- 1二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:47:13
学P「…ここ最近親や社長からも言われているし今の仕事にも一区切り着くから、そろそろ俺も人生のパートナーを探してみようかな…今までこういうものには疎かったが幸い仕事先で色んな人から連絡先を貰っているし、話してみればそういう気持ちに気付けるかもしれない。…そうと決まれば早速電話してみよう…『もしもし、こんな時間にすみません。突然ですが今度一緒にお食事に…』」
女性AD『す、すみません!しばらくそういうものには行かないことにしてまして…』
女性P『えーっと…あまり君と2人で飲みにとかは…ちょっと…』
十王家メイド『もちろ……え…えっと…ど、どなたでしょうか…?』
学P「…お食事の誘いすら断られるなんて…やっぱり俺にそういうのは向いてないのかな…」 - 2二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:48:41
ねえ、先輩。最も身近な女性に声を掛けないのは失礼ではなくて?
- 3二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:49:31
このレスは削除されています
- 4二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 21:54:12
一瞬了承しそうになってた十王家メイドとの禁断の恋が始まる....!
- 5二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:02:15
「あなたは永遠に私のパートナーよ?」
- 6二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:03:50
私も引退を機に、かねてから気になっている男性に声をかけてみようと思っているのだけれど、先輩はどう思うかしら?
- 7二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:14:37
- 8二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:30:17
- 9二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:32:43
- 10二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:33:06
- 11二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:34:19
- 12二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:35:09
クソボケがあああああああああ
- 13二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:39:04
- 14二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 01:05:15
- 15二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 05:18:25
- 16二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 05:29:09
いやでも業界最大手のトップアイドルのプロデューサーが引退するからって担当アイドルに結婚を申し込むのもどうなのよ
しかもトップアイドルは一族経営の愛娘
だからこそ勇気出せよってのももっともなんだがハードルは高すぎるよな - 17二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 08:17:18
- 18二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 08:26:53
星南ちゃんならプロデューサーには公私ともに支えてもらっているパートナーです!みたいなことポロッと言って学P以外は学Pとくっつくんだろうな…って思われてるよ
クソボケが - 19二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 13:24:03
- 20二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 13:32:21
- 21二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 13:47:12
- 22二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 21:55:46
大丈夫?これメイドさん消されたりしない?
- 23二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 02:35:39
「お嬢様、プロデューサーからわたくしに呼び出しの手紙が来たのですが…」
なんて星南に向かってメイドが口走った日にはどうなるか… - 24二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 12:08:55
(嫌いな人…星南さんはよく俺を嫌いと言っていたからアプローチはやめておくか)
- 25二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 18:35:03
てか各女性陣星南に脅されてるだろこれ
- 26二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 18:50:01
これCry Babyかw
- 27二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 19:05:00
- 28二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 19:19:43
人はそれを脅迫って言うのよ……
- 29二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 22:31:03
なぜお義父さまがいい感じに振ってくれてるのに気づけないんだ学P
- 30二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 22:46:00
こんな雑なお膳立てで乗ってくるくらいなら苦労してないわ!
- 31二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 22:54:25
親にも星南ちゃんが話通してお膳立てしているでしょこれ…
- 32二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 22:59:30
いや、そこまでして気づかないとかエクストリームクソボケやんけあのプロデュース星人……会長のメンタル大丈夫かよ
- 33二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 00:57:48
そろそろ引退ってことは
引退ライブ前にクソボケかますPのせいでメンタルブレブレ状態でリハーサルに向かう星南が見れるということか - 34二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 01:21:01
あ~あそうやって裏から脅すみたいな事するのは学P相手にはアカンぞ
禁断の駆け落ちルートの隙きを与えるな - 35二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 01:49:40
星南さん関連で何回か仕事した藤田さんを誘ってみるか
- 36二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 02:05:58
リハーサル終了からまもなく、起き上がれなくなってしまう星南
- 37二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 04:48:54
一体自分は何をしているんだろう。
アイドルを引退したらあの人は私の元から去るつもりだ。出会ってから今日までそれとなく、というか結構大胆にアピールをしてきたつもりはあった。引退後もずっと一緒にいて欲しいって。
でも、どうやらあの鈍感男には私の気持ちは届いていないみたいで。ここ最近は私の引退後に備えて女性を食事に誘ってみたり、駆け出しアイドルの資料を並べて熟考にふけっていたりで。あの人には私と一緒に居続ける選択肢がまるでないようだった。
この事実が私の心を酷く揺さぶって、レッスンにも身が入らない日々が続いた。それでも、ずっと追いかけてきてくれたファンのために、私を目標としている後輩達のために、そして何よりトップアイドルとしてのプライドのために、引退ライブでは自分の120パーセントの力を出し尽くそうと決めていた。
...今、自分は何をしている?
ステージ上で、こんなにも惨めな気持ちになったのはいつ以来のことだろうか。日々の繰り返しで身体が覚えているはずの動作が出来ていない。この数年間で何度も何度も披露した自分のパフォーマンスをそのまま再現出来れば問題無いはずなのに、それもできない。
地に足の着いていない感覚。心も身体も”ここ”には無いようで、あまりにも酷い自分のパフォーマンスを受け入れることも出来ないまま、気づいたら前日リハーサルは終わっていた。
私事で心を乱し、目の前のライブに最善の準備ができないというプロとしてあるまじき現状に、自分の目指す120パーセントの引退ライブとは程遠い自分の現在地に、未だかつて無いほどの焦燥感を覚えた。
同時に、自分に失望した。この期に及んでもなお、心の片隅では引退後私の元を去っていくあの人のことを考えている自分に。 - 38二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 04:51:31
とにもかくにもたくさんある修正点を少しでも改善しないと
そう思ってステージ裏に戻ったが、スタッフ達の雰囲気は和やかである。リハーサルお疲れ様です、あるいはアイドル生活お疲れ様です、と労いや祝福を受けた。
どうやら彼らはこのリハーサルが90点の出来だと思っているようだ。ましてや引退直前のアイドル相手なのだ。スタッフとしてもいろいろと注文をつけるのもはばかられるのだろう。
自己評価と目の前の光景のギャップに困惑しつつも、なされるがままに労いを受けている。
あぁ、このまま中途半端な出来の引退ライブをすることになるのだろうか。周りからはパフォーマンスが落ちていることについて何も言われないだろう。でも、私はそれに納得ができるのか?それに引退後の自分のもとにあの人はいない。恐らく一生後悔して生きることになるだろう。
でも、ここから、自分のいまの状態で明日の本番までに何かを劇的に改善出来るとは思えない。そもそもステージ上で集中も出来てないし、もがくにもどうもがけば良いのかが分からない。
気づいたら目の前には床があって、やがてその模様は滲んで映るようになっていった。 - 39二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 04:53:09
ここに学Pが現れてスパダリする世界を誰か作ってくれ
- 40二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 07:09:58
- 41二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 11:40:25
そんなんできてたらこんなに拗れてねえ…!!!
- 42二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 12:02:39
- 43二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 12:25:28
- 44二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 14:17:20
投稿者でないとて構わぬ
やっておしまいなさい - 454225/07/30(水) 15:15:02
では僭越ながら……いかせていただきやす!!!
- 464225/07/30(水) 15:23:24
「星南さん少しこちらに」
いつの間にやってきたのか、目から滲み出る悔しさに一言も言及せず、プロデューサーは私を呼んだ。
反応する気力もないと見ると、プロデューサーは私の手を引いて、ステージ裏の中でも人通りの少ない場所に連れ出した。
「顔を上げていただけますか?」
「いやよ……」
「お願いします」
「いや……!!」
受け止めらない、受け入れるための心の準備ができていない。プロデューサーを真正面から見ることが……できない。
そうして煩悶を抱えて、私が黙りこくっていると彼はいつものような口調で私に言った。
「星南さん、長い付き合いです。私がなにを言いたいか、分かるでしょう」
「分からないわよ……!」
分からない。そう突き放しながらも、続く言葉に期待してしまう自分がいた。もしかしたら王子様のように私の気持ちに気づいてくれているのかもしれないと…………
「説教です」
「……………………………え?」
「ですから、説教です」
「ちょっと待って、どういうこと!? 私は混乱しているわ!」
「先程のリハーサル……いえ、体たらくはなんですか? アレが十王星南のパフォーマンス? 笑わせないでください」
「な…………な…………!!」
悲しみやら、悔しさやら、恋煩いやら、色々なものでぐしゃぐしゃになっていたはずの私の心が、たった一つの感情に収束していく。 - 474225/07/30(水) 15:31:24
「貴方が! 私の感情に気付かないからでしょう!?」
「はぁ…………………」
「星南さん、アイドルは恋愛厳禁ですよ」
「な………………!!」
この男!! 私の引退間際に婚活を始めておいて……!?
しかし、私に追撃の隙はなかった。そう、そういえば、この男に隙なんてもの、一度だってなかったのだ。
「ええ、お声がけした女性達から話を聞きました」
「『なぜ私を避けるのか』」
「『そして、その理由が第三者に影響によるものであれば教えて欲しい』と」
「皆さん答えてくれましたよ。『星南さんに、今後の契約の話と軽い恋愛相談を受けた』……と」
バラされていた……。私のしていた根回しが悉く知られていた。でも、皆を責めるのはお門違いだ。
私生活の彼ならともかく、プロデュース中の彼の気迫は……冗談抜きで誰よりも怖い。
その果断な采配に何度救われたか、分からないのだから。
「はぁ……認めるわ、私が皆にしていたこと」
「困った方ですね、このご時世に、脅迫なんて」
「貴方が言ったんでしょ。『私の誘い方は抽象的で伝わりにくい』って、だから……外堀から埋めようと思ったの……」
「ああ、懐かしいですね。ですが対象に対して具体的な勧誘ができていないので、まだまだ落第点です。niaで成長されたのに……まさか忘れているとは……」
「本当に呆れた目をしないでちょうだい!!」 - 484225/07/30(水) 15:34:10
「いいですか? アイドルは恋愛もゴシップも厳禁です……最後の最後のステージに泥を塗るつもりですか?」
「だったら! あなたはどうなのよ! 私のラストライブ前に! 婚活を始めなんて、プロデューサーとしての意識が低いと言わざるを得ないわ!」
「ええ、俺も確かに時期尚早だったと反省しています。あなたという星が輝いているのに、他のものに目移りするなど」
「なっ…………!」
ああ、これだ。これなのだ。
千年の恋も冷めるくらいに冷たい態度なのに、私のことを理解し過ぎていて……私に期待して、私を評価して、私を見つめ続けてくれるから……離れられない。
氷が皮膚に張り付くように、この人は私の心の一部になってしまった。
「ふふ。まったく……。痛くて、ヒリヒリして、たまらないわ……!」
「なにを言っているんです?」
思いが溢れてとまらない。あなたを好きなんだと、あなたは素晴らしい人間なのだと伝えたい。
この溢れる熱を表現する方法は一つだけだ。
「プロデューサー!!」
「はい」
「私のものになりなさい!!!!!」
言った、言ってしまった!
でも、私史上、最も熱烈な愛の叫びはこれだから……どうか届いて……!
普通の人になら伝わらなくても……貴方なら分かるでしょう?
「星南さん……。あなたの気持ちはよく分かりました」
「それで……答えは……?」
「お断りします」
「なんでよ!!」
「…………アイドルは、恋愛厳禁ですから」
「もうっ……! あなたのそういうところ……嫌いよ!!」 - 494225/07/30(水) 15:48:41
「……気は晴れましたか?」
「ええ、少しは。でも、もう一度メイクしてもらわなくちゃ」
いつものようなやり取りができた。
これでマイナスをゼロに戻せた。
もうあんな、不甲斐ないパフォーマンスはしない、胸を張ってそう言える。
だけど、プロデューサーとの関係は、こんな曖昧な結論では満足できない。彼がいつかいなくなる事が、やはり惜しいと思ってしまったから。
そんな私の笑顔に滲ませた寂しさを、どうやら彼は見逃さなかったようで……。
「星南さん」
「なに?」
「俺のことが好きなんですね?」
「ええ!?」
全てを一足跳びにした彼の宣言に目を向く。
本当に、心臓がもたない……!
「どう……し……!? プロデューサー!?」
「俺のことを愛しているんですね?」
「ええ……。じゃなくて! どういうことなの!?」
「ラストライブに向けて、気持ちが追いつかないというのなら、俺への感情を使ってください」 - 504225/07/30(水) 16:01:16
ああ、ああ……。いつもの目だ。
どんな時でも、どんな状況でも、アイドルを輝かせることに全力な目だ。
「ステージ上で俺への愛を表現してください、全力で」
「納得、できると思っているの……?」
「できるでしょう? 貴方なら。いや、そう思って甘えたのが良くなかったのか……。では前提条件からお話しします」
「まずですが、アイドル相手に俺が恋愛感情を抱くことはありません、プロデューサーですから。今までの話は……そういうことで納得してください」
「へぇ……アスリートとかと結ばれて誇らしいといいのも“そういうこと”?」
「まぁ……はい。その話はライブが終わった後にでもするとしましょう」
「あら、そう言いながらのらりくらりと交わしていたのは誰だったかしら?」
「もう逃げません。ライブが、終わったのなら」
「分かったわ。プロデューサーがそこまでいうのなら……ええ、ひとまず納得してあげる」
「ありがとうございます。まずは目の前のライブです。トップアイドル十王星南のラストライブ、伝説にしてみせましょう」
「その作戦が、さっきの?」
「ええ、当然」
はぁ……この人はまったく。でも仕方ない、この人は、こういう人なのだ。こういう人だから、私に新しい可能性を示せたのだから。
それに乗ってこそアイドルの十王星南だ。
「なら教えてちょうだい!! 私を! この十王星南を輝かせるあなたのプロデュースを!!」 - 514225/07/30(水) 16:05:05
開演までもう数秒。今から始まるのは360°から観察される国立競技場を借りたラストライブ。
トップアイドルでもこの舞台でライブができた人間は数える程しかいない。
その責任を、重圧を感じながら、心を決める。
迫り上がりが……始まった。
私の手には軽い剣。
踊り舞うために最適化された私の相棒たる小道具だ。
それをしっかりと、だけど壊さないように握りしめ、遥かなる舞台の上から観客たちを見下ろす。
「小さな野望」
ラストライブの最初を飾るのは、アイドルを諦めかけていた私の、新たなる始まりを象徴とする歌!
そしてファンたちを視界に収めながら、観客の座っている座席と座席の間にある通路に立つ影を見つける。
プロデューサーだ。
そこに向けてこの曲らしい怜悧さを込めた表情で視線を向ける。溢れ出んばかりの熱情を込めて、すると彼は深く頷いて、通路の間に消えていった。
それを気にせず、歌に入る。
また私は辺りを見回し、団扇を作ってくれたり、ペンライトを振ってくれるファンたちにも目線を向ける。
そしてまたあの人の影を探すのであった。 - 524225/07/30(水) 16:07:09
回想
『作戦はこうです星南さん』
『俺はステージ上のランダムな出口に出現します。なので、あなたは必ず俺を見つけ出してファンサービスをしてください』
『何を言っているの……と言いたいところだけど、概ね意図は理解したわ』
『流石です』
『あなたを探すために視線をくまなく観客席に向ければ、全ての席に座るファンへのサービスに繋がる。私の全霊の愛をファンにも届けられる……面白いじゃない!』
『全てのセットリストを完璧にこなせるトップアイドルのあなたにしかできないことです。私も、あなたの愛に全力で応えられるよう、全力で移動します』
『ふふ、どんな場所にいても見つけ出してみせるわ!』
『そう簡単に見つけられると思わないでください』
『この戦いで先輩に初めての黒星をつけてあげる!』
『では、ライブで会いましょう』
『ええ!!』
回想終わり - 534225/07/30(水) 16:09:52
そうして彼と私の戦いが始まった。
ターンは激しく、呼吸も長く、パフォーマンスは雄大。そんな「小さな野望」を歌い上げながら、あらゆる視線でプロデューサーを探す。
動く視線の中で見つけたファンたちに笑いかけて、舞う、舞う、歌い踊る。十王星南という壮大な叙事詩の始まりを!
ふふ、見つけた。
今度は反対側、客席の一番後ろにいるなんて。
どれだけ走ったのかしら……?
もう息が上がっているじゃない。あれを、今日のライブ中、ずっと……??
ここ国立競技場よ???
それは少し、面白すぎる。
でも、それだけ彼は本気なのだ。
私というアイドルに本気なのだ。
どうかと思うけど。
あまりにも力技過ぎると思うけど。
というか、私よりも絶対に大変だと思うけど。
あんな本気の人がいるなら、負けてられない。
砕ける程の全力で輝いてあげようじゃない!! - 544225/07/30(水) 16:11:56
そうして「小さな野望」は終了した。
剣先を向けるファンサービスは見事、先ほどの地点から30°先の座標に移動したプロデューサーに突き刺さった。
30°とはいうが国立競技場の30°は洒落にならないに、上の席まで移動していた。
馬鹿だ。本当に馬鹿だと思う。
ファンに迷惑をかけないように一々裏に回っていることを考えたら尚のこと馬鹿だと思う。
でも、あの地点で息を上げながらも、こちらを見下ろすプロデューサーは視線でこう語っている。
『まだまだこの程度ではないですよね?』と。
ええ、その通りよ。
次の「Choo Choo Choo」の矢も、全部命中させてやるんだから!! - 554225/07/30(水) 16:13:45
ライブは続く。
十王星南はここにありと、後から続く全ての星たちに伝えていく。
そして輝くペンライトを振るファンたちの熱狂に応えていく。
そしてプロデューサーと私の勝負は、今のところ私の圧勝だ。
私のアイドルパワーを見抜く目は、プロデューサーしての経験を経て先輩の力、つまりプロデューサーパワーまでも見抜けるものへ進化していた。
彼がどこにいようと、私が見つけられないはずはない。
だから……目により映るのはファンの顔だった。
私という存在を支えてくれて、愛してくれて、全力を捧げてくれる。その一人一人の表情が、小さくとも美しい。
ああ、私はこんなにも愛されてきた。
私がここで終わってしまうことを、こんなにも悲しんで、名残惜しんで、されど今この時を全力で楽しもうとしてくれている。
それはアイドルとして努力を続けてきた十王星南という人間への遥かなる祝福だ。
楽しかった。本当に楽しかった。
「ありがとう! ありがとう!!」 - 564225/07/30(水) 16:15:27
最後の曲の短い間奏中、泣きながら、そんなことを口走っていた。だけど涙にも屈してはいけない、なお怜悧に、なお笑顔で! 私というアイドルが作り上げてきた完璧な偶像として踊り続ける。
ねぇプロデューサー!
こんなに美しいものに再び貴方は出会える?
こんなに素晴らしいもを手放せる?
たとえアイドルとして終わりだとしても! あなたが隣にいれば私は無限に輝き続けるわ!!
魅せられてない、なんて言わせない!
離れられる、なんて思わせない!
最後の最後、ラスサビが終わる、そして伴奏の終わり際。溢れる感情を熱情を再び込めて叫ぶ。
プロデューサー……だけじゃない!
今日この場にきて、私を愛した全ての人達よ!
「私のものに! なりなさい!!」
空を貫くほどの大歓声に包まれて、ライブは終わりを迎えた。
これがアイドル、十王星南の終わりだった。 - 574225/07/30(水) 16:17:34
万感の思いと共に舞台裏へ降りてきた。
体から空気が抜けていくように、力も体温も抜けていく。
全てだ。全て使ってパフォーマンスしたのだから当然だ。
「お疲れ様です!」
そんな私にタオルを掛けてくれる人がいた。
プロデューサー……だと思いたかったが……女性のスタッフだった。当然だ。あの人はきっと私よりもグロッキーな状態だろうから。
でも、彼女も彼女で興奮冷めやらぬといった様子だ。
「あの、本当に! 本当に素晴らしいライブでした!! ありがとうございます! 貴方のラストライブに携われたことは一生の誇りです!!」
「そう言ってもらえて嬉しいわ。でも感謝したいのはこちらの方……あなたたちのおかげで、この大舞台をやり切れた。本当にありがとう!」
「はっっ! ああぁぁぁぁぁぁぁ」
崩れ落ちてしまった。
なんというかここスタッフなのだから、私がプロデューサーに対してどう思っているのかとか、バレている面子のはずなのだけど。
うん、そんな皆をもこうして魅了できたのなら、満点中の満点だろう。
リハーサルでは不安にさせてしまっただろうけど、彼らにも最高のライブを届けられて良かった。 - 584225/07/30(水) 16:20:21
確かな実感と共に結果を受け入れているとプロデューサーがやってきた。いや、運ばれてきた。
仰向けの状態で、台車で運ばれてきた。微妙に口の端から泡を吹いている。
「死にかけじゃない……フフッ」
「貴方こそ。こんな大舞台を駆け回りながらパフォーマンスをやり切るなんて……ごふっ!!」
「だったら大変なのはお互いね……お疲れ様プロデューサー! あなたのおかげで最高のライブになったわ!」
「ええ、本当に。素晴らしいライブでした」
そこには彼の万感が込められていた。長年連れ添ったアイドルのラストライブをやり切れた誇りと達成感に満ちている顔だった。
「だからこそ、死にそうね」
「まさか……ここで死んだら死に切れませんよ……。楽屋に戻りましょう。お話があります」
「ええ」
ようやく、その時がきた。私のこの思いがどう決着するのかの答えを知ることになる時が。 - 594225/07/30(水) 16:23:55
二人きりの楽屋。
プロデューサーと向き合う。
不思議と緊張はなかった。アレだけ彼が離れていくことが心配だったのに……今はもうそんな可能性なんて思いつかないし……。そうなったとしても、今日この日、全力でファンを愛せた私はどんな形でも生きていけるという確信があったから。
「パフォーマンス、素晴らしかったです」
「当然ね、私は十王星南だもの!」
「勝負は……俺の負けです。まさか全部見つけられるとは……」
「私の目は進化し続けているの、舐めてもらっては困るわ!」
「そして……妬きました」
「へぇ……。誰に?」
「ファンの皆さんに……です」
「あなたにああも愛されているということが、あなたの視線が他の人に向けられていることが、とても悔しかった。追われる側、だったはずなのに」
「プロデューサーにそう思わせることができたのなら、嬉しいわ」
「ええ、正直、今こうしてあなたと語れていることが信じられない程ですよ……。輝きすぎです。妬きましたし、焼かれました。もうあなた以外、視界に入らない」
「……っっ。相変わらず恥ずかしげもない台詞をいうのね……」 - 604225/07/30(水) 16:25:59
「アイドル、十王星南は終わりなのですか……?」
「ええ、終わりよ。そう決めたじゃない」
「本当に名残惜しい……。ここから貴方をプロデュースする手段が何個も思い付いているんです」
「プロデューサーらしいわね。でもダメよ。関係各所とも連携して今日で最後と決めたんだもの」
「俺が結婚相手を探そうと思ったの、やけっぱちだって分かってます?」
「…………へぇ、そうだったの」
「恋だの愛だのは……プロデューサーとアイドルでしたから、俺だって、俺がどう思っているのかなんて分かりません。あったとしても封じるのがプロデューサーですから」
プロデューサーが語る胸の内側。そうか、彼は、私のことだけは、そういう目で見ることのできなかったのだ。
「だけど……アイドル十王星南を失う空白なんて、埋めようがなかった」
「そう……。それはなんというか苦しい思いをさせたわね……」
私も私で苦しんでいたように、彼も救われない矛盾に囚われていた。同じ……だったのだ。
でも、だとしたらおかしくて仕方ない。
お互いの一番はとっくに決まっていたのに。こんな回り道になるなんて。 - 614225/07/30(水) 16:28:27
「なら、私が根回しする必要なんかなかったかもしれないわね。もうプロデューサーの心の中には私がいるって皆知ってたんだもの」
「ですね。色々と試してみようとは思いましたが……上手くいくとは、自分でも」
「フフッ。恋愛に関しては私の方が“先輩”みたいね」
「アイドルが恋愛の先輩だなんて由々しい事態ですけどね」
「ゔぐっ! 痛いところを突いてくるじゃない」
「ですが、今日のライブを見て吹っ切れました。十王星南はアイドルでなくても輝ける逸材です」
「え……?」
「これからも展望も、当然考えてあります。プロデュース、続けさせていただけますか?」
「ええ! ええ!! 当然よ!!」
「では、いきましょうか。まだ関係者に皆様への挨拶が残っています。これをやり切るまで、アイドルは終わりではありませんよ」
「ええ、その通りね! 行きましょう!!」
胸が軽くなる。
やっと受け取ってもらえた。やっと伝えられた。
もうこの人だけと視野を曇らせ、囚われたりはしないけど……この人がいると私の人生は最高に楽しくて輝かしいものになる!
だから、どんな新しい世界に赴くとしても、この人が隣にいていてくれることが嬉しいのだ。 - 624225/07/30(水) 16:29:54
先へ行ってしまおうとする彼の後ろ姿に呼びかける。
「プロデューサー! 告白の返事を聞かせなさい」
「なんですか」
「私のものになるの? ならないの?」
「今の今までプロデューサーだったんです。この感情は……もう少し時間をかけて育みたいのですが」
「煮え切らないわね〜〜、むぅ」
「責任は負います。あなたの人生に全てに……いや……違うな……」
納得がいかないのは、自分の言葉になのか、態度になのか。そうして迷い、言葉を選んだ彼は、初めて出会った時のように堂々と、されど少しの緊張を混ぜた声で口にした。
「俺の他の人間を、あなたの隣には立たせたくない」
「そう……、いい言葉ね。ならプロデューサーの隣にも、私以外の人を立たせないと誓いなさい」
「当然です……ああ、そうか」
そして、彼はこれからの私たちに名付けるべき関係性を、ようやく、ようやく口にしてくれた。
「星南さん。俺を、あなたの人生のパートナーにしてください」
それはまだ私の欲しい約束ではないけれど。
いずれ、必ず私たちが結ばれると確信できるような、そんな祝福に満ちた誓いだった。
「ええ! あなたのものに! なってあげる!」 - 634225/07/30(水) 16:32:04
以上です!!!! 長文失礼しました。
ありがとうございました!!! - 64二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 17:35:55
- 65二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 18:02:43
ブラボー!ブラボー!
- 664225/07/30(水) 20:49:37
- 67二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 23:18:40
この後ガチガチに緊張して挨拶に行ったらあっさり了承されて面食らう学P
- 68二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 01:27:31
本当にありがとう
生まれてきてよかった - 69二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 07:58:11
この後の二人は100プロ所属のままで女優もしくはタレントとそのプロデューサーになるのかな
それか二人とも完全にプロデューサー業に専念するようになるのか - 70二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 08:47:11
P星南はいいぞおじさん「P星南はいいぞ」
- 71二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 10:34:55
- 72二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 18:42:16
- 73二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 18:44:51
会う人会う人が学Pに色目を使ってきて、内心気が気でない星南
- 74二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 19:21:22
- 75二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 22:55:22
まあそうなったらことねか燕が二人の尻をぶっ叩いてくれるよ
- 76二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 08:52:23
もうちょっとで結婚後時空で星南がメイドに釘を刺すギスギスコントが書き上がるので今暫く保守を(需要あんのかな??)
- 77二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 17:41:08
このレスは削除されています
- 78二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 17:43:11
スレタイだけ見て山本昌構文かと思ったらめっちゃ良SSあった…
- 79二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 21:12:26
ほしゅ
- 80二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 21:32:49
- 81二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 21:40:53
>>80さん
本当にごめんなさいミスりました悪いのは自分です
- 82二次元好きの匿名さん25/08/01(金) 22:43:31
需要あるんなら書ききりましょう
ちょっと全体的に描き直してるのと、明日が早いのと諸々あるので、一旦の保守を持ってかえさせていただきます - 83二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 08:37:08
まってるよ
- 84二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 08:43:53
大助かり、間に合わんかもと思って途中経過まで上げる準備してた
- 85二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 17:01:20
だいぶお待たせしております
ちょっとまだフェスで忙しいので途中経過で上げさせていただきます。
レッツギスギス - 86二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 17:02:26
穏やかな夕暮れ、有名デザイナーの手がけた園芸の見える庭、白銀のガーデンテーブル、三段のティーセット、そして金に輝く星のようなお嬢様。
十王家のメイドである私は仕えるべきお嬢様に呼び出されていた。
いつもは彼女の後ろで侍るのが務めの自分が、お嬢様の目の前で座る羽目になっているのか。
「あなたを呼んだ理由心当たりはあるかしら」
「ヒッ。ご、ございません」
「へぇ、じゃあ、私になにか言うべきことは?」
「婚約! おめでとうございます!」
「ありがとう、嬉しいわ!」
そう、星南お嬢様はめでたく長年連れ添った相方とも言えるプロデューサーと婚約を果たした。
ラストライブの直後のことらしい。なんという素早さ、お嬢様だからこそ見逃さなかったのでしょう。
私にとっても、喜ばしいことだ。本当に。
お嬢様の幸せが私の幸せである。偽りなく、本当に。
ただ……。ただ……。もしも、もしもだ。
プロデューサー様と結ばれる機会があったのなら、ええ、飛びついていたかもしれません。
もちろん、それは星南お嬢様が彼を恋慕っていると相談される前のこと。それを聞いてからは、私はこの思いに蓋をして、お嬢様と彼が結ばれるようにと行動してきました。
彼に近づく危うげな女性陣へ、お嬢様が先手をとって釘を刺しに迎えたのも、私の調査あってこそ。キューピッドになる覚悟も、もちろんしておりました。 - 87二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 17:04:37
ですが、まぁ、本当に予想外と言いますか、望外の幸福と言いますが……プロデューサー様から私にもお食事の誘いがあり……。
ええ、もちろん断りました。断りました!
ですが……ええ、その際に私の残してしまった未練がましい“3文字”についてお嬢様はどこかから聞いてしまったようなのです。
「もちろ……という未完成の言葉があったとするじゃない?」
「はい」
「その後に、あなたはどんな言葉を入れる?」
「……………さぁ? 私には……なんとも……」
「ふむ、日本語の場合は一つくらいしか思いつかないわね……。『ん』を入れるとそれっぽいわ」
「いえいえ! 適当ではないと思いますよ! 『ん』だけはあり得ないのではありませんか!?」
「そうよね? 主人が恋慕っている相手から誘いの電話があった時、メイドがいうはずもない四文字ができあがるものね?」
「はい、もちろん。…………あ゛っっ」
「どうしたの? お茶を喉に詰まらせた? きちんと、ゆっくり、飲むといいわ」
「はい………………」
「もう一度聞くわね? もちろ、の後に続く言葉って……なにかしら?」 - 88二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 17:44:13
こわいよ星南ちゃん、学Pに逃げられちゃうぞ
- 89二次元好きの匿名さん25/08/02(土) 21:12:44
お嬢様というか、ヘタすりゃもう若奥様だね
- 90二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 00:31:43
アイドル引退後だから年齢的にも今より貫禄が凄いことになってそう
- 91二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 01:34:14
でもさあ、学Pいい男だしOK出すのはしゃあなくないか
- 92二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 10:35:17
学Pはさしづめ「婿殿」か
- 93二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 11:18:05
刻一刻と時間が流れていく、口の中が乾いて仕方がない。視界はぐにゃりと歪んでいる。夕暮れはピンク色で、ティーセットはアメンボだ。
だけれど、星南お嬢様は逃がしてくれない。
「もちろ……もちろ」
舌で転がすように、弄ぶように三文字を転がすお嬢様。
まずい……本当にまずい。
お嬢様が他の女性たちに説得するのを手伝ったのは私だ。その苛烈さは当然知っている。
なにか、なにかで誤魔化さなければ…… - 94二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 11:28:47
「もちろ……もちろ」
「……………………」
「もちろ……やっぱり『ん』かしら?」
「もちローランド!!!!」
唐突に叫んだ私に目を丸くするお嬢様。
変なことを言っている自覚はあるが、飲まれるわけにはいかない。
「どういう意味?」
「『もちろ』の『ろ』とはローランドの略だったのです!」
「〈もち〉ろん〈ロ〉ーランドだったってこと?」
略称の部分にアクセントをつけながらも、お嬢様はいった。まだ困惑から抜け出せていない。
このうちに誤魔化し切らねば……!
「ローランドって、たしか……ホストの……?」
「はい。そのローランドです」
「ど、どういう意味なの?」
「『貴方が女性と付き合う選択肢は二つしかない、星南お嬢様を選ぶか、付き合わないか』とそういう意味を込めました。忠義です」
「意訳がすぎるでしょう……随分と元の言葉からもかけ離れていないかしら?」
「プロデューサーさんなら、このくらいは察して下さるか…………と…………いうのは関わりの浅い私のような一介のメイドには分からないことでございますが……」
「…………別にいいのよ? 私の“旦那”の察する能力はそれほどまでに高いもの」
「そうですよね、本当におめでとうございます」
「ありがとう」
「はい…………」
「ちなみにローランドだとするのならば、こういう意訳もできるのではない?」
「『あなたが付き合うべき女性は2人しかいない、星南お嬢様か、私か』ってね」
「お嬢様…………!」 - 95二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 21:02:54
パニくるあまり訳わかんない言い訳しちゃうメイドさんかわいい
- 96二次元好きの匿名さん25/08/03(日) 21:48:22
メイドさんバグったじゃーん
- 97二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 07:40:18
続きを待機
- 98二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 17:21:58
「そ! そ〜れは発想の飛躍ではございませんかお嬢様!! 流石にありえません。ええ、ええ! 使用人がそんなことをいうはずがございません!」
まずい、お嬢様はあまりにも恋敵を警戒しすぎている。どのような言葉も脳内変換されて、『プロデューサー様を狙う悪い虫の言葉』になってしまうのだ。
逃げ場はないかもしれない。
「へぇ、使用人が言ったと……知っているのね?」
「それは今更ではございませ……あ」
お嬢様は例え話の体でお話をされていた。使用人がいうはずもない言葉とはいったが、使用人がいった言葉とも、私がいったともまたいっていなかった……!
それはずるっこです……!
お嬢様は目を細めて、鋭利な視線を送ってくる。
その目は私の中に眠るなにかを測るようだった。
アイドルアイ、プロデューサーアイに続いて、プライベートアイの能力まで得たとでもいうのでしょうか?
「使用人が、彼の誘いに『もちろ』と返しかけたの?」
「ええ、ええ。私は存じておりませんし、もし言ったとしても私ではございませんが、もしかしたら使用人がそう言ってしまったのかもしれません」
「そう、あなたがそういうのならば信じるわ」
「あ、ありがとうございます……」
- 99二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 17:25:05
今、自分はどんな状況だ?
泳がされている鯉なのか、まな板の上の鯉なのか。
その答えをお嬢様は端的に告げた。
「ちなみにプロデューサー……“旦那”は誠実でね、自分が浮気しないよう、声をかけた女性の名前は全て教えてくれているの」
「そそそそそそ、そぉぉおおうでございますか」
「あなたの名前もあったわよ」
「あ゛っ…………」 - 100二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:00:10
死亡確認
- 101二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 22:03:14
そもそも1の時点で学Pの誘いを慌てて断る時のセリフが騙せるはずのない「誰ですか?」なんだからこのメイドさんが上手い言い訳をできるはずないんだ
- 102二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 07:53:10
ここから助かる道はあるんですか…?
- 103二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 17:42:37
学Pお前がまいた種だろ助けてやれ
- 104二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 17:50:30
まっずい、間に合わなかった。
もう少々お待ちください。 - 105二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 23:33:47
俺らはずっと待ち続けるからよ、止まるんじゃ、ねぇぞ
- 106二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 00:18:04
激オモ星南ちゃん
- 107二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 08:20:30
- 108二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 11:41:34
それを見てさらに目が漆黒になる星南
- 109二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 20:42:19
保守
- 110二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 23:14:33
やっぱ星南は重くなくちゃな
- 111二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 23:18:05
みなさま、保守を続けてくださり本当にありがとうございます。
少し更新させていただきます。 - 112二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 01:40:46
筒抜けだった……。全部……。質問はただの確認作業で、私が黒であることは既に知られていたのだ。
プロデューサー様……なんてことを……。浮気の可能性を自ら撲滅するのは誠実であるとは思いますが……。
「はい、私が言いました」
「応じそうに、なったのね」
「はい…………」
私の返答を聞いて、お嬢様はとんでもなく、深淵な表情をされてらっしゃる。全ての殺意を隠すような鉄仮面に身震いが止まらない。
解雇……ですかね。流石に。
私ならば、夫に粉をかける可能性のある使用人なんて屋敷には置いておかない。
ああ、嫌だ。お嬢様の元を離れたくない。
- 113二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 02:03:25
「あら、そんなに全てを吐き出しそうな程に怯えなくっていいのよ。別になにもしないもの」
「本当……ですか?」
「きちんと気持ちを確認したかったの。誤魔化して欲しくなかったから、少し徹底的に追い詰めさせてもらっただけ」
「こちらは死を覚悟いたしましたが……??」
「そんなことしないわ。でもちゃんと答えて欲しいの」
「…………はい」
「好きなんでしょう? プロデューサーのこと」
どうするべきだ??
確かにお嬢様は、人を消したり、解雇したり。そこまで汚いことはしない。するわけがない。今まで見てきたお嬢様は華やかで綺麗で、それ以上に、完璧であろうと意志をもって努力し続けてきた人、十王星南なのだから。
プロデューサー様と結ばれるまでの乱心状態の期間も、お嬢様は110プロダクションの権力をちらつかせて全ての恋敵を追い払ったが、実際問題としては「なにもしていない」のだ。
つまり、私がプロデューサー様のことを狙っていなければなにもしないということで……そもそも私にはその気がない。
ならば、なにも問題はないのだ。
「ね、正直に言いなさい? 好きなの? プロデューサーのこと」
「いえ、本当に、全然、まったく、好きではありません」
だから、これで完璧な回答のはず。 - 114二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 02:19:54
「…………………そう。ならいいわ」
「ご理解いただき、幸いです」
なのに、なぜかお嬢様は暗い表情で視線を影に隠してしまわれました。
意味が……意味がまったく全然、分かりません。
でも、これでいい。そもそもプロデューサー様を奪いたい、なんて思っていないのです。
お嬢様にはプロデューサー様が必要なのだと分かっていたのだから。そして私の淡い憧憬は、星南お嬢様と共にあるプロデューサー様を見て、抱いたものなのだから。
「なら、あとはゆっくりとお茶を楽しみましょう。プロデューサーと婚約できたのは、あなたが悪い虫が付かないように監視してくれていたからなのだし。お礼をさせてちょうだい」
「………はい、ありがたく」
拍子抜けするほど呆気なくお嬢様は手を緩めてくれた。お茶会が終わりというわけではなさそうだが、心なしか先ほどまで纏っていた圧のようなものは少なくなっている。
でも心なしか、拗ねているように見えた。
普段の分かりやすく可愛らしいものとは違う、表情を表に出さないようにする拗ね方。
……なにか事情があるのでしょう。
ただ現在のこの微妙な距離感でそこに踏み込むことはできない。変なボロを出したら次こそ終わりな気がするからだ。 - 115二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 02:26:30
「そこのクッキー、食べてもらえると嬉しいわ。私が焼いたの」
「お、お嬢様の……手作り! 是非、いただきます!」
静かなる夕暮れ、最も赤い空が影を雄大に伸ばしていく。張り詰めた空気の中でお嬢様は、誰も口をつけていなかったクッキーを手にとり、口へと運んだ。
粉を落とさないように丁寧にクッキーを頂く。
お嬢様の前で、お嬢様のお焼き上げになったものをいただくのだ。一挙手一投足に気を張って優雅にいただかなくては。
うん、緊張のせいで味は分からない。
甘い、しっとりしてる、口当たりがいい。ぐらいしか分からない。
まぁ、手作りのクッキーでこのしっとりした品のある口当たりを出せるのは並大抵の技術ではないはずです。流石はお嬢様。 - 116二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 02:29:27
「ちなみだけど、“旦那”もこのクッキーが好きよ」
「…………そうでございますか」
「ええ、お父様への挨拶で忙しかったから、焼いてあげたの」
「それは……おめでたいですね……」
「あら……胸が痛い?」
「いえ、まったく」
「…………『結婚のお知らせ』」
「っっ!」
「…………『家族になろうよ』」
「っっっっ!!」
「…………『十王家婿入り』」
「っっっっっっっっっっ!!!!!!」
「やっぱりプロデューサーのこと好きでしょう?」
「いえ、別に、まったく」
「往生際が悪いわよ…………!?」
お嬢様が意地悪なんですよ……!!
なんで認めさせたいんですか!? - 117二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 02:43:47
プロデューサー様からお誘いを受け、そしてお誘いを受けかけたことを認めた結果、なぜか処罰はされず、詰問は新たなるステージに移り変わりました。
即ち、私自身の気持ちを問いただすものへと。
なんで……??
そして意地と忠義で気持ちを認めない私に痺れを切らせたお嬢様は、更なる苛烈な手を使ってきたのです。 - 118二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 02:55:44
「プロデューサーってばクッキーの食べ方がとっても変なの♪ 唇で挟んでから齧るのよ♪ だから口を離すと毎回粉だらけで、毎回拭いていて。それをじっと見てると【文句あります?】みたいな不貞腐れた目線を返してくるの♪」
想定外です。惚気を話すだけのことが拷問になり得るなんて……
横恋慕さえしていなければ胸焼けで済むものを、しているから大火傷だ。
「でも仕事の連絡がきた時に、プロデューサーったら唇に付いた粉を拭き忘れて♪ だから私の舌で……♪♪」
話があまりにも濃厚すぎる。
火事の続きは地震だとばかりに体が震えている。
淡い恋がフルフェイクされる衝撃と惚気の甘さで酩酊しそうだ。
ただの……ただのカップルの惚気がこんなにも重い破壊力を持つものなのですか?
「そしたら♪ プロデューサーってば顔を真っ赤にして、そっぽ向いてね♪」
こんなことが許されるのでしょうか……!?
「仕返しとばかりに顎をクイっと持ち上げて、焦らして♪ 焦らしてから♪ クッキーを♪ 私の口に♪」
許されるのでしょうか!!!!???? - 119二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 02:57:27
次からプロデューサー様がいらっしゃって話が終わりに向かうので、またお待ちいただければと……皆さん本当にありがとうございます
- 120二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 11:56:14
楽しみに待ってます
- 121二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 16:35:54
ゆっくり待ってます
- 122二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 18:40:56
さすが十王星南、特殊プレイのレベルが高い
- 123二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 22:54:05
最後どうなるのか…
- 124二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 06:47:21
( ⸝⸝⸝⩌ ᵕ⩌)✧フフフ・・・
- 125二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 10:23:07
特殊プレイで右に出る物はいない流石一番星
- 126二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 20:14:49
学P何とか救ってやってくれ
- 127二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 23:27:03
保守
- 128二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 23:27:32
悪い女やでえ
- 129二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 08:59:40
保守
- 130二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 09:35:08
良質なSSが2本も投下されてる!すごい!
- 131二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 18:25:26
楽しみ
- 132二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 20:58:26
保守
- 133二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 22:02:57
流石に3日間くらい待ってるからいつ出せそうなのかは言って欲しい
- 134二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 06:00:48
すいません。前回の更新を「今日仕上げんとまずい……!」と一気にやった結果思いっきりバランスを崩しまして……顔出せずにいました。こちらの方に早めに連絡しておけば良かったですね……申し訳ない。
とはいえ休んだ甲斐あって、一通りの流れは書けたので、月曜日の朝か夜までには上げられると思います。
度々にはなりますが、保守してくださった皆さんありがとうございます。 - 135二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 11:04:17
待ってる
- 136二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:37:17
保守してあげてもいいよ
- 137二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 23:33:32
保守
- 138二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 09:31:02
保守
- 139二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 15:35:39
こう、並ぶ保守の数だけ罪悪感が湧きますね……
もう少し、細かく挙げられるタイプの話だったら継続的に皆様が楽しめる形にできたんですが……申し訳ない
ひとまず、書き上がりましたので、上げさせていただきます。皆さん本当にありがとうございました……! - 140二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 16:09:47
「なにをしているんですか?」
「ぷ、プロデューサー!? 早かったわね」
「まぁ、あまり時間をかけるようなことでもありませんし……急がないとまた大変なことになっていそうな予感がしたので……」
プロデューサー様であった。
見間違えるはずもない、鼓動が高鳴り抑えられない。あの理知的な目は内包している知識の量を物語り、ものを真っ直ぐに射抜く視線には、知識だけに止まらない人を信じ抜く覚悟が感じ取れる。
薄い血色の肌は不健康そうで、彼がアイドルを輝かせるためになによりも時間を惜しんでいることが想像できる。
惚気フルシェイクで破壊された脳みそがプロデューサー様を見る潤いで再生していく。
何度、何度、何度見ても、カッコよくて見惚れてしまう。生きるエネルギーが補給される感覚がする。
でも、この口がお嬢様に……! 耳も、鼻も、首もお嬢様に……!
「あばばばばばばばばばばばば」
「完全にとどめを指しているじゃないですか……大丈夫ですか? 大丈夫ですか!?」
- 141二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 16:58:13
フルフェイクされて破壊された脳をさらに誰かに揺さぶられている。
それが誰か分かっているけど、理解を受け止める脳の容量がなくなっている。
「お、俺のせいでこんなことに……すいません」
「あら、あなたはそちらの味方になるの?」
「この件に関していえば私とあなたは同じ方向を向いていたはずでは……?」
「うぐっっ、いえ、別に、そういう訳でも」
「……もしや、まだ自分の中でどうするか決めてないんですか?」
「だって! プロデュースとこれでは全然違うじゃない!」
「同じですよ……特にあなたが失敗した理由が……」
「な、なんだっていうの……?」
「相手が事情を理解するよりも前に自分のペースで話を進めることですよ。ことねさんの時も……ほら……」
「ほら、ってなによ!?」
「言っていいのならばはっきりと、逃げられてしまいましたよね」
「うぐっっっっ!!」
「特に今回はあなたの事情も話していないようですし、より彼女は混乱したのでは……?」
「……そうかもしれないわ」 - 142二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 16:59:40
「兎にも角にも彼女の正気を取り戻しましょう。……どうすればこんなことになるんだ」
「あなたとのその……楽しかった思い出を少々というか……」
「なるほど、自分に置き換えて考えると憤死しそうになりますね……。そしてそれを、よりにもよって……彼女に……?」
「わ、悪い……? メイドは私のものなんだから!」
「大切にしたいから、直接あなたがお話しするという手筈だったはずなのに……」
「あばばばば。あっ、南十字座…………綺麗…………」
「こんなになるまで…………?」
「フフッ。身内にしか話せないことだったから、少し興がのってしまったの」
「あぁ……自分が鬼も逃げるほどの断罪者であることをすっかりと忘れて……なるほど、事情は把握しました」
「凄い言い草ね……」
「星南さん」
「なに?」
「人間に戻ったのなら、人間に戻りましたと言わなければ相手には伝わらないんですよ?」
「私をなんだと思っているの!?」
「ライブ後に聞いた話では、羅刹女と呼ぶのが相応しい活躍ぶりであったと……」
「ぐっ……それは……私も反省するところよ」
「……そこも含めた詳しい話は彼女も交えてすることにしましょう……すいません。今話せますか?」 - 143二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 17:01:19
プロデューサー様の声が聞こえる。
お嬢様との会話は聞こえていた。なんだか懐かしい……。脳が壊されているのに、その微笑しいやり取りに心はポカポカする。変な感じだ。
本当に変な感じですね……???
「はっっ!」
「気が付きましたか……!」
「あっ、プロっ……。誰ですか!?」
「プロデューサーです。名前を呼んだだけでは星南さんの怒りには触れないのでご安心ください」
「そ、そうなんですか? お嬢様……?」
「ええ、怒っているわけじゃない……わけじゃないわ」
「ど、どっちなんですか!!」
「ああ、なるほど……そこがせめぎ合っていたのか」
プロデューサー様は眉間に皺を寄せて考えている。きっとこの理解不能な状況に苦慮なさっているのだろう。
「ひとまずはご挨拶から。お久しぶりです、電話の件ですが失礼いたしました。ご苦労をかけたようで……」
「いえいえ! 全然!! こちらはばっちこい…………で…………はなくて、本当に困っているので金輪際やめてくださいね!」 - 144二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 17:51:45
久しぶりの挨拶に胸を躍らせていると、お嬢様からの視線が痛くて仕方がなかった。
「星南さん……」
「ぷ、プロデューサーが悪いのよ。この件に関しては」
「そこに関してはアイドルとプロデューサーである限りどうにもならないジレンマだとお伝えしたはずでは」
「でも! その……乙女心というものがあるのよ!」
「そうですね……。ですが彼女にも乙女心はあると思うのですが……?」
プロデューサーがこちらに目を向けてお嬢様にいう。あ、これ守られているみたいでちょっといいかも。
ほっとしているとお嬢様の目が冷たくなる。
……どうしたらいいんです? お嬢様? - 145二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 17:56:58
とにもかくにもプロデューサー様に先ほどまでにお話しした情報を共有した。終盤の惚気しか見ていないはずのプロデューサー様は、前段の“爆詰もちろ追求”の話を聞くとさらに眉間に皺を寄せて顔を険しくした。
「星南さん、確認をとって、慎重に話を進めると仰っていましたよね?」
「でもそれは……メイドが正直に話さないから、少し意地になっしまったというか……」
「なるほど。昔のままの天然さと独占欲を剥き出しにした情念が混ざり合うとこんなにも怖いんですね……勉強になります」
「分析をしないでちょうだい……」
「いいですか? 普通の人は恋敵に対してあれだけの大立ち回りをした人間が自分を詰問してきたら、次処断されるのは自分だと思います」
「そんなわけないじゃない。私とメイドの仲よ?」
「先程もお伝えした通り……死ぬかと思いました」
「そんっっ!?」
「この通り。その上で俺たちのエピソードを話して釘を刺すと同時に動揺を誘うだなんて……拷問ではないですか?」
「そこまでなの?」 - 146二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 18:02:05
お嬢様はこちらに流し目で確認をとってくる。
「それはまぁ……とっても怖かったです。まぁお嬢様が楽しそうなのは良かったですが……」
「それに……彼女にだって、メイドと主人という関係の間でどうしようもないジレンマを抱えているはずです……まずはそこに目を向けてあげては?」
そして、だ。なんとなく返答はしているが、正直まったく話についていけてない。概略だけ話されていて、話の核がみえてこないというか、なんというか。
とりあえずお嬢様がプロデューサー様を好きなのは分かった。確認するまでもありません。
ただし、私を解雇せずにわざわざ惚気を聞かせて脳みそを破壊してまで本心を聞き出そうとした理由は不明。本当に意味が分からない。
え、これが理解できるようになる理屈とか……あります?
ただし、お嬢様もとても言葉にするのに苦しんでいるようで、そう簡単な理屈でもないようだ。
そして夕陽が落ち切るまでの時間をかけて、お嬢様はそれを口に出した。 - 147二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 18:10:03
「あのね……。あなたがプロデューサーのことを好きなのは、分かっているわ。たとえ、あなたが認めなくとも」
証拠を掴まれているのだから今更といった感じではある。が、先ほどまでの態度をみるに、お嬢様にとって大事なのは“好き”という気持ちの方なのだろうか?
私からそれを認めることはございませんが。
この意思は硬い、どれだけの惚気で脳を破壊されても、一生隠し通せる自信が自分にはあるのだ。
私のその態度を察してか、お嬢様は私の言葉を待たずに続けた。
「そして私は……その気持ちを…………我慢させたくは……ないのよ……」
「…………はい?」
「プロデューサーとの浮気を許すとか、そういうことじゃないのよ……。この人は私にとって絶対に必要で、もう離れられないから」
「承知しております、お嬢様」
「…………? 分からない?」
「…………? 分かりませんお嬢様」
「……そう。また言葉が足りていないのね。少し……待ってくれるかしら」 - 148二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 18:24:11
お嬢様はまた考え込まれてしまった。
うん? 我慢して欲しくはない。だが浮気を許すつもりはない……? トンチ? 私は一休様ではないのですが……?
しかし、お嬢様の本気のご様子……どうしたら?
目の前の情報を咀嚼し、幾星霜もの時間が体感で経過して、再びお嬢様が口を開きました。
「その……ね? 私にとって絶対に必要で、もう離れられないのは……あなたもよ」
「っっっ!!!!」
「ずっと前から面倒を見てくれて、ある意味では一緒に育ってきたようなものでしょう? あなたも私のもの、手放すつもりはないわ」
「お嬢様…………!」
なんと! なんと嬉しい言葉でしょう。なんとありがたい言葉でしょう。なんて幸せなことでしょう……!
「……ただね、いい話だけでもないの……ほら、絶対に離れたくないあなたが、絶対に渡したくないプロデューサーを好きというこの状況……分かる?」
「ああ……なるほど……。なるほど……」
徐々に理解はできてきた。正直お嬢様のお言葉の衝撃が大きすぎて、正直それどころではないのだが、起こっていた事態とお嬢様の動機については予想ができてきました。
「そういうわけで慎重に事実を確認してから話を進めたかったのだけれど……下手だったのね……」
「断罪者としては右に出る者はいない上手さでは……ありましたよ?」
「………………………反省するわ」 - 149二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 18:31:11
しゅんと落ち込んでらっしゃる。
愛に狂うお嬢様ばかりみていたので、こちらも感覚がおかしくなっていたけれど、お嬢様は、こういう可愛い方なのだ。
うん、ならばきちんとお嬢様を信じて待とう。
「ふふ、今怖くなくなったので大丈夫ですよ」
「ありがとう……話を戻すわね」
そうしてお嬢様はお話になった。今回の謎のお茶会が始めた理由を。
「あなたがプロデューサーのことを好きだとして……でもあなたは私のメイドだから、ずっと我慢することになる。それが……いやだったの。きちんと区切りをつけさせてあげたかった」
そうか、お嬢様は私を大切に思って……あれ?
「ちゃんと失恋するのが前提ではあったんですね?」
「プロデューサーは渡さないわよ!!」
「難儀すぎますってお嬢様!」 - 150二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 18:51:54
でもなるほど、そういうことか。
あんな状態になるわけです。私の感情を封じるような真似はしたくないけれど……私がプロデューサー様に対して想いを伝えて、区切りを付けたとして、万が一にでも結ばれるようなことがあったら、と。お嬢様も迷ってらしたのだ。
だから探偵のように鋭く、羅刹女の如し威圧感をもって確認をしてきたと……。
うん、分かるわけがございません。
プロデューサー様がいらっしゃって本当に良かった。
そう、プロデューサー様がいればお嬢様は自分の中の答えを出すことができますし、プロデューサー様がいれば、そんな不安も吹き飛ばせる。 - 151二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 18:58:45
「というわけですがプロデューサー様。私があなたを好きだったとして、思いを告げられたとして、靡く可能性はありますか?」
「まさか。当然ありません」
お嬢様が己の気持ちを詳らかにするまで口を閉じて待っていた彼は、私の問いに明確な答えを出した。
「お嬢様……。これは振られたと形容してもよろしいのではないですか?」
「えっ……でもこんな……あっさり……?」
お嬢様は呆気に取られている。あまりの速さに状況を受け止められていないのだろう。
でも、それは私と、プロデューサー様を舐めすぎだ。
私たちが、どれほどまでにお嬢様を好きなのか。まったく分かっていない。
お嬢様と一緒にいるためならば、それこそ一生気持ちに蓋をすることになっても構わないのだ。
プロデューサー様も、一度連れ添うと決めた相手から離れるようなお人ではない。状況や運命が立ちはだかっても打開策を見つけられるお方だ。
なによりお嬢様よりも誰かを好きに……なんて、なれるわけがない。
それはお嬢様が……お嬢様自身を舐めすぎだ。
あなたがどれほど気高く、優しく、雄大で、美しく、近づくものを魅了するのか、アイドルをやめた今でさえ分かっていないというのか。 - 152二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 19:06:00
『私のものに! なりなさい!』
あのラストライブの日。元から命を捨てられる程の覚悟だったあなたへの忠誠は魂を焦がすほどに絶対的になったのです。
最初こそ一人だけに向けられていた愛を……徐々に、徐々に、関係者、スタッフ、ファン、そして……使用人を初めとする周りの者たちに向けてくれていた。それが分かった。
ずっと前から知っていたことではあるけど、お嬢様は自分を取り巻く世界全てを把握して、感謝できる人なのだ。
『いい仕事には、いい仕事で応えたくなるものよ』
そう言って、最高のパフォーマンスを見せてくれる背中。憧れ、焦がれ、愛してやまないお嬢様。
遠い過去、絶対に……絶対にこの人のために生きると、そう決めて、今の今までそれは変わっていない。
そういう人がいるだけで、幸せものなのです。
その人を幸せにしてくれる人だから、好きになったのです。
だからお嬢様とプロデューサー様が結ばれることは、私の幸福の絶対条件でもあるのです。 - 153二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 19:09:00
「お嬢様、いいのです」
「…………本当に?」
「私はお嬢様、一筋ですから」
「そう、分かったわ。ごめんなさい、時間を取らせて」
「いえ、お嬢様に大切に思われていると知ることができて、良かったです」
「ええ、私も大好きよ」
そうして私の、始まる前にしまった恋は、お嬢様に無理矢理引っ張り出されて、向かうべきところに向かって、散った。
「じゃあ、もう少しだけ話さない?」
「いいですよ」
「プロデューサーと一緒にお父様に挨拶に行った時なんだけど……」
「「それはやめてください」」 - 154二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 19:19:01
今プロデューサー様と声が被った。
惚気がお腹いっぱいの私と、なにやらそのエピソードを他人にバラされたくないプロデューサー様と偶然、声を出すタイミングが同じだっただけ。
それだけだ。
それだけでお嬢様は頬を膨らませている。
もう……本当に、可愛い人。
私はお嬢様のことが大好きだ。
きっとプロデューサー様に横恋慕した方たちも、ただ十王星南の芸能活動を支えてきた全ての人々も変わらないのではないかと思う。
この人もこの人で、随分な人たらしなのだから。
「ちゃんと諦めなさいよ……?」
お嬢様が拗ねたような視線をこちらに向けてくる。
でも、それがなんだか嬉しかった。
それならば私も我慢することなく、使用人が言うべき四文字を言って差し上げましょう。
「ええ! もちろん!!」 - 155二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 19:28:52
以上で終了となります!!!!
長期間の保守ありがとうございました!!!
少し後にメイドとプロデューサー様の後日談を上げて私のターンは終了とさせていただきます。
(もう書き終わってますのでご安心ください)
スレ主でもないのに、こんなに待っていただき……本当に、本当にありがとうございました……!! - 156二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 22:55:48
- 157二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 01:07:26
やきもきさせおって……
- 158二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 10:49:27
最後の最後になりますがメイドとプロデューサー様の後日談、上げさせていただきます
- 159二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 11:25:25
焼けるような昼だった。
日は真上に座し、影が小人のように縮こまっている。水をやった庭園の草木が弾く水滴が、小さな虹色を宿しながら滴っていく。
日課の掃除洗濯調理などなどを済ませて、お嬢様のお帰りを待つのが今の仕事だ。
この度プロデューサー様が、遂に“旦那様”になるらしく、その前に屋敷を案内することになったのです。
お嬢様とプロデューサーが、一緒にやってくるはずだが……
「すいません。星南さんは別件の用事が入ったようで……」
「なるほど……」
今回の見回りはお嬢様の粋な計らい、的なものでプロデューサー様と二人きりですることになった。
……え、なんで?
どうせあとで、なにもなかったかを確かめるために、爆詰めされるのに?
「プロデューサー様……録音機とかあります?」
「はい、もう回しています」
頼りになりますね。本当に。 - 160二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 11:29:02
食卓、浴場、大広間、この屋敷に案内するべきところは沢山ある。
ただ案内するだけでそれなりの距離になる。
ので、どうしても会話しないと間がもたない。
「プロデューサー様は……前のお話のこと、どのくらいお聞きになっていました?」
「まぁ、普通に全容を教えてもらっていましたよ。『我慢させたくない』『でも取られるのは嫌』ここに関しては最後まで答えが出なかったので、星南さんがその場でどう判断を下すのかに委ねました。まさか、あんなことになるとは……」
「あはは、序盤は心臓止まるかと思いましたけど、後半はそれなりに楽しかったですよ。お嬢様が楽しそうだったので」
まぁ、脳が壊れたことに関してはノーカンということで、やっておかないと心配だったというお嬢様の気持ちも分かるから。
「そういえば……私以外の方々はどうしたんです? お嬢様が追い払っていたとはいえ、プロデューサー様のことを好きな人は沢山いらっしゃったと思うのですが……」
「あぁ、その件ですか。私が皆さんに直接挨拶に伺いましたよ」 - 161二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 11:40:32
あぁ、私がされたのよりも残酷なことが起きていたようです。素直に可哀想かもしれない。
そして、ということはである。
「プロデューサー様も結構お嬢様に詰められました?」
「えぇ、一週間は」
「うわ…………。ちなみにどんな内容で」
「自分の魅力を自覚して行動するように……と。おかしいですよね?」
プロデューサー様は苦笑しながら流し目で同意を求めてくる。うん、この表情をしておきながら無自覚は罪でしょうに。
「それは……お嬢様の方が正しいですね………」
「なんでです?」
「いや……まぁいいです。説教を受けながら睦言に励んでください」
「……」
「顔赤いですね?」
「話を、戻します」
「睦言って言われて、照れてます?」
「話を、戻します」
「どうぞどうぞ」
「とにかく、他の方々には私がご挨拶して関係性を知らしめて、まぁお祝いをいただいたという形です」
「中々に強烈な手段ですよね。そうやって封殺されちゃうとなにもできないと言いますか」
「実はあの日は、それを行った後でした」
「そうだったんですね」
この人、『あまり時間がかかるようなことでもない』みたいなこと言って戻ってきませんでした?
この人本当に色恋はアレなのですね…… - 162二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 11:59:22
「お嬢様に捕まっておいて良かったですね」
「はい、それはもちろん。……こんなに幸せなことはない」
「ちなみに今のは恋人としてですよね?」
「プロデューサーとしてですが?」
「即答なんだ……」
「星南さんにこれをいったら相当に怒られました」
「それは……そうでしょうとも……」
「まぁ、今ならきちんと言えますよ彼女の好きところ」
「おお! ちなみに録音されてるけど言って大丈夫です?」
「聞かせてやりましょう」
「おお、攻め気ですね」
「彼女は、標の星なんです。空に輝いて、人々を焦がれさせ、星にならんと努力させる星」
「その星々が高め合って最大級の輝きを放つ、最大級の輝きを放つように導く」
「そうして彼女が時代を作り上げていく」
「数多の星々が一挙に輝く、奇跡のような時代」
「何度も何度も星々が輝いて、負けてもまた這い上がって輝き出す」
「まるでスターマインが行われたかような……激しくも美しい光景を……見せてくれる」 - 163二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 12:08:39
凄い。やはりプロデューサー様にはお嬢様が輝く星に見えているのだろう。……こんなにもお嬢様を美しく捉えてくれているなんて。
「でも、それってアイドルとしての星南お嬢様なのでは?」
「ぐっっ」
「あ〜〜、こ〜れはお嬢様も大変ですね」
「いえ、その。」
狼狽えながらずれた眼鏡を直してらっしゃる。可愛い。
「目が離せないというのは本当です。可愛い……とも思っています。これから……新しい魅力をどんどんと知っていきたい」
「そして誰にも彼女を取られたくない。あの輝きを広める努力は惜しみませんが、それに近づき焼かれる栄誉は、俺の……いや、俺たちだけのものにしたい」 - 164二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 12:13:09
おっっも。全然彼から向く感情も重かった。
いや、確かにあれだけの輝きを一番近くでみて、そうならないはずもない。
ラストライブで、それを特に自覚させられただろうから。
おかしな2人だ。
そんな2人だけの世界を作っていても、私のようなものを気にかけてくれているなんて。
“俺たち”なんて言い直さなくてもいいのに。
重力のような愛情をもつお嬢様と、それと同等の愛をもつプロデューサー様、それぞれが重いはずなのに堕ちていくのではなく。引き合って、一緒にお互いを追うように回っている。
まるで双星だ。
そしてそれに引き合って多くの星が集まってくる。
うん、本当に共にあることが定められていると勘違いしたくなるほど、相性の良い2人だ。
「安心しました。お嬢様との日々を、是非楽しんでください。これからもきっと楽しいはずです」
「ありがとうございます」 - 165二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 12:19:07
色々話しながら、大体のところには案内できた。
最後に案内をした食卓で軽い軽食を振る舞うことにした。
食卓のテーブルはシルクのテーブルクロスに、光沢のある椅子などなど、豪華な家具たちを前にプロデューサー様は落ち着かない様子だ。
「いいんですか?」
「はい。慣れていただかなくていけないと思いますので」
そしてプロデューサー様に紅茶とクッキーをお出しする。
「ではいただきます」
クッキーをいただくお嬢様。お話で聞いていた通り唇で挟んでから齧っている。
ハムスターのようにクッキーを齧ってから、プロデューサー様は玄妙な表情をする。
「ご馳走様でした……その……美味しかったです」
「本当に美味しかったです?」
「いえ。その……」
「ふふ、クッキー作りもお嬢様の方が上手なんですよ。口寂しいと思ったらお嬢様……奥様に言ってくださいね。私が用意できるのはこれくらいのクオリティなので」
「……わざとですか?」
「どうでしょうね?」 - 166二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 12:28:19
「少しだけ、いいですか?」
私の用意したあまり美味しくないクッキーの味と紅茶の味を楽しみながら、プロデューサー様は仰った。
「メイドさん。アイドルを目指していた時期がありますよね?」
「…………うわ」
「初歩的な意識付けが所作に出ています。あまりやり続けてきたようではないようですが……」
「気づいてもらえるとは思いませんでした……」
やっぱり分かってしまう。ものなんだな……。
私のしまい込んでしまった夢を。
「お嬢様の背中を見てたら、やりたくなっちゃって……少し勉強していた時期が……」
幼き日、メイドの見習いとしてお屋敷をみていた時、私はお嬢様の姿をみたのだ。
厳しい指導に何度も膝をつきながら、それでも硬い意志で立ち上がり続けてレッスンを続けてきた背中を。
幼き子供にはそれは少し劇薬で。
メイドの分際で、その偶像に憧れた。 - 167二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 12:33:53
「でも全然でした。自主的にダンスとかやってみたんですけど……全然足とか揃わなくて、メイドの仕事とも両立も難しくって、まぁそのうちに……辞めちゃって」
「アイドルは厳しいですからね」
「……はい。ダンスを覚えるためにどれだけの反芻が必要か、キレを維持するためにどれほどの継続が必要か、スタイルを維持するためにどれだけの意思が必要か……お嬢様を見るたびに思い知らされます」
「よく分かります。それがどれだけ凄いことか」
「まぁ……だから、別に、目指してたとかではないですよ、全然」
「そうですか? 今からでも……」
「遅いでしょう……流石に」
「…………」
「アイドルを始めるには……というのもありますが。もう人生の柱を定めてしまった後ですから」
私の心に淡い憧憬が残っていたとしても、もう既に生まれてしまった決意は消せない。
「ファンの皆様よりも私はお嬢様が大切です」
「そうですか」
「まぁ、それが……理由、でもあるかもですけど」
「…………?」
「こちらの話です。気づいてくれてありがとうございました」
「この話……星南さんには……」
「もちローキーです」
「『秘密』……ですか?」
「はい」 - 168二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 12:38:00
録音はしているから聞かれちゃうけれど。
それが私の恋の理由。
うん、淡い夢に気づいてもらえるかもしれない。そう思ってしまってから、目を追うようになってしまった。
本当に……自分でも呆れてしまう。
淡い……あまりにも淡すぎる。
こんなちっぽけな理由で、お嬢様から恋人を奪いたくなるわけがない。
そりゃあかなり“良い”と思っているし、タイプだけれど、本当にそれとこれとは別なのだ。 - 169二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 12:50:51
お嬢様の最も近くで彼女が立ち上がり、星々を引き連れて天頂に居続けることを選ぶ様をみるのが、本当に嬉しかった。
千奈様に佑芽様、ことね様、美鈴様、皆さんを導くお嬢様とプロデューサー様の生活をお支えする。メイドとしてそんな当たり前を支えられることが本当に嬉しかったのだから。
淡い恋よ、どうぞそのまま。
お嬢様が大切に拾い上げてくれたこの気持ちと、この気持ちを抱けた思い出を、大切にします。
この思いを抱えて私は2人を祝福するのです。
「プロデューサー様」
「なんですか?」
「お電話いただいた時の返事。あの時はお嬢様からの圧があったので、ちょっと濁した返事をしてしまいましたが……。ちゃんとしたお返しをさせてください」
「…………謹んで」
「もちローダブル」
「『もちろん、行かせていただきます。お嬢様のことを称えあえるのなら』という意味でした。忠義です」
「……そうでしたか、言ってくれてありがとうございます」 - 170二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 12:56:42
そして、言葉の意味ではなく、それを言った意味を考えてくれたのか、少し悩んで、どう答えるべきが悩んで、プロデューサー様は言ってくれた。
「…………必ず星南さんを幸せにします」
それは私たちが結ばれることはないという事実の確認であり、それでも必ず未来は素晴らしいものになるという祝福だった。
とても嬉しい答えだ。
でも、一つだけ訂正することがある。
私はそのことにおいてのみ、あなたよりもキャリアが長いということを忘れないで欲しい。
「星南を幸せにしましょう。“私たち”で」
「……ええ。もちろんです、先輩」 - 171二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 13:06:14
少し経った頃、お嬢様が帰ってきた。
あの時の夕日なんて目じゃないくらい、顔が赤かった。
録音というか、通話だったらしい。 - 172二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 13:14:04
以上メイド編終了です。
お父様への挨拶編とかまだまだ出来事は沢山ありそうですが、ここで燃え尽きさせていただきます。
皆さんお疲れ様でした。ありがとうございました〜 - 173二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 18:51:10
- 174二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 20:00:20