- 1二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:17:02
夜のトレセン学園、研究棟の一室。廊下の明かりはすでに消え、研究室だけが白々と光っている
扉を開けると、部屋いっぱいに漂う薬品の匂いと、紙の山。その中央で、アグネスタキオンが何やら怪しげな液体をかき混ぜていた
「おっ、モルモット君。来るのが遅いじゃないか」
「遅いって、もう22時だぞ? 普通は帰ってる時間だろ」
「普通はな。だが私は非凡だからな。時間は関係ない」
タキオンはクイッとビーカーを掲げ、怪しく光る液体を俺に見せる
「これは何の実験だ?」
「君の反射神経を“ほんのちょっとだけ”上げる薬“ reflexes “だ。副作用はまぁ、多少」
「多少ってなんだよ!」
ツッコミを入れるも、タキオンは聞く耳を持たず、液体を試験管に移し替える
「さぁ、飲んでみてくれ」
「飲ませる前に説明しろ!」
「実験についての説明はもちろんするさ。結果が出てからだけど」
「順番おかしいだろ!」 - 2二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:18:02
そんなやりとりをしていると、机の上の時計が23時を指した。このままでは日付が変わるまで引き留められそうだ
「なぁ、今日はもう帰ろう。明日にしようぜ」
「ふむ。では条件を出そう」
タキオンは不敵に笑う
「この液体を一口だけ飲めば今日は解放してやろう」
「一口だけ、な?」
「もちろん」
覚悟を決め、俺は試験管を手に取った。液体はほのかに青く光っている。正直、体に良いものではなさそうだ。口に含んだ瞬間
「……っ! 何これ、すっぱい!」
「ふふ、成功だ。これで君の反射神経は今日一日だけ、通常時の3%ほど上昇する」
「3%だけ?」
「3%もだぞ? 人間の限界からすれば、これは革命的だ」
呆れつつも、どこか楽しそうに語るタキオンを見て、少しだけ笑ってしまった - 3二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:19:03
帰り際、タキオンがふと声をかけてくる
「また明日もよろしく、モルモット君」
「もう夜中まで付き合わされるのはごめんだぞ」
そう言いながらも、明日もきっと顔を出すだろう自分がいることに気づく
翌日、朝のトレセン学園
「あれ? なんか今日、体が軽いな」
昨日タキオンに飲まされた怪しげな液体。正直なところ、効くとは思っていなかったが目覚めからどうも感覚が鋭い。教室へ向かう途中、突然、廊下の端からウマ娘が走ってきた
「わっ、危ない!」
気づけば俺は無意識のうちに横へかわしていた。しかも、ほんのギリギリのタイミングで
「おいおい、本当に反射神経上がってる?」
不安半分、興味半分のまま一日が始まった - 4二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:20:04
昼休み、食堂にて
テーブルの上のコップが、誰かの肘で倒れかける。その瞬間、俺の手は勝手に動いて水こぼれを防いでいた
「すげぇ! タキオンさんのトレーナーさん、まるで忍者みたい!」
周りの視線が集まり、なんだか照れくさい
夕方、グラウンド。担当ウマ娘の練習を見守っていた時、飛んできたサッカーボールが俺の顔めがけて一直線
「っ!」
反射的に片手でキャッチ。自分でもびっくりするくらい自然に取れてしまった
「わぁ! タキオンさんのトレーナーさん、めちゃくちゃカッコいいです!」
歓声が上がる中、ひとりだけ遠くからこちらを見つめてニヤニヤしている人物がいた
アグネスタキオンだ - 5二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:21:05
夜、再び研究室に呼び出される
「ふふ、どうだった? 効果は?」
「正直、驚いたよ。全部本当に偶然じゃなかった」
「だろう? 君はもう、立派なモルモットだ」
「おい、立派なってなんだよ。というか昨日言ってた副作用って何?」
「安心しろ、明日はさらに5%上げてやる。これで反射神経8%アップだ」
「いや、もうやらないからな!?というが更に5%アップって上げすぎじゃない?大丈夫なの?」
そう言いつつも、タキオンの悪戯っぽい笑顔を見て、もしかしたらと、少しだけ期待してしまう自分がいた
翌日、朝。またもタキオンに捕まり、気づけば謎の液体を飲まされていた
「さぁ、今日は昨日の続きだ。5%アップバージョンだぞ!これはハエや猫クラスの反射神経だ」
「いや、やらないって言ったじゃん!」
抗議も虚しく、喉を通った液体は昨日より甘ったるい。そして、恐れていた事態が起きる - 6二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:22:11
午前中の廊下。突然すれ違った生徒が落としたペンを
「っ!」
バチッ! と空中でキャッチ。しかし勢い余って、ペン先で自分のほっぺを突いてしまう
「いってぇ……」
「す、すごい! でも痛そう」
「ぽっぺから血が出てるけど大丈夫ですか?」
視線が刺さる。すでに嫌な予感しかしない
昼休み、食堂。隣の席で誰かが箸を落とす
「ほい!」
無意識に拾い上げて返す。のだが、速度が速すぎて相手がビクッと後ずさる
「タキオンさんのトレーナーさん。ちょっと怖いです」
「やっぱり更に5%アップは、上げすぎたな」 - 7二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:23:24
夕方、練習場。担当ウマ娘が走っている最中、シューズの紐が解けたのが視界の端に映る
「危ない!」
次の瞬間、俺はコース内に飛び込み、紐を結んでいた。走ってきた本人も、観客も、時間が止まったように固まっている
「速すぎて見えなかった。今のどうやって」
「びっくりさせてごめん。説明できない」
その夜、研究室
「ほう、反射神経8%はやはり別次元だな」
タキオンは今日俺があった内容を記録用紙に楽しそうにペンを走らせる
「いや、もうこれ生活に支障出てるからな!? 食堂でも怖がられたぞ!」
「ふむ、では次は副作用を緩和する実験を」
「次はやらないからな!」
「その反射も実に良い反応だ」
「褒められても嬉しくねぇ!」
結局、その後もしばらく俺は光る反射神経お化けとして学園で妙な噂を立てられることになった - 8二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:25:03
あれから数日。あの異常な反射神経は、ある朝を境にピタッと消えた
「あれ、なんか普通に戻ってる?」
そう思った瞬間、机の上のペンが転がり、気づいた時には床に落ちていた
「うわっ、全然間に合わない」
昨日までなら、目をつぶっていても取れたはずなのに
昼休み、食堂。トレーの上のコップが傾いたが、手が届く前に中身が盛大にこぼれる
「タキオンさんのトレーナーさん、大丈夫ですか!? なんか今日はいつもより鈍いような」
「否定できない」
周囲の視線と失笑がじわりと突き刺さる - 9二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:26:04
夕方、練習場。近くでサッカーをしていたウマ娘が蹴ったボールが、ゆっくりとこちらに向かってくる。昨日までの俺なら、軽く片手でキャッチできたはずが
「ぐっ、おっとっと!」
ボールは顔面に直撃し、そのまま尻もち
「大丈夫ですか?お怪我は」
「大丈夫。だけどプライドが死んだ」
夜、研究室
「ふむ、どうやら薬の効果が完全に切れたようだな」
ニヤニヤと笑うタキオン
「いやもう、普通に生活できないくらいギャップがひどいぞ」
「なるほど。ならば再び、“ 改良型reflexes “を試すべきだな」
「絶対に嫌だ!」
「そう言うと思ったよ、モルモット君」 - 10二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:27:05
タキオンは引き出しから、また怪しげな色の液体を取り出す。俺は条件反射で一歩下がったが
「っと!」
後ろに置いてあった椅子につまずき、盛大に転倒
「ああ、これはもう手遅れだな」
タキオンは笑いながら手を差し伸べてきた。その手を取り起き上がると、不思議と少しだけ心が温かくなった
「まぁ、怪我しないようにだけ頼むよ」
「ふふ、任せておけ。君の安全管理は私の実験よりも第一優先だからな」
そう言って笑うタキオンの顔は、少しだけ優しかった
こうして、俺とタキオンの“反射神経実験シリーズ”は終わった。多分、次の怪しげな研究テーマが見つかるまでは - 11二次元好きの匿名さん25/08/10(日) 19:28:06
以上で終了だよ
三連休2日とも家でゴロゴロで終わったから、最終日は何処かに出掛けようかねェ - 12二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 02:27:07
感覚と制御のズレが大きいと、効果発生中も戻ったあとも順応が大変そうだなぁ