- 11◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 20:59:33
- 21◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 21:01:05
- 31◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 21:04:22
- 4二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:08:01
- 5二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:08:23
- 6二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:18:37
スレ主たて乙!
待ってました! - 7二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:21:10
たておつです!待ってました!
スレ主のSS大好きです!!楽しみにしてます - 81◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 21:24:00
- 91◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 21:36:40
>>4 【第一夜:潔世一・黒名蘭世】
「……潔、本当に行くのか」
「行くしかないだろ。……噂、聞いちゃったんだから」
誰が言ったのか、俺たちは覚えてない。
でも、気が付いたら、
頭の中にこびりついて、離れない。
“大浴場の一番奥のシャワーから、黒髪の束が出てくる”
“たまにだけど、本当に見たやつもいるって”
そんな話を聞いた夜に、
寝つけるはずもなかった。
真夜中の廊下は、やけに静かで、やけに暗かった。
天井の明かりは間引かれて、
足音だけが、妙に響く。
「潔……俺、こういうの本当に無理。無理」
「俺だってそうだよ。でも、二人ならなんとかなるって……!」
黒名とは、同じチームで、気も合うやつだけど、
でも今は、お互いに、まったく余裕がなかった。
- 101◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 21:39:01
「髪が詰まってるだけ、とかさ……そういう話じゃないの?」
「詰まるほどの量が“束”で出てきたら、それはそれでヤバい……」
少しでも、緊張を和らげたくて話してるのに。
出てくるのは、
余計に怖くなるようなことばかりだった。
夜の廊下は、
空調も止まってるのに、どこか寒くて。
裸足の足に、
冷たい床の感触が、じわじわ伝わってくる。
「……黒名、着いてきてるよな…?」
「潔、あんまり急ぐな……心臓に悪い……」
いつもより、少しだけ大きな黒名の声に、
俺の肩が、ビクッと震える。
廊下を曲がって、大浴場の扉が見えた。
「うわっ……!自動照明……タイミング最悪……」
パッと照明がついて、無人の浴場があらわになる。
タイルと壁が白く光って、
床に落ちる影が、やけにくっきりしていた。
人の気配がないのが、逆に怖い。 - 111◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 21:40:59
「……潔、何も出ないよな……?」
「それを確かめに来たんじゃんか……ビビらせんなよ……」
吐息に少しだけ、震えが混じる。
冷えきった空気のせいだけじゃない。
浴場に響く音は、俺たちの足音だけだった。
脱衣所を抜けて、洗い場へ。
濡れた床。
濡れた椅子。
誰もいないはずなのに、
ついさっき誰かが使ってたみたいな、そんな感じ。
「椅子、ズレてる……」
「……それ、言わなくていいって……」
並ぶシャワーの列を指で数えながら、
奥へと進んでいく。
1、2、3、4、5…………
番号が進むごとに、
なんだか空気が重くなる気がして、息を呑む。 - 121◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 21:43:37
「ここ……だよな。一番奥……」
目の前には、何の変哲もないシャワーの蛇口。
でも、どうしてだろう。
すぐそこに、誰かが座っているような気配がする。
「黒名……しゃがんでみるか……?」
「………や、やだ。やだ。潔、見てくれ……俺はちょっと後ろから見守ってるから……!」
「後ろから“見守る”って言うな……!」
そんな会話を交わしてるくせに、
どっちも、逃げる準備は万端だった。
俺は、そっと手を伸ばして、蛇口をひねる。
キィィィ……
乾いた音とともに、水が流れ出す。
まだ、何も起きない。
けど、流れる水のなかに――
何か、黒いものが混じっているような、
そんな気がした。
dice1d2=2 (2)
- 131◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 21:59:22
【真】
蛇口から落ちる水音だけが、浴場に響いていた。
天井の照明はまだ、点いている。
でも、どこか薄暗く感じるのは、
たぶん、気のせいじゃない。
俺は、じっと水を見つめていた。
最初は、何もなかった。
冷たい水が、ただタイルに流れていくだけだった。
でも――
それは、本当に“ただの水”だっただろうか。
流れのなかに、何か、黒いものがある。
髪の毛。
……一本じゃない。
絡まり合って、ねじれて、束になって――
排水口から、ゆっくりと、出てくる。
―――べちゃ。
そんな音が、した気がした。 - 141◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 22:05:19
俺は、動けなかった。
目の前で、それが確かに、這い出てきたから。
「や、やばいやばい、やばい、潔……っ!」
「……っ、見えてる、よな、黒名……!」
黒名の声が、震えている。
俺も、口の中がカラカラに乾いて、
声にならない声が、喉の奥で詰まっていた。
髪は、止まらなかった。
束のまま、次々と、
濡れた蛇口の下に現れてくる。
真っ黒で、長くて、濡れて、重そうで。
そして――
その“髪の先”に、何かが、ついていた。
見ちゃいけない、と思った。
でも、目を逸らせなかった。 - 151◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 22:08:31
床に広がった髪の先に、ゆっくりと――
白い、爪が、顔を出した。
人の指だ。
人の、それも、小さな指。
ぶわっ、と、背筋が冷たくなった。
「――ッッ!!!」
「うわああああああああああああ!!!!!!」
悲鳴がこだました。
俺が叫んだのか、黒名が叫んだのか、
それとも、両方だったか。
よく分からない。
ただ、もう、限界だった。
逃げなきゃ、と思った。
でも、足が動かない。
髪の束が、今にもこっちに向かって、
伸びてくるような気がして――
蛇口の下の空間が、口みたいに見えた。 - 161◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 22:10:34
「動け、動け動け動けっっっ!!!」
自分に言い聞かせるように叫んで、
ようやく身体が動いた。
後ろにいた黒名とぶつかりながら、
転がるように洗い場を離れる。
足元は濡れていて、滑る。
けれど、そんなのどうでもよかった。
髪の束が、追ってくるような気配がして――
「もう無理!!無理無理無理無理無理!!!」
叫びながら、脱衣所を飛び出した。
そのまま、濡れた足のまま廊下を走る。
黒名も、すぐ後ろで同じように叫んでいた。
笑われたって、いい。
ビビりだって、構わない。
だって、あれは――本当に、出たんだ。
【第一夜:潔世一・黒名蘭世】 - 17二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:12:20
いや怖……ガチのやつやんけ
- 181◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 22:29:12
>>17 【真】だったからトイレに行けなくなるくらい怖い話にしようと頑張ったよ!怖い話はやっぱりめちゃくちゃ怖くないとね!
- 191◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 22:31:36
>>5 【第二夜:糸師冴・潔世一・國神錬介・糸師凛】
誰が言い出したかは、知らない。
けど、そんな話が流れてくるってことは、
それなりに、噂として根付いてるってことだ。
“ブルーロックには、本来存在しないはずの階層がある”
“それを見つけたやつは、消えるらしい”
“階段は、普段は扉に隠されていて、あるときだけ開く”
―――そんな具合に。
俺はホラーに興味はねぇが、
嘘か真か、試すくらいは悪くないと思ってる。
「本当に行くのかよ、兄貴」
「行くっつったのは、お前じゃなかったか?」
「俺は確認しに行くって言っただけだ。一緒に行くとは言ってねえ」
凛は小さく舌打ちしながらも、
しっかりと、俺の後をついてくる。
潔世一と國神錬介も、俺たちの後ろにいた。
- 201◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 22:33:47
「階層……か。夢みたいな話だけど……いや、本当かもしれないし……」
「夢かどうかは、見てから決めろって話だな」
俺は、建物の構造をなんとなく覚えてる。
スタッフ用の通路の奥に、今は使われていない、
物置スペースがあったはずだ。
ふと、足元を見て、気づく。
通路の床材が、微妙に違っていた。
「なあ、ここ……壁、若干へこんでない……?」
潔世一がそう言って、壁の隅を指でなぞった。
國神錬介が黙って近づき、力を入れる。
ぎ……ぎい……と、重い音を立てて、
鉄の壁がわずかに、内側へ動いた。
「……開いたな」
「嘘だろ、マジで隠し部屋……?」
「階層があるってんなら、その先だな」
「普通の間取りじゃ、こうは作らねえよ」
凛の声が、少しだけ乾いた笑いを含む。 - 211◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 22:38:26
中は、真っ暗だった。
照明はなかったが、
スマホのライトをつければ、視界は確保できる。
湿った埃の匂いがする。
人が長い間入ってない場所特有の、
じっとりした空気。
「おい」
「どうした、冴?」
「今回は、“真”じゃなきゃいいな」
「………本当に、な」
潔世一の声が、小さく震えている。
そりゃまあ、前回が“本物”だったんだ。
仕方ねぇ。
「……お前は?」
「怖くは、ない。けど……油断はしねぇ」
「そうか」
ライトの光が、奥の床を照らした。 - 221◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 22:39:38
そして、その先。
―――壁際。
そこに、“扉”があった。
古びた鉄扉。
ペンキが剥げ、取っ手は錆びていた。
何の表示もない、ただの金属板。
だけど、足が止まる。
この扉の先に、“何かがある”気がして。
「ここだな」
「この奥が、例の“階層”ってやつか」
誰がともなく、言った。
重い沈黙が、落ちる。
そして俺は、扉の前に立ち――
静かに、手を伸ばした。
dice1d2=2 (2)
- 231◆DGCF6cUlCqNA25/07/27(日) 22:53:22
そろそこホスト規制がかかる時間だから、短いし半分までだけど今日はここまで。潔は次はお休みさせてあげるとメンタルが回復するかも?でもホラーに潔って似合うよね。
というわけで明日から仕事だから、さらにゆっくり更新になるよ。ごめんだけど引き続きよろしくね。
おやすみなさい。 - 24二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:54:49
真じゃねぇか!
- 25二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 23:00:21
お疲れ様スレ主
一作目はリアルにありそうなホラーで背筋凍ったよ
二作目も隠し扉でロマンあるし消えるって噂だからこれからどうなるか不安
続き待ってます - 261◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 08:12:26
- 271◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 08:14:37
【真】
扉を開けた瞬間、空気が変わった。
ひやりとした風が、足元を撫でていく。
濁った、古い空気だった。
けれど、どこか人の匂いがした。
「階段……」
國神錬介が、低くつぶやいた。
確かに、あった。
下へと続く階段が、
コンクリートの質感で、そこにあった。
人ひとり通れるくらいの幅で、
真っ暗な底へと消えている。
「マジ、かよ……」
潔世一の声が、かすれていた。
俺と凛は、ただそれを見つめていた。
特に、驚きもしなかった。
こういうことがあっても、おかしくないって、
ただ、そう思っていた。 - 281◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 08:16:40
でも、潔世一は、違った。
「……これ、行ったら戻れないやつじゃん……!」
「潔…」
「やだよ、やだ、俺…………」
潔世一は、階段を見つめたまま、
一歩、後ずさった。
「俺……消えたくない。まだ、サッカーがやりたい……!」
顔を伏せて、両手で頭を抱えて、震えている。
その姿が、あまりにもリアルで。
―――俺たちは、何も言えなかった。
「潔……」
國神錬介が、一歩近づいたが、声は届かない。
潔世一は、そのまま後ろを向いて、走った。
逃げるように、階段から遠ざかる。
そのときだった。
階段の下―――底の見えない闇から、
音もなく、“それ”は出てきた。 - 291◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 08:18:04
手だった。
白く、細く、指の長い手。
それが、ゆっくりと、
こちらに向かって伸びてきた。
何かを、求めるように。
助けを、乞うように。
あるいは、触れたくてたまらない、そんな風に。
「……人……か?」
國神錬介が、言った。
けれど、それは人には見えなかった。
手だけだった。
闇のなかから、腕の途中までが出ているだけ。
凛が、珍しく声を出した。
「……兄貴、なんで泣いてんだよ」
「……泣いてない。目が、痛いだけだ」
気づけば俺の目に、何か熱いものが滲んでいた。
その手は、
誰にも、触れず、
誰にも、届かず。 - 301◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 09:11:55
階段の上の空気を、ゆっくりと探るように漂い、
そして、静かに、引っ込んでいった。
……悲しそうだった。
何も言わず、ただ、そこにいて。
でも、きっと。
ずっと、誰かを待っていたんだろう。
「……兄貴」
「行こう。アイツを、一人にしないほうがいい」
「……ああ」
俺たちは、階段を見下ろしたまま、
何も言わずに踵を返した。
誰も、言葉を交わさなかった。
ただ、全員が同じように、
背中に視線を感じていた。
消えたくない、という言葉が、
胸の奥に残ったまま。
階段の扉を、音もなく閉めた。
【第二夜:糸師冴・潔世一・國神錬介・糸師凛】 - 311◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 09:13:12
- 32二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 09:15:09
- 331◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 11:38:30
>>32 【第三夜:オリヴァ・愛空、ドン・ロレンツォ、馬狼照英】
……まさか、こんな夜中に、
絵なんか見に行くことになるとは。
「いやー……。なあ、これ、本当に見に行く必要ある?」
と、言いながらも、俺は先頭を歩いてる。
こういう時は、ノリと勢いが大事だ。
あと、何より、後ろが怖い。
「だぁ~、ホンモノだったらテンション上がるじゃんねぇ♪」
のんきな声が、後ろから聞こえてくる。
ロレンツォだ。
この男、怖さの感覚がどっかぶっ壊れてる。
見た目もゾンビっぽいし、
実際、なにか憑いてても驚かない。
「くだらねぇ……絵が首刎ねられてるとか、バカバカしいにも程があるだろ」
三人目、バロちゃん。
いつものふてぶてしい態度だけど、
若干足取りが早いのは、俺の気のせい?
- 341◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 11:52:30
俺たちは、今、北側廊下へ向かってる。
普段あまり通らない、静かな通路。
壁に並ぶ、謎の絵画―――
その中の一枚が、“変わる”って噂らしい。
「つーか“判決のやり直し”って何?意味分からんくない?」
「なんか昔、死刑囚を描いた絵があるとか?首が飛ぶのは、“判決が間違ってた”って意味らしいよ?OK?」
「は?なんでそんな無駄な雑学だけ豊富なんだよ……」
言い合いながら歩いてたら、
もう絵が見えてきた。
奥の壁に掛けられた、大きな額縁。
油絵のタッチで描かれた、人物画。
重たい空の下、石の階段に座る男が、
じっと、俺たちを見てる。
……いや、今、目が合った気がする。
「なあ、お前ら……今、こっち見てなかった?」
「だぁ~、愛空ビビってんの?可愛いねぇ」
「ビビってねぇって。なんか、ちょっと不気味なだけ……」
ちょっとだけ、本当に、少しだけだ。 - 351◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 11:54:52
「ふざけんなよ……さっさと見に行って帰るぞ!」
バロちゃんが先に、足を踏み出す。
言葉より行動派、ってやつだ。
俺はその背中を見ながら、スマホをちらっと見る。
「……ちょうど、2時」
そう、この時間になると、
“変わる”っていうんだ、絵が。
ロレンツォが笑いながら、首を傾けた。
「首が刎ねられる時間、OK?」
「お前、それ怖さ軽減させるためにやってんだろ……」
冗談みたいな会話の中で、
俺の心臓はずっと、ドクドク言ってる。
目の前の絵は変わらず“そこにある”。
でも、まるで――
誰かが、絵の向こうから、見てるみたいだった。
そして、―――空気が変わった。
dice1d2=1 (1)
- 361◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 12:05:53
【嘘】
絵は―――
……何も、変わらなかった。
首も、ついたままだ。
額縁の中の人物は、
さっきと同じ表情のまま、階段に座っていた。
「……変わってねえな」
バロちゃんが、言った。
その声に、ほんの少しだけ、安心が滲んでいた。
「やっぱり、ただの噂か。っていうか“判決のやり直し”ってなんだよ、ホントに……」
俺は、口ではそう言いながらも、
なぜか、肩が重い気がしていた。
「だぁ~、でもさぁ……見てる感じはするよね、絵のやつ。目線、ずっと、俺らに向いてない?」
「やめろって、そういうこと言うとマジで気になってくるだろ……!」
「いやいや、見てる、絶対!OK?」 - 371◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 12:07:27
ロレンツォは笑ってるけど、
じっと、絵を見ていた。
その眼差しは、なんていうか……
やけに、冷静だった。
俺は絵に近づいて、顔を覗き込んだ。
変わってない。
間違いなく、“普通”の絵だ。
……でも、なんでだろうな。
なんか、描かれてる人物の目だけが、
妙に新しいように見えた。
「気のせいだよな、これ」
「さあな。絵が変わるとかアホらしい」
バロちゃんが、ふっと小さく息を吐いた。
「……でも、なんか、背中、ゾワッとすんな」
俺は反射的に振り返ったけど、
廊下には、誰もいない。 - 381◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 12:09:43
風も、音も、何もないはずなのに、
背中の皮膚だけが、ざわつく。
「なあ、帰ろうぜ」
「だぁ~。もう判決は下ったってことで、OK?」
「なんの判決だよ……」
俺は呆れながらも、
もう一度だけ、絵に目を向けた。
変わらない。
首も。
背景も。
額も。
なにも変わっていない。
なのに―――
その“目”だけが、
俺たちを見てる気がして、仕方なかった。 - 391◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 12:10:43
ロレンツォが、くるっと背を向ける。
バロちゃんも、
「くだらねえ」と言って、絵に背を向けた。
俺も続く。
足音が三つ、廊下に響く。
ゆっくり、確かめるように歩いていく。
廊下の灯りは変わらず、静かだった。
でも、さっきからずっと、
誰かがついてきているような気配が消えない。
視線を感じる。
だけど、振り返るのはやめた。
どうせそこには、絵があるだけだ。
―――ただの絵。
……ただの絵の、はずだった。
【第三夜:オリヴァ・愛空、ドン・ロレンツォ、馬狼照英】 - 401◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 12:11:49
- 41二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 12:12:21
噂:ランキング1桁の選手とすれ違ったらそれは壱号棟に迷い込んだ証拠 コートではチームAが一次選考の相手となる人物を待ち続けているらしい
キャラ:潔 蜂楽 雷市 我牙丸 - 42二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 12:36:22
- 431◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 13:40:58
>>42 みんな潔が大好き!ホラーだからとことん怖くするよ!たまに切なかったり、優しかったりするから、良かったら引き続き楽しみにしててね!
- 441◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 13:42:15
>>42 【第四夜:潔世一・蜂楽廻・雷市陣吾・我牙丸吟】
「……こっち、行ってみよっか?廊下、いつもと違ってちょっと古いし!」
蜂楽の声は、いつもの調子だった。
夜の散策だって言うのに、
まるで遠足みたいに楽しそうで。
……俺は、ちょっと、羨ましい。
「なあ蜂楽、お前さ……マジで怖くないのか?」
俺は思わず、聞いてた。
だって、こっちは三回目。
冗談抜きで、命の危機を感じた夜を、
もう二度も経験してるんだ。
「んー、怖いってより、なんかワクワクするんだよね。知らないルールって、面白いじゃん?」
「どんな時でもポジティブだなお前……」
俺は、こめかみをピクッとさせながらも、
蜂楽の後ろをついていく。
雷市と我牙丸も、少し離れて歩いていた。
- 451◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 13:43:25
「へっ、くだらねー噂に踊らされてんなよ。ランキング一桁?チームA?ハッ、会えるもんなら会ってみてぇよ」
雷市はそう言って、笑ってる。
けど、その拳は、
ずっとポケットの中で握られてるっぽい。
こいつ、顔には出さないけど、
マジでビビってるな……。
「……迷い込んだら、本当に出られなくなるかもしれないな」
隣で、我牙丸が淡々と呟いた。
「おい、やめろって……!不吉なこと言うな……!」
雷市の声が、ほんの少しだけ上ずる。
「けど、試すには丁度いいだろ。本当かどうか、確かめる価値はあると思う」
我牙丸は、眉ひとつ動かさない。
心の中がどうなってるのか、覗いてみたい。
「で?どこが壱号棟なんだよ、この辺、見たことねえ廊下だぞ?」
「そう、それなんだよな……」
俺は、さっきからずっと、違和感を抱えてた。 - 461◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 14:40:06
壁に掲示されてるはずの、案内板がない。
天井の照明も、妙に低い位置でチカチカしてる。
床のタイルも、今いる棟と微妙に模様が違う。
「ここ……本当に“俺たちの世界”なのか?」
「へえ、潔ってば三回目で勘が良くなってるじゃん」
蜂楽が、くすっと笑った。
けど、俺は、全然笑えない。
自分でも気づいてる。
今、俺たちが歩いてる、この廊下――
“知ってる場所じゃない”。
「なあ、お前ら。ほんとに、これって“迷い込んだ”ってやつなんじゃ……」
「上等じゃねえか……!ランキング1桁がどうとか、確かめてやるよ……!」
雷市はそう言いながらも、足が少しすくんでる。
背中に汗が滲んでるのが、
俺の位置からでも、はっきり分かった。 - 471◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 14:41:12
「俺は……引き返すのも選択肢として残しておいた方がいいと思う」
思わずそう、口にした瞬間、
遠くの方で、足音がした。
ぺた……
ぺた……
ぺた……
誰かが、ゆっくりと、
こっちに向かって歩いてきている。
それは“誰か”なのかは、知らない。
……まだ、分からない。
知りたくも、ない。
dice1d2=1 (1)
- 481◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 16:27:39
【嘘】
ぺた……
ぺた……
その足音は、廊下の奥から、響いていた。
全員が息をひそめたまま、そっちを見つめる。
やがて、ゆっくりと、
角を曲がって現れたのは―――
「……あれ、潔?」
「―――凪?」
肩の力が、一気に抜けた。
足音の主は、凪誠士郎だった。
寝間着に、髪はぼさぼさ。
片手で頭をかきながら、
もう片方の手にはスマホ。
明らかに、寝ぼけている。 - 491◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 16:30:11
「なにしてんの、こんなとこで。……ドッキリ?」
「いや、違う……お前こそ、なんでここに」
「喉渇いたから、水取って戻ろうとしたんだけど……道、間違えたかも」
雷市が、ため息混じりに呟いた。
「びっくりさせんなよマジで……!」
蜂楽は、ふふっと笑った。
「なーんだ。つまんないの。ちょっと期待しちゃってたのに、“ランキング1桁”とかさ~」
我牙丸も、眉ひとつ動かさず、呟く。
「結局、噂は嘘がほとんどだ。本当を知るには、自分で動くしかないってことだな」
「って、ことは……今回は“無し”だったってことで、いいんだよな?」
安堵が、空気をやわらかくした。
みんな笑って、歩き出す。
凪は後ろから、のそのそとついてくる。
でも―――
そのとき。 - 501◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 16:41:27
ぺた
ぺた
ぺた
“もう一つ”の足音が、聞こえた。
みんなが歩くリズムと、少しずれた場所から。
ちょっとだけ遅れて、
少しだけ重い、足取りが。
振り返った。
そこには、誰もいなかった。
でも、確かに、“音”がした。
「……凪、さっき、ひとりで歩いてたんだよな?」
「うん。ずっとひとりだったよ?」
雷市が、再び立ち止まる。
さっきまでの余裕が、すっと引いていく。
「おい潔、聞こえたよな。今の、足音……」
「……うん。間違いなく、俺たちの誰でもなかった」 - 511◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 16:43:09
蜂楽も、ちらっと後ろを見た。
表情は楽しげなのに、目だけが本気だった。
我牙丸が、静かに言った。
「もう帰ろう。……この廊下は、何かが“待ってる”気がする」
誰も、冗談を言わなかった。
笑いも、なくなった。
俺たちは、口を閉ざしたまま、歩いた。
後ろを振り返らず、足音に耳を塞ぐように。
廊下の終わりが、遠く感じた。
でも確かに、最後まで―――
“ひとつ多い足音”が、
俺たちのあとを、着いてきてた。
【第四夜:潔世一・蜂楽廻・雷市陣吾・我牙丸吟】 - 521◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 16:44:34
- 53二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 16:44:52
噂 深夜3時にある鏡を覗くと、死んだ自分の姿が映るらしい
映らなければ....
キャラ 二子と斬鉄 - 54二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 17:21:06
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- 551◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 18:21:36
【第五夜:二子一揮・剣城斬鉄】
また、よくわからない噂が出回っていました。
“3時ちょうどに鏡を覗くと、死んだ自分が映る”
“もし、映らなければ……”
なんとも曖昧で、不気味な話です。
「二子、もうすぐか?あの、幽霊ミラー見るの」
「幽霊ミラーって……まあ、そんな名前でも通じるでしょうか。ええ、あと10分ほどです」
隣を歩くのは、剣城斬鉄くん。
僕とは違って、
こういった話にはまったく動じません。
それどころか――
「死んだ自分って、どんな感じなんだろうな。ちょっとかっこよくなってたらいいな」
「……それ、映ったら“良かった”って思えるものなんでしょうか」
「違うのか?」
本当に、この人は……。 - 561◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 18:31:52
斬鉄くんは、天然というか、感性がずれてます。
でも、不思議と気は楽になる。
彼と一緒だと、
怖さがちょっとだけ遠ざかる気がするんです。
場所は、建物の端っこにある物置部屋。
トレーニング用に建築されたようですが、
誰も使っていません。
その奥に、“例の鏡”があると聞きました。
「その“見ちゃいけない時間”って、決まってるんだっけか」
「深夜3時、きっかりです。それ以外の時間に見ても、ただの鏡です」
「分かった、じゃあピッタリに見よう。俺、怖くないからな!死んだ自分もどんと来い!」
「……さすがです」
僕は笑いながらも、
指先が少し、震えているのを自覚していました。
こういう、“想像に委ねる系の噂”が、
僕は、一番怖いです。 - 571◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 20:07:40
照明が夜間モードに切り替わり、
通路の灯りは、ところどころ間引かれています。
足音だけが、妙に大きく響いていました。
物置部屋の扉を開けると、
そこには確かに、鏡がありました。
壁にぴったり貼り付けられた、縦長の鏡。
高さは2メートル近くあるでしょうか。
鏡の縁には、錆びた金属のフレームが付いていて、
そこだけが妙に古びて見えました。
「ちょっと汚れてるな…」
斬鉄くんが指で表面をなぞると、
曇りが取れて、僕たちの姿が浮かび上がります。
「僕たち、いますね。とりあえず……」
「ってことは、今はまだ大丈夫ってことだな!」 - 581◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 20:08:56
スマホの画面を見ると、2時59分。
あと数十秒で、運命の3時になります。
斬鉄くんが隣に立ち、
僕も深く、息を吸いました。
「怖いのか?」
「少しだけ、です。けれど、確かめないと終われませんので」
「よし、なら一緒に見るか」
鏡の前に並んで、立ちました。
3秒前。
2秒前。
1秒――
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- 591◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 20:26:49
【嘘】
3時、ちょうど。
鏡のなかに、僕と斬鉄くんが、
並んで立っているのが、確かに映っていました。
何も、変わりません。
服の皺。
髪の毛の流れ。
微かに震えている僕の指先まで、正確に。
「……いるな」
「ですね。ちゃんと、“今の僕たち”が写ってます」
少しだけ、安堵の息が漏れました。
―――ただの、噂。
やはり、作り話だったようです。
死んだ自分、なんて。
非現実すぎて、
想像の中だけで、完結していたもの。
「死んでも俺は俺のままってことか……って、あれ」 - 601◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 20:28:49
斬鉄くんの言葉が、途中で止まりました。
僕も、すぐに気づいた。
鏡の中。
その“鏡面の端”―――
ほんの少しだけ、線が入っていました。
「……ヒビか?」
「……はい。たぶん、今入りました」
ピシッ
今度は、はっきりと音がしました。
空気が張り詰めるような、
ガラスが割れる直前の、高い音。
ピシッ
ピシピシッ
音が、連鎖しました。
音に合わせて、細い細いヒビが、
まるで蜘蛛の巣のように広がっていく。 - 611◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 20:30:54
「え、ちょっと待て、なんでだ、俺たち……」
「斬鉄くん、少し下がってください……っ!」
反射的に腕を伸ばして、
斬鉄くんの肩を引きました。
ちょうどその瞬間―――
パリン、と、鏡が割れました。
砕け散った破片が、
床に静かに、降り積もります。
反射した光が、部屋中を淡く照らしました。
……静かでした。
まるで、風が吹き抜けたあとの、
余韻だけが残ったような。
「……何だったんだ、今の」
「……分かりません。何かが映ったわけでも、映らなかったわけでもなく。ただ……“割れた”だけです」
鏡は、綺麗に壊れていました。
歪な形の破片が、床を埋め、
僕たちの靴先まで、転がって。 - 621◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 20:33:24
何かの兆しでもなく。
何かの呪いでもなく。
そこには、何の説明もありませんでした。
「………二子。俺、思ったんだ」
「何をですか?」
「“普通”に終わるって、一番怖いよな」
その言葉に、僕は返せなかった。
“映らなければ”
あの噂の続きを、誰も知らない。
そして今、鏡は壊れた。
あれは、ただのガラスだったのか。
それとも――“僕たち”を写す何か、だったのか。
わかりません。
でも、分からないまま帰るのが、
今は、一番いい気がしました。
【第五夜:二子一揮・剣城斬鉄】 - 631◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 20:34:26
- 64二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 20:37:01
- 65二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 20:37:08
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- 661◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 21:21:17
>>64 斬鉄ノーダメで元気いっぱいだから大丈夫!
【第六夜:凪誠士郎・御影玲王・剣城斬鉄】
夜の廊下を歩くのは、『久しぶり』だ。
暗い場所は、あんまり好きじゃない。
でも、別に怖くもない。
「凪!お前、こんな夜に出歩くの怖くねえの?」
いきなり後ろから声をかけられて、
ドクンと、心臓が跳ねた。
「うわ……びっくりした。レオ、ちょっと声のボリューム小さめでお願い」
「ごめん!でもさ、さっきの噂ちょっとは気になるだろ!“知らない声が混ざる”って、リアルじゃね!?」
振り向けば、いつものレオ。
やたらテンションが高いけど、
よく見ると、俺と斬鉄の影にぴったり隠れてる。
「噂って、話しながら歩くのが条件なんだな」
横を歩く斬鉄が、相変わらずの口調で言う。
「俺がずっと喋ってればいいのか?一人で喋ってたら声は混ざらないんじゃないか?」
「あ、斬鉄それ名案、今日冴えてるね」
- 671◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 21:23:57
今日もいつも通りだな、とは思う。
レオがビビりながら、
後ろをチョロチョロ動いてるのに、
斬鉄は歩くリズムすら乱さない。
それにしても――
廊下が、やけに静かだ。
夜のブルーロックは、
電気が最小限になっていて、
廊下も半分くらいしか照らされてない。
ときどき、照明の点滅音が、
ピッ、ピッ、と鳴る。
誰もいない場所で鳴る音は、妙に耳につく。
「さっきの噂、どう返事するとやばいんだろ。連れてかれるとか?」
「返事した人が、いなくなるって……聞いたことあるかもしれないけど、違うかもしれない」
「いや、それヤバくね?えっ、なに、返事ってどこからどこまで?うんとかもアウトなのか?」
「どうだろうね」
正直、気にしたら負けな気がする。
こういうのは、聞いた瞬間に負ける。 - 681◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 21:26:28
「でもまあ、声が混ざるってのは、ちょっと面白いな。“知らない声”って、どんな声なんだろうな。かっこいいといいな!」
「かっこいいかどうかで返事するか決めんな!バカ斬鉄!」
レオが大きな声を出して、
俺はまた、びっくりする。
「レオの声がいちばん怖いかも……」
「怖いと声がデカくなんの!斬鉄だって、さっきから平気な顔して歩いてるけど、なんかちょっと顔色良すぎねえ?実は幽霊だったりしないよな!?」
「なんか褒められた気がする!」
「いや、褒めてないよそれ」
……三人で歩いてる。
喋ってる。
ちゃんと、笑ってる。
でも、どこか。
ほんの少しだけ、変な感じがする。
この中に、“知らない声”なんて、
本当に混ざるのかな。
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- 691◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 21:37:52
【嘘】
会話は、途切れずに続いてた。
斬鉄が何かを言って、レオが話を広げて、
俺がちょっとだけ、応える。
そんな風に、やりとりを繰り返しながら、
廊下を淡々と進んでいた。
気づけば、もうだいぶ歩いてる。
戻るタイミングを、完全に見失いかけてた。
「結局、声混ざんなかったな。誰か変なこと言った?そんなこと、なかったよな?」
レオが、不安混じりに聞く。
「んー、斬鉄が変なこといっぱい言ってた」
「俺は真面目なんだけどな……」
斬鉄が、しょんぼりしてた。
なんだ、やっぱりただの噂だったのか。
「よし、帰るか!凪、斬鉄!」
「うん」
「ああ」 - 701◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 21:40:39
――――――。
三人の返事が揃った。
……でも、違和感がある。
ほんの少し、空気が静かになりすぎていた。
さっきまで、あんなに元気だったレオが、
急に黙って歩きはじめた。
「レオ?」
「……うん、大丈夫。なんか、ちょっと疲れただけ」
それだけ言って、
また斬鉄と、俺の後ろに隠れるように歩く。
いつもと同じ。
……そのはず、なんだけど。
「斬鉄、なんかさ」
「ん?」
「今日、俺たち、何人で来たっけ」
「三人だろ?俺と、凪と、レオ!」
「……そっか。そうだよね」 - 711◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 21:44:09
数が合わないわけじゃない。
ちゃんと、三人いる。
だけど、さっき返事をしたとき――
「……誰かが、返事してなかった?」
自分の声は、思ったより小さかった。
歩く音は、三つ。
会話も、三人分。
だけど、目に映る影は、
なぜか四つあるように見えた。
それでも、何も起きない。
誰もいなくならない。
帰り道、レオが小さな声で言った。
「……なんか、ずっと誰かに見られてる気がする」
俺は、何も言わなかった。
それが、怖いのか。
それは、安心なのか。
……もう、わからなかったから。
【第六夜:凪誠士郎・御影玲王・剣城斬鉄】 - 721◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 21:46:27
どんな『怖い噂』を『誰が』確かめに行く?
※怖い噂は自由に書いてね
※キャラは1話につき1~4人まで
※同じキャラを何回選んでもOK!
※玲王は1回お休みさせてあげてね
※安価から外れてもしっかり書くよ
- 73二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 21:46:52
- 74二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 21:47:59
ブルーロックの建っている場所は昔何かが祀られていた
メンバーは潔、蜂楽、千切、國神 - 751◆DGCF6cUlCqNA25/07/28(月) 22:29:04
さて、明日も仕事だから今日はここまでだよ。
明日は女の子大好き三人衆、そしてE4だね。一応視点は1番左に名前があるキャラにしてるから、もしこのキャラの視点がいい!って希望があれば1番左に名前を書いてね。
いつも素敵なリクエストありがとね。
また明日、おやすみなさい。 - 761◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 08:07:11
>>73 【第七夜:乙夜影汰、オリヴァ・愛空、閃堂秋人】
「いや、マジで最高じゃね?風呂に女の子の声とかアガるんだけど」
そう言いながら、
俺は夜の廊下を、てくてく歩いてた。
真夜中の風呂。
底がなくなる。
そして、女の子の声。
引き摺り込まれる、って話聞いたとき――
正直、コレはもう行くしかないなって、
俺は思ったわけ。
「まさかお前も“女の子の声”ってワードに釣られたタイプ?」
隣で、愛空がニヤニヤしてた。
この人、優しいけど、性癖わりとストレート。
でも、ちょっと分かる。
俺もそーいうとこ、あるし。
「俺は女の子の幽霊に会ってみたいだけ。浮遊してるのに絶対髪の毛つやつやだったりするし、確定で可愛いでしょ?」
「わかるー!女の子ってだけで幽霊でもアガるよなー!」
後ろから、閃堂がテンションMAXで加わってくる。
- 771◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 08:08:50
この三人、テンションは似てるけど、
たぶん全員、ビビリ方が違う。
「でも風呂が底抜けるってマジだったらヤバくない? どこまで沈むんだろ?」
「たぶん地獄まで一直線?女の子に手引かれて沈んでくのとか、わりと本望じゃね?」
「マジでそれ!!」
誰も止めないから、会話がどんどん逸れていく。
たぶん、まともに怖がってるヤツ、
俺含めて一人もいない。
今のとこは、ね。
寮の風呂場はもう照明が落ちてて、薄暗かった。
でも、人感センサーが感知して、
ピンって、明かりがつく。
その瞬間、なんかちょっと背中に寒気。
「うわ……床、濡れてるし。マジで誰か入ったあとじゃね?」
「いやー、いるよな、噂のあとに入ってる奴。何にも知らずに来たパターンだぜ?」
「つーか、女の子の声ってさ、どこから聞こえてくるんだろ。天井?床下?水の中?わりと楽しみなんだけど、俺!」
「声よりもさ、“引き摺り込まれる”ってとこヤバくない?底、ほんとに抜けたら帰ってこれないでしょ」 - 781◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 09:05:52
そのとき、
湯船の水面が、かすかに揺れた。
誰も、入ってないはずなのに。
風も、ないのに。
空調すら、止まってるのに―――
水面だけが、ぴくりと動いた。
「……今、揺れたよな?」
「うわ、ちょっとサガるんだけど…」
「でもさ、ちょっと……ドキドキするよな」
ほんの少しだけ、沈黙。
でも、誰も引き返そうとはしない。
今夜の風呂は、
たぶん、静かじゃ済まない気がしてた。
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- 791◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 11:08:43
【嘘】
「……あれ?何も起きない感じ?」
風呂場の湯船を見下ろしながら、
愛空が首を傾げた。
水面は、さっきの一瞬の揺れを最後に、
ずっと静かだった。
湯気もない。
底も、普通に見えてる。
「うそ、マジでこれだけ?女の子の声は?引き摺り込まれるって話は?」
「オチ無しってやつ?マジでサガるんだけどー」
「……マジかよ、残念すぎる」
俺たちはそれぞれ言いながら、
ちょっとしょんぼりしてた。
肩すかし感。
まあ、“ホラー”としては、
きっとこれが一番良いんだろうけど。
「せめて“女の子の溜め息”くらい聞こえてくれてもよくない?」
「それめっちゃわかる。ため息か、鼻歌くらいは欲しかったわ~」 - 801◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 11:10:03
そんなこと言いながら、
タオルで軽く手を拭いて、脱衣所の方へ戻る。
帰り際の扉の前で、俺は、ふっと振り返った。
夜の風呂場は、明かりがついていても、
やっぱり薄暗くて。
誰もいないのに、
誰かの残り香みたいなものが漂っていた。
足音。
扉の軋む音。
全部、ちゃんと、
“俺たちだけのもの”だったはずなのに―――
「……また、来てね」
かすかに、耳に触れた。
細くて、やわらかい、女の子の声。
ほんとに、一言だけ。
だけど、確かに聞こえた。
「――ッ!今の聞いた!?聞こえたよな!?」
「声した!絶対した!ってか、今の子、絶対可愛いって!!」
「わかるわ~。透き通った系の声だったし、黒髪ロングな感じ」 - 811◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 11:11:43
怖がるどころか、
俺たちはむしろテンションが爆上がりしていた。
「マジで来てよかったわ……なんか、報われたな」
「うん。次また来たら、出てきてくれるんじゃね?」
「怖いけど、ちょっと期待しちゃう俺がいる……」
そう言いながら、
俺たちは、風呂場を後にした。
“なにもなかった”
そういうことで、
落ち着けてもいいはずだったのに――
最後の“あの声”のせいで、
すこしだけ、また来たくなった。
「なあ。次回こそは、俺たちの“運命の子”に出会えるかもな」
「……その子、引き摺り込んでくるタイプなんだけど、いいの?」
「全然OK!」
まあ、なんだかんだ、
今日も平和だった気がする。
【第七夜:乙夜影汰、オリヴァ・愛空、閃堂秋人】 - 821◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 16:40:24
>>74 【第八夜:潔世一・蜂楽廻・千切豹馬・國神錬介】
正直、またかよ……って思った。
でも、来てる。
気づいたら、また、夜の廊下に立ってる。
「ねえねえ、今回はさ、本物っぽくない?“祀られてた”ってなんか深いやつじゃん!」
横を歩く蜂楽が、ウキウキしながら言う。
「……やめようぜ、そういうの。俺、そういう土着系ほんと無理」
千切が、少し早足で、
國神の後ろに、ぴたっと張り付く。
「千切……俺を盾にしてるだろ」
「いやいやしてねえし。國神は頼れる男だから安心感あるってだけだし!」
言い訳になってない。
でも、ちょっと笑えた。
- 831◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 16:42:24
俺は、今回で四回目。
つまり、けっこう“慣れた”ほうだ。
でも、慣れてるからって、
怖くないわけじゃない。
むしろ、“ありえる”って知ってるから、
それが、余計に、怖い。
今回の噂は、建物そのものの話だ。
「ブルーロックが建ってる場所、もともと何か祀ってあったらしいよ」
「それが何なのかは、記録に残ってない。石碑もなくなってるらしいし」
「でも、夜中にその“祀られてたもの”の気配を感じたやつがいるってさ!」
蜂楽の声が、やけに明るい。
でも、その内容は、
ひたひたと、足元から不安を這わせてくる。
「神様的な……ヤツ?」
「ううん、わかんない。“何か”ってだけ」 - 841◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 16:43:56
「でも、それが人間じゃなかったら面白いよね~」
「面白くねーよ……!」
千切が、小さく叫ぶ。
國神は、黙ったまま後ろを気にしていた。
俺も、なんとなく、振り返ってしまう。
今夜向かってるのは、ブルーロックの外。
普段は使われていない、倉庫跡。
その裏に、ちょっとした丘みたいな、
盛り土があるって、話を聞いた。
「こんなとこあったんだな……」
「俺も知らなかった~。でも、ちょっといい感じじゃない?」
倉庫の裏手。
草がやけに生えてて、湿気が強い。
土の盛り上がりに、
コンクリートの塊が埋もれている。 - 851◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 16:44:57
「ね、あれ……石碑、だったりしない?」
蜂楽が、指を差した。
全員、同時に立ち止まる。
石の表面は崩れてて、
何かが彫ってあったようにも見えるけど、
それが何か、読み取れない。
「なあ、潔……この辺り、空気変じゃね?」
千切の声が、さっきよりも少し小さい。
國神は、千切の前に立ち、
無言のまま、周囲に目を走らせている。
俺も、一歩踏み出して、
その石の前に立った。
この石は、本当にただの瓦礫なのか。
それとも、“何か”の痕跡なのか。
風が、吹いた。
どこかから、湿った匂いがした。
dice1d2=1 (1)
- 861◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 17:47:50
【嘘】
何も、出てこなかった。
風が止み、虫の声すら、聞こえない。
「ふぅ……」
思わず、大きく息を吐いた。
肺に溜まってた緊張が、
全部、吐き出された気がした。
「今回も“ハズレ”だったね」
蜂楽が、そう言いながら、
コンクリートのまわりをウロウロしてる。
興味津々って顔をして、
土をつついたり、しゃがみ込んだり。
「……蜂楽、変なもん掘り出すなよ?」
「え~、やだなぁ。そんな不謹慎なことしないって」
千切はまだ、國神に引っ付いたまま。
さっきよりも、距離が近くなってる気がする。 - 871◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 17:49:45
「千切。もう離れても大丈夫だろ」
「……いや、まだだ。こういうの、最後に来ることあるし」
國神は肩越しに振り返って、
呆れたように笑ってた。
だけどその笑いも、
なんだかぎこちなく見えたのは、
きっと、俺の気のせいだ。
俺はもう一度、あの石を見下ろした。
何も彫ってない、
ただの古びたコンクリートの塊。
「……なんだったんだろうな、この石」
誰に言うでもなく、そう呟いたときだった。
――ボコッ
足元で、鈍い音がした。
一瞬、誰かが踏み外したのかと思った。
でも、誰も動いてない。
地面の、盛り土の一部が―――
ほんの少し、盛り上がった。 - 881◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 17:51:28
「……え?」
「今、音したよな?」
蜂楽の声が、ぴたりと止まる。
千切が、國神の背中に、びくっとしがみついた。
「な、なあ、今の、土が動いたよな……?なあ、動いたよな、潔!?」
「お、落ち着け……!」
「蜂楽、どこ踏んだ!?何か踏んだのか!?」
「俺じゃないってば~」
俺たちは、言葉を重ねながらも、
誰もその盛り上がった場所に近づけなかった。
地面は、少しだけ隆起したまま、動かない。
何かが“下にある”みたいに、
ただ、そこにあるだけ。
―――土が、何かを隠してる。
そう思った瞬間、背中に冷たい汗が流れた。 - 891◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 17:53:17
「……埋まってないよな」
誰かが、小さく言った。
誰の声だったかは、よく覚えてない。
蜂楽がまたしゃがもうとして、國神が止める。
「やめとけ。今日は、これで終わりにしよう」
「……うん、分かった」
帰り道、誰も話さなかった。
でも、誰も逃げなかった。
ただ、背中越しに、
“あの地面”のことを考えていた。
―――あれは、なんだったんだろう。
何も、出なかった。
でも、何も“いなかった”とは、限らない。
【第八夜:潔世一・蜂楽廻・千切豹馬・國神錬介】 - 901◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 17:54:28
- 91二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 17:55:09
- 92二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 18:18:32
キャラ:11傑3人(視点は書きやすいor書きたい人で)
噂:丑三つ時、食堂に行くと厨房の冷蔵庫から助けを求める声が聞こえるらしい - 93二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 18:40:09
噂 ごく稀にモニタールームのモニターが一斉にQRコードを映し出すが決して読み込んではいけない
行く人 雪宮 乙夜 烏 氷織 - 94二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 18:51:15
噂:ブルーロックが建てられる前、密猟者に殺されてしまった動物の霊が襲ってくるらしい
キャラは二子と蟻生と我牙丸 - 951◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 20:22:41
>>91【第九夜:オリヴァ・愛空、ドン・ロレンツォ、ミヒャエル・カイザー】
また、変な噂が流れてきた。
………ていうかさ。
ブルーロックって、こういうの多すぎない?
ここ、そんなやばい場所なの?
資料室。
黒い表紙の本。
開くと、“黒い世界”。
何だそりゃ。
まさに、ホラーの王道展開ってやつだな。
でもまあ、こうして、
俺は今、また、夜中の廊下を歩いてる。
しかも、今日はメンツが濃い。
「だぁー、今日は本探し~。俺本とかよく分かんねぇけど、開くと闇に吸い込まれるって、なんかやばい気するねぇ」
隣では、ロレンツォがふわふわと笑ってる。
この男、ビビるって感情が存在しないのかね?
ま、前回もケロッとしてたしな。
- 961◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 20:25:15
「読むのは俺じゃないし、大丈夫でしょ。なっ、皇帝ちゃん?」
「……クソくだらねえ。絵本でも読みに来たのか、俺たちは」
カイザーが前髪をかき上げながら、鼻で笑った。
でもその手、ちょっと震えてんだよな。
歩くスピードも、俺らより半歩だけ遅い。
まさか、気づいてないとでも思ってる?
「ていうか、取り込まれるってどういう原理なんだろ?」
ロレンツォが、口を開いた。
「物理的に?それとも、精神的に?」
「……どっちもまっぴらごめんだ」
「いや、精神はサイコ系だろ。んで、物理で吸われたらパニックホラーってやつか……」
思わず、本音が漏れる。
内心では、ちょっとだけビビってる。
でもこのメンバー、俺が崩れたら、
誰もフォローしてくれなさそうなんだよな。 - 971◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 20:26:43
資料室は、ブルーロックの奥の方。
夜中に入るには、
センサーの死角を通らないといけない。
「おー、あったあった。資料室、開いてんじゃん」
「鍵は基本かかってない、これぞサイコホラーへの優しさ♪」
中に入った瞬間、空気が変わる。
本の匂い。
埃の匂い。
紙のしけったような、湿気。
それが一気に、鼻の奥に張り付いてきた。
「こっちじゃなかった?左奥の棚ってやつ」
ロレンツォが先に歩き、
カイザーがすっと、後ろに立つ。
俺は真ん中。
なんとなく、今日は、
誰かの背中を見てないと、落ち着かない。 - 981◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 20:30:55
「……あれか?」
カイザーが、指をさした。
他の資料とは違って、背表紙がつるっとしてる。
色も黒。
しかも、表紙に何も書かれていない。
ただの、“黒い本”。
でも、その黒さが、
周囲の空気よりも、何故か濃い気がした。
「じゃあ、開くぜ。OK?」
ロレンツォが、そう言った。
俺は、うんともすんとも答えられなかった。
dice1d2=1 (1)
- 99二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 20:42:10
嘘がつづくなぁ
真って最初の2回だけ? - 1001◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 20:46:58
>>99 うん、最初の2回だけだね!噂だから真が少ないのかなーって何となく思ってたよ。ある意味物語に適した出目なのかも?
- 1011◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 20:52:10
【嘘】
ロレンツォが、本の表紙に、そっと指をかけた。
正直、本当はちょっとだけ、止めたかった。
カイザーは腕を組んだまま、
眉ひとつ動かさず、本を見つめてる。
だけど、視線がじわじわ下がってるの、
俺は気づいてるぞ。
お前、絶対目逸らしてるだろ。
ロレンツォが、ゆっくりと本を開いた。
………けど、何も、起きなかった。
「……あれぇ?」
ロレンツォが、
ちょっと不満そうに首をかしげる。
俺とカイザーが、肩をすくめながら覗き込む。
―――中は、真っ黒だった。
文字も、図も、何もない。 - 1021◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 20:54:59
ただの、黒。
印刷ミスなのか、塗りつぶしただけのページが、
最後まで、ずっと続いてた。
「これ、芸術作品系ってやつ?OK?」
「OKかどうかは置いといて、拍子抜けだな~」
「こんなもの、子供だましにもならんな」
カイザーが、鼻を鳴らした。
俺も、ホッとしてた。
今回も、セーフか。
―――そう思った瞬間。
……カチッ
照明が落ちた。
一瞬、息が止まる。
真っ暗な資料室。
気配が一気に、消える。
ほんの、数秒。
静寂が、空気を押し潰した。 - 1031◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 21:03:41
……パチン
照明が、戻った。
「……は?なんだ、今の?」
「停電?センサー?」
「いや、俺ら動いてたし……時間差?」
三人とも、ちょっとだけ距離が縮まってた。
誰も言わなかったけど、怖かった。
本を閉じ、ロレンツォが戻そうとしたとき、
俺は本棚の奥を、ちらっと見た。
そこに、何もいない。
けど、“何かがいたような気配”が、
まだ、残ってる気がした。
「……なあ。本、何ページか減ってない?」
「んー……多分減ってないはず。気のせい?」
気のせい。
その言葉で納得するには、
微妙すぎる“違和感”があった。 - 1041◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 21:06:21
照明が落ちたとき―――
何かが、吸い込まれた気がした。
風も音もなかったのに、
空気の密度だけが、少し軽くなった気がした。
「……帰るか」
カイザーが、背を向けた。
さっきより早歩きだったけど、
誰もツッコまなかった。
ロレンツォも「だぁ~、怖ー」とか言いながら、
俺の腕にくっついてくる。
俺は最後にもう一度、本棚を見た。
黒い本。
何も書かれていないはずの、背表紙。
でも、その“黒”が、
ほんの少しだけ薄くなった気がしたのは―――
やっぱ俺の、“気のせい”だよな。
【第九夜:オリヴァ・愛空、ドン・ロレンツォ、ミヒャエル・カイザー】 - 1051◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 21:34:06
>>92 お気遣いありがとう!今回は冴視点にするね
【第十夜:糸師冴、ミヒャエル・カイザー、ドン・ロレンツォ】
また、妙な噂が回ってきた。
だからと言って、慌てることなんざねぇけど。
「おい、本当に行くのか?」
カイザーが横で、ぼそっと言った。
「嫌なら帰れ」
そう返すと、コイツは渋々前を向いた。
その足取りがわずかに重いのは、
俺の気のせいじゃない。
「食堂って夜も入れるんだねぇ。お菓子パーティーしちゃう?俺、ポップコーン持ってこようか?」
コイツはいつも通り、のんきで陽気。
この状況すら、楽しんでる節がある。
……まあ、ある意味一番の強者かもしれない。
- 1061◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 21:38:00
深夜2時を過ぎた頃、
俺たちは、食堂の前に立っていた。
人気はない。
照明も、最小限。
空調の音だけが、天井の奥で低く鳴っていた。
「その例の冷蔵庫は、厨房の奥か?」
「だろうな」
俺がそう答えると、
カイザーが、明らかに一歩引いた。
「……冷蔵庫から“声”って、どういう理屈なんだよ」
「理屈じゃねーよ、こういうのは。霊的なアレ。ミヒャ、もしかしてお前ビビってんの?」
「黙れ、クソ金歯」
わかりやすい反応に、
ロレンツォが、くすくす笑う。
俺は構わず、厨房の扉に手をかけた。
―――きぃ、と音を立てて、
ドアが、静かに開く。 - 1071◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 21:40:00
中は、真っ暗だった。
非常灯の小さな緑が、
床にかろうじて、光を落としている。
「電気、つけるぞ」
「OK~♪」
「早くしろ」
明かりを点けた瞬間、
ステンレスの調理台や棚が、冷たく光を反射した。
見慣れた空間なのに、
夜中だと、まるで別の場所に見える。
「冷蔵庫は……あれだな」
厨房の一番奥。
壁際に並んだ、大型の銀色の冷蔵庫。
業務用のやつだ。
無機質で、でかい。
―――なぜか、俺には“棺”に見えた。 - 1081◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 21:45:02
「んじゃ、行ってみよー♪」
ロレンツォが、無邪気に言う。
カイザーは明らかに、足が止まりかけてた。
俺も少しだけ息を整えながら、
冷蔵庫の前に立つ。
ドアの表面には、何も映っていない。
でも、妙に静かだった。
空調の音さえ、
いつの間にか聞こえなくなっていた。
カイザーが、ぽつりと呟いた。
「……なあ、本当に“声”が聞こえるのか?」
それが、嘘か本当かは―――
このドアを開けてみれば、わかることだ。
dice1d2=1 (1)
- 1091◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 22:21:39
【嘘】
「開けるぞ」
俺が言うと、
ロレンツォが、楽しそうに笑った。
「だぁ~。今度は当たり?外れ?」
カイザーは一歩引いたまま、唇を噛んでる。
文句は言わないけど、目が完全に警戒色だ。
俺は、無言で銀色の取っ手に手をかけた。
……酷く、冷たい。
深夜の金属は、いつもより体温を奪ってくる。
音もなく、扉が開いた。
中は、空だった。
棚が3段、何も置かれていないステンレスの板。
霜のひとつもついてない。
光も、何も、ない。 - 1101◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 22:23:47
……その瞬間だった。
耳の奥が、突然震えた。
「―――……っ」
鼓膜の裏から響くような、低く濁ったノイズ。
脳の奥を軽く掴まれるような、不快な振動。
そして、めまい。
世界が、少しだけ傾いた気がした。
ほんの数秒。
数秒で収まったが、
はっきりと“何か”があった。
「……今、なんか来た」
ロレンツォの声が、かすれて聞こえた。
「……気のせいだろ」
カイザーの声も、少しだけ震えていた。 - 1111◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 22:25:48
俺は黙って、冷蔵庫の扉を閉めた。
音も、反響もしなかった。
なのに、何かが蓋をされた気がした。
沈黙が降りる。
その中で、鼓膜にまだ、
“鳴っているような気配”だけが続いていた。
ノイズの余韻。
頭の中の深いところが、いまだに震えている。
「……なあ、冴」
「なんだ」
「もし、“声”があったとしても、多分、何も聞こえないな」
「………ああ、そうだな」
耳が、閉じたみたいだった。 - 1121◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 22:34:06
冷蔵庫を開けてから、
音の通り道が変わった気がする。
「…帰るぞ。ここは長居すべきじゃない」
カイザーが、背を向ける。
ロレンツォも、
「スナッフィーに怖くない冷蔵庫~♪」
とか言いながら、出口へ。
俺は最後にもう一度、銀色の扉を見た。
光のない鏡みたいに、自分の顔が映っている。
でも、その顔が―――
少しだけ、歪んで見えた。
ま、気のせいだろ。
噂は、嘘だ。
それに、前みたいに何もなかった。
それでも、俺たち三人は、
あの冷蔵庫をもう一度開けようとはしなかった。
【第十夜:糸師冴、ミヒャエル・カイザー、ドン・ロレンツォ】 - 1131◆DGCF6cUlCqNA25/07/29(火) 22:35:54
今日はここまで。噂の中にはあと何個真があるんだろうね。明日は休みだけど出かけたりするから変わらず更新はゆっくりだよ。引き続きよろしくね。
それじゃあ、おやすみなさい。 - 114二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 22:47:56
指定した方が書きやすいか迷ったのでちょっとホッとしました
怖くて面白いSSありがとうございました!
安易に助けてが聞こえるより不気味でこえーや(真だった場合も安易ではないだろうけど) - 115二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 01:46:46
スレ主がよければでいいけど噂全部書き終わったら もしダイス結果が逆だったらどういう感じにしようと思ってたのか聞きたい
- 1161◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 07:54:34
- 1171◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 08:40:14
>>93 【第十一夜:雪宮剣優・乙夜影汰・烏旅人・氷織羊】
その噂を聞いたのは、
つい昨日のことだった。
「なんかさ、QRコードが並ぶらしいよ、モニターに。読み込んだらヤバいらしい」
誰が言ったのかは、覚えてない。
でも、なぜか耳に残った。
現代的なのに、妙に不気味だった。
だから今、俺たちはこうして、
夜の通路を歩いてる。
「今回はどうだろーね。QRコード開いたらさ、もしかして可愛い女の子出てきたりしない?」
乙夜くんが、
スマホを取り出して、ウキウキしてる。
怖がる気配は……一応あるみたいだけど、
それ以上に、テンションが妙だ。
「出るわけないやろ女の子!なんでホラーで恋始めようとしとんねん!」
烏くんが、派手にツッコんだ。
その声が、夜の廊下に反響して、
それが逆に、不気味だった。
- 1181◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 08:46:28
「でもまあ、モニターいっぱいの部屋ってだけで、雰囲気あるなぁ」
氷織くんが、笑いながら言った。
いつも通りの、はんなりした調子。
俺はその背中を見ながら、少し肩をすくめた。
「俺、あんまりそういうの得意じゃないけど……まあ、興味はあるかな」
廊下を曲がると、
突き当たりのドアにたどり着く。
金属製のプレートに、『モニタールーム』の文字。
「じゃあ、開けるよ」
扉を引くと、ぶわっと、
ひんやりとした空気が流れ出してきた。
部屋の中は薄暗く、
青白いモニターの光だけが頼りだった。
「うわ、圧がすごいな……」
俺は無意識に、息をのむ。
天井に届くほどの、沢山のディスプレイ。
そのすべてが、
現在は“何も映っていない”状態。 - 1191◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 08:48:59
「……なんや、今はなんも映っとらんな。……もう帰ってええやろ」
烏くんが、早くも弱音を吐く。
「えー、待ってよ烏。俺QR読み込みたくて来たんだけど?」
乙夜くんが、スマホを構えながら言った。
「おい、読み込んだらダメって噂やったやろ」
「でも、女の子出るかもしれないし」
「………お前、救いようないでホンマ」
俺たちは肩を寄せ合うようにして、
モニターの前に立った。
「今は何もないけど……」
「……出るとしたら、きっと“このあと”やろなぁ」
氷織くんが、そう呟いた。
ほんの一瞬だけ、
空気の中の湿度が変わった気がした。
まるで、どこかのスイッチが、
今まさに押されたような、そんな感じ。
dice1d2=2 (2)
- 1201◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 09:07:55
【真】
「…………出た」
誰の、声でも、なかった。
俺自身の中から、ふいに。
漏れた言葉だった。
一斉に。
ほんとに、一斉に、モニターが白く染まった。
その中央に、黒い模様。
無数のQRコードが、壁に並んでいた。
「え……マジ?すご……!アガるわー!」
乙夜くんが、目を輝かせた。
そして、スマホを取り出し、
読み取り画面を構える。
「ッ待てや!!やめろアホ!!!」
烏くんが、叫んだ。 - 1211◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 09:10:34
掴みかかるように、乙夜くんの腕を引っ張る。
「ちょっ…、離せよ烏!女の子出てくるかもしんないじゃん!」
「出てきたとしても怖い系や!!美少女が出てくるわけないやろ!!!」
乙夜くんは抵抗したけど、
スマホは、烏くんに取り上げられた。
その間も、QRコードは揺れもせず、
静かに並び続けていた。
まるで―――
俺たちを、見ているみたいに。
「……なあ」
氷織くんが、ぽつりと声を出す。
「これ、全部違うんやろか。内容」
「え?」
「ちょっとずつ、違う世界に繋がってる……とか。読み取ってしもうたら、もう、戻ってこれへん。そんなんやったら、ちょっと……怖いやん」
笑ってた。
けど、その目は、笑ってなかった。 - 1221◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 09:13:32
俺は、近くのモニターに映ったコードを、
ただ、じっと見つめていた。
何の変哲もない模様。
白と黒の構成。
でも、見れば見るほど、
奥に“何か”がいるような気がしてくる。
呼吸が、浅くなる。
背中を、氷水が一滴ずつ落ちるみたいに。
冷たく。
冷たく。
汗が、伝っていく。
「……読み取ったら、どうなるんだろうね」
自分でも驚くくらい、静かな声だった。
氷織くんは、「どうなるんやろな」と、微笑んで、
少しだけ、首を振った。 - 1231◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 09:15:05
「そろそろ、出よか」
その言葉で、空気がほどけた。
烏くんは、乙夜くんにスマホを返しながら、
「ホンマやからな!二度とアホみたいなことすんなよ!?」
と、何度も念を押してた。
乙夜くんは、ちょっと拗ねた顔で、
「チッ、絶対めっちゃ可愛い子出てきたのに」
とか、言ってる。
―――だけど。
誰も、もう一度、モニターは見なかった。
俺たちは静かに、モニタールームを出た。
最後に振り返ったとき、あのコードの“列”が、
俺たちの背中を見送っていた気がした。
次に来た誰かを、待っているような顔で。
【第十一夜:雪宮剣優・乙夜影汰・烏旅人・氷織羊】 - 1241◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 10:32:13
>>94 【第十二夜:二子一揮・蟻生十兵衛・我牙丸吟】
夜の廊下を歩く足音が、
僕の耳には、やけに響いて聞こえました。
「……正直、こういう噂は少し苦手です」
僕が、そっと口にしました。
隣の蟻生くんが、静かに、
「ノットオシャだな」と、答えます。
その少し後ろを、
我牙丸くんが、無言でついてきていました。
表情は読めませんが、
胸の内は、きっとそれぞれにあるのでしょう。
今回の噂は、
“幽霊”というよりも、“過去の出来事”に、
関係しているように思えます。
ここが、建つ前。
この場所で、何があったのか。
詳しい資料は見つかっていませんが、
「動物がいた」という話だけは、
どこかで耳にしました。
- 1251◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 10:37:01
「……本当に、そんなことがあったんでしょうか」
僕の声が、
自分でも驚くほどに、小さく響きます。
誰も答えず、ただ歩き続けました。
壁の隅にあった案内図には、
使われていない古い貼り紙があります。
どこからか吹く風に揺れて、
カサカサと、音を立てていました。
それすらも、どこか物悲しく感じます。
「この辺り、もともと森だったって話を聞いたことがある」
我牙丸くんが、ふいにそう言いました。
「そこに人が勝手に施設を建てたんだ。……ま、よくある話だな」
「元の住民がいなくなっても、傷は残る。……こういう場所には、特に」
蟻生くんの言葉は、どこか冷たく。
静かな怒りを含んでいるように聞こえました。
僕たちは、言葉少なに進んでいきました。 - 1261◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 10:39:36
廊下の先。
少し開いた扉の向こうに、懐中電灯を当てると、
黒く湿った床が見えました。
ただの水か、
それとも別のものかはわかりません。
なんでもないことでも、
こういう時には、酷く不安を呼びます。
僕は、少しだけ歩を緩めました。
「……なんとなく、空気が違う気がしますね」
小さくそう口にすると、
蟻生くんと、我牙丸くんも立ち止まって、
周囲に目を向けました。
照明は暗く、天井の隅に積もった埃が、
ライトの反射でちらちらと揺れています。
風もないのに、
何かが動いたように見える瞬間が、
時折ありました。 - 1271◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 10:40:38
……ただの、錯覚かもしれません。
だけど、それが重なると、
少しずつ、疑念が生まれます。
ここに、何かがあったんじゃないか。
今も、いるんじゃないか。
そんな風に。
けれど、今のところは何も起きていません。
静かで、酷く、寒い。
ただ……それだけです。
dice1d2=2 (2)
- 1281◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 14:00:30
【真】
それは、まるで、
風でも通ったかのような、床をなぞる気配でした。
明確な、何かの存在感が、
空気を軋ませていました。
「……来ます」
僕が、そう口にした瞬間、廊下の奥から、
ぬうっと、黒い影が顔を覗かせました。
鹿のような角。
狐のような尾。
犬のような耳。
ひとつの種では形容しがたい、
複数の動物たちが、輪郭の定まらないまま、
こちらを見つめていました。
それは、ひどく、苦しげな目でした。
声にならない呻きが、
喉の奥から絞り出されるように響いてきます。
「……これが、“噂”の正体か」
蟻生くんが、眉をひそめました。
拳を握りしめながら、けれど立ち尽くします。 - 1291◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 14:02:45
霊たちは、近づいてきました。
―――ですが、爪を立てることもなく、
牙を向けることもなく。
ただ、全身から、
「なぜ」「どうして」と問うような、
哀しみを滲ませていました。
……それが、酷く切なかった。
「………」
僕の肩が、小さく震えていました。
言葉が、出ませんでした。
こんなにも悲しい存在を、
どう受け止めればいいのか、分かりませんでした。
そのとき。
「……お前たち」
我牙丸くんが、一歩、前に出ました。
静かに、低く、穏やかな声で。
「怒ってるのは、分かる。悔しいよな。痛かったよな。……苦しかった、よな」 - 1301◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 14:05:11
動物たちの目が、一斉に、
我牙丸くんの方を向きました。
「……けど、ここにいるのは、お前たちを傷つけるヤツらじゃない。ここにいるのは、お前たちのこと、ちゃんと見てる人間だ。……怒ってる、人間だ」
空気が、ほんのわずかに、
変わったような気がしました。
獣たちの影が、ふわり、と揺れました。
我牙丸くんは、言葉を止めず、続けました。
「どうしようもないことばかりだけど……それでも俺は、もう誰にも、お前たちみたいなヤツらを苦しめてほしくはないんだ」
誰も、動きませんでした。
蟻生くんも、僕も。
ただその言葉に、耳を澄ませていました。
……そして。
影が、ゆっくりと、後退し始めました。
声にならない、鳴き声を残しながら。
獣たちは、音もなく、
空気の奥に溶けていくように、消えていきました。 - 1311◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 14:08:48
最後に残ったのは、鹿のような影でした。
大きな瞳でこちらを見て、
それから、首を振るように身を揺らし、
……そして、いなくなりました。
静寂が、戻りました。
「……去って、いったのでしょうか」
僕が小さく尋ねると、
蟻生くんは目を閉じて、ただ一言。
「………俺たちが、変えなければ」
我牙丸くんは、廊下をしばらく見つめて、
それから、呟きました。
「……明日、花を備えよう。せめてもの、餞に」
その言葉に、僕たちは、無言でうなずきました。
帰り道。
風がそっと、背を押してくれるように感じました。
それが、少しでも届いた証だと、
……そう、思いたかったです。
【第十二夜:二子一揮・蟻生十兵衛・我牙丸吟】 - 1321◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 14:10:17
- 133二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 14:14:18
- 134二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 14:15:24
ブルーロック内のスタジアムでは夜中に誰も居ないのに試合が行われているような形跡がある
メンバーはE4で視点は今回は蜂楽で - 1351◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 20:06:52
>>133 【第十三夜:ドン・ロレンツォ、オリヴァ・愛空、糸師凛、士道龍聖】
深夜、1時45分。
俺たちは、ブルーロックの中をのんびり、
まったり歩いてた。
こんな時間に散歩とか、だいぶイかれてる。
そう誰かが思ってても、俺は歩くぜ。OK?
「……なあ、もうやめようぜこれ。マジで慣れねえって」
そう言ったのは、同じユーヴァースの愛空。
陽キャのクセして、
こいつ結構ビビリなんだよねぇ。
「ハハ!お前、まーたビビってんのか?」
隣で笑ってるのは、1億6000万。
口は悪いけど、多分悪いやつじゃない。
で、そいつの前を歩いてるのが、2億4000万。
冴の弟で、ブルーロックの頂点!
「うるせぇよ、黙れクソが」
あっ、またキレてる。
- 1361◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 20:09:50
コイツらってさ、
目が合うだけで、小競り合いが始まんだよなぁ。
だぁー、めんどくせー。
俺は適当に口笛吹きながら、
ライトで床を照らしてた。
でさぁ、ふと気づいたんだよね。
「なんか、ここだけ空気違う感じすんね」
廊下の先。
ふわっと、白く霞んで見えるところがあった。
ライトを向けても、そこだけ薄ぼんやりしてる。
まるで、霧が立ってるみたいな感じ。
「……あれ、道?」
愛空が言った。
1億6000万は鼻で笑った。
「道だろ、どう見てもな」
「いや、でもさ……ブルーロックに、あんな“くぐる”場所あったか?」 - 1371◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 20:11:56
くぐる、ってどういう意味って思ったけど―――
愛空の指さす先には、
確かに“何かの枠”みたいな形が浮かんでた。
赤黒い、木の柱っぽいやつ。
けど、見えてるのは、ほんの一瞬。
少し目を逸らすと、すぐに消えんだ。
「もしかして、噂の“鳥居”ってやつかもよぉ」
「やっば……ガチであったのか……」
愛空が一歩、後ろに下がる。
「ビビることなんざねーよ。連れ去られるとか、超ウケるじゃん♪」
1億6000万は面白がって、笑ってた。 - 1381◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 20:13:02
「お前が消えろ」
2億4000万の声、すげー怖~。
殺気出てるって気づいてる?OK?
んで、気づいたら、
時計が1時58分を指してた。
「だぁー。いい時間、サクッと終わらせちゃお」
俺はゆっくり、前へ足を進めた。
なんか、見えそうで見えない何かが、
空気の向こう側で“待ってる”ような……
そんな気配がすんだよねぇ。
dice1d2=1 (1)
- 1391◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 21:57:02
【嘘】
……ふと、気がつけば、
視界の霞は、いつの間にか消えていた。
「んん~?……あれ、なくなってる?」
俺は首を傾げて、懐中電灯を掲げてみた。
さっきまであったはずの赤い枠が、
いまは、どこにもない。
「だぁ~、またハズレかぁ」
肩を竦めて笑うと、
愛空が安堵のため息をついた。
「いや、むしろハズレでよかった。……ていうか、最初から鳥居なんてなかったってオチ、あり得ない?」
「いや、マジそれな?」
1億6000万が、肩を揺らして笑ってた。
「どうせそれっぽい何かを見間違えたってオチだろ、人間都合のいい錯覚とか見えるし♪」
「チッ、そのまま霧と一緒に消えれば良かったのにな」
「リンリンってば、口の悪さはどんな時でも変わんねぇな~」
コイツらは、いつも通りで、相変わらず。 - 1401◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 22:02:00
俺は、頭を掻きながら、
壁際に寄って伸びをした。
「……まぁ、俺としては、見えた時点で結構面白かったけどねぇ」
ちょっと惜しかったな、って感じ。
でも、せっかくならさ、
何か出てきてくれたほうが、絵になるじゃん?
そういうの、分かるでしょ?OK?
―――でも、その時だった。
「……あれ、今、なんか聞こえた?」
愛空の声が、不意に低くなる。
「…………んえ?」
全員が、動きを止めた。
シャン……
シャン……
かすかに響いたのは、鈴の音だった。 - 1411◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 22:04:00
どこからともなく、
透明な水の粒が、跳ねたように。
優しく、短く。
シャン……
シャン……
それは二度、静かに鳴って、
それきり、音はやんだ。
沈黙が落ちた。
「……今の、鳥居と関係あると思うか?」
愛空が、ぽつりと口にする。
「それとも、また別の“何か”か……?」
俺は、懐中電灯を空に向けて、
ゆっくりと一周照らしてみた。
何もない。
誰もいない。
けど、何かが、確かに“いた”ような。 - 1421◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 22:06:47
「……鈴の音とか、超やな感じ」
アイツが呟いたその顔に、
いつもの笑みはなかった。
「……なぁ」
俺は、誰にともなく問いかけた。
「鳥居って、ほんとにあったんだっけ?」
誰も、答えなかった。
なぜなら、もう確かめようがないから。
足音だけが、ゆっくりと廊下に戻っていく。
夜の帳は、深く、
どこまでも、静かだった。
【第十三夜:ドン・ロレンツォ、オリヴァ・愛空、糸師凛、士道龍聖】 - 1431◆DGCF6cUlCqNA25/07/30(水) 22:43:21
また明日から仕事の予定だから寝るね。噂はもう少し続くよ。津波警報ビビったけどみんなは大丈夫だったかな。
それじゃあ、おやすみなさい。 - 144二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 00:33:15
真も嘘もいい感じにホラーで好き
- 145二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 08:00:51
どのお話も面白いです
続き楽しみにしてます! - 1461◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 09:28:42
- 1471◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 09:30:09
>>134 【第十四夜:蜂楽廻・潔世一・千切豹馬・國神錬介】
ブルーロックのスタジアムって、
やっぱでっかいよねー。
しかも真夜中に来ると、なんていうか―――
ちょっと、ワクワクする。
「うひゃー、広っ!」
俺は芝生に寝っ転がって、夜空を見上げた。
照明はついてない。
月明かりだけが、
スタンドをぼんやり照らしてる。
「バカ、寝るな!何か出てきたらどうすんだ!」
「えー、潔またビビってるの?もういい加減慣れなよ~」
「ビビってねぇし!……まぁ、ちょっと怖いけど!」
潔は、もう何回もこういうの付き合ってるから、
慣れてるかと思いきや………。
やっぱり、ちょっと腰が引けてる。
その後ろで、千切りんが今日も、
國神の背中にぴったりくっついて歩いてた。
- 1481◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 10:16:50
「國神……今日は俺、もう絶対走らないからな。足音響かせたら来るって噂、あるだろ」
「それは今回の噂と違うだろ……。けど、用心するに越したことはないな」
國神は、いつも通り落ち着いてる。
多分筋肉があるから。
筋肉があると、心が安定するんだと思う。
でも、千切りんとの距離がいつもより近いのは、
俺の気のせいじゃないよ!
「……ねえ、ほんとに何かあるのかな?」
俺は、芝の匂いを嗅ぎながら、
スタジアム全体をぐるりと見渡した。
「だってさ、“誰もいないのに試合の跡がある”って話でしょ?誰が見たの?誰が最初に言い出したの?」
「……分かんない。けど、俺たちはそれを確かめに来たわけだし」
潔が、大きく溜息をついた。
スタンドは静かだった。
観客のざわめきも、実況の声もない。
いつもなら、
大勢の選手が走り回ってるフィールドに、
今いるのは、俺たち四人だけ。 - 1491◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 10:31:54
「……あれ?」
俺はふと、ピッチの中央を見て立ち止まった。
ライトに照らされた芝生は、
いつもとちょっと違って見えた。
少し、踏みならされたような………
でも、そんな気がするだけかもしれない。
「今日、ここ使ってたのかな」
「スタッフが、最近は使ってないって言ってたはずだ」
國神が、低く言った。
俺たちはゆっくり、フィールドに足を踏み入れた。
すると、ふわりと空気が変わったような気がした。
芝の香りが、夜の空気にまぎれている。
「……ねえ、何もないよね?」
俺の問いかけに、誰も即答はしなかった。
夜のスタジアムは、静かだった。
その静けさが、どこか不自然なほどに澄んでいた。
風が、ゴールネットを小さく揺らす音だけが、
小さく、響いていた。
dice1d2=1 (1)
- 1501◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 11:57:43
【嘘】
「……何もなかったねー」
俺はフィールドのど真ん中で、
ふぅっと、溜め息を吐いた。
潔は少し警戒しながらも、周囲を見渡してる。
「そう、だな……。今回もただの噂だったっぽいな」
月明かりの下、
スタジアムはしんと静まり返っていて、
誰も、何もいない。
ピッチにも、誰かが走った痕なんてなかった。
「よっしゃ!帰ろうぜ!」
元気な声は、千切りん。
國神のすぐ隣で、小さく拳を握ってた。
なんだかんだビビってたの、バレバレだよ?
「ふふ、千切りんってば國神にべったりだったじゃーん」
「ち、違ぇし!!」
「素直になれよ」 - 1511◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 11:59:24
國神は、いつも通りの落ち着いた声で、
少しだけ、笑ってた。
俺たちは出口に向かって、そろそろ帰ろうとした。
でも、その時だった。
「……ん?」
コロコロ…―――
乾いた芝を撫でるように、何かが転がってきた。
足元に、ボールがひとつ。
「……サッカーボール?」
潔が立ち止まり、目を細める。
「誰か、落としてったのかな?」
俺はしゃがみ込んで、
そのボールを、指先で軽く突いた。
ぺたんと、少し空気の抜けた感じがする。 - 1521◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 12:00:34
「……最近使ったって話、なかったよな?」
國神の言葉に、潔が小さく頷いた。
「なかった。練習も試合も、最近は別の場所だったはず」
ボールは、風に吹かれたように少し転がった。
「ちょっと、気味悪いな……」
千切りんが呟く声が、妙に遠く聞こえた。
俺たちはしばらく、誰も言葉を出さなかった。
ただ、芝の匂いと、ぬるい風。
それと、転がるボールの音だけが、耳に残った。
「……帰るか」
潔の声で、俺たちはようやく動き出した。 - 1531◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 12:01:37
「怖くないけど……でも、嫌な感じだな」
千切りんは相変わらず、
國神の後ろにぴったりとくっついてる。
國神は何も言わずに、そのまま歩き出した。
俺は、ボールをもう一度だけ見てから、
ゆっくりと背を向けた。
もう、振り返らなかった。
でも、なんとなく、わかる。
―――あのボール、まだ転がってる。
風も、ないのに。
音も、ないのに。
コロ、コロ……
まるで誰かが、
まだここで、サッカーをしてるみたいに。
【第十四夜:蜂楽廻・潔世一・千切豹馬・國神錬介】 - 1541◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 12:03:19
どんな『怖い噂』を『誰が』確かめに行く?
※怖い噂は自由に書いてね
※キャラは1話につき1~4人まで
※同じキャラを何回選んでもOK!
※安価から外れてもしっかり書くよ
※残りはあと六夜!その後は嘘と真が逆だった場合を書くよ
- 155二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 12:04:58
- 156二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 13:20:17
ロッカールームでは夜中に猫の鳴き声のような音が聞こえて、見に行くと黒い影が蠢いている…らしい
見に行くのは千切、國神、潔、蜂楽 - 1571◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 16:40:57
>>155【第十五夜:糸師凛・二子一揮・七星虹郎・黒名蘭世】
胡散臭ぇな。
そう思いながらも、
俺は、その“空き部屋”と呼ばれる場所に、
嬉々として向かっていた。
「……よくあるパターンの噂だ」
少し、自分の声が上ずったのが分かった。
扉の前に立ち、
ドアノブをひねると、すんなりと開いた。
内側から引っ張られるとか、
そういう抵抗は、何もない。
中は狭く、埃臭かった。
机も椅子もなく、ただの空洞。
懐中電灯をかざすと、
壁に貼られた古い掲示物が、ゆらりと揺れた。
「……怖い、怖い」
チビが、背中越しに呟く。
声の調子でわかる。
コイツは、本気で帰りたいと思ってる。
- 1581◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 16:42:36
それを無視して、
俺はズカズカと部屋の中に入った。
「……凛さん、本当にやるんですか…?」
田舎モンが、俺の後ろで聞いてくる。
額には汗、そして手のひらが湿ってるのが、
懐中電灯の光に反射してた。
「……やるしかありません、ここまで来たんですから」
前髪の声は落ち着いてたが、
わずかに間があった。
全員ビビりやがって。
……ぬりぃんだよ、お前ら。
「俺が座る。お前らは回っとけ」
そう言って、俺は部屋の中央に座る。
体育座りで、目を閉じた。
耳の奥で、外の風の音がかすかに聞こえる。
無駄なことは言わない。
何かが起きるなら、それで構わない。 - 1591◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 16:56:38
「……始めます」
前髪の声がした。
「怖いけど、やるしかない……」
次いで、チビ。
「回ります…!」
田舎モンが、息を吐きながら告げた。
ゆっくりと、足音が円を描く。
「……かーごーめ、かーごーめ……」
三人の声が重なって、輪が動き出す。
「籠の中の鳥は……」
足音が、微かに軋む。
誰の声がどこにあるか、わからなくなる。
「いついつ、出やる……」
田舎臭ぇ訛りが混じった声が、
かすかに震えていた。
目を閉じていると、世界が閉じる。
足音と歌だけが響いて、時間の感覚が薄れていく。 - 1601◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 16:58:25
「……夜明けの晩に」
「鶴と亀が滑った」
「……後ろの正面だあれ?」
一瞬、静寂が落ちた。
息を潜めて、気配を探る。
さて、誰が後ろにいるか―――……
当てられなかったら、“ソイツは消える”。
そういう噂だ。
名前は、呼ばねぇだけで覚えてる。
けど、分かってるのに呼ばなかったら?
わざと、間違えたら?
……背中を滑る汗が、妙に心地良かった。
dice1d2=1 (1)
- 1611◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 19:12:07
【嘘】
部屋の空気が沈んで、
息の音さえ、うるさく感じる。
―――俺は、わざと間違えるつもりだった。
そういう風に、最初から決めてた。
その方が、絶対に“楽しい”から。
口を開こうとした瞬間、誰かが言った。
「黒名蘭世」
低い声。
俺の声と、似ていた。
けど―――俺じゃない。
俺は、まだ何も言ってない。
目を開けば、背後を回っていた三人の目線が、
一斉に俺に向いた。
正解を当てたと思ってるらしい。 - 1621◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 19:13:31
チビが、少しだけ驚いた顔で、
「……当たり、だ……すごいな、凛」
そう言って、安心したように息を吐いた。
田舎モンが、軽く笑う。
「すごいっぺ……!流石は凛さん、よく分かりましたね!」
「……流石です、凛くん」
前髪まで、落ち着いた声で言う。
違う。
俺じゃねえ。
「……名前を呼んだのは、俺じゃない」
俺はそう言った。
それだけで、空気が凍った。
チビの顔から、
みるみるうちに、表情が抜け落ちる。
「……え?」
前髪の手が、小さく震えていた。 - 1631◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 20:19:24
田舎モンが、顔をこわばらせながら、
うろうろと周囲を見回す。
「じゃあ、誰が……?」
誰もいない。
回っていたのは、三人だけ。
その三人のうち、
誰が俺の後ろに誰がいたか知っていた。
“黒名蘭世”だった。
それだけは、間違いない。
でも、「黒名蘭世」と言ったのは、俺じゃない。
「気持ち悪い……」
チビが小さくつぶやいた。
その声が、やけに生々しく響いた。
空気が冷えてる。
汗が背中に張り付いて、息が重たくなる。
……ここに、“誰か”がいた。
俺じゃない誰かが、
俺の声で、正解を言った。 - 1641◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 20:20:53
そのことが、何より興味深くて、面白かった。
「……帰るぞ」
俺は立ち上がって、ドアノブを握った。
まだ誰も動けてなかったけど、
俺はもう、これで十分だった。
扉の向こうに出た瞬間、
ようやく三人の足音がついてきた。
静かだった。
誰も、余計なことを口にしない。
その沈黙が、やけに心地良い。
ドアが閉まる時、どこか遠くで、
「かごめかごめ」の歌が聞こえた気がした。
その声を聞いて、俺は―――
笑みを、堪えきれなかった。
今日は、とても、楽しかった。
【第十五夜:糸師凛・二子一揮・七星虹郎・黒名蘭世】 - 1651◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 20:55:00
>>156【第十六夜:千切豹馬・國神錬介・潔世一・蜂楽廻】
「猫……だったら、ちょっと可愛いかも」
そんなことを口にしたら、
蜂楽が「だよね!」と、勢いよく頷いた。
懐中電灯を手に、俺たちは廊下を歩く。
國神は、先頭を落ち着いた足取りで進んでいて、
俺はそのすぐ後ろに、ぴったりとくっついてる。
こうしてると、安心する。
國神の背中は大きくて、あったかいから。
「でもなあ……。可愛い声に釣られてホラー展開ってのもよくあるじゃん」
潔が、ぽつりと呟いた。
表情は苦笑いだけど、足取りはそれなりに軽い。
「えー、今回は当たりだと思うけどなあ。猫だよ?可愛いに決まってるって!」
蜂楽は、今日も元気いっぱい。
懐中電灯の光を天井に向けたり、
わざと、影を作って遊んでる。
- 166二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 20:55:41
怪異より凛ちゃんさんの方が怖い!!
- 1671◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 20:57:15
「……はしゃぎすぎだ」
國神が静かに注意すると、
蜂楽は「はーい」と、素直に返事をした。
だけど、笑顔はそのままだ。
「そういえばさ」
潔が、声を落とす。
「今日の噂、どこで聞いたんだっけ」
「食堂。誰かが話してた。昨日の深夜、ロッカーの近くで聞こえたって」
蜂楽が、あっさりと答える。
「昨日……?」
思わず、声が漏れた。
それってつまり、
昨日の時点で“何か”があったってことだ。
足がすこしだけ、重くなる。
國神の背中を見上げると、
少しだけ振り返ってくれて、安心した。
「だ、大丈夫だよな……?」 - 1681◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 20:58:39
俺の声が小さく震えると、國神が低く返す。
「ああ、俺がいる。何かあっても守る」
言葉が胸に届いて、自然と深呼吸した。
その横で、蜂楽がにこにこと歩いてる。
「もし猫いたら名前つけよー!みんなで飼おうよ!うちのチームのマスコットにしてさ」
「飼えるわけないだろ」
潔が、呆れた声で返す。
「夜中にロッカールームで見つけた猫とか、絶対なんかあるって……」
「じゃあ、名前だけでもつけよう?」
蜂楽は、楽しそうに言ってる。
怖くないのか、
それともただ、楽しんでるだけなのか。
―――ふと、建物の構造が変わる。
廊下の突き当たりが、ロッカーへの扉。
無機質な金属のドアが目に入る。 - 1691◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 20:59:56
「ついたな」
國神が言って、足を止める。
ドアの前に立つと、
建物全体の空気が、少しひんやりした気がした。
足元から冷気が這い上がるような、
静かな圧がある。
俺は、國神の腕の袖をそっと掴んだ。
自分でも、無意識だった。
「……開けるぞ」
國神が言って、潔が頷く。
蜂楽は前に出ようとして、國神に止められた。
「危ないかもしれない。俺が先に入る」
その声を聞きながら、俺は小さく頷いた。
國神の背中を信じてる。
けど、やっぱり―――……怖い。
猫なんて、ほんとにいるのかな。
噂の声は、ほんとに“鳴き声”なんだろうか。
dice1d2=2 (2)
- 1701◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 21:01:54
>>166 視点で結構印象が変わるよね。凛にすると噂より本人が怖くなっちゃった。けど多分凛はこういうこと考えてるんだと思う…
- 171二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 21:23:19
猫飼おうって話してる所でほっこりしてたら真だった…
- 1721◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 21:37:26
>>171 今回はほっこりする真だね。
【真】
ロッカールームの扉を開けた瞬間、
ひんやりとした空気が流れ出す。
外とは違う、こもったような湿り気のある空気。
埃の匂い。
汗の名残。
「……にゃぁ」
声が、した。
小さな、どこか掠れた鳴き声。
それは間違いなく、
俺たちのすぐ近くから聞こえていた。
「……いまの、猫の声?」
蜂楽が、首を傾げた。
「……猫、か……?」
潔も、声を落とす。
けど、すぐには姿が見えなかった。
- 1731◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 21:39:36
俺は懐中電灯を、ゆっくりと向ける。
ロッカーの列。
誰もいない空間。
床に伸びた影。
―――そして、ロッカーの隙間。
そこに、“それ”はいた。
「……あ」
思わず、声が漏れた。
黒い影。
四つ足で、静かにこちらを向いていた。
灯りに照らされるその輪郭は、
確かに“猫”だった。
だけど。
普通の猫とは、少し違った。
「……透けてる……」
潔が、震える声で呟いた。 - 1741◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 21:41:59
そのとおりだった。
艶のある毛並み。
細い尾、鋭い目。
……でも、光を通す体。
幽霊なんて言葉を、
無理やり信じ込む必要もなく、
“それ”は、そういう存在に見えた。
「……綺麗だ……」
俺は、思わず呟いた。
「千切、危ないぞ」
國神が一歩踏み出して、俺の肩を掴んだ。
けど、怖くなかった。
……怖くない、と錯覚するくらいには、
その猫は“悲しそう”な顔をしていた。
「……大丈夫」
俺は國神に小さく言って、しゃがみ込んだ。
猫は動かない。
ただ、じっと、こちらを見ていた。 - 1751◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 21:44:11
「おいで」
声をかけてみる。
けれど、猫は目を細めるだけで、
そっと、背を向ける。
くるりと向きを変えて、
ロッカーの間を、すり抜けるように歩く。
そして、そのまま、消えた。
「……いなくなった」
蜂楽が、ぽつりと呟いた。
「見送って、もらったんだろうな」
國神が、低い声で言う。
「猫、だったんだよね」
潔が言う。
「猫だった。……すごく、悲しそうな顔してた」
俺は立ち上がりながら、そう返した。 - 1761◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 21:46:59
ふと、背後からもう一度、鳴き声が聞こえた。
さっきより、遠く。
でも、ちゃんと、耳に届いた。
振り返っても、何もなかった。
でも、それで良かった。
……そう思えた。
「……あの子、名前つけてもいい?」
蜂楽が、口を開く。
「……いいと思う」
俺がそう言うと、
國神と潔も、静かに頷いてくれた。
扉が閉まり、ロッカールームを後にする。
……もう、猫の声は聞こえなかった。
ただ、確かにそこには、
“優しい気配”が残っていたような気がして―――
俺はそっと、息を吐いた。
【第十六夜:千切豹馬・國神錬介・潔世一・蜂楽廻】 - 1771◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 21:48:26
- 178二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 21:51:11
噂:丑三つ時に食堂に座っている白い影を見てしまうと、気が狂ってしまうらしい
キャラ:二子 馬狼 愛空 ロレンツォ - 179二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 21:51:21
深夜のモニタールームでは目を閉じても流れ込んでくる決して理解してはいけない文字が羅列されるらしい
冴と閃堂(視点はおまかせ) - 1801◆DGCF6cUlCqNA25/07/31(木) 22:34:31
- 181二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 22:47:34
- 182二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 03:20:46
- 1831◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 08:34:16
- 1841◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 11:49:38
【第十七夜:二子一揮、馬狼照英、オリヴァ・愛空、ドン・ロレンツォ】
―――昨日の夜から、呼吸が浅い。
背中に貼りついた冷たい感覚が、
まだ、抜けないままでいました。
「おい、二子。ついて来れんのか?」
馬狼くんが、前を歩きながら、
僕の方をちらりと、振り返ります。
いつもより声が大きいのは、
たぶん、気にしてくれているからです。
「はい。……大丈夫です」
小さく返します。
心配は、かけたくないから。
「昨日の“噂”、怖かったらしいもんな」
愛空くんが、僕の隣で笑いました。
けど、その目は、
先を見据えるように、鋭く光っていました。 - 1851◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 11:54:24
「色んな“噂”があるから、気をつけなー?」
そう言ったのは、ロレンツォくんでした。
いつものように、カラカラ笑って、
怖いより、興味の方が勝ってるみたいです。
「にしても、マジで噂多すぎだろ……」
愛空くんが苦笑して、肩をすくめます。
僕は少しだけ、肩の力を抜きました。
こういう何気ない会話が、一番ありがたいです。
「今回は、“白い影”。OK?」
ロレンツォくんが、ぴょんと軽く段差を跳ねて、
僕たちの方を向きました。
「はい。食堂のどこかに、誰かが座ってるらしいです。……深夜、誰もいないはずの時間に」
そう言いながら、僕たちは目当ての場所―――
食堂へと向かっていました。
夜のブルーロックは、静かすぎて、
歩く音が、無駄に大きく響きます。
さっきまでいた部屋に戻りたくなるほど、
冷えた空気が、肌を刺しました。 - 1861◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 11:56:27
「あ、そう言えばさ~。スナッフィーに冷蔵庫オネダリしたら、すんなり買ってくれた」
唐突に、ロレンツォくんが口を開きました。
「……なんでこのタイミングで冷蔵庫の話なんだよ」
馬狼くんが、呆れた声で言います。
「だってさぁ、ここの冷蔵庫不気味じゃん?俺、前にミヒャ達と“噂”探しに行った時、絶対怖くないやつ買ってもらおうって思ったんだよねぇ」
ロレンツォくんは、
本気で言っているようでした。
僕は、冷蔵庫を懇願されるマスターの顔を、
ふと、脳裏に思い浮かべて、
……小さく、笑ってしまいました。
「………よし、なんか落ち着いてきたかも」
愛空くんが、手を後頭部に回して、
ふぅと、息をつきます。
「でも……ここからですよね」
僕がそう言うと、
全員が、一瞬だけ無言になりました。 - 1871◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 11:58:29
食堂の扉が、見えてきます。
いつもは賑やかで、誰かが必ずいるはずの場所。
でも、今は違います。
照明は最小限に落とされ、
所々に深い闇が広がっています。
明かりの届かない奥の場所が、
深く、黒く、沈んでいました。
「開けるぞ」
馬狼くんの、低い声。
「……はい。お願いします」
僕は少しだけ、後ろに下がります。
愛空くんが、僕の背を軽く叩いて、
ロレンツォくんが、
肩越しに、僕の顔を覗き込んでいました。
ギィ……
馬狼くんが、扉を開ける。
油が切れたような音が、空気を裂きます。 - 1881◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 12:00:28
中は、静かでした。
冷蔵庫のモーター音も、
風も、
息も、ない。
「……本当に、何かいるんでしょうか」
僕の声が、
闇の中に吸い込まれるように広がります。
「知るかよ。けど、見るしかねぇだろ」
馬狼くんの足音が、すっと中に消えます。
愛空くんと、ロレンツォくんが続き、
僕もゆっくりと後を追いました。
冷たい空気が、足首にまとわりついてきます。
まだ、何も見えてはいません。
でも、何かがいるような、そんな感じがします。
噂の“白い影”が、本当にいるのか。
それとも、ただの作り話なのか。
僕たちは、静かに、
少しずつ、席へと近づいていきました。
dice1d2=1 (1)
- 1891◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 13:28:48
【嘘】
「……何も、いませんね」
そう、僕は呟きました。
しん、と静まり返った食堂の中。
テーブルの影にも、並んだ椅子にも、
どこにも、“白い影”はありませんでした。
「……はぁ~~、良かった~~!」
愛空くんが、頭をぐりぐりと掻きながら、
大きく、息を吐きました。
「これでさ、今日も平和ってことだろ?な?」
「ふん……当然だ。俺の前に出てくる度胸のある影なんざ、存在しねぇよ」
馬狼くんは、強気に言いましたが、
さっきまでの緊張が抜けたのか、
少しだけ、肩の力が抜けて見えました。
「だぁ~。冷蔵庫、買ってもらって正解!たぶん、あれが魔除けになってんの」
ロレンツォくんが、得意げに笑って、
奥に置かれた真新しい冷蔵庫を、指さしました。 - 1901◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 14:24:42
「……それ、本気で言ってます?」
僕は、苦笑をこらえながら尋ねると、
「スナッフィーが、“モノは大事にしなさい”って言ってたし?」
なんだかよく分からない理屈でしたが、
こうやってみんなが笑ってるなら、
それでいい気もしました。
「じゃあ、もう帰るか。時間も遅ぇし」
馬狼くんが踵を返して、
扉の方へ歩き出します。
「僕も、それがいいと思います」
一歩ずつ、僕たちは元来た道を戻っていきます。
ただの食堂―――
そのはずなのに、
背中に小さな視線のようなものがまとわりついて、
僕は思わず、何度か後ろを振り返ってしまう。
……何も、いない。 - 1911◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 14:26:21
「……あれ?」
ほんの一瞬、視界の隅。
柱と柱の間に、なにか薄いものが、
ゆらりと、揺れた気がしました。
光の加減か。
………それとも、別の“何か”か。
「二子?どうかした?」
愛空くんの声に、僕はすぐ首を振りました。
「……いえ。何でもありません」
見間違いだったのかもしれません。
けど、あの形は―――
いや、言わない方がいい。 - 1921◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 15:06:06
「今日はこれで解散ってことで、OK?」
ロレンツォくんの軽快な声が、食堂に響きました。
その声を聞きながら、
僕は扉の方へと、足を向けました。
何も、なかったんです。
“白い影”なんて、
きっと、どこにもいなかったんです。
ただ、あの、視界の隅で揺れた、
“モヤ”のような何か。
あれだけは、僕の錯覚であってほしい。
……そう、心から願いました。
【第十七夜:二子一揮、馬狼照英、オリヴァ・愛空、ドン・ロレンツォ】 - 1931◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 18:48:37
>>179【第十八夜:閃堂秋人・糸師冴】
「……え、嘘だろ、なんだよこの噂………」
モニタールームの前で立ち止まりながら、
俺はもう、何度目か分からない確認をする。
「『目を閉じても流れ込んでくる文字』って……意味わかんねぇだろ。てか、意味わかんねぇって時点でヤバいって!」
「うるさい。落ち着け」
隣にいる糸師冴、俗に言う天才は、
いつも通りの無表情で、俺にそう言った。
なんなんだよコイツ。
緊張感ってもんがないのかよ……。
俺なんか、さっきからずっとソワソワしてんのに、
コイツは目線すらブレない。
「いやいや……。これ、ヤバいやつだって。理解しちゃダメな文字が脳に入ってくるんだろ?こっちはその前に心臓止まりそうなんだけど」
「お前は心臓より口が止まらなそうだな」
「それフォローじゃないよな!?てかなんで俺とペアなんだよ!!」
冴は軽く、肩をすくめるだけだった。
うわ、やばい。
返しも淡々としてて、逆に怖いんだけど。
- 1941◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 18:50:31
「さっさと行くぞ」
あっ、待って、まだ心の準備が……!
そう思ってる間に、
冴はすでに、ドアに手をかけていた。
モニタールームの扉が、
無機質な音を立てて開く。
「うわ……」
照明は暗く、モニターの明かりだけが、
やたらとギラギラしてる。
無数の画面が、誰もいない廊下や部屋を、
無音で映し出していた。
「……これ、全部映ってんの?」
「監視設備なんだから当然だろ」
冷静に返されて、
俺は自分のアホさに、少しだけ自己嫌悪する。
……だって怖いし。
しょうがないだろ……。 - 1951◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 19:02:27
「……えっと……その“ヤバい文字”っていうのが、モニターのどこかに映る感じか?」
「ああ。どのモニターかは知らねぇが、どっかには映んだろ」
「……いやいや、こわっ!」
ふざけんなよ、俺はどこ見てればいいんだよ!
いや、目を閉じてても流れ込んでくるなら、
どこ見てても一緒か……
「今のところは何も問題ないが…」
冴はすでに部屋の中央に立って、
全体を一望してる。
俺は、扉の近くから一歩も動けない。
腰が引けてるの、たぶんバレてる。
「来ないなら一人で見る」
「行く行く!ちゃんと行くから!」 - 1961◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 19:04:51
渋々足を踏み出しながら、
俺は何度も、周囲を見回す。
でも、どのモニターも普通だ。
真夜中の、静かな映像。
ただ、やたら砂嵐が多いのは―――
ただの故障、だよな?
「……んで、ここで待ってればいいのか?」
「ある程度待って、変化がなければ切り上げる」
「はあ………何も起んなきゃいいけど」
冴はじっと、モニターを見つめ、黙ってる。
部屋は静かで、
電気のノイズ音がずっと、響いてる。
心臓の音がうるさいと、
ちゃんと思えるようになったとき。
俺は、意を決して―――
モニターを、じっと見つめた。
……何も、起きなければいいんだけど。
dice1d2=2 (2)
- 1971◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 19:07:30
落ち着いたら次スレ立てるからあと1~2時間くらいお待ちを!
- 1981◆DGCF6cUlCqNA25/08/01(金) 20:38:13
- 199二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 20:53:48
うめ!
- 200二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 21:37:31
次スレありがとう埋め