トレぴー…｜あにまん掲示板

「ねぇトレぴ」
　空に赤みがさして夕餉の香り立つ頃のトレーナー室。ダイタクヘリオスの担当トレーナーは、背中に抱きつく温かさに仕事へ向ける脳のリソースを割かれていた。
「ヘリオス、前にも言っただろ？　あまり男の人にそういうことはするなって」
　タブレットの液晶に目を走らせながらも、意識が背中に密着する担当バへ否応なしに注がれて、トレーニングメニューの情報がまともに入ってこない。
　ここ最近、ヘリオスの距離感が近い気がしてならない。
　元々、人懐っこくて快活な彼女は誰とでも親しく接していて──それが理由で塩対応されることもあるが──担当トレーナーたる彼にも例外ではない。
　ただそれにも増して、物理的接触が増えているのだ。具体的には、今しがたやっているようにトレーナーの身体に密着してくる。腕に抱きついてきたり、尻尾を巻き付けてきたりなど。
　無論、トレーナーにとってウマ娘たる彼女の行動がどのような意味を持つのか知らないはずがない。彼女がファンや級友に見せる表情とは別のものを感じてしまい、しかしそれから目を逸らし続けている。

　問題はそれがもう限界になりつつあるということだった。
「なんで？」
「なんでも。年頃の女の子が歳上の、それも好きな人じゃないのにそんなことしちゃ駄目」
　言い終わった時、トレーナーの聡明な頭脳は自らの失言に気が付いた。数歩理解するのが遅いことも分かってしまった。

「……なにそれ」
「ヘリオス──」
　瞬く間にという表現が相応しいのだろう、肩越しに湧いてくる腕はタブレットを取り上げると、机の上に放り投げる。
　トレーナーが指摘するのも遮って彼の前に来ると、勢いそのままにソファへ押し倒す。

「ウチ、言ってるじゃん……トレぴのこと好きだって。どうして信じてくれないん？」
　眼前に見える彼女の顔からは、いつもの太陽にも似た明るさが消え失せ、代わりに夜闇の中で妖しく光るナニカが見える。濁ったガラス玉のように輝きを失くした瞳でこちらを見据えるヘリオスに恐怖を覚えざるを得なかった。

「信じられないなら、ウチが教えてあげる──私がどれくらい好きなのか」

”目が眩む光なんて、真っ暗闇と変わらない”
　そんなことを言ったのは誰だったか、場違いな思考を巡らせてる間に、ヘリオスの顔はトレーナーの鼻先に迫り────

続きは誰か書いてくれるので、私はこれにて失礼……