- 11主25/08/07(木) 16:45:19
- 21主25/08/07(木) 16:46:34
- 3二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 17:17:50
一生読んでたい
ほんとに大好きです - 41主25/08/07(木) 17:29:35
白一色の世界
俺は誰かと手を繋いでいた
「焦凍、寒くない?」
「…うん、大丈夫」
サク…サク…と足音だけが響いていく
どこまでも広がる雪景色の中を歩いていた
空からは羽のようにふわふわ雪が舞っていた
「焦凍、ごめんね」
「なんで?」
「生まれてきてくれてありがとう、それだけを…ずっと言いたかったの」
いつぶりに見たか分からない、お母さんの優しい顔
手が少しずつ、透けていくように感じた
雪の中に消えていくその手を、俺は掴めなかった
「…お父さん…お母さんっ…どこ…どこだよぉ…」
雪景色の一部になっている少年がいた
その少年の目は青く綺麗で…俺は、その少年に手を差し伸べた
「行こう…燈矢兄、お家…帰ろ」
俺の手の中に温もりがあった
燈矢兄が目を細めて笑っている
「…焦凍、こんな風に手を繋げてたら…変わってたのかな」
「変えられたと思う」
「そっか、焦凍が言うならそうなんだろうな」
俺たちは何も話さず、また雪の中を歩いた
やがて、空がゆっくりと滲んでいく、水彩画みたいに
足音がしなくなった
手の中のあたたかさが、すうっと抜けていく
隣を見るともう誰もいなかった - 51主25/08/07(木) 17:43:06
「待って!」
俺はガバッとソファーの上から起き上がった
近くには、緑谷、爆豪、飯田、八百万が居た
八百万がハンカチで、泣いていた俺の涙を拭いてくれた
「悪夢は…見ませんでしたか?」
「…ぁ…あ」
俺は八百万の言葉に答えられず、また子供のように泣いてしまった
本当に全面戦争が終わってから何回恥を晒せば済むのか、八百万に抱きしめられながら俺は泣いていた
ほか3人もただただ、黙って俺の言葉を待っているようだった
そして、ようやく呼吸が落ち着いてきたタイミングで八百万が話しかけてきた
「私達にも…轟さんの辛さを少しでも分けてください」
「…今…いちばん忙しい時期なのに…」
「青山だって…そりゃ…俺とは全然違うかもしれねぇし…いけないことだけどよ…」
「でも、青山は必死に自分は内通者だってこと…隠して…みんなに迷惑かけないようにって…限界くるまで…」
「俺はまだ…我慢できたんだ…でも」
俺は緑谷を睨んだ
緑谷は、ただ、そんな俺の目をじっと見つめていた
「何とか言ったらどうだ…!緑谷!」
「轟くん」
「轟くんの気持ちが晴れるなら僕は何でもするよ」
「っ…知らねぇよ…!気持ちが晴れる?そんなもんわかんねぇから困ってるんじゃねぇか!」
俺は、八百万を軽く引き離したあと、緑谷の胸ぐらを掴んだ
飯田が止めようとしていたが爆豪が止めて居た - 6二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 17:44:52
- 71主25/08/07(木) 18:49:28
「…なんでもって…じゃあ今ここでシねって言ったらお前は死ぬのかよ!?」
「…うん」
呆れた、本気でそんなこと思ってもないくせに
「お前なんか信じるんじゃなかった」
「…轟くんにどう言われても僕は…轟くんの味方だよ」
「ふざけんな…裏切ったくせに!」
俺は緑谷の頬を叩いた
緑谷は少しだけ苦しげな声を上げたが、その目だけはずっと俺の方を見ていた
「燈矢兄が…お前のこと…!緑谷出久は…!」
「…俺のことを…」
「嫌い…だって…」
口に出して言ったら笑えるほどシンプルな答えだった
あぁ…俺…そんなにみんなに嫌われるのが怖いんだな
「ううん、嫌いなんて思った瞬間は、轟くんと友達になったあとから1度もないよ」
「嘘だ…俺のことが嫌いで…だから…だから!あの夜!爆豪と!」
「俺のことを面倒事って言ってただろうが!」
「あの日記はなんだよ!?俺のことが怖いって…!」
「嘘つき…大嘘つき…お前はヒーローにはなれねぇよ」
「やっぱり…聞いてたんだね…何となくわかってたよ」
デクと轟は和解出来る?
1 出来る
2 出来ない
3 完全にスッキリはしないけど仲直りはする(殺したい感情が無くなる)
dice1d3=3 (3)
- 8二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 19:01:12
よかった…!本当よかった…!
- 91主25/08/07(木) 19:27:29
「ごめんね…轟くん…僕だって…この世界に生きる一人の人間で…つい、人のことを考えられない悪口を吐いた」
「君がどれだけ傷ついたとか…僕には測れない」
「けど…僕は…それでも…君のそばに居たいって思ってるよ」
「馬鹿…馬鹿野郎…が」
俺は、緑谷の胸ぐらを離した
緑谷は俺に胸ぐらを離されたあと、俺に抱きついてきた
暖かった、嫌になるぐらい…暖かくて
嫌い…すぐにこの場で殺してしまいたい
なのに…なんで涙止まんねぇんだよ…
殺すなんて…無理だ…
今俺に触れている熱を絶やすことなんて…
「本当に…ごめん…轟くん、許さなくていい…許さなくていいから、もう…一人で悩まないで」
そのまま、緑谷は俺の涙が枯れるまで、ずっと抱きついていた
まだ何一つ問題解決なんかしてない
けど、ほんの…ほんの少しだけ…重荷が…消えた気がした
轟の正気度
3+dice1d30=25 (25)
- 10二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 19:45:47
良かった気持ちともっと苦しんで欲しい気持ちが両方あるな〜
- 11二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 19:50:05
もっと苦しんで欲しいって感情と、A組に嫌われてほしくない&愛されてて欲しいって感情が両立することをしった
- 121主25/08/07(木) 20:21:22
私事でホンッット申し訳ないけど言わせて欲しい
もうね…なんかね…辛いよ
私が始めた物語とはいえ…辛いよ
みんな望んでるのはバットかもしれないけど…
できる気がしなくなってきたなって
でも、最後まで頑張ります - 131主25/08/07(木) 20:34:39
「…緑谷…本当にお前を許さなくていいんだな」
「それぐらいのことを僕はしたから…」
「ヒーローになれないなんて…言って…悪かった」
「謝らないで、それは轟くんが言いたいタイミングで言って欲しい」
『そうだ…許さなくたっていい、お前はずっと緑谷出久を恨み続けろ』
『感情に薪を焚べ続けろ』
「また、幻聴聞こえてんのかお前」
「んじゃ、俺から轟燈矢に一言、言ってやるよ」
「てめぇごときに轟がやられると思うなよ」
『ははっ!所詮他人だよなぁ…!好き勝手言いやがる、どうだ?焦凍…お前のお友達はよっぽどお前に嫌われたいらしいなァ!』
黙れ…もうこれ以上俺の友達を…家族を侮辱するな
「お前は燈矢兄じゃない!」
「轟くん…」
『…はは…あははっ!ついに俺を否定したか…お前も結局お父さんとおんなじ…俺を見ない』
『絶対に殺してやる…何を犠牲にしても…』
『お前は自分で自分の墓を掘った、馬鹿な弟をもっと大変だよ、ちょっとは兄ちゃんの気持ちも考えてみたらどうだ焦凍?』
ずっとうるさいぐらい話してくる
俺は、その場に蹲り耳を塞いだ
踏まれるような痛みが頭に走った
『きっと今のお前のことも…こいつらの目には哀れ…はたまた恐怖の対象としか思われてねぇだろうなぁ』
『俺を見ろよ!ショート!』
どちらを信頼している?(信頼度の変動)
A組&トップスリー 52→dice1d130=92 (92)
燈矢 46→dice1d100=15 (15)
- 14二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 20:53:04
🎲くんがバッドは嫌だって言ってる…
- 151主25/08/07(木) 21:07:27
心の底から俺は燈矢兄を否定した
俺には、A組が居る、家族が居るから
燈矢兄は、いつもみたいに風に吹かれて消えると言うより…その場から抹消されたように消えていった
「燈矢兄」
「その顔色からすると、もう兄の幻覚は見えないようだな」
顔を見上げる俺に手を差し伸べてくる飯田
俺はその手をがっしり掴んだ
「さて、ここからどうするか…ですわね」
「薬の件は…エンデヴァーには言ったの?」
「親父には、まだ言ってねぇ」
「つーかよ、幻覚、幻聴にしちゃぁ…こっちに干渉しすぎじゃねぇのか?」
「…今までそんなこと無かったからわかんねぇ」
「そーいう訳だから、だから、薬の件は一旦忘れろ八百万」
「轟さんもそれでいいでしょうか?」
「何となく薬が効く気がしねぇ…けど、睡眠薬と…なんか混ぜた薬は多分効いたから、また作ってくれると助かる」
「良かったです…本当に」
八百万が泣き始めてしまった
「…わ、わりぃ…もしかして薬作るのは痛かったりするのか?」
「良かった、いつもの轟くんだ」
「まだ色々と…落ち着かねぇけど…みんなのおかげで…ほんの少しづつ、元に戻れてきた気がする」
「というか今何時だ?」
「えーと…今…朝の1時…ですわね」
「む!全然時間を気にしていなかったが…割と大きな声を出してしまったな…みんなに迷惑かけてしまった…明日謝らなくては」
「そうですわね」
「うん…そうだね、謝らなきゃ」
俺もそれに返事をしようと思ったら、爆豪に耳打ちをされた
「後で俺の部屋に来い」
なんとなく何の話か分かった - 16二次元好きの匿名さん25/08/07(木) 21:09:38
信頼度ダイスちゃん、徹底してA組&プロヒの方の数値が高い
- 171主25/08/07(木) 23:03:45
爆豪の部屋に入ると、爆豪は無言で鍵を閉めた
「人殺しって話、ホントだろ?」
あの時俺が取り乱しながら言った一言を思い出した
「…それは…誰にも言ってない…よな」
「あぁ、言うわけねぇだろ」
「そう…だよな」
「誰を殺したんだ?」
「…ヴィラン」
「んで、それは俺以外知らねぇのか?」
「…いや…エンデヴァー達が知ってる」
「なら、確実に先生は知ってるだろうな」
「え」
爆豪と静かな空間にいると、俺が、自分のことで手一杯だったと感じさせられた
先生…
ヒーロー候補生から…自分の生徒から人殺しを出した
きっと…先生は責任を感じてると思う
先生は優しいから
「轟、これは俺らだけの秘密にしろ」
「…」
「もちろん、墓まで持っていく秘密ってわけじゃねぇからな」
「お前そういう所変に考えすぎるから一応言っておくぞ」
「いつかあいつらに話して怒られてこい」
「んで…今心配すこたァ…多分ねぇ」
「ホークス辺りが…汚ぇ話だが、隠蔽でもなんでも出来るだろ」
「というか、俺が思うにそういうことする…」
「だから、余計なこと考えずに今日はもう寝ろ」
「さっき寝たからあんま眠くねぇ…一緒に…」
「誰が寝…ん…んん…!」
爆豪は複雑そうな顔をしたあと、ぼそっと呟いた
「…寝るなら枕でも持ってこいや」 - 181主25/08/07(木) 23:13:02
枕を持ってきた後、特に俺は何事もなく眠りにつこうとしたが
…寝れねぇ
八百万にまた薬を…いや、多分あれ作るの相当集中力必要だろうから、今もう疲れて寝てるか
ダメだ寝れねぇ…
「…水…飲んでくる」
爆豪から反応は特になかった
俺は爆豪の部屋のドアをゆっくりと音を立てないように開けた
もうすぐ2時
「…綺麗だな」
全面戦争後の日本はもうぐちゃぐちゃなのに、夜だけは異様に綺麗だ
明かりがほとんどないからだ
星空が綺麗で、窓に指をツー…と這わせ、星と星を繋げてみたりして、遊んでいた
”焦凍〜!あの星なんだと思う!?”
「わかんない?なんて名前の星?」
”俺も知らなーい!”
「えー?」
自分の頭の中で燈矢兄と話す
こんな馬鹿なことをしていたら、少しづつ眠くなってきた
けど…まだ、寝れるほど眠くない
何をしよう(または何が起きる?)
>>19〜23
- 19二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 00:29:35
- 20二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 06:31:14
軽い幻覚を見る
- 21二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 08:13:33
- 22二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 10:57:46
外に散歩しに行く
- 23二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 11:48:47
A組の誰かが来る
- 241主25/08/08(金) 15:29:42
- 251主25/08/08(金) 15:55:19
外…行くか
コスチューム…は…一応着てくか
────────────
コスチュームを音を立てないように着たりしていたら、そこそこ時間が経ってしまった
寮から出ると相変わらず視線が痛い
不安が増幅して、息も辛くなる
けど…八百万の薬がまだ効いてるおかげか、燈矢兄の影は一切チラつかない
それに…俺にはA組のみんながいると思えば…
「あったかい」
雄英を出た後、俺はもう音を気にしなくて良くなったので、氷で滑って、目的地なんか無く、ただ道を真っ直ぐに進んだ
そこそこ進んだというあたりで俺は足を止めた
もしも、燈矢兄が普通に轟家の長男として生きて
親父に純粋な憧れを抱いて雄英に入っていたら
きっと…嫉妬しちまうくらいの最高のヒーローになってんだんだろうな
「ッ…なんでそんな未来が存在しないんだよ…!」
「俺たち家族が何をした…!?」
感情的になり今にも暴走しそうに見えるだろうが、俺は至って冷静だった
だが、そんなことを考えていると必ず涙が止まらなくなる
「あ…あぁぁぁ!」
さっきまでみんなの暖かさに浸っていたのに
今はどうだ?こんな俺を正気と思える人間はいるのだろうか?
ちゃんと会って話したいよ…燈矢兄
もう幻覚なんて懲り懲りだ… - 261主25/08/08(金) 16:37:03
「焦凍!?」
「…親父」
涙でぐしゃぐしゃな顔は見られたくない
俺は、涙を無理やり拭ったあと、親父の方を向いた
「なんだよ…」
「それはこちらのセリフなのだが…」
「怪我でもしたのか?大丈夫か?」
親父は、俺の触ろうとしたが、少し考えたあと、その手を引っ込めようとした
「親なら心配しろよ…」
「すまない…自分の子供にもどう接していいか分からないほど…俺は…」
「精神的に参ってる息子にかける言葉かそれかよ…ホント…考えたくもないぐらいの親子だな」
親父の後ろをちらりと見ると、こちらに走ってくるホークスが居た
「エンデヴァーさんがいきなり飛んだと思ったら…焦凍くんがいたんですね、先に言ってくださいよ…全く…」
「親父がいつも迷惑かけてごめんなさい」
「焦凍…!?」
「ふ…はは!良かった良かった…だいぶ元に戻ってきたね、やっぱり君はかっこいいよ」
安心したように笑うホークスを見て、ようやく俺はほんの少しだけ前を向いて歩けているのだろうかと、嬉しくなった
「それと…焦凍、謝らないといけないことがひとつ」
「イレイザーにお前の全てを話した」
「…何となくわかってたから…平気ってわけじゃねぇけど…驚きもしねぇな」
「先生はなんか言ってたのか?」
「特に…言ってはいなかったが、動揺はしていた…そして少し涙声だったな」
もっと詳しく聞きたかったが、ホークスが親父になにか耳打ちをしていた - 271主25/08/08(金) 16:48:25
なんの話をしているのか聞こえなかったが
親父の表情がコロコロ変わる
「嘘では無い…な?」
「なんで今俺が嘘つくんすか」
「…焦凍、雄英に行こう」
「行こうって…親父達もか?」
「俺達は、雄英には入れない…ジーニストと一緒に向かってくれ」
「ごめんね、焦凍くん…俺がもう少しマシな人生送ってればこんな簡単なことできたはずなんだけどさ…」
「いえ、大丈夫です」
ジーニストに連絡しているのか、少し待たされる俺
そんな俺の手を何かが掴んだ
チラリと隣を見ると、幼い俺が居た
不安そうに俺を見ていた
「大丈夫だ、もうすぐ全部終わらせる」
幼い俺は、少しだけ頷いたあと、雄英とは違う方向に指を差した
その先には、陽炎のような、目を細めてようやく燈矢兄と分かるような物が立っていた
何か話しているが、聞こえない
「燈矢兄、今じゃない…ちゃんと会ってから」
『────』
なにか必死に話しているが聞こえない
「やめて…燈矢兄、もういいだろ」
何を言っているか分からないが、きっと…暴言を吐き散らしているということは分かった
でも、その目は今まで見た事ないくらい悲しい顔をしていて
助けを求めているように見えた
「すぐ来れるそうだ…焦凍?」
「…なんでもねぇ」
今は…まだなんて声をかけていいか分からなかった
だから今は…消えてくれ - 281主25/08/08(金) 16:49:42
【???】
「ごはっ…!がはっ…!」
「燈矢くん!?大丈夫ですか!?」
「るせぇ…イカレ女…おい、AFOさっさと俺に個性を使え」
「ダメだよ、燈矢くん…これ以上は君が死んでしま」
「うるせ…ごほっ…!…はーっ…俺はこれぐらじゃ死なねぇし…死ぬ気もねぇ!だからさっさとしろ…!」
「今戦力が少なくなってはこちらとしても困るんだ、それに君が命を懸けたとしても、もし轟焦凍を殺せなかったらどうする?」
「そんなことは有り得ねぇから安心して個性を俺に使えよAFO!時間がねぇんだよ!」
「燈矢くん、前にも説明した通り…この個性は相当なリスキー個性なんだ、使用者本人に支障はなくとも対象の人物達への負担が…」
「無理やり肉体と精神と魂を引き離す、その度に寿命も減る、体力も減る…他にも色々」
「やはり、君は待つということを覚えた方がいい、前にも言った通り、僕には友達が多いんだ…雄英にも僕の友達は居てね…まずは、少しでも君の負担を減らすために、轟焦凍の体力を…」
「ッ!赫灼熱拳!ジェットバーン!」
怒りのままに力を振るい、AFOに拳をぶつけたが…
当然防御された
「ふふ、でもね…燈矢くん君の執着は、見ていて本当に面白い」
「君を器にできなかったことが残念だよ」
AFOに頭を鷲掴みにされる
「いいだろう…轟燈矢」
「僕が見放すほどの執着を持つ君なら…必ず」
ドサッと俺の体が落ちた
…あは…ははは!!!どうでもいい!アイツの大切なものを少しでも…ほんの一つだけでも燃やせれば!俺はどうなっても…
ただ…心残りがあるとすれば…
…なんだっけな、もう、どうでもいいや - 291主25/08/08(金) 20:57:07
「轟、少しいいか?」
ジーニストの車に乗ったあと、俺は質問された
「もし…今から予想外のことが起きたとしても、君は冷静でいられるか?」
それは質問と言うよりも確認だった
「…わかりません」
「仕方が無いといえば…仕方が無い」
「その時は、私が止めよう」
「ジーニストの身体に負担はかけられません」
「…人のことをそれだけ思う気持ちが残ってるなら、大丈夫だ」
爆豪が懐くだけあって、やっぱりジーニストは優しい
いや…ホークスも優しい…けど…なんかそれとは違った感じが…
「全て終わったら、クラスメイトみんなで蕎麦でも食べに行けばいい」
「…でも、みんな俺の事怖がって…」
「仲間と喧嘩するのも、嫉妬するのもいい」
「けど、疑うことだけはしたらダメだ」
「…あ」
そうだ…俺の大切な仲間なんだ
疑ったりしたら…ダメだ
「ありがとう…ございます、ジーニスト」
「その言葉は私にではなく、仲間にかけてあげてくれ」
「さて、もうそろそろ着く、降りる準備をしておいてくれ」
────────────
雄英に入り、俺はできるだけ市民と視線を交わさないように、A組のみんなの顔を思い浮かべながら、歩いた
そして、寮に入る扉の前に着いた
俺は緊張でドアノブを持つ手が震えたが、ジーニストが俺の肩に手を添え、頷いた
俺はゆっくりと扉を開けた - 301主25/08/08(金) 20:58:08
「轟!」
「…先…生」
片目に眼帯…そして、足はコスチュームを着ていてしっかり見ないと分からないが義足だ
罪悪感が、沸騰した水のようにボコボコ湧いて、息をするのが苦しい
後ろにはA組のみんながいる
先生は俺が人を殺したって言うことも知ってる
何を…何を話せばいい?
息…苦しい…先生はもっと苦しいはずなのに…
「轟、俺は教師だ」
淡々とした声に、懐かしさとともにどこか安心する
「生徒に教え、説教し、守るのが俺の仕事だ」
「…生徒の命も、生徒の未来も…守らなきゃいけない」
「でも…先生俺は…みんなに迷惑かけて…人を…殺したんですよ…」
A組のみんなが反応した
でもそれは…俺の事を責めるような目じゃなくて…なんでそうなってしまったんだろう、なんでそんなことをしたんだろう、止められるなら止めたかった
何故かそんな、みんなが俺のことを心配して寄り添えなかったことの後悔の目に見えた
あまりにも俺に都合が良すぎる解釈で…より一層自分が嫌いになりそうだった
「それでも…お前が何をしたとしても、俺は最後までお前を見続ける、俺の教え子である限り一生だ」
「俺…俺はッ…!」
膝から崩れ落ちかける俺を先生は受け止めてくれた
「大丈夫だ、轟、お前にはみんないる」
「俺も、こいつらも居る…お前は1人じゃない」
「うっ…ぅ…ああぁぁ…ごめんなさい…先生…俺っ…俺はぁっ…」
「気が済むまでしっかり泣け、そのあとは説教だ」
愛が籠った優しい言葉に俺は、またボロボロ泣き続けた
そして俺と先生を囲むようにA組のみんなも俺を抱きしめ始めた - 311主25/08/08(金) 20:59:08
「ンで…先生ここからどうするつもりで来たんだ?」
「…特に何も考えがないという訳では無いが…あまり考えてきていなかった」
「先生にしちゃ珍しいな」
「俺としたことが非合理的なことをしたと思うが…轟を助けたいという一心で来た」
「絶対に負けるな轟」
先生が俺をもう一度強く抱き締めた
『これではっきりしたな焦凍』
『俺とお前はどうやら絶対に分かり合えないヒーローとヴィランだっつーことがよ』
燈矢兄が、パチッと手を叩くと同時に、さっきのみんなの気配が消える
いや…気配というより、存在そのものが消えたような気がした
夢の中だとすぐに悟った
『てめぇなんて生まれてこなきゃ良かったんだよ!』
燈矢兄の炎を纏ったキックが俺の腹に直撃した
「ぐっ…」
『てめぇの存在自体が間違いなんだよ!焦凍!』
『赫灼熱拳!ヘルスパイダー!!』
俺の服が焼け、俺の肌に直接火傷跡が出来た
痛くて痛くてたまらない
「穿天氷───」
「がぁッ!!」
『てめぇみたいにヘラヘラ生きてるお人形に…負けるわけねぇだろうが』
『生きる価値なんかねぇんだよ!』
燈矢兄は俺の上に跨り、そしてそのまま炎を纏った拳で俺の顔を殴り始めた
怖い…怖い…謝ったら…これが終わるのか?
もう痛いのも怖いのも嫌だ…死んだら楽になる? - 321主25/08/08(金) 21:00:08
「轟くん!負けないで!」「ンなクソ兄貴に負けんじゃねぇ!」
「なりたいものになるんだろう!」「轟さん!貴方はとても強い人です!負けないでください!」
うっすら…俺の耳にそんな言葉が入ってきた
夢の中での幻聴…?
『うるせぇなぁ!今俺は焦凍と話してんだよ!割って入ってくるんじゃねぇ!』
『あぁ!なんで上手くいかない!?なんで壊れないんだよ!何で灰にならないんだよ!』
『なんでお前は!みんなから愛されて!みんなに見られて!』
『何が違うんだよ!お前と俺は!?』
『そうだな…そうだった俺は失敗作お前は最高傑作なんだもんなぁ!』
血の味が口の中に滲む
視界が赤く染っていく
「轟!ヴィランなんかに負けないで!」「轟ちゃん!頑張って!」「轟くん!みんないる!みんないるから!」「お前は強い!負けるな!」「勝って!勝ったら一緒に蕎麦食いに行こう!」
『全部都合のいい幻想だ、お前は誰にも愛されてない』
『お前は俺の弟なんだから!愛されなくて当たり前だろうが!』
『何楽になろうとしてるんだ?ちゃんと俺のことを見ろよ!轟焦凍!』
「轟!お前は漢だ!負けんじゃねぇ!」「応援しかできないけど…みんな待ってる!」「戻ってこい!轟!」「みんなお前を信じてる」「頼りないかもしれないけど!ウチもいるから!」「仲間を信じろ!轟!」「苦しいかもしれない、けど轟!お前なら!」「轟くん!轟くんなら絶対負けない!」「オイラたちは信じてる!」
「負けるな!轟!!お前はヒーローになるんだろ!」 - 331主25/08/08(金) 21:01:38
みんなが俺を見てくれてる、信じてくれてる、愛してくれてる
そうだ、俺はヒーローになるんだ
゙なりたいものになっていいんだよ゛
全身に冷たい血が回る
まだまだ未完成の技、でも…燈矢兄を止める為だけに編み出した、俺だけの技
『訳の分からねぇもん使いやがって、なんだよお前は…たかが正気に戻ったぐらいで俺に勝つつもりでいるのかよ!』
『兄ちゃんお前が哀れでならないよ』
燈矢兄が恐らく…自滅覚悟の炎を上げる
肌で感じる、この夢の中で死んだら現実世界でも死ぬ
違うよ燈矢兄、勝ちたいわけじゃない
ただ今は燈矢兄を…俺は
゙君の!力じゃないか!゙
燈矢兄を助けたい
俺は燈矢兄を上から退かし、体制を立て直した
辛い…苦しい…呼吸をするので精一杯だ
けど、燈矢兄は俺なんかよりもずっと苦しくて
ずっと我慢してて、誰からも見られなくて
きっと愛なんて言葉燈矢兄は知らなくて
『シねよ!俺の為に!』
そうだよね、燈矢兄…ずっと苦しい顔してる
きっと俺じゃ力不足だ
ごめんね燈矢兄…そして、ありがとう燈矢兄
大切なこと、全部思い出したよ
「冷炎白刃!」 - 341主25/08/08(金) 21:02:38
燈矢兄はその場に崩れ落ちた
呼吸が浅い
…助けられなかった
「どこで俺は間違えたと思う?」
「生まれてきたこと自体間違いだったに…決まってるよな」
夢の中で見たように、火傷跡なんか一切ない綺麗な肌、綺麗な髪、綺麗な瞳の燈矢兄
俺は、半分無意識に、燈矢兄を抱きしめていた
「そんなこと言わないでくれ」
「焦凍に…焦凍に何がわかるんだよ」
「離せよ…!」
俺はより一層強く抱き締めて言った
「大好きだよ、燈矢兄」
その言葉に、燈矢は顔を背けた
だけど視線が彷徨っているのが見える
まるで、その言葉を飲み込みきれないみたいに
「…お前は、ほんっと…俺の邪魔ばっかだ」
声の奥に、かすかな震えが混じっていた
「お父さんにも…言いたいことが山ほどあるのに…やっぱりお前もお父さんと同じクソ野郎だ」
「死にたくない…まだ言いたいことが山ほどある…死にたくないよ…焦凍」
俺を抱きしめ返すこともなく、燈矢兄は遠くを見つめていた
「地獄に来たら…今よりずっと辛い目に合わせてやる」
「お前も…お父さんもお母さんも…冬美ちゃんも、夏くんも…」
「でも────」
最後の言葉は俺には聞き取れなかったけど
燈矢兄は泣いていた
俺は…消えかけた炎のような燈矢兄をただ抱きしめていた
最後の息が燈矢の肺から抜けた - 351主25/08/08(金) 21:03:54
目が覚めると、みんなが俺の顔を覗いていた
「轟くん!」
「緑谷…」
「俺…また…人殺…して…っ…しかも…それが燈矢兄でっ…」
横たわっていた俺を、起き上がらせる、飯田と八百万
「大丈夫だ、轟くんは正しいことをした、誰がどう言おうと僕はずっとそう言い続けるよ」
「事情はまた今度お聞かせください…でも、心配することは何一つありませんわ」
それを肯定するように、俺を見ていたみんなが少しだけ微笑んでくれた
「まだ状況が理解できてないだろうが…安心しろ轟、ここにいるヤツら全員理解できてない」
「けど、お前が無事で本当に良かったよ」
「まさか先生が来てから一気に状況が変わるとは誰も思わねぇだろ」
「俺のせいかもな…すまない轟」
「いや…先生のせいじゃ…」
本当に状況がコロコロ変わりすぎて…よくわかんねぇ
「ていうか先生戻ってくるなら言ってよー!」
「さっきも言っただろ、芦戸…そんな余裕なかったんだ」
「やっぱり、先生はツンデ…ぐへっ!」
「そんなんじゃない、次言ったらどうなるかわかってるな?上鳴」
「…ふ…ははっ…」
「あ、轟が笑った!」
きっと俺は疲れてる
あんなことがあったあとなのに何故か笑えてしまって
やっぱりまだ正気には戻れてなくて…
でも…みんなが居てくれるから、きっと大丈夫だと俺は確信が持てた - 361主25/08/08(金) 21:11:50
○ヶ月後
「まーた、寝てるんかコイツ」
「轟って前からこうだったのか?」
「うーん?轟ちゃんはよく食べる子だったけど…寝るイメージは無かったわね」
爆豪、心操、蛙吹が寝ている轟を見ながらそんな会話を交わしていた
最終決戦が終わり、平和な日常が戻っていた
「悪夢…見てねぇといいな」
「そうね…幸せな夢を見てて欲しいわ」
「俺の洗脳でどうにかならないか考えたりしてるんだが…」
「えー、めんどいから轟が寝たら無理やり起こそうぜ!10万ボルトぐらいで!」
「上鳴ちゃん、怒るわよ」
「轟も疲れてるんだ、寝かせてやれ、まだ授業まで時間があるからな」
──────────
「でー…エンデヴァーさん、最近焦凍くんの調子はどうですか?」
「最近よく寝ると聞いている」
「あぁ、お家に帰ってないんですね」
「寝るか…疲れてるんですかね?」
「色々あったあとでまだ精神的疲労があるんだろう…俺にはどうしようもできないが」
「…焦凍くんの殺人の件どうします?」
「…」
「そうっすね、今は悩むのが正解です」
「出来れば1番いい方法をあなたには考えて欲しい、子供向き合って欲しい」
「轟燈矢はもう居ない、燈矢くんに向けるはずだった愛情、いやそれ以上の愛を家族に向けてあげてください…もちろん燈矢くんにもね」
「あぁ、分かった」 - 371主25/08/08(金) 21:20:03
「焦凍!今日は何して遊ぶ?」
「燈矢兄とお話したい!」
「またそれかよ…いい加減飽きた〜」
「俺は飽きないのに…」
燈矢兄が少し複雑な顔をしたあと、呆れた笑みを浮かべた
「…仕方ないなぁ…でも、これが終わったら、ボール遊びしような!」
「うん!」
きっと俺は疲れてる
だってこんな都合のいい夢を見るんだから
でも…許して欲しい
家族の幸せを、夢の中でだけでもいいから俺に与えて欲しい
「あのね、燈矢兄…俺、燈矢兄が大好き!」
「…俺も、焦凍が大好きだよ』
俺も燈矢兄も炎より眩しい太陽のような笑みを浮かべていた
【完】 - 38二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 21:22:08
うおおおお完結おめでとうございます!!!!
ハピエン?だ!!! - 39二次元好きの匿名さん25/08/08(金) 21:23:19
完結ありがとうございます!
読んでてすごく楽しかったです!!! - 401主25/08/08(金) 21:25:28
ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
誤字が本当今回酷すぎましたね…
見返すと色んな意味で酷かったです
見てくれて♡押してくれた人に感謝しかありません
あと文章やらを褒めてくれるレスも、感想やらのレスもありがとうございました!反応できずにすいません!
トゥルーエンド…かな?
轟くんに対する愛が足りず…なんか最後ぶん投げた感すごいですが…
本当にありがとうございました!
轟くん!ごめん!そしてエンデヴァー!おめでとう!
エンデヴァーの胃に穴が空いてないといいな… - 41二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 07:05:35
バッドエンドじゃなくてよかった
すごく面白かったです
後遺症残ってるっぽいのがホラーっぽくて好きです - 42二次元好きの匿名さん25/08/09(土) 08:55:39
ああああ!バドエンじゃねえ!!よかった!
やっぱ相澤先生っスわ、かっけぇよ
轟くんがA組を殺さず、ちゃんと愛されたendでめちゃくちゃ嬉しいです!
主お疲れ様、ありがとね