【SS】Dr.レイシオのたのしい講義ゲーム理論〜アベンチュリンを添えて〜

  • 1二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 18:46:18

    「ゲーム理論は知っているか?」
    「ゲーム理論?なんだい、それ。確率がうんぬんとかいうヤツ?」
    「いや、君が想像しているようなものとは違うだろうな。
     ゲーム理論はまず2つ以上のプレイヤーがいることを前提とする。それぞれの利得がそれぞれのとる戦略に影響される状況をゲームと呼び、全てのプレイヤーが己の利得を最大にするよう動くとする。その時のプレイヤーのとる戦略について考える分野だ」

    続きます

  • 2二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 18:47:56

    「なんだか随分とまどろっこしいね。学問ってやつはどうも定義とやらに固執したがる」
    「そうしないと話が進まないからな。この理論で一番有名なものは、やはり囚人のジレンマだろう。これの大きな特徴は、パレート最適と支配戦略均衡が違う戦略の組であるという点だ」
    「ちょっと待ってくれよ教授。囚人のジレンマはともかく、パレート最適と支配戦略均衡って何だい?僕はそういう単語は知らないよ」
    「ふん、わかっている。順を追って説明するから待て」

  • 3二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 18:51:11

    「まず囚人のジレンマの状況からだ。看守は2人の囚人にこう提案する。
    『2人とも黙秘したら、1年の刑期で出す。
     片方は黙秘し片方は自供したなら、黙秘した方は5年の刑期を与え、自供した方はすぐに解放する。
     2人とも自供したら、2人とも3年の刑期とする』
     と。この時、2人はどのような選択をする?」
    「そうだね…2人にとって一番いいのは、お互い黙秘することだ」
    「ああ。このような“全てのプレイヤーの利得の和が最大になる戦略の組”を、パレート最適と呼ぶ」

  • 4二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 19:00:25

    「続けるぞ。だが、そうなる可能性はあまり高くない。2人で相談できるなら間違いなく黙秘を選べるが、それができないのであればそれぞれの戦略をとった時の自分の利得を考えなければならない。
     まず、相手が黙秘した場合。自分も黙秘すれば1年の刑期だが、自供してしまえば牢屋には入らなくていい」
    「ふふ、自供した方が得だね」
    「相手が自供した場合。黙秘すれば5年の刑期になるが、自分も自供すれば3年だ。こちらも自供をした方が得だな。
     結論としては、相手が黙秘しても自供しても、自供する戦略をとる方が自分にとって得になる。こういった“他のプレイヤーの全ての戦略に対し最適応答である戦略”を支配戦略という」

  • 5二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 19:04:45

    「じゃあ、支配戦略均衡は2人ともその支配戦略をとっている状態かい?」
    「プラス5点といったところか。正確には全てのプレイヤーだ」
    「やった、加点だ。でもこの場合は2人でよくない?」
    「マイナス3点。今のは一般の定義について言っていただろう」
    「おや、弁明ではなく言い訳になってしまったようだ。これは失礼」

  • 6二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 19:56:18

    「とにかく、この支配戦略はプレイヤーが採る確度がかなり高い。この場合、“どちらも自供”が支配戦略均衡となり、プレイヤーが選択する可能性が最も高いという結論になる。これはパレート最適である“どちらも黙秘”とは真逆だ」
    「囚人のジレンマ自体は知っていたけれど、こうやって学問分野として解説されると面白いね。他にもあったり?」
    「そうだな…このゲーム理論は、心理学とはまた違う観点から人間の行動を予測する。だからこそ、ゲーム理論と実際の実験…いや、観察が適切か。とにかく、理論と現実が食い違うケースもある」

  • 7二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 20:13:44

    「へえ、一体どういうのだい?」
    「最後通牒ゲームと呼ばれるゲームがある」
    「これはまた物騒な名前だね」
    「内容は特に物騒ではない。このゲームは提案者と応答者が存在し、いくらか…そうだな、例えば10万信用ポイントを2人で分けるとする。この時、提案者は自分がいくら取るかを提案し、応答者はそれを受諾するか拒否するか選択する。応答者が拒否すれば、2人とも1信用ポイントも貰えない」

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