【SS】鬼龍と元太の休日

  • 1猿山哲晶25/07/17(木) 12:18:42

     宮沢鬼龍とフェ・ラーリの組み合わせは、いかなる町や国においても際立った存在感を示す。鬼龍が眉を顰めるような表現をするなら、水墨画に赤いマジックで点をいれたようなものだ。

     フェ・ラーリは米花町にある一軒の酒屋の前で停まり、羽を休めていた。すると、酒屋の奥から恰幅の良い男児が姿を現す。

    「待たせたな、おっちゃん!」

     彼の名は小嶋元太。地元の帝丹小学校に通っている、ごく普通の少年である。

     鬼龍がここに来たのは、彼を迎えるためであった。

  • 2二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:19:34

    へーっ元太って酒屋の子供だったんだ…(ヌッ

  • 3二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:20:36

    ねーっなんなのこのスレ

  • 4二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:20:41

    期待

  • 5二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:21:05

    wktk

  • 6二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:21:25

    鬼元解釈違いです

  • 7二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:21:40

    何が始まる…?

  • 8二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:22:42

    更新遅い…遅くない?
    書き溜めてないタイプ?

  • 9猿山哲晶25/07/17(木) 12:22:53

     元太には保護者と呼ぶべき存在が幾人かいる。

     まずは言わずもがな、酒屋を営む彼の両親。しかし今日に限っては、どうしても外せない用事があり、夫婦揃って岐阜の親戚の家を訪れている。

     さらに、近隣に住む阿笠博士(ひろし)という発明家の老人。元太をキャンプや旅館などのレクリエーションによく連れて行くのだが、現在科学フォーラムへの出席のため米花町を離れていた。

     それから、"眠りの小五郎"として名高い探偵の毛利小五郎。彼も探偵としての依頼を受け、娘と親類の少年を連れて都外にいた。

     このようなことになると、休日に元太を遊びに連れ出すのは鬼龍の役目である。それに関して説明は不要だろう。

    「さっさと乗れ。シート・ベルトを締めろ」

     ガルウイングを広げたフェ・ラーリに、元太は肉厚の体を滑り込ませた。

  • 10猿山哲晶25/07/17(木) 12:26:14

    「先に言っておくが、助手席で菓子を食い散らかしたりしてみろ。キツいお仕置きをくれてやるからな」

    「え、何をされんだよ」

    「どデカい屁をかます」

    「ぶはははは!何だそりゃ」

     朗らかな笑い声を車内に響かせ、フェ・ラーリは米花町を駆け始める。


     午前中の予定としてやって来たのは、美術館だった。これは鬼龍と元太双方の希望によるものであるが、目的とするものは異なっている。

    「何やってんだよ、早く行こーぜ!」

    『仮面ヤイバー特設展』の看板を見て、元太は早くもはしゃぎ始めている。

    「お前一人が行ってどうする。入館料を払うのは俺だ」

  • 11二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:27:13

    やっぱ子供相手だと甘いっスねおじさんは

  • 12二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:27:38

    >>9

    説明いるわボケーっ

  • 13二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:28:38

    サンデーカテでやれ

  • 14二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:29:04

    >>9 説明は不要だろう



    えっ

  • 15二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:30:12

    そもそも猿山哲晶ってなんだよ!

  • 16二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:30:26

    >>14

    いちいち話してたら脱線するやん…読者にとって当たり前の体で進めるのが1番やん…

  • 17猿山哲晶25/07/17(木) 12:31:04

     受付で大人と子供一人ずつの入館料を払い、特設展のエリアに足を踏み入れる。係員に何か小さい包みを手渡された。来場特典のバッジらしい。

     中身はランダムなようで、敵の戦闘員らしき絵柄のバッジを手に、元太はやや落胆顔を見せた。そちらも開けろと鬼龍に急かしてくる。

    「あっ、すっげ〜!!その金ピカヤイバー、シークレットじゃねぇか!!」

     やはり、欲しがらない人間ほど手にするものらしい。

    「そこまで欲しがるならくれてやる。俺には無用のものだからな」

    「ホントか!?ありがとなおっちゃん!俺が当てたのを交換にやるよ」

    「いらん」

  • 18二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:32:10

    あーっ早く続きを見せてくれぇ

  • 19二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:34:42

    えっコナン特有のエログロトンチキ謎SSじゃなくてまっとうにほのぼのやるんですか

  • 20猿山哲晶25/07/17(木) 12:34:48

     元太について行くように、というより引き摺られる形で、鬼龍は特設展のコースを歩いてゆく。

     撮影に使用されたヤイバーや敵のスーツ、劇中プロップ、台本、再現ジオラマを見て、元太は目を輝かせていた。

     それを眩しく思いつつ、少しからかってやろうと鬼龍は軽口を飛ばす。

    「作り物でよくまぁここまで盛り上がれるもんだ」

     ムキになって言い返してくるかと思いきや、元太は意外にも冷静だった。

    「おっちゃん、結構寂しい奴なんだな」

    「なに?」

    「嘘を嘘だって楽しめない人生は虚しいって灰原が言ってたぞ」

     したり顔でそう言った元太は、虚をつかれて反論できずにいる鬼龍を尻目に、再び歩き出した。

  • 21二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:38:04

    >>17

    ほのぼの…神

  • 22猿山哲晶25/07/17(木) 12:40:22

     はしゃぎながら進む元太について行き、特設展のエリアを抜け、鬼龍は土産としてヤイバーのブロマイド・セットを買ってやった。

    「お前は十分楽しんだだろう。こっちの用事にも付き合ってもらうぞ」

     鬼龍は元太を連れて常設展に足を運ぶ。芸術をこよなく愛する鬼龍は世界のありとあらゆる名画を見てきた(何度見ても飽きるものではない)が、ここには地元の美大生やアマチュア画家の描いた作品も展示されている。

     未熟な、そして大成するかも分からない芸術家の卵達の作品を鑑賞するのは、鬼龍にとって殊の外刺激的な体験であった。元太が感嘆の声を上げたのは、机に所狭しと並べられた晩餐の絵を見た時である。

    「うっまそうだなぁ〜!これ、絵じゃなくて本物だったらいいのに」

    「絵でも食べてみたらどうだ?作り物をそうだと楽しめない人生は虚しいんだろう」

    「あーっ、言い負かされたからって」

     頬を膨らませる元太に、鬼龍は偽悪的な笑みを向けた。

  • 23二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:40:30

    >>20

    元太に諭される鬼龍…ぶ…無様

  • 24二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:41:13

    >>22

    叔父…?

  • 25二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:42:16

    なんじゃあこの気のいい親戚の叔父さんは

  • 26二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:43:42

    >猿山哲晶

    笑がすなあババタレがあーーーーっ

  • 27猿山哲晶25/07/17(木) 12:44:52

    〜〜〜〜〜〜〜〜

     美術館を後にした二人はフェ・ラーリに乗り込み、空腹の虫が居座り始めた胃を満たすための店を探し始める。

    「何が食いたいんだ?」

    「へへ、実はもう決めてんだ」

     慣れた手つきで元太はカーナビを操作し、一つの目的地を設定した。鬼龍の口から苦笑が洩れる。

    「お前というやつは」

     鬼龍がアクセルを踏む。それから15分ほど走った先の店の看板に、『うなぎ』の文字が刻まれていた。

  • 28二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:45:20

    マサイの探偵だまされない
    文章力から推察するに途中でホモ滑りするのはにおいでわかる

  • 29猿山哲晶25/07/17(木) 12:49:30

     価格帯としてはそれなりに高い店である。それでも莫大な資産を持つ鬼龍と、うな重に身命を賭している元太が気後れする理由はない。

     席に座り、注文を済ませる。元太は早くも頬を紅潮させ、いつ来るものかと心待ちにしているようだ。美術館で買ったブロマイドを眺めながら。

     鰻の身を焼く音が、聴覚をくすぐる。深みのあるタレの匂いが、嗅覚に訴えかける。味覚を満たすまでの間、そのじれったさも楽しみの一つと言えよう。

    「前戯にも似ているな」

     鬼龍はそう思ったが、元太の手前、流石に口には出さない。

     やがて、二人の席にうな重とひつまぶしが姿を現した。

  • 30二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:52:11

    >元太は肉厚の体を滑り込ませた。


    いややめておこうホモ滑りの臭いがする

  • 31二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:52:43

    >>28

    い や あ あ(PC書き文字)

  • 32猿山哲晶25/07/17(木) 12:55:23

    「いっただっきまーーーす!!」

     元太が勢いよく手を合わせ、箸に手を伸ばす。香ばしい鰻と、白米と、両者を融和させるタレを口に放り込んだ。まるで、鰻が元太の口に自ら飛び込んでいるかのようにすら見える。

     しきりに咀嚼しつつ、美味い、美味いと呟く元太。どこか陶然として、細められた両眼から涙が溢れんばかりだ。

     鬼龍は微笑みつつ、その様を愉しみながらひつまぶしを頬張る。確かに美味い、素材も調理法も上等なものだった。それでも、舌が肥えた鬼龍が驚愕するほどのものではないはずだ。

     それなのに、まるで一ヶ月飢えていたかのようにうな重を有り難く頬張る元太を見ていると、それに引っ張られる自分を感じる鬼龍であった。

  • 33猿山哲晶25/07/17(木) 12:56:32

    後半の更新は夜になるんだァ
    楽しみに待っていていただこうかァ


    それから流石に小学生男児とホモ滑りするわけねぇだようがよえーーーっ!?

  • 34二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:57:18

    なにっ生・殺し
    ふうんじれったさも楽しさの一つということか

  • 35二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:57:30

    急にこんなほのぼのスレが出てくるなんて私は聞いてないよッ

  • 36二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:57:36

    >>33

    ふーっ良かった安心しました

  • 37二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:57:45

    >>34

    「前戯にも似ているな」

  • 38二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 12:57:51

    >>33

    ふぅん 小学生じゃなかったらホモ滑りしたということか

  • 39二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 13:00:04

    >>1……神

    スラスラ読み進められる文章を書ける技量の持ち主なんや


    >>1……糞

    書きだめしてないんや その上勃起不全

    続きを待つじれったさには勝てぬか

  • 40二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 13:00:47

    まあまあおもしれーよ

  • 41二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 13:07:55

    うーっ読ませろ
    アニキおかしくなりそうだ

  • 42二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 13:12:43

    あ、あの…自分めちゃくちゃ読みやすかったんスよ
    どんな修行したらこんな文書けるのか教えてくれよ

  • 43二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 16:01:43

    このスレを上げるロンギヌスのメンバーと言っておこう

  • 44二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 16:08:18

    >>15

    猿渡哲也先生と青山剛昌先生がピキーンした結果だと思われる

  • 45二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 16:19:45

    明らかに書き慣れてる人の文体なんだよね

  • 46二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 16:24:24

    ふんっ猿山展開ということか

  • 47二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 16:28:06

    ◇元太のお守りをするのが役目と言われるぐらい親しいこのおじさんのポジションは…?

  • 48二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 16:28:42

    コナンSSってだけでいつ元太が鬼龍から教わった呪怨や塊蒐拳を光彦に撃ち込む展開になるのかビクビクしてたのが俺なんだよね
    ほのぼのすぎる…ほのぼのさのレベルが違う…まるで日常ものだ

  • 49二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 16:43:41

    なぜ元太と鬼龍が…?

  • 50二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 16:54:43

    全く関係のないこのキャラクター同士でここまでキレイに書けるのは凄いっスね
    文体も書き慣れた雰囲気を感じる……もしかして小説の賞とか受賞したタイプ?

  • 51二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 16:59:59

    な…なんやこの平和なSSスレは…
    もしかして事件も何もない平和なタイプ?
    参ったなァ黒の組織SSを思い出して
    しんみりしちゃったよ

  • 52二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 17:06:06

    お見事です>>33ボー

    やはり私がにらんだ通りあなたはまともな精神を持つ強いいss書きだ

  • 53猿山哲晶25/07/17(木) 18:30:08

    御再開だあっ

  • 54二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:31:09

    キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

  • 55猿山哲晶25/07/17(木) 18:31:09

     タレの匂いに名残惜しさを覚えながら、鬼龍と元太は車上の人となった。まだ13時にもなっていない。

     それからフェ・ラーリを走らせること40分弱。米花町を代表するレジャー施設、トロピカルランドへとやって来た。

    「いつ来てもでっけぇなぁ!」

     一日中、ここで遊び続けるという選択肢もある。それ程に巨大な施設だ。

     かつて、ジェットコースターの乗客が首を切断される陰惨な事件の舞台となったのだが、笑顔で歩き回る客の表情から、それを読み取ることはできない。鬼龍にはどこか間が抜けて見えた。

    「ほら、早く行かねーと待ち時間増えちまうぞ!」

     それにしても、先ほどうな重を放り込んだばかりというのに、これほど跳ね回れるのはどうしたことだろう。若々しさか。自分の失ったものを見たような気分になる、鬼龍であった。

  • 56猿山哲晶25/07/17(木) 18:33:04

     真っ先に連れてこられたのは、看板アトラクションであるミステリーコースター。件の事件が起きたのはまさにここである。閉鎖どころか、事件解決から間もなくして運転を再開したというのだから、呆れるしかない。

     鬼龍と元太は最前列の席へ。仮装した係員に見送られ、コースターは動き出す。

     秒を追うごとに加速するコースター。上昇と下降、激しい方向転換とおどろおどろしい演出により、乗客の悲鳴が木霊する。元太もそれに倣い、腕を振り上げ絶叫を響かせた。

     しかし、鬼龍にとっては退屈極まりない。文字通りレールに敷かれた遊戯ではなく、負ければ命を差し出さねばならない修羅場を潜り抜けて来たのだ。運転の疲れも多少あり、コースターが最後に大きく下降する瞬間、大きな欠伸を洩らした。
     
    「まぁ、お前が楽しかったならいいが」

     そう言いつつ次のアトラクションに行こうとしたその時、鬼龍は愕然とした。

  • 57猿山哲晶25/07/17(木) 18:34:21

     それは、巨大な画面に映し出された写真である。この手のジェットコースターにはよくあることだが、乗客が一番叫ぶ瞬間を激写していた。

     そこに、鬼龍が大口を開けて欠伸をしている様が残されていたのである。弱々しく目を細め、鼻の穴までおっ広げた間抜け面が、隠れようもない最前列で晒されていた。

     周囲の客から控えめな失笑が次々と弾ける。元太に至っては10秒も耐えられず、腹を抱えて大笑していた。画面を破壊してデータを消せるものなら、鬼龍は躊躇いなく実行していたことだろう。


     そのようなアクシデントはありつつも、鬼龍と元太はトロピカルランドでの時間を楽しんだ。

  • 58二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:35:12

    あうっ事件発生じゃないのかぁ!

  • 59二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:38:38

    い…いつ人が死ぬんですかもうおかしくなってしまう

  • 60猿山哲晶25/07/17(木) 18:39:03

     トロピカルランドを後にし、フェ・ラーリは走り出す。時刻はあと30分ほどで17時になろうとしていた。

    「この間見つけたばかりの店に連れて行ってやる」
     
    「ホントか!楽しみだぜ〜」

     元太はそう口にしつつも、眠気を抑えきれなくなったように目を細める。一日中あれほどはしゃいだのだから、無理もない。

    「到着まで暫く寝ていろ。この天気なら、着いた頃にはいい景色を見せてやる」

     鬼龍がそう言った5分後、既に元太は夢の世界に入っている。寝息、というよりふてぶてしい鼾をBGMにして、フェ・ラーリは征く。

    「ポルシェ356Aの黒か。珍しいな」

     行き交う車を観察しながら、走っていると、鬼龍の鼻は潮の匂いを嗅ぎ取った。

  • 61二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:41:11

    めっちゃほのぼのしててリラックスできますね…


    >ポルシェ356Aの黒

    なにっ

  • 62猿山哲晶25/07/17(木) 18:41:11

     鬼龍は夢現の元太の頬を指で突く。

    「おい、起きろ。着いたぞ」
     
    「ふわぁ〜〜〜あ……。あー、よく寝た」

    「寝小便はしてないだろうな?」

    「バカにすんなよ!そんなのとっくに卒業……」

    「お……おお……!?」


    「な、なんじゃこりゃあ〜〜〜っ!!」

     目の前に広がる絶景を目の当たりにして、元太の眠気は彼方まで吹き飛んだ。

  • 63二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:41:12

    >>60

    ポルシェ356Aの黒…ですかい?

  • 64猿山哲晶25/07/17(木) 18:42:13

     それは、どこまでも広がる水平線に、夕陽が今にも沈んでいく瞬間である。

     半分ほどは既に見えないはずなのに、海が鏡となって、未だ真円を保っているかのようだ。
     一日の最後を飾る光が揺らめく波に反射し、まるで光そのものが海となっているとも見える。
     
     さらに上に目を向ければ、薄い光を放つ星々を引き連れた夜の帷が、自分が下りるのを今か今かと待っているのだ。

    「落としたい女がいるならここに連れて来くるといい」

     目を輝かせる元太に軽口を叩くと、鬼龍は歩き出した。

  • 65二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:42:40

    少年探偵団ならともかく元太一人なのが経緯に謎を感じますね

  • 66猿山哲晶25/07/17(木) 18:43:22

     鬼龍が元太を伴って訪れたのは、海沿いにある
    西洋料理店である。海の幸を楽しみながら、窓からは海の景色が一望できる。ただし営業日が不定であるため、鬼龍も中に入れたのはこれが二度目だ。

     それぞれが注文した料理に手をつけ始める。鬼龍はタラのムニエル、元太は大盛りのイカ墨パスタとシーフード・グラタン。
     それから卓の中央には、ホタテのフライが皿に並んでいた。

    「美味いか?」

    「おう!とっても美味ぇぞ!!」

     海産物を軽快に口に運ぶ元太をぼんやりと眺めていた鬼龍は、近くに寄港する船を見つけた。

  • 67二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:44:20

    な…なにっ猿展開がまるでない

  • 68猿山哲晶25/07/17(木) 18:45:48

    「でっけぇ船だなぁ。魚を獲るやつかな?」

    「いや、あれは貨物船だろう。中身は魚かもしれんがな」

    「船……船かぁ」

     元太は少しばかり考え込んだ。

    「な、今度遊びに行く時は豪華客船とかどうだ?」

    「ほう、俺の車に不満でもあるのか?」

    「そんなんじゃねぇって。言葉にしとけばいつか本当になるって博士も言ってたしよ!」

     黒と白に彩られた口で笑う元太につられ、鬼龍も口元を綻ばせた。

  • 69猿山哲晶25/07/17(木) 18:49:58

     鬼龍とフェ・ラーリは、再び酒屋の前にやって来た。ただし、前回からすでに12時間が経過し、米花町の装いは夜のものとなっている。

     何より違うのは、その目的だ。朝とは真逆の用件でここに来たのだから。

    「じゃあな、おっちゃん!今日はありがとな!!」

    「おう。せいぜい夜更かしせずに寝るんだぞ」
     
    「へへっ、ガキ扱いしやがって。またなーーーっ!!」

     元太が酒屋の奥に消えていくのを最後まで見ずに、鬼龍はフェ・ラーリへと戻ってゆく。

  • 70猿山哲晶25/07/17(木) 18:51:26

     日本に幾つかある隠れ家に向けて、車を走らせる。

     やけに静かに感じられた。女でさえ車に乗せることは稀だから、一人きりのドライブなど普段通りのことだというのに。

     横目で、誰も座っていない助手席を見遣る。あるべきものがないような違和感が拭えない。

    「またな、だと?ふんっ……」

     鬼龍のことを恨む人間は多い。数えるのも馬鹿らしいほどに。命を狙ってくることは当然あるだろう。次に元太と会う時、鬼龍は生きていないかもしれないのだ。

     元太はそれを恐れてもいないようである。

  • 71猿山哲晶25/07/17(木) 18:52:28

     バッジのことを思い出した。仮面ヤイバーの特設展でもらったものだ。

     いらないと言ったのに、重ねて受け取るように勧めてくるものだから、つい貰い受けてしまった。憎まれ口を叩きながら。

    「終生大事にしてやるかは分からんぞ」

     
     懐にしまったそれを感じながら、鬼龍は夜道をフェ・ラーリと共に駆けてゆく。


    〜終〜

  • 72二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:54:15

    あの…おじさんが普通に気のいい知り合いのおじさんになってるんスけど………いいっスよねこれで

    自分の兄弟甥っ子息子にもこんな風に接してやれって思ったね

  • 73二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:55:56

    7月のグッドスレ決定ェ!

  • 74二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:57:15

    な、なんやこの…なんや…

  • 75猿山哲晶25/07/17(木) 18:57:29

    御完走だあっ

    ここまで応援してくれた皆さんの温かい心に感動しておりますウルウル

    「もしかして鬼龍と元太が遊ぶSS書いたら面白いんじゃないんスか?」と一発ネタのつもりで書き始めたら、次第に元太が可愛く思えてきて困惑してるのは俺なんだよね

  • 76二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:59:00

    >>75

    絵に描いたようなクソガキの元太と子供に対しては鷹揚なおじさんの絡みは麻薬ですね…

  • 77二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 18:59:53

    見事やな…ところでスターバックさんなんでおじさんはこんな元太と親しいの?

  • 78二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 19:01:53

    おいっ光彦とタフキャラのSSも書いてくれっ

  • 79二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 19:11:20

    >>77

    説明するまでもないから書かれるとも思っていない

  • 80二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 19:19:19

    >>79

    博士の道具みたいやのォ

  • 81二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 19:22:31

    ◇この気のいい親戚のおじさんは…?

  • 82二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 19:23:35

    真面目に考えるとコナンワールドも結構な猿治安だから今後の鬼龍も安泰ではないかもしれないっスね
    奇無意

  • 83二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 19:25:15

    出来たぞ新一 光彦くんがタフキャラになるスイッチじゃ(いつもテンプレ書き文字)

  • 84二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 19:38:06

    もしかして猿山哲昌先生ではなく青渡剛也先生がSSを書けば光彦がひどい目にあうんじゃないスか?

  • 85二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 21:12:10

    こういう日常の一幕みたいなSSは麻薬ですね……荒んだ心が落ち着いちゃって

  • 86二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 21:13:59

    もっと続編よこせ

  • 87二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 06:35:56

    めちゃくちゃ面白かったと言いたいんですよ
    猿山哲晶先生
    まさか鬼龍と元太の組み合わせでここまで
    面白いモノを描くなんて流石にビックリしましたよ
    続編…待ってるよ

  • 88二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 07:31:03

    一発ネタだと思ったのに…こ…こんなの納得できない
    見事やな…

  • 89二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 08:53:16

    こういう事件も何もない平和な一幕もいいと思う反面…
    事件に巻き込まれて犯人を愚弄する鬼龍を見たかったという気持ちに駆られるっ

  • 90二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 10:59:54

    >>89

    ウム…

  • 91二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 16:23:41

    1モブ…続きを頼む

スレッドは7/19 02:23頃に落ちます

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