- 1二次元好きの匿名さん21/09/18(土) 23:22:58
そういうと気づけば足は彼のいる場所へと駆け出していた。会いたい、もう一度──
大好きだったお兄様は死んだ。
担当バの勝利祝いを用意する買い出し中に、不運にも交通事故に巻き込まれてしまったのだ。
勝利祝いの内容に思いを巡らせ、呑気にしていた彼女に届いたのは素敵なプレゼントではなくトレーナーの訃報だった。
彼の愛バは現実を受け止めきれずに学園に復帰した後も抜け殻のように彷徨っていた。
誰かに話しかれられた気もするが内容が耳に入らない、人を避けていつの間にかたどり着いていたの屋上だった。
天国に行ってしまった彼に少しでも近づきたいという気持ちもあったかもしれない。
先ほどまで雨が降っていたはずだが、いつのまにかそれは止み、綺麗な青空が見えている。
青空に浮かぶ雲が、在りし日の彼の姿に見える気がした。優しかったあのお兄様に。
・・・このまま空に飛んでしまえば、お兄様にまた会えるのではないか。
「──ライスさん!!」
空に飛びだす彼女の後ろから叫ぶ声が聞こえる。
ミホノブルボンだ、尋常でない様子を心配してついてきたのだろうか。
でももう遅い、彼女は間に合わない。先日の『菊花賞』でもそうだった。
ミホノブルボンは前にいる『ライスシャワー』に追いつけない。 - 2二次元好きの匿名さん21/09/18(土) 23:23:49
が、そこに1人の学級委員長が!!!!!
- 3二次元好きの匿名さん21/09/18(土) 23:24:21
逃がしませんよ、ライス。貴方に追いつくために私も鍛錬したのです。」
「放して!!お兄様に会わせて!」
ミホノブルボンの腕にぶら下がりながらライスシャワーは喚く。
しかし、暴れる彼女よりずっと強い力で右手は捕まれている。
「放してよぉ…」
涙目になりながら懇願する。そんな最後の願いも適わず、軽い体は引っ張りあげられ、ミホノブルボンに覆い被さるように倒れ込む。
「どうしてライスを助けるの…ライス、もう走りたくない、生きたくない」
えずきながら語る、普通のウマ娘ならトレーナーを亡くしてもそれを乗り越え、強くなるべきなのだろう。彼女を待つファンのために。
しかし自分は・・・
「ライスが走っても誰も喜ばない!走っても不幸にするだけ!それでも一人だけ、一人だけライスを応援してくれたのがお兄様だったのに…!!」
忘れもしない菊花賞。勝利の後に静まり返る会場。逃げ出すようにターフをさった自分を優しく受け止めてくれた彼女のトレーナーがいなければとっくに走ることなど辞めていただろう。
『──もう一度、俺のために走ってくれないか?ライス」
その言葉があったから走った。彼女にとってお兄様は彼女『走る意味』であり、彼女の『全て』だった。
その存在はあまりに大きく、忘れて生きていくには辛すぎる。 - 4二次元好きの匿名さん21/09/18(土) 23:24:39
「ライス…」
ミホノブルボンが口を開く。説得だろうか、そんな言葉一つで思い直せるなら飛び降りなどしないというのに──
「つべこべ言わずに走りなさい!」
唖然とした。飛んできたのは耳障りのいい慰めでなくあまりに無骨な台詞だ。
「貴方に今、走るのをやめてもらっては困ります。」
「どうして‥!?ブルボンさんだってライスなんてレースにいないほうが良いと思ってるんでしょ?ライスが邪魔なんでしょ!?」
「貴方は…私の目標なんです。」
「え?」
「貴方に想って、ずっと鍛錬に励んでいました。強い貴方と、もう一度レースで戦いたい。それが今の私の走る意味であり、私の全てなんです。」
やめてほしい、そんなことを言われたら死ねない。それを失う悲しみは誰より知っている。
「貴方の辛さは測り兼ねます。ですが、もう一度、私のために走ってくれませんか、ライス」
ミホノブルボンの胸の上で、彼女は涙を流しながらも決意を決める。
「ごめんね、お兄様。ライスまだ会えない。まだライスを必要な人がいるから」
梅雨明けを控えた6月の空模様はまだ不安定で、再び淀み始めている。しかし、直に晴れが続くようになるだろう。 - 5二次元好きの匿名さん21/09/18(土) 23:28:04
最近つよつよライスばっか見てきたからこのライスがジーンとくる
- 6二次元好きの匿名さん21/09/18(土) 23:30:33
この世界にはココンちゃんたちの水筒をひっくり返して「なにか証拠とかあるんですかw」とかいうライスちゃんは居ないんだね…
- 7二次元好きの匿名さん21/09/18(土) 23:59:56
これはライスシャワー