女神「申し訳ありません。ちょっとした手違いで、貴方の命を奪ってしまいました」

  • 1二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:01:40

    女神「せめてもの償いに――強力な異能を授け、記憶もそのままで異世界へ転生させて差し上げます」

    貴方「……えっと、それってちょっと待ってください」
    貴方「俺みたいな異物が、現代の知識を持ったまま、しかも異能まで引っ提げて異世界に行ったら……」
    貴方「その世界の歴史、めちゃくちゃになりません?」

    女神「……え?」
    貴方「え?」

  • 2二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:04:28

    で、ではその世界のコピーを作ります

  • 3二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:04:46

    貴方「いや、マジで。異世界の技術体系とか、戦争の勝敗とか、宗教観とか――いろんなものに影響出ますよ? あくまで、俺が表社会で活躍しようと思えばですが……」
    貴方「それにしたって、俺個人の理性に期待するやり方は、リスクありません?」

    女神「で、でも! 転生者の皆さんには大体そういう感じで行っていただいてますし……」
    貴方「うわ、前例あるんだ……」

    貴方「その世界、もう元の歴史の形してないでしょ」
    女神「うっ……い、いえ……あの……だ、大丈夫ですっ! 大体の人は途中で魔王にやられたりしますし!」

    貴方「えっ」

  • 4二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:06:47

    手違いで殺して転生の前例がいっぱいあるってこいつ本当に神なんですかね
    邪とかつかないすか

  • 5二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:07:59

    貴方「……つまり、殺して、送り込んで、使い潰してるってことですか」
    女神「そ、そんな言い方……っ」
    貴方「実態、そうでしょ。異世界の発展も計算済みで、歴史が狂っても“おもしろくなればOK”ってノリに捉えられても、おかしくないですよね?」

    女神「っ……ち、違います! これはあくまで魂の再利用であり、再生の機会を与える福祉であり……!」
    貴方「福祉……?」

    貴方「じゃあ、“福祉”で送り込まれた人たち、どうなってるんです?」

    女神「えっと……ある方は、召喚された瞬間に国王に処刑されて……」
    貴方「うわ」
    女神「またある方は、一緒に転生させた双子の妹に異能を奪われて……」
    貴方「うわぁ」
    女神「転生初日にトラックに轢かれた方も居ましたね……」
    貴方「転生トラックってそういうことじゃねぇよ!!」

  • 6二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:08:25

    女神「え?別に良くない?」

  • 7二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:08:28

    ヒューマンエラーが出るシステムを見直すべきでは……?

  • 8二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:09:41

    トラックとかある文明レベルなのか

  • 9二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:12:08

    女神「雑魚人間が、お前如きが世界に影響与えられると思ってるのか!」(大丈夫ですよ。)

  • 10二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:12:52

    組み込まれることまで確定してる歴史なんやろ

  • 11二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:13:57

    神からしたら人間の生き死になんてどうでもいいからね
    償ってのも遥か過去の前例に倣ってるだけとかそんな感じでしょ

  • 12二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:14:29

    ザお役所仕事

  • 13二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:14:58

    女神「既に廃棄が決定してる世界だからどうでもいいですよ」

  • 14二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:16:16

    そこまで行くと異世界に影響を出しすぎた前列から転生者の可能性が高い者を判別して速やかに確保なり処分なりするような仕組みを現地人に作られてそう

  • 15スレ主25/07/10(木) 12:17:37

    貴方「……ちょっと待ってください。転生先に“トラック”があるってことは、現代レベルの文明も普通に存在してるってことですよね?」
    貴方「それに、世界をめちゃくちゃにするのが許容範囲なら、俺を元の世界に戻してくれたっていいですよね!?」


    女神「……え? 戻す?」(苦笑)

    女神「いや、それはできませんよ。だって“処理”はもう終わってますから」
    貴方「……処理?」

    女神「はい。貴方の魂は“使用済み”として、元の世界にに登録されています」
    女神「使用済みの魂をもとの世界に戻すのは、その……」

    女神「衛生的に不味いです」

  • 16二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:18:56

    衛生的にマズイならしゃーないな

  • 17二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:19:15

    衛生的なら仕方ないか・・・

  • 18二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:19:37

    神が直接異世界行けば解決するんでは?

  • 19二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:22:15

    下水処理場みたいな扱いの異世界で草
    マジで神にとってどうでもいい世界に流して解決した事にしてるだけのお役所仕事かもしれねぇ

  • 20二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:22:55

    やはり転生モノに上位存在は不要……!

  • 21二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:26:26

    空気読めてないかもしれないけど、現実でもお前それチートじゃない?みたいな人間が歴史変えるようなことしてたりするからな…(ジョン・ブローニングが設計した銃器の数々を見ながら)

  • 22スレ主25/07/10(木) 12:29:00

    貴方「……は?」
    貴方「衛生的って、なんですかそれ」

    女神「ですから、魂にも“新品”とか“使用済み”があってですね。記憶や人格をそのままに再利用となると、どうしても衛生的に問題があるんです」
    女神「貴方はもう、リサイクル品に分類されていますから、変えが効かない世界には戻せません」

    貴方「あ……え、は……?」

    女神「例えば、飲食店なんかで一度お出しした料理を、全く手を付けてないからってお客様には出せませんよね?」
    女神「でも、それを廃棄直前に従業員が持ち帰ったり、ゴミ捨て場からカラスや野良猫が漁るのは、問題ありません」

    女神「魂も、それと同じです」

    女神「とはいえ、流石に人格のある者が、不条理によって本来得られたかも知れない可能性を摘まれるのは、勿体ないですからね」
    女神「ですのでこうして機会を与えるわけです。……あ、これは展開の規定であり、私が設定したルールではありませんからね……?」

    貴方「……なるほど。なるほど」

  • 23二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:34:14

    >展開の規定

    天界の誤字なんだろうけど、あんまり意図するところが変わらなくて笑う

    ご都合天界がよ

  • 24二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:36:03

    肉体じゃなく魂の処女厨みたいななのあるんだ
    なんかすごくキショい言い方だけどそんな感覚何だが

  • 25二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:38:43

    異世界はカラスや野良猫に当たる

  • 26二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 12:42:43

    >>21

    レオナルドダヴィンチとかいう人類のバグ

  • 27スレ主25/07/10(木) 12:56:20

    貴方「すぅ……はぁ……」
    貴方「…………」

    貴方「……“変えが効かない世界”って、どういう意味ですか?」

    女神「……うーん」(苦笑)
    女神「――許可が下りました。ご説明しますね」

    女神「“変えが効かない世界”とは、創造主が存在しない世界のことです」

    貴方「創造主が……いない?」

    女神「はい。いわば“管理者不在”と捉えて差し支えありません」
    女神「そういった世界では、運命史に大きな乱れが生じても、それを修正する機構が働きません」

    女神「ですので、正式な輪廻転生――つまり、記憶・人格・因果といった魂の構成情報をいったんアーカイブに移し、魂本体からそれらを消去する手順を踏まない限り、転生を行うことができないのです」

    貴方「……」

    貴方「俺の元いた世界が、下手に手を付けることができない世界なら、どうして俺は手違いで死んだのですか?」

    貴方「それに、その説明だと転生先の世界は、神々の介入によって修正が可能ということになりますよね」
    貴方「それならどうして俺が、転生者が異世界の歴史をめちゃくちゃにしてしまわないかを質問した時に、どうせすぐ死ぬしみたいな発言で流したのですか」

    貴方「……そもそも、俺と貴方がた神々の上下関係も分からない。そこまで魂を好き勝手できるなら、なぜこうして時間を割いてまで、俺の質問に答えてくれるんですか?」

    女神「……」

  • 28スレ主25/07/10(木) 13:26:32

    女神「……」

    女神「……それにはお答えできません。これまでのやり取りは、ご内密にお願いします」

    貴方「えっ……?」

    女神「もう、十分でしょう」
    女神「――異世界で使用したい能力を述べてください」

    貴方「あの……」

    女神「使用したい能力を述べてください」

    貴方(急に態度が変わった!?)

    貴方に使用させたい能力を書いてみてください
    ↓3までのものからランダムに選びます

  • 29二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 13:32:48

    見た事のある場所へ瞬間移動

  • 30二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 13:46:46

    なんでも”料理”しておいしく食べられる

  • 31スレ主25/07/10(木) 13:49:10

    time up

    >>29

    >>30

    dice1d2=2 (2)

  • 32スレ主25/07/10(木) 14:11:49

    貴方「えっと、じゃあ……なんでも”料理”しておいしく食べられる能力、でお願いします」

    女神「……なんでも“料理”して、おいしく食べられる能力、ですか?」

    貴方「はい。どんなものでも、食べられるように調理できて、味も整えられる能力でお願いします」
    貴方「身体に害がないように、できれば栄養バランスも取れると助かります」

    女神「……随分と、おとなしい能力ですね」
    女神「よろしいのですか? せっかくの転生なのに」

    貴方「ええ。十分です」

    女神「……わかりました」
    女神「能力内容を確認……付与処理を開始します」

    小さく、金属の打鍵音のようなものが鳴る

    女神「“万能調理”――対象を安全かつ美味に調整し、食用可能な形で加工する能力。毒物や異物、未知の成分にも対応し、摂取時は自動で無害化および栄養最適化を行います」
    女神「実際の効果は、現地で試してみてください」

    貴方「……はい」

    女神「……」

  • 33スレ主25/07/10(木) 14:14:20

    女神「では、これより転生処理に移行します」
    女神「――ご健闘を、お祈りしています」

    足元が淡く発光し、空間全体がにじむように揺れる。

    貴方(……クソッ)
    貴方(まだ、元の世界で、生きていたかった)
    貴方(どうして、俺がこんな目に)

    貴方(……これ以上質問してら、機嫌を損ねさせて、転生自体を白紙にされるかもしれない)
    貴方(もう、行くしか、無いのか……)

    貴方(父さん、母さん……)

    光が収まると、そこにはもう貴方の姿はなかった。









    女神「……」
    女神「人間、めんどっ……」

  • 34二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 14:14:31

    安価スレに移動お願いだしたらみんな幸せなんじゃない?

  • 35スレ主25/07/10(木) 14:19:38

    >>34

    そうですね、必要になったら申請してみます

    元々主人公の能力以外安価をする予定が無かったので、とりあえず今はこのまますすめます

  • 36スレ主25/07/10(木) 14:32:25

    台本形式難しいので普通に書きます



     目を覚ましたのは、広場の片隅だった。

     地面はまだ朝の冷気を残していて、石畳はひんやりとしていた。
     顔を上げると、高く積まれた煉瓦の建物の隙間から、柔らかな光が差し込んでいた。

     最初に思ったのは、「……あれ? これ、異世界転生じゃなかったっけ」ということだった。
     目覚めてすぐ異世界にいるというのなら、それは“転移”というのでは? ……と。

     だが、そうではなかった。

     俺は、確かに“転生”していた。
     それは身体を起こした瞬間、直感的に分かった。
     息を吸い込む感覚。
     関節の可動域。
     胸の奥から湧き上がる、言葉にできない異質さ――
     その全てが、“俺のもの”ではあるのに、“かつての俺”とは異なっていた。

     つまりだ。
     俺がこの場所で意識を覚醒させたのは、この場所で産み落とされたからに他ならない。

    (嘘……だろ……)

  • 37二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 14:42:12

    このレスは削除されています

  • 38スレ主25/07/10(木) 14:44:07

     このままでは、生命が危ない。

     俺は、咄嗟に鳴き声を上げた。母親の庇護を求めて――というか、それしかできなかった。
     泣くこと。それが今の俺に許された、唯一の主張だった。

     このような場所で出産している女性が、まともな身分を持っているとは考えにくい。
     もしかすると、産気づいてその場でどうしようもなくなっただけかもしれない。
     だがどんな理由であれ、俺はここに、裸で、守る者もなく放置されていた。

     何れにしても、このまま死を待つなんて――冗談じゃない。

     俺は必死に泣いた。
     喉が裂けるほどの声で、ひたすらに、助けを求めて叫び続けた。

     しばらくして、誰かが近づいてきた。
     足音。気配。視線。

     そして――声をかけられた。

  • 39スレ主25/07/10(木) 14:46:30

     見上げると、そこにいたのは、一目でそれとわかる身なりの女だった。
     鮮やかな布を雑に羽織っただけの服。濃い化粧。香水のにおいと、微かに混じる酒精の残り香。
     年齢は若く見えるが、その表情にはどこか擦れたような色があった。

     明らかに、売春婦だった。

     女は俺をそっと抱き上げた。
     抱き方に、わずかな慣れを感じさせる仕草があった。
     だがその手は、微かに震えていた。

     「…………っ、…………」

     何かを呟いた。苦しげな、擦れた声だった。
     その瞬間、俺はほんの少しだけ安堵した。

     ――助かったかもしれない。

     だが次の瞬間、彼女の手が、俺の首へと回された。

     優しさの形をしたその両手が、何の前触れもなく、力の限り――俺の喉を締めつけてきた。

     そしてそのまま、俺の意識は再び暗転した。

  • 40スレ主25/07/10(木) 14:57:34

     意識が、浮上する。

     まず感じたのは、途轍もない気持ち悪さだった。
     頭がぐらぐらと揺れ、胸の奥がむかつくように重い。
     自分の身体に、自分のものでない何かが入り込んでいるような、不快な違和感。

     (……俺、殺されたのか……?)

     その結論に辿り着いた瞬間、内臓の底が冷えるような戦慄が走った。

     ようやく与えられた“新たな生”――それが、開始早々呆気なく終わったのだ。
     あの女神が語っていた転生者の末路の一つ。
     誇張かと思っていたが、どうやら本当に“よくある話”だったらしい。

     ……それにしたって、あんまりじゃないか。

     悔しさと理不尽さが胸を満たし、気づけば全身に力が入っていた。
     涙がひとすじ、頬を伝う。

     そのとき――誰かの指が、そっとその涙をぬぐった。

  • 41スレ主25/07/10(木) 14:58:45

     (……えっ?)

     驚いて目を開けると、視界に映ったのは、先ほどとは違う女性だった。

     穏やかな表情。温かい眼差し。
     どこか疲れてはいたが、そこには“明確な悪意”がなかった。

     (まさか……また、転生した……のか?)

     混乱する思考を必死にまとめようとしていた、その矢先。

     不意に、柔らかな感触が顔に押し当てられた。

     ……一瞬、何が起きたのか分からなかった。

     だが、ゆるやかに広がる温もりと、口の中に流れ込んでくる液体の味。
     それが何かを理解したとき――俺は、思考を止めることにした。

     授乳。

     これが、この世界の“生”の続きなのだと、そう納得するしかなかった。

  • 42スレ主25/07/10(木) 15:14:34

     あれからしばらくして。
     母親――もしくは乳母らしき女性に抱かれ、あやされながら俺はぼんやりと考えていた。

     (……死んでも、何度でも生き返れるとか、そんな都合のいい話なわけないよな)

     女神が語った“人間”という存在の立ち位置は、どこまでも冷たかった。
     「命とは何か」という問いに、まるで“リソース”や“素材”としか答えないような感覚。
     そこには“物”と人間との違いすらも、もはや存在しないかのようだった。

     加えて、あの最初の説明を思い出す。

     ――申し訳ありません。ちょっとした手違いで、貴方の命を奪ってしまいました。

     ……この“謝罪”が、初に出てくるというのも、おかしな話だ。

     人の命を失わせておいて“ちょっとした”と言い切る態度。
     それがまかり通るような世界で、俺は再び“生きること”を許されている。

    (……もしかして)

     ひとつの仮説が脳裏をよぎった。

    (……もしかして神様は、俺たち転生者に――“本来生きるはずだった寿命の分だけ”異世界で生きてもらおうとしてるんじゃ……?)

  • 43二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 15:38:04

    女神「うるせー!バーカ!女神式アームロック極めんぞ!!」

  • 44スレ主25/07/10(木) 15:41:03

     そう考えると、いろいろと説明がつく気がしてきた。

     なるほど――それなら、記憶を持ったまま異世界へ転生させる理由も、何となく理解できる。
     あの女神が“ごく自然なこと”として提示していた行為に、ようやく筋の通った背景が見えてきた。

     神が、俺たちを“記憶を保持したまま”転生させるのは、
     決して彼らの気まぐれや慈悲によるものではない。
     魂が持つ本来の寿命を使い切らせる――つまり、輪廻の“ルール”を全うさせることこそが、最大の目的なのだろう。

     思えば、「記憶を消して生まれ変わる」という選択肢は、最初から与えられていなかった。

     (寿命を使い切らないと、本来の輪廻転生は行えない……?)

     なぜそうなっているのかは分からない。
     けれど、これはこの世界を生きていく上で、何らかのヒントになる気がした。

  • 45スレ主25/07/10(木) 15:42:17

     俺を抱いている女性が、子守唄らしきものを歌い始めた。
     優しく、どこか悲しげな旋律だった。

     それをぼんやりと聞き流しながら、天井に描かれた木目の模様を眺めていると――
     不意に、ある悪魔的な発想が頭をもたげた。

     (……もしかして、あの理不尽な死は、転生者全員が経験しているものなんじゃ……?)

     仮に、寿命を全うするまで何度でも生まれ変われるのだとしたら――
     自ら死を選ばない限り、すべての“生まれ変わり”は、望まぬ死を経てのものになる。

     誰かに殺される。
     事故に巻き込まれる。
     理解できない理由で、いきなり終わらされる。

     ……そんな経験を繰り返した人間が、果たして“異世界で派手に生きていこう”などと考えられるだろうか。

  • 46スレ主25/07/10(木) 15:52:56

     二度目の死は――鮮烈だった。
     感情ではなく、生理的に受け付けないほどの“気持ち悪さ”だった。

     あれを一度でも体験した人間が、この世界の歴史を致命的に狂わせるような真似をするとは――どうにも思えない。

     ……いやまぁ、真の意味で狂ってる奴は、それでもやりかねないが。
     たが、もしこの仮設が正しいとしたら、それはつまり神様の一存でいつでも命を奪われるということでもある。

    (手違いで死ぬくらいだしマジで有り得そうだな……)

     そういった狂人が現れたとしても、十分対処可能ということだろう。

     つまり、あのとき俺が女神に投げた“最初の質問”――
     「俺の存在が異世界の歴史を狂わせるんじゃないか?」という問い。
     あれに返ってきた、「大丈夫です。たいていすぐ死にますから」的な返答は、適当に流したものではなかったということになる。

     (――異世界人に対する抑制は、“死”を一度チラつかせるだけで十分、ってことか)

     本当に……本当に、反吐が出る。

     (……異能は……絶望した転生者が自殺ループに走らないようにするための“餌”……と考えるのは、早計か……?)

    (……だめだ、もう完全に、神々に対して負のバイアスがかかってる。これ以上考えても、悪い方向性にしか頭が働きそうにない)

     そうして俺は、疲れて眠りにつくのであった。




    「……うちの子、なんか様子がおかしい気がする。まさか、悪魔憑きじゃ……ないわよね……?」

  • 47スレ主25/07/10(木) 16:00:28

     どうやら俺は、致命的な失敗を犯してしまったらしい。

     三度目の人生が始まってから、体感でおよそ三ヶ月。
     精神的に成熟しきった“俺”は、赤ん坊としてはあまりにも不自然だったようだ。

     泣きもせず、騒ぎもせず、まるで義務のように授乳を受け、
     表情ひとつ変えずにおしめの交換を受け入れる。
     そんな赤ん坊――普通に考えて、気味が悪いに決まっている。

     恐らく俺は、“育て甲斐のない赤ん坊”に見えたのだろう。

     三人目となる両親は、
     どうやら「我が子であれば関係なく愛せる」タイプの人間ではなかったようで、
     俺はあっさりと――孤児院に預けられることになった。

  • 48二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 16:09:38

    山に捨てられなくて良かったのか山の方がましだったのか

  • 49スレ主25/07/10(木) 16:18:00

     ――これが、地獄だった。

     前もって言っておくが、俺は孤児院の人間に何か酷いことをされたわけではない。
     むしろ、不気味な赤ん坊であるにもかかわらず、職員たちは驚くほど丁寧に、そして大切に接してくれた。

     だが、それでも地獄だったのだ。

     苦痛の原因はただ一つ。
     生みの親のもとを離れ、“第三の人生”を歩むこの世界の実態が、徐々に見えてきてしまったことだった。

     文明の水準、社会の雰囲気、制度の構造――
     この世界がどういった価値観のもとで回っているのかを、俺は知ってしまった。

     もちろん、まだこの世界の言語を完全に理解しているわけではない。
     だから、それらの実態は、見て、聞いて、感じた限りでの主観にすぎないだろう。

     ……だが、それでも確信するには、十分すぎる材料が、そこにはあった。

  • 50スレ主25/07/10(木) 16:20:21

     神父らしき男が、シスターや子どもたちに対して“何か”を繰り返している場面を、何度も目撃した。
     子どもたちは怯えた目で俯き、シスターは歯を食いしばるような顔をして、それを“許している”。

     ……それは、紛れもなく性的虐待であった。

     しかもそれが、ここだけの話ではないことを、俺は感じていた。
     どうやらこの世界では、女性や子どもの地位が、絶望的なまでに低いらしい。
     まだ言葉も曖昧な状態の俺ですら、肌でそれを感じ取れるほどに。

     そして――そんな世界で、俺が持たされた“新しい体”の性別は、






     女だった。

  • 51スレ主25/07/10(木) 16:32:43

     その事実が判明した瞬間、俺ははっきりと理解した。

     自力で動けるようになった後にやるべきことは、ただひとつだ。

     (……どうにかして、ここから逃げなくては)

     だが、それが厳しいことは、薄々気付いていた。
     だから――

    (それが無理なら――あの神父を、“事故”として処理するしかない)

     などという結論が、俺の頭の中にはあった。

     ……俺の倫理観は、わりとまともな方だと思う。
     前世では殺しなんて考えたこともなかったし、理不尽に対しても「耐えてやり過ごす」方を選ぶことが多かった。

     けれど、それでも。

     その神父は、それまでの倫理観が短期間にして覆る程には、クソ野郎だった。
     俺が人殺しを考えるほどに、あの男の存在は“害”でしかないのだ。

     奴に貪られた被害者たちの心の傷と、衣服の下に隠された体の傷。
     そして、腹部が異様に大きいシスターや……少女の、その後……。

     ……ハッキリ言おう。
     俺は本気で、恐怖を抱いていだ。

  • 52スレ主25/07/10(木) 16:53:37

     ……それから、およそ四年の月日が経過した。

     俺は死に物狂いでこの世界の言語を覚え、孤児院の――神父以外の――人々との交流を深めていった。
     自分の足で歩けるようになってからは、さらに能動的に動き回り、
     様々な仕掛けを用意し、準備を進めていった。

     どう転んでも構わないように。
     すべては、あの神父を――俺の視界から“消す”ために。

     そんな修羅のような日々を過ごしていた俺だったが、意外なことに、この三年間で“親友”ができた。

     それも、同年代。
     俺と同じ、三歳の子どもが相手だった。

  • 53スレ主25/07/10(木) 16:54:57

     我ながら、正直どうかと思った。
     相手はマジもんの四歳で、こっちは中身が……お、お兄さんである。
     精神年齢でいえば、優に二十年以上の差がある。

     友情なんて、成立するわけがない――と、最初は疑っていた。

     ……が、成立してしまったのだ。物の見事に。

  • 54スレ主25/07/10(木) 16:59:21

     その子の名前はエドガー。
     誰に対しても優しく、思いやりのある少年だった。
     孤児院には、もっと過酷な境遇の子どもたちも多くいたのに、なぜか“俺”のことを、まるで壊れ物でも扱うように気にかけてくれた。

     言葉を交わすようになったのは、だいたい一年前からだ。それ以前もずっと俺のそばにいた。
     俺が何かをしようとすると、何も言わず手伝ってくれた。
     企んでることがあっても、問いただすことなく、ただ一緒にいてくれた。発狂しかけて泣き出したときも一番最初に慰めてくれた。

     ……それはもう、癒やし以外の何物でもない。

     どんなに準備に追われ、気を張り詰めていても、エドガーくんと一緒にいる時間だけは、俺はほんの少しだけ“子ども”に戻れていたのかもしれない。

  • 55スレ主25/07/10(木) 17:01:10

    駄文ごめんなさい
    お風呂入るので落ちます

    プロットなしの一発ネタのつもりが、途中から楽しくなってしまいましたナンテコッタ

  • 56二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 17:11:11

    待ってる
    死体処理も出来るチートの試し撃ちはまだ出来てないな
    MP消費とかあるかも

  • 57スレ主25/07/10(木) 19:42:27

    部屋でのんびりくつろぎながら何となく書いていきます
    いつも23〜2時あたりからホスト規制入ったり入らなかったりするので、落ちる宣言無いのに更新途絶えたときは察してください

  • 58スレ主25/07/10(木) 19:55:35

    >>52

    ここ3歳と4歳で表記ブレてますが、3歳と書いたあとに4歳になおそうとした名残なので、全て4歳に脳内変換していただけると助かります

  • 59二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 20:05:48

    歴史への影響なんて考える必要ある?
    良い歴史なる可能性だってあるじゃん、あるじゃん!

  • 60スレ主25/07/10(木) 21:27:59

     その日、俺とエドガーは孤児院の裏庭で、草むしりをしていた。
     ここでは“お手伝い”という名のもとに、年端もいかない子どもたちに様々な雑用が押しつけられている。
     草むしりも、そのうちの一つだった。

     本来、裏庭の草抜きは子どもにさせるべき仕事ではない。
     そこには――毒草だけでなく、毒虫や毒蛇といった危険な生き物が潜んでいることもあるからだ。

     実際、子どもたちの手が被れたり、毒虫に刺されたり……。蛇に、睨まれて泣き出すのは珍しくない。
     だからこそシスターたちは、この作業をできる限り大人たちだけで行おうとしていた。
     ――少なくとも、俺にはそう見えた。

     だが、その意志はあっさりと打ち砕かれる。

    「子どもにでもできる仕事だろう」
    「分かり、ました……」

     ……神父の効率重視の一言は、誰も反論することができなかった。

     結果として俺たちは、素手のまま裏庭に送り込まれた。
     農具はもちろん、手袋すらもない。

     まるで雑草のみたいな扱いだ。ひょっとすると本当に子ども雑草の区別がついてないのかもしれない。

     ――だが、それは俺にとっては、むしろ好機だった。

  • 61スレ主25/07/10(木) 21:36:59

     “草むしり”という名目のもと、俺は堂々と裏庭に生える雑草を観察できる。
     それはつまり――毒草を見つけ、選び、集めるチャンスだということでもあった。

    「……あった」

     俺は、小さく呟いてしゃがみこむ。
     指先でそっと引き抜いたのは、見覚えのある濃い紫色の葉をつけた植物だ。
     おそらくそれは……トリカブトである。あるいは、それに似た何か。

     他にもベラドンナに似た黒い実をつけた草、ジギタリスとそっくりの花弁をもつ植物などを見つけた。

    「は、はは……」

     未来で行われる自らの凶行を想像し、乾いた笑いがこぼれる。   
     これらは武器だ。子どもでも大人を殺せる、自然由来のピストルだ。
     たぶん、やろうと思えば今すぐにでも、あの腐れ神父の食事に盛ることができるであろう。

     ……これらの植物が、この世界でどこまで同じ効果をもつかは分からない。それだけが気掛かりだが、そんなものは下手な鉄砲数打ちゃ当たるである。

     試す価値は、十分にある。

  • 62スレ主25/07/10(木) 21:52:50

     俺は目立たぬよう、草花をそっと小袋へと押し込んだ。
     その時だった。

    「ねえ、なにしてるの?」

     声に、肩がぴくりと跳ねる。
     振り返ると、エドガーくんが首をかしげて俺の顔を覗き込んでいた。

    「……ちょっと変わった草があったから、気になって」

     ……私は、努めて明るく返した。
     いつも通りの声色で。そう――あくまで、幼い少女のそれとして。

    「……マリアちゃん、やっぱりお花が好きなんだ。前もずっと見てたし」

     俺は、曖昧に笑うしかなかった。
     そんな趣味はない。この行動の意味なんて、君のような子どもにだけには悟られてはいけない。

     何か、言葉を返そうとして、それより先にエドガーくんが言った。

  • 63スレ主25/07/10(木) 22:11:41

    「お花を探すの、僕も手伝うよ。マリアちゃん、お花を探してる時は、いつもより楽しそうだし」

     ――胸が、きゅうっと痛んだ。

    (やめてくれよ……そんなふうに、まっすぐな瞳で……そんな言葉を、投げかけないでくれ……)

     小さな手のひらに握られた袋には、命を終わらせる力がある。
     そのすぐ隣で、何の疑いもなく笑いかけてくれる少年がいた。

    「……エドガーくん」

    「ん? どうしたの?」

    「……ううん、なんでもない。ありがと」

     私は小さく微笑んで、小袋をポケットの奥へと滑り込ませた。

    (……本当は、殺しなんてしたくない)

     神父の行為が、幾つもの異なる場面となって脳裏に去来する。

    (けど、やらなきゃいけないんだ。俺が、俺として生きていくために)

     私は、努めてそう言い聞かせた。

     けれど――草花から外された視線は、
     まるで“まだ、やらない”という選択肢があるかのように、
     空を流れる、分厚い雲の行方を追っていた。

  • 64二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 22:34:29

    動物とかで効果を実験しないと

  • 65スレ主25/07/10(木) 22:35:05

     それから、何日かが過ぎた。

     結論から言おう。
     俺は、神父の暗殺に失敗した。

     理由は単純だった。
     決定的な見落としが、ひとつあったのだ。

    (考えてみれば、当然の事じゃないか)

     ――この世界に転生した際、俺にはひとつの能力が与えられている。
     その名も「万能調理」。

     これは、対象を安全かつ美味に調整し、食用可能な形に加工する能力だ。
     毒物や異物、未知の成分にも対応し、摂取時には自動で無害化および栄養の最適化まで行われる。

     一見すれば、まるで慈悲のような祝福。
     だが、この能力が“毒殺”に向いていないことを、俺は完全に失念していた。

  • 66二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 22:52:40

    オンオフ効かないなら辺り一帯料理になってる筈なので練度が足りないだけの筈

スレッドは7/11 08:52頃に落ちます

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