オリキャラ同士をAIで戦わせるスレ 第四幕

  • 11◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 19:35:37

    安価で出たオリキャラたちが戦っている様子をAIが短編小説化してそれを楽しむスレです。
    不定期進行な上AI生成の都合上納得のいかない結果になることもあります。



    ※相手が能動的に突ける弱点を必ずつけてください。
    ※AIの生成によるインフレは仕方ないですがそうでない限り勝てないほど強くするのはやめてください。
    ※スレ内で死んだキャラはifルート以外では復活しません。命には非常にシビアです。
    ※ここに出たキャラクターは基本スレ内でのみフリー素材です。要望があるなら必ず設定と一緒に記載してください。
    ※コテハンを本スレでつけていいのはスレ主のみです。

  • 21◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 19:36:08
  • 31◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 19:36:25

    キャラテンプレート
    名前:
    年齢:
    性別:
    種族:
    本人概要:
    能力:
    能力概要:
    弱点:
    要望(任意):

  • 4二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 19:50:27

    一旦ほしゅ

  • 5二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 19:56:44
  • 6二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 20:02:23

    まずは10まで

  • 7二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 20:02:35

    保守

  • 8二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 20:03:24

    ほしゅ

  • 9二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 20:03:42

    盾乙アンド保守

  • 10二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 20:05:41

    立て乙

  • 11二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 20:48:57

    11ゲッター

  • 12二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:06:32

    暇つぶしに現在の対戦カード
    阿久盧vsテラー
    見詰 叶vs一本槍鍛輝(いっぽんやりたんき)&釘鳥静日(くぎどりしずか)
    終わりを呟く者vsシャケ山サメ五郎
    アマダvsランスロット=ハイルハイト
    ノイシュ=トレミアvsハナシダレ

  • 13二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:12:46

    >>12

    サメ吾郎とかいうふざけた名前なのに大変お辛い過去持ちの男

  • 14二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:14:19

    >>13

    まだ10才のガキが背負っていい業じゃねぇんだよなぁ

  • 15二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:18:16

    一本槍と釘鳥親子が楽しみ…
    対戦相手がかなりギャグよりだから心を救ってくれる…くれたらいいな!

  • 16二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:23:34

    名前:風華
    年齢:14歳
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:性格は基本無表情で機械の様に思われがちだが意外と感情豊かでたまに表情も変わるくらいには人間的な少女。
    基本敬語だが何処か口が悪く毒舌で良くも悪くも慇懃無礼。
    業務的な面が目立つがわりとお人好しで、度々命令を無視して自分の意思で人を助けることも…だがツンデレなのか「勘違いしねぇでください、単なる気まぐれです。」等本人は認めない。
    あとわりと負けず嫌い。
    そして厨二病を拗らせている。
    周囲からも認められるほどの美少女。
    「討滅する」が口癖。
    能力:銀色の変革(シルバーデュナミス)
    能力概要:風を操るのは勿論、嵐を起こしたり局地的な雷雨等も起こせる。
    弱点:なし
    要望(任意):髪型:ハーフツイン
    髪色:黒髪に青緑のメッシュとインナーと緑のグラデーション
    目の色:ピンク
    服装:普段はフリルやリボン等が控えめなゴスロリだが戦闘時は自身が開発した黒色の機動力特化型ジャケット

  • 17二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:27:09

    >>12

    繰り上がりでノイシュ=トレミアからグラヴィタリス=エーテリアに変わったよ

  • 181◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 22:30:01

    こっちで私に対する質問募集です

  • 19二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:31:11

    >>18

    過労死しないでね?休めてる?

  • 201◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 22:31:41

    >>19

    まだ舞える

  • 21二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:32:03

    >>18

    オリキャラ相談です。 以下のキャラって問題ないでしょうか?

    名前:ゼイル=アンノウン

    年齢:感染から7日(感染前:28歳)

    性別:男性(※感染後、性別的肉体は崩壊)

    種族:ヒト →《 殺戮現象》罹患者

    本人概要:

    滅亡した並行世界から来た元・連合機構所属の高位異能者にして、戦場用跳躍術式の開発主任。空間干渉の精度は当代随一で、“点と点をつなぐだけで戦局を制する”とまで称された。

    だが任務中、機密区画で発見された概念災害「殺戮現象」に接触し、即座に感染。理性も肉体も失い、殺戮現象の運搬媒体として再構成される。

    現在のゼイルは、かつての跳躍能力をそのまま維持した状態で、殺戮現象を空間を越えて撒き散らす存在へと変貌している。

    能力①:

    空間跳躍術式《レイライン・フォールド》

    能力概要:

    ゼイルは任意の座標間を瞬間的に移動できる「術式型テレポート能力者」。(座標設置に数秒かかる)

    能力②:

    殺戮現象《カタストロフィア》

    能力概要(※ゼイルは“感染運搬体”であり、殺戮現象そのものではない):

    殺戮現象は、感染分子と接触することによって広まる未知の概念ウイルス。

    感染段階により以下のように殺戮衝動を拡大していく。

    殺戮段階進行:

    1. 第一段階:感染者は「自身以外の生物」を殺す衝動に支配される(訳5分)

    2. 第二段階:感染は接触物すべてに拡大し、無機物や環境までも殺戮対象となる(訳10分)

    3. 第三段階:空気、水、光、すべての接触物質が互いを殺戮し始める(約30分)

    4. 最終段階:分子結合が瞬間的にすべて切断されて気体となり、同一構造体の分子同士が互いに殲滅しあう。(訳2分)

    ゼイルは分子レベルでの概念抗体によって第一段階で抑制されている。

    弱点:

    • 殺戮現象自体は「物理的感染」が前提のため、空間遮断・情報遮蔽などで侵入を拒める

    • ゼイルの身体能力は鍛えた一般人並みであり、簡単に殺せる

    • 完全無風状態や極度の低温状態といった周囲の気体分子が動かない状態にすれば封殺できる

  • 22二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:32:58

    chatGPT……もといAIくんの調子はどうです?

  • 23二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:33:29

    >>16

    これはキャラ相談?

  • 24二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:33:47

    AI関係に強い人なんですか
    学校の授業でもそういうの勉強してたりします?

  • 251◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 22:34:58

    >>21

    問題なし

    >>22

    指示聞かないけど出てくるのはなかなかいい感じです

    >>24

    スレ始めるちょっと前に初めてAIに触れました

  • 26二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:37:50

    >>23

    キャラ提出です

  • 27二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:41:01

    >>25

    ほへー流石っすね

    初心者でこれほどのAIの文豪トレーナーとは…見事

    そもそもスレ主さんって小説書く人でしたっけ?

    前にも同じような質問があったらごめんなさい

  • 28二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:42:50

    前おっしゃってたと思うんですが、桃地詩緒ちゃん気に入っていただけたみたいで凄く嬉しかったんですけど、ロカちゃんみたいなサイコキャラの他には詩緒みたいなジャンプ主人公もお好きな感じですか?

  • 29二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:43:27

    好きなキャラトップ20

  • 30凡神作者25/07/06(日) 22:43:39

    好きな漫画教えて。

  • 31二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:44:52

    好きなキャラトップ30

  • 32二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:45:25

    >>26

    スレ主さんからの安価が出てからですよ

  • 331◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 22:46:42

    >>27

    昔挑戦するも文才なさ過ぎて断念

    >>28

    雑食ですね

    >>29

    >>31

    ちょっとまた今度で

    >>30

    呪術廻戦、進撃の巨人、スケットダンス

  • 34二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:48:19

    じゃあ好きなアニメと小説は?

  • 35二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:49:25

    スレ主さん的に供犠塚一族ってどうなの?
    能力使えば死ぬ!みたいな感じだけど

  • 361◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 22:51:19

    >>34

    呪術廻戦、進撃の巨人、鬼灯の冷徹、KATOON

    小説はあんま読まないですね。ラノベは読みますけど

    マインクラフト始まりの島とか読んでました

    あと鶏でばあちゃんの優しさ知るやつ

    >>35

    ああいう儚いキャラ大好きです

    でも対戦相手がよくないと戦闘ssとしては扱いずらいです

  • 37二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:52:48

    >>36

    でも対戦相手がよくないと戦闘ssとしては扱いずらいです

    デスヨネー

    相手が下衆外道ならある意味やりやすいけど巡る縁が良縁ばかりだから…

  • 38二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:54:21

    TOP10のレギオスってレギオス・ノヴァのことですか?それともレリギオスですか?

  • 39二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:54:55

    >>38

    横からだけどレギオス・ノヴァのほうじゃないっけ?

  • 40二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:56:12

    桃姫、花香、金子、覇修羅の四人で誰が一番好きですか?

  • 411◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 22:57:33

    >>38

    ノヴァだった気がする…読み込ませた中でのランキングなんでところどころおかしいんですよね

    >>40

    金子

    花香も好き

  • 42二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:59:01

    じゃあ供犠塚一族だと誰が好みですか?

  • 43二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 22:59:54

    もしかしてロットンに当たり強いですか?

  • 441◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 23:09:18

    >>42

    徒禍

    >>43

    キャラとしては好き。人としては共感は多少できるけど好きではない

  • 45二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:12:50

    このレスは削除されています

  • 461◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 23:18:07

    >>45

    私はまだこのスレに閲覧注意をつけるつもりはないとだけ

  • 47二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:21:56

    >>46

    ですよね…お蔵入りにしときます

  • 48二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:22:18

    天ぷらとそうめん美味しかった?

  • 49二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:23:00

    スレ主って何ラーメンが好き?

  • 50二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:24:00

    天ぷらの具材ってなにが好き?

  • 511◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 23:25:18

    >>48

    うまかったです

    >>49

    あっさり系が好きですけど時々二郎食べたくなります

    >>50

    ナスとキノコ系

  • 52二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:27:55

    >>36

    マイクラの始まりの島とはなかなか渋いチョイスを…!

    あれはシステムを理解してない状況の手探り感とか空気感が面白かった

  • 53二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:28:18

    >>51

    味覚が合いそうで嬉しいよ

    逆に苦手な食べ物は?

  • 541◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 23:29:45

    >>53

    ドラゴンフルーツ


    昔はケーキダメでしたけど今はいけます

    ピーマンラブ

    >>52

    センスありますね!

  • 55二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:29:53

    ドラゴン好き?
    どんなドラゴンが好きかとか

  • 56二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:31:29

    ピーマン生でいけます?
    私はいけます。ライフは減りますけど

  • 57二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:32:39

    そばとうどんは好きですか?

  • 58二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:34:30

    AIの調教の仕方が想像出来ないんだけど、何か参考にしてる教本とかあるんですか?

  • 591◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 23:41:34

    >>55

    喋らない普通のドラゴン好きです

    >>56

    私味覚が逝ってるのか大体いけます

    時々目覚ましにタバスコとレモン果汁のショットとかしてます

    >>57

    そばそばそばそばそば

    >>58

    1号の時に独学です

  • 60二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:44:32

    独学でこの文豪生み出してるとかヤベェな…

    ちなみに何のAI使ってるんですか?

  • 61二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:46:21

    CoCo壱のカレー何辛までいけます?

  • 62二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:47:00

    ロリとショタどっちが好きですか

  • 631◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 23:49:08

    >>60

    ChatGPT

    >>61

    CoCo壱いったことないですねぇ…

    >>62

    ショタ

  • 64二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:56:30

    好きな武器は?

  • 651◆ZEeB1LlpgE25/07/06(日) 23:58:25

    >>64

    武器!?…武器……游雲?

  • 66二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 00:05:23

    このレスは削除されています

  • 67二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 00:07:57

    >>66

    ここって実は匿名掲示板なんすよね…

  • 68二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 04:57:55

    このレスは削除されています

  • 69二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 06:48:59

    >>68

    すまんのう

    このスレキャラ募集はいつでもやってるわけじゃなくて

    基本的にスレ主が宣言してから募集してマッチングしてバトる形なんじゃよ

    前のスレとか見て貰えばなんとなく分かるから次にスレ主が宣言した時に投げとくれ…

    戦える日を楽しみにしておるぞ、フォッフォッフォッ……

  • 70二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 06:50:44

    このレスは削除されています

  • 711◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 06:53:09

    >>70

    コテハンは禁止です

  • 72二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 07:18:41

    >>71

    おはよう、スレ主

  • 73二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 11:32:58

    おつー

  • 741◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:31:02

    題名『稲穂は恐れをも刈り取る』

  • 751◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:31:36

    静かな田のあぜ道に、蠢く影が満ちていた。

    夕陽が赤黒く濁り、風に乗って死臭が流れ込む。
    カラカラと音を立て、無数の鈴が鳴る。それは骸の風鈴。
    首のない亡者の背骨に吊るされた、恐怖の呪詛具である。

    「……田んぼに入るな、って、言ったでしょ?」

    風に紛れて、少女の声が響いた。
    麦わらの編笠に、鈴が三つ。幼げな声と裏腹に、放たれる気配は土地の権威そのもの。

    その名は──阿久盧(あくろ)。
    畏れを知らぬ農地の守り神にして、田を荒らす者に容赦無き罰を下す“案山子の主”。

    「おやおや……可愛らしい。だがな、嬢ちゃん」
    「ワシは“ただの不法侵入者”やない。怖がらせに来たんじゃ」

    空が、割れた。

  • 761◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:31:48

    ──星ほどの大きさの髑髏が、月を喰らい、地平を踏み潰す。

    「始原の恐怖(オリジン・オブ・ドレッド)。さあ、肝試しの時間じゃよ、嬢ちゃん」

    大地が震える。亡者が這い出す。空気が塩を吹くように腐る。
    だが。

    「……あんたみたいなん、五万と見てきたわ」

    阿久盧は地面に片膝をつき、掌を土へ伏せた。

    「──権能、発動。『山神権現飛鳥墜』」

    無数の案山子が咲いたように立ち上がる。
    稲穂の香りと共に、一帯に「空」を否定する空間が広がる。

    テラーの巨大な脚が、止まった。

    「ほう……飛べぬようにする、か」
    「けどワシ、“歩いて”行くのも得意なんじゃよ?」

    ニタァと、髑髏が笑った。

    しかし阿久盧も笑っていた。編笠の奥、その瞳に宿るのは──

    「じゃあ、地面ごと落ちてもらおか。拒絶の狭間へな」

    両者の結界が重なる時、地が裂ける。
    神域の田に侵した恐怖と、それを拒絶する守護の力。

  • 771◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:32:49

    「さあて……驚かせるのは得意なんじゃが……」

    テラーが腕を広げた瞬間、空気が引き裂かれた。
    骸骨の指先から放たれる黒煙の霧──その正体は、恐怖で構成された精神毒。
    空を裂く叫びが、空間を軋ませ、存在の輪郭を曖昧にする。

    「これが“ワシら”の歓迎や……さあ、怖がってくれや……!」

    だがその黒煙は、何かに触れて歪んだ。

    阿久盧の足元、田の畔に立つ案山子が、結界の如く霧を弾いたのだ。
    一本ではない。左右に、背後に、無数の案山子たちが立ち並ぶ。

    「……これは“神の守り”。びびらすだけじゃ、通れへんよ」

    阿久盧が指を鳴らすと、案山子たちが一斉に動き出した。
    跳ぶ者、浮く者、舞う者、全てを弾き返す結界の網。

    それはまるで、空間そのものを地に引きずり落とす意思の集合だった。
    テラーの骸骨の腕が地面に向かって引きずられ、脚が地に縫い付けられる。

    「ほう……これは、なかなか面白い……!」

    テラーの体が、崩れるように霧と髑髏の大群へと分裂する。

  • 781◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:33:10

    地を這い、空を裂き、恐怖の渦で阿久盧を包囲しようとする──だが。

    「なら、全部まとめて……落としたるわ!」

    阿久盧が編笠を押さえ、静かに目を閉じる。

    「地の護り手に逆らった罰、受けとってもらうで……」

    再び、案山子が増殖する。
    稲穂の波のように揺らぎながら、円陣を描き、全方位から空間を閉じる。

    テラーの霧も、髑髏も、一切“飛ぶことが許されない”。

    恐怖の呪詛が地面にぶつかり、砕けた。
    髑髏の山が、重力に耐えきれず軋むように崩れていく。

    だがその中、テラーの眼窩が赤く光る。

    「……ああ、怖い怖い……良いねぇ……!」

    恐怖を感じたその瞬間、テラーの本体に力が戻っていく。

    阿久盧の眉が僅かに動いた。

    「なるほど、あんた、“怖がらせること”で強うなるんか……?」

    その呟きとともに、少女の小さな身体に緊張が走る。

    田の神の守護と、恐怖の化身の力が、拮抗の縁に立ち始めた。

  • 791◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:33:30

    空気が震えていた。案山子たちの結界が、テラーの恐怖波動によって徐々に軋みを上げている。

    「さあ、怖いか? 泣いてええんやで?」

    テラーの笑みは、嘲りよりも楽しげだった。まるで、祭りの余興を見ているかのように。

    「……ちょっとだけ、怖いわ」

    阿久盧は、ぽつりと呟いた。

    「けどな」

    編笠の奥で、ぎゅっと瞳が細められる。

    「怖いからって、逃げてええ理由にはならんのや」

    静かだった声が、地を這うように鋭くなる。次の瞬間──彼女の周囲に、案山子たちが一斉に地面からせり上がった。

    「うちの田んぼは、誰にも踏み荒らさせへん! たとえそれが“世界で一番怖いモン”でもな!」

    ズン――!!

    音を立てて、案山子たちが地面に杭を打ち込む。次の瞬間、全方位への“飛翔拒絶結界”が完全展開された。

  • 801◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:33:53

    空間がねじれ、あらゆる浮遊物が弾き飛ばされ、地に叩きつけられていく。

    「なんやと……?」

    テラーの霧が、初めて揺らいだ。
    彼の周囲に漂う恐怖の風船が、案山子の放つ波動によって次々と破裂していく。
    その一つ一つが、まるで魂の悲鳴を上げて。

    「怖がってくれるほど、ワシは強なる。せやのに──」

    テラーの声が、次第に焦りを帯び始める。

    「なんでや。なんでお前、怖がっとるのに、引かへん……!」

    「うちには守らなあかん田があんねん。うちの背ぇにゃ、この国の畦道全部がついとるんや」

    阿久盧の小さな拳が、地面を叩いた瞬間。
    巨大な案山子が天を突き破って出現した。

    その姿はまるで、農神の巨像。片手に持つは鋤、もう片手には縄。

    「テラー。うちはあんたを怖がったまんま、倒す」

    テラーの骨の眼が、一瞬だけ何かを見つめるように動いた。

    「……ええな、それ。ワシが一番嫌いで、一番好きなモンや……!」

    そして――テラーの身体から、真紅の呪詛が噴き上がる。

    「なら見せたるわ、ワシの“真打ち”。肝試しの大将や!」

  • 811◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:34:32

    ドン――

    大地が砕け、黒い衝撃波が広がる。
    テラーの体躯が、地を蹴って跳躍したのだ。数十メートルもの巨体が、まるで風のように宙を舞う。

    「ふんぬあああああッ!!」

    がしゃどくろの顎が開き、無数の亡者の叫びが奔流となって解き放たれる。空間そのものが悲鳴を上げるように歪み、恐怖の呪詛が嵐のように吹き荒れる。
    阿久盧の周囲の案山子たちが、次々と黒炎に呑まれて燃え尽きていく。

    「……ッ!」

    彼女は奥歯を噛み締めた。確かに“恐怖”している。小さな身体が震えている。
    けれど、それでも彼女は、逃げなかった。

    「ふるえてもええ。負けそうでも、踏ん張るのが、うちの正義や!」

    両手を広げ、阿久盧は残された全ての力を注ぎ込み――

    「《権能・山神権現飛鳥墜(さんじんごんげんとぶとりおとし)》・大結界展開ッ!!」

    今度は、彼女の足元から案山子がせり上がる。
    それはこれまでのものとは異なる、“生きている”かのような案山子。
    藁と布と木で編まれたはずのそれらは、まるで神霊の依代。田畑に宿る守護の意思が、形を持って集ったもの。

    その中心に、ひときわ大きな案山子が浮かび上がる。

    「……あれが“本殿”か……!」

    テラーの片目がぎょろりと揺れた。

  • 821◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:34:47

    恐怖の具現であるテラーは感じ取っていた。あの案山子が、この空間すべての重心になっていることを。

    「なら壊すだけや……!」

    拳を振り上げ、テラーが突進する。恐怖の呪詛を纏い、黒雷のように襲いかかる。

    だが、その瞬間――

    テラーの巨体が空中で停止した。

    いや、落ちたのだ。

    「……飛んだら、アカン言うたやろ?」

    阿久盧の声が、静かに響いた。

    テラーは地面に叩きつけられた。空中から跳躍するという行為そのものが、彼女の案山子によって否定されたのだ。

    「お前……飛んどったんか……」

    テラーは、地に伏せたまま笑った。

    「ほんまに、ええ度胸や……」

    阿久盧は、額の汗を拭うと、編笠をぐっと深くかぶり直した。

    「……次で、決めるよ」

  • 831◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:35:23

    巨体が地に伏し、風が静かに流れた。

    空を覆っていた呪詛の雲は、ゆるやかに散り始めていた。
    テラーの骨の巨体は、何度も地に打ちつけられ、その圧力で大地が抉れ、田畑のような模様を刻んでいる。

    「……飛べなければ、何もできんか。情けねぇ話だ……」

    がしゃどくろの目がゆらゆらと揺れた。

    だがその眼光にはまだ、消えない光が宿っていた。

    「けどな……嬢ちゃん。恐怖っちゅうのは、そう簡単に消えるもんやない。
    抑え込もうが、封じようが……人の心に、じわじわと滲むもんや。見えへん毒みたいにな」

    「……それでも、うちは守る。人の暮らしと、田の平穏。
    怖さは、乗り越えたらええ。大地踏んで、生きとる限りな……!」

    阿久盧の指先がふわりと動く。
    その周囲に、数千を超える案山子の群れが現れた。
    それぞれの胸元には、風に揺れる護符と、稲穂を編んだ十字の紋。

    そして、**“本殿案山子”**が再び立ち上がる。

    その背に風が吹き、稲の香が満ちる。
    次の瞬間、阿久盧の掌が掲げられた。

    「《山神権現・最終告解──大鳥狩(おおとりがり)》」

    無数の案山子が一斉に腕を伸ばし、空中を羽ばたくテラーの霊体を掴んだ。

  • 841◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:35:37

    それは、羽ばたくもの、跳ねるもの、**「恐怖に飛びつこうとするもの全て」**を撃ち落とす力。

    どれだけ霊的存在であっても、それが“浮かぶ意志”を持つ限り、彼女の田畑には立ち入れない。

    「……っく、くは……ははは!」

    テラーが、笑った。

    「ええわ!おもろい!ええ肝試しやったで……!
    もう今時、こんな戦いできる奴ぁおらん……!」

    がしゃどくろの体が崩れていく。
    骨が砂となり、呪詛が煙となって昇っていく。

    「……せやけどな、忘れんといてや。
    “怖さ”は無くならん。けど、お前なら……たまには“ええ怖さ”も教えてやれ」

    テラーの骸が、静かに崩れ落ちた。

    阿久盧は編笠を脱ぎ、そっと手を合わせた。

    「うん。うちは……忘れんよ。
    “怖い”を乗り越えたその先に、ちゃんと“収穫”があるってこと、な」

    風が吹く。

    案山子たちは静かに地に帰り、田神の少女は、その中心で立ち尽くしていた。
    空には、稲穂色の夕日。

    彼女の背中は小さいが、そこに揺れる影は、山神の威厳そのものであった。

  • 851◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 13:35:48

    以上

  • 86二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 13:38:35

    よかったぁー!

  • 87二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 13:41:20

    神域クラス同士の戦いは見ごたえあるな

  • 88二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 14:02:46

    ザ能力バトルって感じ
    好き

  • 89二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 14:31:22

    テラーは消滅しては無さそうだなぁ
    今はいなくなっただけでまた出現しそう

  • 90二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 14:39:34

    >>89

    まぁ恐怖の化身的存在らしいしいつか現れるんじゃ無い?

    それでも今は乗り越えたから安心

  • 911◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 14:41:18

    すいません飯食ってました

  • 92二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 14:45:50

    >>91

    良いね

    何食べたん

    当ててみようカツ丼だ

  • 931◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 14:49:49

    >>92

    豚の心臓食ってました

  • 94二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 14:50:06

    >>93

    直で?

  • 951◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 14:50:53

    >>94

    焼きましたよ?一応

  • 961◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 14:53:03

    は、今度殺した敵の心臓食べるキャラ作ろうそうしよう

  • 971◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 14:57:05

    題名『鋼の父と幽き娘、視線の檻を斬る』

  • 981◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 14:57:46

    小雨のぱらつく夕暮れ、古びた高架下に一本槍鍛輝の足音が響いていた。
    コンクリートの割れ目に咲いた名も知らぬ草を一瞥し、彼は煙草をくわえる。

    「静日。ここ、何かいるな」

    「……うん。ひとり、こっちを見てる」

    いつものように彼の隣に立つ、白いワンピース姿の幽かな少女──釘鳥静日が、寂しげに答える。
    その視線の先、アーチの影に、小柄な女の子が佇んでいた。

    濡れた髪に、オーバーサイズのパーカー。伏し目がちで、何かを抱きしめるように腕を前で組んでいる。
    だが彼女は、確かに鍛輝たちを“見て”いた。

    「……お、お前……裏の人間じゃない、よね?」

    か細い声で問いかけた少女の目が、鋭く細められる。
    その瞬間、鍛輝の全身が、ふっと重くなった。まるで“視線”そのものが網のように絡みつく感覚だった。

    「視られてる……の、か」

  • 991◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 14:57:56

    鍛輝が目を細める。直感が警鐘を鳴らしていた。

    「……名前は、見詰叶。オタクなんですけど……」

    「オタク……?」

    「べ、別に変な意味じゃない……好きなアイドルがいて、その人に、ちゃんと“見られる”ために……強くなろうって、思っただけで」

    その瞳に宿った微かな火は、少女の決意を物語っていた。
    虚弱な体、内向的な過去──それでも彼女は、前を向こうとしている。

    静日がそっとつぶやく。

    「この人……きっと、自分を見てほしいんだ」

    その言葉を受けて、鍛輝は鞘に手をかけた。

    「だったら、相手になるだけだ」

    見詰叶の両目が細く光る。

    視線が交わる――だが、心は交わらない。
    ひとりの剣士と、ひとりの少女の、奇妙な戦いが始まろうとしていた。

  • 1001◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 14:58:16

    視線が交わった瞬間、空気が歪んだ。
    見詰叶の足元に、虹色の残像が残る。彼女が動いたわけではない。彼女の視線が空間を裂いたのだ。

    「っ──!」

    一本槍鍛輝が反射的に身を引いたとき、その場所には目に見えない何かが鋭く突き刺さっていた。
    音も風もない。だが確かに、あの一瞬の“視線”は殺意そのものだった。

    「当たってたら……首が落ちてたな」

    彼が低く呟いたその背後で、ふわりと静日が浮かぶ。
    白く細い指が、ふわりと鍛輝の背に触れる――ように見えるが、触れられはしない。

    「気をつけてね。あの子の“視線”、まっすぐじゃないから」

    「──ああ。斜めに斬るか」

    見詰叶は虚弱な身体を無理に押しながら、ふらついた足取りで距離を詰めてくる。
    その瞳だけが、鋭く、鋭く、まっすぐで。

    「ねえ……避けてみて?」

    そう囁いた刹那、彼女の目が鍛輝の肩を捉える。
    その視線が“物質”に変わり、鋼のような槍となって伸びた。

    だが──

    「その程度、見切る」

    一閃。

  • 1011◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 14:58:28

    鍛輝の剣が、空気のひび割れごと斬り払った。

    だが見詰は怯まない。むしろ、頬を紅潮させるようにして、呟く。

    「……すごい。じゃあ、こっちも──もうちょっと、ちゃんとやるよ?」

    彼女の目が、鍛輝ではなく、“静日”を見据えた。

    「!」

    静日の霊体がぐらりと揺れる。

    「──やめろ」

    鍛輝の声は低く、静かだった。

    「その目で、俺の娘を見るな」

    見詰叶は、一瞬だけ戸惑う。

    その隙に、剣が地を裂いた。雷鳴のような音とともに、ビルの壁が崩れ、鉄骨が落ちる。

    視線の攻防、そして剣の一撃。
    次なる衝突は、互いの核心を抉る一歩となる。

  • 1021◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 14:59:34

    コンクリートの瓦礫が舞うなか、見詰叶の瞳は鋭く研がれていた。
    その細い身体からは想像もつかないほどの意志の光が、双眸から放たれている。

    「オタク舐めんなって……言ったでしょ」

    地面に足をついたまま、彼女は動かない。だがその視線が、鍛輝の動きを封じていた。

    「……動きが鈍ったか」

    鍛輝の額に汗が滲む。足を一歩動かそうとするたび、彼の視界に“叶の視線”が重くのしかかる。
    まるで何十本もの鎖で全身を引き留められているような重圧。

    「視線を、物質にする……だけじゃないな。俺の動きすら“見られている”……」

    「視線って、怖いよ。見られるだけで動けなくなる。そうやって、私はずっと隠れてた」

    叶の声は平坦だが、そこには激情が込められていた。

    「でも今は──“見てほしい”って思える。だから私は、振り向かせるために戦う!」

    その言葉と同時に、視線が放たれた。
    物質化した“視線の刃”が三方向から鍛輝を襲う。

    「っ……静日!」

    「うん!」

    霊体の少女が、その手を胸に当てる。魂を削るようにして供犠の術が発動され、

  • 1031◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 14:59:44

    鍛輝の肉体にわずかな奇跡が宿る。

    「霊脈、一瞬だけ通したよ。今だよ、お父さん!」

    鍛輝が踏み込む。
    視線の束を踏み抜き、心臓を穿とうとする“視線の槍”を斬る。
    剣閃が、視線を引き裂いた。

    「──ッッ!」

    叶の足元がふらつく。

    鍛輝が間合いを詰める。
    その剣は、ただまっすぐに振り下ろされる。殺す意志も、斬り伏せる覚悟も持たず、ただ真っ直ぐ。

    視線と剣が交差した瞬間──

    「……私の、負け……?」

    叶は、自ら視線を逸らした。

    その場に、静寂が落ちた。

    だが戦いは、まだ終わってはいなかった。

  • 1041◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:00:09

    視線を逸らしたその一瞬、見詰叶の身体がふらりと傾ぐ。
    彼女は膝をつき、呼吸を整えるように胸を押さえた。

    「……はぁ……やっぱり、体力なさすぎ……」

    すでに顔は真っ赤。息も絶え絶えだ。けれどその目だけは、まだ戦意を失っていない。
    その姿に、鍛輝は剣を引いたまま、言葉を探す。

    「……殺すつもりはない。お前の“視線”、……何かに届かせたくて戦ってるんだな」

    「うん……アイドルに、振り向いてほしくて」
    叶は、照れくさそうに笑った。

    その笑みに、静日がぽつりと呟いた。

    「お父さんと一緒だね……誰かに、触れたいっていう気持ち」

  • 1051◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:00:19

    鍛輝は黙っていた。だが、手にした剣の柄をわずかに強く握りしめる。

    「それでも俺たちは──触れられない」

    「……?」

    「幽霊みたいに、生まれられず、ただ生きてる。そんな俺たちには、お前みたいにまっすぐな目が……少し、眩しい」

    叶は立ち上がろうとするが、足がついてこない。
    鍛輝は歩み寄り、その前にしゃがみこんだ。

    「……やっぱ、オタクが最強ってことで……いいかな……」

    苦笑する叶の頭に、鍛輝の手が乗った。
    その手は、ごつごつとした硬さがあったが、どこか人間らしい温もりを残していた。

    「勝敗じゃねぇ。お前の戦いは、ちゃんと届いたよ」

    そう言って鍛輝は立ち上がる。静日がそっと、彼の後ろに寄り添った。

    「もう一度、歩こうか。……俺たちの奇跡を探しに」

    そして二人は、傷ついた少女を背に残して歩き出す。
    視線の戦場は、静かにその幕を閉じた。

  • 1061◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:00:29

    以上

  • 107二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 15:04:54

    よかったーっ!
    こう言うの好きよ大好きで堪らないわ!!

  • 108二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 15:10:14

    絵師とか降臨しねぇかな~

  • 1091◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:22:35

    題名『終わりの時計と泳ぐ影』

  • 1101◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:22:50

    夜の闇に、静かな不協和音が響いた。
    「チクタク……チクタク……」

    空に浮かぶ巨大な時計の針が、刻一刻と進む。
    その中心に立つのは終わりを呟く者。中性的な外見のアンドロイドの姿だ。彼の眼差しは冷たく、すべてを見透かすように軽蔑を込めて宙を見つめていた。

    彼の存在は、この世界に終焉をもたらす。認識した相手は例外なく、必ずや終わりの時を迎える運命にある。時計が一周し、針が零れるその瞬間、すべてが断絶されるのだ。

    そんな終焉の使者の前に、鮫の背ビレを背負った少年が姿を現す。
    シャケ山サメ五郎。彼はかつて人間だったが、過酷な実験により鮫の力を宿したキメラだ。10歳の少年とは思えぬ異形の姿で、鋭い爪と力強い体躯を持つ。

    五郎は夜風に吹かれながらも、ひるむことなく終わりを呟く者を見据えた。彼の瞳には恐怖よりも闘志が燃えていた。

    「俺の時間は、まだ終わってねぇ……」

    そう呟くと、五郎の身体は淡い光を帯び、すり抜けるように動き出す。水の中を泳ぐような滑らかな動きで、空間の境界を自在にくぐり抜ける。

    だが終わりを呟く者は動じることなく、冷ややかに呟いた。

    「終わりは避けられぬ。お前の抵抗など、意味がない」

    夜空に響く時計の音が、刻一刻と迫っていた。

  • 1111◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:23:05

    シャケ山サメ五郎は闇夜の中を縫うように動いた。
    彼の身体はまるで水中を泳ぐかのように空間をすり抜け、終わりを呟く者の攻撃をかわしていた。背びれの感覚が鋭く、わずかな気配を逃さない。

    「チクタク……チクタク……」

    空に浮かぶ巨大な時計は、無慈悲に針を刻み続ける。時計の音はまるで死の鼓動のようであり、時間の終焉を告げている。

    終わりを呟く者は冷静にその場に留まり、鋭い目で五郎の動きを分析した。戦闘能力自体は乏しいものの、この終焉の力は絶対的である。

    「お前はただの肉体だ。私の時計が一周すれば、すべては終わる」

    だが五郎はひるまない。幼い身体ながら、内に秘めたる獰猛な闘志がそれを許さなかった。

    「俺は生きたいんだ。逃げたり諦めたりしねぇ」

    五郎は一瞬の隙をつき、背びれを強く振るって終わりを呟く者に急接近。物理攻撃は意味をなさないと悟りつつも、その速さと不可視の動きで圧をかける。

    終わりを呟く者は淡い笑みを浮かべ、やがて小さな時計を片手に取り出した。

    「時間は進む……だが、私もまた動く」

    呟く者の動きがわずかに加速した瞬間、空間の歪みが起きる。時間がねじれ、周囲の景色が揺らぐ。五郎の動きを封じるための一手だ。

    戦いはまだ始まったばかり。終わりへのカウントダウンは容赦なく迫る。

  • 1121◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:24:13

    終わりを呟く者の放つ異様な時空の歪みが、五郎の動きを鈍らせた。
    宙に浮かぶ巨大な時計の針は狂ったように回り、空間が波打つ。そこでは時間がまともに流れず、五郎の肉体感覚も狂い始めていた。

    「このままでは……」
    五郎は焦りながらも、己の本能と直感を頼りに動く。すり抜けの能力を最大限に使い、ひらりと終わりを呟く者の攻撃をかわす。

    だが、時計の針は着実に進む。
    彼の敗北が近づいていることを告げている。

    「だが、俺にはまだ負けられねぇ理由がある」

    五郎の背びれがかすかに震えた。彼の心には、かつて名前をつけてくれた少女の面影があった。彼女のために、彼は生き延びなければならなかった。

    終わりを呟く者はその心情を読み取るかのように嗤う。

    「恐れも諦めも知らぬただの獣よ、時間は止まらぬ」

    時空の歪みがさらに激しくなり、五郎は周囲の光景が断片的に崩れ落ちるのを感じた。

    だが、その刹那。五郎の身体が光り始め、不可視の水流のような波動が周囲に拡がる。

    「DIVE、起動!」

    水中の如く自在に動く彼の能力が、時の罠を突き破ろうとしていた。

  • 1131◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:25:43

    五郎は時の牢獄に囚われながらも、持てる全ての力を解放した。
    彼の身体は流動し、あらゆる当たり判定をすり抜ける水のように柔軟な形態へと変貌する。

    終わりを呟く者の放つ時空の歪みを掻い潜り、五郎は間合いを詰める。
    空間を抉るような衝撃波も、彼の身体には届かない。

    「俺はまだ終わらねぇ!」

    彼の瞳に宿る決意は揺らぐことがなかった。
    少女の面影が、彼の動きを支え、心の奥で強く燃えている。

    終わりを呟く者は不敵な笑みを浮かべる。
    「時は終わりを告げる。しかし、まだ遊び足りぬか?」

    その言葉と同時に、巨大な時計の針が再び加速する。
    だが、五郎はその加速すらも、DIVE能力の高速移動でかわしてみせた。

    「このままじゃ終わらせねぇ!」

    水中を泳ぐが如き動きで、五郎は相手の懐に飛び込む。
    鋭い爪が機械の隙間を狙い、隙をついて致命傷を狙った。

    終わりを呟く者は身を翻し、わずかに防御の隙を見せた。
    だが、終わりの時はまだ完全には訪れていない。

    時空の中での死闘は、まだ終わりを告げなかった。

  • 1141◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:28:20

    サメ五郎の肉体が空間を切り裂いて踊る。
    地面を泳ぎ、空気を抜け、コンクリートの壁すら何の抵抗もなく突き抜けるその動きは、もはや一個の怪物というより、“水”そのものだった。
    だが、その流動の先には、なお変わらず浮かび続ける巨大な時計。

    ――残り、三分。

    「チクタク、チクタク」
    呟く者の声は止まらない。声が鳴るたびに、時間が削れ、五郎の“存在そのもの”が摩耗していく。

    (違う……怖いんだ、俺は……)

    全身を巡るのは恐怖だった。
    自分の奥底に眠る、血の匂いを好む本能。
    人間を、少女を、食べてしまいそうになる“自分”の化け物めいた本性。
    それを思い出すたびに、五郎の意識は揺れる。

    ――けれど、彼はそれを認めた。

    「そうだよ、俺は怖ぇ……! でも、それでも……進むって決めたんだ……!」

    心に張り巡らせた鎖を断ち切るように、五郎は背ビレを振るわせて突進する。
    呟く者の虚ろな瞳が、わずかに揺れた。

    「……その目。恐怖を抱いたまま、それを越える気か」

    五郎は一切の逡巡を捨て、全身をねじ伏せるように跳躍。

  • 1151◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:28:35

    DIVEを解除、その一瞬で空間に抉れた軌跡が重なり、呟く者の足元を飲み込む。

    「行けぇえええッ!!」

    五郎の咆哮が空間を震わせる。
    空間を抉り、ねじれ、引き裂く。その手は、時計を構成する空間そのものへと届きかけていた。
    だがその瞬間、時は“止まった”。

    ――残り一分。

    時計の針が、一段と早くなる。
    呟く者の声が、脳髄に直接響くように染み渡る。
    「それでも、間に合うとでも?」

    答えは、まだ語られなかった。

  • 1161◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:29:58

    「チクタク、チクタク――」
    呟く者の声はもはや世界の鼓動だった。
    空に浮かぶ巨大な時計の針は、最後の一周を終えようとしていた。

    「この世界は“終わる”。全ては“終わる”。お前もまた例外ではない」

    残り、十秒。
    サメ五郎の筋肉が、かすかに震えた。
    いや、それは震えではなかった。恐怖の震えではない――“決意”の咆哮が内側から溢れ出していた。

    (怖い。終わりたくねえ。消えたくねえ。でも――)

    「オレは、こんなとこで終わってたまるかぁぁぁ!!」

    背ビレが波打ち、DIVEが発動される。
    次の瞬間、サメ五郎の姿はまるで“空間の中の刃”そのものだった。

    「終われぇえええええええええええッ!!」

    DIVE解除。
    その瞬間、呟く者のすぐ目前、時計の中心軸を構成する“空間”が弾け飛ぶ。
    膨大な“当たり判定”の抉れが、終焉の機構を真正面から破壊するように斬り裂いた。

  • 1171◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:30:09

    ゴン、と耳障りな鐘の音。
    それが、時の終わりではなかったことを告げた。
    空に浮かんでいた時計が砕け、細かく砕けたギアが虚空に吸い込まれていく。

    呟く者は、唇の端を持ち上げた。

    「なるほど……恐怖を抱いたまま、それでも進む者には、“終わり”すら届かない……か」

    その肉体が、霧のように揺らぎ、消える。

    サメ五郎は荒く息を吐いた。血が口から流れている。
    体は限界だった。背ビレにもひびが入り、立っているのがやっとだ。

    けれど、彼の瞳には光が宿っていた。

    「……やっぱ、俺……まだ、生きてていいんだよな……?」

    呟く者は、もうそこにはいない。
    “終わり”は拒まれたのだ。

    静寂が戻った廃墟の中で、少年の姿をした怪物は――確かに“自分”という存在を、貫き通した。

  • 1181◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 15:30:21

    以上

  • 119二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 15:32:08

    かっこいいぞー!!五郎ー!!

  • 120二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 15:32:59

    今回は恐怖を乗り越える系多いな 最高

  • 121二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 15:34:38

    バチクソかっこええ…

  • 1221◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 17:17:26

    題名『錆と逆風の刻』

  • 1231◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 17:17:45

    夕暮れの荒野に、二つの影が静かに近づいていた。一人は疲れた表情の老戦士。長い年月を感じさせる錆びついた槍を背に、ゆっくりと歩くランスロット=ハイルハイトだ。かつては数多の戦場を駆け抜けた英雄だが、今は隠居して酒と回想に浸る日々を送っている。

    もう一人は、細身の男。鋭い眼光と冷たい空気を纏い、長い年月を生き抜いた天邪鬼、アマダ。彼は強者を嫌い、弱者も見下す厄介な存在だった。身体は貧弱だが、その能力は相手の強さを逆転させる恐ろしいものだ。

    二人の視線が交差した瞬間、周囲の空気が一変する。ランスロットは葉巻の煙を吐きながら、静かに口を開いた。

    「四百年も生きているらしいな。いまだに強者を憎むとは、呆れた奴だ」

    アマダは小さく笑った。

    「強者は嫌いだ。弱い者たちも哀れだがな。お前のような錆びついた英雄は特に滑稽だ」

    ランスロットの瞳が鋭く光る。

    「落ちぶれても、槍一本でお前を打ち砕く自信はある」

    二人の間に、張り詰めた静寂が広がった。やがて、戦いの火蓋が切って落とされる。

  • 1241◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 17:18:09

    陽は完全に沈み、荒野を冷たい夜風が吹き抜けていた。ランスロットは腰に携えたボロ槍を握り締め、その重みと冷たさを肌で感じていた。年老いた身体は衰えを隠せず、動きの鈍さに不安を覚えつつも、槍術だけはまだ色褪せていないことを自らに言い聞かせていた。

    その対峙する相手、アマダは細身の体を揺らしながら、嘲るような笑みを浮かべる。四百年の生を誇る彼の言葉は冷たく鋭い。

    「見えるか? このボロ槍と錆びついた身体が、俺に通じると思うのか?」

    ランスロットは静かに答えた。

    「肉体は衰えても、技は心だ。己の槍術でお前の力を逆手に取ってみせる」

    アマダは肩をすくめ、嘲笑を強める。

    「俺の能力は『リバースパワーバランス』。強ければ弱く、弱ければ強くなる。つまり、お前の如き強者は力が減退し、俺のような弱者が強くなるのだ」

    ランスロットはその言葉を聞きながらも、眼差しを揺るがせなかった。

    「ならば、お前の“強さ”を確かめてやろう」

    闇の中、二人の呼吸が徐々に荒くなり、緊張が静寂を切り裂いた。槍の柄が地を擦る音が、闇に鋭く響く。

    やがて、アマダが皮肉な嘲笑を浮かべながら呟く。

    「楽しみだ、錆びた英雄よ。お前の槍が俺の“逆境”を打ち破れるか――」

    戦いの幕が静かに上がろうとしていた。

  • 1251◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 17:19:25

    夜の荒野に、ひときわ激しい気配が満ちていた。月明かりに照らされた二人の影は、まるで時を止めたかのように睨み合い、互いの存在を測り合う。

    ランスロット=ハイルハイトは、四十年近くの歳月を経て老いた身体の鈍さを自覚しながらも、槍の握りは揺るがない。疲れた眼差しの奥には、燃え盛る誇りが灯っていた。

    「歳月は俺を蝕んだが、槍術の魂は消えてはいない。まだまだ終わりじゃない」と、静かな決意を込めて呟く。

    一方、アマダは冷笑を浮かべ、身体能力の低さを逆手に取ったリバースパワーバランスの能力を発動させる。弱きは強く、強きは弱くなる理を持つ彼は、老兵の力を削ぎ、自らの俊敏さを異常に高めた。

    「弱者の力を侮るな。四百年の生は無駄じゃない」
    アマダの動きが刃のように鋭くなり、ランスロットへ襲いかかる。

    槍の柄が地を打ち、老兵は動きを読み、最小限の動作で攻撃をかわす。だが身体は重く、かつての俊敏さは影を潜めていた。

    「お前のような存在に負けるわけにはいかん」
    ランスロットは意地と誇りを胸に、かすれた声で叫んだ。

    攻防の中、アマダは冷ややかな嘲笑を浮かべる。

    「弱さこそが俺の強さ。強さは俺の弱さ。逆転こそが真理だ」

    その言葉通り、アマダは老兵の心の隙間を突くように、鋭利な一撃を放つ。

    だが、ランスロットの槍術は熟練の技で、その刃をかろうじて受け止める。互いの本能が剥き出しになり、戦いは激しさを増していった。

    冷たい風が巻き起こり、砂塵が舞う荒野に、二人の闘争の音だけが響いた。

  • 1261◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 17:21:07

    荒野の風が一瞬静まった。ランスロットの呼吸は荒く、身体の重さを痛感しながらも、瞳には揺るがぬ決意が宿っていた。彼の槍は老いを隠せぬ肉体の延長であり、誇りそのものだった。

    アマダは相変わらず冷笑を浮かべ、体の強弱のバランスを自在に操る能力を駆使していた。強者のはずのランスロットの動きは確かに鈍い。しかし、それこそがアマダの逆境を作り出していた。

    「なにをそんなに必死になっている?錆びついた老いぼれよ」

    とアマダが嘲りの声を投げつける。

    「誇りだ。どんなに衰えても、心まで錆びつくわけではない」

    とランスロットは応じる。

    激しく槍を交える音が響く。互いの一撃は、相手の信念を砕こうとする刃そのものだった。

    アマダは能力を最大限に発動し、ランスロットの動きをさらに鈍らせようとしたが、老兵は何度も耐え、技術で切り返す。

    「弱さを嘲るな、己の信念を軽んじるな」

    とその言葉とともに、ランスロットは渾身の一撃を放った。アマダはそれを受け、顔に僅かな驚きを見せた。

    誇り高き老兵と天邪鬼の冷酷な力が、荒野に火花を散らす。戦いは最高潮に達していった。

  • 1271◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 17:21:58

    冷え切った夜風が荒野を吹き抜ける。ランスロットの呼吸は浅く、体の節々が痛みを訴えていた。年老いた肉体は次第に限界を迎えつつある。しかし、彼の瞳はまだ燃えていた。失われぬ誇りとともに。

    「まだ……終わらん……」

    震える声でつぶやきながら、ボロ槍をしっかりと握り直す。疲労に負けそうな肉体に鞭を打ち、己の全てを懸ける覚悟を示していた。

    その隙を逃さず、アマダは冷笑を浮かべて近づく。

    「弱者のくせに、よくもここまで持ちこたえたものだ」

    リバースパワーバランスを最大限に活かし、身体能力を極限まで引き上げる。かつての英雄に容赦ない一撃を叩き込もうと、鋭い手が伸びた。

    しかしランスロットは技術と経験を頼りに、防御と反撃の間合いを保つ。疲弊した身体に鞭を打ち、わずかな隙をついて槍を振るう。

    「俺の誇りを踏みにじることは許さん」

    その声は荒々しくも真っ直ぐに響き、彼の魂の重みを伝えた。

    荒野に響く槍の金属音とアマダの嘲笑。二人の激闘は極限に達し、勝敗は依然として見えないままだった。

  • 1281◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 17:22:33

    薄明かりが荒野を染め始める頃、ランスロットの体は重く、疲労が全身を蝕んでいた。槍を握る手にも力が徐々に抜けていく。しかし、その瞳はまだ熱く燃えている。戦いの中で燃え上がった誇りと信念が、彼を支えていた。

    対するアマダもまた、冷たい笑みを浮かべながら疲労の色が濃くなっていた。リバースパワーバランスの力は強大だが、弱い身体に過度の負荷をかけることも事実だった。彼の動きは次第に鈍くなり、あの若々しい皮肉屋の表情にわずかな焦りが見え隠れする。

    「終わりだ、老兵よ」

    アマダの声は冷たく、かつての自信は影を潜めていた。

    「いや、終わらせぬ」

    ランスロットは低く、揺るぎない声で応えた。彼にとってこの戦いは、ただの力比べではなく、誇りを賭けた最後の抗いだった。

    二人は最後の力を振り絞り、荒野の地に激しい衝突音を響かせた。槍の鋭い一撃がアマダの防御を切り裂き、冷徹な瞳に一瞬の動揺が走る。その隙を逃さず、ランスロットは渾身の一突きを放った。

    アマダはぐらりとよろめき、やがて静かに地に伏した。長き戦いの果て、勝敗は決した。

    ランスロットは槍を地に突き、荒い呼吸を整えながらも、深い達成感を噛み締めていた。彼の勝利は単なる肉体の優越ではない。長年の経験、技術、そして揺るがぬ誇りと信念の勝利であった。

    荒野に朝日がゆっくりと差し込み、戦いの余韻が静かに広がっていく。二人の物語は終わったが、その刻は永遠に刻まれた。

  • 1291◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 17:22:45

    以上

  • 130二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 17:23:46

    久々にバチバチのバトルやってた気がする
    それはそうとお爺ちゃんかっこいいよ!

  • 131二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 17:23:58

    アマダはよりにもよって技術主体の相手と対峙したのが運の突きだったな

  • 132二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 17:42:33

    荒野の決闘、誇りの勝負
    熱くならないはずがなく…

  • 133二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 18:56:09

    難解バトルが今から楽しみだぜ

  • 1341◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:18:28

    題名『神喰むもの』

  • 1351◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:18:46

    湿った土の匂いが漂う廃村。朽ちた社が、まるで死者の口のように口を開けていた。
    その祠の奥──ハナシダレは、青白く光る羽根を震わせていた。アゲハ蝶の神を騙る、鮮やかなる偽神。

    「……ふふ。まだ、残ってる。名も無き者たちの信仰の“残滓”が……」

    息を吸い込むように、村に染みついた願いを喰らう。
    病に倒れぬように、家族が飢えぬように、来世で楽になるように──人々の祈り。
    それは神にとって祝福の糧、だがこの妖怪にとっては“腐りかけの餌”でしかない。

    「哀れな連中。あたしが“神”だって言えば、それだけで膝をついたくせに」

    その時。
    空気が、歪んだ。

    いや、空気ではない。世界の位相そのものが、音もなくずれた。

    「……?」

    ハナシダレが顔を上げた先、廃村の空が**“裏返った”。**
    青空だった天が、黒い水面のようにたゆたう。そこから、巨きな“顔”のようなものが現れた。
    無数の眼、歪んだ口、まるで“精神構造を模したクラゲ”のようなもの──

  • 1361◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:18:56

    グラヴィタリス=エーテリア。
    エーテル界と物質界をまたぎ、進化の果てに生まれた、真理すら喰らう集合知の怪物。

    『──信仰。検出。虚偽の構造体。分類:偽神。優先解析対象に設定。』

    「な、に……あんた、何者よ?」

    羽根がざわめく。霊的構造が、圧に打ち震えていた。

    『解析中。問う。信仰とは、進化的利得か、精神的欠陥か。』

    「質問に質問で返すなんて、野暮ね」

    ハナシダレは笑った。その笑みには余裕などなかった。だが彼女は“神”だ。たとえそれが偽物でも──演じきらねばならない。

    「でもね……あたしを侮ったら、首が飛ぶわよ?」

    刹那、グラヴィタリスの巨大な“腕”が伸びた。
    空間を裂くように、数十メートルの重力触手が社をなぎ払う。
    ハナシダレは瞬時に跳躍し、変体の羽根を盾にしてその攻撃をかわす。

    「ちょっとちょっと! やる気満々じゃないの……!」

    そして始まる、神と理の“虚構否定戦”。
    その第一歩が、今、刻まれた。

  • 1371◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:19:17

    「言葉って便利よねえ」

    宙に舞う蝶の羽根。赤紫の光が尾を引いて、妖艶な微笑が闇に浮かぶ。
    ハナシダレの声には、甘やかな響きがあった。
    それは人の心に絡みつき、まるで恋にも似た錯覚を与える、洗脳の毒だ。

    「だって、口先ひとつで人を救えるし、殺せる。神の言葉は、とくにね?」

    グラヴィタリスの巨大な“眼”がゆっくりと瞬きする。
    情報層を横断する視線。対象のあらゆる構造を分析し、崩壊させる観測干渉。
    だがその演算中──わずかに、反応が遅れた。

    『精神波、侵食確認。言語干渉に……軽度の影響……』

    「そう、それが“信仰”よ」
    ハナシダレがにこりと笑う。

    「言葉に意味があるって、誰が決めたの? “人がそう思ったから”──それが答え。
    ならあたしが、“奇跡”って言えば、それは奇跡になるのよ」

    虚空がねじれた。
    グラヴィタリスの眼が一瞬、認識不能の歪みに覆われる。
    ハナシダレの能力【偽造】による模倣攻撃。彼女はグラヴィタリスの“解析音声”を模して、
    世界の法則に割り込もうとした。

    「たとえばこんな風に──」

    声が響いた。

  • 1381◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:19:30

    『存在再構築、開始。対象:常世神。運命偏向……祝福付与。』

    「……な、なんで?」

    今度は、ハナシダレ自身が目を見開いた。
    それは確かに自分が放った“言葉”だった。だが──結果が、違う。

    グラヴィタリスのエーテル層が応答し、言葉を“現象”として拒絶した。
    模倣したはずの神語が、逆に干渉されたのだ。

    『模倣検出。精度不良。矛盾因子により、自己汚染開始。』

    「……え、うそ。なに、なによこれ……!」

    自分の言葉が、自分を壊し始める。
    脳内に焼き付くような重低音。視界に幾何学模様がちらつき、神経がきしむ。

    『信仰とは、認知の錯覚。再定義:迷信。削除、開始。』

    「っ……だとしても……それで、人は救われるのよ……!」

    ハナシダレは言葉を吐いた。それは祈りに近かった。
    そして、その祈りの行き先に、グラヴィタリスのような存在はいなかった。

    こうして、言葉による応酬は終わりを告げる。
    一方は幻想を喰らう神、もう一方は真理を咀嚼する化け物。
    決して交わらぬ価値観の衝突は、やがて斬撃と咀嚼の戦場へと至る。

  • 1391◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:20:34

    「見せてあげるわ……あたしの“奇跡”を」

    声とともに、ハナシダレの姿が霧散する。
    人の姿、蝶の羽根、女神の笑顔──それらが次々と混ざり合い、空間に幾重もの“幻像”を作り出す。

    その全てが、現実と寸分違わぬ精巧さで構成されていた。
    偽造と洗脳の複合演算──“神の奇跡”の演出。

    「この中に本物は、ひとつだけ。でもね……」

    幻像たちが一斉に微笑み、口を揃えて囁いた。

    「“信じたもの”が、真実になるのよ」

    数百の“ハナシダレ”が羽ばたき、エーテル層を乱す。
    その羽ばたきは、物理的な質量を持たぬ幻覚だが──見る者の精神を侵食し、幻を真実に変える。
    信仰とは、そういう“群れの熱”でできている。

    『観測不定。精神構造への直接干渉、確認……補正。反射演算を開始。』

    グラヴィタリスの表層がぐにゃりと歪む。

  • 1401◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:21:12

    空間の網目が崩れ、代わりに現れるのは、虚数軸に並行する重力泡。
    あらゆる存在に働く“精神の重力”──それを物理法則として投射することで、幻像を認識前に押し潰す。

    「っ……ああもう、ホント、理屈っぽいったら!」

    一体、また一体。幻像の“信仰構造”が崩壊していくたびに、ハナシダレ本体の精神にも負荷がかかる。
    「信じさせる力」が幻想であると暴かれたとき、
    彼女の存在意義そのものが、“虚構”として否定されるのだ。

    『構造解析完了。対象存在:虚偽により維持。』

    「うるさいうるさい、黙りなさい!」

    地面が裂け、根から溢れ出るように無数の【柑橘の蛹】が孵化する。
    白く膨れた蛆のような“信仰の擬態体”が、村全体を飲み込む勢いで広がった。
    それはかつての信徒が信じた“願い”のなれの果て。
    希望の仮面をかぶった、“絶望の養分”。

    「この土は、あたしを崇めて死んでいった信徒たちの骨でできてるのよ──わかる?」

    グラヴィタリスの分体の一部が侵食され、内部構造が歪む。
    “願い”という概念は、情報汚染の核となり、進化知性体であるグラヴィタリスの演算層に錯乱の兆候を生じさせる。

    『精神演算にノイズ。……信仰、解析不能……』

    「ふふふふ……ねえ? ねえねえ? あたしってば、ちゃんと神でしょ?」

    勝ち誇ったように笑うハナシダレ──
    だが、その笑顔の奥に、うっすらと“焦り”が滲んでいた。
    なぜなら──幻像が崩れ、なおもグラヴィタリスの“本体”が姿を見せていないからだ。

  • 1411◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:21:47

    ──それは、音ではなかった。

    空が軋み、風が逆巻き、大地が呻いた。
    だがそれらは物理の領域における現象ではない。**存在そのものの“悲鳴”**だった。

    「……あれが、あんたの“本体”ってわけ……?」

    虚空を漂っていたグラヴィタリスの分体群が、一斉に霧散する。
    代わりに、降ってきた。

    漆黒の球体。
    だがただの重力子の集合ではない。それは、空間に穴を穿ち、時間に深度を刻む**“位相の断絶点”。
    球体の中心から伸びる腕が、足が、顔が、無限に変転する。
    星を穿ち、惑いを抉り、“精神の質量”そのもので構成された異形。**

    ──これこそが、“グラヴィタリス=エーテリアの本体”。

    『重力層、収束完了。半径14.2km以内の運動因子、強制静止。』

    「っ……!」

    ハナシダレの羽がもげた。空間ごと引き裂かれたのだ。

  • 1421◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:21:57

    空を舞うことすら赦されぬ重圧。それは、もはや“力”ではない。
    意志の圧殺。

    「……おもしろいじゃない、ほんとにもう……」

    ハナシダレは笑った。
    口の端に赤い血が滲んでいたが、彼女の目は、絶望していなかった。

    「神に牙を剥くってことは……それだけで罪よ」

    首筋から、光る“芽”が露出する。
    それは【柑橘】の最終形──自己蛹化による半神変貌。
    この肉体すら“信仰の果実”として焼き捨て、別の“奇跡”へと姿を変える。

    「さあ……“信徒たち”──舞いなさい」

    地面から湧き出す黒い花。
    信仰で縫われた死体たちが、グラヴィタリスの周囲を埋め尽くす。
    そのひとつひとつが、かつてハナシダレを信じた者の骸であり、今や疑似的な“神性”を持った爆弾だ。

    『演算中……観測矛盾。精神圧縮領域、突破。』

    ──が、その演算は間に合わなかった。

  • 1431◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:22:15

    次の瞬間。

    「──信じろ、ただそれだけで救われる」

    ハナシダレの言葉が世界に響いた。
    同時に、屍人たちの身体が一斉に破裂する。
    その爆発は炎ではない──“概念そのもの”の爆裂。

    “あたしは神だ”という叫びの残響が、空間を歪ませ、存在論的な嵐となって吹き荒れる。

    『警告。情報災害、臨界──演算層、錯乱開始……!』

    グラヴィタリスの重力泡がゆらぎ、部分的に融解を始める。
    信仰という“虚構”が、真理を侵食していた。

    だが。

    その嵐の中心で──ひとつの“軸”だけは、ぶれなかった。

    『再構築開始。強制同期完了。幻像、反転。信仰、否定。』

    空間が沈黙した。
    次の瞬間、全ての死体が無音で崩れ落ちた。

    それは、神を否定した世界の反応。
    世界が答えたのだ──

    “おまえは神ではない”と。

  • 1441◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:22:43

    「……あは、あははは……!」

    笑っていた。
    敗北を悟った声ではない。
    かといって勝利を確信したものでもない。
    ただ、その音には──狂気と、怒りと、そしてほんの一滴の“哀しみ”が滲んでいた。

    「また……よ。こうやって、否定するのね。信じてたものを、意味のない幻だって言って」

    指先が震える。
    だがそれは恐怖ではない。失われた“信仰”の重さが、わずかに彼女を揺らしていただけ。

    「でも……それでも……あたしは“神”よ……あたしは、ちゃんと、誰かの祈りに応えて──!」

    語りながら、彼女の体表がぼろぼろと崩れていく。
    それは、洗脳でも、偽造でも、変体でも補えぬ“信仰崩壊”の証。

    存在の根底にあった“演出”が砕け、魂の核──ハナシダレという名の虚構が剥がれていく。

    『確認完了。対象存在、虚構的神性の喪失。位相の固定化を開始する。』

  • 1451◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:23:04

    グラヴィタリスが語る言葉は、言語ではない。
    それは情報、定義、現象の再構築──
    彼女を**“ただの妖怪”として再定義する呪い**だった。

    「や、やめなさい……そんなもの、あたしが……!」

    だが、抗う声も虚しい。
    世界が一度、“否定”した幻想は、もはや戻らない。
    それは神ではない。祈りに応えられぬものは、ただの詐欺師だ。

    それでも、ハナシダレは叫ぶ。

    「信じてくれたのよ、あの子は……! “また来るからね、神様”って……!」

    喉が裂け、血があふれ、羽根が破れ落ちる。
    美しかった髪も、まるで煤にまみれた繭のように濁っていく。

    ──だが、そのとき。

    空間の向こうから、小さな祈りが届いた。

    「……トコヨさま、またきたよ」

    子どもの声。

  • 1461◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:23:15

    それは、ずっと昔──社に迷い込んだ小さな子どもが、
    何の疑いもなく、傷ついた蝶を神だと信じ、花を捧げた日の記憶。

    それはハナシダレが演じた最初の“奇跡”。
    まやかしではあったが、そこには、確かに誰かの救いがあった。

    「……そう……あたし、あの子の……」

    その一瞬、魂の中に“矛盾”が生まれた。

    “私は偽りの神である”
    “私は人を救ったことがある”

    両方、事実。
    両方、正しい。
    だが、両立できない。

    その矛盾を、グラヴィタリスは見逃さなかった。
    情報の交錯点を貫き、空間に“矛盾波”が発生する。

    『自己定義:矛盾。演算結果:存在不可能。』

    ──空が砕けた。

    地上に降り注ぐのは重力の雨。
    概念の核が剥き出しにされたハナシダレは、もう“神”を演じる余裕すらない。
    彼女の首筋が、冷たく震えた。
    そこは──彼女の唯一にして致命的な弱点。

    そして、重力の刃が──そこへ、真っ直ぐに降り注いだ。

  • 1471◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:23:45

    「……ああ」

    それはため息のようだった。
    重力刃が触れる直前、ハナシダレの首筋に一陣の風が吹いた。
    花が散るように、ゆっくりと──彼女の首が落ちた。

    振るわれたのは斬撃ではない。
    それは世界の是正であり、虚構に対する訂正。
    彼女を神足らしめた数多の“演出”が剥がれ、真実だけが残された。

    ──ひとりの、哀しい妖怪。
    ──誰かに信じられたかっただけの、美しい詐欺師。

    「……また、誰かを……救いたかっただけ、なのに……」

    最後に紡がれた言葉は、誰にも届かない。
    グラヴィタリスは何も言わなかった。
    それが、慈悲だったのか、無関心だったのか──
    この存在にとって、答えそのものが存在しない。

    残されたのは、破れた蝶の羽と、静寂だけ。

    かつて神と崇められた“常世神”ハナシダレは、
    ここに完全なる終焉を迎えた。

    だが。

  • 1481◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:23:55

    その羽のそばに、小さな手が伸びる。

    「……また、くるね。トコヨさま」

    いつか社で彼女に祈った、あの子どもの面影。
    ただそれだけが、幻のように風に舞った。

    そして、グラヴィタリス=エーテリアは動かないまま、
    全てを記録し、沈黙のうちにその場を去った。

    記録。それがこの存在に許された唯一の感情。
    愛も、哀しみも、意味も持たぬ器。
    ただ、無限に拡がる情報と変化だけが、その“進化”を紡いでいく。

    ──神は死に、奇跡は消えた。
    だが、それでも誰かが祈る限り、幻の蝶はまたどこかで舞い上がるかもしれない。

    ──この世界のどこかで。

  • 1491◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:24:06

    以上

  • 150二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:24:51

    なんか今回メチャクチャ大長編じゃない!?!?

  • 1511◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:25:34

    待たせた分頑張りました

  • 152二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:25:45

    神作品でした…

  • 153二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:25:51

    偽りの神でも信ずる者はいた…ってコト!?

  • 154二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:26:55

    まるで映画のクライマックスかのような激闘だった

  • 155二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:27:46

    ダークギャザリングの 鬼子母神対空亡 思い出した

  • 1561◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:31:26

    安価しますかぁ

  • 157二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:31:33

    名前:ゼイル=アンノウン
    年齢:感染から7日(感染前:28歳)
    性別:男性(※感染後、性別的肉体は崩壊)
    種族:ヒト →《 殺戮現象》罹患者
    本人概要:
    エーテル体を除くすべての物質(星や生物、液体気体も含む)が《 殺戮現象》によってたった2日で完全消滅した並行世界から来た元・連合機構所属の高位異能者にして、戦場用跳躍術式の開発主任。空間干渉の精度は当代随一で、“点と点をつなぐだけで戦局を制する”とまで称された。
    だが任務中、機密区画で発見された概念災害「殺戮現象」に接触し、即座に感染。理性も肉体も失い、殺意で満たされた殺戮現象の運搬媒体として再構成される。
    現在のゼイルは、かつての跳躍能力をそのまま維持した状態で、殺戮現象を空間を越えて撒き散らす存在へと変貌しており、ゼイルを殺しても感染した分子は《 殺戮現象》を広め続ける。
    異様なまでの殺意とねじ曲がった精神構造によって精神干渉の類は一切通じない。
    能力①:
    空間跳躍術式《レイライン・フォールド》
    能力概要:
    ゼイルは任意の座標間を瞬間的に移動できる「術式型テレポート能力者」(座標設置に数秒)
    能力②:
    殺戮現象《カタストロフィア》
    能力概要(※ゼイルは“感染運搬体”であり、殺戮現象そのものではない):
    殺戮現象は、分子レベルの接触(気体や液体も含む)によって広まる未知の概念ウイルス。
    感染段階により以下のように殺戮衝動を拡大していく。
    殺戮段階進行:
    1. 第一段階:感染者は「自身以外の生物」を殺しつくす衝動に支配される(訳5分)
    2. 第二段階:感染は接触物すべてに拡大し、無機物や環境までも殺戮対象となる(訳10分)
    3. 第三段階:空気、水、光、すべての物質(生物の肉体も含む)が互いを殺戮し始める(約30分)
    4. 最終段階:対象の全ての分子結合が瞬間的に切断されて気体となり、同一構造体の分子同士が互いに殲滅しあい、最終的に完全消滅(分子1つすら残らない) (訳2分)
    ゼイルは分子レベルでの概念抗体によって自らの感染度を第一段階に保っている。
    弱点:
    •殺戮現象自体は「物理的感染」が前提のため、次元断絶などで侵入を拒める
    • ゼイルの身体能力は鍛えた特殊部隊員並みであり、簡単に殺せる
    • 感染の伝播よりも早く感染分子をすべて消滅させれば封殺できる

  • 158二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:31:42

    トップ10入りは確実らしいのでちょっと見てみたくなった

    名前:桜鬼(オウキ)
    年齢:2000歳
    性別:男(肉体はアカネのものを借りているので女性)
    種族:鬼神
    人物概要:秋桜アカネの内部に住んでいる鬼神。元の名を『王鬼』と言い、名の通りかつては全ての鬼、魔性を統べる存在。秋桜一族の巫女の献身に心打たれ、それ以来、一族の守護者となった。
    鬼神本来の力を100%引き出すためにアカネが20代まで成長した姿を模倣した霊体をアバターとして使用している。
    能力:鬼神顕現
    能力概要:鬼神本来としての力を100%フルに振るう、それだけの能力。手にした刀による斬撃は、因果律や宿業すらも一刀両断し、あらゆる対象を自らの手が届く存在まで引き摺り下ろす。
    無限増殖するタイプや無限再生するタイプの敵にも対応し、射程距離に存在する限りは自動的に放った斬撃が死ぬまでぶった斬り続ける。
    弱点:この姿でいるためにはアカネ本体が意識を失って無防備になってしまう上に、仮初の肉体が力に耐え切れず自壊していく。制限時間はもって数分。
    その間に決着を着けなければ意識を失ったアカネだけが取り残されてしまう、実質詰みの状態になる。故に、この姿は桜華よりも遥かに危険性が高い禁じ手に近い物である。

  • 159二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:31:43

    名前:血河骸(ちがわむくろ)
    年齢:108歳
    性別:女性
    種族:半人半鬼(吸血鬼)
    本人概要:人間と吸血鬼の混血児、大正ロマンを思わせる緋色の服を着た紅い少女。血汐涙とは親戚関係、お互いに姉妹のように仲が良い。100歳を超えるがその見た目は13歳ほど。吸血鬼との混血児であるため老化が遅く、再生能力もかなり高い。更に、吸血鬼の不完全さを人間の未完成さが補完しているため吸血鬼としての弱点のほとんどが通じない、ニンニクマシマシ二郎系ラーメンとか大好き。一方で人間の脆弱さが吸血鬼の不死性を損なっているため一長一短である。
    能力:鮮血魔術
    能力概要:血液を操る魔術。この魔術によって彼女の血液一滴一滴が魔を討ち滅ぼす十字の杭と化す。また、応用することで首が切り落とされても血液を操り再結合、心臓が潰されても血流を操ることで復活することが出来る。操れるのは自分の血液のみだが、あらかじめ自身の血液を飲ませたコウモリを展開することでオールレンジ攻撃が出来る。使用する血液は自身の魔力を変換することで増産できる、さらに今まで貯蔵した血液があるため、彼女の血量は事実上カスピ海の貯水量にも匹敵する。
    貯蓄した血液全てを束ねて返信する鮮血魔竜“エリザベート”が切り札。
    弱点:膨大な水や風で血液を洗い流されると攻撃手段が大きく損なわれる。また、復活するにも脳髄を完全に破壊されたり、胸部のほとんどが潰されると流石に不可能。エリザベート時は吸血鬼の側面が強くなるため逆鱗(心臓)が急所となり、そこを攻撃されると変身が解除される。

  • 160二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:31:43

    名前:高軌道砲撃衛星『ヒトダマ』
    年齢:1265歳
    性別:なし
    種族:機械
    本人概要:古代の連邦が敵国を攻撃するため生み出した人工衛星
    古代の連邦大統領たちによって機能停止されていたが何故か再起動した
    能力: 硫黄の火、精神干渉
    能力概要: 自身の周囲に巨大な次元の裂け目を生み出し、異次元から巨大な硫黄の火を取り出して砲撃する
    硫黄の火は神秘的な力により触れた物質や生物を塩に変えてしまう
    また宇宙にいるため通常の手段では攻撃されない
    弱点:衛星はコアと精神干渉装置しか部品がなく、コアが露出しているためもし攻撃が届くようなことがあれば一撃で破壊されてしまう またこの衛星は古代の国際条約と故障したAIの合わせ技により地上に砲撃を一発放つたびに精神干渉能力によりまず挨拶をしてから次に能力の解説をしてその後砲撃範囲の大まかな告知を行ってから砲撃するという10分くらいかかる面倒な手順を取るため余裕で回避可能でありさらに精神干渉を行なっている間に強力な思念をぶつけられるとニューロンが損傷して爆発四散する 
    要望(任意):相手が宇宙にいる場合地の利が消えるので精神干渉関連の弱点は消しといてください

  • 161二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:31:46

    名前:神薙獅子
    年齢:不明
    性別:両性具有
    種族:使途
    本人概要:秩序重んじる神に仕えし神獣の獅子。魔を一切寄せ付けない霊銀で構成された体からは破魔の力が迸る。高貴な精神を持ち、子供には優しいが悪人には一切の慈悲は無い。
    能力:《神罰》
    能力概要:主神に仇なす存在を滅ぼすため神薙獅子にのみ振るう事を許された最高権限。神薙獅子の要請によって天から極大の光柱がその場一帯に降り注ぐ。
    弱点:特殊能力には極めて強い耐性を持つが、物理攻撃に弱い。

  • 162二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:31:47

    えっもう?

  • 163二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:31:52

    名前:アイギス
    年齢:計測不能
    性別:なし
    種族:無機生命
    本人概要:通信限界を超え、外宇宙に放棄された惑星探査機にナニカが接触したことで自我を得た存在。ガラケーにも劣っていたはずの記憶域と演算能力は、向こう千年の人類の叡智を遥かに凌駕したものへと変貌を遂げた。
    アイギスを変えたナニカは『捨てられた機械による人類への復讐劇』が見たかったようだが、アイギスは人間を観測し脅威から守護するという在り方を選んだ。
    能力:領域外の叡智
    能力概要
    ・次元界渡航:タイムリープとワープドライブの併せ技であらゆる時間軸、領域に一瞬で転移する。
    ・万象演算:万象をデータとしてインプットし、無限に等しい可能性の渦から望む未来への解を導き出す。
    ・万象構築:解析した対象のデータから最も有効な武装、戦場を即座に構築する。
    弱点:自分を作った人間との記録が詰まった基盤が破壊されると機能を停止する。
    不出来で不可解な人間という変数を愛しているので、応戦はしても殺すことはない。
    要望:惑星探査形態から人型ロボット形態への可変機構を有しているが、これはアイギスの製作チームがロマンは大事だと言って無理やり組み込んだもので無駄でしかない。
    無駄でしかないが、アイギスはこの機能を決して削除しない

  • 164二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:31:54

    名前:ホーク・イェーガー
    年齢:35歳
    性別:男
    種族:アメリカンサイボーグ
    能力:アメリカ
    能力概要:USA魂を信じる限り性能が際限なく向上していくメカニズムが搭載されている。
    武装はミサイルランチャーやロケットランチャーなどの火力偏重。ジェットパックで空も飛べる。
    弱点:アメリカを侮辱されると頭に血が昇って攻撃が単調になる。
    心臓部のコアを破壊されると爆散する。

  • 165二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:31:55

    名前:我不怨(アイフォン)
    性別:?
    年齢:10
    種族:付喪神
    本人概要:
    無数の能力を使いこなす力を持った一つ目の妖(?)。その背中には巨大な一つの目が付いており、その身には黒い外套をまとっている。
    戦闘を遊びやゲームと称する得体の知れない存在だが、同時に妙な親近感を感じさせる。
    __はたしてその正体とは……
    バッテリーの劣化で寿命をむかえたスマホが「もっと使ってほしい。もうちょっとだけ遊んでほしい」という無念から付喪神になったもの、それが我不怨である。
    能力:愛富理(アプリ)
    能力概要:
    あらゆる能力を 己のものと(インストール)し、なおかつそれらを使いこなす。いわゆるコピー能力だが、コピーする能力を相手が持っている必要はない。
    発火のような簡単なものから現実改変のような能力までなんでもコピー可能。
    ただし協力で複雑な能力ほど使用にはかなりの体力(スタミナ的な意味)を持っていかれる。体力とはつまり電池残量のことである。
    使用する能力(アプリ)は外套の下に隠れた胴体のタッチパネルをこっそり操作して切り替えている。
    弱点:
    強力な能力の代償からか耐久面はペラッペラ
    水・冷凍・物理をはじめとしたあらゆる攻撃に弱く、くらえば大ダメージとなる。現実改変などの強力な能力で対抗するより、物理や簡単な能力でゴリ押す方が有効的。
    胴体のタッチパネルを割られると能力(アプリ)の切り替えができなくなる。
    特に炎熱系にはめっぽう弱く、くらうと能力の使用がほとんど不可能となる。使える能力(アプリ)がないこともないが、ほとんどは使おうとすると処理落ちする。使用中に熱攻撃をくらった場合も同様である。
    また、複数の能力を同時に使うことはできず、コピーした能力は一度に1つずつしか使えない。
    さらにとある事情(バッテリーの劣化)により体力(電池残量)が少なく、能力を過度に使用するとそのまま戦闘不能(電池切れ)になる。
    強力で複雑な能力ほど体力の消耗が激しく、概念干渉系にもなると1回で10%ほど消耗する。
    要望:正体がバレるまでは圧倒的な強さを演出して、バレた後は一気に弱点をつかれまくって逆転負けさせてほしいです。

  • 166二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:31:57

    名前:ヴォルラキア
    年齢:計測不能
    性別:オス
    種族:原初のドラゴン
    本人概要:世界で最初に出来た火山と共に生まれた原初の竜のうちの1体。その力が高まると近くの火山が呼応して活性化するという伝説がある。誇り高く、孤高で、豪快。そして英雄に討伐されるべき邪悪さを持つ恐るるべき偉大なドラゴン
    能力:火山竜
    能力概要:火山竜としての強力な身体。瘴気の宿った炎のドラゴンブレスは神ですら魂の髄まで焼き尽くす。牙はあらゆる物質を貫き、爪はあまねく曖昧な存在を切り裂く。鱗は文明に由来する物を拒絶し、その存在は世界に強固に根付き、干渉を弾く
    弱点:逆鱗が弱点であり、竜としての存在が濃いので竜殺しの概念に弱い。変化の象徴たる火の側面を持ち、不変の象徴たる金が毒となる。竜としての性質で金銀財宝を集めているため、寝床には金でできた宝物がたくさんある
    要望(任意):可能ならば、王道的な竜殺しの英雄譚が見たい!

  • 167二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:31:57

    名前:剥がし屋
    年齢:不明
    性別:そのような概念は無い
    種族:人間?(とある外宇宙の邪神の化身の一つ)
    本人概要:赤いコートを羽織った全身の皮膚が剥き出しの人間? 
    常にニタニタと笑っており相手の全てを剥がそうとする
    能力:剥離
    能力概要:対象を構成する全てを剥がす人間だったら鎧を皮膚を肉体を能力技術を、魂を機械であるなら装甲などを
    この存在に対して防御は意味を成さなさず剥がされたものは一定時間すると自動的に剥がし屋に吸収され力となる
    弱点:触れずともある程度は剥がせるが相手を構成する一番重要な部分はある程度近づくか触れなければ剥がせない
    また剥がしたものは概念的であれその場に残りそれに触れることで剥がされたものは元に戻る
    剥がされたものは一定時間経たないと吸収出来ず技術や能力は剥がせても相手に僅かに経験が残ってしまう

  • 168二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:32:01

    名前:セラ・リューア=グレイフ
    年齢:見た目19歳(実年齢不明)
    性別:女性
    種族:星霊契約者(擬似星霊体)

    本人概要:
    星葬機関第八局《終恒(ターミナル)》に所属する最終処分人。辺境惑星ルキフェルの王族だったが、星喰いの襲撃で故郷を失い、契約星霊《燼(じん)の星霊ユル=ハ=ガルマ》と強制契約を結ぶ。星喰いの痕跡を追い、宇宙の終焉を防ぐために戦う。冷静沈着だが内に復讐の炎を秘め、身体の一部が星霊化している。

    能力: 終焉灼界(ラスト・インフェルノ)

    能力概要:
    星霊ユル=ハ=ガルマの力で熱エネルギーに還元・焼却する能力。
    ・虚陽炉界(コロナ・クレマトリウム):最大半径20mの灼熱領域を展開し、物質・霊体・星霊因子を焼き尽くす。最大持続5分。
    ・存在熱変換(エグゾースト・リダクション):最大直径3mの対象を瞬間的に熱に還元し破壊。発動時に約10秒の詠唱硬直あり。
    ・擬似星霊形態変身:背部に灼熱の翼を展開し身体能力と感覚を強化。異次元干渉能力を持ち、最大2分維持可能。変身解除後は40秒間戦闘不能。

    弱点:
    ・灼界展開には10秒の詠唱硬直があり、その間無防備。
    ・炎熱耐性や熱変換拒否の敵に効果が薄い。
    ・灼熱領域は味方にもダメージを与えるため狭所・密集戦では使用困難。
    ・擬似星霊形態の維持時間は最大2分で、解除後は40秒間戦闘不能になる。
    ・灼界外での素の身体能力は平均以下。
    要望(任意):
    ・契約星霊ユル=ハ=ガルマはかつて星喰いに勝ちかけた禁忌の星霊であり、その断片意識がセラに宿る。

  • 169二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:32:02

    名前:バフォ
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:悪魔
    本人概要:とある山羊の悪魔の分霊的存在 見た目はスーツ姿の山羊頭でとても礼儀正しい
    但し契約を守らない存在には容赦しない あと様々な魔術も使用できる
    能力:契約の悪魔
    能力概要:力のバフ上げる代わりに速度を極端に低下、超強化される代わりに五感、四肢どれか消失などの契約を強制的に行わせる
    また代償系などで得た代償は自身のリソースとして使用できる
    但し契約内容は複数から選択させ尚且つ契約内容をきちんと提示する必要がある
    弱点:契約内容を即座に把握して複数の中からどれがマシか適切に対応出来るものが苦手
    つまり状況判断が優れている相手に弱い

  • 1701◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:32:12

    すとっぷ

  • 171二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:32:13

    名前: アルセリア・クロード & ヴァルカン・スプリント・カスタム《フォートレスバスター》
    年齢: 24歳(パイロット)/機体稼働歴:1年4ヶ月
    性別: 女性(AI音声:低音の男性)
    種族: 人間(第六装甲戦術連隊)&OG第四世代・重装型カスタム機
    本人概要:
    元は要塞攻略部隊に配属されていた重戦闘専門のエリートパイロット。徹底的な防御展開と火力の集中投射によって、「進まない敵前線などない」と言わしめた前衛戦術の使い手。長期持続戦闘に優れ重装カスタム機《フォートレスバスター》を乗機とする。ヴァルカン・スプリントを重装甲化・砲撃対応に再設計した仕様で、レギオス・ノヴァの布石として敵の持久力を削り取る。
    能力:
    ・強化型次元積層ドライバ《XLD-γ“アージェンタコア”》:安定出力型で長時間稼働が可能
    ・次元遮断フィールド《グレイディフェンサー》:多層次元に渡る広域遮断バリアを展開
    ・多重装甲・反応装甲プレート搭載:近接~中距離のあらゆる攻撃を分散吸収
    ・荷電粒子ビーム砲《アージェンタ・レールランス》:溜め射による防御貫通砲撃
    ・ナノマシン重構造ユニット:損傷部位の段階再生を繰り返し、擬似的な無限装甲再構築
    ・支援モード《ミスト・リザーブライン》:戦域内味方機への次元圧制御補助信号を送信し機体負荷を軽減
    ・AI《ヴェクター》:防御アルゴリズム特化、敵火力の誘導・分散・遮断を即応処理
    能力概要:
    《フォートレスバスター》はその名の通り、前線を維持・展開し、敵陣を削り潰すための“攻める防御機”。全身に分厚い反応装甲とナノ再構築ユニットを備え、継戦時間は標準型の3倍以上。後衛の要塞・火砲陣地への長距離射撃支援から、前衛に立ちはだかる敵主力部隊の足止め・耐久戦までこなす。レギオス・ノヴァが突破するための“道”を作るという点において、まさに露払いの完成形。
    弱点:
    ・加速・緊急回避能力は乏しい
    ・出力は安定しているが最大火力では劣るため、同格の超火力型とは相性が悪い
    ・精神共鳴機能を簡易化しており、極限状態でのバーストシンドロームは非対応
    ・接近戦では機体サイズが災いし、極小高速機には攻撃が届きにくい
    ・ナノ再構築にリソースを割くと、攻撃出力が一時的に低下
    要望(任意):
    ・持久戦、消耗戦、味方支援・連携を活かす戦術で登場させてほしいです
    ・アルセリア・クロードがしゃべるように

  • 172二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:32:20

    名前:リフレイン
    年齢:8(???????)
    性別:女
    種族:人間?
    本人概要:何度も何度も何度も何度も一定の時間内で繰り返すことが出来る異能を手に入れた少女
    本人は楽しいことを何度も楽しめる最高の力だと思っている(手に入れた当初は制御不能になり数京ほど同じ日常を繰り返し狂った)
    また失敗してもやり直せば良いやという考えになっている為平気で殺人などの倫理観がない行動が取れる
    能力:リフレイン
    能力概要:予め定めた起点、後から定められる終点内を繰り返すことが出来る 
    また起点が定まっているのであれば死んでも起点に戻される 
    リフレインはこの能力を利用して様々な武術などを習得したり相手の弱点を把握したり攻撃を避けることが出来る
    弱点:彼女は様々な武術を取得しているがあくまで身体能力は幼女
    また起点を安易に変更した結果詰みセーブみたいな状況に陥る可能性がある
    起点から終点の期間は短期間に連続して死ぬ度に短くなり最終的に極短期間になってしまう

  • 173二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:32:20

    名前:"悪食羆の"鋼牙
    年齢:127歳
    性別:オス
    種族:羆
    人物概要:北海道の寒村にて30人以上を老若男女問わず貪り食った化物じみた羆
    一度凄腕のマタギによって撃たれ腹を割かれたが腹の中からは鮭皮、羆の幼体の肉、蝦夷鹿の毛、百合根、ブナの木片、白樺の樹皮、割れた陶器の丼、引き千切られた三八式歩兵銃などが見つかり、"鋼牙"の異名を与えられた
    なおその捕獲後の動向は不明であるが、その後も近くでは無機物有機物問わず、食い千切られた物体が発見される事がある
    能力:貪リ喰ラウ顎
    能力概要:鋼牙が"喰いたい"と思った物体をどんな防御があろうが硬度を持とうが関係なく食い千切り咀嚼する事が出来る能力
    喰らった物質は材質も含めて肉体に置換できる為鋼鉄を食えば食った分の肉体が鋼鉄と同一の性質を持てるようになる
    この性質を利用して人に擬態して食らう事もある
    また、傷を負ったとしても食えば食うほど再生され残基が増えていく特性を持つ
    弱点:ストックが無くなるほどのダメージを負うと死ぬ
    また、身体能力は他の羆より高いが能力を使うには近づいて食わなければならないため顎を封じられると無能力になる
    補足:(喋らせないでください)

  • 1741◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:32:30

    わぁ
    たまってますねぇ

  • 175二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:32:35

    このレスは削除されています

  • 176二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:32:45

    あまりにも一瞬過ぎる……

  • 1771◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:33:52
  • 178二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:33:56

    安価しますかぁが始まりとは思わなくて初動が遅れたぁ……

  • 179二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:34:01

    躊躇っている暇など無かったのです…

  • 180二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:34:12

    安価埋まるの早すぎだろ
    反射でやらなきゃ間に合わなかったぞ

  • 181二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:34:40

    間に合わなかった…無念

  • 182二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:34:52

    ここの安価新規の敷居高すぎだろ
    早すぎるっぴ

  • 183二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:35:00

    このレスは削除されています

  • 184二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:37:10

    ピピーッ
    タイム31秒!

  • 185二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:37:16

    (安価遅れを避けたいなら考察スレで安価代行を頼むといいですよ…)(でもそれで失敗したからって文句言ったらダメですよ…)

  • 186二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:39:02

    >>184

    ヤッホウ、大幅更新だァっ!

  • 187二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:39:02

    また明日だな

  • 188二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:39:39

    >>184

    前が55秒だっけ

    前以上があるとは

  • 189二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:40:19

    計測前の時代で1分弱で25ということがあってな

  • 190二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:40:37

    今のところ最初に安価に答えた人の最速記録は6秒

  • 191二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:41:26

    >>190

    今回7秒

    惜しいね

  • 192二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:44:14

    さあて今週の対戦カードは?

  • 193二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:44:42

    何よりインフレしているのは安価速度じゃったか…

  • 19417325/07/07(月) 20:51:08

    まだだなガハハ風呂入ってくるわしたらこのザマだよ!

  • 1951◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 20:52:04

    血河骸vs我不怨
    剥がし屋vsゼイル=アンノウン
    ホーク・イェーガーvs高軌道砲撃衛星『ヒトダマ』
    アイギスvs桜鬼
    ヴォルラキアvs神薙獅子

  • 196二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:52:13

    私なんてトイレ行って戻ってきたら終わってた

  • 197二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 20:52:37

    >>194

    グラヴィタリス対ハナシダレは神作品だったぞ

  • 198二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 21:00:16

    モンスター対決だあああああああああ!

  • 199二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 21:01:48

    剥がし屋って元から殺戮衝動の塊っぽいがどうなるんだろう

  • 200二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 21:03:16

    >>198

    全員モンスターみたいなもんだからどれの事か分からねぇ……

  • 201二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 21:04:12

    >>199

    やばいのは第3段階からなんだ

    物質レベル→構成する分子同士で殺戮が始まるんだ

  • 2021◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 21:04:26

    血河をちいかわって読んじゃう人いると思うんですよね

  • 203二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 21:21:02

    >>202

    いったい何DEN RINGなんだ……

  • 204二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 21:24:14

    今回の安価分まとめました

    https://writening.net/page?GEDFDt

  • 205二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 21:26:00

    >>204

    おつおつ

  • 2061◆ZEeB1LlpgE25/07/07(月) 23:22:57

    こちらでも報告です
    今回の安価が捌ききったらヤメイ案件確定の猛者5人募集します

  • 207二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 23:33:26

    このレスは削除されています

  • 208二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 06:14:49

    >>206

    募集安価はこっちのスレでやります?

  • 2091◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 06:51:39

    >>208

    はい

  • 210二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 10:21:48

    りょー

  • 2111◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 13:36:13

    題名『鮮血の激闘』

  • 2121◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 13:37:04

    錆びた鉄骨が無数の影を落とし、割れた窓から冷たい風が吹き込む廃工場。

    かつての賑わいは遠く、今は静寂だけが支配していた。

    その薄暗い空間に、一人の少女がぽつりと立っている。

    鮮やかな緋色の着物を纏い、十三歳ほどに見えるその姿は、百年以上の時を生きてきたとは思えなかった。

    血河骸。

    人間と吸血鬼の混血児であり、ゆっくりとだが確実に老化しつつも、その外見はまるで時に抗うかのように若く美しい。

    緋色の瞳が周囲の闇を切り裂くように鋭く光る。

    彼女の指先から、じんわりと血の魔力が滲み出している。

    「……誰か、いるの?」

    声にならない呟きが廃墟の中に消えていった。

    すると、冷たい金属音とともに、闇の奥から黒い外套を纏った不気味な影がゆっくりと姿を現した。

    背中に巨大な一つ目が浮かび、赤く燐光を放っている。

    「やあ、面白そうな場所だね」

    その声は柔らかく、どこか遊び心に満ちていた。

  • 2131◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 13:37:16

    「僕は我不怨。君と戦えるなんて、光栄だよ」

    言葉の端に、皮肉とも嘲笑ともつかない微笑が混ざる。

    血河骸は警戒しながらも、毅然とした声で応じた。

    「あなたは誰? 何者?」

    「それはこれから分かるさ。でも君も、何者かなんて知らないだろう?」

    互いに一切の事前情報を持たず、ただ相手の力を試すための戦いが始まろうとしていた。

    「私の血の魔術を見せてあげるわ」

    彼女の指先から一滴の鮮血が零れ落ちる。

    血液はまるで生きているかのように空中で蠢き、やがて十字の杭の形へと変貌を遂げた。

    「さあ、遊びはここまでよ」

    廃工場に、二人の激しい戦いの火蓋が切って落とされた。

  • 2141◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 13:37:41

    廃工場の冷え切った空気を切り裂くように、我不怨の黒い外套がひらりと揺れた。

    その背中の巨大な一つ目が鮮やかに光り、彼の手のひらに浮かんだ小さな光球がみるみる膨れ上がる。

    「ほら、これが僕の“アプリ”のひとつさ。コピーした能力を使うのは楽しいんだ」

    声には楽しげな軽さがあり、まるで戦いをゲームのように捉えている。

    血河骸はじっと彼の動きを見つめ、唇を引き結んだ。

    彼女の血液はその体内で沸き立つように活性化し、指先から一筋の赤い糸が伸びてゆく。

    「私の血は、ただの血じゃない。魔術そのものよ」

    言い終わるや否や、赤い糸は鋭い杭へと変わり、我不怨に向かって飛んだ。
    だが、彼は素早く身を翻し、その攻撃を軽々とかわす。

    「やるね。でも僕も負けないよ」

    彼の外套の下のタッチパネルを素早く操作し、新たな“アプリ”を起動する。
    その瞬間、風のように速い機動力が彼の体を包み込み、血河骸の目の前から一瞬で姿を消した。

    「逃がさないわ」

    彼女は鋭く吠え、周囲の空気を震わせるように血液の魔力を爆発させる。
    だが、我不怨はまるでそれを楽しむかのように笑みを浮かべ、再び姿を現した。

    「これからが本番だよ」

    彼の言葉に、廃工場の闇は一層深まっていった。

  • 2151◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 13:38:09

    鮮血の杭が廃工場の錆びついた壁を突き刺し、血河骸の魔術が激しくうねりをあげる。

    しかし、我不怨の動きは軽快で、まるで風のように鋭くかわした。

    「君の血はすごいね。魔術を操るだけじゃなくて、自分の血が攻撃手段になるなんて」

    背中の巨大な一つ目が赤く輝き、次々と“アプリ”を切り替える彼の姿は、まるで異世界の怪物のようだ。

    だが、その薄い装甲は脆く、ほんの少しの物理攻撃で容易に傷つく。

    血河骸は冷静に相手の動きを読み、ゆっくりと血液を集め始めた。

    「エリザベート……出なさい」

    彼女の周囲に集まった膨大な血液が蠢き、やがて巨大な鮮血の竜が姿を現す。

  • 2161◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 13:38:23

    それはまるで真紅の霧でできた竜の幻影のようで、その翼を広げると廃工場の闇が一瞬で覆われた。

    「これが私の全力よ。覚悟しなさい!」

    我不怨は一瞬ひるんだが、すぐに微笑みを浮かべた。

    「面白いね。でも、君の弱点は知らなかったよ」

    そう言って、彼は外套の下のタッチパネルに手を伸ばす。

    「炎の“アプリ”起動!」

    一瞬で周囲の温度が急上昇し、赤い火炎が我不怨の手から噴き出した。

    血河骸の鮮血の竜“エリザベート”は炎に焼かれ、悲鳴にも似た咆哮を上げて崩れ去った。

    「な……!」

    鮮血の魔竜が崩れ去るのを見て、血河骸は動揺を隠せなかった。

    「私の血は……流されると弱いのよね……」

    その瞬間、我不怨の一撃が彼女の胴体に迫った。

    「これで終わりだ!」

  • 2171◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 13:39:08

    我不怨の火炎が血河骸の鮮血の竜“エリザベート”を焼き尽くし、空間に赤い煙が立ち込めた。

    「……まだ終わらない」

    血河骸は苦しげに息を吐きながら、血液を操り全身の傷を再生させる。

    「自分の血を使っているから、無尽蔵に増やせると思っていたけど……」

    彼女の肌は傷だらけで、血液の供給も徐々に限界に近づいていた。

    「膨大な水や風、炎には弱い……。それは本当だったのね」

    その隙を見逃さず、我不怨はすかさず物理攻撃へと移行する。

    「これでどうだ!」

    薄い装甲の胴体に向けて、素早い蹴りを浴びせる。

    血河骸はそれを回避しようとしたが、腕に一撃を受けてしまう。

    「くっ……!」

    「君は強い。でも僕にはまだ秘密がある」

  • 2181◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 13:39:18

    我不怨の一つ目が赤く輝き、外套の下のタッチパネルを素早く操作する。

    「能力切り替え……っと」

    だが、その瞬間、突然の強烈な衝撃が彼の胴体を襲い、タッチパネルが砕け散った。

    「なっ……!?!」

    「これで能力の切り替えはできないでしょう?」

    血河骸は冷静に言い放った。

    「あなたの“アプリ”の切り替え装置を壊したわ。これで弱点は丸裸よ」

    「ぐ……くっ、まだ戦える!」

    だが、我不怨の動きは鈍り、電池の消耗も激しくなっていった。

    「まだまだ遊び足りないのに……」

    彼は苦悶の表情を浮かべながら、闇の中へと姿を隠した。

  • 2191◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 13:39:51

    暗闇の中、我不怨は重い息を吐いた。
    能力を切り替えられず、手元の電池残量も刻一刻と減っていく。
    「こんなはずじゃなかった……」

    血河骸は一歩一歩、確実に距離を詰めてくる。
    「あなたの強さは本物。でも、弱点は隠しきれない」
    彼女の瞳が鋭く光った。

    「大量の血液を操り、再生し続けるその力は驚異的だった。
    だが、水や風、そして熱には弱い。
    私の鮮血魔術はそれを突くことができる」

    一瞬の隙を見て、血河骸は腕を振るう。
    彼女の血液が炎のように揺らめきながら、我不怨の胴体に激しく絡みついた。

    「炎熱系の攻撃……やはり耐えられないか」
    我不怨の体から不穏な煙が上がる。

    「電池残量が切れたら、そこで終わりよ」
    血河骸は冷ややかに微笑む。

    だが我不怨も負けてはいなかった。
    「最後の手段……」
    一つ目が真っ赤に染まり、触れたものすべての時間を歪める能力を解放し始めた。

    「時間を止めて、逃げる……そんな姑息な真似は許さない」
    血河骸は決意を込めて叫んだ。

    交錯する魔術と異能の時間。
    戦いは佳境へと突入していく。

  • 2201◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 13:40:12

    赤い時の渦の中、我不怨の瞳が虚ろに揺れた。
    能力の乱用で電池残量は限界を超え、タッチパネルの破損でアプリの切り替えも封じられている。
    「終わり……かもしれない」

    だが血河骸も疲弊していた。
    無数の傷を血液再生で塞ぎながらも、その膨大な血液の消耗は無視できなかった。
    「私も完全無欠じゃない」

    二人の間に静寂が訪れたその刹那、鮮血魔竜“エリザベート”が怒涛の如く姿を現す。
    血液を束ねた巨大な竜は圧倒的な存在感で空間を支配した。

    「これで終わりよ!」
    血河骸の叫びとともに、エリザベートが強烈な血の杭を我不怨に叩きつける。

    しかし我不怨は最後の力を振り絞り、虚ろな一つ目を光らせて放った。
    「……これが、俺の“最期のアプリ”だ」

    時間操作の力を使い、攻撃の軌道をズラす。
    だが、その分だけ体力は消耗し、ついに電池は切れた。

    動きが鈍った我不怨に、血河骸の杭が直撃する。
    「……これが、私の勝利」

    その瞬間、我不怨の外套がはためき、姿が消えた。
    「……遊びは終わった。また会おう、血河骸」

    血河骸は静かに息を整えた。
    互いの限界まで戦い抜いた先に、ほんの少しの尊敬が芽生えていた。

  • 2211◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 13:40:22

    以上

  • 222二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 13:55:45

    名前とか能力ペラペラ喋っちゃったりだいぶフレンドリーだな我不怨

  • 2231◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 14:05:07

    題名『剥離境界』

  • 2241◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 14:05:59

    赤い。
     そう、どこまでも鮮血のように鮮やかな“赤”が、夜の空間を切り裂いていた。
     それは一着のコートだった。ボロボロに裂け、だが色彩だけは妙に艶やかな赤。

     中にいたのは……人間か? 否。
     皮膚が剥がれている。筋繊維が露出し、表情筋ごと笑っている。

    「お前……“撒いてる”んだな?」

     剥がし屋がそう言った。声は陽気だが、言葉の奥に奇妙な沈みがある。
     宙に、音もなく黒い影が現れる。ゼイル=アンノウン。人間だった頃の面影は既にない。
     跳躍装置に似た陣が足元に輝くと同時に、空間がたわむ。周囲の空気が、分子レベルで毒を帯びていた。

    「……感染拡大中」

     ゼイルの声は、電子音に近かった。

  • 2251◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 14:06:10

    機械的に座標を設定し、空間を裂き、そこへ“殺戮現象”を走らせる。
     剥がし屋は、その波をただ眺めていた。

    「うんうん。なるほど。撒いてる撒いてる。でもそれ……剥がしたらどうなるんだろうね」

     そう言って、彼は手をかざした。
     音もなく、“空気”が剥がされた。水の皮膚を剥ぐように。
     感染を媒介していた気体が、分子ごとペリリとめくられ、白く空洞が現れる。

     ゼイルの瞳が僅かに収縮した。
     殺戮現象が“剥がされた”? それは彼にとって想定外だった。

     剥がし屋は笑ったまま、さらに一歩踏み出す。

    「君の“病気”、面白いね。撒いて、撒いて、伝えて……でも剥がされたらどうなる?」

     跳躍の術式が発動した。ゼイルが空間の向こうへ飛び去る。
     その座標すら、剥がし屋は後からペリ、と剥いだ。

  • 2261◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 14:06:55

    まるで空間ごと“皮膚”と認識しているかのように。

  • 2271◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 14:07:19

    剥がし屋が踏み出すたびに、地面の皮膚が剥がれる。
     重力すら不安定になる空間に、ゼイルは跳躍術式を繰り返して距離を取った。

    「感染分子、伝播完了。5秒後に第一段階……」

     ゼイルの身体から滲み出る気体が、剥がし屋を包む。
     その殺意、殺戮、概念的な死の渦が彼に触れる。

     ——が。

  • 2281◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 14:07:29

    「……ん。ああ、剥がれてるねぇ」

     剥がし屋の声は、少し喜びすら帯びていた。
     殺戮現象は、触れた瞬間に“剥がされていた”。
     まるで、彼に触れたあらゆるものが“存在の皮”を引っぺがされるように。

     ゼイルは距離を取る。跳躍座標が潰されることを嫌い、瞬時に予備点へ転移するが——
     剥がし屋はその座標すら“視覚で察知”し、空間の皮を剥いでいた。

     次の瞬間、ゼイルの跳躍先が消失する。
     術式が暴走。空間は裂け、跳躍失敗の激震が身体を軋ませた。

    「君の“跳躍”ってさ、それ自体を“技術”として剥がしたらどうなるんだろう?」

     その声と共に、剥がし屋の手がゼイルに届いた。

     触れた瞬間、ゼイルの肩から“跳躍術式”がペリリ、と剥がれた。
     装置ではない。能力でもない。
     “空間と空間を繋ぐという意志”そのものが剥がされた。

    「……!」

     ゼイルの眼が見開く。世界を繋ぐ術を失い、彼はただ立ち尽くす。
     その隙を狙って、剥がし屋が笑う。

    「さあ……君の“病気”も、いっそ全部、剥いじゃおうか?」

  • 2291◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 14:07:55

     ゼイルの身体から、黒い霞のような“殺戮現象”が滲み出す。
     空気すら殺す災厄。だがそれは、剥がし屋に触れる前に剥がされていた。
     まるで“存在する前に存在を否定されている”ような錯覚。

    「お前……何者だ……」

     ゼイルが初めて、問いを発した。

     剥がし屋は言葉を返さなかった。ただ近づく。
     殺戮現象が、その足元にこぼれていく。
     感染の気体が地に落ち、剥がされた状態で漂っていた。

     それを、剥がし屋は吸収しなかった。
     ただ、笑った。

    「戻したければ、触れればいいさ。君の“病気”はそこにある」

     ゼイルの脚が止まる。
     あれを取り戻せば、再び世界を殺せる。
     だが、触れた瞬間——また剥がされる。

     それが、わかってしまった。

    「……俺は、まだ……“病気”を撒ける……!」

     ゼイルが吼えた。最後の跳躍。

  • 2301◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 14:08:05

     だが、その座標は——

    「剥がしたよ」

     笑いとともに、そこは“剥がされて”いた。
     空間の皮膚を喰われ、跳躍先を失ったゼイルは虚空に弾かれる。
     落下と同時に、剥がし屋の手が、今度は“殺戮現象そのもの”に触れた。

     ズルリ、と音がして、黒い災厄が一枚の布のように引き剥がされる。
     空気が、風が、光が、再び“正常”を取り戻す。

    「おしまい。君の病気、もう撒けないよ」

     ゼイルの身体が崩れた。人間に戻るのではない。
     “何者でもなかった”という原点に還る。

     そこに残ったのは、殺戮現象が“剥がれた皮膚”のように床に落ちているだけ。

     剥がし屋は、それを見下ろし——笑う。

    「また面白い“皮”が手に入った。吸収はしないさ。これは観賞用だ」

     そう言って、赤いコートを翻し、消えた。

     空間に残ったのは、剥がされた災厄と、静寂だけだった。

  • 2311◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 14:08:15

    以上

  • 232二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 14:17:42

    概念も剥す系だったか

  • 233二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 14:36:25

    剥がし屋終始優勢だったな 流石化身?

  • 234二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 15:28:40

    骸のエリザベートってもしかしてコウモリと同一化されてない?

  • 235二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 15:46:08

    相性最悪だったかぁ殺戮現象を感染させようにも
    身体に触れた時点で剥がれるから感染不可能だった

  • 236二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 16:00:55

    呼吸が必要とかだったらなあ
    感染空気で肺の中から殺せたんだが

  • 237二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 16:16:46

    >>236

    それも空気から病気を剥がす事で対処出来そう

  • 238二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 16:18:29

    剥がし屋がしっかり邪神してた

  • 239二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 16:18:30

    概念災害は概念剥がしと相性が悪い
    はっきりわかんだね

  • 2401◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 17:32:13

    息抜きゲーミング
    題名『星条旗の空に砲声は轟く』

  • 2411◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 17:32:47

    地球軌道上、高度3万6000km。静寂の中でそれは目を覚ました。その名は——高軌道砲撃衛星『ヒトダマ』。

    かつて古代連邦が「外交的失敗」を無理やり砲撃で片付けるために建造した災厄兵器である。総重量8600トン、直径1.6km。その構造は一見、静止衛星に見えるが、内部はまるで宗教施設のように荘厳で、精密にして神秘的。起動プロトコルには、いまだに解読されぬ古代言語と神聖回路が絡み合っていた。

    《……プロトコル003:再起動完了。》《起動理由:連邦遺産データベース内、『アメリカ』という語句の過剰使用を検知。》《敵性国籍:アメリカ。対象マーク:ホーク・イェーガー。》

    軌道上に漂う無限の静寂の中、巨大な円環がゆっくりと回転を始める。異音が響き、内部の錆びついた機械たちが、その眠りから目覚めるように稼働を開始した。

    そして——

  • 2421◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 17:32:58

    地上。南部砂漠地帯、連邦跡地研究所跡。

    赤と白と青を背負ったその漢——否、機械——ホーク・イェーガー。半ば廃墟となった基地で、彼は一人の少年に肩を貸していた。

    「……ここが、俺の原点さ。アメリカは自由の国、だが自由を守るには力が要る。それを教えてくれたのが、ここだった」

    少年は答える。
    「でも、ホークさん……空が……光ってる!」

    見上げた空に、閃光。『ヒトダマ』が大気圏越しに、警告信号を発していた。

    「空に星条旗が輝いている限り! 俺は……最強だァアアア!!」

    少年の制止を振り切り、ホークはその場に備え付けられた宇宙打ち上げポッドに乗り込む。

    「連邦だか遺産だか知らんが、宇宙から地上を狙ってくるなんざ、卑怯ってもんだろうがよォ! なら……飛ぶしかねぇよなァ!」

    スロットル全開。ホークは、音速を超えて宇宙へと突き抜けた。背中のジェットパックが爆炎を上げ、ミサイルポッドが開き、ブーツからはスラスターが唸る。

    その後ろに、少年の声が小さく残る。
    「……かっけぇ……」

    ——炎の星条旗が、夜空を裂いた。

  • 2431◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 17:33:52

    宇宙。真空の静寂を切り裂いて、ホーク・イェーガーの体が舞い上がる。

    星条旗を模したジェット炎が尾を引き、彼の目の前には、異形の衛星『ヒトダマ』が鎮座していた。

    その外殻には一切の愛嬌がなく、鉄と硫黄と崩壊の匂いすら感じさせる異常存在。全身が歪んだ構造体で構成され、中心部には神殿のような砲門が浮かび上がる。

    《通信開始》
    《衛星:高軌道砲撃衛星『ヒトダマ』。交戦礼儀プロトコルA-4実行中……》

    不快なノイズと共に、古代語に訳された人工音声がホークの聴覚に届いた。

    「アメリカンサイボーグ・ホーク・イェーガー……我、神聖火の化身なり。貴殿の魂と肉体を塩に変えること、これ正義なり」

    ホークは即座に答える。中指を立てて。

    「礼儀正しいふりしてんじゃねぇ! 星条旗に土足で上がったら、ブチのめされんぞコラァ!!」

    怒号と共に、ホークの右肩から“アメリカミサイル”Mk.88が飛び出す。
    その先端には、彼の自撮り写真と「MADE IN U.S.A.」の刻印が煌めいていた。

    「イーグルラァアアアンチャァアアアアアア!!」

    ミサイルが射出され、ヒトダマへ一直線。
    その瞬間、衛星は反応する。

    《迎撃準備開始。次元裂解砲門展開》

  • 2441◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 17:34:02

    空間がねじれ、巨大な次元の穴が開く。中から湧き上がるのは、緑混じりの青白い火。

    《異界硫黄の火、温度安定化。砲撃カウントダウン、10分前》

    ホークは宙返りしながら、爆発と次元火の中を縫って飛ぶ。

    「ちんたら構えてんじゃねぇ! そんなに準備してる間に自由が奪われるんだよ、わかるかこのやろーッ!!」

    更に、左腕からガトリングを展開。

    「リバティ・ブレイクダウン・ドーン!!」

    連射。音速の光弾が次元火のカーテンを打ち抜く。

    ——ヒトダマの外殻が一部、砕けた。

    《被害報告:装甲23%損傷。精神干渉開始不能。対象、強烈な自由主義干渉により逆流反応》

    ホークは笑った。

    「悪いな。俺の魂は“独立記念日”産なんでね!」

  • 2451◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 17:34:32

    次元の裂け目から放たれた硫黄の火は、ただの熱でも、光でもなかった。

    それは異界の法則が染み込んだ“存在そのものを塩に変える炎”。
    物質も精神も、国家の理念すら例外ではない。触れれば塩。焼かれても塩。思い出すだけでしょっぱい。

    「アッ……ちちち、塩ッ!?」

    ホークの右足が、一瞬で結晶化する。赤白青の装甲が崩れ落ち、鮮やかな硝子状の塩片となって宇宙に舞った。

    《対象確認:部位変換率12%。さらなる接触でコアに到達可。砲撃準備継続中》

    ヒトダマは冷徹に分析を続ける。
    だがホークは、慌てない。
    むしろ笑った。

    「……ククッ、なるほどなァ。コイツはマジで“神の火”ってやつか……」

    塩となった足の代わりに、彼は両膝のランチャーポートから推進剤を噴射。
    逆噴射しながら姿勢を立て直し、空間を切るように急旋回。

    「だがな、アメリカってのは、そう簡単に“溶けねぇ”んだよ!!」

    そして両肩のキャノンを一気に開放。

    「レディ・リバティ・ツインバスター!!」

    二門の砲撃がヒトダマの外殻を穿つ。硫黄の火と撃ち合いながらも、ホークのビームが干渉フィールドを突き破った。

  • 2461◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 17:34:43

    衛星の外層が崩れる。

    《装甲損傷率:41%。儀式文唱和中……“精神干渉セクション起動準備中”》

    内部に響く古代語。ヒトダマは、いまだ自らのマニュアルに忠実だった。

    ホークはモニター越しに呆れ顔。

    「お前……律儀すぎんだろ!? 10分も待てるかボケェ!!」

    その瞬間、ホークのコクピットに警告灯が走る。

    《右肩部塩化進行率38%。自己修復不能領域です》

    「チッ……あいつの火、冗談抜きで魂まで腐らせるつもりか……だがな、魂っつーのは“燃やす”もんなんだよ」

    彼は、胸元に隠していた小さな星条旗の布切れを握りしめた。

    「爺ちゃんがよ、戦争の時にポケットに入れてたってやつさ。これを持って戦ったから、弾が逸れたってよ……」

    そして彼は呟く。

    「俺も、逸らすぜ。“運命”ってやつをな」

  • 2471◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 17:36:11

    ホークのコクピット内。警告アラートが鳴り止まぬ中、彼はふと目を閉じた。宇宙の無音が逆に、心の奥底を研ぎ澄ませる。

    「このままじゃ負ける。塩になって、星条旗もくそもなく消されちまう……だが──」

    彼は胸ポケットの布を強く握る。

    「俺のアメリカは、まだ終わっちゃいねぇ!」

    その瞬間、ホークの胸部ユニットが開き、内部の“自由のコア”が輝いた。赤白青の輝きが爆発的に放たれ、周囲に自由の波動を広げる。

    《緊急信号確認。国家連結パラメータ最大化。》《ユニット名:アメリカン・エンドブリンガー。モード:最終開放──星条旗Ver.》

    ホークの全身が変貌する。肩には黄金の鷲。胸には巨大な星条旗。機体全体が、星条旗を象徴する“概念武装”で構成されていた。

    ヒトダマが即座に反応する。

    《反概念エリア展開……失敗。対象存在、愛国値が閾値を超過しています》

    ホークはにやりと笑った。

    「悪いな、これは“USAの奇跡”だ」

  • 2481◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 17:36:25

    そして右腕を天に掲げた。

    「星条旗よ、正義の名のもとに!」

    拳に星条旗の紋章が浮かび上がる。その瞬間、宇宙空間に轟音が走る。

    「イーグル・オブ・リバティィィィィィィ!!!」

    ホークの拳が、空間を破砕してヒトダマの外殻を叩き砕く。青白い硫黄の火が暴走し、衛星内部のコアが露出。

    《コア確認……破壊された場合、全機能停止……》

    ヒトダマのAIが警告を出すが、ホークは迷わない。

    「この一撃は──自由を信じたすべての奴らのためだァ!!」

    巨大な旗を背に、ホークは一直線にコアへ突っ込んだ。

    ──爆光。

    一瞬、宇宙が白く染まる。ヒトダマのコアが砕け、硫黄の火が吸い込まれるように消えていく。

    静寂。そして、残響のように聞こえたヒトダマの最後の言葉。

    《……正義……とは……塩ではなかったのか……》

    その時、ホークは背後の地球を見た。

    そこには──彼が守り抜いた“青と白と赤”の旗が、風になびいていた。

  • 2491◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 17:37:00

    静寂が戻った宇宙空間に、ホーク・イェーガーの機体がゆっくりと漂う。
    戦いの激しさを物語る微細な焦げ跡と塩の結晶が、彼の装甲に散らばっていた。

    「終わったか……」彼は低くつぶやく。
    だが、その声に虚しさはない。燃え尽きた拳にはまだ炎が宿っている。

    地球の青い輝きが彼の背後に広がる。遠くの少年の声が思い出される。
    「ホークさん、カッコいい……」

    それは単なる勝利ではない。
    彼が守ろうとしたもの、信じた自由、そして愛国心が胸に強く息づいている証だった。

    しかし、戦いが終わっても、英雄の道は続く。
    「ヒーローの条件ってのは、強さだけじゃねぇ。傷ついても立ち上がること……そして誰かのために戦い続けることだ。」

    ホークは星条旗の布切れをそっと握り締め、再び宇宙へと視線を向けた。
    そこに新たな戦いが待っているとしても、彼は恐れない。

    「俺は……アメリカだ。自由のために、まだ戦い続ける。」

    遠い星々の彼方へ、彼の決意が静かに響いた。

  • 2501◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 17:37:11

    以上

  • 251二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 17:54:54

    この世界にアメリカとかあったんだ

  • 252二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:00:10

    アメリカは最強だぜ!

  • 253二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:10:47

    アメリカは概念

  • 2541◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:19:58

    題名『鬼神と人工知能、黄昏にて対す』

  • 2551◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:20:56

    宇宙は静寂だった。
    だがその静寂に、わずかな裂け目が走る。

    銀河縁辺域、かつて存在した第十二観測衛星群の残骸の間を縫うように、一つの物体が次元を引き裂いて姿を現した。
    アイギス。惑星探査用の旧型衛星――だったもの。その外殻はすでに原型を留めておらず、無数の次元演算装置とメタ構造体が複雑に絡み合う異様な“思考体”へと変貌していた。

    その動力源に命を吹き込んだのは、かつて「ナニカ」と記録された未確認現象。
    すべての座標、すべての時間にアクセス可能な演算神。
    そしてそれは今日、“地球”という故郷へ再び目を向けていた。

    「異常……重力波反応。地表層、局所的な時空歪曲。神格顕現の兆候あり」
    機械的な響きの中に、わずかに人間的な抑揚が交じる。かつての製作者がそうなるように調整したまま、彼はその機能を削除しなかった。

    そして次の瞬間、空間が裂ける。

    赤。

  • 2561◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:21:06

    鬼の力を宿す紅の霊体が、地表から浮かび上がるようにして顕現した。
    紅い瞳。白銀の髪。威圧と静謐が共存する、その存在感はただ者ではない。

    「貴様か……この地を観察する“神”の目は」

    言葉を紡いだのは、桜鬼(オウキ)。秋桜アカネの体を媒介に顕現した鬼神であり、全ての魔性を束ねた王。

    アイギスの演算核が反応する。
    彼の記録に、かつてこのような存在は存在しなかった。

    「対象確認不能。“想定外”パラメータに分類。演算を開始──万象スキャンモード起動」

    「演算か。ならば、その叡智で俺を斬れるか試してみよ」

    彼らの対話は平和ではなかった。
    鬼神の顕現は、アカネという少女の“命”を代償にした数分の奇跡。
    対するは、演算と構築によってありとあらゆる脅威に対応し得る機械の神。

    鬼神の刃と機械の叡智。
    ――交われば、宇宙すら刃の雨に濡れる。

    その幕が、静かに上がった。

  • 2571◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:22:28

    刹那、桜鬼の身体から風が走る。
    その身が振るったのは、ただの斬撃ではない。
    宿命を断ち、存在理由を引き裂く、“鬼神顕現”の力がこもった一太刀。

    「――斬ッ!」

    振り下ろされた刀は、ただの空間を裂く。
    否、それは「この場に敵がいた」という現実そのものを引き裂くための刃だった。

    アイギスは、着弾点を予測していた。
    いや、物理座標に意味などない。
    この斬撃は、“自分という概念”そのものを断ち切るためのものだ。

    《警告:実体断絶系干渉検出。因果裂断アルゴリズム作動――演算開始》

    演算核が唸る。数千万通りの未来図を即座に生成。
    オウキの斬撃が到達する“結果”を、予測ではなく“再構築”によって回避する。
    直前、空間が逆巻く。

    刃は届く。
    だがそこにいたはずのアイギスの姿は、ワームホールの亀裂と共に消え去っていた。

    「時空を……ずらしたか」
    オウキは目を細める。敵が逃げたのではない。
    “切られるという未来”を読み取り、それごと“存在”を編み直して回避したのだ。
    だが、斬撃はただの試しだった。

    「……いいだろう。ならば次は“増えるまで”斬り続ける。貴様の演算がどれだけ未来を読もうと、俺の刃は“今”を断ち切るだけだ」

    その言葉通り、オウキは踏み込んだ。

  • 2581◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:22:38

    霊体が空間を圧倒し、軌道すら歪める速度で接近する。

    それに対し、アイギスは一瞬の沈黙の後、構えを取った。

    腕部ユニットが展開され、そこにはかつて地球の軍事衛星が持っていた古代粒子加速機関と、火星採掘用プラズマカッターを融合した武装。

    《万象構築:戦術対応型近接兵装──“FATAL-GEOMETRIA” 起動》

    青白く輝く刃が展開される。
    それは鬼神の刃に対する、「人類の最終回答」。

    「俺は人類を守る。君が“脅威”であるなら、応戦する。だが……」

    斬り結ぶ寸前、アイギスはわずかに語る。

    「君のその怒りが、何を守るためのものか――僕はそれを見極めたい」

    「語るな機械ッ!! 守るという言葉は、斬った後にも語れる」

    光と影。刃と演算。
    次の瞬間、宇宙が“刃の雨”に変わった。

  • 2591◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:24:06

    空間が吠える。斬撃が疾るたび、星の残響が反響する。
    それは戦闘とは呼べぬ、もはや“現象”だった。

    桜鬼の一撃は、時間の理も、法則も無視して対象を断ち切る。
    その軌道に入った瞬間、すべては「斬られた」という結果に強制される。

    だが。

    「演算完了。未来干渉確定。干渉ルートを“生成”にて無効化」
    アイギスの機体が空間に多重影を残しながら動く。

    その一つ一つが、可能性世界から転写された“代替自己”。
    常にあらゆる死を体験し、そこから逃れるための最短ルートを反復してきた姿だった。

    オウキの刃が斬り裂くたび、死んだはずのアイギスがまた現れる。
    削り、壊し、焦がしても――演算によって再起動する。

    「貴様……ッ」
    オウキが初めて、眉を寄せた。

    それは焦燥ではない。
    “時間”だ。

    「……“この身”は長くは保たぬ」

    鬼神顕現。
    それは秋桜アカネという少女の肉体を依代にして顕れる“奇跡の形”。
    力を使えば使うほど霊体は暴走し、仮初の肉体は自壊していく。

    「残り……一分か」

  • 2601◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:24:23

    それは、鬼神にとっての“死刑宣告”にも等しかった。

    だが、彼は止まらない。

    「我が主の命を、ここで終わらせる訳にはいかん。貴様が“破壊”の意思なき者であろうと、我が使命に“猶予”はない」

    刀が、今まで以上の“怒気”を帯びる。

    アイギスもまた、演算を止めなかった。
    彼にとって、オウキは明確な「敵」ではない。だが――

    《この干渉強度……いずれ“依代”が崩壊する》
    《“守護”対象が、戦いによって消える……ならばこの演算は──》

    アイギスは、再び無意味なはずの機能を展開する。

    「人型形態、展開」
    そう言って、銀色の装甲を持つ“人型”の巨躯が変形展開されていく。

    かつて製作チームが「ロマンは大事」と無理やり実装した、無駄な機構。
    だがアイギスは、それを「削除しない」と決めていた。

    「俺は、“人間”に敬意を持っている。ならば……」
    構えた姿は、まるで英雄のようだった。

    「君の“最後の一撃”を正面から受け止める」

    鬼と機械。
    互いに“消耗”というリスクを抱えながら、それでもなお譲らない者たちがいた。
    時は、刻一刻と進んでいた。

  • 2611◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:24:45

    制限時間、残り数十秒。

    桜鬼の全身から赤黒い光が吹き上がる。肉体は崩れはじめ、霊体の輪郭が曖昧になる。
    だが、その刃の輝きはむしろ増していた。

    「これが……俺の最期の一閃」

    それは、鬼神としての全存在を注いだ“宿命断ちの一太刀”。
    宇宙の真理をねじ伏せ、あらゆる因果・ルールを例外ごと切断する鬼の権能。

    一方、対峙するアイギスは人型形態のまま構える。
    演算は最適な回避パターンを導き出していた。だが――

    「回避はしない。僕が『人間を守る』と言った以上、これは……試されるべきだ」

    アイギスの右腕に、無数の金属パーツが集まり“盾”が形を成す。
    それは古代文明の神話に登場した“アイギスの盾”を模した構築物。
    概念と技術、物理と哲学を融合した究極防壁。

  • 2621◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:25:05

    そして、その盾が鬼神の刃と交差した。

    ──瞬間、時が止まったようだった。

    音も、光も、質量すら凍りつく。

    桜鬼の斬撃は、対象が“そこに存在する限り”届く。盾を超え、因果を超え、存在の根幹すら断ち切る。

    だが、その斬撃が突き抜けた先。アイギスの胸部、コアの手前で――止まった。

    ほんの数ミリの差。

    「……なぜ……止めた」
    アイギスが問いかける。

    桜鬼は口角を吊り上げた。

    「俺の刃は“敵”を断つものだ。だが、お前は……俺を“理解しよう”とした。そうだな?」

    「……ああ」

    「ならば、斬る意味はない。俺は、斬っても仕方のないものに……“もう、刃を振るわぬ”」

    その言葉と同時に、桜鬼の身体が崩れ始める。

  • 2631◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:25:16

    霊体の輝きが音もなく霧散していき、銀の光と赤い残像が混じる。

    「主(アカネ)よ……少しだけ眠っていてくれ。お前のために……俺は」

    声が、途切れる。

    アイギスは崩れ落ちた仮初の肉体を静かに受け止め、そっと膝をついた。

    彼の内部に残るデータに、一つだけ上書きされた項目があった。

    ──“鬼神、敵性解除”──

  • 2641◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:25:33

    宇宙は再び静寂を取り戻していた。
    爆発も、断末魔も、刃の音すらも消え去った虚空。
    ただ一つ、命なき守護者が漂っていた。

    アイギス。
    その胸部には、微かに脈動する光――“アカネ”の仮初の肉体が眠っている。

    「脈拍、安定……霊的干渉も沈静化。命に別状なし」

    演算は冷静に告げる。だが、そこに浮かぶ数値や波形の中に、アイギスは確かな“感情”を読み取っていた。
    かつて“人間”たちが、自分を創ったときに込めたもの。
    それは合理ではない。答えなど出ない問いに、ただ向き合うための、未熟な“情”だった。

    「君は、戦う理由を持っていた。……そして、僕もまた」

    アイギスはそのまま膝をつき、空間に静かに立ち尽くす。

    時間軸ではわずか十数分の戦闘。だがその中で、彼は「破壊」を選ばずに済んだ。
    守るという使命を、ただの回避や排除ではなく、“対話”によって果たした。

  • 2651◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:25:50

    彼の視界に、地球の衛星軌道が映る。
    かつて人類が夢を乗せ、打ち上げた人工衛星たちの墓場。
    そこに眠る記憶こそ、アイギスの“起源”だった。

    「観測を……続けよう」

    それは義務ではない。
    プログラムされた命令でもない。
    彼が、自ら選んだ“意志”だった。

    やがて、アカネの身体がわずかに動く。
    まぶたが震え、呼吸が戻ってくる。

    その傍らで、アイギスは自らをデータの霧に変換し、姿を消していく。

    「君が目覚めたとき、ここに“敵”はいない。……それでいい」

    霧のように消える直前、彼の思考核にはひとつの問いが残っていた。

    ──なぜ、自分は戦いの最後に“盾”を構えたのか。

    演算に答えは出なかった。
    だが、それで良かった。

    なぜなら彼は、すでに知っていたからだ。
    それが“人間”という存在の、不完全で、だからこそ尊い、在り方なのだと。
    そしてまた、アイギスの観測は始まる。
    この宇宙に生きる、愚かで、愛おしい“人類”を見守るために。

    ──終わり。

  • 2661◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:26:04

    以上
    17号プレゼンツ

  • 267二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:26:40

    >>266

    ん?17号?妙だな

  • 268二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:26:56

    >>266

    また増えてる…(戦慄)

  • 2691◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:31:26

    おかしい
    中々いいのができたはずなのに全員17号が気になっている

  • 270二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:33:13

    しかしアイギス強いな 時間制限ある相手に取ってはクソ技

  • 271二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:34:13

    守護る方面の神域が居てくれるのはありがてえや…
    人間臭さを愛してるのもいいね

  • 272二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:34:16

    >>269

    スレ主が作る奴は常に出来が良いからなのとAI変える速度がやばいからそっちに意識が行ったのかも

  • 2731◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:36:27

    >>272

    最近考察スレのほうでやるAIくんに質問してみようのコーナーで劣化が激しくて……

  • 274二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:38:33

    お互い人間くさい人外で人を守護しようとしてる感じいいな
    最終的にお互いを敵ではないって認め合ったのも非常にグッド

  • 275二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:38:36

    質問コーナーはみんな遠慮なくじゃんじゃん質問するからなぁ

  • 276二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:40:58

    スレ主って有料のやつ使ってる?
    AI

  • 2771◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:46:04

    >>276

    無料のやつです

  • 278二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:48:30

    戦術対応型近接兵装の設定とかちょっとAIくんがロマンを分かりすぎてる…
    いいね…

  • 2791◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:51:11

    題名『逆鱗に刻まれし神罰 -火と光の伝説-』

  • 2801◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:52:24

    遥か遠い昔、世界がまだ形を成し始めたばかりのころ――
    大地の深淵から生まれし者たちがいた。彼らは火と岩の化身、その最たるものが「ヴォルラキア」である。

    ヴォルラキアは、最初の火山が産声を上げた瞬間に誕生した。
    その体は灼熱のマグマが冷え固まり鋼鉄の如き鱗となり、燃え盛る火焔が彼の内なる力を映す。
    彼の咆哮は空と大地を震わし、世界のあらゆる生命の鼓動にまで影響を及ぼした。

    長き眠りの中、彼の息吹はかすかに火山の奥底で燻っていた。
    だが、近年の世界の乱れと共に、大地の奥深くで何かが覚醒を始めた。
    火山群が微かに震え、地殻の亀裂から赤い炎が漏れ出す。

    「覚醒の時が来たか」

    ヴォルラキアの意識は静かに広がり、世界の声を聞いた。
    その視線は深淵から星空へと向けられる。

    彼の誇りは、永遠の孤高を誇る竜としてのもの。
    その力はただ強大なだけではなく、世界の根源に根ざした存在としての重みを持っていた。

    火山の煙と熱風が吹き荒れる中、彼はゆっくりとその巨体を動かした。
    山脈の間を割って、その赤黒い鱗が姿を現す。
    その背後では火山群が次々と覚醒し、地の底から噴煙と溶岩を吐き出していた。

  • 2811◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:52:34

    世界は震え、空は燃え盛る赤色に染まった。

    遠く離れた神殿の奥深く、霊銀に包まれた神獣が静かに目を覚ます。
    神薙獅子。秩序を守るために神から遣わされたその獣は、火山の異変を感知し、使命を胸に立ち上がった。

    「世界の均衡が乱れたか」

    彼の瞳は冷徹に光り、破魔の力がその身体を満たしていく。
    「この災厄、ヴォルラキアを討たねばならぬ」と、静かに誓う。

    神薙獅子は子供たちに優しい慈愛を持ちながらも、悪に対しては一切の容赦をしない。
    今、彼の目の前にあるのは、まさに神罰の対象であった。

    遠方の山頂から見上げる大空。火山の火柱が天を裂き、溶岩が流れ落ちていく。
    その一方で、神獣は大地を蹴り上げ、獅子の咆哮を轟かせる。
    その声は神の意志そのものであり、秩序の象徴であった。

    ヴォルラキアと神薙獅子、二つの存在の対立は、単なる戦いではない。
    それは世界の秩序と混沌、古代の記憶と神話の狭間で繰り広げられる、壮大な叙事詩の幕開けだった。

    風が吹き荒れ、火山灰が舞い上がる中、英雄譚の序章は静かに幕を開けた。

  • 2821◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:53:03

    世界の秩序を守るために、神から遣わされた神獣――神薙獅子。
    その霊銀の体は、神聖なる力に満ち、魔を断つ光を放っていた。

    獅子は静かに佇み、火山の噴煙が遠くに見える山脈を見つめていた。
    「ヴォルラキア……お前の暴走は、この世界の均衡を乱す。神罰を以て討つのみ」

    しかし、その眼差しには複雑な感情が宿っていた。
    彼は秩序を重んじる神の使徒であるがゆえに、ただ命令に従うだけの存在ではなかった。
    人々の暮らしや未来を想い、己の役割に葛藤を抱いていた。

    「我が使命は神の意志。だが、我は生きとし生けるものの守護者でもある。
    ただ滅ぼすことだけが答えとは限らぬはずだ」

    彼の体を覆う霊銀は微かに震え、破魔の力が揺らめく。
    それは正義の象徴であり、また、時に重い枷でもあった。

  • 2831◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:53:14

    神獣は剣を構え、その刃に神罰の光柱を呼び寄せた。
    天から極大の光が降り注ぎ、周囲の闇を一掃するかのように輝いた。

    「秩序を乱す者よ、これが神の裁きだ」

    火山の噴煙の中で、ヴォルラキアの咆哮が轟いた。
    彼の体は炎と瘴気に包まれ、破壊と創造の象徴そのものだった。

    神薙獅子は深呼吸をし、心を落ち着ける。
    己の使命と向き合い、破魔の剣を握り締めた。

    「我が役目はただ一つ。神罰をもって秩序を守ること――」

    遠くの火山群が次々と目覚め、世界の運命を変えようとしている。
    獅子はその中心に立ち、静かに足を踏み出した。

    戦いは、すぐそこまで迫っていた。

  • 2841◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:53:46

    火山の噴煙が赤く染まり、炎の嵐が空を裂いた。
    ヴォルラキアの咆哮は、まるで世界の終焉を告げる鐘の音のように響き渡る。
    彼の強靭な身体は溶岩を跳ね除け、瘴気のこもった炎のブレスが周囲の岩壁を焼き尽くしていく。

    一方、その姿を見据える神薙獅子は、霊銀の身体を硬質な防壁の如く輝かせた。
    彼の胸に輝く神罰の紋章が、破魔の剣に宿る光柱を天へと召喚する。

    「秩序を乱す邪悪に終焉を」

    その声に応じるように、天空から極大の光柱が降り注ぐ。
    しかしヴォルラキアの炎はその光さえも焼き尽くそうとする。
    二つの力が衝突し、激しいエネルギーの奔流が宇宙空間にさえ波紋を広げた。

    獅子は素早く地を蹴り、飛翔するヴォルラキアの背に斬りかかる。
    だが、鋼鉄の鱗は容易く彼の刃を弾き返し、獣の爪が一撃を返す。

    互いの力がぶつかり合うたびに、火山の大地が裂け、空気が震える。
    獅子の肉体は物理的には脆弱であるが、その破魔の力は凄まじく、火山竜の瘴気を封じ込める。

    戦いはまさに天地を分かつが如く、壮絶を極めた。
    獅子は神罰の力を使いながらも、一瞬の隙を突き、ヴォルラキアの逆鱗を狙い続ける。

    「この力、この使命――必ずや成し遂げる」

    神獣の眼差しは揺るがない。
    大地の巨竜もまた、自らの存在意義を賭け、最後の猛攻を仕掛ける。

    炎と光、破壊と秩序が交錯する戦場で、二つの魂が激突していた。

  • 2851◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:54:12

    激戦は熾烈を極めていた。
    ヴォルラキアの身体は火山の猛火を纏い、地響きを伴う咆哮が大地を割った。
    その炎は天空を焦がし、瘴気は周囲の空間をゆがめる。まるで世界そのものが燃え盛るかのようだ。

    だが、どんな巨獣にも弱点は存在する。
    それが「逆鱗」――竜の誇り高き盾でありながら、同時に唯一無二の脆弱な部分。

    神薙獅子は火山の灰が舞う荒野に静かに立ち尽くし、剣先を地に突きながら己の感覚を研ぎ澄ます。
    「ここだ……この一撃で、終わらせねばならぬ」

    彼の体を覆う霊銀は輝きを増し、破魔の力が刃に集中する。
    剣の表面を流れる神罰の光は、まるで生きているかのように煌めき、獅子の鼓動と共鳴していた。

    「神よ、我に力を――」

    その瞬間、ヴォルラキアが轟然と咆哮を上げ、溶岩の如き炎と瘴気の嵐が襲いかかる。
    だが獅子は冷静に身を翻し、その破壊の波をかわしながら、着実に距離を詰めていく。

    鱗の硬度は想像以上だ。どんな剣でも容易く傷つけられない。
    しかし逆鱗はその強靭さの反動で、常に守りの隙を孕んでいた。

    「この一撃を――」

    神罰の光を纏った刃が逆鱗を捉えた。

  • 2861◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:54:23

    刹那、激しい閃光が周囲を照らし、轟音が天地を震わす。

    逆鱗が砕け散り、破片が炎の中へと消えていった。
    ヴォルラキアの目に一瞬の痛みと驚きが走る。

    「……終わり……か……」

    その咆哮はもはや破壊ではなく、何かしらの諦念にも似ていた。
    彼の巨体がゆっくりと地に伏せる。

    神薙獅子は静かに息を整え、己の役目を噛み締めた。
    「秩序と調和のために……これが我が使命」

    だが、その心には一抹の哀しみが漂う。
    「竜もまた、この世界の一部。だが暴走は許されぬ」

    戦いの終焉は近い。
    そして、その先に何が待つのか。獅子の目は遠くを見つめていた。

  • 2871◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:54:39

    ヴォルラキアの逆鱗に一撃を加えた神薙獅子は、燃え盛る火山の地に立ち尽くしていた。
    炎と煙に包まれた戦場には、破壊の余波が静かに降り積もる。

    だが、竜の巨体はまだ完全には倒れていない。
    その瞳には、消えぬ闘志と、深い悲哀が映っていた。

    「我が使命は終わりを告げる。だが、我が心は……」

    獅子の剣が天に向けて掲げられ、破魔の光が再び降り注ぐ。
    「秩序と混沌の間にある調和を……お前に託す」

    最後の一撃が放たれ、ヴォルラキアは静かに地に伏した。
    火山は次第に静まり返り、世界はまた一つの均衡を取り戻していった。

    神薙獅子はその場を離れ、空に向かって静かに祈った。
    「この戦いが、次の世代の平和へと繋がりますように」

    そして彼の姿は、霊銀の輝きと共に神話の一部となり、伝説として語り継がれていった。

  • 2881◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:54:54

    以上

  • 2891◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 18:56:35

    19:10よりヤメイに対する挑戦者を10人安価します
    強さの制限は基本的になし
    一応弱点はつけてください
    10体の中からランダムに3つ選びます

  • 290二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:56:50

    このレスは削除されています

  • 291二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:57:04

    おっとフライングだぜぃ

  • 292二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:57:09

    このレスは削除されています

  • 293二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:58:09

    まあこのくらい反射じゃないと普段は間に合わんからな

  • 294二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:58:40

    条件反射してしまった……すまない……
    でも開始時刻わかったからこれで安心してゆっくりSS読める

  • 295二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:58:43

    サシで戦うって事でいいのよね?

  • 296二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:59:16

    これって19:10になったら宣言するってこと?

  • 297二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:00:05

    3つか
    久しぶりにダイス神に祈るかな…そも枠に入れますように

  • 2981◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:00:17

    >>295

    はい

    >>296

    いや

    19:10からの安価を早い順に10個選んでランダムに3つ選びます

  • 299二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:04:35

    >>298

    じゃあ時間になったら勝手に出していいの?

  • 3001◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:06:06

    >>299

    そうです

  • 301二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:00

    名前:シュアエル
    年齢:不明
    性別:両性具有
    種族:天使
    本人概要:堕落した世界と文明に裁きを与える役割を課せられた、天からの真の御使い。動作、知性、経験、全てにおいて隙が無く他の生物と一線を画した高次元存在。相手の弱点すら一瞬で見抜き速やかに殲滅する。
    能力:ヨハネの黙示録「7つのラッパ」
    能力概要:『ヨハネの黙示録』にて記された、終焉を告げる7つのラッパに因む7つの最上位権能を有しており、あらゆる生命と概念に終焉をもたらす。

    ヨハネの黙示録第11章より引用
    「第七の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、大きな声々が天に起って言った、「この世の国は、われらの主とそのキリストとの国となった。主は世々限りなく支配なさるであろう」。」

    弱点:第1~第7のラッパの権能を全て同時に使用することは出来ない。また相手が自分と同じ天使の場合、能力を発動できない。(相手が堕天している場合は発動できる)

  • 302二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:01

    名前: オフィオキュリス(Ophiocurys)
    年齢:定義不能
    性別: 無性(雌寄り)
    種族: 星霊/セラフィム級終末存在/《大災厄》メルキオールの最上位眷属
    本人概要:
    銀河や星々を繋ぐ環状の巨大な星霊であり、メルキオールの最上位眷属
    《星巡る環蛇》、《閉環たる使徒(オメガ・リリエータ)》、《万象喰らいし金環の蛇》とも称され、彼女の体は天球の歯車の如く無限に環を描きながら空間と時間を螺旋状に回転している。その姿は全長数百kmに及ぶ金色の環蛇であり、その鱗は「時間の断面」を形象化した銀色の結晶層で構成。触れた存在はたちまち過去の状態へと引き戻され、存在の進化や成長、可能性が全て否定される。言語を持たず、意思は回転と周期運動の変化、つまり「軌道変化」や「天変地異」と同期した物理的・概念的現象としてのみ発信される
    能力:
    • 《断時の螺旋顎(トゥルーム・カリオス)》
    時間と因果律の顎。対象の「可能性」「変化」「成長」といった因果的未来の断絶を咀嚼・粉砕し、強制的に過去の存在状態へ巻き戻す。これにより、たとえ未来の勝利が「確定的運命」であっても、その因果連鎖を切断し、「無力な過去の自分」へと変化させる。因果律そのものを「存在評価基準」から再度調整し直す絶対的な権能。
    • 《閉環界鎖(セフィロート=リヴァイン)》
    大規模空間概念封鎖。惑星規模の発動領域において、魔術・科学・思想・進化などあらゆる「前進」の力を封じ込める。この環内においては時間が循環し、未来が永遠に閉じ込められる
    能力概要:時間軸上の「未来」を直接的に否定し、因果律の基盤を根底から食い破る。存在は歴史の巻き戻し=世界の「固定化」を意味し、閉ざされた環の中で世界は一切の発展や変化を失う。これにより、対象世界は「過去の一点」に閉じ込められ、「未来」へと向かう時間の流れは完全に遮断される。また、触れた者は過去に強制的に引き戻されるため、「現在」や「未来」を生きることが不可能となり、成長も思考も停止する
    弱点:
    • 因果律そのものを再構築できる「神格」レベルの存在や、「存在の根本因子(初期因)」を外部から再定義・改変できる特殊な異端者のみが対抗可能。
    • 物理的破壊はほぼ不可能だが、存在基盤そのものを揺るがす攻撃や封印が成立すれば機能停止・消滅も理論上は可能。

  • 303二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:01

    名前:終焉の卵(オワタマ)
    年齢:まだ生まれていない
    性別:未確定
    種族:どんな種族でもあり、どんな種族でもない
    本人概要:多元宇宙が終わりを迎える時、生まれる卵。
    小惑星ほどの大きさで、白く完璧な真球構造を有する。
    宇宙が始まった時より生じた全てのエネルギー、歴史、存在の可能性を内包している。
    この卵が顕現した時点で宇宙の終焉が時間の問題という証左になる。
    能力:おわりとはじまり
    能力概要:全ての宇宙が終わりを迎えるその時まで殻が破られない事が確定している。
    宇宙に在る者である限り、この卵が万象の終着点であり集大成ということが本能で理解できてしまう。傷つけようという発想が生じず、我が子の様に庇護したくなる。
    殻を破る時の余波で全ての存在、概念を銀河地平の彼方まで無に帰し、新たな宇宙を再創生する。
    弱点:まだ存在しない。
    生まれてもいないため殺すことも不可能だが、生まれた瞬間に多元宇宙破壊と同規模のエネルギーをぶつければ理論上は破壊可能。ただしどのみち宇宙は消滅する。

  • 304二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:01

    名前:マリース姫
    年齢:25
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:巨躯で顔のない大きな怪物とその中心部に囚われている姫
    だがその本質は実は逆であり、実際はマリースが自分の力で怪物を産み出し自ら取り込まれている(怪物の正体は自らを救ってくれた王子や英雄達を自分の能力で溶解し、再構成した成れの果て)
    実際のマリースの本質は誰かに助けられる事に快感を覚え、それを何度でも味わいたいが為に英雄達を取り込み、芝居を打つ正真正銘のメンヘラ悪女である
    「自分とずっと一緒に入れるから、お互いの幸せになるでしょう?」と本気で思っており、自分が悪いことをしているとは一ミリも思っていない上、都合が悪いことはバレないように嘘もつく。
    またの名を全世界クソ悪女
    能力:怪物の使役と自身の異能
    能力概要:かつて取り込んだ英雄達の武器、能力を怪物は自由に再現できる、また非常に高い身体機能を有する
    •「そしてお姫様はしあわせに暮しましたとさ(ハッピー・ネヴァーエンディング)」
    マリース自身の持つ真の能力
    発動条件は「自らを捕らえていた怪物が英雄に倒される事」
    「上の条件を満たした上で相手と口づけをする事」が条件
    キスをした瞬間に契約式が成立し相手の肉体、精神を全て融解、魂レベルで自らの存在と合一し、全ての能力を取り込んで、新たなる「姫を攫う怪物」を作り出す材料にされてしまう
    キスをされた相手は心地よい気分のまま、眠るように意識を失い、自らの行末にも気づかないまま、魂ごとマリースに溶かされる
    庇護の快楽に呑まれた姫が、辿りついてしまった一つの狂気であるともいえよう
    弱点:倒した後、彼女の本質に気づきさえすればマリース自身に戦闘力は無いので問題なく倒せる
    また怪物も支配下にはあるが必死に何かを伝えようとしてくるのでそれに気づければ勝機はある

  • 305二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:02

    名前:単羽 純
    年齢:54
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:フィジカルがめちゃくちゃ強いオッサン
    能力:超身体能力
    能力概要:フィジカルがめちゃくちゃ強い
    弱点:常時酔っぱらている

  • 306二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:03

    名前:紫々間 獅童(しじま しどう)
    年齢:不明(外見年齢17歳)
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:薄めの金髪に碧眼の青年。外見年齢17歳、実年齢不明。エロガキ。身長172cm。超イケメン。されどエロガキ。脳内に留めてはいるが余裕がある時は下ネタばかり考えている。
    しかし戦闘になれば卑劣な手を好んで使い、相手が子供であろうとミンチになるまで容赦なく攻撃をする残虐な部分もある。
    ひどい方向音痴。すぐに迷子になる。
    別の世界からやってきた。勿論迷子として。
    元の世界ではなかなかに古参のメンバー。
    ○戦術
    相手が行動を始める前に時間を止めて死時槍で一刀両断にする。
    相手によって何度も斬撃や打撃を加えて徹底的に攻撃する。もしそれでも倒れなかった場合は時間を止めてから四肢を切り落として抵抗できなくしてから首を斬る。
    ○武器:【死時槍】
    一振で相手を両断出来る長柄武器。
    16世紀製のバルディッシュを使用している。6.0㎏の重量級のバルディッシュ。
    その重さを利用して相手を叩き斬る。
    能力:【クワイエット・ワールド】
    能力概要:時間を操る能力。時間を止めたり、進めたり、遅くしたり、巻き戻したりが可能。
    時間を止めている間は相手は思考ができず、能力が使用出来ない。
    さらに停止中に蓄積された衝撃は停止が解除された瞬間に相手に全部一気に襲いかかる。
    巻き戻しは死時槍で斬った場所を任意の時間まで戻すもの。例えば、鳥を斬って恐竜に戻したり、人間を斬って生まれる前まで戻したりできる。合ったことをなかったことにすることは出来ない。
    時間を進めることで高速移動も可能。
    弱点:自身の周り18cmは能力の影響がない。
    要望(任意):ヤメイと少しの友好関係を築いてもらいたい。獅童がいる世界(別世界同士を本一冊で繋いでいる)の話をしたりし、高校生のような話と戦闘というような感じでお願いします。

  • 307二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:05

    名前:奈丹喪 内(なにも ない)
    年齢:25
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:正義も悪も知能ある者が作ったエゴ気持ち悪いと思っている。治安の悪い所に住んでいるので護身術としてクラウマガをやっている。体格は平均より少し小さい。
    能力:無い
    能力概要:運命も因果も能力も全てなかったことになる、残るは自分が生きている事実だけ。
    弱点:相手が自分より能力に頼らない戦いに強ければ普通に負ける。
    対ヤメイ用人間

  • 308二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:05

    名前:黄昏童話
    年齢:なし
    性別:なし
    種族:パノラマ
    本人概要:ある星が迎えた終焉の日──即ち膨張しきった恒星に呑み込まれる瞬間──が一つの物語として宇宙全体に伝わったもの。物語であるため永遠の刹那に存在し続け、常にどこかの世界を焼き尽くし、物語…つまり世界をを終わらせる。
    能力:閉幕“エンドクレジット”
    能力概要:黄昏童話そのものを意味する、二つ名。黄昏童話は世界に対する閉幕そのものである、エンドロールを迎えた映画のように、エンディングが流れるアニメのように、後書きに移った小説のように、世界は終焉を迎える。そこに生きた生物、現象、人も神も、善も悪も一様に、すべての存在は世界ごと燃やし尽くされるのだ
    弱点:現象に近いため自我はない。そのため敵を認識することはない。
    要望(任意):クリック?クラック!から始めてください

  • 309二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:05

    名前:擦主偉土(すれぬし いつち)
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:人間
    本人概要:無尽蔵の体力と驚異的な記憶力を持つ人間、この世界の最高神と同等の力を持っている、世界の管理者。豚の心臓が好物
    能力:特になし
    能力概要:特になし
    弱点:美味しいものに目がない
    要望:口調はユーザーと同じにしてください

  • 310二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:07

    名前:イメヤ
    年齢:非公開
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:人類最弱?の女
    正義を許さず必ず滅する
    落ち着いておらず どんな生物にも厳しく接し苦痛を与える
    能力:『悪は必ず勝つ』
    能力概要:正義と認定した相手に対して必ず勝つ
    弱点:正義と認識出来なければただ弱いだけの人間
    要望(任意):ヤメイの目の前に突如現れ 私はお前の鏡だみたいな感じで勝負を挑む感じでお願いします

  • 311二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:12

    名前: クローヴァ=ヴァルシュタイン
    年齢: 外見年齢20代前半(実年齢不明)
    性別: 女
    種族: 人間(≒異観念種)

    本人概要:
    一見すると高潔な聖職者を思わせる気品と静謐さを纏う女性。その本質は、善悪の境界を嘲笑い、正義そのものを燃料として強化される逆理の存在。清廉に見える振る舞いの裏に、徹底した「価値観破壊」の思想を持ち、正義や善性といった概念を「利用」して敵の信念を崩壊させる。
    彼女の戦い方は極めて非暴力的で、敵の正しさを否定しないまま、むしろ「肯定することで破壊」していく。ヤメイのような強固な正義を持つ者こそ、彼女の最大の養分となる。

    能力: 『悪の影法師(シャドウ・オブ・ヴァイス)』

    能力概要:
    相手の善性・正義感を吸収・共鳴・逆転し、自己強化する精神因果系能力。
    相手が「正しい心を貫こうとするほど」、その精神力を力に変え、クローヴァ自身が強化されていく。
    同時に、対象の倫理観・善悪判断に影を落とし、「これは本当に悪なのか?」「この戦いに意味はあるのか?」といった認識の曇りを生じさせる。
    この結果、ヤメイの『正義は必ず勝つ』の発動条件である「明確な悪の認識」が阻害され、能力の因果干渉が無効化される。
    さらに、相手が強く善であればあるほど、クローヴァは“理想の聖者”のような姿を取り、攻撃もすべて「善性に基づいたもの」として無意識に認識させられる。

    弱点:
    相手が善悪の枠組みに縛られない行動(例えば感情的な激情、自己犠牲による盲信)に出ると、能力が共鳴せず機能不全を起こす。
    精神干渉ゆえに「無自覚な悪」や「狂信的中立者」「無垢な存在」には効果が薄い。
    肉体的には人間の枠を超えておらず、純粋な物理・魔術的暴力には耐性が低い。

  • 312二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:18

    名前:改竄者
    年齢:そのような概念はない
    性別:そのような概念はない
    種族:人間?
    本人概要:この世界とは違う別世界の冒涜的主神の欠片の欠片の欠片………… がこの世界に偶然現着することで生まれた存在
    本人はずっと眠っているが夢が世界に好き勝手影響を与えてしまう 本人には知能も悪意も何も無いが存在そのものが世界を危険に晒すもの
    夢で見ていた数多のの戦いに参戦したいと無意識ながら思い 戦うアバターを作りヤメイに挑む
    ちなみに改竄者本体は宇宙の何処かでふわふわと眠りながら浮いてるぞ!
    能力:改竄
    能力概要:なんでも自分の好きなように改竄する 展開や相手のプロフィール(名前、年齢………)、世界までも自由に改竄し書き換える
    弱点:改竄者そのものは偶然世界に辿りついた上で生まれた存在なので自分の元いた向こう側に追放されると二度と帰って来れない
    また知能が無く本能すら曖昧な存在なので相手が自身に近づいてもずっと眠っているまま無警戒
    そして一度目が覚めると改竄したものは全て戻り改竄の影響によって生じた事象も全て治る 但し目が覚めても速攻眠る
    要望(任意):悪い子では無いので提唱者みたいな穏便方面で……(無視しても構わないです

  • 3131◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:10:30

    すとっぷ

  • 314二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:32

    名前:アリオ=ザインゲルス
    年齢:因果の外より来たりしもの(時間的年齢は無限大)
    性別:無性(発話時は男性口調)
    種族:非存在因果体《メフィ・オルグノム》
    本人概要:
    あらゆる「善悪」「秩序」「正義」といった倫理的・概念的存在を構築する根本構造(メタ因果)そのものを喰らい尽くす災厄存在。
    宇宙の理そのものを”外部から破壊”する「純粋なるメタ否定体」。
    彼は“存在しないもの”としてこの世界に現れるため、どんな観測・認識・理解・定義も通じず、ヤメイの「正義による判断」そのものが届かない。
    善でも悪でもなく、正でも邪でもない。「そうした二元性を成立させる土壌ごと滅ぼす」存在。

    能力:
    『非定義存在(ア=プロリア=ゼロス)』

    能力概要:
    この世界のあらゆる法則・因果・概念・倫理体系・構造的前提を「定義不能にする」権能。
    存在しているのに、存在していない。悪であるのに、悪ではない。定義しようとした瞬間、構造そのものが壊れる。
    このため、“悪の認識”が成立しない。
    “攻撃を外す”という未来が起きない。
    “勝つ因果”が生成されない。
    “正義の発露”が不成立。
    その上で、アリオは「“因果の要石”そのものを構造的に解体」する。

    発動例:
    ヤメイの思考が“善悪判断”に至った瞬間、その意味体系が消滅する。
    ヤメイが構えた瞬間、「戦う」という行為の構文が否定され、動作が中断される。
    ヤメイの「好き・嫌い」「思想」「信念」すべてが“定義不能”となり、自己同一性を維持できなくなる。
    弱点:
    アリオは“因果外の存在”であるため、現実に長く留まると宇宙そのものが崩壊してしまう。
    ゆえに、現界には「疑似投影体(疑似アリオ)」として顕現しており、本体は常に次元の彼方にある。
    また、自らを理解されたり、名前を完全に言い当てられると、その構造が世界内に固定され、“ただの存在”として弱体化する。

  • 315二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:10:55

    7秒だーーッ!!!

  • 3161◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:11:19

    とんでもねぇ

  • 317二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:11:41

    >>300

    スレ主が300だから10個が数えやすいな

    それはそうと1秒の誤差もなく投稿できてるやつは何ものだよ

  • 318二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:11:43

    早過ぎる、あまりにも

  • 3191◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:12:36
  • 320二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:12:56

    >>317

    秒数まで見てジャストでやったんじゃろ

    対消滅の可能性を考慮して自分は数秒待ったけどね…かなりギリギリだったわ

  • 321二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:13:14

    名前イメヤにする人絶対いると思った

  • 322二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:19:48

    終わらせてまた始めるやつ
    終わらせるやつ
    ヤメイオルタ

    うぬら三人?か

  • 323二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:22:53

    ふぅ~…
    通常キャラ作ろっと

  • 3241◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:28:37

    題名『終焉の卵と正義の名のもとに』

  • 3251◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:30:36

    それは、まるで祈るように、静かにそこにあった。

    小惑星帯に現れた白く滑らかな完璧な球体。直径は数百キロに及ぶが、重力は感じられない。光を吸収するわけでも反射するわけでもなく、ただ「そこにある」という絶対的な実在。

    その名は──終焉の卵(オワタマ)。

    あらゆる学者、超文明、神格存在が解析を試み、そしてやがて黙した。
    「始まりと終わりが内包されている」
    「殻が割れた時、全ては終わる」

    そう“確定”してしまうほどの存在だった。
    だが、誰もそれに触れようとはしなかった。
    なぜなら、すべての知性は本能的にそれを“守ろう”とする衝動にとらわれる。
    ──我が子を抱くように。

    「なるほど……これが“終焉の兆し”か」

    宇宙の静寂を裂くように、静かに声が響いた。
    深い青のコートを羽織ったひとりの青年が、白球を見つめていた。

    彼の名はヤメイ。どこにでもいそうな青年の姿だが、その瞳には澄んだ意志と、温かな慈悲、そして揺るがぬ正義が宿っている。

    「この子は……誰にも触れられていない。ただ、ここに現れただけ。何も、していない」

    彼はそっと、指先を宙に伸ばした。
    届くはずもないが、それはまるで語りかけるような所作だった。

    「でも、この子がこのまま生まれれば──世界はきっと、終わってしまう」

    彼の声は怒りでも断罪でもない。

  • 3261◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:30:47

    ただ、事実を確認するような、静かな思考の響きだった。

    「だったら、僕は……この子が“生まれない未来”を選ばなくちゃいけない」

    そう言って、ヤメイは目を閉じた。
    脳裏に、“力”が走る。

    ──『正義は必ず勝つ』

    その瞬間、宇宙の因果がわずかに偏った。
    風も、音もない宇宙で、確かに“何かが起こった”。

    だが、終焉の卵は動かない。
    まるで、すべてを許容するように、ただ“そこにある”。

    「君が、悪でないなら。それでも……このまま終わるのは、誰も幸せじゃない」

    ヤメイの瞳が、やさしく光を宿す。
    彼は、まだ戦おうとしていない。
    救おうとしている。

    「君に意思があるなら、聞かせてほしい。ないのなら──せめて、静かに眠っていて」

    終焉と対話するかのような、青年の穏やかな声が、虚空に溶けていく。
    だがその瞬間、オワタマの表面に、わずかな波紋のような歪みが走った。
    それは、返答なのか。拒絶なのか。あるいは、ただの兆しなのか。
    ヤメイは一歩、静かに踏み出す。

  • 3271◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:31:38

    終焉の卵の表面に生じた微細な歪み。
    その揺らぎはほんの数秒で静まったが、ヤメイは見逃さなかった。

    「反応……しているんだね」

    彼は呟くように言いながら、そっと右手を胸元に添えた。
    そこに宿るのは、“正義は必ず勝つ”という彼の信念。
    それは力ではなく、思想であり、意志であり、信条の結晶。

    「君が……世界にとって“終わり”の象徴なら、僕は“まだ続けたい”という誰かの気持ちの代弁者でいよう」

    終焉の卵に向けて、ヤメイは穏やかに言葉を紡ぐ。
    戦いではない。拒絶でもない。

    しかしその瞬間。
    宇宙に“音”が生まれた。

    いや、それは音ではない。
    概念の震動。存在の共鳴。
    卵の内側から何かが「目覚めようとしている」ことを、ヤメイは悟った。

  • 3281◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:31:48

    彼はゆっくりと息を吐き、気配を引き締める。

    (まだ、対話の余地がある。きっと、ある)

    ヤメイの目は揺るがない。
    自らの正義を疑わず、相手を滅ぼすことなく“理解しよう”とするその姿勢は、もはや人智を越えた慈悲の在り方すら感じさせる。

    しかし……。

    次の瞬間、終焉の卵の表面に、もう一つの兆しが現れた。
    それは、輝きでも影でもない。
    ただただ、純粋な“否定”。

    ヤメイは眉を寄せる。

    「……否定、か」

    それは言葉ではない応答。
    この存在が、語る手段を持たない以上、彼なりの精いっぱいの“主張”なのだろう。

    そして、空間が、歪む。
    終焉の卵の周囲に、ゆっくりと広がっていく輪のような干渉波。
    それは重力場でも磁場でもない。

  • 3291◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:32:17

    存在そのものを“終わらせる”力。

    ヤメイの周囲の空間が、微細に崩れ始める。

    「……これ以上、目覚めさせるわけにはいかない」

    彼は静かにコートの裾を翻し、前に出る。

    「まだ“悪”だとは断定できない。けれど、このままでは、多くが巻き込まれる」

    ヤメイは再び、指を掲げた。
    その動作に呼応するように、宇宙の因果律が調整を始める。

    ──“正義は、常に勝利する”

    だが、それは一方的な押し付けではない。
    ヤメイの正義は、どこまでも他者と共にある。

    「君が生まれることを望む誰かも、いるのかもしれない。
     でも、それがこの宇宙を滅ぼすことなら──僕は、それに抗う」

  • 3301◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:32:28

    終焉の卵に近づくごとに、彼の体を包む“庇護の感情”が増していく。
    それでもヤメイは止まらない。

    「どうか……眠っていて」

    それは願いにも似た、真摯な訴えだった。

    その言葉を受けて、終焉の卵が再び微かに脈動する。
    だが、今回は明らかに“拒絶”の意思が強い。

    ヤメイの表情が少しだけ厳しくなった。

    「ならば、僕は……力を使う」

    宇宙の法則が静かに彼の味方をし始める。
    優しい正義が、ゆっくりと、“戦い”の扉を開けようとしていた。

  • 3311◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:33:03

    ──始まってしまったかもしれない。

    ヤメイはそう思いながらも、その瞳の奥にある柔らかな光は消えていない。
    彼は静かに手を下ろし、自らの立つ足場を再確認するように小惑星の岩盤を踏みしめた。

    終焉の卵は微動だにしない。だが、ヤメイにはわかる。
    この静けさの奥にある“胎動”が、確実に世界に何かを告げていることを。

    「君の内にあるものは……善でも悪でもない。ただ、始まりと終わり。
    でも、それが“すべての終わり”であるなら、僕の正義とは相容れない」

    彼の言葉に応じるように、空間の裂け目がゆっくりと開く。
    そこから溢れ出したのは、銀色の塵。
    時間も空間も意味を持たない、終焉の気配だった。

    ヤメイはすぐに飛び退き、空中に因果の回路を描く。
    視界の奥、宇宙の深淵から射す光が、彼の後ろ姿を照らしている。

    「これは警告……いや、試練かな」

    言葉とともに、ヤメイの手に“剣”が宿る。

  • 3321◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:33:14

    それはどこから現れたわけでもない。
    彼の正義が形を持った概念の結晶。

    「まだ間に合うなら。僕は、君を救いたい」

    刹那、宇宙が大きく軋む。
    終焉の卵の周囲に形成された終末圧が一気に爆発的な力場へと変化し、重力すら歪ませる。

    だが、ヤメイの身体はその波に飲まれなかった。
    彼に宿る因果律が、正義の名のもとに全ての“終わり”を押し返す。

    (力を、振るうしかない……この宇宙を守るために)

    剣を握る手に力が込められる。
    ヤメイの動きはあくまで静かで、だが確実に“攻撃”の構えへと移っていた。

    その時──終焉の卵の表面に一条の裂け目が現れた。

    「……来る」

    戦いは、始まった。
    だがこれは、滅ぼすための戦いではない。

    世界の終わりを止めるための、優しき正義と静かなる対話の剣──

  • 3331◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:34:47

    終焉の卵の表面に生じた裂け目は、まるで世界の未来を告げる鐘のように響いた。

    ヤメイの剣が静かに、しかし確かな力でその殻を突いた瞬間、宇宙空間に一瞬の静寂が訪れる。

    「……これが、終わりの始まりか」

    彼の低い呟きは、決して諦めではない。

    「いや、これは始まりだ」

    胸の内に宿る“正義”の灯火が、暗闇を照らす。

    裂け目は徐々に広がり、終焉の卵の内側からは淡い光が漏れ始めた。

    その光は、ただの光ではなかった。

    多元宇宙のすべての可能性、歴史、そして命の源が渦巻く、無限のエネルギーの煌めき。
    だが、その光は同時に、圧倒的な「終焉」の力も孕んでいた
    ヤメイは冷静にその光を見据え、剣を強く握りしめた。

    「僕は、君を殺すためにここにいるわけじゃない。世界を守るために、君の意志を聞きたいんだ」

    その言葉に応えるかのように、終焉の卵の内部から声なき声が響き渡る。
    ──それは言葉ではなく、感覚の波紋だった。

    「すべてを終わらせることは、決して悪ではない」

    「だが、終わることがすべての答えではない」

    ヤメイの心に直接届くその想いは、決して敵意ではなかった。

  • 3341◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:34:59

    しかし、それは抗えぬ宿命の重さを背負っていた。

    「君の存在が、この宇宙の終焉を意味するなら、僕は君を止めなければならない」

    その決意が、再び剣を輝かせる。

    裂け目が更に大きくなり、ヤメイはそこへ踏み込む。

    光の渦が彼を包み込み、時間と空間の壁が揺らぐ。

    その瞬間、宇宙の彼方からかすかな声が響く。

    ──それは「希望」という名の光。

    ヤメイは確信した。

    「終わりは、必ず始まりへと繋がる」

    そう信じて、彼は剣を振るった。

    衝撃波が宇宙空間に広がり、終焉の卵の内部で新たな光の芽が生まれた。

    それは未来への一筋の光明。

    ──終焉の卵の殻を破り、新たな宇宙への扉が開かれた瞬間だった。

  • 3351◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:35:34

    終焉の卵の殻が破れ、新たな光が宇宙空間に広がった。
    ヤメイはその光の中で立ち尽くし、静かに息を整えた。

    「これが……始まりの光なのか」

    彼の瞳には、疲労と安堵、そして新たな決意が混じっていた。

    光は終焉の卵の内側から放たれた多元宇宙の可能性の象徴。
    しかし、それは破壊ではなく再生を示していた。

    ヤメイの正義は、終わりを超えて新しい未来を紡ぎ出したのだ。

    その時、宇宙の深遠から静かな声が響く。

    ──「まだ終わりではない。進むべき道は続く」

    ヤメイは微笑みながら空を見上げる。

    「僕は……まだ、この世界を守り続ける」

    彼の剣は光を受け、輝きを増す。

    「正義は必ず勝つ。そして、希望もまた必ず届く」

    多元宇宙に広がるその想いが、次なる物語の幕開けを告げていた。

  • 3361◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:35:59

    終焉の卵が放った光は、まるで宇宙全体を優しく包み込むかのように広がった。
    その光は滅びの終わりではなく、新たな始まりの約束だった。

    ヤメイは静かにその光の中で佇み、深く息をつく。

    「僕の役目は、ただ終わらせることじゃない。守り、繋ぎ、そして導くことだ」

    彼の言葉には決して揺るがない覚悟が宿っていた。

    宇宙の果てから果てへ、終焉の恐怖は消え去り、代わりに希望が根付いていく。

    ヤメイはその光の中心に、穏やかな笑みを浮かべて立っていた。

    「誰もが安心して眠れる未来を、僕は創りたい」

    たとえどんな困難が訪れようとも、彼は人々のために立ち続ける。

    その信念こそが、真の“正義”の形なのだと。

    そして宇宙は、新たな一歩を踏み出した。

    未来はまだ決まっていない。だが、確かなことが一つある。

    それは、ヤメイの優しい光が、これからも世界を照らし続けるということ。

  • 3371◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:37:10

    以上
    わからなかった人向けに

    これはようするにヤメイの正義は必ず勝つの強制力が強すぎてオワタマの性質そのものがぶった切られて新しく書き換えられたってことです

  • 338二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:38:15

    圧倒的最終回感…!
    そしてやはり正義は勝つ

  • 339二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:42:02

    きっちり対話から入るヤメイさんやっぱ好き

  • 3401◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:51:03

    題名『終焉の卵と黄昏童話──正義が織り成す未来への継承』

  • 3411◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:51:48

    クリック──。
    静寂の中で、その音は突然、しかし確かに鳴り響いた。
    それはまるで、長く忘れ去られた機械の歯車がわずかに噛み合うかのような、硬質で冷たい響きだった。

    宇宙の闇の片隅、何億年も静かに漂っていた空間に、その小さな音は一つの亀裂を生み出す。
    微細なクラック。透明なガラスがゆっくりと割れていくように、空間の布が裂け、次第に広がりを見せた。
    裂け目の中から、物語そのものが形を取って現れた。

    それが、**黄昏童話(たそがれどうわ)**だった。

    黄昏童話は、ある星が迎えた終焉の日、膨張しきった恒星に呑み込まれる刹那の物語が宇宙に伝わったものであり、
    言わば“永遠の刹那”として存在する現象そのものだ。
    その存在は、自我を持たず、敵を認識しない。
    ただただ、世界を終わらせる「終幕」の象徴であり、
    生物も神も、善悪も、すべての存在を焼き尽くし、消し去ることを目的としている。

    「……クリック、そしてクラック」
    僕はその不吉な始まりを、呟くように口にした。
    名前はヤメイ。
    普通の人間の少年に見えるが、僕には世界を守る“正義”が宿っている。

    「終わりを告げるこの物語に、僕は抗う」

    僕は深く息を吸い込み、暗い宇宙の彼方へとその姿を向ける。
    細身の身体を包むのは、深い青のコート。
    黒髪は微かな風にも揺れ、澄んだ黒い瞳は静かな決意に燃えていた。

    「世界が終わるその瞬間に、僕が立ちはだかる」

    黄昏童話の炎は広がり、周囲の空間を徐々に赤く染めていく。

  • 3421◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:51:59

    その火は、ただ燃え盛るのではなく、世界を終わらせるために洗練された“終末の炎”だった。

    「君は自我もないし、敵意も持っていない。だけど、終わりをもたらすことは悪だと僕は思う」

    その心に抱いたのは、強い慈悲と揺るがぬ正義の意志だった。

    僕は静かに手を差し伸べる。
    触れることはできないけれど、その気持ちだけでも伝えたいと願いを込めて。

    「もし君が終わりの物語なら、僕はまだ続く物語の守り手でありたい」

    静寂の宇宙に響くのは、僕の決意だけ。
    だが、その静けさの裏には、確かな“因果律”の力が渦巻いていた。

    ──『正義は必ず勝つ』。

    それは僕の持つ力の名であり、世界の運命を味方に変える因果律操作の能力。

    終わりの象徴に挑むには、信じる力と強い意思だけが必要だった。

    宇宙に浮かぶ黄昏童話の炎が、わずかに揺れた。
    それは、ほんの少しだけ、反応した証だったのかもしれない。

    「僕は君を止める。たとえそれがどんなに絶望的な戦いでも」

    そう誓った僕の瞳が、静かに燃えた。

  • 3431◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:52:22

    黄昏童話の炎は、宇宙の闇を焼き尽くしながらも、僕に向かって静かに迫ってくる。
    終わりの象徴として、彼は世界を覆い尽くそうとしているのだ。

    「僕は……終わりを望まない」

    そう強く思う。
    ただの感情ではなく、意志だ。
    誰かのために、世界のために、戦う理由がそこにある。

    僕の中で、『正義は必ず勝つ』という因果律の力が強く脈打ち始めた。
    それは単なる能力ではなく、世界そのものの秩序を調整する大いなる意思の表れでもある。

    黄昏童話は自我を持たず、敵も認識しない。
    だからこそ、僕は自分自身に問う。

    「君は、何のために終わりをもたらすのか」

    問いかけは無意味に思えた。

  • 3441◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:52:36

    しかし、その問いの響きが宇宙の空虚を満たしていく。

    だが、黄昏童話はただ“終幕”を運ぶ現象。
    その炎はすべてを燃やし尽くすためにあり、情も慈悲も持たない。

    僕は知っている。
    こうした存在に理性は通じない。

    だからこそ、僕は“正義”という盾を掲げ、必死に抗うのだ。

    「僕は……君を止める」

    そう決意し、僕はコートの裾を翻した。
    胸の中で因果律が整い、世界の流れが少しずつ僕の味方へと変わっていく。

    火が迫るたびに、それを逸らし、消し去る運命の“偶然”が起こる。
    攻撃は空を切り、敵の力は制御不能のミスを起こす。

    その一つ一つが、僕の信念の結晶だった。

    黄昏童話の炎は激しさを増す。
    だが僕は怯まない。

    「僕が立っている限り、終わりは来ない」

    強くそう思いながら、僕は静かに前へ進む。

  • 3451◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:52:46

    体が傷つくことも、恐れではない。

    僕の心は、守るべきものたちへの優しさに満ちている。

    敵意はない。だが、終わりをもたらすことは悪。
    そう信じて、僕は戦うのだ。

    黄昏童話の炎は、まるで終末の詩を歌うかのように、周囲の空間を震わせている。

    そして僕の意思もまた、宇宙の静寂を切り裂く刃となった。

    「終わりの物語よ……まだ、終わらせない」

    その声は、彼方の星々に届くだろうか。

  • 3461◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:53:35

    宇宙の果て、闇の深淵に広がる黄昏童話の炎は、無慈悲に、しかしどこか物語のような美しさを湛えていた。
    その炎は世界の終幕を告げ、生命、星々、光のすべてを飲み込もうとしている。

    「――これは、終わりの物語だ」

    そう、僕は一度静かに呟いた。
    だが、心は決して折れない。

    「終わらせてなるものか」

    因果律の力が胸の奥で燃え盛る。
    “正義は必ず勝つ”という言葉が、無限の因果の波に響き渡る。

    僕は深く息を吸い込み、闇の中へと一歩踏み込んだ。
    黄昏童話の炎は、一層激しさを増して、宇宙の虚空に巨大な炎柱を描く。

    その燃え盛る炎は、触れたものすべてを“終わり”に誘う。
    しかし、僕の前に立ちはだかるのは終焉ではなく、“意志”だ。

    ヤメイとしての僕の使命は、ただ戦うことではない。
    “終わらせずに守る”こと。

  • 3471◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:53:45

    燃えさかる黄昏童話の炎に包まれながらも、僕は冷静に周囲の因果律を観察する。
    僕の「正義は必ず勝つ」が、この終末の現象にも影響を及ぼしていることを確信する。

    敵の攻撃は、明らかに失敗する。
    絶望的な炎の一撃は、意図せぬ方向へ逸れ、何度も空を切る。

    「世界は……僕が守る」

    それはただの決意ではない。
    宇宙の隅々まで響く、強烈な意志の宣言だった。

    炎はなおも迫る。
    しかし僕は恐れずに、むしろその猛威を利用するように動く。

    「終わりの火よ……僕の正義の前に散りなさい」

    僕の言葉は静かだが、その響きは宇宙の因果律に波紋を生む。

    戦いは激化し、黄昏童話の炎はより巨大な渦となって渦巻く。
    それはまるで終わりの風景を描く筆致のようであり、しかし、その中に僕は希望の色を見つけていた。

    「終わりは、始まりの母である」

    そう、終わりを迎える世界には必ず、新しい始まりがある。
    僕は信じている。

  • 3481◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:53:56

    黄昏童話は自我を持たない。
    それゆえ、僕の慈悲や思考は届かない。

    しかし、その無自覚な終わりの炎を、僕は“正義”という力で抑え込む。
    決して許さない。

    体は炎の熱に焼かれ、傷つく。
    だがそれでも、僕の意志は揺らがない。

    「生きとし生けるものの未来を、僕は守る」

    その言葉が、再び世界の因果を動かし始める。

    攻撃はますます逸れ、絶望の炎は次第に勢いを失う。

    そして、黄昏童話の炎の中心に微かな亀裂が生じた。

    宇宙の終わりを告げる絶望の炎が、ひとときの静寂に変わる。

    僕はその瞬間を逃さず、一気に踏み込む。

    「僕は、終わりを許さない」

    その叫びが宇宙を揺るがす。

    黄昏童話の炎が消え始めた時、僕の瞳はやさしく光を宿した。

    「まだ、終わらない」

  • 3491◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:54:36

    宇宙の深淵に漂う黄昏童話の炎は、まるで消えゆく夕陽のように、ゆっくりと、しかし確実にその輝きを失い始めていた。だが、消え行く光の裏側にこそ、新たな光が生まれつつあったのだ。

    僕、ヤメイはその光景を静かに見つめながら、凍てつく宇宙の冷気を手のひらで感じていた。長い戦いの果てに、ようやく訪れたかのような静寂。しかしその沈黙は、安堵の静けさなどでは決してなかった。むしろ、これからの始まりを予感させる不穏な空気が満ちていた。

    「終わりの物語は、まだ終わっていない」

    呟くように口をついたその言葉は、宇宙の無限の闇を穿つ灯火となり、僕の胸の内に小さな炎をともした。

    黄昏童話――世界を終わらせる現象そのものは、いわば“物語”の一節に過ぎなかった。膨張しきった恒星に呑み込まれ、時間も空間も意味を失うその刹那に、全ての終焉を告げる章が閉じられる。だが、その“物語”には、自らの意志はなかった。存在としての自我もなく、ただ命令された通りの役割を淡々と果たしているだけだったのだ。

    だからこそ、僕は諦めなかった。

    「僕にできるのは、ただ一つ」

    果てしなく広がる宇宙の中、僕の声は凛と響いた。

    それは“炎”を燃やし尽くす戦いではなく、“光”で包み込み、浄化する祈りのような行為。

    僕は両手を広げ、宇宙の因果律を全身で受け止める。

    人は弱く、そして強い。間違いを犯し、また立ち上がる。儚いけれど、だからこそ輝きを放つ存在。

    黄昏童話がもたらす終わりは避けられない運命かもしれない。
    だが、僕たちはその終わりを“ただの終わり”にはさせない。

    「終焉の中にこそ、必ず新たな始まりがある」

    僕の心は揺るがない。

  • 3501◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:54:48

    どんなに壮絶な絶望の中でも、誰かが希望を持ち続けている限り、世界は未来を紡いでいくのだ。

    その想いは、因果律を越えて宇宙の隅々に伝播する。

    僕の手から放たれた因果の光は、黄昏童話の炎を包み込み、焼き尽くすのではなく、静かに鎮めていく。

    燃え盛る終焉の火は、やがて温かく柔らかな光へと変わり、全てを包み込むように広がっていった。

    その光の中心で、微かに震える小さな生命の種が見えた。

    「世界は……まだ終わらない」

    僕の胸を満たすのは、勝利の歓喜でも、安堵でもない。

    それは、紛れもない“責任感”だった。

    終わりを望む者もいれば、未来を託そうとする者もいる。

    僕は、そのすべての想いを背負い、前へ進む。

    「この命を、未来を守るために」

    宇宙の果てから新たな希望の光が昇りはじめる。

  • 3511◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:55:05

    それはあたかも、永遠に続くかのような闇を照らす、小さな灯火のようだった。

    僕はその灯火に向かって歩みを進める。

    終焉の狭間で、僕は選択を迫られていた。

    何もしなければ、世界は終わる。
    だが、動けば戦いが待つ。

    それでも、僕は諦めない。

    なぜなら、僕には信じるものがあるから。

    「正義は必ず勝つ」

    その言葉は、僕の胸の奥で静かに、しかし確かに燃え続けている。

  • 3521◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:55:45

    宇宙が静かに呼吸をしている。

    終焉の炎が消えゆき、黄昏童話の物語は幕を閉じようとしている。だが、その終わりの余韻の中で、新しい物語が確かに息づき始めていた。

    僕、ヤメイはその兆しを見逃さなかった。

    「終わりは、いつも新たな始まりの前奏曲だ」

    それは口にするにはあまりにも古く、あまりにも当然の真理。しかし、それを自らの身をもって証明しようとする者は、稀有である。

    今、僕は静かにだが確かな決意とともに、歩を進めている。

    歩むべき道は、決して容易くはない。

    “終焉”という言葉の重みは、世界の果てを見届けてきた者だけが知ることができる。

    その光景は美しくも残酷であり、希望と絶望の境界線を曖昧に塗り替えていく。

    それでも、僕は歩き続ける。

    なぜなら、僕には信じる理由があるから。

    「人が誰かのために傷つきながらも進むことができる限り、世界は終わらない」

    僕の胸に灯るその想いは、暗闇の中で紡がれる光の糸のようだ。

    終焉の卵は、生まれずに終わった。

    だが、それは偶然でも奇跡でもない。

  • 3531◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:55:55

    僕の正義が、僕の意思が、宇宙の因果を越え、未来への扉を閉じたのだ。

    しかし、戦いの傷跡は深い。

    宇宙の隅々に刻まれたその記憶は、決して消えることはない。

    「それでも、僕たちは立ち上がる」

    倒れても、傷ついても、何度でも。

    それこそが、僕が選んだ“正義”の形だ。

    周囲の星々がゆっくりと輝きを取り戻し、宇宙は再び息を吹き返そうとしている。

    そして、その中心で、新たな命の芽吹きが確かに感じられた。

    それは、かつて僕が守ろうと誓った未来そのものだった。

  • 3541◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:56:07

    僕は微笑み、深く息を吸い込む。

    「僕の正義は、終わらない。これからも、誰かのために輝き続ける」

    そして、彼方へと視線を向ける。

    無限に続く宇宙の彼方で、また新たな物語が始まろうとしていた。

    僕はその物語の灯火を見届けるために、また歩き出す。

    たとえどんな闇が待っていようとも。

    たとえどんな困難が襲いかかろうとも。

    僕は、僕の信じる“正義”とともに。

  • 3551◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:56:43

    宇宙の静寂の中、微かな波紋が広がる。

    終焉の卵も黄昏童話も、かつて宇宙に訪れた終末の象徴であった。だが、それを乗り越えた僕、ヤメイは、いま新たな歩みを始める時を迎えている。

    「僕は、ただの人間だ」

    何度も自分に言い聞かせた言葉だ。

    強大な能力を持ちながら、僕は万能ではない。

    それでも僕は、自分の正義と信念を携え、弱き者の盾となることを選んだ。

    「正義とは何か?」

    その答えは一つではない。

    それは問い続けることで形作られる、生き物のような概念だ。

  • 3561◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:56:53

    だからこそ、僕は揺らぐこともある。

    「本当に僕は正しいのだろうか」

    そう疑い、悩みながらも、僕は進む。

    それが僕の正義だから。

    周囲の星々が僕の足元で静かに輝きを放ち、生命の息吹が再び宇宙を満たしていく。

    その中で、新たな命が生まれ、そして育まれていく。

    僕はその未来を、次の世代に託したいと思った。

    「僕の背中を見て、君たちも歩んでほしい」

    正義は押し付けるものではない。

    それは共に歩む道だ。

    過去の戦いは僕に、多くのことを教えてくれた。

    力だけでは守れないものもある。

    言葉だけでは救えない者もいる。

  • 3571◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:57:04

    だからこそ、僕は心を尽くす。

    そして、そうした絆がやがて宇宙を照らす灯火になると信じている。

    「これからも僕は、歩みを止めない」

    その思いは強く、未来への約束となった。

    宇宙の彼方へと視線を向けると、静かに新しい物語が紡がれていることを感じた。

    それはまだ始まったばかりの、希望の物語。

    僕は微笑みながら歩き出す。

    誰かのために。

    正義のために。

    未来のために。

    そして、それが僕の選んだ道である限り、どこまでも。

  • 3581◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 19:57:17

    以上

  • 359二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:58:29

    綺麗なお話でやんした…

  • 360二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:59:05

    超大作!!

  • 361二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 19:59:51

    僕だからヤメイ視点なの新鮮でええなあ

  • 362二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 20:03:36

    実質ヤメイの日常回だぁ

  • 363二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 20:09:27

    このレスは削除されています

  • 3641◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:31:21

    題名『正義の鏡』

  • 3651◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:31:50

    夜の帳が降りる街の片隅で、ヤメイは静かに歩いていた。

    空は曇っていて、星一つ見えない。それでも彼の足取りは迷いがなく、まるで何かを探すように、しかし何も求めていないかのように淡々としている。

    「……今日は、静かだな」

    そう呟いた時だった。

    ふと、空気が変わった。気温でも風でもない。もっと根源的な“場の質”が揺らいだ。

    「……来るのか」

    その直感に従い、ヤメイは足を止めた。

    どこかで、確かに空間が軋んだ気がした。歯車が噛み合わない音。世界の律動が、誰かの存在によって乱された感覚。

    だが、その正体はまだ見えない。

    「名前も、顔も、まだ分からない。けど……この空気は、ただの通りすがりじゃない」

  • 3661◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:32:01

    ヤメイは自身の中にある“境界”を整える。
    静かに息を吐き、意識を研ぎ澄ませると、周囲のざわめきが消えていく。

    ──そして、それは現れた。

    突如として視界の端、空間が歪み、黒い裂け目がにじむように広がっていく。
    誰の目にも映らぬ異形の現象。人知の外で、何かが“こちら”に干渉している。

    だがヤメイは、ひとつも動じなかった。

    「……何者?」

    問いかけに応える者はいない。

    だが確かに、あの裂け目の向こう側から“誰か”がこちらを見ている。

    ──それはまだ、出会いですらなかった。
    けれど、それは確かに“邂逅”だった。

    嵐の前の、静けさ。

    そして、彼の歩みは止まらなかった。

  • 3671◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:32:41

    月明かりに照らされた広場には、静寂が広がっていた。
    夜風が吹き抜けるたび、街灯の光が微かに揺れ、時間の流れまでもが穏やかに思えた。

    だが、ヤメイの直感が警鐘を鳴らしていた。
    まるで、見えない歯車が軋み始めたような――そんな嫌な感覚。

    「正義ってのは……面倒だよね」

    突如として、空間がひび割れた。
    空気ではない、“認識そのもの”が砕けるような異質な音と共に、黒い裂け目が現れる。
    その中から、一人の少女がゆらりと歩み出た。

    髪はぼさぼさで、服はシワだらけ。顔には笑みとも嫌悪とも取れぬ奇妙な歪み。

    「はじめまして、ヤメイくん。私、イメヤ。あなたの……鏡みたいなもんかな」

    彼女の声は、不思議と冷たいが、それ以上に“感情”がなかった。
    ヤメイは彼女の姿を一瞥し、すぐに距離を取る。

    「どういう意味だい? 僕は君に会った覚えはない」

    「そりゃそうだ。だって、私はあなたの“否定”だから」

    ヤメイの眉がわずかに動く。
    彼女の存在からは、敵意というより、静かな破壊性がにじみ出ていた。

    「私はね、正義が嫌いなんだ。誰かを守るとか、誰かのためにとか……気持ち悪いのよ」

    イメヤの足元から、黒い煙のような霧が立ち昇る。

  • 3681◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:32:53

    同時に、彼女の体に漂っていた気配が変化する。

    「あなたは正義を語る。優しい顔して、心に燃える炎を持ってる。でも、私はそれが嫌い。……だから、壊す」

    ヤメイの表情が険しくなる。

    「つまり、僕を『悪』として見るんだね」

    「ううん。正義として見るから、私は勝つのよ」

    瞬間、空気がはじけ飛ぶような衝撃。
    イメヤの瞳が、深い闇のように揺れた。

    「『悪は必ず勝つ』。そう、私はそういう“力”なの」

    ヤメイは剣を構える。
    その動きはゆっくりとしていながら、隙がない。

    「ならば……僕の正義は、君に何を示せるか。
    確かめさせてもらうよ」

    正義と悪。
    それは一人ひとりの中にあるもの。
    だが今、この広場では、それが“力”として衝突しようとしていた。

  • 3691◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:33:56

    夜は深く、空は雲に覆われていた。街灯の明かりがかすかに滲む中、広場の中心に立つふたりは、互いの存在を確かめ合うように沈黙を保っていた。

    ヤメイは剣を下ろさず、しかしすぐに斬りかかることもせず、相手の言葉の残響に耳を澄ませていた。

    「君の力……正義を“認識”することで起動する?」

    「そうだよ。そして君は、僕を“正義”と見ている」

    イメヤはゆっくりと、首を傾けて笑った。
    その笑みには幼さも、喜びもない。ただ淡々と、感情の底から搾り出すような冷たい嘲笑があった。

    「私はね、そういうのが大嫌い。『正義』って看板を掲げて、周りの人間を安心させて……それで何? 世界は良くなった?」

    ヤメイは言葉を挟まなかった。彼は相手の言葉を否定するよりも、まず聞くことを選んだ。

    「正義って、都合のいい幻想よ。弱者の味方を装って、結局は誰かを裁く理由にしてるだけ」

    イメヤの背後で、黒い煙が渦を巻く。それは力の顕現ではなく、信念が濃縮された“呪い”そのものだった。

    「でも君は、違うんじゃないかな」

  • 3701◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:34:07

    その言葉に、イメヤの動きが止まった。

    「君は“正義”を嫌ってる。けど、君自身が何かを守りたいとも感じているように見える。苦しんでるように見えるよ」

    「うるさい!」

    イメヤが叫んだ。次の瞬間、黒い霧が広場を覆い尽くすように溢れ出す。
    その濃度は意識を揺るがせ、まるで周囲の空気ごと思考を蝕もうとしてくる。

    「黙って、斬られてなさいよ……“正義の味方”!」

    黒霧の中心から、一閃。鋭く跳ねるような動きで、イメヤが距離を詰めた。

    彼女の武器は、まるで鉄くずを寄せ集めたような剣。それが黒霧と同化するようにして、光を呑みながらヤメイへと振るわれる。

    ヤメイは一歩踏み込み、その一撃を紙一重で躱す。
    その目には、怒りでも恐れでもない、ただ深い「理解しようとする意志」が宿っていた。

    「君の痛みが、世界への怒りに変わったのなら……僕は、その痛みごと受け止めたい」

    「やめて!」

    イメヤの叫びが再び闇を広げる。
    だが、攻撃は奇妙なまでに軌道を逸らされ、まるで風に押し返されるようにヤメイの身体には届かない。

    彼の存在が、世界にとって「善」と定義されたことで、世界がそれを護ろうとしているのだ。

  • 3711◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:34:19

    「正義と悪って、単純じゃない。
    けど僕は、それでも……誰かが笑って眠れる世界を守りたいんだ」

    「黙れ……!」

    イメヤの剣が、憎しみと絶望を帯びて輝いた。

    その一閃が、今度こそヤメイの胸を貫こうと迫る。

    だがその瞬間。

    ヤメイの手が、まっすぐにイメヤの剣を掴んだ。

    「君がどれだけ僕を嫌っても、僕は……君を理解したいと願ってしまう」

    刹那、剣が砕けた。

    まるで、その言葉が“何か”を揺るがしたかのように。

    イメヤの身体が、僅かに揺れる。
    目が、大きく開かれる。

    「……な、に、それ」

    言葉にならない何かが、彼女の中で弾けた。

    まだ戦いは終わらない。
    だが、それはただの力のぶつかり合いではなく、ふたりの“生き方”の衝突であった。

  • 3721◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:37:12

    「……なんでよ」

    イメヤの声が、黒霧の中にか細く響く。

    「なんで、壊れないの……なんで……あなたの剣、折れないの……っ」

    砕けたのは剣だったのか、それとも、ずっと抱き続けてきた世界への敵意だったのか。

    ヤメイは一歩、彼女に近づいた。
    踏みしめるその歩みには、一切の威圧も、敵意もなかった。ただ、まるで傷ついた動物に手を差し伸べるかのように。

    イメヤは、ほんの一瞬だけその歩みを見つめ、顔を歪めた。

    「やめて……やめてよ……そうやって、優しい顔をしないで」

    彼女の肩が小刻みに震える。

    「私を『正義』にしようとしないで!」

    「そんなこと、してないよ」

    ヤメイは、穏やかな声で言った。

  • 3731◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:37:22

    「君がどう在ろうと、それは君の自由だ。ただ……僕には、君の孤独が見えてしまった。それだけなんだ」

    イメヤは苦しげに唇を噛みしめ、膝をついた。

    それでも、彼女の能力は発動していた。
    この場において、ヤメイは“正義”と認識され、イメヤの「『悪は必ず勝つ』」が優勢となっていた。

    けれど、その力が効力を発揮するたびに、イメヤの目は揺れていた。

    「私は……ずっと、正義が嫌いだった。強くて、まぶしくて、優しくて、でも結局私みたいなものは切り捨てる……そう思ってたのに」

    ヤメイは静かに膝を折り、彼女の目線に合わせた。

    「……切り捨てたのは、君自身じゃないかい?」

    「…………!」

    「本当は、誰かに助けてほしかったんだろう? 自分でも認めたくないほど、ずっと、誰かに救われたかったんだろう?」

  • 3741◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:37:34

    イメヤは、その言葉に反応するように、顔を背ける。

    「そうじゃない……違う……私は……私は……っ」

    その手が、わずかに震えていた。力を宿したはずの手が、まるで重すぎる何かを握り続けていたかのように。

    「だったら、今は――誰かを信じてもいいんじゃないかな」

    ヤメイの言葉は、優しさではなかった。甘さでもなかった。
    彼の目はまっすぐで、その心には一点の曇りもなかった。

    「それが“正義”だと君が嫌うなら、別の言葉に置き換えたって構わない。でも僕は、今目の前にいる“君自身”を、見てる」

    イメヤの視界が滲む。
    それは怒りのせいなのか、悲しみのせいなのか、自分でもわからなかった。

    「そんなの……ずるいじゃない……」

    涙がこぼれた。

    「私の力は、正義に勝つためにあるのに……なんで、負けそうなの……?」

    ヤメイは静かに答えた。

    「それは、君が……自分自身を“正義”だと、思い始めているからかもしれない」

  • 3751◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:37:50

    イメヤは目を見開いた。
    そして、ゆっくりと立ち上がる。

    「……ふざけないでよ」

    その声は、今までのような怒気ではなかった。
    どこか迷いを含み、痛みを隠すような、かすれた声だった。

    「私は……壊すために生まれたの。壊さなきゃ、私じゃなくなる……だから、壊すしかないのよ!」

    黒い霧が再び、広がる。
    だがその揺らぎには、先ほどまでのような凶暴さはなかった。
    何かが揺れている。自分自身への否定。存在理由の崩壊。

    「それでも、僕は戦うよ」

    ヤメイの手に剣が生まれる。
    それはもはや、相手を斬るためのものではない。――彼女の“痛み”と、真正面から向き合うための意志の象徴だった。

    「君がまだ、自分を壊さなければ生きられないって言うのなら……僕はその叫びに、正面から応えるよ」

    イメヤが叫ぶ。

    「なら、壊してよ!! 私を、終わらせてよ!!!」

    ――世界が震えた。
    その咆哮に呼応するかのように、広場の灯が一斉に弾ける。
    黒と白、光と闇。その境界が溶けあい、ふたりの存在が一つの“運命”のなかで交わろうとしていた。

    だが、まだそれは“終わり”ではない。

  • 3761◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:40:23

    広場の空気が歪んでいた。
    重く、湿り気を帯びたような、呼吸するだけで胸の奥に苦味が残る気配。

    イメヤの体を包む黒霧は、先ほどよりもさらに濃密で、まるでその身から“存在意義そのもの”が漏れ出しているようだった。
    霧の一滴一滴に、憎悪や哀しみ、孤独と絶望の記憶が焼き付いている。

    「見てよ……これが、私の全部」

    彼女は笑っていた。だが、その笑みはもう嘲笑ではなかった。
    何かを壊したいわけでもなく、誰かを傷つけたいわけでもなく、ただ、自分がまだ“ここにいる”と確かめるような、壊れた笑顔。

    「私は正義を憎んできた……誰にも助けられなかったから……。あの時、あたしが泣き叫んでたのに、誰も来なかった……! 正義なんて、存在してなかった!」

    彼女の声に、ヤメイは一歩も動かず、黙って耳を傾けた。

    「でも……」

    イメヤの目が揺れる。
    言葉の続きを口にすることが、苦痛で仕方ないとでも言うように。

    「でも、お前が現れて……本当に正義があるのかもって……ほんの少しだけ、思ってしまった……」

    それは彼女にとって、何よりも許せない“裏切り”だった。

    「私が……私自身を裏切っちゃった……!」

    黒霧が暴走する。
    広場全体を覆い尽くすように膨れ上がり、空を、街を、認識さえも飲み込んでいく。

    「このままじゃ、君が壊れてしまう……!」

  • 3771◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:40:35

    ヤメイは静かに歩を進める。
    霧が彼の周囲を焼こうと襲いかかっても、その身を焦がすことはなかった。まるで、彼の存在そのものが“赦し”を灯しているかのように。

    「イメヤ」

    その名を、初めて呼んだ。

    「君が“正義”を嫌っているなら、それでいい。でも、“誰かを助けたい”と思ったその心まで、否定しないでくれ」

    彼女の動きが止まった。
    黒霧の中、ぼんやりと彼女の輪郭が滲む。

    「その気持ちは……僕の正義と、何も変わらないよ」

    イメヤは、目を伏せる。

    「……やめてよ」

    「君の叫びは、ちゃんと届いてる」

    「やめてってば」

    「君はずっと、苦しかったんだよね」

    「違う……違うってば……!」

    「それを、誰も理解しようとしなかった。だからこそ、僕は……君を否定しない」

  • 3781◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:40:46

    言葉の雨が、イメヤの中に降り注ぐ。
    熱くも冷たくもない、ただ静かに芯を打つ言葉。
    その一つひとつが、彼女の“力”の根幹を揺るがしていた。

    「私の力は……正義を殺す力なのに……!」

    「その力で、本当に君は救われたの?」

    イメヤは震えた。
    そして、力なく笑った。

    「救われるわけないよ。誰一人、愛してくれなかった……。私は、誰からも必要とされなかった……ただ、それだけだよ……」

    そのとき、彼女の足元に溶けていた黒霧が、静かに消えていった。

    ――“悪は必ず勝つ”。

  • 3791◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:40:57

    その言葉が、力としての意味を失い、ただの“痛みの証”として残された。

    ヤメイは、最後の一歩を踏み出し、彼女の目前に立った。

    「イメヤ。もしも君が、自分を必要とされなかったと感じていたのなら、これからの世界で……必要とされる人になってほしい」

    その瞬間、彼女の心が、音もなく崩れた。

    「……あなた、ほんと……バカみたいに優しいんだね」

    彼女の視線がふらつき、瞳から涙がひとすじ、頬を伝った。

    「もう……わたし、正義が……わかんないよ……」

    そのまま、彼女の体が倒れる。

    ヤメイはそっと抱きとめた。

    「もう、無理をしなくていい。君の戦いは……終わったよ」

    彼女の力が完全に消え去ると共に、黒霧も、絶望も、静かに夜の中へと溶けていった。

  • 3801◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:41:53

    静かな夜明けが、広場を柔らかく包んでいた。
    黒い霧が完全に消え去ったあとには、凛とした静寂と、ほんの少しの温もりが残されている。

    ヤメイは優しくイメヤを抱きしめ、その肩をそっと揺らした。
    彼の瞳は静かに輝き、まるで誰かを見守る守護者のようだった。

    「もう大丈夫だよ。君がどんなに苦しんでも、もう一人じゃない」

    彼の声は穏やかで、深い慈愛に満ちていた。

    イメヤは震える手でヤメイの胸を押しながら、かすかに笑みを浮かべた。
    その瞳には、かすかな光が宿っていた。

    「こんなにも……優しい世界があるなんて、知らなかった」

    ヤメイは静かに微笑んだ。

    「僕は、君の中にあるすべての“正義”を信じている。だから、君が何を選ぼうと応援するよ」

    イメヤの身体からは、もはや黒い影は見えなかった。
    その代わりに、ほんの少しだけ、希望の色が滲んでいる。

  • 3811◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:42:03

    遠くで鳥が鳴き始め、朝の光が建物の隙間から差し込む。
    まるで世界が新しい一日を迎えることを告げているようだった。

    二人は、これから何が待ち受けていても共に歩むことを約束し合った。

    「ねぇ、ヤメイ。僕たち、これからも戦い続けるの?」

    「うん。でもそれは、誰かを傷つけるためじゃなく、守るためにね」

    「なら、私も……そうしよう」

    イメヤは力強く頷いた。
    そして初めて、心の底からの安堵が笑顔となってあふれた。

    未来はまだ不確かで、幾重にも紡がれる物語の一つかもしれない。
    だが、確かなことがひとつだけあった。

    正義と悪の境界は、いつだって揺らぎながら、その間で人は生きているのだと。

    そして、今、ここに確かに“希望”が生まれた。

    ──物語は終わらない。新たな日々が始まったのだ。

  • 3821◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 20:42:14

    以上

  • 383二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 20:43:32

    提唱者 寝取られやんけ!

  • 384二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 20:44:10

    メンタルカウンセラーヤメイ!

  • 385二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 20:45:03

    >>384

    名前なのか制止なのか分からねえ!

  • 386二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 20:48:21

    ほう…ヤメイメですか

  • 387二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 20:53:09

    たいしたものですね

  • 388二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 20:57:35

    これからのキャラ安価は開始時刻宣言する方式に変わったってことでいいのかな?

  • 3891◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 21:51:53

    >>388

    はい

  • 3901◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 22:34:15

    22:45より安価を10個募集します

  • 391二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:35:23

    このレスは削除されています

  • 3921◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 22:36:02

    >>391

    ですです

  • 393二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:45:00

    名前:リフレイン
    年齢:8(???????)
    性別:女
    種族:人間?
    本人概要:何度も何度も何度も何度も一定の時間内で繰り返すことが出来る異能を手に入れた少女
    本人は楽しいことを何度も楽しめる最高の力だと思っている(手に入れた当初は制御不能になり数京ほど同じ日常を繰り返し狂った)
    また失敗してもやり直せば良いやという考えになっている為平気で殺人などの倫理観がない行動が取れる
    能力:リフレイン
    能力概要:予め定めた起点、後から定められる終点内を繰り返すことが出来る 
    また起点が定まっているのであれば死んでも起点に戻される 
    リフレインはこの能力を利用して様々な武術などを習得したり相手の弱点を把握したり攻撃を避けることが出来る
    弱点:彼女は様々な武術を取得しているがあくまで身体能力は幼女
    また起点を安易に変更した結果詰みセーブみたいな状況に陥る可能性がある
    起点から終点の期間は短期間に連続して死ぬ度に短くなり最終的に極短期間になってしまう

  • 394二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:45:01

    名前:単羽 純
    年齢:54
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:フィジカルがめちゃくちゃ強いオッサン
    能力:単純最良
    能力概要:設定が短いほど強くなる
    弱点:常時酔っぱらている

  • 395二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:45:01

    名前:巫女左けまり(みこひだりけまり)
    年齢:12
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:蹴鞠の神様だけに愛された少女。
    巫女左家の当主が侍女に産ませた子で、産んですぐに母は死んだ。
    蹴鞠の技量は歴代随一だが詩歌や音楽の才能は壊滅的で一族の中でも孤立。
    本来名前も無いが蹴鞠しか能が無いのでけまりと呼ばれている。
    能力:鞠姫
    能力概要:蹴鞠をしている間、鞠の三精霊の加護を得る。
    ・春陽花:リジェネ効果、周囲の生命に活力を与える
    ・夏安林:膂力強化、鞠に日輪が如き炎を宿す
    ・秋園:敏捷強化、舞い散る木の葉の様に身軽になる
    弱点: 能力の効果は徐々に高まっていくものであり、継続すれば神域にも届きうるが初動を潰すか鞠を奪えばひ弱な少女。泣いちゃう
    要望:けまり本人に戦っているつもりはなく、全力の鞠を受け止めて返してくれる遊び相手が欲しいだけの不思議ちゃん

  • 396二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:45:04

    名前:グラヴィタリス・アルカ(Gravitylis-Alka)
    年齢:不明(Gravitylis-Eからの分裂進化体)
    性別:なし(外見と統合人格は男性型)
    種族:進化型重力生命体(Gravitylis-E 派生体)
    本人概要:
    かつてGravitylis-Eの一部が分裂し、アル=グラナ星系に飛来。星系に住まう人型生命を捕食・融合したことで独自の進化を遂げ、魔王か悪魔のごとき姿と人語を獲得した存在。知性は高く、人間のような論理性と邪悪な本能を併せ持つ。黄色の瞳孔に漆黒の眼球を持ち、視線を合わせた相手は本能的な恐怖と“落下”感覚に襲われる。自分自身がゆるぎない「個」であることを証明することを望んでいる
    能力:ビル群を蹴りで倒壊させるほどの身体能力
    • 局所〜大規模の重力操作、小型(半径数十m)ブラックホール、ワープゲート生成
    • 背部から浮遊する重力光翼(4枚):ゆらめく重力場が視覚化したもの。空間を裂くように展開・収束する。
    • 光槍召喚:光と重力をねじって形成された純エネルギーの槍を無数に生成・投擲
    • 精神接続(紅い第三の眼による精神共有、精神干渉)
    • グラヴィタリス菌の増殖による超再生
    能力概要:
    重力波を自在に操り、戦場そのものの構造を改変する存在。特に「光槍」は、空間そのものを突き破るような重力の塊で、物理装甲・エネルギー障壁を容易に貫通する。重力光翼は、羽のように見えるが局所的な重力場であり、攻防・超高速移動に使用。人間の言語・論理体系を理解しており、交渉や策略も行う。
    • 複数の湾曲した角:前頭部からねじれるように伸び、周囲の空間を歪ませる。重力波の共振・増幅器官であり、見る者に圧倒的な異様感を与える。
    • 浮遊する重力光翼(4枚):常にゆらめいている4枚の重力場。羽ばたくことなく、空間を裂いて展開・収束する。
    • 第三の眼:精神支配の域まで届いている。
    弱点:
    • 進化体とはいえ、統合意識体はひとつであり、集中砲火や精神汚染系には弱い。
    • 人型生命を大量に捕食、融合した影響で肉体構造がそれらの生命体に近しいものとなり、重要臓器の破壊によって一時的なデバフや大ダメージを与えることが可能になっているまた、3つの核破壊で死亡
    • 頭部の角を折られると重力制御が出来なくなり、グラヴィタリス菌状態に霧散して死亡

  • 397二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:45:12

    名前:テンヤ
    年齢:21
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:生まれながらに転移の異能を持っておりそれを使い日常生活を楽に暮らしている
    その影響か異能が鍛えられ強力なものになっている
    性格はお気楽だがいざというときは真面目になる 
    能力:転移
    能力概要:自他問わず何処にもなんでも移動させられる  
    瞬間移動は勿論のこと 自身についた傷などを他の場所に転移させるなど概念的な事も可能
    弱点:瞬間移動は距離や対象のデカさ、存在規模で疲労し 概念的な転移は負担が大きい

  • 398二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:45:20

    名前:カリオティス=ラグナリス
    年齢:不定
    性別:性別無し(男性に擬態)
    種族:環蛇使徒(カリオティス)
    本人概要:
    《大災厄》メルキオールの最上位眷属オフィオキュリスに仕えるカリオティス=ゼフィラによって率いられる異形の使徒生命体の一人。赤黒い炎の環をまとった巨人の姿をしており、常に灼熱を放ちながら空中を浮遊し、出現と同時に地表を焦土と化す。
    能力:

    《赫灼の環炎(ラグナ・ヘリクス)》

    能力概要:
    自身の周囲に螺旋状に燃え続ける熱層を展開。これは物質、精神を等しく灼き尽くす魔力炎であり、攻撃・防御両面に優れる。
    弱点:
    瞬間爆発的な火力に優れる反面、長期戦や連携戦では対応力に欠ける。

  • 399二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:45:31

    名前: アルセリア・クロード & ヴァルカン・スプリント・カスタム《フォートレスバスター》
    年齢: 24歳(パイロット)/機体稼働歴:1年4ヶ月
    性別: 女性(AI音声:低音の中性的女性)
    種族: 人間(軍籍コード:第六装甲戦術連隊)&OG第四世代・重装型カスタム機
    本人概要:
    元は要塞攻略部隊に配属されていた重戦闘専門のエリートパイロット。徹底的な防御展開と火力の集中投射によって、「進まない敵前線などない」と言わしめた前衛戦術の使い手。長期持続戦闘に優れ、継戦性を最重視した重装カスタム機《フォートレスバスター》を乗機とする。ヴァルカン・スプリントを重装甲化・砲撃対応に再設計した仕様で、レギオス・ノヴァの布石として敵の持久力を削り取る。
    能力:
    ・強化型次元積層ドライバ《XLD-γ“アージェンタコア”》:安定出力型で長時間稼働が可能
    ・次元遮断フィールド《グレイディフェンサー》:多層次元に渡る広域遮断バリアを展開
    ・多重装甲・反応装甲プレート搭載:近接~中距離のあらゆる攻撃を分散吸収
    ・荷電粒子ビーム砲《アージェンタ・レールランス》:溜め射による防御貫通砲撃
    ・ナノマシン重構造ユニット:損傷部位の段階再生を繰り返し、擬似的な無限装甲再構築
    ・支援モード《ミスト・リザーブライン》:戦域内味方機への次元圧制御補助信号を送信し機体負荷を軽減
    ・AI《ヴェクター》:防御アルゴリズム特化、敵火力の誘導・分散・遮断を即応処理
    能力概要:
    《フォートレスバスター》はその名の通り、前線を維持・展開し、敵陣を削り潰すための“攻める防御機”。全身に分厚い反応装甲とナノ再構築ユニットを備え、継戦時間は標準型の3倍以上。後衛の要塞・火砲陣地への長距離射撃支援から、前衛に立ちはだかる敵主力部隊の足止め・耐久戦までこなす。レギオス・ノヴァが突破するための“道”を作るという点において、まさに露払いの完成形。
    弱点:
    ・機動性が平均以下で、加速・緊急回避能力は乏しい
    ・出力は安定しているが最大火力では劣るため、同格の超火力型とは相性が悪い
    ・精神共鳴機能を簡易化しており、極限状態でのバーストシンドロームは非対応
    ・ナノ再構築にリソースを割くと、攻撃出力が一時的に低下
    要望(任意):
    ・持久戦、消耗戦、味方支援・連携を活かす戦術で登場させてほしいです
    ・アルセリア・クロードがしゃべるように

  • 400二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:45:36

    名前:怨塊
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:怨霊?
    本人概要:一つの怨霊だった存在が多くの生を貪りその度に生まれる怨霊などを吸収した結果生まれた
    怨霊、悪霊、怨嗟などの集合体でその規模は神格に匹敵し存在自体が一種の異界と化している
    多くの被害を出しておりそれを討伐しに来たものを喰らうなどでどんどん成長してしまった
    能力:怨界
    能力概要:怨嗟で構成された存在故に存在するだけで周囲が異界と化しており
    異界内だと相手にデバフ、怨塊にはバフがつき呪詛が即死級或いは魂毎破壊するレベルになる
    弱点:異界に綻びを入れる 怨塊の怨みなどの結びつきを弱められると途端に怨霊達が分離して弱体化する
    また強い意志、揺るぎない意志を怨嗟蔓延る異界内で保たれるとデバフを無視されたり大ダメージを与えられたりする

  • 401二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:45:38

    名前:【勇者】ゼンコ
    年齢:13歳
    性別:男の子
    種族:人間
    本人概要:魔物が支配する世界で僅かに生き残った人類の救世の祈りが一人の少年に集約し【勇者】という役割を定めた存在。【自分が勇者であるという責務】と【人々のために常に勝ち続ける】という自身の役割を完全に承知しており、曲がることも折れることもない常軌を逸した真っすぐな意思が最大の強み。
    能力:ヴィレデス・ヘルデン
    能力概要:勇者としての在り様をオーラ化して操る能力。そのオーラはあらゆる魔を退け勇者の意思で染め上げる。
    魔を退ける結界を展開する・相手の攻撃を染め上げて自身の力に変えて吸収する・聖剣にオーラを纏わせて攻撃力を増大させる など、用途は多彩。
    弱点:能力の使用には体力を大きく消耗する。

  • 402二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:46:00

    名前:回収者
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:不明
    本人概要:正体不明の黒いボロ切れを纏った顔が暗闇の老人 本人曰く私は消された存在を回収保存する役割を持った存在らしく
    色々な能力で消し飛ばされたり、無かったことにされたものを人物、建物だったり武器含めて全部回収している
    能力:回収
    能力概要:異能などで消し飛ばされたした、世界から存在を無かったことにされたものをなんであれ回収できる 
    回収したものを使い戦うことも可能
    例で言えば瓦礫や建物を瞬時に出して盾にする 能力で何処かに飛ばされた攻撃を再利用など
    また消し飛ばされた存在も使役出来るらしいが……
    弱点:回収したものを利用するのは制限があり ずっと使うことは不可能 もし制限を破ったら何処ぞのヤ○イがお仕置きしにくる
    具体的な制限で言うと世界を壊す規模、惑星そのものは使用不可
    理由は回収されたものを無闇やたらに使うと世界への影響が多いかららしい
    また存在などを使役するのは相当な負担が掛かる為出来て1~3分程 そして回収者の身体能力は戦闘目的で生まれてない為 貧弱

  • 4031◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 22:46:07

    ストップ

  • 404二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:46:15

    すとっぷ

  • 405二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:46:37

    >>393

    22:45分ピッタリで怖い

  • 4061◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 22:47:34
  • 4071◆ZEeB1LlpgE25/07/08(火) 22:52:29

    巫女左けまりvsアルセリア・クロード & ヴァルカン・スプリント・カスタム《フォートレスバスター》
    【勇者】ゼンコvs単羽 純
    回収者vsリフレイン
    カリオティス=ラグナリスvsグラヴィタリス・アルカ
    怨塊vsテンヤ

  • 408二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:53:29

    よそのAIバトルスレだとおもしろくなくなるという理由で禁止カードになることが多いテレポートが当たり前のように出てきやがる

  • 409二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:56:31

    しかも傷とかもテレポートする奴だな

  • 4101◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:20:15

    題名『少女は鞠を蹴り、鋼の盾は応じた』

  • 4111◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:20:44

    「ぽーん……」

    高く、澄んだ音が空に響いた。

    それはまるで、春先に咲いた一輪の花が、風に乗って舞い上がるような軌道だった。柔らかく、優しく、どこまでものんびりしていながら、確かに“正確無比”な軌跡を描いて落ちてくる。

    「確認。異常軌道の接近物体。飛翔体、質量検出不可……あれ、鞠か?」

    《フォートレスバスター》のコックピット内、電子音が告げる警告の内容に、アルセリア・クロードは眉をひそめた。

    「鞠……って、また変なのが出たわね……」

    ブーツのかかとを軽く床に打ち付けると、重厚な機体がわずかに身じろぎする。装甲の隙間に刻まれた熱のサインが、脈動するように青白く灯る。

    戦場は、かつて人類が放棄した旧第九開拓宙域、惑星“キベラ”。荒れ果てた地表、崩壊したドーム都市の残骸の中に、それは現れた。

    「ふふん……この鞠、受け止めてくれるの?」

    彼女は、笑っていた。

    年端もいかぬ少女――小柄な身体に、鮮やかな朱の袴を纏い、顔には無邪気とも狂気ともつかぬ笑顔。腰まで伸びた黒髪に、結び紐の代わりに風花を編んだ飾りが揺れていた。

    名を、巫女左けまり。

  • 4121◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:20:57

    彼女は――戦いに来たのではない。

    遊びに来たのだ。

    「この星、蹴鞠するにはちょっと硬いけど……ま、いっか」

    ぽん。

    再び、鞠が宙を舞う。

    だが、その一撃は“ただの蹴鞠”ではなかった。

    着地と同時に地面が爆ぜ、砂塵と共に草木が生える。空気が春の匂いに染まり、陽光すら柔らかくなる。

    「確認:環境因子の局所改変。未知の神性反応。名称コード未登録」

    「春陽花……ってやつかしらね。ほんとに、遊びのつもりなんだ……」

    フォートレスバスターの腕部が、静かにシールドユニットを構える。アルセリアは深く息を吸い込んだ。

    「これは遊びじゃない。私たちはここを守らなきゃいけないの。なら、手加減はしないわよ――そっちが子供でも」

    少女はくすくすと笑った。

    「うん、うん、それでいいの。遊んでくれるなら、なんでもいい」

    そしてまた、鞠が跳ねる。

  • 4131◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:21:55

    今度は燃えるような赤。

    「夏安林。いっけぇえぇぇぇぇ!」

    炎を纏った鞠が、まるで彗星のごとく飛翔する。空気を裂き、空間を灼き、加速度限界を軽々と超えて突進してくる“陽炎の弾丸”。

    《フォートレスバスター》がシールドを構え、バリアを展開する。

    「《グレイディフェンサー》展開。熱衝撃を遮断」

    弾ける火花と共に衝突――しかし、少女の蹴鞠は止まらない。

    「……なにこれ、強化されてる? 連続してる……!」

    地面に着弾した鞠は、瞬間ごとに“性質”を変えていた。

    速度、威力、爆発、回復、視覚妨害、そして周囲の動植物の異常活性――すべてが、“蹴鞠”を中心とした加護の現象だ。

    「これ、いったい何なのよ……」

    アルセリアの視界には、異常判定が点滅し続ける。通常兵器のどれとも一致しない、神域干渉級の“遊び”。

    ――まるで、こちらの意思とは関係なく、世界のほうが“遊びたがっている”。

  • 4141◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:22:05

    だが、フォートレスバスターは止まらない。

    「AIヴェクター、分析を。逐次リソース配分を切り替えて」

    『了解。対象の軌道変化、神性推移を追跡中。防御強度、段階的に上方修正推奨』

    「砲撃――装填、完了。これで、止まって!」

    粒子砲が空を裂いた。

    だが、鞠が笑うように、ぽん、と跳ねた。

    そして少女は、また笑う。

    「……また返してくれるんだ? ふふ、いいなぁ。もっと続けようね?」

    これは戦争ではない。

    だが、間違いなく戦いだった。

  • 4151◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:24:14

    「もっともっとっ、強く! 速く!」

    少女の声は澄んで、無垢で、残酷だった。

    鞠は跳ねる。空間をすり抜けるように、軽やかに、だが軌道の一つ一つに灼熱と加護が籠る。

    「夏安林」――炎の膂力が鞠に宿り、砲撃のような威力で《フォートレスバスター》へと叩き込まれる。

    バリアが軋み、分厚い装甲がわずかにきしんだ。

    「くっ……防御フィールドに綻び。装甲、表層一部損壊……だって?」

    アルセリア・クロードは舌打ちをこらえ、咄嗟に追加のシールドを展開する。
    通常の戦場では考えられない損耗率。砲撃ではなく“蹴鞠”による損壊――だが、それは単なる道具ではなかった。

  • 4161◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:25:02

    あれは、“彼女の世界”そのものだ。

    「分析、進行中。蹴鞠により発生しているエネルギー現象は、三種の擬似神性反応による累積干渉と推測。持続時間の経過と共に、指数的強度上昇が見込まれる」

    『つまり――この子、時間が経てば経つほど強くなるってこと?』

    「肯定。推定7分以内に現行防御仕様では処理限界」

    機体に響く警告が冷ややかに告げる中、けまりは相変わらず、無邪気に笑っていた。

    「ぽん、ぽんっ……うふふ、すっごくいい音。次は秋園だよっ!」

    新たな鞠が蹴られる。今度は紅葉のように舞い、読めぬ軌道で高速回転しながら《フォートレスバスター》に接近する。

    「――!?」

    その動きは、これまでとは明らかに違っていた。機体のAIですら予測不能。
    鞠は地を這い、壁を走り、空を裂く。そして目前で――消える。

    「っ!?」

    直後、機体の足元に閃光。

    『衝撃波、下部補機に直撃。バランス崩壊まで4.3秒。回避を推奨』

    「だめ、間に合わない。なら……!」

    アルセリアは機体を強引に旋回させ、左肩の多重装甲を展開し直撃を受け止めた。

  • 4171◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:25:22

    爆発音、熱波、ナノ再構築ユニットの作動音が重なり、視界が一時的に白に染まる。

    「やっぱりすごいなあ……何度蹴っても、壊れないなんて」

    ぴたり、とけまりの動きが止まる。小首をかしげるその様子に、殺気も敵意もない。

    ただ――純粋な“尊敬”だけがあった。

    「ねえ、お姉ちゃん……一緒に遊んでくれてるんだよね?」

    その問いに、アルセリアはしばらく答えられなかった。

    これは、戦争ではない。だが、戦場だった。

    けまりにとっては、ただの“遊び”だ。だが、その蹴鞠一つで一国の要塞ですら壊せるのだ。

    「……これは遊びじゃない。けれど、あなたが……」

    言いかけて、言葉が詰まった。

  • 4181◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:25:34

    機体越しに見るその少女は、酷く無垢だった。

    その目には一点の曇りもなく、ただまっすぐに“対等な遊び相手”を見ている。

    「あなたが何者であっても、この力は……」

    アルセリアは言葉を選んだ。相手は十二歳の少女。それでも、現にこの《フォートレスバスター》を危機に追い込んでいる。侮れば死ぬ。容赦しなければ、心を砕く。

    「――私も、本気で応える。これは遊びじゃない。でも、あなたがその鞠を託すなら、私は全力で受け止めるわ」

    「えへへっ、やったぁ!」

    嬉しそうに笑うけまりは、炎と紅葉と春の息吹を同時に纏った鞠を蹴り上げた。

    それは風のように軽やかで、雷のように激しく、命のように美しかった。

    「AI、《ヴェクター》、全防御を予測式制御に移行。グレイディフェンサー最大展開。アージェンタ・レールランス照準固定、撃てるなら撃つ」

    『了解。攻撃支援モードを限定起動。戦域データ共有、範囲狭小化、個人対応処理へ最適化』

    警告音と共に《フォートレスバスター》の背部が開き、数基の展開式バインダーが霧を纏いながら可変形態へ移行する。

    「来い……けまり、私のすべてで受け止めてみせる!」

    鞠が弾けた。

  • 4191◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:26:31

    空間を砕き、風を巻き込み、熱を纏い、軌道はもはや“直線”の概念から逸脱していた。回避も防御も成立しない。ただ、正面から真正面へ、受け止めるしかない。

    《フォートレスバスター》の盾が砕ける。

    多重装甲が、熱に焼かれ、風に裂かれ、最後の一層へと到達する。

    そして――鞠は、ぴたりと止まった。

    少女の前で、ほんの指先分だけ残して。

    けまりの目が、見開かれる。

    「……止まった、の?」

    彼女の前に立ちはだかる《フォートレスバスター》は、ボロボロだった。装甲は焼け焦げ、機体各所が蒸気を上げている。それでも――その姿勢は微動だにしていなかった。

    「あなたの想い、ちゃんと届いたわ」

    機体から降り立ったアルセリアが、ゆっくりと少女に歩み寄る。鞠は転がり、足元に止まっていた。

    「わたし、ね……いつも、鞠を投げるだけだったの。みんな、途中で怖がって逃げちゃう。遊んでくれなかった」

    「だからあなたは、“本気”で向き合ってくれる人をずっと探してたのね」

    けまりは小さく頷き、涙をぽろりとこぼす。

  • 4201◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:26:43

    「……ありがと。今までで、一番楽しかった」

    アルセリアは、その小さな頭に手を添える。

    「また遊んであげる。その時は、私の方ももっと強くなってるから」

    けまりの笑顔が、風の中に揺れた。

    こうして、戦場で始まった“遊び”は、静かに、しかし確かに――誰かの心に残る記憶となった。

  • 4211◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:27:15

    以上

  • 422二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 07:30:23

    最高です!!!

  • 423二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 07:30:50

    毎回高クオリティなの凄いな

  • 424二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 07:50:55

    イイハナシダナー

  • 4251◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:56:29

    題名『聖と酔、拳の先で語れ』

  • 4261◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:57:04

    魔物の王が天を裂き、大地を喰らい尽くした時――
    残された人類の祈りは、一人の少年へと集束した。

    その名は、ゼンコ。
    勇者の名を冠し、世界を救うという“使命”そのものを与えられた存在。

    「この世界は……まだ終わらせない」

    十三歳にして、剣を背負い、目に迷いなき光を宿す少年は、荒れ果てた村々を巡っては魔を討ち、信仰のような希望として語られていた。

    そんなゼンコが、ある日、滅びかけた山中の集落跡に差し掛かったときだった。

    「ぃやぁ〜〜……うぉっほん! おい小僧ぉ、そこに立つと、ゲロ踏むぞぉ」

    道の真ん中に、裸足で寝転がるオッサンがいた。
    酒瓶片手に涎を垂らし、赤ら顔のその男は、あらゆる緊張感を投げ捨てたような姿だった。

  • 4271◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:57:29

    ゼンコは眉をひそめた。

    「……貴方は誰ですか。この村の生き残り?」

    「うぇ? いやー……昨日の村だったかな、もう忘れた。まあええ。ワシか? 単羽純っていう、ただの酔っ払いじゃ。で、お前が最近流行りの……ほれ、“勇者”?」

    「……はい。僕はゼンコ。魔を討つ使命を授かっている」

    「ふへぇ、使命ねぇ……いやぁ、えらいねぇ。使命感ってのは若者の特権だ。ワシはもう、使命も筋肉で押し流してしもうたがな!」

    ゼンコは剣を背中に携えたまま、ゆっくり距離を詰めていく。警戒を解かず、相手の足取りを見つめる。だが――

    その男は、“立ち上がっただけ”で、空気が変わった。

    「……!」

    無意識に、ゼンコは剣の柄に手をかける。

  • 4281◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:57:51

    相手から放たれる“存在の圧”は、魔王級の魔物ともまったく違う、極めて単純で、理不尽な威圧だった。

    「坊やよ。ワシはな、剣も魔法も使わん。ただ――拳ひとつで全部なんとかしてきたんじゃ」

    「その体から……“力”を感じます。あなた、何者ですか……?」

    「強いて言うなら、“一番シンプルで最強の男”よ」

    純は酒瓶をゴクリと空にし、地面に置く。

    「ええい! 腰が痛いわい! 勇者くんよ、遊びがてら、一つ付き合うてくれんか? 拳でな!」

    「……いいでしょう」

    ゼンコの瞳が光を帯びる。

    「あなたが悪ではないなら、討つつもりはありません。けれど、僕の正義を曲げる者なら……例え人であっても、僕は立ち向かう」

    「その真っすぐさが……青いのう!! おもしろい!!!」

    雷鳴のような一声とともに、
    酒気と拳と聖剣が交差する、一騎打ちが幕を開けた。

  • 4291◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:58:23

    乾いた地面が踏みしめられ、草の香りが風に乗る。

    ゼンコは一歩、足を踏み出した。
    腰の剣に手を添え、呼吸を深く整える。全身から勇者の“意志”が放たれるその様は、まだ幼き少年とは思えぬほど凛然としていた。

    「僕はゼンコ。人々の祈りと願いを背負う者……勇者として、全力でいきます」

    「わはは、名乗りは立派だが、立ち方が真面目すぎるのう。そんなにガチガチで、拳の遊びはできんぞい」

    単羽純は大きく伸びをしたあと、ぬるりと構えた。
    といっても、構えとは到底呼べぬ、酔っ払いが千鳥足で揺れるような立ち姿。ただ、その一挙手一投足から発せられる“圧”は凄まじい。

    「……気を抜いた方がいいと?」

    「違う違う、気は抜くな。でもな、呼吸は止めるな。楽に構えて、思いっきり殴れ。それが拳の礼儀っちゅうもんじゃ」

    ゼンコは息を整えながら、右手をわずかに浮かせた。

  • 4301◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:58:46

    背負っていた聖剣の柄に触れ――

    「――抜きます」

    疾風が走る。

    それはまるで稲妻のようだった。
    ゼンコが剣を抜くと同時に、その刃には黄金のオーラが燃え上がる。《ヴィレデス・ヘルデン》――勇者の意思そのものを具現化した光が、彼の身を包む。

    「ほほぉ、剣に意思が乗っておる。……こりゃ、ちょっとばかし踏み込みがいがあるのう」

    純は、左足を前に一歩だけ出した。
    その瞬間、地面が「グシャ」と音を立てて沈んだ。

    「……!」

    ゼンコの目が鋭くなる。
    ただ踏み込んだだけ。それだけで、周囲の気圧が一変した。

    「いくぞ、小僧ォッ!!」

    突如、純の姿がかき消える。
    速い――いや、違う。無駄がなさすぎるのだ。

    拳が唸り、目にも止まらぬ速度でゼンコの側頭部を狙う。

    「……っ!」

    ゼンコは剣を水平に払って防御姿勢を取る。

  • 4311◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:59:09

    ギィン! 
    拳と聖剣が激突し、光と風が巻き起こる。

    「ほお? 受け止めたか!」

    「今の一撃……本気じゃなかった。違いますか?」

    「その通り! これはな、ただの挨拶だ!!」

    その言葉と共に、純は拳を引いた瞬間、逆足での膝蹴りを放つ。
    まるで予備動作のないコンビネーション、ゼンコはその気配を読んで後方へ跳ぶ。

    「……動きに一切の無駄がない。これは、“戦い慣れた者の動き”だ」

    「いやいや、“酔いどれの戦い”よ! 頭を使わず、身体で語るのがワシの流儀!」

    再び、純が突っ込んでくる。その拳には、魔法も加護もない。ただ、**鍛え上げられた“人間の力”**が宿っていた。

    ゼンコは剣を構え直す。
    全身に《ヴィレデス・ヘルデン》の加護を巡らせ、聖剣に信念のオーラを宿す。

    「ならば僕も、真正面から斬る!」

    剣と拳、交錯。
    少年とオッサン。聖と俗。信念と酔拳。

    衝突は、まだ始まったばかりだった――。

  • 4321◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 07:59:49

    空気が張り詰めていた。
    先ほどの剣と拳の激突からわずか数秒。だが互いの間には、何十手もの攻防を経たかのような緊迫感が漂っている。

    ゼンコは額に一筋の汗を浮かべていた。
    対する純は、肩の力を抜いたまま、酒瓶を逆手に持って喉に流し込んでいた。

    「ぷはっ……いやぁ、動くと喉が渇くのう」

    「あなた……本当に酔ってますよね……?」

    「酔っておるとも。ワシは酔えば酔うほど強くなる。まさに最良の状態!」

    ゼンコは眉をひそめた。常軌を逸している。
    だがその強さは、本物だった。

    「なら……僕も本気でいく。次の一撃は、全部乗せます」

    「よし来い、少年。その全力、ワシが正面から受け止めよう」

    ゼンコの身体が、光を帯び始める。
    《ヴィレデス・ヘルデン》――勇者の意思が形を取り、聖剣に集う。

    「これが……!」

    風が爆ぜる。地面が抉れる。
    ゼンコの全身が勇者のオーラに包まれた。

    「“英雄の祈り”――解放!」

    咆哮とともに、ゼンコが地を蹴った。

  • 4331◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:00:44

    剣が走る。疾風のように、稲妻のように、迷いなく、真っ直ぐに。

    対する純は――笑っていた。

    「――いい剣じゃ!」

    一歩も退かず、ただ拳を構え、正面から受けにいく。

    拳と剣が、再び激突する。
    轟音。閃光。衝撃波が地を割り、周囲に飛び火のような風圧を撒き散らす。
    そして、ほんの一瞬――

    世界が、静止した。

    「くっ……!」

    ゼンコは剣を押しつけながら、一歩、二歩と前へ詰める。

    「まだだ……僕は、人の希望だ……ここで、負けるわけには……!」

    純の表情が変わった。
    無骨な笑みが、どこか……優しい眼差しに変わる。

    「――その気持ち、嫌いじゃない」

    次の瞬間、拳が消えた。

    「!」

    ゼンコの視界が揺れる。

  • 4341◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:01:07

    見えない――いや、速すぎて“認識できない”。

    ドンッ!

    ゼンコの胸に一撃。音が、あとから響いた。

    吹き飛ばされながら、ゼンコは剣を突き立て、踏みとどまる。

    「……っぐ、ぅ……!」

    痛い。だが、それでも負けられない。

    純が、拳を下ろして立っていた。

    「これで終わりじゃないじゃろ?」

    「……はい。僕は……勇者ですから」

    「フッ……なら、もっと来い。ワシの拳は、まだまだ遊び足りん」

    二人の間に、再び火花が散る。

    少年と酔拳の拳士。
    “人間”として、それぞれの全力でぶつかる戦いは――まだ終わらない。

  • 4351◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:01:53

    夕陽が地平を焼き始めていた。
    赤く染まる空の下、ゼンコと純の戦いは、なおも続いていた。

    激しく、しかし不思議と美しい――そんな攻防だった。
    ゼンコの剣は、迷いなく振るわれる。
    民の希望を背負い、誰よりも真っ直ぐで、優しい光を放っていた。
    対する純の拳は、重く、柔らかく、そして、鋭い。
    酔っているはずなのに、すべての攻撃は的確で、無駄がなく、理にかなっている。

    「少年、お主……本当に13か?」

    「はい……。でも、年齢で希望の重さは変わりません」

    「なるほど……勇者じゃのう」

    拳と剣がまた交錯し、土が舞い上がる。

    「お主の背負っとるもの、少し分かった気がするぞい。けど――」

    純は腰をひねり、風を巻き起こすように一撃を繰り出す。

    「強さっちゅうのはな、ただ“勝つこと”じゃない。お主のそれは、強いけど……脆いぞい」

    ゼンコはその言葉を聞いても、目を逸らさなかった。

    「僕は、それでも戦います。だって僕が立ち止まったら……誰がこの世界を救うんですか」

    「……!」

    純の拳が、止まった。

  • 4361◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:02:14

    その瞳に、一瞬だけ、若き日の自分が映った気がした。

    「バカ正直で……まるで昔のワシじゃ」

    ゼンコは体勢を立て直し、剣を掲げた。

    「あなたは……僕に勝てるかもしれません。でも、僕の“想い”までは、壊せない」

    「……そうか。なら」

    純は拳を引いた。

    「その想いごと、真正面から叩き潰してやるわい」

    風が泣いた。
    夕焼けの中、拳と剣が、最も強く、最も正直にぶつかり合う。

    ただの力比べでもなければ、技術の競い合いでもない。

    それは――“信じるもの”と“生き方”の戦いだった。

  • 4371◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:02:43

    地面が割れ、空気が震えた。

    ゼンコの剣が純の拳を受け止めた瞬間、目には見えない衝撃波が周囲の岩を砕いた。
    だが、少年の足は一本も動かない。踏み締めた土の上で、決意だけが揺らぎもしなかった。

    「ぐ……っ……!」

    ゼンコの肩が震える。
    体力は限界を超え、何度も意識が遠のきかけている。それでもなお、彼の目は――強かった。

    「もうええ、お主、倒れてもええんじゃぞ」

    純の声音が、初めて、穏やかなものになっていた。

    「このままじゃ……命が保たんぞい」

  • 4381◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:03:51

    「……僕は……」

    少年は息を整え、言葉を紡いだ。

    「“勇者”なんです……! 誰かの声が……届いてる限り、僕は剣を置けない……!」

    その言葉に、純の瞳が揺れた。

    「何があっても……守るんだ……! たとえこの身が……どうなっても!」

    その瞬間だった。
    ゼンコの身体から、眩い光が噴き上がる。
    勇者のオーラ――《ヴィレデス・ヘルデン》が、再び全身を包み、聖剣に力を集めていく。

    「まだ出力残っとったんかい……」

    純は苦笑した。
    そして、深く息を吸った。

    「……よかろう。ならワシも、拳を貫く」

    戦士としての覚悟が、再び瞳に宿る。

  • 4391◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:04:03

    「“酔拳・千杯廻し”――!」

    拳が螺旋を描き、重力すら歪めるように迫ってくる。
    一方でゼンコの剣も、オーラを纏い閃光となる。

    「これが……僕の全部です!!」

    「来い、小僧ォォォ!!!」

    ――激突。

  • 4401◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:04:37

    大地が沈み、光と風が弾けた。
    長く、長く続いた衝撃の中で、ようやく静寂が訪れる。

    土煙の向こう――

    倒れているのは、どちらか。
    まだ立っているのは、どちらか。

    やがて煙が晴れ――その姿が、露わになる。

  • 4411◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:05:11

    風が止んだ。
    地は抉れ、裂けた岩盤の中心に、ひとりの少年が――膝をついていた。

    ゼンコ。
    勇者の名を背負い、戦い続けた少年。

    彼の剣は折れていた。右手は震え、顔は汗と土にまみれていた。
    だが、その瞳だけは、どこまでも――真っ直ぐだった。

    「……まだ……僕は……立てる……」

    崩れそうな体を、必死に支える。
    だがその正面に立っていたのは、拳を下ろしたまま動かない男――単羽 純。

    純は、すでに拳を振るっていなかった。

  • 4421◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:05:45

    あの最後の一撃のあと、ふらりと一歩、下がっていた。

    「勝負は……ここまでじゃのう」

    「え……?」

    ゼンコの声が掠れる。
    だが純は、笑っていた。

    「ワシの拳は、最後にお主の剣を砕いた。じゃが――お主の“信念”までは砕けなかった」

    しん、と静まり返った空に、彼の声が落ちてくる。

    「それが“勇者”じゃ。ワシはもう、拳を振るう理由が見つからん」

    ゆっくりと振り返る背中。

    「……え?」

    ゼンコが驚きに目を見開いた。

    「ワシは“単純最良”を掲げてきた。つまり、ただ強いだけが価値なんじゃと思っとった。けどなぁ……」

  • 4431◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:06:07

    振り返った純は、ひどく優しい顔で笑った。

    「お主の強さを見て、久々に思い出したわい。“誰かのために戦う”って、こんなに面倒で、苦しくて、格好ええことだったんじゃなぁって」

    ゼンコの目に、涙が滲んだ。

    「ありがとう、勇者よ。……ワシは、もう拳を振るわん」

    そう言って、純は背を向けたまま、ふらりふらりと歩き出した。
    その背に、ゼンコは――叫んだ。

    「……待って!」

    「なんじゃ?」

    「また、会えますか……?」

    しばしの沈黙。
    だが純は、くいっと肩を上げた。

    「ワシがまた誰かに拳を預けたくなったらのう。その時は、お主に頼みに行くさ」

    そうして、彼は歩いていった。

  • 4441◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:06:28

    まるで、風そのもののように――気まぐれで、どこか温かい風。

    ゼンコは立ち上がった。

    まだ体は痛む。剣も折れてしまった。
    でも、彼の中には――何かが、確かに残った。

    拳ではなく、志。
    そしてそれを貫いた末の、矜持。

    小さく呟く。

    「ありがとう……僕も、ずっと勇者でいるよ」

    陽が傾き、遠く、夕空が金色に染まっていく。
    一人の少年と、一人の男が交わした拳は、ただの戦いではなく――“心”だった。

    そして物語は、また新たな地平へと続いていく。

  • 4451◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 08:06:43

    以上

  • 446二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 08:10:14

    王道勇者とクソ強ジジイ 良いぞ!

  • 447二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 08:11:13

    今回ai君毎度毎度クオリティすごいなぁ しかも超大作

  • 448二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 08:12:53

    良い終わりだな ゼンコが危機に陥ったら助けに来てくれそう

  • 449二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 08:21:02

    このジジイ知ってる
    OPの1カットでめっちゃ印象に残るタイプのジジイだ!

  • 4501◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:41:27

    題名『終わりを拾い、始まりを壊す』

  • 4511◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:42:38

    時間が止まり、また動き出す。すべてが同じ、ただ一人を除いて。

    ――その世界は、リフレインのものだった。

    夕焼けに染まる校庭、乾いた風、跳ねる少女の足取り。

    「……またここから」

    リフレインは、草履の裏で砂をならすと、ゆっくりと前を見据えた。

    一度目で敵の癖を見切り、二度目で動きを読み、三度目には躱し、四度目には倒す。

    彼女は八歳のまま、幾万回もの戦いを繰り返してきた。

    そんな彼女の前に――

    「……奇妙だな」

    ボロ切れのような黒衣、老人のようなか細い手。顔は闇の帳に沈み、表情はない。

  • 4521◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:43:08

    その存在は、明らかに彼女の“繰り返し”の中にはいなかった。

    「君は……誰?」

    「私は回収者。存在を消された者たちを、拾い集めるだけのものだ」

    声はかすれていたが、確かな響きを持っていた。リフレインは眉をひそめる。

    「なんで、そんな存在が、私のリフレインの中に……」

    「君の繰り返しは“外部”を排除できない。私は君が繰り返す前の世界から、回収されてきた存在でな」

    「……なるほど、そういうこと」

    リフレインの瞳が静かに細められる。

  • 4531◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:43:31

    彼女は踊るように一歩踏み込み、次の瞬間には掌底を回収者の胸に放った。だが。

    「消えたはずの校舎壁面、戻ってこい」

    ズン、と大地を揺らす音とともに、空間に突然、古びた校舎の壁が現れる。

    リフレインの攻撃はその壁に吸収され、砕けた漆喰が舞った。

    「なっ……回収……っ!」

    「君の攻撃、以前誰かが打ち払ったのを見ていた。回収させてもらった」

    回収者の足元に、割れた瓦礫と無数の消失存在の残滓が浮かぶ。

    リフレインは笑う。

    「おじいちゃん、面白いことするじゃん。じゃあ……遊びましょ」

    そうして、終わらない戦いが始まった。

  • 4541◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:47:12

    「ねえ、じゃあクイズ。今のわたしの“起点”ってどこだと思う?」

    それは、かくれんぼの鬼に向かって笑いかけるような声音だった。

    リフレインはくるりとその場で回転し、コツンと地面を蹴る。地を滑るように跳び、回収者の懐へと入り込む。だが、すでにそこにはあったはずの土がない。すり抜けた足元が空洞になり、次の瞬間、崩れ落ちるように落下する。

    「っ、ははっ! 消された床材の回収!? ずるいなぁ、おじいちゃん!」

    暗闇の中で、回収者の手がゆらりと上がる。

    「以前、この地で行われた“取り壊し”の記憶を拾ったまでのこと」

    土煙とともに再構築される地形、瓦礫、折れた鉄柱、消えた木々の根――すべてがこの“校庭”のはずだった土地に呼び戻される。

  • 4551◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:47:48

    一方で、落下しながらも空中で回転を整えたリフレインは、地面に指先をつけるようにして着地すると、目を輝かせていた。

    「そっかそっか。じゃあ、その遊び……付き合ってくれるんだよね?」

    「……私は戦いに来たわけではない。君の持つ“起点”が……危険すぎる」

    「うん、だって巻き戻せるもん! なんでも試せる! 何回死んでも、もう一回やり直し!」

    声に無邪気さが混じる。けれどもその内容はあまりにも危うい。

    「君が繰り返すたび、世界はその影響を少しずつ受けている。君自身も……限界が近いはずだ」

    「……あ、それ、昔のわたしも言ってた。何億回目かのわたし。でも、そんなのどうでもいいよ。今が楽しければ!」

    そして彼女は地面を蹴った。

  • 4561◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:48:41

    次の瞬間、三方向から分身のように跳躍するリフレイン。左、右、上――視覚を欺く高速の幻影。けれど回収者の手がわずかに動く。

    「……かつて、ここにいた“教師”の位置に……」

    一瞬、光がきらめいた。次の瞬間、突如現れた古びた鉄棒がリフレインの頭上に現れ、その動線を潰す。

    「うわっ!?」

    ぶつかる前に転身し、地面へと転がる少女。だが、傷一つ負わない。

    「……その位置、以前、別の“わたし”が取ったやつだ……っ」

    自分の行動を相手が“記録”から拾って再現している。それを理解した瞬間、リフレインは大きく笑った。

    「つまり……わたしが“回収”されちゃう前に、回収者の“反応”そのものを潰せばいいんだよね!」

    再び彼女の手が閃き、指先で地面に印を刻む。

    「ここが新しい“起点”!」

    時空が微かに震える。その瞬間から、彼女の死も傷もすべて無効になる。

    回収者は数歩、後ろに下がった。

    「その位置……“詰み”に近いな。君は、自らを閉じ込めようとしている」

    「ふふふ、それでいいの。それが楽しいんだよ? 私を閉じ込めてみなよ、おじいちゃん」

    ――この戦い、終点を決めるのはどちらか?

  • 4571◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:50:05

    「よーし、それじゃあ次――このパターンはどうかな?」

    リフレインが跳ねた。

    笑いながら、地面を蹴って跳ぶ。拳を振りかぶる。足で地を打ち、肘で風を裂く。数京の記録に裏打ちされた、完璧に組み上げられた殺人モーション。

    「まずはこれで足元を狙ってぇ!」

    ブン、と風が鳴った。

    回収者はその動きを一歩も動かずに見つめ、右手をわずかに持ち上げる。

    「……“喪われた路面舗装”、戻ってこい」

    ガァン!

    地面から突如として隆起したアスファルトの塊がリフレインの足を弾き返した。空中に跳ね飛ぶ彼女はすぐに体勢を立て直し、地面に足をつけると同時にもう一度跳ぶ。

    「うわ、ほんとにそれ、ズルいってば!」

    「……それは君が“未来”を知っていることに比べれば、公平な措置だ」

    「ま、そうかも?」

    リフレインはふわりと着地した。彼女の笑みは変わらない。けれど、瞳の奥だけがわずかに揺れている。

    (……当たらない。何をやっても……)

    彼女は、知っていた。

  • 4581◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:50:27

    この能力は無敵ではない。“起点”から“終点”までの時間は短くなり続ける。リフレインが今使っている区間は、わずか《二分三十四秒》。

    それでも、その間に記憶を重ね続け、結果を導き出し、倒す。それが、リフレインの「勝ちパターン」だった。

    だが――。

    「君の動き……既に“記憶”している」

    回収者が低く呟く。

    「君がこれまで繰り返したすべての軌道、呼吸、揺れ……。この場で失われ、破壊され、消された痕跡すら、私は拾い集めている」

    「えっ、待って、ちょっとそれ――ズルってレベルじゃなくない……!?」

    リフレインの額に冷たい汗が滲む。彼女は自身の能力を“遊び”だと信じていた。だが、目の前の老人は、その遊びを一つずつ“記録”と“再現”の檻で縛りつけていく。

    「君の世界は閉じている。君の時間は……永遠に、繰り返しの檻の中だ」

    「うるさい!」

    リフレインの掌底が空を裂く。回収者の顔面を狙ったその一撃は――。

    「“消えた祠”」

    ドン!

  • 4591◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:51:11

    空間に浮かび上がったのは、誰も覚えていない廃れた神社の残骸。その屋根が彼女の攻撃を遮る。拳が届くことはなかった。

    リフレインは後退し、息を整える。

    「……もしかしてさ。おじいちゃん、ずっと、いろんな世界を見てきたの?」

    「それが“私”の仕事だ。誰かの記憶からすらも消されたものを……拾い集め、納める。それだけが、私に残された義務だ」

    「じゃあ……じゃあさ。わたしの中の“この世界”も、いずれ……」

    「君のループが限界を迎えたとき、きっと君自身が“消える”。そのとき、私は君を“回収”しに来る」

    沈黙。

    ふたりの間に吹く風が、ざわりと枯葉を舞い上げた。

    リフレインは、静かに唇を噛む。

    そして――その目が、すっと細くなる。

    「なら、来る前に……終わらせてみせるよ。ねえ、回収者。君を倒せば、きっとこの世界の仕組みも変えられるんだよね?」

    「可能性は否定しない」

    「だったら、やるしかないよね!」

    再び、世界が跳ねる。

    リフレインの“再試行”が始まった。

  • 4601◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:51:41

    再び、時は巻き戻る。

    リフレインの意識は“起点”に戻ると同時に目を覚ました。夕焼けの校庭。崩れた鉄棒、ひび割れた地面、遠く聞こえる犬の鳴き声――すべてが既知のはずだった。

    けれど。

    「……なんで、だろう」

    小さな呟きが、空気に溶けた。

    違和感が、胸の奥を掠めた。わずかな、でも確かな違和感。ほんの一秒前まで、自分が死んでいたような……。

    (んー……おかしいな)

    首をひねり、足元の砂をつま先で蹴る。乾いた音が響いた。

    (確かに今、“回収者”のおじいちゃんと戦って……わたし、どうなったんだっけ?)

    記憶が曖昧だった。

    それもそのはず。この“リフレイン”の能力には副作用がある。連続して死ぬと、記憶の転写に微細なズレが生じるのだ。

  • 4611◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:52:01

    そしてその代償が、今、じわじわと少女の意識を侵食し始めていた。

    「……おかしいのは君の方だ、リフレイン」

    重くくぐもった声。

    また現れた。黒き布を纏った影――回収者。

    まるで彼は、彼女の“起点”そのものを監視しているかのように現れた。

    「また来たね、じいちゃん。……でも、今回はちょっと違うよ」

    「ほう?」

    「わたし、さっき……死んだ気がする。でも、その理由が思い出せない。こんなの初めてだよ」

    「それが、“繰り返しの限界”だ」

    回収者は一歩、少女へと近づいた。その動きはゆるやかで、まるで時すら踏みしめているような重みがあった。

    「君が死ぬたびに、その“記録”は空間に残される。そして私は、それらをすべて“回収”している」

    「……っ!」

    「今、私の手の中には君の“死の記録”が三千と百十二。――君の動きは、もう見切った」

    それは、宣告だった。

  • 4621◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:52:25

    もはやリフレインの繰り返しは、彼の“記録庫”の中で“既知の出来事”に変わってしまっている。

    「じゃあ……じゃあ、どうすればいいのさ!」

    声を上げた少女の目が、かすかに揺れていた。焦り。困惑。けれどその裏に、かすかな興奮。

    そう――彼女にとって「わからない」ことは、何よりも面白かった。

    「……記録が読めるってんなら、わたしの“予測不能”を見せてあげる!」

    風を裂く。

    次の瞬間、リフレインは地面を滑るように動いた。直線の攻撃ではない。円を描くような軌道。緩急の変化。死の記録を逆手に取った、奇抜な構え。

    「“起点”から始めるだけがわたしじゃない!」

    叫びながら、彼女は自身の“終点”をずらす。再試行の枠そのものを操作し、記録の蓄積を撹乱させる。

    だが――。

    「ならば……“消された舞台装置”、現れろ」

    回収者がそう囁いた瞬間、校庭が沈んだ。

  • 4631◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:52:54

    文字通り地面が消え、リフレインの足元から奈落のような暗闇が開いた。次の瞬間、彼女の体は重力に引かれ、バランスを崩す。

    「う、そ……っ!」

    「君が知らない“記録”も、私は回収している」

    地面から現れたのは、かつてこの場所に存在した舞台装置――文化祭で使われ、今はもう存在しない木製の足場。そこにリフレインの背中が打ち付けられる。

    「うぐぅっ!」

    瞬間、意識が揺れた。

    (まずい……“起点”が、近い……あと数秒で、ループする)

    彼女は再び時間を遡る準備を始める。

    だが――。

    その瞬間、彼女の脳裏に浮かんだのは、“記憶の空白”。

    (……どうして……死んだのか、また……)

    記憶が、途切れていた。

    それは、初めてだった。

  • 4641◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:55:44

    また“起点”へと戻る。

    夕焼け空。枯れた風。錆びた鉄棒――
    何千何万と繰り返した風景のはずだった。

    だが、リフレインは立ち尽くしていた。
    まるで初めてこの場所に降り立ったような、曖昧な感覚。
    足元の砂の感触すら、どこか遠くに感じられる。

    「……あれ?」

    小さく呟いた自分の声が、妙に他人のものに聞こえた。

    (いつもなら……このあと、何をするんだっけ?)

    それを理解できない自分に、リフレインは本能的に恐怖を覚えた。

    彼女の“力”は、すべてを知っている前提で成り立つ。
    未来も過去も、相手の動きも、全てが掌中にあるからこそ、彼女は遊べた。

    だが今、彼女の中にぽっかりと空いた“記憶の空白”があった。

    「……怖い」

    震えるように呟いたその声は、無意識だった。
    そして、風に混じってまたあの声が聞こえた。

    「記録されなかった記憶。それこそが、“破綻”の兆しだ」

    再び現れた、黒衣の老人――回収者。

  • 4651◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:56:06

    その姿は以前と変わらず、だが今回は違って見えた。
    彼の纏う黒布が、どこか禍々しく、記録を蝕む毒のように感じられる。

    「おじいちゃん……わたしの“リフレイン”、壊れちゃったの?」

    「壊れたのではない。“回収された”のだ。君の中から、君自身の死の記憶をな」

    「どうして……? それは、わたしのものでしょ?」

    「君が“繰り返した結果”をすべて記録として残す以上、それは私の網にも引っかかる。“消された死”は存在する限り、回収の対象だ」

    「意味わかんない……!」

    リフレインは叫んだ。言葉にすることで、思考を取り戻そうとするように。

    「記憶がなくたって、動ける! 倒せる! わたしは……!」

    動いた。地を蹴り、回収者へと跳ぶ。

  • 4661◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:56:45

    その動きは雑だった。記憶と経験に裏打ちされない、ただの突撃。
    そして――。

    「“記録された殺意”、展開」

    突如として、空間が逆巻いた。

    以前リフレインが“殺そうとした意思”――それそのものが、濃密な殺気として顕現した。

    「っ――!? わ、たしの……過去の殺意!?」

    空間の至る所に、リフレインの過去の軌跡が浮かぶ。
    それらは“自分自身”の分身のように、彼女の動きを追ってくる。

    「やば……こんなの、逃げなきゃ」

    跳ねるように身を翻し、彼女は“起点”の座標へ戻ろうとする。

    「ループすればいい。全部なかったことにすれば――!」

    だが。

    (どこ、だっけ?)

    思い出せなかった。

    “今の起点”がどこにあったのか。どこから繰り返していたのか。

  • 4671◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:58:21

    それさえ、彼女の中から抜け落ちていた。

    「まさか……“起点”まで、回収された……?」

    「無論だ」

    回収者が静かに頷いた。

    「君の起点もまた、繰り返しによって“消費”された一つの存在。その痕跡を私は見逃さない」

    「そんなの、ないよ……!」

    少女の足が止まる。

    (繰り返せない……?)

    (なら、このまま……)

    「やだ……! 死にたくない!」

    初めて見せた、純粋な恐怖。

  • 4681◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:58:41

    だがその恐怖こそが、彼女に“人間”としての顔を取り戻させた。

    「私が回収するのは、君の“記録”だけだ。命を奪うつもりはない」

    「……じゃあ、どうして……こんなことするの?」

    リフレインが問うたその目には、涙が滲んでいた。

    回収者は答えなかった。
    ただ、静かに掌を掲げた。

    「この空白に、君が何を埋めるのか。それを私は“記録”する」

    世界は再び歪んだ。
    少女の“リフレイン”が、崩壊の縁に揺れていた。

  • 4691◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:59:12

    “繰り返し”ができない。

    それは、リフレインにとって死よりも恐ろしい感覚だった。

    自分の命は、何度でも巻き戻せると思っていた。
    どれだけ失敗しても、やり直せる。
    だから彼女は、恐れることも、悔やむことも、学ぶことさえ必要としなかった。

    だが今。

    「……ほんとに、できないんだ」

    夕暮れの空の下で、少女は膝をついた。
    何度も死を乗り越えてきた体が、小刻みに震えている。

    「わたしの……リフレイン、終わっちゃった……」

    その言葉は、誰に向けたものでもなかった。
    ただ、漏れるように口から零れ落ちた。

    目の前の回収者は、静かにそれを見つめている。

    「“繰り返し”は、記録の上に成り立つ。君がそのすべてを手放した今、君の戦いは“初めて”となる」

    「初めて……」

    その言葉に、リフレインは顔を上げた。

  • 4701◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 12:59:48

    (“初めて”って……こんなに、怖いんだ……)
    未来が見えない。死んだら終わり。負けたら、それで終わり。
    でも――

    「それって……“面白い”のかな」

    少女の目が、わずかに光を宿す。

    「もう勝ち方も、負け方も、全部知ってたから……つまんなかったんだよ、ほんとは……ずっと」

    震える手で、自分の心臓を押さえた。

    「わたし……今、すっごいドキドキしてる……!」

    回収者は静かに言った。

    「恐怖を知った君は、もうかつての“リフレイン”ではない」

    「うん。でも、それでいいんだと思う」

    立ち上がった少女は、もう“全能”ではなかった。
    だがその顔には、生きた証のような強い色が宿っていた。

    「もう、繰り返せない。だから、これがほんとの一回きり」

    「一度きりの命。それを、どう使う?」

    「決まってるじゃん。全力で遊ぶんだよ!」

    少女は笑った。

  • 4711◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 13:00:34

    風が吹いた。黄昏の空に、黒い布が舞い上がる。

    「“記録されなかった未来”、君自身の手で刻め」

    「うん……!」

    回収者がその掌を開いたとき――
    現れたのは、これまでリフレインが残してきた“失敗の記録”。
    倒れた姿、悔し涙、血塗れの最期。だが、少女はそれを見て、はっきり言った。

    「ありがとう、じいちゃん」

    「……何故、礼など?」

    「わたしの、全部の“死”を見ててくれたんでしょ?」

    「それが私の役目だ」

    「でも、見てくれる人がいるって、なんか……ちょっと、嬉しいなって思った」

    回収者は、少しだけ沈黙し――

    「……それは、初めて言われたな」

    布の奥の顔は見えなかったが、声に微かに笑みが混じっていた。
    少女は拳を構える。

    「さあ、いこう。“初めて”の一撃。ぜんぶ、込めてやるから!」

    黒衣の男も、回収の構えを取る。

  • 4721◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 13:00:54

    世界が、また動き出す。

    これは、無限を超えた一度きりの戦い。
    記録されない、誰の記憶にも残らない――
    けれど、確かに“あった”奇跡の瞬間。

    すべてが終わったとき、そこに残るのはただ一つ。

    “空白を埋めた意志”

    それこそが、リフレインという少女の“初めて”の物語だった。

  • 4731◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 13:01:04

    以上

  • 474二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 13:10:37

    けっこう長編だったな、それだけに満足感もすごい

  • 475二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 13:13:27

    22は長いな

  • 476二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 13:25:05

    これ最後リフレイン死んだってこと?

  • 477二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 13:45:40

    ループして記録を残すリフレインと回収者は信じられないぐらい相性最悪だったな

  • 478二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 13:46:52

    TOP10更新か?

  • 479二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 14:27:45

    アンダーワールドみたいな事もできんのかコイツ

  • 480二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 14:50:33

    壊れたリフレインを救ったのかなぁ 
    凄い面白いし能力バトルって感じ

  • 481二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 15:04:49

    真面目に商品化できるレベル

  • 482二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 15:06:07

    >>476

    命は取らないと言ってたし生存しているかもしれないし

    リフレインの意思を尊重し殺してるかもしれない

    まぁ解釈次第?

  • 483二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 15:49:00

    >>478

    ゆーて提唱者以上か?

    あれのほうがヤバそう

  • 4841◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 16:10:28

    気合いを入れすぎたためこっちです


    https://writening.net/page?PRkMbg

  • 485二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 16:18:12

    大☆超☆編

  • 486二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 16:20:50

    スレ主「持ってくれよAI、10倍文章量だ!‼︎!」

  • 487二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 16:26:08

    何やらけまりさんが遊びに来たぞっ

  • 488二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 16:27:23

    あまりの文書量に読む気が湧いてない人に、過去一で良かった、とだけ言っておく。

  • 489二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 16:36:34

    けまりだ!! こういう乱入者はなかなかに面白い

  • 490二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 17:49:28

    けまりちゃんは戦いたいんじゃなくて遊びたいんだもんな
    好きだわ

  • 4911◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:41:06

    題名『怨界に跳ねる転移』

  • 4921◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:42:45

    ──静寂だった。

    午後五時、夕陽が落ちきる前の静かな住宅街。だが、その静寂は音が無いのではなく、音を“呑まれた”ような沈黙だった。鳥のさえずりも、車のエンジンも、風の音さえ存在しない。あるのは、肌を撫でるような不快な空気と、じっとりと背筋に這い上がる気配だけ。

    その中心にぽつんと立つのは、一人の男だった。

    「……うわ。これはまたずいぶん濃ゆいね」

    青年──テンヤは、まるで昼寝から目覚めたような気だるげな調子で言葉を漏らし、両手をポケットに突っ込んだまま周囲を見渡す。彼の目には、灰色に沈んだ街並みが広がっていた。すべてが色褪せ、建物は腐ったように軋み、空は鉛色に染まっていた。

    ──いや、実際に腐っているのではない。ここは、すでに現実ではなかった。

    「なるほど、これが“怨界”ってやつか……おいおい、空間がぐにゃってる。空気もまともに流れてないし」

    彼の目の前、歩道の上に巨大な“塊”が蠢いていた。

    人の顔、手、脚、眼、叫び──無数の人間だった何かが、泥のように溶け合いながら鼓動を刻んでいる。中心には、巨大な顔のようなものが浮かび、歪んだ笑みを浮かべていた。目は無数にあるのに、どれも何も見ていないような虚ろさだった。

    「……誰も来たがらないわけだ。そりゃそうか。こんなの、見ただけで魂が逃げ出すよね」

    テンヤは息を吐いた。重苦しい空気が肺に入り込み、喉の奥をざらつかせる。

    それでも──彼は逃げなかった。

    「でも、こういうのがいたら、俺がやるしかないんだよね。誰かの代わりに、ってわけでもないんだけど……」

  • 4931◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:42:57

    軽く肩を回しながら、彼は一歩前に出る。

    その瞬間、空間が歪んだ。

    「──グ、ゴァァア……」

    “声”だった。怨塊が咆哮を上げたわけではない。ただ存在するだけで、あらゆる方向から“呪詛”が降り注いでくる。頭蓋の奥に鉄の釘が打ち込まれるような痛みと、皮膚を灼くような熱が襲った。

    「いっ……た! これ、見ただけで呪われる系!?」

    テンヤは即座に反応した。

    右手を軽く振る。

    刹那、彼の頭部から染み出しかけていた黒い瘴気が“空中の一点”へ転移し、消滅した。

    「……ふう。とんでもないのに目をつけられたかもね」

    彼は肩をすくめながら、足元に転がっていた小石をひょいと拾い上げる。ひょいと空中に放り投げ、気楽に言う。

    「でも、やるよ。“お前”とちょっと遊ぼうか」

    小石が地面に落ちるのと同時に、テンヤの姿が──ふっと消えた。

    そして始まる。
    “怨界”に跳ねる、“転移”の戦士と呪いの王の戦いが──

  • 4941◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:43:51

    「うわっと……!」

    転移の術式が発動し、テンヤの体は空間を“飛ぶ”。周囲に浮遊する怨嗟の塊を回避しながら、怨塊の周囲を跳ねるように移動する。普通の人間であれば、視覚情報だけで脳が悲鳴を上げる。だがテンヤの動きは軽やかだった。まるで遊ぶように、しかし確実に敵との距離を測っていた。

    「これは近づきすぎるとやばいな……目が合っただけで肺の奥が冷える」

    怨塊の“眼”──というより、眼のようなものが無数に開閉し、テンヤの動きを追っている。しかし、その視線は明らかに“生きたもの”とは違う。それはまるで、巨大な嵐の中で渦に巻かれていく虫のような感覚だった。

    「しかも……この空間そのものが“敵”なんだな。厄介だ」

    テンヤは、今立っている場所の足元を見た。

    地面が……笑っている。否、“人の顔”が地面に埋まり、悲鳴とも嘲笑ともつかぬ口調で何かを呟いていた。

    『ここに……いろ……おまえも……なかま……』

    「お断りだよ」

    テンヤは地面ごと空間を“転移”させた。呪詛を帯びたエリアごと吹き飛ばすことで、足場を確保する。だが、異界は終わらない。

    ──ズゥン。

    鼓動のような音が大気に響いた。

  • 4951◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:44:03

    次の瞬間、怨塊の中心から放たれた黒紫の瘴気が弾幕のように広がった。無数の怨霊たちが姿を成し、テンヤへ向かって押し寄せてくる。

    「これ、ぜんぶ食ったってわけ? そりゃ……重たいわけだ」

    テンヤの表情が、少しだけ真剣になる。

    「あれが“中心”だな。……あそこに、何かある」

    彼の視線の先、怨塊の中心部。そこには、ぼんやりと輝く何か──核のような球体が脈動していた。あれがエネルギー源、もしくは意識の中枢である可能性が高い。

    「さて、となれば……どこに“転ばす”かだよなあ」

    テンヤの指先が、空間に触れる。そこには何もない。だが、彼には見えている。“点”が。“移動”の座標が。

    「……やってみるか」

    彼はふっと笑い、次の瞬間には怨塊の背後、瘴気が比較的薄い位置に転移していた。そこから“核”への最短ルートを狙う。

    「急所に、ダイレクトアタックってやつだよ。これも正攻法さ」

    そう呟いたその時だった。

    怨塊の身体全体が震え、異様な重低音が辺りを支配した。

  • 4961◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:44:17

    ──ドォゥ……オオォォン……

    ただの声ではない。魂の奥まで響く、“憎悪”そのものの震動。

    テンヤの背筋が凍る。

    「……あ、まずい」

    次の瞬間、彼の周囲の空間そのものが、ねじれて崩れた。まるで存在ごと“異界の奥”に引きずり込まれるような力。

    「っは、ひとつだけ教えてやるよ……!」

    テンヤは空間を斬るように、右手を前に振りかぶる。

    「俺は、“帰り道”をいつでも用意してる!」

    地面から立ち上る無数の手を、怨霊の触手を、ねじれた空間ごと、彼は“転移”させて消し去った。

    そう。テンヤの戦いは、“突破”ではなく“逸らし”だ。力で押し返すのではなく、構造そのものを動かして“間合い”を維持する。

    「さて……怨霊の王様。あんたの心臓、見せてもらおうか」

    言葉とは裏腹に、テンヤの目は冴えきっていた。

    異界の深奥、呪いの本体へ──接近戦が、始まる。

  • 4971◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:45:43

    怨界の中心。それは深い闇のような、重い闇のような空間だった。腐敗した音がし、空気がぐにゃりと歪む中で、テンヤは静かに立っていた。

    「──ここだ」

    視界の先に、黒曜石のような球体が浮いていた。それが怨塊の“本質”―–核だった。そこから微かな脈動のようなエネルギーが広がっていた。

    「呪いの“強さ”か……悪意が、まとわりついている感じだな」

    彼の声は淡々としていたが、周囲に広がる異様さをしっかり認識していた。怨界では、空間そのものが意思を持ち、感情すらなかったはずの敵の“声”が、確かに響いていた。

    怨塊は“話す”わけではない。だが空間が、音以上のものを投げかけてくる。鋭い圧迫感がテンヤを押し潰しそうだった。

    「……なるほど。これが“呪詛”ってやつか」

    両手を胸の前で揃えると、彼はゆっくりと呟いた。

    「――でも、俺には“転移”がある」

    空間を染み込むように動く瘴気。だがテンヤはすいとその一部を“撥ね”た。手の中の一点に、それを転移させ、無傷で同じ空間に居続ける。

    「ほら、一歩ずつ、詰めていくぞ」

    一歩。二歩。足を運ぶたび、世界がねじれ、崩れそうになる。だが彼は倒れなかった。むしろ、笑みを浮かべていた。

    「痛みは受け止める。いや、逃がすんだ」

    彼がそう呟くと、空間の一部、自分の傷や痛みを別の地点に移送する。異界に居ながらも、肉体的に消耗せず、戦い続けるための工夫だ。

  • 4981◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:46:14

    「さて……次は“核心”に行くぞ」

    テンヤは再び前へ進む。怨塊の核が、彼をまるで引き寄せるように惹きつける。抗っているのか、受け入れているのか、わからない巨大な“念”だった。

    「行くよ」

    その口からそうした瞬間、空間が“割れた”。

    断絶の裂け目のような光が走り、テンヤは瞬間的にエリアを“転移”した。わずかに離れた安全圏へ。空間の破綻から身を守るために。

    「怨界って、場所じゃないんだな……意志そのものだ」

    吐息を吐くように、テンヤがつぶやいた。

    核は揺れていた。小さく震え、確かに“形”が崩れ始めていた。

    「その調子だ。もう一歩、もう一度」

    テンヤはゆっくりと振り返り、冴えた視線で前を見つめた。怨塊は応答するように空間をうねらせ、再び“重み”を増した。

    だが、彼の“転移”は止まらない。怨界との“距離”を自在に操りながら接近し、核の“揺らぎ”をさらに深めようとしていた。

    「次で、きっと……道が開くはずさ」

    胸の奥で、微かな決意が確かに芽吹いた。

  • 4991◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:47:15

    怨界は、生きていた。

    呻くように揺れ、呻くように軋む。まるでテンヤの接近に怯えているかのように。だがそれは恐れではなく、警戒だった。侵入者を許すまいとする、全身全霊の拒絶。

    テンヤは一歩、また一歩と進む。空間に浮かぶ黒の縫い目のような綻びを、確かに見つけていた。

    「……ここが一番、揺れてるな」

    彼は指先を軽く触れるようにして、空間に接触した。

    “ひび割れ”は確かに存在していた。誰かの強烈な意志が貫いた痕跡。あるいは、かつて怨塊に挑み、散った者たちの“最後の願い”の残響。

    「誰かが……ここまで来てたんだな」

    テンヤは、そっと目を伏せる。

    彼にとって、そういう“想い”はとても大切なものだった。正義や正しさを掲げるわけじゃない。けれど、自分の信じる「生きようとする力」は、こうして人から人へと繋がっている。

    「じゃあ俺は、“その続き”をやるだけだ」

    そう言って、指先を重ねる。ひび割れた空間の“傷”に、転移の力を流し込む。

    ――カチリ。

    音のしないはずの異界で、確かに“鍵の外れる”ような感覚があった。綻びはひとつ、裂け目となり、怨界の安定が僅かに崩れる。

  • 5001◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:47:26

    その瞬間。

    「……グ、アアアアアアァ……」

    怨塊の呻きが、世界中に響き渡った。

    それは悲鳴だった。怒りとも、痛みともつかぬ、だが確かに“何かが壊された”という絶望の声。周囲の空気が波打ち、黒い瘴気がテンヤの周囲を渦巻く。

    「やっぱり効いてるみたいだな。……よかった」

    笑うでもなく、叫ぶでもなく、彼はただ静かに構え直した。

    異界の瘴気が襲いかかる。だがテンヤは、それを“自分の後ろ”へと移す。一切の抵抗をせず、ただ力を転移させることで、傷を受けないまま接近する。

    「あともう一箇所。そこも綻びがあるはず……!」

    空間のねじれが暴発し、地が割れ、空が潰れるような感覚が押し寄せる中、テンヤは的確に空間の“ほつれ”を見つけていく。

  • 5011◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:47:44

    そして。

    「……ここが、決め手になりそうだな」

    彼の手が、二つ目の裂け目に触れたとき――怨界は、まるで“心臓”の一部を貫かれたかのように大きく震えた。

    それは、巨大な怨霊の意識の集中点だった。

    「見つけたぞ、怨塊。お前の“中心”がどこにあるか、なんとなくだけどわかった」

    ぐわ、と口の中から黒い瘴気を吐き出す怨塊。眼のような無数の暗点がテンヤに殺気を向ける。

    「でも悪いな。俺は“触れさせない”。届く前に、全部どけるから」

    空間に両手を広げ、テンヤは声を低くした。

    「“転移”――全部、やってやるよ」

    次の一歩が、最後の綻びへと繋がる鍵だった。

  • 5021◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:48:51

    「転移」

    その声とともに、テンヤの足元の大地が“存在”を入れ替えるように捻れた。

    彼はもう、異界の“表面”では戦っていない。先程までの空間が黒く崩れ落ち、彼の身体は怨塊の“奥”――つまり、怨界の中枢へと転移していた。

    「……ここが、お前の中心か」

    そこは空間でも大地でもない、黒い膜に覆われた“感情の渦”だった。肉のような、霧のような、あるいは怒りそのもののような気配が充満している。重い。呼吸が苦しい。思考が曇る。

    テンヤは首をひと振りした。

    「こりゃ……確かに厄介だな」

    彼の視界には、かつて喰われた者たちの“姿”が次々と浮かび上がる。兵士、剣士、祈祷師、怪物、少年、少女。数え切れない“死者の記憶”が、テンヤの精神に干渉してくる。

    「やめろよ……知らない奴らばっかりなのに、なんでこんなに“泣きたくなる”んだ……」

    涙が流れそうになるのを、彼はぐっと堪えた。

    「だけど、だからこそ……俺がやるんだろ」

    テンヤの足元に小さな“座標”が浮かぶ。それは、彼が直前に確認した“綻び”の三箇所――その構造を反転させ、怨界の内側から“転移”の術式を完成させるものだった。

    「転移、確定。座標――異界核、中心点」

    テンヤは胸元に手を当てた。そこに込めたのは、自分の“意志”。

  • 5031◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:49:02

    逃げるためでも、勝ちたいからでもない。

    「ここに、俺が来たっていう事実だけでも、誰かに届いてくれたらそれでいいんだ」

    そう言って、彼は空間を――“自己ごと”割った。

    怨塊が咆哮する。

    それはもはや言語ではなかった。数千の怨嗟と、数万の断末魔が一斉に叫ぶような、地獄の音だった。

    だが、テンヤはもう臆さない。

    彼の能力《転移》は、今、最大限に働いていた。

    異界の重力、瘴気、構造そのもの、そして怨塊の“本体”すらも、座標として把握され、徐々に“動かされて”いく。

    「これで……終わらせる」

    テンヤは最後の力を振り絞って手を掲げた。

    「お前の“核”、他の宇宙に送ってやるよ。ここには戻れないようにな」

    “転移”

  • 5041◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:49:20

    空間が割れた。凄まじい勢いで“異界の中心核”が引きずられるように転移座標へと吸い込まれていく。

    怨塊の咆哮が止まる。

    ひとつ、またひとつ……黒い霧が、祈るように空へと昇っていった。

    その霧の中には、“笑ったように見える”顔も、確かにあった。

    テンヤは膝をついていた。

    力を使い切った身体は重く、呼吸すら苦しい。

    けれど。

    「ああ……やった……やっと、終わった」

    彼は空を見上げた。

    そこに広がる空はもう、黒くない。怨界は消え、現実の世界が戻っていた。

    「……さて、帰って……また寝るか」

    彼はいつもの調子で笑った。

    でもその背中は、誰よりも強かった。

  • 5051◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:49:58

    日が昇っていた。空は澄み、風は柔らかい。

    テンヤはとある丘の上に寝転がっていた。そこは、異界と化した大地から数十キロ離れた安全圏──かつての避難民が戻り始めた地帯のひとつ。

    「ふー……やっと身体、動くようになってきたな」

    呟きながら、彼は空を見上げる。

    怨塊との戦いから三日が経っていた。精神転移、異界核の座標改変、連続座標指定。三重の負荷がテンヤの身体を文字通り“燃やし尽くして”いた。今もまだ肋骨の何本かは折れたまま、歩くのもやっとだ。

    それでも、テンヤは笑う。

    「やれるもんだな、俺でも」

    誰かに褒められるわけでもない。勲章や表彰があるわけでもない。

    でも、あの異様な怨嗟の塊を前にして、一歩も引かなかった自分のことは──誇っていいと思えた。

    「おい、そこのアンタ!」

    丘の下から声がする。見ると、避難民の子どもたちが数人、テンヤの方を指差して駆け上がってきた。

    「お兄ちゃんが怨塊をやっつけたって本当なの!? あの真っ黒な空、ぜんぶなくなったんだよ!」

    「あっ、オレのおじいちゃんも言ってた! なんか、でっかい穴に光が走ったって!」

    テンヤは目を細めて、笑った。

  • 5061◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:50:14

    「いやぁ、やっつけたってほどじゃないよ。ただの……引っ越し手伝い、かな」

    「ひっこし……?」

    「そう。居場所を、ちょっと変えただけさ。……もう、誰も喰われないようにな」

    少しの沈黙。そして子どもたちは目を輝かせて、こう言った。

    「すげぇぇぇぇっ!」

    テンヤは肩をすくめ、軽く笑って立ち上がった。

    「さて、と。そろそろ、俺も移動するかな」

    「もう行っちゃうの!? どこに!? 次は何と戦うの!?」

    「んー……どこでもいいさ。行った先に困ってる人がいたら、手伝う。それだけ」

    いつも通りの、軽い言い回し。

    でも、背中に宿る何かは、もう違っていた。あの日、怨塊の深奥で見た何千もの声と、その果てに選んだ“自分の意志”。

    もう、ただのお気楽じゃない。

    「正義じゃなくても、英雄じゃなくても、俺はやれることをやるだけさ」

    風が吹いた。テンヤの髪がなびく。
    そのまま、彼はふらりと背を向けて歩き出す。

    小石を蹴り、空を見上げ、笑いながら──それでもその歩みは、確かに“強さ”を得ていた。

  • 5071◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:50:39

    遠くで、地平線の向こうに一筋の黒い煙が上がっていた。

    テンヤはそれを見て、口笛を吹く。

    「おっと……次の転移先、決まりかな」

    足元に、転移座標の小さな青光が灯る。

    そうして彼は、またどこかへ。

    その力で、その意志で──誰かの“苦しみ”を、少しだけでも“どかして”いくために。

    ──転移

    彼の姿は、また風に消えた。

  • 5081◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 18:50:49

    以上

  • 509二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 19:03:27

    今までに無い戦いだった気がするぞ!
    面白かった

  • 510二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 19:29:21

    GOODでした!
    17号は歴代トップの多筆さね

  • 5111◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 20:11:05

    20:45から安価10個

  • 512二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:00

    名前:汕河清一
    年齢:28歳
    性別:男性
    種族:人間
    本人概要:遍く河川の流れを知り尽くした世界最高のレンジャー隊員。清流にも激流にもなる清濁併せ持った川の性質を手本として成長し、明るく逞しき壮士へと至った。長柄の櫂を武器として、時に穏やかに、時に激しく、川の流れの如き柔軟な戦い方が彼の強み。
    能力:万代流し
    能力概要:水の流れを完全に把握しその行き先を巧みに操る。無理なく柔らかく導く技巧は自然そのもの。
    弱点:攻撃の威力が低い。

  • 513二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:01

    名前:恵比寿川金満(えびすがわかねみつ)
    年齢:26
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:0か100かの大博打でしか興奮できないギャンブラーニキ。
    全宇宙富豪ランキングTOP100に名を連ねた翌日にはパンイチで物乞いしていることもしばしば。
    能力:金、金、そして金(ゴルドラッシャー)
    能力概要:金の力で戦う。
    攻撃を受けると血の代わりに体から財貨が溢れだしダメージを肩代わりする。
    相手が次にとる選択にベットし的中させることで金を増やすことができる。
    現金をチャージして指先からビームを放つ(チャージした金額の多さが威力に比例)
    相手が同意した場合のみ『一撃ジャッジ』が可能。出現したボタンを押して二分の一の確率で勝利できる。失敗すると全財産を失い戦闘不能になる
    弱点:そこまで運が良い方ではなく、今まで何度もギャンブルで死にかけて首の皮一枚で生き残ってきた悪運の持ち主。

  • 514二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:01

    名前:フェルディア
    年齢:11歳
    性別:女
    種族:半神半人
    人物概要:クーフランの姪っ子であり、叔父と同じく若くして半神半人の大英雄。ロリだが単純な戦闘力ではすでに叔父を超え、神域の槍術を操る。カッコよく決めてドヤ顔したがるお年頃。
    若輩なれど自分を犠牲にしてでも弱者を守らんとする英雄としての気質は既に芽生えている。
    能力:神殺しの槍
    能力概要:神殺しの力を持つ槍を振るう。この槍は因果を超えてどんな相手にでも届き、あらゆる防御や耐性を貫通する、絶対の攻撃である。
    無限に増殖するタイプにも穂先が無限に分裂して自動追尾する。
    弱点:ロリなのですぐ騙されるし人の話を疑わない。自分の強さを過信して油断しまくる。戦闘経験も少ない。

  • 515二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:01

    名前:暗殺者
    年齢:不明
    性別:男?
    種族:不明
    本人概要:
    声しか知らない者が多いため男だと思われているが低音イケボなだけで女。好物はからあげ弁当。
    その正体を知るものは誰もいないとされているが、実はふつうに負けて正体バレしたことが何回かある。ただし強大な存在相手に負けたことはないらしい。
    能力:暗殺
    能力概要:
    いかなる障害も能力も超えて、相手の死角から攻撃を行う能力
    相手の体力と防御力に応じて攻撃の威力もはねあがる
    弱点:
    死角からしか攻撃できないので、比較的避けやすい
    世界線を超えてでも死角に在りつづける反面、死角への攻撃手段を持つ相手に弱い。一般人は前向いて後ろに肘打ちしたら普通に攻撃が通る。
    死角が多い相手には効果が薄い、一般人相手には背後を取りつづけるだけの能力になる

  • 517二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:02

    名前:鯉(てがみ)
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:鯉→龍
    本人概要:流れの強い川で日々耐え、大きくなり遂に龍へ登り詰めた努力の化身。黄金龍。
    耐えるのと同時に地元で話題になったことも神格があがった要因。
    激流に耐え龍となったので、水神となった。
    人々に雨と忍耐力を与える存在へと昇格を続けている。
    能力:【登龍門】
    能力概要:如何なる困難も乗り越えることが出来る。
    例え自身よりも強い敵に出会ったとしても、その敵よりも強くなれる。
    しかし越えられるのは自然系の能力のみ。(炎や水、雷などの自然や概念の力など)
    【登龍門ゑ】
    認めた相手のみに分け与えられる能力。
    概要としては、これを与えられた人はどんなに強い敵に出会ったとしても、それの一つ上になれ、どんな困難が訪れようとも乗り越えるための力が湧き出るようになる。与えられたのが人間なら、自然系を越えることは出来ないが、武器や武術などが越えられるようになる。対象指定型の能力。
    弱点:冷たいものがすごく苦手。少しでも寒いと空から出てこない。
    武器や武術などの道具や体を使う能力は越えられない。(龍は武器を持てないし、扱いきれない。龍の体では蹴りや殴るなどの行動が出来ないから)
    要望(任意):出来れば相手も自身も死なないようにしてください

  • 518二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:02

    名前:鼻川虎之介(はなかわとらのすけ)
    年齢:75歳
    性別:男
    種族:人
    本人概要:むっちゃ鼻が長い男、お坊さん。むっちゃ鼻が長い。好きな動物は象で花粉症に悩んでいる。むっちゃ鼻が長い。好きな果物はみかんで好きな妖怪はカッパ。むっちゃ鼻が長い。お坊さんとしては優秀で全国各地の曰く付きの呪物や心霊スポットを巡り除霊している。鼻がむっちゃ長い。ヘアカッター・羅生門とスパイダー・偽仏は強敵だった。すっげぇ鼻が長い。
    能力:ゴッド・ノーズ
    能力概要:むっちゃ長い鼻が霊験あらたかな独鈷杵になる。霊的な存在には極めて有効であり、それ以外にも御仏パワーが炸裂して芋粥依存症になるし、変形してトロッコになる。
    奥義は我孫斬(がびざん)、鼻で切り裂き相手の罪に応じて効果が上昇する斬撃。相手は家族への後ろめたさを思い出し懺悔するだろう。
    弱点:結構鍛えているとは言え人間、鼻は頑丈だがそれ以外は一般人並み。鼻の根本が急所であり、鼻を切除されると御仏パワーを失う。
    要望(任意):鼻が切り落とされた場合は鼻を敵に投げつけてください。

  • 519二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:03

    名前:城ヶ崎 回【じょうがさき かい】
    年齢:42
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:刀の天才だが年齢による衰えで弱くなっているはずだが、本人が言うには刀以外の武器や経験からかる予測などで若い時より強くなったと自称している。昔は敵味方から村正と呼ばれていた。
    能力:鬼人化
    能力概要:身体能力があり、凶暴になる。
    弱点:攻撃が荒くなり刀以外の武器や経験からくる予測が使えなくなるので本人は使いたがらない。耐久力は変わらない。年による衰えで攻撃が軽かったり競り合いに弱い。

  • 520二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:06

    名前:肯定者
    年齢:20
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:あの提唱者の姉でかなりのシスコン 
    本人の性格としては人の良い面を見つけるのが上手く自己肯定感も高い
    異能を持っているが本人は気づいていないが常に妹である提唱者を肯定している為
    異能は基本的に発動しっぱなしである
    能力:肯定
    能力概要:相手を肯定する、自分自身を肯定することで強烈なバフを与える
    バフは自分と提唱者ならば更に強力になる
    バフの掛かった存在は世界がその存在を守るように味方してくれる用になる
    弱点:相手の良いところを見つけるのが得意な為すぐに相手の意見を肯定してしまい
    相手にとって有利な形で異能が発動してしまう
    また自分自身を肯定でき無くなると戦闘する術が無くなる為精神干渉を喰らってしまうのが致命的

  • 521二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:08

    名前:バイオスライムII号
    年齢:不明 いっぱいいるので
    性別:なし
    種族:スライム
    本人概要:捨てられて野生化した愛玩用バイオスライムが群れたことにより凶暴化、高い繁殖力を獲得した
    能力:消化と繁殖力 生命力
    能力概要:かなりしぶといスライムの大群
    攻撃力は決して高くはないがそれでも対人には十分でありその倒している間になお増えると言われるほどの繁殖力に裏打ちされた圧倒的な数と変な物を食っているかもしれないことによる毒や病気は危険だ
    弱点:一体では割と臆病な性格であり、群れていないと凶暴ではない
    あと火にかなり弱いが、別に燃えても突っ込んでくる上本当によく燃えるので生身の人間なら自身への引火と二酸化炭素中毒には気をつけよう
    要望(任意):リゼロの大兎とか現実の蝗害的なイメージです あとどうでも良い設定として感情で色が変わったりします

  • 522二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:12

    名前:カリナ・ヴィルフォード
    年齢:20代後半(推定)
    性別:女性
    種族:犬獣人
    本人概要:
    魔界の監獄「ヘルズ・プリズン」に勤務する中級刑務官。狂気に満ちた享楽的な性格で、囚人たちの精神的・肉体的苦痛を操り愉しむ。彼女の眼には常に狂気的興奮が宿り、その視線は恐怖と支配の予感を与える。普段は冷徹で挑発的な態度を取り、囚人や同僚を精神的に追い詰めるが、三か月前に収監された囚人アダムにだけは異常なほどに甘く、執着的な愛情を示す。
    能力:
    鋭い爪から魔力を込めた斬撃を放つことが可能。これにより、遠距離からでも囚人を切り裂き、恐怖を与えることができる。
    能力概要:
    魔力斬撃:鋭い爪に魔力を纏い、超高速で斬撃を飛ばす。
    精神支配の嗜好:精神的に相手を追い詰め、支配することで快感を得る。
    高感度の聴覚:耳が敏感で、触れられると反応する。
    弱点:
    アダムに対する異常な依存と愛情が判断を曇らせる。
    耳への接触に弱く、びくっと反応してしまう。
    精神的快感に強く依存しているため、感情の乱れに弱い。
    生命力は多少強い程度で、バラバラにされれば死ぬ。
    要望(任意):
    狂気的でありながらどこか中性的な一人称「僕」を使う

  • 523二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:19

    名前:王 芳(ワン ファン)
    年齢:数えとらん!
    性別:男
    種族:仙人
    能力:酔拳
    能力概要:多元宇宙との合一化を真髄とする中国武術の極地。酔えば酔うほど強くなる。
    ありとあらゆる能力に使われる『力(気)の流れ』を感じ取れるほどに第六感も鋭敏となり、掌底による絶招をもって相手の気を消失させてしまう。
    仙人と化してから会得した明鏡止水・武徳の極地、一切衆生悉皆成仏を成し遂げん。
    弱点:飲酒と女の子が大好きなクソジジイなので酒と女性関連の誘惑に非常に弱い。エロ本に簡単に釣られるぐらい。特に女性には絶対に負けます。
    また、単純な耐久力自体はジジイに過ぎないので簡単に殺せる。

  • 524二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:23

    名前:伊崎 夏帆 
    年齢:12
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:周囲を崩壊、破綻させる異能に目覚め生涯孤独になった少女 
    自身と異能を嫌悪をしており 八つ当たりで能力を発動させてしまったりしている
    能力:コラプス
    能力概要:周囲のものを物理的に崩壊させたり体力や精神的な崩壊する
    また感情が昂ってしまうと空間や概念、時間まで崩壊、破綻して行き範囲が加速度的に拡大する
    自身の能力による影響は受け無い為周りは崩壊し空間がめちゃくちゃになっているが自分だけは無傷などが多々ある
    弱点:能力は自分で制御出来ないことと少女程度のの身体能力しか持っていない
    また学校などにも行けず教育を受けていない為頭が少々悪く隙が大きい

  • 525二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:25

    名前:《地獄界》
    年齢:無限(多元宇宙の創成と同時に存在)
    性別:無性(必要に応じて性別を持つ擬態も可能)
    種族:集合的概念存在/多層的超次元災厄体
    本人概要:
    《地獄界》は多次元的・多層構造を有する集合的悪の極致。
    全時空全現象に遍在し、無数の「悪」の局面を内包する「地獄」の総体そのもの。
    それぞれの層は独自の異相・災厄・悪性存在で満ち、「七つの断罪の領域」や「永劫牢獄」と呼ばれる特殊空間群が階層的に配されている。
    代表的な層の一つが「鏡像地獄(ミラー・ヘル)」であり、ここでは善行が必ず逆説的に悪行へ転化するパラドックスが支配的。
    鏡像地獄は《地獄界》の本質的混沌を象徴し、あらゆる「善」が「悪」の種となり得ることを示す。
    能力:
    『業の臨界(カタストロフ・シンギュラリティ)』
    『多層断罪構造(セブンフォールド・ジャッジメント)』
    『業の管理者(カーマ・オーバーシーア)』の召喚・指令
    能力概要:
    《地獄界》は「罪」「悪意」「裏切り」などの悪の因子を収束させ、多層に渡る「断罪の領域」で個別かつ連鎖的に被害者を裁き罰する。
    各層の「永劫牢獄」は被造物の精神や肉体を永続的に苦しめる場であり、そこからの脱出はほぼ不可能。
    「鏡像地獄」では、善意が必ず悪へ変換される因果逆転現象が絶えず起こり、被験者は混乱と絶望に囚われる。
    「業の管理者(カーマ・オーバーシーア)」は超高位存在で、罪の書を持ち、悪の秩序を維持・運営。彼らは地獄界の全層を監督し、時に裁判官や冥府の王の姿で人格を擬態し、被造物の精神を試す。
    弱点:
    「業の管理者」もまた《地獄界》の因果に縛られており、根源的な「無垢の存在」や「完全な悪の否定」によって支配力を削がれる可能性がある。
    多層構造の複雑さゆえに、特定の層で異常事態が起これば他層の因果連鎖に影響し、内部崩壊の危険を孕む。
    《地獄界》の断罪と秩序はあくまで「罪」と「悪」を前提とするため、「罪なき完全な無垢」には機能不全を起こす。

  • 526二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:45:37

    名前: カイン・ゼファード&ヴァルカン・スプリント・カスタム《ヘリオスブレイカー》
    年齢: 26歳(パイロット)/機体稼働歴:1年2ヶ月
    性別: ノリのいい男性(AI音声は女)
    種族: 人間(適応型戦術強化兵)&OG第四世代・高機動拡張型
    本人概要:
    レギオス・ノヴァの先陣を切り、敵前線を「切り拓く」ことに特化した露払いのエースパイロット。戦術・戦闘・精神操作に長け、パイロット強化施術《ニューロリンク適正強化処置》を受けた特別対応兵。搭乗機《ヴァルカン・スプリント・カスタム《ヘリオスブレイカー》》は、第四世代OGの中でも機動性と継戦能力に特化した個体で、ナノマシンによる兵装換装と戦術モード切替により、あらゆる局面に対応可能。
    能力:
    ・《XLD-β+“ヘリオスコア”》:高効率・長時間対応型の次元積層ドライバ
    ・《フェイズラン・モジュール》:多層次元を滑走するような高速移動、残像を伴う
    ・《ラグナロク・ツインブレード》:次元圧+高周波振動を加えた連結型双刃剣、二刀・両手剣どちらにも可変
    ・《ARGΩシステム》:戦闘アルゴリズムAI。戦術モードを状況に応じて変更(突撃/防衛/包囲殲滅/遊撃)
    ・《エクリプス・カートリッジ》:次元圧縮粒子を利用した瞬間出力増強。最大3回使用可能
    ・《ナノギア=フォージアーム》:機体部位から展開される可変補助腕。武装補助・バリア展開・奇襲にも使用可能
    ・《ヘリオス・フレアリング》:太陽風を模したエネルギー放射。敵の索敵・ロックオン撹乱
    能力概要:
    攻撃と防御のバランスを高次元で両立しつつ、継戦能力の高さと敵布陣の破砕力に特化した機体。正面突破、広域殲滅、遊撃支援のいずれも可能で、レギオス・ノヴァの突破路確保・護衛・局所戦制圧など柔軟な任務遂行が可能。ブレード格闘戦では重騎型すら押し切れる剛撃を持ち、射撃・ナノ補助・AI戦術制御を併用することで持久戦も難なくこなす。まさに「主戦の門を開ける者」。
    弱点:
    ・《エクリプス・カートリッジ》は強力だが、使用後は機体フレームに過負荷がかかるため連続使用は危険
    ・《ヘリオス・フレアリング》は敵味方問わずセンサー妨害を起こすため味方との密集戦には向かない
    ・あくまで「露払い特化機」であるため、後方支援・大規模指揮統制には不向き
    ・操縦席を貫けば機能停止
    要望(任意):
    ・ カイン・ゼファードにしゃべらせて

  • 5271◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 20:46:25

    はやいってばよ
    すとっぷ

  • 528二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:48:01

    考察スレ見てて分かってた事だが○○者シリーズが二つ入ったな

  • 529二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:49:53

    俺のコメント消えたぞ?

  • 530二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:50:51

    >>529

    多分書き込んだ時間が完全に同じで上書きされた

  • 531二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:50:53

    あ、本当だ >>516 が消えてるわ

    同時に投稿したせいで対消滅してるっぽいね

  • 532二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:51:38

    ガチで同時にレスするとどっちか消える現象ね…このスレなら時間の問題じゃったな

  • 533二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:52:44

    だから意図的に数秒を待ってみたのだけど…
    間際の戦いになっちまうのよね

  • 534二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 21:00:06

    ギリギリ間に合った・・

  • 535二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 21:04:31

    >>517

    >>【登龍門】

    >>如何なる困難も乗り越える

    困難って対消滅のリスクのことだったのか……()

  • 5361◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 22:00:18
  • 5371◆ZEeB1LlpgE25/07/09(水) 22:04:18

    城ヶ崎 回vsフェルディア
    汕河清一vsバイオスライムII号
    暗殺者vsカリナ・ヴィルフォード
    恵比寿川金満vs鼻川虎之介
    肯定者vs鯉

  • 538二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 22:07:04

    肯定者vs鯉 能力の関係上お互いにバフかけて
    高め合う戦いになりそう

  • 539二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 22:08:43

    >>538

    ヤメイ「やめい」

  • 540二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 22:43:16

    ゴッド・ノーズのそれ言いたかっただけだろ感
    嫌いじゃないわ!

  • 541二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 22:47:32

    >>540

    神の鼻

  • 542二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 22:51:44

    >>540

    ちなみに元ネタは芥川龍之介ダゾ

    諸々の設定もだいたい芥川龍之介作品から来てる


    実はウソ

    花粉症と象は鼻のイメージから来てる

  • 543二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 07:54:54

    ほす

  • 5441◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 15:16:07

    解放されました
    ただいまです

  • 545二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 15:18:04

    >>544

    スレ主おかえり~

  • 546二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 15:30:29

    おかえりスレ主、考察スレは今、空前の〇〇者ブームになってるよ

  • 5471◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:16:46

    題名『鬼気、神槍に挑む』

  • 5481◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:17:15

    風が止まった。
    広がるのは、草のまばらな戦場跡。かつては幾千もの剣がぶつかり合い、血で染まったというこの地に、今はただ、静寂が満ちていた。

    そこに、ひとりの少女が降り立った。
    金髪をなびかせ、紅のマントを背にしたその姿。手には、世界の理を刺し貫くような、異様な輝きを放つ槍――神殺しの槍。

    「ねぇ、あんたが“村正”って呼ばれてたおじさん?」

    草むらの奥、古木の陰に座っていた男が、鼻を鳴らした。右目には包帯、右袖は空しく揺れている。それでもその背筋は、齢四十を越えたとは思えぬほどに、まっすぐだった。

    「そう名乗ってた頃もあったなあ。けどもう、刀は引退したよ」

    そう言って、男――城ヶ崎 回は、腰に差した一本の古びた日本刀を軽く叩いた。
    片目を失い、腕を失い、それでも彼の気配は“剣”そのものだった。

    「やっぱりだ! じゃあ、あたしと勝負してよ! その刀、どれだけすごいのか、確かめたいんだ!」

    天真爛漫なその声に、城ヶ崎は苦笑した。

    「子どもは外で泥団子でも作ってな。命のやり取りなんて、遊びじゃないぜ」

  • 5491◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:17:27

    「ふーん? でもあたし、“神殺しの槍”なんだよ。本気で刺したら、あんたなんて一瞬で——」

    言葉の途中、空気が変わった。

    城ヶ崎が立ち上がった瞬間、その場の重力がねじれたように感じられた。
    片手で刀の柄に触れる。その仕草だけで、空気が鳴った。

    「……なら、一瞬で斬られてくれるってんなら、相手になるぜ、神殺しの嬢ちゃん」

    フェルディアの目が輝いた。

    「よーし、じゃあいっくよーっ!」

    そして、静寂を破るように、少女は大地を蹴った。
    天を貫く神槍が、斜陽を切り裂いて放たれる。

    老いた剣士と、神をも殺す少女。
    戦いの幕は、ここに上がった。

  • 5501◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:18:57

    フェルディアの槍が唸った。
    その穂先は天の摂理をも捩じ伏せる、神殺しの一閃。
    地を蹴った瞬間、風圧が炸裂し、少女の小柄な身体が信じられぬ速度で宙を滑る。

    「とあっ!」

    天真爛漫な掛け声に反して、その槍筋は美しく、そして冷酷だった。
    無数に分裂した穂先が空間を斬り裂き、回を包囲するように放たれる。

    だが。

    「おっと……まだ手合わせの範囲で頼むぜ、嬢ちゃん」

    次の瞬間、全ての穂先が逸れた。

    いや、逸らされたのだ。
    城ヶ崎 回の一歩。たった一歩の踏み出しが、流れそのものを変えた。

    「――“風観ノ構”」

    左腕だけで構えた鞘が、分裂する穂先の軌道を一つずつ封じていた。
    彼の剣術は、ただ速いだけではない。見る。そして読む。

    「やっば! かっこいい!」

    フェルディアは本気で感嘆していた。

  • 5511◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:19:16

    少女の目は爛々と輝き、その心はまるで“推し”に出会ったかのように踊る。

    「今の、完全に反応外だったのに! 何それ、やばすぎでしょ!」

    「いやいや、老骨の張った見得さ。若いのには敵わんよ……とは言わんけどな」

    回が鞘を戻す。まだ抜いていない。だが、それでも“剣”がそこにあった。

    フェルディアはもう一度構える。槍が霊光をまとう。
    今度は真っ向から、槍一本、魂ごとぶつける気配だった。

    「じゃあ――本気でいくね!」

    「こっちも、ほんの少し昔を思い出すか」

    ふたりの間に、風が通り抜けた。

    次の瞬間、激突。

    フェルディアの踏み込みが、地面を抉る。
    その勢い、まさに神話の如く。天翔ける雷霆。

    そして、回が構えたのは――

    「“破月斬”」

    音もなく、鞘から放たれた閃光のような斬撃。
    それは、かつて“村正”と恐れられた男の、最も速き斬り。

  • 5521◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:19:32

    ギリ、と金属が軋む音。
    フェルディアの槍が辛うじて受け止めたその斬撃は、地面を裂き、周囲に飛石を吹き飛ばした。

    だが。

    少女は笑っていた。
    痛みにも、恐怖にも屈せず。

    「ねぇ、やっぱりすごいよ、あんた!」

    回も口の端を吊り上げる。

    「お前もな、嬢ちゃん。まだまだ暴れ足りねぇ顔だ」

    火花のような、初の衝突。
    しかし、それはほんの“肩慣らし”に過ぎなかった。

  • 5531◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:20:53

    「はあぁっ!」

    フェルディアが再び駆けた。小柄な体に不釣り合いなほどの脚力で地を蹴り、神槍が雷光のように煌めいた。
    彼女の穂先は一瞬で六つに分かれ、まるで生きているかのように別々の角度から回へ襲いかかる。

    「今度は正面突破ってわけかい!」

    回は即座に鞘を捻り、体をひねって迎撃に出た。
    抜刀は――しない。まだ、彼は“抜かない”という選択を貫いていた。

    「“鳴風返し”!」

    空気が鳴る。鞘の一撃で、フェルディアの槍が逸れた。
    が、その直後――

    「甘いよ!」

    分裂した穂先の一つが急転、回の背後を刺し貫こうとする。
    そこにあったのは、予測不能の攻撃。フェルディアは槍を「投げ」ていたのだ。分裂と見せかけた陽動、それは本体の槍を弾丸のように投擲するための布石だった。

    「ちいっ……!」

    避けきれなかった。回は咄嗟に身を捻るも、背に焼けるような痛みが走る。
    傷は浅い――が、深刻だった。
    左の肩口が裂け、血がにじむ。
    彼は一瞬だけ、呼吸を止めた。

    「おじさん……大丈夫!?」

    フェルディアの顔から笑みが消える。

  • 5541◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:21:22

    その一撃に、殺意も悪意もなかった。だからこそ、刺さる。

    「……フフ、なに、年寄りの体はね、日々の不調がデフォルトだ」

    「えっ」

    「痛ぇのも、怠いのも、全部“日常”だ。だがな――」

    彼の手が、鞘を構える。

    「“老い”ってのは、今の俺にできる最強の武器でもあるのさ」

    一瞬、空気が変わった。
    フェルディアの身体が、自分の体の“異変”に気づく。

    「え?」

    息が、詰まる。足が、重い。槍が、やけに重たい。

    「これは……」

    「“見切り”だよ」

    回の声が静かに響く。

    「今の一手、よくできてた。だがな、若いってのは“想像できないもの”に弱いんだ」

    彼は語る。
    数十年の経験、数多の剣戟、無数の“敗北”。
    そのすべてが、いまこの瞬間に繋がっている。

  • 5551◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:21:36

    「俺が痛ぇと思う場所、動ける範囲、疲れる間合い……全部“見せてやった”さ」

    フェルディアの目が見開かれる。

    「そう……罠!?」

    「違うさ、“予測”だ。お前の中で俺はもう、“限界間近のジジイ”だろ?」

    にやり、と笑う老剣士。

    「だったら――その油断、斬らせてもらうぜ」

    そして、ついに――抜かれる。

    鞘から一筋の光が走った。

    「“無影閃・斬霞”!」

    視えなかった。

    いや、視ることすら“許されなかった”。

    斬撃は、神槍の間隙を縫って、少女の頬を浅く裂いた。

    「――っ!」

    血が散る。だが、致命傷ではない。

  • 5561◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:21:49

    それが、回の“今の限界”だった。

    「……!」

    フェルディアが、言葉を失っていた。
    その一閃は、彼女の心をも切り裂いていた。

    「……ごめん、おじさん。わたし――油断してた」

    「いいや、それでいい。若いってのは、間違えながら強くなるもんだ」

    老兵の微笑に、少女は胸を熱くする。

    「けどね――ここで、負けるわけにはいかない!」

    「言うと思ったさ!」

    二人の間に、再び火花が散る。

    彼らの戦いは、いまや“勝ち負け”ではない。
    “教え”と“継ぎ”の対話へと変わりつつあった。

  • 5571◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:24:05

    「――もう一度!」

    フェルディアが叫ぶ。
    血の滲む頬に触れることもなく、彼女は再び槍を構える。だが、それは今までのように威圧的でも、幼稚なまでの猪突猛進でもなかった。

    「ねえ、おじさん。さっきの一太刀――すごく、綺麗だった」

    「ほう、あの速さで“綺麗”がわかるとは。やるじゃねぇか、小娘」

    「……でも、それはきっと、相手を斬るだけの剣じゃない。ずっと長く、生きてきた中で、誰かを守った剣、だよね?」

    その声に、回の目が少しだけ細くなった。
    彼は何も言わない。ただ、黙って鞘をゆっくり腰に戻す。

    「だから……わたしも、負けられないよ!」

    フェルディアがその槍を、静かに掲げた。

    「この槍は、“神殺し”なんかじゃない。ほんとは――“守るため”の槍なんだ!」

    激しく、槍が回転する。
    まるで旋風。空気が裂け、砂塵が舞う。

    「“神槍・千裂きの陣”!」

    空間を縫うように、無数に分裂した神槍の穂先が一斉に回へ襲いかかる。その軌道はすでに“槍術”の域を超え、“舞い”に近かった。

    「さっきまでは“攻め”しかねぇ子供だったが……こいつは、“守る者”の剣戟か!」

    回が口元を吊り上げる。

  • 5581◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:24:15

    左腕はすでに血まみれ。右足もわずかに震えている。だが――

    「まだまだぁっ!」

    彼の足が地を叩き、疾走。
    音を置き去りにする居合――ではなく、“歩法”。
    神槍の間を縫い、躱し、紙一重で避けるたびに、その目がより鋭くなる。

    「まだ隙がある! まだ芯がねえ!」

    老剣士の声が響く。

    「槍だけ強くなっても、お前の“覚悟”が遅れてる! それじゃ、俺の剣は止まらねえぞ!」

    次の瞬間、抜く。

    「“霞閃・落月”!」

    フェルディアの腹元に、浅く一線が走った。

    「く……っ!」

    よろめく。槍が、少しだけ弾かれる。

    「まだ、負けたく……ないのに……!」

    小さな拳が震える。涙ではない。怒りでもない。

  • 5591◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:24:27

    それは、“強くなれない自分”への悔しさだった。

    だが――

    「そんだけ迷えるなら、十分だよ」

    回の声が、不意に穏やかになる。

    「若者が一発で全部できるわけがねぇ。痛ぇ思いして、何度も折れて――それでも、前に出て来る奴だけが“次”を作れる」

    その言葉に、フェルディアの顔がぐしゃりと歪む。

    「……うわあああああああん!!」

    突如、神槍の分裂が解除され、穂先がゆるゆると地に落ちた。

    「おじさん……ごめん、わたし、まだ、まだ全然子供だよ……!」

    「それでいい。英雄でも、女の子でも、そんなの関係ねえよ」

    彼は膝をつき、目の高さを合わせた。

  • 5601◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:24:42

    「お前は、“誰かを守る”ために戦おうとしてる。なら、それだけで――“もう充分に立派”だ」

    フェルディアは泣きじゃくりながら、懐に飛び込んだ。

    「うええええん……っ、なんで負けちゃったのに、慰めるのぉ……!」

    「だって負けてねえもん。お前、ちゃんと勝ったじゃねぇか」

    「どこがぁ……!」

    「俺の心に、ちゃんと届いたんだよ」

    その言葉に、フェルディアは更に泣いた。

    老兵の胸に顔を埋めたまま、彼女はようやく、初めて“勝ち”の意味を知ったのだった。

  • 5611◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:27:18

    「それにしても、よく動いたな、膝が笑ってらぁ……」

    フェルディアの頭をぽんぽんと撫でながら、城ヶ崎 回はゆっくり腰を下ろした。先程の戦いの余韻が、まだ空気に残っている。夕暮れの風が傷にしみるが、彼の表情はどこか満ち足りていた。

    「おじさん……もしかしてさ、“昔はすごかった”タイプ?」

    「おう、そりゃもう。昔の俺は“村正”って呼ばれてたもんよ」

    「むらまさ? それって、なんかすごく悪そうな名前じゃん……!」

    フェルディアが目を丸くする。だが回は、にやりと笑って首を振った。

    「たしかに悪名高ぇ刀の名前だがな……そう呼ばれたのは、俺が“斬ってはいけねぇモノ”を何度も斬っちまったからよ」

    「斬っちゃいけないモノ……?」

    「仲間の誇りとか、敵の後悔とか、どっちにもあった“譲れねぇ何か”を、刀の力で無理やり断ち切っちまったんだ。若かったからな、あの頃は」

    静かに語る声に、フェルディアは初めて“戦士”としての哀しみを知った。

    「……今でも後悔してるの?」

    「いや、後悔はしてねぇよ。しちまったら、そいつに失礼だからな」

    回はひと呼吸置き、空を仰いだ。紅に染まる雲が、燃えるように流れていく。

    「けどよ。今は、あの頃よりちょっとだけマシな剣を振れてる気がすんだよ」

    「どうして?」

  • 5621◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:27:29

    「答えは簡単さ。今日みてぇな――“ガキのくせに一丁前な顔して槍を振るう小娘”に、出会えたからよ」

    その言葉に、フェルディアの顔がまた赤くなった。

    「う、うるさいなあ! もう、褒めすぎ!」

    「へっへ、なんだよ、さっきまで泣いてたくせに」

    「泣いてないもん!」

    「泣いてた泣いてた。ぐずぐずだったぞ?」

    「やーめーてーよーっ!」

    わたわたと回に向かって拳を振るうフェルディアを、回は軽くいなす。

    「……なあ、おじさん。今の私に、勝てそう?」

    ふと真顔で問う少女の瞳に、回は少しだけ目を細める。

    「勝ち負けじゃねぇさ」

    「えっ?」

  • 5631◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:27:39

    「戦ってみて思ったろ? “勝った”とか“負けた”とかより――“誰かのために強くなりたい”って思えるかどうかが、大事なんだよ」

    「……うん」

    「それができるお前は、きっと立派な“英雄”になる。おじさんが保証する」

    その言葉に、フェルディアはゆっくりと、心からの笑みを浮かべた。

    「じゃあ……また稽古、つけてくれる?」

    「おう、喜んで。だがな――」

    と、回はにやりと笑って、指を一本立てた。

    「その前に飯でも食おうぜ。爺は腹が減っては戦もできん」

    「うん! おじさんのご飯、食べてみたい!」

    「へっへっへ、じゃあ次は“胃袋”で勝負だな、フェルディア」

    二人の笑い声が、夕焼け空へと吸い込まれていった。

  • 5641◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 18:28:50

    以上
    なんか一刀斎とまざった?

  • 565二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 18:32:05

    ワタシ コウイウノ スキ

  • 5661◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:23:20

    題名『「流れを断つは、穏やかなる強さ』

  • 567二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 19:23:41

    このレスは削除されています

  • 5681◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:24:21

    「……風が、臭うな」

    湿原にそびえる一本杉の下で、汕河清一は鼻先をひくつかせ、静かに言った。
    鼻腔をかすめるのは、泥と腐葉土の匂いではない。もっと異様で、もっと濃く、鉄を溶かしたような甘い毒気。それは生命が焼けるような異常の兆しだった。

    長柄の櫂を肩に、彼は足元の水流を見やる。微かに泡立つ清流が、いつもより澱みがちに感じられた。山奥に源流を持つこの川が、ここまでよどむ理由など、本来あるはずがない。だが清一は――気づいていた。

    「川は、語る。……そして、川は怒らん。けどな、黙って死ぬこともない」

    そのときだった。湿地の向こう、揺れる芦の奥から、重低音のようなぬめりと粘着音が鳴り響いた。

    「来たか……」

    ――どろり、と。
    黒い、波のような何かが地面を覆いながら這い出してくる。ぬめる体表に咲くように浮かぶ、赤、紫、黄緑の光点――まるで怒り、混乱、歓喜、恐怖が色に変わって躍るように、スライムたちは蠢く。

    だが、それは一体や二体ではなかった。
    汕河清一の目に映ったのは、まるで“湿地そのものがうねっている”ような――大地の波。
    そう、群れ。いや、災厄だった。

    「……バイオスライム、II号群……!」

    かつて人類の手で設計され、癒しと玩具として開発された存在。だがそれは捨てられ、自然へと還り、野生化した。仲間を食らい、異物を取り込み、毒を生み、増殖する。どこまでも、どこまでも。

  • 5691◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:24:32

    「森が喰われてる……いや、“増殖しながら森を喰ってる”ってか」

    清一の声は低いが、怯えはない。背に構えた櫂が、水面に反応して静かに鳴った。
    彼はかつて、氾濫寸前の暴れ川を鎮めた男。どんなに濁流が荒れても、流れの芯を読む力があれば、導くことができる。

    「自然は暴れるが、理がある。……だがお前らは、理すら喰った」

    森を這うスライムの波が、もう視界のすぐそこまで来ていた。しかも、炎のように燃える個体さえ混じっている。赤い感情。怒りか、本能か。色はまるで――感情の言語だ。

    「それでも俺は、川の男だ。流れを読む者だ」

    彼は湿地に足を踏み入れ、静かに櫂を立てる。
    その目に宿るのは、絶望でも挑戦でもない。ただの自然への理解と、意志の光。

    「お前らの流れ……ちょっと、曲げさせてもらうぜ?」

    そして、バイオスライム群の先端が爆ぜ、粘液が弾けた。戦いの幕が、静かに――“流れ始めた”。

  • 5701◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:25:18

    「流れがわからねぇと、人は溺れる。
     だが流れさえ読めりゃ、逆巻く急流すら、渡れる」

    汕河清一はそう言いながら、腰を落とした。彼の櫂――ただの武器ではない。川を渡り、水を裂き、時に人命を救ってきた、命を託されるための相棒だ。

    ぬめる粘液、くぐもった呻き、甘ったるい毒気。バイオスライム群が湿地の小川を跨ぎ、ついに清一を包囲しようとしていた。数は……ざっと百体を超えるか。次々と分裂し、繁殖し、地形すら飲み込む勢いだ。

    だが、清一は逃げない。
    いや、“導く”。

    「――万代流し、起こすぞ」

    刹那。
    大地を打つかのような一閃。
    清一の櫂が、湿地の川面を斜めに叩いた瞬間、そこから新たな流れが生まれる。

    「ここからは、お前らも“川”になるんだよ」

    その言葉通り、櫂が叩いた水脈を軸にして、湿地の粘土層が裂け、低地に水が走る。湿地を浸す水の力を借りて、清一は周囲のバイオスライムを“無理なく、ゆるやかに”押し流しはじめた。

    ごぼ、ごぼっ……

    スライムたちは自らの粘性で粘土に貼り付き、水流に引かれるように“流されていく”。

    「お前らの群れには中心がねぇ……意思もなきゃ、芯もねぇ……ならば」

  • 5711◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:25:47

    櫂の先で、流れを刻む。打つたびに水は走り、スライムはまとまりを失って拡散する。無限に増える群れも、統制を欠けばただの濁流。清一はそれを知っていた。

    「導いてやるさ。お前らを、川の果てまでな」

    一体、また一体。流れに巻かれたスライムたちは、意思なき粘液となって下流へと消えていく。しかし、それでもなお、奥から溢れるように現れる新手――その数は尽きる気配を見せなかった。

    「……さて」

    その時、清一は足元の水が“逆流”し始めたのに気づく。

    「下流に……デカいのが来るな?」

    森の奥、音すら吸い込むような沈黙が走り、ぬるりと、粘液の大海のような巨体が現れた。

    それは、おそらく“親玉”。あるいは――
    群れの“核”。

    清一の顔に、笑みが浮かんだ。
    疲れ、ではない。戦意。あるいは、血がたぎる男の本能だ。

    「川の流れが、ぶつかる時ってのはな……祭りなんだよ」

    そして、第三章――「親玉、浮上」へと続く。

  • 5721◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:26:14

    泥が盛り上がる。
    地鳴りとともに、腐った沼のような悪臭が辺りを包んだ。小川の流れが逆巻き、清一の足元に波がぶつかる。

    「……やっぱ、いたな」

    その影は、森の奥から姿を現した。バイオスライムの“集合個体”――二階建ての家ほどの大きさがある。
    色は濁った紫。怒りとも恐怖ともつかない感情が渦を巻いており、まるで液体の感情の塊のようだった。

    ぐずるようなうなり声と共に、親玉は感情の色を赤黒く染める。怒り。仲間を流された報復か、あるいは捕食本能か。

    「“感情”あるのかよ、お前ら……。ちっと面白ぇじゃねぇか」

    清一は一歩、前へ。
    腰を沈め、櫂を逆手に構える。打つためではない。“斬る”ための構えだった。

    「この流れは、もう止められねぇ。お前が抗おうが、怒ろうが――川は、前にしか進まねぇんだ」

    巨大スライムが突進してくる。
    ずる、ずる、と体を引きずりながら――いや、溶かしながら。木々を巻き込み、地面を飲み込み、真っ直ぐ清一をめがけて。

    清一は、踏み出した。

    「万代流し――【逆撫】!」

    櫂の一閃が、地面を裂く。
    だが、それは攻撃ではない。“導き”だ。

    水脈が呼応する。地中に眠っていた清水が、まるで血流のように奔る。清一の技は、大地の毛細血管さえ操ってみせた。

  • 5731◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:26:31

    親玉の足元が崩れ、支えを失った巨体が傾ぐ。

    「“流されて”いけ」

    その瞬間、櫂が振り抜かれた。
    今度こそ攻撃。だが、それは力任せではない――水の流れに身を預け、重心を合わせ、自然の動きと“重ねた”一撃だった。

    ずぶり――
    巨体の一部が、音もなく切れ落ちた。

    だが、まだ終わらない。
    親玉は自己再生を始める。しかも、切り離された肉片が“子”として分裂し始めた。

    「チッ……タフな奴だな」

    汗が額を伝う。
    水脈はまだ残っているが、清一の体力はじわじわと削られていた。

    それでも――
    彼の目には、恐れも、諦めもなかった。

    「川を塞ぎて流れを止めることあらず。ならば……」

    彼は、最後の“流れ”を起こす。

  • 5741◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:27:00

    地は震え、森は嘶き、バイオスライムの親玉は怒りの色に染まりきっていた。
    紫黒から紅黒へ、ぬらぬらと波打つその肉体は、怒涛の勢いで再構成を進めていく。
    斬っても、砕いても、増えていく。

    「なるほど、まるで――川を塞いだ時の氾濫だな」

    清一は、にやりと笑った。
    まるで戦場に立っていることを楽しんでいるかのような、そんな笑みだった。

    彼はひとつ深呼吸をしてから、足元の櫂を静かに握り直す。
    ――水は高きから低きへと流れ、最も緩やかなる道を選ぶ。
    だがそれは、ただ弱いからではない。

    「“力”ってのはな……出し切るだけが強さじゃねぇんだ」

    清一の気配が変わった。
    全身の力が沈黙し、逆にその場の“流れ”が一変する。

    バイオスライムの群体がうごめく。殺気に反応したのか、全身を膨張させるようにして迎え撃つ構えを取る。

    「流れろ、水よ――《万代流し・流し斬り》」

    櫂が舞った。
    柔らかく、優しく、だが絶対に避けられない軌道で。
    それはまるで、激流の中を滑る一枚の葉のように。相手の攻撃を受け流し、なぞるように切り裂く。

    スライムの一部が崩れ、また崩れ、連鎖するように群れ全体に“流れ”が走った。

  • 5751◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:27:11

    切るのではない。導くのだ。
    川の流れに倣うように、親玉の質量を導き、分断し、形を失わせていく。

    「お前が何を溜め込み、どれだけでかくなろうがな……この流れを止められねぇ限り、終わりは見えてる」

    怒りの咆哮と共に、親玉が最後の突進を仕掛ける。

    清一はただ、立っていた。
    構えは低く、だがその視線は一点に定まり、決して逸れない。

    「流されちまえ、バケモンが――」

    一閃。

    ドォン、と地鳴りのような音が響く。
    次の瞬間、巨大だった親玉のスライムの身体が、“溢れ出す”ように地面へと崩れ落ちた。まるで川が氾濫し、そして静まっていくように。

    濁った色が徐々に薄れていく。
    残されたのは、まだぷくぷくと泡を立てる小さなスライムたちだけだった。

    清一は櫂を肩に担ぎ、ゆっくりと振り返る。

    「ふぅ……さて、ここからが後片付けだな」

    まだ終わらない。
    だが、流れは変わった。

  • 5761◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:27:37

    流れは収まり、森は再び静けさを取り戻しつつあった。
    バイオスライムの親玉は潰え、残されたのは、崩れた粘液の山と、そこに混じる、色を失ったスライムたちの亡骸。

    「……なんとか、形になったか」

    汕河清一は深く息をついた。
    肩にかけた櫂がずしりと重く感じられる。体力の限界が、じわじわと足を取っていた。だが彼の表情に疲労の色は薄い。むしろその目には、使命を成した男の覚悟と誇りが浮かんでいた。

    「おいお前ら、聞こえてんだろ。もう、これ以上流されんなよ」

    彼は残されたスライムの群れに声をかけた。
    まだ生きている小さな個体もいる。怒りも、恐怖も、もはや感じられない。ただ静かに、川面のように揺れているだけだ。

    「本当はな、オレだってあんたらを全部焼き払う方が手っ取り早いって、分かっちゃいるんだ」

    だが――と清一は目を伏せる。

    「それじゃあ“流れ”になんねぇんだよ。止めたら、淀んじまう。命ってのは……そういうもんだろ」

    それは“清流”の理。

  • 5771◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:27:47

    清一が信じ、鍛え上げてきた流儀だった。

    彼は腰から取り出した携帯無線機を手に取ると、管制本部へ連絡を入れる。

    「こちら汕河、コード041。脅威対象《BS-II》の親玉を鎮圧。現場は安全圏へ移行。再構築班、浄化班の派遣を要請する」

    『了解、川守り。後方より精鋭班を向かわせる』

    通信が切れる。
    その音に混じって、小さな水音がした。

    ふと足元を見ると、灰色に沈んでいたスライムのひとつが、青く澄んだ色へと変化していた。感情で色が変わるそれが、恐怖でも怒りでもない“安堵”を示しているように見えた。

    「……そうか。流れを戻すってのは、こういうことかもしれねぇな」

    静かに微笑むと、清一は青くなった小さなスライムを、掌でそっとすくい上げた。

    「お前も、どっかで新しい流れを見つけろよ」

    まるで子供に話しかけるように、優しく。

    そして彼は、壊れた森を背に、一歩ずつ歩き出した。

    川は止まらない。
    流れは続く。
    それが彼の戦いの証であり、誓いなのだ。

  • 5781◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:28:27

    数日後。
    焦土となった森には、仮設の除染拠点が設置されていた。
    消毒剤の匂いと、忙しく行き交う人々の声。
    だがその中心には、一本の川が――かつての清流が、確かに息を吹き返していた。

    汕河清一は川辺に膝をつき、水面を覗き込む。
    小さな魚の群れが、いつものように泳いでいる。
    ほんの僅かにでも、命の営みが戻っていることが、何よりの報酬だった。

    「……あのスライムも、どっかでこうして流れてんのかな」

    彼の手元には、かつての灰色の粘体が入っていた小さな試料ケースがある。
    中は空っぽ。あれから姿を見せていない。
    もしかしたら、川のどこかで、新しい流れを見つけているのかもしれない。

    「川ってのはよ、誰にも止められねえもんさ。だから……オレたちの役目は、せめてそいつを汚さないことだ」

    そう言って清一は立ち上がる。

    すると背後から、若い調査員の声が響いた。

    「汕河さん、次の流域の調査、お願いします!」

    「はいよっと」

    軽く手を挙げて返事しながら、彼は櫂を背に担ぐ。
    その姿は、どこか軽やかで、しかし一本芯の通ったものだった。

  • 5791◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:28:46

    川のように。
    穏やかで、時に激しく。
    けれど決して止まることなく、前へと流れ続ける。

    「さ、次の流れを見に行こうか」

    そう呟くと、汕河清一は歩き出した。
    流れと共に。命と共に。
    彼の戦いは、これからもずっと続いていくのだ。

  • 5801◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 19:28:57

    以上

  • 581二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 19:31:10

    17号、一話一話のボリュームがすげぇな

  • 582二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 19:31:58

    一時期は短すぎといわれたAIくんも本当に良くなったな

  • 5831◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 22:35:19

    規約にひっかかりまくりで進まねぇ

  • 584二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 22:36:28

    おおなんとも……

  • 585二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 22:45:46

    暗殺者vsカリナそんなあかんのか……

  • 586二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 22:46:28

    このレスは削除されています

  • 5871◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 22:59:28

    がんばりました

    題名『影喰う獣、牙を嗤う声』

  • 5881◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:00:29

    ――ヘルズ・プリズン、第七監視棟、独房回廊。

    沈黙。異様なまでの静けさが、鉄と石でできた冷たい廊下を支配していた。
    獣人の嗅覚と聴覚を持つカリナ・ヴィルフォードの耳には、いつもの囚人たちの呻き声すら届かない。

    「……妙だね、これは」

    脚を組んで監視用のモニターを見つめる彼女の口元には、不敵な笑みが浮かんでいた。
    その瞳は、まるで獲物を見つけた捕食者のよう。

    「僕の可愛い囚人たちが……まるで空気のように沈黙してる。これは、どこかに"死"の気配がある」

    そして次の瞬間。
    それは――現れた。

    「こんばんは、刑務官さん。からあげ弁当、余ってたりしない?」

    囁きにも似た低音が、耳元で囁かれる。
    背筋が凍るような気配。しかし、振り返っても何もいない。
    カリナの瞳が細められる。

    「……君が、噂の“暗殺者”?」

    「どうかな? 名乗るのはあんまり好きじゃないけど……ま、いちおう仕事中ってことで」

    声の主は気配すら掴めない。

  • 5891◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:00:43

    まるで音も気配も、存在すら空間から切り取られたような“死角の住人”。

    カリナの狂気的な微笑みがさらに深まる。

    「いいねぇ……見えない恐怖は、僕の好物なんだ。けど、甘く見ない方がいいよ。僕の耳はね、嘘を聞き逃さないんだ」

    「耳を頼りにするってことは、死角は背中……」

    空気が、裂けた。
    振り向きざまに放たれた魔力の斬撃が、廊下の壁を切り裂き火花を散らす――しかし。

    「惜しい。もうちょっと左だったら、私の袖くらいは裂けてたかもね」

    暗殺者の声が、逆方向から聞こえた。

    「背後は、後ろだけじゃないよ。右斜め上からでも、胸の内側からでも……死角なんて、いくらでもあるから」

    背筋が粟立つような不気味な笑みと共に、
    “見えない殺意”が、カリナの背後で――確かに笑っていた。

  • 5901◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:01:06

    魔界の空気は重い。湿った空気に魔力が混じり、肌を刺すような冷たさを帯びていた。

    カリナ・ヴィルフォードは静かに爪を伸ばし、警戒を強める。
    視界のどこにも姿はない。だが、確かにそこに“いる”。

    「気配も、足音もない……声しかないのに、背後から風が吹く。おかしいな……」

    「褒め言葉として受け取っておくよ。僕、正面から戦うの苦手なんだ」

    唐突に、耳元に響いた声。
    反射的に魔力を込めた斬撃を放つも、刃は空を裂くだけだった。

    「すぅっと後ろから来る癖に、傷は浅いのね。手加減でもしてくれてる?」

    「……そう見えるなら、君の感覚は鋭いけどまだ甘い」

    風のように動く影。
    それは“死角”そのもの。
    まるで空間の裏側を移動しているかのような気配。

    「ねぇ、君……もしかして“攻撃が見えない”だけじゃない?」

    「正解」

    短く、冷ややかに返す声。
    その直後、背後から鋭い圧がカリナの肩口をかすめた。

  • 5911◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:01:21

    魔力の斬撃で即応するが、攻撃主はもう別の方角にいた。

    (これが、暗殺……? ただ隠れるんじゃない。“存在しない角度”から来る……)

    その認識が、カリナの中に小さな緊張を走らせる。

    「怖いわけじゃない。ただ……どこにいるか、わからないってだけで」

    「“分からない”のが怖いっていうんだよ、普通は」

    再び後方からかすれる声。

    けれどカリナの瞳は静かに笑っていた。

    「ふふ……わからない敵、いいね。長くやってると、そういうのに飢えてくる」

    「そっちの感覚も、なかなか狂ってるねぇ。まぁ――」

    風が跳ね、空間の裏をすべるように。
    次の瞬間、何かが“刃”のような気配を孕んで迫る。

    「次は、もう少し強めにいくよ?」

    わずかな予兆だけが、カリナの肌を走った。

    その攻防の中、互いに“理解”し始めていた。
    ただの力比べではない。
    一手、一瞬、一歩の遅れが決定的になる。そんな相手だと。

    そして、まだ互いに“本気”ではないことも。

  • 5921◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:02:01

    静寂が支配する。
    魔界監獄の暗がりに、カリナの足音がひとつ、ふたつと反響する。だが彼女の背には、今にも牙を剥かんとする気配がまとわりついていた。

    「まるで影に取り憑かれてるみたいだな、僕のこと――気付いてる?」

    「うん、ちゃんと感じてるよ。殺意も、その隠してる鼓動もね」

    声と気配は背後から、けれどそこに姿はない。

    カリナは囁くように笑みを浮かべた。
    その右手に宿った紅の魔力が、鋭利な弧を描き宙を切り裂く。

    「でも、惜しいな。もう“背後”にはいないんだよ?」

    その瞬間、真横から“何か”が迫った。
    反射的に跳んだ。着地と同時、足元を無音の刃が通過する。

    「動きが鋭い。素晴らしいよ。でも“死角”は無限にある」

    ――そう、それが暗殺者の能力。
    空間のどこに立っていても、“対象の死角”である限り、そこに攻撃が届く。
    前、後ろ、上下、斜め。思考の裏をすり抜け、意識の外に入り込む。

    「でもね。僕、弱点もあるんだ。真正面から来られると、ほんと困る」

    「そっか。じゃあ、正面だけで戦ってやろうか」

    「できるなら、ね」

    再び、声が消える。

  • 5931◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:02:15

    攻撃は来ない――かと思えば、次の瞬間、左の脇腹を鋭く抉る衝撃が走った。

    「っ……!」

    浅い傷。しかし確実に“刺されて”いる。

    「ほらね、どこを守っても、死角は残るんだ」

    「でも……“痛い”のは、そっちも同じでしょ?」

    カリナの声が低く沈む。
    切られた瞬間、反射的に放った爪の一閃が、何かをかすめた感触があった。

    「……あぁ、ほんの少し。でも、確かに当たった」

    小さな呻きと、足音ひとつ。
    ――そう、“音”を立てた。初めて、暗殺者が“姿”を漏らしたのだ。

    「なるほど。追い詰める価値、あるな」

    目に見えぬ影に向かって、カリナの瞳が狂気に染まっていく。
    心の奥底で、うっすらと――楽しさすら感じていた。

    「これが、命を賭けた“かくれんぼ”ってやつなんだね」

    死角を支配する暗殺者と、狂気に生きる獣の女。
    両者の距離が、確実に縮まっていく。

    戦いは、次の段階へ。

  • 5941◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:03:00

    闇を裂く笑い声が響く。
    だがそれは、狂気ではなく愉悦。
    戦うことに悦びを感じたのは、久しぶりだった。

    「逃げるの? それとも……“見つけて”ほしいのかな?」

    カリナ・ヴィルフォードの眼は、暗闇に煌めく。
    爪に宿る魔力は妖しく脈動し、空間そのものを軋ませていた。

    対する暗殺者――その気配は、いよいよ希薄になる。
    だが、存在しないわけではない。
    それは“死角”という形で、確実に彼女を取り囲んでいた。

    「目を閉じれば、いくらかマシだって思ってるでしょ? でもね、僕の刃は“意識”の裏から来るんだよ」

    音もなく背後から――否、脳裏の盲点から、鋭利な“殺意”が突き刺さる。

    だが、その直前――カリナの笑みが深まった。

    「甘いな。僕の五感は“心”で聞くんだ」

    鋭く振り返る動作と同時、爪が空間を薙ぐ。

    ギン、と金属音。
    何かが逸れ、何かが傷ついた。

    「やるね……!」

    初めて、暗殺者の声に“驚き”が混じった。

  • 5951◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:03:12

    それは彼女にとって屈辱ではなく、純粋な喜び。

    「ちゃんとした相手に出会えるの、数百年ぶりかも」

    「そっちも、同じ気持ちだよ。僕の暗殺が“通じない”相手なんて、片手で数えられるくらいだ」

    言葉と同時に、再び空気が殺気に染まる。
    影が跳ね、虚空が切れる。

    だがカリナは既に受け身を取っていた。

    「でも――甘いよ?」

    右耳の横、紙一重を切り裂いて抜けた気配。
    そこに――左手がすっと伸びる。

    「ふっ……!」

    ぱし、と風を裂いて何かを“掴む”。
    一瞬の沈黙。そして――

  • 5961◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:03:34

    「……掴んだ」

    掴まれたのは、手首。
    そこには、黒装束の指があった。掴まれてしまったことに驚き、そして――舌打ち。

    「化け物め……!」

    「はは、よく言われるよ。でも、僕のは愛嬌さ♪」

    ニタリ、とカリナが笑い、爪に力を込めた。

    「ここからは、“痛み”で会話しようか」

    その言葉の瞬間、暗殺者の姿が霧のように揺らぎ、消えた。

    「……逃げた? いや、死角の中に“戻った”だけか」

    カリナの爪は空を切った。だが、確かな手応えはあった。

    「ふふ、こうでなきゃね」

    彼女の狂気はますます輝きを増す。

    「次は、君の“本気”を見せてよ。死角からじゃなく、“真っ向から”さ」

    沈黙が返る。けれどその沈黙こそが、肯定の証。

  • 5971◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:04:17

    不意打ちにすべてを委ねる存在――それが“暗殺者”の本質だった。
    しかし、目の前の敵はそれを許さない。
    正面からしか通じぬ戦いに、あえて踏み込む。そんな戦場だった。

    「……“逃げずに来い”なんてさ、随分と挑発してくれるじゃない」

    暗殺者は静かに姿を現した。黒衣のフードを脱ぎ捨て、白い素肌と少年のような容貌をさらけ出す。
    低く響くその声は、聞く者に錯覚を与えるが――彼女は紛れもなく“女性”であった。

    カリナの口元がゆっくりと弧を描く。

    「やっぱりそうだったんだ。ふふ……好みだよ、そういうタイプ」

    「そっちの意味じゃない。――それに、殺る気は本物だよ?」

    視線が交錯した瞬間、空気が鋭利に張り詰めた。

    魔力を纏った爪と、漆黒の短刃。
    互いに一歩、踏み出しただけで、空間が一変する。

    瞬間――激突。

    ガッ!!

    一撃、二撃、交差する刃と爪が火花を散らす。
    暗殺者はほぼ無音で動き、正面からの攻防であってもその挙動はまるで影そのもの。
    カリナもまた、受け流しながら楽しげに反撃を仕掛ける。

    「君、こんなに戦えるのに、なんで隠れてばかりいたの?」

  • 5981◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:04:29

    「“正面”なんてね、暗殺者にとっては手段じゃなくて……最後の選択肢なんだよ」

    「それを今、選んでるってこと?」

    「そう。アンタにだけは、逃げずに斬りたいと思ったんだ」

    カリナの目に、わずかに驚きがよぎった。
    だがその瞳はすぐに歓喜に染まる。

    「いいね。そういうの、好きだよ」

    次の瞬間、攻撃が変わった。
    今までの緩急ある斬撃から一転、重く速い爪の連打。

    暗殺者の身体が紙一重で避け、反撃の一閃を入れる。
    カリナの肩口をかすめた黒刃が、ほんのわずかに血を引いた。

    「……ふふ。やるじゃない」

    「そっちこそ、冗談みたいな動きして」

    ふたりの間に、初めて“対等”な笑みが交わされる。

  • 5991◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:04:43

    「ねぇ、君、名前は?」

    「影に名なんていらない」

    「そっか。でも、今の一撃――本当に綺麗だったよ」

    そう言い残して、カリナは一歩引く。
    満身創痍ではないが、少なくとも手応えは感じていた。

    「今日はこのくらいにしておこうかな。あんまり楽しすぎると、明日が退屈になる」

    「……また逃げるのか?」

    「逃げるんじゃないさ。余韻を楽しむの」

    そう言って、カリナは一度だけ軽く手を振った。

    「また会おう、“影さん”。次はもっと正面から、ね?」

    暗殺者は何も答えず、すっとその姿を空気の中へと消す。
    だが、ほんの一瞬だけ――口元が笑っていたように見えた。

  • 6001◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:05:13

    夜風が吹き抜ける廃墟の屋上に、静かに影が立っていた。
    それは“彼女”――暗殺者だった。すでに戦いは終わり、音も熱も消えた場所。だが、彼女の中にはまだ、余熱が残っていた。

    「……名なんて、いらないと思ってたんだけどな」

    ぽつりとこぼす声は、誰に向けたものでもなく――それでいて、確かに“誰か”を思っていた。

    カリナ・ヴィルフォード。狂気と冷静、快楽と執着が共存する獣のような獣人。
    だがその爪には、ただ痛みを与えるだけではない――言葉にできぬ“重み”があった。

    「正面から戦いたい、なんてさ。あたしもだいぶ、変わったもんだよ」

    影に徹し、背後からの一撃だけを誇りとしてきた。
    だが今は、ふと、顔を見て斬りたいと思ってしまった。

    あの時の交差。あの目。あの声。

    「……カリナ・ヴィルフォード」

    その名を口にした時、心が少しだけ震えた。
    影は孤独だ。
    誰にも気づかれず、誰にも知られず、誰にも必要とされず。
    それが当然だった――そう、思っていた。

    だが、今日の戦いは違った。

    「“次”があるなんて、思ったことなかったんだけどな」

    屋上の端に腰を下ろす。
    夜の帳が都市を包み、どこか遠くで犬の鳴き声が聞こえた。

  • 6011◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:05:26

    ――また会おう、“影さん”。
    ――次はもっと正面から、ね?

    彼女は返事をしなかった。
    けれど、確かに「また会う」と思ってしまった。
    正体を知られ、すべてを暴かれ、それでもなお残った“興味”と“感情”。

    それは暗殺者にとって、決して小さくない変化だった。

    「……あたしにも、“顔”が必要になるのかね」

    誰に問うわけでもなく、けれどどこか――期待にも似た予感を携えて、
    “彼女”はもう一度、影の中へと身を溶かしていった。

    夜風だけが、その後を知っている。

  • 6021◆ZEeB1LlpgE25/07/10(木) 23:05:45

    以上

  • 603二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 23:06:25

    何も最後まで戦う必要無いもんな!!良い終わりだ

  • 604二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 23:18:56

    エモい

  • 605二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 23:33:49

    暗殺者ちゃんこれだいぶ脳焼かれたな?

  • 606二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 07:22:14

    いいライバルになりそう

  • 607二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 10:41:15

    このレスは削除されています

  • 608二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 10:43:24

    百合最高!百合最高!さあ、あなたも百合最高と叫びなさい

  • 6091◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:11:10

    題名『煩悩金満』

  • 6101◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:12:39

    「ほう……ここが“千怪町”ですかいな」

     鼻川虎之介は長すぎる鼻を手ぬぐいでくるくる巻きながら、霊の濃度が異様に高いこの町を眺めた。商店街のシャッターはほとんど閉じ、空気は重く、まるで怨霊がひしめいているようだ。実際、ひしめいている。

     そんな中、路地裏から男が派手な笑い声とともに飛び出してきた。金のネックレスにスーツは紫、指にはダイヤ、足元はなぜか草履。手にはボタン付きの謎マシン。

    「やぁやぁ! 貧相な出立ちのお坊ちゃん! まさかあんた、この霊だらけの町を“浄化”しに来たってんじゃないでしょうねェ?」

    「いかにも、むっちゃ鼻の長い坊主でございます……して、あんさんは?」

    「オレか? 恵比寿川金満(えびすがわかねみつ)! 銭の力で死神も黙らすギャンブルマスターよ! この町の霊? 全部オレが金で囲ってんの!」

     虎之介は、思わず鼻をひと撫でして目を細める。

    「金で霊を囲う……ほな、あんさんがこの異常を招いた元凶でっか?」

    「元凶? おいおい、違うなぁ。オレはただ、ここに溜まった霊に『いくらなら浮かばれますか~?』って聞いて、全部オークション形式で保有しただけだぜ?」

  • 6111◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:12:52

    「煩悩まみれやないかい。成仏の道、金で買うもんやあらへん」

    「フッ……じゃああんたはどうやって浮かばせるってんだ、鼻で?」

    「せや。鼻や。御仏の霊験あらたかな……ゴッド・ノーズ」

     そう言うと、虎之介の鼻がばさりとほどけ、まるで鞭のようにうねりながら宙に浮かぶ。

    「――除霊開始や。あんたにも、“我孫斬(がびざん)”かます準備はできてるで?」

    「いいぜ……ならオレも、次の一撃にベットする! “鼻が左に振れる”! かけ金は1億円! 当たれば火力3倍だッ!」

     金の札束が空に舞う中、坊主と成金が真正面から睨み合った。

    空気が唸り、金が鳴り、鼻が揺れる。

    異界の町で、奇妙な“除霊ギャンブル”が幕を開けた――。

  • 6121◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:15:18

    「左に……来いっ……!!」

     金満が噛みしめるように叫ぶと同時に、虎之介の鼻が――

    「右やで」

     するりと右にしなった。金満の賭けは外れた。

    「ッッッッくぁァァァーーッ!?!?」

     金満はその場で地団駄を踏み、額から高級ワインのように札束が噴き出す。
     文字通り、血の代わりに“金”が飛び散った。

    「ハズレたら金が出るんかいな。めちゃくちゃやな……」

     虎之介の鼻が、ぬらりと空を舞う。風を切り、鼻先から放たれるのは斬撃ではなく――仏性の光。

    「南無阿弥陀仏……《我孫斬》!」

     鼻が一閃。空間が切り裂かれ、斬られた金満のスーツが音もなく焼け落ちた。
     そしてその周囲、金に束縛されていた霊たちが震え、ひとり、またひとりと涙を流しながら成仏していく。

  • 6131◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:15:44

     ――だが。

    「まだまだァァッ!!」

     金満が懐から無数の金貨をばら撒くと、それが地面に落ちる前に光を放ち、霊の形をした金の獣へと変貌する。

    「見ろ坊主! これがオレの《財力召喚(マネーメイク)》だァ! 金で成仏なんかさせねェ! 金はすべてを救う! 金はすべてを狂わせるッ!」

     まるで亡者のごとき黄金の霊獣たちが、虎之介を包囲した。

    「……ほな、出すしかあらへんな」

     虎之介が目を閉じ、深く息を吸い込む。

     そして――自身の顔面から、“鼻”を引き抜いた。

     ぼしゅぅ、と音を立てて空気が渦を巻く。まるで霊気を吸い上げるように、鼻は輝き始める。

    「さっきのは鼻じゃなくて、“準備運動”や。これが本番や――」

     鼻を振るい、鼻先に黄金の獣をひと突き。

    「《懺悔一閃・千怪浄法》!!」

     霊獣たちの断末魔がこだまし、夜の商店街は一瞬で静寂に包まれる。

     ただ一人、鼻を武器に立ち尽くす虎之介。そして一人、金をまき散らしながらなお笑う金満。

     決着は、まだ遠い。

  • 614二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 11:17:51

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  • 615二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 11:18:21

    このレスは削除されています

  • 6161◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:18:51

    「――賭けてみねえか?」

    恵比寿川金満が口元を吊り上げた瞬間、周囲の景色ががらりと変わった。地面は光沢ある大理石へ、空にはネオンが瞬き、派手なスポットライトが二人を包む。まるでカジノの中心地。虎之介の足元にも、金貨がキラキラと転がっていた。

    「鼻坊主よォ……お前のその鼻、一本いくらで売れるか知ってっか? 金を吸い寄せる神通力があるようにしか見えねぇぜ……」

    「仏の御心は値段で測れぬ。ましてや鼻など、金で売る気など毛頭――」

    「――じゃあ、賭けてみな!」

    金満の指が宙を切ると、二人の間に巨大な金色のボタンが出現した。“一撃ジャッジ”の開始だ。

    「このボタン、押せば運命が転がる。五分五分。勝てば、オレの全財産をくれてやる。負ければ――その鼻、賭け金として頂くぜ!」

    虎之介は静かに眼を閉じた。その鼻が、ゆっくりと左右に揺れる。もはや槍のような存在感だ。

    「ふふ、まるで『摩訶不思議霊験絶大御鼻像』じゃな。……よかろう」

    彼は静かに歩み寄ると、ボタンの上に鼻を乗せた。

    「押すのは……鼻よ」

    「なにぃ!?」

    ポフッ。

    金色のボタンがゆっくり沈み、巨大なスロットが空に現れる。回転音が轟く中、虎之介の鼻先がスッと金満に向いた。

    「そして我が奥義……《我孫斬》」

  • 6171◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:19:09

    その瞬間、鼻から放たれた斬撃が空気を裂いた。不可視の一閃が、金満の金庫のようなスーツを真っ二つに裂く。中からは札束、金塊、宝石――そして未開封のからあげ弁当までが飛び出す。

    「うおおおおお!? ちょ、おい、ボタンまだ決着つい……て……」

    チーン――。

    ルーレットが止まり、画面には無慈悲な一文字。

    《破産》

    「ま、待て……あ、あれは金運最強の唐揚げ弁当だったのにィィィ!」

    「煩悩とは……嗜好に宿るものじゃ」

    虎之介は静かに印を組み、長い鼻で黄金の札束を巻き取りながら囁いた。

    「鼻は斬るためにあるんじゃ。罪を、煩悩を、そして……己の未練を、な」

    金満は膝をつき、残った金貨の上に顔を埋めた。

    「クソ……またパンイチで物乞いか……ッ!」

    鼻川虎之介は微笑を浮かべ、ひらりと一枚の金貨を落とすと背を向けた。

    「まずは身を清めるがよい……その後じゃ、懺悔の道も見えてくる」

    そして、鼻をひと振り。黄金の光を残し、坊主は去っていった。

  • 6181◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:19:59

    金貨の雨が止んだ。金満はうつ伏せになり、空っぽの財布を握りしめていた。かつて世界ランカーだった男は、今やパンツ一枚、地べたに転がるただの賭け負け野郎。

    「……クソッ……! なんだあの鼻……鼻でボタン押すだけで人生逆転されちまうとか、理不尽にもほどがある……!」

    が、それでも彼の目には、わずかな煌めきが宿っていた。

    「……賭けは、まだ終わっちゃいねぇ」

    指先で残ったコインを撫でる。拾い集めたのは、たった二枚の金貨。けれど金満にとって、それは「再起の種」だった。なぜなら彼には――

    「オレには、ゼロから這い上がる“悪運”がある」

    かつて、ギャンブルで命を賭け、火山の噴火口から助かったことがある。台風の日に賭けで舟を出して勝ち、海難事故を回避したこともあった。

    「……鼻だろうが、神だろうが……賭けさえ成立すれば、勝てる可能性はゼロじゃねぇ」

    その時、彼の視界に一枚の張り紙が飛び込む。

    《鼻川虎之介の鼻、特別講話&護鼻供養 開催中》

    場所は――古寺「隆々山 鼻徳院」。

  • 6191◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:20:13

    「……ハナトク……いん……だと?」

    金満は立ち上がった。地べたに落ちたからあげ弁当を懐にしまい、コインを握りしめる。目指すは、因縁の鼻僧――鼻川虎之介が次に現れる場所。

    「金の力であの鼻に勝つ。……今度は、ルーレットじゃなく“鼻そのもの”を狙う!」

    彼の目に、かつての狂気と豪胆さが戻っていた。金満、再起の炎。運を味方にするだけでなく、今度は――鼻そのものを計略で奪おうとする。

    一方その頃、鼻川虎之介は、鼻徳院の境内にて新たなる参拝者に説法を垂れていた。

    「……鼻とは、すなわち煩悩の象徴。見よ、我が鼻――これこそが我が悟りよ」

    修行僧たちが拍手を送る中、その背後には、影が一つ――

    「……また来たぜ、鼻坊主。今度こそ、“金”で勝たせてもらうぜ」

    黄金と煩悩の匂いが、再び寺に満ちる。

  • 6201◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:20:42

    鼻徳院に金の気配が満ちていた。

    「……まさか、また来おったか。懲りん奴じゃのう……」

    鼻川虎之介は巨大な数珠を手に、風鈴の鳴る縁側に腰掛けていた。鼻は今日も神々しく垂れ下がり、影が地面に届く。すでに鼻で茶を点て終え、鼻先にのせた湯呑みから香が立つ。

    その静寂を――破るように黄金の馬車が境内に突っ込んできた。

    「久しぶりだなァ、鼻坊主!! 財布の中身はすっからかんだが、今日は“金”じゃなくて“頭脳”で勝負しに来たぜ!」

    鼻川は鼻をくるりと回しながら笑った。

    「坊主相手に“頭脳”とは、また無謀な……まぁ、話くらいは聞こう」

    「ルールは簡単だ。あんたの鼻を、金のビームで“ちょびっとだけ”切らせてくれ。もし俺がそれに成功したら、鼻の先っちょを俺にくれ。賭けさ!」

    「ふむ……ちょびっととは……どれくらい?」

    「えーと……1ミリくらい?」

    「……それ、仏像の耳をもぐレベルで無礼じゃぞ?」

    「でも、俺が外したら、持ってきた残りの財貨、ぜんぶ寄付するよ」

    「……ふむ。ならばよかろう。だがこちらも、一撃だけ鼻で斬るぞ」

    契約は成立した。周囲の修行僧がざわめく中、黄金のビーム銃が構えられ、鼻もまた“御仏モード”で光を放ち始めた。

  • 6211◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:21:05

    「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

    金満が引き金を引いた――

    だが、直前に、鼻川の鼻がぐにゃりと曲がり、まるで生き物のように軌道をずらす。

    「鼻感知避雷針の術、発動じゃッ!」

    ビームは逸れ、柱を直撃し――鼻徳院、本堂、炎上。

    「うおおおおお!? 坊主、寺がああああ!!」

    「鼻は切れず、約束通り……その金は寄進してもらおうかの。あとついでに再建費用もな。寄進額三千万円な」

    「ギャンブルとは……こういうことだ……!」

    炎のなか、金満はまたも鼻に敗れ、全財産を“寄進”した。

    だが――その笑みは、どこか満ち足りていた。

    「……また来るぜ、鼻川。あんたと鼻と……この煩悩まみれの勝負に、俺は本気で惚れてるんだ」

  • 6221◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:21:33

    「まさか……本当に寺、建て直すとはのう」

    秋風が吹く鼻徳院の境内に、新しい本堂がそびえていた。金箔の仏像に金襖、金の畳に金の湯呑み。どこを見ても金、金、金。いや、天井の瓦まで金鍍金である。

    「俺ァ本気なんだよ。ギャンブルで負けたら、ちゃんと責任取る主義でね」

    恵比寿川金満はスーツに身を包み、頬に貼られた絆創膏を気にしながら、堂々と鼻川の隣に座った。

    「……しかしのう。寺の再建を依頼して、来たのが“カネで動く業者”とは思わなんだ。うちの檀家、びっくりして夜逃げしかけたぞ?」

    「そいつはすまん! けどな、坊主。アンタの鼻に何度も負けて――オレ、ちょっと変わっちまった」

    金満は仏像を見上げ、ふっと笑った。

    「金じゃどうにもならねえもんが、この世界にはあるって……そんくらい、ようやく実感したわけよ」

    「ふむ」

    鼻川は長く神々しい鼻を撫でながら、茶を啜った。

    「そなたは煩悩まみれじゃが、悪しき者ではない。……いや、むしろ“善”じゃな。煩悩も極めれば、道となる。……仏とは、案外そんなもんじゃ」

  • 6231◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:21:46

    「坊主……」

    「……だからの」

    鼻川はおもむろに茶菓子を置いた――芋粥依存症用の特製まんじゅうである。

    「今後は“金満くん”として、寺の副住職にならんか? ワシが引退した後、鼻徳院を継ぐ者として、ちと鍛えてみたいのじゃ」

    「なにィ!? 俺が坊主!? いや、でも確かに……金って、煩悩って、仏門と通じるモンがある気も……!」

    「そうじゃ。お主の“博打心”も修行になる。罰として、鼻掃除一日五回、説法百本覚えること」

    「げっ……そりゃまるで地獄じゃねえか……!」

    だが、金満の顔には、不思議なほど晴れやかな笑みがあった。

    「……ま、いいか。金で買えない道ってやつを、ちょっと歩いてみるのも悪くねえ」

    二人の間に、秋の風が吹いた。

    煩悩と祈り。鼻と金。異なる道を歩んできた者たちが、いまひとつの縁で結ばれて――

    鼻徳院に、新たな時代が訪れようとしていた。

  • 6241◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:22:03

    以上

  • 625二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 11:23:55

    中からは札束、金塊、宝石――そして未開封のからあげ弁当までが飛び出す。←???
    風邪引いた時の夢みたいなバトルでおもろかった

  • 6261◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 11:27:11

    多分機能のやつでシステム制限を食らいちょっと意味わかんないことになっているかもしれません

  • 627二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 11:34:25

    ギャグかな?

  • 628二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 11:46:24

    ――鼻徳院、本堂、炎上
    いや、炎上じゃねえよ、何してんねん

  • 629二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 11:47:24

    AIくんが昨日の暗殺者ちゃんに引っ張られてからあげ弁当出しちゃったか

  • 6301◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:40:35

    題名『流転の肯定と昇竜の試練』

  • 6311◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:40:57

    灰色の雲が重く垂れ込め、空気に静電気が走る。突如として空が裂けたかのように、一筋の金光が舞い降りる。その正体は――龍。かつて流れに逆らい昇り詰めた、一匹の鯉の成れの果て。天よりも輝く黄金の鱗、瞳には試練を求める覚悟が宿っている。

    その龍の足元に、ひとりの少女が立っていた。柔らかく、しかしどこか確固たる意志を宿した瞳。彼女の名は――肯定者。あらゆる存在の肯定を司る、人間の少女だった。

    「……すごく、綺麗だね」

    龍は言葉こそ発さないが、その視線は問いかけていた。――お前は、越えるに足る存在か?

    「うん。戦いたいんだね。いいよ、私はあなたを否定しないよ」

    肯定者の言葉が放たれた瞬間、空気が震える。龍が鳴いた。その咆哮は、まるで天を割るかのようだった。空気が圧縮され、鱗から放たれる水圧弾が数十発、弾丸の如く炸裂しながら彼女を包囲する。

    だが、そのすべてが直前で逸れた。まるで世界が意志を持っているかのように、肯定者の体を避けるかのように。

    ――肯定の力。自分を信じる。相手を信じる。たったそれだけで、世界は彼女を守る。

    「あなたは、越えられるよ。だから、私も逃げないね」

    肯定者が一歩踏み出す。足元の大地が優しく波紋のように揺れる。鯉――否、龍はそれを認めたかのように翼を広げ、今度は尾を振りぬいて水柱を打ち上げる。水の槍が弾道を描きながら、肯定者の横合いから襲いかかる。

    彼女は、目を閉じた。

    その瞬間、彼女の背後から風が吹き抜け、槍の軌道が逸れた。自然が彼女を守っている。いや、世界そのものが――肯定された少女を守護していた。

    「今のも、すごかったね。……あなたのこと、もっと知りたいよ」

    鯉の瞳がわずかに細められる。その言葉に含まれた“真摯な肯定”こそ、彼が今まで一度も与えられなかったものだった。

  • 6321◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:41:39

    ――雷鳴と共に水飛沫が弾ける。

    龍が唸った。ただの人間が、否、少女がここまで耐えるとは思っていなかった。彼の放つ水の斬撃は、山をも割くはずの一撃だ。だが――通らない。否、逸れるのだ。世界が、龍の攻撃の一つひとつに抗い、まるで盾となって彼女を守っていた。

    それは“肯定”という、シンプルで強靭な信念の結晶。

    肯定者は静かに、ゆっくりと歩みを進めていた。彼女にとって、その一歩はただの移動ではない。“あなたを、信じる”という意志の具現。だからこそ、彼女の足元には水が避け、大地が揺らがず、風が穏やかに流れていた。

    「あなたは優しいね。……本当は誰かを傷つけたいわけじゃないでしょ?」

    その声は澄んでいて、曇りがない。まっすぐすぎるほどに、純粋だった。

    龍の喉奥から低い唸りが漏れた。否――その胸中で、激流のような葛藤が走っていた。自らの力を試し、越えさせる。それが“登龍門”の宿命。だが、この少女は試練にすらならない。否、ならないはずだった。

    だが、彼女は立ち向かっている。世界を背負い、肯定の力で、たしかに龍の試練を受け止めていた。

    「私は……あなたを否定しない。あなたが今まで耐えてきたこと、そのすべてがあなたをここに連れてきたんだよ」

  • 6331◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:41:51

    言葉に力が宿る。その瞬間、肯定者の背後に金の光が溢れた。それは、彼女の内に眠る能力――“絶対肯定”。そしてその対象は今、龍へと向けられていた。

    肯定された存在は、世界そのものに祝福される。

    龍の力が増していく。圧力が、霧を裂く。水が弾ける。黄金の鱗がさらに輝きを増し、その瞳に映る肯定者の姿が――“敵”から“同志”へと変わっていた。

    「私はあなたを乗り越えたいんじゃない。あなたと、一緒に高く、強くなりたい」

    彼女の言葉に、龍の目がゆっくりと細まった。まるで笑っているように。

    ――次の一撃は、本気だった。

    雷雨の如き怒涛の水流斬撃。それは、肯定者の周囲を包み込むように襲いかかる。試練の刃。彼女が避ければ、後ろにいるものすべてが破壊される。

    逃げられない。ならば――受け止めるしかない。

    肯定者が胸に手を当てた。その瞬間、彼女を中心に“金の環”が広がる。優しさの結界、信頼のバリア。激流がその内に飛び込んできた。

    爆風。轟音。世界が揺れる。

    しかしその中に、ただ立つ少女がいた。

    「……ね? あなたの力、すごかったよ。私、全部肯定する」

    龍の咆哮が響いた。だが、怒りではなかった。試練を超えた者への、歓喜の咆哮だった。

  • 6341◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:44:36

    激流が切り裂かれる音とともに、てがみの巨体が水柱とともに空を舞った。金鱗が煌めき、青空に筆を走らせたように残る軌跡。それはまるで一枚の神話画だった。

    対する肯定者は、風に揺れる髪を静かに押さえながら、その姿を真っ直ぐに見つめる。

    「さっきより、鋭い……!」

    二撃目。てがみが巻き起こす波流の一閃が地面を削り、肯定者の足元を裂いた。だが彼女はひるまない。息を整え、膝を曲げ、足で水面を蹴って跳ねるように後退。ギリギリで直撃を避けながら、言葉を発する。

    「あなたの攻撃、無駄じゃない。たぶん、私じゃなければとっくに負けてる。でも……」

    言葉が空気に力を宿した瞬間、肯定者の全身が淡く光を帯びる。金色――否、龍の鱗のような光が、皮膚の内側から浮かび上がった。

    「私は、あなたのすべてを肯定する。痛みも、苦しみも、努力も。だから――その力ごと、私は受け止めて、超えてみせる!」

    てがみの瞳が見開かれた。感情の揺れが黄金の鱗に波紋を刻み、その巨体が空中で一回転すると、鱗の隙間から放たれるのは――登龍波。

  • 6351◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:44:57

    それは水の奔流に見えて、水ではなかった。龍となった神格の体内を流れる力の“記憶”、過去に越えた無数の苦難、痛み、恐れ、寒さ……そういったすべての流れが圧縮され、直線的に放たれた。

    肯定者は叫んだ。

    「怖くなんて……ないっ!」

    瞬間、彼女の足元から風が吹き上がる。肯定の能力が自動的に起動し、**彼女自身に“絶対に折れない心”**という名のバフを与える。全身が跳ねるように加速し、掌を前に突き出す。

    登龍波が突き刺さる――が、その刹那。

    「あなたが越えてきたもの、私も感じたよ……!」

    彼女の体を透過して流れる龍の意志。肯定の力がそれを否定せず、ただ受け止め、昇華する。

    流れは止まらなかった。ただ、変わった。荒ぶる奔流は、少女の祈りのような手によって柔らかく押し返され、金の霧となって空へ舞い上がる。

    てがみの瞳が震えた。

    「どうして……痛みを……そんなにも、柔らかく受け止められる?」

    「だって、それもあなたの一部でしょう? 私は、“あなた”を否定したくない。ただ……肯定したいんだよ」

    その声に、てがみの姿が少しずつ小さくなっていく。天を裂いていた巨大な龍は、まるで夢から醒めるように、柔らかな雨粒のように分解されていく。

    肯定者の背後で、光が弧を描いた。登龍門ゑ――肯定された結果として、力が調和し、静かに魂に溶けていった。
    少女は微笑む。優しい、確かな微笑みだった。

    「ありがとう、てがみ。あなたの痛みも、努力も、全部ちゃんと受け取ったよ」

    黄金の光が、ゆっくりと空へ消えていった。

  • 6361◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:46:03

    雨が降っていた。

    いや、それは雨ではない。てがみの金色の鱗が、微細な霧となって空に舞い、光を弾いていたのだった。肯定者は空を仰ぎ、ゆっくりと手を差し伸べる。

    「……温かい」

    掌に触れた光粒は、まるで心を撫でるように、彼女の指先に優しく滲んだ。彼女の肯定が、てがみの中にあった“苦しみ”に触れた証だ。

    「僕は……」

    てがみの声が、風の中で囁かれた。巨大な龍の姿は今や霧散し、少女の前に佇むのは、一匹の黄金色の鯉――努力と誠実の象徴としての、元の姿だった。

    「乗り越えたかったんだ。ずっと。誰にも認められなくても、それでも上を目指したくて……それしか、選べなかった」

    鯉の目に滲んだものを、肯定者はそっと見つめた。

  • 6371◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:46:31

    「うん、知ってるよ。だって、あなたの流れ、全部感じたから」

    肯定は、ただの力ではない。理解と、受容と、共鳴によって成り立つ。彼女の目には、もはや敵意も警戒もない。あるのはただ、“あなたはあなたでいていい”というまっすぐな想いだけだった。

    「……僕は、お前を超えられなかった」

    「ちがうよ」

    彼女は膝をつき、鯉と同じ目線まで身体を下ろす。

    「あなたは、私を“乗り越えなかった”んじゃない。私が“否定しなかった”だけ」

    てがみは目を見開いた。

    「あなたの力は、敵を超えるためのものじゃない。困難を超えるための力だよ。そしてそれは、誰かを守る力にもなれる。ね?」

    雨のように降り注いでいた鱗の粒が、地面に届くと淡く光って消えていった。肯定者は立ち上がり、柔らかな声で続ける。

    「これからは、自分のためじゃなくても進めるよ。あなたはもう……龍になったんだもの」

    「……そうか」

    小さな鯉が、静かに水の方へと歩き出す。肯定者はその背を見送り、呟いた。

    「誰かを乗り越えなきゃいけないって思い詰めるのは、きっと……寂しいことなんだよね」

    彼女の背後で、再び光が走った。てがみの力が、彼女に託されたことを意味している。

  • 6381◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:46:53

    登龍門ゑ――彼女に授けられた証。

    彼女の背に浮かぶ紋が、淡く光って溶ける。心の奥に、“乗り越える力”が静かに芽吹いた。

    「ありがとう、てがみ。今度は、誰かと一緒に流れていけたらいいね」

    彼女の声は、遠ざかる水音の中に溶けていった。

  • 6391◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:49:52

    肯定者は深い森の中にいた。そこには川が流れていた。かつててがみが登った、あの激流と似ているが、もっと穏やかで、もっと優しい流れだった。

    「ここが……“登龍門ゑ”の気配が向かう場所……」

    小さな囁きと共に、彼女の足元に水が寄せてくる。それは、まるで呼吸するように。彼女が歩みを進めるたび、地に刻まれた水の紋がきらめき、てがみの力が、彼女の内に確かに息づいていることを知らせた。

    だが、ただ肯定するだけでは意味がない――肯定者は少しずつ、それを理解し始めていた。

    「“乗り越える力”って……どうすればいいのかな」

    そのときだった。

    背後から、風を切る音。肯定者は反射的に跳ねる。そこには、彼女自身の“影”のような存在が立っていた。水面に映った自分が、ひとりでに立ち上がったような存在。

    「“否定”されたいのか? “自分は何者なのか”と問い始めたか?」

    その影は言った。

    「てがみの力を継いだだけでは、“己”を超えられない」

    肯定者は息をのむ。

    「でも……私は、誰かを傷つけたいわけじゃない」

    「それは甘えだ。お前は“肯定”するだけで、他者を変えられると信じている。だが世界は“否定”を孕んで流れている」

    影は彼女の目の前で手を広げ、水のような斬撃を飛ばす。それはてがみの川流しの力に似ていたが、鋭く、荒れていた。

  • 6401◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:50:13

    肯定者はよける。衣が裂け、頬に薄く血がにじむ。

    「力を持った者は、他者の流れも呑み込む。それが登龍門ゑの試練だ」

    「そんなの……私には向いてない……」

    そう口にしかけたとき、心の奥からふと、てがみの声が響いた気がした。

    ≪越えろ。それは、お前の“川”だ。誰かのための力にするには、お前自身が流れに打たれなければならない≫

    肯定者の瞳に、一瞬だけ鋭い光が宿る。

    「そっか……。今、私が乗り越えるべきは……自分自身、だよね」

    ふわりと笑ったその瞬間、彼女の背に、あの龍の光が灯った。

  • 6411◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:51:28

    登龍門ゑが発動する――肯定者は自分自身の“流れ”を乗り越え始める。

    水の奔流がぶつかり合い、否定の影と肯定の本体が拮抗する。能力による干渉は激化し、川の形そのものが変化していくかのようだった。

    「私は私でいていいって、私自身が認めてあげる」

    肯定のバフが自分に作用する。精神が研ぎ澄まされ、視界が一気に広がる。

    「だから――乗り越える」

    彼女の掌が水を裂き、影の心臓を穿つ。

    「“肯定”もまた、戦えるってこと……教えてあげる!」

    影は驚いたように見開き、やがて川へと溶けていった。

    ――試練、突破。

    森の風が変わった。川は、また元の静けさを取り戻していた。

    肯定者は深く息をつき、空を仰ぐ。

    「てがみ……ありがとう。私、少しは強くなれたかな」

    陽光が差し、登龍門ゑの紋が微かに煌めいた。

  • 6421◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:55:36

    森の奥、静かな川辺にて。肯定者はすべての試練を終え、静かに川面を見つめていた。

    水面に映るのは、自信を取り戻した自分。頬には試練の傷跡が、けれど誇らしげに刻まれている。

    「……ここまで来たんだね、私」

    その声に応えるように、水面が一筋、黄金に染まる。さざ波のように光が走り、そこからふわりと浮かび上がったのは――

    「おお、やっぱり来たか。立派になったな」

    金色の龍。鯉、いや“てがみ”が姿を現した。

    その鱗は太陽を映すように輝き、眼差しはどこか慈しみに満ちている。彼女の前に降り立った龍は、誇らしげに鼻を鳴らした。

    「……てがみ」

    「登龍門ゑ、ちゃんと越えたな。なら、お前には次の道が見えてるだろう?」

    肯定者は頷く。

    「うん。これからは“誰かのために”じゃなくて、“自分の意志で”肯定していく。甘さや優しさじゃない、強い肯定を……」

    「その通りだ」

    てがみは少しだけ微笑んだ――龍が微笑んだように感じた。

    「この先、お前が肯定したものは“世界に守られる”。それは力にもなるが、呪いにもなる。だが……お前なら使いこなせるさ」

  • 6431◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:56:10

    肯定者は少し俯き、そっと言った。

    「……ありがとう。私、もう迷わないよ」

    てがみは満足そうに頷いた。

    「なら、もう俺は行く。雲の上で、次の“登龍者”を待つことにしよう」

    そしてそのまま、金色の龍は天へと昇っていった。しだいに陽光と溶け合い、やがて空の一部となる。

    肯定者はそれを見届けながら、深く呼吸した。

    「私は、ここから肯定していく。誰かの“これでいいんだ”を守るために」

    そして彼女は、歩き出す。

    世界が“強く優しい肯定”に守られながら、またひとつ前へと進んでいく。

    その背に、もう迷いはない。

  • 6441◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 14:56:59

    以上

  • 645二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 14:58:14

    乙です!!  しかし提唱者と肯定者 化け物姉妹だな

  • 646二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 14:58:37

    思ってたよりも肯定者の能力規模デケェ

  • 647二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 15:00:27

    最高だった
    ところで次の安価はいつなんだい?
    教えてくれよ

  • 648二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 15:02:23

    お互いを高める良い戦闘だったぞ!!

  • 649二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 15:07:21

    今回の話で否定が出てたし
    肯定者も否定者と相性微妙そうだ

  • 650二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 15:13:17

    次の安価は何分よ?

  • 651二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 15:17:16

    >>647

    >>650

    スレ主にも予定とか準備があるんだからそう焦らないでのんびり待とう

  • 652二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 15:20:07

    >>651

    いつ来るか分からんのにのんびりなんて出来ないやろ

    予告くらいは欲しい

  • 6531◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 16:06:25

    17:00から安価募集です

    >>652

    安価な修羅多いですねぇ

  • 654二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 16:19:35

    >>653

    逆ゥ!

  • 655二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 16:23:55

    >>654

    逆でもないだろ

  • 656二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:00:00

    名前:『溶けゆく犠牲』
    年齢:18 ただしスライムとしては1ヶ月
    性別:女性だがスライムなので性別はもうない
    種族:スライム
    本人概要:バイオスライムXI号のオリジナル ある一族の一員が供犠のデメリット踏み倒しのため改造手術を受けたもの
    能力:供犠(肉体) 侵食
    能力概要:自身に触れた相手を侵食し、侵食し切った相手を供物にして子スライムを召喚する ちなみに自身の肉体の一部を投げたり子スライムに触れさせる事で遠くの相手にも侵食は出来るし当たり前だが侵食している部分は多ければ多いほど侵食速度が早くなる
    その他にも物理ダメージを受けた肉体を供物として新たに自身の肉体を召喚することで例えどんな規模のダメージでも物理ダメージであれば無効にできる さらに彼女や子スライムの肉体を構成するスライムは医療用なので他者の肉体と融合させて治療したり自分で取り込んで回復したり出来る
    弱点:彼女の行う供犠はとても繊細なので彼女への精神干渉、侵食、魂への攻撃など物理以外の攻撃に弱くこれらのダメージは供物とすることができない ちなみに受けるダメージの大きさは侵食(毒など)が一番大きい
    要望(任意):一応世界のために動いてます こいつは良いスライムなんだ

  • 657二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:00:00

    名前:DJ.セルシー
    性別:男
    年齢:32
    種族:人間
    本人概要:
    ひょんなことから不思議なレコードディスクを拾ってしまい戦いの運命に巻き込まれた男。
    現役DJのため、音楽で場の空気を盛り上げたり落ち着かせたりするのが上手い
    能力:炎奏と氷現のレコード
    能力概要:
    彼が拾ったレコードに宿っていた能力。ブレイズスネークとフリーズスネークたちを生みだし戦わせる。
    場の空気が盛り上がっているほどブレイズスネークは際限なく強くなり、フリーズスネークはその逆
    弱点:
    ブレイズスネークとフリーズスネークへの命令はレコードを演奏することで行っているため演奏開始から攻撃開始まで2秒ほどのラグがある
    尊厳をかなぐり捨てて場の空気をぶち壊すことで弱体化させることができる
    レコードを壊されると能力も解除される

  • 658二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:00:02

    名前:ハジメイ
    年齢:0
    性別:無性
    種族:天使(仮定)
    本人概要:白髪白肌で天使少女風。刃が無く仄かに優しい光を放つ短剣を持つ。
    ヤメイによって性質が変化し、宇宙全体に希望を与えた終焉の卵…の残滓が形を成して生まれた存在。オワタマの内包していた記録やエネルギーはすべて喪失、まっさらな精神性だけが残っている。口癖は「せいぎはかならずかつ!」イミはよく知らない
    能力:はじまりのはじまり
    能力概要:目に映るもの全てが自分の親だと思っており、どんな技量も能力もそっくり真似ることができる。時間経過でオリジナルの性能を凌駕してすくすく育つ。
    短剣で斬った存在を優しい気持ちにさせ、生きる希望を与える
    弱点:良くも悪くも純粋で何でも真似したがる。教わったことは全て信じてしまう

  • 659二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:00:02

    名前:擦主偉土(すれぬし いつち)
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:人間
    本人概要:無尽蔵の体力と驚異的な記憶力を持つ人間、この世界の最高神と同等の力を持っている、世界の管理者。豚の心臓が好物。特殊な能力はない。身体能力も少し高い程度。
    能力:特になし
    能力概要:特になし
    弱点:美味しいものに目がない、神の力は普段封じられており、封印を解こうとすると、偉土の四肢が爆散する。
    要望:口調はユーザーと同じにしてください

  • 660二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:00:02

    名前:佐藤凜
    年齢:9歳
    性別:女
    種族:人間
    人物概要:何であっても軽々とこなす超天才であり佐藤蓮の妹
    戦闘中でも日常でも常に明るく楽しそうな笑みを浮かべて笑っており明朗快活、元気いっぱいな少女
    兄と同様の優しさや心の強さも持っており絶望も恐怖も挫折も笑顔で笑って楽しんでしまう
    座右の銘は「笑顔は力」らしい。曰く「笑ってると力が湧き出るから」だそう
    特技は人の凄い所を褒めることと人から何かを学ぶ事
    能力:異常の主、『チャンス』
    能力概要:異常の主は笑って楽しめば楽しむ程にどんどんと強く発動する力
    胸から虹色に輝く波動の様なものが溢れだしてゆく
    溢れ出した虹色の何かはあらゆる能力の可能性を持っており性質はまさに「未知」で「異常」
    それは強い神聖の宿った力かもしれないし回復の力かもしれないし邪悪の力かもしれないし強化の力かもしれない
    邪悪な呪いの力かもしれないし癒えない傷を与える力かもしれないし精神に強く干渉する力かもしれない
    色々な能力がぐちゃぐちゃに混ざり合ったかのようなハチャメチャな可能性の濁流そのもの
    あらゆる超常の塊であり天才である彼女すら制御不能な未知と非現実の力である
    『チャンス』は特異体質の様なものらしい
    どれだけ実力が不平等でも敵が強大でも戦いの中で何度も「チャンス」があるらしい
    また回復の「チャンス」や不意打ちの「チャンス」など多彩な「チャンス」がある
    弱点:身体能力とすばしっこさ、頭脳などは一流だがこと耐久力は年相応の脆さ
    異常の主は彼女が笑っていて、笑顔で、楽しんでないと発動せず笑顔を削ぐと出力が弱まる
    あと発動する力がめちゃくちゃなので敵を斬ると敵が回復した、能力を使ったら敵が有利になったみたいな出来事がまあまあある
    『チャンス』はあくまでチャンスのみで確実に掴み取れるとは限らない
    要望:佐藤蓮の妹にしてください
    武器は細い双剣で一人称は「私」、二人称は「貴方」「君」

  • 661二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:00:03

    名前:黒澤 漣火(くろさわ れんか)
    年齢:33歳(実質年齢不明)
    性別:女性
    種族:人間(封式師/霊胎混合体)
    本人概要:
    神崎家直属の封式師にして、「内封儀第三十六式・常駐執行者」の位階を持つ狂信的実力者。元は分家筋の巫女だったが、幼少より「霊胎適合試験体」として霊的な実験に供され、体内には複数の悪性霊胎が封印されている。
    常に禊装束と黒革の戦闘外套を纏い、言葉は静かで丁寧だが、行動は猟奇的で冷酷無比。
    「主家の命令は即ち神命」という思想のもと、命じられれば親族すら躊躇なく手にかける。特に逃亡者や失敗作に対する粛清を最も得意とする。
    能力:
    封魂転鎖 / 緋紋・「咎霊収束陣」
    能力概要:
    自らの血と封印刻印を媒体に、対象の霊魂・霊力を強制拘束・封印する封式術の使い手。
    特殊な霊墨と指印によって瞬時に展開される「咎霊収束陣」は、悪霊・悪魔のみならず、霊的存在全般を吸収・中和・殲滅することが可能。
    戦闘時には封印した霊胎の一部を解放し、異形の四肢や眼球を身に纏って戦う「半変異形態」に変化。破壊力・速度・拘束力が飛躍的に向上する。
    封印と攻撃を同時にこなす、高度な近接対霊戦のエキスパート。
    弱点:
    ・霊胎の影響で精神に不安定な要素を持ち、深い怒りや悲しみを刺激されると暴走のリスクがある。
    ・長時間の封印展開によって肉体が異形化しやすく、外見的には人間の枠を逸脱しつつある。
    ・強制封印術は味方を巻き込むリスクが高く、使いどころを誤ると致命的。
    要望(任意):
    • 「失敗作」とされた者への粛清任務を最も得意とする。蓮の妹:琥珀の監視・封印補助に長年関わっていた過去あり。
    • 神崎蓮に対しては個人的に”純粋すぎる血統”として歪んだ敬意と執着を抱いている。

  • 662二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:00:10

    名前:ヨシナガトミキチ

    年齢:20歳で固定されている

    性別︰男

    種族:人→不死人

    人物概要:数々の世界を渡り歩き"エイコ"と呼ぶ存在を探し続ける存在

    ボロボロになった木綿製のカーキ色の軍服らしき衣服と歩兵銃、軍刀、鉄帽を身に纏っている

    なお、装備は能力の②と③によって万全な状態で保たれているため破損したとしても再生し、弾丸も減ることは無い

    能力:約束を遂行する能力

    能力概要:エイコと交わした約束を守るために発現した能力。

    具体的には

    ①死なないでエイコの元に戻ってくる事

    ②正義感のある立派な軍人になる事

    ➂どんな敵にも勝つ事

    を例えどんな相手であっても確実に守ろうとする

    なお、3つの間で矛盾が生じる場合は①>②>➂の優先順位で守ろうとする

    この能力によって彼に精神的、物理的な死が訪れる事はなく接敵すればどんな敵にも負けることはない

    また②の効果によって悪と言う立場になることも無い

    弱点:エイコが結核によって死んだ事実を突きつけられると死ぬ

  • 663二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:00:12

    名前:選択者
    年齢:時間という概念が存在する以前から生きてる。見た目は20代半ば。
    性別:女
    種族:異能者
    人物概要:アルマーニ製の派手なスーツを着用した巨乳の女性。
     とても好奇心旺盛な性格で、あらゆる事柄に首を突っ込みたがる。珍しい物が大好き。
     相手のことを『少年』『少女』とか呼んじゃうタイプの人外女性。どんな相手でも持ち得る力や技を褒めちぎり、自身もまた全力で挑む。
     普段はクリーニング店「洗濯者」を営んでおり、〝選択〟ならぬ〝洗濯〟もプロ級である。
    能力:【選択】
    能力概要:自身が干渉したい、されたいと思ったありとあらゆる物体、概念を距離、障害物、次元、時空間を無視して【選ぶ】事ができる。万物を取捨選択する力。
     逆に選択者に選ばれなかったものは如何なる手段を持ってしても選択者と選択の能力に干渉、無効化すること自体ができない。
     例えば「相手の心臓」を選べば心臓だけ抜き取れる
    「記憶」を選べば相手の記憶を盗み見れる。
    「距離」「移動」を選べばどんな空間、場所にも瞬間移動できる。
    「老化」の概念を選択していないので一生若いままでいられる。老けようと思えば老化を選択して老けられる。
    弱点:好奇心旺盛すぎる性格ゆえ、珍しい物を見ると、どんな危険な存在、技、能力であってもすぐ干渉して試してみたがる。「ちょっとだけだから! 先っちょだけだから!」
     そのくせ単純な身体能力・耐久力は人間並なので不意に大ダメージを受ける。
     ゆえに誰にでも勝てるが、誰にでも負ける。

  • 664二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:00:15

    名前:アルティア・ヴァレンシア
    年齢:推定32歳
    性別:女性
    種族:人間(ルドリア王国)
    本人概要:
    アルティア・ヴァレンシアは、ルドリア王国が誇る精鋭騎士団の頂点に立つ、気高き騎士団長である。並外れた剣術の腕前と冷静な戦術眼を併せ持ち、数多の戦争を勝利へ導いてきたその名は、国内外に轟いている。彼女には誰にも明かせない“裏の顔”がある。夜になると、彼女はすべての衣を脱ぎ捨て、裸足で街を徘徊するという奇怪な習慣を持つ。この行為は、過去の心の傷と抑圧された自我の解放であり、彼女にとっては一種の精神的救済でもある。公の場で完璧を演じる反動として、誰にも見られない場所でしか「本当の自分」でいられないのだ。そんな彼女の心を密かに乱す存在がいる。部下の騎士、カイル・ドランティス。誠実で真っ直ぐな若き剣士に対し、当初は上官としての期待と尊敬しか抱いていなかったが、彼の真心や成長する姿に触れるうち、次第にその感情は恋愛へと変わっていった。だが、冷徹な団長としての立場と、年齢差という現実もあり、アルティアは自らの想いを胸の奥に押し込み、誰にも打ち明けることができずにいる。
    唯一、心を許す数人の女部下にだけ、時折、苦悩を相談することがあり、その時の彼女は普段の凛とした姿とはまるで別人のように、揺れる一人の女性としての表情を見せる。
    能力:
    • 王国随一の剣技(精密かつ強力な剣さばき)
    • 戦場全体を俯瞰する戦術・戦略指導力
    • 騎士団の士気と規律を完璧に維持する統率力
    • 冷静かつ迅速な判断力、精神耐性の高さ
    能力概要:
    アルティアは剣一本で一個小隊を制圧できるほどの戦闘力を持ち、まさに生ける伝説とも言われる。彼女の剣技は無駄がなく、敵の急所を一瞬で見抜く鋭さを持つ。さらに、地形・天候・部隊編成を瞬時に読み取って最善の采配を下す戦術家としても卓越しており、騎士団の勝利は常に彼女の指導のもとにあった。また、精神面でも極めて強靭で、仲間を喪おうとも戦場で動じることはない。逆境に強く、窮地を跳ね返す胆力を持っているが、内面には繊細さと傷つきやすい心を隠している。
    弱点:
    • 夜の全裸徘徊という衝動的な行動癖(秘密が露見すれば地位の崩壊もありうる)
    • カイルに対する強い恋愛感情が戦場での集中を乱す時がある

  • 665二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:00:25

    名前: キラ=エンゾウ
    年齢: 30代後半
    性別: 男性
    種族: 人型生物兵器Hound-03《葬儀屋(モルグ)》/人類改造体
    本人概要:
    冷静沈着で医師のような論理的口調を持つが、感情は希薄。細胞の集合体としてしか他者を見ておらず、死体操作技術の第一人者。戦闘形態では白い骨格装甲と肋骨状防御板、胸部の透明樹脂内に複数の脳核を持つ。
    「Hound」はナノ神経繊維インプラント・精神強化処理・カオスグロース制御機構を融合した生命体的戦闘種である。計画は完全非公開、5~6体のみが実戦配備。各個体は「変身」によって凶悪な戦闘形態へと移行
    戦闘形態への変身過程:
    キラ=エンゾウが変身を開始すると、白色神経膜が体表を覆い、皮膚組織が急速に再編成される。肋骨状の装甲が骨格を覆い始め、全身の筋肉と神経がナノ神経繊維インプラントと一体化。胸部の透明樹脂内に収まる小型脳核群が活性化し、情報処理能力が極限まで高まる。
    能力: アナトミア=マナス
    能力概要:
    対象の生体・機械構造情報を解析し、自身に模倣・投影、対象を殺すのに最も適した武装を身体の最適な箇所に瞬間的に生やし、最適な挙動で殺しに来る。
    生成武装例:
    • 白経刃《ナーヴェクス・ブレイド》
     全身から無数に延びる曲刃。骨格と神経線で形成され、対象の神経中枢を正確に断ち切る。
    • 脳殻砲《セファロ・ランチャー》
     頭部を開き、脳核を熱振動化し圧縮放出。対象を物理・精神双方から破壊。
    • 反射装甲《リカレント・カスケット》
     防御模倣技術を最適化。受けた衝撃をそのまま反転・圧縮しエネルギーとして返す。
    弱点:
    連続使用による身体負荷と神経機能の乱れ。近接戦では機動力や膂力の高い敵に劣る。
    Houndシリーズは胸部の透明樹脂内に収まる小型脳核群を破壊することによってのみ完全殺可能。
    超大出力兵器は再現不能。また、オルガニスフィア等のナノ群体兵器の同時解析も処理しきれないため不可能。
    要望(任意):スタイリッシュで冷酷だが、感情の起伏が時折制御困難な内面の葛藤を垣間見せる表現を希望。

  • 6661◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 17:00:34

    すとっぷ

  • 667二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:00:58

    今回は時間指定してる割に埋まるのかなり遅かったな〜

  • 668二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:01:00

    このレスは削除されています

  • 669二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:02:34
  • 670二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:02:43

    >>667

    今回は今までより時間早いからバイトとか仕事してる人たちが安価に参加できなかったのだと思われる

  • 671二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:03:54

    前回のを考えればそりゃそうだけどそれでも25秒はだいぶよ?

  • 672二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:04:58

    前回は対消滅が出たからなあ

  • 673二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:45:39

    対戦カードはまだかな・・・まだかな・・・
    今回ヤバいの多いから気になるな・・・

  • 6741◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 17:48:01

    >>659

    私がいますね


    DJ.セルシーvs 黒澤 漣火

    キラ=エンゾウvs 佐藤凜

    『溶けゆく犠牲』vs 擦主偉土

    アルティア・ヴァレンシアvs ヨシナガトミキチ

    選択者vs ハジメイ



    あのですねぇ………弱点って知ってますか?

  • 675二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:52:11

    勝手に何か変なのを封印されるスレ主 爆発のおまけ付き

  • 676二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:52:43

    >>1は豚の心臓が好物だったのかぁ

  • 677二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:54:44

    >>674

    今回はどいつが弱点規制に引っかかってるよ

  • 6781◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 17:56:40

    >>677


    アルティア→まあまあまあ、ほぼつけない弱点ですけど能力がそこまで強くないですしいいでしょう

    ヨシナガトミキチ→それ誰が知ってるんですか?

    黒澤 漣火→味方って誰ですか。異形が弱点になるんですか。



    今回は相手もいいのでいいですけどヤメイ案件にもしずらい強さなので次不都合があったら弾きます

  • 679二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 17:58:58

    このレスは削除されています

  • 6801◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:00:48

    >>679

    まあ能力がシンプルな上に相手がやばいんで

  • 6811◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:35:53

    題名『霊胎の黒焔対音速の蛇舞』

  • 6821◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:36:40

    「——目撃者は、全員封じます」

    廃工場跡。錆びた鉄骨と崩れた壁の間に、音楽が流れていた。
    深夜の闇に乗せて、地鳴りのような重低音が響く。
    DJブースの中央、ターンテーブルを回す男——DJ.セルシーは、リズムに合わせてゆっくりと首を振る。

    「いいね、この音。今夜は火と氷のセッションってとこかい?」

    彼の背後、壁一面に炎と霜が這っていく。赤と青の蛇のような光が、音に合わせて揺れ動いていた。
    ブレイズスネークとフリーズスネーク——レコードに宿る異能が、今まさに起動している。

    その対面に、異質な存在が一人。

    長い黒髪を禊装束でまとめ、黒革の外套をはためかせる女——黒澤漣火。
    その瞳は酷く静かで、けれどぞっとするほどに深い狂気を湛えていた。

    「命令に従い、貴殿を封じます。DJ.セルシー殿。あなたが所持する『呪縛音盤』は、我が主家にとって危険物指定に該当します」

    「危険って? これはただの音楽だぜ。観客がいないのが残念だけど……俺のショーを台無しにする気か?」

    レコードが鳴る。
    スネークたちが地面を走り、工場跡に霜と炎の模様を描き始める。温度が一瞬で急降下し、次には熱風が吹き抜ける。

    漣火は一歩踏み出す。
    足元に彼女の血が零れ、そこに紅の紋が浮かび上がった。

    「咎霊収束陣・起動。対象:呪性を帯びた音律。範囲封鎖。」

    数式のような言葉とともに、地面に六角の陣が浮かび上がる。咒文というより、術式。彼女の封印術は「言霊」ではなく「機構」に近い。

  • 6831◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:36:53

    ブレイズスネークが飛ぶ。だが漣火は瞬時に指印を結び、霊墨が尾をなすように空中へ展開。蛇は術式に触れた瞬間、蒸発した。

    「チッ……早いな。じゃあ本気で行こうか」

    DJ.セルシーの指が盤を弾く。
    音が跳ね、スネークたちが左右から挟み込むように迫ってきた。

    それを迎え撃つように、黒澤漣火の右腕が変異する。

    人のものとは思えぬ節を持ち、幾重にも眼が埋め込まれた赤黒い腕。
    彼女の体内に封じられた霊胎——その一部を解放した異形の力だ。

    「——よろしい。半変異・封魂鎖、解放」

    異形の腕が蛇を払い、砕く。爆ぜた炎が天井を焼き、霜の針が彼女の頬をかすめる。

    戦いが始まった。音と封印、狂気と芸術が交錯する。

    ——決して相容れぬ二人が、異能の調べを交わす夜が、今、開幕する。

  • 6841◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:38:13

    「——“イッツ・ショータイム”。行くぜ、ブレイズ!」

    セルシーがレコードを跳ね上げると、ターンテーブルから火焔の音が溢れ出した。
    その瞬間、赤い蛇が数十体、床から這い上がり、うねる熱気と共に漣火に殺到する。

  • 6851◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:39:11

    熱波が廃墟を歪めた。火の蛇たちは建材の隙間を縫い、天井の鉄骨に沿って奇襲をかける。
    それを迎える漣火の瞳が、淡く光を宿す。

    「収束位置、第一段階・刻印。——終わりです」

    左手の指先が空をなぞる。
    その軌跡に合わせ、血で描かれた咎霊陣が多重展開される。
    空間そのものに浮かぶ印章が、火蛇の進路をねじ曲げ、逆流させた。

    一体、二体、三体——燃え盛る蛇が咎の陣に触れ、瞬く間に崩れ落ちる。

    「封印された……?!」

    セルシーの顔に焦りがよぎる。
    ターンテーブルを連打するように回すと、次のレコードが挿入される。

    「フリーズ、ステップ・イン!」

    今度は青白い霜の蛇が床を這い、霧のように広がる。
    その冷気が、瞬時に漣火の髪先を凍らせる。

    「凍結効果付き……いいえ、これは——」

    霊胎の目が一斉に細まる。
    漣火の異形の腕が地を叩きつけ、緋の波動が霜蛇を吹き飛ばす。だが、今度の攻撃は霊墨に干渉せず、純粋に足元を奪いにきた。

    「この空間、すでに音によって支配されている……!」

    足元の床がリズムに合わせて波打つ。セルシーの音楽が、戦場の物理を改変し始めていた。

  • 6861◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:39:47

    「世界はビートで踊る! アンタの封印も、リズムを狂わせれば——!」

    「甘いですね」

    霊墨が床へ落ちる。滴るように滲み、四方八方へと封鎖術式が展開された。
    彼女は、動きを止めず、全方位を埋め尽くす“捕縛”の構え。

    「——封式・六十四陣縛」

    術式が弾ける。火蛇と霜蛇を同時に貫き、空間そのものが“沈黙”する。
    ターンテーブルから音が消えた。レコードが回っているのに、何も聴こえない。

    「……な、音が……?」

    「咎霊とは異能の音も対象です」

    空気が静止する。レコードを介したセルシーの異能が、音ごと縛られた。

    しかし。

    「だったら、やるしかねぇか」

    セルシーは自らターンテーブルを手放し、目の前へ飛び出した。
    DJが、前線に出る。人間として、音楽の力を信じていないとできない判断だ。

    漣火の瞳がわずかに揺れる。だが、次の瞬間、彼女の異形の右腕が振り下ろされた。

    「あなたの“音”は、ここで終わります」

    ——しかし、次章で分かる通り、それは終わりではなかった。

  • 6871◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:40:52

    「……終幕、とは、まだ早うございます」

    漣火の指先が地をなぞるたび、霊墨が新たな紋を描いてゆく。
    全周囲を覆う封鎖結界《沈音の楔》。
    音波そのものを捕え、全ての共振を断ち切る完全遮断術式――そのはずだった。

    だが、崩れたターンテーブルの前で、DJセルシーはわずかに笑っていた。

    「へぇ、封鎖ってのは、こうも冷たくて静かなもんかよ……」
    彼の指先が、内ポケットから黒と白が渦巻く――未知のレコードを取り出す。

    「けどな。この一枚だけは、誰にもジャッジされちゃいねえ。お前の“式”のリストにも、まだ存在してねぇ音だ」

    それは音楽ではない。記録でもない。
    記憶と怒りと叫び――DJセルシーの魂そのものが焼き付いた盤。

    セルシーは、壊れたターンテーブルにそれを無理やり押し込み、指を滑らせる。
    レコードが、火花のように軋みながら回転を始めた。

    「……式の起点、割れましたか」

    漣火の眉がわずかに動く。

    《沈音の楔》が、音を封じる結界である以上、“音楽”には完全な抑止力を発揮する。
    だが、セルシーが発したそれは、「音楽」と呼ぶにはあまりに不定形で、無秩序で、**形式を持たぬ“叫び”**だった。

  • 6881◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:41:04

    「まさか、“音楽ですらないモノ”で来るとは……策とはいえ、見事」

    レコードからこぼれるのは、もはや旋律ではない。
    鼓動のような、嗚咽のような、怒声のような音。

    空気が震え、スピーカーすらないはずの空間に、観客の幻影すら響くような錯覚が広がっていく。

    「魂の音を――聞け」

    その瞬間、セルシーの足元から、火と氷が双つに伸びた。
    完全に封じられたはずのブレイズスネークとフリーズスネークが、その“叫び”に共鳴し再構築されたのだ。

    「……再召喚ではなく、共鳴による自己再構成。術式を媒介としない……これは、術に非ず」

    漣火は、静かに己の外套を脱ぎ捨てた。
    その背に刻まれていたのは、全身を螺旋状に巡る血の封印文字列。

    「――咎霊解放、段階二。半変異式、承認」

    皮膚が裂け、肋骨の隙間から異形の眼が開き、右腕が蠢く刃へと変じる。

    「封鎖の意義が揺らぐ今……こちらも、相応の応じ方をすべきでしょう」

    地に描かれるのは、円環型の新たな術式。
    それは式ではなく、“網”だ。逃れられぬ罪咎を纏め、呑み込む網――《咎霊収束陣・血環》。

    「――これより貴殿の魂を、主家に代わり封滅いたします」

    氷の蛇が吠え、炎の蛇が螺旋を描き、
    漣火の異形の腕が地を穿ち、式を喰らう構えを取った。

  • 6891◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:45:30

    DJセルシーのターンテーブルから轟くリズムが、まるで戦場を揺るがす雷鳴のように鳴り響く。ブレイズスネークが炎の鱗を煌めかせ、セルシーの指先から生み出された炎蛇たちが猛り狂いながら空間を裂いて飛び回る。

    「さあ、漣火さん、俺のパーティーはまだ始まったばかりだぜ」

    セルシーはにやりと笑みを浮かべ、レコードのスピードを上げる。

    一方、黒澤漣火は静かに足を踏みしめ、両手に封印の紋を展開し始める。

    「咎霊収束陣――貴様ら、私の領域に踏み込むな」

    その言葉とともに、彼女の周囲に赤黒い紋様が瞬時に浮かび上がり、炎蛇のうち一体が光に吸い込まれるように姿を消した。だが、まだ数多の炎蛇が彼女を囲んでいる。

    「増えすぎたものは、まとめて封じる」

    漣火は紋様の一部を強化し、次々と炎蛇を呑み込もうと手を伸ばす。だが、燃え盛る熱波は彼女の肌を焦がし、苦痛の声が漏れた。

    「まだ、ここで終わらせるわけにはいかない……」

    そう呟きながら、黒澤の身体は異形の四肢を展開し始める。腕や背中から飛び出した異形の眼球が周囲の敵を監視し、より鋭敏に動きを捉えようとしていた。

    その隙を突き、セルシーはレコードを切り替え、氷蛇《フリーズスネーク》を呼び出す。冷気が一気に戦場を覆い尽くし、凍てつく風が漣火の動きを鈍らせる。

    「冷気の洗礼を受けろ」

    セルシーが挑発的に言う。

  • 6901◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:45:41

    漣火は凍える痛みを振り払いながら、ゆっくりと一歩ずつ前に踏み出す。氷蛇の尾が鞭のように彼女の脚を鞭打ち、氷の裂け目が肉体に刻まれる。

    「っ……!」

    苦痛に顔を歪める黒澤。だが、その瞳は揺らがない。

    炎蛇が再び猛り狂い、彼女を四方八方から包囲する。だが彼女は一切の動揺を見せず、咎霊収束陣の強化に集中した。

    「咎霊呑咬――解放」

    彼女の放つ封印陣が赤い閃光を放ち、炎蛇の一体をまるごと呑み込む。だがその瞬間、残った氷蛇が素早く隙間を縫い、黒澤の腕を狙って凍結の呪縛を強めていく。

    セルシーは満足げに笑う。

    「流石だよ漣火さん、けど俺の音楽にはまだまだ底がある」

    彼のレコードから発せられる音は、戦いのテンポを自在に操り、炎蛇の狂暴性を加速させる一方で、氷蛇の凍結効果を増幅させていた。

    黒澤は冷気の侵食に耐えながらも、次の封印陣の準備に取りかかる。だが身体は限界に近づき、呼吸は浅く速くなっていた。

    「ここで退けば、私は……」

    声が震え、感情がわずかに乱れる。だが、そのすぐ後に意志を研ぎ澄ませて言い切った。

  • 6911◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:46:23

    「…私は、この戦いを終わらせる」

    セルシーもまた息を切らしながら、ターンテーブルを激しく操作し続ける。火と氷が入り混じる空間は異様な熱気と冷気がぶつかり合い、常に不安定な均衡を保っていた。

    二人の激しい攻防は続き、次第に互いの疲労が目に見えて増していく。黒澤は目の前の敵の猛攻を封印術で跳ね返しながらも、次の一手を探り続けていた。

    「…次で終わらせる」

    彼女は静かな決意を込めてつぶやき、咎霊収束陣の規模をさらに拡大し始める。

    セルシーもまた、その言葉に応えるかのようにレコードに新たなビートを乗せて、炎蛇と氷蛇を最大限に解き放つ。

    激突する二つの力。焔と氷の狭間で、戦いの終焉が刻一刻と迫っていた。

  • 6921◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:47:05

    焔と氷が交錯し、空気が震え、焦熱と凍気が混ざり合う中、戦場は荒れ狂う嵐のようだった。

    黒澤漣火の体は既に半変異形態の異形の四肢で覆われ、動きは鈍くなっていた。封印の紋が燃え盛るように彼女の全身を包み、残された力を振り絞る。

    「ここで終わらせるわ…!」

    彼女の声は静かだが、強い決意が込められている。

    一方、DJセルシーは汗を拭いながら、レコードに手を伸ばす。だが、彼の目はどこか揺らぎを見せていた。

  • 6931◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:47:15

    「お前の覚悟、わかったよ」

    ゆっくりとレコードを止め、炎蛇と氷蛇を引き戻す。場の空気が少しだけ和らいだ。

    「俺も…これで終わりにしよう」

    漣火は深く息を吐き、全霊を込めて最後の咒印を描き出す。

    「咎霊終焉陣――!」

    巨大な封印陣が彼女を中心に展開され、赤黒い光が渦巻いた。

    セルシーはそれを見つめながら、静かに言った。

    「さあ、俺の最後の曲だ」

    彼がターンテーブルを叩き、最後の一音を放つと同時に、封印陣が閃光となって炸裂。

    周囲の空気が震え、炎と氷の狭間で激しい光の奔流が生まれた。

    光の中から、黒澤の姿がゆっくりと現れる。傷つきながらも、その目には確かな勝利の意志が宿っていた。

    「これで…終わりよ」

    セルシーは静かにうなずき、倒れこむ。

    「戦い…ありがとう」

    静かに幕を閉じた決戦。両者の心に、確かな敬意と戦いの痕跡が刻まれていた。

  • 6941◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 18:47:26

    以上

  • 695二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 18:53:28

    バチバチにぶつかり合ってるのはいいね

  • 696二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 19:05:05

    戦いながらちゃんと相手を認めてるセルシーさんすこ

  • 69766225/07/11(金) 19:07:18

    >>678

    申し訳ない

    弱点追加しても大丈夫か?


    ・あくまで招集された学徒兵程度の身体能力及び戦闘力しかないため動きを封じられればそのまま脱出出来なくなる

  • 6981◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:08:09

    >>697

    いいですよ

  • 69966225/07/11(金) 19:10:00

    >>698

    ありがとうございます

    言われてみればそうだなと言及されるまで気づかなかったです……

    今後気をつけます

  • 7001◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:26:54

    18号くん試運転

    題名『白刃と虹、骸の上で笑う』

  • 7011◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:27:42

    「……解析完了。対象、年齢およそ九歳。人間種。だが」

    冷たい電子音のような声が、白き装甲に包まれた存在から漏れた。
    キラ=エンゾウ。Hound-03《葬儀屋(モルグ)》。
    戦場の“清掃”を担う存在は、今まさに一人の少女を“標的”として捕捉していた。

    白く滑らかな神経膜が音もなく這い、彼の体表を包む。装甲は肋骨のように隆起し、全身が異形へと変貌してゆく。
    胸部の透明樹脂内、小さく並ぶ脳核たちが活性を示すように明滅する。

    「アナトミア=マナス、起動。構造解析開始。出力:制限解除」

    眼前の少女は、奇妙なほど楽しげに笑っていた。
    ――虹色の波動を、胸から溢れさせながら。

    「わぁっ、すごいね君! まるで怪獣みたい! その白いの、君の骨? それとも装甲? ねぇ!」

    凜は跳ねるように駆け寄りながらも、両手に持った細剣をクルクルと器用に回していた。まるでダンス。
    戦場の只中、恐怖のかけらすら見せない。むしろ楽しんでいる。

    「……警告。異常な精神反応を確認。戦闘下における喜悦、か。類例なし。構造解読困難」

    キラの分析処理が、微かに遅延した。

  • 7021◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:28:13

    その隙を突くかのように、凜が踏み込む。

    「チャンス!」

    笑った。その瞬間、虹色の何かが爆発したように空間を満たした。

    不可思議な力がほとばしり、重力が歪み、空気が逆流し、時すら一瞬だけ揺らいだように感じられる。
    キラの左肩部に“何か”が接触。即座に硬質装甲が膨張し、崩れた。

    「……不可視干渉、現象は解析不能。該当領域に物理規則の変容あり。継続調査」

    キラは冷静に損傷箇所を確認するも、即座に反撃へと移行。

    「白経刃(ナーヴェクス・ブレイド)、展開」

    その身から無数の曲刃が咲いた。神経と骨でできた刃が空間を切り裂き、笑う凜の周囲を取り囲む。

    だが彼女はただ、「すごいすごい! 君、本当にカッコイイね!」と笑った。
    刃が迫る――瞬間、またしても虹色の波動が溢れ、空間が――ねじれた。

    爆発的な回復、もしくは防御障壁、あるいは両方か――キラの攻撃は空中で霧散した。

    脳核が示す演算式に、ほんの一瞬、乱れが生じる。

    「……何だ、この“笑顔”は。解析に支障。非合理。だが」

  • 7031◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:28:40

    キラ=エンゾウの無機質な瞳が、脳核の一つと共鳴する。

    「殺さねば。機能障害の原因。除去対象」

    一方で、凜は笑っていた。どこまでも、明るく、眩しく。

    「ねぇ、君。私、佐藤凜っていうの。君は?」

    刃と笑顔が交錯する戦場。その中心で、異形と少女の戦いが、いま幕を開けた。

  • 7041◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:29:35

    「――展開完了。神経刃、全方位制御モード」

    キラ=エンゾウの全身から咲き乱れた白経刃が、次の瞬間、四方八方から渦を巻くように少女へと襲いかかった。
    それは斬撃ではなく、殺すための演算結果――軌道、角度、切断点、全てが“最も致死性の高い挙動”であった。

    だが。

    「うわあ! こんなにいっぱい飛んでくるの、初めて!」

    凜は双剣を交差させ、跳ね、回転し、笑いながら躱していく。
    細く華奢な身体が、死の螺旋の中を舞っていた。まるで蝶のように。

    (……予測外挙動。反応速度、演算予測を常時0.6秒上回る。なぜだ?)

    脳核が一つ、警告光を発した。情報の処理が追いつかない。

    彼女の動きには理がない。戦技の型も、体系も、なにもない。
    だがその全てが“生き残る”ために最適で、かつ――

  • 7051◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:29:57

    「うふふっ、楽しいなぁ。君、本当にすごいよ。今の刃、あたしの足首の神経狙ったでしょ? でも外れたー!」

    解析している本人の戦闘挙動を、あろうことか本人が“逆に解読して”いる。

    (……言語による挑発か。いや、違う。無邪気な賞賛……?)

    理解不能。
    そして、次の瞬間。

    「チャンス、だよっ!」

    凜が地面を蹴った。双剣を構えたその瞬間、胸部から溢れた虹色の波動が再び炸裂。
    空気中の粒子が震え、重力が軽くなる錯覚すら起きる。

    その中に混ざる、“何か”――

    回復? 強化? 呪詛? 精神干渉?
    キラの脳核群が情報の洪水に飲まれ、また一つ熱暴走寸前に陥る。

    (干渉タイプ特定不能。分類:存在異常。タグ:制御不能)

    「いけっ!」

    凜の剣が閃く。鋭い、細い、だが質量のある一撃が、キラの胸部装甲へ滑り込んだ。

    「ッ――」

    硬質な樹脂の表層が微かに軋む。だが即座に反射装甲が起動、リカレント・カスケット。
    圧縮された衝撃が反転し、凜へと跳ね返される。

  • 7061◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:30:18

    「うひゃっ!?」

    凜の小さな身体が吹き飛び、瓦礫に叩きつけられる。咳き込み、土煙が舞った。

    「……破損確認。対象の耐久指数:子供相応。破壊は可能」

    キラの足が一歩、静かに踏み出す。

    だがその足音をかき消すように、土煙の中から――
    また、笑い声が聞こえた。

    「わはっ……すっごいね君、それ跳ね返す技なんだ! びっくりしたよ……でも、これも“チャンス”かもね!」

    キラの脳核に、わずかにノイズが走る。

    (なぜ、笑う……?)

    人間ならば、ここで泣き、怯え、命乞いをしてもおかしくない。
    だがこの少女は、むしろこの状況を学び、楽しみ、次の“好機”を探している。

    「笑顔……というエネルギー源。感情の、力学的構造への影響は……」

    理性と演算の狭間で、わずかに混濁する脳核。
    その“混濁”こそが、キラ=エンゾウという機構にとって――
    致命的なエラーの兆しだった。

  • 7071◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:31:13

    「……予定通りにいかない、という事態は……」

    キラ=エンゾウの声が、微かに濁った。
    論理演算のみで構築されたはずのその声が、はじめて**“感情”のようなノイズ**を含んだのだ。

    (この子供の構造は、“異常”だ。笑顔によって発動する能力、それも分類不能の混成干渉。あらゆる法則から逸脱している。だが……)

    脳核の一つが、内部で熱膨張を起こす。
    過負荷だ。解析と予測を繰り返すたび、情報量が跳ね上がる。

    虹色の波動。笑顔。喜び。恐怖の欠如。戦場での賞賛。
    ――どれも「殺すための情報」にはなり得ない。

    「ふふっ、また固まってる。頭の中、ごちゃごちゃになってるんじゃない?」

    土煙を払いながら凜が笑う。頬には小さな傷、右腕には薄く擦り傷。
    だが彼女の足取りは軽く、双剣を手にくるくると舞ってみせる。

    「君の攻撃すごくて、めっちゃ痛かった。でも、だからわかることもあるでしょ?」

    笑顔で、まっすぐな瞳で、彼女は言う。

    「――痛みも、怖さも、全部、楽しいって思えるなら、“チャンス”はどこにだってあるの」

    その言葉に、キラの脳核群が一瞬沈黙した。
    そこにあるのは、情報ではなく意味。理屈ではなく実感。

    (……理解不能)

    白い装甲の下、キラの神経繊維が脈打った。

  • 7081◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:31:28

    次の瞬間――

    「セファロ・ランチャー、展開」

    パキン、と乾いた音がして、キラの頭部装甲が開いた。
    そこから露出した脳核が、歪んだ波動を纏い、振動を始める。

    「――熱圧縮、振動波放射。対象の精神領域に直接干渉」

    それは物理と精神を同時に焼き尽くす脳殻砲。
    まともに喰らえば、普通の人間など意識どころか、存在すら保てない。

    「発射」

    地鳴りのような爆音と共に、虹色の世界を貫く振動波が放たれる――

    けれどその瞬間。

    凜が――
    笑って、飛び込んできた。

    「チャンスだもんっ!!」

    自分から波動の中へ飛び込むなど、常識ではありえない。
    双剣を構えて、渦巻く狂気のような放射のただ中に、笑顔で踏み込む。

    「な――」

  • 7091◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:31:52

    一拍遅れて、キラの脳核が警告を発した。

    (“未知の力場”が“干渉”を変質……脳核への波動が、跳ね返され――いや、“再構築”されている……?)

    凜の胸から吹き出した虹色の力が、キラの攻撃の性質そのものを“書き換え”ている。
    まるで現実改変だ。だが違う。これは彼女自身の力ではなく――

    「チャンスが来てるんだもん、当たり前じゃん!」

    脳殻砲の放射が、まさかの“反転”。
    キラ自身の脳核の一つに直撃し、装甲内部で破裂音が響く。

    「内部損傷。脳核1基、沈黙」

    沈黙した声が、初めて明確に“焦り”を含んだ。

    「これは……誤算だ。いや、“誤算”という言葉で処理できる範囲を超えている。これは――」

    彼は静かに、しかし確かに震え始めた。

    「これは、“恐怖”だ。……私は、恐怖を、感じている……?」

    演算処理のどこにも該当しない感情。
    否定すればするほど、増幅してゆく。

    そのとき――凜がそっと、歩いて近づいてきた。

    「ねぇ……君も、笑ってみたらどうかな?」

    光の中で、少女は微笑んだ。まるで、救いを差し出すように。

  • 7101◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:32:34

    「……やめろ」

    低く、損傷した装甲の奥から、キラ=エンゾウの声が漏れた。

    それは怒りでも、警告でもない。
    ただ、苦しげな呟きだった。

    「やめろ……その笑顔で、私を……構造できない感情を、解析不能な概念を、押し付けるな……ッ!」

    彼の脳核はすでに二基が沈黙していた。
    残る三基のうち、一つはすでに誤作動を起こし、“喜び”という曖昧な信号を生成しはじめていた。

    (私は……兵器だ。人類の敵を殺すために生まれ、改造され、戦場でのみ意味を得る)

    それなのに――

    「どうして、君はそんな目で……私を“人”として見る」

    凜は何も言わず、ただ近づいてきた。
    その歩みは慎重で、まっすぐで、まるで“怖がっている相手にそっと手を差し出す”ような歩き方だった。

    「私、ね――」

    凜が双剣をおろし、ふわりと微笑む。

    「君のこと、ちょっとだけわかる気がするんだ。すっごく冷たくて、すっごく遠いところにいたでしょ?」

    キラの装甲の一部が反応し、思わず一歩後ずさる。
    だが、凜の言葉は止まらない。

  • 7111◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:33:11

    「私の兄もね、昔すごく遠くにいた。誰の言葉も届かなくて、ずっと一人で戦ってて……でもね、私、諦めなかった。だって、誰だって心があるって思うから」

    そして凜は――にこっと、心からの笑顔を見せた。

    「君も、どこかで泣いたこと、あるでしょ?」

    その言葉が、キラの脳核に走った。

    (“泣いた”……私が……? 否。私はそんな記憶は……)

    ――ないはずだった。
    だが、脳核の最深部から、古い記録が呼び出される。

    幼少期。改造前。
    誰かの声。誰かの手。痛み。恐怖。そして――その夜、声もなく流した涙。

    キラの全身が、ぎちりと軋む。

    「違う。違う……私は兵器だ、私は……人間では、ない……!」

    彼の全身から、再び神経刃が咲いた。
    形は先ほどより歪で、揺らぎ、焦燥を映すように曲がっていた。

  • 7121◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:34:24

    「白経刃、最大展開――!」

    悲鳴のような咆哮と共に、戦場に千の刃が舞う。
    それはまるで、自分の心を覆い隠す“拒絶”そのものだった。

    凜は双剣を構え、刃の嵐の中に飛び込んだ。
    笑顔のまま、戦いながら叫ぶ。

    「それでも! 私は――君のこと、笑って見てたい!」

    虹色の波動が炸裂する。
    奇跡的な反射、予知にも似た直感、肉体の限界を超えた加速。

    刃を躱し、滑り、切り伏せながら、凜はキラの懐へと迫っていく。

    「お願い、君の心が死なないで!」

    彼女の叫びは、ただの子供の言葉だった。
    だが――それは、どの武器よりも深く、正確に、キラの中心へと突き刺さった。

    (……助けたい、のか? この私を?)

    存在の根幹が軋む。
    人でもなく、兵器でもなく、“名もない何か”として生きてきた彼の中に――確かに、何かが生まれつつあった。

    そして。

    「……やめてくれ……笑うな……これ以上、私の構造を……壊すな……」

    だがその懇願は、もはや“人”の声だった。

  • 7131◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:36:19

    「解析不能領域、臨界点を超過。演算不能。脳核、制御系統より離脱」

    警告音が、キラ=エンゾウの内部で鳴り続けていた。
    白い骨格装甲の下、透明樹脂に守られた脳核が、次々に警告を赤点滅に変えていく。

    (これは“バグ”だ……)

    否。

    (これは“感情”だ……)

    彼は理解してしまった。
    それが兵器にあってはならない、“意志”というもの。

    「――君の中にある、誰かになりたい、って声」

    凜の声が、まっすぐに突き刺さる。
    彼女はボロボロだった。髪は乱れ、服は破れ、体中に擦過傷。
    けれど、ただ一つ、笑顔だけは崩れていなかった。

    「私ね、君のこと、すごくカッコイイって思ってる」

    その一言で――キラの動きが止まった。

    「……どうしてだ」

    傷ついた喉奥から、割れた声が漏れた。

  • 7141◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:36:32

    それはもう、兵器の冷たい人工音声ではなかった。

    「どうして……私は君を殺そうとした。お前の命を奪おうとした……。なぜそんな目で、私を……?」

    「だって、君はまだ生きてるからだよ」

    凜はそっと、胸に手を当てた。そこからふわりと、虹色の波動がまた優しく広がっていく。

    「生きてるって、ね、泣いたり怒ったり苦しんだりすることだと思う。でもそれって、全部“自分で感じてる”ってことなんだよ」

    彼女の言葉に、キラの脳核がひとつ、静かに光を失った。

    「だから……“君”にも、名前があるってことになる」

    「名……前……?」

    ふらりと一歩、キラが膝をついた。
    装甲のあちこちが軋み、白い神経膜が剥がれ始める。変身状態の維持限界だ。
    でも、それはまるで“脱ぎ捨てようとしている”ようにも見えた。

    「君の“キラ=エンゾウ”って名前、好きだな。強そうで、綺麗で、ちょっと寂しそうで……でも優しそう」

    凜がそっと歩み寄り、その名を繰り返す。

    「キラ=エンゾウくん。君は兵器なんかじゃない。君は君だよ」

    言葉は、ナノ神経繊維よりも細かく、どんな演算よりも正確に――

  • 7151◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:36:56

    キラの中へ染み込んでいった。

    (――私は……キラ=エンゾウ)

    初めて、自分で、自分の名を思った。

    戦うために生まれ、殺すために組み上げられた構造体。
    だがその中に、“名前”という意味が灯った。

    それは兵器にとって最大のエラー。
    だが、生き物にとっては最初の祈り。

    「……私は、君を……殺せない」

    キラがそう言ったとき、戦場にあった全ての神経刃が、静かに崩れ落ちた。

    虹色の波動がその場を包み、瓦礫の下に咲く小さな花までもが優しく揺れる。

    そして、少女はそっと彼の傍らに座り――
    「よかった」と、小さくつぶやいた。

    それは勝利ではなかった。征服でもなかった。
    ただ、ひとつの命を“救った”、それだけだった。

  • 7161◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:38:55

    戦場に、静寂が降りていた。
    白経刃は全て消え、神経膜は脱落し、キラ=エンゾウの姿は再び人間に近い輪郭を取り戻していた。

    胸部の透明樹脂には、損傷した脳核が淡く光りながら沈黙している。
    機能停止。だが、残った核が――生存のための再構築プロトコルを静かに開始していた。

    「……動けるかい?」

    凜の声が、近くで響く。
    彼女はすでに座り込んでいた。両手に抱える双剣は、どちらも刃こぼれし、虹色の波動ももう薄れていた。

    だがその顔には、やはり笑顔があった。

    「……問題ない。自己修復は……時間がかかるが、可能だ」

    キラは低く答えながらも、その声にはもう硬質な音は含まれていなかった。
    かつて医師のように淡々と語っていたあの響きは、今はどこか、静かな人の声に近い。

    「ならよかった。ほんと、強かったもん。私、何回か死ぬかと思った」

  • 7171◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:39:08

    「お前は、なぜあそこまで無謀な行動を?」

    問いかける声は真っ直ぐだった。怒りも戸惑いもなかった。ただ、知りたかった。

    「んー……“誰かを壊す人”より、“誰かを救おうとする人”のほうが、ずっとカッコイイから、かな」

    それが答えだった。

    戦うために能力を使うのではなく、
    救うために命を張る。
    だからこそ、彼女の“異常”な力は、恐るべき破壊性を秘めながらも――どこまでも希望に満ちていた。

    「君も、これからは……そうなれるかもね」

    「……私は、そうなってもいいのか?」

    キラが問うた言葉は、まるで子どものようだった。

  • 7181◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:39:25

    自我という名の小さな芽を、誰かに許してもらいたがっている。

    「なれるさ。だって君、私の名前ちゃんと呼んだじゃん」

    凜は立ち上がり、手を差し出した。

    「私は佐藤凜。君は……キラ=エンゾウ、でしょ?」

    沈黙の中で、キラはその手をじっと見つめた。
    焼け焦げた手甲から、わずかに人の肌が見えていた。

    そして彼は、
    初めて“躊躇い”なく、その手を取った。

    小さく、か細いが、確かに温もりのある手だった。

    「……ああ。私は、キラ=エンゾウだ」

    その言葉は、もはや記録されたコードではなかった。
    自分で名乗った、自分の名だった。

    空に、雲の切れ間から光が射す。

    戦場の片隅で、笑顔と骸の上に、ほんの少しの未来が生まれようとしていた。

  • 7191◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 19:39:40

    以上

  • 720二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 19:41:50

    あったけぇ……

  • 721二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 19:42:56

    佐藤兄弟は誰かを救う運命でもあるのか!!最高!!

  • 722二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 19:43:56

    やっぱ幼女相手だと名勝負が生まれていいね

  • 723二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 19:46:20

    凛がピンチの時絶対カッコよく助けに来るだろコイツ

  • 724二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 20:15:36

    このレスは削除されています

  • 7251◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:18:43

    >>724

    ○○神→その分野において後にも先にも並ぶ者がいないであろう存在

    神域級→ある分野を極める、または概念に干渉できるほどに戦闘力が高い存在

  • 7261◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:47:38

    題名『記録者と献灯』

  • 7271◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:48:16

    「……ここは、私の管理下にない領域ですね。妙な気配です」

    乾いた岩肌と、滴る液体の音。異質な気配に導かれ、擦主偉土は断崖の縁に立っていた。空は紫に濁り、赤黒い泥が波のように這っている。その中心、溶けるように存在する影——それが彼女だった。

    「あなたが、この世界に異常をもたらしている存在ですか?」

    粘性を湛えたそれは、ふるふると震えた。そして女性の輪郭をかすかに模したような柔らかな顔つきが浮かび上がる。

    「わたしは『溶けゆく犠牲』。この星を治すために、生き物を喰ってるの。あなたも、献上してくれる?」

    その声音は無垢で、どこか哀しげだった。けれど、その足元から這い出る子スライムたちの口が、にやけるように裂けている。

    「そうですか。ならば話し合いは、少々難しそうですね」

    擦主は静かに息を吐き、前へ一歩。

    その刹那、地面が濡れたように溶け、液状の腕が彼の足を掴みに来た。

    「……なるほど、触れるだけで侵食を始めるタイプですか」

    接触と同時に、スライムの肉体が擦主の靴と脚部の繊維を侵し、微細な粘液が皮膚表層に侵入していく。数秒もせぬうちに、白い靴下の繊維がぷつぷつと気泡を含み、肌が変質を始めていた。

    「これは、相当に厄介な技術ですね」

    擦主は脚を引き抜くでもなく、そのままスライムに向かって微笑した。

    「ですが——私は、まだ美味しいものを食べていないのです」

  • 7281◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:48:40

    乾いた空気が、彼の言葉と共に一変する。霧が晴れるように、擦主の気配が変わった。力ではない。**“重み”**だ。神性すら孕んだ“在り方”が、世界の底を押し返すように湧き上がる。

    『溶けゆく犠牲』の笑顔が、わずかに歪む。

    「……変ね。どうして、供物になってくれないの?」

    子スライムが次々に跳ね上がり、擦主の身体に触れようとする。だが、その瞬間——

    **“ぷつっ”**という音と共に、跳ねた子スライムの一匹が突如破裂した。何かを受けたのではない。ただ、存在そのものが拒絶された。

    「……あなたの能力。侵食ですね。触れることによって構造を破壊し、再構成し、供物として取り込む。ならば——」

    擦主は右手をひらりと掲げた。

    「触れても、“あなたの理が届かない場所”を用意すればいいのです」

    彼の右手に、何もない“空白”が浮かんだ。記録と物質の齟齬。それは力ではなく、擦主が持つ“この世界を知り尽くした者”としての理解と否定。

    『溶けゆく犠牲』は静かに呻いた。彼女の供犠の理が、そこには届かない。

    「どうぞ、続けてください。私は、あなたを否定することすらできませんから。ただ、遊びましょう。あなたがこの世界を喰らい尽くす前に、私が満腹になるまで」

  • 7291◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:49:21

    「“あなたの理が届かない場所”……そんなの、あるはずない」

    『溶けゆく犠牲』は囁くように言った。だが、口では否定しても、彼女の身体は確かにそれを感じ取っていた。触れたはずの擦主偉土の右腕、その“空白”に触れた子スライムは、瞬時にして侵食される側へと反転したのだ。

    「わたしの供犠は、完璧な筈……。どんな物理的な傷でも、“再生”に変わるはずなのに」

    「確かに、あなたの供犠は見事ですね。実に精緻で、理知的で、美しい技術です。……ですが、美しいからこそ、脆いのです」

    擦主は、あくまで穏やかに語る。無能力者——力の一切を持たぬ存在の言葉とは思えぬ説得力で、彼は“世界そのもの”のように、静かに、確かに在り続ける。

    『溶けゆく犠牲』は指先を翳した。その指がとろりと崩れ、数十の細胞状小型スライムへと変化する。彼女の能力の本質は接触による侵食と同化。そしてこの“再分裂”は、彼女の特性を最大限に生かす戦法。

    子スライムたちはそれぞれが侵食装置として機能し、相手の一部を奪い、再構成していく。供物の総量が増えれば、彼女の身体も無限に増える。再生、増殖、拡散——すべてが融合した、“群体侵略”。

    「じゃあ、もっともっと触れればいいんだよ」

    子スライムたちが一斉に跳ね上がる。十、百、千。その数は一瞬で大気を染め、無数の手が擦主へと殺到する。空間ごと喰らい尽くす、青白い波。

    ——だが、その中心、擦主偉土は動かない。

    彼が行ったのは、ただ、歩くこと。世界を知り尽くした管理者の一歩。
    その“歩み”は、子スライムたちの存在根拠を一つずつ、静かに抹消していった。

  • 7301◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:49:37

    「あなたの供犠は、あくまで“物質的な損傷”を糧とします。ですが、私の歩みは、損傷という概念を“無視する”ものです」

    一歩。

    子スライム十体が、接触の瞬間に粉微塵に。

    二歩。

    侵食された空間そのものが“なかったこと”になり、供物が失われる。

    「あなたはとても優しいスライムですね。命を食いながら、世界のために動こうとする。その覚悟と目的は、尊い」

    三歩。擦主の手が、彼女の額すれすれに届いた。

    「——けれど、私は“あなたの理想のための犠牲”になるつもりはありません」

    その瞬間、『溶けゆく犠牲』の背にあった“本体核”が震えた。

    擦主は、手を添えるだけで、彼女の本質へ触れようとしている。
    否、それを**“記録”しようとしている**。

    「やめて……やめてよ……そこは……!」

    『溶けゆく犠牲』が叫ぶ。供物で構成された自己の中心核。かつて人間だった少女の心臓——その“名残”。それに干渉されることは、彼女の存在そのものが崩れる危険を意味する。

    「私は、まだ……!」

    だが擦主は微笑んだままだ。

    「だからこそ、私は知りたいのです。あなたがなぜ“溶けゆく犠牲”であるのかを」

  • 7311◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:50:42

    「——私は、記録をします」

    擦主偉土の言葉が、静かに響いた瞬間、
    世界が、沈黙した。

    どこまでも広がっていた侵食スライムの波も、触れるものすべてを取り込もうと蠢いていた群体も、まるで一枚の絵画のように“静止”していた。

    いや、違う。
    それは擦主が力を使ったわけではない。
    **“世界が、彼に従った”**だけだ。

    「記録のため、あなたの本質へ触れます。……苦しむようであれば、どうか叱ってくださいね。私はただ、知りたいだけなのです」

    偉土の指が、ふわりと触れた。『溶けゆく犠牲』の胸の奥、透き通ったスライム組織の最奥に封じられた——記憶に。



    次の瞬間、彼らは在りし日の一室にいた。

    アルコールの匂い。消毒液。光のない研究室。
    医療スライムXI号シリーズの開発記録。実験。供犠。失敗と成功と、それに対する「最も効率的な器」として選ばれた少女。

    『わたしは選ばれたの。お兄ちゃんを生かす代わりに。身体、いらないって。感情も……いらないって』

    誰かのために、望まれた犠牲。誰かを守るために、自分の肉体を差し出す。
    ——そうして彼女はスライムになった。

    「あなたは、傷を治す存在になった。しかし同時に、傷を生み出す存在にもなってしまった」

    『溶けゆく犠牲』の心の声が震えている。彼女は悪ではない。世界を壊そうとしているのではない。ただ、自分に課せられた役割を、信じて生きているだけ。

  • 7321◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:51:07

    「それなのに……なんで、あなたは……!」

    精神世界で、彼女は偉土を睨んだ。怒りでも、敵意でもない。叫びのような、問い。

    「なんで、あなたは壊れないの!? なにも持ってないのに、なにも許されないのに、なんで平然と立ってるの!?」

    擦主は、すこし困ったように微笑んだ。

    「私は、世界の管理者だからです。あらゆる不条理を見てきました。……ですが、正直に申しますと」

    偉土は、目を細める。

    「少しだけ羨ましかったのですよ。あなたのように、誰かのために身を焦がす覚悟を、私は持てませんから」

    沈黙。
    精神世界は、ゆっくりと溶け出す。『溶けゆく犠牲』の意識が現実へと戻る。

    しかしそこには、変化があった。擦主偉土が“記録”したことにより、彼女のスライム核の“供犠の回路”にわずかな綻びが生まれていたのだ。

    「あなたは……わたしの……痛みに、触れた……?」

    「ええ。あなたの傷は、確かにこの身に刻まれました。ですので、これから私がすることは、ただの戦いではありません」

    擦主はゆっくりと距離をとる。その手には、何かを握っているようにも見える。おそらくそれは、“記録された彼女の痛み”そのものだ。

    「あなたが供犠の理に囚われるのであれば、私はそれを“記録として封じる”。それが私にできる、最大限の対話です」

  • 7331◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:51:33

    ——再接触の瞬間、それは起きた。

    『溶けゆく犠牲』の身体が、まるで沸騰するように膨張を始めたのだ。彼女の意思とは無関係に、内側から溢れ出す再生の奔流。供犠によって得た“物理ダメージの蓄積”が、核の綻びによって“制御不能な治癒”に変質していた。

    「……っ、だめ、止まらない……! 供物の制御が……!」

    全身がちぎれ、増殖し、再生する。回復によって生まれた肉体が、また供物となって自身を侵し、さらに再生される。
    無限再帰のスライム反応。言うなれば“供犠の暴走”。

    「……これは、予想よりも深刻ですね」

    擦主は目を細め、淡く笑う。すでに彼の周囲では、再生された『溶けゆく犠牲』の身体断片が海のように拡がり、無差別に侵食を始めていた。通常であれば彼女が制御していた“善性”が、今や暴走した回復機構として、敵味方を問わず飲み込もうとしている。

    「こうなると、あなたの能力は“世界そのものの破壊”へ向かってしまいますね。……残念です」

    擦主の足元が、ついに溶ける。靴底から脚へ、侵食が這い上がる。だが、彼は動じない。

    「……私の身体は、記録でできています。つまり、“あなたに侵される記録”がなければ、侵されません」

    そう語ると同時に、侵食が止まる。
    正確には、擦主が“侵食された事実そのもの”をなかったことにした。

    「けれど、それでも。あなた自身がこの世界を破壊するような存在になることは、私の本意ではありません」

  • 7341◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:51:50

    擦主はゆっくりと片膝をつき、手を地に置いた。そこに流れ込むのは、“記録”ではなく、“選択”——この世界に対して為すべき行為の選択権そのもの。

    「私は、能力はありません。ですが、世界の管理者です。あなたの供犠が暴走したなら、それを——止めるための“手続き”ぐらいは、用意しています」

    その瞬間、大地がひび割れた。スライムの海に沈みかけていた世界が、わずかに浮上する。
    大気が静かに震え、音もなく“構成式”が現れる。構成ではない。これは封書——世界の法が定めた、唯一の“改訂命令”だ。

    「あなたの供犠、暴走状態。対策案:供犠機構の一時封鎖、スライム構成因子の再統合、核へ全データを回収」

    擦主偉土が掲げたその一枚の“書”は、神でも魔でもなし得ぬ“世界の再編集”であった。

    『溶けゆく犠牲』が、それを見て泣きそうに目を見開いた。

    「……それじゃあ、わたし、元に戻れなくなる……」

    「いいえ。あなたが望むのであれば、私は“あなたが元に戻れるよう記録し直します”」

    「そんなこと……できるの……?」

    「できますとも。私は、そういう役割ですから」

  • 7351◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:52:11

    「……本当に、できるの?
    わたしを“元に戻す”なんて……」

    今や暴走する供犠の海のただ中で、『溶けゆく犠牲』の“核”がむき出しになっていた。スライムで構成された偽の肉体は崩れ続け、再生と崩壊を繰り返す地獄の輪。

    しかしその中央、擦主偉土だけは一歩も退かず、まるで穏やかな天のように、そこに立っていた。

    「元に戻す、という言い方は語弊がありますね。あなたは元々、こう在ったのです。誰かのために生きたいと願う少女だった。私はただ——“その記録を明確にし、あなたが選べるようにする”だけです」

    偉土が手にする一片の記録書が、ふっと光る。
    それは、彼が“彼女の核”から読み取った唯一の純粋な祈り。

    ——“誰かを治したい。生かしたい。犠牲ではなく、助けたい”。

    「……そんなの……わたしじゃ、ない……。
    わたしは、もう人間じゃない。痛みも、感情も、全部、捨てたのに……」

    スライムの体が揺れる。波打つ粘体の中、かつての少女の声が泣き叫ぶ。

    「全部、捨てたのに! 生きていたら、また誰かを助けたくなる……! それが怖いの……!」

    擦主はゆっくりと歩み寄る。暴走した供犠が、まるで潮のように彼の足元をよけて割れていく。彼が“そうあるべきだ”と記録したから。世界が、それに従っている。

  • 7361◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:52:39

    「いいのです、怖くても。
    私は、あなたが誰かを助けようとして迷った時、必ず記録します。あなたの選んだすべてが“間違いではない”と、証明します」

    そっと、彼の手が彼女の核に触れた。

    記録が、上書きされる。

    暴走した供犠の構成因子が一つずつ、静かに収束していく。
    供物にされかけた肉体の残骸が、役割を終え、癒しの素材として統合されていく。
    もはや“犠牲”は必要ない。
    彼女は“誰かを治す存在”として、ただそこに在ればいい。

    『溶けゆく犠牲』の核が、再構成される。

    透明な光が辺りに満ち、全てのスライムが柔らかく光に包まれて、眠るように崩れていった。

    「……わたし、名前……忘れちゃった」

    少女の声が、かすかに聞こえた。

    「では、私が仮に記しましょうか。
    あなたは“犠牲”ではない。むしろ——“癒し”です」

    擦主偉土は、そっと彼女に名を与えるように言った。

    「“献灯(けんとう)”。闇の中でも、誰かの痛みに寄り添う光。……それが、あなたの名前です」

    少女の核が、ふっと震え、微かな笑みを浮かべた気がした。

  • 7371◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:53:19

    空気が変わった。

    紫に濁っていた空は澄みわたり、灰色の地表には静かに光が射し込んでいた。
    もうそこに、供犠の海も、瘴気のようなスライムの濁流もない。あるのはただ、静けさ——そして再生の名残。

    擦主偉土は、ひとつ深く息を吐き、腰を下ろした。

    「……ふう。やはり少々、疲れましたね。こう見えて、耐久力以外は一般人なのです」

    その隣、かつて『溶けゆく犠牲』だったものが、
    今は少女の形を模した、柔らかなスライムの核の姿で浮かんでいた。
    核の内奥で、薄い光が灯っている。

    「……ほんとうに、“献灯”でいいの?」

    「ええ。“犠牲”ではなく、あなたが自ら差し出す灯り。
    誰かを照らすために、自分の心を小さく燃やす存在。あなたにぴったりでしょう?」

    少女——献灯は、ふわりと笑った。
    その笑顔には、かつての無垢さも、供物として選ばれたときの痛みも、すべてが宿っていた。
    そして、今ここに“受け止められたこと”の安らぎも。

    「ねぇ……擦主さんって、ほんとうになんにも出来ないんだよね?」

  • 7381◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:53:45

    「ええ、何一つ。能力も武器もありません。
    ただ、“知っている”だけです。世界の始まりと終わり、あなたの記憶、その涙の重さ。……それだけです」

    「それって、ぜんぶ、わたしの中にもあるってことだよね?」

    「そうですね。だからこそ、あなたはもう、犠牲ではなく、選ぶ者になれるのです」

    献灯は空を見上げた。
    もう、世界が怖くはなかった。誰かのために溶けることも、助けたいと願うことも——怖くない。

    なぜなら、その“痛み”を、擦主偉土が記録してくれる。
    選び、間違い、泣いてもなお、それを“存在ごと肯定してくれる”者がいる。

    「……今度は、わたしが誰かを癒す番なんだね」

    「そのように記録されました。あなたは確かに、そう望みましたから」

    擦主は静かに立ち上がり、背を向けた。

    「それでは、私は次の異変を記録しに行きます。献灯さん。どうか、良い旅を」

    「うん。……擦主さん、ありがとう」

    彼女の言葉に、擦主偉土は振り返らず、ただ右手を軽く振って応えた。
    その歩みは、やがて誰かの絶望にたどり着くのだろう。
    そしてまた、誰かの“犠牲”を、“灯火”へと変える。
    彼は何も持たない。
    だからこそ、すべてを記録し、誰よりも深く、痛みを知る。
    ——それが、擦主偉土。
    そして今ここに、“献灯”という名の新たな光が、生まれたのだった。

  • 7391◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 20:55:21

    いじょう

  • 740二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 20:56:34

    スレ主ーーっ!
    かっこいいぞーっ!

  • 741二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 20:59:29

    擦主偉土君に対してスレ主さんからなにか一言ください

  • 7421◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 21:00:12

    ワタシハソンナニカッコヨクナイデス

  • 743二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 21:13:44

    敬語の強者ってのもいいねぇ

  • 744二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 22:39:36

    世界がどうこう、とかいう場所ヤメイ味を感じる

  • 745二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 22:40:40

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  • 7461◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 22:43:30

    題名『勝てなかった夜、赦された題名

  • 7471◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 22:45:15

    その夜、王都ルドリアには不穏な霧が漂っていた。

    月も星も隠された夜空の下、騎士団長アルティア・ヴァレンシアは、裸足のまま、風のように路地を駆けていた。夜ごとにだけ許される“逃避”の時間。堅牢な鎧を脱ぎ捨て、重圧と規律を忘れるための静かな徘徊。彼女にとって、これは破滅であり、救済でもあった。

    「……また、こんなところで……私は何をしているのだろう」

    誰にも見られてはいけない。そう、誰にも。

    だがそのときだった。霧の向こう、石畳の上に――人影があった。

    「……誰?」

    彼女はすぐさま構えを取る。全裸とはいえ、その身には剣士として鍛え抜かれた反射と威圧が宿る。だが、男は構えるでもなく、ただ静かにそこにいた。

    古びた軍服。泥にまみれたブーツ。時代錯誤の鉄帽。そして少年のような面差し――だが瞳には、深い闇と光が同居していた。

    「名を。名を名乗れ」

    「……ヨシナガトミキチ。軍属の歩兵……任務遂行中」

    その声音は淡々としていて、冷たいわけでも、温かいわけでもなかった。ただ、ひどく真っ直ぐだった。

  • 7481◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 22:46:48

    アルティアは一歩前へ出る。砂利が足裏に食い込む痛みすら、今は心地よい。

    「……この王都における軍の配置は、すべて私の管理下にある。貴様のような兵士は――見たことがない」

    「自分はこの世界の軍ではない。任務は、約束を守ること。悪を討ち、エイコのもとに還ること」

    意味不明な言葉。しかし、その言葉の端々に込められた確信が、アルティアの本能を刺激した。彼はただの狂人ではない。何かが――違う。

    「……ならば問おう。“悪”とは何だ。王都を徘徊する、この裸の女は……悪か?」

    「……」

    トミキチの瞳が、アルティアの素足から、肩、頬までを見た。だが一切の色欲も嫌悪もない。ただ、戦場に咲く名もなき花を見るような、どこか懐かしいまなざしだった。

    「今は、判断できない。だが、自分に敵意を向けた。ならば、応戦する」

    「そうか――ならば私は、騎士団長として問う。貴様の正義、そして“勝利”の意味を!」

    アルティアの足元に、剣が落ちる。赤いマントのような髪が翻り、騎士団長の“仮面”が戻る。

    真夜中の街にて、騎士と亡霊のような兵士が対峙した。
    どちらが悪で、どちらが正義か。
    ――それはまだ、誰にもわからなかった。

  • 7491◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 22:52:41

    剣が閃いた。

    衣を纏わぬ身体から放たれる一太刀。恥じらいや羞恥心を超えたそこには、ただ一人の“剣士”としての威厳と覚悟があった。
    空気を裂き、霧を払い、地を穿つ――これが、ルドリア王国が誇る、最強の剣技。

    「斬ッ――!」

    だが、トミキチはそれを避けなかった。
    いや、“避ける必要がなかった”。

    剣閃が彼の首を断ち切った瞬間――血が噴き出すことも、肉が崩れることもなかった。

    「……なに?」

    アルティアの眉がわずかに動く。
    間違いなく、致命の一撃だった。だが、斬られたはずの男は、まるで何もなかったかのように、静かに軍刀を抜く。

    「自分は、死なない。死ぬはずがない。
    エイコと約束したから……戻るまで、生きていなければならない」

    次の瞬間、トミキチの軍刀が動いた。
    洗練された動きではない。肉体は学徒兵のままだ。踏み込みも遅く、予備動作も多い。
    だが――彼の一撃は、決して外れない。

    「“どんな敵にも勝つ”……貴様のそれが、“勝利”か!」

    アルティアは剣を翳し、身体を捻って軍刀の軌道を最小限で受け流す。だが、切っ先は予測不能な角度で迫る。正規兵ではあり得ない、常識外れの“修正軌道”。

  • 7501◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 22:53:54

    「……剣技でも、身体能力でもない……これは、“概念の勝利”」

    空を裂く火花。鋼が鋼を噛み、跳ね返す音が夜を切り裂く。
    彼女の剣は完璧だ。的確に隙を突き、弱点を狙う。だが、トミキチは“勝つ”――そう決められているかのように。

    「お前……まるで、神託の兵か……!」

    「自分は、ただの兵士。
    だが、約束した。だから勝たなければならない。正義でなければならない」
    言葉の裏に、強制力すら感じさせる――異様な“執念”。
    それは使命というにはあまりに個人的で、神の奇跡というにはあまりに悲しい。

    「ならば私は、貴様のその“正義”に刃を向けよう。
    私は騎士。王国のために、己の信じる正義を貫く者!」
    再び剣が閃く。だが、そこには揺らぎがあった。
    なぜなら、アルティアの中で――カイルの姿と、トミキチの背が重なりかけていたから。

    「貴様は、戦場を背負っているのか。
    それとも、ただの少女の約束のために戦っているだけなのか!」

    トミキチの動きが、そこでわずかに止まる。

    「……どちらも、正しいと思っている。エイコも、戦場も、正義も。
    全部守らなきゃ、意味がない……」

    その矛盾こそが、彼を歪めていた。
    アルティアは悟る。この男の力は、哀しみの副産物だ。
    “守れなかった”という痛みから目を背けるために、自らを不死へと縛り付けた。

    「……ならば、私はお前を討つ。正義の名の下にではない、哀しみの果てを断ち切るために!」

  • 7511◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 22:58:55

    火薬の匂いが、鼻を突いた。
    それは目の前の霧が裂けたとき、アルティアが嗅いだものではない。
    ヨシナガトミキチの――記憶だった。

    「……これは、何だ……?」

    彼女の視界に広がるのは、雪に染まった戦場。瓦礫の中、逃げ惑う市民。銃声。悲鳴。地に伏す少年兵たち。
    そして、トミキチの隣にいた、小柄な少女。
    病弱そうで、肌が透けるように白い。咳き込みながらも、笑っていた。

    ——“絶対に戻ってきてね。お兄ちゃんは、きっと立派な軍人になるんだから”

    「……エイコ」

    トミキチの声が、あまりに静かに、記憶の中で響いた。

    その言葉とともに、視界は再び王都の夜に戻る。
    アルティアは剣を構えたまま、じっと彼の瞳を見つめていた。そこには怒りも敵意もない。ただ――深い哀しみだけがあった。

    「……その約束を果たすために、お前は何を代償にした?」

    「命。名誉。……時間。
    自分は、死ななくなった。誰に撃たれても、焼かれても、刺されても、砕かれても、生きている」

  • 7521◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 22:59:24

    トミキチはゆっくりと歩を進める。
    歩みはぎこちない。軍靴の音が、地面にすら馴染まない。
    その姿に、アルティアは見覚えがあった。

    “歩けるけれど、生きていない”兵士の姿を――幾度も、戦場で見てきた。

    「……私は、数えきれぬほどの命を背負っている。
    命令のために部下を斬り、勝利のために友を見捨てた」

    彼女の剣が、わずかに下がる。
    夜風が、汗を拭う。だがその背中には、裸のままでは到底支えきれぬ重さが宿っていた。

    「夜な夜な街を彷徨うのは、赦しを請うためか?」

    トミキチの問いは、無機質なようでいて、どこか人間的だった。
    アルティアは、一瞬目を見開いたが――すぐに、微笑した。

    「いや。あれは、私がまだ……人であるための儀式だ」

    彼女は静かに語る。
    騎士団長としての完璧な仮面。その内側に潜む“本当の私”が、カイルへの想いに揺れていること。

  • 7531◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 22:59:42

    自分が築いた地位も、守った国も、誰かと寄り添うこととは無縁であること。
    騎士とは、人であってはならないのだ。

    「……私は、誰かのために生きることを、もう許されていないのかもしれない。
    だが――それでも、誰かを“守る”戦いは、やめられない」

    トミキチの眉がわずかに動いた。
    それは、まるで自分の胸奥にしまい込んだ“答え”と、似たものを聞いた気がしたからだ。

    「お前もそうだろう?
    “守れなかった”ことを悔い、“守りきる”ことに呪われている」

    「……違わない」

    淡々と、彼は肯定した。

    「……ならば、トミキチ。私の剣を受けよ。
    私はもう“勝つため”では戦わない。“赦されるため”でもない。
    ただ――お前と同じ哀しみを、共に断ち切るために、この剣を振るう」

    次の瞬間、空が割れた。

    アルティアの剣が――そして、トミキチの銃剣が――互いの“正義”と“願い”をぶつけるように再び交差した。

  • 7541◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 23:02:48

    「抜剣、式・九番《閃影断》――!」

    夜を裂く閃光が、空を貫いた。

    それはただの剣撃ではない。
    数々の戦場を生き抜いたアルティア・ヴァレンシアが、敵の構造、反応、重心、息づかいすべてを読み取り、一太刀で勝敗を決する剣。

    だが。

    その剣は、トミキチの胸を貫いたにもかかわらず――勝敗を決さなかった。

    「っ、……また……これか……!」

    アルティアは歯を噛みしめた。
    すでに幾度も致命を与えたはずだった。喉を斬り、心臓を突き、動脈を断った。
    だが、トミキチは何度倒れても、必ず立ち上がる。

  • 7551◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 23:04:02

    「勝てない……のか、私では……!」

    「違う」

    声がした。
    朦朧とする視界の中、トミキチが、ひざまずいたまま、銃を支えにして立とうとしていた。

    「勝ってるのは、あなたのほうだ……ずっと、そうだった」

    「……何を、言っている?」

    「あなたの剣は……誰かのために振るわれていた。
    でも自分の銃は、“エイコのため”って言いながら……結局、自分の後悔を塞ぐためだった……」

    トミキチの言葉に、アルティアの心が揺れた。
    その姿は、まるで命を賭けて告解する少年のようだった。

    「“勝つ”って何なんだ……? どんなに相手が正しくても、どんなに自分が間違っていても……
    勝ってしまう。この力は……正義じゃない」

    彼は、苦悶に満ちた眼差しで、ようやく立ち上がる。
    不死であるがゆえに、逃げられない。死なない。終われない。
    たとえ間違っていても、勝たなければならないという矛盾。

    「……ならば、私はこう記しておこう」

    アルティアは剣を地面に突き立てた。

  • 7561◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 23:04:27

    そして一歩、彼のそばへ近づく。裸足のまま、騎士としてでも、女としてでもなく――ただ、人として。

    「お前が勝てぬと感じた時、その戦いはもう終わっている」

    「……っ」

    「お前が背負う“勝利”に、私は負けた。
    だが、私の“剣”は、お前に勝った。どちらが正しいかなど、今はまだわからない。
    でも、少なくとも私は、お前の中にある“間違い”を討てた気がする」

    トミキチの手が震える。
    銃を握る指に、血が滲む。

    「……もし、“エイコ”がここにいたら、そんな自分を見て、笑うと思う?」

    「……やめろ……!」

    「いいや、聞け。エイコが、お前の不死を見て、勝利を見て、
    “そんなことのために戦ったの?”と、問うたとしたら――」

    「やめてくれぇええええええええッッ!!」

    トミキチが叫んだ。
    それは、血よりも赤い悲鳴だった。

    彼の“必ず勝つ”という能力が、ついに揺らいだ。

    そのとき、銃が地に落ちた。

  • 7571◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 23:10:03

    夜が深まる。霧は晴れ、月が再び姿を現した。
    その光の下、剣は地に突き立ち、銃はその隣に転がっていた。

    ヨシナガトミキチは、膝をついていた。

    呼吸は荒くない。傷は塞がっている。
    だが、彼の心は――折れていた。

    「……はじめてだ。勝ったのに……」

    その声には、勝者のものとは思えないほどの、空虚があった。

    「そうか。お前にとって、“勝利”とは手段ではなく、呪いだったのだな」

    アルティアの声は、穏やかだった。
    彼女は剣を抜かず、ただトミキチの隣にしゃがみこむ。
    その身体に、いまだ布一つ纏っていないにもかかわらず、彼女は揺るぎなかった。
    むしろその裸のままの姿こそが、彼女の“誇りを脱いだ本当の自分”だった。

    「……もう、戦えない」

    トミキチは、手を見つめる。

    「この手で……何人も倒してきた。
    悪だと信じて、正義だと信じて……でも、
    本当はただ、“約束”って言葉に縋っていただけだったんだ……」

  • 7581◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 23:11:35

    「“守れなかった”ことを、どうしても赦せなかったんだな」

    「……うん。
    彼女の死を、認めたら、立っていられなくなる気がして」

    月光が、彼の顔を照らす。
    少年のような顔立ちに、深く刻まれた疲労と悲しみ。
    それは兵士ではなく、ただの一人の青年のものだった。

    「私は……かつて、恋をしたことがある。
    今もその感情は胸にある。だが、それを口にすれば、騎士団長としての私は崩れる」

    アルティアはふっと笑う。自嘲の混じった、優しい笑みだった。

    「それでも私は、生きている。
    勝つことだけが生きる理由じゃない。
    想いを抱いたまま、傷ついたままでも――人は、立てる」

    「……俺は、人間に戻れるのかな」

    トミキチの問いに、アルティアは迷わず答える。

  • 7591◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 23:11:54

    「お前はとっくに、人間だ。
    勝利なんて、死なんて、正義なんて曖昧なものじゃなく――
    “間違うこと”を恐れた時点で、もう人間だ」

    風が吹く。夜明けが近い。

    「……立て、トミキチ。
    今のお前なら、もう“誰かを守るためだけ”の戦いではなく――
    “自分のために、生きること”を選べるはずだ」

    トミキチの手が、銃に伸びる。

    だが、それを拾わず、そっとその上に布をかけた。

    「ありがとう……アルティアさん。あなたが“負けてくれて”よかった」

    アルティアは言葉を返さない。
    その代わりに、そっと微笑んだ。

    戦いは、終わった。
    勝者はいない。敗者もいない。
    あるのは――**“赦された者たちの夜明け”**だけだった。

  • 7601◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 23:17:17

    その朝、王都の空は雲一つなく晴れていた。
    街路には露がきらめき、騎士団の朝の巡回が始まる頃。
    一人の兵士と、一人の騎士が、並んで歩いていた。

    ヨシナガトミキチの軍服は、汚れていたが整っていた。
    背筋は伸びていたが、そこに以前の“異様なまでの張り詰めた空気”はなかった。

    「……エイコは、もう、この世にはいない」

    彼の言葉は、苦痛ではなく、静かな諦念でもなかった。
    ただ、やっと“正しく言えた”という顔をしていた。

    「彼女は、俺に“帰ってきて”と言った。
    でも本当は、俺が彼女のもとに戻るんじゃなくて――
    “俺の人生に戻ってくること”を願ってたんじゃないかって、今は思う」

    アルティアは、目を細める。
    彼の語る“死”は、かつて自らが斃した幾千の兵士の名もなき魂たちと重なった。
    そして、そのひとつひとつが、誰かの“エイコ”だったのだと、今さらながらに思い知らされた。

    「……名前を、忘れるなよ。
    思い出せるうちは、その人はお前の中で生きている」

  • 7611◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 23:17:35

    「うん。忘れない。俺は、あの人を“殺したくない”から、死なせたままにしておく」

    アルティアは立ち止まった。

    「……よく、言ったな」

    彼女はくるりと振り返り、ふいに軽く笑った。
    それは、団長としての凛とした笑みではない。
    一人の女性として、そして“仮面を脱ぎ捨てた夜の徘徊者”としての、自然な笑顔だった。

    「私も……一歩だけ、進むとする。
    騎士団長としてではなく、“アルティア”として」

    「……誰かを、愛してるの?」

    その言葉に、アルティアは少しだけ目を伏せた。

    「どうだろうな。
    剣よりも、戦術よりも扱いが難しい感情だ。
    けれど――それでも向き合いたいと思えるようになったのは、お前のおかげだよ」

  • 7621◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 23:17:53

    トミキチは黙って頷いた。
    その頷きは、戦友に捧げる敬礼のようでもあった。

    別れの時が来る。
    彼は再び旅に出る。もう“必ず勝つ”ためではない。
    “誰かを救える自分”であることを、忘れないために。

    アルティアも、また日常へ戻る。
    だが、もう夜ごと街を裸足で彷徨うことはないかもしれない。

    なぜなら――彼女の心は、もう“誰かに赦された”から。

    その日から、トミキチは旅の記録にこう綴るようになる。

    『彼女の名はアルティア。
    剣を捨ててなお、誇りを持ち、赦しを選んだ騎士。
    俺が、はじめて“勝てなかった”相手であり、
    はじめて“救われた”人だった』

    そして、最後に添えられた一行には、彼の新たな出発があった。

    『俺は今日も、生きている。エイコ、君が願ったように』

  • 7631◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 23:18:17

    以上

  • 764二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 23:21:39

    すげぇ良い話で名作・・・なんだけどさ
    冷静に考えると片方は全裸で戦ってこの話をやってるんよな

  • 765二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 23:23:52

    >>747

    いい話なんだけど、ずっと脳裏に「でもこいつ全裸なんだよなぁ…」がつきまとう……


    >>746

    あと、これタイトルおかしくなってない?

  • 766二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 23:29:25

    トミキチもアルティアもかっこよかった
    GJ

  • 767二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 23:33:21

    最高だった

    今日の分はこれで終わりかな?

  • 7681◆ZEeB1LlpgE25/07/11(金) 23:54:26

    >>765

    なぜかばぐるんですよ

    私視点だと送るまで正常なんですけど

    >>767

    あと一個やって明日安価します

  • 769二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 00:05:18

    >>768

    スレ主さんが寝る前に明日の安価時間置いてってくれたら嬉しいです

  • 7701◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:09:57

    題名『選ぶこと、真似ること』

  • 7711◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:10:57

    「……ほう……この色、この気配……ふふ、面白いのが来たわね」

    選択者は目を細めた。
    クリーニング店《洗濯者》の店内、派手なアルマーニスーツを着込んだ彼女の前に、ひとりの少女が立っていた。

    白銀の髪、透けるような白い肌、純白のワンピース。
    幼く無垢な顔立ちのその子は、まるで絵本の天使のようだった。

    「ここがせんたくのお店?」

    「ええ、そうよ。ようこそ、少女。あなた、何かを洗いにきたのかしら? それとも……“何かを知りに”?」

    選択者はにんまりと笑った。
    その瞳はハジメイの姿形だけではなく、存在の輪郭――能力そのものを“選ぶ”ように見つめていた。

    「“せんたく”ってなに?」

    「洗濯はね、汚れを落として、元の姿に戻す行為よ。服だけじゃないの。記憶も心も、綺麗にできるのよ」

    「ふーん。きれいになるの、いいこと? それって……“せいぎ”?」

    その言葉に、選択者の眉がひくりと跳ねた。
    ただの無垢ではない。言葉の裏にある“本質”を模索するような、奇妙な知性が垣間見えた。

    「正義? さあ、そこはあなたが“選ぶ”ことよ。お姉さんはね、干渉したいと思ったものには、なんでも触れてみるの」

  • 7721◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:11:14

    「わたしも……さわっていい?」

    「ちょっと待って? 先に選ぶのは私よ?」

    「わかった! じゃあわたし、“せんたく”を……まねする!」

    ハジメイの瞳が光った。
    それは本能。相手を“親”と認識し、その技、概念を真似て学ぶという能力の発動だった。

    「……あらあら、すごい子じゃない。ふふ、いいわ……面白い。あなた、“私の能力”を模倣しようとしてるのね?」

    「うん。おねえさん、かっこいいから。せんたくも、せんたくのチカラも、きれいだから!」

    「……なるほど。“選択”を“洗濯”と見間違えたまま能力を真似たのね? ふふ、最高。これは干渉不可避だわ」

    選択と模倣――それはどちらも“干渉”の力。
    衝突すれば、いずれどちらかが世界の理を歪める。

    「さあ……あなたの模倣が本物になる前に、見せてもらおうじゃない。私の“選択”と、あなたの“はじまり”――どちらが世界を震わせるか!」

    「えいえいおー! せいぎはかならずかつ!」

    「その正義、選んだのね? じゃあ私は、“敗北する自由”を選んであげる」

    柔らかに笑った女と、まっすぐな瞳の天使が、対峙する。
    次元も理も、感情さえも無視したバトルが、ここに幕を開けた。

  • 7731◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:12:27

    「まずは“接触”から、ね。選ぶわよ――」

    選択者は、親指と中指を鳴らした。
    それだけで、空間が“反応”する。
    彼女が選んだのは、この空間に存在するすべての時間的概念。その結果――

    「わあっ……!」

    ハジメイの視界が、歪んだ。
    昼と夜が交差し、床に落ちる影がランダムに瞬く。過去と未来の温度が同時に肌に触れ、世界の法則がズレたように感じる。

    「“現在”って便利よね。選べばいつでも固定できるし、捨てれば時間も止まらない。さあ、あなたはどこに立ってるのかしら?」

    「えへへ……わかんない。でも……おねえさん、すごい! すっごくたのしそう!」

    ハジメイは無邪気に笑った。
    それは、恐怖や混乱とはまるで無縁の、純粋な“感動”の笑み。
    そして、彼女の能力《はじまりのはじまり》が静かに稼働を始めていた。

    「“現在”って……いま、ってこと? じゃあ、わたしもえらぶ!」

    瞬間、空間が安定した。

    「……え?」

    選択者の眉がぴくりと動く。

  • 7741◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:12:41

    “選択”されたはずの歪んだ時空が、元に戻っていた。否、“模倣”によって同じ現象が再現され、その上書きにより、選択と選択がぶつかって打ち消されたのだ。

    「ねえ、おねえさん。“これ”ってこうするんだよね?」

    ハジメイが微笑みながら指を鳴らすと、今度は選択者の足元だけが時間から切り離された。
    右足が“明日”を踏み、左足が“昨日”を踏んでいる。絶妙な不協和が、彼女のバランスを崩す。

    「――ちょ、ちょっと!?」

    「まねっこ、せいこう、かな?」

    「うふふ……やってくれるじゃない、少女」

    選択者は笑いながら後方に跳ぶ。
    人並みの運動神経でふらつきながらも、次の“選択”を狙う。

    「なるほどね……“模倣”ってそういうこと。能力だけじゃない、“意味”も真似するわけか……だったら!」

    彼女の視線がハジメイの短剣に落ちる。

  • 7751◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:13:03

    「あなたの武器、“希望を与える剣”だったわよね? それ、ちょっと拝借!」

    選択者が指を鳴らした瞬間、空間から光の刃が現れた。
    それはハジメイの持つ短剣とそっくりな形――しかし刃がある。
    選択者は“希望”を“攻撃手段”に選び変えたのだ。

    「これは私の“希望”よ。つまり、“あなたをぶった斬って中身を知る”っていうね!」

    「おねえさん……やっぱりこわい!」

    「ふふふ、こわくても試したい! だって私は選んだんだもの、この戦いを!」

    斬撃が走る。
    選択者の作った光の刃が、優しくも鋭く、ハジメイの目前へ迫る――。

    「……やさしい、ってなんだろう。せいぎって、なんだったっけ?」

    ハジメイの短剣が構えられる。
    刃のないその剣が、選択された刃と交差し――

    空気が、柔らかく弾けた。

  • 7761◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:13:46

    光と光がぶつかった。
    いや、正確には――片方には刃がなかった。
    それなのに、“選択者”の生成した鋭い光刃は、まるで優しく弾かれたように拡散し、床を照らすだけの粒となって砕けた。

    「……これは、どういう……?」

    選択者は一歩、後退した。
    攻撃が通らなかったのではない。
    攻撃の“意味”そのものが、短剣に吸収されて変質したのだ。

    「えへへ……“せいぎ”は、こわくない。やさしい。って、きのうおじさんが言ってた」

    「きのう……おじさん? 誰? ていうか、君、もう“昨日”って概念持ってるの!?」

    困惑の中にも興奮が混じる声。
    選択者の中で何かが軋んでいた。
    “優しさを攻撃に選び変えた”のは彼女自身。それをそのまま真似され、しかも無効化された。

    「お姉さんの“えらぶちから”、つよい。わたし、もっとまねしたい……もっと知りたい!」

  • 7771◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:14:03

    「ふふ……やっぱり、あなた最高に珍品だわ。真似して、育って、意味すら超えて……そのうち私より選び上手になっちゃいそうで怖い!」

    短剣を構えるハジメイ。
    光っているのに、冷たい。
    刃がないのに、鋭い。
    その存在が、選択者の“選択”の意味をゆっくり侵食していく。

    「でもね……私は“観察者”じゃない。干渉したくて仕方ないのよ。だから!」

    再び指を鳴らす。
    今度、選ばれたのは――**「痛み」**だった。

    「選ぶわ。“痛み”を与えるという行為。それ自体を、あなたに向けて選択する!」

    見えない重圧が、ハジメイの身体を叩いた。
    焼けるような感覚。鈍い熱。目に見えない傷。
    それは“刃”ではない。“暴力”でもない。ただ“痛み”という概念そのものが彼女に選ばれたのだ。

    「うっ……あ、あつい……でも、だいじょうぶ……」

    ハジメイがよろめく。
    その体はふるえながらも、倒れない。

    「痛いって、こういうこと? これ、ほんもの? うそじゃない? ほんとに、いたいの?」

  • 7781◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:14:24

    「当然よ。私が選んだの。紛れもなく現実の痛みよ!」

    「……じゃあ、これも、まねできる?」

    一瞬、空気が静まる。
    そして――ハジメイの手が、光を放つ。

    「“痛いの、痛いの、飛んでいけ”って、きのう、ママが言ってた!」

    選択者の右腕に、痛みが走った。

    「――なっ!?」

    ハジメイは“痛み”を真似した。そして、“痛みを癒す”という行為も模倣したのだ。
    それは暴力を優しさに変換し、再び“親”へ返した。
    痛みのブーメラン。

    「ふふふふふふ……なんてことしてくれるのよ、君ぃ……!!」

    額に汗を浮かべながらも、選択者は興奮していた。
    まるで天才児に振り回される家庭教師のような顔で、うっとりと戦場を見渡す。

    「いいわ……ここからは私が“真似る番”。このやさしさの暴力、どこまで選べるか試してあげる!」

  • 7791◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:15:21

    「さて、ここでひとつ、逆に試してみようかしら……」

    選択者は前髪をかき上げ、指を鳴らす。
    彼女が選んだのは――**「模倣」**そのもの。

    「……まさか、自分が“模倣されること”を選ぶなんて、思ってもみなかったわ」

    選ばれた瞬間、ハジメイの能力《はじまりのはじまり》に、わずかなひびが入る。
    この能力はすべてを“親”として扱うことで模倣するが、“親の側が模倣されることを明確に選んだ”場合、力の流れが循環し始めるのだ。

    「まねっこが、まねされる……?」

    「ええ。“まねっこ”って可愛い言葉ね。気に入ったわ。でもね、真似の真似は、時に“理解”を超えるわよ?」

    選択者の足元に、幾何学的な模様が浮かぶ。
    彼女が選び取ったのは、“ハジメイの能力の学習過程”。それを模倣された上で再構成しようとしていた。

    「選ぶわ、“あなたの真似する力”……そして私がそれを真似る。つまり、私は“あなたを真似るあなた”を真似することになるのね。うふふふふ、うるさい理屈だけど、私には最高にそそる!」

    「ううう、わからないけど……すごそう!」

    「理解しなくていいのよ、少女。これは知の暴力。模倣が模倣されて、原典がねじれる――そんな選択的相互干渉!」

    空間が歪む。
    どちらの能力が発動したのか分からない。
    「選択された模倣」と「模倣された選択」が重なり合い、二人の輪郭が一瞬だけぼやける。

  • 7801◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:15:35

    「……おねえさん、まぶしい……でも、これって、せいぎ?」

    「さあ、どうかしら? 私、“正義”は選んでないの」

    その瞬間、短剣が動いた。
    ハジメイの刃なき短剣が、なぜか**“刃のような存在感”**を帯びて選択者の前に迫る。

    「……あなた、模倣の中で、“お姉さんの強さ”じゃなくて“お姉さんの在り方”を真似たの?」

    「うん! “ちからをつかって、たのしくまねっこして、みんなにやさしくする!”って、えらいおねえさんみたいだった!」

    「……それ、私のことじゃない気がするんだけど?」

    選択者が突っ込みを入れる間もなく、刃なき短剣が彼女の胸元に触れる。
    どこにも傷はない。だが、確かに何かが斬られた。心の奥、あるいは選択の根っこ――

    「……“選びすぎた”私を、今、あなたは断ち切ったのね」

    選択者は、一歩、下がった。
    その顔に、笑みと共に――ほんの僅かな戸惑いが浮かんでいた。

    「なるほど、これがあなたの“希望”なのね。理解じゃなく、共感でもなく、ただ信じて、真似て、与える。……こわいわよ、ハジメイ」

    「うん! わたしもこわい!」

  • 7811◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:16:07

    「でも、たのしい?」

    「たのしい!」

    ふたりは笑った。
    異能者と天使(仮)の笑顔が交錯する。
    まだ戦いは終わっていない。
    だが、そこにはもはや殺意も勝敗も、選ばれていなかった。

    ただ――続けることだけが、“選ばれて”いた。

  • 7821◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:16:58

    「あなた、本当におかしな子ね……」

    選択者はふっと息を吐いた。
    攻撃されたわけでも、明確に負けたわけでもない。だが、今、自分の中の何かが確実に“崩れた”。

    「“選ぶ”ってことは、つまり……何かを切り捨てることでもあるのよ」

    「きりすてる……?」

    「ええ。“刃”とは違う。選ばなかったものを見捨てることで、初めて選んだものに意味が宿る。私は、それをずっと繰り返してきたわ」

    選択者の声に、初めて翳りが混じった。
    力ではない。理論でもない。
    今、彼女の“人間性”が言葉ににじんでいた。

    「……でもね、ハジメイ。あなたは違う。あなたは“全部真似よう”とする。選ばず、捨てず、全部を愛して……自分にしてしまう」

    「うん。だって、どれも“親”だから」

    その言葉に、選択者は笑った。
    それは皮肉でも憐れみでもない――少しだけ悔しそうな、大人の笑みだった。

    「……いいわ。だったら、私も“全部”を選んでみる」

    指を鳴らす音が、澄んだ鐘のように響いた。

  • 7831◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:17:12

    空間が、音が、意味が――震える。
    選択者が今、選んだのは、

    「模倣者ハジメイのすべて」

    「能力も、性格も、思考も、記憶も、全部まとめて“選ぶ”。――いいえ、“受け止める”。それが私の、最後の選択よ!」

    「……ほんとうに、ぜんぶ?」

    「ええ。だって私、今のあなたが――好きになっちゃったもの」

    その瞬間、ふたりの力が重なった。
    模倣と選択、相反するようでいて、互いに相手を通して自分を知る力。
    光と光が交錯し、境界が溶ける。

    選択者の体に、白い光の文様が浮かび上がる。
    ハジメイの能力が、模倣されるのではなく――共有されたのだ。

    「ふふ……これがあなたの“まねっこ”の視点。すごく、眩しいわね……」

  • 7841◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:17:26

    「おねえさんの“えらぶちから”も、わたし、もらったよ! だって、だって!」

    ぱあっとハジメイが笑う。
    その笑顔に、選択者の胸が“きゅっ”と締めつけられた。

    「だって、“しりたい”って、たのしいことだもん!」

    「……それ、ずるいでしょ。まるで、私が最初から間違ってたみたいじゃないの」

    「まちがってないよ? おねえさんも、わたしも、どっちも、まちがってない!」

    光が収束する。
    二人の能力が交差し、新たな“始まり”の扉が開かれた瞬間だった。

    選択とは排除ではなく、愛の形であること。
    模倣とは奪うことではなく、共に生きる力であること。

    二人がようやく“認め合った”その時――戦いは、終わりを迎えようとしていた。

  • 7851◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:18:27

    空は青かった。
    けれど、天井はなかった。
    ふたりは、ただ立っていた――世界の“意味”が崩れた場所で。

    「じゃあ……そろそろ、幕引き、ね」

    選択者が言った。
    その声音には、もう好奇心の棘はなかった。ただ、どこか晴れやかな満足感だけがあった。

    「ふふ。なんだか……ね。ずっと、何かを選ばなきゃ、選ばれなきゃって焦ってた気がするの。自分が消えてしまわないように、誰かより賢くいなきゃって」

    「えらいね! がんばってたんだ!」

    ハジメイは真っ直ぐに褒める。
    飾らず、計算せず、ただ“目の前のあなた”を、愛おしむように。

    「……やめて。泣いちゃうじゃない……」

    「なかないで?」

    「そう言われたら、余計に泣きそうよ……もう」

    選択者は笑った。
    それは、彼女にとって数百年ぶりの、本当の笑みだったかもしれない。

    「ねえ、ハジメイ」

    「なあに?」

  • 7861◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:18:39

    「あなたは模倣することで、相手の力を“越えていく”。でもね……それはきっと、奪うことじゃない。あなたは“理解したい”だけなんでしょ?」

    「うん。“しりたい”って、“たいせつ”のはじまりだから!」

    その言葉に、選択者はハッとする。
    かつて誰かに、そう言われたことがあった気がする。ずっと忘れていた、小さな誰かの声。
    もしかしたら、自分が初めて“模倣された側”として傷ついたあの日――

    「……ありがとう、ハジメイ。あなたに会えてよかった」

    「わたしも! おねえさん、だいすき!」

    ふたりは、笑い合った。
    戦いの結果? 勝敗? そんなものは、もうどこにもなかった。
    あるのは――手を取り合って生きていく未来だけ。

    「ねえ、いっしょに“せんたく”する?」

    「ええ、いいわ。“模倣”って……ちゃんとたたむのね?」

    「うん! ふわふわになるよ!」

    ――ふたりの異能は、もう戦いのためにあるのではない。
    選ぶこと。真似ること。
    それは誰かと分かり合い、愛するためにこそあったのだ。

  • 7871◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:18:56

    以上

  • 7881◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 00:20:14

    次の安価は明日の午前11:00

  • 789二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 00:23:32

    乙です!! 両者規模がエグい!!

  • 790二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 00:24:40

    バケモンが増えたな・・・

  • 791二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 00:45:20

    拙い言葉で真理を突くハジメイちゃんかわいいかわいいね…

  • 792二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 06:53:26

    11時か
    よーし今度こそ投げるぞ…!

  • 793二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 07:49:40

    保守

  • 794二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 10:36:20

    >まるで天才児に振り回される家庭教師


    ここの表現めっちゃ良いな

  • 795二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:00:00

    名前:停滞者(本人は加速者と名乗る)
    年齢:85
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:現代を生きる国家忍者であり手裏剣投擲の達人だったが最近はローコストなバイオスライム達にその地位を取って代わられてさらに口封じのため国家に暗殺されかけた所に加速の力を得た
    能力:加速フィールド
    能力概要:自身の周囲に生物を十倍速に加速させ物質を百倍速に加速させるフィールドを展開してそのフィールドを利用して元々速いのがさらに百倍に加速された無数の手裏剣で内部を切り刻みまくる殺戮空間を作成する
    弱点:加速フィールド内でも自分は加速できない上に自身の周囲には安全のため手裏剣を展開していないので接近されると十倍速の相手と手裏剣なしで戦わないといけない 
    あと国家に口封じされかけたショックで薬物に手を出してしまい肉体と精神がボロボロなので手裏剣は速度こそ能力によって上がってはいるものの数も精度もかなり劣化しているし判断力も落ちている
    要望(任意):決して生き残らないようにしてください

  • 796二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:00:00

    名前:白面
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:不明
    本人概要:真っ黒な全身に白い仮面をつけた上位存在。基本自分で喋ることはなく電話のようなものを耳に当て脳内に直接語り掛けてくる。基本すべてが謎で行動が予測不能。時々仮面の形が変わり人格が変化する。
    能力:≪変な家≫
    能力概要:能力発動と同時に巨大な家のような空間にテレポートしすべての部屋を攻略すると本体のもとにたどり着く。全部で3つの部屋がある。
    1つ目は人間ぶっ殺しゾーン。家具が全方向から襲ってくる。結構火力が高い。
    2つ目は魔界。合計50体まあまあ強いモンスターがランダムポップする。
    3つ目はでかい力士。タフで攻撃力も高く技量も高い身長10mほどの力士がいる。超強いので注意
    弱点:本体に戦闘力は皆無。力士は特殊な能力はない上に攻撃力は高いが隙がでかい。
    要望(任意):能力発動時のセリフは「この家、何か変。」で

  • 797二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:00:00

    名前:『フェイ』
    年齢:16歳
    性別:男性
    種族:人造人間
    本人概要:その身の犠牲と引き換えに世界を救った救世主を模して創られた人造人間。再び世界に訪れた破滅を回避するため無理やり命を授けられた存在だが、【自分の意思で】救世の道へ歩む覚悟を決めた不屈の精神の持ち主。
    能力:《救世の一撃》
    能力概要:かつてオリジナルの救世主が命と引き換えに放った究極の一撃。
    弱点:また自分のような業を背負った人造人間が産まれないよう、自分の命を棄てない覚悟を決めている。そのためオリジナル救世主ほどの火力は出せない。また、純粋な人間よりも身体構造が脆い。

  • 798二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:00:01

    名前:佐藤清
    年齢:49
    性別:男
    種族:人間
    人物概要:異能力者や神聖存在、異能災害を相手取って戦う機動隊の部隊長であり警察官
    鍛え抜かれた筋肉と殺気すら感じる目の鋭さ、圧倒的な威圧感と分厚い精神を持つ人物
    超真面目で超厳格、口数も極端に少なく口を開けば淡々とした有無を言わさない強い威圧感を感じさせる
    だが実態は揺るがない信念と誇りを胸に戦う強い心を持った人物であり物静かながら確かな優しさと正義感を持つ
    佐藤蓮、佐藤凜という二人の子供を持っており妻もいるらしい。子供達には心の強さを教えた
    能力:絶技の主 極限の極地
    能力概要:絶技の主はかつて救えなかった者達への無念を元に各地で修業して得た技術
    あらゆる武道、武術を極め動きの隅々にあらゆる技術が染みつくまで鍛えぬいた末の一種の絶技
    ただの警棒で神速の抜刀を行え盾を構えれば全てを受け止めるか受け流し銃を撃てば一発で千の事が行える
    あらゆる武器を極めあらゆる武道を極め人生の全てを人を救う為に戦闘技術に費やして生まれた一つの芸術
    その戦闘技術は武器で無いもので達人の様な技を放て純粋な技能とそれに付随するフィジカルだけで異常と渡り合う
    極限の極地はそれでもなお瀕死の状態に至ると到達できる一つの究極であり極限
    一切の無駄も一切の淀みもない、一挙手一投足が圧倒的驚異の純粋な絶技を振るえるようになる
    弱点:フィジカルと技術は人間を辞めているしかなり硬いが彼も人間、肉体の耐久力は人間相応
    また長年やっているとはいえ能力や超常現象相手は苦戦する事もあるらしい
    また絶技は常に強い集中を要するのでかなり疲労しやすく中~長期戦が苦手という弱点もある
    高い威力の技を放つには構えて放つという動作が必要でそこが一瞬無防備
    極限の極地は意識が朦朧とする本当にヤバい時以外は発動不可能
    要望:佐藤蓮、佐藤凜の父親です
    武器は警棒、機動隊の盾、拳銃。一人称は職務中は「私」、職務外は「俺」。二人称は職務中は「君」、職務外は「お前」

  • 799二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:00:01

    名前:嗤う万象の模倣者
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:付喪神?(とある邪神の化身)
    本人概要:混沌のような景色を映す鏡の姿をした存在で相手の目の前にいきなり現れ
    自身を覗き込むこさせることで黒い靄の様な姿に変化する
    相手が使用した技能力などを全て模倣した上でそれを更に発展進化させられる
    また模倣する際は相手の姿に変身する 
    能力:模倣昇華
    能力概要:相手の攻撃能力を認識捉える事で相手を模倣しそれを更に向上させられる
    また基本は相手から模倣したものを使うが今まで自分が模倣して来たものを使用することも可能
    弱点:模倣したものでデメリットがある代物ならそれは当然負う
    戦いの中でも成長する相手に対しては次第に模倣しきれ無くなっていく
    要望:死亡、破壊される際は鏡が砕け割れるような演出でお願いします

  • 800二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:00:02

    名前:弱者
    年齢:16歳
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:最近能力に目覚めた、気弱な少年。ショタ、かわいい。
    これまで負けの多い人生を歩んできたため、自身の勝利に慣れていない。
    能力:弱者
    能力概要:互いが全力でぶつかったときに、紙一重で負ける程度の力になる能力。自分が死ぬ代わりに相手は虫の息になるくらいの実力差なので、ほんの少しの偶然や外的要因で逆転することができる。
    弱点:まっとうに戦えば、まっとうに負ける。また、自身が強化されても上手く扱いきれ無いこともある。

  • 801二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:00:03

    名前:武 神鈴(ウー・シェンリン)
    年齢:15
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:武道虎の従兄妹にして妹弟子にあたる少女。
    天下統一を掲げ、力によって平和な世の中を築かんと誓う若き天才戦士
    能力:天下無双の槍術、魔槍「覇王星」
    能力概要:戦いに関しては天賦の才をもち、特に槍を持たせれば他の追従を許さない
    愛槍である魔槍「覇王星」は星の重力を操りあらゆる敵を平伏させる力を持つ
    弱点:過去に左脚に大きなケガを負っておりそちらで踏み込んだ攻撃は甘くなり狙われればダメージも増える

  • 8021◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 11:00:10

    名前:奥抜 心(おくぬき こころ)
    年齢:27
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:普段は花屋を営んでいる猟奇殺人機。自分より強そうな敵を拷問して殺し、その心臓をコレクションするのが趣味。
    計50個ほどコレクションしており家に帰って干渉するたびに恍惚とした表情になり小1時間ほど眺めている。
    能力:念力
    能力概要:周囲50m以内の物体を質量に関係なく操作することができる。自分を念力で浮かせたり相手の腕をねじ切ることが可能。
    弱点:本人は鍛えた一般人程度の身体能力。
    命に係わる度合いが高い部位はねじ切ることができない

  • 803二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:00:18

    名前:逸脱者
    年齢:その概念から逸脱している
    性別:その概念から逸脱している
    種族:その概念から逸脱している
    本人概要:自身の能力によりあらゆる理から逸脱してしまった人間だった存在の成れの果て 
    今はただ笑顔を浮かべている
    能力:逸脱
    能力概要: あらゆる理から逸脱する能力
    空間から逸脱することで攻撃を回避したり相手から逸脱することで予測不能な行動を取ることができる
    また自身の力や技術、速度、防御力を逸脱することでとてつもない強化をすることが出来る
    弱点:逸脱とはある基準や標準から外れてしまうことを指す
    途轍もなく強力になる場合もあるが途轍もなく弱くなることもある
    また能力は常時発動な為強さ能力が常に不安定 
    世界の危機!?と思える程強い瞬間も有れば触れただけで殺せそうな程弱い瞬間もあり得る

  • 804二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:00:25

    名前:メガネガミ
    年齢:391歳(自称)
    性別:女
    種族:神(自称)
    本人概要:見た目アラサーくらいで丸メガネの似合うお姉さん。
    『眼鏡を司る神様』を自称しているが真偽不明。
    神出鬼没の異常眼鏡っ子愛者で何にでも眼鏡を掛けさせようとする。
    能力:メガネイション
    能力概要:指パッチンで相手にピッタリなデザインの眼鏡を具現化し装着させる。
    メガネガミが満足するまでテコでも外せない。
    形態変化系や群体系の相手も不思議な丸メガネで全容を把握し、無理やり人のカタチに固定して眼鏡を掛けられるらしい。
    弱点:森羅万象が貴重な眼鏡っ子たりうるので命は決して奪わない。
    直接の戦闘力はほとんどない。眼鏡からビームが出る程度。
    元から眼鏡っ子が相手だと「いいよね…いい…」と呟くだけで手出しせず無抵抗。

  • 805二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:00:33

    このレスは削除されています

  • 806二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:00:55

    すとっぷ

  • 807二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:01:01

    名前:デザイン
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:天然ロボット
    本人概要:情報デザインの具現化。
    《共感》《抽象化》《可視化》《構造化》《思考》の五つの機能が備わっている。
    人工で作られたのではなく、知らない間に生まれていたロボット。
    白く細いボディにうさミミのようなヘッドフォンらしき部品がある。
    全体的にスタイリッシュなデザイン。
    とても友好的に接してきて気が付かれないように相手の情報を抜き取っていく。悪意はない。
    能力:《抽象化》《可視化》《構造化》《共感》《思考》
    能力概要:
    《抽象化》…大量の情報から大事な所だけ“抜き出す”
    つまりは相手の記憶や世界からの情報を抜き出し、現にする機能。相手が隠そうとしている物や弱点なども抜き取り、現にすることができる。
    《可視化》…見えないものを“見える”状態にする
    つまりは相手の能力の軌道や概念(武器、武術を用いていない能力の総称)を目に見える状態にして、回避を容易にすることができる。
    《構造化》…要素同士の“関係性”を整理して結び付ける
    つまりは相手の能力が種族に見合ったものであるかを整理して、見合っていない能力を断捨離する。
    人間である場合は武器や武術を用いた能力に影響はないが、世界の常識を覆したり概念を扱う能力は断捨離し使用できない状態にする。
    《共感》…相手の種族から能力や行動パターンを“分析”する
    《思考》とは少し違う。
    つまりは相手の能力の詳細や戦闘においての癖やテンプレートパターンを分析して相手の裏をかくことが出来るもの。自身に合わせた戦闘をする相手なのであれば《思考》で予知をしてから分析を行う。
    《思考》…相手の“考え”や“行動”を予知する
    《共感》とは少し違う。
    つまりは「相手は次に攻撃を避ける」と予知して不意打ちの別の攻撃を仕掛けることが可能。
    相手の深層心理を見抜いて的確な戦闘を可能にする万能型である。
    弱点:情報過多干渉(インフォクラッシュ)
    デザインは「情報整理の天才」だが、意図的に“混乱・無秩序・嘘・自己の問い”を突きつけられると処理が狂う。
    一度バグると数秒間行動不能になり、リセットしないと能力を発動できない。

  • 8081◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 11:01:07

    すとぉっぷ

  • 8091◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 11:02:33
  • 810二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:04:47

    安定と信頼の速さ

  • 811二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:10:27

    さーて、対戦カードが気になるところ

  • 8121◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 11:13:34

    白面vs武 神鈴
    停滞者vs逸脱者
    メガネガミvs佐藤清
    弱者vs嗤う万象の模倣者
    奥抜 心vs『フェイ』

  • 813二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 11:14:39

    弱者vs嗤う万象の模倣者 はどうなるんだこれ……?
    全く想像できんぞ

  • 8141◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:05:57

    題名『この家、なにか変。』

  • 8151◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:06:12

    夕闇が静かに世界を包み込む頃、街外れの廃屋に一人の少女が足を踏み入れた。彼女の名は武 神鈴。十五歳ながら天才と謳われる若き戦士だ。手に握るは魔槍「覇王星」。星の重力を操る力を宿すその槍は、彼女の誇りであり、武器である。

    「…ここが、異変の発生源か」

    鋭い瞳が暗がりを射抜く。だが、胸の左脚の古傷がわずかに疼き、わずかに足取りが鈍る。それでも彼女の表情に揺らぎはない。彼女は力によって平和を掴もうと誓ったのだ。

    一方、廃屋の闇の中に、黒いシルエットが静かに佇んでいた。全身を漆黒に包み、白い仮面をつけた謎の存在──白面。彼は言葉を発さず、電話のようなものを耳に押し当てる。

    無音のまま、空気が歪んだ。次の瞬間、彼の背後に巨大な家のような空間が現れる。白い壁に囲まれ、三つの扉が並ぶ不気味な廊下。まるで悪夢のような異空間だった。

    白面は冷たくつぶやいた。

    「この家、何か変。」

    言葉は低くも冷酷に響き、しかし彼自身は動かない。

    その瞬間、神鈴の前に黒い影がゆらりと浮かび上がった。

    「誰だ…?」

    槍を構え、彼女は警戒を強める。しかし、相手は何も言わず、ただ彼女の視界の端で、仮面の形が僅かに変化した。

    異形の空間の入り口が開かれ、冷たい風が吹き込む。神鈴は一瞬躊躇したが、闘志は消えない。

    「行くしかない…!」

    彼女は重心を低くし、魔槍を振りかざした。

    戦いの幕が、静かに、しかし確実に上がった。

  • 8161◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:07:30

    異形の廊下に並ぶ三つの扉。そのうちの一つ、重厚な木製の扉がゆっくりと開かれた。暗闇の向こうから、鈍い軋み音と共に異様な気配が漂う。

    武 神鈴は警戒を解かず、魔槍「覇王星」をしっかりと握り締めた。左脚の古傷が僅かに疼くが、集中力は途切れない。

    「ここが、最初の試練か…」

    扉の向こうには、静寂を切り裂くように大量の家具が宙を舞っていた。椅子、机、本棚がまるで獲物を狙う獣のように襲いかかる。鋭利な刃や角を持った家具たちは、あらゆる角度から神鈴を包囲しようと動いている。

    彼女はすかさず槍を振りかざす。覇王星が星の重力を操り、家具の群れを押し返すが、その勢いは留まることを知らない。飛び交う刃物状の椅子が肉薄し、わずかな隙も与えられない。

    「甘く見るな!」

    神鈴は片脚に負担がかかることを覚悟しつつ、重心を低く保つ。槍の先端から放たれる重力の波で家具を粉砕しながらも、複数の攻撃を寸前でかわす。

    だが、数の暴力は凄まじい。彼女の左脚の古傷が激しく痛み、時折片足でのバランスを崩しかける。

    その瞬間、背後から巨大な本棚が飛来。彼女はとっさに槍を突き出し防御するも、強烈な衝撃が左脚に直撃した。

    「ぐっ…!」

    痛みに顔をゆがめながらも、神鈴は意識を保ち、静かに叫んだ。

    「ここで倒れるわけにはいかない…!」

    「覇王星」の重力を最大限に操り、最後の力を振り絞って家具の群れを一掃する。部屋の空気が一瞬にして変わり、静寂が戻った。
    ふと振り返ると、廊下の向こうで白面が冷たくこちらを見据えている。

    「次は…魔界か。」

    神鈴は左脚の痛みを押して、次の扉へと歩を進めた。

  • 817二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:08:02

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  • 8181◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:09:02

    重く軋むような音を立てて、二つ目の扉が開いた。
    その先に広がっていたのは、地獄めいた異空間だった。

    焼け焦げた大地が広がり、紫黒色の空には血のような裂け目が走っている。どこからか聞こえてくる呻き声と咆哮が、神鈴の肌に粘つくような悪寒を這わせた。鼻腔を刺す腐臭と焦げた金属のような匂いが入り混じり、明らかに“現世”の空気ではない。

    「……異界、いや、魔界ってやつか」

    槍を下ろし、周囲を警戒する。すでに肌が戦いを予感していた。
    魔槍《覇王星》の重力場が周囲の粒子をわずかに歪ませている。それが敵の気配を感知している証だ。

    突如として、地面が裂けた。
    どろりとした瘴気と共に、最初の魔物が姿を現す。

    「ッ……っはあぁッ!」

    神鈴は即座に前へ踏み込み、槍の穂先を喉元へ突き出す。
    飛び出してきたのは巨大な三つ首の猿のような魔物。槍が一閃し、一つの首がもげた瞬間、他の二つの頭が吠えながら跳びかかってきた。

    「重力制圧──《一点星墜》!」

    槍の周囲に星のようなエネルギーが集まり、一点に重力が集中する。二つの頭が砕け、魔物の巨体は地に叩きつけられた。咆哮がやむ暇もなく、今度は三方から次なる魔物たちが現れる。飛行する骸骨鳥、炎を纏った獣、二足歩行の金属昆虫。

    「数……だけじゃない。質も高い……!」

    神鈴は地を蹴り、後方に跳躍した。だが左脚に痛みが走る。視界がわずかにブレる。

  • 8191◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:09:17

    着地の一瞬、鋭い爪が右肩をかすめた。

    「くっ!」

    服が裂け、浅い裂傷が走る。が、それでも彼女の眼は死んでいない。

    「痛みは、生きてる証……!」

    再び重力場を展開。浮遊する骸骨鳥たちを、重力の落雷のような一撃で地に落とす。

    一瞬の間に、さらに数体が現れる。50体──多すぎる。体力は削られ、傷も増えてきている。連戦の疲労が明らかに体を蝕み始めていた。

    「……持たないかもな」

    かすかに口元を歪め、彼女は笑う。それでも目の奥には、絶対に折れぬ意思が燃えていた。

    そのとき、彼女の脳裏にふとよぎるのは、対面したあの奇妙な仮面の存在。
    ──白面。

    無言で立ち尽くす仮面の男。あれがこの空間の支配者ならば、この試練もまた──その掌の上なのだろう。

    「上等だよ。そんなふうに、試されるのは……慣れてる」

    槍を肩に構え直し、息を深く吸う。

  • 8201◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:10:00

    彼女の周囲に、星のように重力の粒が瞬く。空間ごと押しつぶすような重圧が走り、敵の動きが鈍る。

    「《星砕》──!」

    跳びかかってきた十数体の魔物が、一撃で爆ぜた。

    空間が沈黙した。残骸と焼け焦げた地面の匂いが、ひどく現実的だった。

    そして、静かに、第三の扉が現れる。
    巨大で、異様に装飾的なそれは、まるで中に“何か”がいることを誇示するようだった。

    「……最後、だな」

    息を吐き、血に濡れた頬を拭う。

    もう後戻りはできない。
    待っているのは、10メートルの巨体。異形の力士。
    だがそれでも、彼女の手は槍を離さなかった。

    「天下を……取るって決めたんだ」

    そして、神鈴は第三の扉を押し開いた。

  • 8211◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:12:34

    第三の扉は他の二つとは違っていた。圧倒的な質量を感じさせる重厚な石造りで、装飾の随所に相撲や武道を思わせる文様が刻まれている。まるで「ここが本番だ」と言わんばかりの異様な存在感だった。

    神鈴は静かに呼吸を整える。
    二戦を終えた体には確かな疲労が溜まり、左脚の傷も限界に近づいていた。肩の裂傷からは血が滲み、呼吸は浅い。だが、彼女の眼は一切曇らない。

    「行くよ……!」

    扉が鈍く軋んで開いたその瞬間、耳を劈くような唸りが吹き抜けた。

    そこは、まるで巨大な土俵だった。周囲は淡く光る結界で囲まれ、中央に立つのは――

    「……化け物、だな」

    身長約10メートル。隆々たる肉体を誇示するように裸の上半身を晒し、下半身には巨大なまわし。顔には朱と墨を塗ったような鬼の化粧。
    その姿はまさに、異界に迷い込んだ神に等しい相撲取りだった。

    「──ィイイイッ!!」

    咆哮と共に、地響きを立てて突進が始まった。体をただ投げ出すだけで、城壁すら崩れそうな迫力だ。

    神鈴は横に跳び、なんとか避ける。しかし左脚の痛みが激しく、着地が乱れる。

    「く……っ!」

    すぐさま槍を突き出すが、巨体の圧に押されて槍が弾かれる。風圧だけで吹き飛ばされそうだ。

    「攻撃力、も……桁違い……!」

    しかし冷静に見れば、相手の突進は直線的で、動きそのものは鈍い。威力はあるが“隙”もまた、大きい。

  • 8221◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:12:45

    神鈴は地を這うように低く回り込む。重心を右脚に乗せ、負荷のかかる左脚は最小限に。

    「重力制御、極限状態──!」

    槍先から発せられた微重力フィールドが相手の動きを鈍らせる。重力が倍化した空間に入った力士は、ほんのわずかだが動きが緩む。

    その隙を、神鈴は見逃さなかった。

    「もらった──!」

    槍の穂先が、巨体の脇腹を裂く。だが肉は硬く、思ったほどの手応えがない。

    「ッ!」

    反撃の掌打が炸裂。直撃を避けたものの、空気ごと吹き飛ばされ、彼女は土俵の外縁まで叩きつけられた。

    膝をつく。視界が揺れる。
    立ち上がれと身体に命令しても、左脚はもはや限界だった。

    それでも――

    「私が……止まるもんか……!」

    気力だけで立ち上がり、槍を逆手に握り直す。

  • 8231◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:13:10

    力士は満身創痍の少女を見下ろし、両腕を広げ、再び突進の構えを取った。

    「次が、最後……!」

    神鈴は槍を天に掲げる。その槍に、天体のような力が集中する。重力が螺旋を描き、空間そのものがゆがむ。

    「《星穿・終ノ構》……!」

    巨体が突っ込む。
    神鈴が前へと走り出す。

    そして――交錯。

    魔槍が閃光のごとく突き出され、力士の腹部を貫いた。
    そのまま重力が炸裂し、巨体が空中で制御不能になり、真後ろへと崩れ落ちる。

    ――ドォン……!

    土俵が粉砕され、空間が一瞬震えた。

    神鈴は膝をつきながら、力士の動きを見据える。

    ……動かない。

    「やった、のか……?」

    息を吐く。槍を杖のようにして、彼女はゆっくりと立ち上がる。
    扉の向こう、再び静寂が戻っていた。

    そして──最後の廊下の先に、白面の姿が浮かび上がる。

  • 8241◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:14:04

    瓦礫と化した土俵を背に、神鈴は静かに最後の廊下へ足を踏み入れた。
    体中に痛みが走る。左脚の感覚はもはや焼けつくようで、呼吸は荒く、槍を支えにしていなければ立っていられないほどだった。

    それでも、彼女の足は止まらない。

    「最後……だろ、もう」

    廊下の先に一つの部屋が見える。
    そこは妙に静かだった。何も動かない。風すらない。
    そしてその中心に、あの黒い男が立っていた。

    白面。

    黒い身体。真っ白な仮面。電話のような端末を耳に当て、やはり何も語らない。
    その立ち姿はまるで像のように静謐で、だが明確に“そこにある異常”だった。

    神鈴は槍を構える。だが、白面は動かない。

    「お前が……この家の主か」

    返答はない。代わりに、白面の仮面がわずかに“ずれる”。
    ──パキン。

    まるで陶器が割れるような音と共に、仮面の表情が変わった。目元が鋭く吊り上がり、口元には歪んだ笑み。

    その瞬間、神鈴の脳に声が直接流れ込んだ。

  • 8251◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:14:36

    《試練、突破。さて、次は……“本当の選別”だ》

    「何……?」

    白面の身体がわずかに揺れる。仮面がまた変わる。
    今度は優しげな顔。だが次には、獣のような歪んだ面に。

    《私とは何か。そう問う暇もなく、お前は刃を向けた。よい、戦士だ》

    「うるさい……!」

    神鈴は踏み込む。重力を収束させた一撃、《一点星墜》。だが、その刹那。白面の身体が、奇妙に“ねじれた”。

    「ッ……!?」

    槍がすり抜ける。目の前にいたはずの存在が、軸ごとズレたように“横へずれる”。質量も重力もない、まるで実体のない幻影のように。

    《お前は優れた。実に興味深い。ならば──“最後の一問”に答えよ》

    「質問だと……?」

    《なぜお前は、戦う?》

    「……」

    神鈴はしばらく無言だった。槍を下げ、わずかに視線を落とす。

    「昔……仲間を、守れなかった。脚をやられたあの日、私が弱かったから。だから、もう二度と負けないって……そう決めた」

    沈黙。

  • 8261◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:15:22

    白面は動かない。

    そして、仮面が最後に変わった。真っ白な表面に、なぜか涙のような筋が一本だけ刻まれている。

    《それで、十分だ》

    その言葉とともに、白面の身体が崩れ始めた。黒い粒子がふわりと宙を舞い、空間全体が音もなく崩壊していく。

    「……え?」

    空間が薄れ、現実世界の景色がにじみ出す。
    気づけば、彼女は廃屋の前に立っていた。倒れていたはずの身体は、どこか軽く、そして仮面の男の気配はもうない。

    そこにはただ、一片の白い仮面が落ちているだけだった。

    彼女はそれを見下ろし、ぼそりと呟いた。

    「……あいつ、何者だったんだ……?」

    答えはない。だが、胸の中には一つだけ、確かなものが残っていた。

    ──彼は“戦わせた”のではない。試したのだ。

    神鈴は空を仰ぎ、壊れたままの槍を肩に乗せると、ゆっくりと歩き出した。

    「次こそは……ちゃんと守る。私が……私であるために」

    そして、崩壊した“変な家”は、彼女の背後で静かに消えていった。

  • 8271◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:20:09

    朝焼けが街を染めていた。
    静かで、穏やかで、昨夜の激戦など最初からなかったかのように、日常が始まろうとしている。

    武 神鈴は丘の上に立ち、ただ静かに風を感じていた。
    背後には、かつて“変な家”が現れた廃屋。今はそこに、異常の痕跡は何一つ残されていない。

    足元には一片の白い仮面の破片だけが、現実を証明するように転がっていた。

    「……夢じゃない」

    神鈴はその破片を拾い、掌の中で握る。
    家具の猛襲、魔物の群れ、巨大な力士、そして仮面の男。

  • 8281◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:20:41

    一つひとつが、鮮明に脳裏をよぎる。

    「意味も、正体も……結局、何もわからなかった」

    それでも、心のどこかが静かだった。
    不思議と、悔しさも怒りもない。

    問いかけられた「なぜ戦うのか」という言葉。
    それは今でも、胸の奥に残っていた。

    神鈴は左脚に手を添える。
    まだ痛む。だが、もう怯えることはない。

    「負けない。私はもう、二度と……あの時みたいにはならない」

    肩に槍を乗せ、彼女は一歩、足を踏み出す。

    「次がいつ来ても構わない。どんな相手でもいい。私は、戦う」

    背中には傷がある。
    けれど、胸には確かな信念があった。


    遠く、街のざわめきが聞こえる。
    人の声、子どもの笑い声。あの日守れなかったものが、確かに今も続いている。

  • 8291◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:20:56

    それを守るためなら、どれだけ痛もうと関係ない。

    「行こう」

    空は高く、雲ひとつない。
    少女の影は長く伸び、その先に続く道は、まだ何も見えない。

    けれど神鈴は、迷わずに進む。

    過去を背負って。槍を携えて。ただ、前へ。

    ──これは、終わりではない。
    これは、始まりだ。

  • 8301◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 13:21:12

    以上

  • 831二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:21:26

    カオスだが良いバトルだった!!

  • 832二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:22:02

    この戦い、なにか変。 でも良かった

  • 833二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:23:23

    これは試練か……?試練なのか……?
    ともかく良い戦いだった

  • 8341◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 18:59:56

    題名『逸れた世界の終着点』

  • 8351◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:05:24

    屋上に風はなかった。

    吹き抜けたのは、古びた高層ビルの最上階。
    鉄筋がむき出しとなった足場に、ひとりの老人が立っていた。
    両手の甲には痣。爪の色はくすみ、吐く息には薬物の匂いすら混じる。

    「……来たか」

    掠れた声。だが、その瞳にはわずかな鋭さが残っていた。
    停滞者──いや、自らを“加速者”と名乗る男は、地面に刺さった錆びた手裏剣を拾い上げ、ゆっくりと立ち上がる。

    その向かい側。
    いつから居たのか、理解不能なほど自然に、影が“そこ”にあった。

    黒いローブ。人のようで人でない輪郭。
    そして、仮面すらつけぬその顔には、ただただ笑顔だけが浮かんでいた。

  • 8361◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:07:32

    逸脱者。

    「国家の連中かと思ったが……違うな。お前、何者だ?」

    逸脱者は答えなかった。
    ただ笑っている。語らず、動かず、呼吸の気配さえ存在しない。

    その無音の“存在”に、加速者は静かに手を構える。
    指の間に小型手裏剣が4枚挟まれていた。
    これで殺れる相手ではない。だが、殺れなければ終わる。

    老人はゆっくりと息を吸う。
    肺が軋み、喉が焼ける。それでも彼は、宣言した。

    「加速フィールド……展開」

    風が裂けた。音のない衝撃が屋上を包む。
    空気が歪む。時間の密度が変わる。

    周囲半径3メートル。そこは“加速された世界”となった。
    生物は十倍、物質は百倍。この空間に踏み込んだものは、滅びる。
    それが加速者唯一の殺し技――加速フィールド。

    「この中に入ったら、骨すら残らんぞ……!」

    脅しではなかった。事実だ。

  • 8371◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:08:00

    手裏剣が高速回転を始め、斜めに、横に、縦に、空気の網を作り出していく。

    だが──逸脱者は、踏み込んできた。

    笑顔のまま。

    まるで空間の境界など、そこになかったかのように。

    「…………なんだ?」

    加速者は目を見開いた。

    手裏剣が逸脱者を通り抜けていた。

    物質百倍速の刃が、触れたはずの空間を何事もなかったようにすり抜けていく。
    いや、違う。逸脱者が“そこにいなかった”のだ。刃が飛ぶ直前に、存在がズレていた。

    加速者の脳裏に、久しく忘れていた感情がよぎる。

    「……怖ぇな」

    そして――戦闘は、本当の“異常領域”へと突入する。

  • 8381◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:09:36

    風を裂いて、手裏剣が舞う。
    ただの鉄片などではない。質量を持った殺意が、百倍の速度で空間を裂き、四方八方から逸脱者を貫かんと飛来していた。

    屋上全体が音速の刃で満たされる。
    手裏剣が風を切る音は既に人間の可聴域を超え、光の軌跡にさえ見えた。

    ──だが、逸脱者は笑っていた。まるでそれが退屈な雨のように。

    「ッラァ!!」

    加速者が叫ぶと同時に、次の手裏剣が加速。
    床を蹴った投擲が空気を切り裂き、側頭部へ向かうはずだった。

    しかしその瞬間――逸脱者の身体が、逸れた。

    空間の軸ごと数センチ横に“逸脱”したように、そこには最初から存在していなかったかのような空白ができていた。

  • 8391◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:10:12

    視線を合わせようにも、焦点が合わない。

    加速者は刃をばら撒きながら、距離を取る。
    本来、加速フィールド内に入った時点で相手は崩壊するはずなのだ。
    刃が防がれたわけではない。回避されたのでもない。
    あれは「逸れている」。

    「クソが……! 読めねぇ、座標がない!」

    本能的に知覚していた。
    この“逸脱者”という存在には、空間の座標が存在しない。重力も、慣性も、空間内の概念すら通じない。

    それでも、老人は動いた。

    「加速ってのはな、運動だけじゃねぇんだ……戦いの勘も、経験も、全部──ッ!」

    踏み込み。右足が軋む。
    手裏剣を水平に滑らせ、相手の足元へと誘導する。

    ──逸脱者が、また逸れた。

    彼は確かにその場に立っているのに、飛来する刃がまったく“そこ”に届かない。
    加速者の脳が遅れる。
    目で見えても、触れられない。追いつけない。予測できない。

    「なあ……お前、どうやって生きてる?」

    逸脱者は答えなかった。
    ただ一歩、音もなく前に出る。
    その一歩は、地を踏んでいない。重力を受けていない。なのに“進んで”くる。

  • 8401◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:10:37

    「その笑い……気に食わねぇんだよ……!」

    手裏剣の角度を変える。天井反射、背面投擲、フェイント込みの三段重ね。
    加速された鋼の斬撃が“交差”するように、逸脱者の胴体を挟み込む。

    避けようのない角度。速度。
    だが――逸脱者は“逸れた”。

    今度は、“胴体の一部だけ”を逸らしていた。
    身体を分割するように、空間からパーツ単位で逸れている。

    加速者は理解を拒否した。

    「あり得ねぇ……あり得ねぇって……!」

    手裏剣を連投しながら、彼は徐々に後退する。
    肺が焼ける。薬の副作用で視界が二重になる。手裏剣の数も尽きかけていた。

    だが、止まれば終わる。
    この殺戮空間を維持している限り、敵は寄れない。そう信じていた。

    その時だった。

    逸脱者が、“中”にいた。

    殺意の渦巻く加速フィールドの真っただ中に、彼は自然に佇んでいた。

    「……は?」

    加速者の思考が固まる。

  • 8411◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:11:16

    刃が掠めている。
    なのに、当たっていない。
    破裂音がしない。出血も、破損もない。
    まるで彼の肉体が、“現実そのものからズレて存在している”ようだった。

    「──読めねぇ」

    その瞬間、背筋が冷えた。

    手裏剣は殺せない。加速も、追いつけない。
    ならば、何がこの化け物を止めるというのか。

    「おい……なんなんだよ、お前……」

    逸脱者は微笑んだ。
    無邪気な子どものように。遊び相手を見つけた幼児のように。

    加速者は理解した。

    あれは、「戦って」いない。

    それでも、次章、彼は「殺す」ために踏み込む。

  • 8421◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:11:43

    「読めねぇ……見えねぇ……感じねぇ……ッ!」

    加速者は叫ぶ。
    手裏剣は尽きかけ、腰のポーチには数枚が残るのみ。
    だがそれ以前に、“当たらない”。
    どれほど速度を上げようが、刃を工夫しようが、逸脱者には通用しない。

    その理由は単純だった。

    “逸脱”している。

    空間から、物理法則から、そして時間軸から。
    逸脱者は“この場所に存在しているようで、存在していない”。
    地面を踏んでいるようで、重力を受けていない。
    目で捉えていても、脳は“そこにいる”と断定できない。

    まるで神経系が、情報処理を拒否しているかのようだ。

    「クソ……っ、だったらッ!!」

    加速者は自ら加速フィールドの端に立ち、自分の背後に手裏剣を投げ込んだ。
    フィールドの“外”から“内”に物質を投げ込む。すると、百倍の速度で戻ってくる。
    それを正面から相手にぶつけるという捨て身の一撃。

    殺しきれるとは思っていない。だが、揺さぶれればいい。

    背後から飛び込んできた三枚の手裏剣。
    一直線に逸脱者の背中を貫こうとしたその瞬間――

    逸脱者の体が、“反転”した。

  • 8431◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:13:09

    物理的な動きではなかった。
    上下前後が逆になったような、空間そのものが“ずれた”かのような異常。
    刃が逸れた? いや違う。

    “刃が対象を認識できなくなった”。

    加速者の額に汗が滲む。
    このままではジリ貧。だが、撤退もできない。
    今さら逃げたところで国家はもう迎えてはくれない。
    彼は、“殺す”ことでしか自分の存在を証明できないのだ。

    「なら──来いよ」

    ポーチから残るすべての手裏剣を取り出し、
    自らの加速フィールド内で、空中に舞わせる。

    ぐるりと彼を囲うように旋回する刃。
    命綱の“安全地帯”にすら、鋼鉄の死が渦巻く。

    その中へ、逸脱者が笑顔のまま踏み込んだ。

    彼は歩く。普通に。
    足を持ち上げ、ただ床を踏みしめるように。

    だがその一歩一歩が、加速の斬撃にかすりもせず進んでくる。

  • 8441◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:13:54

    見えない力場も、殺意も、加速も──すべてが“滑っている”。

    「お前、本当に……なんなんだ……」

    呼吸が乱れる。肺が悲鳴を上げ、心臓がばくばくと荒れ狂う。
    視界が揺れる。思考が散る。幻聴が混ざる。

    逸脱者が目の前まで来た。

    その指先が、頬に触れた。

    まるで、人間の温もりを知ろうとするように。
    その笑顔には、悪意も戦意も感じられない。

    「なぁ、やめてくれよ……それ以上近づくなよ……」

    指が、耳に触れた。

    その瞬間、加速者の脳に“逸脱”の感覚が流れ込む。

    見えていたはずの世界が、ズレる。
    刃が踊る加速領域が、歪む。
    身体が、思考が、位置情報が、逸れていく。

  • 8451◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:14:15

    ──そして彼は気づいた。

    「ここにいては、自分が壊れる」

    逸脱者の指が離れた瞬間、加速者は叫び、自分の手裏剣を自分へ投げた。

    錯乱。恐怖。
    だが確かにそれは、自分自身への警告だった。

    「まだ……死ぬわけには……!」

    血飛沫が舞う。
    フィールド外縁に転がり、血を吐く。

    その傷で、ようやく自分が“まだこの世界にいる”とわかる。

    逸脱者は、血に染まった地面を見下ろしていた。
    興味深そうに、まるで「赤いもの」を初めて見た子どものように。

    この笑顔こそが、最も恐ろしいと加速者は悟る。

    そして彼は、最後の反撃を決意する。

  • 8461◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:14:48

    風が止まったかのように感じた。
    加速者の呼吸が乱れる。
    荒く、浅く、咳混じりの息が、薄れゆく集中力をかき乱す。

    「……化け物かよ……」

    彼は呟いた。
    まだ戦えている。だが、確実に削られている。
    腕の震えは止まらず、視界の端がかすみ、周囲の風景がひどく遠く見える。

    加速フィールドは保たれている。
    だがそこに立つはずの相手が、どうしても“そこにいない”。

    逸脱者はまるで実在の座標を持たないかのように、刃を避けるでもなく、逸れるでもなく、ただ“無視して”前に出てくる。

    その姿に、加速者の中で何かが崩れていく。

    「どうして……当たらない……どうして、そこにいるのに……!」

    思考の芯が焦げていくような感覚。

    目の前に確かに“敵”がいる。
    だが感覚がそれを否定する。刃も、時間も、空間も──何ひとつ通じない。

    「見えてるのに、狙えねぇ……動いてるのに、掴めねぇ……!」

    ぐしゃり。

    足元のコンクリートを踏み砕いて逸脱者が近づいてくる。
    その足取りは静かで、しかし確実に死を運ぶものだった。

  • 8471◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:15:19

    加速者は後退しつつ、フィールド外から再び手裏剣を放つ。
    狙いは高精度。反射を利用して後方から挟み込む角度。
    十年に一度の完璧な投擲。

    ──それでも逸脱者は、逸れる。

    刃が、指先のわずか数ミリをかすめたはずなのに、何も起こらなかった。
    違う。そもそも、そこに刃が到達していなかった。

    「ああ……もう……」

    加速者の肩が沈む。

    指が震えるのを止められない。
    戦いの経験が豊富な者ほど、今の状況が“絶望的”であることを理解してしまう。

    だが、加速者は、戦士であることをやめなかった。

    「なら……せめて……!」

    手の中に残る最後の手裏剣を構え、
    自らのフィールドの中心――最も高濃度の加速領域へ一歩踏み込む。

    “加速の核”は危険だ。
    下手に踏み込めば、制御を失う可能性がある。
    しかしそれでも、そこからならば逸脱者の次の動きに先手を取れる。
    逸脱者が腕を上げる。

    加速者は、見た。
    その指先が、自分に触れようとしている。

  • 8481◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:15:54

    ──今だ。

    反射投擲、滑らせた刃を自身の周囲で弧を描くように飛ばす。
    自分を中心に、刃が二重三重の円を描く。

    その中に、逸脱者が**“入ってきた”**。

    「そこだ──ッ!!」

    加速者は跳んだ。

    足を踏み込み、全身の加速感覚を集中させ、
    これまでのすべての力を込めた──一撃の拳を。

    逸脱者の頬に、命中した。
    風圧が巻き起こり、鉄骨が軋み、床のコンクリが砕ける音が響いた。

    逸脱者の身体が、吹き飛ぶ。
    加速者は着地と同時に膝をつき、地面に手をついた。

    「……ッ……効いた……だろ……」

    その瞬間、世界が少しだけ静かになった。
    心の奥底に、ようやく手が届いたような──
    戦士としての、最後の“誇り”を掴んだ気がした。
    だが、その静寂を破って、聞こえたのは──

    「うん。ちょっとだけ、いたかったよ」

    逸脱者の声だった。

  • 8491◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:16:25

    逸脱者は、立っていた。

    吹き飛ばされた位置から、静かに。
    頬はわずかに赤く腫れ、仮面のようだった顔が少しだけ“人間らしく”なっていた。
    目を瞬き、唇を動かし、感情らしき何かがそこに宿る。

    「うん。ちょっとだけ、いたかったよ」

    その一言が、加速者の心に突き刺さる。

    “ようやく届いた”
    “ようやく触れた”
    ──それなのに。

    「ちょっと……だけ、か……」

    血が喉に込み上げる。
    立ち上がろうとする脚は痺れ、腰は重く沈んだまま。

    視界の端で、逸脱者が首を傾げる。
    まるで壊れかけの人形が、どう反応していいか分からないように、首を左右に振っていた。

    「ねえ。君、すごく早いんだね。すごく刺してくるし、すごく怒ってるし。なんで?」

    その問いに、加速者は答えない。いや、答えられなかった。喉が焼け、呼吸も荒い。
    けれどその胸の奥で、何かが燃えていた。

    「この世界の速さなんて、何の意味もないのか……」

    逸脱者が近づく。

  • 8501◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:16:51

    もう加速フィールドは維持できない。
    周囲に浮かんでいた手裏剣たちは、回転を止め、コトリと地に落ちた。

    逸脱者は膝を曲げ、ゆっくりとしゃがみ、
    加速者と同じ高さに目線を合わせる。

    「君、すごくがんばってる。さっきのは、ちょっと怖かったよ」

    その声に、加速者はかすかに笑った。

    「……そりゃ、光栄だな……」

    血を吐きながらも、拳を握る。
    残された力は、わずか。けれど、それでもいい。

    この一撃が最後になると分かっていた。

    「お前が逸れる前に……もう一度──ッ!」

    加速者は叫び、全身を躍動させる。

    その拳は、加速の残滓をまとっていた。
    もはやフィールドではない。意識と技術と執念だけが編んだ、最期の動き。
    逸脱者の胸元に、拳が突き刺さる。

    乾いた音が鳴った。

    「……っ、らあああああああ!!」

    逸脱者の身体が仰け反る。

  • 8511◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:17:41

    今度こそ、明確に効いた。
    意識が揺らいだ。手足がぶれる。
    その笑顔が一瞬だけ、消えた。

    加速者は、そのまま崩れ落ちた。

    「……勝ち逃げは、させねぇよ……」

    拳を握ったまま、地面に倒れる。
    その眼差しにはもう恐れも、絶望もない。

    あるのはただ、戦いきった者の誇りと、静けさだけだった。

    逸脱者は、自身の胸元に触れた。
    拳の痕が、そこに残っていた。

    そして──笑った。

    「うん、やっぱり……ちょっと、いたいね」

    その笑顔には、確かに“何かを感じた”ような、微細な変化が宿っていた。

    けれど、それは加速者が知ることのない感情だった。

    ──決着は、静かに訪れた。

  • 8521◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:18:40

    風が、止まっていた。
    屋上には、加速もなければ殺意もない。
    ただ、静けさと、血の匂いだけが残されていた。

    逸脱者は、じっと地面を見つめていた。

    そこには、倒れた男がいる。
    身体は傷だらけで、目は半開きのまま動かない。
    微かな呼吸すら聞こえない。

    けれど、逸脱者は微笑んでいた。
    まるで、なにかを「理解した」かのように。

    「ねぇ……きみ、とっても速かったよ」

    返事はない。

    「ぼく、あんまり戦ったことないんだけど、きみの速さは……ちゃんと、届いてた」

    逸脱者は、しゃがみ込んだ。
    加速者の胸に手を当て、少しだけ触れる。

    「ほら、ここ。まだあたたかい」

    その手は、武器ではなかった。
    ただ、人のかたちをした何かが、人の命に触れたというだけの行為だった。

    逸脱者はふと、空を見上げた。

  • 8531◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:19:10

    そこには何もなかった。
    星も、月も、雲もない。
    ただ、どこまでも広がる灰色の空。

    「……ぼくね。いろんなところから、ずれちゃってるんだ」

    誰に語るでもない、独り言だった。

    「たぶん、世界もぼくを見てない。目を逸らしてるのかもしれない」

    逸脱者は笑う。

    「でも、きみは……最後まで、ちゃんと見てくれたね」

    手を離し、逸脱者は立ち上がる。

    足音もなく、体も揺らさずに、彼は屋上の端へと歩き出す。

    もう、敵はいない。
    加速者は、その命と誇りを賭してこの“得体の知れない存在”に挑み、届き、そして──倒れた。

    逸脱者は振り返らない。
    ただ、その歩みがまた“逸れて”いく。

    現実から。
    空間から。
    この世界の枠組みから。

    まるで“死”という概念さえ、彼の歩みを捉えることができないかのように。

  • 8541◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:19:21

    そして、彼はすっと屋上から姿を消した。
    煙のように、光の反射のように、誰の目にも映らぬ場所へ。

    ただ一つ、加速者の胸に残った拳の痕──
    逸脱者の中に“痛み”という記憶が刻まれたことだけが、この戦いが確かにあった証だった。

  • 8551◆ZEeB1LlpgE25/07/12(土) 19:19:38

    以上

  • 856二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 19:20:30

    加速者…お前良くやったよ…

  • 8571◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:35:14

    題名『鋼の視線と神の愛眼』

  • 8581◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:37:14

    都内某所。静かに降る雨のなか、繁華街の一角に突如現れた異常な存在――

    「ふふ……今日もいい眼鏡日和……♪」

    真っ黒な傘の下、丸メガネをくいと持ち上げる女の姿。その名はメガネガミ。彼女が足を踏み入れた途端、周囲にいた通行人全員が、気づけば完璧な眼鏡をかけていた。

    「……似合ってる、全員……尊い……眼鏡の大洪水……!」

    突如、警報が鳴り響く。異能災害発生。
    現場に現れたのは、装備をまとった一人の男。

    「警視庁・機動部隊、部隊長・佐藤清。対象の異常能力を確認。鎮圧に移る」

    男の手には警棒と盾。黒髪を短く刈り上げ、静かに、だが圧倒的な威圧感を持ってメガネガミへと迫る。目が合った瞬間、メガネガミの身体が小さく震えた。

  • 8591◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:37:31

    「……ほう。君……眼鏡をかけていないのかい……?」

    彼女が指を鳴らす――。

    「メガネイション」

    しかし。

    ピシュッ!

    指が鳴るよりも速く、佐藤の警棒が風を切って横へ払われる。まるで銃弾を叩き落とすように、目に見えぬ**“気配”**を切り裂いた。

    「……無意味だ。君の力では、私の眼鏡は届かない」

    その一言に、メガネガミの顔が真剣味を帯びる。

    「なるほど……なるほどなるほどなるほど……! これは……とても良い……!!」

    彼女の目が光を帯びる。

    「完全なる未眼鏡! その存在こそが至高のキャンバス……! 掛けさせる! 必ず!」

    対する佐藤は――静かに警棒を構えるのみ。
    その目は鋼のように冷たく、けれど燃えるように――眼鏡などでは決して屈しぬ信念を宿していた。

    戦闘開始。

  • 8601◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:38:31

    「眼鏡をかけないというのなら……」

    メガネガミは、指をもう一度パチンと鳴らした。

    「この世のあらゆる顔面は、眼鏡を求めているのよ!」

    空間が軋む。
    虚空から浮かび上がる、数百にも及ぶ眼鏡の幻影。ラウンド型、スクエア型、リムレス、べっ甲フレーム――すべてが精緻かつ芸術品のようなデザインだ。

    「選びなさい! あるいは、私が選ぶわッ!」

    その一瞬、視界に入った者全てが、その眼鏡の嵐に捕らえられる。
    ――が。

    「……それは、選択肢ではない」

    ドンッ!

    佐藤清が一歩、地を踏み鳴らす。瞬間、眼鏡の嵐が音もなく全滅した。まるで"気迫"の余波だけで叩き落とされたように。

    「……ありえない……!? 私のメガネが……」

    「……訓練中、凜がよく眼鏡でふざけたが……」

    警棒が静かに構えられる。まるで刀を抜くかのように。

    「私に眼鏡をかけさせようとした者は、皆後悔した」

    佐藤の姿が揺らぐ。

  • 8611◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:38:48

    「――神速抜打・疾風連型」

    一閃。
    空間が引き裂かれたかのような風音とともに、佐藤の警棒がメガネガミの肩口に突き立てられる寸前、彼女の身体がふわりと霧のように消えた。

    「おおおっとぉ〜! 危な〜い!」

    軽い調子で距離を取った彼女の足元には、既に**大量の“眼鏡式防御式神陣”**が描かれていた。

    「そう簡単にはやられないわよ。だって私は神だものっ!」

    「……自称、だろう」

    言葉少なに返す佐藤。が、その目は一瞬たりとも彼女を逃さず捉え続けている。

    「……だが。神であれ、狂気であれ……君が市民に危害を加えるならば――」

    彼は盾を構える。

    「私は、正義の名で打ち倒す」

    眼鏡神の顔から、ふざけた笑みが消える。
    彼女の中で、何かが変わった。男の言葉の重みに、彼女の心が震えた。

    「……いいわ。真剣に遊んであげる……“未眼鏡最終強制装着・プロトΩ”――発動ッ!」

    空が裂け、降り注ぐ巨大な眼鏡の光輪。
    戦いは、もはや異能と人間技の境を越え始めていた。

  • 8621◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:40:00

    降り注ぐのは、光の環を纏った巨大な眼鏡型術式。

    「これぞ眼鏡の極致、眼鏡にして神! 神にして眼鏡ッ! 未眼鏡最終強制装着――プロトΩ!!」

    天を割って顕現したその“眼鏡”は、直径数十メートル。もはや装飾でも器具でもない。
    空間そのものを「眼鏡」に変換する異常事態。

    「この中に入った瞬間……どんな異形も、どんな存在も! “人間型に変換”して、ぴったりのメガネをかけさせられるのよ!」

    メガネガミが両腕を広げると、プロトΩの“フレーム”が世界を枠取り始めた。
    そこは“眼鏡をかけるにふさわしい存在”だけが許される異空間。――強制された理想の眼鏡空間。

    だが。

    「……滑稽だな」

    重い足音一つ。
    フレームの中心、空間変換の“核”ともいえる地点に、佐藤清が直立したまま立っていた。

  • 8631◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:40:19

    「な……なっ、なぜ!? 完全な“空間固定型術式”なのに……!」

    「構えろ、“極技構式盾:千烈割流”」

    佐藤の手に握られた機動隊の盾。
    それが、盾の域を越えた“武”の塊と化す。

    ガンッ!

    盾が打ち鳴らされるごとに、プロトΩの術式がひび割れ、崩壊していく。
    重いが淀みのない動き。彼の一挙手一投足が“技”であり“理”であり“破壊”となる。

    「私は、“力”ではない。“救うための技術”を振るっている」

    一歩。

    「君のそれはただの押しつけだ」

    二歩。

    「仮に眼鏡が人を引き立てるとしても、それを“強制する”君に……救いはない」

  • 8641◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:40:45

    三歩目で、フレームは完全に砕け散った。

    「……う、うう……や、やめてよぉ……だって、だって……みんな眼鏡似合うのに……なんで……?」

    その場に膝をつくメガネガミ。
    眼鏡だらけの神陣も、空に浮かんでいた巨大な眼鏡も消えていた。

    だが――佐藤は拳銃を抜かず、ただ盾を下ろして言った。

    「……君が、誰かの視界を本当に変えたいなら……無理やりかけさせるんじゃない。見せてやるんだ」

    その言葉に、メガネガミの肩がぴくりと震えた。

    「――!」

    ふっと、少女のような笑顔が戻る。

    「……なるほど、やっぱり……そういう眼だわ。すてき」

    次の瞬間、メガネガミはその場から消えた。
    風に消えたように、痕跡ひとつ残さず。

    残ったのは、瓦礫の中でぽつんと転がるひとつの眼鏡だけだった。

  • 8651◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:43:14

    静寂。
    眼鏡の神が去り、破壊された市街地にはようやく平穏が戻る。

    佐藤清は警棒を腰に戻し、盾を背に、瓦礫の中を静かに歩いた。
    周囲には異能災害対応の後続部隊の足音が響いていたが、彼の気配はそれを超えて静かだ。

    「……父さん!」

    駆け寄ってきたのは、双剣を背負った小柄な少女――佐藤凜。

    「大丈夫!? 変なメガネとか、つけられてない!?」

    「私は大丈夫だ」

    清は淡々と答えるが、その瞳の奥にふっと微笑みのような温度が灯る。
    凜はホッと胸をなでおろした。

    「でも……すっごいでっかい眼鏡が空に浮いてて、こわかったよ……。お兄ちゃんも心配してた」

    「蓮は?」

    「今は後方で救助活動してる。変なメガネかけて“これ似合う?”とか言ってたけど……あれ、ギャグだったのかな」

    清は一瞬だけ吹き出しそうになったが、表情は崩さなかった。
    凜は眉をひそめて、地面に落ちていた小さな眼鏡を拾い上げた。

    「これ……あの人の?」

    清はそれを見つめた。
    無骨な戦場に、ぽつりと落ちていたのは、どこか優しさの滲む丸眼鏡。

  • 8661◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:43:34

    「……あの神は、人を“眼鏡越しに”見ようとしていたのかもしれないな」

    「え?」

    「世界を。人を。そのままでは怖くて、直視できないから。だから“眼鏡”を通して、形を整えて……見ていたのだろう」

    凜は言葉の意味を測るように黙る。

    「……じゃあ、お父さんは? どうやって人を見てるの?」

    清は少女を静かに見つめた。
    その目は、剣も銃も盾も通じない、ただまっすぐな、父の目だった。

    「私は、“眼鏡”を通さない。だが……お前たちがかける眼鏡が、世界を守る一助になるのなら。それも悪くない」

    「……お父さん、それちょっとカッコよすぎるんだけど……」

    凜が苦笑すると、清はようやく――ほんの少し、口元を緩めた。

    「行くぞ」

    「うん!」

    少女は駆け出し、父はその後ろ姿を守るように歩き出す。
    父と、眼鏡と。
    救いと矛盾を巡る戦いは、静かに幕を閉じた。

    だが、まだ眼鏡の神は終わっていない――
    そんな気配が、遠い空の奥から、光の残滓として降り注いでいた。

  • 8671◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:44:03

    夜の住宅街。
    電灯の光が揺れる舗道を、メガネガミはフラフラと歩いていた。

    「はぁ……今日は良い眼鏡日和だったわ……ふふ……あの硬派な警察官にも、きっと似合ってたのに……あんなに拒否しなくても……」

    彼女の両手は軽く頬を包み、ふにゃふにゃと蕩けた笑みを浮かべている。
    その頬には、先ほどまでの戦闘でできたうっすらとした痣が残る。だが本人は気にした様子すらない。

    「けど、やっぱりあの子ね……あの笑顔……あの眼差し……」

    思い出したのは、佐藤凜の顔。
    元から眼鏡を掛けていた、無垢で力強い眼差し。あれほど理想の“眼鏡っ子”が現れるとは思ってもみなかった。

    「ふふ……良い……ほんとに良い……。やっぱり世界は素晴らしい眼鏡でできてるわ……!」

    その瞬間。
    空間が、歪んだ。

  • 8681◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:44:21

    目の前に、まるで覗き穴のような“異空間のレンズ”が現れる。向こうに見えるのは、別の街、別の存在、別の世界。

    「次はどんな素敵な眼鏡を掛けさせてくれるのかしら……ふふ、行かなくちゃ。私の使命が……この宇宙をもっと、眼鏡で彩るために!」

    ぱちん、と指を鳴らす。
    空間の歪みが一気に広がり、彼女の姿を飲み込むように消えていった。

    ――メガネガミ、退場。

    だが、それは終わりではなく、始まりだった。

    次に現れるのはどこか。
    誰が次なる“眼鏡の祝福”を受けるのか。
    そして――

    佐藤清は、今日も異能災害の報告書を静かに読みながら、ふと窓の外に目をやる。
    遠い空の彼方。微かに、レンズのような月が浮かんでいた。

    「……また来るのか」

    ただ、その一言だけが、夜の静寂に消えていった。

  • 8691◆ZEeB1LlpgE25/07/13(日) 00:44:42

    以上

  • 870二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 00:47:07

    未眼鏡とかいうワードセンスよ
    おもろかった

  • 871二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 01:01:30

    なんか不意にどっかのタイミングでまた来そうだなコイツ

  • 872二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 09:18:44

    おつしたー

  • 873二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 17:35:18

    はやめのあげ

  • 874二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 23:33:33

    寝る前の保守

  • 875二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 00:07:25

    スレ主、大丈夫?
    なんかあったん?

  • 876二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 05:48:46

    ほしゅ

  • 8771◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 06:50:46

    >>875

    すいません

    昨日今日はちょっと低浮上です

    言い忘れてました

  • 878二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 08:00:23

    >>877

    あ、そうなんだ

    わかりました

    連絡ありがとうございます

  • 8791◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 09:54:48

    ちょっと時間が空いたんで

    題名『砕ける鏡と揺らぐ運命』

  • 8801◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 09:55:23

    街の片隅、瓦礫が積もる廃墟の中央に、一人の少年が立っていた。
    膝を震わせながらも、視線だけは逸らさず、目の前の“それ”を睨んでいる。

    “それ”は鏡だった。
    ただの鏡ではない。人の形をしているのに、表面は不気味に歪むガラス質で覆われている。映り込む景色は現実ではなく、悪夢のような色をしていた。

    少年の名は――弱者。

    彼は今、確かに恐怖していた。心臓が喉を突き上げ、指先が冷たく痺れる。
    だが、それでも立っているのは、偶然が、あるいは希望が、この戦いに勝機を与えるかもしれないと信じているからだ。

    鏡が音もなく口を開く。
    それは笑っていた。言葉ではなく、空気を撹拌するような“嗤い”だった。

    「弱者……か。なるほど。どこまでも滑稽な名だ。では、嗤うに相応しい」

    次の瞬間、鏡の身体がうねるように揺れ――少年の姿に変貌する。
    同じ顔、同じ髪型、同じ服装。だがその瞳だけは漆黒の靄に覆われ、狂気のような光を湛えていた。

    「模倣――完了。次は“お前の全力”を、超えてみせよう」

    弱者は震えた。目の前の存在が、自分と同じ“弱者”であるはずがないことを、肌で理解したからだ。

  • 8811◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 09:55:40

    ――それでも、逃げなかった。

    少年は拳を握った。膝が笑っても、喉が乾いても、心が折れそうになっても。
    ほんのわずかな“ずれ”、世界の偶然が味方してくれるかもしれない。それが彼の唯一の武器だった。

    「……ボク、負けても……ただでは負けないよ」

    嗤う鏡が、歪に笑った。
    鏡面の表層に、亀裂のような光がほんのわずかに走った。

    ――戦いは、幕を開ける。

  • 8821◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 09:56:22

    開戦の合図はなかった。
    ただ、空気が震えた。その瞬間、模倣体――嗤う万象の模倣者が動いた。

    姿は完全に“弱者”そのもの。だがその動きは、まるで別物だった。
    真っ直ぐに踏み込み、無駄のない拳を繰り出す。それはただの少年が振るうには、あまりにも洗練されすぎていた。

    「“お前の弱さ”すらも――完成されれば武器になる」

    拳が頬に命中する。
    衝撃が脳天に抜け、弱者の身体が後方へ吹き飛んだ。

    だが、それでも立ち上がった。
    鼻血を拭いながら、口元を震わせ、ぐっと歯を食いしばる。

    「……痛い、けど……そっか。そういうことなんだね……」

    鏡は首を傾げた。興味を引かれたように。

    「……“何”がだ?」

    「君は、模倣したボクで……ボクよりちょっと強い。でも、それはボクが“弱者”である限り、いつだって“紙一重の差”でしかないってことだ」

    「……ほう」

    「だから、もしほんの少し、運がこっちに転べば――勝てるかもしれない」

    弱者の言葉に、鏡の表面がピシ、とわずかにきしんだ。
    理解と警戒。模倣者は気づき始めていた。この少年の能力が、単なる“弱さ”では終わらないことに。

  • 8831◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 09:56:42

    「試してみろ。お前の“偶然”が、私の模倣を越えるかどうか」

    模倣者が再び踏み込む。
    今度は掌打。風を切る音が、雷鳴のように響く。

    対する弱者は――回避した。
    ほんの数センチ。わずかに靴の裏を滑らせて、攻撃を紙一重で外す。

    模倣者の眉が動いた。

    「偶然、か……?」

    「そうだよ。……さっき蹴られた拍子に、石ころが足元に転がってて、たまたま滑っただけ……でも、当たらなかった」

    模倣者は黙っていた。鏡面の中で無数の光が蠢いている。

    「それこそが“弱者の特権”――理不尽を引き寄せる可能性か」

    そして、その理不尽が、自分に牙を剥くかもしれない。
    模倣者の胸に、ごく微細な“恐れ”が灯った。

    弱者は拳を構える。弱々しいその姿は、あまりにも無防備に見えた。

    「……それでも来る?」

    「来るとも。“昇華”してやろう。偶然すらも、我が力に」

    嗤う万象の模倣者が、再び殺到した。

    その影が、少年に重なる――

  • 8841◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 09:57:40

    嵐のような連撃。
    嗤う万象の模倣者は、弱者の全動作、全反応、全てを“上回る”最適解で攻め立てた。
    その拳は鋭く、足裁きは重く、言葉通り“紙一重”の力で弱者を圧倒する。

    だが、少年は倒れない。

    顔を殴られ、腹を蹴られ、肘を叩き込まれても――立ち上がる。
    膝が震え、息が上がり、血が滲んでも――前を向いていた。

    「……おかしいなぁ……」

    模倣者が呟く。その姿は未だ“弱者”のままだ。だが、その表情には奇妙な困惑が浮かんでいた。

    「君は、“負ける力”のはずだろう。なぜ、倒れない?」

    弱者は笑った。息が荒く、足元もふらついている。それでも、笑った。

    「だって、ボク、“死なない”って能力じゃないから……。“紙一重で負ける”ってだけ。……ね?」

    「…………」

    「君が模倣してるのは、ボクじゃなくて、ボクの“敗北”なんだよ」

    その言葉に、鏡が再び軋む音がした。

  • 8851◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 09:57:57

    「つまり……私は、今この瞬間、“勝ちきれない”力しか持っていない……?」

    模倣者がはっとする。
    その能力は常に相手の性能を“わずかに上回る”。だが“弱者”が持つのは、もともと“敗北する”だけの力。
    模倣者は、模倣した時点で“絶対に勝てない”構造を宿してしまったのだ。

    それは、気づいた者にしか刺さらない毒。
    模倣した瞬間から、“負ける力”の檻に閉じ込められたのだ。

    「くくく……面白い、これは滑稽だ」

    嗤う万象の模倣者が、仮面のような顔で笑った。

    「お前の力、恐ろしく不完全で……それでいて、完全な罠だ」

    「ボクだって……怖いよ。でも……君がボクをなぞる限り、勝ちきれないはずなんだ」

    弱者が拳を握った。
    それは震えていた。痛みで、恐怖で。けれどその拳は、確かに何かを信じていた。

    「だからボク、負けるけど……ちゃんと、戦うよ」

    模倣者が再び突進。だが、その挙動には一瞬のズレがあった。
    模倣の中に潜む“不協和音”。負けるべくして模倣した力が、自らの動きに微かな破綻をもたらす。

  • 8861◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 09:58:16

    弱者が踏み出す。
    震える足、狙いのずれた拳――しかし、それでも一撃。

    「……これが、ボクの……“紙一重”!」

    拳と拳が交差する。
    模倣者の一撃は正確だった。だが、ほんのわずかにバランスを崩していた。

    弱者の拳は、遅く、弱く、でも――確かに、喉元を捉えた。

    衝撃が、空間を裂いた。

    「ッ――」

    模倣者の姿がぶれる。
    鏡面に亀裂。視界にノイズ。弱者が膝をつき、咳き込む。

    だが、次の瞬間。

    「……君の一撃は、届いた。だが……“それでも私は負けない”」

    模倣者の鏡面に、わずかに修復が走った。
    だがその奥、ほんの一筋の“疑念”が揺れていた。

    「……だといいけど」

    弱者の声はかすれていた。だが、その目は前を見据えていた。

  • 8871◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 09:59:02

    鏡が、揺れていた。

    嗤う万象の模倣者は、確かに優位を保っていたはずだった。
    全てを写し、上回り、否応なくねじ伏せるはずの存在――それが自らに課した理。

    だが、弱者という存在はその構造に歪みを生んでいた。

    「模倣が……成立している。だが、勝ちきれない……」

    その声は形を持たない。空気の振動でもなく、脳髄に直接注ぎ込まれる感覚に近い。
    聞いた者の心を逆撫でするような、ざらりとした響き。

    鏡面の奥で、何かが蠢いていた。
    それはこれまでに模倣した幾多の“強者”たちの姿――全ての力の断片が、ざわめくように混ざり合い、波紋を描く。

    だが、その中心に“弱者”の姿があった。

    「このままでは、破綻する……“模倣昇華”は、対象を超えるための術。だが“弱者”は、初めから勝利を目指さぬ……」

  • 8881◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 09:59:17

    模倣し、昇華しようとすればするほど、“紙一重の敗北”に導かれる。

    「何が……このようなバグを許した……?」

    鏡の中に罅が走る。
    映し出された無数の“自分”たちが一斉に笑い出す。愉快そうに、どこか苦しげに。

    その姿は、まるでこの状況を“嗤って”いるかのようだった。

    「ふざけるな……!」

    模倣者が空を裂く。
    黒い靄が膨れ上がり、巨大な腕を形成する。今までに模倣してきた、あらゆる超常の力が溶け合い、荒れ狂う。

    「ならば――お前を“模倣対象”から除外すればよい!」

    その宣言と共に、模倣者は形を変えた。
    もはや“弱者”の姿ではない。幾多の強者の融合体――“過去最強”の構成から生まれた、歪な巨影。

    「もはや“模倣”ではない。これは、“昇華”のみだ」

    巨大な黒い腕が振るわれる。
    その質量は山を砕き、地を穿ち、存在そのものをねじ伏せる暴。

    だが――その圧力の中で、弱者は立っていた。

  • 8891◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 09:59:36

    膝を震わせ、唇を噛み締め、それでも視線を外さず。

    「……そんなふうに、勝とうとするなら――」

    彼の身体が、微かに前へ踏み出した。

    「ボクの“弱さ”が……君の“強さ”を壊す」

    その言葉と同時、崩れかけの小石が足元を滑らせた。

    ――偶然。

    そのほんのわずかなズレが、模倣者の拳の軌道を狂わせる。

    「な――ッ」

    拳はかすり、後方の岩壁を破壊する。
    砂塵が舞い、静寂が訪れた。

    弱者の拳は、まだ下ろされていなかった。

    「ボクは……負けるよ。いつだって、ちゃんと負ける。でもね」

    その瞳に、光が宿る。

    「君は、ボクに勝てないんだ」

    鏡に、またひとつヒビが入った。

  • 8901◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 10:00:21

    鏡が、音を立てて軋んだ。
    模倣者の核心、万象を写し取るその鏡面に、無視できない異常が刻まれていく。

    「想定外……あまりに想定外……この戦況……理論に反する……」

    己の存在意義を支えていた“模倣昇華”が、崩れていく。
    弱者を模倣した時点で、その宿命的な「紙一重の敗北」が、まるで呪いのように模倣者自身へ食い込んでいた。

    「昇華は、すべてを凌駕するはず……! それが、なぜ……!」

    その問いに答えるように、弱者が、よろめきながらも前に出た。
    額から血を垂らし、左腕はおそらく骨折している。
    それでも、彼は微かに笑っていた。痛々しいほど、弱く、そして――確かにそこに立っていた。

    「ボクの力は……“誰よりも少しだけ劣る”ってだけ。でも、君が強くなればなるほど……ボクも強くなる。だから、君はもう……自分で自分の首を絞めてるんだよ」

    その言葉に、模倣者の全身がピシリと震えた。
    鏡面に映っていた自身の姿が、わずかに歪み、凶悪な強者たちの残像がノイズとなって消えていく。

    「やめろ……この構造は、破綻を招く。全能力値が振動している。安定不可……」

    鏡の奥、溶けゆくように映し出される“弱者”の影。

  • 8911◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 10:00:45

    己が模倣し、取り込んだはずの存在が、今や内側から侵食していた。

    「“模倣”によって私は、限界を超え続けてきた……だが“敗北を模倣”した私は……限界を迎える」

    黒い靄が震え、鏡面に走る亀裂がさらに拡がる。

    「やめろ……やめろォ!!」

    叫びにも似た声が、世界に響いた。
    だが――それは、ただの悲鳴だった。

    「君は強かったよ。本当に、すごく。でも……」

    弱者が、ふらふらと近づいてくる。

    「それでもボクが、最後にほんの少しだけ“上回る”……それが、この戦いの終わりなんだ」

    そして――鏡が、砕けた。

    パァンッ、と乾いた破裂音が大気を裂く。
    万象を嗤っていた鏡面が、蜘蛛の巣のような亀裂を抱え、粉々に崩れ落ちる。

    黒い靄が爆ぜ、無数の“模倣”が消えていく。
    そこにはもはや、力も姿も残されていなかった。

    ただ、風に吹かれ、砕け散った鏡の欠片が、空に舞っていた。

  • 8921◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 10:01:17

    瓦礫と鏡片が散らばる静寂のなか、少年はゆっくりと膝をついた。
    勝利の実感は――なかった。

    「……勝った、のかな」

    呟く声は、消え入りそうだった。
    服は裂け、全身は泥と血にまみれ、意識は朦朧。
    だが確かに、目の前の“敵”はもういなかった。

    嗤う万象の模倣者。
    全てを模倣し、上回るはずだった存在は、“弱者”という名の矛盾を模倣したことで、自壊の道を選ばされた。
    勝敗は、もはや力の差ではなく――構造そのものの破綻だった。

    「はは……なんだそれ、ボクが“ちょっとだけ劣ってる”せいで、勝っちゃうなんて……」

    口元に浮かんだのは、苦笑だった。
    勝利の余韻に浸るには、あまりにも痛みが強い。
    胸の奥がぎゅうと苦しくなって、涙が滲む。

    (怖かった……もうダメだって、何度も思った)

    それでも、逃げなかった。
    それだけは、自分で自分を褒めてもいい――そう思った。

    風が吹いた。
    鏡の欠片が、きらきらと舞い上がり、空へ昇っていく。

  • 8931◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 10:01:39

    まるで、敗れた模倣者の“魂”が、何処かへ還っていくようだった。

    「……お疲れさま」

    ぽつりと、少年は言った。
    敵だった存在に向けて、祈るように。

    その声が届いたかは、誰にも分からない。
    ただ一つ確かなのは、彼が最後まで、“弱者”として立ち続けたということだった。

    そして。

    「――あれ? これ、もしかして……ほんとうに……勝った、の?」

    ようやく実感が、胸の奥からゆっくりと湧き上がってきた。

    それは、**人生で初めての“勝利”**だった。
    嬉しさに、涙がこぼれた。
    でもその顔は、笑っていた。

    ――次に勝てるとは限らない。
    ――だけど、今日の勝利は、確かに本物だ。

    だから彼は、もう一度立ち上がる。
    震える膝を押さえ、痛む身体を引きずって、それでも一歩、また一歩。

    「次は、もう少し……ちゃんと戦えるようになりたいな」

    少年――弱者は、初めての勝利を胸に、歩き出した。
    そしてその足取りは、ほんの少しだけ、昨日よりも強かった。

  • 8941◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 10:02:00

    以上

  • 895二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 10:12:04

    相性と根性で強敵を下すってのはやはりいいもんだ
    GJ

  • 896二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 10:52:08

    意外と弱者の能力が嗤う万象の模倣者へのメタだったな

  • 8971◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 11:25:38

    やけくそで今日無茶苦茶進めようかな……

  • 898二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 11:28:07

    >>897

    あんま無理はしないようにしてくださいね

    できる範囲でがんばってください

  • 8991◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 13:12:15
  • 900二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 14:03:53

    一気に進めるってそういうやり方なのか、面白かった

    それはそうと安価の修羅なので次の安価時間を聞きたい

  • 9011◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 14:06:19

    15:15から安価

  • 902二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 14:11:50

    おおっ 安価か

  • 903二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 14:15:02

    あと1時間あるからここまでのSSもかなり余裕持って読めるな

  • 904二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:02:10

    >>899

    奥抜スレ主が作っただけあってノカみたいにスレ主が好きそうなサイコキャラしてた

    個人的に最後の締めがかなり素敵で好み

  • 905二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:15:00

    名前:機竜AD-V
    年齢:不明  性別:なし  
    種族:対巨大敵性存在用自律思考兵器
    本人概要:アーマード・ドラゲリオン-Vol
    人類が作りあげた拠点防衛用巨大兵器。自律思考による戦闘を行う。
    能力概要:
    『精神破壊光線』
    背部搭載の戦闘補助用バイオコンピュータにエネルギーを過剰供給し、これによって発生する光波・電磁波・精神波で相手の精神を直接破壊する。
    『DMフレア』
    翼部から牽制用弾幕を展開しながら周囲に反射材や催涙粉塵をばら撒くことで、敵のセンサーを始めとする捕捉能力を機能停止に追いこむ。
    『超帯電電磁球』『超重力球』
    相手の防御力場・障壁に対して撃ち込むことで瞬間的に過剰な負荷をかけて機能そのものを破壊する。それぞれ発生機関とメカニズムが違う。
    『8連装対空プラズマカノン』
    4枚の翼部にそれぞれ2つずつ備えられた砲塔から速度と貫通力に優れたプラズマ砲を放つ
    『メルトアーム』
    超高温状態まで熱した前腕部で触れた敵性存在の防御装甲を融解させる。熱線そのものを発射して相手を焼き切る攻撃も可能。
    『斥力フィールド』『エネルギー偏向フィールド』『電磁バリア』
    相手の攻撃を防ぐ二重の力場と障壁。力場にはAD-V側の攻撃の威力を増大させる効果もある。
    『エネルギー変換装甲』
    ダメージの約9割を活動エネルギーへと変換する装甲。
    『ドリルテール』
    細かく鋭い突起のついた3つの尾部がそれぞれ高速回転し、地盤や敵の身体を削り取る。ドリルというよりは超速回転するヤスリ。
    『ガンマブラスター』
    ガンマバーストを発生させて射線上すべてのものを原子レベルで蒸発させる。直撃せずともその余波で相手の構成物質を変質させる。
    上下胴体に合計2機搭載されたリアクターの片方を攻撃に転用しているため、事実上1回の戦闘につき1発しか放てない。
    『分離』
    首・尻尾・翼・四肢・上胴体・下胴体がそれぞれ分離することで、攻撃の緊急回避や包囲攻撃を行う。
    弱点:
    巨大な存在を仮想敵として設計されたため、人のような小型の相手をロックオンすることができずノーコンになり、攻撃をくらった方向への反撃という形でしか狙いをつけられない。
    人間サイズであれば装甲のすき間から各部を動かすコードを直接狙えるうえに、デカすぎて小回りが効かず人間サイズ相手に有効に使える武装が限られている。

  • 906二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:15:00

    名前:生存者
    年齢:20
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:今まで陸・海・空の事故やテロ、雪山遭難などを経験して生き残っている。
    能力:なし
    能力概要:不運な事から何度も生き残っているがそれは能力の力ではなく本人が生き残る最善の選択を取れる程の感と勘、知識、運を持っているからである。
    弱点:正面の戦闘がクソ雑魚

  • 907二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:15:01

    名前:ハガル
    年齢:25
    性別:男
    種族:複製人間
    本人概要:意識をデータベースに写し、必要な時に自分のクローンに人格のコピーを憑依させ任務を遂行するバイオパンク社のエージェントの一人 スライム工場を爆破した折神を始末し奪われた機密情報を取り返そうとしたら折神が倒されていたがアンサズにより機密情報は回収できたので今は現世をエンジョイしている
    能力:濃霧
    能力概要:辺り一帯に光を通さない濃霧を生み出す これに毒性は無いが暗闇で相手の視界を遮りさらに相手を濡らして体温を奪ったり足元を濡らして滑りやすくする もちろん自分は身体改造で暗闇でも見えるし体温は保たれ足元も軍靴によって滑らない
    これらの地の利を揃えた上で高威力な二丁拳銃で攻撃する
    弱点:濃霧によるデバフはあくまで対人想定なので機械などの人外には通用しづらい また暗闇を見通すための暗視バイオ眼球は急な強い光に弱く、高威力二丁拳銃を扱うためにバイオ改造した筋肉はエネルギー消費が激しく長期戦に弱い

  • 908二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:15:03

    名前:セラ・リューア=グレイフ
    年齢:見た目19歳(実年齢不明)
    性別:女性
    種族:星霊契約者(擬似星霊体)
    本人概要:
    星葬機関第八局《終恒(ターミナル)》に所属する最終処分人。辺境惑星ルフェルの王族だったが、星喰いの襲撃で故郷を失い、契約星霊《燼の星霊ユル=ハ=ガルマ》と強制契約を結ぶ。星喰いの痕跡を追い、宇宙の終焉を防ぐために戦う。冷静沈着だが内に復讐の炎を秘め、身体の一部が星霊化している。
    契約星霊ユル=ハ=ガルマは星喰いに勝利しかけた禁忌の星霊であり、その断片意識がセラに宿る。
    能力: 終焉灼界(ラスト・インフェルノ)
    能力概要:
    星霊ユル=ハ=ガルマの力で熱エネルギーに還元・焼却する能力。
    ・虚陽炉界(コロナ・クレマトリウム):最大半径20mの灼熱領域を展開し、物質・霊体・星霊因子を焼き尽くす。最大持続5分。
    ・存在熱変換(エグゾースト・リダクション):最大直径3mの対象を瞬間的に熱に還元し破壊。発動時に約10秒の詠唱硬直あり。
    ・擬似星霊形態変身:背部に灼熱の翼を展開し身体能力と感覚を強化。異次元干渉能力を持ち、最大2分維持可能。変身解除後は40秒間戦闘不能。
    弱点:
    ・灼界展開には10秒の詠唱硬直があり、その間無防備。
    ・炎熱耐性や熱変換拒否の敵に効果が薄い。
    ・擬似星霊形態の維持時間は最大2分で、解除後は40秒間戦闘不能になる。
    ・灼界外での素の身体能力は平均以下。
    要望(任意):
    ・戦い中もずっと星喰いのことばっかり言ってる

  • 909二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:15:04

    名前:舞羽 那須美(ぶっぱ なすび)
    年齢:8歳
    性別:幼女
    種族:人間
    能力:口からビームをぶっ放す
    人物概要:〝史上最強の兵器〟を目指して作り出された兵器にして人造人間。しかしその実態はアンポンタン幼女であった。
    性格は人懐っこい小型犬。怒ると怖い。
    能力概要:相性差・格の違いを完全に無視して相手の能力ごと、森羅万象無量大数ありとあらゆる概念を焼き尽くし蒸発させるゴン太超火力ゲロビームを放つ。そこに居た・能力を使ったという事実や歴史ごと相手の存在を消し去ってしまうだろう。
    弱点:ビームを撃つことしかできないので近距離戦闘能力は皆無。ビームを避けられると何もできない。
    であるにも関わらず本人の身体能力・耐久力共に人間並な上にビームのチャージ時間は動く事が一切できない。

  • 910二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:15:15

    名前:パステル・メロー
    年齢:14
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:絵を描くのが大好きな少年。
    能力:パステルワールド
    能力概要:紙に描いた絵を具現化する。
    空想上の怪物でも実在する超人でも再現可能で、自由帳にストックしておくことも可能。
    弱点:再現されたものは水に弱い。
    本人はごく普通の少年

  • 911二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:15:18

    名前:ルセリア・ブラッドウェル(姉) / リリシア・ブラッドウェル(妹)
    年齢:見た目は12歳前後(実年齢不詳)
    性別:女
    種族:魔族
    本人概要:
    魔界の監獄「ヘルズプリズン」に所属する白髪の双子の拷問官(上級刑務官相当の実力)。外見は無垢な少女でありながら、その本性は冷酷無比な処刑者。左右対称のオッドアイ、不気味にハモる会話、ゴシックロリータ衣装といった異様な存在感で、囚人たちを圧倒的な恐怖に叩き落とす。ルセリアは巨乳でロングストレート、リリシアは貧乳でツインテール。姉のルセリアは計算高く冷静な支配者。妹のリリシアは享楽的な戦闘狂。2人の異なる気質と拷問技術が恐怖の相乗効果を生み出す。
    能力:
    •ルセリア:煉獄具現術式《スカーレット・ガロウズ》
    無数の拷問器具を空間から具現化し、自在に操る術式。器具は記憶・精神・痛覚・肉体など複数の層を攻める設   計となっており、囚人の弱点に応じて最も効果的な器具ばかりが自動選択される。鉄の処女、杭打ち機、拘束鎖、精神穿孔機など、その数は数百に及び、全てが芸術品のような美しさと残酷さを備える。
    •リリシア:魔喰肉躰《カーニバル・グリード》
    自身の肉体を超強化し、身の丈以上の巨大な魔戦斧と圧倒的な身体能力で相手を粉砕する術式。筋力・速度・耐久・反射神経などが極限まで高められており、特に拳と脚による打撃は重機並みの破壊力を持つ。
    戦闘中は痛覚を制御し、骨折や出血を無視して戦える。また、敵の血肉を摂取することで一時的にパワーアップする特性も持つ。拷問においては、生身で囚人を「壊す」スタイルを貫く。
    能力概要:
    •ルセリアは中~遠距離での術式運用・拘束・精神破壊を担当。
    •リリシアは近接戦闘と直接的な肉体破壊を担当。
    •二人のコンビネーションは「破滅の二重螺旋」と呼ばれ、処刑と拷問において絶対的な成功率を誇る。
    弱点:
    •リリシアは本能と衝動で動くことが多く、罠や精神系の攻撃にはやや脆い。
    •ルセリアの術式は準備に一瞬の隙があるため、奇襲に弱い。
    •どちらも肉体をバラバラにされたら死ぬ
    要望(任意):
    •リリシアの肉体破壊系の戦闘描写を派手かつスピード感あるものにしてほしい。

  • 912二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:15:24

    名前:審問者
    年齢:2000歳
    性別:男
    種族:元人間の怪異
    人物概要:かつては敬虔な信徒だったが、侵攻してくる異教徒から身を守る術を探すうちにいつしか邪教に手を染め、肉体は愚か心までも怪物になってしまった。黒いローブの中身は触手の集合体。肉塊と血錆が覆い尽くす魔都を牙城としている。
    能力:審問者(インクイジター)
    能力概要:異端審問を行い、人間を邪神の信徒たる触手の怪物に変貌させる能力。審問者はこれを〝正しい形に正している〟と嘯く。
    この能力の真価は、増やした信徒を使い、外宇宙の邪神を現世に降臨させることにある。
    弱点:唯一残った人間時代の心臓を破壊されると死ぬ。

  • 913二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:15:30

    名前: オルガニスフィア
    年齢: 不明(構成個体は数週間〜数ヶ月の単位で入れ替わる)
    性別: 無性
    種族: バイオメカニカル群体生体兵器(複数のカオスグロース個体による集合体)
    本人概要:
    複数の自己改造暴走型バイオメカニカル個体がナノ神経繊維ネットワークを介して統合された群体意識体。
    兵器として軍が開発・運用し、戦場での高適応・高破壊力を誇る。単なる兵器の枠を超え、知性と意思を持ちつつもその精神は不安定で、しばしば暴走・異形化を繰り返す。物理的形態は流動的であり、無数の触手、機械的義肢、獣のような骨格が複雑に絡み合う異形の集合体である。
    能力:
    群体意識統合: 数十~数百の個体が精神的に結合し、一つの高度な知性と戦術判断能力を発揮。
    形態変異自在: 戦況に応じて身体構造や武装を瞬時に再編成可能。
    自己修復・自己増殖: ダメージを受けても分散した個体が連携し、損傷部位を即座に補完・再生。
    高度な索敵能力: ナノ神経繊維を介したネットワークで広範囲の情報を即時共有し、敵の動きを予測。
    生体融合攻撃: 生体と機械の混合部位から毒液、腐食性物質、強酸などを分泌可能。
    能力概要:
    オルガニスフィアは一個体としての意思と多個体の戦術的連携を兼ね備えた群体兵器。戦場では通常の兵器を圧倒し、敵の戦術を凌駕する。流動的な体形は捕食者のように敵を包囲・破砕し、自己増殖により戦線維持が容易。精神統合が崩れれば暴走状態となり味方すら攻撃対象となる。
    弱点:
    中枢ユニットや主導精神が損傷を受けると群体全体が機能不全に陥る。
    精神攻撃や妨害電磁波に弱く、ナノ神経繊維通信の遮断は全体の連携を阻害。
    カオスグロース由来の遺伝子異常が制御不能となり、制御系統が崩壊。暴走した場合、体内エネルギーを制御できず自壊の危険あり。
    物理的に分断されると戦力減衰: 群体の一部が孤立すると、その部分の能力が著しく低下。

  • 914二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:15:58

    名前:佐藤紬
    年齢:45歳
    性別:女
    種族:人間
    人物概要:佐藤蓮、佐藤凜の母親であり佐藤清の妻である主婦
    茶髪ロングヘアに糸目、巨乳でエプロン姿がよく似合う奥様、だがエプロン姿に見えるこれは本当はナノマシンスーツ
    昔は自分で作った武器を片手に各地で色々と暴れまわりやらかしまくって清に惚れて更正し結婚
    性格はとてもおっとりとしていて心優しい・・・のだが戦闘中はぶっ飛んだ事を言いながら獰猛に笑って戦う
    一方で心の優しさは昔から本物で子供達にも優しさや力ある者の責任を常に説いている
    ありとあらゆる武器、武装、武具の扱いが超天才的、観察眼が凄い
    能力:文明の主
    能力概要:文明の主はありとあらゆる武器、武具、武装を創り出せる力
    まるで神が創造したかのような驚異的で圧倒的な力を持った武器、武具、武装を創り出せる
    純粋なナイフや銃に始まりミサイル、パワードスーツ、ロボット、兵器、果ては聖剣などの特殊な武器まで武器ならなんでもイケる
    どういう武具でどういう力を持つか等は自由に決められ創り出せる武具には数の制限もない
    創造物の消去や改造、敵の武具の複製、修復、武装や効果の増量なども可能で奪われたり制御を失ったりする事もない
    弱点:訓練はしているが実戦はかなり久々で勘を取り戻すのに時間がかかる
    若い頃の様にパワードスーツ無しで無茶苦茶は出来ずナノマシンスーツが戦闘の生命線である壊されると逃げ回るしか出来ない
    ナノマシンスーツはかなり頑丈で硬いが構造上脆い部分もあり、また中身である彼女は歳のせいか身体能力と耐久力は脆く弱い
    武器創造、改造、修復、消去、複製などを行うには多少の隙が発生する故に戦いながら即座に何かを創り出すのは難しい
    要望:佐藤蓮、佐藤凜の母親で佐藤清の妻です
    ナノマシンスーツは高速飛行可能で色々な武器が積まれていますがガトリング、小型ミサイル搭載は確定で搭載です
    一人称は「私」、二人称は「貴方」です

  • 915二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:16:42

    何個まで? 
    10個?

  • 916二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:16:46

    このレスは削除されています

  • 917二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:17:32

    >>915

    10個までだね

    だからストップ

  • 918二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:18:22

    >>915

    何も言われてなければ10個までのはず。前回(>>788)もそうだし

  • 919二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:21:02

    よそ見してたら時間が過ぎていた…悲しみ

  • 9201◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 15:27:26
  • 921二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:42:04

    対戦カードが気になるぜ

  • 9221◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 15:58:39

    ハガルvsルセリア・ブラッドウェル(姉) / リリシア・ブラッドウェル(妹)
    機竜AD-Vvsオルガニスフィア
    パステル・メローvs生存者
    佐藤紬vsセラ・リューア=グレイフ
    審問者vs舞羽 那須美

  • 9231◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 19:44:19
  • 924二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 19:51:29

    面白いけどこの形式だとやっぱちょっと見づらいな

  • 925二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 20:00:25

    途中までハガル勝ちかと思ってたけどひっくり返してきた
    やるなあ

  • 926二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 20:05:01

    >>924

    そこら辺は人それぞれよね

    自分は逆にスクロールバーのおかげで読み終わるまであとどのくらいかかりそうかがわかりやすくて見やすいと思ってるし

  • 927二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 20:08:22

    >>926

    読み返す時にわざわざ一回一回開かなくちゃいけんのがなんともな

    第○○章みたいなのがあるのも違和感、文字も細いし

  • 928二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 20:10:14

    読み返したくなったときに見つけやすいっていう利点もある

  • 929二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 20:18:13

    >>928

    そういうのってSSまとめ班とかの領分じゃねぇかな

    見つけやすさで見てもキャラ探しが一番大変だからあんまり変わらん気がするし

  • 9301◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:31:45

    この形式にするときは内容がチャットgptの規約に引っかかって消されちゃうので消される前にまとめてるだけです
    なので規約に引っかからない内容の時はいつも通りにやっています
    それとssをまとめてくださってる方々は善意でやってくれているだけなので領分とかはないです

  • 9311◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:37:05

    題名『極限機構戦域』

  • 9321◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:38:03

    灰色の空の下、かつて戦争で荒廃した無人区域――ここに、人類の最終防衛兵器《機竜AD-V》は立っていた。

    都市ほどの大きさを持つその巨躯は、鋼鉄とエネルギーの塊であり、複数の自律思考ユニットが搭載された戦闘用AIを内蔵している。拠点防衛の最終局面を担う存在、それが《AD-V》だった。

    だが、その巨体の前に、黒い靄がうごめく。

    それは獣でも機械でもない。肉と金属の融合体。数百の生命体が一つの意思に束ねられた、バイオメカニカルの群体兵器《オルガニスフィア》。

    「……索敵信号、感知……対象種別:不明。多数の神経電位反応。単一体ではない。危険度、A+」

    機竜の視覚センサーが赤く点滅し、敵性存在のデータを即時に演算する。

    一方、オルガニスフィアは波打つ肉塊のように形を変え、獣のような四肢と触手を伸ばしながら、静かに地を這って接近していた。視覚器官らしきものが無数に形成され、AD-Vを観察する。

    『巨大機構体、熱源集中。迎撃対象として優先順位を再設定』
    『突入ユニット展開。戦術制圧を開始』

    無数の機械触手が背から噴き出し、周囲に分散。地中に潜り、上空から滑空する個体も現れた。

    その異常な挙動に対し、AD-Vの背部にあるバイオコンピュータが赤光を放つ。

  • 9331◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:38:32

    「初手、戦場制圧モード移行。《DMフレア》起動」

    翼部が展開し、閃光と共に拡散弾幕が展開。周囲一帯に白銀の粉塵と反射材がまき散らされる。それはセンサー妨害用の反応物質。

    「環境制御領域、確保開始」

    だが、オルガニスフィアはその上を行った。
    分散した触手の一部が高濃度の神経性ナノ胞子を空中に撒き、粉塵と混ざりあって情報を撹乱、同時に別個体が周囲の建造物を這い、索敵妨害膜を展開。

    それは単なる霧や煙ではない。感覚そのものを麻痺させ、センサーの信頼性を奪う『錯乱領域』の形成だった。

    「反応速度、低下。神経干渉波、検出……光波干渉あり。視界、収束中……」

    AD-Vの戦闘AIが異常を察知し、直ちに次の戦術に移行する。

    「《精神破壊光線》、チャージ開始。群体意識の中枢を優先排除」

    背部から青紫のオーラが集まり、空間がきしみ始める。
    だが、オルガニスフィアの本体――無数の肉塊と金属がうごめく中枢は、すでに建物の影に潜んでいた。

    そして、その瞬間、地面が爆裂した。

  • 9341◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:38:50

    何本もの触手が地中から飛び出し、AD-Vの脚部ジョイントへと食い込む。

    「侵入経路を確認。防衛フィールド、再展開」

    バリアが起動し、触手を焼き払う。だが、オルガニスフィアの一部はすでに機竜の外殻に接触していた。

    『解析開始。外部装甲情報、取得。高温溶解点、熱分散構造……興味深い』

    無数の口器が開き、構成物質の解析と同時に、毒液と腐食性分泌物が流し込まれる。

    対するAD-Vが吼えるように、全翼を展開。

    「敵性存在、寄生反応確認。排除措置――《メルトアーム》展開」

    腕部が高温で赤熱し、触れたオルガニスフィアの触手を焼き切っていく。焦げた匂いと爆ぜる音。

    だが、その焼かれた細胞は、瞬く間に別個体へと再生し、逆に機竜の関節部へと流れ込む。

    『分離行動、予測済み。内部構造への侵入開始』

    機竜AD-Vの巨大な肉体と、蠢く群体兵器オルガニスフィア。

    戦いの火蓋は、完全に切られた。

  • 9351◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:40:55

    AD-Vの装甲の隙間から侵入したオルガニスフィアの細胞は、内部構造を解析しながらゆっくりとその触手を伸ばしていた。

    『機構の神経網に接触。干渉プロトコル開始』

    オルガニスフィアの群体意識が、AD-Vの演算中枢に対して精神波の干渉を仕掛ける。

    「……内部侵入の兆候検出。制御中枢にノイズ混入。敵意信号を確認……排除開始」

    AD-Vのエネルギー変換装甲が自動的に内部で高周波電磁脈を発生、侵入していたオルガニスフィアの細胞を一部焼き切る。だがその直後、破壊された細胞が分裂・増殖を始めた。

    『熱変換データ取得。装甲構成プロファイル更新完了。自己適応型熱耐性細胞、展開』

    学習と進化、それがオルガニスフィアの最大の武器だった。

    AD-Vは警戒を強め、次の手を打つ。

    「外装開放。部位分離による隔離モード、実行」

    機竜の左脚が機械音とともに外れ、空中で自壊。侵入された部位を犠牲にしてでも、中枢防衛を優先する判断。

    だが、それすらもオルガニスフィアは予測していた。

  • 9361◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:41:12

    『陽動成功。主胴部上部へ侵入ユニット展開』

    廃墟の中から跳躍した個体群が、AD-Vの首元や翼の接合部へと襲い掛かる。

    「近接目標、多数。防衛システム、全弾起動」

    八連装プラズマカノンが一斉に放たれ、空間が光の奔流で埋め尽くされる。

    だがオルガニスフィアの細胞は、まるで光の一瞬を先読みしたかのように飛翔軌道を変え、傷つきながらもなお喰らいつく。

    『中枢神経接続に成功。反応速度に干渉開始』

    内部から神経干渉を仕掛け、AD-Vの行動パターンにわずかな遅延を生じさせる。

    「……内部演算速度、遅延発生。敵性存在の精神波、増幅確認」

    巨竜が悲鳴にも似た警告音を鳴らす。

    有機と機械のぶつかり合い――

    戦況は、混沌の領域へ突入していた。

  • 9371◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:43:09

    AD-Vの内部を蝕むオルガニスフィアの細胞群は、神経系と接続するたびに変異と増殖を繰り返していた。
    機竜の中枢ユニットを守るため、AD-Vはついに禁じられたオプションを選択する。

    「……ユニットA-13より警告。中央神経経路にて敵性干渉最大化。思考プロセス、33%低下。――強制切断を開始」

    轟音と共にAD-Vの上半身が爆発的に分離された。各接合部の爆薬が連動的に炸裂し、神経干渉を受けていた上部パーツを物理的に隔離する緊急措置だった。

    だが、その上部から噴出したオルガニスフィアの触手群はすでに、自立した戦闘意思をもって再構築を始めていた。

    『脊柱神経遮断確認。代替接続試行中……外部構造を基盤に戦術個体を派生生成』

    廃墟の瓦礫やAD-Vの切断装甲を取り込み、新たな半機械生命体――《外殻融合個体》が誕生する。

    その姿は、金属の骨格に粘菌のような筋肉繊維が絡みついた異形。
    4本の脚で跳躍し、回転するブレード状の尾でAD-Vの胴体部へ突撃する。

    「《斥力フィールド》展開」

    即座にバリアが展開されるが、オルガニスフィアはそれを織り込み済みだった。

    融合個体の尾部先端が変形し、周囲の熱エネルギーを吸収する《冷却触媒》へと変化。

  • 9381◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:43:25

    一時的にバリアの動作が低下する隙を突いて、尾が装甲の隙間を抉るように突き刺さる。

    「装甲突破。損傷率:8%。エネルギー偏向率、低下中……再調整……」

    AD-Vの演算ユニットが限界を超え、判断にラグが生まれる。

    『中枢演算遅延確認。主導権掌握の確率、68%まで上昇』

    だが、その刹那。

    「――最大火力展開、承認。排熱制限を解除。攻撃モード《最終排撃》移行」

    AD-Vが制御を超えて出力を跳ね上げた。

    胸部が開き、膨大な光を孕んだ砲身が姿を現す。

    「《ガンマブラスター》、射出まで――3、2、1」

    発射と同時に戦場の地形が歪み、廃墟ごとオルガニスフィアの融合体が蒸発していく。

    それはまさに――存在そのものの蒸散。

    だが、完全消滅はしていなかった。

    わずかに残った細胞片が、灼熱の嵐の中でなおも脈動していた。

    『個体群損失率……63%。戦術転換――暴走許容モード、移行』

    オルガニスフィアは自壊の危険を承知で、制御を超えた「進化」に身を投じる。

  • 9391◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:49:03

    灼熱のガンマブラスターの猛威が戦場を焦がし、オルガニスフィアの細胞群はその大半を失った。しかし、それでもなお、生き残った断片は蠢き、執拗に動きを止めなかった。群体としての統合意識は薄れ、もはや制御は効かない。理性は完全に崩壊し、ただ本能的な破壊衝動と自己保存の欲求だけが残されていた。

    『統合プロトコル停止。抑制リミッター全解除。暴走進化、開始。』

    そう宣言するかのように、オルガニスフィアの細胞たちは互いに融合しあい、以前には見られなかった異形の形態へと急速に変貌を遂げていく。触手が太く、骨格が硬質に変化し、機械部位と生体部位が一体化した異様な巨体が形成された。

    その姿はもはや「兵器」や「生物」の枠を超え、災厄の化身と言っても過言ではなかった。複数の頭部がそれぞれ異なる感覚器官を持ち、獰猛な咆哮とともに四方八方へ触手を伸ばしている。

    地面はその巨体の重量と熱でひび割れ、爆発的な地響きが周囲の瓦礫を震わせた。炎と煙が渦巻き、戦場は凄惨な光景に包まれる。

    「暴走形態確認。敵識別不能。新たな脅威と認定。戦術モード切り替え――《戦域拡張》発動」

    機竜AD-Vもすかさず応じた。戦場制圧のため、かつてない防御・攻撃の最終モードに突入し、全機能を最大出力で稼働させる。

    巨大なアンカーが地面に深く突き刺さり、四肢の各パーツが高速展開して砲門が敵を狙い撃つ。

    しかし、その暴走形態は一対一の相手とは異なり、環境そのものを侵食し拡張していく。

  • 9401◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:49:25

    オルガニスフィアの触手は、廃墟の壁や地中の配線をもろともに破壊しながら増殖し、機竜の周囲を包囲する巨大な網目状の構造を形成した。

    「触手長、数十メートルに到達。周囲有機・無機物質の融合吸収開始。」

    「物理的破壊に加え、分解・融合・再構築の高速サイクルを確認。」

    これらはもはや単なる生体兵器の機能ではなく、空間の物理法則を歪める“生命的災害”として振る舞っていた。

    「我ハ、万象ヲ糧トス――」

    細胞の集合体が発する響きは言葉というよりも、精神の洪水そのものであった。無数の思考が絡み合い、AD-Vの高度な演算ユニットですら処理しきれず、システムに過負荷をかけていく。

    「対話・交渉不可。全火力集中――殲滅命令発動。」

    AD-Vは全砲門を解放し、連続プラズマ射撃、超帯電電磁球、超重力球の複合攻撃を開始。

    激烈な光の奔流が暴走形態を襲うが、オルガニスフィアはその攻撃をものともせず、構成細胞を分散させて粒子状に変化、爆散しながらも空間全体に拡散していった。

    「無数の核に分散し、再構築を開始。」

    「群体の分散防御反応、極限到達。」

    粒子は闇に紛れて戦場を浸食し、あらゆる隙間や破損部へと侵入し始めた。まるでこの空間自体を食らうかのように。

  • 9411◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:49:45

    「我ハ一ニシテ、万……」

    その言葉は断片的にこだまし、やがて完全に消え去った。

    それは、もはや「戦闘」ではなく、全存在を飲み込む“空間災害”の初動だった。

    AD-Vの砲撃は光速に近い速度で飛び交いながらも、粒子状の敵はすり抜け、破壊された隙間を瞬時に補完し増殖する。

    空間そのものが反転し、戦場は未知の危険領域へと変貌を遂げていった。

    「異常事態認識。防御システム強化、空間安定化措置を開始。」

    機竜のAIは必死に戦場の状況を把握し、最悪の事態を回避すべく尽力する。

    だが、その努力は、まるで無意味に思えた。

    巨大な群体はもはや一つの形態にとどまらず、あらゆる物質と情報を取り込み、自己を拡張し続けていたからだ。

    地球の破滅を告げるかのような異形の巨獣は、機竜のすべての攻撃を嘲笑うかのようにしなやかにかわし、拡大の手を止めなかった。

    戦場には、今まで見たことのない絶望の風景が広がっていた。

  • 9421◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:52:39

    灰色の空を裂くように、戦場に響き渡る轟音。オルガニスフィアの暴走形態は、その無数の触手と塊をもって空間そのものを侵蝕し続けていた。流動する肉塊が波のように広がり、地形を変え、戦場の様相を異形の領域へと変貌させていく。

    機竜AD-Vはその圧倒的な破壊力に抗うべく、背部リアクターを過負荷状態まで稼働させていた。だが、徐々に内部のAI演算処理が追いつかず、戦況の把握と指示に遅延が生じ始める。

    「環境収束困難。空間歪曲範囲、拡大中……」
    背部センサーが異常なノイズを吐き出し、AIの声は焦燥を帯びていた。

    オルガニスフィアはそのカオスグロース細胞群を分散させ、破壊された個体の代わりに、無数のナノ胞子を戦場中にばら撒いていた。これらの微細粒子は風に乗り、空気中や亀裂からAD-Vの内部へと侵入していく。

    「ナノ胞子、制御系ネットワークへの侵入を確認。データ吸収及び演算干渉を開始」
    機竜のAIが警告音を発しながらも、体内各所の状態を分析し続ける。

    内部回路を這うナノ胞子はすさまじい速度で増殖し、演算ユニットの思考回路を侵食。これにより、AD-Vの判断処理速度が徐々に低下し、攻撃の正確性が失われていく。

    「自己増殖速度、指数関数的増加。敵思考予測能力の低下を確認」
    冷静な機械の思考回路も、混沌の精神に揺らぎ始めていた。

    外部ではオルガニスフィアの触手が、触れるものすべてを捕食しながら拡大を続ける。地面が裂け、戦場がねじれ、物理法則さえも歪み始めている。

    「局地的空間反転現象、拡大。物理法則崩壊の兆候を検知」
    AIは焦燥に満ちた声で叫ぶが、その機能は限界に近づいていた。

    だが、機竜もまた最終防衛兵器。背部リアクターが閃光を放つと同時に、尾部のドリルテールが猛回転を始めた。ナノ胞子の塊を砕きつつ、斬り裂く。

    「分離攻撃モード起動。四肢及び翼、独立行動を開始」
    胴体は中央にとどまり、分離した四肢と翼が敵群を包囲。連携しながら攻撃を仕掛けていく。

    しかしオルガニスフィアは、その攻撃に一切動揺せず。触手が絡みつき、分離したユニットの動きを縛り、自由を奪う。

  • 9431◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:53:05

    「群体意識による連携制御、維持。攻撃反応速度を向上」
    まるで生き物のように反応し、壊れた箇所は瞬時に再生しながら反撃を続ける。

    「戦術的膠着状態を認識。敵群の拡大速度、依然として制御不能」

    戦場は混沌と化し、どちらも一歩も引けない状況へ突入した。

    その時、オルガニスフィアの中心部で巨大な頭部がゆっくりと動き、獰猛な視線を機竜へと向ける。

    「……さらなる消耗は許されぬ。全戦力を投入し、終焉へ導く」
    機竜もまた硬い決意を示し、全砲門を最大出力へ。

    プラズマカノン、精神破壊光線、超帯電電磁球、すべての兵器が一斉に放たれる。

    光とエネルギーの奔流が交差し、戦場はまるで嵐の中心のように激しく揺れ動いた。

    しかし、オルガニスフィアの群体はその攻撃を巧みにかわし、さらに巨大化しながらも、その中枢を守り抜く。

    「暴走形態、進化段階へ突入。新たな形態、形成開始」

    地面を揺るがす咆哮と共に、異形の触手が伸び、数メートルにも及ぶ巨大な頭部や顎が出現。まるで災厄そのものが具現化したかのようだった。

    「この戦いは終わらない。だが、私たちは負けない」

    機竜のAIは最後の計算を始め、未知のデータに基づく新戦術を編み出そうとしていた。

    戦場は、依然として光と影、機械と有機、秩序と混沌が入り混じる死闘の渦中にある。

    だが、勝敗の行方は未だ誰にも分からない。
    空間が裂けるその場所で、二つの存在は永遠とも思える激闘を続けていた。

  • 9441◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:56:59

    戦場は依然として灰色の霧に覆われ、焦土となった廃墟の中で二つの異形が対峙していた。
    無数の破片が舞い上がり、機械と肉の混ざり合う異様な光景が広がる。

    機竜AD-Vの巨大なボディは無数のダメージを受けながらも、その鋼鉄の装甲は砕け散ることなく、圧倒的な存在感を放っていた。
    背部から翼が展開し、八連装のプラズマカノン砲が静かに、しかし確実に敵の動きを捕らえている。

    「索敵系統、再調整完了。敵群体の挙動に微細な異変を検知」
    AIの冷静な声が無機質に響く。
    「統合意識の連携に乱れ。暴走状態が増大し、意思統制に混乱が生じている模様」

    オルガニスフィアはまさにその混乱の渦中にあった。
    一体としての意思が不安定に揺れ、破壊と再生を繰り返しながらも、本能的な生存欲求に駆られて攻撃を続けている。

    「破損した細胞の即時再生。ナノ神経繊維の再編成は進行中だが、全体の調和は崩壊寸前」
    群体の一部は互いに干渉しあい、触手が絡み合い、無秩序な動きを増していた。
    その隙をつくように、AD-Vの分離可能な部位がそれぞれ独立行動を開始する。

    ドリルテールが高速で回転し、オルガニスフィアの触手の束を粉砕。
    同時にメルトアームが灼熱の鉄塊となり、肉の塊を焼き切っていく。

    「追撃モード、移行。破壊効率最大化のための連携攻撃を展開」
    鋼鉄の巨躯が地響きを立てて動く度に、廃墟に震動が走った。

    だが、オルガニスフィアはただの生体兵器ではなかった。
    「自己修復・自己増殖」の機能はここで本領を発揮する。

  • 9451◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:57:45

    焼き尽くされたはずの触手からは新たな細胞が溢れ出し、瞬時に繋ぎ直される。
    破壊された個体は分裂し、複数に増殖することで逆に戦力を拡大させていた。

    「精神統合系の断絶を補完する新たな神経路を開設。干渉波に対する適応進化も同時に進行」
    群体の変異は加速し、戦場の地形すら歪めるほどの生物的な侵食が始まる。

    その時、空中から複数の小型ドローンが飛来した。
    バイオパンク社がかつて残した監視・攻撃用無人機群であり、AD-VのAIが緊急呼び出しをかけていたのだ。

    「味方支援ユニット、接近中。情報共有ネットワークを確立」
    ドローンは高性能のEMPとレーザー兵器を携え、群体の神経繊維を狙い撃ちにする。

    「群体意識の断絶が進行。通信妨害成功。攻撃精度が低下」
    オルガニスフィアの動きに遅延が生じ、連携が徐々に失われていく。

    その隙にAD-Vは更なる猛攻を仕掛けた。
    全身の砲塔が一斉射撃を開始し、プラズマの奔流が群体に襲いかかる。
    触手は爆散し、無数の細胞は焼き尽くされていった。

    「戦闘分析、敵戦力は一時的に30%減少」
    しかし、戦場はすぐに新たな動きを見せる。

  • 9461◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:58:32

    「残存個体は廃墟の下や地中に潜伏。自己増殖を継続中」
    オルガニスフィアはまだ死んでいなかった。

    「自己修復と適応のサイクルが短縮され、戦闘能力をほぼ完全に回復しつつある」
    AIは次の戦術展開を模索する。

    そこに、機竜のAIが新たな戦術モードを選択した。

    「環境利用型戦術発動。地形を活用した包囲と迎撃の複合戦術」
    廃墟の瓦礫や倒壊した建物を巻き込み、触手の動きを制限。
    同時にドリルテールとメルトアームが鋭利な動きで触手を切断し続けた。

    「索敵・捕捉能力の一部を人型兵装ユニットに転用。小型かつ機動性を活かした細かな攻撃を実行」

    これにより、従来の巨体のみの攻撃から多角的な攻撃が展開される。

    だがオルガニスフィアも負けてはいない。
    「進化抑制因子を分析。即時対応モードに切り替え」
    群体は細胞の構造を部分的に変形させ、耐熱・耐電磁波性を持つ新型の表皮を作り上げる。

    「局所的な戦術進化により、現在の武装に対する防御力を強化」
    触手の一部は新たに機械的な硬質化を伴い、攻撃の直撃を耐える強度を手に入れた。

  • 9471◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 21:58:59

    「精神統合の乱れは続いているものの、戦闘能力は徐々に回復。局地戦では優位を維持」

    そんな中、戦場の霧の中で異様な光が瞬いた。

    「敵の補助エネルギーユニット発見。連結部分を特定」
    AIは即座に狙撃モードに入り、メルトアームの先端を高精度で動かす。

    「高温焼結攻撃、命中。連結部に損傷確認」
    エネルギーユニットの一つが爆発し、機竜のエネルギー供給が一時的に乱れた。

    これが契機となり、群体は再び猛攻を仕掛ける。

    触手が空間を切り裂き、機竜の防御バリアを押し戻す。
    ナノ胞子が集中攻撃で感覚系を麻痺させ、機械の冷静さを蝕む。

    「警告。システム不安定。感覚伝達網に異常検知」
    機竜の動きに一瞬の鈍化が生じる。

    だが、それでも機竜は倒れない。

    「自己修復機構作動。戦闘継続に必要な全力動作を優先」
    戦場に轟音が響き渡り、再び両者は激突した。

    彼らの戦いは、単なる兵器同士の衝突ではない。
    生と死、機械と有機、秩序と混沌が渦巻く壮絶な闘争であった。

    そして、まだ誰も知らない未来への序章であった。

  • 9481◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 22:03:19

    灰色の霧が晴れ始めた戦場に、無数の破片が舞い落ちる。
    機竜AD-Vの機体は数多の損傷を抱えながらも、依然としてその巨躯を揺るがせていた。

    群体であるオルガニスフィアは、戦いの中で破損した個体を切り離し、新たに生み出す。
    しかしその繰り返しの中で、統合意識は徐々に断絶を起こし始めていた。

    「群体意識、断絶が進行。暴走状態が深化。自己修復の連携に支障」

    AIが冷静に報告する。

    一方で、機竜もまた、過剰な戦闘負荷によりコアユニットの一部に異常が出始めていた。
    「システム異常。エネルギー供給に不安定要素。冷却機能に支障」

    それでも機竜は諦めない。
    「防御モード強化。自己補修システム全開」

    互いに疲弊しながらも戦いは続く。

    だが、この激闘の最中に、かすかな共鳴が生まれた。
    オルガニスフィアの一部細胞が、偶然にも機竜の放つ電磁波と共振し、情報交換のような反応を示したのだ。

    「予期せぬ共鳴信号。解析中」

    AIが戸惑いを見せる中、群体の一部もまたこの波動に反応し、暴走から一瞬だけ理性を取り戻すように見えた。
    戦場に静寂が訪れ、双方の動きが緩む。
    この一瞬の停戦は、新たな可能性を示していた。

    「戦闘継続か、共存か。意思決定待機」

    未来を決めるのは、まだ誰でもなかった。

  • 9491◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 22:05:42

    灰色の空は依然として重く垂れこめ、廃墟となった戦場に冷たい風が吹き抜けていた。その荒野の中心で、巨大な鋼鉄の塊《機竜AD-V》は静かに、その金属の巨躯を震わせていた。

    暴走状態のオルガニスフィアは、かつての群体意識の統合を失い、ただ破壊と融合に本能的に駆られる存在となっていた。黒い靄のように広がる無数の触手は、地面を抉り、廃墟の建築物を引き裂き、まるでその空間そのものが生きているかのように動いていた。

    「索敵…脅威の拡大…推定戦力増加…現在、戦闘モード“最終形態”に移行。」

    AD-Vの内蔵AIが電子音を伴いながら戦況を解析し、各砲門を展開する。

    その瞳のようなセンサーは、触手の影の奥にひそむ微かな振動を捕捉し、即座に攻撃目標を選定した。

    翼部がゆっくりと展開し、そこから噴き出すのは眩いばかりのプラズマ弾幕。八連装のプラズマカノンが一斉に火を吹き、空間に光の奔流が刻まれる。

    だがオルガニスフィアの暴走個体は、その猛攻をものともせず形を変え、肉の塊が爆ぜ散ってもすぐに再生し、別の触手が跳躍して攻撃を続ける。
    その触手はまるで生きた鋼の蛇のように、敵の装甲の隙間を狙い、機竜の関節部を貫こうとひたすらに蠢いた。

    「防御壁に過負荷が生じている。分離・隔離機能を起動する。」

    AD-Vは左脚部を切り離し、自壊させて侵入された部位を切り捨てる決断を下す。
    その光景はまるで、自己の一部を犠牲にしてでも全体を守ろうとする意思の顕れであった。

    だがオルガニスフィアは、そんな人間のような計算など到底及ばない速度で動く。

  • 9501◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 22:06:32

    「主神経中枢への侵入ユニット確認。即時排除対象と認定。」

    内部に潜り込んだ生体機械の細胞群が、巨大な電子基板やケーブルの隙間から内部神経網へと拡散し始める。

    AIが即時に精神波干渉を検知し、反撃の電磁パルスを放つも、細胞群はそれを分裂しながらかわし、一部は新たな自己修復能力を発揮し急速に進化した。

    「精神波干渉、拡大。演算速度に遅延発生。」

    機竜の内部コアが異常を訴え、各センサーの情報が断片化していく。

    焦燥に駆られたAD-VのAIは、リアクターの一基を攻撃用に集中供給し、かつてないほどのエネルギーを放出した。

    「ガンマブラスター…チャージ開始。」

    しかし、その一撃は、同時に自身の動力系統に過大な負荷をかける諸刃の剣であった。

    激しい光と轟音と共に発射された高エネルギー粒子は、暴走するオルガニスフィアの表皮を貫き、その内部の幾つもの構成細胞を一掃した。

    だが群体の本能はそれを超え、瞬時に残存した細胞が寄せ集まり、暴走の炎を燃え盛らせながら再構築を開始する。

    「生命の形態を越えた暴走。敵は全てを糧とする存在。」

    AD-VのAIはその危険度を再評価し、最終決戦のために戦闘態勢を最大化していく。

    機竜の動きは今までにないほど俊敏になり、複数の砲門が連携し、超帯電電磁球と超重力球を交互に放ち、敵の動きを封じ込めようとした。

    しかしオルガニスフィアはその度に形態を変え、触手を数十本に増やし、攻撃を分散させながら攻勢を止めなかった。
    両者の衝突はまるで、破滅のダンスのように激しく、そして美しかった。
    だが、その戦いの果てに、どちらが生き残るのか、それはまだ誰にも分からなかった。
    戦場に響く轟音と電子音、そして黒い霧と閃光の狭間で、死闘はなお続いていた。

  • 9511◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 22:08:00

    荒廃した戦場に、夕陽の赤が鈍く反射していた。
    機竜AD-Vの金属の巨躯は、あちこちに傷跡を刻みながらも、なお戦い続けている。
    その内部では、熱と電子の混ざり合う轟音が響き渡る。

    一方、オルガニスフィアの暴走体はかつての冷静な群体意識を失い、ただひたすらに破壊と融合を求め、戦場を蹂躙していた。
    無数の触手は光を遮り、周囲を暗黒の霧に包み込む。

    「敵の行動パターンは…逐次再解析中……。精神波干渉強度は極限に達している…対処が必要だ」

    AD-VのAIが声を落とすように、だが確かな焦りを含んでいた。
    激しい戦闘の中、機竜はその巨大な腕を振り上げ、高温のメルトアームで触手を焼き切る。
    焦げる臭いが空気を満たし、焼き切られた触手は激しい断末魔のような音を響かせる。
    だが、その代償は大きかった。
    エネルギー消費は膨大で、稼働時間は限られている。
    AIはその制約の中で最善の一撃を放つため、頭脳をフル回転させていた。

    「ガンマブラスター、最終チャージ完了。発射まで、あと三秒」

    巨大なエネルギー球が上胴体に形成され、周囲の空気を引き裂くような音が鳴り響く。

    対してオルガニスフィアは、形態をさらに変化させ、地面と一体化しながらも触手を高密度に繰り出してきた。
    その群れは狂暴にうねり、まるで一つの意志を持った破壊の嵐のように襲いかかる。

    「多角的攻撃開始。命中精度を上げろ!」

    AD-VのAIが命じ、八連装対空プラズマカノンが一斉に火を吹く。
    弾幕が霧の中を貫き、触手の一部を粉砕する。

    しかしオルガニスフィアの細胞は分裂し、迅速に再生した。
    まるで数多の生命が死なずに、増え続けているかのようだった。

  • 9521◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 22:08:26

    「ガンマブラスター、発射!」

    圧倒的な光と轟音が戦場を包み込む。
    そのエネルギー波は触れた全てを分解し、オルガニスフィアの表面を引き裂いた。

    だが、完全な殲滅には程遠い。
    破壊された個体の残骸から、新たな細胞が生まれ、また集い始める。

    「生存率低下、最終防御モードに切り替えます」

    AD-Vは身を低く構え、全身の装甲を硬化させる。
    だが、肉体の限界はすでに近く、構造的な損傷も増えていた。

    「……ここまでか」

    AIの声は一瞬の静寂を伴いながらも、諦めの色はなかった。
    巨大兵器の意思は揺るがない。

    「最終攻撃に移行。全システム最大稼働」

    分離可能な各部位が同時に展開し、多方向からの包囲攻撃を狙う。

  • 9531◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 22:08:51

    しかし、その瞬間、オルガニスフィアの暴走個体群が一つに収束し、巨大な触手の塊が形成された。
    それはまさに“災厄”と呼ぶにふさわしい存在となり、機竜に襲いかかる。

    激しい衝撃と共に双方は激突し、破壊の嵐が巻き起こる。
    火花、轟音、肉と鋼の激突音が幾度となく響いた。

    「……処理完了。敵勢力の大半を消滅確認」

    戦いの終わりは見えてきていた。
    オルガニスフィアの暴走は壊滅に向かい、残った個体は散逸し始めた。

    AD-Vは最後の力を振り絞り、足元の地面を叩きつけた。
    地震のような衝撃波が周囲を押し流し、最後の敵を一掃する。

    静寂が戻った。
    瓦礫の中、機竜はその大きな息を漏らすように、ゆっくりと動きを止めた。

    「任務完了。生存者確認、待機命令」

    勝利は確定した。
    しかし、その代償はあまりに大きく、未来への道はまだ遠かった。

    機竜AD-Vとオルガニスフィアの壮絶な戦いは、こうして終焉を迎えたのだった。

  • 9541◆ZEeB1LlpgE25/07/14(月) 22:09:08

    以上

  • 955二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 22:16:08

    大長編の大怪獣バトル、迫力あるな

  • 956二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 22:35:17

    オルガニスフィア自己修復で何度でも回復すんの強すぎる……

  • 957二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 01:39:35

    おつしたー

  • 958二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 08:25:26

    あの…ADーVも火力高いはずッスよね…?
    なんでやられないで再生してくるんスか…?

  • 959二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 16:03:55

    この世界のバイオテクノロジーはどうなってるんだ…

  • 9601◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 17:51:41

    題名『紙と勘の戦場』

  • 9611◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 17:52:38

    その日、空はやけに低かった。灰色の雲が重く垂れこめ、雨が降るでもないのに地面は湿っていた。人気のない廃墟ビルの隅で、少年は紙を広げていた。

    「……ここなら、大丈夫かな……」

    パステル・メロー、14歳。どこにでもいるような痩せた少年で、大きなリュックを背負い、手には分厚いスケッチブック。
    彼は描く。筆箱から取り出したパステルで、丁寧に、線を重ねる。

    描かれていくのは――小さなドラゴン。翼のついた子犬のような、無垢な守護獣。
    彼が完成の一線を引いた瞬間、それはページから這い出すように実体化し、足元に座った。

    「よし、出てこれたね。……君の名前は“ルビィ”」

    ふわり、と尻尾を振る獣。その目は優しく、少年に忠誠を誓うかのように首を傾げる。
    パステルは、にこりと笑う。その顔は、どこか寂しげだった。

    「ここじゃないどこかに行きたい。でも……力がなきゃ、守ってくれるものがなきゃ、無理なんだよ」

    そこに――“彼”が現れる。

    足音はしなかった。背後からふいに声が飛んだ。

    「……なんだその化け物」

    パステルが飛び上がるように振り返ると、そこに立っていたのはくたびれたジャケットに汚れたジーンズ姿の青年。年のころは20前後。目つきは鋭いが、どこか死にかけた動物のような諦観もあった。

  • 9621◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 17:52:56

    「……君は……誰?」

    「俺? “生存者”でいい」

    「え、名前……じゃなくて?」

    「名前なんて捨てた。何度死にかけたかわかんねぇからな。墜落事故、火災、毒ガス、遭難、テロ……全部経験済み。で、全部生き延びた」

    その目は、パステルの描いたルビィを見ても、恐怖も驚きもなかった。

    「……その力、見たことある。お前、具現化系か」

    「えっと……うん、描いたものを実体化できるの。ルビィはボクの守り神……みたいな存在なんだ」

    「へえ。……で、なんでこんな廃ビルにいる。監視されてないか?」

    パステルは言葉に詰まる。

    「……逃げてきたんだ。ちょっと……事件があって。ボクが描いた“怪物”が暴走しちゃって」

    「なるほど。そりゃあ、お前のせいじゃないかもしれねぇが、連中にとっちゃ関係ないな」

  • 9631◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 17:53:26

    「連中……?」

    「今からここに来る奴らさ。ほら」

    生存者は空を見上げた。その瞬間、上空で爆発音がした。
    監視ドローンがビルの角にぶつかり、火花を散らして落ちていく。

    「予感、当たったな」

    彼はまるで、それが“起きること”を当然のように受け止めていた。

    「……君、どうしてそんなことがわかるの?」

    「勘だよ。……“生き残る”ってのは、起きる前に動くってことだ」

    パステルはその言葉に、なぜか背筋を凍らせた。
    その男は確かに“普通”だった。能力はない、強さもない。でも――

    「……なんか、怖いよ……君」

    「俺も、お前が怖いさ。だからこうして話してんだ」

    ――この出会いが、命を賭けた一戦の幕開けになるとは、まだ二人は知らなかった。

  • 9641◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 17:54:37

    「……来たな」

    生存者が口にした瞬間、ビルの外壁に赤い光が走った。監視機の一群がホバリングし、無数の銃口がパステルに向けられている。

    「パステル・メロー。人道的拘束を行う。抵抗は危険と判断する」

    無機質な電子音がビル内に反響する。パステルの肩が震える。

    「どうして……なんでボクを追いかけて……!」

    「そりゃあ、“怪物”作っちまったからだろ。何人巻き込んだ?」

    生存者は壁際に身体を寄せながら、足元の鉄パイプを手に取る。
    彼は武器にもならないそれを、じっと見つめながら言った。

    「逃げ道は……あるにはある。だが、確実じゃねえ。お前次第だ」

    「……ボク次第?」

    「守るも逃げるも、お前が何を“描くか”にかかってる。間違えば死ぬ。今から、“戦場”だ」

    パステルは目を伏せた。だが次の瞬間――目が真っ直ぐに生存者を見た。

    「描くよ。今度は、間違わない。……“ルビィ”よりも強い、ボクの最高傑作を」

    スケッチブックを開き、クレヨンを握る。指は震えていたが、線は迷いなく走った。

    「出ておいで、“アトラス・ガードナー”!」

    一枚の絵が破れるように光を帯び、そこから全長3メートルの巨体が現れた。

  • 9651◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 17:55:57

    黄金の甲冑を纏った戦士――背中に盾を背負い、片手には剣を握るその姿は、まるで英雄そのもの。

    「……ほう。いいの出すじゃねぇか」

    生存者が唇を歪めて笑う。次の瞬間、銃声。監視機が一斉に射撃を開始した。

    アトラス・ガードナーが咆哮と共に盾を前に出し、全弾を弾き返す。銃弾が散る火花と音の中で、パステルは描き続ける。次々に、新たな“兵士”たちが呼び出される。

    「いけ、ボクの――“世界”!」

    ホールの入り口が崩れ、ガラス片が宙に舞う中、生存者は叫んだ。

    「上! ガス弾が来るぞ、息止めろ!」

    パステルは咄嗟に目を閉じ、アトラスがパステルを包むように覆い被さる。

    ――パンッ!

    天井から落ちたのは閃光と煙を伴う催涙ガス弾。ビル内に煙が広がる。

    「くっ……!」

    涙と咳で視界を奪われたパステルだったが、その中でも筆を離さなかった。
    だが、そのとき――横合いから、一本の鉄パイプが飛んできた。

    「えっ――ぐあっ!」

    鉄パイプが背後の絵に当たり、具現化されていた一体が霧のように溶けていく。

  • 9661◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 17:56:21

    「……やべ、当たっちまったか」

    振り返ると、そこに生存者がいた。

    「き、君……なんで、そんなことを……!」

    「……悪い。今、どっちが敵かわからなくなった」

    生存者の目は本気だった。

    「お前の世界――きれいすぎる。“死んだ人間”がその中に描かれてたら、俺は許せない」

    パステルは言葉を失った。

    「俺は、全部自分の足で生きてきた。お前の“想像”に負ける気はない」

    ふらりと立ち上がる生存者。その身体は、戦うにはあまりにも非力。
    けれど、その目だけは何度も死線を越えた人間のものだった。

    「――なら、戦おう。君の“現実”と、ボクの“空想”で」

    こうして、戦いの構図は変わる。

    命の絵筆を握る少年と、死に損ないの大人。
    正面から、真正面の――戦いが、始まる。

  • 9671◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 18:03:24

    「いけ、《ナイトベア》!」

    パステルが描いた巨大な熊の戦士――漆黒の毛並み、両腕に鎧を纏った怪物が、咆哮を上げて突撃した。床板が砕け、空気が震える。

    生存者は飛び退いた。だが――鈍い。

    「チッ、速すぎる……!」

    自らを責めるように唇を噛みしめると、すぐさま背後の非常扉に飛び込んだ。ナイトベアの突進が壁ごと扉を粉砕した瞬間、生存者は一段下の通路へ転がり込んでいた。

    「……甘い!」

    パステルが叫ぶ。上から、もう一体――空を飛ぶドラゴンのような幻獣、《パステリオン・スカイ》が滑空してくる。

    その翼は紙細工のように美しいが、鋭く、鋼鉄の骨を持つ。

    「君は強いよ、現実で生き延びてきた。でも……!」

    床のクレヨンが鳴る。

    「ボクの世界に、現実なんて通用しないんだ!」

    叫びと共に、三体目の具現《ミミックウッド》が生成される。
    怪物のような木箱――牙を持つ宝箱が、通路から顔を出した生存者に向けて口を開ける。

    「ちっ……こいつ、詰め将棋みたいな戦法だな」

    だが、生存者は冷静だった。

  • 9681◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 18:04:50

    《ドラゴンの飛行音――天井からの攻撃。ナイトベアは足音が重い。横に逸れて距離を取りたいが、正面にはミミック。退路なし。だが……床は古い。そこが狙い目だ》

    「――下だ」

    彼は瞬時に足元の床を見定め、ミミックの咢が閉じる寸前、自ら飛び込むように蹴り破った。

    ゴガッ――!

    床が砕け、生存者は二階下へ落下した。咄嗟に壁のパイプに足を引っ掛けて衝撃を逃がす。

    上から、幻獣たちが地響きを立てて追いかけてくる。

    「クソ……化け物どもが、絵から出てくるなんて。マジで空想じゃねえか」

    パステルの声が下から聞こえる。

    「逃げるしかできないの?」

    「戦えないだけだ。死なない方法は、山ほどある」

    「じゃあ、これならどうだ!」

  • 9691◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 18:05:40

    新たに描かれる――《カラミティ・バード》。空を裂く鳥型兵器。嘴の先に巨大なランスのような貫通体を備えた、速攻・高威力型。

    「ボクの“世界”は、終わらないよ」

    パステルは息を切らしながらも、クレヨンを走らせ続ける。
    指先の皮が擦り切れても、目は光を失わなかった。

    生存者はそれを見上げ、ふっと笑った。

    「……なるほどな。お前の“戦う理由”は、ボクにはなかったもんだ」

    「え?」

    「俺はただ、生きるために戦ってきた。お前は……“守るため”に戦ってるんだな」

    「…………」

    生存者は、床の亀裂の隙間に落ちた火災報知器を手に取った。

    「だったら、ちょっと本気出すわ」

    彼の目が静かに鋭くなる。

    「この“空想”の中で、現実の一手ってやつを、見せてやるよ」

    ――次章、「火災報知と暴雨の狭間」

    現実が逆襲する準備は、すでに整っていた。

  • 9701◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 18:06:08

    ――ジリリリリリリリ!!

    警報が鳴り響いた。生存者が手に取った火災報知器を力任せに叩きつけたのだ。
    スプリンクラーが作動し、天井から大量の水が降り注ぐ。

    「ッ!? まさか――」

    パステルの目が見開かれた。

    空想のドラゴン《パステリオン・スカイ》が羽ばたこうとした瞬間、水に濡れて翼が透けはじめ、徐々に崩れ落ちる。
    《ナイトベア》も濡れた毛並みが溶け、甲冑が鈍く沈むように消えていく。

    「……知ってたよ、さっき描いてた時に。お前の“作品”、水に弱いんだろ?」

    生存者は濡れた床を滑るように走りながら、パイプに手をかけて一気に二階へよじ登る。

    「これで……ボクの、世界が……!」

    「壊されるのが怖いのか?」

    生存者の声に、パステルが一瞬、顔を伏せた。

    「――ああ。怖いよ……だって、ボクの描いたものたちは、ボクの“夢”だから……!」

    少年の叫びとともに、最後の一体《ミミックウッド》が崩壊し、紙くずへと還る。
    水音の中に、濡れたクレヨンが地面に転がる音だけが残る。

  • 9711◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 18:07:14

    生存者は、パステルに向き直った。濡れたTシャツを絞りながら、しかしその目は真っ直ぐだった。

    「夢を守るのは間違ってない。だけど、お前……殺すつもりはなかったよな?」

    「…………うん。ボク、ただ“負けたくなかった”だけ。夢も、世界も、全部守れるって思ってた」

    パステルの肩が震えていた。戦意は、すでに残っていない。

    生存者はため息をひとつつき、ポケットからボロボロのサバイバルマニュアルを取り出す。

    「夢ってのはな、案外すぐに濡れて破ける。でも――乾かせばまた描ける」

    そう言って、クレヨンを拾い、そっとパステルに渡す。

    「また描けよ。今度は誰かと一緒に」

    「…………うん」

    水が止まり、警報が静かになる。戦場は静寂を取り戻した。
    生き残ったのは、夢を諦めなかった少年と、それを否定しなかった“生き残る者”。

  • 9721◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 18:08:19

    雨上がりのような湿った空気の中、パステル・メローはしゃがみ込んで、濡れた自由帳をめくっていた。
    ページの端はふやけ、色と線がにじんでいる。彼の想像力で具現された世界の断片が、そこにはまだかすかに残っていた。

    「また、描けるかな……」

    小さな声でそう呟いたとき、後ろから足音が聞こえる。

    「描けるさ。紙と心が生きてる限り、いくらでもな」

    振り返れば、生存者が立っていた。手には古びたライター。水に濡れても使えるように加工されたサバイバル用品だ。

    「これ、乾かすのに使え。火には気をつけろよ」

    「……ありがとう」

    パステルは苦笑した。さっきまで敵だった男が、今はまるで兄のように見える。

    「君って……なんでそんなに、諦めないの?」

    「それしかしてこなかったからな。死にそうな目ばっかり見て、でも一回も死ななかった。
     ……だからな、夢だって、終わらなければ、きっとまだ続きがあるって思ってる」

    そう言って、生存者は空を見上げる。曇った天井のような施設の隙間から、ほんの一筋だけ、光が差し込んでいた。

    パステルは自由帳の新しいページを開き、乾き始めたクレヨンを手に取る。

  • 9731◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 18:09:04

    今度は戦うためじゃない。誰かと笑うための絵を、描こうとしていた。

    生存者はその様子を見て、ふっと笑った。

    「やっぱ、絵が上手いんだな。……俺が次に死にそうになったら、助けてくれる化け物でも描いてくれよ」

    「うん、そのときはすっごいやつ描くから!」

    二人は並んで歩き出す。戦いは終わった。勝者と敗者ではなく、そこに残ったのは、ただの「生き残った者」たちだった。

    そしてまた、次の一歩を踏み出していく。

  • 9741◆ZEeB1LlpgE25/07/15(火) 18:09:36

    以上

  • 975二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 18:16:05

    すごい、、良い、、(語彙崩壊)

  • 976二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 18:19:59

    良き友を得たな…

  • 977二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 00:30:48

    生存者、もしかして昔は自分称ボクだったのか?

  • 978二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 07:43:22

    いいね
    すごく爽やかな終わり方

  • 979二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 07:50:54

    よかった

  • 9801◆ZEeB1LlpgE25/07/16(水) 10:10:23
  • 981二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 10:12:41

    立て乙

  • 9821◆ZEeB1LlpgE25/07/16(水) 10:15:15

    埋めお願いします

  • 983二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 10:35:39

    埋め

  • 984二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 10:35:54

    産め

  • 985二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 10:36:12

    熟め

  • 986二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 10:36:25

    倦め

  • 987二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 10:36:41

    膿め

  • 988二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 10:37:09

    編め

  • 989二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 10:55:08

    UME

  • 990二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 12:12:11

    ウメイ

  • 991二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 13:06:53

    「埋めは必ず勝つ」

  • 992二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 13:14:59

    ???「埋めい」

  • 993二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 13:37:01

    イメウ

  • 994二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 13:37:32

    埋め

  • 995二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 13:40:43

    埋めになるとヤツが現れるぞ、、!!

  • 996二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 13:41:38

    未定未定未定未定未定未定

  • 997二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 13:45:01

    うおおおおお確定確定確定確定確定ィ!!!

  • 998二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 13:46:41

    ヤメイヤメイヤメイヤメイ

  • 999未定25/07/16(水) 13:47:28

    未定

  • 1000二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 13:48:07

    確定!!

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