- 1二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:13:02
- 2二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:14:02
俺は、昔からやたらと力が強かった。
りんごだって簡単に握り潰せるし、腕相撲なら誰にも負けない。ひとたび重い物を持てば、色んな人から感謝される。これは神様からの贈り物なんだよ、と。母さんはそう言って、俺の頭を撫でてくれた。
どうやら俺は、フィジカルギフテッドというものらしい。生まれつき筋肉の量が人より多くて、どんな物でも扱える。
自分の力が、誇らしかった。 - 3二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:15:09
俺は、昔からやたらと力が強かった。
中学に入ると同時にあり得ないほど背丈が伸びて、どの運動部にも勧誘されて。そこから野球にハマってからは、打つも投げるも大活躍。本当に、俺は神様に愛されているんだなって。俺が頑張ればみんなが笑顔になる。みんなの役に立てて、嬉しかった。
あの時の俺は、間違いなく輝いていた。軽いネットニュースにも載るほど注目を浴びて、俺が何かする度にみんなを笑顔にできる。自分が輝けば輝くほどに、みんなの笑顔を支えられる。
自分の力が、大好きだった。 - 4二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:16:14
俺は、昔からやたらと力が強かった。
三振を奪ったら、みんなが喜んでくれる。けど、いつも遅くまでピッチング練習をしているあいつの顔は、ずっとどこか曇ったままで。……そうか、あいつも試合で投げたいんだな。
だから、次の試合ではわざと打たれるようにしてみた。即交代だ。そしたら、あいつにも活躍の場ができるかな、なんて。喜んでくれるかな、なんて。
自分の力が、少しもどかしかった。 - 5二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:17:32
俺は、昔からやたらと力が強かった。
試合の後、あいつと大喧嘩をしたんだ。お前には失望したって言われたよ。二度と野球やるなって。馬鹿にすんなって。ふざけんな、俺だってこんなに努力してるのにって。……お前を産んだ親の顔が見てみたいって。
ついカッとなって、ぶん殴ったんだ。拳とか椅子とかバットとか、何をどれだけ振り回したか、分からない。気づいたらあいつは、壁を突き破って動かなくなっていた。
その後のことは、よく覚えていない。頭からドクドクと血を流しているあいつの姿と、騒がしい周りの声が、せいぜい今でもフラッシュバックするくらいで。
母さんは、泣いてた。クラスメイトも、先生も、誰も俺に近寄らなくなった。俺はただ、頑張ってるあいつのこともサポートしたかっただけなのに。あいつにだって、笑ってほしかっただけなのに。
自分の力が、嫌いになった。 - 6二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:19:04
俺は、昔からやたらと力が強かった。
身長も体格も他の人より頭一つ抜けて大きいから、どこにいたって目立つ。高校は誰も俺のことを知らないであろう、遠くの場所に進学した。最初はみんなと仲良くできていた、またここでやり直そうと思った。また、1人でも多くの人に笑ってほしかった。
でも、できなかった。中学時代に俺が暴力事件を起こしたという噂が、すぐに広まってしまって。事実だから、否定もできない。……俺は、瞬く間に孤立した。
そうだよな、こんなデカい図体持ったやつなんて、簡単に見つかる。中学の有力選手が起こした事件だ、そりゃ、知ってる奴もいるよな。……俺の力は、もう人を笑顔にすることはできない。むしろ、人の笑顔を奪う存在にしか、なれない。
自分の力が、忌々しかった。 - 7二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:20:25
俺は昔から、やたらと力が強かった。
家に帰ったところで、母さんは目も合わせてくれない。父さんはどうにか話をしようとしてくれているけど、焼け石に水だ。なんで、こうなっちまったんだろう。……俺のせいだよな。
身体を納めるには小さすぎて物足りないベッドに背中を預けながら、目的もなくネットサーフィンをする。無気力な毎日。家にも学校にも居場所がない、灰色の世界。
けど、ある日。出会ったんだ。アイドルに。
その日も漠然とだらしない姿勢でスマホを眺めていたら、アイドルのライブ映像が流れてきた。……一目で惹き込まれた。ステージの上で輝く彼女たちは、その身体全てを余すことなく使い、観客の心を掴んで離さない。
……一番近くで、見たいと思った。彼女達のように頑張る人たちを、支えたいと思った。あの日から色を失った視界に、再び光が灯る。サポートしたい、してみたい!
自分の力に、もう一度だけ賭けてみたくなった。 - 8二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:21:29
俺は昔から、やたらと力が強かった。
死ぬ気で掴み取った、初星学園の生徒の証。いよいよ、プロデューサー科の入学式が始まる。……やっぱり、椅子に座ってるだけでも俺の頭だけ飛び出てるな。親元も離れ、生まれ育った土地も離れ、ここまでリラックスできたのも久しぶりだ。暢気なことを考える余裕なんて、久しくなかったから。
アイドル科の名簿に目を通す。気になる人は…………紫雲清夏さん。かつてバレエの世界で神童と呼ばれた、橙色の髪が映える快活な少女だ。
そこから俺は、清夏さんをプロデュースすることになり。カクシタアナタを見つけ出し。清夏さんのトラウマを克服するべく2人で強くなっていった。
バレエと円満に訣別し、これからもよろしくね、と言ってくれた時のあの笑顔。俺は、心から嬉しかった。自分でも、まだ誰かを支えていいんだって。そう言ってもらえたように思えて。
自分の力を、少しだけ信じられた気がした。 - 9二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:22:54
俺は、昔からやたらと力が強かった。
NIAに出てからというもの、様々なトラブルに見舞われた。途中思わずスマホを握り壊してしまうこともあったが、清夏さんは無事にNIAを勝ち抜いた。
続くH.I.F選抜試験では憎っくき副会長に敗北を喫したが、葛城さんとも強い信頼関係を築き上げられてきている。2人分のレッスンメニューを精査するのは少々大変だ。それでも、俺のプロデュースは確実に実を結びつつあるはず。
直近のライブでは、清夏さんはあまり楽しそうではなかった。パフォーマンスは確かに一級品だったが、期待に応えようとするあまり、理想との間で迷走している。これは……清夏さんにわがままを覚えてもらう必要でもあるだろうか。毎日が清夏さんのことでいっぱいだ。
などと考えていた矢先。
……見つけてしまった。
『紫雲清夏のプロデューサーは過去に暴力事件を起こしている!?今話題のアイドルのゴシップを徹底調査!』
自分の力は、どこまでも呪いとして俺に付き纏う。 - 10二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:24:14
俺は、昔からやたらと力が強かった。
あさり先生に、ことの経緯を話した。清夏さんはまだ知らないようだが、既に炎上はかなりのものになっている。あさり先生は黙って聞いてくれていたが、やがて一言。本当にそれでいいんですか、と。
……それでいい。清夏さんには、幸せでいてほしいから。俺が隣にいることで、清夏さんまで不幸になってはいけない。清夏さんの笑顔を、奪いたくない。
やっぱり、俺の力は人を幸せに出来るものなんかじゃない。どこまでも、人を傷つけることしか出来ない。俺の過去が、清夏さんまで苦しめてはいけないから。
……契約解除の書類を、清夏さんに渡す。H.I.F本戦までのプロデュースプランは、全てデータとして残してある。俺がいなくても清夏さんは─────
「Pっちの、バカっ!!!!!!」ドンッ
自分の力は、清夏さんの前には無力だ。 - 11二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:25:15
強く、強く胸を叩かれる。一般的な男性はもちろん、ましてや女性に叩かれた位では俺の身体はびくともしない。その筈なのに………どうして。どうして、こんなにも胸が痛いんだ?
「なんで……なんであたしには何も話してくれないの!あたしは、Pっちが隣にいないと嫌だ!」
「あさり先生から聞いたよ、Pっちが昔バカなことをやっちゃったんだーって。……そんなの、あたしには関係ない!Pっちが、あたしをずっと支えてくれるってのは嘘だったの?2人で強くなろうって言ったのは、嘘だったの!?あたしを置いていかないでよ、この分からず屋っ!!」
違う。違うんだ清夏さん。
俺はあなたを泣かせたいんじゃない。あなたには、笑顔でいてほしいんだ。幸せでいてほしいんだ。そのためには、今の俺は邪魔になってしまう。あなたの経歴に傷をつけてはいけない。
「じゃあ、Pっちはどこに行っちゃうの。そんなこと言って、あたしから離れていくの?そんなの、絶対許さない!裏切ったら恨むって、あの時あたしそう言ったよね!あたしは……、あたしは………っ!」
Pっちに幸せにしてもらいたいの!!! - 12二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:26:20
………っ!
……俺は、馬鹿だ。
清夏さんはもう立ち直って、葛城さんとも強くなれる。だから、大丈夫だと思ってた。でも、違う。どんなに強くなっても、傷つかないわけじゃない。
「う、うう………Pっちの、ばかぁ!」
清夏さんが泣いているのは────全部、俺のせいだ。
………………だからこそ。
ぎゅっ。
「……………ぴー、っち?」
清夏さん。────俺があなたを幸せにします。 - 13二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:27:36
「ふへえっ!?え、あの、いや、ええと、その……」
「────はい。」
この後俺は、葛城さんにこっぴどく叱られた。なんというか、色々な点で。清夏さんが、リーリヤは怒ると怖い、と言っていた。……よく、分かった。もう二度と葛城さんを怒らせてはならない。
そして、清夏さんからは絶対に離れない。俺が清夏さんを、幸せにしてみせる。 - 14二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:28:36
俺は昔から、やたらと力が強い。
りんごだって簡単に握り潰せるし、腕相撲なら誰にも負けない。ひとたび重い物を持てば、色んな人から感謝される。────そして、何よりも何よりも大切な担当アイドルを、世界で一番強く抱きしめてあげられる。これは、神様からの贈り物だ。
俺は清夏さんに出会えて、本当に良かった。これからも、彼女のことを支え続けよう。………願わくば、生涯ずっと。
自分の力は、清夏さんの翼なんだ。 - 15二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:30:22
終わりです。お邪魔しました。
Pっちゴリラ概念って上手く活かせば絶対いい味するから、どうにか書いてみたい。そんな気持ちばかりが先行して、雑に曇らせてから雑に晴らしてしまいました。現実味という点で形にするのがとても難しい……。
CM清夏コミュのセリフをオマージュしたり、未だ分からないPっちの過去を存分に捏造したり、ある程度やりたい放題でした。Pっち×しゅみたんがあんなにPラブ最大手なのに、Pっちの過去が莉波と同郷ってこと位しかまともに分からないのが悪い。
まさに今別スレでウブなPっち×乙女なしゅみたんがアツいというのもあり、密かにお蔵入りしようと思ったのですが、広のSTEP3が本格的に来てカテの注目がそっちに移る前に出してみたくなりました。
より良いPっちゴリラ概念が在りましたら是非お書きください。俺が喜びます。 - 16二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:32:15
思ったより人間社会に馴染めないゴリラPが頑張る話だった
- 17二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:32:17
良かったけどPっちゴリラ概念ってなんだよ()
- 18二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:32:20
すげえ…スレ名はキモいけど中身は感動系だ
- 19二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:32:56
乙 天才的な才能を持っていて、だけどとても優しくてだからこそそれで傷ついて傷つけて…と失敗してしまったPっちだからこそしゅみたんの痛みを理解できたのかもしれませんね
- 20二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:35:41
自分で書いてて思ったけどこのPっちの特徴ほとんど野生のゴリラのそれだな…
- 21二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:35:44
スマホバキった発言からこんな感動系な話が生まれる事があるんだな…
- 22二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 20:48:56
ゴリラPっちの悩みから漂う本郷猛の香り…
- 23二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 22:44:18
なんやねんこのタイトルと思ったら名SSだった
- 24二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 23:10:52
Pっち·Pっち·Pっち概念ね…好きかも
- 25二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 01:22:50
ゴリラPがリーリヤに怒られてシュン…ってなってるとこ味がする
- 26二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 10:26:30
Pっちはニシローランドゴリラっちだった……?