ここだけ

  • 1二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 22:13:42

    ロナルドとヒナイチが吸血鬼の世界

    〇ドラルク
    Δとは違う世界線の吸対所属のクソ雑魚ダンピールおじさん。
    本編世界よりも新横の治安が多少良いので悠々自適に公務員生活を謳歌している。
    以前は吸対のカナリアとして活躍していたが、最近優秀な新人が入ったのでもっと楽ができるぞーと息巻いていたところに謎の吸血鬼コンビのお世話係に任命されてしまった。
    アルマジロのジョンとはいつも一緒。たまに酷い悪夢を見て寝不足になるのが最近の悩み

    〇ロナルド
    突然ドラルクの前に現れた謎の吸血鬼コンビの片割れ。
    日光やにんにく、そして銀とあらゆる弱点が通用しない恐るべき吸血鬼だが何故かセロリが苦手。
    吸血鬼としての能力は非常に優秀で、大抵の能力は使えるみたいだが、ここ一番の場面ではなぜか銃か拳を重用する癖がある。
    過去に致命的な失敗をしたとのことで表情が険しい。
    ドラルクの後先考えない行動によく口を出しがちで、特に夜の勤務時間時はヒナイチともどもひな鳥のようにドラルクについてまわる。
    ドラルクが就寝中などにヒナイチとふらっと出かけてはボロボロになって帰ってくることがある。しかし何をしているのか絶対に話してくれない。

    〇ヒナイチ
    ドラルクの前に現れた吸血コンビの二人目。
    ロナルド程は弱点に耐性を持っておらず、特に日の光に弱い。
    日光に関しては「素質が無いのに無理やり転化した代償」とのことで、髪の赤色も若干濁ってしまっている。
    代わりに夜の闇において彼女を捕まえられるものはいないほど俊敏であり、また二刀流の達人でもある。
    ロナルドとは兄妹のように仲が良いが別に実の兄妹でもなければ恋人とかでもないらしい。
    たまにロナルドともども泣きだしそうな顔でドラルクを見ている時がある。

    〇半田
    吸対所属のエース。とにかく仕事ができるのだが、真面目過ぎて余裕がない所がある。
    同じダンピールで先輩にあたるドラルクには懐いているようだ。
    新たに表れた吸血鬼コンビには大いに警戒しているのだが、なぜか軽口をたたきやすく内心ホッとしている。なぜだろう?

  • 2二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 22:15:24

    〇ヒヨシ
    レッドバレットの異名を持つ腕利きのハンター。妹が一人いる。
    無類の女好きだが過去に盛大にやらかしたこともあり、ある程度自制している。
    最近現れた吸血鬼が自分に似ているのが妙に気になる。あの半分でも身長があればな……。

    〇ミカエラ
    吸対所属のエースその2であり、人間。半田の先輩筋にあたり、弟が一人いる。
    きっちりと制服を着こなし真面目に職務に当たっているが、最近現れた吸血鬼がその事に茶々を入れてくるので困惑している。
    何が問題なのだ!

    〇ケン
    突然ハンターギルドに現れ、ハンターをやりたいと言い出した謎の吸血鬼。
    催眠と結界の二重使用という極めて高度な技術を持つ。ロナルドとヒナイチは以前からの知り合いのようで、たまに共同で戦ったりもしている。
    何故か吸対所属のミカエラをよく茶化す。

    〇ディック
    「揺らぐ影」の二つ名を持つ古き血の吸血鬼。
    ロナルドとヒナイチがピンチになるとどこからともなく現れ、変身能力で場をかき回して去っていくタ〇シード仮面的存在。
    2人に協力するのは何か目的があるようだ。以前、息子がいたらしい。

    〇ジョン
    ドラルクと永遠を誓う愛すべき〇。

    最近嫌な夢を見るんだヌ。黒い何かがドラルクさまに襲い掛かるんだヌ。
    そして、まるで存在をすする様にドラルクさまが消えていくんだヌ。

    ヌンは何もできなかったヌ。
    見ることしかできなくて、そしてヌンの体もぼろぼろと塵になっていくんだヌ。
    ……夢はいつもそこで終わりヌ。

  • 3二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 22:23:27

    ディックとは珍しいキャラが出演してるな

  • 4二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 22:29:36

    ・ロナルドとヒヨシ、ミカエラとケンが兄弟ではない
    ・ミラやドラウス、カズサの存在に触れられていない
    ・ディックには「以前、息子がいたらしい」
    血縁関係が消えてるキャラが多いの、世界線の捻れを感じて怖良いな
    特にロナルドヒナイチは正常な輪廻に逆らってでも何かを成そうとしているんだろうな…… という雰囲気が凄い

  • 5二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 22:47:25

    この世界にはクソッタレ本部長もいないのかもしれない

  • 6二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 22:52:46

    追記で
    〇カズサ
    神奈川県警吸血鬼対策部本部長。
    人員不足だった新横吸対の為に、渋るイギリス吸対から人材を引っ張ってきた人。
    人員の一人はクソ雑魚ダンピールおじさんだったが十分働いてくれるのでオッケー。
    (ヒナイチを見て)おや、そこの吸血鬼のお嬢さん、オレの顔に見覚えがあるのかい?

  • 7二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 23:58:58

    常夜神社のアレにドラルクが殺されたあとロナルドとヒナイチが記憶持ち越しして一巡した世界かな?

  • 8二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 00:10:40

    ドラ「キミら表情ずーっと硬いけどそれ疲れない?」
    ロナ「……お前がのんきすぎるんだよ」
    ドラ「のんきってったって新横だぞ?せいぜい愉快な変態達がたまに出現するくらいでそこまでピリピリするようなことは無いさ」
    ドラ「下等吸血鬼も最近はめっきりご無沙汰だしねっと、ジョン。お茶にしようか」「ヌー!」
    ドラ「今日はドラちゃん特製携帯食料型クッキー。なんちゃってカロ〇ーメイトとも言うな!」
    ヒナ「クッキー!?」
    ヒナ「……っは」

    ドラ「なるほど、これは面白い」
    ヒナ「い、いや、私は、吸血鬼だし、必要ないし……!」
    ドラ「食べ物を食べる吸血鬼はいるよ?見たところ君たち人間あがりっぽいし。ほれほれ」
    ヒナ「でも、でも……うう、ひさしぶりのクッキー美味しい……」
    ドラ「そしてほら、そこの仏頂面」クッキーポイー
    ロナ「ああ?」
    ドラ「ずっと横目で見てるのはバレてるぞ。素直に認めて食べたらどう、って早」
    ロナ「……うん」
    ドラ「君も案外面白い顔するねえ」

  • 9二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 01:46:00

    この世界はカメ谷いるのかな?半田との関係もちょっと違いそう

  • 10二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 01:58:32

    保守ヌ

  • 11二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 02:56:25

    メビヤツはおらんのかな

  • 12二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 08:19:37

    メビヤツいてほしいけど元の世界線?から連れてくるか、今いる世界で出会うかで変わりそう。
    個人的にはロナルド君になんかしらの方法で携帯しててほしい。

  • 13二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 11:07:09

    ディックが古き血なのは変わってないなら他の古き血も変わってない?
    ドラウスやミラさんはどうなってるんだろ

  • 14122/04/17(日) 15:40:02

    基礎ルールだけ書いときます
    ・御真祖とフクマさんが存在していない
    ・そもそも竜の一族が存在していない。ノースディンは存在している。ドラウスたちは人間としてなら存在しているかもしれない
    ・記憶の持ち越しは元から吸血鬼か人→吸血鬼のみ。記憶のない吸血鬼もいる
    ・記憶を持ち越した者は、家族との血縁関係や友人関係がなかった事になる。
    ・吸血鬼が人間かダンピールになっている場合は確定で「何か」があった。
    ・本編で複数能力持ちだった吸血鬼のうち何人かは一部の能力が消えている場合がある(例、イシカナがタピオカの能力しか持っていない)
    ・一部の人間にもうっすらと記憶の残滓が残っている場合があるが夢のようにおぼろげ。
    ・存在が丸々消えている吸血鬼もいる(例、へんな)
    ・ロナルドヒナイチは頻繁に「何か」と戦っている

    ・「それ」は竜の臭いに惹かれている

    他の古き血とハンター連中やナギリ周りの設定はふわっふわなので適当に盛っていただければ

  • 15二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 23:15:24

    うわめっちゃ面白そう

  • 16二次元好きの匿名さん22/04/18(月) 01:11:20

    地獄の予感しかしない

  • 17二次元好きの匿名さん22/04/18(月) 01:44:03

    常夜神社のアレはどちらかといえば竜の臭いを嫌ってるからまた別の何かが悪さしてるのかね
    ロナルドやヒナイチの様子見るに取り返しのつかない事が既に起きちゃってる気がする…

  • 18二次元好きの匿名さん22/04/18(月) 01:48:20

    ドラウスも人間になってるなら元の世界で「何か」あったんだろうな…もしかして元の世界では竜の一族全滅した?

  • 19二次元好きの匿名さん22/04/18(月) 01:53:30

    ドラウス達がいない場合はドラルクの挙動が何となくこういうイメージがある。

    ド「君たち一体どこから来たの?その派手な強さなら別の街で噂になってもおかしくないのに、調べても一切手がかり無しときた」
    ロ「何が言いたいんだよ?」
    ド「つまりさー、いきなり無からポップしたように見える」
    ロ「……」ヒ「それはその、私たちは最近吸血鬼になったからだ!!」
    ド「私それなりに吸血鬼に知り合いいるけど、君たちみたいなのは初めて見るよ?クソ髭あたっても特に情報は出なかったし、一体誰から血を貰ったんだい?」
    ロ「別に出自なんざどうでもいいだろ。……そういえば、お前、親父は?」

    ド「はあ?なんでそこでいきなりおトうsa/※;:*4#   あれ?私何話してたっけ」
    「……」「……」
    ド「二人ともどうしたんだい?」

  • 20二次元好きの匿名さん22/04/18(月) 07:21:54

    面白そうなのでほしゅ

  • 21二次元好きの匿名さん22/04/18(月) 14:28:07

    ループしたというか遠い未来の並行世界に移動したんだろうか

  • 22二次元好きの匿名さん22/04/18(月) 23:14:17

    ※なんかあってピンチになってる
    ロ「クソッ、変身を多用されて掴みどころがねえ」
    ヒ「打撃無効の物質と斬撃無効の物質を器用に切り替えられて攻撃が上手く通らないー!」
    ド「なんなんだあの吸血鬼……?なのか?わからん!あんなもんシンヨコで見たことないぞ!」
    ロ「あっ、お前は出てくんなっつったろ!!とっとと逃げろ!!」
    ド「逃げるも何もアレを撃退するのが私の仕事ですゥ~~!!とにかくだ、あいつの体の物質をどっちかに固定できれば君らの攻撃は通るはずだ。その方法を考えろ!」
    ロ「考えろっつったって……」

    『お困りのようですな』※パシッと地面に何か刺さる
    ロ「誰だ!?」
    ヒ「あれはカード型のピンクチラシ!?」ド「いやなんでだよ」
    ロ「お前は……へんなの親父!」ド「へん……、誰?」
    ディ『おっと、その名前はこの場では通りませんでしょう。そう、今はただの通りすがりのダンディーです』ド「誰?」
    ロ「んなこと良いからなんか対処法があるのかよ!」
    ディ『これの変身パワーの元々の源は我々と同じHTP。今はこざかしい事に他の能力と併用することでHTPを使わずコントロールしているようですが』
    ディ『ですが、HTPが源なのは何も変わらないのです』

  • 23二次元好きの匿名さん22/04/18(月) 23:15:02

    ディ『なので、こうすればよい。……ハイソックスに食い込む、太ももの肉付き』
    ビキッ!!(物質が硬くなった)

    ディ『雨に濡れたシャツから、うっすらと透けて見える下着のシルエット』
    ビキキキッ!!(さらに硬くなった)
    ロ「だからその手のネタはダメだって言ってるでしょうが!!!!」
    ボゴッ!!(クリティカルヒット)
    ヒ「! ロナルド、攻撃が通ったぞ!敵が逃げていく」ロ「あ、うん?」
    ド「えーっとつまり、変身能力を暴走させて偏らせた?……エロ話で」ディ『HTPです』

    ディ『さて、無事に解決したようだ。また別の夜で会いましょう、アデュー!』
    ロ「(来んなと言いたいが実際助かったので何とも言えない顔をしている)」
    ド「なんだったんだ、あの吸血鬼は……」「ヌー?」

  • 24二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 06:21:34

    >>22

    >>23

    主人公たちのピンチに颯爽と登場して鮮やかに助けてみせたという字面だけ見ればカッコいいキャラなのに

    タキシード仮面っぽいというのもわかる

    でも投げるのがピンクチラシで打開策はドスケベ妄想……

  • 25二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 09:10:57

    その解決は草

  • 26二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 09:16:33

    待って笑ってて気付かなかったけど能力がなくなってる/減ってる吸血鬼がいることとへんなが消えた吸血鬼に入ってること考えるともしかしてその能力へんな由来なのかヤバい
    もしそうだとしたらイシカナさんの炎とかビキニの催眠術とかワンチャン半透明の催眠術もつかえんの?ヤバいが三乗5乗してる

  • 27二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 09:17:39

    性質を取り込むってことはゴボッがもと?楽しみにしてる

  • 28二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 19:59:58

    今夜の「それ」は不可視の怪物である。
    駅前通りのビルの屋上を這いずり、飛び回っているようで、通った軌跡の給水塔のタンクや床がぼこぼこと壊れていく。

    ロナルドが地上を見ると吸対の白い制服が複数、そして前線指揮をしているドラルクとジョンが見えた。避難指示と交通規制をしているのだろう。

    (風圧と気配感知でギリギリ避けられるけど単純に戦いづらい。銃弾にたまに拳も混ぜてるけど全然動きが衰えねえな)
    (確かに斬れてる手ごたえはあるが、キリがない。再生でもしてるのか?せめて急所が分かれば……)

    ロナルドとヒナイチ、2人が熟考をする間もなく、見えない次の攻撃が一閃二閃と繰り出されていく。
    2人とも曲芸のようにするりと攻撃を避けていくが、元居た場所には地面をえぐるような衝撃が発生する。
    これをまともに食らったら吸血鬼と言えども大ダメージは避けられない。

    (もう少し情報が必要か)
    「ヒナイチ!」
    「! ……了解した!」
    ロナルドがヒナイチに合図をすると、ヒナイチは攻守一転不可視の敵に切りかかる。そしてロナルドは、

    「すいません!ビルのオーナーさん!!」
    謝罪の言葉と同時に給水塔のタンクを馬鹿力で蹴り上げ、そのままタンクをヒナイチめがけてぶん投げた。

    ヒナイチは避けようとはせず、むしろ不可視の「それ」が動かぬように日本刀を刺突し、その場に縫い付ける。
    給水タンクは見事、「それ」に直撃した。

    「「見えた!!」」

    水のしたたりで全体のシルエットが浮かび上がる。想像よりも大きかった「それ」にロナルドが間接部分に的確に銃弾を撃ち込んだ。
    あとはヒナイチの仕事だ。

  • 29二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 20:00:55

    自由になった二刀流は剣舞のように巨大な体躯を削っていき、残ったのは核と思わしきもの。
    (あれが急所!)
    とどめを刺そうと刀を構えたところで、その核は遠くから響いた銃声とともに撃ち抜かれた。



    「上出来だ、サギョウ君」「ヌー!(パチパチパチ)」
    「今ので大丈夫です?ほとんど見えなかったんですけど」

    遠方には顕微鏡を覗くドラルクと、狙撃銃を構えたサギョウがいた。
    「それで当てるんだから大したものだよ。目標は沈静化したようだ」
    「なら良いですけど。……ドラルク隊長」
    「なんだね?」
    「怒ってます?」
    「怒ってない」「怒ってますね」「ヌヌッヌヌ」
    「怒ってない。……私に報連相もなしに勝手に戦闘を始めたアホ二人に対して!!断じて!!怒ってなどいないとも」
    (うわあ、しーらない)



    「私のとどめがあああああ!!!」
    「そう怒るなって」
    「美味しい所だけ取られたああああっ!!!」
    「気持ちは分かるけど、皆ケガが無かっただけ良かったとしようぜ」
    「うう、……腑に落ちない」

  • 30二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 20:01:37

    ロナルドがヒナイチを宥めている背後で、不可視の「それ」の末端の切れ端が静かに動いている。
    なるべく音をたてぬよう、そうっと、そうっと近づき、確実に急所に狙いを定めそれは

    「アウト!セーフ!」

    「よよいのよい!!」
    ロナルドは強制的にパーを出していた。

    「へ? 野球拳?なんでここに」
    「はぁ~~いかんな元ハンターくんよぉ。戦闘終わったからってちょーーっと気抜きすぎじゃないの~?というわけで辻野球拳だ、よよいのよい!!」
    「ヴァーーー!!!(負けた)」

    「はあ、いきなり何かと思ったらなんだアホらしい……。ん?」
    ヒナイチがため息をついて移動しようとすると足元がかすかにジャリついている。
    よく目を凝らすと、何かが強く踏まれた跡が残っていた。

  • 31二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 06:54:36

    面白そうなのでほしゅ

  • 32二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 07:37:16

    >>29

    顕微鏡☓

    双眼鏡○

    よりにもよってなシーンで誤字った。私は顕微鏡の上のカピカピに乾いたシャーレ

  • 33二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 14:35:04

    残心にも気を払う拳兄畏怖〜い……つよつよなロナヒナの戦闘レベル高すぎて誰も介入できなさそうで良き

  • 34二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 21:01:36

    >>30

    おまけ


    ロ「野球拳、そういえば最初っから「アレ」見えてたのか」(野球拳大好きのTシャツを着ている)

    野「まあな。コツがあるんだよ、「アレ」の見方。俺なんかもう別に意識しなくても見えるし、見えないほうが難しいわ」

    ロ「へー。……その、今度コツを教えてもらえると」

    野「えー?どうしよっかなぁ?タダで教えるってわけにはいかねえよなあ?」

    ロ「や、やれる範囲でなら努力する!」

    野「冗談だ、「アレ」に関しては俺もちーっとばかし気に入らねえからな。ツケといてやるよ。どうせまた襲ってくるだろうし」

    ロ「ありが」野「その前にだ」

    野「お前らはもう少し吸血鬼の能力使え。怪力以外ほとんど人間の時の癖で戦ってるだろ」

    ロ「上手く、使えなくて。ほんとうに、上手く使えなくって……!!」

    野「ならなおの事慣らしてくしかないだろ。出せる手数は増やしておくのが長生きのコツだぜ?」

    ロ「……肝に銘じとくよ」

  • 35二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 21:03:03

    半田桃が吸対本部の廊下を歩いていると、二つのキツイ気配臭がする。

    突然現れた強大な二人の吸血鬼。その存在は吸対を大いに騒がせ、ドラルク部隊長が直々に監督するまでに事が発展した。
    VRCに入れておけという意見ももちろんあった。だがVRCに入れたところで二人を拘束し続ける事は不可能だ。
    それよりも本人たちの希望通り、ドラルク隊長が紐をつけておく方が建設的だという意見が採用され、件の吸血鬼たちは堂々と吸対を闊歩している。

    半田は真面目な男だ。半田個人の吸血鬼への好感は置いておいて、吸血鬼の対策本部に吸血鬼を受け入れるのはいかがなものか?という気持ちはもちろんある。
    だが半田は理性と裏腹に、廊下の長椅子で寛いでいるこの吸血鬼二人に対して奇妙な懐かしさを感じ、
    そして、会話の糸口を探そうとしている自分がいることに驚いていた。

    2人の目の前に立つと、男の方の吸血鬼が落ち着かない様子で視線を泳がせる。
    女の方はジョンを撫でていたが、その手を止めてまっすぐとこちらを見つめ返してきた。

    「「「あの(キサマら)」」」
    口を開いたのは三人同時であった。

    「ドラルク隊長はどうした。なぜジョンがここにいる」
    「ドラ公は本部長との会議で護衛数人連れて外出だよ」
    「ジョンはドラルクの代わりに私たちの監督係だ!」「ヌー!」

    アルマジロを監督役に置くんじゃないという言葉を飲み込みつつ、男がやや不本意そうな顔をしていることが気になる。

  • 36二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 21:04:21

    「キサマ、なんだその顔は。ドラルク隊長の差配に不満でもあるのか」
    「えっ、」「ロナルドはただ心配しているだけだから気にしなくていいぞ」
    「心配ぃ~~?キサマっ、吸対の実力に不安点があるとでも言いたいのか!!」
    「そんなこと言ってないだろ!!皆ちゃんと強いし頼れると思ってるよ!!ただその、」

    「なんかあったらヤだなって……」
    男の言葉がしりすぼみに弱まっていく。本音らしい。

    「フン、そうそうこの間のような大事件が起きてたまるか。気を張りすぎだバカめ。……休める時は休め」
    「半田」
    「そうだな、どこかで休息はとらないと」グゥ~~~~~~
    鳴り響いたのはヒナイチの盛大な腹の音だった。

    「ち、ちーーーん……」
    ヒナイチの顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。

    「ちがうんだ、その、ちゃんと食べてたんだ……!食べてたんだけど!!」
    「分かってる!牛乳飲んでるのは見てた!!」「いやそれフォローなのか」グボォオオオオオ
    次に鳴ったのはロナルドの腹だった。

    「えっと、その、オレも食べてたんだけど、その」
    「……まさかキサマら」

    「食物か牛乳ばかり飲んでまともに血液を摂取していなかったなッッ!!??」
    「ピャーーーーー!!!!」「バボーーーー!!!」
    「このバカめ!!バカめッ!!!ヴァカめッ!!!!どこの世界に血液を摂取しない吸血鬼がいる!!!」
    「ウワーーンここにいます!!」「牛乳でなんとかならないかちょっと試してました!!!」
    「んなもん許されるのはほんの一握りだ本当にバカめ!!!!」

  • 37二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 21:07:51

    「いやだってさ、いきなり血液パックは難易度が高いんだよ!!」
    「どうしてもこれを食べ物だと頭が認識してくれないというか!!飲んだら味が美味しいのはわかるんだ、わかるんだけど食べ物を食べた時の美味しさと違うから違和感が強くて……!」
    「最初は頑張って飲んだんだけど慣れなくて結局牛乳に頼りがちになってったっていうか……」「ヌエッ」

    「まったく、何なんだキサマらは、奇妙奇天烈にも程があるぞ」
    半田は頭を抱え、懐からピルケースを取り出す。
    数粒の錠剤を吐き出させると、それをロナルドとヒナイチに渡した。

    「これは」「血液錠剤だ。まだ固形物の方が摂取しやすかろう」
    「半田~~~!!!」「助かる、本当に助かる!!!」
    「だがそれはキサマらが食べてもサプリメント程度の効果しかないからな!!ちゃんと主食も取れ!!この事はドラルク隊長にも後で報告する」
    「「ウェーーーーーーーン」」

    半田は自分がただ真面目で面白みのない人間だと思っている。
    学生時代は殻を破ろうと躍起になっていたが、どこかでその切っ掛けが失われてしまった。
    これからこの自分の内向的な性格は覆る事は無いだろうと、諦観もしていた。
    (なぜだ?)
    だが今こうやって馬鹿みたいに騒いでいる自分に、どこかホッとしているのだった。


    会議室内は明らかに空気がピりついていることが肌身に感じ、ドラルクは今からそこに向かわなければならないことがただひたすらに憂鬱であった。
    (あーあ、詰みゲー崩したい)
    今日はどんな無理難題を押し付けられそうになるのか、これらをいかに躱すかが今日のドラルクの命題であった。
    ミスれば余暇が削られる。面倒な仕事など全部、昼行燈(カズサ)にでも押し付けておけばいいのだ。

    扉を開いた。パっと笑顔を作り、にこやかに口火を切る。
    「お待たせいたしました。新横浜警察署吸血鬼対策課、ドラルク隊、隊長のドラルクです」

    ヌヌヌ?(つづく?)

  • 38二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 21:48:48

    ウルトラハイパーアルティメットベリベリ最高ss面白すぎてありがとうございます!!!畏怖……

  • 39二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 08:16:20

    つづきわくわくほしゅだみん

  • 40二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 19:04:44

    会議室の中はそれは心地のいい警戒と侮り、あるいは疑心の視線が交差していた。
    脇を見れば素知らぬ顔のカズサが、そして中央にどっしりと構えた規律を絵に描いたような男、吸血鬼対策課総合監督官である籠目原弦が、ドラルクを値踏みするように睨んでいる。
    護衛として連れてきたミカエラと希美が少し怯んだのを感じる。

    「それでは、先日の事件の報告と参りましょうか」
    だが、それでもドラルクは笑顔を絶やさない。務めて平静に報告を始める。心の中ではクソったれと毒づきながら。


    「なるほど、正体不明の吸血鬼を件の二人で撃退したと」
    「まだ吸血鬼と決まったわけではありませんよ。それに、止めを刺したのうちのサギョウ君です。部下の手柄は認めてあげください」
    「失礼。……だが、この敵性存在については吸血鬼で相違ないだろう。人間にこのような芸当は不可能だ」
    「何でもかんでも吸血鬼の仕業にするのはいささか早計でしょうよ。吸血鬼のせいなのね~じゃないんですから」
    ほんの少し前に流行ったアニメのフレーズを引用しながらドラルクはおどけて見せる。
    籠目原の眉間のしわが明らかに深くなったのが分かった。

    「君は、イギリスからの派遣隊員であったはずだ」「出身はルーマニアですけどね?」
    「そこは問題ではない。あの格式高いイギリス吸対の出身でありながらなぜそこまで呑気にしていられるのだ!」

    「件の二人にしたってそうだ。あれほどの強大な吸血鬼、君の監督下という名目はあれどほとんど野放しだ!!」
    「二人とも私の言う事は聞いてくれますよ?」
    「吸対の許可なく二人が戦闘行為を開始したと外部からの報告は受けているぞドラルク隊長!!」
    チッとドラルクは心の中で舌打ちをする。
    「やはり一度VRCでの拘束を」「お言葉ですが籠目原監督官」
    籠目原の言葉を遮ったのはカズサであった。
    「二人が戦闘行為を開始しなければ、駅前一帯で十数人規模の被害が出ていたのもまた事実です。最悪は死者の可能性も。また二人の戦闘行為は手慣れたもので、周辺への影響を極力抑えながら敵性存在を撃退しています」
    「何が言いたいんだね、カズサ君」

  • 41二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 19:05:30

    「正直に申しますと、このまま戦力として組み込んだ方が有意義では?下手な職員よりよっぽど使えますよ」

    「だが」「それに、現在新横一帯の戦力が足りないのは、監督官も分かっておいででしょう?」
    「……、件の二人に関しては一度保留にしておこう。ドラルク隊長」
    「なんでしょうか?」

    「問題が起き次第……、わかっているな?」
    「かしこまりました。監督官殿」


    「はぁぁ~~~~~」
    会議室から離れて数分後、ようやく肩の荷が下りたと言わんばかりにドラルクが息をつく。
    「お疲れさまでした、隊長」「お茶いります?」
    「ありがとう。希美くんもミカエラ君もご苦労さま。しばらくはこれで監督官殿も黙るだろ」
    「それにしても無断戦闘の件は隊長も根回ししていたのに、どこで漏れたのかしら?」
    「ああ、あれね。昼行燈のヤラセだよ」
    「カズサ本部長の?」
    「私一人で説得するよりもああやって多方面からの茶々を入れた方が話が通る時もあるのさ。無断戦闘はきっかけづくりに使われたな。おのれ覚えてろよあのちょび髭……!」

    「とにかく、これでしばらくはあの嫌味の応酬とおさらば……うん?」
    ドラルクが正面を見ると、遠くの方から噂の監督官が近づいてくるのが分かる。
    ミカエラと希美がさっと姿勢を正す。ドラルクも貰ったお茶を少し飲み、そしてもう一度表情を引き締めなおした。
    『なんの用件でしょうか?』『分からん。さっきの会議で言う事は全部言ったんだが』

  • 42二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 19:06:32

    籠目原監督官はまっすぐにドラルクに向かって歩いてくる。
    ドラルクはどう声をかけようか迷い、そして、鼻先に嫌な「臭い」がよぎった。

    「ミカエラくん!!希美くん!!吸血鬼だ!!」
    「「!?」」

    2人はとっさに戦闘態勢に移行する。
    籠目原はその合図を皮切りにまるで洋画のゾンビのように両手を突き出してドラルクに向かって駆け出していた。
    ミカエラが両手で籠目原を抑え、希美が横殴りにタックルをして一気に距離を引き離す。

    「本当に吸血鬼なんですか!?どう見ても監督官にしか……」
    「いや、正確には服の中から気配がする。おそらく装飾品を媒介に催眠術をかけて操っているんだろう。ミカエラくん、希美くん、なんとか監督官殿の制服を引っぺがせ!!媒介さえ外せば正気に戻る!!」
    「「了解!!」」

    「失礼する!」
    再びドラルクめがけて襲い掛かろうとする籠目原をミカエラが服のすそを力強く引っ張り、重心を崩させる。
    よろけた籠目原を希美が背後から両肩を持ち上げることで拘束し、そしてミカエラが服を力いっぱいはだけさせた。

    「あれは……!」
    制服の奥にある装飾品、それは

    黒い、マイクロビキニであった。

    「ミ゜????????????????」
    ドラルクの思考はフリーズした。

  • 43二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 19:08:00


    「マイクロ?なんで?マイクロ????」
    「マイクロビキニですドラルク隊長」「いやその訂正いらんわ」
    「監督官さん、随分コアな趣味をお持ちなんですね」「心の底から知りたくなかった」

    「ちょっとまってくれ、整理させてくれ。こんなアホみたいな代物が媒介???」
    「聞き捨てなりませんドラルク隊長!!マイクロビキニは崇高な下着!!けしてアホみたいな代物ではありません!」
    「す、すまん個人の趣味は尊重されるべきだな……、いやミカエラ君なんでそんな熱いキャラしてるの???」

    ドラルクとミカエラがアホの言い争いをしていると籠目原が目の前のミカエラめがけて一気に噛みついた。
    「ぐっ!」「ミカエラ君!?」

    「う、うわああああああ!!!」
    ミカエラの全身がみるみるちに変容していく、そして残されたのは、やはりマイクロビキニを着た美丈夫である。
    「ミカエラくーーーーーん!!!」「あらまあ!!」

    「う、マイクロビキニ、マイクロビキニを」「うぐぁあああああ」
    「いかんビキニ感染者が二人に!!」「隊長、ビキニをはがせばいいんですよね?」「え、うん」
    「えい」
    希美は躊躇いのない手さばきで野郎二人のマイクロビキニを引っぺがした。

    「うっ、私は一体……?」「マイクロビキニ、何なんだこのこみ上げる気持ちは……」
    「「あれ?」」

  • 44二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 19:08:19

    洗脳から解き放たれた二人は、お互いのあられもない姿を見る。

    「「変態だぁああああああ!!!!」」
    「うわあ大惨事」

    「ド、ドドドラルク部隊長!!これは一体どういう事なんだねっ!?」
    「話せば死ぬほどアホらしいんですけどどう説明しましょうねこれ」
    ドラルクが籠目原への説明に四苦八苦していると、別のフロアから警報が鳴り響く。
    「次は一体何なんだ!?」

    まだ、騒乱は収まりそうにない。

    ヌヌヌ(つづく)!!

  • 45二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 23:39:54

    媒介違うものにできなかったのかwww

    どう続くのか予想できませんが楽しみにしてます。

  • 46二次元好きの匿名さん22/04/22(金) 10:12:24

    続き楽しみ保守

  • 47二次元好きの匿名さん22/04/22(金) 20:39:35

    署内の警報が鳴り響いている。
    訓練でもなければいくらなんでもそうめったに鳴るものではない。
    鳴ったと言う事はよほどの何かが起きたとみるべきであった。

    「ビキニの次は一体なんなんだ」
    ミカエラに上着を貸し出しながらドラルクは困惑する。流石にトラブルが多すぎる。

    「籠目原監督官、ドラルク隊長、どうされましたか?」
    先ほどの騒ぎを聞きつけたのか、職員が何名かドラルク達に近寄ってきた。
    ビキニとはいえ、吸血鬼によって監督官が洗脳され操られていたのだ。原因を探らなければならない。ビキニとはいえ。

    「ちょうどいい所に、実は……」
    そこでまた、あの「臭い」が漂ってくる。

    「ミカエラ君、籠目原監督官殿を抱えたまえ。二人とも、走るぞ!」
    言って脱兎のごとくドラルク達は駆け出した。

    (ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!)
    「ドラルク部隊長何をしようとグホ(抱えられて潰れた音)」「一体なんなんです走れとは!?」
    「さっきの職員のうち数人がすでにマイクロビキニに感染している!服を着ているから分かりづらいがな!」
    「洗脳されているんですか!?」
    「ああ!!しかも……クソ!気が付けば署内中に気配臭が漂っている!ビキニライジングだ!!何人感染しているか分からんぞ!」
    「でもビキニを脱がせば洗脳は解けるんですよね!?」
    希美が息を切らしながら訪ねる。
    「だからといって洗脳されてないか確認するために下着を見せてくださいとバカ正直に頼んで回れるか!?ビキニ解除の前に私たちがわいせつ罪で逮捕されるわ!」

    「今の時点でまともな打つ手が無い!一度新横に戻らないと話にならん!」

    (いや待てよ)
    その前にドラルクには一つ引っかかる事柄があった。

  • 48二次元好きの匿名さん22/04/22(金) 20:42:00

    (さっきの警報は、何だったんだ?)
    とてつもなく、嫌な予感がした。

    突然の出来事である。
    急に空気の流れが変わったかと思えば、次の瞬間ドラルクの細身の体は文字通り吹っ飛ばされていた。
    体そのものを押し出す空気の圧力と焼けつくような高温。
    そして目がくらむような眩しさと、キィーンという耳鳴りでまともに聞こえやしないが、大きな音が周囲で鳴ったらしい事実。

    以上からわかる事は、
    (……爆発?)


    「う、あ……」
    次に目を開けると周囲は瓦礫の山、そして火薬の臭いが充満していた。

    ドラルクはギリギリ受け身を取れたので、なんとか致命傷は免れている。骨も折れてはいない。
    それでも強く体を打ち付けた衝撃と痛みで、仰向けのまましばらく動けそうになかった。

    (ジョン、連れてこなくて良かった……。他の二人と監督官殿は)
    ぼんやりとした頭でなんとか思考を巡らせる。次に考えるべきことは、次に考えるべきことは……。
    だが、思考はあえなく中断した。
    先ほどとは比べ物にならない気配臭がする。

    ロナルドやヒナイチが、「あれ」や「それ」と呼ぶのには理由がある。
    名前を付けても付けられないのだ。何かつけても固有名が認識からスルリと抜け落ちる。
    普通の物理法則から成り立つ存在ではないのだろう。ゆえに「それ」とだけ呼ぶ。

    実際、今ドラルクが対峙している「それ」も、とても自然に存在する生物とは思えなかった。
    「それ」は見ようとしてもピントが合わない。解像度の違う写真を何枚も重ねてみたようなぼやけた虚像である。
    「それ」の臭いは単純な吸血鬼の気配臭ではない。10、20……ドラルクが嗅ぎ分けられないほどの多くの吸血鬼の気配が混ざり、悪臭を放っている。

  • 49二次元好きの匿名さん22/04/22(金) 20:43:00

    一つ一つは高価な香水であっても、相性を考えずに全部を混ぜたらとてつもない悪臭へと変わるはずだ。今ドラルクが嗅いでいるのはまさにそういうタイプの臭いだった。

    そして「それ」は、おそらくドラルクを狙っている。
    自分が正確には何を見ているのか分からない、だが頭では今見ているものは「巨大な大きく開いた口」だと理解していた。
    そしてその口で、ドラルクを齧りつこうとしている。

    (これは、死ぬな)
    頭の中で、ぞっとするほど冷静な自分がつぶやいた。

    口から目が離せない。
    おおきく、おおきく、自分は丸のみにされ___

    次の瞬間に、口はミンチのように粉砕されていた。



    「ロナルド君?」
    その名前を呼んだのは勘だった。

    目の前で起きたことに理解が追い付かない。だが、あの怪物を一撃で粉砕しうるのは、きっと彼ぐらいだろうと。

    「ドラルク」
    ざり、という足音とともに、表情が抜け落ちた銀髪の美青年がこちらの顔を窺っていた。

    「……生きてるな?」
    感情を削ぎ落したような酷く冷えた声。ちょうど、会ったばかりの頃のような。
    彼が分かりやすく怒っている時はまだいいのだ。一番性質が悪いのは、静かに自分の中で怒りと自己嫌悪を反芻している時。

    なので、ドラルクはあえて怒ることにした。

  • 50二次元好きの匿名さん22/04/22(金) 20:43:49

    「こんな時ぐらい大丈夫?、とか無事だったんだね!とか殊勝な事言えんのかお前は!なんだその生死確認!私が死んでたらどうするんだ死体に返事でも待ったのかね!?」
    「あっ、いや、その、無事?」
    「無事じゃないわ見ての通り爆発の衝撃による打ち身でまーったく動けんわ!!おまけに回復の為の血液錠剤も持ってねえ!!そうだミカエラ君と希美君とついでに籠目原監督官も安否確認してこい!!」
    「ええ……」「さっさと行動に移さんか善業ゴリラ!!ハリィーーアーーーップッ!!!」

    ロナルドがドラルクの捲し立てに怯みながらもミカエラたちを探し始める。表情も少し柔らかくなった。
    よしよしこれでいい、また出会った頃に逆戻りなどまっぴら御免だ。
    そこで一気にドラルクの気が抜けた。全身打ち身の中での空元気による怒鳴り上げ、痛みがない訳が無く。

    いっそ清々しいほどにスコンと、意識が切れた。

    ヌヌヌ(つづく)

  • 51二次元好きの匿名さん22/04/22(金) 23:36:23

    わぁ吸血鬼キメラミックス確定ですか…誰かがビキニの対応はしてるんだろうけどやっぱ絵面ひどい。
    ドラル生きててよかったです。匂いの描写すごい。

  • 52二次元好きの匿名さん22/04/23(土) 10:57:59

    マイクロビキニはガチ悪用したら結構面倒くさい能力だと思ってる。
    ミカエラのこだわりが強いから本来は絶対無いけど。

  • 53二次元好きの匿名さん22/04/23(土) 20:49:27


    真っ暗な空間にいる。
    視覚的な暗闇ではない、その証拠に目の前にいる存在をドラルクはしっかりと視認できていた。
    お茶と資料の束が乱雑に置かれ洒落た丸いガーデンテーブルを二人の男性が囲んでいる。
    一人は細見で二メートルを越す長身の大男。
    一人は小柄で眼鏡をかけている。

    「やはり、奴はまだ能力の使用に慣れていない」
    話始めたのは眼鏡の男だった。
    「数多の能力があれど一度に使える能力は一つだけ。だがそのスキが無くなるのも時間の問題だ。時間をかければかけるほど、もっと厄介なことになっていく」

    「まずは能力を減らすことから始めなさい」

    空間の暗闇がわずかに白む。ドラルクは自分の存在が不安定になるのを感じる。
    「時間のようだ、君はもう帰りなさい」
    眼鏡の男が言った。何かを言いたかったが、言葉が出てこない。

    「ドラルク」
    ずっと黙っていた長身の大男が口を開いた。

    「ポール君たちに、よろ」


    「何ひとつヒントになってねえんだわ!!!!」
    「ヌァッ!?」
    「なんだあの思わせぶりな雰囲気出しといてぺっらぺらなヒントは!!フレーバー匂わせといて具体的な本編ヒント一切なしのヴァミコン時代のクソ ゲーか!?星を〇るひとじゃねえんだぞ!!!」
    「まずは能力を減らせだぁ~~~~!?やれるもんならやっとるわ!!どうやったら能力が減らせるのか方法、手段一切の情報が足りん!!!!!」
    ぜえ、ぜえと息を切らしながら言いたかった事を全て吐き出して、ようやくドラルクは周囲を見渡す。

  • 54二次元好きの匿名さん22/04/23(土) 20:50:26

    「あれ、ここは病室か?」
    「ヌ、」

    「ヌヌヌヌヌヌァ~~~~!!!!!!」
    ジョンが泣きながらドラルクに駆け寄る。よほど心配していたのかドラルクの胸元にうずくまってそのまましばらく離さなかった。
    「ジョン。……心配をかけたね」「ヌァ~~~!!」
    ジョンをあやしていると外からバタバタと走る足音が聞こえ、部屋の中のスライドドアが開いた。

    「一体何が起きたんだジョン!って、ドラルク?」
    ドアの先には、少し黒ずんでしまった赤毛の少女がそこにいた。


    「本当に、本当に心配したんだからな!?」
    ヒナイチはぷりぷりと怒りを顕にする。
    「帰りが遅いから本部に連絡入れたら全く繋がらないし、ロナルドは勝手に飛び出してくしで……おまけに起きたのは爆発騒ぎ」
    ヒナイチは静かにドラルクの手を握る。

    「肝が冷えたぞ……。くれぐれも気を付けてくれ。今度は絶対に留守番なんかしないからな!!」
    「ヌッ!!」
    「それはちょっと困るな」
    ドラルクは一人と一匹の意気込みに苦笑しつつも、それでもその好意は素直に受け取った。

    「そうだ、ミカエラ君と希美君たちは無事だったかい?」
    「二人とも打撲程度で済んだ。籠目原監督も命には別条はない。あの爆発で負傷者は出たけど死者出なかった。安心してくれ」
    「そうか……。しかしどうして爆発なんか起きたんだ」

    「吸血鬼の能力だ」
    ヒナイチがきっぱりと言い切った。

    「私はあの能力を知っている。あらゆるものを爆発物に変える能力。これは私の予想なんだが」

  • 55二次元好きの匿名さん22/04/23(土) 20:52:47

    「おそらく、能力で作った爆弾を催眠術で洗脳した署員に持ち込ませたんだと思う」
    「洗脳というとまさか」
    「……そうだ、マイクロビキニで洗脳したんだ」
    「マイクロビキニ……!」「ヌヌーン!(マイクロビキニで煽る)」

    「アホらしいのになんて厄介な能力だ……、署内のビキニハザードはどうなったんだヒナイチ君」
    「それは、野球拳が」「野球拳?」
    「署内の感染疑いのある署員全員に野球拳をしかけてマイクロビキニの有無をチェックするという大野球拳大会を開催したんだ」
    「おおっと新たな地獄絵図」
    「流石に人数が人数だったんで、最後の方は精魂気力尽き果てて野球拳がぶっ倒れていたな」「そりゃそうだろうよ」
    「ちなみににい……カズサ本部長も野球拳チェック受けてたんだが、負けてた」「私もそれ見たかったわ」

    2人が談笑していると、ドラルクは自分のスマホに着信が入っていることに気づく。
    「うわー通知がいっぱい。RINEも……、ロナルド君もこっちに来るのか。返事しとこ」
    ドラルクが適当なスタンプで返事をしようとすると、急にスマホが震えだし、ドラルクの手から滑り落ちた。

    「!?」
    「スマートフォンが勝手に動き出した!?」「ヌヌヌヌ!」
    ドラルクのスマホは、端的に言ってしまえばポルターガイストのごとくめちゃくちゃに動き出していた。
    「ツクモ吸血鬼か?いやでも臭い全然しないしな」
    「とにかく捕まえないと」
    しかしこのスマートフォン、すばしっこいのである。あちらこちらを自在に動き回るので妙に捕まえづらい。

    「なんだこの動きうっとおしい!ネズミ捕りでも持ってくるべきか」「ニュー」
    「見ろドラルク。なんか、スマホが勝手に操作されてるぞ?」
    「ええー……?RINEのスタンプ選択画面ひらいてる、ひらいて、『ハートが撃ち抜かれる』スタンプを……」「連打」
    ドドドドドという効果音でも出せそうな勢いでスタンプは連打されていた。

    「ポルターガイストで電子機器の荒らし行為する怪奇現象初めて見たんだけど」
    「私だって初めてだ。というかロナルドが鬼スタンプに困惑してる」

  • 56二次元好きの匿名さん22/04/23(土) 20:54:28

    「うん?連打が止まった。またスタンプ選択画面を開いて、今度はQSGのソードの『無事死亡』のスタンプを」「連打」

    2人ともどうすればいいのか分からずその状態を眺めていると、廊下からドタバタと走ってくる音が聞こえてくる。
    スライドドアが開くと青ざめた様子のロナルドが勢いよく入ってきた。
    「おいっ!!ドラ公死んでねえよな!?」
    「あ、ロナルド君」
    「」

    「そうかテメエのくだらねえフカシが原因かそこになおれ」
    「黙れ聞け状況を見ろその固く握り締めた拳に振り下ろす先はないぞシンヨコゴリラギャボーー!!!打ち身に響く!!打ち身に響く!!(軽ーいスリーパーホールド)」
    「で、なんなんだよ。この鬼スタンプは。オレはてっきりお前に何かあってジョンが動揺してスタンプ連打したのかと」「ヌン!?」
    「凄く説明しづらいんだが、あれ」
    ヒナイチが浮いたスマホを指さす。
    「なにあれぇ」「こっちのセリフだ」「いつまで浮いてるんだろうな」「ヌー?」

    ふよふよと浮いていたスマートフォンだったが、しばらくするとポトッとベッドの上に落ちてしまう。
    「落ちた!?」「本当に何だったんだ」

    コンコンコンコン。

  • 57二次元好きの匿名さん22/04/23(土) 20:55:03

    困惑する3人を呼ぶように、机を棒状のもので叩く音が響いている。
    音の出所を見ると、ボールペンがひとりでに動いて、机を連打していた。
    ボールペンは三人の視線が自分に向いているのを確認すると、近くにあったメモ帳になにか一文をサラッと書き出す。
    そしてそのままボールペンは命を無くしたように動かなくなってしまった。

    三人はメモ帳を見る。

    「「「心臓をさがせ」」」



    暗闇の空間で眼鏡をかけた男性が息を切らして疲れ果てていた。

    「こ、これで具体的なヒントになっただろうか……?」「グッジョブ」

    「次は絶対この空間で全部完結するように努力しよう……!」「お茶飲む?」

    ヌヌヌ(つづく)

  • 5822/04/23(土) 21:04:14

    いつも保守と感想ありがとうございます。助かってます。
    明日の投稿なんですが、私情で忙しくでできない可能性があるのでその場合のスレの保守をお願いします。
    月曜からは通常運転でまた投稿します。

  • 59二次元好きの匿名さん22/04/23(土) 21:24:23

    ついに御真祖様とヘルおじ登場か……!
    今更ながら、ドラルクの何度殺されても即復活する能力って敵の手に渡ってたら相当に厄介なやつなのでは

  • 60二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 08:46:09

    大野球拳大会の詳細が気になる

  • 61二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 09:41:42

    ヘルおじめちゃくちゃ頑張ってて草

  • 62二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 21:05:20

    保守
    続き楽しみにしてます

  • 63二次元好きの匿名さん22/04/25(月) 07:10:30

    御真祖様とヘルシングコンビ参戦?

  • 64二次元好きの匿名さん22/04/25(月) 18:37:21

    はじめの異変のきっかけは確か、ドラ公の親父の顔を見なくなった事だったはずだ。

    一か月に数度の頻度で事務所にやってくるドラ公の親父の襲来がぱったりと止んだ。
    でも、最初は特に誰も心配なんかしてなかった。
    吸血鬼の、それもかなりいい年したおっさんだ。爺さんの無茶ぶり旅行にでも突き合わされてるんだろとドラ公あたりはのんきに構えていた。

    雲行きが怪しくなったのは、2か月ほど過ぎたあたり。
    ドラ公のオフクロから連絡が来た。
    「ドラウスとの連絡が一切取れない。そちらに心当たりはないだろうか」、と

    聞けば、毎日のようにしていた電話が来なくなった。
    最初は何かが原因で怒らせてしまったのかもしれないとか、仕事そのものが忙しかったなどの理由でなかなか確認の電話が出来なかった。
    ようやく意を決して連絡を入れると、「おかけになった電話は電波の届かない場所にいるか電源が入っていないためかかりません」と返ってくる。
    ご真祖や親族、ノースディンなどの知己にも所在を訪ねたが一切会っていないと言う。

    当然オレたちも心当たりはない。だが、この時はまだ心のどこかでオレもドラ公も、杞憂だろうという謎の油断があった。
    オレからすれば空回ってる印象が強いけど、それでもドラ公の親父の能力が強大なのは分かる。
    そんな強力な吸血鬼に、何かあったとは想像がしづらかった。

    3か月が経過した。
    まだドラ公の親父は見つかっていない。
    最初は余裕かましていたドラルクも、流石に思い悩む素振りが増えてきた。
    さも通常運転ですという態度をしているが、クソ映画を途中までで見るのを止めてしまったり、クソ ゲーをしててもどこか心ここにあらずといった様子だ。

    そんな不穏な空気のある日の夜、事務所に窓から蝙蝠の大群が襲来してきた。

    「お父様!?」「なんだなんだ!?」
    2人そろって慌てて事務所の応接スペースに駆け寄ると、いたのは期待していた人物ではなかった。

  • 65二次元好きの匿名さん22/04/25(月) 18:37:48

    「お爺様、どうしたんです?」
    いたのはドラ公の爺さんだった。
    いつもはハチャメチャな事をやらかすパワフル爺さんだが、今日に限っては少しくたびれているように見える。

    「探してた」
    「お父様をですか?」
    「コレ」
    ぽいっと爺さんはドラ公に向かって四角い電子機器を投げる。
    「おおっと!……これはお父様のスマホ。一体どこで見つけたんです?」
    「新横にあった」「灯台下暗しでしたか」
    スマホは何か強い衝撃を受けたのか、フチ部分のパーツが欠け、画面がバリバリにひび割れている。
    誤って高所から落としてしまった時によく起きる壊れ方だ。

    「じゃあお父様もすぐに見つかるのでは!」
    「いない」
    爺さんは一言呟いて、フーっと深いため息をついた。

    「ドラウスがどこにもいない」


  • 66二次元好きの匿名さん22/04/25(月) 19:21:18

    警察署での大騒動が終わり、本日から無事に職場復帰と相成ったドラちゃんである。
    負傷による休みは一日しかもらえなかった。ブラックだ。
    ついでにその休みは吸血鬼2人の食育で消えた。私は管理栄養士か。

    普段ならもう少し休みをごねまくるが、警察署が襲撃され爆破されたという激ヤバ案件の後では流石に働かざるをえない。
    実際今日の吸対は見慣れない人材が数人うろうろしており混沌としていた。

    仕事もたまりまくっており、確認待ちの書類やら申請書の許可やらパトロールルートの見直しなどやってもやってもわんこそばのようにおかわりが湧いてくる。
    朝から息をつく間もなく書類仕事もできる名マジロのジョンと仕事を黙々とこなしていた。いたのだが、

    後ろをちらっと見る。
    銀髪の青年が肩を組んでずっとこちらを見続けている。朝から飽きもせずずっと。ずっと!

    (落ち着かない……)
    これではどっちが監督しているのか分からない。
    ちなみにヒナイチ君は希美君の仕事を手伝ってもらっている。
    吸対の忙しさを見かねたヒナイチ君が立候補してくれたからなのだが、なぜかヒナイチ君は吸対の書類仕事を完璧に理解しており即戦力として採用された。
    監督官あたりに小言を聞かされそうだが、そもそもの原因はお前のビキニだと言い張る所存だ。使えるものは吸血鬼でも使うのである。

    で、問題はこのゴリラだ。
    百歩譲って護衛役として見張ってるのはまだ許そう、私も悪かったし。
    ただこのゴリラ、

    明らかに手持ち無沙汰でそわついているのである!!

    なぜかは知らないが、周りが忙しそうにしているのに自分だけ何にもしていないという状況がとにかく落ち着かないらしい。
    何か自分にもやれることは無いだろうかと書類なんかもチラッチラ見ているのが分かるが触らせるかバカ野郎。
    このままではいつかいらん仕事を増やすやる気のあり余った善行空回りゴリラが爆誕してしまう。

  • 67二次元好きの匿名さん22/04/25(月) 19:22:08

    なにか無害な仕事を振るべきなのか?というかこんなこと考えてる時点でリソースの無駄なんだがあーー前回戦闘時の詳細レポートまだ書いてないの見つけたどうしようああ~~~。
    仕方ない今からでも急ピッチでこさえるかとワードを開くと、そこで一瞬手が止まった。

    『いいか、邪魔するんじゃねえぞ!!』
    「……」

    「ねえ、ロナルド君」
    「なんだっ!手伝いか?」
    打って響いたかのような返事をする。待っていたと言わんばかりだ。

    「キミ、実体験を元にしたレポートか文章とか書ける?」
    「……多少」
    「なんだその間は」
    「人よりは慣れてる方だと思うけど、思うけど……」
    「堅苦しい文章でなくても良いんだ。この間倒した、物質が変化する敵がいただろ?あの時の状況を君の視点で書いてくれないか?」

    「それなら、なんとか」
    「はいタブレット、キーボード必要ならジョンからもらって」「ヌイ!ヌーヌーヌ!」
    「お、おう。ありがとジョン」
    道具一式を渡して自分の仕事に戻る。
    後ろの方で最初は遠慮がちに叩かれていたキーボードの音が、時間が経つにつれてカタタタとリズムの良い音に変わった。

    やっぱり書けるんじゃないか。
    よくわからない勘に従って仕事を振ってみたが思わぬ儲けものである。推敲の必要はあるだろうが、たたき台があるだけで大分書きやすい。
    ただ気になるのが__

    (誰か、足りない気がするな)

    ヌヌヌ(つづく)

  • 68二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 01:44:46

    ヌヌーン(保守)

  • 69二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 09:47:47

    謎が徐々に解かれていく感覚いいな…保守

  • 70二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 18:23:19

    おまけ

    ド「この間のビキニ騒動なんだけどさ」
    ロ「マイクロビキニが服着てたアレか?」
    ド「そう。再発防止の為、署内でも正式に対策することが決まってさ、私それの検査官やってるんだ」
    ロ「対策っつっても何やるんだよ」
    ド「下着チェック」
    ロ「コンプライアンスくんが天井を突き破って空の彼方に飛んでいったんだが?」

    ド「まあ聞いてくれ」ロ「今の時代にやる検査方法じゃねえだろ直球セクハラ」ド「聞けや」
    ド「言っておくがやるのは同性同士での検査だし、見るのは上半身だけだぞ」ロ「まあ、……そうなるよな」
    ロ「ダンピールの探査能力で調べるとかじゃ無理だったのか?」
    ド「私か半田君並みに能力が強くないと臭いが薄いからちょっと難しくてね、人数も多いから時間かかっちゃう」
    ロ「なら誰にでも分かる視覚に頼った方が確実か」ド「そういうこと、ただ問題がいくつかあって」

    ド「常日頃からマイクロビキニを愛用している職員からクレームが入った」ロ「常日頃からマイクロビキニを愛用???」
    ド「この検査方法だと無辜のビキニも疑われてしまうと言う事で、マイクロビキニを着用したい場合は事前に申請書類を出す必要がある」
    ド「ちなみに現在3人からの申請を貰っている」ロ「3人もいないでくれ」ド「そして全員男だ」ロ「マイクロビキニって女性ものの水着だったよな?」

  • 71二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 18:23:48

    ド「で、肝心の検査なんだが、正直言ってキツイ」ロ「色んな人いるだろうしな」
    ド「まて、多分君が想像しているキツさと違う。私が見ている地獄はゆめかわメンズブラとボンテージと網タイツと亀甲縛りだ」
    ロ「いきなりパワーワードボコスカぶん投げて窒息させないでいただけませんこと?」

    ロ「あんまりにもな惨状でお嬢様言葉が出ちまったじゃねえか」
    ド「普段は内に秘め隠していた趣味がやむを得ない理由で公にさらされるということで最初はみんなはじらいがあったんだが」
    ロ「そもそもそんな下着仕事中に着てくるなよ」
    ド「むしろ開き直ったことで自信を持ち、逆に堂々と見せつけるようになってきてちょっと怖い」
    ロ「新しい性癖が目覚めてる……」ド「開け性癖の扉」ロ「やめろ馬鹿いちご新聞で叩かれるぞ」
    ド「最近はむしろマイクロビキニが一服の清涼剤になってる」
    ロ「肥溜めの中に咲いた花みたいな言い方するなクソはクソだろ正気に戻れ」

    ヌン(完)

  • 72二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 19:51:33

    地獄絵図で笑ってしまう

  • 73二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 20:40:00

    誰だあと二人のビキニスト

  • 74二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 21:08:01

    本当はドラルクに「マイ【クロ】ビキニの【ミ】カエラ君、略してクロミちゃんだ」というネタを喋らせたかったんですが、ダンピールドラルクはマイクロビキニとミカエラが=になっていないだろうと言う事で没になりました。

  • 75二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 21:09:39

    『心臓をさがせ』

    ポルターガイストによってメモ帳に残された謎の言葉。
    直前にドラルクが見た夢と紐づけるのであれば、これが一応何かのヒントなのかもしれない、というところまでは考えた。
    考えたし調べたりもしたのだが、手がかりは一向に見つからず一週間が経過。

    手詰まりを感じた3人と1匹はパトロールのついで兼サボ……情報収集をしにハンターギルドへと尋ねたのであった。

    「で、ロナルド君はなんでカモかぶってるの」
    「うるせえちょっと見たくない現実から目を逸らすためだ」
    「ロナルド!」

    ヒナイチはグイっとロナルドを自分の方に引っ張り、こそこそと話をはじめた。
    『いい加減腹をくくれ!私だって吸対の皆が覚えてなくて悲しかったけどこらえたんだぞ!』
    『分かってるんだけどさ!分かってるんだけどさぁ~~~!!!半田であれだけショックだったのにサテツとショットにアンタ誰って対応されたら本当に心が折れる。おまけにこっちではまだ現役なんだろ……?』

    『兄貴』
    『……ヒヨシ隊長か』

    「二人とも、私先に行っちゃうよ」「ヌヌヌー!」
    「はいはい、ジョンはココアね」

    「まってくれ今行く!!ほら、ロナルドも!」
    「ウェーーーー」



    カランカランという入店のベルとともにドラルクはカウンター席へとまっすぐ進む。
    バーカウンターには髭を生やした恰幅のいい男性がいた。

  • 76二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 21:10:33

    「ドラルクさん、お久しぶりですね」
    「お久しぶりです、マスター。私はいつもの奴、ジョンにはココアを」「ヌヌーヌヌヌヌヌ!!」
    「クリームもトッピングで付けてください」「私は……」
    「後ろの二人にはホットミルクで」「なんでだ!?」
    「ハイ、ノルマ」
    ドラルクはドリンクに溶かす用の少量の簡易血液パックをヒナイチに渡した。
    「まだ今日の分飲みきってないの把握してるからね。飲みきるまでクッキーお預け」「ちーーん!!!」
    「ほらそこのカモ造もとっとと受け取らんか」
    カモ造くんは視界が悪いのか慣れない手つきで受け取った。

    「今日は随分大所帯ですね。そちらのお二人が噂の吸血鬼ですか」
    「ヒナイチだ!よろしく頼む」「素敵なお嬢さん、よろしくお願いします。マスターのゴウセツです。で、そちらの……カモ?」

    「ろ、ロナルドです」「……どうも」
    マスターとカモの間には微妙な空気が流れている。
    マスターはカモをじいっと見る、じーっと、じーーーーっと
    「(なんで凝視されてるのか分からず半泣きになっている)」「(なんか引っかかってるが思い出せない)」

    「と、ところでマスター!ほかのハンター諸君は?ほらヒヨシ君とか」
    「おっと失礼。レッドバレットなら新横から少し離れたところに出張中ですよ。時間がかかるかもしれません」
    喋りながらマスターは注文の品を手際よく出していく。
    「ショットさんとシーニャは周囲のパトロール、マリアさんとターちゃんはダチョウの駆除といった感じでほぼ出はらっていますね」
    「ちょっとタイミング悪かったか」
    「ショットさんたちはもう少ししたら帰ってくると思いますよ」
    「あの、すいません」

    声を上げたのはカモ……、ロナルドだ。
    何故か、今のマスターの人選に引っかかりを覚えた。

  • 77二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 21:11:38

    「どうしましたか?」
    「その、サテ……、巨大なアームを付けたパワー型のハンターは、何をしてるんですか?」
    「アーム?」

    「うちのギルドにはいませんよ、そのようなハンターは」

    ロナルドは、頭から冷や水を浴びたような衝撃を受けた。


    「なんでだ?サテツは吸血鬼じゃなかったし、狙われるような理由なんてひとつも」
    「ロナルド落ち着け」
    「どうしたんだ、ロナルド君。もう少し事情を話してくれないとこっちもワケが分からんぞ」
    ロナルドのひどい動揺の仕方にドラルクも困惑する。
    「なあ、ドラ公は知らないのか?サテツっていうハンターなんだ。大柄で、信じられない量の飯食って、お人よしの……」
    「私は新横に赴任してきて一年以上たっているが、君のいうハンターは見たことがない」
    「そんな」

    ロナルドの脳裏に悪い考えばかりが頭を巡る。
    前もそうだった、ほんの少しの違和感を逃したばかりにあんなことになってしまった。
    なのにオレはまた__
    「ロナルド、まだハンターではなく一般人をしている可能性もある!状況が確定するまで、悪い方向に考えすぎるな」
    ヒナイチが冷静に諭す。理性では分かっていても、一度決壊した不安の淀みはなかなか払拭することはできなかった。

    そんな重苦しい空気の中、ハンターギルドの扉が乱雑に開けられる。
    一般人が慌てた様子で駆け込んできたのだ。ギルド内に緊張が走る。

    「どうしましたか?」
    「きゅ、吸血鬼がでたんだ!!!誰か助けてくれ!!」
    「どちらにですか?落ち着いて、もう少し詳しい状況を教えてください」
    「えっと、出たのはあっちの通りの方。ヘッドバンドを付けたハンターとボンテージのハンターの二人が相手をしてくれてるんだけど、どう見ても力不足で……。とにかく急いで助けに行ってくれ!!」

  • 78二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 21:12:22

    「ショットたちだ……!」「ロナルド君ちょっとまて!」「なんだよドラ公っ!」
    ロナルドが走ろうとするとドラルクが待ったをかける。
    「血の牛乳割飲んでいけ!その状態で戦うと戦闘中にガス欠起こして吸血衝動が出るぞ」
    「うっ……、分かった。ああもうカモ邪魔っ!」
    一秒でも時間が惜しいロナルドは、乱雑にカモの被り物を脱いで一気に牛乳をあおる。
    「マスター、ご馳走様!」
    グラスをバーカウンターにどんっ、と置くとそのまま目的地に向かって一目散に駆け出して行った。
    ロナルドの後を追うようにヒナイチやドラルクも店から出ていく。

    そして取り残されたゴウセツは、
    「ヒヨシ?」
    カモの被り物を脱いだ青年に、戦友の顔を重ねていた。



    「無事でいてくれよ、ショット、シーニャ……!」

    夜闇を銀の吸血鬼が疾風のように駆けていく。
    今度こそ間に合うように、これ以上悪い事は何も起きませんようにと願いながら。

    今宵は満月。
    夜にもかかわらずくっきりとした影を作るほど月明かりはまばゆく、妖しい魔力を称えている。

    どこかで、狼の遠吠えが聞こえた気がした。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 79二次元好きの匿名さん22/04/27(水) 08:18:16

    ヌシュ(保守)

  • 80二次元好きの匿名さん22/04/27(水) 10:30:41

    うわ不穏になってきてる…楽しみにしてます。

  • 81二次元好きの匿名さん22/04/27(水) 20:56:07

    保守

  • 82二次元好きの匿名さん22/04/27(水) 21:17:42

    月影満ちる常世の街は、今日も怪奇の気配で騒々しい。
    今夜の主役は月に狂った荒くれものと、いぶし銀の腕前の退治人。

    そのハンター、ショットは自前の武器であるフックショットで吸血鬼をうまくいなしながら、人気のない場所へと吸血鬼を誘導していく。

    「おらおらこっちだ!!」
    「ウガァアアアア!!!」

    挑発された吸血鬼はショットのいる方向へ闇雲に腕を振り回していく。
    当たっていないとはいえすさまじい怪力で、スカした拳は勢いそのままに地面に強く振り下ろされる。
    振り下ろされた場所は衝撃によって地面がせり上がり、土ぼこりが舞った。
    アレを人間が一発でも食らったらミンチになるのは想像に難くない。

    ショットは脂汗をかきながらもなんとか攻撃を全て躱していた。
    幸いだったのは吸血鬼の動きが単調だったことだ。
    知性があまり感じられず、子供の癇癪のように腕を振り回している。
    ミスはけして許されないが、それでも予備動作に注意をしていれば躱すこと自体は容易かった。

    (よし、公園だ。このただっぴろい空き地なら、こいつが大暴れしても問題ないだろ)
    ギルドから少し離れた場所にある広大な公園で、その吸血鬼を迎える。

    「まだ遊び足りないんだろ?来いよ、相手してやるぜ」
    「グルルァァア……!」

    相手の吸血鬼もまだまだ体力があり余っている。危険ではあるが、相手にとって不足はない。
    ショットはゾクゾクとするような高揚感に満ちていた。

  • 83二次元好きの匿名さん22/04/27(水) 21:18:52

    そして、ショットに一つ天啓が走る。

    (あれ、もしかしてオレは今、)


    (めちゃくちゃカッコいいのでは?)
    ハンター歴ン年、今、非常に美味しい立場にいることに。

    ※ショットさんの脳内BGM 地〇の星 コーラスマジロ:ジョン

    思えば最初からけして容易ではない道のりであった。
    福井から単身上京し、野心を抱えハンターギルドの門を叩いた。
    だが、待っていたの挫折の数々。
    思い通りにいかず燻ぶる毎日、そして頼りになるu$tjたち。
    \u.s@とx*wzに出会い、オレはzxcvbzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz

    そしてシーニャと師弟関係になり、オレは新横浜で生きていく事を決意したのだった。
    だが、できる先輩に囲まれ、安定感はあるがいまいちパッとしなかったオレ。

    そんなオレが、とうとう主役に__

    「大丈夫かショットッ!!!!」
    夜空を切り裂く彗星のごとく勢いで、銀髪の吸血鬼が二人の間に降り立つ。
    滑空の勢いを地面で殺しながら砂埃を上げて登場する姿は、まさに主役と言ってふさわしい画であった。

    「ショ……じゃなくて、ハンターさん?」
    「分かってた、オレは大体こういう役回りだって分かってた……!」
    「あとで愚痴なら聞くぞ……?っと、その前に」

  • 84二次元好きの匿名さん22/04/27(水) 21:19:48

    「何者だ、そこの吸血鬼。相手ならオレがしてやる」
    ロナルドは懐から銃を取り出し、銃口を相手の吸血鬼に向ける。
    強い風が一瞬たなびき、雲の形がみるみるうちに変わっていく。
    雲でほんの少しの間陰っていた満月は、再びその全容を見せ、公園の野原全体をスポットライトのように照らしあげる。

    そしてそこでようやく、ロナルドは相手の姿に見覚えがあることに気が付いた。

    「ウッ、グッ……、」
    「え?」


    「ロナ……ル…ド?」
    「サテツ?」

    「グゥッ、アアアアアアアッッ!!!!」
    今までこらえていたリミッターを外すように、サテツは大きく咆哮した。

    「どうしたんだよ、サテツ!サテツっ!」
    「おい、そこの銀髪!あいつさっきの力の出し方の比じゃねえ!気をつけないとマジでやばいぞ!!」
    「そんな……」

    『聞こえるかねロナルド君!!』
    遠くから貧弱に全振りしたような男の声がスピーカー越しで聞こえる。
    「ドラ公!?」
    声が聞こえる方向に目を見やると、そこには吸対のメンバーを引き連れ、拡声器メガホンで指示を出すドラルクがいた。
    『公園一帯にいた一般市民の避難と封鎖は完了した!暴れる事を許可する!』
    「分かった!……なあ!知り合いが知らない間に吸血鬼になってて、なんか様子がおかしくなってるんだ!どうすればいい!?」

    『はあ!?なにをワヤワヤ言って……いや待て、君の目の前にいる彼の事を言っているのであれば、彼は普通の吸血鬼ではない!』

  • 85二次元好きの匿名さん22/04/27(水) 21:21:06

    『ライカンスロープ、あるいはウェアウルフ、……人狼だ!!』

    「人狼!?狼男?サテツが!?」
    『吸血鬼になった原因は後回しにしろ、だが暴れている理由は推測できる!満月で気性があらぶっているのだ!』
    『ゆえに対処法は至極シンプル!穏便に済ませたいのであれば、夜が明けるか相手の体力が尽きるまで彼の相手をしてやれ!』
    「組手か相撲でもやれっていうのかよ!?」
    『わーーー!前見ろ!!前!!』「うおっ!?」

    ロナルドはとっさに相手の拳を真正面から受けとめる。
    凄まじい衝撃が総身に走り、足を地面に食い込ませて何とかこらえようと踏ん張るが、それでもずるずると跡が残るほどに後ろに引きずられてしまった。

    「威力やっべえ……!」
    だが、サテツの猛攻はまだまだ止まることは無い。

    2手、3手、4手、と先ほどの威力と同等のパンチが間髪入れずに降りそそいでくる。
    しかも先ほどまで出してこなかった爪攻撃での斬撃も織り交ぜてくるため、厄介な事この上ない。
    ロナルドは時に受け止め、時に躱しながらサテツの攻撃をさばいていく。

    『ロナルド君!ある程度攻撃もして相手の体力削らないとこのままではじり貧だぞ!』
    「わ、分かってるよ!」

    正直、非常に気は進まない。気は進まないがやり返さないとこっちが潰れる。
    ごめんと心であやまり、いつもより拳に「少しだけ」本気を込める。

  • 86二次元好きの匿名さん22/04/27(水) 21:21:38

    サテツが自分に襲い掛かってくるのを視認して、迎え撃つように、まっすぐと!
    サテツは、ロナルドの拳を避けずにそのまま受け止めた。

    先ほどのサテツの拳とは比べ物にならないほどの衝撃によって、サテツの体は簡単に吹っ飛んでいく。

    「さ、サテツ」
    ロナルドは自分の想像以上の威力が出たことに顔が青ざめていた。
    途中から避難をしていたショットに至っては(威力がドラゴ〇ボールじゃん……)と遠い目をしていた。

    そして吹っ飛ばされた当のサテツは、
    「グァァ……!!」

    何事もなかったかのように平然と起き上がり、そして、ロナルドを獲物として見やっていた。
    「……」

    今夜は、長くなりそうである。


    ヌヌヌ!(つづく)

  • 87二次元好きの匿名さん22/04/28(木) 08:19:48

    ヌッシュ

  • 88二次元好きの匿名さん22/04/28(木) 09:58:02

    さらっとショットの記憶関係ヤババになっててヤバい
    なんでサテツが吸血鬼になってるのかわからなくてワクワクしてます☆

  • 89二次元好きの匿名さん22/04/28(木) 18:53:23

    良質な幻覚美味しいなあ

  • 90二次元好きの匿名さん22/04/28(木) 20:11:07

    >※ショットさんの脳内BGM 地〇の星 コーラスマジロ:ジョン


    ヌーヌヌヌー(つーばーめーよー)

    ヌヌーヌヌンヌー(ちじょーのほしーはー)

    ヌヌーヌーヌンヌー(いまーどーこーにー)

    ヌヌーヌヌンヌー(あるーのだろー)

  • 91二次元好きの匿名さん22/04/28(木) 20:22:31

    怪異の戦いは続いている。
    最初は躊躇うような動きをしていたロナルドも、次第に積極的に殴り返すようになり、サテツも全く落ちないペースで拳を繰り出していく。
    ほとんどラリーのように繰り返される殴り合いは、余人が入り込む隙は全く無く、ただ見守る事しかできない。

    「なあ、やっぱり私もロナルドの助太刀をした方がいいんじゃ」
    「絶対ダメ」
    ドラルクがヒナイチの提案を即座に却下する。

    「ヒナイチ君はロナルド君に万が一があった場合の待機戦力なんだから、今は温存。ただでさえ人間が相手をするには荷が重い相手だ。もしロナルド君が途中でぶっ倒れた場合、ヒナイチ君が時間稼ぎをするなり助けに行ってくれないとロナルド君の回収ができなくなってしまう」
    「うう……、だけど見てる事しかできないのは、正直言って歯がゆい」
    「気持ちは分かるけどもね」
    本音を言ってしまうとドラルクもこの状況に考えあぐねていた。

    大量の対吸血鬼麻酔弾とそれを打ち込むための布陣はすでに用意してある。
    ドラルクが一つ指示を出せばその通り動くだろう。
    だが麻酔弾を撃ち込むと言う事は、相手に余計な刺激を与え、いらぬ暴走をひき起こす可能性だってある。

    今はあの人狼の意識がロナルドにのみ向いているから良いが、それがもし麻酔弾を撃った職員の方に向いてしまったら?
    距離があるとはいえ、あの猛スピードの怪物から逃げ切れるのか?
    もろもろの最悪を考え、撃つとしたら確実に麻酔弾が効く状態を整えなければならない。

    その為にも、まずは相手の吸血鬼を疲れさせるべきなのだが……。
    (どんだけタフなんだ、あの吸血鬼)
    ロナルドと人狼が打ち合いをはじめて早一時間。二人の打ち合いは衰えるどころか苛烈さが増していた。
    まったくもってスタミナの底が見えない。

    そして同様に、それを相手するロナルドにも呆れていた。
    力をセーブしているとは常々感じてはいたが、まさかここまでのバカ力とは。
    しかもずっとこの状態でキープできていると言う事は、まだ余力があって全力を出し切っていないと言う事でもある。
    あのハチャメチャ吸血鬼がもし敵に回ったらさぞかし対処に骨が折れるだろう。

  • 92二次元好きの匿名さん22/04/28(木) 20:24:06

    (……味方でよかった)
    本人の前では、絶対に言わないが。

    だが、そのバカ力も動きにキレが無くなってきている。
    理由は分かっている。エネルギー不足(血が足りない)だ。
    時刻は午前一時、月の出まであと二時間ちょっと。
    直前に牛乳割を飲ませたからまだマシな方だが、それでもあの動きを二時間し続けるには絶対に足りない。

    だからこそ、ドラルクは迷う。
    若造の体力が尽きる前に、どこかで必ず麻酔弾は撃たねばならない。だが、タイミングを見誤ると事態を悪化させる可能性がある。
    遅すぎても早すぎてもいけない、非常にシビアな判断が必要だった。

    (このままノーヒントで大博打に出るのは絶対に避けるべきだ。少しでも弱る素振りが見えると良いんだが。今から新しいトラップでも仕掛けるか?……いかん、長時間の警戒態勢の疲れで頭痛がしてきた。あー、こんなことなら若造の懐に血液パウチ突っ込むべきだった)

    ありとあらゆるタイムリミットが迫り、ドラルクはそろそろ決断をしなくてはならなかった。
    (せめて、アレをなんとかできれば__)

    「ドラルクさん、お困りですかな?」



    一度は退避をしたものの、それでもショットは二人の戦いから目を離すことが出来なかった。

    (間近で見れば見るほどやべえ戦い……、これ下手に手を出したら死ぬよな?オレ……)

    手持ちにある武器はフックショットと、麻酔薬が塗られた小型ナイフ
    フックショットは普通のモノよりも頑丈に作られていて、吸血鬼の怪力だろうとロープが千切れない信頼はある。
    しかしバカ力の差はどうにもならないので、あの狼男を捕縛した所でショットさんが綺麗に一本釣りされるだけだ。

  • 93二次元好きの匿名さん22/04/28(木) 20:25:09

    だからといって、何もしないという選択肢はどうしても取りたくなかった。
    何故かはわからない、だが、あの二人に顔向けできないような行動は取りたくないと、強く感じている。
    (今日初めて会ったばっかだっていうのによ)
    自棄を起こしてただ特攻なんてするつもりはもちろんない。じゃあ、どうすれば

    「こんばんは。良い月夜ですな、ハンターさん」
    ショットが思い悩んでいると、不意に後ろから声をかけられる。
    顔を上げると、シルクハットに燕尾服、ちょび髭を蓄えた紳士がそこにいた。

    「誰だ?」
    「私は通りすがりの吸血鬼、ダンディーとでもお呼びください」
    「その通りすがりの吸血鬼が、オレに一体何の用が?」
    「吸対のドラルクさんから協力要請を受けましてね。あそこで戦っている二人を止めるために、少し大掛かりな能力を使おうと思うのですが、私だけではいささか手に余ります」

    「なので、あなたの力をお借りしたいのです」
    「オレの……?」「ええ」
    「な、なにをすればいいんだ!?」
    いつもならよく知りもしない吸血鬼の提案を安易に信じるのは不用心だと感じる筈だ。だが今のショットは藁にも縋りたかった。
    「簡単です、私と話をしていただければいいんです」
    「そんな事でいいのか?」「我々にとっては重要ですとも」
    「でも、それならオレじゃなくても……」

  • 94二次元好きの匿名さん22/04/28(木) 20:25:47

    「いえいえ、あなたでなければいけないんです。あなたの噂は、息子からよく聞かされていましたので」
    「息子?」
    この紳士とそんな縁があったとはつゆしらず、まったく身に覚えがない為すっとんきょうな声を上げてしまった。
    (息子?いったい誰だ?やっべ、全然思いつかん)
    「今のあなたが覚えていないのは無理もありません。ですがどうぞお気になさらず」
    紳士は特に気にした様子もなく、さらりと流す。
    そして紳士にとっての本題を口に出した。
    「ぜひ一度、生で拝聴したいと思っていたのですよ」


    「あなたのその……、ムダ毛に対する情熱を!!」

    ヌヌヌ(つづく)

  • 95二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 05:41:42

    一体何に変身するのか全く予測がつかないけど展開で笑ってる
    ほっしゅ

  • 96二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 12:44:05

    息子がいないのに話題に出すのがほんの少し切ないのにそれだけに留めさせてくれないという

  • 97二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 15:28:10

    不穏とポンチのバランスすごい
    狼男サテツかっけえ
    ロナルドがわかったってことは記憶あるんかな
    でもショットとは普通に戦闘してるしな…うーん

  • 98二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 21:31:04

    「ムダ……毛?」
    ショットは混乱していた。今日全くの初対面のおっさんから、突然自分のフェチについて語れと頼まれたのだ。
    しかもムダ毛はショットが心の奥底でひそかに温めている宝物のような性癖。
    今まで友人知人に話したことなど一度もないはず。なのに、なぜこのおっさんはそれを知っているのだ。

    「驚かれているようですな。おそらく、こちらでの貴方はまだありのままの自分を解放していないようですから」

    「解放ってなんだよ!ていうか普通性癖なんておおっぴらに話すもんじゃないだろ!!」
    「いいえ、解放です!あなたの創造の翼はもっと遠くまで羽ばたかせることが出来る筈だ!私は知っています、あなたによって新たな扉を開かせた息子が、いたく感銘を受けて私にその神髄の一端を語ってくれたのです。この、同人誌とともに」

    紳士は懐から一冊の薄い本を取り出す。
    「そ、その本は」「ええ」

    「「敢えて剃らない!!!」」

    ニッチもニッチすぎるムダ毛界隈に燦然と輝く神本である。
    「……なるほどな、その本を持っていると言う事は、オレはよっぽどディープにアンタの息子とムダ毛について語り合ったんだろう。思い出せないのが悔しいぜ」
    「いえ、その言葉だけで息子も喜ぶと思います」
    「だけどこれで腹は決まった。語ってやるよ、オレの愛を、情熱を……!」

    だが語るのはムダ毛についてだ。



    「では、タイミングを見計らってはじめましょうか」
    「それは良いんだけど、なんで能力の発動に性癖話が必要なんだ?」

    「それについては、私どもの一族の能力の源がHTPにあるからです」「HTP?」
    「エッチシンキングパワー、エッチな事を考えたリビドーで我々はあらゆるものに変身することが出来ます」「つまりY談だな」
    「もちろん例にもれず私もHTPを使用するのですが……、最近は以前ほど自由に変身することが出来なくなっていまして」

  • 99二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 21:32:15

    「どうしてだ?」
    「……」

    「萎えてしまうのですよ。今の私はある事が原因で、心の中を純粋なHTPだけであふれさせることが出来なくなっているのです」
    ショットは先ほどから朗らかに話しかけてくるこの紳士に、初めて少しだけ影を感じた。

    「まあ、そういう時もあるよな、落ち込んだりするとエロに全然集中できなかったりするし」
    「そういう事ですな。つまり今の私は実質E…」「その単語はダメだ」

    「ですが、他人の助けを借りるとなると話はまた別です。他者と語り合うこと、情熱に触れる事で、萎んでいた蕾も情熱に当てられて花開きます」
    「そこでオレの出番ってわけか」「楽しみにしていますぞ」

    「ところで何に変身するんだ?ゴ〇ラみたいな怪獣になってあいつらを止めるとか」
    「そんな力技になど頼らなくても大丈夫ですよ。私がやるべきことは、場の空気を奪うだけです」
    紳士はシルクハットをかぶりなおす。

    「そもそも、われわれ吸血鬼はその血が古ければ古いほど場の空気や境界に左右されやすい生物です」
    「例えば、招かれなければ他人の家に入れない、川の向こうを渡れない。今いる場所から異なる空気、境界に移動する時になんらかの制約を受けます」
    「それ、よく聞くけどいまいちピンとこないんだよな」
    「ふむ、人間でわかりやすく例えるならそうですね、学校で知り合いも友人もいない隣のクラスに無断で勝手に入るような感じですかね」
    「すげーピンと来た。いたたまれないわ」

    「これは吸血鬼に限らず、宗教とて同じこと。日本で言うならば神社が分かりやすいでしょう。本社のほかに鳥居と鎮守の森で周囲を囲う事によってここは神聖である、罰当たりな事をしてはいけないという場の空気を作ります。そしてそのシチュエーションは祭られる神の権威にも繋がるわけです」

    「これだけ厳重に祭られているのであれば、さぞかし力のある神に違いない、といった形で」
    「で、それがあの狼男となんの関係が……」

    「この場の主導権を握っているのはあの狼男です。では、なぜでしょうか?」
    「えっ……、満月があるから?」
    「正解」

  • 100二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 21:33:05

    「満月があるから狼男は凶暴化する。満月が出ているというシチュエーションだけで、この場は彼の独壇場になる。神社の鎮守の森と鳥居を即席で立ててるようなものです」
    「カードゲームで言うフィールド魔法、ポ〇モンでしたら「あまごい」や「すなあらし」です。月に1度、しかも時間制限があるのでそれほど無法なものでもありませんが」

    「なので今から私がやるべきことは、もうお分かりですね」

    「彼から月を盗んで見せましょう」



    ロナルドは正面から来る鋭い突きを身体を後ろにそらすことで躱し、そのまま後ろ手を支柱にして両足をはねさせ、サテツの頭を足首で強く挟む。
    そしてそのまま体をひっくり返して、サテツの頭を地面に脳天直撃させた。
    反撃で足が掴まれる前にロナルドは、一足飛びにその場を離れる。常人なら致命傷のこの技だが、いまのサテツにはジャブくらいにしか効かない。

    この調子でサテツと打ち合いを続けてきたロナルドも、流石に限界が近かった。
    いくらフルパワーではないとはいえ、ずっと持久走をしているようなものなのだ。

    だからと言って集中力を欠くわけにもいかない。
    今のサテツはロナルドの隙を見逃してくれるほど甘くない。体制のずれをめざとく見つけては容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
    無論、その攻撃を許すようなロナルドではなかったが。

    そして、もう一つ切実な問題があった。

    (喉、渇いた……)

    我慢ではどうしようもない喉の渇きがロナルドを襲っていた。
    理由は分かっている。血がたりない。

    サテツと打ち合いをしている最中、自分の視線が、近くの吸対職員に目が行ってしまうことにロナルドは気づいている。
    (だめだ)

  • 101二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 21:33:57

    (『飲みに行きたい』なんて考えるな)

    このままサテツとの打ち合いで自分の力を使い切った時、理性を失った時、自分はどうなるのか。
    無差別に誰かを襲ってしまうのではないか?

    それが心底から怖かった。

    そして、このままではサテツが無差別に誰かを襲ってしまうという事実もまた、同様に恐ろしいものだった。

    (どうすればいいんだ)

    ロナルドが途方に暮れる、ちょうどそのタイミングで、

    待ちわびた「闇」は来た。



    「いいか?ムダ毛はムダ毛そのものでももちろん良いがシチュエーションが合わさる事でさらなる高みを目指すことが出来るんだ。わずかに生えてきてしまった脇の剃り跡からちょっとムダ毛処理が面倒になって一日放置してしまったお姉さんを想像しても良いし、きちんと剃ったつもりだったが足首の裏側に2~3本残ってしまったすね毛でうっかりドジっ子お姉さんを想像しても良い。またどこを剃ってどこのムダ毛を残すかによっても性格や嗜好にも関わってくる。極めれば性格占いだってできる筈だ。紅茶の残った茶葉の形で占いするだろ?ちょうどあんな感じで(以下略)」



    サテツとロナルドの周囲をドーム状に黒い闇が覆ってきている。
    闇は周囲の光を一切通さず、もちろん月の光だって隠してしまう。

    「ウグァア……!」
    「サテツ!」

    ずっと暴走状態だったサテツにさっそく変化が現れる。
    月の酔いが覚めるように、サテツの目に理性の光が戻ってくる。

  • 102二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 21:36:06

    「ロナ…ド、オレ……」
    「大丈夫か、サテツ!」

    ロナルドがよろめくサテツに近寄ろうとすると、遠くからスピーカー越しの怒声が聞こえた。

    『ロナルド君そこを動くな!』
    「ドラルク!?」

    『__いまだ、第一部隊麻酔弾を撃て!!』

    ロナルドが反射的に動きを止めると、闇の外側からパシュンパシュンという銃弾の音が響いてくる。
    銃弾は数発外しつつも多くの弾がサテツに直撃、そしてサテツはゆっくりと倒れていく。

    『第二部隊、捕縛開始!!』
    サテツへの麻酔が効くと、今度は覆っていた闇がうっすらと消えていき、視界が晴れると吸対やハンターたちが捕縛テープや網を使いサテツを拘束しはじめた。
    拘束されるサテツは、静かに眠っていた。

    「おわ、った……?」
    事が動いてみればあっけない幕引き。だがロナルドは長時間戦闘の後なのもあって、まだ気が高ぶっている。

  • 103二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 21:36:34

    「おい、ロナルド!」
    「半田?」
    反射で声の方向に振り返ると、半田が血液パウチを投げ、ぺしょっと頭に当たった。
    「ドラルク隊長の命令だ。とっとと飲まんか」
    「ありがと……」

    ロナルドはほとんど無意識でパウチを口に入れる。さっきまでの渇きが一切合切解消されていく。
    遠くを見ると希美やミカエラ、モエギたちが無線で何か報告をしているのが見えた。

    そしてようやく、時間差で終わった実感がわいた。

    「終わった……」

    ロナルドは大の字になってぶっ倒れる。
    今日はもう、動けそうになかった。

    ヌヌヌ(つづく)

  • 104二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 21:40:47

    吸血鬼と境界の話はこのSS内のみの設定と言う事でお願いします。
    あと関係ないですがムダ毛については一日考える羽目になりました。

  • 105二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 21:42:53

    境界のたとえ話、ポ〇モンのたとえがすごいしっくりきて分かりやすくてスルッと頭に入ってきた

  • 106二次元好きの匿名さん22/04/29(金) 21:45:09

    シリアスで熱いバトルに本編並みの解像度のムダ毛談議、真面目な展開におポンチを絡ませるのが上手すぎて最高
    続きも楽しみにしてます

  • 107二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 06:11:56

    支援ほしゅ

  • 108二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 09:51:31

    ディック回でしたな
    色々わかりやすい例え話だったり(例え話や要約が上手いのは頭がいい証拠)
    「彼から月を盗んで見せましょう」とかカッコいいのに
    カッコいいのにそれだけにとどめないのがポンチ吸血鬼

  • 109二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 11:39:11

    ターちゃんとか近くにいたのか気になってしまう
    乙です。

  • 110二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 20:27:56

    頼りになるタキシード仮面様だなあ

  • 111二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 21:48:53

    「終わりましたか。はい、はい……、わかりました。店は開けておきますので。ええ」

    ギルドマスターのゴウセツはドラルクによる報告の電話でようやく一息ついた。
    「どうやらもう終わってたようだな」
    「おや、いつのまに戻って来てたんですか?」

    「レッドバレット」
    ゴウセツが振り返ると、いつの間に入ってきたのか、真っ赤な仕事着を身にまとったハンターが、バーカウンターに座っていた。
    少し童顔の印象があるが、これでもこの街では腕利きのハンターである。

    「なんじゃその言い草は。こちとらヤバイ吸血鬼が出たって事で急いで仕事終わらせて帰ってきたんだぞ?少しは労え」
    「はいはい。感謝していますとも」
    ゴウセツは軽口を叩きながらレッドバレットの目の前にドリンクを置く。

    「それにしてもこの街も随分物騒になりましたな」
    「この間の駅周辺での巨大怪物に警察署襲撃事件、おまけに今夜の狼男。下等吸血鬼の発生がグンっと減ったのはいいが、こう大物が続くようじゃトータルではマイナスじゃろ。危険度も跳ね上がっとる」
    「ギリギリ対処はできていますが、このまま悪化するようでは我々も強力な対策を考えねばなりません。吸対との連携ももっと密に行わなければ」
    「そうだ、吸対といやあ、例の二人組の吸血鬼はどうなったんだ?」
    「それなんですが、ちょっと面白い事になっていてですね」
    「ふむ?」

    「すまない、失礼するぞ」
    カランカランという入店のベルとともに、凛々しい少女の声が聞こえる。噂をすれば影である。
    「おや、丁度よいタイミングですな」
    「おっ、どれどれ……ってなんじゃ!?」

    レッドバレットが驚くのも無理はない。見た目明らかに華奢な少女が、自分よりも大きい男性を背中におぶる形で抱えていた。
    ついでに少女にすこし遅れるタイミングでふらっふらな状態のドラルクもぬるっと入ってくる。
    「マスター、椅子を並べて横になれる場所を作ってやってくれないか?」
    「これはこれは大変お疲れのようだ。大丈夫ですか、後ろのロナルドさんとドラルクさん」

  • 112二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 21:49:25

    「ロナルドは疲れきって寝ているだけ、ドラルクはいつもの疲労と偏頭痛だ」
    「……冷えピタください」「ヌヌヌイ」「ヴァミチキじゃないんですからドラルクさん」

    「もう少し落ち着いた場所で休ませてやりたいんだが、まだ現場から遠くは離れられなくて」
    「なるほど。ではこちらに場所を作りましょう」「助かる」「ヌー」

    「ああ、俺も手伝おうかお嬢さん」
    2人のやり取りをみてレッドバレットもすかさず助けを申し出る。
    女子の手助けとならばやらぬ理由はあるまい。
    だが少女の方はとくにレッドバレットに脈があるわけでもなくスンっとした様子だ。
    「すまないヒヨ……いや、ハンターさん」
    (この子いまヒヨシって言いかけたか?)
    ハンターとしての通り名ならともかくなんでいきなり本名?疑問点が引っかかりつつも男の方を運ぼうとすると、ここでも新たな疑問点が湧く。

    (こいつの顔……)
    少女の背中ですっかりと眠りこけている男の顔は、丁度ヒヨシの顔の印象に数年足したような顔つきなのだ。
    ヒヨシは童顔の部類なので、つまり青年期の丁度よい顔つきでめっちゃ羨ましいというのはまあ置いといて、家族でもないのにこの印象の近さには流石に驚いてしまう。
    「やっぱりヒヨシ君と似てますよね、彼の顔」
    ドラルクが頭に冷えピタを張りながら話しかけてくる。
    「俺の家族に吸血鬼なんていないんだがな……」
    即席の長椅子に二人がかりで男を横たえさせる。
    男はよほど疲れていたようでピクリとも動かなかった。

    「ですがここまで似ているとロナルドさんとヒヨシに血のつながりがないは逆に信じられませんよ。もしや」
    ゴウセツの片目がクワッと見開く。
    「隠し子……?」「まてい、いきなり結論を異次元にぶっ飛ばすな」
    「そうか、いつかやるかもしれないと思っていたが」「おみゃーと俺は初対面だよな!?なんでしみじみそんなよく知った風に思われにゃあならんのじゃッ!」
    「ヒヨシ君妖しい美人吸血鬼とかに遺伝子情報盗まれなかった?」「なるほど、クローン……じゃねえわ、そんな可能性微塵もあってたまるか」
    「じゃあヒヨシ型アンドロイドの量産で一つ」「もはやお前はただ俺をおちょくりたいだけだな???」

  • 113二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 21:50:11

    ギルド内はひと時の騒がしさにつつまれている。


    (どうしよう)
    ロナルドは困っていた。

    (起きるタイミング逃した)
    実はちょっと前から目が覚めていたのだが、どう声掛けしようか迷っている間に完全に機会を失ってしまった。
    いや普通に考えれば、単純に起きて声かければいいだけなのだが、この場にはレッドバレットがいる。
    “あの”レッドバレットがいるのである。

    (うわーーーーオレが知ってる現役時代の衣装とちょっと変わってる!そりゃそうだよな、こっちでは十年以上はハンターやってるはずだもんな)
    たとえ家族の絆が失われていたとしても、それでもレッドバレット……ヒヨシとは仲良くしたいし、第一印象はできる限り良くしたい。

    変に空回って悪印象を与える事だけは避けたかった。
    (どうする、このまま嘘寝決め込んでまた後日仕切り直すか?でも兄貴忙しそうだし、次いつ会えるかわかんないし、一回くらいは……)

    「なあところで、ドラルク」
    「なんですかな、ヒヨシ君?」
    「お前から見て、この吸血鬼の印象はどうなんだ?監督しとるんじゃろ?」
    (ヴォッパェビャッパッパーーーーーーーーー!!!!)ビュン←心臓が飛び出た音

    「そうですな……」
    (クソ砂ッ(砂じゃない)、アホみたいなこと抜かしたらマジで半殺しにするからな!!!クソ砂(砂じゃない)!!!)

    「最初の方こそは無口無表情、能力は無駄に強大で何考えているかいまいち掴めない、その割に私の行動にいちいち指図するわ、辛気臭い表情するわでまあ腹がたったりもしたんですけど」
    (えっ)

    「蓋を開けたら、偏食お子様舌のシンヨコウルトラお人よし空回りゴリラの五歳児でしたね。あとついでに下着の柄が無駄に派手」
    (半殺しをすることが決定した顔)

  • 114二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 21:51:09

    「なんだそれ!」
    ヒヨシはけらけらと笑う。
    「そんな風に見えてたのか?私たちの事」
    ヒナイチがすこし不本意そうにしょぼくれる。
    「これはあのバカ造の印象であってヒナイチ君の印象はまた違うから!ちゃんと信頼してますとも!」
    「ならよし!」

    「しかしドラルクはなんで腹が立ったんだ?」
    「え……、なんでだろう~~?」「そこワヤワヤさせちゃダメだろ」
    「いや、そこらへんは私もよくわかんないんだよね。何故か無性に腹が立って」「ヌー?」

    「案外どこかでドラルクさんも縁があったのかもしれませんよ、ロナルドさんと」
    「あんなめちゃくちゃ男どっかで会ったら忘れないと思いますけどねえ」

    「まあ、彼とヒナイチ君が来て色んな事件ありましたけど、」

    「二人がいなかったら、確実にどこかで死者は出ていたでしょうね」

    ドラルクの声の温度がスッと下がったのが分かる。それは吸対の隊長としての本音だった。
    ロナルドも、だろうなという実感があった。
    使われている能力はポンチだろうと、悪用のされ方は元のシンヨコとは段違いだ。
    今の状況はほぼ奇跡のような綱渡りで成り立っている。

  • 115二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 21:51:30

    「私(吸対)としては外部戦力に頼り切る戦い方は本来したくないんですがね。それでも」

    「二人には感謝していますとも」

    (……)
    「ヌヌ ヌヌ」
    ジョンが、ロナルドを労うように頭を撫でていた。

    「ん?もしかしてロナルド、起きてるのか」
    そして、とうとうヒナイチに感づかれた。
    「……起きてない」
    「ちょっとまってくれ」
    何故かドラルクが動揺している。

    「今の聞かれた?もしかして聞かれた?」
    「……聞いてねえよ、ただ」

    「下着の柄は今ここで言うべきことじゃねえだろっ!!!」
    「ウワー!!やっぱり全部聞いてるんじゃねえかこの嘘寝太郎!!!」

    お互いに無駄に騒ぎたてることで、さっきまでの湿っぽい空気を一気に切り替える。
    そこに若干の照れ隠しが混ざっていたのは、きっと周囲からはバレてしまっただろうが

    ヌヌヌ(つづく)

  • 116二次元好きの匿名さん22/04/30(土) 22:14:53

    乙です
    ついに来たかヒヨシとの邂逅……!

  • 117二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 00:34:53

    続きヤッターーー!!!

  • 118二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 08:57:15

    ここからどう動くかな…続き楽しみにしてます

  • 119二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 13:59:44

    うわ好きです…
    保守

  • 120二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 21:00:08

    おまけ

    ロ「改めまして、ロナルドです」ヒナ「そして私はヒナイチだ!」
    ヒヨ「おう、二人とも噂は聞いている。なんでもここ最近連続している凶悪な吸血鬼事件を解決に導いたとか……、同業者としてはうかうかしてられんな!」
    ロ「いえ、そんな」
    ヒヨ「そう謙遜するな。ライバルとして今後の活躍期待しているぞ!よろしくな、ロナルド!」
    ヒヨシはロナルドの肩をぽんと叩いた。

    ロ「」(フリーズ)
    ヒナ「ロナルド?ローナールードー?」〇「ヌヌヌヌヌーン?ヌヌヌヌヌーン!」
    ヒヨ「……、なんか俺不味い事言ったか?」
    ド「憧れの特撮ヒーローの握手会で名前呼んでもらってキャパオーバーした五歳児なんで気にしないでください」

    完(ヌン)

  • 121二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 21:01:03

    確保されたサテツと改めて面会が許可されたのは、事件から三日ほど経過してからだった。
    VRCに一度収容されたサテツは、その後弱体化措置や身体検査などを受けているらしい。

    「サテツの奴、変な実験とかされてないと良いんだけど」
    ロナルドの顔が曇る。なんといってもVRCである。そしてVRCといえばヨモツザカ(マッドサイエンティスト)がいる。
    一応それとなくドラルクからヨモツザカが人間として存在することは聞いていたが、人間だからといって奴はまるで安心できないのだ。

    「よっぽど危険な研究は無理強いできない筈だ。他の人も止めるだろうし、大丈夫じゃないか?」
    「いやオレが心配してるのはそこじゃなくて」
    「押しに弱いから、ヨモツザカ辺りに困ったな~って素振りされたら、悩んだ挙句実験用の注射とか全部引き受けちゃいそうで」
    「それは否定できない」「キミら二人の中でそのサテツって人はどういう扱いなの」

    「とにかく案ずるより産むがなんとかだ。グダグダいってないでさっさと行くよ」
    「「おー」」「ヌー」


    で、VRCの研究室。

    「なんの用だ、愚物ども」
    「ロナルド、この間はごめん」
    「よかったサテ……なんか食器多いな???」

    ロナルドの記憶の中では研究室はもう少し殺風景だったのだが、今はサテツの周りに大量の空になった食器が置かれている。
    「VRCの食事だと足りなくて……」
    「それでこれだけの出前取ってもらっちゃったの?めっちゃ待遇良いな???」
    「ロナルド、ターちゃんのお店の食器もあるぞ!」「ヌー!(マジヌンラーメンの器)」
    「ヨモちゃんこの量は経費落ちなくなるよ」「黙れ愚愚物研究対象への必要な投資だ」「横暴~!」

  • 122二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 21:03:06

    「そんなことよりも本題を言え愚物ども、それともなんだ?そこの吸血鬼二人がわざわざ俺様の実験材料になりに出向いてきてくれたのか?」
    「んなわけあるか、オレはサテツと話をしに来たんだ。どこかでオレとヒナイチとサテツだけで会話ができる場を設けてくれ」「私ハブなの?」
    「はあ?吸血鬼同士の密会をこの場で許すとでも?お前たちが実験材料になるのなら考えてやらんでもないがなあ?」
    「テメ」「まってくれロナルド」
    手が出そうになったロナルドをサテツが慌てて止める。

    「オレからも、お願いします。大事な話なんです。脱走の共謀なんかじゃ絶対ありませんから……!」
    サテツが誠心誠意を込めて頭を下げる。
    それと同時に、吸血鬼化してから狼のようにふさふさの毛でおおわれていた耳が、しょんぼりとへたれている。
    まるで怒られて落ち込んでいる時の犬のようだ。
    「……」

    「サテツ、こいつにそんなまともな説得が通じるわけ」
    「いいよ」「いいの!?」
    「ただし、条件がある」



    VRC内にある面談室にロナルドとサテツは通された。
    条件は三つ。一つ、個室面談が許されたのはロナルドとサテツのみ。
    二つ、会話の内容は全て記録される。三つ、何かトラブルを起こした時はロナルドとヒナイチもVRCに収容される。

    (条件としては妥当か)
    つい忘れがちだが、今の自分は吸血鬼なのである。こちらに来た頃よりかはマシとは言え、自分だって警戒対象なのは変わらない。
    だがそれよりも今は目の前のサテツとの会話だ。ロナルドはさっそく本題に切り出す。

  • 123二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 21:04:06

    「サテツ、さっそくだけどどこまで覚えてる?」
    「あの事件が起きる前の退治人だったころの記憶は、だいたい覚えてるはずだ」
    「そうか……。事件当日の記憶は?」
    「あの日は、マナー君と一緒にパトロールしていて……。そしたら街が真っ暗になってさ、悲鳴が聞こえて、駆け付けて、みんなちがでてて、それで」

    「それで、マナーくんが」「サテツ!」
    ロナルドが話を強制的に遮った。サテツの顔が青ざめている。

    「ごめん、悪かった。もういい」
    「それからは、それからは、もう、覚えてない」「そっか……」

    「……ロナルドはなんでそんな体に?」
    「オレとヒナイチは手伝ってくれた人達がいたんだよ。サテツはいつからこっちにいたんだ?」
    「えーと、数日前?」「そっちの記憶は曖昧なのか?」
    「気が付いたら、こっちのシンヨコにいてさ、しかも全然体が違うからびっくりしちゃって。とりあえずギルドに助けを求めに行ったらマスターがオレの事覚えてなくて」
    サテツがだんだんと半べそをかきながら喋る。よっぽど心細かったらしい。
    「あー、確かにショックだよな」
    「どうしていいかわかんなくて、しばらく身を潜めてたんだけど、満月が出たらめちゃくちゃに暴れたくなって。我慢できなくなっちゃって」
    「それでショットと遭遇したのか?」「うん。とりあえずショットなら避けきれるくらいのペースで暴れてた」
    「人気のない所に誘導もしてくれたし、後でお礼言わなきゃ」
    「へえ、結構理性あったんだな。まてよ?ならなんでオレを相手にしてた時はあんな無茶苦茶なペースで襲ってきたんだ」
    「それは……、ロナルドがオレの名前呼んでくれたから。やっと知ってる人がいたのと、今のロナルドならオレの全力でも受け止めてくれそうだなってホッとして、気が抜けて」
    「そして全力でオレに襲い掛かったと」「ゴメンナサイ」
    サテツは深々と土下座をした。ロナルドの怒鳴り声が降ってくる五秒前の出来事である。


    『お前オレマジで死ぬかと思ったんだぞ!!!!』
    『本当にごめんってーーー!!!』

    「ちっ、さっきの話をもう少し掘り下げんか愚愚愚愚愚物め」

  • 124二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 21:04:35

    2人の会話はヨモツザカやドラルクもしっかり聞いていた。

    (ロナルド君やヒナイチ君たちが何か隠してるのは知ってたが……、断片的な情報とはいえこれはちょっと)
    ドラルクは得た情報をかみ砕くのに苦労していた。うっすらとわかる事もあるが、その情報を真に受けるにはあまりにも荒唐無稽に感じられる。
    ジョンは理解が追い付かないらしくヌ?ヌ?と頭をオーバーヒートさせていた

    「別に信じなくても分からなくてもいいぞ」
    当のヒナイチは気にする素振りもなく凛と構えている。

    「私たちだってめちゃくちゃな話だと思ってるからな。ただ、この街を守りたいと思っていることさえ信じてくれれば、それで良いんだ」
    「フン」
    ヨモツザカが鼻で笑った。

    「信じる信じないではない、現象が発生し、そしてそれを観測できたか否かだ。信頼に値する観測結果が出れば、俺様はどんな荒唐無稽空想科学一歩手前のバカ話だろうとそれを真実と捉える。その繰り返しが科学だからだ」

    「今得た情報のみではそもそも考察にも値しない。精査する情報が足りなさすぎる。ただのゴミ情報だ」
    「だが事実として、お前たちが現れた時期とちょうど同時期に正体不明の吸血鬼が襲ってくるようになった。件の吸血鬼は腹立たしい事に残りカス一つ残さず消えるので一向に研究が進まん」

    「街に突然現れた高等吸血鬼と正体不明の『あれ』。そこに今の断片的な情報を掛け合わせるとまた一つ別の情報が見えてくる。……お前たちの街では、『アレ』は何をしたんだ?」

    「……食い散らかしたんだ」
    ヒナイチは吐き捨てるように言った。


    ヨモツザカたちがいる部屋から、少し離れた場所。夜のVRCの研究棟に、蠢くものがある。
    わさわさわさわさ、群体は細かく分かれ、そして排水管やあらゆる管へ、静かに侵入していった。

    ヌヌヌ(つづく)

  • 125二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 21:09:13

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  • 126二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 22:15:25

    追いついた!めっちゃ面白いです!

  • 127二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 22:24:54

    あの研究所にあるもん吸収したキメラ(仮)とかヤバイ二乗分追加してるじゃん 楽しみです。さっきの保守いらんかったっぽいから消しといた。私は時間を読み間違えるアホ

  • 128二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 22:30:43

    このスレの物語に主題歌つけたくなってきたが、もう少し様子見する
    ただ現在のざっくばらんなイメージ的には、まどマギのコネクト

  • 129二次元好きの匿名さん22/05/01(日) 23:07:24

    俺の考えすぎかもしれないんだけどさ、もしかしてこの世界、ヴァモネさんの存在も消えてない?
    まだ話題に出てないだけ?

  • 130二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 10:11:51

    物語マジで楽しみにしてます
    (◎)<ビシュ

    ……思ったんだけどメビヤツはどこなんだ?
    Δでも嘘予告でもどの時空でもロナルドの隣にいる騎士は?
    見る限り言及なかったような気がするんだけど
    自分が見落としてるだけですでに登場してたりする?

  • 131二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 10:30:45

    多分消えてる。
    存在してたらカモかぶってるロナルドに対してドラルクかマスターが「ヴァモネさんリスペクト?」くらい訊いてると思う。
    マスターがカモルドを凝視しての「(なんか引っかかってるが思い出せない)」は
    本当に微かにヴァモネさんの記憶が残ってるやつじゃね。

  • 132二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 10:32:55

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  • 133二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 19:57:35

    シュルシュルシュルシュル
    ツタはゆっくりと目標を定めていた。
    通気口の隙間からそろそろと、今度こそは気づかれぬように。

    吸対服を着た黒髪の男が見える。
    周りにいるニンゲンと喋っているようだ。

    目標が他に注意を向けているのは好都合だ。
    「それ」はツタをグルグルと束ね、先端をとがらせ、即席の突撃槍を編み上げる。
    そして金網越しから、目標の男の心臓を狙って、そのまま高速で射出された。



    もちろん、それを通すヒナイチではない。
    ドラルクを手前に引き寄せ、そのまま片手で槍先を切り落とす。
    「なんだなんだ!?」「ヌヌッ!?」
    「ドラルク警戒しろ!」
    ヒナイチは万が一が無いようにさらにツタを切り刻む。
    ぼとぼと切り落とされた植物のツタは、一片が地上に挙げられた小魚のようにぴくぴくと動いていた。

    「VRCに吸血鬼の急襲だと!?馬鹿な!」
    「現に入ってきとるだろうが!!」
    ドラルクは懐から血液錠剤を出して口に放り込む。研究所そのものが気配臭を放っているので気付きづらかったが、よくよく匂いを精査するとあの不快な香水臭がわずかに鼻をかすった。

    「『アレ』の気配だ……!VRC全体にまとわりついている」
    「ドラルク、一度脱出しよう!」
    ヒナイチが次の行動の提案をすると、先程ツタが襲ってきた通気口から、今度はスパゲッティの束のようにツタが溢れ出てくる。
    ヒナイチはドラルクとヨモツザカを背後に庇いながら二刀で順次ツタを切り捨てていく。
    何度も湧き上がるツタからジリジリと距離を離しつつ、ヨモツザカが扉にたどり着き、扉を開けたところで一行は一気に廊下へと躍り出た。
    ヒナイチたちの出現に反応したのか凄まじいスピードで廊下の窓ガラスがびっしりとツタで覆われていく。まるで逃さんと言わんばかりだ。

  • 134二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 19:59:19

    「くっ……!」
    「吸血鬼の勢いに気圧されるな愚物。非常口はこちらにもある。とっとと俺様を安全に誘導せんか」
    「シンプルに見捨てたくなるこのサイコ」
    「見捨てたら貴様らは脱出口がわからず仲良く圧迫死だよかったな愚物」
    「二人ともこんな時に言い争わないでくれ!それよりも脱出口はこっちでいいんだな?」
    「この廊下の奥にある階段は裏口へと繋がっている」
    「よし!二人と一匹とも裏口に向かって」
    「待った」

    ドラルクが静止をかけた。
    「……奥から匂いがする」
    ヒナイチは改めて刀を構え直す。
    これから来るであろう敵に備えて。

    ヨモツザカがどこから持ってきたのか懐中電灯をつける。
    光の軌跡は手前から奥に向かっていき、その対象を照らし出した。

    そこにいたのは、廊下いっぱいを埋め尽くす、巨大で、ツヤっとした、血色の良い

    尻。

    「……ちん」
    ヒナイチは小さく悲鳴をあげた


    「hey、クレイジーサイコ犬仮面。なんで廊下一杯に尻?」
    「ketuと尻で上手くかけたつもりかこの愚愚愚愚愚愚愚物。俺様が知るか、あんなもん研究対象にした覚えはない」

  • 135二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 20:00:16

    「hey、ド貧弱猫背マッド犬仮面。尻が迫ってきてるんだけど」
    「事実として尻だけでこちらに迫ってきてるんだろ」

    「「……」」
    「そんなこと言ってる場合か逃げるぞ二人とも!!!チーーンッ!!!」
    「ウワーー!バイ〇2の下水道のワニ!!!」「ヌーヌィヌヌヌッヌヌヌヌヌ(カー〇ィの迫ってくる壁)!!!」
    「なんで俺様がこんな目に!!」

    三人と一匹は出口とは逆方向に一目散に駆けていく。
    「おい貴様ら、このままこの道を進んでも袋小路だぞ。なんとかしろ」
    「ファー???何言ってんだこの一人アンブレラ」
    「だが、行き止まりなのは確かだ!私がなんとか応戦しないと」

    ヒナイチが迫りくる尻に向かって刀を構えなおす。だが前面一杯に迫る迫力満点の尻にどう攻撃したものか非常に迷う。
    「どどどどど、どうしようわたしあんなに大きなの斬ったことないから……」「そりゃそうだろ」
    「何を迷ってるんだ貴様、とっとと適当な個所を切りつければいいだろ」
    「でも、下手に斬って血とか出たら……」「斬った時点で絵面がアウトすぎる」「ヌ”」「コラお下品でしょ!」

    「ではどうする?このままあの最悪な尻の圧力でやられるか?」
    「チーーーン!!!いやだああああ!!!」「どっちにしろ絵が地獄なんだが」
    「なら考えろ愚物ども。切りつけるのが嫌なら怪力でも何でも使え」
    「怪力、なら……!」
    ヒナイチが足元の地面を思い切りたたきつける。
    ロナルド程ではないが確かに人を超えた怪力は床下に大穴を開けた。

    「貴様!!怪力使えとは言ったが壊せとは言ってないぞ!!!」
    「だってもうこれしか思いつかなくて!!!」「あれを直接殴ればいいだろうか!!」「絶対嫌だ!!!」
    「ほら、二人とも言い争ってないで下行くよ!ヒナイチ君私とこのサイコバカを抱えて!」「分かった!」
    ヒナイチは大人の男二人とマジロを抱えると軽々と下の方へジャンプする。

  • 136二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 20:01:40

    着地すると同時に上の尻が壁に激突する音が聞こえた。派手に瓦礫が崩れる音も聞こえるのでしばらくは動けないだろう。
    ひとまずの危機は脱した。だが、

    (そういえばロナルド君たち、どうなってるんだ?)



    一方、ロナルドとサテツのコンビは

    「なにこれぇ」
    おっさんの顔をした実がなる謎植物の群生に囲まれていた。

    「会話してたらいきなり排気口から植物が生えてきたからなんだと思ったら……」
    「これ、ゼンラ二ウムとも違うよね」
    「コゼンラニウムの大群か巨大化したケツが襲ってこなかっただけマシなんだろうか」

    その頃のドラルク達
    「ナァーー!!!今度は小さい花の付いた尻の大群!!!」

    「でも襲ってくる様子はないから、敵じゃないんじゃ」
    「あいつら、ヨモツザカのバカがやらかさない限りは穏便なイメージあるしな」

    「とりあえずここを一回出よう。ヒナイチがいるとはいえ上でなんかあったら嫌だ」
    「そうだな」

    2人が部屋から出ようとした次の瞬間である。

  • 137二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 20:02:04

    『アァ……』

    「サテツ、なんか喋った?」
    「喋ってないけど」

    『ダァ……エかァ……』

    「サテツゥ!!」「喋ってない!!」

    「くそっ、一体誰だよ正体を現せ!!」
    ロナルドは半泣きになりながらも意を決して声の方向に振り返る。
    そしてそこには、

    「おっさんの顔をした、実?」
    群生したおっさんの実は、苦悶の表情を浮かべながらロナルド達に話しかけていた。

    『ダれぁ……すケ……テ』

    「フンバラパッハンホンビャラピャッパラーーーー!!!!!!!」


    ヌヌヌ(つづく)

  • 138二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 20:18:32

    まさかのおっさんの実
    食べたら意外と美味しいアレがなぜ……

  • 139二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 20:52:34

    取り込まれかけてたりする? ゼンラニウムやられてたのか...ワクチン存在するのかわからないのは不安だな...

  • 140二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 21:57:03

    ゼンラさんがやられてるっぽいのがしんどい…… おっさんの実の能力者もか……
    バナナっぽい味がするらしいしロナルドも食べたら味は気に入るかもしれないな
    「一人アンブレラ」と「ヌ゛」でめっちゃ笑ってしまった悔しい

  • 141二次元好きの匿名さん22/05/02(月) 22:23:35

    廊下を埋めつくす程の血色のいいケツが現れる辺りシンヨコだなぁって感じがする
    怖ぇよ

  • 142二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 08:33:41

    >>137

    群生したおっさんの実は、苦悶の表情を浮かべながらロナルド達に話しかけていた。


    絵面がホラーそのもの

    そういやワクチンもゼンラ細胞からできてんだっけか

    ないと作れないのかな

    ヨモツザカが相変わらず人間側(VRC)にいるからまだしも安全かと思ってたけど

  • 143二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 11:49:57

    絵面がホラーなんだかギャグなんだか判断に困る…

  • 144二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 17:11:00

    ゼンラやおっさんの力が暴走してるのか力だけになったから制御できなくなったのか…
    あとこのおっさんの実は美味しいんだろうか…

  • 145二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 20:42:59

    ホラーとギャグが正面衝突してる

  • 146二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 21:20:20

    「なにあれ!?なにあれ!?新種のたんころりん!?マジでなにあれ!?」
    ※たんころりん 柿の実をとらずに放置しておくと実が入道に化ける。宮城の妖怪。

    『ウヌァぁあ……ァッ』
    おっさんの実は苦悶の表情を浮かべているが、何かをロナルド達に伝えたがっているらしく必死にうめいている。

    「こわいこわいこわいこわい」
    「む、無理しないでおじさんの実……、というかこのおじさん?」
    「どうしたサテツ」
    「声、聞いたことないか?」「そういえばなんか、聞き覚えのある洋画とかに出てきそうな低めのいい声が聞こえるような」

    2人はもう一度苦悶の表情のおっさんの声に耳をそばだてる。
    『…タ、すけ……て』

    「「ゼンラニウム?」」

    「えっ?なんでおっさんの実からゼンラニウムの声が!?どうりでセガールみたいな声するわけだよ!!」
    「たすけてって言ってるけど」
    「……どこかに捕らわれてるのか?まさかヨモツザカのバカにアホな栄養剤飲まされたとか」
    「それは流石に疑いすぎじゃ」「バカ野郎あいつはアニメ入れて前科二犯だぞ」

    『た……タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ』
    「イヤァアアアアおっさんの実同士で輪唱はじめた!!!」
    「助ける!助けるからやめて!!コワイ!!!」
    すると助けるという言葉に反応したのかおっさんの実がツタを通してまるで道しるべのようにポポポポポンと実がなっていく。
    そしてそれらは一斉に『タスケテ』を連呼していた。

    「これに付いていけばゼンラのところにつくんだろうがぶっちゃけるとめちゃくちゃ行きたくねえ。行くけど」

  • 147二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 21:20:56

    「行ってくれないと多分鳴きやんでくれないと思う」「鍵つけない限り鳴り続ける自動車のクソデカい防犯アラームか?」
    「この場合はピ〇ミンとかじゃない?」「イヤじゃこんなピクピクおっさん」

    2人はおっさんの実とツタを頼りに道を進んでいく。
    ツタは、地下の階へと続いていた。



    一方のドラルク達一行も、図らずも地下へと向かっていた。キッカケはヨモツザカの一言である。
    「この植物どもの動きに法則性がある」

    「先ほどから攻撃によって消耗したツタはすぐには補充されず、必ずワンクッション置いてからツタが増量される。そしてその間、同根のツタを使った攻撃の動きが止まる。つまり連続して攻撃した場合、成長を挟まなければ次の攻撃に移れない愚物らしい。成長と攻撃が同時にできる器用さがないのだろう」
    「なるほど、ヒナイチ君が尻の大群を必死に追い払い、私が嗅覚で逃げ場所を探している間に随分と余裕があったようだなマッドドギーマスク」
    「当たり前だろうこの大天才の頭脳を雑魚ちらしごときに使わせるな」「誰か関節技使えるゴリラ連れてきてくれないかなあ」
    「まあいい、犬仮面はいつもの事だから良いとして。同時使用ができない、ねえ」

    ドラルクは夢で聞いた声の事を思いだす。もう言ってくれた人物の顔の印象なんてほとんど覚えちゃいないが、それでも忠告は頭に刻まれていた。
    『数多の能力があれど一度に使える能力は一つだけ』

    『能力を減らしなさい』

    「……」
    「ドラルク?」「ヌヌヌヌヌヌ?」
    「何を無駄に考えているんだ、愚物。それよりも、さっさと地下に移動するぞ」
    「どうして地下なんだ?脱出するんじゃなかったのか?」
    「もう一つ気が付いたことがある。このツタ植物自体には見覚えがあった」
    「さっきこんなもん研究対象にした覚えはないって言っただろうが!!」
    「黙れ!俺様が研究していたのはあくまで植物であってあんな巨大尻などではない!!そもそも発芽すらしていなかったからな」
    「というと、種?」

  • 148二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 21:22:16

    「仮性吸血鬼を治療する薬に使われる植物の種子だ。漢方のように粉末状にして使用されていたが、出所不明。薬効の由来もよくわからないというオカルト一歩手前のふざけた代物でな。種子の量産自体は通常の植物と同様にできるが、研究を重ねるとまだ何か能力を秘めた特殊な細胞をしていることが判明した」

    「ここ最近の俺様の研究はその特殊な細胞の活性化だ。しかし何をしてもうんともすんとも言わん。だが今この研究所で覆っているツタを見るとなんだ。あの種子が通常の植物としての成長をした時の物とそっくりだ」
    「つまり今暴れまわっているあのツタの出所は」「可能性の段階だ愚物」
    「でも根本原因の一つの可能性があるなら急ぐべきだ!早く行こう!」

    ヒナイチが移動を急かす。
    通ってきた道がみしみしと音を立ててツタの海に沈んでいく。
    徐々に逃げ場が無くなっていく。



    ヒナイチは移動しながら先ほどの行動を悔いていた。
    あの廊下で出くわした巨大な尻との戦いで取ってしまった行動にである。
    (逃げ腰じゃダメだ、私がちゃんと対処しなきゃいけない場面だった)

    あの場は下に逃げられたからよかったものの、本来であればヒナイチは何を使ってでもあの尻を撃退するべきであったのだ。
    (こんなことじゃまたあの時の繰り返しになってしまう……!)

    しかし、ヒナイチの決意もむなしく、あの尻は再びヒナイチたちの前に現れる。
    「またあれが!」
    「愚物、言っておくがこの周辺は吸血鬼収容施設が固まっている、下手に壊すと事態が悪化するぞ」
    「……!分かった」
    ヒナイチは覚悟を決めて、刀を構えなおす。
    すると、

    『力が……ほしい?』

    「へっ!?」「なにこの謎エコー」「ヌー?」
    「というかドラルク達にも聞こえてるのか!?こういうのって普通一人にしか聞こえないタイプの声じゃないのか!?」

  • 149二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 21:22:55

    『……他がミュート、できない』
    「初めてのボイチャで失敗した人かよ」

    『……力が、ほしい?おねえさん』
    「ええ……」
    「ヒナイチ君、こういうのは十中八九詐欺だから止めときなさい」

    『……』

    『もうめんどくさいプリ、あげるプリね』
    「何もかも対応を投げやがったぞこの詐欺師!!」
    「ワーーーーー!!」ラー←ヒナイチの体が強制的に光る音

    「こ、この姿は……」

    『魔法美少女ヒナイチレッドプリ!!!』
    ヒナイチは可憐な魔法美少女に強請変身させられていた。

    ヌヌヌ(つづく)

  • 150二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 21:25:34

    いつも読んでいただきありがとうございます。
    明日は諸事情により多分投稿できないので、保守お願いします。
    木曜は通常通り投稿します。

  • 151二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 21:33:00

    スコスコ妖精だと……!?

  • 152二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 21:53:19

    草 待ってます 被害者増加とかはしないでほしい

    今更ですけど、仮に元凶がごぼっだったとして、アレにエロスを感じる感性が備わっているとは思えないんですけどもしかしてワンチャン吸収された吸血鬼の自我残ってます?能力そのものが影響与えてたでも納得できるっちゃできますけど。

  • 153二次元好きの匿名さん22/05/03(火) 22:24:25

    >>152

    一応言っとくと要望とかではないです ただの感想 念のため

  • 154二次元好きの匿名さん22/05/04(水) 09:34:02

    ヌシュヌシュ

  • 155二次元好きの匿名さん22/05/04(水) 15:45:23

    これから先おっさんの実食べるターンあるかな?と思ったけどゼンラか…

  • 156122/05/04(水) 21:22:54

    今日は諸事情により投稿は無しですと言いましたが、

    あれは嘘だ。
    待ち時間に書けました。投稿します。

  • 157二次元好きの匿名さん22/05/04(水) 21:23:41

    「ヒナイチ君が日朝の変身ヒロインに!?」「ヌヌヌヌア」
    「この衣装、お前吸血鬼魔法美少女スコスコ妖精だな!?どこにいるんだ!?」
    『吸血鬼のおねえさんボクを知っているプリか!?ボクはここプリ!』

    ヒナイチたちが声のする方向に目を向けると、吸血鬼収容施設にしっかりと収まっているスコスコ妖精がいた。
    「こっちだとVRCに捕まってたのか」「ちっ、このどさくさで施設の能力制御装置が壊れているな?」
    『そうプリ!能力が使えるから、おねえさんを魔法美少女にできたプリ。さー五人の仲間を……!』
    スコスコが言い終わる前にヨモツザカの体が光りだす。ラー←効果音

    『魔法美少女ヨモツザカシルバー!!』
    「今度はサイコ犬仮面が変身した!!!」
    『ウヴォエァアアアア』
    「なんかこの流れ前にも見たな……」

    ヒナイチが反応に困っているとヒナイチたちの通ってきた道をドタドタと駆け降りる音が聞こえた。
    「おい、こっちから悲鳴が聞こえたけど大丈夫か!?」
    「ドラルクさんたち無事ですか!……っあ」

    ロナルドとサテツが変身してしまったヒナイチとヨモツザカを直視し、周囲に微妙な空気が流れていく。

    「えーと……」
    「違うんだ」
    「……似合ってる、よ?」「本当に違うんだ!一生懸命フォローの言葉考えなくていいから!!」
    「ツインテ犬仮面はともかくとしてヒナイチ君は似合ってるよ」カメラパシャパシャー
    「ドラルクその写真後で全消去しないと刀の鞘でどつくからな!?」
    「ヴェーーー」
    「ヨモツザカさん、大丈夫ですか」
    「(胸を隠して固まっている)」

  • 158二次元好きの匿名さん22/05/04(水) 21:24:48

    「というかこんなことやってる場合じゃなかった!敵は!?」
    「うわっ、巨大コゼンラニウム」
    ヒナイチ達が尻に向かって構えなおそうとすると、意外な事に尻の動きが止まっていた。

    「……動かない?」
    「成長をしている様子はないが攻撃もしてこない。どうなっとるんだ」
    『その植物から魔法美少女の気配がするプリ!きっと同じ魔法美少女の気配がしたから仲間だと認識して止まったプリね!闇落ちした敵美少女が仲間の絆で行動を躊躇う……、良いプリねえ〜!王道プリ』
    「おい、オチが読めたぞドラ公」
    「とりあえずこの謎妖精も連れてくか。レーダーがわりになるし」
    『次こそ優しくてかわいい魔法美少女だと良いプリな〜』


    ロナルド達は時に魔法美少女の気配を辿り、おっさんの実の輪唱を頼りに歩き、目的の研究室への扉を開く。
    扉を開くと研究室は一面の美しいゼンラニウムの花に囲まれ、芳しい花の香りにあふれていた。
    そして、研究室の中央には巨大な花の密集地帯がこれでもかと主張している。

    「なんだこれは」
    黙っていたヨモツザカが口を開いた。

    「俺様の研究机が完全に花で埋没している。培養液にひたしていた細胞が急成長したのか?クソ、なんて邪魔な」
    「硬直状態から回復したのかシルバー犬仮面」
    「研究に実害ありとなれば見てはおれん。とっととこの花を排除しろ」
    「この花の中から特に魔法美少女の気配がするプリ〜!早く助けるプリ!」
    スコスコ妖精が花の密集地帯周辺をグルグルと回る。
    「言い方はムカつくがやるしかないか。サテツ、ヒナイチ、手伝ってくれ」
    「おう」「ああ」

    三人は大量の花をかき分けちぎり、徐々に花の量を減らしていく。
    「こっちプリこっちプリ!魔法美少女の気配が強いプリ!まるで眠れる森の美女プリね〜!」
    スコスコ妖精はメルヘンな雰囲気に自分の妄想を膨らませてご機嫌だった。

  • 159二次元好きの匿名さん22/05/04(水) 21:25:52

    「なあ、この花をかき分けて出てくるの、多分アレだよな」
    ロナルドはかつての時間にいた気のいい全裸の妖精?を頭に思い浮かべる。
    「……そうなるよな」
    「なんか、騙してるみたいでちょっと罪悪感がある……」
    「先に言っちゃったほうが良いんじゃないかな、これ」
    「罪悪感もなにもないだろう!あの吸血鬼が勝手に魔法美少女にして、勝手にがっかりしてるだけじゃないか。こっちはとんだ迷惑だぞ」
    二人の会話にヒナイチは憤る。ヒナイチの記憶が確かであれば、5人の魔法美少女を集めて擬似的な敵を倒さなければこの姿は解除されないのだ。
    やられる側はたまったものではない。
    「うう、百里ある」「すいません」
    「どうしたプリか?早く魔法美少女を助けるプリ〜!」
    スコスコはそんな三人の会話など知る由もなく、まだ見ぬ魔法美少女に胸をときめかせていた。



    (……何か引っかかる)
    ドラルクは三人の作業を眺めながら両手を組んで思案にふける。
    今の段階では作業はスムーズだ。
    ひとまずの危機は去って小康状態、目の前にある原因を解体すればこの騒動は収まりそうだ。そう見えるのに。

    (さっきの巨大な尻の沈静化、同じ魔法美少女だから止まった?本当にそれか?)
    だがドラルクに他に説明できそうな答えはない。

    「よし、これが最後の花だ」
    そうしている内にロナルドが花の束をむしり取る。

  • 160二次元好きの匿名さん22/05/04(水) 21:26:30

    最後にあったのは、男性一人軽く覆えそうな大きな花弁でできた一輪花だった。
    「これは親指姫プリか?早く開けるプリ〜!」
    「わかったよ(棒)」

    ロナルドはこれから起こるであろうひと騒動に思いをはせ、花弁を力いっぱいむしり取ったのだった。


    違う。


    「……なんだこれ」
    花弁の中には、予想していた全裸の気のいい男性は眠っていなかった。

    あるものは、ただひとつ。

    血のような赤色をした、きらきらと輝く掌大の宝石。

    「ど、ドラ公、それかヨモツザカ、これは一体」
    ロナルドはそれ以上言葉を続けられなかった。

    部屋いっぱいに咲き誇るゼンラニウムの花は一斉に枯れ果て、それぞれが小さな果実を結ぶ。
    果実はふっくらと実を太らせ、表皮に彫りの深い男の顔を象る。そして、それらの実は一斉に叫び喚き出した。

    「あ゛あ゛あ゛あああああああぁ゛ぁぁぁあ゛ッッ!!!!」

    まるでマンドラゴラを引き抜いたかのような断末魔、苦痛に歪む声。
    男の顔は、ロナルドにとっては見知らぬ男性の顔などではない。全てゼンラニウムの顔であった。

  • 161二次元好きの匿名さん22/05/04(水) 21:27:03

    「何が起こったんだプリ!?怖いプリ!!」
    恐怖におびえるスコスコ妖精がパニックで部屋の外へ逃げようとする。
    「!? ダメだスコスコ!私たちから離れたら」

    もう遅い。

    スコスコの体を、最初にドラルクを狙ったあの突撃槍が貫く。
    声すら上げることなく、スコスコの体はぐったりと力を無くし、植物性の槍はスコスコの何かを吸いつくしていく。

    ズゾゾ、ズゾゾ、ズゾゾ、ゲフッ

    スコスコだったものがさらさらと塵上に床にまぶされ、最後にきらきらとしたものが一つ零れ落ちた

    花弁の中にあったものと同じ、血のように赤い宝石。

    「吸血鬼の、心臓……!」
    ドラルクが、血反吐を吐くように呟いた。


    畏れ慄け、ここより現れるは異形の怪物。
    小敵とみて侮り怪異と遊べば、喜劇は悲劇に様変わり。
    努々(ゆめゆめ)油断なされるな。


    続く

  • 162二次元好きの匿名さん22/05/04(水) 21:29:36

    うああああああ
    ヤバい

    これ心臓奪ったら終わりなのか…それとも砕いたらワンチャンでの復活とか関係なく破壊しないと無理なのか…?わかんないけど続き楽しみ楽しみにしてます。

  • 163二次元好きの匿名さん22/05/04(水) 21:31:35

    吸血鬼の心臓って
    嘘予告の真祖の心臓と同じタイプ……??

    というかギャグから一気にシリアスホラーに叩き落されたこの感じ……

  • 164二次元好きの匿名さん22/05/04(水) 21:58:20

    ジェットコースターに乗ったかのような急展開…
    ゼンラさんも吸収されてるの辛すぎる

  • 165二次元好きの匿名さん22/05/05(木) 00:33:09

    保守

  • 166二次元好きの匿名さん22/05/05(木) 08:40:19

    スコスコーーーーーー!!!!

  • 167二次元好きの匿名さん22/05/05(木) 14:18:59

    清涼剤だったスコスコが…

  • 168二次元好きの匿名さん22/05/05(木) 21:35:44

    男の悲鳴と吸血鬼の消失、事態は一気に転落し、場に残されるは地獄絵図。
    砂の上に落ちた小さな吸血鬼の心臓。それと同時にヒナイチとヨモツザカの姿が元に戻される。
    能力者の喪失により変身が解除されたのは火をみるよりも明らかだった。
    「スコスコ!!」

    小さくきらめくスコスコだった宝石を取り込まんと、植物は即座に急成長し大口を開ける。
    口は以前ドラルクを襲ったときのような焦点の合わないボケたモザイク。
    取り込まれたが最後、スナック菓子のように噛み砕かれるだろう。
    阻止しなければ。だが駄目だ、ヒナイチもロナルドもサテツも動いたとしても「あれ」には一手間に合わない。
    絶望感が胸を支配する。このままでは、またあの時と同じように__

    救世主は意外な人物?であった。

    「ヌヌーッ!!!!!」
    ピンポール玉のように勢いよく弾き飛ばされたその丸は、モザイク口に直撃する。
    ドカッという確かに手応えのある音が聞こえた。口は直撃の衝撃で大きく後退したのがわかった。
    「ジョン!!!」
    ドラルクの声を受けるように、マジロの快進撃は止まらない。
    スピードはそのままに急カーブ、スコスコの宝石がある場所を走り抜け、ドラルクの胸めがけて飛び込んだ。
    「おっ、と!?」「ヌン!!」
    ジョンは主人に赤くきらめく何かを力強く手渡す。それは間違いなく、あのスコスコの宝石であった。

    「心臓まで回収したのか……?よくやったジョン!」「ヌンヌッヌ!!」
    「頑張った、本当に頑張ったよジョン。……でも、くれぐれも無茶はしないでおくれ」「ヌー?」
    一連の顛末に一同は少しだけ胸を撫で下ろす。だがまた表情を引き締め、「あれ」と対峙をする。

    ゴワゴワざわざわ、先ほどまでのそれとは比べ物にならない俊敏で滑らかな動きと、どんどんと巨大化していく植物の総体。

    来る。
    ヒナイチはとっさに両手の刀をクロスしドラルクとジョンを庇い、サテツはヨモツザカに襲い掛かる攻撃を全て爪で薙ぎ払う。ロナルドは一輪花に残された宝石を狙ってきたツタを全て怪力で引きちぎって投げ捨てた。

  • 169二次元好きの匿名さん22/05/05(木) 21:36:39

    状況が一度動き出すと、植物の攻撃はより苛烈さを増していく。
    三人は切ったり千切ったりすることでツタを減らすが、猛攻はやむことがなく絶えず弾幕のように繰り出されまるでキリがない。
    (対処はできるが攻撃に転じられねえ)
    (狭くて動きづらい、でもここでひいたらヨモツザカさんに当たる)
    (相手の有利状況を押し付けられているな……!)
    三者三様に今の不利状況に対応する中、ヒナイチの背後で守られているドラルクは別の事を考えていた。

    ドラルクは手のひらに置かれた小さな宝石を見る。
    (……わずかに中が脈動している。スコスコという吸血鬼は、まだ死んでいない?)

    ということは、あの巨大な一輪花にあった宝石も同様なのでは?

    「ロナルド君!花の中にあった宝石は取り出せないのかね!?」
    「宝石!?ちょっとまて!!」

    ロナルドは攻撃に対処しながら宝石の方を掠め見る。
    宝石そのものが花と一体化しているというべきか、がくの部分に宝石が深く根付いているように見える。

    「多分やろうと思えば取り除けるけど、根が張ってるから力技はマズいかもしれねえ!!」
    「愚物、研究対象にするから傷つけるな!!」「おめーはこの状況で何言ってんだ後でシメる!!」

    「……んん、となると」
    ドラルクは改めて考える、本来は乱暴な選択肢で無理やり活路を開くべき場面だ。
    だが、あの心臓を傷つけてはいけないように思えてならない。根拠のない勘だが、この場合の勘は無下にしてはいけない気がした。

    しかし迷っている時間はない。ヒナイチの攻撃を受ける姿勢が大分崩れている。
    うまく食らいついてくれているが、どこかで引くなりして立て直しをしなければ……。

  • 170二次元好きの匿名さん22/05/05(木) 21:38:26

    【うまい!】
    【リンゴとば__の中間のあjiだ】

    ドラルクは、何故か堀の深い男の顔をした実が目に付いた。
    近くにあった実を無造作にむしり、果実をほんの少し口に入れてみる。
    「ヌヌヌヌヌヌ!?」
    ジョンがギョッとした顔をした。

    ……リンゴとバナナの中間の味がする。

    【私の_力は】

    【あらゆる植物を操り、果実を実らせることができます】

    (!?)

    (まて、まてよ。ヨモツザカは言った筈だ。成長と攻撃が同時にできないと)
    (そしてあの謎フレーバーヒントでも言っていたはずだ。まだ能力の使用に慣れていない)

    (植物を操る能力は二つあって、力が拮抗している?)
    なら、あの巨大な尻が止まったのは、どちらかが植物の制御権を奪ったから。
    そしていまこの猛攻が始まったのは、『あれ』が二つの能力を同時に制御できるようになってきているから

    ドラルクは血液錠剤を噛んだ。
    途端に嗅覚が強化され、酸味のある酷い腐敗臭のような匂いでむせかえる。
    (うがっ、一週間放置した生ごみ。我慢だ、我慢)
    ドラルクは軽くせき込みながら気配を探る、探る、探る。
    吸血鬼の心臓を、探る。

    わずかに、芳醇な果実の気配がかすった。

  • 171二次元好きの匿名さん22/05/05(木) 21:39:29

    ドラルクは気配のする方向を見る。たわわに連なっている男の顔の実の中に一つだけ、堀の深い男の顔ではなく、元々のおじさんの顔がした実がある。

    (あれだ!!サイゼの間違い探しかよ!?だがこれでロナルド君たちを呼んで……)
    しかしそこでドラルクは思いとどまった。先ほどまでドラルクが気配に気が付かなかったと言う事は、気配自体は非常にかすかなものなのだ。
    『あれ』が予想以上に小賢しい事はドラルクには分かっている。
    もし、ここで大声を出して三つ目の心臓の存在に気が付いた場合、この実はあの実の群体の中に隠されてしまうのではないか?

    (……)

    「ジョン、この宝石を少し持っていてくれないかい?」「ヌ?」
    ジョンは素直にスコスコの心臓を受け取る。ドラルクは優しくジョンを撫でる。
    「ありがとうジョン。いいかい、何かあったらヒナイチ君たちの指示にちゃんと従うんだよ」「ヌヌ?」

    そして、ドラルクは駆け出した。



    「ドラルク!?」「ヌヌヌヌヌヌ!?」
    防戦に集中していたヒナイチは慌てる。庇っていたはずのドラルクが、突然検討もつかない方向へと走り出したのだ。

    ヒナイチの困惑とジョンの悲鳴に後ろ髪をひかれながら、ドラルクは走る。貧弱ではあるが足が遅いわけではない。
    瞬間的な加速なら、それなりのスピードは出せる。
    ほとんど滑り込むような勢いで実の群体に突っ込んだ。
    あの実はどこだ、どこだ。

    「見つけた!よっしゃーーーっ!!」
    見知らぬ男の顔を容赦なく握り、引きちぎる。さっき食べた果実を採った時とは明らかに違う感触がした。

  • 172二次元好きの匿名さん22/05/05(木) 21:40:10

    採られた実は即座にドラルクの手中で腐り落ち、そして硬い感触が残った。

    手のひらを開けると、形は違えどスコスコと同じ、赤い宝石。
    「ロナルド君、ヒナイチ君!これで……」
    読みが当たった事にドラルクが破顔し、顔を前に挙げる。

    すぐそこに植物で作られた突撃槍が、目の前にまで迫ってきていた。


    ぐしゃ、という嫌な音が聞こえた。
    血液が顔や服にかかるのを感じる。白基調の吸対服は赤黒く染まってしまっているだろう。

    だが、ドラルクに痛みは感じなかった。
    槍を受けたのは、ドラルクではなく、目の前の人物だったから。

    「ばっかやろう」
    槍は、ドラルクを庇うような形で、彼の腕に深々と突き刺さっている。

    「吸対の隊長だっていうから少しは落ち着いたのかと思ったら、根本は全っ然変わってねえじゃねえか」

    「お前はもっと……、もっと後先を、考えろ……!」
    なぜだか、泣きそうな声に聞こえたのは気のせいではない。

    「ごめん」
    ドラルクは、ようやくそれだけ言葉が出た。

    「ごめんよ、ロナルド君」


    ヌヌヌ(つづく)

  • 173二次元好きの匿名さん22/05/05(木) 21:42:31

    ぁぁぁぁぁとりあえず!!!とりあえずスコスコ死んでなさそうでよかった!!?

  • 174二次元好きの匿名さん22/05/05(木) 21:43:35

    スコスコなんとか助かったっぽいと思ったらロナルドくーーーーん!!!

  • 175二次元好きの匿名さん22/05/05(木) 22:57:00

    ヤバい 仮にロナルドが取り込まれたとするとアイツ超強いから対処しにくくなる
    死んでないと思いたい
    続き楽しみにしてます

  • 176二次元好きの匿名さん22/05/06(金) 07:11:24

    どんどんシリアスに突っ走っていってる

  • 177二次元好きの匿名さん22/05/06(金) 11:14:20

    シリアスしてる…

  • 178二次元好きの匿名さん22/05/06(金) 20:09:37

    ドラルクが実食べてて草、それはそれとしてロナルドくーーーーーーーーーん!!!!

  • 179二次元好きの匿名さん22/05/06(金) 21:12:39

    腕を負傷したロナルドに向かって無情な追撃が走る。
    数本の槍が足や腕を次々と抉っていく、まるで厄介者に隙が出来て喜んでいるようだ。
    だがロナルドは一歩もひかず、ドラルクの側に一本たりとも攻撃を通させない。

    受けている攻撃はどれも激痛の筈だ。
    しかしロナルドは押し黙ったまま壁に徹していて、見ているドラルクの方が悲鳴を上げそうだった。

    ロナルドの姿勢が崩れ、膝をつきそうになる。
    もちろん、攻撃の雨が止むことなどない。

    「グァアアアアアア!!!!」
    獣のような猛々しい唸り声とともにサテツが壁と天井を殴り壊した。
    ほとんど解体工事のような威力でコンクリートや砂塵が舞い、植物に覆いかぶさっていく。
    ロナルドに向かっていた攻撃のいくつかがこれで潰れる。自分が動きやすい広いスペースを確保したサテツは、爪や左手の怪力でそれらを丁寧に根こそぎ引き抜き千切っていった。
    特に刀で切り落としづらい太いツタは恐ろしい馬鹿力にモノを言わせ、どんどん数を減らしていく。
    少しの追撃も許さぬように、サテツは羅刹のごとく暴れまわった。

    それでも落とし切れなかった残りの数本は、めげずにロナルドに向かっていく。しかし、狙う先には今度はヒナイチがいた。
    ヒナイチは防御の型をもう取らない。
    顔面に刺さるか刺さらないかのすんでの距離、全ての攻撃を最小限の顔のわずかな動きで避け、流れるような太刀筋で槍を縦に割り裂いていく。
    引きさ斬った刀はそのままくるりと持ち替え、さらにすっぱりと横に斬撃を加えた。そうして、完全に追撃の雨を殺しきる。

    2人とも何か変わったわけではない。ただ、研究所を壊してはいけないなどの制約を全て無視し、なりふりを構わなくなっただけである。

    「動けるかロナルド」
    ヒナイチがロナルドに話しかけた。
    「……ドラ公とジョンなら抱えられる」
    「その体でやるつもりか!?無理があるだろバカ造!!」「ヌヌヌヌ!!」
    「そうか、少し我慢してくれ。このまま飛ぶぞ」「ヒナイチ君!?」

  • 180二次元好きの匿名さん22/05/06(金) 21:13:24

    ヒナイチは警戒を解かずにサテツに目線を送る。
    「サテツさん!」
    サテツはヨモツザカを俵抱きにすると天井に完全に穴をあける。
    「サテツくんせめてあの花はもっていこう!!」「すいませんヨモツザカさん、後で一緒に探しますから!」
    サテツにしては珍しくヨモツザカの提案を綺麗に却下し、上へ上へと突破していった。
    ロナルドは宣言通りドラルクとジョンを抱えサテツの後を追い、殿をヒナイチが担当する形で追従する。

    「わーー!!マジでやりおった!!」「ヌーーーー!!!!」
    サテツがどんどん進んでいったので、ほとんどVRCは吹き抜けのような外へ直通する大穴が開いていた。
    気が付けば、三人と一匹は新横浜の夜空を舞っている。

    「ウワーーーーー!!!」
    ドラルクが叫びながら飛び出してきた大穴を見ると、まだしつこくツタがはい出ているのが見えた。
    心臓を奪われたのがよほど効いたらしく、先ほどの力強い成長の勢いは明らかに減り、ツタの総量も決して多くはない。
    だが最後の悪あがきとでもいうのか、一人でもなんとか道連れにせんと逃げる三人と一匹に襲い掛かる。

    それに相対するのは、殿たるヒナイチである。

    ヒナイチは二人と一匹から離れると、水泳の飛び込みのようにツタに向かって落下していく。
    落下の途中こちらに迫ってきた一本のツタをつかみ取り、まるで鉄棒を滑るように滑空した。

    摩擦で勢いを殺し、ツタをたわませると、二刀流のうちの刀一本を乱暴にツタに突き刺し、即席の足場を作ってさらに飛び上がる。
    最後の本命と思わしい太いツタはいつの間にかボケたモザイクがにじみ出ていて、『あれ』にいよいよ余裕がない事が明白であった。
    ツタは二股に割れ、まるで大蛇の大口のようだ。

    そしてヒナイチは『それ』を捕らえた。
    「はぁぁぁああああああっ!!!!」

    ヒナイチを丸飲みにしようとする『あれ』の口に、槍投げのようにありったけの力を込めて鋭く刀を投擲する。

  • 181二次元好きの匿名さん22/05/06(金) 21:14:13

    刀は大蛇の喉元に深く突き刺さり、声は聞こえぬがまるで苦しむように大きく身をよじって暴れた。
    だが、それもじきに終わる。

    徐々に動きは小さくなり、最後はわずかな痙攣とともに塵となって溶けていった。
    塵は風に吹かれて消え去り、残ったのは墓標のように突き刺さったヒナイチの刀。
    地面に着地したヒナイチは、無造作に刀を引き抜き、払い、そして鞘に納めた。

    「はあ……」
    そこでようやく、ヒナイチは一息ついた。

    「「ヒナイチ(君)!」」「ヌヌヌヌヌン!」
    「みんな」

    ロナルドとドラルク、そしてジョンが駆け寄ってきた。

    「ヒナイチ、大丈夫だったか?ケガしてないよな?」
    「ああ、ケガはない。ロナルドの方こそ、傷は大丈夫なのか?」
    「もう塞がった!」
    ロナルドが元気よく自分の腕を出してきた。
    服は破れているが、傷一つ残っていなかった。

    「……なんなんだその驚異的な回復力。私の心配返して」
    ドラルクが軽く額に手を当てながら心底呆れたような声を出す。
    「うるせ、こういう体質なんだよ。ドラ公こそなんだよあの考えなしの特攻!普通に考えれば追撃あるの分かるだろ!」
    「だからといってあそこで下手に相談したらバレるだろうが!!いやでも今回はちょっと、大分、うん、まあ私にも非があった。悪かった。ごめん」
    「顔が謝ってる顔じゃねえんだよ!」

    2人はもうすっかりいつもの調子で掛け合いをしている。
    それはいい、それはいいのだが。

  • 182二次元好きの匿名さん22/05/06(金) 21:15:30

    「二人とも」「ヌヌヌヌヌ」
    ヒナイチは、自分が思っていた以上に冷ややかな声が出たことに驚いた。

    「私とジョンに言う事は?」

    「「……」」

    「ロナルド」「ヌヌヌヌヌン」
    「今回は仕方がなかったとはいえ、回復力の高さは自分の体を盾にしていい事とイコールじゃないからな?」「ヌン」
    「……はい」

    「ドラルク」「ヌヌヌヌヌヌ」
    「ジョンに無茶するなと言っておきながらなんだあの行動は。というか防衛中に勝手に動かれてどれだけ肝が冷えたと思っているんだ……!」
    「……その、」
    「ちんっ!!!(威嚇)」「ヌンッ!!!!」
    「はいっ!」

    「二人とも、言う事は……?」「ヌヌヌヌ……?」

    「「……ごめんなさい」」

    瓦礫と植物の山の中を、男二人が憤怒の顔をしたマジロと少女に謝り倒している。
    ようやく、いつもの新横浜の夜が戻りはじめていた。

    ヌヌヌ!(つづく)

  • 183二次元好きの匿名さん22/05/06(金) 21:19:13

    ヒナイチちゃんマジかっけええええ!!
    毎日のこの時間帯に更新される物語、日々の楽しみになってる

  • 184二次元好きの匿名さん22/05/06(金) 22:17:01

    無事で良かったけどゼンラニウム奪取ならずか…イシカナさんドラウスさんとかの古の血系の超ヤバい枠がまだあるし今後の展開楽しみにしてます。日々の楽しみです。

  • 185二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 06:51:31

    続き楽しみにしてます
    ヌシュ

  • 186二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 11:13:34

    一難去ってまた一難…になる前にインターバルあったらいいな、結構被害出てるし。続き楽しみにしてます

  • 187二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 21:14:39

    ロナルドはすっかり瓦礫の山となっているVRCを見る。
    騒動の最中気がかりだったヨモツザカ以外の職員やVRCのおばちゃんたちは、騒動の初期段階で大方避難できていたらしい。
    普段からヨモツザカがらみのトラブルが多いゆえの幸いであった。
    (前の時から武々夫ハザードとかトキメキ危険地帯とかよくやらかしてたしな……)
    たくましいと言えばいいのかそんなもん頻繁に起こすんじゃねえと突っ込むべきなのか迷うロナルドであった。

    (思ってたよりも大騒動になっちまったけど)

    (完全に無くなったよりかは、マシか)

    ロナルドが物思いにふけっていると、瓦礫のかたずけを手伝っていたらしいサテツが駆け寄ってくる。
    「サテツ?」
    「ゼンラニウムの花、探してみたんだけど、ちょっと地下に潜るのは難しいから時間がかかりそうだ」
    「そっか。建物にほぼ縦穴ぶち抜いたようなもんだし危ないもんな」
    「うん。……あのさ、ロナルド」「なんだ」
    ロナルドはサテツに肩をがしッと掴まれる。

    「本当に無茶するのやめてくれよ!?腕に刺さったの見た時血の気引いたからな!?」「ウワーーこっちもお怒りでしたかごめんなさいごめんなさい!!」
    「こっちも?」
    「さっきヒナイチとジョンにこってり絞られたばっかだよ……」
    「それだけ皆心配してるんだよ。ロナルドは昔から無茶するし、もう少し自分の事大切にしてくれ」
    「わかった」「もう……」
    だが、また繰り返しそうだなとサテツは暗に思う。
    ロナルドは昔から目の前の誰かの危機に対して考える前に体が動くタイプなのだ。
    ゆえにロナルドの身を案じるのであれば、周りの人間がそういう状況を作らないように気を配る、それが一番の予防策だった。

    「もっと強くならなきゃな」「……うん」
    サテツのぽろっとこぼしたつぶやきに、何故かロナルドが重重しくうなずいた。

  • 188二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 21:15:27

    一方、ヒナイチとジョンはド貧弱とド貧弱の醜い言い争いを観戦していた。
    「だからとっととその吸血鬼から分泌された結晶体を俺様によこせ愚物愚物愚物愚物愚物愚物愚物っ!!!」
    「ファ(レ♯)ーーーー!!!これはうち(吸対)の押収物ですゥーー!!!うちで一度回収して詳しく調べるんで渡せませェーーーん!!!!」
    「だからその調査は俺様が直々にやると言ってるだろうがっ!!!!二つあるんだろ一つはよこせ!!!」
    「研究素体暴走常連者に渡せるかボケェっ!!!」
    その様相はまるでやせ細ったカラスのゴミ袋の争奪戦、野良猫の縄張り争いなど。
    まるで枯れた枝のような腕から繰り出されるいまいち迫力の無いとっくみあい殴り合いはもちゃもちゃと続いている。
    だが二人とも体力がないのでそのうち適当な所で終わるだろう。

    (……私も片付けを手伝いに行った方が良いだろうか)
    ヒナイチが不毛な争いの観戦を切り上げようか迷っていると、瓦礫に残されたツタ植物の一本がピクリと動いたのが見えた。
    「えっ!?」
    ヒナイチはぽこぽこという音を立ててど付き合いをしている貧弱どものうち、片方の首根っこを掴んで無理やり争いを終結させる。
    「なぜ止めるんだねヒナイチ君!」「ドラルク、また植物が動き出してる!」「何!?」

    ドラルクが即座に姿勢を正して気配を探る。しかし
    「うん……?」

    先ほどとは気配の種類が違う。
    複数の臭いが混じったような不快感が消えて、穏やかな花のような香りに変化していた。

    『同胞たちよ』

    「!? なんだこのステルスアクションゲームの主人公みたいないい声!」「ヌヌヌヌ!?」

    『我を救ってくれて感謝する……』
    声とともに、植物たちは再び大きくうねって成長する。
    まるで一つの大樹のように。
    だが、先ほどの荒々しさは微塵もない、穏やかで力強い生命力に満ちていた。

  • 189二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 21:16:32

    「どうしたんだドラ公!」「ドラルクさん!」
    「ロナルド君たち!見たまえ、植物が急に成長を……!」

    大樹は地下室で見たような大きな一輪花のつぼみを再び実らせ、そしてとうとう開花した。

    「あれは……!」

    花開く先にいたのは、見目のいい引き締まった筋肉、堀の深い顔立ち、そして目を引くのは見事に咲き誇る股間の花。
    だが今の彼は全裸ではない。

    『魔法美少女ゼンラァーーーピンクっ!!!クライマックスフォーム!!!』

    総身を大事なところ以外は豪奢でフリル増量の衣装で彩られ、背中には謎の光の羽っぽいものが生えている。
    背景の開花した一輪花と合わせることで一つの巨大な衣装のようであった。
    その姿はさながら、

    「……幸子じゃん」「紅組優勝だな」「おじさんの顔が付いた実が電飾っぽく光ってる……。どうなってるんだこれ」「ヌーヌ(赤いボールを投げる)」
    といった感じで何かを激しく連想される一品であった。

    突然出現したクライマックスフォームに詳しい解説のVRCのおばちゃん「違うね!あれはクライマックスフォーム!魔法美少女の新たな力の目覚め!!」
    「おばちゃん誰!?」「また変なの生えてきた」
    突然出現(以下略)「クライマックスフォームは特別中の特別で年に二度しか許されない特別中の特別フォーム!主に秋映画と最終回一歩手前のラスボス撃退シーンでなければ着用を許されないレアなスタイルなのさ!!この目で拝めるなんて感激だねえ!ちなみに私はこの解説を終えたら消えるよ!!」スー←消える効果音
    「ええ……」「世界一いらない無駄知識の解説ありがとう」「ヌイヌーイ(手を振る)」

    『な、なんなんだこの格好!?これは以前スコスコ妖精氏の能力で変身させられた時の……!?』
    「ロナルド、なんかゼンラニウムも困惑してるんだけど」
    「復活したら謎衣装豪華版着せられてるんだからビビるよな、そりゃ」

    「「「恥ずかしがらないでゼンラーピンクちゃん!!」」」
    突然女性たちの声がゼンラーピンクに届く、そこにいたのはVRCのパートのおばちゃん達。

  • 190二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 21:17:44

    「ゼンラーピンクちゃん推せるわ!」「恥ずかしがらないで~!」「指ハートちょうだい指ハート!!」
    いつの間にか現れたおばちゃんたちはゼンラーピンクに向かってサイリウムを振る。
    瓦礫の山に、一つの特別ステージが誕生していた。

    「あのサイリウムどっから出したんだよ」「多分、避難袋に入ってる電池使わないで折るタイプのケミカルライト」
    「マジかよそんなもんこんなところで使うな」「いいんじゃないか、どうせ全部廃棄だろうし……」
    ヒナイチが投げやりに答えた。ロナルド達一行は状況について全て突っ込む事に諦めている。

    『む、VRCのおばちゃん達……!』
    ゼンラニウムは気恥ずかしさとともに、その声援に感激していた。
    たとえ自分の事を覚えていなくとも、こんなに暖かい声援を送ってくれている。
    ならば、期待には応えねばならない。

    『むん!!』
    ゼンラニウムは気合を入れた。

    『股間の花は癒やしの力、魔法美少女、ゼンラーピンク!!!クライマックスフォーーームッ!!!』
    女性たちの歓声が一気に沸いた。
    こうして、新横浜に心優しき花と緑を愛する怪人が完全復活を果たしたのである。



    『時に砂の同胞よ』
    ファンサービスを一通り終えたゼンラニウムがドラルクに話しかける。

    「……えっ、私?砂?」
    『うむ?……なるほど、失礼した。吸対服の同胞よ。スコスコ妖精氏は何処へ?』

    「あのスコスコ妖精という吸血鬼は、『アレ』に襲われてこのように結晶化してしまった」

  • 191二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 21:18:18

    ドラルクがゼンラニウムに向かって結晶をかざして見せる。
    「脈動はしているが戻す手立てが分からない!君にはわかるかね?」

    『む……、今の姿の我ならば直せるかもしれない』
    「本当かゼンラニウム!?じゃあ、スコスコ妖精以外にもう一つ結晶があるんだけど、そっちは?」
    ロナルドが身を乗り出して聞く。
    『いや、戻せるのはスコスコ妖精氏のみだ。顔の実の同胞は結晶化して時間が経ちすぎている。別の方法を探す必要があるだろう』
    「……そうか、でもスコスコ妖精は戻せるんだな?直してやってくれ!」
    『承知した。吸対服の同胞よ、結晶を我に』「了解した」

    「まて愚物それは研究対しょ」「ごめんなさいヨモツザカさん」
    ドラルクは後ろでサテツに捕らえられながら騒ぐヨモツザカを無視してスコスコ妖精の結晶を頭上に掲げる。
    ゼンラニウムは股間の花からツルの触手を長く伸ばし、それを受け取った。

    「……(股間の花からツルが伸びると思っていなくて何とも言えない顔をしているドラルク)」
    「どんまいだ、ドラルク」

    『うむ、受け取った。では……、むん!!』
    ゼンラニウムは宝石を股間の花に埋め、力を込めて叫んだ。

    『プリリアントパワー!きゅんきゅんヒーリング!クライマァックス!!!』
    花に埋められた宝石は、強烈な光で輝きだした。

  • 192二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 21:18:39

    (なにプリ、すごく、心地が良いプリ……)
    スコスコ妖精は、まどろみの中で意識が戻る。

    とても良い花の香りと、フワフワな植物のベッド、そしてあたたかな回復の光。
    ああ、こんな優しい空間を作れる魔法美少女は、きっと素敵に違いない……!

    スコスコ妖精は、幸福感に包まれて目を覚ましたのだ。

    「プリ?」
    目の前にあるのは、鮮やかな花の密集地帯。
    『目が覚めたか、スコスコ妖精氏』
    そして、聞こえるのは低く、やけに良い声のする男性の声。
    スコスコは声のする方向を見る。
    魔法美少女の恰好をしているが大事なところがことごとく隠されていない、筋肉質な男がそこにいた。
    そしてスコスコは、自分が今どこにいるのか、悟った。

    『うむ、元気そうでよかったスコスコ妖精氏!』
    「お、」

    「おう゛ェーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

    ほぼ通常運転に戻ったシンヨコの夜に慈悲はない。
    かくして、ようやくスコスコの全てのフラグが回収されたのであった。

    ヌヌヌ(つづく)

  • 193二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 21:27:21

    ゼンラ復活が驚く程嬉しい

  • 194122/05/07(土) 21:29:12

    最初はスコスコ復活しない予定だったんですが、クライマックスフォームで奇跡が起きないのは詐欺だろうと言う事で無事復活となりました。
    よかったねスコスコ。

    あとそろそろ、次スレの時期なのですがスレタイを、
    「ここだけモザイク世界線」
    に変えようと思います。
    オチまで頑張るつもりなのでよろしくお願いします。

  • 195二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 21:30:58

    >>194

    やっといつものポンチな新横浜が戻ってきた……!

    おじさんの実のヒトも回復するといいな……(希望的観測)


    ここの物語、本当に日々の楽しみにしています

    完結までしっかり見届けます

  • 196二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 21:36:57

    スコスコ復活めでたい 続き楽しみにしてます

  • 197二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 21:38:33
  • 198二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 22:14:29

    次スレ乙です

  • 199二次元好きの匿名さん22/05/07(土) 23:19:49

    >>192

    居心地がいい発言に吹き出したわ

    次スレも楽しみにしてます

  • 200二次元好きの匿名さん22/05/08(日) 01:35:28

    200ゲット!


    >>200ならハッピーエンド!!

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