【閲覧注意】風紀委員長赤司ジュンコ概念 B世界線Part1

  • 1二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:23:28

    ここだけ2年後のゲヘナにてジュンコが風紀委員長に就任した世界線
    こちらは曇らせOKです。救いがあるかないかはお任せします

  • 2二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:24:32
  • 3二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:25:34

    前提設定

    風紀委員会に入った理由

    1.スカウト

    2.ヒナへの恩返しのつもりで

    3.監視目的(強制的に入らされた)

    dice1d3=2 (2)


    強さ

    1.ゲヘナ最強クラスだがヒナ程ではない

    2.ゲヘナ最強だが僅かにヒナには及ばないくらい

    3.ヒナと同等レベル

    dice1d3=2 (2)


    機動力+耐久力が強み


    不良からは通り名「飢えた赤月」と呼ばれている


    2年後のゲヘナ1年組は

    ジュンコ:風紀委員長

    チナツ:行政官

    イブキ:万魔殿議長

    ジュリ:給食部部長

    ハルカ:???(アルの元にいそう)

  • 4二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:26:36

    B世界線独自設定

    激務ゆえか味覚が薄くなっている(なくなっている?)

    胃袋がさらに小さくなっているのかよく戻してしまう


    突然の呼び出しの際

    ゼリー飲料飲みながら

    「行くわよ、準備して」

    という反応をする


    こうなってしまう要因

    1.チナツの不在

    2.万魔殿との不仲

    3.新しく湧いて出た問題児たちが多数存在する

    4.期待の重さから

    5.複数存在

    dice1d5=4 (4)


    またイオリとは


    イオリ:元々風紀委員だった為ヒナが割と周りを頼って動いていたことを知っている

    ジュンコ:ヒナ卒業後に風紀委員入りしたためヒナが割と周りを頼って動いていたことを知らない


    という差がある

    ジュンコは今もあの頃のヒナの幻影を追いかけているのかもしれない

  • 5二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:29:58
  • 6二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:30:04

    こっちも待ってたぞ

  • 7二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:31:47

    おおう…重い……

  • 8二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:32:44

    再掲

  • 9二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:33:46

    正直重くならんやろーと考えて閲覧注意つけてなかった
    だが今は俺の甘さを後悔している…

  • 10二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:33:49

    おまけ

  • 11二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:35:11

    >>8

    >>10

    再掲含めてありがとうございます

    ご迷惑をおかけしました

  • 12二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:39:51

    >>10

    おまけが重いのよ、すげえ良い

  • 13二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:44:24

    こっちの世界線だと普段の食事はどれだけ効率化できるかしか考えてなさそう

  • 14二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:50:53

    味覚ないなら栄養ありそうな食材ミキサーして飲んで傍から見て「美味しいんですか……?それ……」みたいになってそう

  • 15二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:52:42

    明らかに美味しくなさそうな色味してるのに特にリアクションもなく飲むんだよね…

  • 16二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 01:01:17

    考えてた内容開示すると
    ・味覚障害と固形物を食べられないのはストレスが原因だからしっかり休暇を取れば快復する
    ・ただ、休まずにストレスが貯まり続けると戻らなくなる
    ・今のところ定期的に先生と息抜き旅行に行ってるから大丈夫(その間はヒナが委員長復帰)
    ・ただし、快復→再発のスパンが短くなってきている

  • 17二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 01:20:11

    1.ハルナアカリの卒業で美食研の活動が縮小
    2.イズミと行動しているときに事件に巻き込まれて頭に強い衝撃を受ける
    3.新委員長になっていたイオリに助け出される
    4.後遺症で味覚喪失・代わりに体のリミッターが外れてヒナレベルの力を手にする
    5.生きがいを失い自暴自棄になるも、先生イオリ+イズミのチームに制圧される
    6.助けてもらった恩と暴走の償いに風紀委員入り、イズミも後押しする
    7.イオリイズミも卒業 ←いまここ

    みたいなのもいいかな

  • 18二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 03:13:25

    >>16

    想像以上にお労しい…

  • 19二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 03:58:47

    味覚だけだからイズミと違って変な物食うとダメージ入るかな?

  • 20二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 05:57:32

    何故か擦り切れたら近接戦闘が強くなる感じがするのは何故?

  • 21二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 07:02:15

    >>17

    加減しろバカ!

  • 22二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 08:19:54

    >>19

    まぁ明らかな異物を食ったらそうなるだろうね…

  • 23二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 08:46:02

    一年生の頃のジュンコ知ってるチナツは辛いだろうな……自分じゃ解決出来ないし、少しでも負担を減らす事しかできない

  • 24二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 09:31:10

    >>23

    「委員長、そろそろ休憩を……」


    「大丈夫よ、チナツこそ休んだ方がいいんじゃない?立ちっぱなしも疲れるでしょ?」


    「このくらいは大した事ないですよ」


    ドーンドカーンバンバンガラガラ


    「はあ……ちょっと止めてくるわ」


    「いえ、私が対応して来ます」


    「大丈夫よ、委員長の私が行った方が早いわ」


    「し、しかし……」


    「なによ……もしかして何か隠し事でも?」


    「そう言うわけでは……」


    「ふーん………じゃ、行ってくるわ」


    的な……目の前で起きてるのに干渉すらさせて貰えないかもしれない

  • 25二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 09:32:43

    ドラッグストアで睡眠薬とビタミン剤をありったけ買うジュンコ、、、
    良い、良くない?

  • 26二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 09:48:50

    >>25

    その大量の錠剤がチナツとかに見つかって

    「これ、なんですか?」

    って問い詰めるけどはぐらかされるんだよな、分かる

  • 27二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 10:35:30

    美食研のメンバーに容赦無く銃を向けるジュンコ……

  • 28二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 11:09:54

    就任したての頃はは食事を妨害されてキレてたけど、ゼリーメインになってからは移動しながら飲んでるから食事を妨害されるという段階ですらないんだよね

  • 29二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:32:06

    >>26

    チナツ「…なんですかこれ」


    ジュンコ「栄養剤よ」


    チナツ「…それだけじゃないですよね?」


    ジュンコ「………」


    チナツ「…委員長」


    ジュンコ「…はぁ。私なら大丈夫よ。書類、片付けてくるわ」


    チナツ「………ジュンコさん…」

  • 30二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 17:42:36

    風紀モブちゃんはこの状態のジュンコ委員長をどう思ってるのだろうか…

  • 31二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 18:14:19

    >>30

    3年生は変わり様に少し心配してるけど1年生とかは元のジュンコを知らないから「かっこいいな……」って思うぐらいかも

  • 32二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 20:22:18

    【閲覧注意】だしエ駄死方向の話すると食ザーに抵抗なくなってそうで良いよね
    どうせ味わかんないからって気軽にお口で抜いてくれるジュンコ好き

  • 33二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 23:23:04

    >>31

    確かに元を知らんとそんな反応になるか…

  • 34二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 23:25:34

    この世界線だとイブキ議長はどうしてるんだろう
    やっぱりジュンコを心配してるんだろうけど

  • 35二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 00:02:36

    ジュンコのスマホの履歴

    new

    [モモトーク]  『チナツ』さんから『貴方』宛です 【今日はもう大丈夫そうです そのまま直帰してください】
    [ゴーゴル]   密造タバコ うまい?「シークレットモードで開かれています4時間22分後にこの履歴は消去されます」 
    [ゴーゴル]   睡眠薬 過剰摂取 いつから副作用でる
    [ゴーゴル]   ビタミン剤 なにが補いきれない?
    [ヌマゾン]   7.92x33mmクルツ弾(30発×12) ・ 副作用の少ない!ソフト睡眠薬35錠×1 を購入しました
    [モモトーク]  『貴方』から『イオリ先輩』さんへ送信しました【上手くやれています 大丈夫です】
    [モモトーク]  『銀鏡イオリ』さんから『貴方』宛です【仲間に仕事を振ってやれ あんまり無茶するんじゃないぞ】
    [ノーチューべ] 疲れた自分を労う胃に優しい美味しいおかゆ。·ω·。)(アレンジもおすすめ を視聴しました

    old

  • 36二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 00:40:35

    >>35

    ちゃんと栄養とかは摂ろうとしてるんだけどね……もうビタミン剤とかじゃないと普通のご飯だと戻しちゃうから……

  • 37二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 00:54:48

    成り立ての頃

  • 38二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 00:55:04

    >>35

    密造タバコの奴は多分自分一人で解決しようとしてる案件なんだろうな…

  • 39二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 01:02:22

    >>37

    後期になってしまうのは果たして何ヶ月後なのか…

  • 40二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 01:05:12

    >>37

    定期的に神絵が給付されるスレは神だってよく言われてる

  • 41二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 01:08:02

    このレスは削除されています

  • 42二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 01:29:36

    >>41

    食ザーは特に人を選ぶジャンルだからな…

    もう派生スレとして立てた方がいいんじゃないか

  • 43二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 08:28:47

    >>29

    多分何言っても折れてくれないから若干諦めてるんだろうなチナツ…

  • 44二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 12:07:49

    >>37

    つ、角が……

  • 45二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 12:33:35

    なんというか美食研への印象というか親愛度も狂ってきてそう
    こうなる前までは「友達」「仲間」って印象だったけど今は「規則違反者」「厄介者」としか見れてないとか

  • 46二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 19:14:07

    本当はお腹いっぱい美味しいものが食べたいけど、既に体は固形物を受け付けないとかいう『飢えた赤月』に相応しい末路を辿っていく

  • 47二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 19:24:39

    二つ名の意味が変わってくるな…

  • 48二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 20:24:31

    >>35

    >>38

    荒れたらすぐレス消すからちょっと語らせて、、

    「押収した煙草をポッケに入れたままにしちゃって、軽い気持ちで特に何も考えず調べてみちゃった」 ていうのは?

    (なおその後正気に戻って煙草は処分したけど自分は何を考えてたんだって葛藤する)

  • 49二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:53:57

    書類はそつなくこなすがいつ寝てるんだってレベルで机に向かってる
    そして暴動が起きれば出ていって帰ってきたらまた机に…あれいつ寝てるんだ?

  • 50二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:04:53

    書類仕事だけだったら20時ぐらいには家に帰れるでしょ

    暴動が起きたらどうなるのかって?  学校にお泊まりだな!!

    .,,..,,,,_
    / ,' 3  `ヽーっ
    l   ⊃ ⌒_つ
    `'ー---‐'''''"  

  • 51二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 23:31:55

    「委員長、失礼します……委員長?」

    (あの委員長が机に突っ伏して……もしかして……!)

    「ふう……よかった、寝てるだけでしたね……」

    って寝息が小さ過ぎて死んでるか疑われるジュンコ委員長もいると思います

  • 52二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 00:08:31

    >>45

    かつての美食研究会メンバー相手に死んだ魚のような目を向けてから別の騒ぎを鎮圧しにいくジュンコ…

    なんと声をかければいいかわからないまま去っていくその背が遠のいていくのを見ていることしかできないハルナたち…

  • 53二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 09:33:21

    >>52

    ハルナ「ジュンコさん…」

    ジュンコ「何?言い訳なら聞く気はないわよ」

    ハルナ「いえ、この前とても美味しいお店を見つけたんです。よろしければ…」

    ジュンコ「…」


    ジュンコはハルナに目線を向ける。

    その死んだ魚のような目は、かつて一緒に活動を共にしていた仲間に向けるには、あまりにも侮蔑に塗れた目だった。


    風紀モブ「委員長!向こうでも暴動が…」

    ジュンコ「わかったわ。向こうは私に任せて、こいつら連行しておいて」


    風紀委員とそんな会話を交わしたジュンコは騒ぎを鎮圧するべく、ハルナたちに一切の目線を向けずに走り去っていく。

    まるで単なる規則違反者の対処を終えただけのように振る舞うジュンコに、ハルナたちは何も言えなかった。

  • 54二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 10:00:58

    >>53(とは別人だけどその後に)


    合流した後続組と現場に走っている最中、、


    ジュンコ脳内 (はあ今日3回目の鎮圧か最近はヘルメット団が温泉開発部よりも派手な行動をしているような気がコッキングハンドルを右から先に次左を引いてと昔と比べたら温泉部はどうなんだろまあ美食研に入ってたから知る由もないんだけど弾倉はフルに入っているのを2丁ともいれてるよな美食研究会は最近どうなんだろうみんな美味しいもの食べてるんだろうな今の私を見て皆んなはどう思うんだろどっちもフルオート設定だな安全装置を切ってとヒナさんはシャーレに就職したけど私は就職どうなるんだろうまあ私は今頑張らなきゃなんだけどn)

                    『『 バァ ン 』』  『ヒュゥン』 』

                     『       「危なっ!」    』


    ジュンコ (ん? え。私指トリガーしてたの?モブちゃんは大丈夫?え、ちょっt待ってモブちゃんに当たってない!?)

  • 55二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 15:59:49

    >>54

    続きは!?これの続きはないんですか!?!?

  • 56二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 16:49:52

    味覚の細胞って減ってく一方なんだっけ?合ってるなら晴れるのほぼ無理っすね

  • 57二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 20:49:43

    >>17

    これをモデルにした「いいんちょGenesis」SSその1 保守がてら分割してあげます


    「私たちって、ずいぶん丸くなったと思わない?」

    「えぇ? そうかな。別に太ったつもりはないんだけど。あれ、もしかしてジュンコは体重増えたの?」

    「体形の話じゃないわよ!!」

     ゲヘナ郊外。デパ地下のフードコーナーで、ジュンコとイズミは管を巻いていた。

     ありふれた日常。眼の前には、売り場で見つけたお宝が並べられていた。キラキラと輝く宝石のようなスイーツや、食欲を刺激する料理の数々。

     これは美食研究会の活動の一環。デパ地下グルメの品評会。なんて言えば聞こえはいいが、私たちにインフルエンサーとしての熱量はそれほどなかった。おいしければ発信する。だからと言って、まずいから爆破なんてことはしない。銃の乱射くらいはするだろうけど。

     ハルナとアカリが卒業してひと月が過ぎた。私たちは相変わらず美食研究会の活動をしている。しかし、活動内容はだいぶ変わったと思う。

     まずい・料理の質が悪い・値段の釣り上げ・接客が悪質。ハルナとアカリが聞けば、一目散に爆破していたであろう項目。しかし残された私たちに、そこまでする気はなかった。多少の腹いせを精算したら、ひどく悪質だったものはゲヘナ風紀委員会をはじめとした各自治区の治安維持組織に通報してそれでおしまい。過剰な報復には出なかった。

     店の発信についてもそうだ。ハルナとアカリは逐一食事の報告をSNSにアップロードし、美食のインフルエンサーとしてのカリスマを有していた。しかし私たちは、そこまで精力的に発信することはなかった。そのとき思ったことを、発信したくなった時にだけアップロードする。まるで普通の女子高生のような感覚でアカウントを運営していた。そのおかげでフォロアーの数は受け継いだ時から半分ほどに減っていた。まぁその大半は料理の内容ではなく、次の爆破予告への警戒や、爆破された店を見て面白がっている層だからいてもいなくても同じだ。

     そうして私たちを見る目は大きく変わった。美食研究会は美食テロリストから、過激なクレーマーにグレードダウンしていた。

  • 58二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 23:42:53

    保シュトゥルムゲヴェーア44(激ウマギャグ)

  • 59二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 04:09:19

    >>57

    「――そうだねぇ。爆破までするのは面倒くさいもん」

    「今までが異常だったのよ。あいつらとつるんでいたから私も感覚が狂ってたけども。本来は、然るべき組織が対応したらそれでいいの! 私たちがいちいち制裁を加える必要ナシ!」

    「そんなこと言って、一昨日のお店では白リン弾ばら撒いてたじゃん」

    「あれは! お腹が減っていて気が立ってたの。ちょっとやりすぎたけど、当然の報いよ!!」

    「あはは、あれは面白かったな。昔を思い出した」

    「昔って、まだひと月しか経ってないじゃない。そんなに風紀委員に追われる生活に戻りたい?」

    「うぅん・・・それは御免かな。ヒナ委員長が卒業したにしても、イオリも厄介だからね。指名手配も解除されたんだし、もう少し自由を楽しんでからにするよ。」

    「前も結構自由にやってたと思うけど・・・。てか、その内爆破再開する気なの!?」

     苛烈さが鳴りを潜めた美食研究会。もう彼女たちを危険視する者は、一部を除いていなかった。

     二人で取り留めない話をしていると、突如、室内を強い揺れが襲った。

    「えっ地震・・・!?」

    「つよっ! きゃっ!?」

     照明が一斉に切れて、あちこちで棚が倒壊する音と、買い物客たちの悲鳴が聞こえる。しかし、それを掻き消すけたたましい地響きがすべてを飲み込んだ。

     ――まずい。なにこれ。こわい!!

     頭の中まで揺さぶられる感覚。考えまでもがぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、纏まらない。胃の中身も振り回されたペットボトルの炭酸飲料のようにせり上がってくる。強いストレスによる胃の痙攣と、物理的な振動。二つの揺れにより、先ほどまで食べていたデパ地下グルメを戻してしまう。強烈な胃液による不愉快な酸味。先ほどまでの多幸感がすべて塗り潰されていく。

     さらにジュンコの受難は続く。ビルの天井が崩落してきた。数トンにも及ぶコンクリートの散弾。暗闇で、下を向いて戻していたジュンコは、それに気付くことができなかった。

     頭に強い衝撃を受ける。頭蓋骨が陥没する嫌な音が鮮明に聞こえた。悲鳴を上げる余裕もなく、ジュンコはあっけなく瓦礫に飲み込まれた。ジュンコだけではなく、イズミを含めてこの雑貨ビルにいたすべての人間。その誰もがこの厄災から逃れることはできなかった。

  • 60二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 09:32:02

    このレスは削除されています

  • 61二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 15:44:26

    保守

  • 62二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 20:10:35

    >>59 「いいんちょGenesis」SSその2


     ジュンコが次に目を覚ましたのは、純白の室内だった。

     見覚えのある天井。風紀委員会にボコボコにされるたび、治療のために連れてこられたゲヘナ救急医学部の病棟だ。

     徐々に霞の掛かっていた思考が鮮明になっていく。確か私は、デパ地下で強い揺れに襲われて、そこで頭に強い衝撃を。

    「アッ!?」

     突如頭に割れるような痛みがジュンコを襲った。いや、実際あの場で割れていた。咄嗟に抑えた頭はギプスで固定されていた。開頭手術によって砕けた頭蓋骨をボルトで固定した跡だった。

     それと同時に、恐ろしい違和感にも気が付いた。

     ――私の、角は?

     改めて頭を触る。右角が、見当たらない。血の気が引いた。どんなに触っても、あるのは切り株のような円形の何か。牛の角のような前方につき出す自分の角が、あるべきものが、そこにない。

    「え・・・あ・・・」

     喉が震えた。張り付いたように、まともな声が出せない。空気が漏れるような、言葉にならない何かだけが漏れ出す。

     そこに救急医学部の生徒が巡回にやってきた。目を覚ましたジュンコに気付くと、すぐさまナースコールを押して、ジュンコを宥める。しかし、錯乱しているジュンコはそれを振り払った。その刹那。生徒は強かに壁に叩き付けられた。

    「・・・え?」

     眼の前には口の端から血を垂らしながら、力なく倒れる少女。壁には牛が突進したかのような大きなクレーターができていた。

     これ、私がやったの? ちょっと腕が当たっただけで、なんでこの娘は動かないの?

     明瞭になりかけていたジュンコの脳内に、過剰な情報が雪崩れ込んでくる。受け入れがたい現実が、襲い掛かる。

     なんで!? 私どうしちゃったの!?  怖いよ・・・。誰か助けてよ・・・。

    「うっ!?」

     不意にやってきた吐き気。あの時と同じ、強いストレスによる胃の痙攣。咄嗟に口元を抑える。食道を焼くような胃液の酸性。眠り続けた点滴生活で、胃の中には何も残っていなかった。それでも何かを吐き出そうと、体が過剰反応する。口の端から涎が垂れた。だが。

     ――味がしない。

     確かに舌の上に到達していた胃液は、しかし、デパ地下で味わった酸味を携えてくることはなかった。

  • 63二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 22:40:06

    >>62

    腕振っただけでキヴォトス人にそこまでのダメージを与えて壁にクレーター残すってミカ並のパワーってことでいいのかな…?

  • 64二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 06:53:23

    保守

  • 65二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 12:35:48

    やべぇ

  • 66二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 19:09:16

    >>62 「いいんちょGenesis」SSその3


    「ジュンコ! 目を覚ましてよかった!!」

     病室に、イズミがやってきた。そのまま私に抱き着く。顔に押し当てられる柔らかな感触に多少の敗北感を覚えながら、私は安心感に包まれていた。

    「林檎持ってきたよ。一緒に食べよ!」

    「それあんたが食べたいだけでしょ!」

    「あー! これ病院食? 食べていい?」

    「ちょっと!?」

    「うわー! 味うすーい。おいしー!」

    「褒める要素ある!?」

     イズミは相変わらずだった。彼女もあの場にいたけど、それほどひどいケガをしていないようでよかった。というか、普通はその程度で済むはずなんだ。私だって、ハルナたちと一緒に出掛けていたころは爆発に巻き込まれることは多々あった。風紀委員にもメタメタにやられたことも数えきれない。だけどここまでの大ケガをしたことはない。今回はそれだけ不運だったんだ。

    「邪魔をする。赤司ジュンコ。今回は災難だったな」

    「イオリ?」

     ジュンコは珍しい相手を連れてきた。新風紀委員長:銀鏡イオリ。先代であるヒナが肩にかけていたロングコートを羽織っている。未だ見慣れないが、様にはなっていた。

    「あんたを救助してくれたのもイオリなんだよ」

     イズミはニコニコと笑顔で、イオリの肩を抱いた。イオリは怪訝そうな顔をイズミに向けながら、肩に乗せられた手の甲をつねった。イズミは溜まらず悲鳴を上げて手を放し、赤くなった部分に息を吹きかける。それに対してイオリは、シッシッと手を振り離れるようにジェスチャーした。

    「・・・そう。世話になったわね」

    「ふん! 規則違反者であろうとゲヘナの生徒。うちの生徒を助けるのは風紀委員会の義務だ。

     それに、今のお前らは昔ほど嫌いじゃない」

    「なになにぃ? だいぶ優しくなったじゃん!」

     懲りずにダルがらみしてくるイズミに対し、今度はデコピンを叩き込むイオリ。再びイズミは悲鳴を上げ、額を両手で押さえて後ずさる。

    「お前は規則違反者としてではなく、馴れ馴れしさから個人的に嫌いだ」

    「ひどくない!?」

     なんかこの二人、知らないうちにだいぶ仲が良くなってる? 私が眠っている間、いったい何があったんだろう。

     イズミが涙目でイオリに詰め寄るが、これ以上は時間の無駄だと判断したか、イオリはそれを無視して本題に話を戻す。

  • 67二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 22:02:28

    >>66


    「お前が巻き込まれた事故・・・いや、事件は、お前が眠っている間に風紀委員の方で片づけておいた」

    「事件?」

    「ああ。あのデパートが入っていた雑貨ビルのオーナーが救いようのないクズでな。保険金目的に自分で破壊工作をしたんだ」

    「えっ!?」

    「倒壊した雑貨ビルの破片は周囲のビルにも被害を与え、巻き込まれた被害者数は200を超える。

     当然風紀委員会としても、事故調査に乗り出した。巧妙に隠蔽されてはいたが、まぁ情報部と万魔殿、そして先生と協力した結果、オーナーの悪事が明るみになったんだ」

    「私・・・そんな理由で・・・」

    「お、おい。そんなに気を落とすな。もうじき退院できるそうじゃないか。角に関しては・・・まぁ、ご愁傷様だが・・・。

     でも、お前には美食の探求が」

    「無いわよっ!!」

     私の叫びに、室内は静寂に包まれた。その豹変ぶりに、二人は驚愕の視線を向ける。

    「私には・・・もう、なにも・・・」

    「じゅ、ジュンコ・・・?」

    「私・・・味がわからないの」

    「え・・・」

    「あんたが食べた病院食。味が薄いって言ったけど、私には、それすらわからない。何を食べても、味がしない・・・。

     こっそり病室を抜け出して、購買でいろんな物を買ってみたけど・・・全部同じだった。綿を口の中に押し込んでいるようにしか思えなかった」

     私はいつの間にか泣き出していた。悔しさなのか、悲しさなのか。わからない。ドロドロに溶け合ったどす黒い感情は、もはやなんと呼べばいいのだろう。

  • 68二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 02:26:56

    いつから味覚がなくなっていったかは人それぞれだけど委員長になってからなくなったパターンだと短期間にかかるストレスとんでもねぇな
    ヒナちゃんは凄い(小並感)

  • 69二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 03:05:38

    >>67


    「味覚が・・・なくなったの?」

     イオリが辛うじて声を絞り出す。イズミは口元を手で押さえ、言葉を失っていた。

    「しかも、私の愉しみを奪っておいて、神様は代わりに力を与えていった。

     ほんっと、ひどいよね・・・」

     イズミが置いた紙袋の中から、林檎を一つ取り出した。血液のような赤い林檎。それを軽く握る。するとたちまち形が崩れ、果汁と砕けた果肉が病院食の中に混じっていった。

     前まで私の握力では、林檎を握り潰すなんてことはできなかった。足の速さだけが取り柄だった私に、怪力なんて無縁なものだった。それが唐突に授けられた。その代償に、私の一番大切なものを勝手に奪っていった。

     神様って、こんなに傲慢なの? 確かに、私が食べようとすると不幸に見舞われることは多々あった。そのたび神様を呪うこともあった。だけど、これはひどすぎるよ。食べることそのものに、幸せを感じることすらできなくするなんて。

    「もう・・・帰って頂戴」

    「あ・・・うぅ・・・。ごめん・・・」

     イオリは何か言おうとしたが、結局言葉が出てくることはなく、肩を落として病室を出ていった。

    「ジュンコ・・・」

    「出ていって!!」

     私の叫びにイズミはびくりと肩を震わせ、そのままイオリの後を追っていった。

    「なんで・・・何でなのよ・・・。あんまりじゃん・・・」

     涙は止めどなく溢れ続けた。ついには嗚咽を漏らして泣き出した。一度爆発した感情は、もう抑えることはできない。

     私はもう、食べることに感動を覚えることはない。食べるたびに、不快感を抱くことしかない。あんなに楽しかったことが、今はもう苦痛でしかない。そして、これからも。そう思うと、世界から色がなくなっていくように感じた。林檎の鮮やかな赤が、私にはひどく褪せて見えた。

  • 70二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 08:17:21

    SS期待してます

  • 71二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 17:12:20

    >>50

    家に帰れない日のストレスヤバそう

  • 72二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 20:08:07

    >>69 「いいんちょGenesis」SSその4


    「はぁ、はぁ。やっと止まりやがった・・・。」

     イオリは息を荒げながら、口の端から垂れる血を袖で拭った。白かったブラウスが赤く染まる。

     ゲヘナ郊外。強い雨が降る街ではいたるところで爆炎が上がり、黒煙が曇天と交じり合っていく。街の大動脈は寸断され、ビル群は何千年も打ち捨てられて倒壊した神殿の柱のようにぽっきりと折れていた。

     それは怪獣同士が衝突した跡だ。街を軽々破壊するだけの出力を有する怪物が二人。事前に爆弾を仕掛けていたわけではない。ずさんな建築が為され、脆くなっていた建物もあんまりない。ただ二人が戦っていた。それだけのことで、余波が街を破壊した。

     異常な強さだった。かつての風紀委員長:空崎ヒナを彷彿とさせる破壊力。それを個人で所有する生徒。現代風紀委員長:銀鏡イオリと、美食研究会所属:赤司ジュンコが衝突した。

     それは蒼天の霹靂だった。風紀委員に知らせが入ったのは、最初の爆破が発生してから一時間後の出来事だった。その60分で、複数の飲食店が倒壊していた。数と距離、そして速度。すべてが異常だった。当初は組織的犯行かとも疑われた。だが、実態は違った。目撃情報は、口をそろえて赤い何かが通り過ぎたと語った。単独犯だった。

    「イズミから聞いたよ。ジュンコ。

     お前・・・何やってんだ。自分の思い出を壊して回って。」

     犯人の足取りが負えなかった。早すぎて追いつけない。先回りしなければ対処ができない。しかし、破壊対象が飲食店であること以外わからない。目星の付けようがなかった。そんなとき、イズミから連絡があった。「ジュンコを止めて!!」。

     イズミの協力により、破壊対象の絞り込みが行われた。それはかつて、美食研究会が巡った道程。ジュンコは、二度と取り戻せない記憶の味を壊して回っていた。

     イオリの眼の前には、破壊された瓦礫の山に座るジュンコの姿があった。デコボコのリクライニングチェア。腰を痛めそうな鉄筋剥き出しの即席の椅子に、ジュンコはふんぞり返るように座り、天を仰いでいた。

     実体はイオリによって制圧されていた。背中からビルに叩き付けられ、衝撃でビルが倒壊した。その一撃が決め手となり、赤い怪物は動きを止めていた。

  • 73二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 02:30:27

    酷い被害だ…

  • 74二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 04:07:02

    >>72


     ジュンコは虚ろな表情をしていた。焦点の定まらない眼。涙と雨が混じり合い、口の端からは血が垂れていた。無論、鉄の味はわからなかった。

     イオリはジュンコの許まで歩み寄る。悪い足場をものともせず、鉄筋コンクリートの破片を踏み砕きながら。そしてジュンコの胸倉を乱雑に掴み、互いの顔へと近づける。こちらを見ろと言わんばかりに。

    「お前を瓦礫から引っ張り出すのは、これで二度目だな。

     あの事件で変わったのは聞いている。可哀そうだとも思うよ。だけどさ、これは子供の癇癪としては度が過ぎてるだろ。力を持つ者には責任が伴う。この力がお前の望んだものでなかったとしてもだ。

     まして、思い出を壊すために振るうなんて、お前も望んだ使い方じゃないだろ。そんなの。」

     ジュンコの表情は変わらない。未だ別の何かを眺めているようだ。

    「ジュンコ!!」

     そこにイズミの声が響いた。雨音にも負けない力いっぱいの叫び。

     その隣には先生もいた。常にイオリの指揮をして、拮抗したジュンコとイオリの衝突を、僅差でイオリが優位になるようサポートに徹していた。

     イオリは一度振り向くと、そのままジュンコの身体を放り投げた。

    「うわぁ!?」

     イズミは慌ててジュンコの身体を抱きかかえる。あまりにも軽い。もとより小柄だったジュンコは味覚障害によりほとんど食事をとることは無くなり、さらにやせ細っていた。それでいてあれだけ暴れまわった。空腹の暴君の名は伊達ではない。

    「ジュンコ!? ねぇって!!」

    「安心しろ。」

     ジュンコの尋常ならざる状態に、イズミはさらに慌てる。それに対し、イオリは一足飛びで瓦礫から跳び降りると、イズミの許まで歩いてくる。

    「起きてる。ただ・・・」

    「ショックが大きいみたいだね・・・」

    「・・・うん」

     先生も心配そうにジュンコを見やる。殻に閉じこもった彼女に、いったい何を言えばいいのか考えあぐねている。

  • 75二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 11:00:52

    空腹の暴君
    また物騒な二つ名ねぇ…

  • 76二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 19:51:27

    >>74


    「ねぇジュンコ。何でこんなことしたの?」

     しかしイズミは違った。言うべきことは、すでに決めているようだった。

    「ハルナやアカリと一緒に回ったお店は、もうほとんど破壊されちゃったね。

     あなたは皆が笑顔で食事している姿が憎い? 自分は二度と、その食卓の中には入れないって思ってる?

     だったら、それは違うよ。」

    「・・・?」

     イズミの言葉に、ジュンコの表情が一瞬揺らいだ。

    「あなたは憶えている? 美食研究会は、ただ食べるだけの部活じゃなかったことを。

     美食を探すだけなら、SNSで情報を共有するだけでいい。だけど私たちは、集まってたよね。それは何で?」

    「・・・」

    「ハルナがよく口にしていた。美食にはシチュエーションが大事だって。何を食べるかだけじゃなく、誰と食べるかも重要だって」

    「・・・」

    「あなたの美食には、料理の味しか刻まれてなかった? 私たちとの時間は愉しくなかった? 私はすっごい愉しかったよ」

    「・・・私も、たのしかった」

     思い出の味は、もう頭の中にしか残されていない。眼の前にそれが出されても、思い出に縋ることしかできない。それはあまりにもつらい現実だった。

     新しい味を知ることもできなくなった。私の美食の時間が止まった。それはあまりにも残酷な宣告だった。

     かつての思い出に浸りながら、現実を破壊する。記憶の中の料理より、本物の方があまりにも眩しかったから。――みんなで食事ができず、除け者にされるのが寂しかったから。

     だけど、違った。除け者になんてされてない。私が、避けていただけなんだ。

    「ジュンコには、新しい美食を見つけてほしい。たとえ味がわからなくても、きっとあなたなら、味わう方法を見つけられるはず。」

     イズミはいつの間にか泣いていた。顔は笑っているのに、涙が止めどなく流れていた。それは雨ではない。彼女の裡から湧き上がるやさしさだった。

    「だから・・・また。やりなおそ?」

    「・・・うん!」

     つられてジュンコも泣き出した。先ほどまでの雨と混じった冷たいものではなく、イズミのやさしさに触れた温かな涙。決して雨と混じることのない、強い感情が籠っていた。

  • 77二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 20:38:39

    >>76


    「ごめん・・・。皆に迷惑かけて。私、取り返しのつかないことをしちゃった。あんなおいしかったお店を、全部、私が・・・」

    「それについては、私も一緒に謝るよ。そして、一緒に考えよう。どうしたら、皆に赦してもらえるのか」

     先生が、優しくジュンコの手を取った。その手は雨と血で冷たくなった私の手をじんわりと温めてくれた。安心する。冷たい水底から救い上げてくれる手の感触。これから待ち受ける重責を支えてくれる、頼もしい手だった。

    「まぁ、店の再建費用については、裡とシャーレの方でなんとかするよ。万魔殿のタヌキはヒナ先輩と一緒にどっか行ったからな。財政に関しては多少余裕があるはずだ。いいかな、先生」

    「うん、ありがとう。私も連邦生徒会に協力を仰いで、資材確保してみるよ」

    「先生・・・。ありがとう」

     皆優しい。大量破壊をした私なんかのために、手を貸してくれる。特に、風紀委員会が味方になる時が来るなんて、想像したこともなかった。

    「それでだな・・・あー・・・」

     イオリが頭を掻いて、目を逸らす。何やらバツが悪そうに。

    「ジュンコ。風紀委員会にはいってみない?」

    「・・・え?」

     見かねた先生が、苦笑いと共に提案した。

    「裡は万年人手不足なんだ。迷惑かけてきたお前ならわかるだろ。

     最近のお前たちはおとなしくなったが、それでもゲヘナには問題児が多い。特に温泉開発部。というかカスミ! あいつヒナ先輩が卒業した途端、去年の5倍の勢いで温泉開発を始めやがって!! 手が回るわけないだろ!?」

     それはイオリの絶叫だった。というより発狂に近かった。余程フラストレーションが溜まっているらしい。先ほどまでのヒナのような冷徹さは霧散し、昔ながらのイオリらしさが顔を出す。

    「・・・はぁ。という訳で、人手が欲しい。お前の武力が欲しい。

     街を破壊した罰として、社会奉仕の一環という形で裡に入籍させれば、今回の一件でお前が過剰に追及されることを止めることができる。万魔殿としても、これだけの武力を有する生徒を制御する名目があったほうが、費用を工面する大義名分ができて動きやすいだろう」

    「イオリが政治をできるようになってる・・・!」 先生が口元を手で覆いながら、感動を口にする。

  • 78二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 21:10:55

    >>77


    「だぁ!? うっさい!! アコちゃんに、委員長になるんだったら腹芸も少しぐらいできるようになれって仕込まれたんだよっ!! ったく、チナツが残っていれば私がやる必要なかったってのに」

    「でも、そっか。どうかな、ジュンコ。しばらく風紀委員会をやってみるのは」

    「先生・・・。そうね・・・。二度も助けられた義理がある以上、断るわけにはいかないわね。

     よろしくお願いするわ。委員長」

    「ハハ。ああ、ようこそ。ゲヘナの地獄へ」

     イオリは物騒なことをうそぶきながら、手を差し出した。それを私は受け入れた。先ほどまで私と互角に渡り合った手は、想像に反してなよやかだった。しかし握力は痛いくらいだった。それが期待の表れであることは、彼女の表情を見ればわかる。

    「えぇ! ジュンコ美食研究会辞めちゃうの?」

    「・・・そうね。今のままじゃ、おいしく食事がとれないからね。しばらく幽霊部員になるわ」

    「うわぁん! 寂しくなるよ!」

     イズミは先ほどとはまた違った涙を流す。ある意味見慣れた顔だった。それを見てると思わず吹き出しそうになる。

    「なんだ? 一人が寂しいのか? だったらお前も歓迎するぞ。風紀委員会は万年人手不足だと言っただろ」

    「え? ええ!?」

    「いいじゃない。イズミもいらっしゃい」

    「うぅ・・・。いっぱいお仕事して、お腹を空かせれば、おいしいものがもっとおいしくなるかな?」

    「うん。きっとね。達成感が、最高のスパイスになってくれるよ。

     いつぞやの豚骨カップメンとは違う知見が得られるさ」

    「いちごジャムも添えてね!」

    「え・・・何それ。食べ物なの・・・?」

     イオリが口元を抑える。味を想像して、少し気分を害したようだ。

    「ひどくない!? おいしいんだから!!」

    「あんたのおいしいを鵜呑みにするのは危険なのよ」

    「ジュンコまで!?」

     雨はすでに止んでいた。雲の切れ間から光が差し込む。それはジュンコの門出を祝うかのように。黒い雲が裂け、蒼天が姿を現す。霧状になった雨が、キラキラと日光を浴びて反射した。そらには契約の虹がかかっている。

     私の美食は終わったものだと思っていた。だけど、皆がいてくれた。空腹感を満たすだけが美食ではないと教えてくれた。だったら新しく見つけよう。私だけの美食を。私だけの美味礼賛を。私の青春は、――終わらない

  • 79二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 06:58:47

    保守

  • 80二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 14:36:36

    チナツがどうなってるか(行政官になってるか救急医学部の部長になってるか)によって分かれるけど行政官になってるルートならお互いドロッドロの共依存になっててほしい

  • 81二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 20:13:04

    >>78 「いいんちょGenesis」SSその5


     風紀委員会での活動も1年近くが過ぎた。

     苛烈を極める内容だった。デスマーチという言葉がこれほど合う場所があるなんて、思いもしなかった。毎日が戦場だった。シーシュポスの大岩でも、もう少し加減をしてくれただろう。イオリが地獄とうそぶいたことが、吹かしでもなんでもない事実であると知った時の衝撃ときたら、今でも忘れられない。私も昔は、迷惑をかける側だったのかと思うと申し訳なさで胸がいっぱいになる。

     それでも走り抜けられたのは、皆の支えがあったからこそだった。私一人ならとっくに挫けていた。

     そうして今、イオリとイズミは卒業を迎えた。

    「一年間お疲れ様。まさか、最後まで風紀委員会に残っているとはね」

     イオリがやさしい笑みを魅せる。

    「そうだねぇ。おかげで風紀委員会のアカウントは、お昼ご飯をアップロードする場になってたね」

    「それはお前らが勝手にやりだしたことだろ! 後輩どもまで真似しだして、収拾がつかなくなったわ!」

    「アハハ! でもそのおかげで、フォロワーいっぱい増えたじゃん!」

    「大事な広報を上げたらリプライが『つまらない』『バえない』『うまい話をよこせ』で毎回埋まるのはおかしいだろ!?」

     この二人もだいぶ距離感が近くなった。これも美食研究会のころからは考えられないことだった。正直のこの組み合わせがハマるなんて本人たちを含め、誰にも予想できなかっただろう。

     イズミが用意した巻貝を食べさせられ、イオリの口の中が紫色に染められたり、二人のミント好きが奏して、裏で『ミントクラブ』『歯磨き粉倶楽部』なんて呼ばれていたり。あれなんか、今更になってイオリが可哀想になってきたな。

     メルカルトとタンムズ。二人の属性は、思いのほか似通っていた。

  • 82二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 20:31:33

    >>81


    「美食研究会のアカウントはジュンコに任せるよ!」

    「裡のアカウントはゲヘナ風紀委員会だ! 私物化すんな!」

     私とイズミ。最後の美食研究会が風紀委員会に帰属したことにより、美食研究会の活動は終了していた。それに合わせてアカウントも更新を停止していた。惜しむ声は多かった。我ながらはた迷惑な活動をしていた割に、結構人気があったんだなと感慨に更けた。

     しかし、イズミが風紀委員会のアカウントを乗っ取ったことにより、美食研究会時代のフォロワーがこちらに雪崩れ込んできた。当然客層が違うので、最初は衝突もしていたが、いつの間にか二つの派閥は迎合していた。流石はゲヘナの住人。面白ければ受け入れる。

    「まぁボチボチね。その辺は後輩たちに任せるわ」

    「グルメリポート、期待しているね」

    「ちゃんと会報を上げろ!! ・・・いや、それさえできていれば、あとは自由にしていいや。

     何せ、お前が次の風紀委員長なんだからな」

    「ええ、任せて頂戴。『元風紀委員長』」

     そう。今日は卒業式。世代交代の日だ。

     私は、その能力を買われ、風紀委員長の座に据えられた。私には過ぎた肩書だと思うけど、案外後輩たちは受け入れてくれている。

    「あとは任すぞ。風紀委員長」

     イオリはロングコートを脱いで、私の肩にかけた。ヒナが羽織っていたことで印象深い暗紫色のコートは、相応の重さを以て私を迎えた。これが風紀委員長の重責。私が背負い、次の世代に託すべきバトン。

    「あとそれと、これも受け取って!」

     今度はイズミが桐製の箱を取り出した。

    「何これ?」

    「開けてみて」

    「・・・! これ」

     中に入っていたのは、私の角を模した模型だった。

    「お前の右角。ずっとそのままにしとくのは締まらないだろ。だからこいつと一緒に、義角を造れる職人を探してたんだ。

     お前の動きに耐えられる物はそうそうなくてな。1年掛かったけど、どうにか選別として間に合ったよ」

    「貸して貸して! つけてあげるよ!」

     イズミが箱から角を取り出すと、それを私の側頭部に装着した。カチっという小気味の良い音と共に、頭に懐かしい重さが戻ってきた。

  • 83二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 20:36:45

    >>82


    「ピッタリだね! ほらこれ、どう?」

     イズミはスマホをインカメラに切り替え手渡してきた。映るのはシンメトリになった自分の頭。幾多もの戦いをくぐってきた左角にはいくつもの小さな傷がついているが、新品の右角は一切の傷がなく、頭の上で輝いている。

    「その裡、そっちの角も傷が増えて馴染むだろう。そうなった時こそ一人前だな」

    「もー! 素直に褒めなよ。カワイー!! ほらっ」

    「うっさい!」

    「うへへ。ありがとう。大事にするわ!」

    「!」

     ジュンコの満面の笑みに、イオリが息を呑んだ。

    「カワイー!! ほら、イオリ!」

    「う、うっさい! ・・・かわいい」

    「はいはい、ありがと。イオリにしては上出来じゃない?」

    「それどういう意味だよ!」

    「怒んない怒んない」

    「撫でんなっ!!」

     イズミがイオリを引き寄せ、抱きかかえながら頭を撫でる。それを駄々をこねながらも、イオリは振り払おうとはしなかった。

     イズミがイオリを宥めている間に、私もさっさと伝えるべきことを言っておこう。イオリは解放されたら、またガミガミと小言を言い始めそうだし。

    「先輩方。大変お世話になりました。ご卒業、おめでとうございます!」

    「・・・うん。ありがとう」

    「ああ、頑張れよ」

     二人は私の言葉に、一瞬動きを止めた。しかしすぐに、柔和な笑みに切り替わる。

     あなたたちは、私にとって大切な先輩だった。危うかった時期を救ってくれた大切な人。つらくなった時に手を差し伸べてくれた人。そんな二人の門出を、祝うことができて本当に良かった。

     今度は私が救う番だ。私が彼女たちから救われたように。私が次の世代を助ける番だ。そのために、私は風紀委員長の重責を背負った。私にしかできないことがあったから。私だからできることだったから。望んで手にした力ではなかった。大きな代償を支払った。けれど、そのおかげで今の私があり、今の繋がりがある。それは私の大切な宝物。私の美食を彩る、大切な要素だ。

  • 84二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 00:47:39

    >>83

    良かった…いや全部良いって訳じゃないけど…

  • 85二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 08:34:22

    >>80

    チナツは「委員長には私が付いていてあげないと…」って思っててジュンコは「チナツだけは何があっても守らないと…」って思ってるとか

    付き合いが長いからこそそういった重い感情がもろに出るとか

  • 86二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 14:56:09

    >>85

    チナツも相当お労しいな…一番近くにいるのに何も出来ない

  • 87二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 19:11:58

    >>81 「いいんちょGenesis」SSおまけ


     とある昼下がり。私は風紀委員会委員長:赤司ジュンコ先輩と共に、カフェテラスで昼食を食べていた。

     日夜暴動がおこるゲヘナに於いて、食事時だけは唯一憩いの時間だった。それはジュンコが作り上げた不文律の存在によるものだった。『空腹の個群(レギオン)を怒らせるな』。

     空腹の委員長はとても気が立っている。いつもの天真爛漫さは陰り、殺意にも似た冷徹な視線を相手に向ける。とは言っても、それが私たちに向けられることはない。そのすべての破壊衝動は、置いたが過ぎた規則違反者に余すことなくぶつけられていた。そんな過剰とも言える制圧術に、いつしか規則違反者たちの方が折れて、すこしでも身を守るため、そのような戒めが生まれたそうだ。私から言わせれば、はじめからやらなければいいのではと、常々思うのだが。

     眼の前にはボリュームたっぷりのサンドイッチ。カリカリに焼かれたベーコンの香ばしい香り。瑞々しいレタスとトマトのコントラスト。バンズは野菜の水気に負けないよう、バターでコーティングされ、軽く焼き目がつくほどに炙られていた。女子高生が食べるにしては少し重い内容。しかし、日々きつい訓練や、規則違反者の鎮圧に駆り出される風紀委員会の生徒からしてみれば、簡単に食べきれる代物だった。

     対してジュンコ委員長の側には、コップにはいった一杯の水と、コンビニで買ってきたゼリー飲料。これが風紀委員会の昼食風景だった。

     お金がないわけではない。むしろ私たちの食事の代金は、委員長が払ってくれる。それは委員長の趣味の美食探求のためだと言う。『私の我がまま』だと言う。

     委員長はいつも、食事時になると後輩を数人連れ、こうして奢ってくれる。風紀委員会の結束力を強め、交流を図るためとのことだ。一緒に食事をすることで、気兼ねなく話せる雰囲気が出来上がる。無礼講。この時ばかりは、上下関係は存在しない。まるで姉と妹のような近さで接してくれる。そして、私たちがおいしそうに食事をしている姿を、とても愛おしそうな目で眺めているのだ。

  • 88二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 19:33:51

    >>87


     食事が終えると、今度は感想を訊いてくる。店の雰囲気・食事の質・そして何より、おいしかったか。この時が一番、委員長は愉しそうな顔をした。嬉々としながら赤い小さなメモ帳に感想を書き写す。その内容は後日、風紀委員会の公式アカウントに掲載される。その為なのか、委員長がはいった飲食店では、ちょっとだけ緊張感が漂う。別に委員長は怖いヒトじゃないのに。

     去年の代から始まったこの試みは、恐怖と忌避の象徴とされてきたゲヘナ風紀委員会のイメージを刷新した。多くのフォロワーがそのブログめいた内容に興味を持ち、風紀委員会のアカウントのフォロワー数が増えた。内容はともあれ、行政の情報に一般人が触れる機会が増えたのはいいことだ。委員長のおかげで粗末な飲食店が減ったという喜びの声も届いている。一部「爆破しないでくれ!」という謎の命乞いが混じっているのが気がかりだが。いくら悪質な店でも爆破なんて手荒なことはしない。何かと勘違いしてないか?

    「委員長はなぜ食べないんです?」

     ゼリー飲料を両手で持ち、ちゅうちゅうと中身を吸い出すリスみたいな委員長に、私はいつも抱いていた疑問をぶつけてみた。やはり、先輩を差し置いて食事をするのは気が引ける。

     このヒトがまともに食事をしているところを見たことがない。それは他の風紀委員たちも同じだった。代わる代わる呼び出されているのに、誰も一緒に食事をしたことがない。

    「うぅん。食べると眠たくなっちゃうのよねぇ・・・。ずっと外で暴れてるわけにもいかないし。今も事務仕事を皆に押し付けてる最中だしね」

    「だとしてもですよ。やっぱり私だけが食べるのは・・・」

    「・・・気が引けるかい?」

     委員長は両腕で頬杖をつき、困った顔をして訊き返してきた。

    「い・・・いえ」

     思わず返事に詰まる。なんでそんな顔をするの? 申し訳なさそうな。悲しそうな。そんな表情が示す理由が、私にはわからなかった。

    「委縮させちゃって、ごめんね。ホントのことを話すよ。

     私、味覚障害で味がわからないの」

    「え・・・。」

  • 89二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 20:03:51

    >>88


     その言葉に、頭が中が真っ白になった。これは明らかに、訊いてはいけないことだった。

    「す・・・す、すみまっ」

     咄嗟に謝罪を口にしようとするが、あまりの内容に呂律が回らない。申し訳なさで泣きそうになる。

    「気にしないで。これは私が風紀委員長になるために必要だったことだから。」

     それに対し、委員長は優しく受け止めてくれた。

    「埒外な武力も、事務仕事をこなす知力も、すべてはこの舌の犠牲の上に成っている。

     昔、巻き込まれた事件の後遺症。」

     委員長はまっすぐに私を見つめながら、ゆっくりと話してくれた。それは子供をあやすようだった。私を落ち着かせるための子守唄。とても悲しい昔話が始まった。

    「私は昔、美食研究会って、結構ヤバい部活に加入しててね。あの頃は先輩について行きながらいろんなおいしいものを食べ、悪質な店は報復として爆破して回っていたの。

     ああ、でも主導してたヤバい奴らは二つ上の先輩の方で、私は進んで爆破なんてしてないからね!

     それで、そのヤバい奴らが卒業して、美食研究会の活動が縮小されたこに事件が起きた。」

     委員長は風紀委員会に所属するほどに食べることが好きなヒトだった。それが味覚を失うなんて、喪失感はいかほどだったことか。わからない。そこまで熱中できるものを持っていない私に、失う苦しみは想像できない。

     しかし、委員長は今もこうして秩序のために働いている。強靭な精神力。それを支える何かがあった。それが、この食事会なんだ。

    「はじめは食べてもおいしくないことに、自暴自棄になった。いろんな人に迷惑をかけた。先生に、思い出のお店の人たちに。そして、去年の風紀委員長に。

     だから私は、風紀委員会にはいったの。償いと、恩を返すために。

     それと、美食委員会の先輩たちの言葉。それが、私の美食に新しい可能性をくれたんだ」

    「・・・かのう、せい?」

     震える喉で、それでも必死に言葉にする。先輩を救った、その言葉が知りたくて。

  • 90二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 20:23:56

    >>89


    「『美食は何を食べるかだけじゃなく、誰と食べるか』。アイツから学んだことで、唯一良かったこと。

     たとえ私には味がわからなくても、あなた達ならわかってくれる。その感想が、その表情が、今の私の美食なの。料理についてのお話だけじゃない。食事中のたわいのない会話など、食事を通じたふれあいこそが、私の美食」

     誰と食べるか。委員長が何時も誰かを引き連れて食事に行くのは、自分の美食のためだった。親睦を深めるのも、ゲヘナ風紀委員会の公式アカウントを更新するのも、このヒトが満足するためだった。

    「・・・よかった。本当に、我がままを通してたんですね」

    「昼食の面談が業務の一環だと思ってた?」

    「まぁ、はい」

    「ハハハ! ごめんなさい。気を使わせちゃって」

     ジュンコは愉快そうに笑うと、食後のブレスケアかのように、タブレットケースからガムを2粒取り出す。黒光りする四角形。口に放り込むと、躊躇いなしに嚙み砕く。ガリっとコーティングの砕ける音が聞こえる。

    「あなたも食べる?」

    「いただきます」

  • 91二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 20:29:58

    >>90


     手を差し出すと、委員長は私の手の上でタブレットケースを振る。シャリシャリという小気味の良い音と共に2粒出てきた。口の中に運ぶと、強烈なブラックミントの香りが鼻を抜ける。あまりの風味に思わず顔をしかめてしまった。それを見て委員長は再び、面白がって笑う。

    「カッラ!? なんですかこれ!?」

    「いや、ごめんごめん。眠気覚ましにはちょうどいいんだ。

     味がわからなくても、辛味だけはわかるもんでね。いつの間にかドンドン強い刺激を求めるようになっちゃうのよ」

    「それでもいつまでもガムを噛んでるときありますよね。とっくに味は無くなってそうでしたが」

    「見られてたの!? まじかぁ・・・。」

     ジュンコはびくりと肩を震わせ、そのまま肩を落とす。

    「ダッサイなぁ。口寂しくてよく口にするんだけど、味がなくなってるのがわからなくて、気付くと時間が経ってるんだよね」

    「口寂しいって、やっぱりお腹すいてるんじゃないですか?」

    「私、空腹の方が絶好調だから」

     確かに、このお昼の憩いの時間を確保するために、委員長は鬼神の如く戦った。空腹の方が強いのは事実だろう。だけど、四六時中空腹にさせているのは忍びない。

     だが、今の彼女にとって、食事は相手との対話を意味する。栄養補給は二の次。味のない食事をするのはむしろ、彼女にとっては苦痛になる。だから無理強いできることでもない。

    「わかりました。今度、皆で委員長でも食べられる料理を作りましょう」

    「え?」 私の急な提案に、委員長は目を丸くした。

    「給食部にも協力してもらい、食べやすい物を探します!」

    「ジュリにか・・・。今のあの子なら、確かに・・・」

     ジュンコの脳裏に給食部委員長の姿が過った。かつては理を超えた『超理』で生命を創造する転生のメシマズ属性だったが、今はそれも落ち着いていた。今の彼女なら、ありえるのかもしれない。それは今まで考えたことのない選択だった。

  • 92二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 20:33:44

    >>91


    「あ・・・でも、委員長は味覚障害について隠されてるんですよね・・・。すみません」

    「ううん。いいよ。そのせいであなたに気を使わせてしまってたんだから。この際皆にバラしちゃいましょ」

    「え・・・いいんですか?」

    「勿論。だってあなた達が私のために料理を作ってくれるのでしょ? そんな最高の美食を前に、足踏みなんてしてられないわ!!」

    「! はい! 頑張ります!!」

     委員長の満面の笑みに、私の表情も華やいだ。

     委員長は確かに美食家のようだ。食べることに恐怖を抱いてもおかしくない状態なのに、私の提案に二つ返事で許可をくれた。私を信じて、ご自身の弱点をさらけ出すことを決めてくれた。その食への貪欲さは、間違いなく美食の探求者の姿だった。

    「ところで委員長」

     委員長の矜持を知れたところで、もう一つ気になっていたことを口走る。

    「なに?」 ジュンコは柔和な笑みを浮かべ。

    「相手の食べてる姿を見るのが美食って、なんだか『おばあちゃん』みたいなことを言いますね」

    「なっ!?」 その表情が、ビシャリと固まった。

    「よく言うじゃないですか。『年を取ると胃もたれするから、若い子が食べてる姿を見ているほうが幸せ』って」

    「お、おま、お前!? いうに事欠いて、ぶっ飛ばすわよ!!」

     ジュンコはワナワナと愛銃:ダイナーズアウトローに手を掛ける。

     空腹のジュンコは苛立っている。いつもは風紀委員たちに向けられることのない激情だが、もしも向けるに正当な理由があるのならば話は別だ。当然それがゼリー飲料程度で収まるはずもなく。

    「うああぁぁん! ごめんなさいぃぃ!!」

     私は軽はずみな失言を反省しながら、慌てて席を立った。このまま射撃の的にされたら身が持たない。逃げ切れるわけなどないが、それでも無抵抗に死を受け入れられるほど、私は潔くはなかった。

     閑静な住宅街に、銃声と悲鳴が木霊する。ゲヘナ風紀委員長のワンツーマンのしごきが始まった。後日ゲヘナ風紀員会のアカウントにはおいしそうなサンドイッチの画像と、満面の笑みの風紀委員長に抱きかかえられ、げんなりとした後輩のツーショット画像が掲載された。そんなゲヘナ自治区の、平和な昼下がり。

  • 93二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 20:36:11

    これにていいんちょGenesis書き溜め分終了です

    風紀委員会に入る理由としてハルナの持論を持ち出したが、結果この後曇るのが想像できなくなってしまった
    最序盤に曇りの山場を持ってきてしまったのが敗因か

  • 94二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 22:24:04

    >>93

    すごい面白いssやったで!


    お疲れさん!

  • 95二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 03:38:36

    クルムラウフ装着 保シュトゥルムゲヴェーア44(激ウマギャグ)

  • 96二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 12:31:23

    >>93

    面白かったです

    ありがとうございます!

  • 97二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 13:49:12

    保守

  • 98二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 19:12:57

    >>93

    いい話だったので問題ないと思います

    ありがとうございます

  • 99二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 21:32:31

    SS感想ありがとうございます!

    それと全く別の話だけど、なぜか成長ジュンコのイメージにサングラスがあって、最初学生時代の五条悟に引っ張られてるのかなと思ってたんだけど、この遊戯王カードのイメージだった

  • 100二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 00:51:50

    さてどう曇らせるか、、、、

  • 101二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 07:25:03

    SSのネタが浮かんだから少し考えてみますわ

  • 102二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 12:24:16

    よろしくお願いします!

  • 103二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 12:55:52

    ヴァンピール搭載保シュトゥルムゲヴェーア44(激ウマギャグ)

  • 104二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 18:16:28
  • 105二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 18:59:34

    >>104


    シェフを呼んでくれ  是非とも握手がしたい(^^)

  • 106二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 20:56:12

    >>105

    スレ主です

    私が書きました

  • 107二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 21:12:29

    >>106


    貴様天才か!?

    ええssで腹いっぱいですw

  • 108二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 00:41:24

    保守

  • 109二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 07:56:36

    このレスは削除されています

  • 110二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 08:23:48

    >>104

    段々と文面から感情がなくなってってるのがさぁ…

  • 111二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 16:53:04

    ジュンコの手帳ってこの世界線だと上のSSでもそうだったけど愛用品ではなくなってしまってるんだろうな…

  • 112二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 23:53:57

    ヤバいね…

  • 113二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 00:46:33

    捨てたことをなんとも思ってなさそうなのがね

  • 114二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 08:24:36

    寂しいなぁ

  • 115二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 17:41:33

    ほしゅ

  • 116二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 01:11:25

    ほしほし

  • 117二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 06:59:32

    >>104

    日誌内のイズミとのやり取り妄想


    イズミ「ねぇねぇジュンコ!あの手帳貸してくれないかな?」

    ジュンコ「…手帳?」

    イズミ「ほら!ジュンコが好きな色んなお店が書いてあるの!グルメ巡りの参考にしたいなって!」

    ジュンコ「…………………あぁ、アレね。捨てたわよ」

    イズミ「…え?」

    ジュンコ「あんなもの、持ってたって何の意味もないもの」

    イズミ「あ、あんなものって…!あんなに楽しそうに書き込んでたのに!また行きたいななんて言って!最近のジュンコ、なんか変だよ!?」

    ジュンコ「何泣いてるのよ…。それに変だなんて…別に変なことしてるつもりはないわ。風紀委員長として当然の行いは心がけてるつもり」

    イズミ「…それが、あの手帳を捨てることなの…?」

    ジュンコ「いらないものを捨てるのは、風紀委員長以前に人として普通のことでしょ?」

    イズミ「〜〜〜!!ジュンコのバカ!大バカー!!」

    ジュンコ「…はぁ。何を熱くなってるんだか」

  • 118二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 12:21:48

    うわぁ…

  • 119二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 12:25:55

    ジュンコじゃなくてイズミが曇ってるじゃねーか!

  • 120二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 21:29:47

    ほし

  • 121二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 06:24:16

    酷い飛び火…
    まあ仕方ないが

  • 122二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 15:00:59

    ほし

  • 123二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 00:35:24

    ここのジュンコは飛べるけど飛べた程度じゃ何も感じないんだろうな…

  • 124二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 00:58:04

    むしろエネルギーの消費が増えるって思ってそう。

  • 125二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 06:20:12

    あらゆる物事を冷めた目で見てそう
    …趣味が治安維持になるレベルも有り得る

  • 126二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 15:02:58

    ひどいワーカーホリック…

  • 127二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 00:51:28

    ほし

  • 128二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 10:10:07

    ほし

  • 129二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 18:28:24

    ほし

  • 130二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 18:48:50

    分かってはいたけどジュンコも周囲の人間もA世界線との温度差がヤバすぎる…

  • 131二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 21:32:25

    >>130

    そらこっちのジュンコは色々壊れちゃってるしな…

  • 132二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 06:29:36

    コツコツと積み重なった負荷で壊れたのがきついね…

  • 133二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 12:22:47

    ほし

  • 134二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 22:04:20

    ほし

  • 135二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 22:04:22

    >>132

    でも人間って大体壊れる時こうだしな

  • 136二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 06:47:01

    うおぉ色々考えてたらチナツが心労で倒れてしまった未来が見えた…
    …こうなったらジュンコどうなるんや

  • 137二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 12:31:25

    共倒れしそう

  • 138二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 13:44:22

    なるほど心中エンド...それはそれで...

  • 139二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 20:59:59

    仮に心中エンドだったとしてそれを選ぶのがチナツだったら俺はもう抑えられない

    >>138

  • 140二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 02:40:19

    >>139

    チナツの方が愛が重そうだもんな

  • 141二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 08:24:02

    ヤンデレチナツ...僕のデータにありますね

  • 142二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 17:07:09

    あるのか…

  • 143二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 00:22:27

    >>141

    できればそのデータを公開していただきたく…

  • 144二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 03:33:28

    >>143

    このスレの趣旨に合う形で出力するからしばらく待っていただきたい

  • 145二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:15:09

    >>144

    期待してます!

    よろしくお願いします!

  • 146二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:12:25

    >>117

    ジュンコの口から飛び出てくる言葉として一つ一つの威力が高すぎる

  • 147二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 00:35:32

    色々重いよ…

  • 148二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 09:59:33

    ほし

スレッドは8/16 19:59頃に落ちます

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