【AI注意】【SS注意】メカクレデカパイモブウマ娘を置いていくのであとはみんなの好きにしてくれ6

  • 1二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 20:59:51

    「好きなだけ好きにしてくれ」と言うスレ主の言葉と供に送り出された一人のウマ娘。
    彼女の名前は、チャンドラポメロ。
    このスレは、彼女や彼女の友人達を好きに形作っていくスレです。

    なおスレ主≠大元のスレ主です。
    画像はこちらの環境で作ったポメちゃん。

  • 2二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:02:12
  • 3二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:03:54

    ここまでのチャンドラポメロと愉快なDKPI仲間たち
    各キャラざっくり概要
    チャンドラポメロ ↓
    高身長、DKPI、完全両メカクレ、黒髪長髪、恥ずかしがり屋、赤面癖、お洒落リップ

    ダブルマシュマロ ↓
    低身長、DKPI、やや両メカクレ、栗毛ツーサイドアップ、お喋り、Hな話苦手、ボクっ娘

    カベルネソラリス ↓
    眼鏡、DKPI、やや両メカクレ、芦毛ポニーテール、表裏の無い生真面目、超甘党、オレっ娘、青色アンダーリム眼鏡、または青色サングラス風眼鏡

    ミスディレクション ↓
    高身長、DKPI、筋肉、片目ややメカクレ、鹿毛ショート、見た目優等生の中身今時ギャル、赤色アンダーリム眼鏡

    レッドへリング ↓
    高身長、DKPI、筋肉、そこそこ両メカクレ、鹿毛ライオンヘアー、誤解を生む表情(特に笑顔)持ちの大人しめの娘、黒色アンダーリム眼鏡

    ネーロディセッピア ↓
    高身長、DKPI、片目完全メカクレ、姫カット黒長髪、ハート目、恋愛オールラウンダー

    プティートモナ ↓
    低身長、DKPI、片目メカクレ、飛び級小等部、鹿毛太い流星癖っ毛ロング一つ結び、豹変癖あり

    ハニーハニーハニー ↓
    金髪、 DKPI、片目メカクレ、お嬢様(下着メーカー令嬢)、ストレートロング、ヘーゼル色の猫目

  • 4二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:05:39

    有志作成のキャラクターシート
    チャンドラポメロ

    1レス中に画像複数貼るのは、どうやるのだろう?

  • 5二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:08:49

    スレ立ておつわよ

    さて、複数画像はこれで出来るかなっと


    ダブルマシュマロ


    カベルネソラリス

  • 6二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:11:05

    ミスディレクション


    レッドヘリング

  • 7二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:12:19

    ネーロディセッピア


    プティートモナ


    ハニーハニーハニー(ハニーサン)

  • 8二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:24:38

    キャラシ貼り付けありがとうございます

    チャンドラポメロ プロンプト
    solo,long hair,black hair,(black-horse tail),no ears,(blush:1.5),lips,(bangs over eyes:1.3),long bangs,black bangs,
    BREAK,masterpiece, high quality, huge breasts,(horse ears),(kemono ears),

    ダブルマシュマロ プロンプト
    ((masterpiece)), ((best quality)), (ultra-detailed), (high resolution), amazing quality, absurdres, beautiful face, high detailed face, (perfect anatomy), very aesthetic, 8K, vibrant colors, depth of field, sharp focus, detailed fingers, detailed body, perfect hands, cinematic light, ray tracing, detailed illustration,
    (umamusume, horse girl, long horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    16 years old, (light brown hair, dark orange hair, multicolored hair, medium hair, twintails:1.5), (hair over eyes:1.6), red eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes, slit pupils, sharp teeth,
    (oppai loli, short height:1.2), (huge breast:1.3), breasts apart, wide hips, curvy,

  • 9二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:26:05

    ミスディレクション プロンプト
    (umamusume, horse girl, horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    (dark brown hair, light brown hair, multicolored hair, short hair:1.5), straight hair, (hair over eyes:1.3), dark-green eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes, (tall female, big woman, enormous, towering), muscular female, large breasts, (leg muscles, wide hips:1.1),
    (multicolored big hair bow, red semi-rimless eyewear:1.5),

    レッドヘリング プロンプト
    (umamusume, horse girl, long horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    (dark brown hair, black hair, multicolored hair:1.5), short hair, straight hair, (long big hair, hair over eyes:1.5), dark-green eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes, (tall female, big woman, enormous, towering), muscular female, huge breasts, (wide hips:1.1), long legs,
    (hair bow, black-framed eyewear:1.5),
    evil grin, parted lips, crooked teeth,

  • 10二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:28:38

    ネーロディセッピア(トレセン制服姿) プロンプト
    solo,girl,(long hair),(black hair),hime_cut,(black-horse tail),no ears,violet eyes,(hair over one eye:1.3),(heart shaped pupils),long bangs,black bangs,BREAK,masterpiece,high quality,(huge breasts:1.5),(horse ears),(kemono ears),glamorous,kind smile,,tracen school uniform,

    プティートモナ プロンプト(基本部分のみ/状況によっては年齢指定は抜いた方がいいかも)
    (umamusume, horse girl, horse ears, horse tail:1.2),
    12 years old, child, (dark-brown hair, white streaked hair, inwardly curled hair, flipped hair, low-tied hair, very long hair, hair over one eye, shaded face:1.5), black eyes, round eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes,
    break, shortstack, oppai loli, (short height, huge breast:1.2), pointy breasts, (no headwear, ear bow:1.5),

  • 11二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:29:07

    これまでのぉ! DKPIあらすじぃ!


     メカクレデカパイモブウマ娘、その名はチャンドラポメロ。

     栄えある中央トレセン学園への入学が認められ、そこで同期のダイワスカーレットに仄かな尊敬の念を抱く。

     そしてそれは、親睦併走、ダイワスカーレットとウオッカ、カベルネソラリスとの選抜レース、ダイワスカーレットとウオッカの一騎打ちリベンジマッチを経て、その緋色の閃光に脳を焼かれてしまう。

     ダイワスカーレットに明確な憧れを抱き、彼女に追いつきたいと専属トレーナーと共にメイクデビューへと挑んだチャンドラポメロはそこで緋色の影、ダイワスカーレットの背中を見てしまう。

     それが領域<ゾーン>に踏み込んでいる状態とも知らず、その背中を必死に追ったチャンドラポメロは、メイクデビューを見事に制する。

     だが、その領域に至った事によってまだ成長途中の脚は悲鳴を上げ、ジュニア級を棒に振る骨折の診断を受けた。


     彼女が休養している間にも、新たなDKPIの同期が集まり、全員がメイクデビュー及び未勝利を突破し、DKPI交流会が開かれる。

     そこでトラブルがありつつも、自身のバストサイズの成長を知りつつも、新しいブラジャーを手に入れたチャンドラポメロは、そのおかげもあって絶好調。

     最優秀クイーンウマ娘のウオッカ。ニシノフラワー以来の天才少女で、同期のメカクレデカパイウマ娘のプティートモナが挑むエルフィンステークスへと挑むのであった。

  • 12二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:35:17

    これまでのぉ! メカクレデカパイモブウマ娘たちのぉ! あっ、軌跡ぃ♡


    序章

    「Shadow of the Scarlet」──序章「その名はチャンドラポメロ」 | Writening※※※  勝負の世界とは、悉く残酷である。  その一戦で互いの優劣を付けられ、勝者と敗者に分けられる。  僅差での勝利であっても、勝利は勝利であり、運で負けたとしても敗北は敗北。  「もしも」が禁句…writening.net

    幕間

    「Shadow of the Scarlet」──幕間「フルーツパーラーに行こう」 | Writening※※※  フルーツパーラーという言葉をチャンドラポメロが聞いたのは、あまりにも唐突だった。  時は選抜レースが始まった週の土曜日早朝。栗東寮の食堂で朝食を済ませようとしていた彼女は、同じく栗東寮且…writening.net

    第一章

    「Shadow of the Scarlet」──第一章「逃げるは影、追うもまた影」 | Writening※※※ 山嶽ノ上ヲユク 雲ノ軽サ、 水ニウツル 山嶽ノカゲノ重サ。 ──北原白秋より「影」 ※ ※※ ※※※  春の選抜レースの期間が終わり、桜の花もすっかり落ちて初夏へと向けて葉を伸ばし始めた頃。  そ…writening.net

    第二章・前半

    「Shadow of the Scarlet」──第二章「溺れゆく者たち・前編」 | Writening※※※  井の中の蛙。  大海を知らず。  されど。  空の青さを知る。  井の中の蛙。  大海を知る。  そして。  空の広さに──  ──絶望する。 ※ ※※ ※※※  メイクデビューレースを勝利で飾った…writening.net
  • 13二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:38:23

    因みに前スレの時点で無事に10万文字超えましたとさ
    もうSS(ショートストーリー)じゃなくて長編小説デース

  • 14◆8YBpUCUZW625/07/27(日) 22:34:13

    いつもありがとう9くん

  • 15◆8YBpUCUZW625/07/27(日) 22:39:45

    新スレもありがとう

  • 16二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 23:42:49

    ポメちゃんのLoRAだけでも調整に苦心してるのに未だこんなにいるのか(驚愕)

  • 17二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 00:33:51

    前スレ193より


    ※※※


     2月初週の土曜日。京都レース場第10レース。芝1600Mのクラシック級リステッドオープン、エルフィンステークス。
     肌を冷やす寒さこそあるものの天候は晴れの芝は良発表。チャンドラポメロ含む、このレースに挑むウマ娘は9人。
     一番人気は最優秀クイーンウマ娘にも選ばれたウオッカがダントツ。8枠9番という外枠にも関わらず、昨年の阪神ジュベナイルフィリーズでの走りが順当に評価された人気と言えた。
     続いての二番人気はプティートモナ。前走であるリステッドオープンのジュニアカップを勝利し、中4のレースである事も差し引いても多くのファンの人気を集める。枠も2枠2番と、変幻自在の脚を十二分に活かせるものであり、今日はどういった脚質で挑むのかも期待されていた。
     対して、チャンドラポメロは昨年のメイクデビュー以来のレースであり、怪我明けという事もあり、7番人気。バ体だけなら一時4番人気まで上がったものの、他のウマ娘たちに比べてレース経験のなさが災いした。
     クラシック級のリステッドオープンレースとはいえ、前後に重賞レースがない事と、寒さのせいもあってか観客は疎ら。また、そのほとんどがウオッカのファンというのだから、チャンドラポメロ以下のウマ娘たちにとってはややアウェイ感のある会場雰囲気となった。
     パドックを終え、ターフの上で各々が走る前の準備運動をしつつ順次ゲート入りする中、淡々とした実況の声がレース場に響く。

    『さ、エルフィンステークスになります。えー。ウオッカ、出てきました。去年の最優秀クイーンウマ娘』
    『はい』
    『今年初戦がこのエルフィンステークスという事になります。圧倒的一番人気。二番人気はプティートモナになります。三番人気はグラマーべラスですが、一番人気と二番人気が他と比べて頭一つ抜けています』
    「7番、チャンドラポメロ」
    「はい」

     その実況を耳にしながら待機していたチャンドラポメロが最後のゲート入りとなり、係員に誘導された彼女は7枠の7番に収まる。
     クラシック級の初戦。レースとしては二戦目になる彼女にいつものような緊張はなかった。今はただ、絶好調ともいえる身体と、勝つという心のみがある中、目の前のゲートが開くのをただ待つのみ。

  • 18二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 00:35:21

    実際にあったレースを参考にしつつになるので、やや遅々たる進行になります
    短くて申し訳ありませんが、今日はこれでほなまたします

  • 19二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 08:26:09

    >グラマーべラス

    これまた名前がDKPIなのが

  • 20二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 10:08:10

    >>19

    元になったレースの三番人気の名前からして『ハギノグラマラス』だったんで…

  • 21二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 17:53:12

    条件はDKPI! ウマ娘! 体操服! グラマラス!(プロンプト)
    髪の長さや色、目の色等はAIに丸投げ!
    現れよ! グラマーべラス!

  • 22二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 23:11:45

    >>20

    ハギノルチェーレとタガノグラマラスが合体してて草わよ



    草わよ…

  • 23二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 00:09:48

    >>17


    『全ウマ娘態勢完了。係員が離れます──』

    「……ふっ!」

    『──スタートしました』


     短く息を吸い、溜めたところでチャンドラポメロのゲートが開き、彼女はターフの上へと飛び出した。

     遠くではそれまで淡々としてた実況にレースの熱が乗ったかのような声が響く。


    『エミリアベガルタ、好ダッシュ。エミリアベガルタが先手を取りました』

    「……っ」

    『まずはリードを1バ身半。マーテルウンシュが2番手。後はウィーンオペレータ、グラマーべラス。そして半バ身差、外ウオッカ。前から5番目です』


     先頭集団の後ろ。先行気味の差しという位置にウオッカ。その後ろにプティートモナがいる事を確認しつつ、チャンドラポメロはその彼女を外側が蓋をするかのように圧を掛ける。

     チャンドラポメロの身長は180cm。対するプティートモナは131cmとその差は大人と子ども程になる。身長に対する旨の大きさの比率以外は、全てチャンドラポメロが有利となる。

     加えて、前はウオッカを含む三人が壁となる形で進行方向を塞いでおり、プティートモナからしたら速度を一度落とさなければこの包囲から抜け出せない状況となっていた。


    (酷い事をしているかもだけど、これもレース!)


     自身がプティートモナの立場だったら、と思うと、そんな彼女の逃げ道を塞ぐ壁となっている事にチャンドラポメロは少しだけ罪悪感を覚える。

     けれどもすぐにこういった体格差を利用した封殺もまた、レースの作戦の一つと割り切りつつ、横目で内にいるプティートモナへと視線を向ける。


    「ぅうっ、くっ」

    「……」

    「くっ、ふふふ」

    「……?」

  • 24二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 00:10:49

    >>23


     チャンドラポメロの視線の高さ的に、彼女の表情は見えない。

     しかし、少しこもった声を漏らしたかと思うと、プティートモナはまるで喉の奥を鳴らすような声で笑う。

     それを聞いたチャンドラポメロは、この絶望的とも言える包囲網を前に笑うしかないのだと思った。

     けれども、それが勘違いである事にすぐ気付く。


    「あっ、はっはっはっはぁっ!」

    「っ!?」


     プティートモナは笑っていた。

     それも、自暴自棄から来るものではなく、闘争心を燃やしているかのような、自らを鼓舞するような笑い方だった。

     彼女のその笑い声が聞こえたからなのか、それとも単に最高速に乗ったからなのか。その高笑いが終わる頃には先頭集団は更に先へと走り、必然的にプティートモナの前が空く。


    『向こう正面から外回りの3コーナーへと向かいます』

    「っ」


     彼女に圧を掛けるつもりが、逆に威圧される形となり、チャンドラポメロは僅かに自身が委縮するのを感じた。

     だが、ここはターフの上で、今はレース本番。

     自分よりも小さい子に怯えている暇はないと、チャンドラポメロは気を持ち直して3コーナーへと入る前に状況を今一度整理する。

     先頭は依然として8番のエミリアベガルタ。気付けば目算で6バ身も先の先頭を走っている。その彼女を1バ身半離れて追うのがマーテルウンシュ。外にウィーンオペレータ。内にグラマーべラス。


    『これから3コーナーを迎えます』


     先頭集団が3コーナーへと入っていく中、そこから3バ身離れてウオッカ。そのウオッカを内からマークするように半バ身差、プティートモナ。

     そしてチャンドラポメロはその二人を視界内に収める、プティートモナから1バ身後ろに位置したまま3コーナーへと入っていく。

     自身より後ろは、気にしない。というよりも、気に出来ない。

  • 25二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 00:12:36

    >>24


    (仕掛けるべきは……)

    「ふっ!」

    「くっふふ!」

    (皆、ここ!)


     3コーナーから4コーナーの中間地点でウオッカ、プティートモナが仕掛けるかのように脚の回転を速めたのを見て、チャンドラポメロも後に続く。


    「ぐっ、くっ!?」


     加速が徐々に乗るタイプのチャンドラポメロとは違い、前の二人は脚の回転を速めると、すぐに最大速に乗ったのか彼女との差を広げていく。

     お互いに仕掛けた位置は同じでも、ここまで加速度が違うのかと思いつつ、チャンドラポメロは二人の後を追う。


    (強い……けれども!)


     今は引き離されていても、チャンドラポメロの本領は最終直線であり、そのラストスパートでスタミナをフルに使った最高速で最後に二人よりも先にゴールすればいい。

     そして、その思いとは別に、彼女には秘策とも言えるものがあった。


    (私には、『Shadow of the Scarlet』が……ある!)

    『4コーナーを迎えます。そして、外から徐々にウオッカ! 第4コーナーをカーブ!』

    (勝負は、最終直線!)

    『マークするようにプティートモナが差を詰めて、直線コースに向かいました!』


     前の二人が更にチャンドラポメロを引き離す中、差が詰まった先頭集団に続いて最終直線へと入っていく。


    『先頭はエミリアベガルタ! エミリアベガルタですが、外からウオッカ! 楽な交代で先頭に変わって来る!」

    「Shadow of the Scarlet!」


     先頭を走るエミリアベガルタの頭が上がり、いっぱいになったのを尻目にウオッカが外から強襲。彼女が先頭へと躍り出たのを見て、チャンドラポメロは領域からスキルへと落とし込んだ、自身の能力である『Shadow of the Scarlet』を声高に宣言しつつ、更に脚の回転を速めた。

  • 26二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 00:14:39

    ポメちゃんがスキルを発動したよ
    ポメちゃんはこのスレの人たちに勝利を届けて笑顔にしたいんだ
    ポメちゃんにありがとうと言って


    尚、この章のタイトル(目逸らし)
    ほなまた

  • 27二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 08:49:03

    ついに領域が発動したか…!

  • 28二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 08:56:27

    耐えられるカラダが育ったか…?

  • 29二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 18:08:09

    このレスは削除されています

  • 30二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 19:49:44

    このレスは削除されています

  • 31二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 00:07:57

    スイッチ入ったモナちゃん良いな

  • 32二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 00:23:56

    >>25


    『後は追いこんでくるグラマーべラス! プティートモナ! 200Mをこれから通過して!』

    「ふぅううううっ!」


     ウオッカに続いてグラマーべラスとプティートモナが内のエミリアベガルタを抜かし、ラストスパートへと入る中、チャンドラポメロもまた最終の追い込み姿勢へと至る。

     領域をスキルへと変換する際、大事なのはイメージだと女医は彼女に伝えていた。

     領域を意識する事。そして、その領域を手中に収め、支配する事。その為に、宣言が大事だとも言っていた。

     チャンドラポメロ自身は、それまでその手の話でわざわざ声に出す意味がよく分かっていなかった。

     漫画にしろ、小説にしろ、アニメにしろ。これから繰り出す技や魔法の名を相手にも分かる様に言うなど、無意味どころか手の内を晒す行為とすら思っていた。

     その為、あくまでもそれらはメディア上での演出だと彼女は割り切って見ていた。物語の中ではなく、物語の外から見ている第三者の読者や視聴者に分かりやすく伝える為の手段だと、己を納得させていた。

     だが、領域に名を付けてスキルとした際にそれを口にするようチャンドラポメロに伝えた女医は、それは半分だけ当たっていると言った。


    (音が、遠のいていく……! 後は!)


     意識するだけでは、イメージだけでは、あくまでも己の中で完結している。何百、何千と意識とイメージを繰り返して確固たるものが自身の中であるのであれば、わざわざ声に出すのは不要。

     しかしその域は最早、意識やイメージが日常生活と同じ、それこそ呼吸や歩行するのと同じレベルまで練り上げなければ、曖昧模糊として固まり切らない。

     だから宣言する。自身の中で固まったイメージを。そのイメージに付けた名を。己の意識で、己の口で、中から外へと出す事で、固着させる。それがレースや戦い等の自身や場が研ぎ澄まされた時であれば、すぐにでもそのイメージの宣言は外套となって身に纏う。

     それが、無意識化で発動する領域を意識下に落とし込み、己がスキルとする手段の一つだと。

     そして、その女医の言葉に従って宣言した事によってか、チャンドラポメロの耳から周囲の音が遠ざかっていく。

     今や、彼女の耳には実況の声も、周囲の走行音も、風を切る音すら聞こえない。

     チャンドラポメロは領域を、スキルを発動出来た。


    「……ぇ」


     そう思った時であった。

  • 33二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 00:25:36

    >>32


    『ウオッカ! ウオッカ! ウオッカが抜けた! リードは3バ身!』

    「えっ、えっ」


     遠くから実況の声が再び耳に届いたかと思ったら、周囲の走行音や風を切る音。そして自身の荒々しい呼吸音や全身に広がる鼓動の音が聞こえてくる。


    「くっ!? ははははははははっ!」

    『2番手には! 笑っているぞ、プティートモナ! 2番手を確保するか! 内からはサンオブグランツ! 4番手にはグラマーべラス!』

    「えっ、えっ、えっ」


     音は確かに遠ざかった。

     後は、目指すべき"緋色の影"を見出すだけだった。

     先頭を走るウオッカの先にいるであろう憧れに。

     チャンドラポメロの憧れである、ダイワスカーレットの後ろ姿を。


    「あ、れ──」

    『先頭はウオッカ! ウオッカです! ゴールイン!』

    「──ぁ」


     動揺と混乱。

     脚が宙を蹴るような浮遊感。

     ウオッカやプティートモナに迫るどころか、引き離されていく自身の身体。

     そして、先頭を走るウオッカがゴール板を駆け抜ける瞬間。

     チャンドラポメロはその瞳にダイワスカーレットの後ろ姿をようやく見出した。


    「……ぁ」


     ウオッカの内。走りながらも、チャンドラポメロへと顔だけを振り返って見つめてくる彼女の姿。

     その横顔はどこかチャンドラポメロに呆れるような、冷めた視線を内包するものであった。

  • 34二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 00:30:15

    溺れゆく者たち
    彼女は緋色の女王に光を見た
    それは網膜に、脳に影を落とす程の強すぎる閃光だった
    その光に届かない事を心のどこかで理解しつつも、それでもせめて影だけでもと後を追った
    憧れは止まらない
    しかし、己の本来の才能や道を踏み外してでも突き進む先には、その憧れも、影すらもない事を、彼女はまだ知らない

    故に彼女は溺れゆく
    自分自身すらも眩む憧れを追って、どこまでも深く、水底へと沈んでゆく


    ほなまた

  • 35二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 06:24:09

    このレスは削除されています

  • 36二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 08:51:03

    これはちょっと先が心配になってくる

  • 37二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 12:31:25

    【朗報】やっと第二章が終わる(前後編合わせて約7万文字)

    【悲報】第三章の章タイトル全く考えていない


    第四章は「緋色の女王」って決まっているんだけれども…

  • 38二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 15:05:50

    6月の頭も頭に投下され、7月を走り切ろうとするメカクレデカパイモブウマ娘スレ

  • 39二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 17:15:34

    甘味処のDKPI店員さん
    深夜になり学生お断りの時間になると、昼間の姦しい様相から一転して静かにグラスを傾ける店になる
    時にはトレーナーも訪れるとか

    と言う保守

  • 40二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 19:14:12

    このレスは削除されています

  • 41二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 19:33:43

    DKPIが闊歩しまくる世界線なせいか、ドリジャやウオッカの人気が凄そう

  • 42二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 23:55:06

    >>33


    『ウオッカ、快勝! 今年初戦を快勝しまして、二か月先の春本番へまた一歩近づきました! 9番ウオッカです!』


     ウオッカの勝利に興奮してまくし立てる実況の声が、彼女の勝利に湧きたつ観客の声が、まるで別の場所から聞こえてくるかのように感じる中、チャンドラポメロは遅れてゴール板の横を駆け抜ける。

     チャンドラポメロは絶好調だった。

     それは今も間違いないと、クーリングダウンへと移行しながら呆然と彼女自身は思う。

     これまでは、走る前後に胸元がどうしてもキツく感じていた。けれども、新しくブラジャーを新調してからは、練習の時も、今も、キツくも苦しくも感じていない。


    「ぇ……だって、わた、私」


     スキルへと落とし込んだ領域を発動出来なかった訳でもなかった。

     意識した時、確かにチャンドラポメロは音が遠のくのを感じた。ダイワスカーレットを模した影も見た。


    (どう、して……?)


     ならば何故勝てなかったのか、何故あのダイワスカーレットの顔を見る事が出来たのか。

     メイクデビューの時のように、脚を骨折したと痛みで走りを抑えた訳でもない。無意識化の話であるのならば、寧ろ勝つ為に脚の回転を速めたはずだった。

     今のチャンドラポメロには何もかもが分からなかった。

     ダイワスカーレットの好敵手と呼ばれるウオッカに負けた理由も。プティートモナに追い縋れなかった訳も。

     スキル化したはずの自身の領域で勝てなかった事も。その何もかもが。


    (私……わた、し……)


     全身が鉛のように重い。

     一度立ち止まれば二度と歩けないと錯覚する程の鈍重な疲労感の中、チャンドラポメロは茫然自失のまま掲示板を見上げる。

     掲示板に表記される5着以内に、彼女の番号はない。何度見ても、何度確認しても、そこに「7番」の数字はなかった。

     まるで全身が水の中へと沈み、もがいても底へと落ちるような恐怖すら覚える中、チャンドラポメロはクラシック級リステッドオープン、エルフィンステークスを7着で終えるのであった。

  • 43二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 23:59:02

    「Shadow of the Scarlet」──第二章「溺れゆく者たち・後編」・完



    失意とも、怪我明けのブランクとも違う混乱の中、チャンドラポメロは否応なしにクラシック級のスタートを切った
    果たしてこの先に彼女を、溺れゆく者たちを待ち受けるのは一体何なのか?
    鬼が出るか蛇が出るか

    第三章もお楽しみにほなまた

  • 44二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 00:05:43

    憧れだけじゃ届かないか…
    トレセン学園所属の過半数がその絶望だけを味わってレース人生を終えるのを考えると残酷だな

  • 45二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 06:27:42

    >>44

    うむり…

    クリスマスの交流会時にハニーハニーハニーも言っていましたが、中央で1勝出来ただけでもポメちゃんらは上澄み側なのですな…

  • 46二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 13:00:38

    現状のメカクレDKPIズの(大体の)クラス

    チャンドラポメロ → 1勝クラス

    ダブルマシュマロ → あの後しれっと芝短距離2勝クラスを勝利しているので3勝クラス

    カベルネソラリス → OPクラス

    ミスディレクション → ダブルマシュマロに敗北後にキチンと勝利を重ね、2勝クラス

    レッドヘリング → ジュニア期は長距離がないのでまだ2勝クラス

    ネーロディセッピア → お嬢様仕事が多いのもあって1勝クラス

    プティートモナ → OPクラス

    ハニーハニーハニー → セッピアと同じ理由だが、2勝クラス

  • 47二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 20:45:51

    出走の足切りラインはどのぐらいまで上がるだろうか

  • 48二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 21:21:48

    分からない…私は雰囲気で直近のレース結果による優先権とレース抽選(累計のレース結果でまず応募出来るか否かが出る)でウマ娘世界のレース出走関係をSSに反映している…

    ので、阪神ジュベナイルフィリーズにソラリス出す為にOPレース勝たせました(小声)

  • 49二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 21:37:18
  • 50二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 23:16:12

    >>49

    お疲れ様です

    ポメちゃんに勝って欲しくもあり、無限に落下し続けるような絶望感に浸かった顔を見たくもあり


    大抵の者は豊満な双丘とそれが形成する深い谷間に目を惹かれて、彼女の本質たる脚には気が付かない

    そんな夜会姿のミスディレクションで保守

  • 51二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 03:50:52

    このレスは削除されています

  • 52二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 09:32:02

    ネームドは史実通りの出走になるのかな?
    スカーレットがオークス出られなくなったり、ウオッカがダービーの次に宝塚に出たりとか

  • 53二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 10:08:31

    >>52

    はい(はい)

    なのでネームド参加レースは結果が見えている出来レース化して本当に…申し訳ない


    史実のエルフィンステークスにウオッカがしれっと出ているなんて知らんかったんや!

    そしてそのせいで煽りを食うプティートモナちゃん…


    それとは別に第三章タイトルが決まりました

    第三章「憧れは遠く、遥か彼方」です


    ポメちゃんだけじゃなく、ダブルマシュマロやカベルネソラリスも丁寧に心を摘み取る予定です

  • 54二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 18:43:01

    このレスは削除されています

  • 55二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 22:29:38

    このレスは削除されています

  • 56二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 23:56:04

    このレスは削除されています

  • 57二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 00:58:02

    ドレスにあわせて髪を下ろした状態
    実家の都合上、姉のミスディレクションと共にパーティに出席したりするが、派手な姿態に反してそういう場は得意ではない夜会姿のレッドヘリング

  • 58二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 06:21:44

    「Shadow of the Scarlet」──第三章「憧れは遠く、遥か彼方」


    ※※※


     母親をはじめとする家族の華やかな成功も気にせず、貴女は追いかけて来る相手とのライバル関係を続けていく。
     誰かが作った、誰かが思い描くストーリーを歯牙にもかけない。
     ただ全力でターフを駆け、前へ進む。
     自らの意志で、自らの意志で貴女は自身の物語を紡ぎ出す。
     嫉妬も憧れも、恐れも期待も。
     全てをその背に貴女は走る。
     才知を示す群青。
     清廉を表す純白。
     その内に爛々と燃えるは真紅の情熱。
     貴女は決して振り返らない。
     ただひたすらに、前へと進む──その憧れは遠く、遥か彼方。

  • 59二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 06:22:54

    >>58




    ※※


    ※※※



     クラシック級ティアラ路線の三冠の一つ、桜花賞。

     その優先出走権を賭けた前哨戦である、GⅡレース、チューリップ賞。

     憧れのティアラを目指し、希望を持って挑む、選ばれた優シュンウマ娘たちが好走を演じたレースは、ウオッカがダイワスカーレットをクビ差で差し切っての勝利となった。

     トライアルレースとはいえ、以前より期待されていた二人の激闘を前にした者たちは、早くもその期待を翌月のGⅠレースである桜花賞へと膨らませていた。

     そんなチューリップ賞の翌週末。

     チャンドラポメロはチューリップ賞の開催と同じ阪神レース場のターフの上にいた。


    『各ウマ娘、4コーナーを回って直線へ! 先頭を走るダージリンミントはいっぱいになったか! 先頭は変わってブルンバレー! 外からネオトラリーとチャンドラポメロが迫っているぞ!』


     3月初週末。阪神レース場第9レース。

     クラシック級1勝クラスレース、アルメリア賞。

     春を感じさせる風が冬の残り香を乗せてターフを通り抜ける中、天候は曇りで芝は稍重の発表。

     チューリップ賞よりも200M伸びたレースは、2勝クラスの座を賭けた7人立てで行われ、今終盤へと差し掛かる。


    『ブルンバレー粘る! ブルンバレー粘るが! ネオトラリーとチャンドラポメロが襲い掛かる!』

    「はあっ!」

    『チャンドラポメロ! チャンドラポメロがブルンバレーに並ぶ! 交わすか! 交わすか! 残り200!』

  • 60二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 06:24:05

    >>59


     内を走るブルンバレーの背中を見据えつつ、チャンドラポメロは加速をし続ける。

     ジュニア級を怪我によって棒に振り、レース経験こそ未だ積み重ねている途中ではあるが、クラシック級にてその才能が開花。

     持ち前の体格の良さによるスタミナ重点の彼女の能力は、1800Mから2000Mがベストとはトレーナーの弁であった。

     それを証明するかのように、ブルンバレーと並んだ後のチャンドラポメロはチューリップ賞の終点である1600Mを通過してもまだ速度を落とさない。


    『交わした! 交わした! チャンドラポメロ! まだ伸びる! ブルンバレー、追い縋る!』


     レース序盤で抑えていたスタミナを全て出し切っての加速は、そのスタミナが尽きぬ限り伸び続ける。

     少人数でのレースという事もあり、前を走るウマ娘たちによるブロックもなかった為に、チャンドラポメロは先頭に立ったままゴール板まで走り続ける。

     1勝クラスの他のウマ娘では、最早加速の乗った彼女を差せる者など誰一人としていなかった。


    『チャンドラポメロ! 後ろに着差を付けて今、ゴールイン! 2着にはブルンバレー! 3着はネオトラリー!』


     しかし、そんなチャンドラポメロのそのアクアブルーの瞳には、ダイワスカーレットの影も、緋色の影も、映ってはいなかった。

  • 61二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 06:25:59

    昨日は寝落ちしました(自白)
    そんな書く人の幸先が悪い中、第三章スタートです

    恵まれた体格をフル活用したポメちゃんは領域に頼らずとも1勝クラスなら余裕で勝てる

    それだけは伝えたかった…ほなまた

  • 62二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 12:39:07

    >>52

    ネームド絡みだと、ジャーニーやフリオーソも出てくるか気になるな

  • 63二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 14:22:31

    ポメちゃんのツインバレーもブルンボルンしてるんだろうな

  • 64二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 23:07:08

    メカクレDKPIズはジュニアクラスのクリスマスを経て全員ブラジャー新調したから…

  • 65二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 23:21:40

    バニーの日なので

  • 66二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 00:28:54

    >>60


    「……ふーっ」

    「お疲れさまー。いやー強いねー」

    「あっ、お疲れ、様です」

    「あーあ、負けちゃった……でも、次相まみえた時は負けないよ」

    「私も、負けません」


     1勝クラスとはいえ、中央で勝利出来たウマ娘たちの集まりである為か、ゴール後にクーリングダウン中のチャンドラポメロに二人のウマ娘が声を掛ける。

     彼女がそちらへと視線をやると、そこには今のレースの2着であるブルンバレーと3着のネオトラリーが並んで立っている。

     素直に称賛をする金髪流星のブルンバレーと、負けた悔しさを隠さない黒毛流星のネオトラリー。しかし、どちらも良く言えば気さくで、悪く言えば闘志を感じられない。

     いつかのカベルネソラリスのように、向上心や闘争心に加えて好敵手としてのチャンドラポメロを見ない二人に会話に、彼女は話を合わせる。


    「それじゃー。ライブでもよろしくー」

    「はい。よろしくお願いします」

    「じゃあまた……今日は満席になるといいなぁ」

    「ねー。いつかは自分たちのライブでそーゆーのを見てみたいよねー」


     お互いにレース後という事もあり、立ち話もそこそこに二人は立ち去っていく。

     チャンドラポメロから離れつつも交わされる会話は、この後のライブになっており、次のレースや今日の反省などはない。

     ライブが終わるまでがレースという意味では、彼女たちの会話の内容は間違っていない。

     けれども、そんな二人の背中にチャンドラポメロは先のレースのウオッカやプティートモナ、ダイワスカーレットの影にあった強者の雰囲気を感じられなかった。


    「……」

    「──い。おーい!」

    「えっ、あっ。トレーナーさん!」


     それでも、憧れを目指して、上を目指して走る自分の姿勢が間違っているのかと心のどこかで自問するチャンドラポメロの耳に、観客席側から声が聞こえてくる。

     聞き覚えのある声に彼女がそちらへと顔を向けると、チャンドラポメロのトレーナーが観客席の関係者最前列で両手を頭よりも高く上げて振りながらアピールする姿が見られた。

  • 67二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 00:32:14

    ──寝落ち、二日目
    休日とはいえダラダラしていては駄目、絶対

    という事で、本家ウマ娘の漫画版にて多少なりともあった
    中央で1勝している子たちと未勝利の子たちでは雰囲気がまるで違うという描写の内の1勝側の緩い雰囲気を出しつつも、その雰囲気は自分には合わないと思ってしまうポメちゃんでした

    憧れとはそれすなわち、そこへと進む向上心

    短いですが、今日はこれにてほなまたします

  • 68二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 07:48:36

    好きなだけ好きにしてくれスレだから好きなだけ好きにSS書いているけど、「これ大丈夫? ただの1人のSS書きによるSSスレになってない???」って若干ゃ思っている…

  • 69二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 15:03:01

    好き勝手にAIイラスト作ってるやつもいるから、へーきへーき

  • 70◆8YBpUCUZW625/08/03(日) 15:14:20

    そうそう
    元スレ主も好きにしてるし

  • 71二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 19:32:15

    このレスは削除されています

  • 72二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 22:03:46

    このレスは削除されています

  • 73二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 00:06:51

    >>66


    「よく頑張った。流石だよポメロ」

    「ありがとうございます」


     チャンドラポメロがそちらへと小走りで向かうと、彼女のトレーナーは満面の笑みで今日の結果を褒める。

     直前に競った相手たちに褒められるよりも、不思議と彼に褒められた事が嬉しく、チャンドラポメロは深々と頭を下げた。

     その様子を見て、微笑ましいという感じの表情をしていた彼だったが、すぐにそれは真剣なものへと変わる。


    「……本当は、一か月後の桜花賞で君を走らせてあげれれば良かったのだけれども」

    「トレーナーさん……」

    「先のリステッドオープンで1着と言わずとも、3着以内に君が入着出来るようなトレーニングを組めていれば……」


     勝負の世界に「もしも」という言葉は禁句とされている。

     だが同時に、多くの者たちがその「もしも」の誘惑に駆られる瞬間がある。

     チャンドラポメロのトレーナーにとっては、彼女を桜花賞の舞台に立たせたいという願いがあり、それを果たせなかった事を「もしも」として後悔している様子だった。

     確かに彼の言う通り、もしもチャンドラポメロが先のリステッドオープンに勝利していれば、出走権を得られるチューリップ賞とまではいかないものの、優先権は得られただろう。

     桜花賞まで一月を切り、出走の抽選締め切りも近い中、ようやくの2勝クラス昇格となった彼女には出走抽選応募の資格もない。

     そして、その桜花賞にはチャンドラポメロの憧れであるダイワスカーレットも当然出走してくる。それを思えば、彼女のトレーナーが言うように、チャンドラポメロもまたその「もしも」の誘惑に駆られてしまう。

  • 74二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 00:09:15

    >>73


    「……いいえ」

    「ポメロ?」

    「エルフィンステークスへの出走は他でもない私と、トレーナーさんで決めた事です。そして、そのレースの敗北は他でもない私自身の未熟さ故のものでした。トレーナーさんが後悔される事は、ないです」

    「ポメロ……うん、そうだね。あの後の反省会での結論の通り、先のレースはお互いが力及ばず、だったね。ごめんごめん。今日の見事な走りを見たら、ちょっと、いや、かなり夢を見ちゃってさ」

    「ふふっ。そのお気持ちは、嬉しいです」

    「……うん。やっぱり君には笑顔が似合う」

    「えっ」

    「だからかな。僕は君がもっと勝つ姿を、見たいと思ってしまう。だから、『もしも』の誘惑に駆られるのだろうね」

    「トレーナー……さん」


     恥ずかしそうに俯くのは一瞬だけで、その後は真っ直ぐにチャンドラポメロを見つめて心内を吐露するトレーナー。

     そんな彼の姿に、チャンドラポメロもまた、自分が勝って喜ぶトレーナーの姿をもっと見たいと似たような事を思うのだった。


    「……あ、そ、そうだ。この後、ライブだろう? ここで時間を使わせちゃいけないね」

    「えっ、あっ、そ、そうですね。失礼します」


     二人の間に何とも言えない沈黙が流れた後、不意に思い出したかのようにトレーナーがバツの悪そうな顔をした。

     そして、そんな彼に促される形で、チャンドラポメロも気恥ずかしさを隠すように軽く一礼した後、地下バ道へと走っていくのであった。

  • 75二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 00:14:35

    そこはかとなく、トレウマを差し込みつつ第三章の開幕は好調スタート
    しかしながら、出走権の問題でティアラ路線の第一歩である桜花賞には出走できないチャンドラポメロ
    オークスは距離適性の問題(ポメロは2200Mまで)で見送り確定となる為、目指すは秋華賞となるが果たして…?

    ほなまた

  • 76二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 09:40:13

    >>75

    これはNHKマイル参戦もあるかな?

  • 77二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 10:09:27

    >>76

    ヒント:悲しいけどポメちゃんモブウマ娘

    ヒント2:書いている奴が困難に立ち向かわせたいこれ↓

  • 78◆8YBpUCUZW625/08/04(月) 17:21:29

    むにぃ

  • 79二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 17:21:46

    しばらくは臥薪嘗胆ですねぇ

  • 80二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 17:40:24

    >>78

    もっちもっちしたい

  • 81二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 21:13:39

    このレスは削除されています

  • 82二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 23:59:47

    どの子にも膝枕してもらいたい
    きっと顔面に温かく柔らかい重量感のあるものが載せられてマッサージ効果がすごくすごいに違いない

  • 83二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 00:36:09

    >>74


    (……)


     地下バ道近くの観客席から声を掛けてくれる観客たちに軽く礼をしながら入り、少し進んだ後でチャンドラポメロは立ち止まる。

     それから目を閉じ、先程のレースとトレーナーの言葉を思い出す。

     今日のレースでは緋色の影も、ダイワスカーレットの影も見いだせなかった。それ以前に、領域に至る事も、それをスキルとして使用する事もなかった。

     そのいずれかがなくとも勝てるレースであったと思えばその通りであったが、逆に言えばチャンドラポメロは領域に足を踏み込んではいるものの、それを自在に操る事が出来ないとも言えた。

     エルフィンステークスではその領域が安定しなかったから、己自身の走りをするしかなく、そしてそれではウオッカやプティートモナに勝てなかった。


    「もっと、もっと……トレーニングを、しないと。ダイワスカーレットさんを追いかけ、並び、追い抜く為に」


     そして、声には出さなかったものの、チャンドラポメロはダイワスカーレットの次にトレーナーの顔を思い浮かべる。

     自分の走りが好きだと、ひたむきに勝利を目指して走る姿に惹かれたと、そう言ってくれた彼女のトレーナー。

     専属トレーナーは、専属契約をしたウマ娘と一蓮托生の運命共同体となる。無論、契約は契約なので、双方の意志に反したり、方針が行き違ったりすれば解除する事が出来る。

     それでも、専属のトレーナーがいるウマ娘とそうでないウマ娘とでは明確な差が生まれる場合がある。

     故にウマ娘もトレーナーも、専属契約という事自体には旨味があると言える話。

     しかし、専属契約をする事により、その契約ウマ娘の戦績が芳しくなければ……その専属契約をチーム契約に変える等しなければ、トレーナー側の利がどんどん薄くなってしまう。

  • 84二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 00:37:44

    >>83


    「私自身の、憧れの為に。私の勝つ姿を、見たいと言ってくれたあの人の為に」


     けれども、チャンドラポメロが怪我をしてジュニア級を棒に振っても、彼は契約を解除するどころかチーム契約にすら変更しなかった。

     それどころか、怪我をした彼女自身の事を常に気遣い、色々と考え、話をしてくれた。

     だからこそ、チャンドラポメロはもっと先へと進む事を望んだ。

     桜花賞は間に合わない。そもそも、2勝クラスではGⅠレースどころか、重賞レースの出走条件を満たす事すら怪しい。

     ならば、勝ち続けるしかない。

     その先に、憧れたダイワスカーレットの背中があるのならば。自身の担当トレーナーの笑顔があるのならば。


    「……よし!」


     自分の走りで敵わないのなら、それこそスキルでも領域でも何でも使う。

     そう覚悟を決めたチャンドラポメロは、気合を入れる為に両頬を手で一度叩いた後、まずはこのレースのライブを無事に終わらせる為に地下バ道を突き進むのだった。




    ◇◇


    ◇◇◇

  • 85二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 00:39:07

    >>84


     チャンドラポメロがアルメリア賞で勝利を収めた翌週。

     3月二週目末の中京レース場第11レース。クラシック級重賞レース、GⅢファルコンステークス。

     中京レース場におけるその日のメインレースであるその重量レースのターフの上に、そのウマ娘、ダブルマシュマロは立っていた。

     パドック紹介が終わり、彼女の人気は六番人気。

     前走で芝の短距離を勝利しているとはいえ、それは2勝クラス。

     加えて、更にそれ以前はダートを走っていた為に、3戦3勝という輝かしい戦績に反して芝の経験が薄いのではという事が人気の足を引っ張る形となった。


    (六番人気、ね。まあ、変に警戒されてマークされるよりは楽ってもんスよ。今回は初のフルゲートなのもあるスからね)


     出走ゲートの裏手に集まり、係員から呼ばれるのを待ちながらも、ダブルマシュマロは落ち着いていた。

     初めての重賞レース。観客もそれまで走ってきたレースとは違い、ほぼ満席。夕方に差し掛かった曇り空にあって、その熱気はターフの上にいる彼女にまで届いていた。


    (っし! 気合十分ス。ここで勝って、勢いを付けるスよ~)

    「6番、ダブルマシュマロ」

    「はいっス!」


     そして、出走前最後の軽いストレッチをしながら気合を入れ直したところで係員に呼ばれたダブルマシュマロは、元気よく返事をして指定の番号のゲートへと収まるのであった。

  • 86二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 00:40:18

    ポメちゃんが危うい覚悟を決めたところで、一度ターンをダブルマシュマロへ
    メカクレDKPIズの中ではカベルネソラリスに続いての重賞挑戦
    果たしてダブルマシュマロは勝つ事が出来るのか?

    ほなまた

  • 87二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 01:05:45

    いつも読むの楽しみにしてる
    レースがどうなるか、こっちも緊張するね

  • 88二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 06:15:27

    >>87

    あざますあざます…その一言でがんばれますわ

  • 89二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 08:39:10

    ネームドが勝ったレースじゃないから、ワンチャン勝てるかもしれないのか

  • 90二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 15:40:31

    このレスは削除されています

  • 91二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 21:13:29

    >>89

    誰が何にでてたか気になるな

  • 92二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 21:30:17

    ゆぅだっち

  • 93二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 21:33:52

    張れてなかった

  • 94二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 00:12:36

    >>85


    「ふー……」


     ゲート入りに呼ばれたのが早かった為、ダブルマシュマロはゲートの中で一息吐く余裕があった。

     調子は絶好調。クリスマスの交流会で思わぬトラブルからプレゼントとして受け取ったブラジャーの効果か、それとも単に自身の才能が開花したかは分からない。

     だが少なくとも、これまで窮屈だった胸回りがブラジャーの一新によって快適になったのもまた確かだった。

     あまりにも付け心地が良かった為に、ダブルマシュマロは両親にその事を伝え、予備も含めたランジェリー一式を10日分購入してもらったのも記憶に新しい。


    (うん。今日も、悪くないス。無理やり見た明細の値段を思い出すとまだ萎縮しちゃうスけど、その分頑張ればいいだけっス)

    『そして最後の子がゲートに収まって、全ウマ娘態勢完了。係員が離れます』

    (おっと。集中、集中っス)


     レース本番の直前だというのに、ダブルマシュマロは他所事すら考えられる余裕を持っている自身に少し驚く。

     ここまで3戦3勝とはいえ、油断や慢心しているつもりはない。

     遠くから聞こえる実況の声を耳にしながらも、目の前の、今はまだ閉じているゲートに意識を集中する。


    「……ふっ!」

    『スタートしました! 少しバラつきました。13番ビーバック飛び出していきます。その内から12番バルーンフェスタ、並んで交わしていきました』

    「むぅっ」 


     ゲートが開くと同時にダブルマシュマロは勢いよく飛び出すも、スタートダッシュを決めたとは言えなかった。

     出遅れはしなかったものの、自分よりも好ダッシュを決めた者たちが前を陣取る。そんな先を行く2人のウマ娘が先頭争いをしている位置から2バ身離れた先頭集団に食らいつく形で3枠6番のダブルマシュマロの重賞初挑戦のレースが始まった。

  • 95二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 00:15:39

    元ネタとなりそうな年のレースを探し、書こうとしている展開、書きたい心理描写や弱点に合致するかどうかを調べていたらこんな時間じゃ…
    短いですが、レーススタートという事で今日はほなまたします

    ダイワスカーレット世代だから2007年のファルコンステークスを参考にしているという訳ではないので、何時の年のレースなのかは(多分恐らくきっとmaybe)読まれないでしょう!

  • 96二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 00:19:40

    気が付いたら下調べで時間が解けてるのあるある
    それが楽しいのだけれどもw

  • 97二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 00:19:42

    ※尚、このレースにマーシュのライバルであるミスディレクションは出走していませんが、観戦しに来てはいます

  • 98二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 06:51:19

    >>96

    それはそう

    本当にそう


    何なら調べて情報まとめて満足して寝落ちするまであるわよ

  • 99二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 12:42:16

    ミスディレクションとレッドヘリングはガチお嬢様という事で中京レース場のVIPルーム調べてみたら(倍率はともかく)ラウンジルームでも1万円は意外と安いと思ってしまった

  • 100二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 20:28:32

    >ラウンジルームでも1万円

    安い…気はする

  • 101二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 00:07:07

    >>94


    『スッと10番ファルシオンは先行3番手です、今日は。そして4番アオゾラパワーはこれを内から交わしました。その後3番エッグレイム。並んで6番ダブルマシュマロ』

    (よし! 先行良い位置!)


     逃げのバルーンフェスタが更に先頭集団から離れていく中、ダブルマシュマロは内枠ゲートから出た事もあり、バ群を引き連れる形の位置取りとなる。

     前とは付かず離れず。後ろは迫ってきても彼女が蓋となる為に追い越せず、内内と外から並ぶように追い上げる他のウマ娘たちと速度を合わせるだけで変に策を弄する必要がない。

     後は機を見て前へと抜け出せば、良いと言う分かりやすい走りとなった。


    (あぁ。やっぱりちょっと、落ち着くスね)


     周囲に他のウマ娘がいて、且つ終盤までは考えて走る必要がない位置を陣取った為か、速度こそ合わせつつもダブルマシュマロは一息つく。

     幼い頃は縦長で赤い瞳孔が怖いと言われ、初等部から背は伸びずに胸だけが急に大きくなった彼女にとって、周囲にウマ娘たちがいる事が何よりの安心だった。

     ウマ娘が複数人いれば、少なくとも視線が自身に集中する事はない。実家が接客業だった事もあり、同性異性問わず、好奇な目で見られてきたダブルマシュマロにとって、他者からの視線に苦手意識を抱いていた。

     だからこそ、自分の走りが認められ、日本ウマ娘トレーニングセンター学園へ入学出来た時、彼女は嬉しかった。

     ウマ娘だからじゃなく、胸が大きいからじゃなく、自身の走りが、才能が認められたのだと。

     そして同時に、トレセン学園はほぼウマ娘しかいない。周囲の好奇の目は分散され、場合によっては彼女自身がその好奇の目となる。

     実際、ダブルマシュマロがチャンドラポメロを一目見た時は驚く他なかった。本人は陰こそ薄くあろうとしているものの、その背の高さと胸の大きさまでは誤魔化せない。

     彼女よりも胸の大きなウマ娘は両手に収まらない程にいたものの、チャンドラポメロはダブルマシュマロが見てきた中でも群を抜いていた。

     そんな子が自分の同期で、同じクラスで、隣の席だというものだから、ダブルマシュマロとしては話しかける以外の選択肢はなかった。

  • 102二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 00:08:13

    >>101


     お近づきになれれば、好奇の目はチャンドラポメロに向くのではないかという打算は正直あった。けれども、それ以上にチャンドラポメロという同級生が好ましく思える良い子であり、良い意味でダブルマシュマロというウマ娘とは違う事は、彼女にとっては嬉しい誤算であった。

     おかげで打算抜きにチャンドラポメロと親友の間柄になれたのは、ダブルマシュマロとって得難いものとなった。


    『600を切りました!』

    (っと、いけない、いけない。集中っスよ~)

     

     残り600Mを示す表示が視界の端に移り、ダブルマシュマロは徐々に走る速度を上げていく。

     幸いな事に、位置取り良く、且つ一息つけたのもあり、彼女の脚は十二分に溜める事が出来た。おまけに、ここまで連戦連勝。負ける気がしなかった。


    『第4コーナーカーブ。これから直線コースに入ります』

    「ふぅううっ!」


     コーナーの終わりからバ群及び先頭を抜かして1着となる為に、ダブルマシュマロは芝を強く踏み、蹴り上げ、前へと向かう。

     クラシック級重賞レース、GⅢファルコンステークスの距離は1400M。レース規定としては短距離に該当するが、メジャーなスプリント戦の距離を考えると最もマイルに近い短距離である。

     電撃6ハロンと呼ばれる1200Mから1ハロン長い1400Mは、ダブルマシュマロにとっても適性ギリギリの距離であり、それこそ初動と道中を上手く立ち回って初めて土俵に立つような気分であった。


    『内僅かにアオゾラパワー、先頭か! 直線に入りました!』

    「~っスぅううう!」

    『外並んでビーバック! この2人の追い比べ、坂を上がっていきます!』


     しかし、その初動と道中の立ち回りが完璧に事を運び、且つ余力を持っての溜めた脚の解放。

     加えて終始先頭集団の好位置につけていた事もあって、アオゾラパワーとビーバックの追い比べを見て、外へとレーン移動出来る余裕すらあった。

  • 103二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 00:12:38

    >>102

    『その外から6番ダブルマシュマロ! 擦れて、10番ファルシオンがその内から追い上げてきた! さあ抜けた!』

    「うぉおおおおぉぉっ!」

    『200を切って6番ダブルマシュマロ先頭! 食い下がるファルシオン! 最内からは、8番レッドラインが3番手に上がるか!?』

    (っし! 振り切れたっス!)


     遠くから実況の声や観客の歓声が聞こえる中、ダブルマシュマロの脚は伸びに伸びた。

     残した余力を使い、内で粘るファルシオンに競り勝ち、バ身を離す。

     後はゴール板の前へと滑り込むだけとなった。


    (これに勝って! 次は、ダート重賞!)


     そのゴール板直前で、ダブルマシュマロは勝ちを確信し、夢想する。

     ゴール後に、いつものようにはしゃぐ彼女のトレーナー。重賞故に満員に近い観客からの万雷の拍手と喝采。

     その賛辞や視線に好奇はなく、ただダブルマシュマロの走りを、勝利を祝うものだと。


    『先頭6番! ダブルマシュマロ、ゴールイン!』


     そして、夢想した彼女自身も口元が緩むのを自覚するままに、2着10番ファルシオンに1バ身半の差をつけて、ダブルマシュマロは晴れて重賞ウマ娘となるのだった。




    △△


    △△△



     そんなダブルマシュマロが1着でゴールインする姿を、中京レース場のラウンジルームで見届けた鹿毛のウマ娘がいた。

     彼女やチャンドラポメロの同期で、同じクラス。そして、他でもないダブルマシュマロとレース適性が被っているが故に友達で好敵手という関係のウマ娘。ミスディレクションであった。

  • 104二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 00:14:30

    ダブルマシュマロ、メカクレDKPIズの重賞ウマ娘一番乗りぃ!
    そしてそんな彼女を観戦している好敵手ミスディレクションの内心や思惑や如何に!?
    そんなところでほなまたですわー

  • 105二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 00:48:26

    なんとなくマーシュが慢心しとるなぁ
    でもレースへのモチベが「好奇心以外の目で見られたい」と言うのは上手いキャラ付けだ

  • 106二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 01:02:58

    ダートの短距離重賞というと、プロキオンステークス(現東海ステークス)か盛岡のクラスターカップあたりになるかな

  • 107二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 07:23:55

    >>105

    流石に露骨な書き方をすれば慢心しつつあると分かりますわね

    そしてマーシュの本質も見抜いているとはお見事でござる

    チビでDKPIとか私だってガン見するわよ


    ポメちゃんは陰に隠れようとして好奇の目から逃れ、

    マーシュはDKPI以外の事(レースやお喋り)で目を逸らさせようとし、

    ソラリスは実力行使(言葉攻めor手を出す)で黙らせる



    >>106

    情報感謝

    DKPI感謝

  • 108二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 07:46:03

    我々やあるいは一部の同性がDKPIと褒め称えるがそれは本人にとって本当に称賛であるのか
    という乳の本質を問う哲学的SS

  • 109二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 08:08:31

    急に高度な問答が始まりましたな…修験道かな?

  • 110二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 08:48:07

    いきなり禅問答になって乳生える

  • 111二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 10:06:41

    乳を生やすな
    でも乳は盛れ
    まだ中等部だから高等部に上がる頃には全員エグい乳成長してそう

  • 112二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 18:10:05

    >>111

    ダスカも「また服がキツくなってる」って台詞があるしな

  • 113二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 00:43:23

    仮眠のつもりで横になったらガッツリこんな時間になってかなC…
    今回の文は明日の朝にでも投稿しますわー
    暑さが続くので皆さんも体調注意ですわー


    …ポメちゃんらのメカクレDKPIズは暑い時の胸の谷間とか下とかの汗疹対策大変そう

  • 114二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 02:52:55

    このレスは削除されています

  • 115二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 07:21:58

    寮では、目視できないDKPI軒下部分を互いに拭きあってるとか…

  • 116二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 08:13:15

    >>103


    「最終直線で外へとレーン移動して尚、加速し続けるかー。こりゃ強いねー」

    「うん。強い……」

    「あっはっはー。席取って観に来た甲斐があったよー」


     その隣には彼女の双子の妹であるレッドヘリングがお腹の前で両手握り拳を作り、同じく観戦している。

     真剣な表情でゴール後のダブルマシュマロの姿を追うレッドヘリングに対し、ミスディレクションは3階のフードコートで購入したドリンク片手に口角が上がっているのを自覚する。


    「おねいちゃん、何だか嬉しそう、だね?」

    「あ、やっぱり分かっちゃう? いやー、友達で好敵手がここまで強いと笑うしかないよねー」


     横からの視線と共にレッドヘリングから疑問を投げかけられた彼女は、おどけながら肩を竦めて見せ、ドリンクのストローを口に咥えて残りを一気に飲み干す。

     そんなミスディレクションの答えに納得がいかなかったのか、レッドヘリングは眉根を顰めてその様子を眺めていた。

     双子の妹ながら、凄むと相変わらず怖い顔になるなぁ、と内心で思いながらも、ミスディレクションは上がった口角を戻して口を開く。


    「でも、うん。勝てない相手じゃない」

    「次に相対した時は、勝てる?」

    「いやいやー、それは分からないよ、ヘーちゃん」

    「えっ、でも……」

    「マーシュちゃんはこれで連戦連勝。GⅠ級のウマ娘がメイクデビューから重賞GⅠまで負けなし、なんて話はそこそこある話だし、何よりも今、彼女には勢いがある。あれを打ち取るにはちょっとねー」


     今日の観戦で、決して手が届かない相手ではないというのは確認出来た。

     しかし、だからといってそんな相手に容易に勝てるとは思えないし、思ってもいない。

     ミスディレクションは口調とは裏腹に、頭の中でダブルマシュマロの走りや癖、特徴を分析し、整理する。

     レース場の天候やバ場の状態。レース展開次第では、と思う一方で、当日の相手の調子が悪い事を加味させるのは流石に希望的観測と思いつつも一応計算に組み込んでいく。


    「うーん、そう、かな?」

  • 117二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 08:15:39

    >>116


     ゴール後に観客席へと向かって大輪の花を咲かせるような笑顔を見せるダブルマシュマロと、そんな彼女に関係者観客席から勢いよく飛び出して突撃していくトレーナーらしき人物。

     そんな二人を見据えながら思考を練っていると、レッドヘリングが珍しくミスディレクションの言葉に肯定しなかった。

     双子とはいえ、自分と妹は性格やレース適性が違う。そうなると、当然見えてくるものも違うはずだと、ミスディレクションは再び口角を上げた。


    「おっ、なになに? おねいちゃんが分からなかったところにヘーちゃん気付いちゃった?」

    「うぅ……茶化さないでよ、おねいちゃん」

    「あっはっはー。でも、聞きたいのはホントだよ。じゃなきゃわざわざ好敵手の走りを見に来ないし」

    「うーん。期待、しないでね?」


     姉の言葉に、レッドヘリングは少し視線を泳がせた後、身体を丸めて申し訳なさそうに上目遣いをする。

     自分よりも背が高いのに、無意識にそういう事をする妹が何度見ても可愛いと思いつつ、ミスディレクションは彼女の言葉を頷きで促した。


    「ゴールする直前……いや、10番の子に競り勝った後、かな? ダブルマシュマロさん、ちょっとソラっていたっていうか……」

    「へえ」

    「あっ、いやっ、それはそのっ、私の見間違いかも、知れないし。勝ちを確信した時にソラを使うのはよくある事だから、参考にならないかも、だし」


     言葉を選ぶようにたどたどしく思った事を話すレッドヘリングの言葉に、同じところを見ていたと思ってミスディレクションは思わず声を低くする。

     その声色に姉が怒ったと思ったのか、レッドヘリングは急に早口になって小刻みに震え出す。

     見た目は完全に肉食動物のそれなのに、根っこの部分は草食動物というか、愛玩動物に近い性格の妹の姿に、ミスディレクションは噴き出すのを堪えた。


    「わ、笑わないでよ、おねいちゃん!」

    「ごめんごめんー。けれども、うん。参考になった。ありがとね、ヘーちゃん」


     しかし、妹にはその自身の顔色や態度が伝わったのか、頬を膨らませて抗議するレッドヘリングに対し、ミスディレクションは笑いながらも感謝の言葉を伝えるのだった。

  • 118二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 08:17:26

    Q.このやり取り、ポメちゃんに繋がりますか?
    A.はい! 繋がりますよ!(ニコニコ)

    ポメちゃんの次の対戦相手はレッドヘリング、君に決めた!
    という事で寝落ちからの早朝書きしたのを投下してほなまたですわ

  • 119二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 08:32:43

    本スレの1ですが数日不在になるので管理ができなくなりますよろしくお願いします

  • 120二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 08:40:06

    >>119

    お疲れ様です


    じゃあ…それまでにこのスレ完走できるぐらいのSS書けるよう頑張るかな

  • 121二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 16:58:19

    >>119

    お疲れ様です

  • 122◆8YBpUCUZW625/08/08(金) 20:32:53

    >>119

    お疲れ様でございます

    ご無理のなさらぬよう体にはお気をつけくださいませ

  • 123二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 20:33:50

    DKPIは優しいし、DKPI好きも優しいと分かるスレ

  • 124二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 00:40:08

    このレスは削除されています

  • 125二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 07:28:34

    >>117


    「うん。なら、良かった」

    「今日もわざわざ付き合ってくれて、本当にありがとね」

    「えへへ。おねいちゃんと一緒なら楽しい休日になるし」

    「そーいえば、話は変わるけど、ヘーちゃんの方はどう? アタシと同じく苦戦しているみたいだけれども」

    「ふぁっ!?」


     ミスディレクションに感謝され、嬉しそうに身体を揺らすレッドヘリングだったが、その姉から急に自身の話を振られて目を丸くする。

     レッドヘリングとミスディレクションのレース適性……バ場も距離も一切の被りがない。しかしながら二人のトレーナーは同じであり、学園でのクラス、寮の部屋こそ違えどトレーナー室に行けば顔を合わせる機会の方が多い。

     その為、トレーナーとの打ち合わせによって、レッドヘリングもまた自分と同じように苦戦している事はミスディレクションも知っていた。

     ミスディレクションが超えるべき壁としてダブルマシュマロを見据えているように、彼女もまた超えるべき壁がある。

     そんなレッドヘリングの事を誰よりもよく知っているからこそ、その妹の口から今の状況を聞きたかった。


    「う、うーん。やっぱり、今はモナちゃん、かな? ジュニア及びクラシックの長距離レースは菊花賞までないし、OPレース以上の中距離はモナちゃん、ほぼ必ず顔を出しているんだよね」

    「なるほどねー。やっぱりそれって、言葉は悪いけどレース狂だからって事なのかな?」

    「それも、あると思うけれど……」


     レッドヘリングの言葉に、やっぱりと思いつつも、ミスディレクションはそれを内に隠して話を促す。

     自身の言葉を紡ぐ事に一所懸命な彼女はその機微までは気付けず、けれども姉の言葉には少し目を伏せて返す言葉に詰まる。


    「? 何か別の理由が?」

    「あっ、いやっ、うーん。これは流石に、モナちゃんに踏み込み過ぎだし、言わないでおく」

    「ふぅん。まー、あの子も色々事情がありそうだしねー」

    「うん。その、とにかく、レース間隔が短くて、それでいて勝てなくとも掲示板入りはしてくる子だから、小さいのに凄いなぁって、私も頑張らなくちゃって」

    「ふふっ。ヘーちゃん、小さいものや可愛いもの好きだもんね」

    「もっ、もーっ! おねいちゃん!」

    「あっはっはー! ごめん、ごめんー!」

  • 126二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 07:29:39

    >>125


     茶化すつもりはなかったが、ミスディレクションはレッドヘリングが幼い頃からぬいぐるみなどを集めている事を思い出し、つい口にしてしまう。

     それを聞いた彼女は赤面した後、両頬を膨らませて姉に迫る。頬を膨らませていなければ、或いは頬を膨らませてもその眼光の鋭さや高身長故の接近圧に屈する者がいるだろう。

     けれども、愛しい妹とのじゃれ合いを前に、ミスディレクションはそれらに屈する事なく軽く謝罪する。


    「ふーっ……ん、まあ、そんな訳で、モナちゃんからは勝ちを拾いたいんだけれども、良い作戦が思いつかなくて」


     そしてレッドヘリングもまた、姉がいつもこんな調子である事を知ってか、深く追求する事なく、話を戻す。

     彼女は再びレース場へと視線を向け、どこか困っているような、停滞を感じさせる表情を見せる。


    (ああ。そっかー……ヘーちゃんも、溺れているんだね)


     そんなレッドヘリングの横顔を見て、ミスディレクションは実情を知っているはずなのに、改めて妹の現実を直視する。

     お互いの状況やレースはトレーナーが同じであるが故に否応なく分かる。それこそ、レース適性が被っていないからこそ彼に頼めば簡単に互いの実情を知る事が出来る。

     しかし、レッドヘリングがOPクラスに勝ちあがれていない事を知ってはいたものの、ミスディレクションはその妹の本音や思いまでは知れなかった。

     いくら妹とはいえ、越えてはいけない線は容易に踏み込んではいけない。それに、ミスディレクション自身も彼女と同じく3勝クラスから上へと勝ち上がれていない。

     互いに勝ち切れず、溺れ、藻掻いているからこそ、互いにその部分には触れられなかった。それは、トレーナー室で自分たちの筋肉と走りに惚れ込んでいるトレーナーとの打ち合わせの際に、互いの事に口を挟めない程だった。


    「うーん。だったらそうだねー」

    「おねいちゃん?」

  • 127二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 07:30:42

    >>126


     けれども今、こうしてミスディレクションの横に妹のレッドヘリングが立ち、本音を語ってくれた。

     先にダブルマシュマロに勝ちたいと本音を漏らしたから、というのもあったかも知れないが、妹の言葉が聞けてミスディレクションは嬉しかった。

     中央トレセン学園は魔境。天才たちが各地から集い、天才同士で戦い、上へと駆け上がった天才がまた別の天才と戦う蟲毒ともいえる過酷な場。

     例えメイクデビューの1勝だけであっても、それは得難いものであり、事実多くの天才たちが才能や運や怪我病気に泣いてそれすらも拾えずに去っていく。

     そんな中で3勝している時点で自分たちは上澄み側。それを理解して尚、レースという大海に挑み、泳ぎ、溺れていても、前に進む。

     自分がそうであるように、妹もまた、そうである事にミスディレクションは一人で抱えていた重みが落ちたような爽やかな気分だった。


    「やっぱりここは、我らがトレーナーの知恵を借りるしかないでしょー」

    「え、えぇ……その、確かにトレーナーさんは凄いけど、えっと、あの人、私たち以上に頭筋肉に支配されているっていうか……」

    「あっはっはー! ヘーちゃん、辛辣すぎー!」


     ならば、ミスディレクションがここから取れる策はただ一つ。

     3勝クラスまでは己の力でも勝てた。それはきっと、専属トレーナーが見つからず、十人から二十人近くのあぶれたウマ娘たちの面倒を見るチームトレーナーたちの元であっても、拝めた景色。

     しかし、そこから先に手が伸びないのであれば、その専属トレーナーとウマ娘との間で生まれる信頼という名の奇跡によって溺れ沈む自身の身体を再び大海で泳がせる。

     レッドヘリングは訝しみ、言っている事もまた正しいけれども、ミスディレクションには確信があった。


    「けれどもまあ、あの人は信頼出来るよん。というか、少なくとも信用しないとお互いにこの先進めないだろうし」

    「うっ、それは、まあ、そうなんだけれども……」

    「ふっふっふー。ヘーちゃんはまだちゃんと調べていないかもだけど、あの人、凄いよー。っていうか、ヤバいよー」

    「ヤバいのはまあ、初めて会った時からそうだったし……ぁ、通知音」

    「あっはっはー!」

  • 128二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 07:35:36

    >>127


    「あ、パパからだ。おねいちゃん、今日の帰りはプライベートジェットで帰れるって」

    「え? マジ? やったー! これでギリギリまで愛知グルメ楽しめるじゃーん。ヘーちゃん、何食べたい?」

    「えっ、えっ、きゅ、急に言われても……味噌カツ?」

    「いいねー。きしめんも食べたいし、ご当地グルメだと味噌煮込みうどんもあったねー」

    「あっ、おねいちゃん、豊明市のお米を使った味噌カツ丼ってのもあるよ」

    「うぅん。話しているだけでもお腹が空いてきた。ヘーちゃん、パパに場所と時間だけ指定して、グルメツアーに行こうかー」

    「うん」


     気持ちもお腹も軽くなるのを感じる中、思わぬ帰りの便を手配できたミスディレクションはレース場を一望出来るベランダからラウンジルームの中へと戻る。

     その後ろに妹が幼少期の頃から変わらずついてくる気配を感じつつも、中京レース場を後にする支度を始める。

     全ては次のレースに勝つ為に。次の次のレースを勝つ為に。




    ※※


    ※※※



     季節は巡り、春。

     チャンドラポメロたちは進級し、また新たな気持ちでクラシック級へと挑む季節。

     その4月の第二週末。阪神レース場で行われるGⅠレースがあった。

     クラシック級のティアラ路線を選んだ優シュンウマ娘たちが挑む、憧れと夢への第一歩。

     そのレースの名は、桜花賞と言った。

  • 129二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 07:37:54

    昨夜もガッツリ寝落ちし、早朝グッスヤだった事を書きこまずに
    いきなり大量の文章をスレに投げ込んで他のスレ民たちを怖がらせましょう!🦈(例のサメミーム感)

    という事で、再び視点はポメちゃんへ
    彼女が憧れ、夢見た舞台。そこに彼女自身は立てず、されど憧れはその舞台に立つ。
    そのレースを見て、彼女は何を思うのか……

    ほなまた

  • 130二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 12:30:04

    いよいよクラシックシーズンが始まるところですね
    参考になるかわからないけど、3月までのネームド同期のオープン以上成績を貼っておきますね

    スカーレット
    中京ジュニアS1着、シンザン記念2着、チューリップ賞2着
    ウオッカ
    阪神JF1着、エルフィンS1着、チューリップ賞1着
    マーチャン
    小倉ジュニアS1着、ファンタジーS1着、阪神JF2着、フィリーズレビュー1着
    ジャーニー
    芙蓉S1着、東スポ杯ジュニアS3着、朝日杯FS1着、弥生賞3着
    フリオーソ
    全日本ジュニア優駿1着、共同通信杯7着、スプリングS11着

  • 131二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 12:41:13

    >>130

    フリオーソの芝戦績貼るのはやめたげてよぉ!


    この子も大概ダートの怪物なんだけれども、いかんせん一緒に走った他のダート馬が怪物の怪物みたいな連中ばかりなばっかりに…

    オジュウチョウサンとアップトゥデイトを見ているようだ…

  • 132二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 20:48:44

    >>131

    G1級6勝だけど2着11回だから、日本最多連対記録の17回なんですよね、フリオーソ

  • 133二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 21:54:03

    GⅠ級6勝か…メカクレDKPIズには遠い雲の上の話になりそうだ…

  • 134二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 00:25:13

    このレスは削除されています

  • 135二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 00:26:27

    (ダイスの振り方間違えちゃった)

    全くの別件企画進めていたらこんな時間になってしまった…が、まだいけるいける


    桜花賞を見にいったポメちゃん以外の面子招集!(ソラリス&モナは観戦よりもトレーニング優先。レース前にVTRとかでライバルチェックする派)



    dice3d5=1 5 1 (7)


    1.ダブルマシュマロ

    2.ミスディレクション

    3.レッドヘリング

    4.ネーロディセッピア

    5.ハニーハニーハニー


    被りの場合は一つ下にズレる。更に被りは被らなくなるまで下にズレる

  • 136二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 01:31:28

    >>128


    『薄曇りが広がってまいりました。花曇りの阪神レース場です』


     レース場の内外にもその名が示す通りの桜が咲き、花びらが風によって華やかに舞う中、パドックを終えた優シュンウマ娘たちがゲート前まで集まっていく。

     チャンドラポメロ、ダブルマシュマロ、ミスディレクション、ハニーハニーハニーはその様子を関係者席最前列、ゴール板から200M程前の位置で観戦していた。

     クラシック級限定七大GⅠレース。桜花賞。皐月賞。NHKマイルカップ。オークス。日本ダービー。秋華賞。菊花賞。

     その一角であり、最初のGⅠレースという事もあり、阪神レース場は当然のように満席。

     観客それぞれの夢こそ違えど、誰もが桜の女王の誕生の瞬間を見ようとレースの開始を待ちわびていた。


    「パドックでもそうでしたけど、凄い熱気スねぇ」

    「分かるー。アタシたち短距離組にはなかなか縁のない熱気だよねー」

    「そういう意味でしたら、ダートももう少し盛り上がってくれると嬉しいですわ」

    「案外、アタシたちがレースから離れた後に盛り上がったりしてー」

    「もうっ、ミスディレクションさん! そんな事言わないで下さい!」


     実況解説が、今年の桜花賞はダイワスカーレット、ウオッカ、アストンマーチャンの三強と紹介する中、レース前なのに背中から感じる熱量を前に、各々が感想を述べる。

     しかし、チャンドラポメロはその背中に感じる熱以上に全身が興奮で火照っており、他の三人の言葉に相槌すら打たずに出走ゲートの方へと集中していた。

     遠目から見ていても大一番のせいか、それとも中3に近い連戦によるものなのか、アストンマーチャンの仕草に静かな怒りというか落ち着きのなさを感じる。

     それに反してウオッカはここまで三連勝。1600Mに限れば負けなしという戦績故か、大舞台でも落ち着いている様子を見せていた。勝ちに勝っている事による、自惚れも慢心もない。集まった優シュンウマ娘たちの中でも一番大人びているようにすら思えた。


    (……)

  • 137二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 01:32:43

    >>136


     ゲート入りもまだなのに、観客席からは拍手や歓声が上がる中、チャンドラポメロの視線はダイワスカーレットへと注がれる。

     前走のGⅡレース、チューリップ賞。VTRを見る限りでは抜群の仕掛けだった彼女は、後少しのところでウオッカのクビ差で敗北を喫した。

     一番を目指し、一番になる為に努力してきたダイワスカーレットにとって、僅かな差で好敵手に負けた事はどれ程悔しかったのかは想像だに出来ない。

     本番である桜花賞で、彼女がその事を引きずっていなければいいけれども、と他人事ながら憧れの相手だからこそ内心不安を覚えていた。


    「おっ、ファンファーレっスよ」

    「ひゃんっ!? ファンファーレ前なのに何故こんなにも歓声が!?」

    「あっはっはー。これがGⅠレースかー」


     ひと際大きな歓声が上がり、スターターがゆっくりと前に上がり、赤い旗を振る。

     それに合わせて桜花賞の開幕を告げるファンファーレがレース場に鳴り響く。

     ファンファーレに合わせて観客が手拍子をし、終わると同時に開始前と同じかそれ以上の歓声が上がる。

     それを全身で感じながら、チャンドラポメロは「もしも……」と誰にも聞こえないような声で小さく呟いた。

     もしも怪我なくジュニア級の他レースを走って実績を積めば。

     もしもクラシック級の桜花賞までにOPクラスへと昇格していれば。

     もしも先のエルフィンステークスで勝利していれば。


    (……)


     勝負の世界に「もしも」という言葉は禁句だというのは、チャンドラポメロにも分かっている。

     それでも、あの憧れの舞台に立ち、あの憧れのダイワスカーレットと共に走れたのならば。

     そう思わずにはいられなかった。

     彼女がそう熱望し、憧れの眼差しを向ける先にいるダイワスカーレットは、遠目から見ても非常に落ち着いているように見えた。

  • 138二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 01:37:06

    桜花賞、開幕
    ネームドレースという事で結果は見えている上に
    結果が結果なので、まーたポメちゃん脳焼き展開になる気がしてなりません
    果たしてその脳焼き桜花賞がポメちゃんにとって好転するきっかけになるのか、はたまた新たな沼へと突き進む暗転となるのか…

    ほなまた

  • 139二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 10:15:05

    ある意味では自分用でもある現状各メカクレDKPIズの目標・目的(※達成できるとは言っていない)

    チャンドラポメロ → 憧れに近づく為、憧れと走る為、目指すは秋華賞…です
    ダブルマシュマロ → 芝ダート重賞制覇っス! …あわよくばGⅠレースに勝っちゃったり? なーんてガハハ
    カベルネソラリス → 重賞レース勝利とGⅠレース勝利。以上だ
    ミスディレクション → 打倒マーシュちゃんかなー。後、芝ダートどちらかの重賞は手に入れたいよねー
    レッドヘリング → 打倒モナちゃん? 後、クラシック級初の長距離GⅠの菊花賞は出たいし勝ちたい

    ネーロディセッピア

    まずは何といってもラヴを探すところからーです
    トレウマ、ウマウマ、トレトレ、トレ友、ウマ友…何でもござれですがー、実家の家業的には男女のラヴを多く見つけたいですねー家業の宣伝にもなりますし
    でもでもそんな事よりも聞いて下さい友人たちのラヴ話を!
    ポメちゃんはゆっくりながらも一歩一歩担当トレーナーさんとの仲を育んでいてもうラヴですしダブルマシュマロさんは担当トレーナーさんが推し推し押せ押せな方ですからもう「抱けーッ! 抱けーッ!」って感じですしカベルネソラリスさんは最近何と近くで初等部の幼なじみと出会ったそうでこれもうラヴの予感しかしませんね後はミスディレクションさんとレッドヘリングさんはまさかの担当トレーナーとの3なPですか!? ラヴとラヴが重なってラヴラヴになるか三角関係になるか見ものですねモナちゃんは今はまだチーム所属なのでトレウマやウマウマやウマ友の気配を見せておりませんが初等部ですから仕方がありませんですがレースに対する貪欲な姿勢はある意味ウマウマかも知れませんそうですラヴですハニーハニーハニーさんもまたチーム所属なのでまだラヴはないと言う感じですが最近何やらとあるトレーナーさんから注目されているデータがありましてうーんラヴの予感です!(ここまで超早口)
    ……あ、私のー、レース目標ですかー? OPレースをいくつか勝てば家業含めてアピールにーなるかと思いますわ

    プティートモナ → あっ、えっと……多くのレースに出て、勝つか掲示板入りして、両親の恩返し出来れば、です
    ハニーハニーハニー → OPレースに勝って家業の宣伝をしたいのですが、やはりレースを走るウマ娘として重賞は欲しいところですわー!

  • 140二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 10:23:27

    ネーロディセッピアはよぉ…

  • 141二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 17:50:58

    性癖溢れ出てて大草原

  • 142二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:05:50

    本スレの1です
    大動物成分が不足してきたので親戚の家に寄りがてら牧場で馬・羊・山羊成分を存分に補充してきましたが、帰ってきました

    (調度品の質が良い)自室でくつろぐレッドヘリング

  • 143二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 23:54:09

    保守

  • 144二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 23:56:40
  • 145二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 00:21:49

    自分も今日は色々と用事やらなんやらで少々お疲れなので、本日分のSSはまた朝にでも投下しますわー


    >>144

    チューリップ賞の僅差敗北からの今度は差し切らせない早仕掛け勝ちは絵になりますからのう

  • 146二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 00:25:07

    おつかれさんだぜ

  • 147二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 08:35:59

    書きます(祝日休日寝坊マン)

    ところで第三章がもう15000文字超えているんですけどこれ…

    桜花賞~秋華賞までって考えるとまーた6万文字とかいくんスかね…


    >>146

    ありがとさんだぜ

  • 148二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 10:44:39

    >>137


    「誰が勝つと思うスか?」

    「うーん。同級生の子たちがいるとはいえ、マイル以上はあまり注目していないのよねー」

    「私も、ダート専門ですから、芝の子たちはさっぱりですわ」

    「それじゃ予想にならないスよ~」


     各ウマ娘たちのゲート入りが始まり、実況解説もそれに合わせて展開予想を始める中、ダブルマシュマロもそれに乗っかる。

     しかし、今回この桜花賞を観に来ているのはダブルマシュマロを含めて門外のウマ娘三人。

     チャンドラポメロを除そのく三人が学園関係者とはいえ最前列の席を確保出来たのは、他ならぬミスディレクションとハニーハニーハニーのおかげであった。

     世界有数のウマ娘専用を含むトレーニング機器開発販売の大企業。その社長令嬢であるミスディレクション。

     その大企業よりも見劣りするものの、日本全国展開しているランジェリー開発販売の企業の社長令嬢であるハニーハニーハニー。

     二人の好意によって、チャンドラポメロとダブルマシュマロは今こうして特等席で観戦出来ていた。


    「ダイワスカーレットさん」

    「ポメちゃん?」

    「んー?」

    「ダイワスカーレットさん?」


     そんな三人が予想出来ないと笑いあう中、チャンドラポメロはゲートの位置から目を逸らす事なく予想を口にする。

     彼女自身が思っているよりもその声は大きかったらしく、チャンドラポメロの言葉を聞いた三人は意外そうな声を上げる。

     だが、チャンドラポメロが彼女たちへと顔を向ける事はなかった。

     その瞳には、ゲート入りする前に気持ちを切り替える為か、それとも高ぶる思いを一度鎮める為か、軽く円を描くように回ってから18番のゲートへと入っていくダイワスカーレットしか見えていなかった。

     1600Mのフルゲート。GⅠレースという事もあって、集まったウマ娘たちは最低でもOPレース2着経験者。

     チャンドラポメロと同じくティアラ路線を選択したものの、レース間隔が短すぎて止められたプティートモナはともかく、OPレース勝者であるカベルネソラリスですら抽選を外す中、集まった優シュンたちはこれで全員がゲートの中に収まった。

     それまで賑やかだった場内が更に盛り上がり、期待の乗った実況の声が響く中──


    『いざスタートぉ!』


     ──選ばれた優シュンウマ娘たちにとっての、一生に一度の大舞台。桜花賞の幕が上がった。

  • 149二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 10:46:41

    他のレースならともかく、GⅠレースともなればちゃんと下調べせねばと思って色々見ていたら本文が短くなったぜ…
    でも今日は休みだから書ける時に書いてはスレに投げるぜ…
    だから「ほなまた」は言わないでおくッ!(自身を追い込む)

  • 150二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 19:41:23

    いよいよですね

  • 151二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 20:17:29

    >>148


    『まずまずのスタート。ちょっとチャーミーチャミ、タイミングが合わないか。ウオッカはまずまずのスタートを見せています』


     一番人気且つ前走までの戦績が戦績故に、実況も含めて会場はウオッカ推し。

     それは桜花賞のメンバーが決まった頃から各所で言われていた事だった。

     メディアはそれこそダイワスカーレット、ウオッカ、アストンマーチャンの三強と謳っていたが、実際の戦績を見ればそうなるのも致し方ない。

     事実、ダイワスカーレットはチューリップ賞で、アストンマーチャンは阪神ジュベナイルフィリーズでウオッカに敗れている。

     レースの世界にその身を投じる一ウマ娘として、チャンドラポメロもその事は十二分に理解していた。

     チューリップ賞のVTRを何度も見返しても、ダイワスカーレットのスタート、道中、仕掛け位置と一切の無駄がない。それでもウオッカがそれを制したのだ。本格化もあって、高等部のウマ娘も交じる中、同期の中ではウオッカが能力も才能も頭一つ抜けている。


    (それでも……っ)


     それでも、チャンドラポメロはダイワスカーレットに憧れを抱いた。

     ウオッカの天性のレース才能や走りではなく、どこまでもがむしゃらに突き進む彼女の才能と走りに。


    『一気にマーチャンが行った行った! アストンマーチャン、掛かり気味に行きました! それと一緒にダイワスカーレット』

    「っ!?」

    「掛かり!? 不味くないスか!?」

    「いやー、まあ、これだけの大舞台なら、ねえ?」

    「ええ。この場にいる私だって緊張でどうにかなりそうですもの」


     レース実況のテンプレートに沿うよう、先頭から各ウマ娘を整理していた実況が、バ群の外から突き出てくるアストンマーチャンとそれを追うように続くダイワスカーレットを注視する。

     場内がどよめきで揺れる中、チャンドラポメロたちも各々の反応を見せる。

  • 152二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 20:18:35

    >>151


    『アストンマーチャン2番手! ダイワスカーレット5番手! その後ろ、その後ろ! ピンクブローチの後ろにウオッカが上がっていった! ウオッカも中段であります!』


     興奮気味にまくし立てていた実況が、ウオッカ以降に走るウマ娘たちを冷静に努めて紹介していく。

     その間にもアストンマーチャンは2番手の位置をキープ。対してダイワスカーレットはその外3番手まで上がってレース後半へと向かう。

     ウマ娘の視力を以てしても、チャンドラポメの目では遠くを走る二人が必死な表情をしている事ぐらいしか分からず、それが掛かりなのか策なのかの判別がつかない。


    『第4コーナーに入って来る。アストンマーチャン2番手。ダイワスカーレットがっちりと、その脇抑えて3番手。その後ろからウオッカ接近4番手』

    「三強言われている全員が前目で揃ったっス!」

    「後残すは最終直線だねー」

    「この勝負、どうなるんですの!?」

    「……っ」


     そうこうしている内に、レースの展開は進んで第4コーナーから直線へ差し掛かるところまできた。

     アストンマーチャンとそれに続いたダイワスカーレットの早仕掛け過ぎるとも思える先行以外は大きく崩れず、4番手に上がってきているウオッカの勝ちパターンに入ったとチャンドラポメロは感じた。

     ウオッカの持ち味は強烈且つ息の長い末脚。少なくともチャンドラポメロから見た彼女の印象はそれであった。

     対してダイワスカーレットはスタミナをフル活用した、真っ向勝負で全身全霊の脚。スタミナが残り続ける限り、それだけ加速の維持と伸びる末脚を魅せるが、逆を言えばレース道中で掛かって無駄にスタミナを消費してしまえば加速を維持出来ない。

     そして、その掛かりがまさにレースの前半。アストンマーチャンの掛かりに釣られる形でダイワスカーレットも掛かってしまったとチャンドラポメロは見てしまった。

     そんな彼女の心配と予想を他所に、レースは最終直線へと入り、先を逃げるウマ娘に対して三強三人が強襲する形となった。

  • 153二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 20:19:39

    >>152


    『真ん中から! 真ん中からアストンマーチャン! そして外から14番! ウオッカ来た! ウオッカ来た! ちょっと苦しそうか!』

    「斜行っス!?」

    「いえっ! 外へと斜めに走ったダイワスカーレットさんにウオッカさんがそのまま突っ込んでしまった形になります!」

    「ぽ、ポメちゃん?」


     場内が盛り上がる中、追ってきたウオッカがダイワスカーレットへ当たりそうになり、思わずという感じでダブルマシュマロが叫ぶ。

     しかし、自分でも驚く程の大声で、チャンドラポメロはそれを訂正する。実際、ダイワスカーレットが外へと僅かに進路変更をしたのは直線に入ってすぐであり、ウオッカから見ればブロックされた形となるが、進路妨害になる程の距離ではなかった。そのまま抜かせると踏んだのか、それとも先着ゴールを優先してそこまで気が回らなかったのか、それはウオッカ本人に聞かないと分からない。

     彼女の言葉に驚いたダブルマシュマロの視線を感じながらも、チャンドラポメロは下唇を嚙みながらレースの行く末を見守る。


    『まだダイワスカーレット! まだ! ダイワ先頭だ! ダイワスカーレット先頭!』

    「~っ!?」

    「の、伸びたー!? あそこから!?」

    「何て勝負根性ですの!?」


     そのウオッカの僅かな怯みを見てか、それとも目と鼻の先にゴール板が見えたからか、ダイワスカーレットの脚が一層伸びるのを見て、チャンドラポメロは自身の目が見開くのを感じた。

     他のウマ娘が沈んでいき、相対的に伸びているように見えたのではない。明らかに、二の脚を使った加速の伸び。こちらもダイワスカーレット本人に聞いてみなければ分からないが、ウオッカの影を見て負けん気が出たのでは、とチャンドラポメロは後になって思う。

     しかし、それはあくまでも後日にこの桜花賞のVTRを見た際の彼女の感想であり、今、この瞬間に目の前で伸びるダイワスカーレットの脚を、走りを見たチャンドラポメロは……あの日と同じように、ダイワスカーレットに緋色の閃光を見た。


    『ウオッカ捉えきれないか! ウオッカ捉えきれない!』

  • 154二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 20:20:43

    >>153


     歓声に揺れる場内の中、チャンドラポメロの目の前でウオッカもまた同じように加速してダイワスカーレットへと追い縋る。

     その末脚の伸びもまた、ウオッカに憧れを抱く者が見れば十二分に凄まじいものであると否応なしに理解出来るものであった。

     けれどもチャンドラポメロの目には、もうダイワスカーレットしか映らない。それどころか、目の前でターフを鳴らす優シュンウマ娘たちの走行音も、周囲の歓声も、実況の声すら、聞こえなくなった。

     否、それだけではない。

     ターフの緑も、桃色に染まったゴール板も、ダイワスカーレットを追う黒も、遠くに見える桜の薄桃も。全てが白く染まっていく。

     ただ一人。青色の勝負服を身に纏い、チャンドラポメロから見て優雅に、それでいて力強く走るダイワスカーレットを除いて。

     まるでチャンドラポメロがメイクデビューの時に踏み込んだ領域発現時と同じような光景が、目の前に広がった。


    『ダイワスカーレットォ!!』

    「……はっ!?」


     そのダイワスカーレットの走りがまるでスローモーションのような動きでゴール板前を通過した瞬間、チャンドラポメロに音も色も感覚も全てが戻っていく。

     あまりの出来事を前に、何が起こったのか理解に苦しみ、チャンドラポメロは何度も瞬きをする。

     ダイワスカーレットが1着でゴールしたのか。それともウオッカに差し切られたのか。今ここにいる自分はちゃんとチャンドラポメロなのか。そもそも、今この瞬間が夢でないと言い切れるのか。

     その混乱の最中、彼女はまず掲示板へと視線を向けた。


    『ウオッカ届かない! ダイワスカーレットです!』

    「うぉおおっ! すげーっスぅ!」

    「うーん。凄いねー」

    「うぅっ……ダートだって! これぐらいの盛り上がりを!」

    「……っ!」


     そして、掲示板の1着を示す番号がダイワスカーレットの18番と見て、興奮する友人たちを尻目に、チャンドラポメロは静かに涙を流すのであった。

  • 155二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 20:22:18

    休み休み書き進めていたらこんな時間になってしもうた…が、書ききりました桜花賞

    そして書いている私が言うのもなんですけど、ポメちゃんこれ大丈夫?
    脳コゲッコゲで煤すら残ってなさそうな気がするんだけど…

    ほなまた

  • 156二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 21:47:01

    (雑コラ注意)

    ダイワスカーレットの桜花賞を観て、塵となったポメちゃん

  • 157二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 00:41:04

    芝生えるw

  • 158二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 08:58:15

    こうして消し炭の中から次世代の芽が伸びていくんだろうな

  • 159二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 16:15:30

    >>154




    ※※


    ※※※



     桜花賞が終わった翌週の中日。

     クラシック級ティアラ路線の初GⅠレースによる世間の興奮も一部を除いて落ち着きを見せ、話題は今週末に行われる同じくクラシック級三冠路線の初GⅠ。皐月賞へと移り変わっていた。

     去年のクリスマス交流会でチャンドラポメロが交友を深めた同級生の友人の中でそのクラシック三冠路線を選んだのはレッドヘリングのみ。そのレッドヘリングも3勝クラスまで上がったものの、OPレースを勝ち切れずに皐月賞の参加抽選資格を獲得出来なかった。

     やはりGⅠレースに出走しようとするならば、これまで以上にトレーニングとレース経験を積み、実力と実績で挑まなければならないと思いつつ、チャンドラポメロは教室からトレーナー室へと移動する。

     その日のトレーニングは中日休みであり、代わりに担当トレーナーとの打ち合わせ。今後のレース方針やトレーニング内容のすり合わせを行い、次のレースを選択する日であった。

     先の桜花賞での興奮冷めやらぬ中、先へと駆け抜けてしまった桜の女王、ダイワスカーレットへと少しでも追いつく為にも、チャンドラポメロは人知れず気合を入れていた。

     そんな中、自身が向かおうとするトレーナー室の方向から一人のトレーナーが歩いてくるのが見え、チャンドラポメロは思わず足を止める。


    (ぁ……ダイワスカーレットさんの、トレーナーさんだ)


     その男性トレーナーは他でもないチャンドラポメロの憧れのウマ娘を担当しているトレーナーであり、彼女は少し緊張し、姿勢を正す。

     ついでに進行の邪魔にならないように廊下の隅へと行き、彼が通り過ぎるのを待つ。


    「こんにちは。ありがとう」

    「こ、こんにちは、です」


     ダイワスカーレットの担当トレーナーはチャンドラポメロの横を通り過ぎる際、爽やかな笑顔で道を譲ってくれたお礼を言い、そのまま廊下を進んでいく。

     それを何となしに見送りながら、彼女は彼が向かう先が第一グラウンドである事に気付く。

  • 160二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 16:16:33

    >>159


    (もしかして、ダイワスカーレットさんのトレーニングがこれから?)


     そして、一度鞄からスマートフォンを取り出し、自身の担当トレーナーとの打ち合わせ時間までまだ時間がある事を確認した後、そっとダイワスカーレットの担当トレーナーの後を追った。



    ※※※



     相手に気付かれずに後を追うのが実は得意であったチャンドラポメロは、それでも相手が相手なだけにやや挙動不審になりながらも第一グラウンドへと到着する。

     到着してすぐ、放課後とはいえいつも以上にスタンドに生徒たちが集まっている事に気付く。同時に何やらグラウンド側が騒がしく、それは先を進むダイワスカーレットの担当トレーナーも気付く程であった。


    「わぁ! スカーレットさんとウオッカさん! また一騎打ちするみたいよ!」

    「きゃー! ウオッカ、頑張って~! スカーレットも負けないでー!」


     そして、スタンドからグラウンドへ声援を送るウマ娘の声を聞き、ダイワスカーレットの担当トレーナーは慌ててグラウンドへと向かって走る。

     同じく声援の意味に気付いたチャンドラポメロもまた、その後を追う形でグラウンドへと走った。

     そのグラウンドでは今まさに、ダイワスカーレットとウオッカの一騎打ちが終わったところであった。


    「はぁ……はぁ……っ!」

    「へへっ、オレの勝ちぃ! これで通算、13戦8勝だな!」


     互いにGⅠレースが終わってすぐだというのに、併走競争をするとは思ってもいなかったチャンドラポメロは、たった今僅差で負けたダイワスカーレットへと勝利宣言するウオッカの会話が聞こえる位置で見守る。

     ウオッカの言う通算は、恐らく二人が学園に入学してからの話だろう。そうでなければ、今日一日もしくは桜花賞明けの中日までで併走競争をしている事になり、いくらなんでもそれは無茶だと思ったからだ。

     その為、この一騎打ちのレースは今日の一回限りだと理解出来たが、二人の疲労っぷりは遠目から見てもあの桜花賞と遜色ない走りをしていたのだとも理解出来た。


    (桜花賞……GⅠレースが終わったばかりだと言うのに……)

  • 161二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 16:17:39

    >>160


     普通であれば、GⅠレースや重賞レースに限らず、レース後の翌週は疲労困憊になるはず。

     レースを本気で走り、その後のライブを全力でこなすのだから、いくらアスリートであり人以上の体力のあるウマ娘とて肉体と精神の疲労は免れない。

     しかし、今週ももう中日とはいえ、レース本番さながらの走りをやってのけたであろう二人に対し、チャンドラポメロは畏怖すら覚えた。


    「さーてと、そろそろ退散すっかー! ここで疲れ切ってちゃ意味ねーしな」

    「ぐっ……ちょっと! 待ちなさいよ! 勝ち逃げなんてさせないんだから!」


     本当に自分は、トレーニングやレース経験を積めば、あの二人に、ダイワスカーレットに追いつけるのだろうか。

     そんな一抹の不安すら過ぎる中、目の前の二人はウオッカが切り上げる形で会話が終了する。

     ダイワスカーレットはそれを阻止しようと迫るものの、いつの間にかすぐ傍まで来ていた彼女のトレーナーに制止される。

     先程の声が張った会話ではなく、落ち着いた会話が始まったらしく、チャンドラポメロにはその内容まで聞こえなかった。


    (……)

    「うんうん。ラヴ、ですねー」

    「ひゃあっ!?」


     それでも何とか会話が聞こえないかと耳を前方に向けて意識を集中していると、急に後ろから声を掛けられ、チャンドラポメロは自分でも久しく聞いていないような甲高い悲鳴を上げてしまった。

     慌てて振り返ると、そこにいたのはチャンドラポメロの同級生で友人。寮では同室としてお世話になっているネーロディセッピアであった。


    「……セッピアさん。もう、いきなり後ろから声を──」

    「そんな事より!」

    「──ふぁっ!?」

  • 162二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 16:18:42

    >>161


     声を掛けてきた相手が顔見知りで安堵するも束の間で、チャンドラポメロはネーロディセッピアに両手首を掴まれてしまう。

     思いっきりでこそないものの、相手を逃がす気がないという感じの掴み方。そして相手は頬を上気させ、瞳の中にあるハートの模様をピンク色に輝かせているネーロディセッピア。

     チャンドラポメロはこれから始まる彼女のマシンガントークの予感に、顔を引き攣らせる。


    「ダイワスカーレットさんとウオッカさんの一騎打ちが見られると聞いてグラウンドにホイホイされましたがいやー良いラヴが見られました入学以降二人のウマウマ動向は逐一チェックしていたつもりでしたがチューリップ賞、桜花賞共に観戦チケットを逃した時は涙で枕を濡らしたものですいえまあそこは私にも予定が入っておりましたので致し方なかったのですがえーっと何の話をしていましたっけそうです二人のウマウマ事情に加えて今現在行われているトレウマ事情ですよそうダイワスカーレットさんとその担当トレーナーさんによるトレウマラヴ! トレトレに続いてトレウマなラヴが拝めるとはホイホイされた甲斐がありましたこれを見る為に頑張ってこの学園に入ったと言っても過言ではありませんねそれはそうと──」

    「せ、セッピアちゃ、落ち着いて」

    「──ぁ、んんっ。失礼ーしました。急なラヴの過供給を前に全身から溢れ出るラヴ語りがー止まらず」


     後少し近付けば口づけしそうなぐらいに顔を寄せ、興奮のままにまくし立てるネーロディセッピアを何とか宥めたチャンドラポメロだったが、ふと視界の端にダイワスカーレットとその担当トレーナーが二人並んでグラウンドを立ち去っていく姿が見えた。

     それを目に焼き付けるのは当然といった具合に、目の前のネーロディセッピアは凄い勢いで彼らへと顔を向け、「ほわっ、ほわあああああああああっ!」と人目も憚らずに興奮するのだった。

  • 163二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 16:21:01

    >>157 >>158

    脳が焼けて塵になったポメちゃんを●さないでもろて…


    そして桜花賞も無事…無事? に終わり、ポメちゃんの次のレースを決める打ち合わせへ

    その前にGⅠ勝利ウマ娘たちの走りや努力を目の当たりにした事が吉と出るか凶と出るか

  • 164二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 23:03:34

    このレスは削除されています

  • 165二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 23:06:25

    そうか…そうかぁ…クラシック級の元ネタ、3歳限定レースって…皐月賞以降は1勝クラスしかなくて、2勝クラス以上はシニア級と混合になるのかぁ…
    レース予定組み直さなきゃいけな…い…

    取りあえずは…スイートピーステークス目標で…ポメVSレッドヘリングVSプティートモナで…

    ほなまた…(眠い)

  • 166二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 23:06:54

    ただポメちゃんの長い谷間を表現したいだけの夜だった

  • 167二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 08:49:16

    このレスは削除されています

  • 168二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 08:49:24

    >>165

    シニア級にもメカクレデカパイがいるかもしれない

  • 169二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 14:06:49

    >>166

    色々入れられそうなこの長さよ

  • 170二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 19:46:55

    このレスは削除されています

  • 171二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 19:56:19

    >>169

    今日は8(ぱ)1(い)3(すりー)の日だそうで…

  • 172二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 23:48:08

    >>162



    ※※※



     その後、ダイワスカーレットとその担当トレーナーの関係……ネーロディセッピア曰くの「ラヴ」について本人が語り明かそうとのお誘いを丁重に断りつつ、チャンドラポメロは何とか時間内にトレーナー室へと到着する。

     既にトレーナーは室内におり、遅れた遅れてない待った待ってないという問答の後、彼は苦笑しながら打ち合わせの為にチャンドラポメロの着席を促す。

     指示に従い、ホワイトボード前の席に座った彼女を見て、トレーナーは資料の束を持ってチャンドラポメロの対面に座った。

     そして、資料の束の上にある一枚の紙を彼女に見えるように机の上へと置き、話を始める。


    「早速で申し訳ないけれども、次走はスイートピーステークスにしたいと思っている。何か意見があれば遠慮なく言って欲しい」

    「えっ?」


     真剣な顔で単刀直入に話を切り出すトレーナーに対し、チャンドラポメロは面を喰らった。

     クラシック級限定リステッドオープンレース、スイートピーステークス。

     ティアラ路線を選んだチャンドラポメロにとって、そのレースが何のレースであるかは流石に知っていた。


    「で、でもそれって、オークストライアルの……」


     東京レース場で行われるこのレースは、続くクラシック級ティアラ路線の二冠目。GⅠレース、オークスのトライアルレース。

     その上位入着者が、次走のオークス出走の優先権を得られるレースである。ティアラ路線に挑む者として、オークスに挑むのであれば、出走して優先権を得たいと思う者も出てくるだろう。

     しかしながら、チャンドラポメロ自身の距離適性は中距離の2200Mまで。対して、オークスの距離は2400Mと200M長い。

     その為、スイートピーステークスで上位入着しても、オークスに挑戦するかと言われると距離適性の事もあって尻込みしてしまう。

     だが、そんなチャンドラポメロの不安げな声を察したのか、トレーナーはすぐに彼女を落ち着かせるかのように笑顔を見せる。


    「うん。けれども、その上位入着したからと言って、必ずオークスに出なければいけない、という訳ではないからね。距離も1800Mでポメロの得意距離だから、どうかなって」

    「う、うーん……けど、そのレースってリステッドオープン、ですよね?」

    「そうだね」

    「2勝クラスの私に、出走枠があるのでしょうか?」

  • 173二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 23:49:16

    >>172


     いくらクラシック級のウマ娘なら全員出走出来るオープンレースとはいえ、スイートピーステークスの格付けは重賞の一つしたであるリステッド。

     当然オークスにも挑戦しようとする他のウマ娘たちが殺到し、前走や前々走の優先権を使われてしまうのではないかと彼女は質問する。

     過去にチャンドラポメロは、エルフィンステークスというリステッドオープンレースに出走はしている。

     けれども、その順位は掲示板入りも果たせない惨敗であり、当時の自身とオープンクラスとの差を見せつけられた結果となった。

     それからトレーニングを積んだ今なら、それこそ領域からスキルへと落とし込んだ「Shadow of the Scarlet」に頼らず、あのレースを自分の走りで好走出来るとは思っている。


    (うん。私のスキル、それに頼り切った走り方をしたから本来の走りが出来なかった。領域やスキルを使ってでも憧れに、ダイワスカーレットさんを追う。けれども、それらに振り回されたら、駄目、だよね)


     エルフィンステークスを走った時を思い出し、当時の反省をしつつも、チャンドラポメロはトレーナーの言葉を待つ。

     確かに、今の自分であればオープンレースでも通用すると言う自信が彼女にはある。

     しかしながら、オープンレースを好走出来る自信と、そのオープンレースに出走出来るかどうかは別の話。

     早く憧れであるダイワスカーレットに追いつきたいという気持ちは強くあるが、だからといって現実から目を逸らしてはいけない。


    「出走枠については、恐らく問題はない。オークスのトライアルレースではあるけれども、ここに出てからのオークス直行だと中3の強行軍になる。よっぽどレース後の回復が早い子じゃないと、そのままオークスに挑んでも疲れのせいで結果が出ない、なんて話もある。過去のレースデータを調べてみたけれども、意外とフルゲートになるのが少ないんだ」

    「……シニア級の方に混じってでも2勝クラス、3勝クラスと実績を積んで、優先権を得てからの秋華賞に出走、というのは駄目ですか?」

    「うーん……それも考えては見たのだけれどもね」

  • 174二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 23:50:25

    >>173


     出走枠に関してはトレーナーの言葉で納得がいった。

     しかし、チャンドラポメロはその言葉を聞いた上で、将来を見据えた堅実な提案をする。

     すると、トレーナーは眉根を寄せてどこか恥ずかしそうに手にしたペンで頭を掻いた後、チャンドラポメロを真っ直ぐと見つめる。


    「正直な話。先の1勝クラスのレース結果を見て、君の実力は既にオープンウマ娘だと僕は思っている」

    「……」

    「だからこそ、周囲から見れば格上挑戦に思えるかも知れないけれども、君の走りを知っている僕からしたら適正だと信頼している」

    「っ、そう、ですか……」

    「ああいや。ポメロが堅実に進みたいというのであれば、僕はそれでも良いと思う。これはあくまでも君の走りに魅せられた、僕の提案。現時点におけるクラシック級の最終目標が秋華賞であれば、ここで一つオープンウマ娘になっておくのが良いかと思ったんだ」

    「……少し、考えさせて下さい」

    「うん、いいよ。出走参加締め切りまではまだ猶予はあるし、じっくり考えて欲しい。どの選択をしても、僕は君のトレーナーで味方だ。選んだ道を全力でサポートさせて貰うよ」


     チャンドラポメロの才能や実力を疑わず、その走りを見てきたからこそのトレーナーの言葉。

     エルフィンステークスの敗北からアルメリア賞の勝利を経て、彼女はダイワスカーレットに憧れて追いかけるのとは別に、トレーナーの喜ぶ姿を見たいという気持ちも抱き始めていた。

     だからこそ、勝てるレースで堅実に経験と実績を積み、彼の笑顔を見ながら憧れを追いかけると言う提案だった。

     しかし、そのトレーナーが自身を信じ、背中を押してくれている。

     その場では決められなかった為、一晩時間を掛けて考えた末、チャンドラポメロはトレーナーの提案の方を採用するのだった。

  • 175二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 23:53:01

    2勝クラス、3勝クラスと堅実に行くルートもあったのですが…意外とスイートピーステークスが桜花賞翌週からだと短い!
    という事で物語をサクサク進めていく為にも最短ルートへ

    後、OPレースとオープンレースを統一しなさいよ貴方(自分の脇腹にナイフ突き立てながら)

    色々と書いてきたSSと実際のレースとの整合性を考えると筆が進まなくなってしまってきたわね…
    整合性取れてなかったらマジですんませんという事でほなまた…

  • 176二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 00:55:06

    おっつおっつ
    用語が不安定なのあるあるw

    実際との整合性は「俺の世界線じゃこーなんだよ!」の精神で乗り切ろう

  • 177二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 01:11:58

    確かこの世代の前年にプリンセスがスイートピーステークスからのオークス→秋華賞制覇だったな

  • 178二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 06:59:46

    >>176

    あざますあざます

    まあ、整合性言われたら2007当時のチューリップ賞はまだGⅢで今だとGⅡ昇格しているからどっちだよ!?

    ってなりますしね…多少はね…



    >>177

    SS内でも書いたように、スイートピーS→オークスは中3週なのによーやる…

    結果論になるけれども、ダイワスカーレットのあの戦績は風邪や怪我で幸か不幸かレース間隔が空いたから達成できたとかいう話もありましたな

  • 179二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 15:14:35

    DKPI揃いなのに、次やったらこれだからねミームとか叡智な仕草が誰にも似合わない感じが面白い

  • 180二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 19:29:22

    今日は色々とやる事があって且つこれから用事なので今日分のSSを上げられるかは分かりませぬ…
    残暑も厳しいので皆様もどうか身体大事に…

    …DKPIズと夏祭り見に行ったら壮観だろうなぁ!!
    16の御山が拝めるんですよ貴方!!

  • 181二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 22:00:05

    >>180

    そちらも身体にはお気をつけて

  • 182二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 01:35:11

    >>179

    レッドヘリング辺りは胸元じゃなくてマジキレ顔(本当は困っている顔)にチビりそう

  • 183二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 09:42:59

    >>180

    ご自愛ください

  • 184二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 14:15:24

    >>181 >>183

    あざますあざます…

    やっぱりDKPIとDKPI好きは優しいという事が証明されてしまいましたな…


    さて、書くぞー

  • 185二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:56:17

    >>181

    日焼け跡いいね…

  • 186二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:46:38

    >>174




    ※※


    ※※※



     チャンドラポメロが次走にスイートピーステークス選んだ翌週末の金曜日。

     その先週末にはクラシック級の三冠レース、皐月賞が行われ、七番人気のウマ娘が勝利。2着は何と十五番人気という大波乱の大荒れの中、ジュニア級の王者としてウオッカと並んで表彰され、このレースでも三番人気となっていたドリームジャーニーが8着で終わった事に大きな話題を呼んだ。

     そんな中、スイートピーステークスのレースの参加締め切りと抽選が行われ、チャンドラポメロは無事に抽選当確。レースへの出走権を得られた。

     それは同時に、彼女と共に走るライバルの数と名前の発表でもある為、メールでのみ出走権の当確をトレーナーから伝えられたチャンドラポメロは、打ち合わせの為に放課後のトレーナー室へと向かう。例によって何時もの遅れた待ってないやり取りをした後、着席した彼女の対面に座ったトレーナーは珍しく笑顔でも真剣な顔でもなかった。


    「出走するメンバーが決まって、その出走表が来たからポメロにも見てもらって……対策を練りたい」

    「はい……えっ?」


     眉根を寄せて、訝しむような顔をしたまま出走表を渡してきたトレーナーの表情の意味を、チャンドラポメロは出走表を一瞥してすぐに理解した。

     芝のマイル戦故に、自身と一緒に走ったウマ娘の名前、それこそプティートモナもいる18人立て。その中に一人だけ見た事のないウマ娘の名前がそこにはあった。

     否、チャンドラポメロ自身はそのウマ娘の事を知っている。知っているからこそ、対面するトレーナーと同じように、眉根が寄るをの感じた。


    「レッド、へリング、さん?」

    「やっぱり、君も彼女の参戦が気になるよね」

    「えっ、でも、どうして?」

    「うーん。正直、分からない」

  • 187二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:47:49

    >>186


     出走表にレッドヘリングの名前がある事を二度確認した後、チャンドラポメロはトレーナーを見やる。しかし、彼女の問いかけに対して、トレーナーは更に眉間のしわを深くして唸るだけだった。

     同級生とはいえクラスが違う為、チャンドラポメロが持つレッドヘリングの情報は少ない。

     同じクラスの友人であるミスディレクションの双子の妹である事。ダブルマシュマロと並んで社交的な姉に対して、レッドヘリング自身はチャンドラポメロと同じように引っ込み思案的な事。父親が、ウマ娘関連を含むトレーニング機器開発販売で世界的に有名な大企業の社長である事。

     そして、そんな彼女の距離適性は中距離と長距離である事。


    「中距離に近い1800Mだからでしょうか?」

    「それもあるかも知れないし、もしくはこの一年でマイル適性を伸ばしたかも知れない」

    「適性を、伸ばす?」

    「うん。ウマ娘によってはクラシック級やシニア級で適性が伸びたり、見出されたりするんだ。本人の気質もあるかも知れないけれども、彼女の担当トレーナーが……うん、あいつだからなぁ。あいつなら、適性が少しでもあればクラシック級に入ってからマイルトレーニングさせている可能性もあるな」

    「あいつ?」


     レッドヘリングが出走メンバーにいる事の質疑応答の際、珍しくトレーナーの言葉が砕けたのを見て、チャンドラポメロはその原因と思われるところを追及した。

     チャンドラポメロのトレーナーは、相手が誰であっても丁寧な言葉遣いと物腰柔らかである。少なくとも、彼女が見ている中でその言葉と態度が砕けたのはダブルマシュマロを担当するトレーナーと絡んでいるところぐらいだった。

     トレーナー同士の横繋がりで、口調が砕けた可能性もあったが、チャンドラポメロは彼の言い方はそれ以上の関係を感じたのだ。

     すると、彼女の言葉を聞いたトレーナーは少し考えるように視線を上へと向けた後、小さくため息を吐いて口を開く。


    「ああ、うん。あいつ……ミスディレクション君とレッドヘリング君の担当トレーナーとは同期でね。トレーナー養成学校では、ダブルマシュマロ君のトレーナーも含めて、色々とあってね」

    「はぁ~」

  • 188二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:48:50

    >>187


     苦笑しながら関係性を話すトレーナーを見て、その手の話には興味がないものの、同室の相手が相手なだけに、チャンドラポメロの頭の中のネーロディセッピアが騒ぎ出す。

     頭の中で「トレトレですか!? トレトレですよね!? トレーナー養成学校からの深いお付き合いから始まり公私を共にして時にはレースを一緒に観に行き時には徹夜で私たちウマ娘について熱く語り過ごした濃厚な時間の中に芽生える友情ラヴもしくはそれを超えるビッグラヴが生まれたのですか? 生まれたんですね?」と物凄い勢いで喋り出すネーロディセッピアを他所に、それでも多少なりとも担当トレーナーの過去が知りたいと言う気持ちが先行し、チャンドラポメロは思わず挙手をする。


    「あのっ」

    「ん? どうしたの、ポメロ」

    「差し支えなければ、トレーナーさんと、レッドヘリングさんのトレーナーさんとの関係や情報が知りたいです」

    「んんっ、んー」


     担当トレーナーから出た言葉が思いもよらなかったのか、チャンドラポメロの言葉にトレーナーは咽るように咳払いをし、再び考えるように視線を上に向けた。

     それが彼の考える時の癖なのかな、とチャンドラポメロが思う中、「分かった」とトレーナーが視線を戻してどこか照れ臭そうに微笑む。


    「もしかしたら話す事でポメロが何かレースのヒントを得るかも知れないしね。けれども、あまり楽しい話ではないよ?」

    「構いません」

    「そうか。んー、ならまあ、身も蓋もない話からしようか。ここトレセン学園に勤めるトレーナーの大半がその実力もさる事ながら、コネや実家が名家である事は知っているかな?」

    「……」


     トレーナーの言葉に、チャンドラポメロは無言で首を横に振る。

     中央のトレーナー資格を得るのは難関中の難関である事は知っている。

     ウマ娘やレースに対しての高度な知識と経験。応急処置方法やスポーツ医学の精通。加えて精神鑑定や家族調査等も行われているのではないのか、とはお喋り好きのダブルマシュマロ談である。

     いずれにしても、そのトレーナー養成学校への入学も難しければ、資格を得ての卒業も難しいと言われる中、名トレーナーの実家が名家である事はよく聞く話ではあったが、それが大半とは思いもしなかったからだ。

     彼女の反応に、「まあ、そうだろうね」とトレーナーは苦笑しながら言葉を続ける。

  • 189二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:49:55

    >>188


    「代々優秀なウマ娘を排出している名家があるように、代々優秀なトレーナーを排出している名家もある。けれども、そもそもトレーナーへの道は思い付いただけではまずその道を進むどころか乗る事すら出来ない。コネ、なんて言葉を使ったけれども、それこそ名トレーナーの知り合いとか親戚がトレーナー名家とかでもないと、まずトレーナー養成学校の入学難度で大半が挫折する」

    「トレーナーさんも、その、ご実家が名家だったりするのでしょうか?」

    「まさか! 僕やダブルマシュマロ君のトレーナーの場合は正にコネだね。あいつとは幼馴染で、それこそ共通の知り合いに名トレーナーがいてね。初等部高学年の時にあの人の影響で、お互いにトレーナーへの道を進む事に決めたんだ。そして、その人がいたおかげで、色々教えてもらったり、養成学校の入学難度の高さや経験者じゃないと分からない事を教えてもらったりした事もあって、晴れてトレーナーになっている」

    「ほわ~、そんな出会いが」


     思わぬところで、自身の担当トレーナーとダブルマシュマロのトレーナーが幼馴染であるという情報を得て、チャンドラポメロの頭の中にいるネーロディセッピアが騒ぎ出すものの、「けれど」とそれまで微笑んでいたトレーナーが真剣な表情になったのを見て、彼女は一度姿勢を正した。


    「あいつは……ミスディレクション君とレッドヘリング君のトレーナーは、そういうコネや名家関係なく、実力だけで、トレーナーになった」

    「……」

    「しかも、そのトレーナーになろうと思った時期が異常でね。僕たちがトレーナーになろうと思った初等部高学年でも、トレーナー名家から言わせると遅いぐらいだ。けれども、あいつがトレーナーになろうと思ったのは……高等部になってからだった」

    「えっ」

    「天才はいる。悔しいが。だが、あいつはその枠を超えている。どこか、狂気すら孕んでいる。だからかな。マイル戦というこのレースに、あいつが、レッドヘリング君を送り出したのは、単にレース経験を積ませるだけじゃないと思えて仕方がない」


     まるで恐ろしい怪物を語るかのように声のトーンを落として、ミスディレクションとレッドヘリングの担当トレーナーを語る彼を見て、チャンドラポメロはまだちゃんと話した事のない人物に対して畏怖を抱くのであった。

  • 190二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:51:20

    スレも終わりに判明する、ポメちゃんのトレーナー周りの情報!
    そしてヤバいトレーナーと判明するミスディレクション君とレッドヘリング君のトレーナー!

    でもよくよく考えてもアプリ本編のトレーナーたちも大概狂人だぞ!

    ほなまた

  • 191二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:13:40

    まだスイートピーステークス始まってもいないのに3万文字近くいってて芝生えるわよ
    おかしいな…第三章は秋華賞前に終わる予定だったのに…

  • 192二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 22:02:25

    周りの情報が出る事で、可視範囲というか世界が広がっていく感触がいいねぇ
    ミスディレクションとレッドヘリングの実家規模ならいくらでもトップクラスのトレーナーを連れてこれるのに、それらを押しのけたスペックと狂気よ

  • 193二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 22:17:53

    >>192

    感想あざますあざます

    尚、その担当たちからは頭筋肉言われている模様


    Q.ところでプティートモナちゃんが対策の議題に上がらないのは何でなん???

    A.進行上の理由が最大ですが、そもそもモナちゃん賞金(というかウマ娘世界だとレース入場者割合、ライブやグッズ売上からのマージン?)の為にレース出まくっているので、それよりも先に見えない脅威であるレッドヘリング談義している

  • 194二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:35:58

    本スレの1です
    スレ画作成中なので、当方での次スレ立てはまだです(早くてもおそらく明日昼くらい?)
    もし先にスレ立てる方がいましたら、どうぞ

  • 195二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 09:00:00

    >>186

    この皐月賞、爆笑問題田中が三連単当てて800万円近い払い戻しだったのがニュースになってた記憶


    トレーナー同士の関係性もどう発展していくか気になってきますね

  • 196二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 09:36:45

    >>189


    「まあ、とにかく。レッドヘリング君には要注意という事で、ポメロも認識していて欲しい」

    「分かりました」

    「うん。僕の方でも、手が空いた時にレッドヘリング君のところに視察に行ってくるよ。そこで何か分かれば、また君と共有する」

    「ありがとうございます。よろしくお願いします」


     その内心の怯えに気付いたのか、トレーナーは声を明るくしてチャンドラポメロに話をし、レッドヘリングへの対策を終える。

     トレーナー自身が色々動いてくれる事に、彼女は感謝と尊敬の念のままに座ったままお辞儀をする。そしてその視線の先に出走表を見て、ふと気付いた。


    「あの、ところでモナちゃん……プティートモナさんなのですけれども」

    「ああ。彼女か……」


     以前のエルフィンステークスでチャンドラポメロよりも先着しているプティートモナも、このレースの好敵手足り得ると思い口にしたのだが、チャンドラポメロの言葉を聞いたトレーナーは言葉を詰まらせる。

     先程までのミスディレクションとレッドヘリングのトレーナーに対して考えるように視線を上に向ける訳でもなく、少し陰を感じさせる表情で視線を逸らす彼の姿には、プティートモナは好敵手足り得ないと言っているようであった。


    「何か、あったのですか?」

    「いや、そういう訳ではなくて……まあ、ハッキリと言った方がいいかな。彼女、プティートモナ君に関しては脅威として見なくても良い」

    「えっ」

    「無論、油断や慢心していいという話ではないよ。レースに絶対はないからね。ただ、彼女は少々、走り過ぎだ」

    「走り、過ぎ」

    「レースに酔っている、と表現した方がいいかな? 兎に角、レースに出走し過ぎている。いくら初等部からの飛び級で体力があるとはいえ、中3や中2じゃなくて中1のレース出走はいくら何でも無茶だ。恐らくは本人の意向だろうから、チームトレーナーを責めるつもりはないけれども……流石に止めるべきだとは思う」


     目を伏せ気味にし、訝しむというよりは心配するような表情で眉間にしわを作るトレーナーを見て、「どうしてそんなに……」とチャンドラポメロは思わず漏らす。

     独り言のつもりだったが、室内が静かな事もあって、その言葉はトレーナーの耳にも届いたようだった。

     トレーナーは顔を上げて言う。

  • 197二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 09:37:47

    >>196


    「これもまあ、彼女には彼女の事情あっての出走だからね。僕たち……特に同じレースに出走するポメロが気にする必要はないかな」

    「でも」

    「……同情や優しさは、時に相手にとっての侮辱になり得る」

    「っ」

    「それに、プティートモナ君自身、走る事がとても好きなようだからね。仮に彼女の事情を知っていたとしても、それについてあれこれ言うのは野暮だろうね」

    「……はい」

    「ただ、それはそれとして。プティートモナ君の前走……というか、今週末のフローラルステークスがどうなるかは分からないけれども、彼女はオープンレース以下は必ずと言っていい程掲示板入りしている。フローラルステークスからのスイートピーステークスという中1の強行軍とはいえ、天才少女再来は伊達ではないね。特別注目する必要はないけれども、だからといってフリーにしてはいけない、と僕は思っている」

    「分かりました」


     チャンドラポメロにとって、プティートモナは数少ない友人の一人。友達で好敵手という不思議な関係ではあるが、だからこそ相手の事情を知りたいとの思いだったが、トレーナーはそれをやんわりと否定する。

     それを見てか、彼は微笑みを見せながらも肩を竦め、プティートモナの強さについてを褒めつつも警戒するようには暗に伝えてくる。

     彼女の強さについては過去に一度対戦した事もあってか、チャンドラポメロ自身も疑ってはいない。その為、トレーナーの言葉に大きく頷いた。


    「うん。良い返事だ。それじゃあ、その二人以外に注視すべき相手の対策について打ち合わせしようか。まず、恐らく一番人気になるであろうスピードハロー君何だけれども……」


     そして、そんなチャンドラポメロを見て、トレーナーも笑みを深くしてから姿勢を正し、彼女とのレース打ち合わせを進めていくのだった。

  • 198二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 09:40:03

    次スレが建つ前に…今スレ最後のSS…っ!
    次回…! スイートピーステークス…! 波乱を感じさせるレースを前に、前章から溺れてしまっているチャンドラポメロは泳ぎ切れるのか…!
    乞うご期待…っ、はしないで下さい…っ(プレッシャーに弱いタイプ)

    ほなまた…っ

  • 199二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 10:02:59
  • 200二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 10:19:51

    >>199

    おつわよ

    そしてゆっくりスレ立てでも良かったんやで…

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