- 1二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:08:09
「トレーナー!今月末の休日、サトノ家のリゾート施設に行きましょう!私とふたりで!」
ある夏の午後。冷房が効いたトレーナー室の扉が勢いよく開き、サトノクラウンはそう告げた
「ふたりで、って……それはまた急な話だな。でも、いいよ。仕事絡みかな?」
「Exactly!そう、さすがトレーナーね。実はあの施設、リニューアル工事を終えたばかりでね。お客様目線での最終確認が必要なの。あなたの率直な意見が欲しいのよ」
「なるほど……視察ってわけか。でも君が誘ってくれるなんて珍しいな」
「べ、別にそんなこと……!そ、そもそも私が担当した企画の確認なんだから当然でしょ?」
本当は違う
このリニューアルの企画が始まったときから、クラウンはずっと考えていた。もし私がトレーナーとここに来られたら、恋人同士で訪れたくなるような場所って、どんなだろう?
そして今、その願いが叶おうとしている
(この機会を逃してなるものですか。私はこの日を、ずっと準備してきたんだから) - 2二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:09:11
そして当日。眩しい太陽の下、真新しい施設へと到着したクラウンは、リムジンの中で大きな麦わら帽子をそっと押さえながら胸の鼓動をなだめようとしていた
(いよいよよ……私の計画、実行のとき)
着替えを済ませた彼女の姿は、鮮やかな南国の花があしらわれた大胆な水着スタイル。トロピカル柄のビキニに、透け感のあるパレオ風スカート。そしてロングヘアは、普段よりゆるく巻かれ、ラフィアの大きな帽子がその上品さを引き立てていた。鏡を見て、にっこりと自分に微笑む
(さあ、準備万端。今日こそトレーナーの心を……)
「クラウン!こっちこっち!」
待ち合わせ場所に着くと、そこにはタンクトップと海パン姿のトレーナー。陽に焼けた肌、うっすらと浮かぶ腹筋、そしていつもより少しラフな笑顔
(えっ……なに、それ、反則……!)
「どうかした?」
「い、いえッ……な、なんでもないわ……!」
視線を逸らしながら、帽子のつばを深くかぶる。準備していたはずの自分がトレーナーの水着姿に一撃でやられるなんて、完全に想定外
「クラウンの水着、すっごく似合ってる。色合いも君にぴったりだ」
「なッ……ななっ……!そ、そう?そりゃあ当然よ。選び抜いたものなんだから」
笑顔の裏では心臓が悲鳴をあげていた - 3二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:10:11
(ああもう、油断したらまた倒れる……!このままじゃ私の“攻め”が成功しないじゃないの……!)
プールではしゃぐトレーナー。クラウンはついていくのに必死だった
「ほらクラウン、波が来るよ!」
「きゃっ!?ちょっと、いきなり!」
ずぶ濡れになっても構わず笑うトレーナーの横顔が、いつも以上にまぶしい
「ふふっ、楽しんでるわね……」
(……でも、今だけは、私も全力で楽しんでもいいかもしれない)
施設の中では、ロマンチックなブランコ付きのテラス、夜のライトアップが美しいラウンジ、そしてペアシートのある露天風呂、どれもクラウンが“恋する気持ち”で設計した特別な場所だった
(見ててトレーナー。この施設も、私も……どちらもあなたを癒やすためにあるの)
そして夜──ライトアップされたプールサイドで、トレーナーと肩を並べて座る
「トレーナー、今日はありがとう」
「こっちこそ。……視察だけど、なんだかすごく楽しかった」
「私もよ。……次は視察じゃなくて、本当のバカンスとして来てもいいかしら?」
「もちろん。むしろ、また一緒に来てくれるなら、何回だって」 - 4二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:11:14
月明かりに照らされるトレーナーの横顔をクラウンはそっと見つめる
(……ねぇ、気づいてる? これ全部、あなたのために用意したのよ)
言葉にするにはまだ少し勇気が足りなかった。けれど今は、それでいい。南国の夜風に吹かれながらふたりはそっと肩を寄せた。湯けむりが夜の空気に静かに溶けていく
空には満点の星。リゾート施設の奥、森に囲まれた露天風呂は、まるでこの世界にふたりしかいないかのような静けさだった
「……はぁ……やっぱり、こういう時間って、贅沢ですね」
肩までお湯に沈めた瞬間、肌がふわりと温もりに包まれる。花柄のラップスカートとビキニの隙間から少しだけ覗く自分の肌が、湯の中でやわらかく揺れるのを感じた
(……だ、だめ……余計に意識しちゃう)
ちらり、と横目で見る。そこには、あの人、私のトレーナーさんが落ち着いた顔で湯に浸かっていた
(な、なんで……来てるのよ……っ)
「その……どうして、トレーナーさんも来てるんですか? レディースタイム、じゃないんですか?」
できる限り冷静を装ったけれど声が微妙に上ずってしまった
「予約の時間、俺たちで貸し切りって話だったから……クラウンも来るなら、先に言ってくれたらよかったのに」
「っ……っ、そ、それは……っ!」 - 5二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:12:17
(こっちだって、偶然だったのよ……っ! まさかかぶるなんて……うう、気まずい)
思わず頬を膨らませて、お湯を手ですくってはぱしゃ、と落とす
「……まぁ、別に……トレーナーさんなら、いいんですけど」
(ああもう……言っちゃった……! なんでそんな素直なこと……っ)
湯の波紋が広がるたびに彼との距離がやけに意識される。手を伸ばせば届きそうな、でも触れたらなにか壊れそうな。そんな距離感。指先でお湯をなぞって、逃げるように感情を沈めようとしたけれど……
「ねえ、トレーナーさん」
思わず、声が出た
「……今日の私、変じゃないですか?」
「変? そんなことは――」
「見ないでください!」
(ちがうの、見てほしいのに、でも見られるのが怖くて)
「……その、水着も……髪も……全部、リゾート仕様で……。あんまり、普段の私っぽくないから……なんか、落ち着かなくて」
目の奥がじんと熱くなる
湯のせいじゃない、気持ちの波のせい - 6二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:13:17
「……クラウンがどんな姿でも、俺は好きだよ。凛としてて、真っ直ぐで。……それに、今日の水着も……似合ってる」
(……なにそれ……そんなふうに言われたら……)
ぱちり、とトレーナーさんを見た。その目は真っ直ぐで、温かくて……私のどんな姿も、ちゃんと見てくれているってわかってしまって
「……ほんとに、言ってます?」
「本気だよ。俺は、クラウンの頑張りも、恥ずかしがるところも、ぜんぶ大切に思ってる」
(ずるい……ほんとに、ずるい人……)
少しだけお湯の中を移動して、彼のすぐ隣へ。
肩が触れるか触れないか、そんなぎりぎりの距離で、私はそっと囁いた
「……じゃあ、今夜だけは……少し、甘えてもいいですか?」
「もちろん」
湯の音が、心音をやわらかく包んでいた
お風呂から上がって、木のベンチに座る。バスタオルを肩にかけて、少しだけ開いた夜空を見上げた
(……少し涼しくなったけど、まだ胸の中は静かじゃない)
髪が風に吹かれて、ラップスカートの裾がふわりと揺れるたび、彼が目を逸らすのが分かる。
それが、少しだけ嬉しい - 7二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:14:17
「ふふっ……そんなに緊張しなくてもいいのに」
(だって……私だって、恥ずかしいのよ……)
「クラウンのほうこそ、顔赤くない?」
「そ、それは……お風呂のせいよ。べつに、トレーナーが隣にいるからとか、そういうのじゃなくて……」
(……ああ、なんで私、こんなに不器用なの)
手の先が少しだけ震えていて、それに気づかれてしまったのか
「……手、冷たいね」
「え……?」
気がつけば彼がそっと私の手に触れていた。濡れた指先同士が重なると、鼓動が跳ねる
「ほら、こうしてれば冷えないでしょ」
(……ほんとにずるいわ、この人)
「私ばっかりどきどきして……なんか、ずるい」
「……もうちょっとだけ、こうしててもいい?」
「もちろん」
(このまま時間が止まってしまえばいいのに) - 8二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:15:17
目覚めると窓の外はもう明るくて鳥の声や波の音が心地よく響いていた。浴衣を整えて、そっとカーテンを開けると朝陽が差し込んできた
(……いい朝ね。こんな朝を、一緒に迎えられるなんて)
布団の上でまだ寝ぼけている彼に、私は小さく笑いかける
「……ふふ、おはようございます。トレーナーさん」
眠たそうにこちらを見て、目が合った。その視線に少しだけ胸が熱くなる
「早く起きると、朝の音が綺麗なんですね。蝉の声も、波の音も、朝の風も……全部、違って聞こえる気がします」
湯呑みに注いだお茶をひとつ、そっと差し出す
「朝食まで、少し時間がありますから……その間、ゆっくりしていてくださいね。ほら、まだ髪が寝癖ついてます」
「……そうか?」
「ええ。……可愛い、です」
(言えた。昨日の私なら、絶対に言えなかったのに) - 9二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:16:25
「……クラウンの方こそ、浴衣、似合ってる。……というか、ずるいくらい綺麗だよ」
「……ふふ、それ、湯上がりの時にも言ってくれましたね」
(何度聞いても……嬉しい。胸の奥が、じんわり熱くなる)
「言いましたよ。ほら……お風呂から上がって、髪を拭いてくださった時に」
視線だけを向けて、言葉より多くを伝えた
(この時間が、いつか夢になるとしても──ちゃんと、覚えていたい)
「……トレーナーさん」
「ん?」
「帰っても、こんなふうに……朝を過ごせたら、嬉しいなって」
「……ああ、もちろん」
(ありがとう。こんな気持ちを、私に教えてくれて)
「ふふっ。じゃあ、まずは今日の朝ごはんですね。焼き魚、冷めないうちに行きましょう?」
差し出した手を自然に取ってくれて指先が絡んだ。熱いわけじゃないけど、ちゃんと伝わってくる。この夏の朝と、この人の手のぬくもり。忘れない。絶対に - 10二次元好きの匿名さん25/08/04(月) 20:17:25
おしまい
想像以上にクラちゃんの水着が刺さったので書かせて頂きました。感想やアプリクラちゃんの魅力などを書いていただけると助かります