てめえが〈回避〉スキル持ちのアンリ・クリートか?Part2

  • 1二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 18:10:00

    あらすじ

    隠しボスをしばきあげ、崩壊するボス部屋から壁抜けで脱出したシマキンたち

    “ダンジョンの狭間”と呼ばれる何もない空間に落ちてしまうが「未実装データ」という謎のアイテムを取得した事で生還する

    困惑しつつも、戻れたことを喜ぶシマキンたちだったが、そこにシマキンかアンリが三大巨頭の空席に座るよう促す"強引な男"が現れ、去っていった


    悲しき前スレ

    てめえが〈回避〉スキル持ちのアンリ・クリートか?|あにまん掲示板dice1d3=@3 (3)@1.しばきあげたらあっ2.仲間にしたらあっ3.友達になったらあっシマキンのレベル dice1d100=@22 (22)@レベル84以上で…おおっ 今なら猿先生の弟子畑優似…bbs.animanch.com

    そして私はキャプテン・壁抜けッスル

    このスレを見てる君は選ばれし者

    「最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~」を掴むチャンスを与えられた強き者

    単刀直入に言おう 日本に有るある漫画と小説をぶち読んでほしい

    名は「最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~」前回レベル22になった冒険者で"突然変異の防御無視スキル"を持つ少年だ

    もちろんめちゃくちゃ速い

    しかもこの読書には絶対守らなければならない条件がある

    「最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~」を読むには本かマガポケなどのアプリでなければならない

    違法サイトなどは使用禁止

    なぜなら万が一にも"売り上げ"を傷つけてはならないからだ

    何よりも"売り上げ"が大事なんだ

    ぶっちゃけこのおサイフの中身なんてどうでもいいんだ

    "売り上げ"さえ上がってくれればなぁ

    さぁ読書量に自信のある者は今すぐ書店へ行け

    「最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~」を全巻売り切れさせろ

    急げっ 乗り遅れるな 「最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~」を掴むんだ

    "最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~・ラッシュ"だ

    最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~ | 【第1巻宣伝話】 / マガポケ | 少年マガジン公式無料漫画アプリレアアイテムゲットしまくり!!ステータス爆上げしまくり!!〈回避〉スキルで初回しか手に入らないレアアイテムを無限回収し、底辺から成り上がれ!!病弱な妹のために稼がなくてはいけない少年・アンリ。だが、外れスキル〈回避〉しか持たないせいで、パーティーをクビになってしまう。絶望するアンリだったが、〈回避〉スキルで壁をすり抜けられることに気付き!?pocket.shonenmagazine.com
  • 2二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 18:23:29

    初めはシマキンがここまで活躍するとは思いませんでしたね…マジでね

  • 3二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 18:23:49

    おーっダイマッスルやん
    ムフフ…とっても楽しみなのん

  • 4二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 19:01:51

    いつでも最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~をお勧めできる状態にある

    このスレは本気だ

  • 5二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 19:31:05

    普段はダメダメェな🎲結果なのにここぞという時に当たりを引きまくって負けイベをボボパンしたシマキンを誇りに思う

  • 6二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 19:51:11

    リンク先の公式宣伝マンガ見たらとんでもない“雑コラ・ラッシュ”が襲いかかってきて腹筋がバーストしたんだッ

  • 7二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 20:03:12

    ワルデマールは雷の如く現れて 嵐のように去っていった──

    シマキン「ううん どういうことなんやろうなぁ」

    アンリ「…取り敢えず急ぎましょう 早くみんなの治療をしたいし、エレレートに回復薬を飲ませないといけない時間もかなり不味いです」

    シマキン「そうやな さっさと行くとしよか」


    dice1d2=1 (1)

    1. 二人で行く

    2.アンリを先に妹の所へ行かせる(?の意識or抵抗力アップ)

  • 8二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 21:12:11

    丈夫なはずの鋼の盾が、素手の圧力で粘土のごとくつぶされ、鉄製の剣が小枝のようにポキリと折られる
    武器店の店主、ドンは落ち着いていられなかった
    常連の二人──まだ駆け出しの冒険者たちが、上級冒険者を助けるために、自分たちのレベルをはるかに超えるトランパダンジョンへと向かってしまったからだ
    彼のそばには、苛立ちと不安をぶつけるように握り潰した武器や防具が、無惨な姿で山のように積み上がっていた
    ドン(クソッ…あいつら、早く無事に帰ってこい…!)
    数多くの冒険者が行方不明になっているダンジョンに、レベルが低い二人が潜り、遭難者を救出するなど──
    奇跡という言葉はあるが、たとえ幸運に恵まれたとしても、最低限の実力がなければそのチャンスすら掴めないだろう
    カウンターに頬杖をつき、指でトントン叩きながら、ドンはせめて二人が諦めて引き返してくることを祈った
    その時、店の扉が軋んで開く
    ドン「悪い、今は商売どころじゃ──」
    言いかけた彼の目に飛び込んできたのは、上級冒険者の少女を背負った“レベル1”の少年と、その仲間を背負った彼の友の姿だった
    衝撃に、じわりと涙腺が緩む
    気がつけば、ドンは滝のような嬉し涙を流しながら、二人に駆け寄っていた

  • 9二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 21:29:32

    ムフフ…それはよかった

  • 10二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 22:41:32

    ドンさん=神
    漫画版に登場するキャラでめちゃくちゃいい人なんや

  • 11二次元好きの匿名さん25/07/24(木) 00:42:25

    ムフッ

    このスレを見て「最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~」をマガポケで見るようになったんだぁ

  • 12二次元好きの匿名さん25/07/24(木) 08:10:16

    >>11

    俺と同じ意見だな…

    この作品からは面白さを感じる

  • 13二次元好きの匿名さん25/07/24(木) 14:25:32

    シマキン「いやぁ 待っててくれる人がおるってのはエエもんやのォ」

    アンリ「そうですね…!僕たちの無事をあんなに喜んでくれるなんて…とても嬉しかったです」

    回復薬で傷は治ったものの、未だに意識が戻らない三人をドンに預かってもらい、二人は妹の所へ急ぐ

    シマキン「ほいだらおどれを待ってる妹さんの為にも先に家まで行った方がええんやないケ おお?」

    アンリ「そうですね!では行かせて頂きます」ビュン


    回復薬を握りしめ、風を切るような速度で家へと向かうアンリ

    その胸の中は、達成感で一杯だった

    “永遠のレベル1”と呼ばれていた自分が、恩人の命を救えるほどに強くなれた

    昏睡状態の妹を救うことも、絵空事では無くなった気がする

    アンリ「エレレート…シマキンさんのお陰で、いつかまた…お前の笑顔を見れそうだよ」

    彼はそう呟き、視界に映る住み慣れた家を見据え、心を弾ませながら駆けていった

  • 14二次元好きの匿名さん25/07/24(木) 19:10:22

    保守

  • 15二次元好きの匿名さん25/07/24(木) 22:44:07

    アンリ「ただいまエレレート!」

    いつも通りベッドで眠り続ける妹に声をかけ、荷物を投げ出し回復薬のビンのフタを外しておく

    アンリ「お兄ちゃん今日、大切な人達を助けることが出来たんだ」

    エレレートが薬を飲み込みやすいよう、姿勢を整えながら言葉を続ける

    アンリ「ものすごく強いボスをやっつけてさ…初めてレベルアップまでしたんだよ」

    ビンを手に取り、口元にそっと近付ける

    アンリ「この調子でお前の事も助けられるぐらい強くなるからな!そうさ、シマキンさんとならきっと出来る!」

    自信を持ってそう言い切ると、慣れた手つきで、いつも通りに薬を流し込む

    が─回復薬はすぐに口の端から溢れだした



    アンリ「────え?」

  • 16二次元好きの匿名さん25/07/25(金) 00:25:15

    はうっ

  • 17二次元好きの匿名さん25/07/25(金) 07:06:31

    いやああああ (PC書き文字)

  • 18二次元好きの匿名さん25/07/25(金) 11:46:10

    (その展開は)あかんやん

  • 19二次元好きの匿名さん25/07/25(金) 13:46:14

    アンリ「あ…ごめんごめん!やり直すねっ」
    たぶん、時間に焦ったせいで飲ませ方を間違えたんだ
    自分にそう言い聞かせながら、溢れたぶんを拭き取って、今度はもっと慎重に回復薬を飲ませる
    再び薬液が彼女の口に流れ込むが、すぐにその端からこぼれ出し、顎を伝ってベッドに滴った
    ぞわり、と全身に悪寒が走る
    アンリ「冗談だろ…飲んでよ、頼むから…」
    祈りながら妹の唇に瓶を押し当て、ゆっくりと傾ける
    しかし結果は同じだった
    エレレートの喉は動かない
    アンリ「なんで…なんでだよ!」
    急いで胸に手を置いて、心臓が動いているか確かめようとする
    僕の張り裂けそうなほどに脈打つ心臓に対して、エレレートの胸に鼓動はなかった
    体こそまだ温かいものの、その程度の事はなんの慰めにもならない
    アンリ「飲んでくれ、頼む…お前を…お前を失いたくないんだ…!」
    回復薬の匂いが部屋に広がり、僕の涙が彼女の頬に落ちて薬と混ざった
    もう何度目かわからない 同じことを繰り返し、彼女の口元に薬を押し当て、溢れる液を拭い、また注ぐ
    アンリ「生き返ってくれ…お願いだ…」
    僕の手には、重症さえたちまち癒す回復薬の瓶が握られている
    でも、それはもう無意味だと、心のどこかで分かっていた
    吐き気がして、うまく立てない
    膝から床へと崩れ落ちた
    ただ、呆然としながら、エレレートの顔を見つめる
    そこには、静かな絶望があった

  • 20二次元好きの匿名さん25/07/25(金) 15:11:58

    これでも私はロリコンでね
    エレレート 君の状態を徹底的に観察させてもらったよ
    その結果この状態は嘘だと思い込み私の精神を守る事が大事だとわかった

  • 21二次元好きの匿名さん25/07/25(金) 22:23:30

    家の扉が開かれる
    もう日の落ちきった暗い部屋を、謎のアイテムである【未実装データ】の淡い輝きだけが、薄ぼんやりと照らしていた
    シマキン「ふーっ ようやく着いたのォ…おお?灯りもつけんでどうしたんや?」
    近付いてくる足音に気がつき、振り向いたアンリの頬を流れる涙を見て、彼の動きが止まる
    シマキン「…どうしたんや」
    アンリ「ついさっき妹が死にました」
    シマキン「な…」

    『妹の為に頑張ってるそうやないケ…尊敬するでッ!ほいだらおどれに協力したろか あ───ん?』

    アンリ「…初めて出会った時、そう言ってくれたシマキンさんなら解ってくれると思いますが…
    僕にとってかけがえのない人だった
    僕が…僕がギジェルモのパーティーに居た頃、どんなにいびられようと…めげずに頑張ってこれたのは…
    エレレートがいたからなんです…ッ
    どんなに殴られても、どんなに蹴られても、家に帰れば妹が待ってたから
    エレレートが笑ってくれたから僕は無限に頑張れたんです」

  • 22二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 07:17:07

    シマキン「……」

    アンリ「約束してた…『お前がずっと笑ってられるように僕がしっかりするから』って…

    エレレートにした約束をどうしたらいいでしょうか…これから先 僕は何のために生きれば…」

    そう言ってアンリはうなだれる

    下がった視線が右手に持った回復薬を捉え、未だ自分の手に握られたビンに意識が向く

    妹の延命の為に命を掛け、身を削りながら手に入れてきたそれに、今は何の価値も見出だせなかった

    アンリ「もうこんなもの…なんの意味もない…ッ!」

    行き場のない感情をぶつけるように、アンリはビンを床に叩きつけようと右手を振りかぶり──

    その瞬間、手首をがっちりと掴まれた

    アンリ「シマキンさん…」

    シマキン「ヤケになったらあかん ちゃんと妹さんに飲ませるためにとっとくんや」

    アンリ「無駄ですよ…間に合わなかった!もう心臓すら動いていないんですッ!!」

    シマキンは無言で手を離すと、エレレートの前に行き、両の掌に気を集め始めた

    シマキン「のう、アンリ

    おどれはワシを信じられんか?」

    自分でも驚くほどにピタリと、震えが、涙が止まった

    アンリ「…いいえ、信じています」

    シマキン「ならそれは大事に持っとくんや

    すぐに必要になるからのォ」


    シマキンの活法の腕前(50以下の場合シマキンに反動ダメージ)

    dice1d146=7 (7)

  • 23二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 07:18:23

    支援保守

  • 24二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 09:58:58

    島木!ワリァ活法試すらしいけど
    今度も命懸けになりそうやのォ

  • 25二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 15:34:21

    シマキン(〈菩薩拳〉を会得する事で知った“気”という概念に加え、格上を倒した事による大幅なレベルアップ…その結果得た新たなスキルを使う)

    シマキン(しかし…まだ覚えたてもええ所や

    〈菩薩拳〉を放ったときの凄まじい消耗から考えても、命懸けになるやろうな…)

    シマキン「アンリ!ワシのカバンに入っとる金でありったけの回復薬をこうてきてくれや!」

    アンリ「…良いんですか?」

    シマキン「ワシはお前のなんや?親友やないんかい」

    アンリ「…ありがとうございますっ!」

    目にも止まらぬ速さで走っていく友を背中に、シマキンは意識を集中させる

    シマキン(殺法すなわち活法なり…

    エレレート…ワシに力を貸してくれ!)

    胸の前に構えた両手の間に、魔力とは異なる、異質な力が渦巻いて行く

    練り上げられ、可視化するほどのエネルギーとなった気の球体を右手に宿し、彼女の胸目掛けて振り下ろした

    シマキン「活法〈気動波〉!!」ボワッ

    シマキン「心臓よ動けっ!!」


    復活に必要な総回復量

    dice1d200=88 (88)

    シマキンの回復

    dice1d100=63 (63)

    シマキンへの反動ダメージ

    dice1d93=72 (72)

  • 26二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 17:11:30

    なにっ意外といいセン

  • 27二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 17:45:06

    初めてのスキルでここまでの効果を出せるシマキンに勲章を与えたいよ
    しゃあけど使用ダメージがデカすぎるわ

  • 28二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 22:42:31

    心臓へと気を叩き込んだ瞬間、止まっていたエレレートの鼓動がかすかに動き出した
    シマキン(おっ 反応があった!効いてる…効いてるぞっ…あががっ!?)
    喜んだのもつかの間、強烈な倦怠感が全身を襲う
    右手から、まるで命そのものが吸い取られるような感覚が広がった
    シマキン(な…なんや…右の掌に体力が吸い込まれていく…)
    額に冷や汗が滲み、膝がガクガクと震えだす
    〈気動波〉の力は、彼女の心臓を動かす一方で、彼自身の生命力を容赦なく奪っていた
    シマキン(くそっ…まだや…! 安定するまでは続けんと…)
    歯を食い縛り、シマキンはスキルを持続させながら、必死に圧迫を続ける
    だが、右手から放出される気はさっきよりも弱々しく、まるで彼の命が燃え尽きようとしているかのようだった

  • 29二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 05:42:01

    いけーっ アンリの親友!!

  • 30二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 13:40:06

    (このままじゃ)あかんやん

  • 31二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:09:54

    保守もいけるしな(ヌッ

  • 32二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:22:10

    部屋の扉が勢いよく開き、アンリが息を切らして戻ってきた

    両手に抱えた回復薬のビンが、ガチャガチャと音を立てる

    アンリ「シマキンさん! 買ってきま…シマキンさん!? 大丈夫ですか!?」

    シマキンの顔は青ざめ、額を汗が伝っていた

    それでも、彼はアンリに力強い笑みを浮かべる

    シマキン「へ…へへ、なんやその心配そうな顔は!

    ワシはそんなにヤワとちゃうわ 身も心もごっつうタフなんやっ 」

    虚勢を張り、弱々しいながらも気を練り上げ、圧迫と同時に心臓に送り続ける

    エレレートの胸が再び震え、微かに上下した

    だが、彼女の顔にはまだ生気が戻らない

    空いた左手でアンリが開封した回復薬を受け取り、一気にあおる

    気の消耗に対してはあまり効果が無いのか、気休め程度のものだったが、今にも崩れ落ちそうな体を支えるための命綱として必須だった


    回復薬の個数

    dice1d10=8 (8)

    回復薬の効果

    dice1d10=7 (7)

  • 33二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 07:18:46

    そんな事を何度繰り返したのだろうか
    視界がぼやけ、身体が鉛のように重い
    もはやシマキンの顔色は、彼女と同じ死人に近い青白さにまでなっている
    それでも、彼は手を止めなかった
    アンリ「シマキンさん…! もうやめてください! これ以上やったら、あなたまで…!」
    シマキン「じゃかぁしいっ! お前は…エレレートを諦めるんか!?
    ワシがなにがなんでも助けたる これくらいのことでケツ割ってたまるかいっ」
    アンリの言葉が喉で詰まる
    彼は唇を噛み、涙を堪えながら、シマキンの背中を見つめた

  • 34二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 08:41:32

    辛うじて回復薬の数と効果が上振れて良かったですね…マジでね

  • 35二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 14:03:39

    薄れていく意識の中で、シマキンはオーロイアの事を思い出していた

    限界を超えて魔力を行使し、己の命や魂までも注ぐ程に力を尽くして役目を果たした“ガラボゾの魔女”の事を

    シマキン(…魂…魂か、そうか…!)

    この瞬間、彼は自分に足りなかったものが何かを理解した

    アンリから聞いていた、目の前の少女の事を思い出す

    兄に似て家族思いで、眩しい笑顔を見せていた優しい少女の話を

    この活法が上手く行った所で、彼女が昏睡状態から目覚めるわけではない

    しかし、シマキンはエレレートが目覚め、アンリと笑顔で抱き締め合う、そんな光景を強くイメージする

    シマキン(ああ──そうなったら、ええやろうなぁ)

    苦痛が薄れ、集中力が増す

    胸を圧迫する度に漏れだしていた気のロスが極限まで減り、余すこと無く心臓へと伝わり始めた

    明確なイメージを掴み、悟りを得た事で、彼の活法の腕が飛躍的に上昇する

    シマキン「オーロイアさんが教えてくれたっ!

    “気”を入れるんやない!!“魂”を入れるんやと!!

    さぁ!還ってこいやっ!!」


    復活に必要な総回復量

    あと25

    シマキンの回復

    dice1d100=12 (12)

    シマキンへの反動ダメージ

    dice1d93=55 (55)

  • 36二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 14:49:46

    あかんやん

  • 37二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 21:07:44

    保・守っ

  • 38二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 22:09:36

    や⋯ やばいなぁ 薬⋯ 沢山なきゃ終わってたよ

  • 39二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 07:07:34

    エレレートが生き返るのが早いか、シマキンが力尽きるのが早いか──

    文字通り命を賭けた大勝負だった

    回復薬も彼女の分を除いて飲み尽くし、もう後がない

    だが同時に、彼は手応えも感じていた

    シマキン(あと少し…!もう一押しなんや…!)

    しかし、その“一押し”が遠い

    効率化出来たとはいえ、活法にも限界はある

    捨てたはずの焦りがじわりと精神を蝕もうとしたその時──

    アンリ「シマキンさん!頑張って下さいっ!!」

    涙ながらの声援が、心にかかったモヤを打ち消す

    シマキン(やっぱ応援してくれるダチが居るのはエエもんやのォ)

    どこからか湧きだしてきた力を込めて、彼は圧迫を続け、そこで気付いた

    シマキン(最後の一押しは──これや)

    かちり、と必要なピースが全て嵌った音がした

    シマキン「アンリ!おどれも妹さんに呼び掛けるんや!」

    アンリ「…はい!」

    妹の手を握り、必死に呼び掛け始めたアンリを見ながら、シマキンも最後の力を振り絞る

    アンリ「エレレート!還ってこい!!」

    シマキン「さぁ!目覚めるんやエレレート!!」


    復活に必要な総回復量

    あと13

    シマキンの回復

    dice1d100=23 (23)

    シマキンへの反動ダメージ(残り体力29)

    dice1d93=73 (73)

    成功で?の意識&抵抗力アップ

    失敗で…

  • 40二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 07:10:24

    シマキンが死んだぁっ!

  • 41二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 09:30:58

    ククク"蘇生"ってのは痛みを伴うものなんだ

  • 42二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 09:32:07

    なんじゃあこのクソみてえなマグカップスレ亜種は

  • 43二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 11:02:23

    >>42待てよ

    「最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~」はなかなか面白いんだぜ

  • 44二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 16:49:52

    い…今更だけど反動で死んだりするようなシビアさとか持ってないよね?
    この世界の人間かなりタフだし気絶とか

  • 45二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 17:03:03

    >>44

    ただでさえ悲しき過去…なアンリが自分の家族の為に親友が荼毘に伏したらいくらなんでも辛すぎルと申します

    しかも意外と妹が植物状態から戻るわけでもない…

  • 46二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 22:39:15

    シマキンが最後の力を叩き込んだ一瞬、部屋が白い光で溢れたような気がした
    錯覚か?と思う暇もなく、〈気動波〉の反動が襲いかかる
    シマキンの身体がぐらりと揺れ、床に膝をついた
    力は全く入らず、意識が途切れそうになりながらも、彼はアンリに目を向ける
    シマキン「今…や…はや…く」
    アンリはハッとして、最後の回復薬に手を掛ける
    シマキンの言葉に押されるように、エレレートの口元にビンを近づけ、慎重に薬を流し込む
    先ほどまで受け付けなかったのが嘘のように滑らかに喉が動き、薬液が全て飲み込まれた
    そして、エレレートの体がぼんやりと光り始める
    それは回復薬が効果を発揮しているという証拠であり、彼女が今生きているという証でもあった
    心臓の鼓動が、弱々しくも確かに、動きを刻み始める
    アンリはエレレートの手を握り、涙をこぼしながらその感触を確かめた
    アンリ「エレレート…! やった…た…助かったぁ…」
    シマキンはその様子を見届け、力なく笑った
    シマキン「よしっ…やって…やった…で…」
    その瞬間、シマキンの身体が前のめりに崩れ落ちる
    アンリが瞬時に駆け寄り、彼を支えた
    アンリ「シマキンさん! シマキンさんっ!」
    なぜか遠くから聞こえる友人の声を聴きながら、彼の意識は闇へと沈む
    ただ、その口元には微笑がたたえられていた

  • 47二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 23:22:12

    御復活だぁ
    しゃあけどシマキンもダウンしたからバランスは取れてるよね

  • 48二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 07:36:37

    聖人を超えた聖人
    最初のダイスの三択で当たったのが最も神に近い性格なのが効いてるんやっ
    本当によかったのん…

  • 49二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 08:30:53

    シマキンが聖人を超えた聖人すぎてこんな性格だったから無名だったんじゃないスか

  • 50二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 14:02:37

    >>49

    お前住む場所を間違えたな

    ガラボゾは超好戦的フルコンタクト猿治安だ

    ってぐらいアレな町だからそんな所で善人が頑張るのは向いてなかったのかもしれないね

    まぁダンジョンが多いからバランスは…ウム…

  • 51二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 22:34:07

    意識が、ゆっくりと浮上する
    重い瞼をわずかに開けると、薄暗い部屋に朝の光が差し込んでいるのが見えた
    身体はまだ鉛のように重く、ベッドから起き上がることは出来そうにない
    シマキン(ワシ…生きとるんか…ほへー デンジャラスな人命救助やったなァ)
    視線をそっと動かすとすぐ側にアンリがおり、シマキンのベッドに寄りかかるようにして、静かに眠っていた
    その顔には疲れの色が濃く、目元には涙の跡が残っている
    追加で買ってきたのだろうか
    手に握られた空の回復薬のビンが、床に転がり落ちそうになっていた
    シマキン(もう金は無かった筈やが…ああ、前にアンリが大事に使っとった盾と【未実装データ】が見当たらん …売ったんかな)
    隣のベッドに目をやると、そこにはエレレートが横たわっていた
    彼女の胸は、微かだが確かに、上下を繰り返している
    彼が繋いだ命の灯は点り続けているようだった
    シマキンは深い安堵の息を吐き、昨晩の出来事を振り返った
    シマキン(活法…たしかに手ごたえはあった…
    だけどワシの未熟な〈気動波〉だけでは妹さんは蘇生できなかったやろな)
    彼は穏やかな目でアンリとエレレートを交互に見つめて、こう結論付けた
    シマキン(やっぱ愛が“最強”やな)

  • 52二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 23:20:39

    未実装データはどっちに入ったんスかね

  • 53二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 07:33:12

    (シマキンが無事で)ふーっよかった…ありがとうございました
    『【未実装データ】が見当たらん』
    えっ

  • 54二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 13:40:31

    アンリ「ジャーン シマキンさん 食事を持ってきましたよ 小麦胚芽で作った特製ブタマンとブロッコリーのスープですっ
    もちろん味付けはカラシ醤油で」
    シマキン「ムフフ 相変わらず嬉しい献立やのォ ほいだら生命を、いただきます!」
    ほのかに甘い小麦の香りに鼻をくすぐられ、タレを付けるなり食欲のままにいっきにかぶり付く
    粗挽きの豚肉のしっかりとした歯応えと、刻まれたタマネギのシャッキリとした食感…2つの食材が織り成す甘みと旨みは噛めば噛むほどにあふれ出す
    シマキンは幸せを味わいながら、数日前の事を思い出していた

    シマキンが意識を取り戻してすぐの事、それに気が付いたのか、アンリが目を覚まし、ものすごい勢いで感謝をされた
    シマキン(たぶん、一生分のお礼を言われたんやないかな…)
    アンリの涙と感謝は、シマキンが「いつか妹さんが目を覚ます時まで取っておけ」と言うまで止まることが無かった
    今は病み上がりと言うことで、アンリの家で厄介になっている
    いや、正確には『帰らせてもらえなかった』のだ
    アンリは「せめて万全になるまで看病させてください!」と頑なに譲らず、シマキンはその熱意に押し切られた形だった
    シマキン(気にせんでええんやけどのォ)
    食後のコーヒーをすすりながらそう考えていると、アンリが真剣な表情で話しかけてきた
    アンリ「シマキンさん…コーヒーって苦いでしょう」
    シマキン「おお?そうやな」
    アンリ「人生の味ですよね」キリッ
    シマキン「ブフォッ 飲んどる時に笑がすなあ ババタレがあ───っ」
    アンリ「あははっごめんなさい!」
    シマキンはコーヒーをこぼしかけたカップを慌てて置き、笑いながら咳き込んだ
    アンリの無邪気な笑顔が、朝の光に照らされて輝いている
    シマキン(…この笑顔を守れて、ほんまによかったのォ)

  • 55二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 17:55:06

    ムフフ… それはよかった

  • 56二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 22:08:52

    これでも私は慎重派でね
    未実装データ 君を徹底的に観察・分析させてもらったよ
    その結果よくわからない物なので取り敢えず店に売る事が最善だとわかった

  • 57二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 22:27:07

    >>56

    未読蛆虫のワシ「おーーっこれはおしゃれやのォなんか高く売れそうなのん」

    漫画を見てきたワシ「どわーっあかんやんあかんやん」

  • 58二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 02:03:10

    いやー命を救うって大変やのぉ
    ですねぇ

  • 59二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 08:01:37

    楽しい時間はあっという間に過ぎ、夜が訪れた
    薄暗い部屋には、ランプの炎が静かに揺れている
    シマキン「もうねんねや 早く寝ないと朝起きるのが辛くなるで」
    アンリ「そうですね では、火を消しますよ」
    シマキン「おうっ ほな、おやすみ」
    アンリがランプの火をそっと消すと、部屋は柔らかな闇に包まれた
    シマキンはベッドに横になり、心地よい暖かさとともに眠りへと誘われていく
    だが、意識が沈む直前、ふと疑問が頭を掠めた
    昼間、アンリに追加の回復薬代をどうやって捻出したのか尋ねた時のことだ
    彼は、やはり以前使っていた盾を売っていたそうだったが、【未実装データ】の方には覚えは無いらしい
    シマキン(なんや不安定そうなアイテムやったし…消えたんかな?それとも誰かに盗まれたか
    …まあええやろ
    明日はあのラピド・ダンジョンで初回クリア報酬と魔物素材でアンリと一緒にアホほど稼いどくか、
    それとも別の“習得の書”を狙うか…あ──っ はやく明日にならんかのォ
    …まぁそのためにもさっさと寝るとしよか)
    寝る前に余計な事を考えるもんやないな、と思いながら、シマキンは意識を手放す
    今度こそ、彼の意識は夢の世界へと落ちていった


    「キヒヒ…」
    暗闇の中、何者かがゆっくりと身を起こす
    それがこぼす小さな笑い声は、まるで今の平穏な時間を嘲笑うかのような、不気味なものだった

  • 60二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 08:38:12

    あかんやんあかんやんあかんやんあかんやん

  • 61二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 14:09:49

    朝の静けさを切り裂くように、アンリの声が響く
    アンリ「シマキンさん!起きて下さい!」
    シマキン「ファ〜眠い…朝っぱらからどうしたんや?」
    アンリ「エレレートが…エレレートが居なくなったんです!」
    シマキン「なにっ しかし…おどれの妹さんは昏睡状態の筈じゃ…」
    アンリ「そうですね…でも誰かが家に入ってきた様子もないし、妹が意識を取り戻して出ていったとしか…」
    シマキン「〈気動波〉での蘇生がショック療法にでもなったんか…?喜ばしい事なんやろうが心配やな」
    アンリは頷きながら、震える声で続けた
    アンリ「僕…探してきます」
    シマキン「ちょうまてや ワシも手伝うで」
    アンリ「え?た…立てるんですか」
    シマキンはニヤリと笑い、ベッドから立ち上がった
    まだ身体には鈍い痛みが残っていたが、気力で押し切る
    シマキン「あったり前やん ワシはタフが売りもんなんやで!
    家の回りは確認したんか?長い時間眠ってたそうやし…」
    アンリ「ええ…誰も居なかったし、足跡とか、何かの痕跡も有りませんでした」
    シマキン「ほいだらまずは聞き込みやな…一人で出歩くには目立つやろうし、早速二人で手分けするで」
    アンリ「はい ありがとうございます…」
    アンリはようやくエレレートが目覚めた、妹の笑顔がまた見られるかもしれないと思う反面……得体の知れない”不安”に駆られていた

  • 62二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 21:53:12

    アンリ「シマキンさん!ベネロダンジョンに向かう少女を見たという情報が掴めました!」
    シマキン「おおっ でかした!ほいだら早速そこへ行ったろか あ───ん?」
    ◇ベネロダンジョン 入口
    アンリ「全然人が居ませんね…」
    シマキン「そうやな ここの初回クリア報酬の〔結晶のかけら〕はハナクソほども役に立たんらしいし…人気不全
    やはり報酬の旨いダンジョンには勝てへんか」
    会話しながらも周囲にしっかりと意識を向け、ダンジョンの内部へと二人は入って行く
    シマキン「…なんや人だけじゃなくてモンスターまでおらんのォ」
    アンリ「流石におかしいですよね…エレレートを探してしらみ潰しにダンジョンを進んでるのに一匹も遭遇しないなんて…」
    違和感を感じながらも進むと、開けた場所に出た
    そこで二人は息を飲む
    アンリ「エレレートっ!!」
    視界にその光景が映った瞬間、アンリとシマキンは全力で走り出していた
    ついに妹を見つけ出したから──ではない
    こちらに気付いて振り向いた彼女の背中に、狂暴な魔物が飛びかかる寸前だったからだ
    止めるにはあまりにも遠すぎる距離
    それでもアンリは力を振り絞り、どうにか目前までたどり着くが──
    ただ、無惨な光景を間近で見ることになっただけだった
    必死に伸ばした彼の手は虚しく空を切る
    獣の牙が肉を引き裂き、骨を砕くその光景が、奇妙なほどに長く感じた
    目の前で起こった受け入れがたい現実、それに対して彼は立ち尽くすしか無かった

  • 63二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 07:11:09

    マサイの戦士だまされない
    だまされない

  • 64二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 13:54:23

    びしゃり、と飛び散った血液が顔に付着するが、アンリは反応する事すら出来ない

    目の前の出来事は、それほどまでに衝撃的だった

    エレレートがモンスターに喰われた──のではなく、逆に彼女が自分に襲いかかってきたモンスターを、腕を魔獣の牙のように変化させて喰い殺したからだ

    シマキン「な…なんやこらあっ どうなっとるんじゃあっ」

    シマキンの声に我に帰ったアンリが、後ろに飛び退って叫んだ

    アンリ「誰だ…お前ッ!!!

    お前…ッエレレートじゃないな…ッ!!」

    その言葉に、エレレートの姿をした“何か”が、笑みを浮かべる

    しかしそれは、かつての優しい妹の笑顔とは全く違う、嘲るようなもの

    馬鹿丁寧に、まるで舞台の役者のようにお辞儀をしながら、それはエレレートの声で自己紹介を始めた

    「キヒヒ…初めまして皆々様方 そしてこの世界 “名称未定ちゃん”です

    名前が無いから名称未定ちゃんです」


    名称未定のアンリへの好感度

    dice1d100=43 (43) +20(最低保証)

    名称未定のシマキンへの好感度

    dice1d100=43 (43) +20(最低保証)

  • 65二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 15:21:23

    好感度がどちらも同じとは…見後やな

  • 66二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 22:03:40

    アンリ「ふざけるな
    お前は誰だ…なぜその姿をしている」
    アンリの問いを無視し、名称未定は何かに気付いたかのように表情を明るく変えて、二人に駆け寄ってくる
    「ああ~!!!名称未定ちゃん あなたたちには感謝しているのですよっ」
    シマキン「感謝?」
    訝しげな表情をするシマキンたちを見て、彼女は唐突に片手を自身の胸へと突き刺す
    シマキン「!!」
    アンリ「な…なにを…!!」
    血は一滴も出なかった
    立て付けの悪い引き戸でも開けるかのように、彼女は力を込めてゆっくりと自分の胸をこじ開けていく
    バキバキッと奇妙な音を立てながら、開かれた肉体の中にあったのは、とても奇妙で──けれど見覚えのある物体だった

    「我が名は“未実装データ”」

    「中身だけ作られて捨てられたレイドモンスターなのです
    この姿は側にあった肉体がしばらくの間事切れていましたのでもらっちゃいましたっ」

    レイドモンスター。
    一つのパーティーでは到底倒すことなど適わない人類の厄災
    ここに現れる…!!

  • 67二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 22:31:55

    このレスは削除されています

  • 68二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 22:33:07
  • 69二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 07:28:14

    >>66

    ふうん TOUGH風に表現するとこういうことか

  • 70二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 10:29:04

    >>69ヌーカ

    勢いで笑わせないでくれる

  • 71二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 13:35:46

    シマキン(妹さんが“レイドモンスター”?)
    あまりの事に愕然とする二人に対して、彼女は夢見ごこち、といった雰囲気で語りだす
    「くらいくらいダンジョンの狭間に捨てられて、そこでいつか広い世界を暴れまわる事を願っていました
    あなたたちのお陰で、ついに実現することが出来ちゃいますっ」
    アンリは拳を震わせ、声を絞り出した
    アンリ「人格を乗っ取ったということか……?」
    「んー、確かにそれは非常によろしい表現ですね こんどから、名称未定ちゃんもその表現を使うことにします」
    アンリ「──ッ!」
    彼女の軽薄な態度に、アンリの怒りが爆発しかける
    だが名称未定は構わず言葉を続けた
    「でも驚きましたよ 死体だと思って入っていたのに、そこのでっかいお兄さんが蘇生しちゃうなんて…刺激的でファンタスティックな経験でしたっ
    名称未定ちゃんのお陰で死体の鮮度が保たれていたとは言えど、いや───っ立派ですね
    立派過ぎてちょっと怖いですね」
    わざとらしくパチパチと拍手をする名称未定に対して、アンリは怒りを顕にした
    アンリ「その体を妹に返せ」
    「あはっ、この体の元持ち主の親族の方ですか?それは大変心中お察しします
    でも、無理なものは無理です だって、もう私のものですからね~っ!
    人間の体、意外と馴染めば悪くないもんです 最初は人間の体ってどうなんだろう~って、不安だったんですけど」

  • 72二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 16:01:38

    どこまで外道なんだてめぇは

  • 73二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 22:24:08

    アンリ「ふざけ──ッ!」
    シマキン「ちょうまてや!不用意に近付かん方がええ!」
    感情のままに飛び出そうとした彼を、シマキンが咄嗟に制した
    アンリ「なんなんだよ、お前は……」
    彼の言葉で冷静さを少し取り戻し、力無く呟くアンリ
    それ対して、彼女は呆れたように言葉を返した
    「だから、名称未定ちゃんってさっき自己紹介したじゃない……あー、名称未定ちゃん、あなたが聞きたいことをとっても理解できました
    はい、名称未定ちゃんは人間ではありません 仕方なく、人間の姿をあまんじて受け入れていますが、ほんとうはもっとかっこいい姿になる予定だったんです」
     少女は理解したとばかりに説明を始めては、彼らから距離をとるように後ろに下がる
    「でも、名称未定ちゃんの固有の能力はそのままだったので、その点だけは感謝してもいいのかなー、って考えています」
     そう言うと、少女は両腕を膨張させ、巨大な触手のような姿へと変化させた
    「名称未定ちゃんの“モンスターをつくってあそぼ”
    ユニークスキル《モンスター創造》──があれば誰でも簡単っ!
    まず用意するのは新鮮な死体っ レベルが高いほど強いモンスターを作れるよっ!
    今回は事前に取り込んでおいたものを使いましょう!」
    彼女は楽しそうに解説しながら、両手の触手を重ね合わせ、モゴモゴと不気味に動かし始める
    二人には、彼女が何をしようとしているのか検討もつかなかった
    「えっと、こうやって、こうやって……よしっ
    名称未定ちゃんのスキル《モンスター創造》によって、なんと完成しましたー!」

  • 74二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 07:10:27

    じゃじゃーん、と両手を広げてエレレートと同じ姿をした少女は喜ぶ
    「えっと、名前は……えっと、そっか名称未定ちゃんと同じで決まっていません! だって、今完成したばかりですからね
    だけど、私は責任がある親だから、愛をもって名前をつけてあげましょう」
    そう言った彼女の触手からでてきたのは、一体の巨大な化物だった
    筋肉が異様に膨れ上がり、様々な生物をごちゃ混ぜにしたかのようなその姿は、見ているだけで寒気がする
    「う~ん…攻撃力の高いモンスターが多めだったお陰で力が特に強くなったし…初めて作るコですので…
    そうだっ あなたの名前は──」
    「パワーちゃん1号ですっ
    さぁパワーちゃん1号 ガラボゾの町を襲いに行きましょう!」

  • 75二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 13:48:45

    なにっ 灘神影流コピペ術を継ぐ者
    まっ猿先生の高い画力も継いでるからバランスは取れてるんだけどね

  • 76二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:29:15

    シマキン「何を言うとるんじゃあっ そないなことして何になんねん!?」
    「使命を果たすだけですよ ただし人間ではなくモンスターとしての使命をね!」
    アンリ(どうすればいいんだ…!)
    名称未定の凶行を止めるためには戦わなければならないが、彼女を傷つけることは妹の体を傷つけることにもなる
    それに、倒したからといって人格を取り返せるとは限らない
    ダンジョンの出口の方向へと向かう怪物と少女を睨みながらも、身体が迷いで動かない
    その時、一人の男が怪物たちの前に立ちふさがる
    「あはっ なんのつもりです?」
    彼は油断無く二匹に視線を配りながらも、アンリに向けて静かに語りだした
    シマキン「自分が強くなって、はじめて他人にやさしくなれる 技を覚えたのは人を殺す為やない 人を殺さんようにする為や!
    ワシは妹さんを傷付けへんし、誰かを傷付けさせもせんつもりや
    だからな、アンリ ちょうお兄チャンにつきおうてや」
    アンリ「…!」
    彼は背負っていたリビングメイルの盾を装備し、ナイフを鞘から抜き放つ
    アンリ「はい! お願いします シマキンさん!」
    その瞳に、迷いはもうなかった

  • 77二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 23:44:45

    「キヒヒ…盛り上がっている所失礼ですが無駄ですよ 名称未定ちゃんは────

    超超超超超超超強いのですっ

    あなた達程度の冒険者の相手は─パワーちゃん1号で十分ですっ」


    パワーちゃん1号

    dice1d1000=569 (569)

    シマキン

    dice1d146=2 (2) +125(〈必滅ノ拳〉での防御無視とスキルの威力)

    -dice1d44=38 (38) (活法〈気動波〉の後遺症)

    アンリ

    dice1d200=87 (87) +100(〈必絶ノ剣〉での防御無視)


    パワーちゃん1号に敗北で本編寄りに

    パワーちゃん1号に勝利で…

  • 78二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 00:46:01

    このレスは削除されています

  • 79二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 00:47:01

    最高値出さないと勝てないんスけど…

  • 80二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 07:49:23

    うーんシマキンは病み上がりだから仕方ない本当に仕方ない

  • 81二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 13:46:44

    シマキン(コンディションこそ最悪やが…それでも諦めへんでっ)


    dice1d6=2 (2)

    1. シマキン猛攻〈必滅ノ拳〉の一撃

    2.アンリ猛攻〈必絶ノ剣〉の一太刀

    3.パワーちゃん1号にダメージを与えるが再生される

    4.アンリに大ダメージ(回避ダイスあり)

    5.シマキンに大ダメージ

    6.シマキン&アンリにダメージ

    https://bbs.animanch.com/arc/img/5239368/182

  • 82二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 14:36:33

    名称未定の命令とともに、振り下ろされた巨腕がダンジョンの床に突き刺さる

    凄まじい轟音と衝撃が広間に響き渡った

    その一撃の威力は、攻撃をまともに受ければ即死もあり得ることを如実に示している

    シマキンは素早く横に飛び、地面を転がりながら叫んだ

    シマキン「名前通りに破壊力がええわ…しゃあけど…残念ながら速度がないわ!アンリ!」

    巨腕を床から引き抜こうとする一瞬の硬直──その刹那を、彼は見逃さなかった

    アンリ「〈必絶ノ剣〉ッ!」


    dice1d569=77 (77) ダメージ

    敵の自己回復量

    dice1d100=95 (95)

  • 83二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 14:53:47

    うわっ原作通りのタフさやん あわわこれはキツいわ

  • 84二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 16:03:12

    シマキンがいる事で僅かな変化はあるが大筋を返させないダイスさんに好感がもてる

  • 85二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 21:59:56

    一瞬の内に腕を登り、頭部へと接近したアンリが刃を振るう

    頭を真っ二つに分かたれた怪物ががくりと膝をついた

    アンリ(どうだ…?)

    急所を切り裂いたとはいえ、油断はできない

    動かなくなったパワーちゃん1号を観察するが、そこで違和感に気が付く

    アンリ(さっき地面に刺さった腕が…溶けてる?)

    シマキン「アンリ!下や!」

    彼が視線を落とすと、片足にスライムのような不定形の物質が、太い紐のように絡みついていた

    アンリ(なっ…!?)

    先ほどまで死んだように動かなかった怪物が、歪んだ笑みを浮かべ、片腕を勢いよく振り上げた

    ドンッ! と地面が弾け、割れた石の隙間から怪物の伸びた腕が現れ、アンリの足を強く引く

    そのまま彼は宙吊りにされ、身動きが取れなくなった

    アンリ(地面の下から手を伸ばして足を掴みに来ていた…!?

    名称未定と同じように身体を変形させられるのかッ!)

    動けないアンリに向かって、怪物がその豪腕を振りかぶる

    シマキン「危ない!!」ダッ


    dice1d100=99 (99)

    80以下で二人に大ダメージ

    80以上でシマキンのガード成功

    90以上で新たなスキル獲得

  • 86二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 04:37:56

    なにっ!99

  • 87二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 09:43:03

    肝心な時に役に立つ男としてお墨付きを与えたいよ
    80以上出さないとやられるしんどい所でほぼ最高値出してるんだよね 強くない?

  • 88二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 12:53:38

    以上以下超過未満は適切に使い分けろ…鬼龍のように

  • 89二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 15:47:24

    あざーっス >>88さんのおかげで以下・未満とかの使い分けをしっかり理解できたっス

    殺せ…アホほどミスりまくっとったワシを殺してくれ…

  • 90二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 16:05:40

    拳が放たれる寸前、駆け寄ったシマキンが触手に向かって飛び上がる

    シマキン「しゃあっ 届いたで!」(ガシッ

    アンリの足を捕らえた触手を掴んだ瞬間〈必滅ノ拳〉を発動させた

    赤黒いオーラが手を包み、敵の防御を無視する力が宿る

    それを利用して触手を一息に握り潰し、攻撃の射程圏外までアンリを突き飛ばす

    アンリ「シマキンさん…ッ!」

    彼を助けた代償として、怪物の拳が、最早避けようのない距離まで迫っていた

    シマキンを助けたくても、足に巻き付いたままの触手の残りがそれを許さない

    「キヒヒッ あの世行き決定ェ」


    怪物を超えた怪物の、岩をも砕く一撃がシマキンの身体に直撃し───


    dice1d2=2 (2)

    1. 回避

    2.回避+反撃

    反撃時

    dice1d569=186 (186) ダメージ

    敵の自己回復量

    dice1d100=5 (5)

  • 91二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 20:00:16

    パワーちゃん1号「な…なにっ 当たった感触がまるでない」

  • 92二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 22:24:29

    何かを叩き付けるかのような音と、地面を砕く轟音がほぼ同時に響く
    立ちこめる土煙のせいで、彼がどうなったのかはわからないが、想像はついてしまう
    アンリは震える声で彼の名前を呼んだ
    アンリ「シマキンさん…」
    「キヒャヒャヒャヒャ “パワーちゃん1号の攻撃” をまともに喰らったんです もう終わりでしょう」
    アンリ「そんな…返事をしてください!シマキンさん!」
    その瞬間、土煙の向こうから力強い声が響いた
    シマキン「おうっ!」
    同時に「パワーちゃん1号」が苦悶の咆哮を上げる
    名称未定が初めて驚愕の表情を浮かべ、声の方向を見ると、薄れゆく土煙の中から姿を現したのは、無傷のシマキンと、腹部を押さえて悶えるパワーちゃん1号だった
    「えっ なにっ なにそれ?ねーっなんなのですかその穴」

  • 93二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 06:06:58

    おそらくシマキン流”弾丸すべり”を使ったんだァ

  • 94二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 12:22:47

    シマ様〜❤️

  • 95二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 20:28:19

    保守したらあっ!

  • 96二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 21:55:45

    彼女の叫び通り、怪物の腹部には丸い穴がぽっかりと開いていた
    それがボコン と唐突に音を立てて、肉と骨を抉るように範囲が拡大した
    パワーちゃん1号「ガッ…!?」ズウン…
    重い音を立てて、再び巨体が崩れ落ちる
    先程アンリを不意打ちしようとした時のような演技ではなく、明らかに大きなダメージを負った様子だった
    アンリは触手の残骸を振りほどきながら目を見開く
    アンリ(頭を真っ二つにしても死ななかった化物の再生が…遅れている?
    いや、遅れているどころかほとんど──)
    アンリ「いや…そんなことよりシマキンさん!無事でよかった…!一体どうやったんですか?」

  • 97二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 01:38:28

    今からこのスレを保守します

  • 98二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 07:21:13

    数十秒前
    拳が直撃する瞬間、怪物は獲物の死を確信していた
    仲間を庇い、自ら攻撃の範囲に飛び込んできたこのバカを殺したら、助けられた奴はどんな顔をするだろうか
    考えるだけで笑みが溢れる
    パワーちゃん1号(俺がグッチャグチャに潰してやるよ)
    着地の瞬間を狙い、悪意を込めて振り抜かれた拳は、男を容赦なく殴り潰す─筈だった

  • 99二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 14:07:42

    迫る豪腕を見て、シマキンは目を閉じた
    諦めた…のではない むしろその逆
    己の今までの研鑽に賭けたのだ
    彼は、アンリと共に行ってきた壁抜けにて、自身の防御スキルである〈肉の鎧〉の発動と、アンリの〈回避〉を百を優に超える回数経験してきた
    特に、〈回避〉という上級冒険者ですら扱うことを諦めるこのスキルは、本来であれば使用はまさに命懸け
    せいぜい10%の成功率しかないと言われるハズレスキルを、彼の友は最強のスキルへと変える天性の才能を持っていた
    攻撃が当たる瞬間を捕らえ、確実に回避するその光景を、シマキンは何度も目にし、体感したことで、彼もまた敵の攻撃を見切る才能が鍛えられていた

    静かに目を開く
    シマキン(不思議やのォ あれほど大きく恐ろしく…絶対に耐えられない威力だと思ってた攻撃が今は止まっているように見える)

  • 100二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 21:56:37

    シマキンの瞳は、拳の軌道を、風の流れを、殺意の脈動を、まるでスローモーションのように捉えていた
    彼の胴体がわずかに左に傾き、右足が地面を滑るように動く
    巨腕の圧力が彼の半身を掠め、お気に入りのバンダナが激しく舞うが、シマキンの肌には傷一つない
    拳の莫大なエネルギーは、彼の身体を撫でるように流れ、背後の地面を粉砕するにとどまった
    瓦礫が爆発的に飛び散り、土煙がもうもうと立ちこめる
    ◇◇◇◇◇◇
    スキル〈肉の鎧〉及び回避行動の熟練度の超過が確認されました。
    〈肉の鎧〉は〈弾丸すべり〉にレベルアップしました。
    ◇◇◇◇◇◇

  • 101二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 23:16:53

    見事やな…(ニコッ

  • 102二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 03:40:52

    展開に納得感があって笑ってしまう

  • 103二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 09:47:26

    パワーちゃん1号(な…なにっ 当たった感触がまるでない)
    怪物は混乱した
    自分がわざわざ腕を変形させた筈はない
    だが、確かに攻撃が当たった瞬間、腕が歪み、獲物の肌を滑るように逸れたと感じたのだ
    まさか自分を作った奴が干渉して、邪魔をしやがったのか?
    苛立ちを込めた目線を創造主へ送ろうとした瞬間──
    腹に生じた突然の激痛が、怪物の思考を吹き飛ばした

  • 104二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 10:47:17

    いけーっ アンリの心友!

  • 105二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 15:01:36

    現在
    アンリは安堵の息をつき、暴れる怪物から距離をとったシマキンに駆け寄る
    アンリ「シマキンさん…本当に無事でよかったです!助けて頂いてありがとうございましたっ!」
    シマキン「ムフフ ワシもアンリに感謝してんのやっ アンリのお陰でまた強くなれたんやっ」
    アンリ「えっ そうなんですか」
    彼の問いに、シマキンは笑って答える
    シマキン「おどれとやった壁抜けの繰り返しで熟練度が上がっとってのォ、防御系のスキルが進化したんや
    ほんで敵の攻撃を受け流して、腹に一発叩き込んでやったわ!」

  • 106二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 21:52:02

    シマキンたちの会話に腹が立ったのか、名称未定がパワーちゃん1号に向かって怒鳴る
    「はあっ?何痛がってんです それおかしいでしょう さっさと治しなさい!」
    だが怪物は腹を押さえたまま、苦悶の唸りを上げている
    念のため足元にも気を配っているが、先程のような地面を通じての不意打ちを狙っているわけでも無さそうだ
    アンリ「効いてるッ 確実に効いている
    しかし…何故なんでしょう?とんでもない再生能力があった筈なのに…」
    シマキン「ううん〈菩薩拳〉ほどやないけど気を込めた拳に〈必滅ノ拳〉のオーラをのせてぶん殴ってやったからかのォ
    細胞そのものが壊れて再生出来なくなったんやないケ?」
    アンリ「なるほど…お腹の穴が拡大したのも、中に浸透したからだと思えば説明がつきますね」

  • 107二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 05:01:13

    許せなかった... このスレを保守するのが鬼龍だなんて......!!!

  • 108二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 12:56:08

    保守の時間だぜ

  • 109二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 14:41:11

    なにっ

  • 110二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 14:54:43

    「チッ…それでもやりようは有るでしょう」

    名称未定の言葉に、怪物は呻くと腹に空いた穴が小さくなってゆく

    アンリ「くっ…回復できるのか…?あれ…身体が…」

    シマキン「ウム…ちょう縮んだんやないケ おお?」

    傷が埋まっていくと同時に、身体のサイズも下がっているようだ

    最終的にパワーちゃん1号の巨体は、三割ほども縮んでいた

    どうやら、治したのではなく強引に傷を埋めただけらしい

    アンリ「それだけ追い込まれてるってことか…」

    シマキン「悲壮感丸出しやのォ」

    「うるさいですね…黙らせなさいパワーちゃん1号!

    出来なければ私がお前を殺しますよ」


    パワーちゃん1号

    569+5(自己回復)-186ダメージ=388

    シマキン(スキル強化でダイスに+99)

    dice1d245=148 (148) +125

    アンリ

    187

  • 111二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 21:51:44

    パワーちゃん1号(ムカツクなぁ 殴りてぇなぁ…ぶっ殺してやりてぇなぁ)
    怪物は苛立っていた
    当たれば一発で殺せるのに、当たらない
    いくら拳を振るっても、地中の死角から攻撃を仕掛けても、避けられ…流され…躱される
    段々と、苛立ちは焦りへ変わっていった
    強者として作られたはずの自分が、低レベルの雑魚に手間取り、ダメージまで受けている
    パワーちゃん1号(ケッ ネズミ風情が…)
    怒りを込めて繰り出した一撃がまたもや避けられ、歯噛みした瞬間、大きい方の男が距離を詰めてきた
    また腹に穴を空けられては敵わないと、あわてて後ろに飛んで逃げ、触手を振り回して牽制するが、そこで今さら気が付いた
    名称未定だけでなく、この人間も己を殺せるという事を
    怪物の背筋が凍る
    不思議だった あれほど小さく弱く…絶対に自分を超えられない程度の存在だと思ってた人間が 今は大きく見えていた

  • 112二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 22:06:58

    島様〜❤️

  • 113二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 05:34:32

    あまりに下がりすぎると創造主から
    クソボケがーーーーーっされそうなんだよね

  • 114二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 12:44:31

    シマキン「ふうん そういうことか」
    呼吸を乱しながらも必死に触手を振り回し、牽制をしようとする怪物に腕を向け、シマキンは〈必滅ノ拳〉を発動させて見せつける
    びくり、と一瞬硬直したのを見て、彼は確信した
    パワーちゃん1号「ガルァア!!」
    力一杯地面を殴り付け、威嚇する怪物にシマキンは静かに言葉を投げる
    シマキン「強がってもムダや
    “息”は“自分の心”と書く…つまり吐く息で心の状態がわかるんや
    おどれは怯えている……
    まっこんなことを言った所で知能の低いクズモンスターにはわからないやろうけどな」
    パワーちゃん1号(うるせーっ人間なんてみんなぶっ殺してやる)
    挑発の言葉に怪物の腸が煮えくり返るが、その足はどうしても前へは進まなかった

  • 115二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 19:34:43

    おもしれーよ

  • 116二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 22:12:15

    ジリジリと近付いてくる二人に怪物は後退しようとするが、そこで先程の名称未定の言葉が脳裏に浮かぶ
    『黙らせなさいパワーちゃん1号!
    出来なければ私がお前を殺しますよ』
    パワーちゃん1号(…もう殺すしかない…殺される前に…)
    もはや余裕など無かった
    産まれて初めて感じる恐怖に突き動かされ、怪物は一つの手に出た

  • 117二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 01:58:44

    続きを教えてくれよ

  • 118二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 07:25:34

    ボコボコと異様な音を立てて、怪物の右手が巨大化していく
    ただでさえ丸太のように太く、強靭だった腕がますます凶悪になる
    同時に、左腕が分裂し、無数の触手となってシマキンとアンリにうねりながら襲いかかった
    シマキン「威力と手数で押すつもりかのォ
    すぐにでもワシらを殺したいようやな」
    アンリ「一緒に〈回避〉で避けますか?細かい触手が厄介ですが…」
    シマキン「いや…ええわ 見てみい身体を 腕に比べてずいぶんと貧相になっとる
    MPも無限に有るわけや無いし、ここで決めるで」
    アンリ「わ…わかりました では僕が道を作ります」

  • 119二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 14:30:49

    腕の形が変わった…
    いよいよパワーちゃん1号が本気になる

  • 120二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 22:24:20

    怪物の判断は、半分は正しかった
    いくら〈弾丸すべり〉でも、無数の触手で妨害をされてしまえば発動は難しい
    数の暴力で動きを止めて致命の一撃を放てば狙い通り仕留めることが出来るだろう
    しかしシマキンは一人ではない
    パワーちゃん1号(うぁぁぁ に…人間が攻撃の中を練り歩いてる)
    上下左右、地面を含めたあらゆる角度から殺到する触手の全てが、シマキンの肌に触れる前に切断される
    圧倒的な敏捷とそれに伴った動体視力により、全てアンリの手によって処理されていた
    アンリ「シマキンさんの邪魔をするのは、永遠のレベル1だった…このアンリ・クリートが許さないよ」
    彼のレベルはもう1ではない
    レベルアップにより成長したアンリの力は、数を優先させて脆弱になった触手を切り払うには十分だった

  • 121二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 05:45:37

    パワーちゃん1号「あわわ」

  • 122二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 09:32:05

    最悪のコンディションにも関わらずパワーちゃん一号を蹂躙する
    そんなシマキンを誇りに思う

  • 123二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 16:38:38

    目で追えないほどの速度で動き、触手を切り落としていくアンリとは対照的に、シマキンの動きは悠然としていた
    瞳を閉じ、祈るように両手を合わせて怪物の方へと進んで行く
    一歩、また一歩と歩みを進める度に、シマキンから発せられる圧力が高まる
    そのプレッシャーに耐えきれなくなった怪物が腕を振り回してなぎ払うが、全てアンリの〈回避〉によって無意味に終わった
    アンリ「人を倒すのにそこまで破壊力を上げる必要ない
    不要な力だから“馬鹿力”って言うんですよ」

  • 124二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 22:44:04

    とうとうシマキンが怪物の目の前までたどり着く
    パワーちゃん1号は触手での拘束を諦めたのか、左手の分の質量までもを右手に回し、もはや腕と言うより巨岩のような塊を造り上げた
    その圧倒的な大きさは〈弾丸すべり〉ですら避けきれるかわからないほどの威圧感を放っている
    だが、シマキンに焦りは無かった
    シマキン「真っ向勝負ってワケかい…受けて立つで」
    アンリに下がるよう目配せし、向かい合って立つシマキンと怪物
    数秒の静寂の後、仕掛けたのは怪物だった
    それは"殴るッ"というより"迫る壁ッ"という感覚
    人間の骨なんて一発で粉砕する"生物兵器"の一撃

  • 125二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 05:18:20

    パワーちゃん1号!
    その人間共を殺せ
    相手は低レベルの雑魚人間…
    お前なら倒せるはずだ

  • 126二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 13:07:33

    それに対して、シマキンは未だ瞳を閉じ、両手を合わせたままだった
    パワーちゃん1号(何をやるつもりか知らんが…その前にお前を殺してやるよっ)
    パワーちゃん1号「ゴアッ!!」
    怪物の叫びと共に、地中から引っ込めたはずの触手がシマキンの靴底から這い上がる
    アンリ「なにっ」
    感覚の鋭いアンリに気付かれぬよう、足の裏から慎重に伸ばしていた奥の手を絶好のタイミングで使った
    小さい方の人間が気付き、触手を切り飛ばしたがもう遅い
    とっさに触手を切るためにとった無理な姿勢から振り向いて、二人で回避を行うのも至難の技だろう
    パワーちゃん1号(受け流しの位置取りを潰した!くたばれ!)に~っ
    獲物をど真ん中に捉え、迫る拳に再び勝利を確信する

  • 127二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 21:15:07

    保守るーよ

  • 128二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 23:00:47

    が…
    アンリは回避を選ばなかった
    むしろ、全力で加速し怪物の足元を走り抜ける
    パワーちゃん1号(ぎゃはっ 仲間を見捨てやがっ…あががっ!?)
    がくっ、と足が崩れ落ちた
    通りすぎた僅かな時間で、アンリの刃が両足の腱を正確に切り裂いていたのだ
    その事を自覚した時には、もう遅かった
    拳の軌道がわずかにズレる
    そのズレは、本来であれば相手を殺すにあたって気にもならない微々たるもの
    しかし、目の前の男を仕留めるには致命的な──

    シマキン「──〈弾丸すべり〉」

  • 129二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 07:16:01

    ごう、と嵐のように唸る豪腕を、まるでそよ風のごとく流しながら、シマキンはそこで初めて瞳と両手を開く
    滑るように回りつつ、指と指を絡み合わせて乾坤一擲の一撃を生み出す拳を形作る
    シマキン「…死と直面しても心乱してはならない 慈しみ祈り全身全霊で受け止める これ菩薩の境地なり」

  • 130二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:44:26

    アンリが道を作ると言ってからこのタイミングまで目を閉じて集中していたとは…見事やな
    親友への信頼を感じますね

  • 131二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:47:16

    だが、怪物は狡猾だった
    片手に質量を注ぎ込んだのは、全てのリソースを攻撃に回したのではなく、むしろ己の生存と不意打ちのための策略
    この肉体に重要な臓器など存在しない
    いや、むしろ全身がどんな機能も果たせる細胞で構築されていると言うべきか
    たとえ体を潰されたとしても、質量を集中させた腕の方から再生すればいい
    胴体に痛みを感じた瞬間に腕を自ら切り離せば、全身を侵す厄介な力でも関係ないだろう
    あとは再生した一瞬に攻撃を仕掛けてやれば今度こそ──
    パワーちゃん1号(俺に苦痛を与えたその瞬間…お前らに“生まれてきてすいません”って思いをさせてやるよ)

  • 132二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 07:09:35

    シマキン「捨て身の拳は"死地に陥れて然る後生く"」
    〈必滅ノ拳〉の赤黒いオーラとシマキンが練り上げた気と混じりあい、格上をも屠る必殺の一撃になる

    シマキン「────〈菩薩拳〉」

    パワーちゃん1号(さぁ来い!全身の骨をへし折って糸の切れたマリオネットにしてやるよ)
    怪物は知らなかった
    〈菩薩拳〉は慈悲の心で放つ技
    そこには苦痛も憎悪もなく、己も相手も“無の境地”になるということを
    怪物は知らなかった
    既に拳が自身の肉体を貫き、全身へと浸透したオーラと気が、細胞のひとつひとつを破壊し尽くしていたことを

    パワーちゃん1号は、来ることはない反撃の時を待ち、人間たちを蹂躙する未来を夢見ながら、消滅した

  • 133二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 14:49:54

    無数の魔物を融合させて創られた凶悪な魔物は、たった二人の人間によって倒された

    アンリ「やっぱりシマキンさんは強い

    強すぎて…嬉しくなってしまう」

    シマキンはニヤリと笑い、拳を軽く握り直した

    シマキン「気ィ抜いたらアカンで!こっからが本番やっ」

    アンリ「…はい!」

    シマキンは視線を名称未定の方へと移すと身構える

    シマキン「“パワーちゃん1号”を殺ったんだァ

    妹さんの肉体を返してもらおうかァ」

    凄む彼らに対して、彼女はめんどくさそうにため息を吐く

    「あーあ倒しちゃったらしゃーないですね

    代わりのモンスターの素材になってもらいましょう」

    怪物と同じように体を変形させ始めた名称未定を見て、アンリはナイフの柄を強く握り締めた

    アンリ「くそっ…やっぱり戦いは避けられないか…」

    「あなた達とケンカするつもりはありません!ただ全身の骨をヘシ折るだけですよ!!」


    dice1d9999=3491 (3491)

  • 134二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 15:08:03

    強すぎる…強さの次元が違う

  • 135二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:24:28

    初めてこちらに向けられる名称未定の敵意に肌が粟立つ

    シマキン(ぐうっ 同じ格上でもギジェルモやリビングメイルの時とは比べ物にならんほどの圧力や…!)

    「怖いでしょう…私のことが…怖くて怖くて逃げ出したいでしょう

    でも逃がしませんよ」


    シマキン「…」フッ

    シマキン「正直言っておどれのことがムチャクチャ怖い…こうしてお前と向き合っただけで変な汗がいっぱい出てきてんねん

    けんど…」

    シマキン「ワシは逃げへんぞっ

    ワシはダチと一緒にいるときの時間が一番好きやねん

    ムチャクチャ怖くても仲間のために逃げんと闘う自分が好きやねん

    ワシはもっともっと自分のことを好きになりたいねん

    だから…ワシは闘る!」


    パワーちゃん1号撃破によるレベルアップ

    アンリのレベル

    22からdice1d15=7 (7) +15(最低保証)上がった

    シマキンのレベル

    46からdice1d15=5 (5) +10(最低保証)上がった

  • 136二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:24:30

    シマ様〜❤︎

  • 137二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:18

    おおっ!アンリのレベルが倍に、シマキンのレベルが1.5倍になった!
    なったけど…この圧倒的レベル差はいいんスかこれ

  • 138二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 06:52:13

    シマキン「いけるか?アンリ」

    アンリ「はい ここで逃げたらエレレートは助かりません それにガラボゾの街が妹の手で滅ぶことになってしまいます…

    こいつを野放しにするわけにはいきません」


    シマキン

    dice1d306=33 (33) +125

    アンリ

    dice1d244=46 (46) +100

  • 139二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 13:25:59

    「いや───っ立派ですね 美しい兄妹愛に感動しております」

    ふざけた態度で泣き真似をする名称未定

    その一挙手一投足を逃さぬよう、シマキンは鋭い視線で彼女を捉えながら、静かに気を練り始める

    シマキン(さっきのバケモンとの戦いでワシもアンリもヘトヘトや…油断しとるうちにさっさと決めるしかないのォ)


    アンリとシマキン合計304

    3491の8.708%のため91%以上で攻撃成功

    dice1d100=100 (100)

  • 140二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 14:18:50

    100%!!!

  • 141二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 21:41:02

    見事やな…(ニコッ

  • 142二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 06:26:32

    このレスは削除されています

  • 143二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 12:35:54

    「それにしてもお二人とも避けるのが得意なご様子
    どれ 私にも試させて下さい」
    無造作に向けられた手に悪寒を感じ、直感のままにアンリはシマキンに触れて〈回避〉を行う
    「うん なかなか上手いですね」
    シマキン「なにっ」
    アンリ「速い…!」
    その次の瞬間には、先程まで二人が居た場所を槍のように変化した手が貫いていた
    アンリ(〈回避〉ですり抜けなければ死んでいた…!ステータスの差はなんとなく解ってはいたけど、まさかこれ程までとはっ)
    変形の早さも攻撃の速度もパワーちゃん1号とは一線を画している
    名称未定が本気になればウイルスのスピードで大量殺人することすら出来るだろう
    シマキン「不味いのォ 近寄って“アレ”を当てるしか勝ち目は無いんやけど…あの攻撃をくぐり抜けられるか?」
    アンリ「厳しいですよね…どうすればあれ程の攻撃を抜け…
    ────抜ける?」

    アンリ「…シマキンさん、一つだけ案が思い浮かびました」

  • 144二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 21:40:52

    「作戦タイムは終わりましたかァ?では消しますねェ」

    その言葉に対して、シマキンとアンリは前傾姿勢をとった

    「キヒヒッ まさか走って突っ込んでくるつもりですか?あなた達私が想像しているよりアホなんですねえ」

    シマキン「ワシらはヒャッハーって突っ込んですぐにやられるザコキャラやないんやでェッ なめてんじゃねぇぞこらあッ」

    「ふうん じゃあどうするのか見せてくださいよ」

    しかし名称未定の笑みは、すぐに硬直することとなる

    アンリ「3…2…1 …今ですっ」


    シマキン「覚えとけっ!」ダッ

    元来た道に向かって走り去る二人を唖然とした表情で見つめる名称未定は、数秒経ってからようやく何が起こったのかを理解した

    「…えーっ あれだけ偉そうな事を言っておいて逃げるんですかいっ この根性なし!」

  • 145二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:38:08

    なにっ
    な…なんだあっ

  • 146二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 07:16:41

    「なめてんですかチンピラ 私から逃げられると思ってるんですか あ──っ」
    背後から聞こえる怒鳴り声からできるだけ距離を取れるよう、複雑な道を選んでいく
    アンリ(このダンジョンはエレレートを探すためにしらみつぶしに通路を見て回った…だから地形はハッキリ解るっ)
    後ろから断続的に飛んでくる攻撃を〈回避〉でかわしつつ、二人は作戦を実行するのに最適な場所へと走った

  • 147二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 07:17:31

    なにっ

  • 148二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 12:39:49

    「こんな場所でなければ壁なんてぶち壊して追いかけられるのに…!全くめんどうですね」

    攻撃を避けられ、壁面に突き刺さった触手を引き抜きながら、名称未定は苛立つ

    ダンジョンでは壁も床も、表面などの浅い範囲以上を破壊するのは、どんな力を持ってしても不可能となっている

    そのせいで人間どもに攻撃を放っても、スキルや曲がり道を利用して防がれ、詰めた距離を離される

    「いいんですか?私が外に行っても」

    逃げる背中に言葉を投げると、大男の方がパッと振り向き…

    シマキン「フン」😡🖕

    立てられた中指を見た瞬間、頭に血が上る

    「なめるなっ ブタマンッ!」

    怒りのままに、彼女は槍のように変形させた腕を突き出したが、またしてもダンジョンの壁に阻まれた

    (ちょっと大人げないですが本気で潰してやりましょうかね…!!)

    そんな事を考えたが、獲物が空気の流れが悪い通路に入ったのを感じて、口角が上がる

    (キヒヒッ 馬鹿ですね… さっき逃げずにやられたほうが楽にしねたのに)

    「“行き止まり”に入ってしまいましたね」

  • 149二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 20:32:41

    どわ───っ
    こ…この先行き止まりやん!!

  • 150二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 23:05:32

    「お久しぶりです~お邪魔しますねっ」
    角を曲がり、ゆっくりと姿を表す名称未定
    その視線の先には、姿勢を低くして盾を構える大男の姿があった
    シマキン「く…!道を間違えてしもうた…アンリ!しっかりワシの後ろに隠れとくんやっ」
    奥まで下がり、自分を睨み付けている人間に一歩、また一歩と近付いてゆく
    「キヒヒ 怖い目をしてますねぇ
    しかし闘志剥き出しで吠えてはいるが瞳の奥には怯えがある…まるで甘やかされた座敷犬のようにね」
    シマキン「お…思っきしナメてるのォ」
    「キャインキャインってね
    さあ!こっちへおいでっワンちゃん!それ以上は後ろに下がれませんよ」

  • 151二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 08:02:48

    犬はこっちに来いよ

  • 152二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 12:51:43

    「殺すだけでは済まさない
    あなたたちのせいでムカつく思いをしたんです “心を折る”なんて生易しいものじゃ済まさない!
    生きていくのが嫌になるくらい痛い思いをさせてあげます
    人間をやめたくなるくらい苦しい思いをさせてあげます」
    言い終わると同時に、形状を変え、伸びた腕がシマキンへと襲いかかる
    シマキン(真っ向から受けたらアカン!)
    とっさに〈弾丸すべり〉のスキルを利用して盾で軌道を変えようとするが、あまりの破壊力に、エネルギーを受け流し切ることが出来なかった
    シマキン「ウ ギャ ア ア ア ア」ゴキィッ

  • 153二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 12:55:09

    う あ あ あ あ あ あ

  • 154二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 22:03:04

    シマキン「うぎゃあああ」
    鈍い音とともに、シマキンの左腕が不自然に折れ曲がる
    触手に貫かれずには済んだものの、盾は遠くへ弾かれ、片腕は折られてしまった
    その様子を見て、名称未定は満足そうに笑う
    「良いですねぇ やっぱりこうでないと!
    謝るなら今ですよ?慈悲深い私の事ですし、もしかしたら気が変わって、さっさとモンスターに作り替えてあげるかもしれません」
    嗜虐的な笑みを浮かべる彼女の言葉を、シマキンは冷や汗を流しながらも鼻で笑い飛ばした
    シマキン「へっ 笑がすなあ ババタレが…この程度、こそばいんじゃあっ」

  • 155二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 05:31:57

    あっ
    一発で折れたッ

  • 156二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 12:38:33

    シマキンは歯を食いしばり、右手をゆっくりと左腕に伸ばす
    シマキン「あが…が…っ!」
    ゴキッ、という鈍い音とともに、シマキンが自らの腕を力ずくで引っ張った
    骨が擦れ合う不快な感触と激痛が彼の全身を駆け巡る
    それでも彼は名称未定から一瞬たりとも目を離さなかった
    シマキンは顔を歪めながらも、折れた腕を無理やり元の形に近づけた
    シマキン「…効かへんな
    “レイドモンスター”なんて言うからどれほどキツイのがくるのかワクワクしとったのにこの程度か」
    「なんですかその態度は!お前のドテッ腹に風穴を開けることだってできるんですよッ
    …良いでしょう お望み通りちょっとキツイのを食らわせてあげましょうか」
    そう言うと、名称未定は両手をシマキンの方へと向ける
    「バカの相手をするのはもうウンザリです
    意識を残したままモンスターに変えて長く苦しめて差し上げましょう
    今から行うのは、くるとわかってても避けられない必殺の超高速連打ですよ 避けられるものなら避けてみなさい」
    触手の先端が変化し、鋭い牙を持った獣の口へと変化する
    シマキン(…!モンスターを喰っとったスキルか)
    腕が変化してできた作り物の牙ではあるが、本物の獣よりその殺傷力は遥かに高いだろう
    一発でもヒットすれば……いや かすっただけでも確実に昇天する

  • 157二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 21:13:13

    どないする?まあ(このシマキンなら大丈夫そうやし)ええやろ

  • 158二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 22:12:17

    シマキン「アンリ!おどれは“背中”や!ぬおおお──っ」
    雄叫びを上げて、シマキンは名称未定の攻撃が始まる前に駆け出した
    「オトモダチに回避を任せての突撃とはワンパターンな…
    文字通り“後がない”ほど追い詰められた人間の悲哀を感じますね
    まっ無理でしょうけど頑張って下さい」
    ぎちり、と音を立てて触手がきしむ
    その一瞬のタメから繰り出される攻撃は、速さ…伸び 威力 命中精度 全てがハイレベル
    しかも遠い間合いから一気に距離を詰める爆発力すら備え、その圧倒的な力は人間の外貌をした怪物であることを如実に示す
    そう人間レベルではとても太刀打ちできない“怪物”
    「ふたりとも殺しますネ」
    音すら置き去りにして、殺意をそのまま形にしたかのような獣の顎がシマキンへと放たれる

    その攻撃は、もはや認識することなどできる筈もなかった
    上級冒険者ですら目視できないほどの凄まじい速度で襲いかかる
    「────は?」
    名称未定の“背後から”現れたアンリの斬撃は、彼女の背に生えた羽を正確に切り裂いていた

  • 159二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 07:23:10

    (なぜ…?)
    あまりの出来事に思考が疑問に埋め尽くされ、動きが止まる
    確実に二人が行き止まりに入るのを見た
    なのに何故私の後ろにいる?
    この壁は絶対に破壊不可能だ
    ある程度の瞬間移動が可能になるアイテムの知識はあるが、ダンジョンの壁を無視して移動できるほどの規格外の効果など存在する筈がない
    だからこそ私は…【未実装データ】は人間どもが決して来ることができない“ダンジョンの狭間”に棄てられて──
    いや、そうか
    『それ』が出来るからこそ自分を見つけることができたのか

  • 160二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 14:10:07

    格上と戦う際、どれだけ自分の得意分野に引きずり込めるかが勝負の鍵となる
    しかし相手はステータスもスキルの性能も遥かに上の化け物
    勝る点などないかと思っていたが──
    一つだけ、どんな冒険者にもモンスターにも得難い切り札が二人にはあった
    シマキン(ワシらの原点にして頂点の武器はコレ!壁抜けじゃい!)
    アンリは名称未定が狙いどおりにこの通路に入ってきた時には、既にシマキンに攻撃をしてもらい、壁抜けで隣の通路へと移動していた
    彼が彼女の背後へと回り込み、起死回生の一撃を繰り出すまで、シマキンは必死に耐え、アンリを背に庇う演技を行っていたのだ
    完全に意識の外から振るわれた刃に翼を切り裂かれ、バランスを崩しながら地面へと落ちていく名称未定を見据えて、シマキンは間合いを詰める
    シマキン(アンリが作ってくれたチャンスなんじゃあ!ぜってぇ逃さへん!)

  • 161二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 22:23:55

    (あなたたち グッドファイターとして認めますネ
    …でも殺します)
    名称未定はアンリの奇襲によって体勢も精神も大きく乱れた
    しかしレイドモンスターの意地なのか、崩れた姿勢にも関わらず変化させた腕をシマキンに向けて放った
    攻撃は万全の彼女に比べれば遅いものの、シマキンの拳が届くより先に彼を貫く速度を保っている
    シマキン(ぐうっ あと一歩やったのに…!)
    だがその一歩が致命的に遠い
    しかし人間には極限まで追いつめられると本能がディフェンスを教えてくれる…瞬間的な“ひらめき”がある
    彼は今までの激戦を生き残ってきた己を、最後まで信じる事にした
    シマキン「いったらあっ」ボッ
    (なにっ 折れている左腕で掌底!?しかしその距離では届かないっ)
    シマキンの最後の抵抗を、名称未定は嘲りはしなかった
    (最後まで諦めないのは見事でした…しかしこの間合いでは一方的にあなたが殺されるんです 悔しいだろうが仕方ないんです
    せめて一撃で死なせてあげましょうっ)
    この戦いの終わりを確信して憐れみの表情を浮かべる名称未定
    しかし彼女の表情はすぐに驚愕に変わることとなる
    「なにっ!?う…腕が伸びていくっ」
    シマキンの左腕がまるで彼女自身の能力を模したかのように、ギュンとゴムのごとく伸びて彼と彼女の間にある絶望的な距離を埋めたのだ

  • 162二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 07:08:58

    シマキンが直感に従って打ったこの技の名は〈留波拳〉
    脱力状態になった腕を“気”のエネルギーが押すことによって腕が伸びる この時は、彼の腕が折れていたことが、技に必要な脱力という条件を満たすことに奇跡的に繋がっていた
    そして放たれた“気”は“波動”となり、人体に打ち込んだ場合は側頭部から侵入して脳漿に残留し、相手の脳を揺らす
    しかしシマキンが狙うのは頭ではない
    名称未定が自ら明かした本体【未実装データ】そのもの
    触手が造り出した牙がシマキンの体を引き裂くよりも一瞬早く、彼の掌が胴へと触れる
    練り上げられた気がガポン、と形容しがたい音を立てて、体内に入り込んだ瞬間──
    「はうっ」

  • 163二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 13:23:54

    シマキンがアンリを支え、アンリがシマキンを支える
    ある意味''最高''だ

  • 164二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 22:51:06

    名称未定の全身から力が抜ける
    何が起きたのか解らなかった 
    自分には、並どころか高レベルの冒険者の攻撃を食らっても揺らぎもしない圧倒的な防御力と体力があるはずだ
    大量の冒険者が命をかけることでやっと勝負が成立する程の存在として創られたというのに、何故ただの掌底の一発でここまで追い込まれている?
    こいつらは一体どこまで規格外なんだ?
    (ようやく自由になれたのに…こ…こんなの納得できない
    死にたくない…私はただの名無しの魔物のままでは死にたくない)
    「おわって…たまる…か…終わってたまるかァ!!!」

  • 165二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 07:27:20

    瞬間、四肢を変化させる
    名称未定のスキル〈人体変化〉で肉体を強化して、襲い来る虚脱感に抗う
    獣のように鋭い足爪が地面を掴み、ふらつく体をなんとか支えた
    「まだです…!まだ私は!」
    シマキン「やっぱりお前はたいしたヤツや
    足が痙攣して本体が波動でグルングルン回されとんのにまだ闘おうとしてる
    ワシが国王やったらお前に国民栄誉賞やるで」ホンマ
    シマキン「その闘志にはワシも精いっぱい応えなあかんのォ」
    「バ…バケモノがあ!」
    名称未定は今出せるありったけの力を込め、腕を地面に付くほどに巨大化させ、眼前の強敵へと振り下ろした
    シマキン「最高の一撃でしばきあげたらあっ」
    振り下ろされる豪腕を無視して、彼は全身全霊を込めてさらに深く間合いに踏み込む
    シマキンの地響きのような“震脚”が文字通り大地を震わせ、地面を砕いた
    「なにっ」
    自身を支える足場を失い、彼女の体勢が再び崩れる
    その隙を逃さず──
    シマキン(肩と腰の回転を活かし全身をゴムのようにねじりこみ…一気に放つ!)

    シマキン「これが〈破心掌〉やっ!」

  • 166二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:09:53

    名称未定の本体へと掌が叩き込まれたその瞬間、すさまじい轟音が響き渡る
    波が引くように音が消え、恐ろしい静寂が辺りを包み込む
    一秒、二秒と時間が過ぎて行くが、シマキンも名称未定もピクリとも動かない
    アンリ「シ…シマキンさん…?」
    彼のその言葉が合図にでもなったかのように、名称未定の豪腕が動き出す
    アンリ「!」
    アンリは一瞬身構えたが、シマキンがそこで静かに言葉を発した
    シマキン「安心せぇ…もう終わっとるわっ」
    その言葉通り、振り上げられた腕が力なく垂れる
    みるみるうちに肉体が元のエレレートの姿に戻っていき、そのまま地面へと崩れ落ちていく
    アンリ「エレレート!」
    駆け寄り、抱き留めた頃には彼女の肉体に異形へと変化した痕跡は見当たらなかった
    心臓の鼓動もしっかりと続いている
    アンリは安堵の息を吐くと同時に、シマキンへと視線を向ける
    アンリ「シマキンさん、ありがとうございました お陰で妹に手を汚させずに済みました」
    ゆっくりと構えを解いたシマキンが笑って言葉を返そうとしたその時だった
    「お兄…ちゃん…?」

  • 167二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 22:29:41

    アンリ「エレ…レート?エレレートなのか!?」

    エレレート「うん この子の中からずっと見てたよ 私の為に戦ってくれてありがとう…ずっと、私を守ってくれてありがとう」

    身に纏う雰囲気が名称未定とはまったく違う

    記憶の中にあるエレレートと全てが一致していた

    もはや遠い思い出の中にしかなかった柔らかな声が響き、瞼の奥に閉じられていた青い宝石の様な瞳が自分を見つめている

    そこから先は、溢れる涙と想いでもう言葉にならなかった

    たとえ命を削ってでも叶えたかった夢が、いま手の中にある

    目の前にある奇跡が消えないように、強く、ただ強く抱き締めていた


    シマキン(ワシはこんなツラやが美しいもんが好きや けんど、この町は下劣で醜悪なもので満ち溢れている

    良心もなく悪行を重ねるものには殺意すら覚えるが…

    そこには至高の“美”があった)

  • 168二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 22:37:01

    おおっ

  • 169二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 05:33:12

    美しすぎる…美しさの次元が違う

  • 170二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 13:02:26

    アンリ「あのう、腕に異常は無いですか?」
    シマキン「おうっ そないに心配せんでもええで!タフって言葉はワシの為にあるんやからのォ」
    アンリ「ふふっ…それはよかったです そう言えばエレレート、お前も体におかしな所はないか?」
    エレレート「うん むしろ病気になる前より元気になったみたい」
    その場でぴょんぴょん跳び跳ねる彼女はどう見ても健康そのもので、寝たきりだったとは誰も思わないだろう
    ダンジョンから脱出し、回復薬を買ってシマキンさんの腕を治してからの帰り道
    壮絶な戦闘数十分後の、大切な人達との平穏な会話である
    シマキン「すごい よかったやん」
    シマキンの言葉に、エレレートが足を止め、真っ直ぐに向き直って深々と頭を下げる
    エレレート「改めてお礼を言わせてください
    今までずっと兄を支えてくれて…本当にありがとうございました」

  • 171二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 22:08:21

    シマキンは一瞬目を丸くし、照れくさそうに頭を掻いた
    シマキン「やりたくてやってる自己満足みたいなモンやから気にせんでエエで!ワシもアンリにはメチャクチャ世話になっとるしなっ それに…」
    会話の途中で、近くの林から鳥の群れが夕暮れの空に飛び立っていく
    シマキンは何とはなしにそれを目で追いながら静かに続けた
    シマキン「人間はのォ 何も持たず生まれてきて何も持たず一人で死んでいくんや いくらお金を稼いでも持っていくことはできない
    だけどな 必ず残っていくものがあるんや
    お金も……築いた文化も……育てた人間も……与えたものだけはみんな残っていく
    どうせなら与える人生を送っていきたい ただそれだけなんや」

    その言葉に、気付けば全員が足を止め、同じ夕暮れの空を見つめていた
    鳥の群れが空を舞い、夕陽がガラボゾの町を赤く染める中、みなが胸に抱いた想いはきっと同じだったろう
    少女は兄に近寄り、耳元でささやいた
    エレレート「お兄ちゃん…本当に良いお友達が出来たんだね」
    アンリ「うん 最高の親友だよ」

  • 172二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 07:12:37

    帰宅した三人はひとまず休むことにした
    積もる話は山のようにあるが、流石にザ・ハード過ぎる一日を経て、体力はもう限界を超えている
    シマキンはもはや慣れ親しんだアンリの家のベッドで深い眠りについた
    次の日
    「だめ…シマキ…さ…」
    「うるさ…ワタ…の…」
    シマキン「ファ〜眠い…なんやいったい…」
    騒がしい声で目を覚ますとそこにあったのはアンリに向かって飛びかかるエレレートの姿──いや
    シマキン(妹さんの瞳の色が青やない…!?あの黄金色は!)
    シマキン「どわ──っ め…名称未定が出てきてるやん!!は…はよう〈留波拳〉を発動させな!!」
    反射的に跳ね起きて、両手を合わせ、意識を集中させる
    シマキン「自帰依僧 當領衆生 统理大衆 一切無礙…如是我聞 一時仏在舍衛國 祈樹給孤独園 子大比丘衆 千二百五十人俱…」

  • 173二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 08:20:05

    えっ…名称未定生きてたスか?

  • 174二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 12:56:56

    スキルに従い、頭の中に浮かんだ文言を詠唱すると、彼女に明らかな変化が起きた
    「うがあっ 痛あーっ」
    名称未定が叫び、お腹の辺りを押さえて転げ回る
    アンリ「あわわ これは一体…?」
    シマキン「無事かアンリ!?ワシの〈留波拳〉によって“波動”が本体の中に残っとるんや
    その“波動”はある音波に対して激痛をもよおす…」
    「そ…そんなアホな…でも確かに今は痛くない」
    シマキン「さあ、わかったら大人しくせぇ!」
    シマキンがスキルを再開させると、名称未定は焦った様子で叫んだ
    「ホアァアァーッ エ、エレレート早く交代して下さい!」
    その瞬間彼女が纏う雰囲気が変わり、瞳の色が青に戻る
    エレレート「わっ もう?なんだかお腹がグルグルする 不思議な感じ…」
    シマキン「なっ…なんだあっ どないなっとんねん!?」
    寝起きから押し寄せた情報量に混乱するシマキンの言葉に、アンリが答える
    アンリ「ええと、どこから話せばいいかな…まず、エレレートは名称未定と身体を共有することになったそうです」
    シマキン「なにっ」

    話としてはこうだった
    シマキンから受けたダメージで、肉体の主導権を握れなくなった名称未定に対してエレレートが交渉をしたらしい
    暴れないことやスキルを自分にも使わせるという約束の代わりに、体を定期的に貸してあげることにしたそうだ
    シマキン「な…なんやそらあっ いやまぁエレレートがエエんなら別に言うことないんやけど…ちょうまてや ならさっきアンリが襲われとったのは?」
    アンリ「ああそれは名称未定がシマキンさんの分のご飯を取ろうとしたから逃げて…」
    アンリの言葉をまた出てきた名称未定が遮る
    「だって私の分だけ“おかゆさん”じゃないですか!そこの男のメシにはお肉が入っててズルいですよ!」
    アンリ「ずっと寝たきりだったんだからおかゆじゃないと胃がビックリしちゃうじゃないか!
    本にも“粥に十種の利益あり”と説かれてるんだっ ありがたくいただきなさいっ」ゴホン
    「私の体がそんなヤワなわけないでしょうが!」
    シマキンはふらっとベットまで戻ると倒れこんだ
    アンリ「シマキンさん!?」
    シマキン「アンリ わ…ワシは疲れた も…もう一回寝てエエか…」

  • 175二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 22:37:55

    シマキン(疲れてるから)退場ッ

  • 176二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 08:12:15

    確かに留波拳は万が一の事があっても止められそうでリラックスできますね

  • 177二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 15:02:15

    朝食を済ませたシマキン、アンリ、エレレート(と名称未定)は彼女の日用品を買うため、ガラボゾの町の商店街へと繰り出した
    お金が心もとなくなってきたので、ダンジョンで手に入れた「旅立ちの剣」を売却しようと、ドンの武器屋へ足を踏み入れる
    そこにいたのは──
    オーロイア「あらアンリにシマキンくん!奇遇ね」
    ドン(奇遇じゃないだろ)
    オーロイアは彼らに命を助けられてから、彼らにお礼を言うためにほとんど毎日ここへと訪れていた
    全ては愛する アンリのために⋯
    ドン(俺の武器屋しか接点が無いんじゃ ま、なるわな…)
    アンリ「あ!オーロイアさん!」
    シマキン「おおっ 久しぶりやのォ!」
    ドン「お前たち!!しばらくぶりだな…心配したんだぞ!ウチに来たってことは換金だな!」
    アンリ「はいっ お願いします!」
    オーロイアはアンリの弾けるような笑顔に気づき、目を輝かせた
    オーロイア「ねぇアンリ!嬉しそうだけどなにかあった?」
    アンリ「はい!ずっと寝込んでいた妹が目を覚ましたんです」
    ドン「なにっ」
    オーロイア「えっ そうなの?」
    アンリ「紹介します 妹のエレレートです」
    エレレート「兄がいつもお世話になっております エレレートと言います よろしくお願いいたしますね!」

    流石に名称未定のことは話せなかったが、問題ない範囲の事を話した
    ドン「そうだったのか…良かったなぁ 頑張ったなぁ」グズッ
    涙を流すドンに対して、オーロイアは突然立ち上がり、静かに宣言した
    オーロイア「…決まりね」
    アンリ「えっ」
    オーロイア「約束してたでしょ?みんなでお茶会を開くって お祝いを兼ねて、盛大にやりましょう!」

  • 178二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 22:42:56

    1番大事なところで100出して勝ててよかったですね...本気(マジ)でね

  • 179二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 05:52:19

    この灘神影流を扱うシマキンは一体…!?

  • 180二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 12:20:20

    覚悟してください
    保守を打ち込みますッ

  • 181二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 21:42:58

    シマキン「ほへー ゴージャスなお屋敷やなァ」
    後日、オーロイアとの約束の日に屋敷を訪れたアンリ一行
    彼らが案内された部屋に入ると、そこには懐かしい顔ぶれがいた
    アンリ「ギルバートさん!キールスさん!」
    キールス「久しぶり!」
    シマキン「元気そうでなによりや!」
    ギルバート「おう、お陰様でな!俺たちもアンタらには礼を言いたかったんだ」
    キールス「ご馳走も食べれるしな」ヌッ
    ギルバート「あのなぁ…でも、まぁこの豪華さはお茶会というより食事会だな…」
    準備されていく料理の数々を見て、ギルバートが呟く
    「ふんっ 確かに豪勢な食卓ですが 肉は無いんですか?」
    傲岸にいい放つ名称未定の前に、ちょうどこの屋敷の主人がやって来る
    オーロイア「ふふっ 肉料理は今からみんなに作って貰うのよ」
    シマキン「ううん どういうことや?」
    オーロイア「前に言ったでしょ?あなたたちが作ったブタマンをまた食べたいって
    だから他の料理が完成する前に早めに集まってもらったの」
    キールス「えーっ オーロイア嬢あの時そんな良いもん食べてたの?ズルいな~俺も食いたい!」
    オーロイア「だからこれから作るのよ ねっいいでしょ?」
    アンリ「そ…そんなに気に入って貰ってたんですか?嬉しいです!」
    シマキン「せやったらこっちもそれなりに頑張らにゃならんのォ」
    ギルバート「楽しみにしてるぜ」
    オーロイア「あなたたちも手伝うのよ」
    キールス「えっ そうなんですか」
    ギルバート「オーロイア嬢よう 旨く作るんなら専門の料理人に頼んだ方がいいのに」
    オーロイア「自分たちの手で作るから美味しいのよ 絆が深まるのよ」

  • 182二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 05:35:37

    保守するものと申します

  • 183二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 12:48:13

    いやァ団欒の一時ってのはええのォ
    このまま全員幸せになって欲しいですね…

  • 184二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 13:40:01

    このレスは削除されています

  • 185二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 20:04:43

    このレスは削除されています

  • 186二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:13:30

    屋敷の広間は、料理の香りと笑い声で溢れていた
    ギルバートがブタマンを手に、しみじみと呟く
    ギルバート「しかしなんかすごい賑やかになったな
    隠しボスと戦った俺たち一同がそろって食事をしているなんて」
    キールス「不思議だね プロの料理があるのに手が伸びる
    クオリティの高いものよりも美味しそうと思ってしまうのはなんでだろう」
    オーロイア「手作りって美味しいでしょ 真心の味よね」
    シマキンたちが作ったブタマンは、個体探も激しく形もいびつで味も他の料理人が作った料理には遠く及ばない
    しかし、気づけば手に取り、口にしたくなるような温かさがあった
    アンリ「あっ名称…エレレート!ちゃんとみんなの分も残しておくんだぞ!」
    その小さな体のどこに入っているのか解らないほどの量をガツガツと食べる名称未定をアンリがたしなめると、オーロイアが笑いながら手を振った
    オーロイア「いいのよ 足りなくなったらどんどん追加の料理を運んでもらうわ 妹さんの回復祝いも兼ねてるしね
    それに泣くほど喜んでくれてるみたいだし…」
    “おかゆさん”以外のまともなものを食べたことがない名称未定への『料理』のインパクトは凄まじかったらしい だばだばと感動の涙を流しながら食事を続けている
    「ありがとですオーロイア!ならアップルパイ!アップルパイのおかわりを下さい!」
    アンリ「さっきまで肉肉言ってたのになぁ」
    「お前は成長しないんですか 今はリンゴのたっぷり入ったアップルパイが好物なんですよ」

  • 187二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 07:21:12

    料理…すげえ 感動するぐらい奥深いし…餌付け完全
    やはりうまい料理には勝てぬか

  • 188二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 07:22:12

    このレスは削除されています

  • 189二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 14:36:37

    オーロイア「どう 私のお気に入りの茶葉と、ガラボゾで一番オススメのアップルパイの組み合わせはうまいでしょ」
    アンリ「はい オーロイアさんイチオシの組み合わせは美味しいです」
    シマキン「確かにこの香りはリラックスできるのォ」
    食事も一通り済み、みなで食後の紅茶やデザートを楽しんでいる時に彼女は切り出した
    オーロイア「そういえばもう一つ約束してたわよね?あなたたちの事を聞かせてくれるって」
    エレレート「私も知りたいな お兄ちゃんとシマキンさんの活躍」
    その言葉にエレレートの方を向くと、目は既に青色になっている
    エレレートが瞳の色と共に性格が切り替わっていることをこれまで誰も指摘しなかった スキルというのは本当に多種多様だ
    意外とこの町なら名称未定の〈人体変化〉で体を変形させても「あんなスキルも有るんだな…(本編書き文字)」という感じで流されそうだ
    それでも僕とシマキンさんが行っていたことはどの冒険者にとってもかなり異常なものだろう
    迷っていると、オーロイアさんが優しく微笑んだ
    オーロイア「もちろん秘密にしたいことがあれば守るわ その上で話したくない部分は省いてくれて大丈夫だから あなた達もそれで良いわよね?」
    キールス「もちろん!そりゃあ気にならないと言ったら嘘になるけどさ」
    ギルバート「ああ、命の恩人たちを困らせるような真似は誓ってしないぜ」
    シマキンさんに目線を送ると、彼は豪快に笑い、肩を叩いた
    シマキン「ワシはアンリの意思を尊重するでっ それにその力はおどれのモンやしな ワシのことなんて気にせんでええんやないケ おお?」
    その言葉に、ようやく決心がついた
    アンリ「わ…わかりました お話します」

  • 190二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 22:32:36

    仲間を信頼して秘密を話し始めようとする姿は尊い!

  • 191二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 05:20:18

    このレスは削除されています

  • 192二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 09:49:46

    どこから話すべきだろうか?

    思い返せば、短い間ながらもシマキンさんと出会ってから色々な事があった

    いや、彼と出会ったからこそ道が開けたと言うべきだろうか

    “永遠のレベル1”として何の力も頼れるものもなく、ずっと出口のない暗いトンネルを歩き続けていた僕に道を作ってくれた

    昔の僕では想像もできなかったぐらいの困難に何度もぶつかって、でもその度に背中を押してくれて…

    エレレートが目を覚まし、失ってきた以上のものを取り戻せた今、思う

    シマキンさんが一緒なら、またどんなに大きな壁が立ちはだかっても、それを越えていける────いや、『抜けて』いける気がする

    そんな僕とシマキンさんの原点といえば間違いなくあの瞬間だ

    だから、話し始めはこうしよう


    アンリ「シマキンさんと最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~」


    ~完~

  • 193二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 12:29:51

    滅茶苦茶面白かったですね…ガチでね

  • 194二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 15:48:52

    スレ主感謝するよ

    "最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~"を紹介してくれて完全な読者だ

  • 195二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 22:09:29

    俺はキャプテン・壁抜けッスルだあっ

    ここまで読んでくれるなんて貴方たちには感謝するよ

    そんな君たちにいい知らせがある

    "最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~"のコミカライズ最新話がマガポケで久しぶりに更新された

    もちろんめちゃくちゃ面白い

    購入ポイントやプレゼントポイントなどの使用…とにかくなんでもありだ

    売上さえ無傷なら手段は選ばない

    ただし読む時は必ず作品応援を入れて下さい

    マガポケオリジナルランキングの"表示順"に直結するからな

    最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~ | 【第77話】 / マガポケ | 少年マガジン公式無料漫画アプリレアアイテムゲットしまくり!!ステータス爆上げしまくり!!〈回避〉スキルで初回しか手に入らないレアアイテムを無限回収し、底辺から成り上がれ!!病弱な妹のために稼がなくてはいけない少年・アンリ。だが、外れスキル〈回避〉しか持たないせいで、パーティーをクビになってしまう。絶望するアンリだったが、〈回避〉スキルで壁をすり抜けられることに気付き!?pocket.shonenmagazine.com
  • 196二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 07:37:07

    300対100の不利ダイスのババタレを余計な事が出来ないようしっかり再起不能までしばきあげ
    スキルを習得イベントを早めに起こして隠しボスをしばきあげ
    アホほど強い上に自動回復ダイス付きのパワーちゃん1号もここぞというタイミングで99を出してしばきあげ
    敵だけ最大値9999で振ってきた怪物を超えた怪物の名称未定相手に逆に攻撃判定で最大値を出してしばきあげる
    いかなる負けイベにも決して屈しなかった男
    偉大なる冒険者 シマキン

  • 197二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 16:27:20

    >>196やってることがマジで偉大なのはルールで禁止スよね

    だいたい敵の方が有利なのにことごとく勝つのつよっ つえーよ

  • 198二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 16:27:53

    このレスは削除されています

  • 199二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 16:28:32

    このレスは削除されています

  • 200二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 16:28:48

    このレスは削除されています

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