Let the right one in. Part3【SS・オリキャラ有】

  • 1二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 23:40:40

    常に市民に奉仕する気持ちで
    常に市民の声に耳を傾けて
    常に市民に誠実な対応を

  • 21◆iT7WvLBL2aBf25/08/06(水) 23:44:30

    お久しぶりです、一週間ぶりくらいでしょうか
    前スレに引き続きSSを書いていきたいと思います

    ……まあ、ほとんど書き溜めが無いのですが明日以降の私が何とかしてくれるでしょう

  • 31◆iT7WvLBL2aBf25/08/06(水) 23:46:25
  • 4二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 23:47:24

    たておつ

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/06(水) 23:59:26

    生きてた
    良かった

  • 61◆iT7WvLBL2aBf25/08/07(木) 00:00:29

    これまでのあらすじ
    スーパームーンを間近に控えたキヴォトス。不良少女、大洲カノンはある夜不思議な少女、エリと出会う。言葉少なく謎めいた雰囲気を持つエリとの出会いは、カノンの心に微かな変化をもたらした。
    一方、街では通り魔事件が発生していた。被害者から「血が抜かれている」という異常な手口と最近流行し始めた都市伝説との類似点に着目した特異現象捜査部は、独自に調査を開始する。
    生活安全局の二人もまた、通り魔事件を追う。局の違いから表立った捜査はできないものの、パトロールなど自分達にできる事を行うフブキとキリノ。そんな彼女たちは勤務交代に合わせて食事に出かけて……

  • 71◆iT7WvLBL2aBf25/08/07(木) 00:07:56

    そして私はSay-Bing復刻に浮かれポンチになりました

    自我失礼しました

  • 81◆iT7WvLBL2aBf25/08/07(木) 00:10:02

    「……あの子、学校行ってないんだっけ?復学とか言ってたけど」
    ん、ん。とフブキは咳ばらいをして、二人の間に横たわりかけた沈黙を追い払う。
    彼女の言葉を聞いたキリノは、目を丸くした。
    「あれ、聞いてたんですか?ドーナッツの看板の方を見ていたとばかり」
    「聞こえてきたの。盗み聞きしたみたいに言わないの~」
    じとり、とフブキは目を細める。フブキの視線に刺されたキリノは、曖昧に笑って頬を掻いた。
    「前に聞いたのは……自主都合による休学、後に停学ということみたいです」
    「へー……どこに通ってたの?」
    「ワイルドハントですね」
    「はー、ワイルドハント……」

    フブキは何かを考えこむ様に唸ると、クラブハウスサンドを一口齧る。しゃきりとしたレタスの食感と、ベーコンの塩気が良く絡んで、美味い。彼女は目を細め、言葉を続けた。

    「そういえば、中学の頃はどうだったのさ?」
    「その頃から、ワイルドハントに行くことは決めていたみたいです。クラスでもしきりに言っているのが聞こえてきましたから」
    「うん?……あー、いや、そうじゃなくて……」

    フブキは少し気まずそうに、キリノを指差した。キリノは頭の上に「?」が浮かんでいそうな顔でフブキの指先を見つめ……ややあって「あっ」と声をあげ、頬を赤らめた。

    「私ですか……」
    「キリノです……そういえば聞いた事なかったなーって」

  • 91◆iT7WvLBL2aBf25/08/07(木) 00:12:00

    フブキが身を乗り出した。口元には、にんまりと笑みが浮かぶ。

    「そんなに、面白い事も無いと思いますよ?」

    キリノは頬を掻いた。自分の過去をつまびらかにするのは、身体がむず痒くなる。それが気心の知れた相手であるなら猶更だ。彼女はアイスティーをもう一口含む。コップの中の氷が動いて、かろんと音を立てた。

    「……本当に聞きたいですか?」

    秘密の話を打ち明ける子供の様に囁くキリノに、フブキは上向けた掌を向ける。キリノは観念したように瞼をぎゅっと閉じて開き、話し始めた。

    「そうですね……ヴァルキューレに行きたい、とずっと思っていたので……勉強と、それから体力づくりを意識していたと思います」
    「へぇ……勉強はともかく、なんか部活とか?」
    「陸上部で短距離を。球技は……なんというか、少し不向きだったといいますか……」
    「あー……」

    フブキは思わず出かかった「わかる」という相槌を口内に捕まえて、オレンジジュースと一緒に喉奥へ飲み込んだ。射撃を始めとしたキリノの不器用な振る舞いを見れば、想像に難くない話だった。

  • 101◆iT7WvLBL2aBf25/08/07(木) 00:13:34

    「でも、陸上ね~……」

    フブキはストローを咥えたまま、陸上部のキリノを想像した。どんなユニフォームを着ていたか知らないから、とりあえずノースリーブのシャツに、ランニングパンツを着せてみる。

    キリノは上背がある方だから、それだけでもサマになった。そんな彼女が、走るのだ。前を見据えて、ほんの数秒に全力を注いで。
    綺麗な白い髪が靡く。飛び散る汗。にこりと笑うと、歯が輝く。

    ……こまった。ちょっと、絵になりすぎる。

  • 111◆iT7WvLBL2aBf25/08/07(木) 00:14:34

    「ズルくない?」
    「ふぇ?」

    ぼそりと呟いたフブキに、キリノは目を点にした。

  • 121◆iT7WvLBL2aBf25/08/07(木) 00:35:33

    「なんでもなーい。大会とか、でた?」

    フブキは「流して」と手を振った

    「晄輪大祭の選抜に出たくらいですねぇ」
    「えーっと……一昨年の?」
    「はい」
    「へー、じゃあもしかしたら中継で見てたかも」
    「……なんだか、照れちゃいますね」

    キリノははにかんだ笑みを浮かべた。

    「これといった実績のない陸上部でしたから、いい意味で緩くって。練習帰りにコンビニで買い食いしたりしたなぁ……」

    キリノはその頃を懐かしむ様に目を細めた。暮れなずむ帰り道に食べたチキンは、とても美味しかった。今思えば、それが食べ歩き趣味の原点だったのかもしれない。

    「へー……」

    フブキはキリノの言葉を静かに聞き終えると、にへらと相好を崩し、

    「いや~、青春してるじゃん、キリノ」
    「む……」

    そう、茶化すように言った。キリノは抗議するような視線をフブキに向ける。

    「そういうフブキはどうだったんですか?」
    「私?」

    唇を尖らせたキリノに尋ねられて、フブキは目を瞬かせた。

  • 13二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 09:58:05

    青春の輝き…

  • 141◆iT7WvLBL2aBf25/08/07(木) 17:36:43

    「うーん、とりあえず勉強はできた方かな~」
    「おや、そうだったんですか」
    「意外なことにね~」

    フブキはゆっくりと話し始めた。

    「結構要領は良い方だったんだよね。定期テストとかもちょっと勉強すればそれなりの点数が取れた」
    「それはすごい……!」
    「少しでも楽をしたかったからねー、その辺りは今も変わらないかも」

    フブキは時折視線を宙に漂わせながら、言葉を紡ぐ。
    そんな彼女を、キリノはキラキラとした目を向けていた。

    「フブキ、実は天才だったんですね……!」
    「そんな大したものじゃないって……自分で言うのもなんだけど“普通にできる子”って感じだよ。中の上って感じ?もっとできる子は全然居たし」

    フブキは居心地が悪そうにもぞ、とお尻を揺らす。
    ──なんか、想像していたより恥ずかしいね、これ。

    「で、まぁ……そんな感じでなんとなーく過ごして……ヴァルキューレはその延長かな。のんびり仕事したいから~って受けて、受かった」

    フブキは少しだけ早口になって言い切ると、ストローを咥えた。

  • 151◆iT7WvLBL2aBf25/08/07(木) 19:04:32

    「で、まぁ……そんな感じでなんとなーく過ごして……ヴァルキューレはその延長かな。のんびり仕事したいから~って受けて、受かった」

    フブキは少しだけ早口になって言い切ると、ストローを咥えた。

    「それでヴァルキューレに……」

    キリノが神妙な顔で頷いた。

    「そ、不純な動機でしょ」

    そういうフブキの言葉には、ほんの少しだけ自嘲の色が混じっていた。
    彼女は自分が語るところの「不純な動機」を恥じるつもりはない。それどころか、普段から公言してはばからない程だ。ただそれを、キリノの話の後……ヴァルキューレを目指して、直向きに努力をしていたという話の後にするとなると、なんだかほんの少しだけ見劣りするような気がしたのだ。
    フブキは咥えたストローを吸う。口内に上ってきたのは、オレンジ風味の氷水だった。コップを見ると、底に浅く溜まった薄い黄色がオレンジジュースの名残を辛うじて伝えていた。
    長話をしてるなー……と、フブキはコップを傾けぼんやりと思った。

  • 161◆iT7WvLBL2aBf25/08/07(木) 23:51:51

    「うーん……」

    フブキの言葉に思案顔をしていたキリノが、口を開いた。

    「動機はそうでも、今どうしているかじゃないですか?大事なことは」

    キリノはフブキをまっすぐ見つめて、そう言う。

    「お、いいセリフ―」
    「それに」

    からかうような口ぶりのフブキを意に介さず、キリノは言葉を続ける。

    「今は、それだけじゃないでしょう?」

    すんだ青い瞳が、フブキを射抜く。
    ぴく、とフブキが僅かに反応した。

    「……その心は?」
    「ヘアピンの件、先生に聞きましたよ。それに……他にも色々、傍で見ていますから」

    フブキは何か言い返そうと暫く口をもごもごさせ……やがて、小さく肩を竦めた。
    ──降参。

  • 171◆iT7WvLBL2aBf25/08/07(木) 23:53:10

    「……そーいうのがモチベになったのは、最近のことだけどね」

    素直にそうだと言わないのは、気恥ずかしさもあってのことだった。
    フブキはクラブハウスサンドの最後の一欠けらを口に放り込み、むぐむぐと咀嚼し飲み込んだ。
    キリノも同じように、サンドイッチの残りを口に押し込む。

    「ごちそうさま」
    「ごちそうさまでした!」

    示し合わせたように、二人の声が重なる。

  • 18二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 09:44:54

    いいなぁ…

  • 19二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 17:25:16

    仲良いことは良いことだ

  • 20二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 22:14:04
  • 21二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 23:59:31

    保守

  • 22二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 08:57:39

    更に仲が深まったぞ

  • 231◆iT7WvLBL2aBf25/08/09(土) 11:07:19

    少し立て込んでいますが、今夜更新を目指していきます

  • 241◆iT7WvLBL2aBf25/08/09(土) 11:09:25

    あとそれから>>2の私へ

  • 25二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 19:15:35

    草 

  • 261◆iT7WvLBL2aBf25/08/09(土) 23:20:37

    すみません、纏まらないので今夜更新ないです

  • 27二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 07:38:45

    ⭐︎⭐︎

  • 28二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 16:38:37

    ごゆっくり

  • 291◆iT7WvLBL2aBf25/08/10(日) 19:58:19

    ──
    ────

    D.U.郊外に立つ、黄ばんだ外壁が建築年数を物語るマンションがある。
    そのひび割れたコンクリートの階段を、カノンはスマホで通話しながら登っていた。

    「──ですから、早急にお支払いが確認できなければ……ええ、誠に遺憾なことなのですが、強制退去という手段を取らざるを得ないのですよ」

    男の声が、そう告げる。丁寧な言い回しの奥には、カノンを舐めてかかったニュアンスが滲む。
    通話の相手は、マンションの管理会社。話題は、カノンが滞納している家賃の件だった。

    「はい、はい……わかってますって」

    電話口の相手の慇懃無礼な物言いに、カノンは眉根を寄せている
    伝えたいことがあるから、至急連絡が欲しい。エリのビルでそんなメッセージを受け取った時から、こういう会話の流れになることを彼女は察していたが……分かっていても、辟易とするものである。

    階段を上がり、四階まで上ったカノンは、建屋の端から三番目の部屋で歩みを止めた。彼女はスマホを持たない左手で、何かを探るようにジーンズのポケットを叩きながら通話を続ける。

  • 301◆iT7WvLBL2aBf25/08/10(日) 20:17:06

    「とにかく、金は入ったんで……明日にでも支払いますから」
    「そうしていただけると、誠にありがたく存じます。謹んでお願い申し上げます」

    カノンの返事を待たず、ぶつりと通話が切られる。

    「ウッゼ」

    カノンは舌打ちをして毒づく。それとほぼ同時に、彼女の左手が目当ての物を掴み引っ張り出した。合皮のストラップが付いた鍵だ。カノンはそれを鍵穴に差し込み捻ると、扉を開けた。

    「ただいま」

    カノンは溜息と一緒にそう言って、壁のスイッチを押した。朝出かけた時のまま、散らかった六畳一間が昼白色の灯りで照らされる。
    彼女は足下に散らばる着替えや小物を避けつつベッドに向かうと、仰向けに身体を投げ出した。ベッドのスプリングが、ぎしりと軋む。

    「あ~……」

    喉奥から低い唸り声を垂れ流しながら。カノンは腕で目元を覆った。
    疲れた。荒事こそなかったものの、メンタルをすり減らす一日だった。横になった彼女の中で、このまま意識を手放してしまうたい欲求が鎌首をもたげる。

    ──でもなぁ……

    目元を覆う腕を下にずらして、鼻に宛がう。息をすると、ほんのり汗の匂いがした。それに、顔も脂でべたつくし、髪も軋む。
    それらの感覚が、このまま眠ることに異議を申し立ててくる。

    「……シャワー浴びねえとな」

    カノンがそうつぶやいたのは、タスクを言語化して欲求をねじ伏せる為。彼女は深く吸った息を吐くと、緩慢に身体を起こした。

  • 311◆iT7WvLBL2aBf25/08/11(月) 00:27:45

    「だる~……」

    カノンは気だるげに肩を落として、拳銃を入れたままホルスターを外して床に置く。そして次にジーンズのポケットから封筒……今日の仕事の報酬を引き抜くと、それをじっと見つめて考え込む。

    ──これ、どこに置いておこう。

    カノンは散らかった床を見る。この有様では何かのはずみで無くしてしまいそうで気が引けた。
    それならば、と彼女は部屋に備え付けのクローゼットに歩み寄り、戸を開けた。
    途端、がらりと何かが崩れて転がる音。

    「ととっ……」

    戸を開けた弾みで、クローゼットの中に積んであったものが崩れてカノンの足元へ転がった。それを見た彼女は顔をしかめる。

    「あー……クソ、片付けしないとな」

    明日は、大掃除をしようと思った。散らかった床を綺麗にして、忙しさを口実にため込んでしまった洗濯物を片付けるのに当てるのだ。
    珍しく、まとまった金が手元にある。明日一日バイトに穴をあけても余裕はあるだろう。

  • 321◆iT7WvLBL2aBf25/08/11(月) 00:28:51

    そんなことを考えながら、カノンは膝を折ってしゃがみクローゼットから転がり出たものを順番に拾い上げ、積み重ねていく。

    沢山の付箋が貼られた、シナリオについての教本。
    表紙が擦り切れ色褪せた、撮影技術に関する参考書。
    いくつもの朱書きが入った、脚本の草案。
    古い映画のディスクが何枚も入った、段ボール箱。

    目のつく所に置いておきたくなかった数々の品々を、順序良く積み重ねていき、その頂上に封筒を置いた。
    そしてカノンは、クローゼットに吊るされた真新しさの残るワイルドハントの制服を一瞥すると、戸を閉じた。

  • 33二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 10:21:04

    保守

オススメ

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