでその場にいた全てのものを眠らせ、「幸福な夢を見せ続ける」手段に出た。
夢の世界に閉じ込められてしまった出久たちは、夢と夢をわたる魔法をもつシルバーに同行し、現状打破のためにマレウスとの関係が深いリリアとの接触を試みたのだが、リリアはかなり昔の年代の戦時中の夢を見ているようで―― - 9125/07/03(木) 11:44:22
現在リリア過去夢編ですが、この辺は第三章と同じくらい書きにくいです
この辺のエピは過去&夢という手を出しても仕方がない事象、かつディアソムニア4人の家族問題(基本的に円満家庭)みたいなところがあるので幼馴染は傍観する立場になりがちになりますのでご承知おきください
あと単純にセベクのエミュがエペルと並んで難しい
セベクは読書が趣味でかなり文語体よりの話し方で語彙力も豊富なので、書いてる人の語彙力の限界がそのまま表れるキャラだと思っている
原作と比べるとボキャ貧のセベクになるかもしれない - 10二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 11:51:43
うめ
- 11125/07/03(木) 16:58:13
幸いにも『銀の梟』の野営地にはヒスイネズミやハガネトカゲ意外にも見慣れた食料が多くあったため、調理すればなんとか普通の食事にありつけそうだった。
シルバーはチーズリゾット、セベクは香草を使った鶏肉のロースト、勝己はキーマカレー、出久は野菜炒めをそれぞれ作って、野営地に食欲をそそる香ばしい匂いが立ち込めた。
🥦「カレーってルーがなくても作れるんだね」
🧨「こんだけ香草が揃ってりゃ余裕だわ」
🥦「……僕、スーパーのスパイスコーナーの瓶をみても、どれがどんなスパイスなのかよく分かんないんだよね」
🧨「ハッッ、雑ッッッ魚」
🥦「勝ち誇った顔やめてよ!」
🐊「……さ!皆様、お待たせいたしました!お食事の支度が整っております!」
料理が完成すると、(人間相手を覗いて)礼儀を重んじるセベクが真っ先に近衛兵たちに給仕しにいった。
リリアは野菜炒め以外の料理は馴染みがないようで「なんだこれは」と文句を言いながらスプーンを手に取ったが、口に会ったようでガツガツと食べ進めた。
🦇「うん……悪くねぇ」
*リリア 食事の好み
出久の野菜炒め dice1d10=10 (10)
爆豪のキーマカレー dice1d10=6 (6)
シルバーのチーズリゾット dice1d10=7 (7)
セベクの鶏の香草ロースト dice1d10=9 (9)
- 12二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 17:07:30
セベクの語彙力はすごいですよね…スレ主さん頑張ってください
- 13125/07/03(木) 17:17:37
🦇「特にこれが美味いな。素材そのままの味がする」
🥦「ありがとうございます!」
🧨「下処理もしてねぇ野菜を油で炒めて塩振っただけじゃねェか。馬鹿舌かよ」
リリアには香草の効いた複雑な味は理解できなかったようで、味付けがシンプルな出久の野菜炒めとシルバーのチーズリゾットを特に気に入ったようだった。
食事が始まってしばらくすると、「『鉄の者』たちは風鳴き渓谷の方面に撤退した」という情報をもったバウルがリリアのもとにやってきた。
セベクは敬愛する祖父にも食べてもらおうとニコニコと食事を差し入れたが、バウルに「いらん」と一蹴され、萎れた草のようにしょんぼりと項垂れた。
⚔「セベク、これは夢だ。現実のバウル殿はちゃんとお前のことを……」
🐊「そんなことはわかっている!『銀の梟』さえいなければ、若かりしお祖父様ともっと親睦を深められたかもしれないのに……許さんぞ、アイツらめ!」
『銀の梟』に流れ弾が飛んでいく横で、グリムが「食わないならオメーのぶんもオレ様が食べてやるんだゾ!」とバウルに出された食事に手を出し始めた。
🪓「なっ……この魔獣!なんという図々しさだ!」
🥦「コラっ、グリム!人のご飯を勝手に食べたらダメだよ!」
🧨「鱗ジジイが食わねェなら食事じゃなくて残飯だろ。残されンのも気分悪ィし、全部食っちまえ」
😺「バクゴーもこう言っているし、遠慮なくいただくんだゾ!ふがふが!うめぇ~!アツアツとろとろのチーズと、肉汁じゅわじゅわのお肉、それからピリッとスパイスの香りが絡んだひき肉が最高なんだゾ~♪」
🥦「……僕の野菜炒めには言及されなかった!」
🧨「このクソ狸、雑食のわりに味の違いだけは分かるからな」
🥦「そういえば、グリムは『美食研究会』を立ち上げたんだっけ。僕たちが図書館に行ってる間にちゃんと活動してるんだね」
グリムが美味しそうにバウルの目の前の料理を腹の中に収めていく。グリムは言語の成績は良くないが食レポはかなりのものであり、やせ我慢しているが空腹状態のバウルは「ぐぬぬ……」と唇をかみしめた。 - 14125/07/03(木) 17:33:02
🦇「ははは!バウルに喧嘩を売るとはいい度胸してやがんな」
🪓「くっ……魔獣ごときの腹に入るくらいなら、私が食べる!」
空腹には勝てなかったようで、バウルは残った料理をグリムと取り合い始めた。セベクが「まだ沢山ありますので」と慌てて盛り付け直した食事を運んで差し入れる。結局、「よく考えれば食べ物に罪はない」という謎理論を持ち出して、バウルはリゾットを3回もおかわりしたのだった。
出久たちは食事をとりながら、情報収集のためにリリアとバウルの会話を横で聞いていた。
妖精たちが暮らす大陸に人間たちがやってきたのは100年ほど前のこと。当時は帆船一隻分の人数しかいなかったのが、瞬く間に数を増やして妖精の人口を上回り、風鳴き渓谷よりも東側の領土はすっかり人間のものになってしまったらしい。
🦇「自然や動物たちを敬い、慎ましく暮らすってんなら捨て置くところだが……これ以上あちこちの山や森を掘り返されちゃたまらねぇ。急いでマレノア様の書状を東の鶏でまで届けねぇとな」
😺「マレノアさま?誰なんだゾ、それ」
🐊「貴様、マレノア様を知らないのか?かのお方は若様の……この茨の国の姫君であらせられる」
この夢の正確な年代はよく分かっていないが、シルバーとセベク曰く「まだマレウス様がお生まれになっていない時代の可能性がある」とのことで、セベクは明言を避けたが要するにマレノアはマレウスの母親であるらしい。
🦇「小僧の言う通りだ。現女王マレフィシア様の一人娘であり、俺たちの主であり、『野ばら城』の城主でもある」
⚔「『野ばら城』?竜の都にある王城、『黒鱗城』ではなく?」
🦇「茨の国の南に広がる湿地、翠が原。その中央で、珊瑚の海や風鳴き渓谷の向こうからやってくる不届き者に睨みを効かせている城塞……それが『野ばら城』だ」
🪓「マレノア様は、我ら近衛隊を指揮するこの国の守りの要でもある。我ら王宮近衛隊は、マレノア様から『銀の梟』への要求書を届ける使節団として、今日、野ばら城から出立したところだ」
🐊「要求書、というと……」
🪓「決まっているだろう!!我らの国での『銀の梟』による無礼な振舞いを即刻やめよとの最後通牒だ!!」 - 15125/07/03(木) 17:49:15
王宮近衛隊の第一の目的は「東の砦にマレノア王女からの書状を届けること」。しかし、彼ら以前にも書状をもって東の砦に向かった使節団が次々と行方不明になっている、とリリアは浮かない顔でため息をついた。
彼らは飛行術を使わずに陸路で行軍しているのは、道すがら行方不明になった仲間を探し、妖精に無断で採掘行為を繰り返す『銀の梟』を見つけ次第駆逐するため、なのだそうだ。
🦇「なぁナイトレイブンカレッジの使者ども。この俺に学校なんぞに通ってる暇があるように見えるか?悪いことは言わねぇから、さっさとテメーらの学校に帰れ」
⚔「……いえっ!こうしてお話をうかがったことで、ヴァンルージュ殿にナイトレイブンカレッジへご入学いただきたい気持ちが、より一層強くなりました」
送別会冒頭の挨拶でリリアが述べた「この学園で過ごした時間は若さ溢れる青春の日々だった」との言葉には、一切の誇張はないのだろう。シルバーは思わず口をついて出たといった風に、リリアに是非学園に来てほしいと熱く語り掛けた。
そのために、命の危険があってもリリアにくっついていくとも。
🦇「人間のことはよく知らんが……もしかしてナイトレイブンカレッジってのは、人間の中でもかなり変なやつが集まってんじゃねーのか?」
⚔「確かに、かなり個性的な者は多いです」
🐊「出身地も、種族も、文化も……多種多様だ」
⚔「だからこそ、毎日多くの学びがある」
🦇「はぁ……勝手にしろ。もう俺は知らん」
⚔🐊「「ありがとうございます!!」」
二人の熱さと頑固さにリリアは折れたようで、人間の随行に反対するバウルを「飯炊きと荷物持ちくらいにはなるだろ」と言いくるめて同行を許可してくれた。
最も、一切の責任はとらないので危険な状況になればその辺に放り出す、との忠告付きだったが。 - 16125/07/03(木) 18:08:15
🦇「俺は野ばら城のことが心配でたまらねぇんだ。さっさと仕事を終えて戻れるなら、妖精だろうと人間だろうと使えるものは何でも使うぜ」
🥦「残してきた王女様が心配ですよね」
🦇「心配?俺がマレノア様を?心配なのは姫じゃねぇ。野ばら城自体と俺の命だよ!」
絵にかいたような姫君を想像していた出久の言葉を聞いたリリアは、心底愉快そうに噴き出した。
リリア曰く、マレノアは茨の国を治めるドラコニア一族。夜の眷族の頂点と謳われるドラゴンの末裔で、近衛隊が束になってかかっても歯が立たないほど強いらしい。さらに、お転婆で、喧嘩っ早くて、わがままで、癇癪もちで、とんでもない性悪、とその性格を形容した。
🥦(アンナさんみたいな人を想像してたけど、どっちかというとミルコみたいな人なのかな?)
🧨(うちのババアとミルコを合わせたようなヤベェ奴ってことか)
リリアの言葉を聞いて、二人の脳内に女性の武闘派ヒーローとしては圧倒的トップの某ラビットヒーローの姿がよぎった。閑話休題。
🦇「物心ついて以来300年もあのお姫様には振り回されっぱなしだ。ま……あと2、3年は野ばら城で大人しくしていてくれそうなことだけが救いだな
。さすがの姫も、大事な卵が孵るまでは無茶しねーだろ」
「「卵っ!!??」」
🥦「ドラゴンの妖精って卵生なんだ!」ヒソヒソ
🧨「爬虫類だし当然っちゃ当然だが……よく考えりゃ糸車も歳いくつだ?」ヒソヒソ
妖精の生態など全く知らない二人がヒソヒソするのは置いておいて、リリアが驚いて固まったセベクたちに呆れながら説明してくれたところによると、ドラゴンの卵は親からの愛情と魔力を注がれないと孵らないため、この国で一番安全な場所でもあるマレノアの腕の中、つまり野ばら城にあるという。
🦇「ふぁ~あ……空が白んできやがった。俺はそろそろ寝るぜ。お前らもさっさと寝ろ。――夜の祝福あれ」
🪓「はい。ゆっくりお休みください。夜の祝福あれ」 - 17125/07/03(木) 18:16:38
⚔「聞いたか、セベク」
🐊「聞いたとも!!わ、若様がすでにお生まれになっているとは!あぁっ……ひと目でいいから拝見したい!若様の玉のようなお姿をッ!!」
🧨「玉のような姿っつーか、玉だろ」
マレウスがすでに誕生している、という話を聞いてセベクはテンションがおかしなくらいに高まっているが、反対にシルバーは頭を抑えて難しそうな顔をしている。
🥦「シルバーくん、どうかしたの?」
⚔「……おかしい。先程親父殿は、『物心ついたから300年』と言っていた。現実の親父殿は700歳だから、親父殿は400年ほど前の夢を見ていることになる」
🥦「400年前……」
⚔「しかし、『お世継ぎの卵はあと2、3年で孵る』とも言っていた」
🐊「はっ……そうか!確かにおかしいな。現実の若様のご年齢と、かなりの食い違いがあるぞ」
🧨「テメーらだけで話進めンな。結局糸車は今いくつなんだよ」
🐊「若様は、今年178歳でいらっしゃる!!」
*衝撃度
出久 dice1d99=50 (50)
爆豪 dice1d25=12 (12)
- 18二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 18:27:28
リリアショックがあったからか
なんかもうそういうもんと受け入れつつあるな - 19125/07/03(木) 18:53:13
🥦「178歳!?……でも700歳と比べるとものすごく若く感じるぞ」
😺「ふなぁっ!?ツノ太郎、すっげー爺さんじゃねーか!」
🐊「失礼な!長命なドラゴンにおいては、まだ非常にお若くていらっしゃるのだぞ!」
🧨「アイツが若くてもジジイでもこの際関係ねぇわ。要するに、200年くれぇ時間が食い違ってるってンだろ」
🐊「ふむ。長命な妖精族は往々にして時間の流れに頓着がないとはいえ……流石にズレが大きすぎるな」
⚔「お前もそう思うか。マレウス様の誕生ほど重要な出来事ともなれば、親父殿の記憶違いとも考えづらい」
茨の谷での出来事に関して出久と勝己は何も知らないためお手上げ状態なのだが、シルバーとセベクも腕を組みながら眉間に皺を寄せている。
⚔「……うぅん……親父殿もマレウス様も、あまり俺の前では昔の話をしなかったからな。実家の本棚や、学園の図書館にはあまり茨の谷の歴史に関する書物はなかったし……セベク、お前はなにか知らないか?」
🐊「お祖父様からはドラコニアご一族や、リリア様をはじめとした英雄の武勇伝は多く伺ったが……マレノア様……マレウス様のご両親がお隠れになったことに関しては、多くを語らなかった。そのことに触れた書物もほとんどない。それに現代では、野ばら城のある翠が原は茨の谷の領土の外だ」
⚔「混乱の時代が長く続いていたというからな……一体なにがあったというんだ……?」
シルバーは17歳でセベクは16歳。リリアとマレウスとはあまりにも歳が離れていて、彼らの故郷の話といえど分からない話も多いらしい。
今手元にある材料で推理を立てても実のある結論は出ない。だが、出久と勝己はマレウスたちや茨の谷についての知識が不足しているため、就寝前に軽くシルバーたちと会話をすることにした。 - 20二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 19:05:59
このレスは削除されています
- 21125/07/03(木) 19:07:49
火の番のついでに、出久たちは焚火の傍に腰を下ろした。
😺「そういえばよぉ、シルバーはたまにリリアのこと『オヤジドノ』って呼ぶけどどういう意味なんだゾ?あだ名かなんかか?」
⚔「リリア先輩……親父殿は、孤児だった俺を拾って育ててくれた。あの方は、俺の父親なんだ」
😺「へっ?チチオヤって……父親ぁ!?」
🧨「マジで親父なんかよ……」
*衝撃度
爆豪 dice1d100=3 (3) (グリムが70くらい)
- 22二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 19:32:40
これはNRCのトンチキに慣れすぎたかっちゃん
- 23125/07/03(木) 20:13:37
⚔「混乱させてすまない。学園内では気をつけて『リリア先輩』と呼ぶようにしていたんだが……実家にいた頃の癖でつい『親父殿』と呼んでしまう」
🧨「別に混乱してねェ。アイツなんかそういう貫禄あったしな。テメーもあんま驚いてねェみてーだな出久?」
🥦「……実は僕、送別会から出てるときにシルバーくんとマレウス先輩の会話を聞いちゃったんだ。盗み聞きなんてするつもりなかったんだけど……ゴメン」
⚔「謝る必要はない、ミドリヤ。マレウス様が親父殿の送別会に少しでも早く戻られるよう、ともに探してくれたんだろう?むしろ俺から礼を言わなければならないことだ、ありがとう」
*好感度変動
出久→シルバー(71) + dice1d10=6 (6)
シルバー→出久(89) + dice1d10=10 (10)
🐊「人間には馴染みがないだろうが、茨の谷では年若い見た目をしたものが年長なことは珍しくないからな。僕の母も妖精で、父より若く見えるが父よりも年上だ」
😺「ふな……でも、たしかに400年前のリリアと今のリリア、見た目は全然変わってねーよな」
⚔「見た目は同じだが、俺の知っている親父殿とはかなり違う。俺は本当に……何も知らなかったんだな」
パチパチと薪を弾いて燃える焚火をみながら、シルバーが遠い目をした。
🥦「……戦時中の話は残酷なことや辛いことも多いと思うから、子どもである君に聞かせたくなかったんじゃないかな」
⚔「そうなのだろうか……。親父殿……」
話の途中、不寝番の近衛兵から「騒がしくするな」と注意を受け、その晩は一旦宛がわれた天幕に戻って睡眠をとることになった。
😺「むにゃむにゃ……スピー」
🥦「夢の中で寝るって変な感じだね」
🧨「妙ちきりんな現象ばっかでなんも驚かなくなってきたわ」
*安眠レベル
出久 dice1d100=55 (55)
爆豪 dice1d100=78 (78)
- 24125/07/03(木) 20:27:11
夜が明けて、予定通り正午の頃に東に向けて出発した近衛隊に出久たちも同行した。
道中で遭遇した『銀の梟』の団員たちを追い払いながら数時間かけてたどり着いた風鳴き渓谷は、狭い岩の間を雷鳴山脈から吹き下ろす強い風が通り抜け、絶えず唸り声のような音が鳴っている自然の要塞だった。
そこで大型の機械を使って山林の開拓を行っていた『銀の梟』たちを見つけたリリアたちは、「キシャアア!!」と威嚇声を上げながら奇襲を仕掛けて彼らを追い払った。
🪓「な、な、なんだったのだ、あの鉄のゴーレムは!?」
⚔「……この装甲車、ショベルカーのような装備がついている」
🐊「『鉄の者』たちはこれを装甲掘削機と呼んでいたな。ということは、おそらく土木作業用の機械だろう」
🪓「土を掘り返すためのからくりということか?面妖な!」
魔法とともに生きる妖精たちは機械文明に疎いようで、リリアとバウルは『銀の梟』たちが操っていた装甲掘削機を化け物を見るような目で見た。
🦇「全身ひでぇ鉄と油の匂いだ。水浴びしねぇとやってられないな……。渓谷を抜けたら、小さな湖がある。今日はそこで野営としよう」 - 25125/07/03(木) 20:38:09
湖畔に野営地を展開し、軽く食事を済ませた後、情報収集のために出久たちは再びリリアたちの近くの席に陣取った。
⚔「ゴホン!あの、おや……ヴァンルージュ殿。少し質問をいいでしょうか。『鉄の者』や近衛兵がたびたび口にする『ヘンリク』や『夜明けの騎士』とは何者なんですか?」
行軍の最中、採掘を行っていた『銀の梟』たちの会話が聞こえてくる機会が何度かあり、『ヘンリク』と『夜明けの騎士』は特に何度も聞いた名前だ。
リリアはシルバーの質問にあっさりと答えてくれた。
曰く、『ヘンリク』は『銀の梟』の首領の人間で、強欲で下品で樽のように大きな図体の人物、とのことだ。
『夜明けの騎士』は『銀の梟』の警備隊隊長で、リリアでも一目置くほどの実力者なのだそうだ。ついでに「噂じゃとんでもない美形らしい」との情報も付け足してくれた。最も、普段は鉄の面をしているそうで、リリアはその素顔を見たことはないそうだが。
🦇「まぁ、俺はヤツとやり合ったことはないがな。ヤツは普段東の砦を守っててめったに渓谷の西には現れない。1度お相手願いたいと思っているんだが」
🧨「東の砦……っつーことは、書状を砦に届けにいくときにソイツと戦闘になる可能性もあンだな」
🦇「そういうことだ。……最初にマレノア様の書状を持って砦に向かったレヴァーンも、ヤツと鉢あったんじゃねぇかって噂されてる」
😺「レヴァーン?そいつはどんなヤツなんだゾ?」
🦇「竜眼公レヴァーン。この国の外交任務の要だった男の名前だ。レヴァーンはマレノア様の目であり、手足であり……夫でもあった」 - 26二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 21:02:07
かっちゃんぐっすり寝るときはちゃんと寝てんの偉い
- 27125/07/03(木) 21:04:49
🦇「行方知れずになった使節団を率いていたのもレヴァーンだった。ヤツは貴族だったし、特使としてこれ以上ない男だったからな。『すぐに戻る』と嫁と卵を残して野ばら城を飛び立ったっきり……本当に、どこをほっつき歩いているんだか」
🥦「……子どもがいるのに父親に頼れないとなると、王女様も心細い思いをしているかもしれないですね」
🦇「フッ。アイツにも殊勝な心があればな」
🐊「……ウッ、ふぐっ……!ウゥッ!うぉおおぉ~~~~ッ!!」
🧨「なんだテメェうっせェな!急に泣きわめくなや!」
🐊「これが涙せずにいられるかッ!残された卵様と姫様とリリア様のお気持ちを考えたら……!あんまりですッ!あんまりすぎます!!」
この夢に尋常でなく感情移入しているセベクは、リリアの話を聞いて激しく涙を流した。
🦇「こんな時代だ。よくあることだろ。そのうちひょっこり帰ってくるかもしれねぇし……。だからそれまで、俺は命に替えても姫と卵を守らなきゃならねぇ。約束したからな……あいつと」
口では悪く言うものの、リリアが主を想う気持ちは本物で、「守らなきゃ」と呟くリリアの目には鋭く強い光が宿っていた。
⚔「親父殿……」
🦇「おい、だからそのオヤジってのをやめろ。俺はまだ300歳になったばかりだぞ。……長話が過ぎた。お前たちを見てると、昔を思い出していけねぇな。俺はもう寝る。お前らもさっさと寝ろ」
リリアはぶっきらぼうに言い捨てて立ち上がると、自分の寝床がある天幕へと引っ込んでしまった。
🐊「ウッ、ウッ……グスッ……」
⚔「そろそろ泣きやめ、セベク。悲しいのはわかるが……目が腫れて明日に響くぞ」
🐊「これは悲しみの涙ではない!怒りだ!!人間さえ、『銀の梟』さえいなければ、若様のお父上は……!」
セベクは昨晩の野営地でマレウスの両親について「お隠れになった」という言葉を使った。レヴァーンはこの先も戻ってこなかったのだ。
🐊「僕たちの知っている若様に、ご両親はいない。今“ここ”ではご存命である、マレノア様もだ!!なにゆえ若様はご両親を失わねばならなかったのだ!答えろシルバー!」
⚔「はぁ……俺に当たるな」
🐊「僕はもう、傍観しているだけなど耐えられない。若様のためにも、リリア様と共に命を賭してマレノア様をお守りしなくては!」
*口を挟むのは dice1d3=3 (3)
1.出久
2.爆豪
3.シルバー
- 28125/07/03(木) 21:19:20
⚔「セベク。何度も言うが、これは夢だ。ここで何かを成してもそれは幻で、現実は変わらない」
🐊「ならば……現実に戻らなければよいのではないか?」
マレウスに寄り添おうとする気持ちが強すぎるあまり、セベクは危険な結論を打ち出した。
🥦「セベクくん、何を言ってるんだ!」
🧨「寝言は寝てシね、戯言垂れ流してんじゃねーよクソが」
😺「そうなんだゾ!オレ様たち、夢から覚めるためにココに来たんだゾ!」
🐊「現実に戻らなければ、これから夢の中でお生まれになる若様は、お母上と共に暮らせる。夢の中なら、シルバー、お前もリリア様と共に生きていけるのだ。これ以上があるか!?」
⚔「それはっ……、いや、しかし!」
この夢があまりにも生々しい戦争の気配に満ちているから忘れかかっていたが、ここはマレウスが見せている甘い夢の中。夢を見る者が望めばどんな願いも叶う、幸福な誘惑に満ちた世界だ。セベクの言葉が、父を喪う悲しみに耐えているシルバーの心を揺さぶる。
😺「ふなっ!?黒いぐじゅぐじゅしたヤツが湧き出てきたんだゾ!」
🥦「これは『闇』……!?どうして急に……!」
⚔「……セベクの感情を嗅ぎつけて、より深い眠りに落とそうと現れたか!セベク、武器をとれ!『闇』に取り込まれるな!」
どこからともなく現れた不定形の『闇』は、セベクの周りに集っていく。
🐊「このまま夢の中にいれば……若様は……!」
『闇』は流れる水のようにあっというまにセベクを取り囲み、取り込んでしまった。
⚔「今ならまだ引き戻せる!さんにんとも、力を貸してくれ!」
🥦「もちろんだ!」
🧨「言われンでも!」
😺「ったく、世話がかかるヤツなんだゾ~!」
*霊素ダメージロール
出久(11) dice1d5=3 (3)
爆豪(7) dice1d5=2 (2)
グリム(8) dice1d5=4 (4)
シルバー(4) dice1d5=1 (1)
セベク(15) dice1d5=2 (2)
- 29125/07/03(木) 21:32:24
🧨「チッ!!次から次へと湧いてきてうざってェな!!」
『闇』は際限なく湧き続け、勝己がいくら爆破で追い払っても尽きる気配がない。
魔法と違って魔力残量やブロット許容量という制限こそないものの、勝己の『爆破』はあくまでの身体機能の一つであって、限界が存在する。掌の汗腺から分泌するニトロのような汗を由来としている以上、勝己の体内の水分が尽きればそこで打ち止めだ。
🥦「『闇』が相手だと僕は戦力になれない!後ろから戦況全体を見てる!」
『闇』はドロドロとした不定形の物質で、下手に物理攻撃をしかけるとかえって纏わりつかれてしまう。事前と出久は一歩下がって指揮を執る役割を担うことになった。
🥦「っ、シルバーくん!君の服の中、何かが光ってる!」
⚔「この光は……親父殿にもらった指輪?」
シルバーの服から零れたのは、セベクの夢でマレウスから逃れる際に見たものと同じ、オーロラ色の光だった。シルバーは首元のチェーンを手繰り寄せると、金色の地金の指輪を取り出した。指輪には曇りひとつないオーロラ色の宝石がついており、眩い光はそこからあふれ出している。
『闇』はオーロラ色の光を嫌うような動きで避けた。
⚔「指輪の光に触れている部分から、力がみなぎってくる。なんなんだ、この指輪は……?」
😺「なんだっていい!早くアイツらを追っ払うんだゾ!」
⚔「ああ!――光よ、『闇』を追い払え!」
シルバーが呪文を唱えると、オーロラ色の光がセベクの方に向かって伸びていった。セベクを取り込んでいた『闇』は、蜘蛛の子が散るような動きでセベクから離れていった。
*最初に口を出すのは diec1d3=
1.出久
2.爆豪
3.シルバー - 30125/07/03(木) 21:34:10
- 31125/07/03(木) 21:47:56
⚔「セベク!無事か!?」
🐊「うう……僕は……?闇に取り込まれていたのか……」
⚔「セベク。確かにお前の言う通り、このまま夢の中にいれば辛い想いをせずに済むだろう。でも……それでも。俺たちはこの夢から脱出しなくてはいけないんだ」
⚔「眠らされている学友たちの未来はどうなる。お前の帰りを待つ家族はどうなる!そして何より……たったひとり、孤独に夢の世界を紡ぎ続けるマレウス様はどうなる!!」
🐊「…………!」
普段はもの静かなシルバーが強い声で諭すのを聞いて、セベクは目を丸くした。
🐊「だが、リリア様はこの眠りから覚めれば……」
🥦「だからこそ、マレウス先輩を止めなくちゃ。大事な人が間違ったことをしていると知ったら、リリア先輩は苦しむはずだ。……これは受け売りだけど、死ぬ間際にどんな表情だったが大事だって、僕の師匠は言ってた。きっとマレウス先輩がこんなことをしているって知ったら、リリア先輩は悲しむと思う」
出久は『OFA』の継承者が集う精神世界で、孫である弔の凶行に胸を痛めていた七代目の姿を思い出した。彼女は『OFA』の継承者として、最愛の息子の子であるはずの弔を「ころす覚悟はあるか」とまで出久に聞いてきた。そうまでして彼を止めたかったのだ。
大切な人が多くの人を踏み躙っているという事実はそれほどまでに耐え難く、人の心を苦しませる。きっとリリアも同じだ。
⚔「ミドリヤの言う通りだ。親父殿なら絶対に、今のマレウス様を諫めるだろう」
🐊「それは……きっと、そうだろうな」
出久とシルバーに諫められ、セベクは俯いた。 - 32二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 22:09:38
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- 33125/07/03(木) 22:10:50
🧨「大体よォ、早く止めさせねぇと魔法災害とやらを引き起こした糸車の立場も危ねェんじゃねーの?のんびり夢なんか見てる暇なんかねェだろ」
🐊「なっ……!!」
🧨「テメェが盲信しとるヤツを、他の奴も全員盲信してるわけじゃねェ。いくら糸車が茨の谷の王族だっつっても、あの学園にゃライオン野郎みてェな別の国の王族もいるし、生デニムみてェな世界的に支持を集めとる芸能人もおる。下手すりゃ国際問題だ。いくら緘口令敷かれたって、情報発信できるヤツがいくらでもいる現代じゃ情報統制にも限界がある。世界中からヘイト買うのは避けらンねェぞ」
🐊「……それはッ」
🧨「糸車がどんだけ強い魔法士なんだか知らねェが、完璧なヤツなんかいねーよ。イエスマンで周りを固めた指導者ってのは腐っていくもんだ。腹ァくくれ。もしテメェの王が完璧だって言い張ンなら、テメェが信じてんのは糸車じゃなくて、自分の妄想が作り上げた偶像だ」
⚔「セベク。臣下の役目は、ただ王を肯定し従うことだけではない。ときには諫めることも大切だ。お前も同じことを親父殿に教わったはず。違うか?」
🐊「……お前たちの言う通りだ、バクゴー、シルバー」
セベクは俯いていた顔を上げると、涙を手の甲で拭って立ち上がった。
🐊「僕はずっと迷っていた。若様に逆らってしまったことを。怒りと悲しみを込めて僕を睨んだ若様の瞳が……目に焼き付いて離れない。まだ、迷いはある」
🐊「だが……僕は……僕の夢は!願いは!若様にとって誰より良き臣下となること!!この夢は、夢の中では叶えられない。僕が命をかけてお仕えしたいのも、尊敬しているのも、現実の若様ただおひとり」
🐊「ご両親がいらっしゃらない孤独に耐え、リリア様とともに歩み……ガーゴイルがお好きで、廃墟がお好きで、氷菓がお好きで……茨の谷の次期当主でありながらッ……民草とともに制服に身を包みっ、ナイトレイブンカレッジに通っていらっしゃる……現実の若様ッ、ただ、おひとりなのだ……!!」
涙声で、それでもセベクは力強く宣言した。
🐊「だからもう、夢に耽ることはしないッ!必ず現実の若様のもとへ馳せ参じてみせる!!僕はもう二度と迷わないぞッ……わかったか、シルバー!」
⚔「……ふ、お前らしいな。その言葉、違えるなよ」
🐊「ふんっ!お前に言われずともッ!……グス」 - 34125/07/03(木) 22:28:52
😺「やれやれ、セベクのヤツ、ようやく大声出す元気が出てきたみてーだな」
🥦「よかった。セベクくん、思い直してくれたみたいだね」
🧨「ったくよォ、とんでもねェクソ理論出してきやがって」
🐊「情けないところを見せたな。魔獣……いや、グリム。それからミドリヤとバクゴーも。迷惑をかけて、すまなかった」
*好感度変動
出久→セベク(現在値4) +dice1d20=20 (20)
セベク→出久(現在値41) +dice1d20=13 (13)
爆豪→セベク(現在値10) +dice1d20=13 (13)
セベク→爆豪(現在値15) +dice1d20=2 (2)
😺「ふなっ?オメーが謝るなんて、空から槍でも降ってきそうなんだゾ」
🥦「あれっ?名前の呼び方……」
🐊「でっ……では、僕はもう休む!お前たちも早く寝ろ!」
セベクは早朝の鶏のような声量で「おやすみ!!!」と言い放つと、こころなしか赤くなった顔を背けて天幕に戻っていった。
🧨「てめ……俺ンときは無反応だったクセに……」ボソッ
😺「夜中にデケー声だすんじゃねーんだゾ!おやすみ!」
⚔「……あいつなりの照れ隠しと感謝だろう。誤解されやすいが、本当は状に厚い男だ。これからも仲良くしてやってほしい」
🧨「俺とコイツはもうすぐ元の世界に帰るから無理」
⚔「そ、そうか……無茶なことを言ってすまない」
🥦「かっちゃん!……別れがいつ来るか分からないけど、それまでは親交を深めたいって思うよ。もちろん、君ともだ」
⚔「ミドリヤ……ありがとう」
🧨(コイツの真に受けがちなクソボンヤリ花畑なとこ、なんか轟を思い出すな……)
😺「ふぁ~あ……いっぱい歩いて、戦って、もうクタクタだぁ~」
🥦「そうだね、明日に備えてもう寝ようか」
🧨「夢の中なのに眠って疲れをとるってのも意味不明だけどな」
グリムが大きな欠伸をしたので、出久たちもオンボロ寮の3人で宛がわれた天幕に戻ることにした。
- 35二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 22:36:18
このレスは削除されています
- 36125/07/03(木) 22:57:01
⚔「……ミドリヤ、寝る前に少しだけいいか?」
🥦「うん、もちろんだよ」
天幕に戻ろうとしたところで、出久だけシルバーに呼び止められた。シルバーは少し硬い表情で佇んでいる。
⚔「…………」
🥦「どうかしたの?」
⚔「俺も、セベクの心に一瞬だけ心が揺らいでしまった。このまま夢の中にいれば、親父殿もマレウス様も……と」
シルバーは罪を告白するようか、重苦しい声色で言葉を絞り出した。その表情には陰がかかっている。
🥦「……幸せな夢に心が揺らがない人はいないよ。僕、実は前にも一度こういう現象に巻き込まれたことがあるけど……他の人に叱られるまでは夢に溺れてた」
ダークマイトの要塞で眠らされたとき、一瞬だが出久も幸福な夢に浸っていた。ただオールマイトという偉大なヒーローを無垢に信じるばかりでいられた、オールマイトの抱える苦悩もヒーローが背負う責務の重さも重圧も何も知らないままでいられた、無責任で幼稚な夢に。
出久が目を覚ますことができたのは、『OFA』の初代が導いてくれたからにすぎない。
⚔「もし俺が夢に縋り、『闇』に飲み込まれそうになったら……ミドリヤ。どうか俺を止めてほしい」
🥦「……わかった、約束する」
⚔「……ありがとう」
出久が返事をすると、シルバーは詰めていた息を吐いて表情を緩めた。
⚔「晴れた日の夜は良く冷える。暖かくして寝るといい。おやすみ」
🥦「おやすみ、シルバーくん」
シルバーと手を振って別れ、出久は天幕に戻った。
*かっちゃん dice1d2=1 (1)
1.もう寝ている
2.まだ起きている
- 37125/07/03(木) 23:02:18
- 38二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 06:22:37
かっちゃん流石に寝てるか
優しい夢はね、逃げにくいもんだよ…… - 39二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 11:24:37
ほしゅ
- 40二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 17:45:36
⭐️
- 41二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 22:59:27
保守
- 42二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 06:41:01
ほしゅ
- 43二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 14:26:26
幸せな夢は本当に幸せなんだよ……
ただ今の自分を築いた色んなものを振り返って本当に幸せか、ってのは難しいからな…… - 44二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 14:32:28
何度聞いてもヴィル=生デニムにクスっとくる
- 45二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 14:57:23
最初は赤ベルトだったのにいつの間にか生デニムになってたね
色落ちもシワもないピカピカ生地のデニムってことだろうけど、ヴィル様的には複雑そう
多分喩られるならシルクとかの方が嬉しいだろうし - 46二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 18:46:13
かっちゃん語的にはだいぶ評価されてるからこそのあだ名なんだろうが、いかんせん伝わらないからな…
- 47二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 18:46:26
今リスのダイナーイベントやってるけど二人にもC&Dでバイトして欲しい
本音を言うと野生のリスに翻弄される二人が見たい - 48125/07/05(土) 18:47:52
翌日、朝日が昇るとともに行軍が再開し、出久たちは正午を回った頃に目的地である東の砦へとたどり着いた。
🐊「ついにたどり着いたぞ。ここが……『銀の梟』の本拠地か」
🪓「キョロキョロするな!私たちは茨の国からの要求書を届けに来た使節団。臆せず堂々としていればいい」
いかに敵陣といえど、王から遣わされた正式な使節団なのだから攻撃を恐れることは無い。警戒心を露わにしてはかえってなめられる。バウルの言うことは何も間違ってはいない。
砦の空気は、いたいほどに静まり返っている。
*二人の勘 (51以上で成功)
出久 dice1d100=73 (73) +20 (経験補正)
爆豪 dice1d100=91 (91)
- 49125/07/05(土) 19:16:32
――次は、君だ。
耳に痛いほどの静けさの中、出久の脳裏に嫌な声が蘇った。敬愛するオールマイトの声ではない。彼の言葉を冒涜しようとした、灰堀森林の洋館で聞いた魔王の声だ。
出久の背を冷たいものが駆けあがっていく。
🧨「妙だな……外じゃ蟻みてぇにウロウロしてた『銀の梟』の気配が1人も――」
🥦「――みなさん、今すぐに砦を出て!!!これは罠だ!!!」
ギィイーー、バタン!
勝己が違和感に気づき、出久が反射的に撤退を呼びかけるも、言い切る前に砦の扉が重い音を立ててひとりでに閉まってしまった。
🦇「クソッ、開かねェ!……この足音は!」
砦の奥から重低音が近付いてくる。エンジンが駆動し、キャタピラが回る音だ。
入口の付近に閉じ込められた出久たちめがけて、巨大な重機が突進してきた。装甲掘削機に似ているが、前面に取り付けられた禍々しい形状のドリルは、明らかに土を掘るためではなく人を屠るためのものだ。
🦇「総員構えろ!」
🧨「卑怯な手ェ使いやがって!!」
*霊素ダメージロール
出久(14) dice1d5=3 (3)
爆豪(9) dice1d5=5 (5)
グリム(12) dice1d5=1 (1)
シルバー(5) dice1d5=1 (1)
セベク(17) dice1d5=3 (3)
- 50二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 19:32:21
シルバーさん????
ずっと言いたかったけど耐えてたけどダメージ🎲運凄いね?? - 51125/07/05(土) 19:38:06
巨大重機は防魔素材が使われているのか、真っ先に飛び出したリリアの魔法を弾いた。
🧨「テメェら邪魔だ、俺が木っ端微塵にしたらァ!!!――徹甲弾・機関銃(A・P・ショット・オートカノン)!!」
BOOOM!!BOOOM!!勝己が乱れ撃ちにしたニトロの汗の珠が弾け、重機の前進を食い止める。しかし、クラスター程の威力は出ず、盾を備えた重機はしぶとくその場に居座り続けた。かといってクラスターを放てば、ドリルと正面衝突してミンチになるのは勝己の方だ。
🥦「ヴァンルージュさん、機械は駆動部を撃ち抜けば動きが止まります!かっちゃんが動きを止めている間に、キャタピラの付け根を狙ってください!!」
🦇「あ?キャタピラってどれだよ!」
🥦「脚部のクルクル回っている部分です!!今なら守りも薄い!」
🦇「チッ、なんで俺が人間の指示なんか……キシャアアッ!!」
文句を言いながらもリリアは合理的で、自身に機械の知識が皆無であることを受け入れて出久の指示通りに攻撃魔法を撃ち抜いた。
魔導エンジンを破壊された重機は駆動力を失い、動きを停止した。
😺「ひぃ、はぁ……た、倒したか?」
⚔「そのようだ……みんな、無事か?」
勝己の横から魔法攻撃で助力していたグリムとシルバーが息を吐いた。
ギ、ギギ。
そのとき、まだ完全に死んだわけではなかった重機が、「目の前の者を蹂躙する」というプログラムにしたがって、自爆を起こした。
🧨「――!!!」
🦇「!!!危ねぇっ!!!」
勝己は咄嗟に近くにいたグリムの首根っこを掴んで胸の中に庇い、次いでシルバーを地面に伏させようと腕を伸ばした。それよりも早く、リリアが前に出て、勝己が背中で受けるはずだった分の爆撃まで、小さな体で受け止めた。 - 52125/07/05(土) 19:51:35
⚔「親父殿!!!」
🧨「ジジイ!!」
黒焦げになってその場に落ちたリリアを、シルバーが受け止めた。
⚔「そんな!しっかりしてください!」
🪓「どけ、人間!右大将殿、この魔法薬を!」
幸い、リリアは防衛魔法で結界を張っていたのか、致命傷は免れてまだ息があった。バウルが差し出した小瓶から得も言われぬ色の液体を飲み干せば、リリアは「痛ってぇ」と背中を擦りながら上体を起こせる程度に回復した。
🪓「安静に!あなたといえど、この傷では……!どうしてこのようなことを!」
🦇「……俺が知りてえよ、クソ……シルバーがやられると思ったら、勝手に体が動いてた」
🪓「あなたの忠誠は、命は、マレノア様に捧げられたはず!なのに、どうして!なぜよりによって脆弱な人間を庇って……!」
🦇「まったくだ。俺らしくもねぇ……」
⚔「ヴァンルージュ殿……」
昔の夢を見ていようとも、リリアのシルバーに対する愛情は確かに存在しているようで、リリアは記憶と齟齬が出ようともシルバーを庇うことを選んだ。
シルバーの目が涙で潤む。
そのとき、砦内を探索していた近衛隊の先兵が、「ヘンリクも『夜明けの騎士』もここにはいない」という情報を持って戻って来た。
さらに、伝令の者がバウルのもとへやってきて、「野ばら城がヘンリクと『夜明けの騎士』が率いる『銀の梟』どもに包囲されている」という最悪の事態を報せた。 - 53125/07/05(土) 20:10:31
報せを聞くなり、リリアはボロボロの体で立ち上がって「転移魔法が使える隊員を呼べ!」と叫んだ。
それが最速で野ばら城まで戻れる手段だが、バウルが制止した。曰く、空間転移の魔法は負担が大きく、重傷を負ったリリアでは長距離の空間転移には耐えられないとのことだ。
リリアは食い下がったが、相手に『夜明けの騎士』がいるからこそ右大将であるリリアが戦えない状態では話にならないと諭され、リリアは渋々頷いた。
🪓「往還士は動ける隊員を大至急野ばら城へ転移せよ!右大将殿と私は陸路にて帰城する!」
バウルの一喝で、近衛隊たちがキビキビと動き始めた。バウルは出久たちのもとへやってくると、「貴様らは降伏するがいい」と言葉をかけた。
🪓「……我々の任務は失敗だ。右大将殿が貴様らに同行を許した時とは、状況が何もかも変わった。行け。右大将殿が守ってくださったその命、無駄にするな。第一……人間である貴様らには、『銀の梟』と戦う理由などないだろう」
出久たちは耳が丸い。『銀の梟』に助けを求めれば、きっと同族として保護される。バウルはそう判断したのだろう。
だが、ここはリリアの夢の中。夢の主であるリリアから距離をおけば、夢の領域から外れて『闇』に飲み込まれてしまう。
なによりも、リリアを見捨てるという選択肢が毛頭ない者たちがいる。
⚔「俺はヴァンルージュ殿が守ってくれなければ、命を落としていたかもしれない。彼は命の恩人です。……なんとしても生きていてほしい。理由など、他に必要ありません。人間か妖精かは……関係ない」
🪓「野ばら城まで駆けつけるのは生半可なことではない。貴様らを気にかけている余裕などないぞ」
🐊「ご心配には及びません。僕らの師匠の教えに恥じぬ働き、ご覧にいれましょう!」
🧨「護衛っつったらヒーローの専門分野だわ。いらねェ心配すんな」
🥦「魔法の力はありませんが、緊急事態には対処できます。どうか同行させてください」
バウルはため息をつくと、「ならば好きにするがいい」とリリアの護送に同行する許可を出した。
その表情は柔らかく、出会った当初の憎き人間として出久たちを警戒していた鋭さはなかった。 - 54125/07/05(土) 20:16:27
そうと決まれば、護送に必要な物資を集めなければならない。移動手段としての箒、リリアのための医薬品や替えの包帯、そして食料。
セベクが「砦の地下には洗濯室や厨房があることが多い」と地下の探索を発案すると同時に、地下へ続く階段の向こうからガタッと物音がした。
⚔「今の音は……親父殿たちを狙う『鉄の者』か?」
🐊「ふん。お祖父様たちの手を煩わせるまでもない。僕たちが成敗してやろう」
石造りの階段を警戒しながら降りていくと、突きあたりに一枚の扉があった。
*聞き耳ロール (1.成功、2.失敗)
出久 dice1d2=1 (1)
爆豪 dice1d2=1 (1)
- 55125/07/05(土) 20:35:47
🧨「……!待て、突入すんな」
🐊「はぁ?何を言っているんだバクゴー」
🥦「セベクくん。扉の向こうにいる人たちには戦意がないみたいだ。……命乞いの声が聞こえる」
🐊「……確かに」
リリアに縁深いセベクとシルバーに比べて冷静だった出久と勝己は、出久たちの足音を聞きつけた扉の向こうの者たちが「命だけは」という震えた声に気づいた。
🥦「僕が最初に部屋に入るよ。魔力もないし、相手の人も安心しやすいだろうから」
🐊「しかし……それでは万が一のときに貴様が危なくなるのではないか?」
⚔「それなら、俺がミドリヤの傍に居よう。何かあればすぐに防衛魔法を展開する」
😺「セベクはデカくて威圧感あるし、バクゴーは目つきが悪すぎて顔が怖ぇからな。にゃはは」
🧨「誰の目つきが悪ィってかこのクソ狸」
😺「まさに今のオメーなんだゾ!」
出久は優しく扉をノックして、ゆっくりと開いた。扉の向こうは厨房になっており、奥の方に身を小さくした料理人たちが震えていた。
「ヒィッ!い、命だけは、命だけはお助けください!」
「私たちはただの雇われ料理人で……えっ。ああ、なんだ!あなた様でしたか。驚かさないでくださいまし!」
出久が声をかけるまでもなく、料理人たちは扉をあけて入って来た出久とシルバーの姿を見るとほっと緊張していた体の力を抜いて安心したような笑みを浮かべた。彼らの視線は出久の一歩後ろにいるシルバーに注がれている。
「もう妖精どものやっつけてご帰還されたんで?いやぁ、さすがです!」
⚔「妖精を?あなたたちは何を言っているんだ?」
料理人たちはシルバーに親し気に言葉をかけたが、身に覚えのないシルバーは困惑をそのまま言葉にした。
料理人たちは人違いしていたことに気づくと、みるみるうちに顔を蒼くして再びガタガタと震えはじめた。 - 56二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 20:47:48
このレスは削除されています
- 57125/07/05(土) 20:48:57
「よく見て!この人、“あの御方”じゃないよ!お髪の色が違う!」
「他人の空似……じゃ、じゃあやっぱり茨の国の妖精?」
「よく見たら隣のもじゃもじゃ頭の人、全身傷だらけで厳めしいぞ!きっと抵抗する人間を何人も殴り殺してきたに違いない」
「お、おしまいだ……」
料理人たちは隣にいた出久の容姿に気づくと、その場で死を覚悟して泣き崩れた。
🥦「待ってください!僕たちはあなたたちに危害を加えるつもりはないんです!あと僕の傷はそういうのじゃなくて……」
⚔「探し物が見つかれば、すぐにここを立ち去るつもりだ」
声色や仕草から善人のオーラが滲み出ている出久とシルバーの姿を見て、料理人たちは再び緊張が解けていった。
パニックや戦闘になる可能性が限りなくゼロになった、と判断して、出久は扉の外で待っていたグリムたちに「入っていいよ」と合図を出した。
😺「箒だ!箒を出すんだゾ!ぐひひ!」
「ひっ、ま、魔獣が喋った!?」
🧨「オイ、こんなときに悪ふざけしてんじゃねぇぞクソ狸!!爆破されてぇンか?」
「な、なんか怖い顔の人も入ってきた!!?」
🧨「誰の顔が怖ェって?」ニッコリ
「「ヒィィッ!!」」
🥦「かっちゃん!……どうして君の作り笑顔ってそんなに威圧感があるんだろう」
グリムと勝己を見て震えがった料理人たちに、再びシルバーが「危害を加えるつもりはない」と宥めた。
⚔「怪我人をここから安全に運び出したい。そのために箒を探している」
「怪我人って……妖精だろ?」
⚔「……ああ。そうだ。あなたがたから見れば、敵……になるのかもしれない。だが……どうか、力を貸してもらえないだろうか」
シルバーの真摯な言葉が料理人たちの胸をうち、料理人たちの心が疑念と協力の間で揺れた。
ひそひそと話合う料理人たちの結論が出るのを待っていた出久たちだったが、「ぐう~~~~」という緊張感のない腹の虫が鳴く音が地下の厨房に響いて、料理人たちの視線が一斉にこちらに向いた。 - 58125/07/05(土) 21:08:51
腹の音の主はセベクだったが、空腹が移ったのか間髪入れずにグリムの腹の音も鳴った。
「……ボウズども、腹減ってんのか?それならさっさと言えってんだ!お前、パンとベーコンを包んでやれ」
先程まで怯えていた料理人たちが、テキパキと食材を包みはじめた。飲んでいきな、と大鍋から器にスープをよそって渡してくれた者もいる。
🥦「こんなに沢山……いいんですか?」
「俺たち料理人は、腹が減ってるヤツに飯を食わせるのが仕事なんだ」
「ヘンリクどもが急に出ていっちまって、食材が無駄になるところだったし、丁度良いや」
料理人たちは快活に笑って、包んだ食材と飲み水を渡してくれた。
⚔「ありがとう。恩にきる」
「………………本当に似てる」
⚔「え?」
🐊「おい、シルバー!無駄口を叩いていないでさっさと物置の場所を聞け!!」
⚔「あ、ああ」
料理人たちは誰かと重ねているのか、特にシルバーに対して親し気で、シルバーに物置の場所を快く教えてくれた。
🥦「ご協力ありがとうございました」
⚔「驚かせてしまってすまなかった。……どうか元気で」
必要分の食料を受け取ると、出久たちは料理人たちと手を振って別れ、厨房を出て上の階の物置へとむかった。
物置には大量の鳥籠が積まれており、鳩や梟が飼育されていた。
😺「なんだこの部屋?鳥がいっぱいいるんだゾ」
🧨「伝書鳥じゃねーの。『銀の梟』のヤツらを見ている感じじゃ、この時代にゃ無線が発達してねェみてーだったからな」
🐊「おそらくバクゴーの推察は合っているはずだ。この時代の人間は、遠方とのやりとりに鳩や梟を使っていたはず」
⚔「ひどく腹を空かせているようだ。もらったパンを少しわけてやろう」
出久と勝己には鳥の言葉など分かりもしないが、シルバーは鳥の鳴き声が訴える内容が分かったようで、パンを小さくちぎって鳥籠に配りはじめた。
🧨「オイ、鳥に餌付けしてる場合じゃねーだろ。さっさと箒見つけて――」
🐊「待て、この鳥……使えるのではないか?」
鳥に餌をやるシルバーを見て、セベクは妙案が思いついたとでもいうように手をポンと鳴らした。 - 59125/07/05(土) 22:21:54
🐊「おい、シルバー。やたらと動物に懐かれる貴様の特技が役に立つ時がきたかもしれないぞ」
*
出久たちは手に入れた物資をもってバウルとリリアのもとへ戻った。
シルバーがリリアの容態を聞けば、まだ戦える状態ではないが、砦柵の外で『銀の梟』が右大将を討ちとらんと準備を整えている、とバウルは応えた。
🪓「もはや一国の猶予もない。覚悟を決めて中央突破に打って出る他あるまい。私が先頭で未知を開く。お前たちは離れず後に続け!」
🐊「バウル様。そのお役目……どうか我らに任せてはいただけませんか?」
🪓「貴様らに務まるわけがない!あっという間に降り注ぐ鉄の矢の餌食になるぞ!」
🐊「ご心配には及びません。賭けではありますが……少々策がございます」
🪓「賭け、だと?そんなものに我らの命運を……」
🧨「この俺、大・爆・殺・神ダイナマイトが付いてンだから、賭けの勝率は100%だわ」
🪓「……なんだその珍妙な字(あざな)は!」
そうこうしている間に、伝令の者が「『鉄の者』が動き出した」という情報を伝えに走ってきた。
🧨「チンタラしてる暇はねェ、行くぞテメェら!」
リリアを安全なところへ護送しないことには、いつまでもマレウスの話を聞き出せる機会がこない。目下の目標はリリアの目的達成を助け、彼の時間に空きをつくること。
そのために、勝己は砦の外へと飛び出した。 - 60125/07/05(土) 22:38:28
砦の外には100人規模の『銀の梟』たちが取り囲んでいる。対して、茨の国の近衛隊は大半が転移しており、この場に残っている者は10人も満たない。
🐊「戦力差が大きいが、少人数だからこそ“奴ら”の助けがあれば逃げ切れるはずだ」
⚔「ああ。パンのお礼に“友だち”にも声をかけてくれると言っていた。彼らを信じよう」
🐊「バクゴー、貴様は“奴ら”を巻き込むなよ」
🧨「誰に向かって言っとンだ、余裕だわ余裕」
⚔「いくぞ……。……スゥー……」
――ピューーイ♪
シルバーの指笛の音が、鎧の兵隊がひしめく戦場に軽やかに響いた。
困惑する『銀の梟』たちめがけ、空からは鳩や梟が、森からはリスやウサギや鹿が、『銀の梟』たちを妨害しにやってきた。彼らはみなシルバーの呼びかけに応じてやってきてくれた“友だち”たちだ。
🐊「『鉄の者』たちが怯んだぞ!今だ!」
⚔「ありがとう、みんな!恩にきる!」
🐊「突破する!シルバーに続けーーー!!」
箒が足りずに陸路でいく近衛隊たちが、シルバーとセベクに続いて動物たちが開いてくれた道を突っ切っていった。
🥦「すごい、まるで口田くんみたいだ……いや、そんなことを考えている場合じゃない!グリム、箒の準備は良い?」
😺「い、行くぞ、イズク!オレ様にしっかり捕まってろ!」
グリムが操縦するやや危なっかしい箒に乗って、出久が先陣を切った。グリムの箒の操縦技術は怪しく、一人では暴走してしまう。出久が一緒に乗って重みを加えると多少安定するのだが、それでも軌道は蛇行する。
起動が読めないグリムの箒が『銀の梟』たちを攪乱しているうちに近衛隊たちが予定の空路を飛びぬけた。
「ぐぐぐ、逃がすか!弓、つがえー!」
🧨「こっちはもう体ァ温まってンだ、全部撃ち落としてやんよ!!!――“徹甲弾・機関銃(A・P・ショット・オートカノン)”!!」
茨の国の者たちへ向けて放たれた無数の矢を、爆破で飛び上がった勝己が全て迎撃していく。矢の雨はキラキラと瞬く爆破の光によって、灰と炭の雪へと姿を変えて戦場へと降り注いだ。 - 61125/07/05(土) 22:47:04
――ポカ。
矢を全て灰に変えたとき、勝己は後ろから誰かに頭を小突かれた。少し遅れて、大量の蝙蝠とともに空を飛ぶリリアの姿が目に入った。セベクとシルバーを初めとした陸路で進む予定の者たちも、蝙蝠に運ばれて一緒に空を飛んでいる。
🦇「このバカタレ!突っ走りやがって。これだからガキは嫌なんだ!そんなに無茶な攻撃魔法の使い方をしたら、あっという間にオーバーブロットするだろうが!」
🧨「ってェな!これは魔法じゃねーからオーバーブロットなんざするワケねェだろが!!」
🦇「……確かに、火薬の匂いもしねぇが魔力の匂いもしねぇな。どういうからくりだ?」
🧨「どうもこうも、ただの体質だわ!!」
🦇「……人間ってのは、そんな妙なヤツもいるのか」
下では動物たちの加勢が増え、『銀の梟』たちはまともに矢をつがえることもできない状態になっている。
🦇「……しかし、鳥やリスの援軍か。しまらねぇな……俺たちは夜の眷族だぞ。……だが、悪くねぇ。ははは!あばよ!間抜けな『鉄の置物』ども!」
愉快そうに笑うリリアの声を聞き、『銀の梟』たちが「ヴァンルージュだ!」と叫ぶ声がした。しかし、動物たちの妨害に遭って誰ひとり追いかけてくることは叶わなかった。
*
風鳴き渓谷を越え、長く険しい道を箒で飛んでいくと、野ばら城まであと少し、というところでバウルが下に倒れている妖精の姿を見つけて降り立った。
倒れていたのは転移魔法で先に野ばら城に向かった近衛兵で、野原はキャタピラーで荒らされて木も草もめちゃくちゃになっている。
彼はリリアの呼びかけで目を覚ますと、妖精語で「他の者は鉄のからくりと『夜明けの騎士』にやられてしまった」と途切れ途切れに話した。わずかに生き延びた近衛兵とマレノアは野ばら城に籠城している、とも。
🦇「ゆっくり休め。……夜の祝福あれ」
🦇「……さっさと行くぞ、野ばら城はすぐそこだ!」 - 62125/07/05(土) 23:07:58
再び箒で空路をいくと、間もなく緑に囲まれた白亜の美しい城が見えてきた。
牧歌的な美しい光景のはずだが、城どころか翠が原を埋め尽くすような無数の鉄の鎧の兵たちの存在が色濃く戦争の気配を滲ませていた。彼らの後ろには巨大な掘削機な投石器が何台も並んでいる。中にはローブを纏った者もおり、「他国からも魔法使いの頭数を調達したのか」とバウルが怒りを露わにした。
🦇「どうにかしてマレノア様と卵だけでも、あの城から助けださねぇと。だが、空間転移は使えない。卵の安全が保証できないからな」
⚔「東の砦と違い、包囲が厚い。どうやって切り抜けるつもりですか?」
🧨「『銀の梟』の兵はハッキリ言や雑魚だが、あんだけ数がいるとなると話は変わってくる。テメェが戦えるっつーならクラスターと全身爆破で道を開けなくもねぇが、それこそ賭けだ。俺が単騎で行って帰ってくる分にゃ余裕だが、『爆破』はどうしたって振動を伴うから卵の護送にゃ向いてねぇ」
🥦「…………」
🦇「飛行術での脱出も、魔法使いと弓の餌食になるだろう。となれば……野ばら城には、古い地下水路がある。確か、飛翼岳から流れる川に繋がっていたはずだ」
リリアが魔法で取り出した地図で出久たちに道順を説明していると、にわかに城の方が騒がしくなった。『銀の梟』たちが歓声を上げたかと思えば、光り輝く人物が城の前にかかった橋の上に進み出てきた。
🦇「あいつは……白亜の鎧、陽の光のような金の髪……。――夜明けの騎士!」
その姿を見た途端、シルバーが頭を抑えてふらついた。出久は素早く彼の肩を掴んて支える。
🥦「シルバーくん、大丈夫?」
⚔「わからない、急に、眠気、が……!」
🥦「……!!また服の中の指輪が光ってるみたいだよ」
出久の言葉でシルバーははじめて光に気づいたようで、チェーンを手繰り寄せて指輪を取り出した。
🐊「不思議な魔力を感じる。なんなんだ、その指輪は?」
⚔「わ……からない。親父殿は、『俺の両親が赤子の俺に託したものだろう』とだけ……」 - 63125/07/05(土) 23:23:42
「わっはっはっは!!籠城する妖精どもよ!我が『銀の梟』の旗が見渡す限り揺れているのが見えているか?貴様らはもはや、孤立無援。逃げ場はないぞ」
そのとき、魔法で拡声された騒々しい声が翠が原に響き渡った。
😺「コレ、夜明けの騎士の声か?」
🦇「いや、違う。喋っているのはその隣にいる男だ。……樽みてぇにデカい体、脂ぎった下品な声……あいつは…… 」
🐷「我こそは『銀の梟』が首領、ヘンリク・イシュトヴァーン!」
ヘンリク、と名乗った大柄な男は、城に向けて妖精たちの対応を一方的に罵って勝手な理屈こねて宣戦布告をした後、『プリンセス・グロウ』なる魔法石と野ばら城を明け渡すように要求した。
🥦「……なんて一方的な言い分なんだ」
🧨「クソムカつくな」
*ヘンリクへの憤りレベル
出久 dice1d100=8 (8)
爆豪 dice1d100=33 (33)
🐷「だが、我々も鬼ではない。貴様らと違ってな!ゆえに……貴様らにチャンスを与えよう」
🐷「姫と、我らが警備隊隊長、夜明けの騎士と一対一の
『決闘』を行うのだ!貴様が名誉をかけて『決闘』にのぞみ、勝利を掴んだならば……我々は城の包囲を解くと誓おう」
🐷「30分だけ考える時間をやる。よ~く考えることだな!わーっはっはっは!」
🪓「夜明けの騎士と『決闘』だと……!?ばかな!そんなもの、罠に決まっている!」
🦇「うだうだしてる時間はねぇ。野ばら城へ空間転移するぞ!」
城は目前、ここからの距離なら重傷を負っているリリアでも辛うじて転移魔法の負荷に耐えきれる。
出久たちはリリアの転移魔法で、野ばら城の中へと直接乗り込んだ。
- 64125/07/05(土) 23:24:50
- 65二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 23:49:09
全身爆破っちゃんが卵抱えて運んだら、振動もだけどかっちゃんってスピード出すときに回転しながら飛ぶから殻の中身が溶き卵になっちゃいそうだな
それ以前にマレノア様と人間的な相性悪すぎて雷5000発くらい落とされそうだけど - 66二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 00:35:08
このレスは削除されています
- 67125/07/06(日) 00:37:08
――眠れや 眠れ 愛し子よ♪
転移先の野ばら城の回廊には、女性の歌声が響いていた。我が子の安らかな眠りと幸福を願う歌詞がゆったりとした曲調に乗せて紡がれる、優しい歌だ。
⚔「!!この子守歌は……」
🦇「……まったく。歌なんか歌ってる場合か。こっちの気も知らねぇで。いくぞ、お前たち!」
リリアは転移魔法で負担がかかって痛む体を押さえながらも、足早に目的地へと向かっていった。
彼についていった先は、天井が高いダンスホールのような大広間だった。リリアは奥の玉座に座る女性のもとへと一目散に駆けよった。
🦇「ご無事ですか、マレノア様!」
💎「遅いぞ、リリアッ!!」
玉座で子守唄を歌っていたマレウスそっくりの女性は、リリアが馳せ参じたことに気づくと、涼やかな顔を鬼のように歪めて雷を落とした。リリアはなんとか雷を避けたが、完全に当てるつもりで放った軌道だった。
💎「わたくしと卵が危機に瀕しているというのに、どこで油を売っていた!愚か者!この役立たず!!」
マレノアのヒステリックな叫びとともに、大広間内に絶え間なく雷が落ちる。この場にいる者全員に無差別に雷を落としているようで、何人か近衛兵が吹っ飛んでいった。
😺「ふぎゃーっ!」
🧨「っぶねェな!!テメェ上鳴連れてこい!!」
🥦「できるなら今すぐそうしたい!!ひえっ!!」
残念ながら避雷針代わりの上鳴はここにはいない。出久と勝己は命をかけた反復横跳びで雷を交わし続けた。今ならクラスで反復横跳び一位だった峰田の記録を抜けるような気がした。
🦇「申し訳ありません、マレノア様!右大将リリア、敵に不覚をとり馳せ参じるのが遅れました!」
💎「言い訳など聞きたくない、王宮近衛兵の面汚しめ!」
🪓「お、お許しくださいマレノア様!ぐわーーっ!!」
マレノアの雷がバウルに直撃する。「心配なのは姫じゃなくて俺の命だ」というリリアの言葉は冗談ではなかったらしい。 - 68125/07/06(日) 00:53:50
💎「ああ……音がうるさかったか?よしよし、いい子だ」
マレノアはひとしきり雷を落とすと、先ほどまでの怒り声が嘘のような優しい声で、腕の中に抱えていた人の赤子ほどの大きさの黒い卵を撫でた。
💎「せっかく共に昼寝をしようとしていたのに。役立たずどものせいで台無しだ。なぁ、マレウス?」
🦇「……マレウス?」
💎「王子の名前だ。茨の国の王にふさわしい響きだろう?」
卵が孵るのはまだ先で、世継ぎの雌雄の判別はまだついていないそうだが、「母である私にはわかる」とマレノアは卵の中にいるのは絶対に男児だと断じた。
セベクは敬愛するマレウスの命名の瞬間に立ち会えたことで感激の涙を流し始めた。
💎「ん?誰だ、その小童どもは。丸い耳……人間か」
マレノアは出久たちの存在に気づくと、耳の形をみて再び鬼の形相になった。
🦇「人間ですが、彼らは敵ではありません。今回の遠征中に出会ったのですが、我が隊によく尽くしてくれました」
🐊「お初にお目にかかります。セベク・ジグボルトと申します!!」
⚔「シルバーと申します、殿下」
🥦「僕は――」
💎「許しもなくその口を開くな、人間ども。わたくしの目を見るなど、不敬の極み。跪くがいい」
マレノアは鋭い目で出久たちを睨むと、魔法の杖を軽く振った。すると、膝が勝手に折れて強制的にその場に跪く体勢となった。呼吸までもが制限されて、まともに息ができなくなる。
🧨「…………!!」ギリギリ
🥦「かっちゃん!夢の中とはいえ王妃様にキレたら流石にダメだからね!!」ヒソヒソ
🧨「わーーーーーーーっとるわ!!!!!」ヒソヒソ
息ができないのと屈辱的な体勢をとらされているのとで、勝己の顔に血管が浮きまくってメロンのようになった。出久も黒鞭が無ければ肺を強制的に縮めたり広げたりして無理やり呼吸をするという芸当ができないため、目が血走っている。
🦇「マレノア様!お戯れはそこまでに」
リリアが進言すると、マレノアは一応魔法を解いてくれた。呼吸が再開し、出久たちはいっせいに深く息を吸い込んだ。 - 69125/07/06(日) 01:15:51
リリアは先ほどヘンリクの宣戦布告について、今残っている兵ではあれほどの大軍を相手することは難しく、退却を選択すべきだと進言した。城塞も、魔法石も、妖精族の誇りさえ、お世継ぎの命に比べれば些末なもの、と言い添えて。
🦇「姫、ご決断を!」
💎「ふふふ……ははははは!!退けと申したか?このわたくしが負けると?お前でなければ炎を一吹きして灰にしていたところだぞ、リリア!」
マレノアは高らかに笑い、玉座から立ち上がった。
💎「人間風情が、私に『決闘』を申し込むとは……人間どもは、よほど滅ぼされたいとみえる。ならば、望み通り食らわせてやろう。……裁きの雷槌をな!」
🦇「お待ち下さい!あの姑息な男がなんの策もなしに一対一で『決闘』など言い出すわけがない。これは罠だ!」
リリアが止めるも、マレノアは聞く耳をもたない。進言しても埒が明かないと判断したのか、リリアは頭を掻きむしって「あ~~~~っ!!もう!この我儘姫!!こんなとくくらい、真面目に俺の言うことを聞け!」と叫んだ。取り繕っていた礼儀正しい敬語は完全に剥がれてしまっている。
リリアとマレノアはしばし言い争いを繰り広げた。荒っぽい口調でマレノアの身を案じるリリアの言葉は、主というものよりも、妹や幼馴染に向けるようなものだった。
🦇「確かにお前は強い。だが、万が一ってことがあるだろう。父親……レヴァーンもいない今、お前になにかあったら、この子はどうなる?」
💎「母親だからこそ、征くのだ」
軽い口調ながら強い覚悟が滲む言葉に、リリアが一瞬押し黙った。
💎「リリア、バウル。お前たちに勅命をくだす。野ばら城を脱出し、卵を黒鱗城へと届けよ。逆らうことは許さぬ」
勅命を下すとともに、マレノアはリリアに卵を投げつけた。
卵を受け取ったリリアだが、マレノアの選択は実質的に自分の命を犠牲するやり方だ。リリアは「ここに残る」と反発したが、マレノアは卵を抱えるリリアに向けて容赦なく攻撃魔法を放った。
💎「ククク……どうするリリア?ここでその卵ごと命を散らすか!?」
⚔「親父殿ッ!!」
マレノアから猛攻を浴びせかけられるリリアの前に、シルバーが割って入った。 - 70125/07/06(日) 01:35:00
💎「人間風情が、わたくしの前に立つな!無礼者!!」
怒りの雷がシルバーを直撃し、シルバーがその場に崩れおちる。
🦇「シルバー……馬鹿野郎、なんで出てきた!」
⚔「も、もう見ていられません。お2人はお互いを想い合っているのに、なぜ争わなければならないのですか!?どうか、どうかおやめください……お願いします!」
🪓「人間……」
シルバーの必死の訴えに、あれほど人間嫌いだったバウルまでもが心を動かされたt。
🪓「暇様。何卒、右大将殿の進言を聞き届けていただきたく存じます」
🦇「頼む、マレノア……決闘など受けるな。この城を捨てて、逃げるんだ」
リリアの懇願するような声色は、主を案じる臣下のものではなく、ただ特別で大事な人に生きていてほしいと切に願うものだった。
🦇「もしレヴァーンもお前も失うことになれば……俺はどうしたらいい」
💎「万が一私が戻らずとも、“その子”がいる」
🦇「お前がいなくちゃ、この卵は孵らない!」
💎「その時は、お前が孵せ」
ドラゴンの卵は、親の魔力と愛情を注がれなければ孵らない。リリアは無理だと叫んだが、マレノアはことも無さげに「私を愛しているだろう?」と言い放った。そして、右大将と左大将として共に長い時間を過ごしてレヴァーンのことも愛していた、と。愛する者たちの血を引く子を、お前が愛さぬわけがない、と。
マレノアは言いながら、禍々しい魔力を城全体に張り巡らせた。魔力は黒い茨の形をとり、リリアに、バウルに、出久たちに絡みついてマレノアから引き離すように無理矢理引きずっていく。
💎「マレウス……わたくしの愛しい子。頼んだぞ、リリア。――夜の祝福あれ」
🦇「やめろ……だめだ、行くな!!マレノアーーーーーーーー!!」
*二人の勘(51以上で成功)
出久 dice1d100=24 (24)
爆豪 dice1d100=46 (46)
- 71二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 01:35:36
いつ聞いても母親っていう言葉になんかグッとくる…愛…
- 72125/07/06(日) 01:55:16
この辺のストーリーはすごく好きなのですが、このスレ的には幼馴染をあんまり活躍させられなくてツイステ原作の写経耐久みたいになりがちなので早く駆け抜けたい所存
「自分何やってるんだろう」と正気にかえった瞬間に二次創作は破綻しますからね
七章の終盤あたりで二人の出番を盛りたい - 73二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 09:13:29
>我に返った瞬間
本当に、そう
そして勘は働かなかったか
- 74二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 12:40:01
- 75二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 12:46:10
- 76二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 19:35:47
ほしゅ
- 77125/07/06(日) 19:59:31
- 78125/07/06(日) 20:26:51
リリアの必死の叫びも虚しく、一同は黒い茨によって城の地下水路まで押し流された。リリアは手負いの体で茨で塞がれた出口をかき分けてマレノアのもとへ戻ろうとしたが、「勅命をお忘れですか」とバウルが止めた。
リリアは何度も「チクショウ!」と叫んだ後、深く息を吐いて無理矢理に平静を取り戻し、卵を抱えて地下水路を歩き始めた。
まずは地下水路を出ないことには、どんな腐敗ガスが溜まっているかも分からないため勝己は下手に個性を使うことができない。万が一引火し予期せぬ爆発が起きれば、地下水路が崩落して全員生き埋めだ。
暗くぬめる地下通路を進んで行くと、突然地面が震えた。地震ではない。何度も断続的に揺れている。
🦇「マレノア様が上で派手にやっていやがるんだ、急ぐぞ、崩れたらまずい!」
言うが早いか、一行の目の前で地下水路の天井が崩落して行く手を塞いだ。さらに、何者かが瓦礫と一緒に落ちてきたので、瓦礫に打ち付けられる前に出久が咄嗟に受け止めた。
🥦「大丈夫ですか!?」
🌟「ぐぅ…………っ!」
🪓「おい人間!そいつはまさか……」
🦇「お前は……夜明けの騎士!」
出久が受け止めた人物は、白亜の鎧をまとった金の髪の人物、夜明けの騎士その人だった。マレノアの一撃でここまで吹き飛ばされてきたらしい。
🌟「貴殿は……人間か?助けてくれたこと、恩に着る」
夜明けの騎士は目を薄っすらと開けて出久を認識した後、状況把握のために仮面の下で視線を彷徨わせた。彼の視線は、リリアのもとで止まる。
🌟「……貴殿はもしや、茨の国の右大将、ヴァンルージュ!?その卵はまさか……!」
🦇「キシャーーーーーッ!」
リリアと夜明けの騎士の間に一触即発の火花が走る。しかし、リリアが魔石器を、夜明けの騎士が剣を構える前に、再び大きな揺れが走り、水路に空いた穴から罅が伸びていった。
🥦「まずい、崩れるぞ!」
🧨「チッ、こうなりゃ地上を木っ端微塵にするくれぇの火力で……!」
下手に火力を制限すれば瓦礫が増えて生き埋めになる可能性がある。やるなら瓦礫も残らないほどの火力で吹き飛ばされなければならない。
勝己は相応のリスクを覚悟しつつ、その場にいる者たちを守るためにクラスターを放つつもりで掌に汗を溜めた。 - 79125/07/06(日) 20:43:39
🌟「――守護妖精よ……我に力を!」
勝己が爆破を放つ前に、眩い光がその場にいる者たちを包み込んで瓦礫から守った。茨の国の者たちを守るべく一番前に立っていたのは、夜明けの騎士だった。
🌟「しっかりするんだ。卵は無事か!?」
🦇「夜明けの、騎士……?何故……どうして俺たちを助けた?」
敵国の妖精を守った夜明けの騎士の行動にリリアが動揺した。夜明けの騎士は一部防ぎきれなかった瓦礫を自身が受けて、鉄の面が割れてしまっている。
🐊「その顔は……!」
⚔「……………ッ!!」
😺「ど、どういうことなんだゾ!?シルバーと夜明けの騎士……おんなじ顔してるんだゾ!」
髪の色こそ金と銀で異なるものの、二人の顔立ちはまるで鏡に映したようだった。彼らの胸元でオーロラ色の光を放つ指輪も同じ形をしている。
🌟「どういうことだ……?この指輪は、私が幼い頃に守護妖精に授かったもの。世界に2つとないはずだ。君は、一体何者だ?」
⚔「お、俺は……俺は……!」
シルバーは顔を蒼白にして後ずさった。
*目星ロール (1.成功、2.失敗)
出久 dice1d2=2 (2)
爆豪 dice1d2=1 (1)
再び強い揺れが走る。夜明けの騎士はシルバーから視線を外すと、眩い光でできた刀身の剣を構えた。その切っ先が向かう先は出久たちではない。
🌟「ヘンリク卿がその卵を狙っている。他の者に見つかる前に、行け!」
夜明けの騎士は卵を抱えたリリアたちの退路を守ってくれるつもりらしい。
彼の行動に疑問を抱きつつも、真意を問いただしているような時間はない。
出久たちは塞がってしまった水路から瓦礫を上って地上に出ると、『魔の山』と呼ばれる霊峰がある方角へ向けて走りだした。
- 80二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 21:07:23
オーロラで予想してたけど…
オーロラ→アウロラ→エオス→暁→夜明けって感じで
あと眠れる森の美女のオーロラ姫 - 81125/07/06(日) 21:31:30
地上に出た時、野ばら城に乗り込む前の青空は見る影もなく、黒く重い雲で空が閉ざされてまるで夜のようだった。土砂降りの雨が注ぎ、視界は悪い。
⚔「あの顔……あの、指輪……!」
🧨「おい、どうした遊色ヤロー!……テメー顔色クソだがが大丈夫か」
人が持ちうる虹彩の色の中でも、勝己の赤色は最も色素が少ない色だ。ゆえに、勝己は比較的夜目が効く方であり、後方を走るシルバーの顔色が悪いことに気がついた。
⚔「この指輪は……親父殿が旅立つ前に、部屋を整理した際に出てきたものだ。親父殿が赤子だった俺を拾ってくださったときに首にかけてあったものだと……。俺が成人したときに渡そうと思っていた、とこれを渡してくださるときに親父殿が言っていた……」
🧨「…………」
⚔「きっと、俺の産みの両親が託したものだろうと……!」
シルバーの息が上がる。激しく乱れる息は、走っての移動が原因ではない。
⚔「はぁっ、はぁっ……!まさか俺の、俺の……血の繋がった肉親とは……ッ!ぎ、『銀の梟』の……夜明けの、騎士の……ッ!! 」
🐊「おいシルバー、どうした!」
🥦「シルバーくん?……大丈夫、ひどい顔色だ」
シルバーの足が完全に止まり、先を走っていたセベクと出久も変異に気づいて戻って来た。
シルバーは彼らから距離を置くように後ろに下がる。
⚔「うそだ……うそだあああぁッ!!!」
シルバーの絶望に引き寄せられるようにして、今までで一番の『闇』の大軍が突如襲ってきた。瞬きをする間にシルバーは闇に取り込まれていく。
――もし俺が夢に縋り、『闇』に飲み込まれそうになったら……ミドリヤ。どうか俺を止めてほしい
🥦「シルバーくん!!!」
シルバーとの約束を果たすため、出久はシルバーに纏わりつく闇の中に飛び込んでいった。
🧨「出久!!」
🥦「『闇』なんかにシルバーくんを連れて行かせない!!約束したんだ!!」
シルバーと一塊になって、出久も闇に飲み込まれていった。 - 82125/07/06(日) 21:35:50
赤い虹彩が色素薄くて明るく見えやすいのは本当ですが、ヒロアカ世界にもこの物理法則が適用されるのかは謎です
赤い目はむしろ光を通し過ぎるので裸眼では屋外活動に向いてなさすぎる
ダイス目の帳尻を合わせるためのここだけ設定なのであまり深く考えないでクレメンス
- 83125/07/06(日) 21:38:30
🦇「なんなんだ、これは!?」
🧨「チッ……!!おい、ジジイども!先に目的地の森に向かってろ!俺たちは後から合流する!!」
🐊「バウル様!リリア様!奴らの相手は我らが!全員そろって、必ずや追いつきます!」
🧨「早く行け!!卵抱えてチンタラ走っとるテメーらに追いつくなんざ余裕なんだよ!!」
『闇』を初めて見るリリアとバウルは戸惑っていたが、勝己に煽られてその場を去り先を急いだ。
😺「二人ともすっかり『闇』に取り囲まれちまったんだゾ!」
🧨「ここまでの経験上、こいつらは無限湧きすっから正面きって相手しても意味がねぇ」
🐊「ならばどうするというのだ!!」
🧨「――俺らもこの『闇』ン中に飛び込む。今ンとこ『闇』に有効なのは、遊色ヤローの指輪の光だけだ」
『闇』は人を深い眠りに誘うための存在。彼らに取り込まれた先は“死”ではなく“眠り”だ。理論上は、夢の誘惑に打ち勝てれば戻ってこられる。
🧨「テメーらがビビッてンなら俺一人で行く」
🐊「フン、誰に向かって言っている!」
😺「ビビッてなんかねーんだゾ!」
🧨「上等だ。――行くぞ」
『闇』に飲み込まれたシルバーと出久を引き戻すため、勝己たちはコールタールの水たまりのような黒いドロドロに飛び込んだ。 - 84二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 05:48:39
どの道助けに行くことになるとはいえ出久は( ˘•ω•˘ )モー
- 85二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 14:00:30
ほしゅ
- 86二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 21:03:24
ほしゅ
∧_∧
( ・∀・)ドキ
oノ ∧ つ⊂) ドキ
( ( ・∀・)ワク
oノ ∧ つ⊂) ワク
( ( ・∀・)ドキ
∪( ∪ ∪ ドキ
と__)__) - 87二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 22:03:58
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- 88125/07/07(月) 22:05:53
🥦「ここは……?」
『闇』に取り込まれた後、渦に飲み込まれたような衝撃が落ち着いて、出久はゆっくりと目を開いた。
辺りは一面の闇だが、不思議と視界はハッキリしている。『OFA』継承者たちの精神世界に似た、物理的な法則から解き放たれた不思議な空間だ。
⚔「ううっ……、ううぅ……!!」
闇に包まれた静かな空間には、胸を締め付けるような嗚咽の音が響いている。
🥦「シルバーくん、泣いてるの?」
じゃぶじゃぶ、と足元の黒い水をかき分けて、出久は少し離れたところで泣いていたシルバーに声をかけた。彼の髪は真っ暗な闇の空間にあっても、銀の月のようにぼんやりと輝いている。
ふと、彼を慰めるように、どこからともなく灯火のような小さな光が集まってきた。優しく温かな光だが、彼は光を見るとますます悲しそうに泣き声を飲み込んだ。
――ーーーん、あーーーーーん……
優しい光の中からは、赤子の泣き声が聞こえる。出久が光の中を覗き込むと、淡い色合いの映像が流れていた。
🥦「これは――リリア先輩の記憶?」
主が居なくなって数百年は経っているのだろうか。茨に覆われて荒れ果てた野ばら城の玉座の間を訪れたリリアが、必死に泣く人間の赤子を不思議そうに抱き上げた。
赤子は金の髪と、オーロラ色の瞳をもっている。夜明けの騎士と同じ色だ。赤子の首には、瞳と同じ色の曇り一つない宝石が嵌まった指輪がかけられている。
――お主……まさか、夜明けの騎士の……?
――ゆりかごよ、ちとお主の記憶を見せてくれるか。
――全ては過ぎ去る日のように。どこへ向かうも瞬きの間よ。『遠くの揺りかごまで(ファークライ・クレイドル)』
リリアが呪文を唱えると、揺りかごに刻まれた記憶がその場で再生された。 - 89125/07/07(月) 22:20:02
野ばら城の玉座の間に、赤子を抱えた女性の姿が映った。マレノアではない。栗色の髪の人間の女性に、3人の小さな妖精が語りかける。
人間同士の争いによる戦火が城のすぐそこまで迫っている。赤子の父親である夜明けの騎士は、すでに戦火の中で没した。妖精は女王である母親を逃がし、王子である赤子を守るために、指輪とともに祝福を授けた。
心から愛してくれる人が現れるまで、成長することもなく永い眠りにつくという祝福を。
――永い年月の中で、守護妖精たちの魔法も綻びたのだろう。
――……夜明けの騎士の子……。レヴァーンと、マレノアの仇……。いっそここで……この手で……!
――……そんなことをすれば、マレウスに顔向けできんな。あやつに人間を愛せと……隣人と共に歩めと説くのなら、わしもそうせねばならんじゃろう。
――それに……あの日、夜明けの騎士が見逃してくれなかったら、わしはマレウスすら失っていた。
――人間を、愛せるだろうか……この“俺”に。
リリアは赤子を抱き上げると、彼に夜の眷族の祝福を授けた。すると、陽の光のような金の髪が、月の光のような銀へと色を変えた。
――お前の髪は夜の眷族の祝福で、月の光を灯したようじゃ。
――ふぅむ。……月の光……銀色……よし、決めたぞ。
――シルバー。今日からお主は、シルバーじゃ。
リリアに抱かれた赤子は、安心したようにきゃあきゃあと笑った。 - 90125/07/07(月) 22:35:04
🥦「――とても優しい記憶じゃないか。どうしてそんなに悲しそうに泣いているの?」
⚔「やめてくれ……俺は、俺はあの人に愛されていい存在じゃない。……俺の、俺の両親は……うぅっ……ひぐっ……」
シルバーはリリアの優しい記憶を拒絶するように、両手で顔を閉ざした。
血は水よりも濃い、という言葉がある。人が血の縁から逃れることは難しい。
荼毘の正体が轟燈矢であると知って、エンデヴァーは一度再起不能になりかけた。死柄木弔が志村奈菜の孫であると知って、オールマイトはヒーローとしての己に課している笑顔が消えてしまう程に動揺した。
シルバーは今、彼らと同じ苦しみの最中にある。シルバーの絶望に引き寄せられて、足元の闇が波打った。
🥦「……ここにずっと留まっていたらダメだ。シルバーくん、ゆっくりでいい、少しずつ歩いていこう」
出久は泣いているシルバーの手をそっと握り、闇から逃げるように手を引いた。
二人を導くように、小さな光が集まってくる。光はどれも、リリアの視点から移された温かな子育ての日々の記憶を映し出した。
まったく育ち方が異なる人間の赤子の世話に手を焼く記憶。マレウスが様子を見にやってきて、子守歌を歌って寝かしつけてくれた記憶。シルバーが初めて立った日。初めて“とー”とリリアを呼んだ瞬間。
――大好き、とと。
――わしもじゃよ、シルバー。
ツヤツヤのドングリのブレスレットとともに「ずっと一緒にいようね」と言われて、愛しさのあまりに息子を強く抱きしめた日の記憶。
血が繋がっていないと打ち明けて、雨の中飛び出していってしまった息子を探し回る記憶。
その全てに、溢れんばかりの愛が詰まっていた。 - 91二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 22:40:00
このレスは削除されています
- 92125/07/07(月) 22:41:10
- 93125/07/07(月) 22:44:01
- 94125/07/07(月) 22:47:37
- 95二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 23:19:26
夜の微睡みのような優しい絵だなあ
- 96二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 23:36:19
泣けてきた……
ここツイステやってるときも号泣したんだよなぁ - 97二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 23:37:40
デクもお母さんから愛されて育ったもんね
- 98125/07/07(月) 23:42:38
⚔「もう……歩けない……歩きたくない」
シルバーは泣き続けてついに歩く気力も無くなったのか、その場で立ちすくんでしまった。
⚔「血は繋がっていなくても、俺はずっとあの人の息子だと思って生きてきた。でも……もう、あの人の息子だなんて名乗れない」
🥦「……ねぇ、リリア先輩の記憶を見て。どの記憶も、リリア先輩はとても優しい目で君のことを見てる。君のことが心から大事なんだよ」
⚔「これは『闇』が見せている幻だ。心から愛せるわけがない。『銀の梟』の……夜明けの騎士の子どもだなんて!愛せるわけがないんだ……」
🥦「…………!!」
悲しみに囚われて、愛情を見失ってしまったシルバーの言葉に出久はショックを受けた。
🥦「……送別会から戻ったとき、リリア先輩は誰よりも早く君の涙に気づいて、寒くて冷えてしまった君を心配していたよね。僕、あれを見て『リリア先輩は本当に君のお父さんなんだ』って思ったんだ。君たちとあまり親交のなかった僕でも、そう思ったんだよ」
⚔「…………」
🥦「だから、そんなに悲しいことを言わないでよ。リリア先輩の愛情を、否定しないでよ!」
⚔「――お前には分からない!!」
シルバーは悲痛な声で叫び、出久の言葉を拒絶した。
⚔「ごめんなさい、親父殿……マレウス様。俺の夢は、いつかあなたたちを守れる騎士になることでした」
譫言のように呟きながら、シルバーは足元で波打つ『闇』に身を委ねるように全身の力を抜いた。 - 99125/07/07(月) 23:48:10
🥦「ダメだっ!立ってシルバーくん!『闇』に飲み込まれる……ッ!」
⚔「離してくれ……このまま、もっと深い、覚めない眠りに……」
🥦「ふざけるな!君が言ったんだ、闇に飲まれそうになったら止めてくれって!リリア先輩は君がこんなところで一人で泣いているって知ったら悲しむはずだ!それが分からない君じゃないだろ!!」
⚔「…………」
🥦「こんなところで寝てる場合じゃないだろ!一人で夢を見せ続けるマレウス先輩はどうなるって、君がセベクくんを諭したんだ!だから、立ち上がって!立てよ!!」
闇はドロドロと蠢き、シルバーの体を飲み込もうとする。出久が全力でシルバーの腕を引いてもビクともしない。
――……立て……立ち上がるのだ。
出久の言葉に被せるように、大人びた低い声がどこからともなく響いた。リリアの声だ。
――敵に背を向けて逃げても構わぬ。掟破りの卑怯な手を使っても構わぬ。ただ一つ、生きることを諦めるな。
――立て!シルバー!己の足で!
⚔「……うぐ……うう……!うわあああ!」
リリアの声で、シルバーに瞳に光が戻る。シルバーは叫びながら、纏わりつく『闇』を警棒で一太刀にして薙ぎ払った。
――見事じゃ、シルバー。
⚔「この声も、俺が都合よく作り出した幻なのか……?俺は、どうしたらいい……?」
🥦「くっ……また沈んでいく……ッ!」
体を流れる血は変わらない。悲しみはすぐには癒えない。シルバーは出口の見えない絶望の中で、再びずぶずぶと『闇』に沈んでいく。
心を閉ざしたシルバーがこれ以上深い眠りに落ちて戻ってこれなくなることのないように、出久は歯を食いしばってシルバーの体を引き留め続けた。 - 100125/07/08(火) 00:01:13
というわけで一旦デク視点シルバーパートを切ってかっちゃん視点セベクパートに移りますぞ
- 101二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 06:40:00
- 102二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 11:53:24
かっちゃんパートも待ってます
- 103125/07/08(火) 16:14:47
『闇』の中に飛び込んだ勝己たちは、目まぐるしい衝撃とともに沼のような場所に落下した。目を開ければ、光源が見当たらない真っ暗な空間であるにも関わらず互いの顔がハッキリ見える、不可思議な空間だった。
🧨「……とりあえず、この辺りには出久も遊色ヤローもみあたンねーな。ここにいても埒が開かねえ、移動すンぞ」
🐊「僕に命令するな!言われずともそうするつもりだった」
😺「オメーら来て早々に険悪になるんじゃねーんだぞ!」
瞬間湯沸かし器二人に緩衝材なしで挟まれたグリムが不満の声を上げつつ、三人は適当に決めた方角に向けて歩きだした。
🐊「シルバーは夜明けの騎士の顔を見たことで『闇』に飲まれたようだが……。あの二人……本当に顔が似ていた」
🧨「十中八九、何らかの血縁関係はあるだろうな。数百年も離れてりゃ他人だと俺ァ思うが、当人にとっちゃ切り離せない問題ってこともあんだろ」
🐊「……だが、憶測だ。リリア様とシルバーは師弟であり、家族だ。分かっているのは、それだけでいい」
🧨「遊色ヤローにそう言ってやれ」
🐊「だから命令するなと言っているだろう!」
勝己たちが襲い来る『闇』を退けながら進むと、小さな光が集まってきた。光の中には、リリアの視点から映された淡い色の映像が流れている。
🐊「――リリア様とシルバーが暮らしていた、森の中の家だ。映っているのは……退役後のリリア様と、赤子の頃のシルバーか?」
慣れない人間の子育てに悪戦苦闘しつつも、優しく愛に溢れた日々の記憶を、セベクが一つ一つ覗き込んでいった。
😺「緑の髪のやつも増えたんだゾ」
🐊「これは幼い日の僕だ。リリア先輩のもとに弟子入りした頃だな」
シルバーが少しずつ大きくなり、小学生くらいの歳になった頃、森の家には幼い日のセベクの姿も加わった。記憶の日々の中で、シルバーとセベクは兄弟弟子として競い合いながら成長していく。
🧨「テメェほとんど勝ててねぇじゃねーか」
🐊「うるさいぞっっっ!!!!!……このままアイツにいなくなられては、勝ち越されてしまう。早く見つけなくては!」
――ーーーん、あーーーーーん……
当てもなく歩いていると、遠くから赤子が泣く声がした。声は進行方向から聞こえてくる。 - 104二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 16:24:28
かっちゃん的には幼い頃の自分たちと重ねたりもするんだろうか…(森の中で一緒に遊ぶ)
- 105125/07/08(火) 16:33:38
🐊「どんどん声が近くなる……どこだ?どこにいる?」
😺「あ!!遠くのほうでなんかピカッと光ったんだゾ!」
グリムが指さした方向で、オーロラ色の光が瞬いていた。目を凝らせば、シルバーが闇に飲まれかかっており、それを阻止しようと必死で食い止める出久の姿があった。
🐊「シルバー!!!」
🥦「セベクくん!シルバーくんが!!」
出久ごと無理やり引き込もうとしているのか、出久も体の半分ほど『闇』に飲まれかけていた。貪欲な『闇』は、勝己たちも取り込もうと一斉に襲い掛かってきた。
😺「うわっ!オレ様たちの周りにもいっぱい『闇』が出てきたんだゾ!」
🧨「全部ブッ飛ばしたるわ!!」
🐊「押し通る!」
🧨🐊「「どけ!!!」」
じわじわと浸食する『闇』は、シルバーのほとんど全身を取りこみ、出久も胸の辺りまで取り込まれて体勢を維持することが難しくなっている。
🧨「ケガしたくなきゃ離れてろ!!」
🐊「離れていろお前たち!“感電”するぞ!」
😺「ふなっ!?と、とりあえず逃げるんだゾ!」
勝己の掌に火花が、セベクの回りで放電の光が弾けたのを見て、グリムが慌てて距離をとった。
🧨「――“榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)”!!」
🐊「曇天を衝け、雷光よ!『迅雷一閃(リビング・ボルト)』!!!」
二つの眩い光が、『闇』の世界を一瞬白く照らし出した。
🐊「いい加減目を覚ませ!この……ッ、寝坊すけがァーー!!!」
KABOOOOOOOOOOOOOOOM!!!
鼓膜をぶち破るような爆音と雷音が轟き、蠢く『闇』を一斉に吹き飛ばした。
*巻き込み事故 (1.セーフ、2.巻き込まれた)
出久←雷撃 dice1d2=1 (1)
シルバー←爆破 dice1d2=2 (2)
- 106125/07/08(火) 17:15:54
🥦「うわああっ!?」
⚔「ぐゎあああぁッ!?」
セベクの雷撃がシルバーを直撃したかと思えば、コンマ数秒遅れて勝己の爆撃が『闇』もろとも二人をぶっ飛ばした。出久のもじゃもじゃの髪のみならず、シルバーのさらさらとした髪もチリチリのアフロヘアになった。大惨事である。
🥦「いたたた……やり方が荒すぎるだろ!」
🧨「うるっせぇ。テメーが着いていながら、なんであんなに『闇』まみれになっとンだよクソが」
🥦「……うぅん、ちょっと根が深い問題で……」
🐊「はぁ、はぁ……やっと見つけたぞ!貴様ァ!」
⚔「その声は……セベク!?」
セベクは雷そのものに変化させていた自身の姿を元に戻すと、反動によってその場で硬直した。
🐊「ぐぅっ……や、や、やはり僕はまだ、このユニーク魔法を使いこなせていないな。ま、まだ身体に、雷が残って……はががっ!」
🥦「自分を雷に変化させるユニーク魔法……!威力と移動スピードを両立させた、『帯電』とは違った強みのある魔法だ」
🧨「雷系の能力は反動で雑魚になるって法則でもあンのか?」
⚔「どうしてここに……これも夢か?」
🐊「夢だと!?ふざけるな!正真正銘、本物のセベク・ジグボルトだ!腑抜けた貴様を連れ戻しに来たぞ!」
状況が飲み込めていないシルバーの真正面に立ち、セベクが大声で叱り飛ばした。
🐊「貴様が言ったのだ、シルバー!必ずや若様の魔法を打破し、リリア様を、間抜けな学友どもを……若様を解放するのだと!その言葉を違えるのか、シルバー!」
⚔「でも……きっと親父殿は、マレウス様は……俺のことを憎んでいる。俺は……俺は、ヘンリクの妹であるレイアと夜明けの騎士の間に生まれた子ども……親父殿とマレウス様も、仇の子だったんだ!仇の子など、愛せるはずがない!憎んでいないはずがない!そうだろう!?」
🐊「馬鹿者ーーーーーッ!!!」
絶望したシルバーの涙ながらの訴えを、セベクの雷鳴のような大声が退けた。 - 107125/07/08(火) 17:36:00
🐊「貴様のことは常々馬鹿だと思っていたが、まさかここまでとはな。たとえ言葉を尽くしても、今の貴様には理解できないだろう。武器をとれ、シルバー」
⚔「やめてくれ……セベク。俺はもう、誰も傷つけたくない……ッ!」
🐊「何と情けない姿だ。今の貴様の様子をリリア様が知れば、悲しまれるに違いない。せめてもの情けだ、これ以上の醜態を晒す前に、この僕が成敗してくれよう!!」
セベクが警棒を構える。シルバーは曇った表情のまま、同じく警棒を抜いて応えた。
⚔「……わかった。それで……お前の気が済むのなら……」
🐊「いざ、勝負!」
実技の授業でよく見る決闘の構図だ。先に相手に魔法を通した者が勝者となる。
😺「オイ。アイツらこんなところで喧嘩おっ始めたんだゾ。止めなくていいのか?」
🥦「互いに危なくなれば止めるけど……今は二人のぶつかりを見守ろう。僕の言葉だけじゃ、シルバーくんの心に届かなかった。でも、セベクくんなら……」
小さな光が見せた記憶の中で、二人はリリアの元で一緒に育った。リリアがシルバーを愛していることを、セベクが一番よく知っている。きっと彼の言葉なら届く。そう信じて、オンボロ寮の三人は二人の決闘を見守った。
🐊「勝負あったな……シルバー……。僕の……負け、だ…………」
果たして、膝を着いたのはセベクだった。勝者であるはずのシルバーは、目を見開いて狼狽した。
⚔「あ、ああ……俺はなんてことを!最後の一撃、わざと受けたのか!?セベク!」
🐊「わざと、だと……?貴様…………ッこの、阿呆がッ!!」
セベクは立ち上がると、「僕は負けるつもりなど毛頭なかったんだ!」とシルバーをポカポカと殴りながら子どものように泣いた。
🐊「仇の子だというのなら、何も与えず、何も教えず、愚鈍な臆病者に育てればよかったんだ。だが貴様はどうだ?孤立無援でも希望を棄てることなく立ち上がった。王のご乱心にも臆さず意見した。絶望の暗闇の中にあっても、戦い続けた!」
🐊「貴様をこれほど強い男に育てたのは誰だ?リリア様だろうがぁッ……!お前のもつ強さを、リリア様の愛と呼ばずなんと呼ぶのだ!僕の、僕たちの師匠を二度と愚弄するな、シルバー!うっ…ううう…!」
セベクの叫びに涙声のノイズが混じり、セベクはシルバーの胸倉を掴んだまま泣き崩れた。セベクの姿を映すシルバーの瞳は、もう絶望で曇ってはいなかった。 - 108二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 17:38:07
私闘を思い出すな
あれはかっちゃんが勝ったけど - 109125/07/08(火) 17:59:09
⚔「暗闇の中でも、ずっと聞こえていた。立て、諦めるな、生きろ、と……親父殿の声が。全部まぼろしだと思っていたけれど……今、やっとわかった。あの教えこそ、親父殿が俺を愛してくれた証。夢でもまぼろしでもない……真実だ」
🐊「……ふんっ!ようやく理解したようだな」
⚔「俺は幼い頃から、親父殿とマレウス様を守る騎士になるのが夢だった。悪い夢を終わらせて……おふたりの笑顔を取り戻す!俺はもう二度と迷わないぞ。どうか覚えておいてほしい、セベク」
🐊「その言葉……違えるなよ!」
リリアの愛情を真実だと信じることができ、自分のオリジンを思い出したシルバーの目は、もとの美しいオーロラ色の輝きを取り戻していた。
🧨「ようやく終わったかよ」
🥦「シルバーくん!よかった……ッ」
😺「一時はどうなることかと思ったんだゾ」
⚔「バクゴー、グリム。それにミドリヤ。迷惑をかけてすまなかった。……ミドリヤ、約束を果たそうとしてくれて、ありがとう」
🥦「ううん。君を『闇』を引き戻したのはセベクくんだ。お礼なら全部彼に」
⚔「いいや。朧気だが、『闇』で途方に暮れている俺の手を、お前が引いてくれたことを覚えている。言葉では否定してしまったが……とても心強かった。改めて言う、ありがとう」
🥦「!!……どういたしまして!」
キラリ。そのとき、シルバーの指輪がオーロラ色に光って、出久たちは一瞬夢の回廊を強制的に通り抜けた。
⚔「あ、あなたは……!」
夢の回廊を落ちていくとき、シルバーは一瞬、生みの父である夜明けの騎士がこちらにむけて微笑む姿を見た。 - 110二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:02:00
シルバー&セベクの幼馴染の決闘は戦闘後が爽やかなイメージだけど、デク&かっちゃんの私闘はかっちゃんが四肢全部使ってデクを本気で抑えつけてるから爽やかさの欠片もないイメージだ
どっちも違った良さがある
- 111125/07/08(火) 18:03:01
🧨「呆けてンじゃねェ馬鹿野郎!!!」
美しい光景は、一瞬で豪雨の野ばら城上空の景色に変わる。夢の回廊から夢に入るとき、基本的に上空から落ちる形となる。勝己は爆破で器用に飛びながら全員を回収して着地した。
🥦「助かったぁ~。ありがとう、かっちゃん。やっぱり両手が使えるかっちゃんは何でもできるなぁ」
⚔「ありがとう。爆破の反動を制御して飛んでいるのか。すごい制御技術だ」
🐊「フン。…………今回は礼を言ってやらないこともない。……ありがとう」ボソボソ
😺「セベクの声、ちっせぇんだゾ!」
周りを見渡せば、そこは出久たちが『闇』に飲まれた場所だった。リリアとバウルはこの先の森に向かっているはずだ。少し時間が経過する間に、野ばら城周辺は惨たらしい鉄火の跡で荒らされていた。背後からは、マレノアのものであろう竜の咆哮と、『銀の梟』たちの雄叫びが聞こえる。
*二人の勘(51以上で成功)
出久 dice1d100=76 (76)
爆豪 dice1d100=59 (59)
- 112125/07/08(火) 18:18:02
🐊「ああっ、マレノア様が……!」
🧨「雷ヤロー、遅れンな!!夢の主と離れすぎちゃいけねンだろ!」
🐊「貴様に言われずとも!だが夢だとわかっていても……くそっ!」
後ろ髪をひかれるようなセベクに発破をかけ、勝己が先頭を走り出した。
🥦(……そうか、きっとこのとき、マレノア様は――)
セベクの話では、野ばら城の辺りは現代では茨の谷の領土の外であるらしい。そして、マレウスの母はずっと昔に亡くなっている。
出久は唐突に、これが負け戦で、マレノアがこれから命を落とすのだと理解した。半ば無理やりセベクを走らせた勝己も、きっと気づいたのだろう。
🥦(分かってる、これは史実に近いだけの、ただの夢だって。でも――)
分かっているのに助けに行けない無力感が、ほんの少し出久の胸を重くした。出久はサーが『予知』を不用意に使いたがらなかった理由を、今真に実感した。
🥦「――先を急ごう」
ぬかるんだ道に残された二人分の足跡を追って、出久たちは森に続く道を駆け抜けた。
⚔「――親父殿の夢に渡ってから、ずっと考えていたことがある」
走りながら聞いてくれ、と前置きをして、シルバーが語り始めた。
⚔「マレウス様の魔法によって見せられている夢なのに、何故この夢の中では辛いことばかり怒るのだろう、と。人間たちと争うこともなく、マレウス様のご両親もご健在のまま、茨の国が大国のまま存続している夢を見ていてもいいはずだ」
🐊「ふむ……一理あるな」
⚔「マレウス様は俺たちの夢を監視し……統治していると言っていた。俺たちの存在に気づいているなら、セベクの時のようにすぐに排除されてもおかしくないはず」
*アイデアロール(一番高い人が返事をします)
出久 dice1d100=43 (43)
爆豪 dice1d100=51 (51)
グリム dice1d100=85 (85)
セベク dice1d100=93 (93)
- 113125/07/08(火) 18:26:38
🐊「ううむ……。マレウス様は何らかの理由によってリリア様の夢を監視できていないのかもしれない」
⚔「あり得るな。なんとかして親父殿に夢から醒めてもらい、助力を得たいところだが……」
走りながら、出久たちは薄暗い森の中に入った。森に入って間もなく、剣戟の音が響いてきた。
🪓「――我が名はバウル・ジグボルト!!誇り高き茨の国の王宮近衛兵がひとりである!!我が斧の曇りとなりたい者は前へ出ろ!1人残らず丸呑みにしてくれる!!」
木々の向こうに、十五人はいる『銀の梟』相手に一人武器を構えるバウルの姿が見える。リリアはいない。バウルは卵を抱えたリリアを逃がし、敵を引き受けたようだった。
🥦「多勢に無勢だ、急いで加勢しよう!!」
*霊素ダメージロール
出久(17) dice1d5=5 (5)
爆豪(14) dice1d5=5 (5)
グリム(13) dice1d5=4 (4)
シルバー(6) dice1d5=5 (5)
セベク(20) dice1d5=2 (2)
- 114二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:36:32
このレスは削除されています
- 115125/07/08(火) 18:38:44
これは戦争で、兵士は己の国の誇りをかけて本気で相手の首を取りにかかる。出久たちは命がかかった激しい剣戟の中に割って入り、『銀の梟』の兵を一人ずつ昏倒させていった。
🐊「バウル様、遅くなりました!」
🪓「お、お前たち……うっ!」
バウルは深手を負っており、戦闘が終わった途端にその場で膝をついた。森にホイッスルのような音が響く。逃げ延びた『銀の梟』が仲間を呼ぶ音だ。
いっときも早くこの場を離脱するべきなのだが、バウルは怪我を押してでもここに残って敵を引き受けると退かなかった。
🐊「…………お前たちは先にいけ。僕はここに残り、バウル様と共に『銀の梟』どもの足止めをする」
⚔「何だって!?いくらお前とバウル殿でも……それに、これ以上親父殿と距離が離れれば何が起きるか、俺にもわ からないぞ」
🐊「迷っている暇はない!!リリア様は大きな卵様を抱え、不自由な状態でいらっしゃる。さっさと行け!そして守れ!お前の大切なものを!僕は……僕の大切なものを守る!!」
*爆豪 行動ロール dice1d2=2 (2)
1.セベクのお目付け役として残る
2.出久たちと一緒に先にいく
- 116125/07/08(火) 18:48:41
🧨「チッ!……さっさと全員倒して追いついて来い!もう一回『闇』に取り込まれたらテメェごと爆破しコロしたる!!」
🐊「フン。僕を馬鹿にするなよ、バクゴー。早々に敵を片付け、貴様らに追いついてみせる」
🧨「……行くぞ、テメェら」
バウルと同じく頑固なセベクを置いていく判断を素早く下し、勝己が先を走り出した。迷いながらも、出久とシルバーとグリムも後に続く。
🥦「一人にして大丈夫かな……」
🧨「譲れねェもんがあるっつーなら、さっさと片ァつけさせるべきだ。変に未練が残って後からグチグチ後悔されてもウゼェ。それに、アイツなら最悪ユニーク魔法で追いついて来られンだろ」
⚔「……バクゴー。セベクの気持ちを尊重してくれたこと、感謝する」
🧨「そういうンじゃねーーーわ」
😺「相変わらず素直じゃねーんだゾ」
*好感度変動
爆豪→セベク(現在値23) + dice1d30=18 (18)
セベク→爆豪(現在値17) + dice1d30=2 (2)
シルバー→爆豪(現在値22) + dice1d30=26 (26)
- 117125/07/08(火) 19:10:43
小さな足跡を頼りに森を進むと、卵を抱えたリリアが『銀の梟』に囲まれているのが見えた。リリアは地面に倒れており、今にも卵を奪われそうな状態だったが、懸命に威嚇して最後まで卵を守ろうと奮闘していた。
⚔「親父殿ッ!!」
『銀の梟』が振りかぶった剣を、シルバーが警棒で受け止めた。
「お前は、夜明けの騎士……いや違う!誰だ貴様は!名を名乗れ!」
⚔「……俺の名は、シルバー。これ以上、貴様らの好きにさせはしない。さあ、剣をとれ!」
「フン、勇ましくて涙が出るぜ。だが、この人数相手では――」
😺「オレ様たちもいるんだゾ!ふなぁ~~~ッ!!」
*霊素ダメージロール
出久(22) dice1d5=4 (4)
爆豪(19) dice1d5=4 (4)
グリム(17) dice1d5=2 (2)
シルバー(11) dice1d5=2 (2)
- 118二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 20:10:45
セベク→爆豪2で草
- 119125/07/08(火) 21:49:15
なんとか『銀の梟』の兵は退けたが、リリアは重症を負っていたところに無理を重ね、立ち上がれないほどに弱っていた。
リリアは消え入りそうな声でシルバーにマレウスの卵を『黒鱗城』まで届けてほしいと頼んだ。妖精族である彼には、すぐそこまで新手の『銀の梟』が迫っている足音が聞こえているらしい。
🧨「……現代じゃジジイも糸車もピンピンしてンだから、本来ならジジイは鱗ジジイと二人で追っ手を振り切って『黒鱗城』に行けたはずだが……」ヒソヒソ
🥦「東の砦でシルバーくんを庇って重傷を負ったから、事実と齟齬が生じてるんだ。でも、シルバーくんとセベクくんの救けもあってなんとか事実通りに進んでる……って感じなのかな」ヒソヒソ
🧨「ジジイも卵も黒鱗城に届けてもとの流れに戻さねェと、夢が破綻して詰みかねねェな」ヒソヒソ
⚔「わかりました」
リリアの頼みにシルバーが頷き、受け取った卵をそのまま出久に渡した。卵は出久の腕がいっぱいの大きさで、重い。命が詰まった重さだ。
⚔「ミドリヤ、マレウス様の卵を持っていてくれるか。……ヴァンルージュ殿、失礼します」
シルバーはリリアを背負い、立ち上がった。
🦇「なっ!?てめぇ、何しやがる!まさか俺を背負って竜尾岳を上登るつもりか!?無茶だ!」
⚔「大丈夫。俺は山育ちで、重い荷物を背負って山登りするのは慣れてます。『生きてさえいれば、後でどうにかなる』……俺の師匠の教えです。だから生きることを諦めちゃダメだ……絶対に!」
🧨「卵を『黒鱗城』に届けろってあのクソ姫に勅命を下されたのはテメェと鱗ジジイだろ。テメェも生きて城に戻ンねぇと違勅んなるぞ。文句言ってねェで死ぬ気で生きろや」
🦇「て、めぇら……この俺に、説教なんざ……うぅ……」
シルバーに背負われると、リリアはすぐに気を失ってしまった。リリアの体はどこもかしこもボロボロで、今まで立っていられたのが不思議なくらいだった。
⚔「行こう、さんにんとも。親父殿とマレウス様を、黒鱗城へ届けるぞ!」
🥦「うん!」
😺「イズクの腕が卵で塞がっちまうと、戦える人数が減っちまうんだゾ~」
🥦「……頼りにしてるよ、グリム」
😺「ふなっ!ま、まあオレ様は大魔法士になる男だからな!イズクと卵を守るくらい楽勝なんだゾ!」
目指す方角は北、魔の山を越えた先にある黒鱗城。時を追うごとに強くなる雨の中、出久たちは険しい山道を急いだ。 - 120125/07/08(火) 22:04:55
山を歩く心得がある勝己が先頭を歩き、耳が良いグリムを殿にして、四人はひたすら山を登った。
グリムの足が棒になってきたころ、竜尾岳から魔の山への渓谷にかかる橋の前に出て、リリアは意識を取り戻した。
🦇「……はっ!卵は!?」
😺「心配しなくても、卵はイズクがちゃーんと運んでやってるんだゾ」
🥦「なるべく雨で冷えないように、ブレザーで包んで保温もしてます」
出久がブレザーの端を捲って黒い卵殻が見えるようにすれば、リリアはほっと息を吐いた。
🦇「シルバーもミドリヤも、重たい荷物を運ばせちまったな。ほら、よこせ」
リリアはシルバーの背から下りると、出久から卵を受け取って再び抱きかかえた。
リリアが言うには、魔の山に立ち込める霧には魔力が豊富に含まれており、自然から魔力を直接取り込める妖精族ならば怪我もすぐに塞がるようになるらしい。
🦇「そういえば、セベクの姿が見えねぇな。あいつはどうした?」
⚔「バウル殿と共に敵を食い止めるために残り……まだ再会できていません」
そのとき、エンジンとキャタピラの駆動音が辺りに響いた。装甲掘削機に乗ってきた『銀の梟』の追っ手たちだ。
🧨「闇もテメェらもゴミ虫みてぇにウジャウジャ湧いてきやがって。いい加減しつけーんだよ!!」
*爆豪&グリム 大雨デバフ
晴天時の dice1d100=36 (36) %
- 121125/07/08(火) 22:23:58
🧨(この雨でニトロの大部分が流れちまうが……)
装甲掘削機は超大型で、小規模な爆破では装甲を破れないだろう。グリムの炎の威力も半減以下だ。
⚔「ヴァンルージュ殿とミドリヤたちは早く橋の向こうへ!俺が時間を稼ぎます!」
🥦「君がいなくなれば、僕たち全員道を失って終わりだ!僕たちも一緒に戦う!……かっちゃんとシルバーくんは装甲掘削機の足止めを、その間に僕とグリムで『銀の梟』の兵隊と掘削機の操縦士を倒す!」
勝己とグリムが雨で戦力を削られている以上、戦局は良いろは言えない。だが、不確定要素が多い夢の世界で、中心となるシルバーを単独行動にしてしまうのは何より避けるべき事態だ。
不利を覚悟して出久たちが戦闘態勢に入ったとき、遠くからよく通る声が聞こえてきた。
🐊「曇天を衝け、雷光よ。――『迅雷一閃』!!!」
眩い稲妻が雨粒を掻い潜り、真っすぐに装甲掘削機にぶち当たった。セベクのユニーク魔法だ。激しい電流で掘削機の配線がショートし、動作を停止する。
⚔「セベク!!」
🐊「ま、まだこんなところでもたもたしているとは……途中、い、居眠りでもしていたか?はががっ!」
追いついてきたセベクは、茨の国の近衛隊のものと同じ鎧を纏っていた。
⚔「その装備は……!?」
🐊「ふ、ふふっ、気づいたか!ぞ、存分に見せびらかしてやりたいところだが……それは目の前の敵を片付けて、からにしようッ!」
セベク到着の数秒後、バウルも追いついてきた。彼もまた魔の山付近の魔力の霧で体が癒えてきているようだ。
🧨「感動の再開なら後でやれ!!ここが正念場だ!!」
橋さえ渡れれば、後は橋を落として追っ手を撒くことができる。逃走が成功するかどうかは今の追っ手を振り払えるかどうかにかかっている。
出久たちは『銀の梟』相手に、全力で立ち向かった。
*霊素ダメージロール
出久(26) dice1d5=3 (3)
爆豪(23) dice1d5=1 (1)
グリム(19) dice1d5=1 (1)
シルバー(13) dice1d5=1 (1)
セベク(22) dice1d5=4 (4)
- 122125/07/08(火) 22:36:45
激闘の末、出久たちは『銀の梟』の追っ手を退却させることに成功した。
しかし、安心したのも束の間、激しい地震と目を開けていられないほどの異常な大雨に襲われた。
🦇「ドラゴンの……マレノアの怒りに大地が共鳴しているんだ」
野ばら城の方角の空は渦巻く重く黒い雲で閉ざされ、更に黒い茨で覆われている。
🥦「あの雲は……オーバーブロット……!!」
⚔「あの黒い茨はマレウス様がオーバーブロットした時と同じ……!」
🐊「まさかマレノア様も!?」
🧨「後ろ見てる場合じゃねェぞ!橋が崩落しかかっとる、向こうに渡れなくなンぞ!!」
空からは激しい雷が降り注ぎ、脆い吊り橋は今にも崩れそうだ。
出久たちは急いで、かつ慎重に橋を渡った。魔の山側に渡っても、雷雨と自身はいっこうに収まる気配がない。落石と土砂崩れに巻き込まれそうになる度に勝己が吹き飛ばしながら、竜尾岳よりもさらに険しい魔の山を進んだ。
流石の出久と勝己も息が上がって血の味がせり上がってきた頃、豪雨地帯を抜けるとともに、断崖絶壁の上に建つ月明りに照らされた城が見えてきた。
🦇「ついに……たどり着いたぞ。……黒鱗城に!」 - 123125/07/08(火) 22:54:44
黒鱗城の入口を守る見張りの兵下たちは、右大将であるリリアに気づくと大慌てで駆け寄ってきた。
「ガルルル!ガァァッ!」
🦇「俺のことはいい!卵を……この卵を、王城まで……!急いで『揺籃の塔』の準備を……マレフィシア様に伝えてくれ。早く!」
リリアは見張り兵に必要な事項を全て伝えると、「これで勅命は果たした」とマレノアが一人戦い続けている野ばら城へ戻ろうとした。
しかし、魔の山の魔力で多少回復したといえどもリリアの体は依然ボロボロで、バウルが止めにかかって口論になった。
そのとき、野ばら城の方角から眩い光が迸ったかと思うと、嵐が止んで暗雲が消え失せていった。オーバーブロットした術者は、魔力が尽きれば命を落とす。マレノアが力尽きたのだ。
🦇「あ、あああ……ああああ……!!!」
あれほど気丈に振舞い、ボロボロの体でも戦い続けていたリリアが、腰が抜けてその場でへたりこんだ。
🦇「マレノア……マレノア……!!俺にもっと力があれば、無理やりにでもお前を黒鱗城に連れ帰ったのに……!レヴァーン、お前との約束も……俺は、俺は……!くそおおぉおぉーーーーーー!!」
リリアが慟哭を上げる。彼に声をかけられる者はだれもいなかった。
『なんということだ……マレノア姫様が、星に還ってしまわれるとは……』
『人間を前に1歩たりとも退かなかった。なんという気高さ。彼女こそ、夜の眷族の誇り』
『安らかに眠れ、夜の愛し子よ』
『『――夜の祝福あれ』』
無粋な声が出久たちの耳元で響いた。声はするのに、声の主の姿はどこにも見えない。
🥦「これは……『テレパス』?」
🪓「……元老院のお出ましだ」
🥦「元老院?」
🐊「……肉体が星に還ってなお、思念をこの地に留めているという者たちだ。茨の谷の政治にも深くかかわっているという」 - 124二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 23:26:43
でたな地縛霊
- 125二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 07:17:33
でたね老✕
- 126二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 07:26:05
出たわね老害
- 127二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 07:27:36
でたな巨悪、いや呪霊…二人はどう言う反応をするんだ
- 128二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 08:36:24
- 129二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 15:34:07
だって事実だもん
- 130二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 17:52:33
- 131二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 17:56:58
まあこいつらなりには谷の事考えてるのかもしれないけどプレイヤーはどうしたって気持ちリリア側だし、そもそも自分達の姫(と旦那)が重宝というかそう扱ってる(これは個人の推測だが色んな所から考えると女王も迫害したりしてない)大切な卵を守り抜いたリリアに対してなあ?
- 132二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 18:00:15
この後がまぁ…ね…
- 133二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 18:41:49
ツイステは未プレイだから知らんけど
反応的にゼル伝のトワプリの賢者みたいな扱い?
お前らは良かれと思ってやってんのかも知れんが割を食う方の身になれや!みたいな - 134二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 18:54:52
トワプリの賢者はミドナと影の世界に対して謝罪してるからめちゃくちゃマシ
- 135二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 19:26:44
出たな燃えるゴミ虫
- 136125/07/09(水) 20:05:10
元老院と呼ばれた思念体の声は、命がけで勅命を果たしたリリアに対し、「薄汚い蝙蝠」「姫を置いて逃げかえってきた恥知らず」「ドラコニア一族への恩を仇で返しおって」と口汚く罵声を浴びせかけた。
涙ながらにマレノアと別れてからのリリアを見ていたバウルは反論しようとしたが、リリアはそれを遮り、慇懃に頭を下げた。
🦇「ご老公がたの言う通り……。今日をもって私は……王宮近衛隊を退役いたします。右大将のお役目、返上させていただく」
『役目の返上などでは生ぬるい!二度とこの都に踏み入るでないぞ!』
『早くお世継ぎの卵からその汚濁にまみれた手を離しなさい!けがらわしい!』
元老院はなおもリリアを罵り、魔法の力でリリアから卵を取り上げた。
🥦「なんてことを……!!リリア先輩は、マレウス先輩の卵を守るために必死で戦ってきたのに!」
マレノアを喪ったリリアの慟哭を聞いていながら、まるで彼を理解しようとしない元老院の言葉が悔しくて、出久は歪んだ拳を強く握りしめた。
*かっちゃんの暴言 dice1d3=2 (2)
1.ウンコの化石
2.肉汁のシミ
3.カビた糸くず
- 137二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:06:39
このレスは削除されています
- 138二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:37:04
ウンコの化石は実質ただの石だし、カビた糸くずは使い道のないただのゴミだけど、肉汁のシミは普段使ってるものにこびりつく嫌なものって感じがして一番鋭い暴言に感じる。
- 139125/07/09(水) 20:50:15
🧨「思念だけ……。なるほど、長ェ寿命だけじゃ飽き足らず、時間の流れから取りこぼれちまったのにも気付かねェで、いつまでも権力の椅子にしがみついて居座ってる迷惑老人ってことか。腐った肉から染み出したいつまでも消えねェ肉染みてェな奴らだな」
😺「肉は美味ェけど、腐った汁は生臭くて汚ぇし、一回ついちまったら全然落ちなくて嫌~な感じなんだゾ」
リリアが必死で守り抜いた卵を我が物顔で取り上げた元老院に、元老院のお歴々といえどドラコニアの勅命に背くことは許されぬはず、とバウルが抗議した。
マレノアは自分になにかあれば卵はお前が孵せとリリアを名指しした。彼女の勅命に従うのであれば、卵の面倒を見る者はリリアでなければならない。しかし、元老院は知って知らぬふりをした。
リリアは呆然と魔法に連れ去れて遠くなっていく卵を見つめ、やがて静かに『黒鱗城』を離れた。
🪓「う、右大将殿!一体どちらへ!?マレノア姫様の勅命を、反故にされるおつもりですか!」
🦇「……俺はもう、近衛兵じゃねえ。姫君の勅命に従う義務もねぇだろ。もうここに俺の居場所はない。守るべきものも、ない……」
国を追われ、愛する者たちの子さえ失ったリリアの瞳は暗い。理不尽を受け入れることに慣れ、疲れ切ってしまったような目だった。
リリアの負の感情に引き寄せられるように『闇』が彼の行く手から湧き出した。制止の声も聞こえていないのか、リリアは身を投げるように『闇』の中へと沈んでいく。
彼を悪い夢から解き放つため、出久たちもリリアを追って『闇』の中へ飛び込んでいった。 - 140二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:52:21
これ取り上げたせいで卵が孵らずに年代ズレたのか?
- 141二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:59:36
あのー、これオバブロ中のマレウスって見てるの?
干渉できず見えてもいないならまだいいけど
干渉できず見えてるなら… - 142125/07/09(水) 21:12:35
暗い闇の中でリリアを探しながら、出久と勝己はシルバーとセベクの会話を聞いていた。
彼らはリリアが右大将を退いた本当の理由を今初めて知ったらしい。セベクは数々の武勲を打ち立てた退役軍人であるリリアが、人里遠く離れた森の中の小さな小屋に住んでいたことがずっと引っかかっていたと語った。シルバーは反対に、リリアが女王やマレウスに召されて何度か登城していた記憶があることから、リリアが国を追われた身だとは思ってもみなかったと語った。
⚔「リリア様が一線を退かれ、マレウス様がお生まれになるまでの200年に一体なにが?」
シルバーの疑問に答えるように、小さな光が集まってきた。光を覗き込めば、リリアの記憶が流れている。
映し出されたのは、先ほどまで出久たちがいた時代から十年後の記憶だった。
リリアは気配を殺しながら真夜中に『黒鱗城』を訪れた。ドラコニア一族の紋が使われた封蝋を手に登城したリリアをバウルが迎えにきて、人目を避けるようにひっそりと城の一角にある塔へと連れ出した。
『揺籃の塔』と呼ばれる塔の中心部には、マレウスの卵が収められていた。ここは妖精の王族たちがやむを得ない事情で卵を抱けない際に、一時的に卵を預ける竜の孵卵器なのだという。
バウルは、マレウスが祖母であるマレフィシア女王から魔力を受け取ろうとしないために、徐々に弱っているのだとリリアに語った。
🪓『ヴァンルージュ殿、どうか竜の懐刀と呼ばれたあなたのお力を貸していただきたい』
🦇『俺に何が出来るってんだ。懐刀どころか、お役目も果たせなかった役立たず……ただの“泥付きの蝙蝠”だぜ、俺は』
🪓『……あなたには、外つ国に渡りドラゴンの卵を孵す方法を探してきていただきたい』
バウルの頼みを聞き入れても、リリアには何の得もない。それでもリリアは、マレノアが最期に卵を託したときの勅命を思い出して、頼みを聞き入れた。
🦇『絶対にくたばるんじゃねぇぞ……マレウス』
この日から、リリアの長い、長い旅が始まった。 - 143二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 21:23:26
- 144125/07/09(水) 21:28:12
リリアはたった一人、世界中の思いつく限りの場所を旅した。
人間にとって妖精は「北の大地で多くの同胞を殺した化け物」であり、リリアは正体を隠し、ときに心ない罵声を浴びせかけながら、竜の卵を孵す方法を探し続けた。
北へ、南へ。いくつ国を渡っても、求める情報は手に入らない。
代わりに、リリアは時折茨の国の元老院や貴族の目を盗んでは『揺籃の塔』に寄り、マレウスの卵に行く先々の土産話を語って聞かせた。
十年、後十年、百年。妖精族のリリアにとっても決して短くない月日が流れる。訪れる人間の国々は発展を続け、妖精との争いは過去の歴史として忘れ去られていく。ときに優しい人間と出会って束の間の交流を交わし、リリアは果ての見えない旅を続けた。
旅が始まって百五十年が経った頃、リリアのもとにバウルからの手紙が届いた。
『ヴァンルージュ殿、至急竜の都へ戻られたし。殿下の卵から、急速に魔力が失われつつあります。次の満月を待たずに、星にお還りになってしまうやもしれません。どうかヴァンルージュ殿には直接顔をお見せいただきたく……』
恐れていた“その時”の報せを受けて、リリアは血相を変えて黒鱗城へと馳せ参じた。『揺籃の塔』に駆け込むと、マレウスの卵は強力な結界を纏い、激しい雷を発しながら一切の魔力を受け取るのを拒絶していた。 - 145125/07/09(水) 21:44:13
――キィイイイイーーー!!!
そのとき、リリアの耳に卵からの泣き声が届いた。
泣き声が聞こえないバウルがリリアを止めたが、リリアは振り切ってマレウスの卵のもとへ駆け出していく。
🦇『マレウス、お前……寂しくて泣いてんのか?』
🦇『200年もひとりでいたら、誰だって寂しいに決まってる。なんでそんな単純なことが分からなかったんだ、俺たちは。待ってろ。今、そこまでいくから』
癇癪のような雷を浴びてボロボロになりながら、リリアは命がけで塔の階段を上っていった。
🦇『お前が根負けして卵から出てくるまで……あやして、あやして、あやしまくってやるからな……!!』
リリアがついに卵のもとへたどり着く。その瞬間、卵は急速に周囲の魔力を吸収しはじめた。
🦇『はは!お前、やっぱり腹が減ってたんじゃねぇか。やせ我慢しやがって。いいぜ、俺のも持って行け。魔力でも、寿命でも……欲しいならいくらでもくれてやる!』
🦇『だから、出てこい……外の世界に――――!!』
――ギャァーーーアアアァァァ!
リリアが結界の中に腕を突っ込んで卵を抱きしめたとき、眩い光が殻を破って溢れ出し、竜の産声が響いた。
リリアが次に目を開けたとき、腕の中には小さな黒竜が収まっていた。
🦇『マレノアと同じ緑色の目をしてる。マレウス……ああ、やっと会えた。200年もかかっちまった……』
🦇『ふ、あはは……は……っ、う、うう……。う”ぅ~~~ッ!』
笑いながら、リリアは泣いた。永い時を超えて愛しい人たちの子が生まれてきてくれたことが嬉しくて、マレウスの小さな体をかき抱きながら泣いた。 - 146125/07/09(水) 21:56:07
⚔「……ずっと思っていた。なぜ親父殿の夢はこんなに辛いことばかりが起きるのだろうと。でも……ようやくわかった。戦って、傷ついて、失って……たくさんの悲しみの先に訪れたこの瞬間こそが、きっと“親父殿が一番幸せだった瞬間”なんだ」
マレウス誕生までのリリアの壮絶な200年の記憶を見届けて、シルバーとセベクは声を詰まらせた。
マレウスの卵を孵したリリアのもとに、元老院たちが姿を現した。
『ヴァンルージュ殿よ!よくぞ王子殿下の卵を孵化させた』
『奇跡じゃ!まさにおぬしは英雄ぞ!』
『さあ、王子殿下と共に女王陛下のもとへ参るがよい』
半生をかけて偉業を成し遂げたリリアに、元老院が祝福の言葉をかけた。
🦇「ウッ……!」
リリアは突然表情を歪め、苦しみ出した。夢の世界が歪み、ねじれる。
🦇「……違う、俺は……、わし、は……?ぐうっ……!」
『ヴァンルージュよ!貴様、よくもその手でお世継ぎに触れたな!』
『竜の卵に蝙蝠が魔力を注いで孵したなど……前代未聞の醜聞だ!』
『高潔なるドラコニア一族を汚した罪は重いぞ!』
祝福の言葉は一転し、耳を塞ぎたくなるような罵声に変わる。
😺「な、なんだぁ!?」
🐊「どういうことだ!?世界が歪んで、元老院たちが急に態度を変えたぞ!?」
*アイデアロール (1.成功、2.失敗)
出久 dice1d2=2 (2)
爆豪 dice1d2=1 (1)
- 147125/07/09(水) 22:10:34
🧨「チッ、……こっちが本当の記憶なんだろうよ」
🐊「貴様、何を……」
🧨「話を聞いとる限り、肉シミどもにとっちゃ蝙蝠ってのは差別の対象だ。クソ野郎ってのは性根がクソだからクソなんだ。見下してる奴が一回何かを成し遂げたくらいで、クソ野郎が態度を改めるワケがねェ」
🥦「……っ!!」
🐊「では……リリア様が実際に受けたのは祝福の言葉ではなく、あんな罵詈雑言だというのか!?」
⚔「ああ、おそらく。親父殿はこれが夢だと気づき始めたんだ……!」
『二度と王子殿下に近づくな、蝙蝠め!早くそやつから王子を取り上げろ!』
『ああ、王子殿下……お可哀想に。無能な近衛兵のせいでご両親を失ったばかりか、不浄な魔力を注がれてしまうなど』
『王子殿下の御身に何かあったらどうするのだ!愚か者!』
元老院に無理やりリリアと引き離され、幼体のマレウスは悲しそうな泣き声を上げた。肉体をもたない元老院に、マレウスを抱きしめることはできない。
🪓「貴様ら……もう我慢ならん!その侮辱、今すぐ撤回していただこう!」
🦇「……いい、バウル。これで良かったんだ。これが、きっと正しい……“正しい”?」
リリアがさらなる違和感を感じ、夢の世界がぐにゃりと歪んだ。足元が崩れ、出久たちはリリアが今いる夢の中の夢へと放り込まれた。
歪んだ夢の世界に、激しい稲妻が落ちる。
🐲「こんなところにいたのか。ようやく見つけたぞ……リリア!」
雷光とともにそこに現れたのは、出久たちが夢に囚われるに至った元凶、マレウス・ドラコニアだった。 - 148125/07/09(水) 22:23:22
🦇「その声は……レヴァーン!?お前、いつ帰って……いや、でもそのツノはマレノアの……」
リリアはまだ夢から醒め切っていないようで、今は亡きマレノア夫妻の面影を強く残したマレウスの姿に警戒心を強めた。
🦇「何者だ、てめぇ!」
🐲「……知らなかった。お前がみずからの命を糧に僕を孵してくれたなんて。元老院の老いぼれどもめ……よくもリリアを……」
マレウスは憎悪が籠った凄まじい目つきで元老院の思念体を睨んだ。
🐲「おばあさまもだ!何故今まで僕に真実を隠していた!?」
🦇「違う、マレウス!口止めしたのはわしじゃ!真実を知れば、お前が負い目を感じるかもしれぬと……ぐうっ!?」
夢と現実が入り混じり、リリアは激しい頭痛に苦しみだした。マレウスは再びリリアを“幸福な夢”に誘おうとする。
出久たちは、マレウスの前に一斉に飛び出した。
🐲「……またお前たちか。本当に寝付きが悪いな。また抗おうというのか?」
⚔「諦めません、絶対に!」
🐊「リリア様の想いを知れば、なおのこと!たくさんの愛によってお生まれになった若様が、この世界の敵となり憎まれて良いはずがない!」
⚔「だから俺たちが絶対に打ち破ってみせます。マレウス様……あなたの『祝福』を!」
🦇「『祝福』……あ、ああッ!」
その言葉を聞いた瞬間、リリアの脳内に封じられていた記憶が蘇った。老いたリリアにマレウスが『祝福』を贈った瞬間の記憶が。
🦇「ふ……くふふっ……。ははは!あはははは!!よくぞ言った。それでこそ、わしの弟子じゃ」 - 149二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 22:25:10
どんな人間にも善性があると信じるデクのアイデアロールが失敗してるの、らしいなぁ
- 150二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 22:57:37
でも、結局マレウスが暴走した時呼び戻して世話係にしている辺り、自分達でどうにも出来なくなっているから、ザマァないな
- 151二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 22:58:40
ダイスが原作読破済み解釈高めな結果を沢山出してくれて本当楽しいな!
- 152125/07/09(水) 23:28:23
🦇「わしは随分と長い昼寝をしていたようじゃ。やってくれたのう、マレウス!」
🐲「チッ……完全に“醒めた”か、リリア!……だが、心配はいらない。またすぐに寝かしつけてやろう」
🦇「フッ、やれるものならやってみよ!皆のもの、わしに続け!」
リリアは勇ましく言い放つと、マレウスに背を向けて全速力で逃走した。
🥦「えっ!?ま、待ってください!」
🧨「敵前逃亡キメる気かコラァ!!」
🐲「フフフ……追いかけっこか?お前とこうしてじゃれ合うのは、何十年ぶりだろう」
🧨「テメェは何っっっでそんなに楽しそうなんだクソが!!気持ち悪ィな!!」
マレウスは場違いなほどに無邪気な笑みを浮かべながら、リリアを追いかけてきた。
🦇「わしがマレウスに隙をつくる。その隙にシルバーのユニーク魔法で、この夢から脱出せよ!夢の中ではわしの魔力も枯渇しておらぬし、力があり余っとるあやつと遊んでやるには丁度いい」
⚔「ですが……!」
🦇「心配するな。マレウスはわしを再起不能にしたりはせんだろうよ。……父親に似たのか、非常になりきれぬ優しい男じゃ」
🦇「シルバー、セベク。“現実”のマレウスのこと……頼んだぞ」
⚔🐊「「はい!」」
🦇「緑谷、爆豪。まだ青二才のこやつらが突っ走らぬよう、見てやってくれ」
🥦「わかりました!」
🧨「仕方ねェなァ!」
🦇「それから、グリム。力は適切なタイミングと出力で用いてこそ真価を発揮するもの。ちゃんと緑谷の言うことを聞くんじゃぞ」
😺「オレ様だけ子ども扱いするんじゃねぇ!!」 - 153125/07/09(水) 23:43:24
マレウスがすぐそこまで迫っている。リリアはくるりと体の向きを変えると、マレウスと魔法を撃ち合い始めた。
🦇「今じゃ!さあ、行け!早く!」
⚔「……絶対にあなたを、みんなを眠りから醒ましてみせます。話したいことが沢山あるんです!」
🦇「おう!約束じゃ、シルバー。夢から醒めたら、また会おう!――夜の祝福あれ」
⚔「……夜の祝福あれ!」
リリアがマレウスを食い止めている隙に、出久たちは夢からの脱出に備えてシルバーに捕まった。
⚔「いつか会った人に、いずれ会う人に――『同じ夢を見よう(ミート・イン・ア・ドリーム)』!」
シルバーの指輪から眩いオーロラ色の光が溢れ出す。出久たちは胃がふわつくような浮遊感を感じたかと思うと、夢の回廊に真っ逆さまに落ちていった。
*
「「あああああぁあああ~~~~!!!」」
🐊「おい、シルバー!これは誰の夢へ向かっている!?」
⚔「わからない!とにかく、次の夢に渡って体勢を立て直すしかない!みんな、俺から絶対に離れるなよ!」
😺「ふげ~~!だ、誰かの夢につく前に、潰れたパンになっちまうんだゾ~!」
シルバー一人に対して出久と勝己とセベクとグリムが四人がかりでしがみついているので、もみくちゃになってシルバーの部位の争奪戦のような有様になっている。
⚔「ん?今、何か遠くで光って……?」
もみくちゃになりながら落下する中、シルバーが“夢の回廊にはないはずのもの”を見つけた。
「……お~~~い、……お~~~~い!」
🥦「誰かが呼んでる……?しかも、すごい速さで近づいてくる!」
⚔「鳥?飛行機?いや、ちがう。あれは……!」
🔥「おーーーーーーーい!!」
🥦「オルトくん!?」
🧨「なんでメラメラがここにいンだよ!?」
果たして、夢の回廊を落ちていくシルバーたちにジェット機のような速さで近づいてきたのは、電子的な光を放ちながら飛ぶオルトだった。
🔥「話は後、後!とにかく僕につかまって!さあ、いくよ。ワーーーーーープ!!」
オルトは出久たち全員がつかまっていることを確認すると、夢の回廊の雲の中を迷いなく猛スピードで飛び抜けていった。 - 154125/07/09(水) 23:56:33
ここまでで7章のリリア過去夢編は終了です!
長いからだいぶ圧縮したつもりですが、それでも長いですね
スレ主の国語力だとこれ以上削れなかったです
過去編だと幼馴染のセリフ少なくなりすぎて「ヒ、ヒロアカカテ……」ってなってましたが、ここからセリフ量回復する見込みです
シルバーが光属性で7章の実質的な主人公なので、ヒーロー的なセリフの大半は原作のシルバーセリフで足りちゃいがち
ここからもめちゃ長いので、引き続き7章は巻き巻きの巻きで進めますね - 155二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 06:40:19
7章って確かプロローグ〜6章まで全部足した話数よりも話数多いんだっけ
今まで前後編だったのが急にチャプター式になったときは配信当時ビビったもんな - 156二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 07:10:02
- 157二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 14:30:10
早め保守
- 158二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 14:57:37
- 159二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 19:58:19
ほしゅ
- 160二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 23:37:59
ほしゅ
- 161二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 07:47:12
マジで長かったな……
- 162二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 14:04:36
ほしゅ
- 163二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 14:28:35
元老院は障子くんの村の奴等をクソ下水煮込みして更に千年腐敗させたようなもんなのに政治の中枢に居座ってるのが問題
歴代継承者達なんてプライベートにまで気を使ってくれたんだぞ - 164二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 21:30:48
女王に口止め頼めるくらいには重宝されてるか最低でもこの件の功は認められてるのに本当に元老院はな……
この状態でもだいぶ力があるか、記録に残させてないこいつらしか知らない谷の何かあったりするのかなあ、いつまでも政治に関わってるの
それか当たり前になりすぎてて何も言えない - 165二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 23:45:51
- 166二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 23:49:06
少なくともマレウス入学がOKされるくらいには丸くなったのか影響力が弱まったのかそれともマレウスが怖くて口出せなかったのか……
- 167二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 06:10:49
- 168二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 08:41:07
やっぱり元老院はさっさと星に帰った方がいい、価値観アップデート無しでずっと政治権握ってるのは本当にまずい。なんで価値観アップデートできなかったの?容量不足?
- 169二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:47:37
- 170二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 19:40:51
このレスは削除されています
- 171125/07/12(土) 22:23:39
オルトに連れられて着地した場所は、出久と勝己には見覚えのない地下のような暗い雰囲気の場所だった。神殿のような見た目の建造物にはイグニハイドの紋章が入った旗がかかっている。
🥦「大変だ、着地してからオルトくんが見当たらないよ!」
⚔「まさか、夢の回廊に置き去りに……!」
🧨「ハァ!?」
💀「あ、あのー……み、皆さん?す、すこし落ち着いて」
一緒に着地したはずのオルトが見当たらず慌てていると、薄暗い寮の向こうからやってきたイデアに声をかけられた。
💀「パーティが揃わなきゃ、ボス討伐クエは始められない。これでようやく突入準備が整いましたわ」
💀「前座は終わり。いよいよメインイベントの始まりだ!ヒヒッ!」
イデアはやけにハイテンションで、口角も持ち上げてギザギザの歯を見せてニタリと笑った。
🐊「な、なんだ貴様は?一体どういうことだ!?僕たちは夢から醒めたのか?」
💀「残念ながら、まだ夢の中だよ。夢っていうか、マレウス氏が作り出した魔法領域の中ってほうが正しいけど」
君がイカつい甲冑を着てるのがその証拠、とイデアは茨の国の近衛兵の鎧を着たままのセベクを指さした。
夢の中で得た鎧はあくまで『情報』であり『物質』ではないため、夢を跨ぐことはできても現実には持ち帰れないらしい。
*アイデアロール(1.成功、2.失敗)
出久 dice1d2=2 (2)
爆豪 dice1d2=1 (1)
- 172二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 22:32:33
このレスは削除されています
- 173二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 22:33:41
かっちゃんさん今回めっちゃ冴えてるね!?
- 174125/07/12(土) 22:42:58
🧨「つかモヤシ野郎、テメェここが夢だって認識してやがンな?」
💀「ヒッ!バクゴー氏、なにゆえ拙者に近寄ってきてるので!?」
⚔「――そうか!イデア先輩が夢から醒めているということは、より深い眠りに落とそうと『闇』が襲ってくるはず」
😺「あっ!『お前、醒めているな』とかいってマレウスのやつが現れるかも‥‥…!」
🔥『マレウス・ドラコニアさんや黒いモヤについては、しばらくのあいだ大丈夫なはずだよ。今はかなりの“リソース”をリリア・ヴァンルージュさんを眠らせることに割いてる状態だと思うから』
マレウスの襲撃に警戒しようとしたところ、空中にオルトが映ったモニター画面が映し出され、オルトの声が聞こえてきた。直接姿を現さないことについて、オルトは「自分がこの姿でいるとイデアの夢に重大なエラーが発生するから」とオルトは解説した。
オルトはリリアのお別れ会でマレウスが全員を眠らせた後、自身のデータを通信衛星経由で島の外に逃がすことに成功したらしい。よって、あの場にいた者の中で唯一、マレウスのユニーク魔法が発動した後のことを実際に見ることができたのだそうだ。
🔥『ふふふ。僕の“個性”が役に立ったってわけ!』
🥦「思考回路がプログラムであることを活かした脱出方法だ……確かに、君にしかない素敵な“個性”だね!」
🔥『君ならそう言ってくれると思った!ありがとう、ミドリヤ・イズクさん!』
🐊「貴様、やけに飲み込みが早いな」
🧨「世界中探せば意識をデータできる“個性”もった奴の一人や二人いるだろ。別に驚くことじゃねェわ」
🐊「そんな人間がいるわけないだろう!!?」
⚔「そういえば、お前たちは異世界を渡って来たんだったか。世界が違えば常識も違う、ということなのだろうか」
🐊「ええい、シルバー!なぜ貴様もそんなに飲み込みが良いんだ!」 - 175125/07/12(土) 23:05:59
オルトは通信衛星経由で賢者の島を脱出後、『S.T.Y.X.』にコンタクトをとって新しい機体を手に入れ、所長である父と技術主任である母を始めとするスタッフたちのサポートを得ながら、マレウスの『祝福(フェイ・オブ・マレフィセンス)』の分析のために賢者の島へ再突入した、と語った。
マレウスの『祝福』は、魔法領域を展開し、領域内に取り込んだものを自由自在に操ることができる、古代魔法並みの強力な魔法である、という分析結果が出たらしい。
マレウスの魔法領域はナイトレイブンカレッジがある賢者の島全域を覆い、さらに周辺の海上を広がり続けているとのことだ。
🥦「“夢を見せる魔法”じゃなくて、“領域内を意のままに操る魔法”……!」
🧨「クソチートじゃねェか。要するに、領域内なら手で触れる縛りも、適用ルールの個数制限もない『新秩序(ニューオーダー)』見てェなモンだろ」
🔥『解析の結果、マレウスさんの魔法領域は非常に強固で、術者が自発的に魔法を解除するか、術者が消滅しない限り99.8%壊すことができないことが判明しているよ』
🧨「残り0.02%の内訳は」
🔥『ふふ、バクゴーさんならすぐに聞いてくれると思ってた!外から干渉できないなら、内側から崩せばいいんだ!』
オルト曰く、『S.T.Y.X.』は魔法領域を分析し、領域内で眠っている者の“夢の座標”をピンポイントに割り出すことに成功しているらしい。オルトは自身のデータを霊素に変換することで、座標が判明している対象の夢の中に渡ることができるのだそうだ。
🔥『それで僕は兄さんの夢に干渉して、兄さんは夢から醒めたってわけ。……以上、マレウス・ドラコニアによる魔法災害発生から、イデア・シュラウドの覚醒までの経過報告を完了します』 - 176125/07/12(土) 23:07:57
ド派手にスキップしましたが、オルトがマレウスの領域に突入してからイデアが目覚めるまででちょうど1チャプター分のボリュームです
出久たちがリリアの夢の中で振り回されている間、オルトとシュラウド両親はめちゃめちゃ頑張ってました - 177二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 23:12:01
ヒロアカ世界の個性は進化を続けてるからね
意識データ化で驚いてたら、ヒロアカ世界に存在するとんでも個性に耐えられないぞセベク
エリちゃんの『巻き戻し』とか強力な個性だし、『こんな小さな女の子がそんなことを……!?』って驚くだろうなあ - 178二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 23:20:20
6章ラストでマレウスが自分で言ってるけど、世界最強格のマレウスでも「時間を巻き戻すことはできない」んだよね
それを小さな女の子ができちゃうわけだから個性特異点って恐ろしいんですわ - 179二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 07:51:41
エリちゃん本当にギリギリな子だよな……適応できるのが生き物だけ(それもなかなか)で使うためのエネルギーが平時ではなかなかたまらない?のがギリもギリのセーフライン
- 180二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 12:51:19
7章未読勢だけどここからみんなの(カオスな)夢に突入していくのかな
- 181125/07/13(日) 19:58:44
オルト曰く、現在『S.T.Y.X.』はスタッフ総出で魔法領域に囚われた者たちの夢にIDを振り分ける作業を行っているらしい。その最中で、夢の中を“自力”で移動している魔力反応を検知し、オルトが『夢の回廊』まで迎えにきたのだという。
🧨「んで?魔法領域を内側から崩すっつーテメーらの作戦で、俺らは何をすれば良い。わざわざ迎えに来たっつーことは、遊色ヤローの魔法を使った仕事があンだろ」
🔥『わあ、理解が早くて助かるよ!』
💀「とりま、君たちに作戦を説明するために、ど、動画作ったんで……そ、それ見てもらえます?」
それじゃあオルトよろしく、とイデアが一言断ると、オルトは自身を映していたモニターにイデアが作ったという“マレウスの攻略動画”を流し始めた。
▼(実際の公式動画)
「ツイステ」陰キャな魔導工学系男子が3分で魔王攻略を解説する動画
*動画に対する反応
出久 dice1d100=53 (53)
爆豪 dice1d100=89 (89)
1:なんだこの動画……
100:OK理解
- 182125/07/13(日) 20:00:01
- 183125/07/13(日) 20:05:28
動画内容の要約
➀マレウスは魔法領域全体を支配している『サーバー管理者』のようなもので、個別に管理されている各人の夢にはマレウスの代わりに夢に異常がないか監視する『ゲームマスター』(シルバーが『闇』と呼ぶ存在と同一)が置かれている。
②イデアはこれから自分の夢の中で『チートツール』の開発を急ぐ。『チートツール』が完成すれば、イデアの夢は管理者がイデアになる。
③出久たちの仕事は、シルバーとともに他の生徒の夢に渡り、目を覚まさせた上でイデアの夢に転移するための『正体コード』を配布していくこと。
④『チートツール』が完成したら、イデアの夢の中に大量の生徒とマレウスを呼び出して数の力でボコボコし、マレウスが自力で魔法領域を解除するように仕向ける。
- 184125/07/13(日) 20:22:11
🧨「話は分かった」
💀「オタクのノリキモイっすよねサーセン……って、あれ?バクゴー氏キレないの?」
🧨「オタクのノリはクソ程キモイが、クラスのアホが似たようなノリの動画見とったからな」
🥦(上鳴くんかな?)
🧨「動画の内容自体は完結にまとまってて分かりやすい
。要するに、テメェが『チートツール』とやらを必死こいて開発しとる間に、俺らは遊色ヤローと一緒に戦力になりそうな奴らの夢を回って、目ェ覚まさせてテメーの夢でバトるための正体コード……地図みてェなもんを渡してくりゃ良いンだろ」
💀「内容伝わって良かった~~~!そうそう、バクゴー氏の理解で完璧にあってますぞ」
🥦「時間制限はありますか?オーバーブロットしているマレウス先輩の魔力が尽きたら……」
💀「ああ。確かに、オーバーブロットした術者は魔力が尽きれば命を落とすけど、マレウス氏の場合はその心配はいらない。ドラゴンの角は自然から魔力を取り込むための器官になっておりまして……手短に言うと、マレウス氏に魔力の枯渇の心配はないんで
🔥『半永久的にオーバーブロットし続けられるからこそ、マレウスさんの魔法領域が全世界を覆いかねないから脅威なんだ。今、外の世界では、マレウスさんを止めるために、『S.T.Y.X.』を中心に、『茨の谷』を始めとした各国が力と知恵を出し合っている状態だよ』
🥦「それじゃあ、マレウス先輩が時間切れで命を落とす危険性はないんですね。むしろ、時間制限のネックになるのは、リリア先輩がどのくらい夢で持ち堪えてくれるか……」
💀「その通り。この作戦、僕が『チートツール』を完成させて、君たちが魔王討伐の仲間を集める前にマレウス氏に動き出されて介入されたら一発アウト、詰みなんですわ」
🧨「どのみち悠長な仕事はやってられねーってことだな」 - 185125/07/13(日) 20:34:33
世界の未曽有の危機とあって、出久と勝己がこの話を受けないという選択肢はなかった。
マレウスが魔法領域を解除した後、オーバーブロット状態が継続して交戦の意思をみせるなら、現実のマレウスとの戦闘は避けられないということでセベクは葛藤したが、マレウスが全世界の敵になってしまうまえに止めなければ、ということで仲間集めの旅の仕事を受けることを承諾した。
🔥『君たちを目的の座標まで誘導するのは、僕たち『S.T.Y.X.』がサポートするよ。理論上、IDを振り分けてある夢(サーバー)に座標を定めて移動することは可能になっているから』
⚔「!!それは頼もしいな。よろしく頼む、オルト」
狙った者の夢に移動できない、といるシルバーの夢渡りの魔法の弱点も、『S.T.Y.X.』の技術でしっかりサポートが入るらしい。
🧨「流石、この世界最高峰のギーク集団だな」
🥦「大がかりな作戦は、情報や技術のサポートが不可欠だもんね。とても心強い協力だ。――これが彼らのヒーロー活動なんだね」
💀「フヒヒッ。君たちのファンのスタッフがそれ聞いたら狂喜乱舞すること間違いなしですぞ」 - 186125/07/13(日) 20:35:40
- 187125/07/13(日) 22:31:42
🐊「……話は以上か?では、すぐに出発するぞ!!」
💀「あ……、ッスー。その、ちょい、セベク氏」
マレウスを止める、と意気込んだセベクだったが、イデアから制止が入った。茨の谷の近衛兵の鎧姿のままでは他の夢の中で悪目立ちするので、装備を変えてほしいとのことだった。
🐊「き、急にそんなことを言われても……うううう~~~~ん」
🔥『兄さん。僕たち1年生は魔法で洋服を着替える実践魔法すら習ったばっかりだし……難しいんじゃないかな』
💀「じゃあ、君たちの魔法石にサポートツールとして装備を変えるための魔法術式を付与するよ。君たちの魔法石貸して」
イデアはセベクとシルバーとグリムの魔法石を受け取ると、なにやら手元で細工し始めた。
💀「あー、ミドリヤ氏とバクゴー氏はマジカルペン持ってないんだっけ?じゃあスマホに魔道プログラムを書き込んだチップをセットするか……よし、大体こんなもんかな」
イデアは学園長から支給されている出久のスマホを受け取ると、即座に分解して一部のパーツを付け替えた。
魔法石とスマホはすぐに返却されたが、見た目には変化がない。
🐊「……?マジカルペンに何か仕込んだと言ったが、特に変化はないようだぞ?」
💀「各々のペンやスマホに向かって、『ドリームフォーム・チェンジ!!』……って言ってみて」
🐊「はぁ!?な、なんだその変な呪文は!?」
🥦🧨「「ドリームフォーム・チェンジ!!」」
💀「えっ、君たちノータイムで叫んでくれる感じ?」
スマホに向けてイデアに教わった呪文を叫ぶと、出久と勝己の目の前にRPGの装備選択画面のようなホロモニターが現れた。直感的に『寮服』をタップしてみると、リリアの夢でズタボロになっていた二人の雄英の制服が光に包まれて、新品同様の綺麗な状態に変化した。
🐊「貴様ら……こんなバカげた呪文をよくそんな大声で叫べるな」
🧨「ア?変身シーンでキメ台詞恥ずかしがるヒーローがどこの世界におンだよ」
🥦「僕たち、元の世界では“必殺技”を編み出して実際に技名を叫びながら実戦形式で試す授業とか受けてたから、こういうの慣れてるんだ」
💀「え~~~~~~、何それ!ヒーローの学校みたいで超楽しそうなんですが!!」
🥦「実際にヒーローの学校なので……」 - 188二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 22:33:52
必殺技を叫ぶ意味もMtレディが講師で来た授業で教わってたもんね幼馴染は
- 189二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 23:19:45
なんなら、かっちゃんは授業受ける前の超初期から数々の必殺技名叫んでたもんね( ´∀`)
- 190二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 23:57:26
あとヒロアカ世界はAIがめっちゃ話すから
音声認識に馴染みまくってるのかもしれないよね - 191二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 06:23:00
超シリアスなリリア夢編との落差に全監督生が宇宙猫になった動画来たわね
- 192二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 07:50:22
「ヒーローの学校みたい」笑った
ちゃんとツッコミまでしてくれるデク - 193二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 08:22:37
くっ、決めゼリフに照れる二人も見てみたかったけど確かに今さら「ドリームフォームチェンジ」くらいじゃ照れないわ……!!随一のヒーローの決めゼリフが「デトロイトスマッシュ」だもんな…
- 194二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 13:47:16
スマホ掲げてドリチェンしたのかな
ニチアサっぽくていいぞ - 195二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 20:54:59
保守⭐️
- 196二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 21:33:04
夢の中なら個性使えるのでは?って思ったけど流石にヌルゲーすぎるか…
- 197二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 22:11:18
スマホが一人一台か二人で一台かで変身時の印象か変わりそう、後者だったら個人的イメージが初代プリキュアに……
- 198125/07/14(月) 22:38:13
- 199125/07/14(月) 22:39:50
- 200二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 22:47:53