- 11◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 20:28:04
- 21◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 20:29:36
過去のSS
【SS】ブルーロックスは夢を見る|あにまん掲示板夢の中ならどこにでも行ける。何にでもなれる。そこには、ブルーロックスたちの“もしも”が広がっている。*ブルーロックスが色々な夢を見るだけ*安価で誰がどんな夢を見るのか募集し、1がその世界を綴るよ*同じ…bbs.animanch.com【SS】こころを探しに行こう|あにまん掲示板……どこで、なくしたっけ。俺の、こころ。凪がどこかに落としたこころを、誰かと一緒に探しに行く話。*ブルーロックの凪誠士郎が主人公*安価でこころを探すキャラを1人1個決めるよ*更新遅いからのんびり待って…bbs.animanch.com【ホラーSS】怖い噂を確かめよう|あにまん掲示板ブルーロックには“怖い噂”があるらしいどこからか笑い声が聞こえるとか、足音が増えるとかそれが嘘か真か、俺たちは確かめることになった……でも、そんなこと、誰が言い出したんだっけ*『怖い噂』と『キャラ』は…bbs.animanch.com - 31◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 20:36:10
ブルーロックには、
思春期真っ盛りの奴らがうじゃうじゃいる。
大抵サッカー出来ればそれで解決なんだけどさ、
それでも悩むこと、困ること、色々あるだろ?
まあ、そこでだ。
毎日、夕飯食った後に『お悩み相談室』を開いて、
アイツらの生活をサポートしようって考えたわけ。
俺も過去に色々悩んだこととかあったし。
だから、力になれたらなーって思ってんだよ。
あとシンプルにお菓子が食べたい。
夜腹減るし、夜食確保したい。
つーわけで、
千切豹馬のお悩み相談室、ただいま開幕だ!
どんな悩みでも、俺なりに向き合ってやるぜ! - 41◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 20:43:14
- 5二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 20:44:58
- 6二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 20:45:23
七星
両利きの訓練に両手箸って効果あると思いますか? - 7二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 20:54:05
- 81◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 21:16:26
【お悩み相談一人目:國神錬介】
そこそこ更けた夜。
『お悩み相談室』の札を、
とりあえずドアにペタリと貼って、中で待機。
「……あー、誰か来ねーかなー」
「このまま誰も来なかったら、開業即閉店だぞ……」
「つーか俺、お菓子食いたいんだけど。誰か持ってきてよマジで……」
ぼやきながら、テーブルに突っ伏していた俺は、
コンコンと控えめなノックに反応して顔を上げた。
「お?」
ゆっくりと開いた扉の向こうには──
圧倒的な威圧感を持った、國神が立っていた。
「いらっしゃい!記念すべき一人目だぜ」
「…………」
「……またいつものアレ?」
返事はない。
いや、ないっていうか、俺が聞いてなかったかも。 - 91◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 21:19:37
國神は、いつものヒーローって感じじゃなくて、
なんかよく分かんないけど、闇落ちしてる。
本人が望んでそうなったらしいけど……
俺的には前の方が絶対いいと思う。
「ま、とりあえず座っとけ。お悩み聞いてやるからさ」
國神は静かに椅子を引き、
音を立てないように腰を下ろした。
表情はほとんど動かない。
だけど、目だけはこっちを真っすぐ見てる。
ほんのちょっとだけ、
助けを求めてるようにも見えた。
「……で?悩みって?」
「毎日、ドイツ棟に遊びに来るやつがいる」
「ふんふん」
「そいつがウゼェ。絡まれたくない」
「なるほど」
うん、まあ、そういうのあるよな。
毎日毎日押しかけてくるタイプ、いるわ。 - 101◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 21:22:05
「そいつって……誰のこと?」
「……匿名希望」
「ほほう。んで、実のところは?」
「匿名希望」
「二回言ったし、これはマジだな」
「そいつ、なんで國神に会いに来るんだ?」
「話したいらしい」
「ふーん……で、國神は?」
「話したくない」
「どうしようもねぇな、それ」
いやほんと、聞く限りはただの一方通行じゃん。
この感じ、どう見てもトラブルの火種だろ。
いや、でも、つーかさ──
「なあ、國神」
「なんだ」
「お菓子は?」 - 111◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 21:28:01
「………ない」
「えー、ちょっと待てよ、うち“相談料金:お菓子”って明記してあるんだけど?タダで俺の知見使う気?」
「……すまん」
「はい、違約金発生!今度来るときお菓子二倍だからな!覚悟しとけよ!!」
國神は何も言わず、じっとこちらを見ていた。
目が死んでる。
いや、たぶん本当に死んでる。
「……ったく、まあいいや。で、なんでそいつのことウザいって思うの?」
「近ぇし、いっつも話しかけてくる」
「今こうして俺とは話してるのは?」
「…………それは別だ」
「へー、俺はOKなんだ?ふーん?じゃあつまり、俺のこと好きなんだ?」
「…………………」
……なにその沈黙。
真顔やめろって、謝るから怖い顔やめろよ。 - 121◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 21:42:02
「冗談だって!ちょっとからかっただけ!」
「まあでも、あれか。その“匿名希望”のやつのこと、嫌いってわけでもないんだろ?」
「ああ」
「そしたら、こじれすぎる前になんか対処した方がいいな」
「俺がいま思いついたのは、物理的に“話す時間”減らすことだ」
「例えばさ、夜はもう誰とも喋れませんってくらい早く寝ちゃうとか。あとは自主トレでひたすら籠る!誰にも会わない!」
そう言いながら、俺は自分の胸をドンと叩いた。
「……ちなみに俺はいま、こうやって“お悩み相談室”やってるし、夜はどこにも出かけてないから、そういう時間を作るのもありかもな」
「ほら、國神もさ、一緒にやってみようぜ!“闇落ちの部屋”とか名前つけて「やらねえ」」
即答すぎて、ちょっと笑った。
「残念、めちゃくちゃ似合いそうなのに」
「じゃあさ、次の手段」
俺は指を一本立てて、國神の前に出した。
「嫌なことは、はっきり言う!……ってのは、どうだ?」 - 131◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 21:50:44
國神は、じっと俺の目を見ていた。
たぶん、俺の発言のどこかに反応したっぽい。
……いや、分かんねぇな。
俺の気のせいかもしれない、
いまの國神、慣れないから難しいな。
とりあえず、気にせず話を進めることにした。
「距離が近すぎるなら、“ちょっと離れてほしい”って言う」
「話しかけられるのがウザイなら、“話しかける頻度を減らしてほしい”って、ちゃんとお願いする」
「そういうの、思ってても伝えなきゃ分かんないだろ?」
「俺だったら……たぶん、言ってくれた方が助かるな。ま、ショックではあるけどさ」
へらりと笑って見せたけど、
國神は黙ったままだった。
ただ、その指先がほんの少しだけ、
膝の上で丸まったのを俺は見逃さなかった。 - 141◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 21:52:01
「なあ、國神。お前さ、意外とちゃんと俺の話聞いてくれてるよな?」
「………さあな」
「濁すなって!ま、効果あるなら俺もやりがいあるわ」
そう言ったら、國神はゆっくり立ち上がった。
そのまま扉へ向かって、手をかける。
その時―――
「…………助かった」
その言葉だけをぽつりと落として、
無表情で、部屋を出ていった。
「おー、今日は早く寝てそのクマ早く直せよー!」
「………うん。よし、俺結構いい仕事したんじゃね?」
ふっと笑って、背もたれに体を預ける。
夜はまだ長いけど、
少しだけ、心があったかくなる時間だった。
【相談終了:國神錬介 ※次回お菓子二倍※】 - 151◆DGCF6cUlCqNA25/08/05(火) 22:29:59
- 16二次元好きの匿名さん25/08/05(火) 23:00:17
國神をリクエストした者です
2人の可愛い会話をありがとう……
いつも素敵なお話ばかりで、心がすごく癒されます - 17二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 02:39:22
千切のお悩み相談室楽しみにしてました!
気軽に話せる雰囲気を出しつつ親身になって相談に乗ってくれる千切の安心感がすごい
また國神が来てくれますように! - 181◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 08:20:41
- 191◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 09:28:30
【お悩み相談二人目:七星虹郎】
夜の静けさが、部屋に満ちる。
引き続き、俺の『お悩み相談室』、
絶賛営業中だぜ!
「……さーて、そろそろ誰か来てもいい頃だと思うんだけどな」
机の上には、俺が持参した、
空になったお菓子の袋が散乱している。
しけったポテチをつまみながら、
のんびり足を揺らしていたとき───
コンコン。
「おっ、来たか」
扉が開かれ、ややおどおどとした動きで、
一人の後輩が顔を出す。
「おー、七星じゃん。よく来たな!」
「ま、とりあえず座れよ」
「お、お邪魔します!」
ちょっと訛りのある話し方と、
どこか人懐っこい雰囲気のある後輩だ。 - 201◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 10:23:32
とはいえ、いまはやけに、
緊張しているように見えるけど。
「……お前、めっちゃガチガチだな。緊張してんの?」
「いや、その……はい、そうですね」
「ふはっ!素直だな、まあ気楽に行こうぜ」
「んでさ、七星、お菓子は?」
「……ないっす、すみません……」
「は?」
「いや、その……話聞いてほしくて……急いで来たら……忘れてました……」
ぺこり、と深く頭を下げる七星。
目がうるうるしてる。
完全に子犬。
フィルターかけてんのかってくらい子犬。
「……うわー……怒る気になれないやつ来た……」
「……ま、いいや。次持ってきてな。相談料金は先払い制なんだけど、今回は特別だ」
「ありがとうございます……!」 - 211◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 10:25:02
「それじゃあ、悩みってのは?」
「えっと、その……両利きの訓練ってあるじゃないですか」
「うん、あるな」
「両手で箸使うのって、効果あると思いますか?」
「……いや待て、それ、ネットで調べた方が早くね?」
「調べたんですけど……でも、千切さんは先輩だから、聞いた方が絶対タメになると思ったんです」
そう言って、じっとこっちを見る。
きらきらしてて、全力で俺を信じてる目だ。
……だから、子犬のような目すんのやめろって!
「…………」
くそったれ!
頼られると、頑張りたくなるのが俺なんだよ!
やれやれ、と小さくため息をついて、
椅子にもたれ直す。
「両利きって、あれだろ。凛に言われたやつだよな?」
「はい、そうっす」 - 221◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 11:29:57
「その才能をちゃんと開花させたいってことか?」
「はい。ブルーロックで生き残るには、この才能を活かさないと勝てません……!」
言葉に熱がこもってる。
普段はふわふわして、ちょっと抜けてる奴だけど、
根っこはしっかり野心家だ。
「……敵に塩を送るってやつだけど、まあいいか」
「え?」
「なんでもねーよ。とにかく、俺が分かる範囲で答えてやるってこと」
「……まずな、両手で箸使うのは普通に効果的だと思う」
「ほんとですか……!」
「だってさ、普段使わない方の手って思ったより動かすの難しいだろ?」
「何も考えずに動かせないから、頭使うしかねぇんだよ」
「その“考えて動かす”ってのが、結構大事でさ」
七星はこくこくと頷く。
真剣な目で、
俺の言葉を逃すまいとしてるのが分かる。 - 231◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 11:31:58
「サッカーは、ただ体動かせばいいってもんじゃねえ」
「“どう動くか”“どこで動くか”───全部頭使って決めるスポーツだろ?」
「だったらさ、頭を鍛える方法があるなら何だってやるべきだよな」
「はい……!」
「箸でトレーニングって、いかにも地味だけど。地味なことを継続するって、強くなるためには絶対必要なことなんだよ」
「俺は、そう思うぜ」
七星はペンを取り出して、
ノートに何かを書き込んでいた。
その姿があまりにも真っすぐで、
つい笑みがこぼれる。
「でもな───」
「?」
「手を使うだけじゃ意味がない」 - 241◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 11:34:19
「………え?」
「お前、分かってると思うけどさ。サッカーで手使ったらハンドだろ?」
「だから、“手でできること”を“足でやれるようにする”って意識が必要なんだよ」
「歩き方。立ち方。足の動かし方」
「全部、自分で“意識して変える”ってのが、いちばん効く」
「…………はい」
「これ、簡単なことじゃねえよ。たぶん、めっちゃ面倒だし、しんどいと思う」
「でもな?頑張れば頑張った分だけ、絶対に自分の力になる」
「ちゃんと、お前の“武器”になるからさ」
その言葉を聞いた七星は、ぱっと顔を上げた。
真剣な眼差しのまま、こくりと頷く。
「……ありがとうございます……!」
「凄いためになる話でした、流石は千切さんだっぺ……!」 - 25二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 11:39:34
このレスは削除されています
- 261◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 11:40:45
「いやいや、そんな持ち上げんなって!照れるだろ!」
「いえ、本当に…!今日来てよかったっす……!」
「……へへ、そっか、そう言ってもらえると嬉しいな」
「でもさ、感謝してるなら───」
「次はちゃんと、お菓子頼むぜ?」
「……はいっ!!次は絶対……!ちゃんと、持ってきます!!」
そう言って、深々と頭を下げた七星は、
晴れやかな顔で部屋を後にした。
「いい後輩だな、ほんと……」
「……俺も、負けてらんねえな。まずはスタミナ付けるために、明日からもっともっと頑張るか!」
そう言って、お菓子をひとつまみ。
栄養補給って大事だし、考えるの頭使うし。
湿気ったポテチをモサモサ食べながら、
心がぽかぽかする、良い時間だったと思った。
【相談終了:七星虹郎 ※お菓子約束済み※】 - 271◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 11:42:20
- 28二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 11:44:44
- 29二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 11:45:44
- 30二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 11:47:01
- 311◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 13:02:44
- 321◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 14:07:31
- 33二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 14:30:00
二子
「周りにオタクがいません。雷市くんあたりをオタクにしたいのですが、どうしたらいいですか」 - 341◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 16:27:56
【お悩み相談三人目:二子一揮】
日付が変わる直前、
夜の静けさが相談室を包んでいた。
「……今日はあと一人で閉店かな」
「んー……札に“お菓子くれ”ってもっとでかく書いとこ」
ポテチの袋をガサガサ───
………空っぽだった。
「うわ、マジかよ!空じゃん、最悪だわー」
肩を落としたタイミングで、
控えめなノック音が部屋に響いた。
「お、いらっしゃい」
扉を開けて入ってきたのは、
前髪が顔の半分を埋めつくしている男。
冷静で、少し口数少なめなタイプ……
かと思いきや、話し出すと止まらない一面もある。
意外と熱い男だ。
「よっしゃ、二子!まずはお菓子寄越せ!!」
「はい、どうぞ」 - 351◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 16:34:03
そっとテーブルに置かれたのは───
紅茶のフィナンシェだった。
二子のヤツ、
凄い洒落たお菓子持ってくんじゃん。
いや、センスあるわ。毎日来てもいいくらい。
早速ひょいと摘んで、口に放り投げる。
「……うん、悪くない。上品で俺っぽい味がするわ」
「千切くんっぽい味……?」
「何とぼけてんだよ、ブルーロックの中で俺が一番上品だろ!」
まあ、そんな冗談はさておき。
報酬は貰ったし、本題に移るか。
「さて、悩みは?」
「はい。実は……」
すっと姿勢を正し、
静かに語り始めたその内容は───
「……最近、オタクとして語り合える相手がいないのが悩みでして」
「ブルーロックの皆は、基本サッカー脳で僕の趣味の話を振っても反応が薄いんです」
「……ああ、まあ……うん、そっか………」 - 36二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 16:36:48
- 371◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 16:40:39
───うん、確かに。
いまの國神にアニメの話しても黙殺されそうだし、
潔とかはなんか常に考察してそう。
凛にいたっては、そもそも話聞いてくれなさそう。
……いや、ホラーならワンチャンいけるか?
「そこで……雷市くんをオタクにしたいなと」
「…………ん?」
「……オタクにしたい?」
「はい」
「いや、そういうのって……なるもんじゃないの?」
「でも、雷市くんは素質があると思うんです」
「感情が素直で反応がいい。好きになったものには一直線ですし、何より───推し活に向いてると思います」
「……あー……言われてみれば……」
雷市の顔が脳裏に浮かぶ。
ちょっと騒がしくて、単純で、
でも本気でハマったら全力で突っ走るアイツの姿。
「……たしかに、素質はあるかもな」 - 381◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 17:36:55
てか二子、めっちゃ真剣だな。
この手の話題が一番熱くなれるのか。
ふーん、勉強になるわ。
───さて、どうすっかな。
焼き菓子をもう一口。
紅茶の香りが鼻に抜けて、頭がすっと冴えてくる。
「なあ、二子。まず確認なんだけどさ、布教って興味がないと意味がないのは分かってるよな?」
「ええ、もちろんです」
「よかった。なら話が早い」
「雷市にオタク文化を広めたいなら──“まずはアイツが好きなものを使う”のが基本だ」
「……なるほど」
「ところでさ。アイツの好きな漫画とか知ってる?」
「……バキですね。ゴリゴリの格闘漫画です」
「あー……そういうの好きそう」
「じゃあ、二子の好きなジャンルって……またちょっと違う感じ?」
「ええ、違いますね。僕はカードゲーム系や、美少女系が主でして……」 - 391◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 17:43:08
「なるほどな〜……うん、分かった」
「そしたらさ、戦う系が好きってわかってるなら、そこからちょっとだけジャンルずらすのはどうだ?」
「ずらす……」
「そう。異世界ファンタジーとか、バトル系ラノベとか。肉弾戦じゃなくても、“強いやつが出てくる世界”ってのは、たぶん雷市好きそうだろ?」
「……たしかに。少年漫画的な“熱さ”がある作品なら、興味持つかもしれません」
「そうそう。そうやって、雷市が“受け入れやすい扉”から入ってもらうわけだ」
「で、そこからちょっとずつ、“二子の好きなやつ”に誘導していく、と」
「……段階を踏むんですね」
「うん。まあ、あれだ。“好き”をいきなり押し付けるのは、やっぱあんまよくないからな」
「お互いに楽しめるものから、少しずつ試していく。それが一番いいと思う」 - 401◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 17:45:38
二子は静かに、何度も頷いてくれていた。
それが素直に嬉しかった。
やっぱ、ちゃんと話を聞いて貰えるって嬉しいな。
「……ありがとうございます。とても参考になりました」
「おー、なんかあったらまた来いよ」
ぺこり、と深くお辞儀をしてから、
二子は立ち上がる。
前髪の奥にある目は見えないけど、
その足取りは、ほんの少し、
軽くなったように見えた。
「……実は、雷市くんが興味を持ちそうな作品、いくつかストックがあるんです」
「お、マジかよ!準備万端じゃん!」
「ふふ。早速明日から試してみます」
「よし、結果どうなったか教えろよー!」
そのまま、二子は扉を静かに閉じていった。 - 411◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 17:47:07
「……さて」
部屋には、俺ひとり。
空になった袋をひとつにまとめて、
ごみ箱に放り込む。
「今日は店じまいだな」
テーブルに残った、ひとつだけのフィナンシェ。
俺はそれを、そっとジポケットにしまい込んだ。
「明日は誰か来るかなー……」
軽く、あくびをひとつ。
背を伸ばして、
ドアの向こう、静かな廊下へと歩き出した。
なんか、悩みを聞いてた側なのに、
凄い気持ちがすっきりする。
いいことするって、やっぱ気持ちいいもんだな!
【相談終了:二子一揮 ※次回雷市のオタク化計画を確認する※】 - 421◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 17:48:45
- 43二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 18:01:22
- 441◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 18:52:28
上手いこと思いついたから大丈夫だよ!一応ほぼ原作軸(脱落者が出る前のネオエゴあたり)だけど、冴が当たり前にブルーロックに存在してるからまたちょっと違った世界観になるのかな?
楽しみにしてくれてありがと!
- 451◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 19:03:12
【番外編・お悩み相談四人目:御影玲王】
目を開けると、見慣れた二段ベッドが目に入った。
……あ、これは夢だなってすぐに分かった。
だって今、五角形の変なベッドで寝てるし。
となると───時期的にここは二次セレクション。
同室は國神と玲王のはず。
國神は、うん、まだヒーローまっしぐらだった頃。
玲王は、凪に執着してて、
ちょっと怖いくらい真剣だった頃。
……おっけー、状況把握は完了。
そんなふうに頭を整理していたところで───
“ビョエ……グブゥ……ペホォ……”
変な音が耳をつんざいた。
何だこれ、鼓膜が破れそうな……
いや、破れたかもしれねえ。
っていうかマジでなにこれ、この世の終わり?
びっくりして起き上がる。 - 461◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 19:08:35
音の方を見たら───
玲王がリコーダー吹いてた。
…………は?
いやいやいや。
お前、そういうキャラだったっけ?
歯ブラシむしってる方が自然に見えるわ。
それでも真顔で、ちゃんとした構えで。
しかも、全力。
迫力だけは本物っぽい。
「……おーい、玲王?」
「……ああ、千切か」
「どうした、その……悲しい音出して」
「やっぱり……千切も、下手くそだって思うか?」
「いや、なんつーか……独特な音色っていうか……うん、個性的だなーとは思うけど」
「最近、リコーダー吹くのにハマっててさ」
「でも、あいつらに“公害”とか言われて、演奏禁止にされて……」
「俺は……上手く吹けてると思うんだけどな……」 - 471◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 21:07:24
なるほど、夢の中でもお悩み相談ってわけか。
内容のスケール感バグってるけど。
「なあ、玲王。なんでリコーダーなんだ?」
「…………」
問いに答えず、
玲王はまたリコーダーをそっと構える。
その指先が、少し震えていた。
「………上手い下手って、関係ある?」
「え……?」
「吹きたいから吹く。それだけでいいんじゃね?」
「……でも、公害って言われたし」
「言わせとけよ、むしろ。そういうのってさ、不思議と後から恋しくなるんだぜ」
「……恋しく、か」
「そう。いつかさ、“ああ、そういえばあのへったくそなリコーダー野郎いたな〜”って、思い出されるって」
「千切、それ褒めてる?」
「まあ、微妙。けどさ───リコーダー吹くのって、自由だろ?許可なく吹いちゃダメとか、そんなの法律で決まってないし」 - 481◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 21:12:17
「縛られる必要なんてねーよ。誰かに笑われても、自分が楽しいって思えるならさ」
「……ただ、試合中はやめとけよ?ビックリするから」
「……ああ、気をつけるよ」
ふっと、玲王が笑った。
さっきまで曇ってた表情が、少しずつ晴れていく。
良かった。
夢の中でも、玲王は笑顔の方がいい気がするから。
「千切、ありがとう。なんか……気が楽になった」
「おー。夢の中でもお悩み相談は営業中だからな!」
いつの間にか、
部屋の中には柔らかな空気が流れていた。
さっきまでの騒音は───今はもう聞こえない。
リコーダーはそっと、
玲王の膝の上で静かに転がっていた。
「……明日も、練習してみようかな」
「いいんじゃね?その時は俺にも聞かせろよ」
「わかった。今度は、ちゃんとした音色を届ける」 - 491◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 21:39:45
まぶたが重くなる。
音のない世界に、ゆっくり沈んでいく───
───そして、目が覚めた。
五角形のベッド。
間違いない、現実だ。
「………変な夢だったな」
ひとつ欠伸をして、
もうひとつ、大きく伸びをして。
のそのそとベッドを降り、
部屋を出ると、玲王がいた。
「はよー、玲王」
「おはよー、千切。今日は早起きだな」
「んー……ちょっとな。不思議な夢見てた」
「そっか。そういう時もあるよな」
歩きながら話してると、
玲王がふと思い出したように言った。 - 501◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 21:41:11
「ていうかさ、“お悩み相談室”始めたって聞いたんだけど」
「おー、始めたぞ。昨日からな」
「マジか。んじゃ、俺もそのうち行くからよろしく頼むわ」
「ああ、歓迎するぜ。……でも玲王は、初回相談お菓子二倍な!」
「は!?なんでだよ!?」
「んー、内緒!」
ふんふん♪
鼻歌を歌いながら、俺は廊下を歩いていく。
夢の中の相談料───
きっちり現実で払ってもらうぜ?
【相談終了:御影玲王 ※次回お菓子二倍※】 - 511◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 21:42:58
- 52二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 21:55:04
斬鉄
千切と足の速さについて相談し合ってほしい
お菓子は埼玉県(斬鉄の出身地)の名物で - 53二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 21:56:36
黒名
実家に置いてきたポカリが心配で眠れない
もしよければお願いします! - 541◆DGCF6cUlCqNA25/08/06(水) 22:26:07
今日は寝るね 明日は斬鉄からスタートだよ!
千切のお悩み相談室ブルーロックスから好評そうで嬉しいよ、悩みがなくてもただお菓子持ってきてお話するのも大歓迎!リピーターもOK!
それじゃあ、おやすみなさい - 55二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 22:30:13
- 56二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 03:15:39
- 571◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 08:29:33
- 581◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 11:38:09
【お悩み相談五人目:剣城斬鉄】
相談室を開設してから、今日で二日目。
今朝は、「お前マジでやってんの?」って、
そんな感じの空気だったけど。
その後は、「なんかあったらよろしくな」って、
頼ってくれる奴らが増えてきた。
……ふふっ、なかなかいい感じじゃね?
この調子でいけば、悩めるエゴイストたちを、
全員救える日も近いかもしれない。
俺は掲げてある札に、
赤のマーカーで力強く一言、追記した。
『お菓子よこせ!!』
満足してペンを置くと、
部屋に入って、どかっと椅子に腰を下ろす。
「さて、今日の一番乗りは誰かな」
コンコン。
「おっ、いらっしゃーい」
扉を開けて入ってきたのは───
キラリと光が反射する眼鏡をかけた男。 - 591◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 11:51:33
「おー、斬鉄じゃん!」
「お菓子、持ってきたぞ」
誇らしげに掲げられた紙袋。
手渡された瞬間、ふわっと甘い香りがした。
「地元の名物だ。埼玉の十万石まんじゅうってやつ」
「マジで!?俺、まんじゅう好きなんだよな!」
袋を開けると、
柔らかそうなまんじゅうが綺麗に並んでた。
そのうちのひとつを手に取って、ぱくりと頬張る。
「……うまー!!ありがとな、斬鉄!」
「礼には礼を、だな」
「……ちが……いや、合ってるか。うん」
ちょっとだけ噛み合ってないような、
でもそれが嫌じゃない。
この独特な感じが斬鉄らしさってやつだ。 - 601◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 12:05:51
「んで、悩みってなに?」
「お互い、足が速い者同士だろ?」
「うん」
「だから、語り合いたいと思った!」
「…………それ、悩みっていうか……ただ、話したいだけじゃね?」
「ああ、そんな感じだな」
「ふはっ、そっかそっか。ま、別にいいけどさ」
「じゃあ、まんじゅう食いながら語ろーぜ!」
俺はもうひとつ、まんじゅうに手を伸ばした。
斬鉄も静かに座って、
お茶を飲むような雰囲気で姿勢を正す。
「てかさ、お前の走り、いつも直線的だよな。速いっていうより、もう突撃って感じ?」
「風のように駆け抜ける。それが理想だな」
「かっこつけんなって。でもまあ、分かるけどさ」
「千切の走りは曲線って感じもするな。しなやかで、刃物みたいな鋭さがある」
「へえ、ちゃんと見てくれてんじゃん」 - 611◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 12:08:44
「うん、尊敬しているから。俺も、もっと速くなりたい」
その言葉に、ちょっとだけ胸があったかくなった。
「なあ、斬鉄」
「速さってさ、数値じゃなくて“どう活かすか”だと思うんだよな」
「…………???すまん、ちょっと分からない」
「ぶはっ!いや、いいんだけどさ。要するに、ただ速いだけじゃダメで、その速さを生かす場所を見つけらなきゃいけないってこと!」
「例えば、誰もボールを持ってなくて、コロコロ転がってる時に走って取りに行くとか、そういうイメージか?」
「うん、そんな感じ!俺、お前の突っ走る感じ好きだぜ。真っすぐで、止められない感じ」
「そんで、俺は……抜き去る。誰にも、追いつかせない。そういう走りがしたいな」
「なるほどな」
なんつーかさ。
悩みってほどじゃないけど、
語り合うだけで、ちょっと背筋が伸びる。
同じものを持つ者同士だから、
そういう感覚になれるんだ。 - 621◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 12:24:02
「……よし、じゃあ今度さ。足の速い奴だけ集めて、短距離勝負でもするか?」
「ああ、受けて立つぞ!」
「ははっ、いいなその気合!」
俺たちは、まんじゅうを半分こにしながら、
しばらくの間、速さについてだけ語り合った。
ふと、斬鉄が残りのまんじゅうを見つめながら、
ぽつりと口を開いた。
「なあ、千切」
「ん?」
「なんで、お悩み相談室を始めようと思ったんだ?」
不意打ちの質問だった。
……まさか斬鉄から、
そんなことを聞かれるとは思ってなかったから、
ちょっとだけ間が空いた。
「……なんとなく、かな」
「ブルーロックって、みんな強がってるけどさ。きっと、どっかで悩んだり、迷ったりしてるだろ?」
「俺も昔、そういうのあったし。……だから、誰かの力になれたらいいなーって」 - 631◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 12:25:11
斬鉄は黙って頷いていた。
「そうか」
「……いや、実はな。七星から、ここに来たって聞いたんだ」
「すごく楽しそうに話してた。“千切さん、めっちゃ頼りになるんだっぺ!”ってな」
「……あー……それは……照れるな……」
「だから俺、思ったんだ」
「悩みを聞いて、ちゃんとアドバイスするって、きっとすごいことなんだと思う」
斬鉄の目はまっすぐだった。
その目で、ニカッと笑いながら言う。
「誇っていいと思うぞ、千切!」
「……やめろよー……マジで照れるから……」
顔を逸らしながら、少しだけ笑う。
なんか、ほんと、こいつは変わらないな。
「俺、難しいことはよく分からないけどさ」
「でも、もし誰かが困ってることあったら───今度は俺が、お悩み相談室の一員になってやる!」
「は……?」 - 641◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 12:26:11
「俺、まんじゅう担当!」
「なんだその役割!!」
「じゃあ、……速さ担当!」
「もういいから!分かった分かった!手伝ってもらうことあったら呼ぶからさ!!」
斬鉄は立ち上がり、勢いよく扉へ向かう。
その背中は、相変わらず一直線で、
見てて気持ちがいい。
「じゃあな、千切!またまんじゅう持ってくる!」
「おう、ありがとな!」
バタンと扉が閉まり、部屋に静けさが戻る。
「……相変わらず真っ直ぐな男だな」
呟きながら、
残ったまんじゅうをひとつ、また口に運ぶ。
ほんのり甘くて、
柔らかい優しさが口の中に広がった。
……こんな夜も、悪くないな。
【相談終了:剣城斬鉄 ※お悩み相談員補佐に任命※】 - 65二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 12:52:47
- 661◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 14:43:31
こちらこそリクエストありがとう!感じ方って人それぞれだから考えると楽しかったよ。引き続きよろしくね!
- 671◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 16:17:18
【お悩み相談六人目:黒名蘭世】
まんじゅうって、意外と腹持ちがいいな。
甘いものってすぐお腹空くイメージあるけど、
今日のはちょっと違った。
もちもちしてて、後からじわじわくる感じ。
「……満たされた……」
お菓子と語らいの夜。今日はいい一日だったな。
椅子の背に寄りかかりながら、
自然とまぶたが重くなる。
「……ちょっとだけ、目ぇ閉じてもいいかな」
───コンコン。
夢の入り口に足を踏み入れたところで、
現実に呼び戻される。
ゆっくりと目を開けて、ドアの方を向いた。
「……おう。いらっしゃ───」
その瞬間、俺は言葉を止めた。 - 681◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 16:57:40
黒名が立ってた。
ぐしぐしと目元をぬぐいながら、鼻をすすってる。
「……って、どうした!?泣いてるのか!?」
「……ポカリに……会いたい……」
「え?」
「ポカリ……ポカリが……心配……」
「ポカリ……って、あのスポーツドリンク?喉乾いたのか?」
「違う。違う……」
黒名は首を小さく横に振る。
「俺が……実家で飼ってる、ハリネズミの名前……」
「…………あ、うん、なるほどな?」
ポカリがハリネズミ……。
独特なネーミングセンスだな。
いや、俺たちにとっては馴染みのある名前だし、
ある意味正解なのかも…?
「ま、まあ一旦座ろうぜ。落ち着けって」
俺はそっと手を差し出し、黒名を椅子へと促す。 - 691◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 17:12:11
黒名は静かに座り、
肩を小さく揺らしながら鼻をすすった。
「はい、じゃあまずは深呼吸なー。吸って───……吐いてー……」
「……すー……はー……」
「うん、上手。じゃあさ、話聞かせてくれよ。ポカリのこと」
「…………うん」
「何があったんだ?」
「……俺、出てくる時、ちゃんとポカリに挨拶した」
「でも……たぶん、俺が長く帰ってこないって分かってなかった」
「水の減りとか……夜に運動してるかとか、いつも見てたから……」
「俺がいなくなったら、ポカリ、寂しがってるんじゃないかって……」
「……そっか」
「ポカリの毛並みのクセとか、体調の変化とか、俺が一番よく分かってるから……」
「ちゃんと温度、保ってあげられてるのか……寒くないのか……」
小さな声で、途切れ途切れに語られる不安。 - 701◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 19:48:29
そのひとつひとつに、黒名がどれだけ、
ポカリを大切にしてきたかが詰まっていて、
俺は思わず、背筋を伸ばして聞き入っていた。
黒名は、しばらくの間、黙っていた。
涙の音だけが、静かに部屋の中を満たしていた。
……だけど、不思議と嫌な静けさじゃなかった。
それだけ真剣に、誰かを想ってるってことだ。
俺にはその気持ちが、ちゃんと伝わってきた。
だからこそ、言葉を選んで───
ゆっくりと、話し出す。
「……そっか。ずっと、大切にしてきたんだな」
「………うん」
「家族として。かけがえのない友達として。ずっとポカリと一緒に過ごしてきたんだな」
黒名は、ほんの少しだけ頷いた。
その表情はまだ涙ぐんでたけど、
俺の言葉をしっかり聞いてるのが分かる。
「……俺には、会わせてやることは出来ねえけど」
「でもな、黒名の気持ち───きっと、ポカリに伝わってると思うよ」 - 711◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 19:50:45
「……でも………」
「“同じ空の下に生きてる”とか、よくあるセリフは置いといてさ」
「そんだけ大切にしてんなら、ポカリだって黒名のこと、大切に思ってるはずだ」
「お前が泣いてちゃ、ポカリも悲しくなっちゃうぜ?」
「…………!」
「きっと、見てるよ。黒名の活躍。お前の家族と一緒に」
「だからさ───頑張れよ、黒名」
「ここで踏ん張って、もうちょっと先に行けたらさ。きっと、会えた時に“ちゃんと帰ってきたぞ”って胸張って言えるだろ?」
「それに、泣き顔より笑顔の方が、きっとポカリも嬉しいと思うんだ」
「飛びっきりの笑顔、ポカリに届けようぜ」
黒名の肩が、すぅっと上下する。
ひとつ、深呼吸をして───
ようやく顔を上げた。
「……うん。そうだな……」
「俺、ちゃんとやんなきゃ……」 - 721◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 19:53:19
「そうそう。んで、終わったらまっすぐポカリんとこ帰ればいいんだよ」
「……ありがと、千切。……俺、元気出た」
「おう。ま、相談料は……今度まとめてな?」
「うん。次は、ちゃんと持ってくる」
そう言って、小さく笑った。
泣き疲れた顔だったけど、
ちゃんと前を向いてる顔だった。
「また来いよ。いつでもな」
「ああ。……おやすみ、千切」
「おやすみ」
扉が閉まる。部屋に、また静けさが戻った。
だけど、さっきと違って、
今度はちゃんと温かい空気だけが残ってる。
お悩み相談室、今回もいい仕事できた気がする。
……次は、ポカリと一緒に笑ってる、
元気な黒名が見れたらいいな。
【相談終了:黒名蘭世 ※次回お菓子の約束※】 - 731◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 19:54:24
- 74二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 19:55:41
玲王にリコーダーで起こされて夜眠れない潔
- 75二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 20:10:56
お悩み相談室がどんな感じか気になって様子を見にきた蜂楽
大量の駄菓子持参で目的はお喋り - 76二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 20:32:36
- 771◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 20:39:41
きっと黒名とポカリは相思相愛だから、離れてても大丈夫だよって思って書いてたよ。優しいリクエストありがとね!
- 781◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 20:47:52
【番外編・お悩み相談七人目:潔世一】
カチ、カチ、カチ───
時計の針の音が、部屋の中で静かに響いていた。
目を開けると、テーブルにお菓子が散らばってる。
……寝てたな、俺。
ぼーっとしたまま上体を起こす。
深く息を吸って、大きくひとつあくび。
「ふあー………」
目を擦る。やたらまぶたが重い。
寝起きの頭で状況を整理しようとしていた時───
コンコン。
軽く扉が叩かれる音。反射的に返事する。
「はーい」
扉を開けて現れたのは、潔だった。
「なあ、聞いてくれよ千切!!!」
「うわっ!?声でけぇよ、お前!」
「ごめん!けど俺さ、夜……寝れないんだよ!!!」 - 791◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 21:09:27
「…………は?」
「玲王が!リコーダー吹いてんだよ!!深夜に!!!」
リコーダー。
玲王。
夜中。
この世の終わりみたいな音───
あー……これ、夢だ。
完全に前に見た、あの“リコーダー地獄”の続き。
「……俺、どんだけ玲王にリコーダー吹かせたいんだよ……」
思わず自分にツッコミ入れて、自虐的に笑った。
「……で、玲王はリコーダー上手くなった?」
「……“沈まないタイタニック号”って感じかな」
「いや、意味わかんねえよそれ」
「なんか、沈まないけど沈んでほしいみたいな……そんな音」
「どんなだよ!例え雑すぎて余計こえーよ!」
「そんなことより、睡眠不足でコンディション最悪なんだけど!どうしてくれんだよ!」 - 801◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 21:11:44
「知らねえよ!!俺に言うな!てか、相談料金は先払いなんだからお菓子よこせ!!」
「……あ、そうだった忘れてた」
そう言って、ポケットから何かを取り出す。
「……ん?なにこれ」
「お菓子」
「…………」
赤と黄色と青が……混ざった……何か。
「なあ、潔。これって食いもん……?」
「多分、ラムネ……的な?いや、でも外側しょっぱいし……うーん、なんか……新しいやつ?」
「お前、夢の中でガチャガチャ的なもん渡してくんなよ」
「いや、気持ちはちゃんとあるから!」
「……はあ。分かったよ……座れ。とりあえず話は聞く」
「頼むぜマジで……俺、精神が削れてきてる……」
夢の中なのに、なぜか真剣な目をしてる潔に、
俺は小さくため息をついた。
「……ったく、夢の中の相談室カオス過ぎだろ…」 - 811◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 21:29:47
「まずさ、潔……先に謝っとくわ」
「え、なに?」
「……俺が、玲王に“気にせず吹け”って言った」
「……ええええええ!お前かよ犯人!!」
「いや、でも!夜中に吹いていいとは言ってないんだよ!俺はちゃんと試合中は絶対やめろって言った!」
「試合中の前に夜中があるだろ!?」
「いやほんとごめん……でも、あいつ今ちょっと精神不安定だからさ」
「精神不安定なのにリコーダー……!?」
「心の拠り所がリコーダーなんだよ、あいつの今の全ては……だからさ、吹くこと自体はちょっと勘弁してやってくれ」
「……くっ……断りきれない……!」
「で、解決法なんだけど───時間帯を変えればいい話じゃん?」
「いやまあ……確かに」
「なら、あれだ。國神に頼もうぜ」
「…………え?」 - 821◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 21:46:31
「ほらアイツ、ヒーローだし。なんとかしてくれるって」
「いや、投げやりすぎだろ!!?」
「大丈夫大丈夫、國神なら完璧にやってくれるから。任せとこうぜ?」
「関係ない場所で巻き込まれる國神の気持ちにもなってみろよ……!!」
「まーまー。これで全て解決だ、俺って天才」
「……雑にまとめた…………」
「いいんだって。お悩み相談室ってのはな、気持ちが晴れるかどうかが大事なんだよ」
「…………それは、そうかもしれないけど……」
「よし、つーことで相談終了!お菓子はあれだな、俺の気分がいい時にでも食うわ!」
「うん、それは……ほんとに気をつけて」
「なにそれ、怖……」
「まじで俺もよく分かんないやつだから……」
潔が肩をすくめたその瞬間───
世界が、すうっと白く霞んだ。 - 831◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 21:47:55
───目が覚めた。
見慣れた部屋。まんじゅうが少し残ってる。
「…………今日も頑張ったな、俺」
体を起こして、ふと手元を見る。
そこには───
潔から貰った、謎のお菓子があった。
「……え、いや、なんで?」
一気に冷や汗が出た。
現実だよな?
今これ、現実だよな??
「いやマジでホラーなんだけど……」
ひとつ深く息を吐いて、あくびをひとつ。
「……ま、いいか。今日は店じまいだな」
お菓子を片付けて、立ち上がる。
「明日もまた、頑張ろうっと」
【相談終了:潔世一 ※次回ちゃんとしたお菓子を持ってくる※】 - 841◆DGCF6cUlCqNA25/08/07(木) 21:50:13
眠過ぎて色んなところに頭ぶつけてるから今日はもう寝るね。明日は蜂楽からスタート!
それじゃあ、おやすみなさい - 85二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 03:27:42
- 861◆DGCF6cUlCqNA25/08/08(金) 08:20:41
- 87二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 13:52:47
このレスは削除されています
- 881◆DGCF6cUlCqNA25/08/08(金) 18:11:11
「つい、じゃねーよ……っていうか、蜂楽って悩みとかあんの?」
「んー、ないかな?」
「……即答だな」
「にゃはは♪俺、あんまり悩んだりしないタイプだしさ!」
底抜けの明るさに、思わず目を細める。
夜なのに眩しいわ、こいつ。
「そっか。んじゃ、他に悩み抱えたやつが来るまで俺と喋ってるか?」
「うん!お話しよ!」
「………あ、そうだ!」
ぱんっと手を打った蜂楽は、
抱えていた袋を取り出す。
「千切りんが“お菓子くれ”って言ってるって聞いたから、いっぱい持ってきた!」
「お、おお……?」
「はいっ!」
袋の中身が勢いよく、
テーブルの上にぶちまけられる。 - 891◆DGCF6cUlCqNA25/08/08(金) 20:30:35
ポテト系スナック、ラムネ、うまい棒。
するめ、グミ、よくわからん粉のやつ……
見事にごちゃまぜの駄菓子の宝庫。
「うわ、これ懐かしいやつじゃん……!小さい頃よく食ってた!」
「えへへ。俺もさ、なんかこういうの好きなんだよね!」
「ありがとな、マジで助かるわ」
「でしょでしょ~!俺、千切りんのために選んできたんだよ!」
「うん、サンキューな。んじゃ、のんびりお菓子食いながら話すか」
「じゃあまずは、このわさび味のグミからいこうよ!」
「それはやめとけ、腹壊すって絶対……」
駄菓子の山から、ひとつお菓子を取りだし、
ひょいと口に放り投げ、俺たちは語り出した。
「そう言えばさ、蜂楽んとこのチームはどうなん?」
「楽しいよ!ラヴィーニョと踊ったり、乙夜と話したり色んなことしてる!」
「踊ってる……?」
「うん、ほらラヴィーニョって舞踏技師“ダンスマン”って名前があるでしょ?あの人楽しい人だから、一緒に踊ったりしてるんだ~」 - 901◆DGCF6cUlCqNA25/08/08(金) 21:01:54
「ふはっ、なんじゃそりゃ!」
「でも、凄い楽しいよ!踊りながらパス回しとか、足を止めたら負けとか!」
「はは……まるで遊園地じゃん」
「うん!サッカー遊園地って感じ!」
「……いいな。楽しそうだな、スペイン棟」
「楽しいよ~。でも、ラヴィーニョのテンションについていけなくて、時々乙夜がドロンって消えたりするかな」
「あいつ忍者の末裔だしな……それはそれで笑えるな」
「千切りんのイングランド棟はどうなの?」
「あー……最近は平和だな」
「んー?」
「玲王と凪が、仲直り……なのか分かんねえけど、和解したからさ。元通りとまではいかないけど、楽しく過ごせてるって感じ」
「おー、それはいいことじゃん!」
「まー、クリスは相変わらず筋トレばっかだし、凪はいつもどっかで寝てるし、玲王は凪の周りでなんかしてるし、みんな好き勝手やってるけどな」
「みんな自由で良いね~!」
「ははっ、蜂楽には負けるけどな」 - 911◆DGCF6cUlCqNA25/08/08(金) 21:17:10
時計も見ずに俺たちは色んな話をした。
試合中の潔の発言とか、國神の闇堕ちとか。
「……、…ふあー……」
大きなあくびが、蜂楽の口からこぼれる。
「なんかあったかくて、お腹もいっぱいで………眠くなってきちゃった」
「毎日ハードな練習で疲れも溜まるよなー」
「うん……俺、今日は寝るね。また来るね、千切りん」
「おー、胸の中に抱えてる“それ”、話したくなったらいつでも来いよ」
「えー、それは気分次第!」
手をひらひらさせて、蜂楽は部屋を出ていった。
足取りは軽く、どこまでも自由だった。
悩んでること、困ってること、
結局のところ何もないのが一番だ。
けど、あいつは本当は色々考えてることがあって、
でも、それを人に話そうとしない。
別に信用されてないとか、そういうことじゃない。
ま、『お悩み相談室』、のんびり続けてやるか。
【相談終了:蜂楽廻 ※いつか悩みを相談する※】 - 921◆DGCF6cUlCqNA25/08/08(金) 21:18:18
- 93二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 21:19:04
- 941◆DGCF6cUlCqNA25/08/08(金) 21:25:16
ごめんだけどリコーダーの話は夢の中でしか出来ないから、千切が寝たら書くよ
引き続き安価(とりあえずあと2つ)を募集するよ! - 95二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 21:26:56
親とばぁやが喧嘩してる玲王
- 96二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 21:28:28
相談者は清羅で悩みは最近ブレイクダンスをする機会がない
持ってくるお菓子はぶどうアメ - 97二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 21:33:50
追記お菓子はセレンディピティのチョコレート
- 98二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 22:04:56
- 99二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 23:06:27
夢の中で、「楽しさを一緒に探してくれたお礼」と言ってねるねるねるね(2人分)を持ってくる凪。2人で雑談しながら一緒に作って食べる
まだ千切寝てないのに夢の中ばっかりで申し訳ない上に過去作とのクロスオーバーがオッケーかもわからないから問題あったら消してください。 - 100二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 00:11:55
斬鉄が斬鉄らしくて最高でした!
ありがとうありがとう - 1011◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 09:41:50
- 1021◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 09:43:44
大丈夫だよ!噂はちょっと別次元っぽいけど、夢とこころは同じ軸で行けるからタイミングいい時に書くね!
- 1031◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 11:00:36
【お悩み相談九人目:御影玲王】
蜂楽から貰った駄菓子を食べつつ、
静かな部屋で、ぼーっと次の客を待つ。
「お悩み相談室、繁盛してんな~」
懐かしいパッケージを指でなぞりながら、
口の中に広がる甘さとしょっぱさを楽しむ。
カチカチと時計の針が刻む音が、
やけに大きく聞こえる。
三日目、お菓子の在庫が一気に増えた。
うん、いい感じだな。
この調子でお菓子を蓄えるとしよう。
ぐーっと背を伸ばし、ひとつ欠伸をこぼす。
そろそろ来るかな、と思っていたその時。
コンコン。
「はーい、入っていいぞ」
静かなノック音に返事をすると、
扉がゆっくり開く。
そこに立っていたのは、
なんだか元気のない玲王だった。 - 1041◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 11:04:51
「あれ、どうした?元気ねえじゃん」
声をかけても、玲王は曖昧に笑うだけ。
視線は合わない。
まあいいかと、
俺は椅子を顎で指して座るように促す。
玲王は素直に腰を下ろし、
手に持っていた紙袋を俺の机に置いた。
「これ、相談料」
「お、助かる。ちゃんと約束通り二倍のお菓子持ってきてくれたか?」
どれどれと、玲王が取り出す品を見つめる。
袋から取り出されたのは、見ただけでわかる、
高級感あふれるチョコレートドリンク。
「うわ……すご…………」
すっかり語彙力をなくした俺は、
そのチョコレートドリンクをまじまじと見ていた。
グラスの縁まで盛られたホイップクリームの上には、削られたチョコが雪みたいに降り積もっている。
透明の器の下には、白地に黒の模様が描かれた皿。
全体の雰囲気が、
もう庶民の知ってるお菓子とは別次元だ。 - 1051◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 11:07:07
「セレンディピティのチョコレートドリンク」
「セレ……なんだって?」
「NY発祥のデザート」
「うわ……絶対高いやつ」
「いや、割とお手頃価格だぜ?」
「個人資産億超のやつのお手頃価格は信用出来ねえよ………」
そこで二人とも吹き出す。
一瞬、さっきまでの重たい空気が軽くなった。
「まあいいや、せっかくだし頂くわ」
ストローを刺して、一口飲む。
冷たさと濃厚な甘さが、舌と脳を一瞬で支配した。
「うおっ、食べたことない味する……!!美味すぎるだろこれ!!!」
「ははっ、喜んでくれてよかったわ」
玲王が少しだけ口元を緩める。
けれど、その目はまだどこか沈んでいた。 - 1061◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 11:08:18
玲王の視線が机の上に移る。
色とりどりの袋に包まれた駄菓子の山。
「俺はその駄菓子食べてもいい?」
「おー、どんどん食え。悩みには甘いもんが効くぞ」
玲王は手を伸ばし、ラムネ菓子を一つ取り上げた。
包みを開けて口に放り込み、ゆっくり噛む。
その瞬間、わずかに眉が寄った。
甘さが広がるのと同時に、
心の奥の何かを思い出したような顔だ。
俺はそれに気づき、そっと様子をうかがう。
「……やっぱさ」
玲王が口を開いた。
でも、その続きを言う前に、少し視線を落とす。
「どうした?」
軽く笑って促すと、玲王はゆっくり息を吸った。
「……いや、なんでもない」
そう言ってもう一つ駄菓子を手に取る。
だけど、その横顔はやっぱり晴れないままだった。 - 1071◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 11:37:07
向かい合って、ただお菓子を食べる時間が続いた。
袋を開ける音と、
ドリンクを飲む音だけが部屋に響く。
ふと、玲王が口を開いた。
「今さ、俺の両親とばあやが喧嘩してるんだよね」
「喧嘩……?なんでまた……」
「俺、親からサッカーやることに反対されてるって前言ったじゃん?」
「まあ、聞いたな」
「ばあやは俺の味方だから、サッカーを続けることを影からそっと支援してくれてるんだけどさ」
玲王は机の端に視線を落とし、
指でコップの水滴をなぞる。
「この前会社の跡継ぎがどうこうって話になった時、俺を次期社長にしようとする両親に、ばあやがサッカーのことを伝えたらしいんだよ」
「……なるほど」
「それで揉めたみたいでさ」
「……そっか」
玲王は御影コーポレーションの社長の息子だ。
順当に行けば、玲王がほぼ確定で次の社長になる。 - 1081◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 11:38:35
だけど、玲王には、
サッカーで世界一になるって夢がある。
社長やりながら、
その舞台を目指すなんて絶対に無理だ。
親の気持ちも、ばあやさんの気持ちも分かる。
その衝突の中心にいる玲王の気持ちも、
痛いほど分かった。
「……親御さんも、ばあやさんも、玲王のこと凄い大切に思ってるんだな」
「だから、衝突しちゃう」
「……ああ」
「でもさ、今玲王ってサッカーも会社の勉強も、どっちも頑張ってんじゃん?」
「……まあな」
「それって玲王も、親御さんとばあやさんのこと大切に思ってるってことだろ」
玲王は少し目を伏せ、ゆっくりと頷いた。
「……うん」
「お互いに想いあってても、ぶつかる時ってあるよ」
「でもそれって、悪いことじゃないんじゃねーかな」 - 1091◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 11:40:34
俺はテーブルの上の駄菓子を一つ取り、
包みを開けながら言葉を続けた。
「結局のところ優しさから生まれたもんなら、それを無理に抑えようとしたってダメだ」
玲王は俺の言葉を静かに聞いている。
「それに、その喧嘩をどうにかすることって、多分出来ないからさ」
「…………」
「お前はいま、自分が出来ること、やるべきことをすればいいんじゃないか」
「……まあ、俺の言葉が正しいかどうかは分かんねーけどさ」
その言葉に、玲王はしばらく黙ってから、
小さく「ありがとう」と呟いた。
玲王は少しだけ笑った。
笑ってみせたけど、
その奥にある迷いや重さはまだ消えていない。
けど、それでもさっきより顔色はいい。
「サッカーのことも、会社のことも、俺はどっちもちゃんとやりたい。……それで世界一になる」
「おー、言ったな。だったら俺も応援するわ」
「ははっ、心強いな」 - 1101◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 11:42:27
しばらく、駄菓子の袋をつまみ合いながら、
他愛のない話をした。
甘いチョコの香りと、駄菓子の懐かしい匂いが、
混じって不思議と落ち着く空気になる。
扉の前に立った玲王は、振り返って言った。
「……また、来るかも」
「おう、次も相談料はセレ……なんとかのやつな」
「分かった分かった、準備しとくよ」
笑いながら、玲王は部屋を出て行った。
残ったカップの底に溶け残ったチョコを、
スプーンですくって口に運ぶ。
甘さが、じわっと広がった。
……頑張れよ、出ていった玲王にそう呟いて、
俺はまたひとつ、大きな欠伸をした。
【相談終了:御影玲王 ※次回も高級お菓子※】 - 111二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 20:07:20
- 112二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 20:51:54
いつもありがとうございます
無理せず頑張ってください!!
楽しみです! - 1131◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 21:05:32
- 1141◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 21:07:14
【お悩み相談十人目:清羅刃】
時計の針をちらりと見る。
ぼちぼち今日も終わりが近い。
……多分あと一人くらいだな。
お菓子の袋や紙くずをまとめて、机の端に置く。
この片付けの瞬間って、
なんか一日の区切りを感じるわ。
コンコン。
軽快なノックの音。
「はーい、どうぞー」
扉が開いて、くせっ毛がふわっと揺れた。
あー、清羅だ。
今日も髪の毛の跳ねっぷりが絶好調だな。
「邪魔すんぜ」
「おう、清羅。今日はどうした?」
相変わらずの無表情で部屋に入ってくる。
だけど、なんとなく分かる。
ストレス溜まってるっていうか、そんな感じだ。 - 1151◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 21:12:46
「悩みってほどじゃねーんだけど」
「ん?」
「最近さ、趣味のブレイクダンスする機会がなくて」
「ふはっ、いい趣味してんじゃん!」
思わず笑ってしまった。
「そりゃまあ、サッカーしてる時に踊られたら困るけどな」
清羅は肩をすくめて椅子に座る。
自然と姿勢がリラックスしてる。
こいつ、悩みってより世間話のテンションじゃん。
「試合終わったあととか、昔はよく踊ってたんだけどさ」
「最近は自主トレとか映像分析とかで、気づいたら一日終わってんだよ」
「そんだけサッカーに集中してんだろ。悪いことじゃないじゃん」
「でもよ、ダンスってさ、俺にとっちゃリズム感とか体幹鍛えるのにもちょうどいいし、何より楽しいんだよ」
なんとなく納得する。
確かに清羅の動きって、
サッカー選手っていうより、
ダンサー寄りな時あるもんな。 - 1161◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 21:15:56
「お、そうだ」
ふと思い出したかのように、
清羅は持ってきた紙袋をテーブルに置く。
中を覗くと、紫色の小袋がごろごろ入ってた。
「これ、俺の好きなぶどうアメ」
そう言うと、そのまま袋を破って、
テーブルにざらっとぶちまける。
おいおい、豪快すぎんだろ。
一粒手に取る。
指先に感じる、表面のパリッとした感触。
口に入れると、外側の飴がパリッと割れて、
中から甘酸っぱいぶどうのゼリーが広がる。
「……これ、やべえな」
「クセになるだろ?パリパリジュクジュクってのがたまんねーんだよ」
清羅も一粒口に放り込み、にやっと笑う。
「ほら、悩みには甘いもんが効くって言うだろ」
「俺のセリフ取んなよ」 - 1171◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 21:19:30
しばらく二人で飴を食べながら、
ダンスの話を聞く。
大会に出たことがあるとか、
地元で子供たちに教えたことがあるとか、
意外なエピソードが多い。
「なあ、ブレイクダンスさ」
「あ?」
「ここでやればいいんじゃね?」
一瞬間があってから、清羅がハッとした顔になる。
「あー、その手があったか!」
「ほら、俺がオーディエンスやってやるよ」
「よっしゃ、じゃあ準備するぜ!」
清羅が立ち上がってストレッチを始める。
なんかこの相談室が、
だんだんダンススタジオに見えてきた。 - 1181◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 21:39:58
清羅が軽く首を回し、肩をほぐす。
床に手をついて、
軽くステップを踏んだかと思えば───
「……おお」
思わず声が漏れた。
軽やかな足運び。
滑らかに流れるような上半身の動き。
一瞬で視線が釘付けになる。
床を滑るように回転し、
手一本で体を支えたまま静止する姿は、
まるで時間が止まったみたいだ。
「すげえ……」
思わず呟くと、
清羅はニヤリと笑って立ち上がった。
「いい反応だな、踊りがいがあるぜ」
「いや、すげーよ清羅!思ってたよりクオリティ高いわ!」
「サンキューな、んじゃお前もやってみる?」
「いやいや、無理無理!絶対無理!」 - 1191◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 21:42:01
「まーまー、やってみろって!」
腕をぐいっと引かれ、立たされる。
あーもう、こういう勢いのあるやつには、
敵わないんだよな……。
「まずは足の動かし方からな」
清羅がゆっくりとステップを踏みながら、
動きを分解して見せる。
「右足出して、左足引いて……そうだ」
「お、おお……?」
「で、腰はこう」
「おわっ!ちょっ、バランス崩れるって!」
強引ながら、
でも真剣に手足の位置を直してくれる。
何度か繰り返すうちに、
少しずつリズムに乗れてくる。
「お、いいじゃん!センスあんぜお前」
「お世辞でも嬉しいわ」 - 1201◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 21:43:22
汗が額を流れ落ちるけど、不思議と息苦しくない。
むしろ楽しい。
「……あっつ」
「いい運動になるだろ?」
「認めるわ」
最後に軽くストレッチをして、深く息を吐く。
達成感と心地いい疲労が、じわっと体を包んだ。
「さて……一汗かいたし、風呂入って寝るか」
「だな」
ぶどうアメの袋を片付け、
床に散った小さな埃も軽く払う。
二人で部屋を出ると、
廊下には夜の静けさが広がっていた。
「またダンスやろーぜ」
「……気が向いたらな」
そんなやり取りを交わしながら、
清羅と並んで歩いていった。
【相談終了:清羅刃 ※次回一緒にブレイクダンス※】 - 1211◆DGCF6cUlCqNA25/08/09(土) 23:12:54
ごめん寝てたので更新はまた明日……
最近あんまり更新できなくて申し訳ない
それじゃあ、おやすみなさい - 122二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 03:21:07
忙しい中お疲れ様
清羅リクエストした者だけどブレイクダンス回すごく良かったよ
疲れてるのに更新してくれてありがとね
続きは楽しみだけど更新が義務みたいになるとしんどくなっちゃうと思うから気にしないでスレ主のペースでゆっくりやってね
感想がてら保守しながらのんびり待ってるよ~ - 1231◆DGCF6cUlCqNA25/08/10(日) 10:46:28
- 124二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 20:06:31
ほしゅ
無理はしないでゆっくりでいいよ - 125二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 03:28:33
- 126二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 12:16:12
ほしゅ
- 1271◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 12:56:38
- 1281◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 13:28:19
【お悩み相談十一人目:潔世一】
───目を開ける。
二段ベッド。
つまり、二次セレクション。
………はい、夢。
この手の夢はもう三回目。いい加減慣れるわ。
大きく欠伸をして、少しぼーっとする。
その時、ふと遠くから、あの音が聞こえてきた。
………玲王のリコーダー。
前より上手くなってる。
いや、前が酷すぎただけか?
コンコン。
「はーい」
いつもの癖で返事をする。
扉を開けて入ってきたのは、潔。
何やらやけにキラキラした目をしている。
「夜眠れるようになったか?」
そう聞くと、潔はニヤッと笑った。 - 1291◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 13:42:24
「いや、それがさ……」
「まずさ、あの音色が心臓に直接くるんだよ!最初は耳が死ぬかと思ったけど、今じゃ癖になってさ!」
突然、玲王のリコーダーの良さを語り出した。
「……お前、どうした?」
「どうもこうもねーよ!」
潔の目がギラつく。
「千切、聞いてくれよ!あの旋律はな、魂を浄化するんだ!」
「は?」
「息遣いがさ、もう芸術なんだよ!あれ聴くとさ、俺の中の何かが目覚めるっていうか!」
ちょっと待て、怖い怖い怖い。
語彙力の方向性が完全に洗脳済みのやつじゃん。
「……なあ潔、お前さ」
「ん?」
「玲王に何吹き込まれた?」
「リコーダーだよ!!!」
勢いよく叫ばれ、思わず一歩引く。 - 1301◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 13:57:23
その瞬間、廊下からまた、
玲王のリコーダーが響いてきた。
ピィ~~~~~~……。
潔が恍惚とした表情になる。
いや、マジでやべえ。
これ完全に毒電波系のホラーだろ。
「千切、お前も聴けば分かる」
「いや、遠慮する」
「逃げんな!」
じりじりと距離を詰めてくる潔。
背中が壁にぶつかる。
「ほら……一緒に……」
「やめろおおおお!!!」
叫んだ瞬間、景色がぐにゃりと歪んだ。
───目が覚めた。
五角形のベッド。間違いなく現実だ。 - 1311◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 18:01:10
……あの夢、絶対次は俺も吹かされるやつだろ。
ため息をひとつついて、天井を睨んだ。
嫌な汗かいたな……。
夢のせいで、心臓がまだ変なリズム刻んでる。
ベッドから降りて、洗面所へ向かう。
廊下は朝の静けさに包まれていて、
さっきまでの夢が嘘みたいだ。
……と思ったら、
洗面所の前でばったり潔と遭遇した。
じとっとした目で潔を睨む。
「おはよー……って、なんだその目……」
「嫌な夢見たんだよ」
「え、俺関係なくない!?」
「いーや、あるわ。お前のせいで悪夢見た」
潔が怪訝そうに眉をひそめる。
「夢の中は制御できないって……」 - 1321◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 21:14:24
無視して洗面台に向かい、
バシャバシャと顔を洗う。
冷たい水が額から頬へ伝って、
ようやく少し落ち着いてきた。
タオルで顔を拭きながら、横目で潔を見る。
「お前、お悩み相談お菓子二倍な」
「え!?なんで!?俺関係ないじゃん!」
「大アリだわ!リコーダー布教してきやがって!」
「なんつー夢見てんだよ……」
そう言って呆れたように笑う潔。
……ああもう、現実なのに、
笑い方が夢の時と被ってて嫌になる。
「今日の試合、絶対負かすからな」
「現実でも手加減しないからよろしく!」
そう言って、ひらひらと手を振り、
いなくなる潔を眺めながら、
頭を切替えるために、俺は練習場に向かった。
【相談終了?:潔世一 ※次回お菓子二倍※】 - 1331◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 22:02:46
【お悩み相談十二人目:凪誠士郎】
お悩み相談室を開設して、今日で四日目。
なんだかんだで、結構充実してる。
机の上には、ここ数日のお菓子が並んでいた。
斬鉄の十万石まんじゅう。
蜂楽の駄菓子。
清羅のぶどうアメ……。
見てるだけでちょっと幸せだ。
まんじゅうの袋をつまみ、一口食べる。
甘さが口いっぱいに広がって、思わず頬が緩む。
……さて、今日は誰か来るかな。
そう思っていたら、ガチャリと扉が開いた。
ノックもなしに入ってきたのは、
相変わらずのっそりとした動きの凪。
「お前が悩み事とか珍しいな」
「別に悩みじゃないよ」
「玲王の話?」
「ちがう」 - 1341◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 22:12:59
短いやりとりをしながら、椅子を指さす。
凪はそのままのペースで椅子に座り、
ポケットから何かを取り出した。
「これ」
机に置かれたのは、ねるねるねるね。
「……うわ、懐かしいな」
思わず笑ってしまう。
子どもの頃、駄菓子屋でよく買ったやつだ。
「水取ってくるわ」
キッチンからコップの水を持ってきて、
二人で作り始める。
粉を入れ、水を加えて、ぐるぐる混ぜる。
だんだん色が変わって、
ふわっと膨らんでくるのが妙に楽しい。
「やっぱこれ、作る過程が一番面白いな」
「うん、食べるよりこっちの方がいい」
そんなことを言いながら、
色の変化をじっと見つめている凪の横顔が、
やけに穏やかだった。 - 1351◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 22:42:21
「そういえばさ」
ねるねるを混ぜ終えて、
スプーンで一口すくったタイミングで、
凪がぽつりと口を開いた。
「前、ブルーロックの外に出て、一緒に坂道歩いたよね」
「ああ……そんなこともあったな」
あの日の光景が、ふっと頭に浮かぶ。
あれは、凪が“こころ”を探してた時だった。
季節の匂いと、やけに静かな坂道の音。
「その時、急に千切が下った坂道を登り始めてさ」
「下ったあとは登んなきゃだろ」
「いや、歩けばいいじゃん……」
「俺は走りたかったの!」
そう言って笑うと、凪もわずかに口角を上げた。
普段ほとんど感情を見せないやつが、
こういう時だけほんの少し笑う。 - 1361◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 23:01:00
「でもさ、走ったから“楽しさ”見つけられたじゃん?」
「まあ、それはそうだけど……」
「なら良いだろ、こころ全部見つかってよかったな!」
スプーンを置きながらそう言うと、
凪は少しだけ間を置いて、消え入りそうな声で、
「うん…………ありがと」と呟いた。
小さすぎて、普通なら聞き逃すような声だった。
でも、俺はちゃんと聞いた。
「どういたしまして!」
わざと明るくそう返してやると、
凪は少しだけ目をそらし、そのまま顔を背けた。
その仕草がなんだか子どもみたいで、
俺も少し笑ってしまう。
「……で、なんで今日来たんだよ。お礼ってだけか?」
「うん。それと、ねるねる食べたかった」
「そっちが本命だろ」
「……かも」
二人でまたスプーンを手に取り、食べ進める。 - 1371◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 23:02:22
甘ったるい味が口に広がって、
なんだか懐かしい気分になった。
「そういや玲王は?今日は一緒じゃないんだな」
「うん、寝てる」
「まああいつ、夜更かししすぎだしな」
「まあね。ていうか千切は?なんか悩みないの?」
「俺?悩みかぁ……そうだな、最近お菓子食いすぎて体重計乗りたくねーことくらい?」
「じゃあ走ればいいじゃん」
「……お前、それブーメランだぞ」
そんな他愛ないやり取りが、しばらく続いた。
やがて、ねるねるも全部食べ終わり、
凪が立ち上がる。
「じゃあ、もう行く」
「おう。また遊びに来いよ」
「うん」
凪はゆっくりとした足取りで部屋を出ていった。 - 1381◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 23:03:57
扉が閉まる瞬間、ちらりとこっちを見た気がする。
あいつなりの「またな」だったのかもしれない。
部屋の中には、まだ甘い香りが残っている。
机の上には、空になった容器と、混ぜたスプーン。
俺はそれを片付けながら、小さく息をついた。
“こころ全部見つかってよかったな”───
さっき言った言葉が、もう一度胸の中で響く。
あの日坂道を走って見つけた“楽しさ”は、
ちゃんとあいつの中に残ってたんだ。
そう思うと、なんだか自分まで、
少しだけ救われたような気がした。
机を拭き終えて、椅子に深く腰を下ろす。
天井を見上げ、静かに笑った。
「……さて、引き続き頑張るか」
小さく呟いて、
残っていた駄菓子をひとつ口に放り込む。
甘さが広がると同時に、
またあの坂道の景色が頭に浮かんだ。
【相談終了:凪誠士郎 ※次回も『楽しさ』を一緒に※】 - 1391◆DGCF6cUlCqNA25/08/11(月) 23:05:55
今日はここまで、見てくれてありがとう!
安価置いておくね、それじゃあおやすみなさい
『どんな悩み』を『誰が』相談しに来る?
※悩みはふざけてても真剣でもなんでもOK
※安価被っちゃった時はどっちも書くよ!
※渡したいお菓子があれば一緒に教えてね
- 140二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 23:17:13
斬鉄が前と同じまんじゅう持ってきて
「俺のメガネ知らない?」って入ってくる - 141二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 23:17:35
お疲れ様でした!
今日のお話もすごく良かったです!
悩みは氷織で久しぶりにゲームがしたいが監獄内にゲームがない
お菓子はラムネ味の八つ橋
もしよければお願いします! - 142二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 04:03:51
スレ主お疲れ様〜
いつも頑張って書いてくれてありがとう - 1431◆DGCF6cUlCqNA25/08/12(火) 11:12:08
- 1441◆DGCF6cUlCqNA25/08/12(火) 11:13:12
【お悩み相談十三人目:剣城斬鉄】
今日も引き続き、お悩み相談室は営業中だ。
机の上には、まだまだお菓子が残ってる。
今日も誰か来るかなーと思いながら、
椅子に腰かける。
カチカチと時計の音だけが響く部屋。
そろそろ飽きてきたな、と、
お菓子を一つ開けようとした、その時。
コンコン。
「はーい」
返事をすると、勢いよく扉が開く。
入ってきたのは、どこか焦った顔の斬鉄だった。
「おお、この間ぶりだな」
「千切!俺の眼鏡知らないか?」
「眼鏡……?お前、かけてるじゃん」
「え?」
「え?」 - 1451◆DGCF6cUlCqNA25/08/12(火) 11:36:21
沈黙。
そして斬鉄は、自分の顔をぺたぺた触り始めた。
「……あった!ずっと探してたんだ!」
「おい、嘘だろ!?」
さっきまでの必死な顔が、一瞬で晴れやかになる。
その落差に、思わず笑ってしまった。
「探してたって……ずっと顔にあったんじゃねーか」
「いやー、部屋中探したんだぞ!机の上もベッドの下も!」
「なんで顔を先に確認しないんだよ!」
そうツッコむと、
斬鉄は「確かに」と笑って肩をすくめた。
「ほら、これ相談料な!」
そう言って差し出されたのは、
前回と同じ、埼玉名物の十万石まんじゅう。
「おー、またまんじゅうか!俺、これ好きなんだよな」
「礼には礼を、だな!」
「ちが……いや、合ってるわ」 - 1461◆DGCF6cUlCqNA25/08/12(火) 11:48:11
二人で笑い合いながら、
まんじゅうを一つずつ頬張る。
甘さが口いっぱいに広がって、
なんだかほっとした。
「で、眼鏡が見つかったんなら、もう悩み解決じゃね?」
「いや、見つかったけど……なんで顔にあったのか、そこが謎なんだ」
「お前がかけたからだろ!」
また笑いがこみ上げてきて、
しばらく二人で笑い続けた。
まんじゅうをもぐもぐ食べながら、
斬鉄がふと思い出したように言った。
「なあ、千切。お前、なんか困ってることないのか?」
「俺が? 困ってること……うーん……」
少し考えてみるけど、正直今は特にない。
まあ、夢の中で変なことは起きてるけどな。
「……夢の中で、玲王がリコーダー吹きまくるんだよ」
「リコーダー?」
「そう。しかも寝かせてくれないの。潔まで巻き込んで布教してきやがるし」 - 1471◆DGCF6cUlCqNA25/08/12(火) 12:05:23
斬鉄はしばらく黙って俺の話を聞いてから、
真顔で言った。
「……それは夢占い的に、音色が何かを知らせようとしているんだな」
「は?お前夢占いできんの?」
「いや、できない」
「できねーのかよ!」
俺がツッコむと、斬鉄は目を細めて笑った。
「でも、楽しそうな夢だな。いいと思うぞ」
「いや、楽しくねーから相談してんだけどな……」
それからも、最近見た他の夢の話や、
どうでもいいような雑談を交わす。
斬鉄は終始真剣に聞いてくれて、
時々ズレた返答を返す。
でも、そのズレすらもなんだか心地いい。
「千切、お前って夢でも現実でも忙しいんだな」
「まあな。でも楽しいからいいんだよ」
「そうか。じゃあ困ったことがあったら、また俺が来てやる」 - 1481◆DGCF6cUlCqNA25/08/12(火) 12:06:42
「おー、頼りにしてるぜ」
そう返すと、斬鉄は立ち上がって、
元気よく手を振った。
「じゃあな!」
「おう、またな」
扉が閉まって、部屋に静けさが戻る。
机の上には半分残ったまんじゅうと、
湯気の立つお茶。
まんじゅうを一口かじって、お茶で流し込む。
甘さと温かさが、胸の奥まで染みていく。
「……ほんと、相変わらず真っ直ぐなやつだな」
ぽつりと呟いて、少しだけ口元が緩んだ。
今日もいい時間だった。
さて、次は誰が来るのか───
そんなことを考えながら、俺は湯呑みを傾けた。
【相談終了:剣城斬鉄 ※お悩み相談員補佐継続中※】 - 149二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 21:48:40
楽しみ保守
- 1501◆DGCF6cUlCqNA25/08/12(火) 21:51:51
- 151二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 02:21:35
今日もお疲れ様
スレ主の解釈の千切のお話すごく好き
いつも推しの素敵なお話書いてくれてありがとね
ゆっくり休んでお大事にね! - 152二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 07:41:13
いつもありがとう!
お大事にしてください
楽しみにしてます! - 1531◆DGCF6cUlCqNA25/08/13(水) 14:32:39
- 1541◆DGCF6cUlCqNA25/08/13(水) 22:03:38
ちょっと体調が回復しないから、今日は投稿できなくて申し訳ないけど寝るね……
明日良くなったら更新再開するよ
それじゃあ、おやすみなさい - 155二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 02:35:18
スレ主大丈夫?
治るまで待ってるので無理しないでくださいね!
おやすみなさい、体調早く良くなりますように! - 1561◆DGCF6cUlCqNA25/08/14(木) 09:36:07
- 1571◆DGCF6cUlCqNA25/08/14(木) 09:37:27
【お悩み相談十四人目:氷織羊】
お悩み相談室を開いてから、何人と話したっけ。
気がつけばもう四日目が終わる。
机の端には、相談料として貰った、
お菓子の残りが沢山積まれていた。
……見てるだけで嬉しくなる。
俺のこと信頼して、お菓子を持ってきてくれた。
なんとなく込み上げてくるものがあった。
こんなに沢山お菓子が貰えて、
お悩み相談室開設した甲斐があったな。
今夜はそろそろ店じまい、と思いながら、
俺は机の上に散らかった空き袋を片付けてた。
時計の針をちらりと見上げる。
短針はそろそろ、
今日の終わりを告げる位置へ近づいている。
「あと一人か……」
誰に聞かせるでもなく呟いたその時───
コンコン。 - 1581◆DGCF6cUlCqNA25/08/14(木) 10:51:08
「はーい、いらっしゃい」
声をかけると、ゆっくり扉が開き、
涼やかな雰囲気を纏った氷織が姿を見せた。
「こんばんは、お悩み聞いて欲しいんやけど」
落ち着いた声が、
部屋の空気をさらに穏やかにする。
「ああ、もちろん」
そう返すと、
氷織はほっとしたように目元を緩める。
「おおきに。それじゃあ、お言葉に甘えて」
椅子がわずかにきしむ音。
腰かけた氷織は、
手に持っていた小さな紙袋を机の上に置いた。
「お菓子持ってきたで」
袋の口を開けると、
中から現れたのは水色がかった薄い板。
「ラムネ味の八つ橋…?」
思わず身を乗り出す。 - 159二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 17:43:08
- 160二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 00:57:51
更新ありがとう
ラムネ八つ橋あんこがラムネ味でおいしいよね
肉桂が入ってないから肉桂の味苦手な人でも食べやすい - 161二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 10:50:27
保守
- 162二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:04:39
ラムネ味の八つ橋美味しそう
- 163二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 03:09:44
ほしゅ
- 164二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 10:15:03
調べたらラムネ味以外もいろいろあるみたいだね
どれもおいしそう - 1651◆DGCF6cUlCqNA25/08/16(土) 10:35:51
- 1661◆DGCF6cUlCqNA25/08/16(土) 11:17:13
「うん。たまたま見つけてな、珍しいやろ?」
ふわっと広がる甘酸っぱい香りに、
鼻先がくすぐられる。
「色、めちゃくちゃ綺麗だな」
本当に、ラムネみたいな澄んだ色合い。
お菓子でこんな色は初めて見る。
「喜んでもらえて光栄やわ」
やわらかな京都訛りで言った。
その笑顔は、ラムネ色の八つ橋に負けないくらい、
とても爽やかだった。
「にしても、これ作るの難しそうだな」
「んー、どうやろ。職人さんやったら慣れとると思うけど」
「俺、作るより食う方専門がいいや」
「ふふっ、それはそれでええことや」
そんな何気ないやりとりが心地よくて、
部屋の中の時間が少しゆっくりになった気がした。
お菓子を眺めながら、俺はふと氷織に尋ねる。
「で、今日はどんな話をしに来たんだ?」 - 167二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 13:54:56
スレ主おかえり!
体調不良大変だったね本当にお疲れ様
回復してよかったよ
八つ橋のラムネ味美味しいからもし機会があったら食べてみてね! - 1681◆DGCF6cUlCqNA25/08/16(土) 19:59:18
- 1691◆DGCF6cUlCqNA25/08/16(土) 20:01:00
氷織は一瞬、何かを考えるように視線を伏せた。
その指先が、机の端で八つ橋の包みをそっと撫でる。
光に照らされた横顔は穏やかだ。
だけどその奥に、
少しだけ言い出しづらそうな色が見えた。
氷織はしばらく八つ橋を眺めていたけど、
ふと、「せやなあ」と小さく頷いて、
こちらに視線を向けた。
「久しぶりにゲームがしたなってきてな」
「ゲーム?」
「うん。本当はFPS系が好きなんやけど、ブルーロックには置いてへんやろ?」
「まあ……絵心が許可するわけないよな」
FPS、つまり一人称視点のシューティング。
氷織の落ち着いた物腰からは想像しにくいけど、
画面の中ではめっちゃキル数稼ぐタイプらしい。
「サッカーしながらFPSってできねえの?」
冗談半分で言うと、氷織は目を細めて笑った。
「おもろそうやな……ほな、例えばやけど」 - 170二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 20:55:22
更新ありがとうございます!
氷織推しなのでありがたいです~
このごろとっても暑いので、熱中症気をつけてがんばってください! - 1711◆DGCF6cUlCqNA25/08/16(土) 21:29:59
こちらこそ更新遅いのに読んでくれてありがとう!氷織もとってもいいキャラだよね、これからの活躍に期待が高まるね!比較的涼しい地域ではあるけど、それでも暑いから気をつけるね、ありがとう!170さんもお気をつけて!
- 1721◆DGCF6cUlCqNA25/08/16(土) 21:31:39
氷織は指先で机をトントンと叩き、
まるで戦術図のように空中に描き始める。
「ボールはフラッグ扱いにして、それを相手陣地に持ってったらポイント。味方は“カバー”役と“アタッカー”役に分ける」
「パスはリロード、ドリブルはストレイフ移動、スライディングで敵を抜くのは、ショットガンの至近距離みたいなもんやな」
「おお……なんか急にイメージ湧いてきたな」
「せやろ?ほんで、敵にボールを奪われたら“デス”扱い。味方がリスポーン地点までカバーに来なあかんねん」
「リスポーン地点って……どこだよ」
「ベンチや」
その言い方が妙に真顔で、思わず吹き出す。
「お前、そういうの考えるの上手いよな」
「FPSやっとったら自然とそうなるわ。立ち回りとか、連携の仕方とか、サッカーと似とるとこ多いしな」
確かに、視野の広さや、
位置取りは共通する部分が多い。
違うのは、
こっちはボールで勝負するってことくらいだ。
「でもまあ、実際やったら絵心さんに怒られるやろな」
「間違いなくな」 - 1731◆DGCF6cUlCqNA25/08/16(土) 21:33:50
二人して笑いながら、
八つ橋をひとつ口に放り込む。
ふわっと広がるラムネの風味に、また笑顔になる。
「ほな、今度のフリータイムに試してみよか。ボールをFPS風に運ぶ練習」
「お、いいじゃん。面白そうだな」
こういうくだらない遊びの話をしている時間が、
妙に心地いい。
相談っていうより、ただの作戦会議みたいだけど。
氷織はゆっくり椅子から立ち上がって、
「また来るわ、ありがとな」
と、軽く手を振って部屋を出ていった。
扉が閉まると、部屋の中にまた静けさが戻る。
机の上には、まだいくつかの八つ橋が残っていた。
ラムネ色のそれをひとつ摘んで、
俺はぽつりと呟いた。
「FPSサッカー……案外アリかもしれねえな」
頭の中で色々考えながら、お菓子を片付けたあと、
部屋の電気を消して、俺は寝室へと向かった。
【相談終了:氷織羊 ※次はFPSサッカー?※】 - 1741◆DGCF6cUlCqNA25/08/16(土) 21:35:28
- 175二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 23:20:05
- 176二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 03:39:41
- 1771◆DGCF6cUlCqNA25/08/17(日) 10:48:09
- 1781◆DGCF6cUlCqNA25/08/17(日) 17:49:11
【お悩み相談十五人目:黒名蘭世】
お悩み相談も、もう五日目。
流石にお菓子を食べすぎて、
体重計には乗りたくねーなと思いながら、
清羅からもらったぶどうアメを口に放り込む。
パリッと割れる食感が楽しくて、
ジュワッと広がる甘酸っぱさに少し笑みが漏れる。
今日もそろそろ誰かが来るだろうかと、
机の上を片付けながらぼんやりしていた。
コンコン。
「はーい、どうぞ」
声をかけると、扉が開いて黒名が顔を出す。
「おー、この間ぶりだな。その後どうだ?」
椅子を勧めながら問いかけると、
黒名は少しだけ笑って片手を上げた。
「うん、ポカリに笑顔で会えるように頑張ってる」
そう言って、Vサインを作って見せる。 - 179二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 23:16:51
スレ主お大事に〜
- 180二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 03:44:18
美味しそうなお菓子いっぱい集まってきたね
次のもすっごい美味しいやつだ - 181二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 13:33:05
保守
- 182二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 22:30:09
わくわく
- 1839925/08/19(火) 00:02:46
凪のリクエストをした者です!
夢を見るの頃から追っていたので「好きな字書きさんが、自分がリクエストした好きなキャラ達のSS(しかも好きな過去作とのクロスオーバー)を書いてくれた」という贅沢すぎる状況を1週間近く噛み締めていました(一番好きなキャラは凪なのでこころは特にお気に入りです。千切もかなり好きです)
2人とも私の好きな彼らまんまで読んでいてすごく幸せでした
私の想像を超える素敵なSSを書いてくださって本当にありがとうございます!
まだまだ暑い日も続きますし、どうぞご自愛ください - 184二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 04:22:55
千切が美味しそうにお菓子食べてる描写見るとお菓子食べたくなるね
これからもいっぱい美味しいお菓子食べてほしい - 185二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 11:27:23
スレ主大丈夫かな
体調悪化しないようにお大事にしてね - 186二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 20:58:11
ほしゅ
- 187二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 02:49:30
保守
- 188二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 10:14:34
ほしゅ
- 189二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 19:16:08
楽しみ保守
- 190二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 00:12:45
保守
- 191二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 09:54:04
スレ主素敵なSSをありがとう
- 192二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 19:06:16
保守
- 193二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 00:09:38
保守
- 194二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 04:57:17
もうすぐ埋まっちゃいそうだね
スレ主のお話好きだからもし200まで埋まっちゃっても次スレあるならまた読みに来るよ
続き楽しみに待ってるね - 195二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 11:32:55
黒名のお話途中まででもありがとうございます!
続き楽しみに待ってますね! - 196二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 21:15:57
素敵なお話を書いてくれてありがとう保守
- 197二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 03:24:09
素敵なお話ありがとう&続き楽しみ保守
もし埋まっちゃってもスレ主が良ければパート2建ててもらえると嬉しいな - 198二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 12:16:56
保守
ゆっくりでいいからしばらくしたらパート2あると嬉しいです - 199二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 22:11:14
素敵なお話に感謝の保守
- 200二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 04:33:53
スレ主が戻ってくるまでに200まで埋まってしまったけど、素敵なお話ありがとうございました
スレ主の書くお話が大好きなので、調子が戻ったらまた続きを建てていただけるとありがたいです
ゆっくりでも大丈夫ですので、お戻りになられるのを楽しみにお待ちしていますね