【閲覧注意/TRPG】復活のギーツ×ネクロニカ7.5

  • 1二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 13:45:00

    長らくお待たせして 本当に すみません

    ※注意
    ギーツライダー4人にTRPG『永い後日談のネクロニカ』をプレイしてもらうスレです

    ・世界観やシステムの都合上、グロや暴力、非倫理、倒錯的シーン、キャラの曇らせや特殊な感情設定が多く含まれます(展開が激しめになりそうなシーンはワンクッション挟むつもりです)
    ・キャラ同士の関係が重たくなったり恋心が飛び出したりするゲームではありますが、過度なCPネタは禁止でお願いします
    ・完結目指してはいますが非常に更新が遅いです…、万が一落ちてしまった場合はしばらく書き溜めなど準備期間設けたうえで立て直すつもりなので、気長にお付き合いいただけると助かります

  • 2二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 13:46:10
  • 3二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 13:50:03
  • 4二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 13:55:22
  • 5二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 13:57:20

    前回までのあらすじ

    〜PC編〜
    景和と同じ顔をした男の手により、景和と分断された英寿たち。それぞれが持つ断片的な記憶と向き合いながらも、景和がいるという屋敷を目指す三人だったが、会話のなかで男の様子が一変する。彼に三人への敵意はないようだが……?
    一方の景和は実の姉である沙羅と再会。かつてと変わらぬ様子の彼女と、久しい食卓を囲むことになった。

    〜PL編〜
    見返したら前スレあんまダイス振ってねぇ!
    埋まらぬ狂気点余裕格差
    果たして道長の狂気点に余裕ができることはあるのか

  • 6二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 13:58:52

    Q.またしても生きとったんかいワレ!!

    大変お久しぶりです……。半年空けての再建という嘘みたいなスレですが、どうしても完結までは持っていきたく……。
    当時見てくれていた方がどれくらいいてくださるか分かりませんが、ひとまずアドベンチャーパートまでざっくり書き溜めたもの投下していきます。
    もし見てくださる方がいたらお付き合いいただけるとうれしいです…!

  • 7二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:04:39

    (前回中途半端すぎるところで終わってるので、キリ良いシーンから再開します)

    ■□

    「景和、ほらこっち!」
    「ちょっと、姉ちゃんはしゃぎすぎだって!」
    足早に廊下を駆ける姉に手を引かれ、というか引っ張られて、君は転ばぬように足を必死に動かす。それでも口元は自然、懐かしさに緩んでしまうのだから素直なものだ。

    繋いだ手の冷たさも気にならないほど、じんと心を満たすもの。そんな君の幸福の象徴は突き当たりの部屋の前で足を止めると、いたずらっぽい笑顔で君を振り返った。

    「ここっ、はい景和、入った入った!」
    「え、ちょ、うわっ!?」

    ドアノブを引いた彼女に有無を言わさず背中を押され、つんのめるようにして入った部屋の中。なんとか寸前で踏ん張り、床に転がらず済んだ君の鼻腔に、ふわりと香る優しく懐かしい匂いが触れる。つられて顔を上げれば、きらきらと光る反射が君の目を柔らかく刺した。

  • 8二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:05:51

    テーブルに置かれた水差しが窓から入り込む日差しを通し、乱反射した光が室内に明るく散らばっている。テーブルの上には食器が並び、簡素ではあるが食事の用意がされていた。この世界で目覚めては長らく目にすることのなかった彩りにぽかんと呆けた君の後ろで、「じゃんっ、どうだ弟よ!」と得意げな声が上がる。

    「すごいでしょ? 缶詰とかたくさん分けてもらって、がんばって準備したんだから。今日は特別な日だもん!」
    「えっ……これ、全部姉ちゃんが……?」
    「え。あー……うん、一所懸命お願いした!」
    「…………」

    問いかけにおろ、と一瞬目を泳がせた彼女は、開き直ったのか期待を裏切らない良い笑顔で拳を突き出した。その相変わらずさに呆れの方が勝り、しばしジト目で姉を眺めていた君は、何拍か遅れて首を傾げる。

    「お願いとか分けてもらったとか……ここ、姉ちゃん以外にも誰かいるの?」
    「誰もいないのに、人のお家勝手に借りたりしないでしょうよ。姉ちゃんをなんだと思ってんの」
    「あ、はは……」

  • 9二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:07:14

    復活!?嬉しい!

  • 10二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:07:30

    人の家の廊下を全力ダッシュした人が胸張っていいことだろうか、とは言えずに笑ってごまかせば、入れ替わりのようにじとりとした視線を返された。

    「私をここに案内してくれた人がね、お手伝いしてくれる人も一緒に連れてきてくれたのよ、ここなら安全だからって。お家の片付けもみんなでやったんだから!」
    「……姉ちゃん、その人って、」
    「って、そんな話あとあと!ほら座って、姉ちゃんがスープあっためちゃる!私もちょっと味見したけど、これほんとおいしいのよ。あの時のまんま!って感じで」

    言いかけた君の言葉をさえぎり、彼女はそう部屋に備え付けられた小さなキッチンへと足を向けた。ごまかしたにしては無邪気すぎる様子に、君は開きかけた口を閉じる。やっと会えた、もう会えないことだって覚悟していた、大切な人。きっと想いは同じなのだと、わかっているから。

    「景和ー? どうかした?」
    「……ううん、なんでもない。なにか手伝うことある?」
    「いーからいーから、ここは私に任せとき!」

    張り切って胸を叩く姉の様子に不安は残るが、楽しげな彼女に水を差すほど君だって野暮じゃない。うん、と小さく微笑み、君は指し示された席についた。

  • 11二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:14:52

    ~~~

    英寿「……また食事イベントか。デジャヴだな」
    祢音「え、やっぱ冴さんのときと似てるよね? あのときは見るからに食べちゃダメなやつだったけど……」
    景和「今回は……どうだろ、ドール視点だとそこまで不穏さはないよね。やっと会えた家族だし、ここで変に拒否するのはなぁ」
    ツムリ「たしかに、らしくはないかもですね」
    道長「これ以上厄介な要素増えたら対処しきれねぇぞ」
    景和「そうなんだよね、う〜〜ん……どうなるか分かんないけど、会話で探り入れてみようかな……大丈夫?」
    大智「もちろんそのあたりは任せるよ、ここは柔軟に対応するつもりだったしね」
    景和「うぅ、プレッシャーを感じる……」

  • 12二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:15:56

    〜〜〜

    先好きなのとっていいよー、と穏やかに言う彼女に曖昧な返事を返しながら、君はぐるりと部屋の中を見渡した。元が廃墟とは思えないほど小綺麗に片付けられた室内。豪勢とまでは言えずとも、終わった世界にはそぐわない懐かしさに溢れた卓上。そこまで用意する時間がなかったのか、作りかけの紙の飾りが窓辺に置かれているのに気づき、ふ、と笑みがこぼれる。

    「なんか懐かしいなぁ。あの頃も、みんなでこうやってパーティの準備したよね。用意できるものは少なかったけど、ご飯も精一杯豪華にしようとしてさ」
    「そうだったっけ?」
    「えぇ……だってほら、二人の怪我が治ったお祝いとか……そうだ、祢音ちゃんの誕生日の準備も。姉ちゃんが言い出したんだろ? プレゼントだって用意してさ」

    胸に広がる幸福のあたたかさ。ほころぶ口元につられ、脳内にいつかの記憶がぽつりぽつりと波紋を描いた。

  • 13二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:17:41


    ──

    まな板と包丁、食材が奏でる穏やかな音色が二人分。背後では部屋の飾りをせっせと整えていく本日の主役の鼻歌が響いていた。
    あの日偶然に出会った彼らとは、まだ長い付き合いとはいえないし、知らないこともほとんだ。それでもできうる限り、あの子に喜んでもらえるような日にしたかった。

    『なんか、こうしてるとさ』
    『なんだ?』
    『……ううん、やっぱなんでもない! あっ英寿、それ取って』

    照れくさくなって言えなかった、その言葉の続き。いつかはちゃんと伝えたいと思った。固く強ばっていた三人の心をほどいて、そしたら、きっと。彼らの■とを■■み■いに思っ■■んだ■■、■■■──。


    ▂▅▅▂▂▅

    手にしたカメラは古ぼけてはいるけれど、元々の持ち主だった父の代から大事に使ってきただけあり、まだ壊れてはいないようだった。中身を覗いて、これなら直せるかな、と胸を撫で下ろす。自分の数少ない得意分野だ、みんなが帰ってくるまでに間に合わせてみせると気合を入れて。

  • 14二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:18:43

    『今度こそ、みんな笑顔で映りたいもんね』

    そうだ、二人の怪我からの全開祝いと称して、あのときも小さなパーティを開いていた。せっかくだからと持ち出したカメラを、まだこの家にいることに後ろめたさを残していた彼は否定し、逃げようとして。なんとか宥めて撮った写真は、三人ともがぎこちない表情を浮かべていた。

    でも今ならきっと、もっと、ずっと良い写真になる。それを思えば自然やる気も入るというもので、よしっとドライバーを握り直した。■■たちが帰ってくる前には終わらせないと。■■■■の料■だって手■■ること■■るかもし■■いし、■■■■■■…………


    ▅▂▂▅▅▂


    驕輔≧縲√◎繧薙↑縺ッ縺壹↑縺
    縺ェ繧薙〒縲√↑繧薙〒縺薙s縺ェ

    縺?d縺?縲√?縺ィ繧翫↓縺励↑縺?〒

    ──


    景和:記憶のカケラ〈パーティ〉獲得
    何回目なのかも定かではないけど、生まれた日を迎える彼女のためのお祝い。料理もプレゼントも出来うる限り準備して、彼女に心の底から喜んでほしかった。彼女だけじゃない。あの日であった三人に、伝えたかった想いを分かってもらうためにも。……だが、胸に残るこの違和感は……?

  • 15二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:23:59

    「っ……?」

    雑音にまみれ、もやに覆われたようにはっきりしない脳内。確かに覚えはある、はずだ。だけどどこかに違和感がある。何かが、歪んでいるような。

    「うん……そう、祢音ちゃんの、誕生日を祝おうとして……英寿と一緒に料理も……」

    ひとつひとつ、おぼろげな記憶を辿る。何もおかしくはない。これは自分の記憶だ。だけど、何かが……。思考をめぐらす君は、ふと手にした金属の冷たさを思い出す。机に並べた、すぐ無くしてしまいそうなほど小さな部品たち。

    「──あれ? 俺……そんなこと、できたっけ」
    「景和!!」

    見つけかけた歪みは、つんざくような姉の声にかき消された。驚いて顔を上げれば、いつの間にかキッチンから離れた彼女が目の前に立っていた。らしくもない強ばった表情と剣幕に、思わず目を見開いた君の肩を、彼女の手が勢いよく掴む。

    「ね、ねえちゃん?」
    「景和……っ、もういいよ、もういい、でしょ? やっと家族ふたりそろったんだもん、私は景和がいてくれればほかに何もいらない。昔のことなんてどうでもいいじゃん!」
    「え……?」

  • 16二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:26:26

    固まる表情で無理やり笑顔を作ったような、ぎこちのない顔。明るく見せかけるように上擦った声も、告げられた発言も、すべてが君の知る姉らしくはない。でも、と困惑しながらも君は窓の外をちらりと見やった。

    「英寿くんたち、俺のこと探してるだろうし……姉ちゃんにも会いたいはずで……。姉ちゃんだってみんなに、」
    「やめて!!」

    忘れてしまっただけだろうか?そんな想いで続けようとした言葉は、悲鳴に近い声に遮られる。泣き出しそうに歪む瞳にぎょっとする暇もなく、彼女はしゃがみこみ、縋るように君の顔を必死に見つめた。

    「なんで?景和……私のことなんかどうでもよくなったの? 邪魔だった?姉ちゃんのこと、きらいになった?」
    「えっ、な、なんでそうなるんだよ!そんなわけない……今も昔も、俺と姉ちゃんは家族だろ。そんなこと、思うわけ……」
    「……そっか、よかったぁ」

  • 17二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:27:53

    まだどこか照れくさくて、もごもごとした君の弁明に姉はほっと息を吐き、潤んだ瞳をそのままにへにゃりと笑った。

    「じゃあ、これからはずっと一緒だよね、景和!他の誰もいらない、踏み入れられない私たちのお屋敷!大丈夫っ、ここなら私たち、もうはなればなれになんてならないから」
    「ちょ、ちょっと待って、話が戻ってる! それとこれとは別の話だろ!?」

    堰を切ったようにぶつけられる一方的な想い。その内容に流石に面食らって、君は思わず声を荒らげた。

    「どうしたんだよ姉ちゃん、なんでそんな、祢音ちゃんたちを遠ざけるみたいに……」
    「…………」

    君の言葉に彼女は俯き、黙り込む。いつだって騒がしいほど明るかった姉とは全く異なる様子に、胸がざわめいた。何かがおかしい。……俺は、何か、決定的なことを忘れてる?

  • 18二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 14:32:59

    復活うれしいです!続きがめちゃくちゃ気になってたので!

  • 19二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 15:29:09

    また見れて嬉しいです!楽しみにしてます!

  • 20二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 15:45:40

    (コメントありがとうございます、覚えてくださってて本当にありがたいです……)

    ーーー

    「……忘れたままなら、それでもいいって思ってた。あんなこと……。でも、そうじゃなきゃ、景和がまた行っちゃうなら……」 

    広がっていく疑念。揺らぐ君の耳に、ぽつりと重く呟かれた姉の声が届く。え?と瞬く暇もなく、顔を上げた彼女の必死な視線が君の瞳を貫いた。哀しみと怒り、後悔、すべてがごちゃ混ぜになったような眼差し。

    「ねえ、ちゃん?」
    「景和──あんたはもう思い出せるはず。思い出して。どうして私たちがばらばらにならなきゃいけなかったのか……誰が私たちの幸せを奪ったのか」

    ぞっとするような冷たい声。こんな姉は知らない。そう思うのに、身体は金縛りにあったように動かない。ゆっくりと立ち上がった彼女は、撫でるような優しい手つきで君の頬に触れ、こつんと額を合わせた。それは遠い昔、熱を出した自分を一生懸命に看病してくれた彼女の所作そのもので……けれどそんな懐かしさに浸る余裕も、君にはないだろう。

    「────は、」

    ノイズまみれだった記憶の断片。現実感のない、うろ覚えの夢にも似た奇妙なビジョン。それが鮮明な形をもって、君の意識を呑み込んだ。

  • 21二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 15:48:05


    ──

    銃口を向けられていた。数メートル先に立つ、揃いの上着を着用した二人組の男。向き合う形の状況で、男らの標的は間違いなく自分たちだった。

    『大人しく話せば、命までは取らない』

    恐怖や緊張よりも、現実離れした光景への困惑が勝り、連中が何を言っているのか分からない。荷物を抱えた腕に力を込めながらも、呆然と立ちすくむばかりの自分に反し、隣に立つ彼の判断は早かった。

    体勢をかがめながら大きく腕を振り上げ、いつの間にか手に握っていたこぶし大の石を男たちへと投げつけた。ごつ、と鈍い音と、男たちの低い悲鳴が耳を突く。

    『走るぞ!!』

    あまりのことに目を白黒させていれば、間髪入れずに彼に腕を掴まれた。男たちに背を向け、ほとんど転びそうな勢いで駆け出す。
    さすが道長さん、頼りになる……呑気にそんなことを思った。相手はよその人間だ、きっと山まで逃げればもう追ってはこれない。もう大丈夫──そう、ちらりと視線を向けた背後。立ち上がり、何かを荒々しく叫ぶ男の片割れの銃口が、君の手を掴んだまま先を走る彼を、確かに捉えた。

  • 22二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 15:49:56

    『──っ』

    声も出なかった。ただ必死になって彼の身体を突き飛ばし──破裂音と、身体が爆発したような奇妙な感覚。何が起きたのかも分からないまま、胸に広がる信じがたいほどの熱に意識が呑まれていく。だが明滅しぐらぐらと揺れる視界でも、吹き飛ばされたのだろうそれがゆっくりと宙を落ちていくのが見えた。

    だめだ。これは無くせない。無くしちゃだめだ。だってこれは、あの子のための。そう反射的に一歩を踏み出し、腕を伸ばして。ぐるりと視界が回り、身体浮き上がるような感覚に包まれ──そして、暗転。


    ▅▂▅▅▅

    濡れたままの肌は、奇妙な夢のように青白かった。床に転がった家族の身体。つい何時間か前まで、いつものように笑ったりため息をついたりしていたあの子の。

    目の前の光景も嘘にしか見えず、顔を上げて、何かの冗談だろうと明るい声で投げかける。真っ青な顔のまま立ち尽くした彼の肩が強ばり、けれど目は逸らされなかった。

  • 23二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 15:59:32

    『脈も、息もしてない。……そいつは、死んだ』


    何を言っているのか分からなかった。分からない、と思った。分からない、分からない、分からない、分かりたくない、なにも。


    抱きかかえた身体は冷たい。ぽたぽたと落ちる雫が床を濡らすのをただ呆然と眺める。

    嘘だ。そんなはずない。信じたくない。認めたくない。ぎこちない手つきで頬を触っても、彼は目を開けてはくれなくて。


    『なん、で』


    声は震えて上擦って、もはや自分のものとさえ分からなかった。


    ──


    景和:記憶のカケラ〈■■■■?〉〈尾行者〉更新


    〈どうして?〉

    たった一人の、大切な家族。大事な弟。どうして、こんなことになるんだろう。どうして。どうして。


    〈尾行者〉

    何もかもが突然だった。無事に目的を終えて、安堵と充足に満ちた帰り道で見た光景。突きつけられた銃口も、何かを問いただす男たちの言葉も、あまりに現実感がなくて。自分が巻き込まれたそれが何であるのかを、君は最期まで知ることはなかった。


    【狂気判定】

    景和:dice1d10=4 (4) -2

  • 24二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 16:06:15

    「は……、な、なん、で、こんな……違う、おれ、俺は、」

    突きつけられた銃口、鳴り響く破裂音、伸ばした腕、叫んでいた彼の声。明確な形を得た光景がフラッシュのように視界を明滅させる。けれど心臓を包み込む絶望と恐怖の正体は違う。あの日触れた、体温のない肌。固くなりはじめた筋肉の感触。たった今起こった出来事のように鮮明な痛みとなって、君の心を蝕んでいく。

    辛い記憶。忘れたかった過去。……なんて言葉では片付けられないか。だって記憶のなかで君が抱きかかえたその人の顔は、間違えようもなく──。

    「俺のじゃない、ちがう、のに、なんで……!」

    覚えがない。それなのに記憶はこれが真実と叫び、感情はその傷口の痛みを鋭く訴える。頭をかきむしり、崩れ落ちかけた君の身体を、柔らかな感触が包み込んだ。

    「景和っ」
    「ぁ、ぅあ……」
    「景和、大丈夫、大丈夫だから……」

  • 25二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 16:07:50

    抱きしめたまま、とん、とん、と優しく背中をたたく手と、耳元で囁かれる姉の声。君にとってどんな美しい音よりも安心する音色。


    「ねぇ、ちゃん」

    「うん、景和。……会いたかった。ずっと、悲しかった。さびしかった……」


    君の心とリンクするように、彼女の声は弱々しく震えていた。こんな姉は知らない? 当然だろうね。君がいる限り、彼女はこんな絶望の淵に落ちることはなかった。その傷がどれだけ深く、痛く、苦しいのか、君は身をもって理解できる。


    だって──これは姉の記憶だ。自分が死んだあとも当たり前に続いていく世界。そこに取り残された、家族の記憶だ。


    「……、…………ごめん。ごめん、姉ちゃん、ごめん……」


    置いていかれることの哀しみを知ってる。けれど、一人ぼっちになる痛みは知らなかった。自分には、彼女がいてくれたから。けれど彼女は違った。彼女にその傷をつけたのは……自分だ。


    「ううん、もういいの。だって、こうしてまた会えたんだもん。これからすっと一緒にいれるなら、昔のことなんてどうでもいい。そうでしょ?」

    「…………」


    【行動判定:……本当に?】

    景和:dice1d10=4 (4)

  • 26二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 16:21:19

    (狂気判定結果飛ばしてしまった)
    景和→英寿〈依存〉:●●●〇

    〜〜〜

    景和「うわっ、ここで失敗……まずいかなこれ」
    英寿「まずいことには変わりないだろうが……成功していたとてな気もするな、この状況じゃ」
    祢音「というか、やっと答え出たけどやっぱそっち〜!? 不穏な回想なのに景和の反応薄いあたりそうかなって思ったけど!」
    景和「あはは……俺はあのカケラと一緒に『記憶と呼ぶべきかも怪しい、映像を見ているような感覚』ってメモもらってたから、なんとなくイメージついてたんだよね」
    道長「結局これ、姉の記憶と混ぜられたってことか?……良いのかそれ」
    祢音「ただでさえほぼ記憶喪失なのに、自分のものじゃない記憶も混ざってるって……」
    大智「まさかと思うけど、ネクロマンサーに倫理観を期待してるのかい?」
    ツムリ「その通りなんですが、改めてとんでもないゲームですね……」

  • 27二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 18:51:01

    〜〜〜


    「……それ、は、…………」


    姉の様子はどこかおかしい。それは分かってる、けれど……。その理由に自分の責任があること。自分の頭を優しく撫でる手つきが変わらないこと。身体を離し顔を上げれば、落ちてくる視線は縋り付くようで。その何もかもが、君の心を脆く揺さぶった。


    何も言えずに黙り込んだ君からふと目を逸らした彼女は、窓の外を探るように見つめ、それからわざとらしいまでに明るい声を上げた。


    「……裏山の動物さんかな? なにかお庭に迷い込んじゃったみたい。ちょっと見てこなきゃ!……ね、ここで、いい子で待っててくれるよね?景和」


    穏やかな微笑みでありながら、頷く以外の行為を認めないような絶対的な重圧。もはや反論の言葉は出なかった。出せなかったと言うべきかもしれないけれど。頷きとも俯きともつかない反応に、それでも彼女は満足したらしい。最後に君の頭を優しく撫で、彼女はぱたぱたと部屋から出ていく。古い扉が軋みながら閉まる音を、君はぼんやりと聞き流した。


    【行動判定:???】

    景和:dice1d10=2 (2)

  • 28二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 19:19:25

    □■

    ──一番罪深いのは、あいつ自身なんだから。
    それこそ断罪するように。どこか遠くを睨みつけながらそう吐き捨てた男の声は、ぞっとするほど冷たかった。

    「あいつに、罪?」

    違うだろうと、言外に込められた響きそのままに、バッファは訝しげに彼を見やる。だって自分の本能は己の罪を認めている。中身までは不透明でも……あの姉弟はまぎれもなく被害者であったはずだ。
    そんな彼の内心まで見透かしているのか、男は薄く嘲笑を唇に乗せた。君たち姉妹へ向けられたものというよりは、むしろ自分自身を冷笑するような。

    「もういい。あいつは桜井沙羅のそばにいるべきだし、お前たちを彼女に会わせるわけにはいかない。余計なことも考えたけど……叶わないなら、他に方法はない。無理やりにでも、この場所から出ていってもらう」

  • 29二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 19:21:50

    殺意はない。けれど決意に満ちた眼差しを向け、彼は構えるようにして君たちへ向き直った。
    ここで敗れれば、きっと姉妹を取り戻す道は閉ざされる。近づいたはずの真実も遠のき、二度と掴めないかもしれない。そうなるわけにはいかないね? 反射的にそれぞれが構えた武器と、空間に走る緊張感。男がなにかを言おうと口を開いた瞬間に、ぎい、と古い木の扉が音を立てた。

    「……ムジナさん、なにしてるの?」

    あまりにも、唐突に。そこからひょこりと現れ、姉妹に見た目だけそっくりな男を『ムジナ』と呼んだ彼女。その姿を知っている。君たちの誰にとっても特別だったあの日々の一片。

    「──沙羅、なんで……」

    意外なことに、突然の乱入者──少なくとも、君たちの視点では──に動揺しているのは君たちだけではなかった。ムジナと呼称された青年は引きつった声を零し、焦燥の色さえ映る瞳で彼女を見つめる。

  • 30二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 19:24:20

    「感知できるのは、屋敷の中だけのはずじゃ、」
    「えー?だって大事な弟がいるんだもん!いつもより気だって使うよ」

    へにゃりとした笑みと、明るい声。けれど君たちの知るそれとは決定的になにかが違う。
    こつこつと階段前の低い石段を降り、そこで初めて彼女は君たちに視線を向けた。笑みも怒りもない、ただ無だけを残した表情とともに。

    「……それで。あなたたちは、なにしにきたの?」

    桜井沙羅。君たちにとっても特別な存在。君たちが愛した日常の象徴。けれど今目の前にあるものは、過去の彼女とはまるで違う。知らない顔。知らない冷たさ。……果たしてそうだっただろうか?

    『……どうして』

    温度のない冷たい瞳。君たちはそれを覚えている。知っている。固く閉ざされていた扉がゆっくりと開く。君たちの意思に関係なく、遠いいつかの断片が胸の内へと吹き込んだ。

  • 31二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 19:25:25


    ──

    『カメラ?』
    『うん、そう。姉ちゃんが久々に引っ張りだしてきんだけど、なんか動かないらしいんだよね』
    『壊れてんじゃねえのか』
    『俺もそう思ったけど、起動はするし接続の問題な気する!って、姉ちゃんやる気満々でさ。機械のことは俺全然わかんないし……姉ちゃんに任せようと思って』

    『だから道長さんとは俺が行くね。すぐ戻ってくるから、英寿はご飯の準備お願い』
    『あぁ。お前らもプレゼントのこと頼むぞ。今回の目玉イベントだからな』
    『だ、大丈夫!……たぶん』
    『たぶんかよ』
    『あれ、景和、道長!どっか行くの?』
    『あ、う、うん、ええと』
    『急な依頼で、町まで配達だそうだ。夕方までには帰ってくるらしいから心配はいらないさ。そうだな?景和』
    『へ?……あっ、うん! ごめんね、すぐ戻るから』
    『そうなんだ? 言ってくれれば私も手伝うのに』
    『君には部屋の飾り付けっていう重要任務があるからな。ほら、引き続き頼むぞ』
    『えー?仕方ないなぁ』
    『……よくやるなお前も』
    『さすが英寿……』
    『ふ、任せておけ』

  • 32二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 19:26:54

    ──


    追われる身であることは分かっていた。祢音はあの施設の技術力を一身に受け、ESP発動の寸前まで至った被検体だ。成功例になり得た彼女をみすみす逃がそうとはしないだろう。だから誰も頼れず、誰も信じず、ただ二人であてどもなく世界をさ迷い続けたし、これからもそうであると思っていた。その覚悟をしていた、はずだった。

    『英寿!見て、これ私が作ったんだよ!景和が教えてくれたの』
    『祢音ちゃん天っ才……!こんな可愛いのに才能もあるなんて……無敵?』
    『姉ちゃんはもう少し祢音ちゃん見習ってほしいんだけど……』

    やいのやいのと賑やかしい姉弟を背にし、祢音は自分へとキラキラと輝く目を向けた。手にした皿に並ぶのは丸っこい焼き菓子。クッキーというのだと教えてくれたのは沙羅だった。昔、姉弟の母親が作っていたものらしい。

    『さっき味見したんだけど、ほんのり甘くておいしいの!ね、食べてみて!』

    少しの陰りもない、無垢な笑顔。あの施設で出会った頃からは想像もつかないその明るさが、じわりと胸に染みていく。感慨深いような、微笑ましいような温かさ。……その裏にある、"あの人"への後ろめたさには気付かないふりをして。

    『……砂糖なんて貴重品じゃないのか?』
    『うん、でもほら、二人の怪我もやっと良くなったし。お祝いってことで、ね?』
    『……英寿?』
    『いや、なんでもない。いただくよ』

  • 33二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 19:27:56

    それとなく目を逸らされたことに気づいたのか、少し不安げに自分を見上げた彼女に軽く笑いかけ、そう小皿へと手を伸ばす。その背後から、聞きなれた低い声が響いた。

    『……甘い匂いがすると思ったら、何やってんだお前ら』
    『あっ道長!道長も食べて!』
    『道長さんおかえり。ほら祢音ちゃん、手洗うのが先だからね』
    『おかえりー道長くん! よーしお茶にしよ!いいでしょ?景和』
    『はいはい……』

    わっと賑やかしくなった室内のなか、居心地悪さげな顔を隠しもしない道長は呆れたように腕を組み、れから小さくため息をついた。

    『なにか言いたげだな?』
    『別に……相変わらず平和ボケしてんなと思っただけだ』
    『そうだな、呑気なやつらだ。だが……お前だって、悪くないと思ってるんだろ?』
    『…………』

    沈黙は肯定と同じだ。そしてそれは、自分にとっても。そうだ。悪くない、と。そう思ってしまった。あの日の覚悟はじわりと陽だまりの熱に溶けだし、もうどこにも行けなくなった。
    いつまでも、これからも、このままでいられたのなら。胸に空いたままの空洞も──いつかは。

    そんな希望が、この世界に残っているはずもなかったというのに。

  • 34二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 19:29:00


    ──

    ぽた、ぽた。赤に混ざり、侵食された水滴が絶え間なく床を叩く。今日はとても良い天気だったのに、どうして彼はびしょ濡れなんだろう。そうだ、早く拭くものを取ってきてあげなきゃ。いつもなら景和や沙羅が大騒ぎしながらやっているように、自分も。

    巡る思考に反し、身体はぴくりとも動かない。ばくばくと心臓がうるさかった。ありえない想像が頭の中をぐるぐる回る。そんなわけがない。そんな……。それらを振り払うため、あ、とわざとらしく明るい声を上げて。

    『転んで、ケガしちゃった、とか。そうだよね道長、ちょっと待って、すぐ救急箱持ってくる──』
    『──あれ? 道長くんおかえり! もー、遅いから心配したわぁ。英寿くんも二人を探しに……』

    出たんだけ、ど。穏やかな日差しのような、慣れ親しんだ声が途中で途切れる。何よりも先に、振り向きたくないと強く思った。見たくない。聞きたくない。

  • 35二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 19:40:09

    『……、……景和?』


    理解したくなかった。だって、自分はこの匂いを知っているから。水の匂いのなかに混じる、確かな鉄臭さ。それが──道長に背負われ、ただの重りのような存在感だけを残した彼に染み付いたものだなんて、信じたくなかった。


    ──


    英寿:記憶のカケラ【家】更新

    希望に満ちた幸せな毎日。その裏に抱えた不安と後ろめたさに、気づかぬふりを続けていた。そんな自分の弱さが、あの日々の終焉を招いたのだ。君はそれを、はじめから、誰よりも強く予感していた。


    祢音:記憶のカケラ【家】更新

    水に濡れた青白い肌と、室内に漂う血の匂い。悲痛に弟の名を呼ぶあのひとの声。もう戻らない日々。自分はまた、この世界に大切なものを奪われた。……本当に? あのひとから、みんなから彼を奪ったのは、むしろ……。



    【狂気判定】

    英寿:dice1d10=5 (5) -1

    祢音:dice1d10=1 (1) +1-1

  • 36二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 20:07:07

    「あ、…………」

    彼女らしくもない鋭い眼光に、身体が強ばる。まるで蛇に睨まれた蛙だ。けれど自分を貫くその冷たい眼差しも、フラッシュバックした記憶を思えば納得してしまう。──彼女は、自分たちを許してはいないのだと。

    違うのだと、弁明する気などあるわけもない。だって……彼女がただ一人の家族を失う羽目になったのは、間違いなく己の選択のせいなのだから。それでも、拒絶だけを映すその瞳に、じくじくと広がる胸の痛みは止められない。

    「さ、沙羅さん……」

    言いたいこと、話したいこと、伝えなければならないこと。山ほどあったはずの想いは、からからになった口から一言も零れてはくれない。

    彼女は沙羅だ。それは間違いない。けれど、その雰囲気はあまりにもかけ離れすぎている。まるで知らない人間のような……いや、そんな生易しい表現は相応しくないか。彼女がそうならざるを得なかった理由は、君たちにあるのだから。

  • 37二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 20:08:25

    「……沙羅さん、俺たちは話をしに来た。俺たちがしてしまったことと向き合うために、……間に合うのなら、償うために」

    動けなくなってしまったナーゴに代わり、ギーツは握り携えたショットガンを力無く下げた。動揺を広げる姉妹を横目に、君は懸命に冷静に振る舞おうとする。逸らしたくなる目を、必死に正面に向けて。

    狂気に呑まれた成れの果てに救いはない。虚しいばかりの彼らの自傷を止めるため、そして真実にたどり着くためにここまで歩いてきた。だが……果たして彼女は"どちら"なのか。最悪の場合、自分はどうするべきなのか。答えの出せない葛藤を横にやり、一切の感情を無くしたような彼女を真っ直ぐに見つめる。

    「……」
    「わ、私が……沙羅さんと景和を巻き込んじゃったんだよね? ごめんなさい……本当にごめんなさい! 謝って許されることじゃないって分かってるけど……」
    「危険だと分かっていながら、お前たちのそばを離れなかった。……俺の間違いだった。憎まれるのも当然だと分かってる。だが、一度だけでいい、……君と、景和と、話をさせてくれないか」
    「…………話?」

  • 38二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 20:09:26

    そこで初めて、無表情だった彼女が眉をひそめた。こうして言葉が交わせるのなら、彼女はここまでの旅路で出会った彼らとは違うかもしれない。そんな希望に、ギーツは「あぁ」と頷く。

    「あの日、何が起きたのか。どうしてああなったのか……俺の過ちを、ちゃんと話す。そのうえでこれからどうするかを考えてほしい。許してほしいと言うつもりはない。そのうえで君が、景和が、もう俺たちとはいられないとう言うなら、そのときは黙って立ち去ろう。だが、あいつと何も話さずに別れることは、」
    「そんなこと聞いて、何になるの?」

    ──希望なんてこの世界にはないって、君は知っているだろうにね。払いのけるような冷たい声。思わず言葉を途切れさせた君を睨みつけながら、彼女は言葉を続ける。

    「あなたたちの過去が何? 景和を殺した人が何? 謝って、それでどうするの? 過去は戻らないのに……あなたたちのしたことは変わらないのに」
    「……沙羅さん」
    「ねえ、あなただってそう思うよね」

    そこで彼女はギーツから視線を外し、それをゆっくり一人へと向けた。ぎゅうとスカートを握ったまま立ち呆けるナーゴでもなく、すっかり空気のように黙り込んだムジナでもなく──不要のはずの呼吸さえ荒く、ただ囚われたように彼女を見つめ立ち尽くすバッファへ。

  • 39二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 20:12:22

    「っ」
    「道長……?」

    そういえば、彼女が現れてから彼の声を聞いていない。その違和感に君達も気づくだろう。ナーゴが振り向いても、彼はなんの反応も返さなかった。ただ怯んだように震え、叫ぶのを耐えるかのように唇を噛んだまま呼吸を乱すだけ。

    「もう思い出してるでしょ? あなたがしたこと。私たちにした裏切り。どんな顔してここまで景和と一緒にいたの?」
    「──沙羅、おれは、」

    弱々しく上擦った声が彼女の名を形作った瞬間、少女の眼差しがつり上がった。突如燃え上がる炎のように、鋭い敵意が君たちを襲う。

    「呼ばないで!! あなたは、あなただけは絶対に許さない……景和を、見殺しにしたくせに!」
    「みご、ろし?」

    そんなはずはない。確かに記憶のなかの彼は、それを自分の責任のように言っていたが……彼はただ守れなかっただけだ。それを罪とするのはあまりに酷だろう。それは違う、と言いかけたギーツの口は途中で止まる。バッファの様子が、自責とも違う何かに追い詰められたように見えて。

    「……わかってる。あいつを、死なせたのは……俺だ」

  • 40二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 20:14:15


    ──

    ここらに住み着くようになった二人組の子供を探してる、と奴らは言った。その特徴に覚えがあることを見抜かれたのだろう。向けられた銃口に、隣に立つ彼の肩が強ばるのが視界の端に映った。

    『大人しく話せば、命までは取らない』

    嘘だと直感的に分かった。こいつらは情報を聞き出したうえで、自分たちの口も封じようとするだろう。この世界で銃を持っている人間など軍人か、裏社会と通ずるものだけだ。あのふたりが決して話さない過去。きっとそれにも関係している。

    守らなければならない。あの家を。狙われている二人を。今、自分のすぐ隣にいる彼を。

    生活は変わっても物心がついた頃からのくせは抜けず、懐に忍ばせていた拳大の石にそっと手をやる。相手は武器を持った大人ふたり。勝てるとは思えないが……彼が逃げる時間くらいは稼げるだろう。やれなくてもやるしかない。

    『……わかった。俺たちも死にたくないからな』

    なぁ?と彼の目を強く見つめる。男たちには見えない角度に顔を向け、にげるぞ、と口だけを動かせば、戸惑いに満ちた様子の景和は、何が何だか分からないというような顔で、それでもこくりと頷いた。

  • 41二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 20:15:32

    子供相手だと思って気を抜いているのだろう。話が早いなと男は笑い、構えていた銃を下ろした。ゆっくり歩み寄ってくる連中との距離を必死に見据える。油断しているところを至近距離から上手く狙えば、一人ぐらいは落とせるだろう。もう一人は自分が相手をすればいい。景和がこの場から離れる時間くらいは稼げるはずだ。

    (そうだ、それで、こいつは逃げ切れる……)

    心臓の音がうるさい。他に選択肢などない。目的を果たすために、最善の策を取るべきだ。どうせあの日、彼に、彼らに出会わなければ終わっていた命だ。迷いはない、あるはずがない。……ある、わけが。

    腕を大きく振りかぶり、握った石を放り投げる。そのうちの一つが男の目にあたり、呻くような悲鳴が地を転がった。続けざまに投じた一石により、もう一人の額からも血が滴る。──今しかない。

    『走れ!!』

    唖然としていた景和の腕を掴み走り出す。大丈夫だ、逃げ切れる。裏道から山の中に入ってしまえば、昨日今日ここを訪れたばかりの人間に道が分かるはずもない。
    言い訳がましく回る頭に、けれど口元は安堵に緩む。帰れる。帰れるんだ。二人で、あの家に──。

  • 42二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 20:17:08

    どん、と背中に広がる衝撃。バランスを崩し地面に倒れながら、空間を劈くような破裂音を聞いた。次いで、焦げるような匂いと鉄臭さが鼻を撫でる。無理やり起こした視界の先で、糸の切れた人形のように倒れ込む景和の身体がスローモーションに映った。


    何かを求めるように伸ばした腕が宙を切り、それに引きずられるようにして──川岸へと。


    『──けい、』


    届くわけもない手の先で、その姿が掻き消え。ざぷん、と冷たい水音を最後に、世界から音は消えた。


    ──


    道長:記憶のカケラ〈罪〉更新

    死にたくない。初めて本気で抱いた願いが、いつかの決意をにぶらせた。我が身かわいさゆえの決断。それが、彼を死なせた。あの日々を壊した。守ると誓ったすべてを、粉々に砕いてしまった。どれだけ目を逸らしたくても認めざるを得ない。これが──自分の罪なのだと。


    【狂気判定】

    道長:dice1d10=4 (4) -1

  • 43二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 23:53:34

    〜〜
    景和「た、タイムタイム! 連続で判定失敗してる俺が言うことでもないけど、ちょっと出目まずすぎない!?」
    祢音「こんな全員出目がダメになることあるんだねー……」
    ツムリ「全員メンタルぐらぐらですね……状況的には仕方なくはありますが」
    道長「対話判定ねじ込む暇もあんまねぇな、嫌な予感しかねえ」
    英寿「……まぁチャンスができ次第、補正もらえるように狙っていくしかないな」
    祢音(……地味に英寿、狂気点危なくない? 対話判定けっこう成功してる気がしてたけど)
    ツムリ(指摘されてないですが、今セッションは狂気判定で失敗が多いんですよね……)
    景和(あー……不安要素多いなぁ)
    英寿「…………」
    道長(あんま見ねぇ顔してんな……)

  • 44二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 23:58:58

    〜〜〜
    道長→祢音〈友情〉●●●○


    「……あいつを先に逃がすべきなのは、分かってた。そのための時間稼ぎをするべきだと。だけど、俺は、…………死にたく、なかった。死ぬのが、怖くなって、そのせいであいつは、景和は、…………」

    途切れ途切れに吐き出されるそれは、もはや懺悔に等しい。無意識にか目を逸らし続けてきた罪。取り返しのつかない過ち。開けてしまった箱から溢れだす記憶は、忘れていたことが信じがたいまでに強く君の心を蝕むだろう。

    「道長くん言ってたよね。みんなのことを守るって……約束したのに。なのに、ねぇ、どうして?」
    「……」
    「どうして守ってくれなかったの。どうして一人でのうのうと帰ってこれたの? 景和が、たった一人の私の家族が、あんな……びしょ濡れで……ぼろぼろのおもちゃみたいになって……」

    あの日のことを思い返すように彼女は俯き、両手で顔をおおった。引き攣り、震える声色にはどこまでも怒りがこもり、謝ることさえできず君たちは揃って口を閉ざす。
    やがて顔を上げた彼女の顔から、再び表情が削ぎ落ちる。絶望と怒り、覚悟、どこまでも頑なな拒絶の意。

  • 45二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 00:01:09

    「あなたたちがいなければ──景和があんなふうに死ぬこともなかった。私たちはずっと幸せなままでいられた。ふたりきりで、ずっと!!」


    彼女の怒声に応えるように庭を彩る花壇の土がぼこりと隆起し、這い出るように人間の腕が伸びる。思わず身をすくませれば、背後から金属が地面を擦るような音が耳を刺した。

    オペラハウスで目撃した改造型アンデッドに近いだろうか? 数体のそれが君たちを囲み、腕のように備わった鎌で君たちの四肢を狙っている。


    「待て沙羅っ、こいつらは俺が追い返すから、だからあんたは……!」

    「だめだよ。私がなんとかしなきゃ……私が守らなきゃ、今度こそ、今度は、絶対目を離さない。誰にも奪わせたりなんてしない……」

    「っ……」


    どっちつかずの様子でただ事の行く末を見つめていたムジナに視線もよこさず、ただ彼女は君たちを睨みつける。

    さぁ、獣は本性を表した。君たちの旅路を遮る害獣は駆除しなくては。これまでもずっとそうしてきたはずだ。それなのに、どうして君たちは立ち尽くしているのかな。


    【行動判定:敵地観察】

    英寿:dice1d10=6 (6) +1

    祢音:dice1d10=7 (7)

    道長:dice1d10=2 (2)

  • 46二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 00:27:44

    自らの過去の一つに、既に向き合った君たちの目は、自分たちを囲む敵対者の配置を冷静に読み取った。連中の攻撃を凌げなければ、この旅は終わる。

    「っ……構えろ、来るぞ」

    無機質な殺気に銃口を向け、ギーツはそう姉妹たちに言葉をかける。だが彼女たちの反応は芳しくない。おずおずと武器を起動させはしたものの、見るからに迷いのあるナーゴ。バッファに至っては声も届いていないのか、ただ俯いたまま動かない。

    「バッファ!」

    ギーツの声が遠い。身体が動かない。頭が回らない。目に映るのは彼女の敵意と、いつか見た冷たい彼の亡骸ばかりで。守れなかった約束。壊してしまった場所。閉じ込めようと目を逸らし続けてきた罪の形が、君の心を縛り付ける。

    「……道長の気持ちも分かるよ。アレと戦って、それでどうするの……? 私、沙羅さんとなんて戦えないよ……!」

    押しつぶされるような表情で突っ立つばかりのバッファを庇うように。果敢なドールらしくもなく、ナーゴはそうかぶりを振る。まるで彼女こそが正義であるかのよう? そんなわけがないだろうに。

    「待っててね景和……きけんなものはすぐに排除するから。これで、おしまいにするから!」

    彼女の慟哭に突き動かされるようにして、現れた機体のひとつが腕部を振り上げ、白刃に君たちを映し出す。動くこともできない的を狙うなんて、脳みそもない低級兵器にも容易なことだ。鎌が光を反射させながら、何の躊躇もなく君たちに振り下ろされ──。

  • 47二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 00:30:47

    「……だめだ」

    金属の擦れる音と、庇うようにして触れる体温。生きた人間のような熱を持つ存在を、君たちは一人しか知らない。

    「っ、景和……!?」
    「遅くなってごめん。間に合ってよかった」

    構えた日本刀で、振り下ろされた鎌を受け止めた彼は、間違いなく君たちの姉妹だ。でも感動の再会と呼ぶには……知ってしまった真実と、目の前の現実は重すぎるかな。

    「タイクーン、お前……」
    「三人とも怪我してない? 数が多いね……ちょっとオペラハウスで見たのに似てるかな」
    「ちがう、違うよ景和っ、そんなことより、」
    「……みんなも、思い出したんだね」

    え、とナーゴの唇が開いて固まった。ほかの姉妹も同じように目を見開き、平然とした様子のタイクーンを見つめる。

    「も、って……じゃあ」
    「うん、……思い出したよ。あの日何があったのか」
    「なに、してるの?景和」

    わずかに表情を影を落としたタイクーンは、その声の方向へ顔を向ける。呆然と立ちすくむ沙羅は、先程までと打って変わり、狼狽を明らかにしていた。

  • 48二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 00:31:48

    「姉ちゃん……」
    「言ったのに、待っててって……それなのに、なんでその人たちを庇うの? ねぇ早く離れて、景和はあそこで待ってるだけでいいの!」
    「ごめん、できない。あの部屋に閉じこもって、何も知らないふりをして。それで終わりなんて、俺は絶対に嫌だ」

    対照的なまでに落ち着いた口ぶりで、君は刀を構え直す。四方に散らばる機体がいつ襲いかかっても良いよう意識しながら──姉である彼女を正面に見据えて。

    「……本気なのか、タイクーン」
    「言っただろ。みんなを守るためなら、俺は戦う。みんなが傷つくのを黙って見てるなんてできない」
    「っ、お人好しも大概にしろ!」

    ぐらりと視界が揺れ、そのなかにバッファが映り込む。人の胸ぐらを掴んでいるとは思えないほど苦しげに、絞り出された声も掠れたものだった。

    「俺達がいなきゃ、ああやってお前が死ぬことはなかった……沙羅の言う通りだ。あの日、あの瞬間、俺が迷ったりなんかしなきゃ、お前は死なずに済んだ! なのに、お前は沙羅より俺達を選ぶつもりか!?」
    「……違うよ。俺が死んだのはみんなのせいじゃないし、守りたいものに優劣をつける気もない」
    「何が、」
    「思い出したんだ。俺達にとって大切だったもの……だから、それは守らなきゃ」

  • 49二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 00:35:49

    宥めるよう小さく微笑んだタイクーンの眼差しにこもる決意に、バッファは唇を噛む。彼が案外頑固なのは、君も知っているところだ。

    それに、とタイクーンはギーツを振り返る。


    「狂気に身を落としたまま動き続けるだけのアンデッドなんて、悲しいだけ。そう言ったのは君だろ。……英寿」


    だから引く気はないと言いたげに。その瞳に宿る強い光に、ギーツもまた考え込むように口を閉ざした。


    「で、でも……景和、沙羅さんは……」 


    まだ声を震わせながら、そうナーゴは彼女を見やり──刹那顔色を変え、景和っ、と鋭い声を上げた。

    立ち尽くすばかりの桜井沙羅……その隣。仕えるように彼女のそばに控えてきたはずの青年の姿がふっと掻き消える。初めて彼の姿を見た時と同じだ、それならば。


    その警戒は正しかった。瞬きを挟んだ次の瞬間に、距離を詰めた彼──ムジナの靴底に隠されていた白刃が、タイクーンの目前へと迫っていた。


    【行動判定:二度目の邂逅】

    景和:dice1d10=7 (7) -2

    道長:dice2d10=1 3 (4) (【うで】使用)

  • 50二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 01:04:19

    〜〜
    「「あ」」
    景和「……なんか、ホントにごめん」
    道長「謝んのやめろ、そっちのが効くだろ!」
    英寿「もう今回下手にパーツ使わない方が良さそうだな、自滅しかしないぞ」
    大智「フフ、毎度毎度ハラハラさせてくれるね。ここでパーツ損傷か……」
    ツムリ「この出目のままバトル入ったらと思うと恐ろしいですね……」
    祢音「もうNC陣が深刻な顔しだしちゃったもんなぁ〜……」

    〜〜

    「ッ!」
    「うわ、っ」

    咄嗟にバッファは掴んだままの胸ぐらを突き飛ばすが、僅かに遅い。タイクーンの首を正確に狙う軌道。そこに足を踏み込み腕を伸ばしたのは、ほとんど本能的なものだと言っていい。

    道長:【うで】損傷


    「──君は、」
    研ぎ澄まされた刃がバッファの腕を裂く。目を見開いたムジナの口から零れた微かな声は、君たちの知る彼のものとよく似ていて。

  • 51二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 01:06:01

    「道長さん……!」


    けれどそんな気づきは、本物の姉妹たる彼の呼び声にかき消される。タイクーンに負傷はなく、それに僅かな充足感が広がった。


    体勢を崩した二人を庇うため、ギーツとナーゴは即座に武器をムジナへ向ける。ムジナの行動は、それまでの彼の行動目的と矛盾している。それを突こうと向けた視線は、しかし苛立ちに染まった彼の表情に気を取られた。


    「さっきから聞いていれば……何のつもりだ、桜井景和」


    地を這うような低い声。明確に殺意を滲ませた声音で、ムジナはタイクーンを睨みあげている。


    「何が『守る』だ。いつもお前はそうだった……弱いくせに、何の力もないくせに、一丁前にヒーローぶって!」

    「っ……」

    「お前の偽善が、選択が、最後には誰もかもを傷つけた。何もかもお前のせいだ。なら、今度こそは応えなきゃならない。お前に置いていかれて一人になった、沙羅の願いだけは!!」


    激昂に吠える彼の言葉は、君の内面を少なからず抉る。ずっと忘れていた記憶。幸福の裏に隠されていた、大切な誰かの絶望。無知はまったく幸せなことだ。そうだろう?幸福のアリス。


    【狂気判定】

    景和:dice1d10=5 (5)

  • 52二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 01:08:42

    「分かってるよ……そんなこと」

    顔を伏せたのは一瞬。小さく声を落とした君は、しかしすぐに顔を上げ、真っ直ぐにムジナを見つめ返す。

    「本当はあの時だって、もっと良い方法があったかもしれない。みんなを傷つけずに済む方法が……でも俺は何もできなかったし、何も知らなかった。俺が死んだあと、みんながどんな思いをしたのかだって」
    「そうだ。何の痛みも知らないくせに……自分のエゴを満たすためだけに、お前はあいつらを利用した。その結果がこれだ。ただまわりを振り回して傷つけて!」

    激情に反し、彼の瞳は真っ直ぐに君を捉えて逃がさない。怒り。憎しみ。敵意。これまでの旅路のなかでも、最も純粋な嫌悪。それを正面に受けて、なおタイクーンは引かなかった。その様が、余計に彼を苛立たせる。

    「お前の選択だ。お前の間違いだ。それでも、沙羅は……っ、沙羅が求めるのは、お前ただ一人だった。ならせめて、それにだけは応えなきゃいけない、違うか!?」
    「違う。だってそんなこと、姉ちゃんは望んでないから」
    「────は?」

  • 53二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 01:23:52

    ムジナのこめかみが引きつり、絶句したように表情が抜ける。だがタイクーンは怯むこともなく、自分と同じ顔の男を淡々とした顔で見つめた。

    「祢音ちゃんたちを傷つけることも、俺を閉じ込めることも、姉ちゃんは望んだりなんかしない」
    「何を……ッ、今の沙羅を否定する気か? お前の理想を押し付けて? あの日、沙羅がどれだけ傷ついたのか分からないのか!?」

    怒りと憎悪に顔を染め、ムジナは声を荒らげる。その言葉を受け止めてなお、タイクーンは意外なほどに落ち着いていた。後悔の色を浮かべながらも、覚悟を秘めた瞳のまま。

    「……記憶の一部があっても、本当の痛みなんて俺には分からない。でも、姉ちゃんが、みんなを傷つけようとするわけない。それだけは分かる。俺は姉ちゃんの家族だから」
    「タイクーン……」
    「……確かに、一瞬だけは、恨む気持ちはあったかもしれない。でもだからって、それまでの俺達の毎日を、幸せを否定なんかしないよ。姉ちゃんだもん」

  • 54二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 01:24:52

    「ふざけんな!お前は、今の沙羅の気持ちまで踏みにじるつもりか!?」
    「踏みにじってるのはネクロマンサーの方だ。言うわけないだろ、姉ちゃんがそんなこと……」

    ふ、と吐き出したのはため息。目を伏せたタイクーンは、再びゆるりと視線を上げる。これまでのどのサヴァントにも、知性もないレギオンにさえ向けたことのない、侮蔑の目。

    「それが分からないなら、やっぱり君は俺じゃないんだね」

    自分相手だからかな。容赦のない物言いは、見事に彼の心を抉ったらしい。

    「……ッ!」
    「タイクーン!」

    激昂に言葉も失ったようだった。再び臨戦態勢を取ったムジナにギーツの注意が飛ぶ。分かってると言う代わりに刀を構え──その緊張感は、鈴が転がるような呑気な声が遮った。先ほどの動揺とは打って変わって、彼女らしい無邪気な笑顔。ちぐはぐな移り変わり。

  • 55二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 01:25:54

    「……もー、さっきからあんた何言ってんの。景和の姉ちゃんは私でしょ?」
    「……うん」
    「なら姉ちゃんの言うこと聞いて、おうちのなかで待ってなさい。こんなの、姉ちゃんに任せたらチョチョイのちょいなんだから!」
    「うん……ごめん。だから、今の姉ちゃんとは一緒にはいられない」

    明確な拒絶にナーゴが息を呑む。ギーツもバッファも、抱く動揺は同じだろう。今となっては"姉妹"であっても元は他人。血の繋がった家族である二人は、君たちにとっては眩しくも特別な関係に見えていただろう。そのタイクーンが、姉を切り捨てた。

    「……なんで?」

    呆然と行く末を傍観するばかりの君たちの向こうで、彼女は小さく呟く。

    「なんで、なんでなんでなんで……なんでいつも、景和は私のこと置いてっちゃうの。なんで振り返ってくれないの。なんで……私と景和は、ふたりだけの家族なのに!!」
    「…………」 

  • 56二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 01:28:34

    泣き叫び、縋り付く声音は聞くに絶えない。血の繋がりなんて前時代的なものに固執し、とっくに失った過去に固執し、惨めに蹲るだけの彼女のなんて哀れで愚かなことだろう。正しいのは、こうして先へ進むことを選んだ君だ。惑う必要なんてない。それなのにそうやって表情を歪める、その矛盾もまた君らしい。

    「景和……」
    「ううん、大丈夫……もう決めたから」

    本当にこれでいいの? そう問おうとしたはずの声は、むしろ彼に縋り付くように響く。ナーゴを振り向き、優しく微笑んだタイクーンは、静かに刀を握り直した。

    「俺は姉ちゃんを止めるよ。それが姉ちゃんの願いだって信じてる。……みんなが戦いたくないならそれでもいい。俺が、みんなのことも守ってみせるから」

    凪いた眼差しには、恐怖も憂いも怯えもない。つくづく姉たる彼女とは反対だ。揺るがぬ決意は明らかで、まだ戸惑い混じりの姉妹たちに落ちた沈黙を、最初にこじ開けたのはギーツだった。

    「……分かった。俺はお前を信じる。守られるだけってのは性に合わないしな」
    「英寿」
    「懐かしいな、その呼び方。……お前らはどうする、時間はないぞ」

  • 57二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 09:09:24

    保守

  • 58二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 12:02:50

    復活待ってた!
    道長は景和に庇われたの気にしてるのかと思ってたけど、それだけじゃなかったんだなぁ…

  • 59二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 15:46:39

    ふっと柔らかな笑みをこぼしたのは一瞬で、ギーツは立ちすくむ二人に視線を向ける。

    「……わかんない、ねぇ英寿、景和、本当にこれでいいの? 沙羅さんと戦うのが、本当に正しいの?」
    「…………」
    「私だって、みんなと一緒にいたいよ……でも沙羅さんの言ってることは間違ってない。憎まれてたって仕方ないって、そう思っちゃうのに……!」

    瞳を潤ませ狼狽するナーゴと、ただ表情を強ばらせ沈黙を続けるバッファ。桜井沙羅への罪悪感が、いつかの決意を鈍らせる。彼女を切り捨て先に進む、なんて、そんな選択が自分に許されるのかと。

    「……正直、何が正しいかなんて俺も分からない。でも俺は英寿にも、祢音ちゃんにも、道長さんにも傷ついてほしくない。姉ちゃんに、みんなを傷つけてほしくない。だから戦う。……とか、これじゃ俺のわがままだね」

    ごめん、と彼はへらりと笑った。変わらない笑顔。あの日、自分のせいで失われた命。すべてを思い出してなお変わらないアリスの在り方。

  • 60二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 15:48:00

    「でも、姉ちゃんはそんなこと思わないって、俺は思う。憎んでなんかない。祢音ちゃんと英寿のことも、道長さんのことも」
    「景和……」
    「正直、俺も彼女の怒りは最もだとは思うがな。だが……沙羅さんのことを一番知っているのはこいつだ。彼女にとって、何が一番良いのかも」

    ナーゴを、そしてその奥に立つバッファをギーツは見やる。どうするかは自分で決めろ。言葉はなく、しかし細められた瞳にそう言われているようで。

    「ッ、俺は、」

    ようやく噛み締めた唇を開いたバッファの声は、再び振り上げられた機体の鎌が地面を抉る音に呑まれる。咄嗟に攻撃を避けた姉妹たちは地を転がりながら、本能的に顔を上げた。自分たちを囲む機械の先──その主であろう二人のサヴァントへと。

    残念、時間切れみたいだ。続きは邪魔者を片付けてから、姉妹だけでゆっくりと語り合えばいい。選ばれたのは君たちだけ。道を切り開くことができるのは、特別なドールたちだけなんだから。

  • 61二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 15:49:18

    「もう、いい……その子たちがいるから、そんなこと言うんでしょ? 景和はその子たちを放っておけないだけだよね、景和は昔からそういう子だもん! それならきれいにしなきゃ、私お片付け苦手だけどちゃんとするから、今度は間違えたりしないから、そしたらずっとずっとずっといっしょにいてくれるよねぇ景和!!」

    「……、……絶対に叶える。他の結末なんて認めない……だからここで壊れろ、桜井景和!」



    【対話判定】

    英寿→

    景和〈独占〉:dice1d10=9 (9) +2

    祢音〈憧憬〉:dice1d10=7 (7)

    道長〈保護〉:dice1d10=9 (9)


    祢音→

    英寿〈信頼〉:dice1d10=10 (10)

    景和〈対抗〉:dice1d10=8 (8) +1


    道長→

    英寿〈対抗〉:dice1d10=1 (1) +1

    景和〈憧憬〉:dice1d10=1 (1) +1+1

  • 62二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 16:51:33

    〜〜〜


    景和「あ、久々の大成功!……と」

    祢音「道長本当に大丈夫これ!??」

    道長「俺に聞くな……」

    大智「ここまで徹底して散々なの初めてじゃないかい? ちなみに両方1になる確率は」

    道長「言わなくていい!!」

    ツムリ「英寿様は残り減少数1回ですが、どこから減らしますか?」

    英寿「せっかく大成功になったしな、タイクーンからにする。〈独占〉のままでも問題はないが、どうなるかな」


    大成功

    英寿→景和:dice1d10=8 (8)

  • 63二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 16:53:55

    8:〈保護〉→変更なし


    ツムリ「というところでアドベンチャーパートは終了です。アドベンチャーパートとしては最長でしたね、お疲れ様でした!」
    大智「こちら側が言うのはなんだけど、本当に長かったね、色んな意味で」
    景和「色々あったけど……とりあえず俺が俺?に嫌われすぎな件……」
    英寿「振る舞い的に、タイクーンを元にした存在には違いなさそうだな」
    祢音「のわりに沙羅さんはノーリアクションだよね。普通にムジナさん呼びしてるし」
    英寿「セリフを思うに、沙羅さんにはしっかり区別がついてるんだろう。偽物と本物の区別がな」
    道長「……ここからバトルか………………」
    景和「道長さんがバトルパート嫌がってる!珍しい〜」
    英寿(まあこの状況じゃそうだろうな……)

  • 64二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 17:00:34

    というところで書き溜めてた分のアドベンチャーパート終了です。長かった……本当に……(未使用文やメモ含めてAPだけで5万字以上ありました)
    覚えててくださってた方がいてくれて本当にありがたいです。

    なおここからバトル処理になるんですが、恐らく保守間に合わない気がするので、また次の再建スレになる可能性が高いです……
    毎度のことながら完結までなんとか続けたい気持ちはあるので、見かけたらまた覗いていただけると嬉しいです!よろしくお願いします!
    (別カテでネクロニカスレされてる主さんの凄さが身に染みてます……)

スレッドは7/28 03:00頃に落ちます

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