【閲覧注意】神佑にて初恋は芽吹く【SS】

  • 1◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 19:23:16

    Pドルイチャラブ強化月間も遂に最後ということで、ちょっとオシャレなタイトルにしてみました。

    最後の一人は学マスプレイアブルアイドルで一番可愛い(他十一人同率)と噂の花海佑芽ちゃんです。

    気合いが違うぜ。


    それはそうと和メイド佑芽良すぎる……。

  • 2◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 19:24:17

     キュッ、キュッ、キュッ。
     おろしたてのシューズが、綺麗にワックス掛けされたフローリングの床で小気味良い音を立てる。
     あたしは今プロデューサーさんに監督してもらいながらダンスレッスンを行っていて、それももう少しで二時間が経とうとしていた。
     
    「よし、今日のレッスンおーわり!」

     最後に納得のいくステップを踏めたことに満足して、自主レッスンを切り上げると近くであたしの様子を撮影していたプロデューサーさんがスポーツドリンクとタオルを片手にやってきて、それをあたしに手渡した。

    「佑芽さん、お疲れ様でした」
    「プロデューサーさん! ありがとうございます!」
    「日に日に上達していっていますね」
    「えへへー、ありがとうございますっ」

     受け取りながらスポーツドリンクをあおり、タオルで顔の汗で拭く。プロデューサーさんはもう一つのタオルで、自分の顔を拭いていた。こうも暑い日が続くと、レッスン室で立っているだけでもこもった熱気で汗をかくらしい。

  • 3二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 19:27:59

    たておつ!
    Pドルイチャラブ好きだったから嬉しい!

  • 4◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 19:29:48

    「さあ、着替えて帰りましょうか」

     プロデューサーさんがいつも通りの優しい笑顔でそう言った。
     けれどあたしは首を振る。

    「えっと、先にシャワー浴びてきますっ」
    「わかりました。じゃあ、待ってますね」
    「は、はい。すみません!」

     ペコリと頭を下げて、着替えの入ったバッグを持ってシャワー室に駆け込んだ。
     最近のあたしは少しヘンだ。
     プロデューサーさんといると気持ちがふわふわするし、なんだか顔を見るのが少し恥ずかしいし、けれど胸がぽかぽかして……まるで自分じゃないみたい。
     今だってそうだ。もともとダンスレッスンくらいじゃ汗をほとんどかかないから、今まではシャワーも軽く体を流す程度だったけど、最近は……なるべく念入りに、石鹸で全身を洗うようにしている。
     プロデューサーさんに汗臭いなとか、汚いなって思われたくないような気がして……。
     ……どうしてなんだろう?

  • 5二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 19:34:19

    かわええ
    ここまで純愛なSSあったか?

  • 6◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 19:35:49

    「それは恋ね!」
    「うええ!? こ、恋!?」
    「ええ、間違いないわ! 佑芽はそのプロデューサーに、恋をしているのよ!」

     オフの日にお姉ちゃんに相談してみると、返ってきたのはそんな答えだった。
     恋。漫画で何回も読んだことがある、耳馴染みのある言葉だ。
     確かにあたしは、間違いなくプロデューサーさんのことが好き、大好きだ。
     でも、お姉ちゃんのことも大好きだし、広ちゃんや千奈ちゃんや美鈴ちゃんのことも大好きだし、お母さんとお父さんも大好きだし、ダンストレーナーさんだって大好きだし……。
     それぞれ好きの種類が違うのはなんとなくわかる。家族の好きと、友達の好きと、尊敬の好き。プロデューサーさんに対する好きは、尊敬じゃなくて、恋愛の好き、なのかな?
     あたしが考え込んでいると、お姉ちゃんが「仕方ないわね」と小さく息を吐いた。

  • 7◆je8PYTqP5Ydc25/07/15(火) 19:36:11

    たておつ!
    スレ名が神ですよ神

  • 8純愛好きの匿名さん25/07/15(火) 19:37:17

    たておつ!なのですわ〜
    純愛スレですわ〜

  • 9◆HaBLx0H.oA25/07/15(火) 19:39:14

    たておつ!
    最終日に相応しい美しい純愛だ…

  • 10◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 19:39:54

    「佑芽。今からお姉ちゃんがとーってもわかりやすい例え話をしてあげるから、よく聞きなさい」
    「例え話? わかった」

     あたしが返事すると、お姉ちゃんは頷いて、それから身振りを交えて話し始めた。

    「もしわたしが、佑芽のプロデューサーと二人きりで仲良くお話をしているところを見かけたら、佑芽はどんな気持ちになるかしら?」
    「えー? 想像できないよ」
    「いいから。考えてみて」
    「うーん……」

     言われた通り、頭の中でその場面を想像してみる。
     あたしがプロデューサーさんを呼びにいったら、プロデューサーさんはお姉ちゃんと二人で楽しそうにお話をしていて、二人ともとっても笑顔で……。
     ──あ。

    「さすがプロデューサーさん、あたしのお姉ちゃんの魅力に気付いたか! って、嬉しくなる!」
    「……まったくこの子は」
    「ええ!? どうして呆れるの!?」

  • 11純愛好きの匿名さん25/07/15(火) 19:44:21

    これは純愛ですわ〜
    流石は咲季お姉さまですわ〜

  • 12◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 19:45:08

     我ながら納得のいく答えが出たと思ったのに、お姉ちゃんは褒めてくれるどころか一層深いため息をついて、ふるふると頭まで振っている。
     ええー? あたしそんな間違えたこと言ったかなぁあ?
     
    「本当にそれだけ? もっとよーく考えてみなさい」
    「え〜? うーん、もっとよーく……」

     お姉ちゃんとプロデューサーさんが仲良しなのは、すっごく嬉しいことで間違いないはず。
     だってそれはお姉ちゃんがプロデューサーさんを認めてくれたってことで、プロデューサーさんもお姉ちゃんを認めてくれていて、それで……。
     ──ズキッ。
     ……あれ? 少しだけ、胸がちくってしたような……?

    「あのねお姉ちゃん。全然変な意味じゃないんだけどね」
    「言ってみなさい」
    「うんと、自分でも不思議なんだけど……プロデューサーさんとお姉ちゃんが仲良しになりすぎるのは、なんだかちょっとだけ、イヤかも」
    「ふふっ」
    「な、なんで笑うのさ!」

  • 13二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 19:46:07

    うおおお花海姉妹が仲良しだぁ 安心感あるー

  • 14純愛好きの匿名さん25/07/15(火) 19:47:20

    嫉妬というものですわ〜
    ほんわかしてて良いですわね〜

    それにしても花海姉妹てぇてぇですわね〜…!

  • 15◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 19:51:12

     お姉ちゃんはケラケラと可笑しそうに笑って、目には涙まで浮かんでいる。そ、そんなに笑うことないじゃん!

    「あーはっはっはっ! 佑芽。それが、その感情こそがまさに"恋"なのよ!」
    「えー? でも、漫画には恋は幸せな気持ちって書いてあったよ? あたしの今の気持ちは、ちょっとだけちくちくして、痛いけど」
    「それは嫉妬してるからよ。恋している女の子特有の感情なの」
    「シット? あたしが、お姉ちゃんに?」
    「想像だけで嫉妬しちゃうなんて、よっぽどよ。並大抵の恋心じゃ無いわね」

     お姉ちゃんはまるでハムスターの成長を見守るような優しい笑顔で、あたしの頭をそっと撫でた。あたしの方が身長が高いから、腕を目一杯伸ばして。

    「女の子が誰か特定の男の子に対して、"他の人に取られたくない"って思ったなら、それは恋なのよ」

     お姉ちゃんはそう言って、「どう?」と聞いてくる。
     あたしはもう一度自分の胸の中を手探ってみる。そうしたら、お姉ちゃんの言う"恋"というものが、確かに自分の中にあることを見つけた。

  • 16◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 19:55:45

    「こ、これが恋なのかぁ……」
    「うふふっ。気が付いたならあとは攻めあるのみよ!」
    「せ、攻め?」
    「そう! 恋なんて早い者勝ちなんだから、うかうかしてたらいつの間にか他の子に取られて、佑芽は一生担当アイドルのまま! 引退したらさようならよ」
    「がーん! それはイヤだ!」
    「じゃあ特攻しかないわ」
    「で、でもどうやって?」

     攻めろ、なんて言われても、これが初めての恋のあたしにはどうすればいいのか全然わからない。
     でもお姉ちゃんは知っているみたいで、ニヤリと笑って左手を振り上げ──。

    「なんのためにこんな大きいのがついているの、よ!」
    「ひゃあ!?」

     あたしの胸を鷲掴みにした。

    「男なんて、"これ"の前にはなす術もなく沈むのよ! それはあのプロデューサーといえども例外じゃないわ!」
    「お、お姉ちゃんっ。やめてよぉ〜!」
    「なんだかだんだん憎たらしくなってきたわね……。どうして姉妹でこんなに差があるのかしら……」
    「あたしの胸を揉みながらぶつぶつ考え事しないでよっ!」

  • 17純愛好きの匿名さん25/07/15(火) 19:56:52

    ああ…ここで閲覧注意が出てきますわね〜
    エッチですわよ咲季お姉さま〜

  • 18◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 20:02:10

    『いい? 作戦はこうよ!』
    『は、はい!』
    『まずいつも通りプロデューサーに会ったら挨拶をするんだけど、その時普段よりすこーしだけ谷間を開いておくの。そして、さりげなく腕で胸をギュッと寄せながらお辞儀をして──二秒停止! 間違いなくプロデューサーの視線はあなたの谷間に釘付けよ!』
    『そ、そんなえっちなことできないよ!』
    『できないじゃない、やるのよ! プロデューサーが他の子に取られてもいいの!?』
    『い、イヤだ!』
    『じゃあ黙ってやる!』
    『うぅ〜、わかった!』


    「なんて言ったのはいいけど、やっぱり恥ずかしいなあ」

     次の日の朝、あたしは言われた通りシャツのボタンをいつもより多く開けて支度をした。
     時計を見ると、もうそろそろプロデューサーさんがお迎えに来る時間。
     ううー、緊張してきた……。
     ブーブーと、スマホが通知音を鳴らした。プロデューサーさんから到着のお知らせだ。

  • 19◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 20:09:18

    「よーし、いざゆけあたし!」

     ペシンと頬を叩いて気合いを入れる。プロデューサーさんを手に入れるためだ、恥ずかしがってなんていられない!
     玄関のドアを開け、自分なりの200%スマイルでプロデューサーさんに挨拶をしようとして──。

    「お待たせしまし……た……」
    「佑芽さんおはようございます。……どうしました?」

     固まってしまった。
     だって……なぜなら……。

     …………か、かっこいい〜〜〜!!!
     昨日までもすーっごくかっこよかったけど、今日は一段とかっこいいというか、なんだかキラキラ輝いて見えるよ!
     もしかして、これも恋のチカラ……?

    「あの、佑芽さん? 顔が真っ赤ですが、具合でも悪いんですか?」
    「……っ!」

     プロデューサーさんが心配そうにあたしの顔を覗き込む。
     そんなに顔を近づけられたら、胸がドキドキ……胸? そういえば、今あたしの胸……はだけてる……!?

  • 20◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 20:10:31

    「〜〜〜〜っ!!!」
    「あ、佑芽さん!?」
    「すみません、今日は走りたい気分なのでお先に行きます〜〜!!!」
    「ちょっと──速っ!」

     背中にプロデューサーさんの困惑した声を聞きながら、胸元を抑えて全速力で走る。
     うぅ〜、あたし、あんなかっこいい人に谷間を見せようとしてたなんて……恥ずかしすぎるよぅ!
     プロデューサーさんにえっちなコだと思われたら、もう生きていけない……。
     ということでお姉ちゃん。作戦は失敗だ!!!

  • 21◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 20:20:31

    「佑芽さん、一度休憩にしましょうか」
    「は、はい!」

     今日は一日、プロデューサーさんの顔をまともにみられていない。恥ずかしすぎて、つい逃げ出しそうになってしまうからだ。
     そのせいかダンスレッスンにもいまいち身が入らずにいたので、この小休憩はかなりありがたい。
     これ以上心配かけないように、気持ちを切り替えないと!

    「今日は朝から少し様子が変ですけど、本当に体調不良ではないですか?」
    「大丈夫です! 花海佑芽、今日も元気いっぱいですよー!」

     いつも通りプロデューサーさんからタオルとスポーツドリンクを受け取って、できるだけいつも通りに答えてみせる。
     プロデューサーさんは「ならよかったです」と微笑みながら自分の汗を拭ったタオルを近くの棚に置くと、鞄から財布を取り出してこちらに振り返った。

    「アイスでも買ってきます。佑芽さんはもう少し休んでいてください」
    「はい! ありがとうございます」

     プロデューサーさんがレッスン室を出ていくのを見届けてから、床に腰を下ろしてスポーツドリンクを一口飲む。
     手持ち無沙汰になってなんとなくキョロキョロ辺りを見回すと──ふと、あるものが目に留まった。

    「プロデューサーさんの、タオル……」

  • 22◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 20:26:41

     さっき、プロデューサーさんが汗を拭ったタオルが、棚の上に無造作に置かれている。
     別になんてことない、どこにでも売っているような白いタオルだ。
     なのになぜか、あたしの視線を惹きつけて離さない。
     立ち上がって、そっとそれを持ち上げてみる。

    「……」

     ……いや、いやいや。さすがにそれはダメだよ。そんなことしたら、本当にヘンタイさんだもん。
     でも、でも。ちょっとだけ。本当にちょっとだけなら……いい、よね?
     ドッドッ、ドッドッ。
     心臓がありえないくらい激しく叩かれる。
     今あたし、とんでもないことをしようとしてる。でも、もうダメだ。我慢できない。

     あたしはゆっくりと、手に持った柔らかいタオルに顔を埋めて──息を吸い込んだ。

    「〜〜〜〜っ!!」

  • 23◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 20:33:42

     くらっと、強い眩暈がした。
     頭の中をなにかがぐちゃぐちゃに掻き回すような感覚に襲われて、思わず床にへたりこんだ。
     プロデューサーさんのにおいはとっくの昔に完璧に覚えたけど、こんなに濃厚なにおいを嗅いだのは初めてだった。
     身体中のあちこちが熱くなって、心臓がうるさいくらい高鳴って、呼吸が苦しくなって──。
     タオルに顔を埋めて、何度も深く息を吸った。鼻から思いっきり吸い込んで、少しだけ息を止めて、小さく吐く。
     
    「プロデューサーさん……」

     無意識に、大好きな人を呼ぶ声が漏れる。
     どこからか汗のようなものが垂れるのを感じて、思わず内ももをぎゅうと締めた。

    「ぷろでゅうさぁ……さんっ……」

     何度目かの呟きの直後、あたしはとてもイヤな予感を感じて振り返る。
     そこには、アイスの入った袋を片手に驚いた顔であたしを見るプロデューサーさんが立っていた。
     
    「佑芽さん……それ、俺のタオルですよね……?」

     ──ああ、終わった。

  • 24純愛好きの匿名さん25/07/15(火) 20:35:21

    こういうのもありですわ〜
    わたくしもこういうSS作りたいですわ〜

  • 25◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 20:40:20

    「あ、あの、えと……これは違くて……えーとですね」

     必死に言い繕おうとしても、全然言葉が出てこない。自分でもわかるくらい声がうわずって、目が泳ぐ。

    「佑芽さん……もしかして……」

     プロデューサーさんがゆっくりとあたしに近づいてくる。朝みたいに走って逃げ出したいけど、足に力が入らない。
     うう、やばいやばい、どうしよう、どうしよう。プロデューサーさんにバレたら、嫌われちゃう……!

    「──え?」

     と、思っていたのに。プロデューサーさんが見せた反応は、あたしの想像とは全く違ったものだった。

    「やはり少し熱っぽいようですね。大事をとって今日は終わりにしましょう。寮まで送ります」

     プロデューサーさんはあたしのおでこに手のひらを当てて、心配そうに優しくそう言った。
     プロデューサーさんの顔がすぐ近くにあって、プロデューサーさんの柔らかい声が、温かい吐息が感じられて──。

    「……好きです」

     気がつけば、そんな言葉が溢れていた。

  • 26◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 20:47:48

    「……え?」

     プロデューサーさんがキョトンとした顔であたしを見つめる。本当に何も飲み込めていない顔だ。
     プロデューサーさんを驚かせちゃったかな、困らせちゃうかな。
     でもダメだ。もう止まらない。
     あたしが気づいていなかっただけで、ずっと募らせていたこの想いは、一度あふれてしまえばもう抑えることなんてできない。

    「あたし、プロデューサーさんのことが好きです。あたしを見つけてくれたことも、あたしを見捨てないでいてくれたことも、かっこいい顔も、優しい声も、落ち着くにおいも、全部、全部──」
    「あ、あの、佑芽さん? 落ち着いてください」
    「ごめんなさい、いきなりこんなこと言われても迷惑ですよね。でもあたしももう抑えられないんです」
    「ちょ、佑芽さ──」

     ドサッ。
     そんな音がして、プロデューサーさんが床に寝転がった。あたしはそれに跨るようにして、プロデューサーさんを見下ろしている。あれ、どうしてこんな体勢になっているんだろう?

  • 27◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 20:53:59

    「プロデューサーさん……プロデューサーさんは、あたしのこと、好きですか?」
    「……もちろん、好きですよ」
    「それはどういう意味ですか? アイドルとして? それとも、あたしとおんなじ──異性として、ですか?」

     プロデューサーさんは、一瞬目を逸らして、それから小さく溜息を吐いた。
     そして、次にあたしに視線を戻したときには、思わず吸い込まれそうになるくらいに真剣な目をしていて──。

    「佑芽さん。よく聞いてください」
    「……はい」
    「俺は、アイドルとしての佑芽さんが好きです」
    「…………はい」

     ……そっか、あたしフラれて──。

  • 28◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 20:59:01

    「ですが」
    「わわっ!?」

     ぐいっと引っ張られるような力が加わって、あたしはプロデューサーさんの上に倒れ込んだ。
     ぎゅうっと、プロデューサーさんの腕があたしの背中に回されて、強く抱きしめられている……!?

    「あの、えと、プロデューサーさん?」
    「それ以上に、花海佑芽という女性を、俺は心から愛しています」
    「あ、う、えと」
    「佑芽さん。好きです。俺の、恋人になっていただけませんか」
    「うぇっ……あの、えっと……あ、あたし!」

     うう、やばい、やばい。心臓が破裂しそうなくらい高鳴っていて、自分の声が聞こえない。
     でも、あたしの答えは決まってる。あとは間違わないように、それを伝えるだけ。深呼吸して、息を整えて、それから──。

  • 29◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 21:03:34

    「あたしも、プロデューサーさんの恋人になりたい、です……えと、よろしくおねがい……します」
    「はい、こちらこそ」

     ばくんばくん。
     触れ合った胸から、早鐘を打つ音が聞こえる。これはあたしの? それともプロデューサーさんの?
     それすらもわからないほど密着しあったあたしたちの身体で、まだ唯一離れ離れになっている場所。
     どちらからともなく、ゆっくりと。その最後の一箇所を結ぼうと、顔を近づけていって──。

    「花海さーん? こちらにいらっしゃいますのーって、まあ!!」

    「「〜〜〜っ!!?」」

     いきなり開け放たれたレッスン室の扉の音と、聞きなれた友達の声に驚いて、飛び跳ねるように起き上がった。

  • 30◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 21:10:22

    「千奈、千奈。佑芽、見つけたの? ……わぁ、だいたん」
    「まあまあまあ! お二人、そうでしたのね!?」

     千奈ちゃんと広ちゃんが、目をキラキラさせてあたしとプロデューサーさんを交互に見ている。
     これ、絶対誤解されてるよ〜! ……あれ、誤解でもないのかな?
     いや、だとしても! こんなところ見られたら恥ずかしくて顔見られないよっ!

    「ちちちちちちちがうの、千奈ちゃん、広ちゃん!」
    「篠澤さん、倉本さん。これはどうか内密に……」
    「ふふ……安心して。わたし、口は堅いから」
    「大切なお友達のためですもの! わたくし、絶対誰にも言いませんわ!」
    「千奈、千奈。これ以上邪魔しちゃ悪いから、早く帰ろう」
    「そうですわね! それでは花海さん、花海さんのプロデューサーの方、さようならですわ!」
    「ばいばい、二人とも」

     嵐のように二人が去っていき、レッスン室にはまた二人きりの静寂が訪れる。
     プロデューサーさんが少し吹き出すように笑って、あたしの方を向いた。

    「…………俺たちも帰りましょうか」
    「は、はい」

  • 31◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 21:16:30

    「ことねー! 手毬ー! ちょっと聞きなさいよー!」
    「なんだよ騒がしいな〜」
    「咲季がそんなに騒いでるなんて珍しいね。どうしたの」
    「この前、佑芽がわたしに料理を教えて欲しいって言ってきたのよ! 自分でお弁当を作りたいからって!」
    「なんだ、いいことじゃんか。お姉ちゃん離れだろ〜?」
    「咲季のペースト飯から解放されたいって思うのは当然だよ」
    「そーいうことじゃないのよ!」
    「じゃあなんだってんだよ〜」
    「あれ! みなさいよ!」
    「「あれ?」」


    「プロデューサーさん、あーん」
    「あーん」
    「どうですか、おいしいですか?」
    「はい、とっても。佑芽さんは最高のお嫁さんになれますね」
    「えへへ〜。照れちゃいますよっ! でもあたし、プロデューサーさん以外のお嫁さんにはなるつもりありませんよ?」
    「俺だって、他の男に佑芽さんを渡すつもりなんて毛頭ないです」
    「もうっ、プロデューサーさんってば!」
    「あはは」
    「えへへ」

  • 32◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 21:20:28

    「……あー、あれはしんどいナ……」
    「……見てるだけで糖尿病になりそう。とんこつラーメンがほしくなる」
    「でしょー? もう毎日ああなのよ! 佑芽が取られたー、なんて言う気にもなれないわ……」
    「ま、でもいんじゃねーの? 二人が幸せならさ」
    「そうだね、私に迷惑をかけないなら(どうでも)いいと思う」
    「……ま、それもそうね。あーあ、お姉ちゃん、なんだか寂しいわ」




     その日から、あたしとプロデューサーさんは恋人同士になった。アイドルとプロデューサーだから、堂々とデートはできないけど、学園の敷居の中だけは気にせず二人でいることができる。
     ちょーっと仲がいいだけですっていう言い訳も、ここでなら通用するから。
     中庭のベンチで、隣に座る初恋の人の横顔を見上げる。優しい笑顔で、あたしに振り向いた。
     あたしはお弁当箱で隠しながら、そっとその頬に口付けを落とす。

    「佑芽さん、見られたらどうするんですか」
    「そんなの関係ありませんよーっ!」
    「全く……仕方のない人だ」

     だって、誰がなんと言おうとあたしは──。

    「えへへ、プロデューサーさん、だーい好きですっ!」

     この人のことが、大好きだから。



    終わり。

  • 33◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 21:27:15

    くぅ〜疲!

    せっかくなのでゲロ長自語します。
    Pドルイチャラブ強化月間もとうとう終わりました。

    遡ってみてみたら、まりちゃんがグールだったスレが6/14だったので、ちょうど一ヶ月。炎上のやつも含めたもう一週間ほど伸びますが、いや本当に長い間、カテ汚ししてしまいました。すみません。

    全部読んでくださってる方はいるのでしょうか。本当にありがたいことです。

    しかしもうね、しばらくシリーズものみたいなのはお腹いっぱいですね。

    基本的には当日にゴールだけ決めてあとは書き溜めなしでやってるので、その日の調子で結構クオリティにかなりの差が出ます。良くないんですけどね。

    今度は補習組をプロデュースするSSでも書きたいなぁ。

    あ、そうそう。このSSでね、佑芽がプロデューサーさんって呼んでるの、あれ僕のことなんですよ。

    佑芽! 俺も好きだ! 結婚してくれ!!

    ……え? なんですかこの緑色の紙。これにサインすればいいんですか? はい、わかりました。
    え? 指輪を外せ? どうしてです? 養育費? え?



  • 34二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 21:31:51

    乙 もう1ヶ月か リアタイじゃないのも含めたらだいたい全部見たはず 楽しかったよ
    毎日曇らせとか純愛SS捻りだすの大変だろうなって見てたからある程度休んでもええんやで 次も待ってる

  • 35純愛好きの匿名さん25/07/15(火) 21:34:35

    気づいたら終わってましたわ〜…!
    仕方がないのでじっくり読ませていただきますわ〜

  • 36◆je8PYTqP5Ydc25/07/15(火) 21:35:42

    お疲れ様やでな
    ワイのダイススレとかもココ見て始めたんで感慨深い……
    いい作品をありがとう!

  • 37◆HaBLx0H.oA25/07/15(火) 21:37:06

    乙でした!甘々純愛だった、こういうのが良いんだよこういうのが

    ほぼ全部リアタイしてたよ、おかげで私もSS書きたいなって思うようになった。クオリティは遠く及ばんけど…

    またトンチキダイスでもミニSSでも上げてくれな

  • 38◆WsV5Czf1Hs25/07/15(火) 22:45:35

    どうも皆さんありがとうございます!



    >>37

    あなたはもっと書いてください。

    ちなひろスレに書いてくれた数々、最高です❤️



    最後なんで私の集大成置いときます。


    https://note.com/moral_alpaca5251/n/ne4fed8533aa2?sub_rt=share_pb

  • 39◆HaBLx0H.oA25/07/16(水) 00:07:38

    >>38

    ありがてぇお言葉だ…浮かんだらまたちょいちょい書かせてもらいます

  • 40二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 09:06:21

    一ヶ月お疲れ
    また立てーや

スレッドは7/16 19:06頃に落ちます

オススメ

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