- 1◆ztAjSNyQfI22/04/14(木) 21:34:43
当ててるんだよ❤
リアバンパー❤
─────
「だぁああ!!ここでプッシュは卑怯だって!!」
盛大にアウト側にブッ飛んでいく自分のRX-7の横をカレンのシビックが華麗に交わしていく。
「あはっ♪こういうオーバーテイクもあるんだよ?お兄ちゃん」
どうやらペナルティにならないようにほんの少しだけ当てられて姿勢を崩されたらしい。どこで覚えたんだ…
「ほらほら〜視聴者さんにぃ、レースゲーならカレンにも勝てる!って宣言しちゃったのにウソになっちゃうよ〜?」
くぅ…コレじゃよわよわクソザコお兄ちゃんになって笑いモノだ…!これだけは…負けられないんだ!
「カレン頼む!もう一戦勝負してくれっ!」
「ん〜どうしよっかなぁ~?」
勝者の余裕ってやつなのか、頬に指を立てて考える素振りを見せる。
「じゃあ勝っても負けて今日はコレで終わりね?みんな〜!お兄ちゃん応援してあげてね〜!」
「頑張れー!」「ガンバ」「まけるな」と、コメントが増え続けていく。コレは本当に負けられない!そのプレッシャーに、
お兄ちゃんは──────耐えられなかった。
「ざーこ❤」「よわよわお兄ちゃん❤」「免許持ってんのか❤」そんなコメントに俺は人目をはばからず泣いた。 - 2◆ztAjSNyQfI22/04/14(木) 21:35:29
「リベンジマッチだ!カレン!」
一週間後、俺はテーブルに挑戦状を叩きつける。カレンは目を少し見開くがすぐに目を細めた。
「そこまで言うってことは…勝てる算段がついたの?」
あの配信の後、なんと全国大会で優勝経験があるという有名プレイヤーからフレンド申請された。その人と日夜走り続け、ついぞ勝つことができたのだ。
「オレはお兄ちゃん…諦めの悪いレーサー…」
1戦限り、10ラップ。鈴鹿サーキットが決戦の舞台だ。
「(こうもピッタリつかれちゃ目障りだ…!)」
長かったレースももうすでに最終ラップ。シビックが差を詰めるも抜きに来ないのはいつでも抜けるんだぞというわけか。だがこちらも無策で来たわけじゃない。1回きりのチャンスに全てを賭ける。
「(ラストのシケイン、それまでに絶対悟られてはいけない…!)」
130Rを頭で抜け、正念場に差し掛かる。
「(今までツッコミで抜けてきた…それを…変える!)」
今までのインに寄せてクリアしたシケインを、逆のアウト側にステアを切る。ほんの少し、ほんの少しだけだがカレンをインに誘導するには十分すぎた。
「へ…?ああっ!?」
気づいたようだがもう遅い。狭いコースにもつれたまま侵入する二台のインとアウトが入れ替わる。
「FFじゃコーナーのアウトで加速させるのは怖いだろう!旧式といえどFRならトラクション勝負では有利だ!」
このためにRX-7から軽い車体のレビンに乗り換えたのだ。馬力こそ大幅に減ったがそれ以上に軽量化を施した。加速勝負に持ち込むために。 - 3◆ztAjSNyQfI22/04/14(木) 21:36:19
目論見通りシビックは外側に引っ張られてゆく。その横をカタパルトに打ち出されるように加速する。しかし、
「流石だねお兄ちゃん…だまされちゃったよ…でも!シビックちゃんはスピードでは負けないから!」
「ここからは本物のパワーが必要なんだからッ!!!」
ターボとVTECで武装した"ソレ"は直線を向いた瞬間、餓えた獣のように迫る。バックミラーにその姿が鈍く光った。
「バケモンかよテメーはよぉ…」
「けど…喰われて…たまるか!!」
全力で逃げるレビン。しかし余裕綽々とスリップ圏内に入られてしまう。高回転域に交じるタービン特有のノイズが、まるで咆哮のように聞こえ心を蝕んでゆく。
残り400m。祈るようにコントローラーを握る。最早ブロックする余裕も、モニターを見る余裕すらなかった。最後に笑うは俺の夢か、カレンの意地か。
その直線で、過去も未来も消え去った。
ただ、今と今のぶつかり合う、伝説のデッドヒート。
戯れにもみえた。死闘にもみえた。
その「勝者」の名は、────
ファンファーレが2台のゴールを告げる。顔を上げた先には、
「1位…俺のレビン…!」
レビンは────────耐えた。
コンマ3、長かったレースを自分は乗り越えたのだ。俺はまたしても人目をはばからず泣いた。 - 4◆ztAjSNyQfI22/04/14(木) 21:38:01
というわけでお兄ちゃんが一矢報いるSS書きました
- 5二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 21:45:50
車はわからんが勝負が熱いことは伝わってきた
- 6二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 21:49:26
ぶっちゃけ車の詳細書くと中だるみになっちゃうのがね…
かと言って分からなきゃつまらないだろうしうーーーーーん