- 1二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 11:56:19
- 2二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 12:05:30
「つ、月村さん! 」
「ぽんこつ一号……何? 」
「わ、私のレッスンを見てもらいたいのですが! 」
「珍しいね、そんな事言ってくるなんて。私のペース、知ってるよね」
「ええ、もちろんご存知ですとも。……それでも、無謀だったとしても、私は月村さんにお願いしたいのです! 」
「……何か、理由があるの? 」
「理由は……秘密、ですわ」
「なにそれ。まぁいいや。いいよ、見てあげる。しっかりついてきてよね」
「はい! もちろんですとも!」 - 3二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 12:31:54
「月村さん! こうでしょうか! 」
「あっ惜しい! もっと、こうして」
「こうして……こう、ですわね! 」
「そうそう! ふふっ、出来たじゃん」
「ありがとうございます、月村さん! やっぱり月村さんって、とってもお優しい方なんですのね! 」
「さ、それじゃあ次行くよ」
「はい!よろしくお願いします! 」 - 4二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 12:49:21
「月村さん、今日はありがとうございました」
「……やっぱり倉本ってさ、根性あるよね」
「私、諦めは悪い方なんですのよ」
「そっか。……いい所だね」
「月村さん、改めて今日は本当にありがとうございました。私、何も出来ないばっかりに月村さんのお手を煩わせ……」
「はぁ。そんな卑下しなくてもいいんじゃない? 今の倉本は凄いよ。しっかり、並のアイドル以上にはなってきてる。もっと自信持ってよ」
「月村さん……」
「……さ、さぁ! ほら、早く帰るよ! ばいばい、また明日! 」
「! はい、また明日、ですわ!」 - 5二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 13:12:32
「月村さん! 」
「あれ、倉本。……なんであなたがここにいるの? 」
「私は、本日ここのお仕事をしに参りましたの! 月村さんも? 」
「本当はことねがやるはずだったんだけどね。昨日、熱出しちゃって。だから代わりに私がやることになったの」
「あら、そうなんですのね! 」
「そういえば……さっき、チームの番号札配られたよね。……何番? 」
「ええと、私は……8番でしたわ! 」
「私も、8番……」
「あら! 一緒のチームでしたのね! 」
「あと一人は? 」
「ばぁっ! 」
「きゃっ!? 」
「しっ、篠澤さん!? 」
「最後の一人は、私」 - 6二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 13:40:17
「月村さん、どうしましょう……緊張してきましたわ
わ」
「広、千奈。先に謝っておくよ、ごめん。少し、あなた達を見くびってた。大丈夫だよ千奈。私がついてる。足、引っ張ってもいいよ。だから、好きにやろう」
「手毬……頼もしい、ね」
「ええ、篠澤さんのおっしゃる通りですわ。月村さんと一緒になれて、良かったですわ」
「……ほら、行くよ。千奈、掛け声」
「はい! わかりましたわ! 私達nightmare! 張り切って参りましょう! 」
「おー」
「おー! 」 - 7二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 13:50:42
保守
- 8二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 14:48:23
保守
- 9二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 15:02:49
「月村さん! 篠澤さん! やりましたわ! 」
「大成功……いぇい」
「私達、三人一緒なんだよ? 失敗とかありえないでしょ」
「そうですわね! 」
「停電した時は驚いたけど……ありがとう、広」
「ちゃんとこういうことも見越してたから、ね。どういたしまして」
「また次のお仕事もご一緒できたらいいのですが」
「私はもういい、かな。千奈が心配できただけだし」
「……私はいいから。また、やろうね。広、千奈」
「はい!」 - 10二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 15:12:46
ここからどう曇るのか
- 11二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 15:13:36
手毬…?
- 12二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 15:15:37
「月村さん」
「……急に呼び出して、何? 」
「あの、お伝えしたいことがありまして」
「私に、伝えたいこと? 」
「実は……わた、私! 月村さんの事が、好きだったんでしゅの! 」
「……ぷっ。普通、そこで噛む? 千奈。告白、ってことでいいんだよね」
「は、はいぃ……」
「可愛いね。私、千奈のそういう所好きだよ」
「えっ? 」
「だから……私も千奈が好きだって言ってるんだよ。告白は成功したの」
「嬉しい、ですわ」
「うん。私も、嬉しい」 - 13二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 15:38:29
「月村さん。デート、って楽しいですわね」
「楽しんでもらえてるなら良かったよ。私も、凄く楽しい」
「あ、あのぅ……」
「何? 」
「手を、繋いでみたくて」
「……私今手汗凄いけど、いいの? 」
「は、はい! それでも私、繋いでみたいですわ! 」
「わかったよ。……ほら、これでいい? 」
「はいっ! えへへ、暖かいですわね」
「千奈の手が冷たいだけじゃない? 」
「しばらくこのままでも……大丈夫でしょうか」
「うん、いいよ。千奈の気が済むまで、ずっと離さないから」
「ありがとうございます! 」 - 14二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 21:34:29
「月村さん、クリスマスですわね! 」
「うん、そうだね」
「月村さんは、普段クリスマスは何をしてお過ごしになれてたましたの? 」
「今までは……レッスン、かな。クリスマスなんて何も変わらないいつも通りの日って認識だったから」
「まぁ! でしたら、こういった日にデートというのは初めてですの? 」
「一回だけ、美鈴としたことあるけど……恋人とするのは初めて」
「ふふっ、月村さんの初めてをいただけて嬉しいですわ! 」
「その言い方、ちょっと恥ずかしいんだけど」 - 15二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 21:40:23
- 16二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 21:42:56
- 17二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 23:09:44
「月村さん! 雪ですわ! 」
「綺麗だね」
「はい! 私、今まであまり雪というものは好きではなかったのですけれど……月村さんと一緒にいる時の雪なら、大好きになれそうですわ」
「千奈、雪苦手なんだ」
「えっと……視界が遮られてしまうので。それに、冷たいですし」
「わかる。手、悴んじゃうし……」
「でも今でしたら! 私の手を、月村さんの手が暖めてくださいますもの」
「私、冷え性だけど」
「それでも、暖かいのですわ! 」
「……そっか。千奈の手も、とっても暖かいよ」 - 18二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 02:10:58
てまちなのイチャイチャは脳に効くねぇ…
さて、いつどん底に行くかな(サラダ脳) - 19二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 09:29:38
保守
- 20二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 14:42:11
「月村さん」
「何? 千奈」
「私、あなたと今日を過ごせてとっても幸せですわ! 」
「うん、私も。今日を千奈と過ごせて、良かった」
「……あのっ」
「千奈。今日、クリスマスだよね」
「? えぇ、そうですわね」
「プレゼントあげる。目、瞑って」
「こ、こう……」
「うん、そう」
「……!? 」
「こういうことするの、千奈が初めてで……上手に出来たか分からないけど。喜んでくれた、かな」
「は、はい。とっても……とっても、嬉しいですわ。きす、というのはこんなにも幸せになれるものですのね」 - 21二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 20:09:01
「月村さん月村さん! 大晦日、ですわね! 」
「そうだね」
「もう少しで新年……月村さんと一緒に過ごせて幸せですわぁ」
「私も。千奈と一緒に過ごせて嬉しい」
「ふふっ。あ、この匂いは……ご飯が出来上がった匂いですわ! 」
「倉本家のご飯……本当に、私も一緒でいいの? 」
「はい、もちろんですわ! 私の家族も、皆月村さんを暖かく歓迎してくれますわ」
「そっか。千奈、今日誘ってくれてありがと。まさかお泊まりしようだなんて」
「私ね、月村さんとまだやれてないことを色々考えてみましたの。そうして、すぐに出てきたのがお泊まりと……一緒に寝ること、ですわ」
「そういえば、膝枕とかはしてたけどまだ一緒に寝たことはなかったっけ」
「それから、一緒にお風呂にも入ってみたかったんですの! 」
「お風呂……」
「いや、ですの? 」
「嫌な訳ない。ただ、さ。自分の体見られるのが恥ずかしくて。私そんな痩せてる訳じゃないし」
「そんな事ないですわ! 月村さんはとてもスレンダーだと思います! 」
「……わかった。入ろっか」 - 22二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 01:16:12
「月村さん。あけまして、おめでとうございます」
「千奈、明けましておめでとう。今年も、よろしくね」
「はい! 私の方こそ、今年もよろしくお願い致しますわ! 」
「ねえ、千奈。大丈夫? 私、冷たくない? 」
「はい! とても、暖かくて……このままずぅっと抱きついていたいですわ」
「じゃあ、今年はいっぱいお泊まりしようね。いっぱいこうやって、抱きついて寝よう」
「はい! いっぱいいっぱい、こうしてたいですわ! 」
「もう明日も早いし寝よっか。おやすみ、千奈」
「はい! おやすみなさい、月村さん」
「……千奈」
「はい、なんでしょう」
「私の事、名前で呼んでよ」
「……おやすみなさい、手毬さん」
「おやすみ、千奈」 - 23二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 02:33:15
「千奈、千奈! 」
「手毬さん? あら? 私は確か寝ていたはずでは? 」
「流石に寝すぎ。もう三時間も経ってるんだよ」
「三時間? それだと少し短くないですか? 」
「……何言ってるの? 千奈、もしかしてまだ寝ぼけてる? 」
「えっと……そうみたいですわね。恥ずかしいですわ」
「でも、よく寝れたみたいで何よりだよ。ほら、ピクニック再開するよ」
「ピクニック? 」 - 24二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 03:01:05
手毬さんに呼びかけられて私は目を覚まします。するとそこは、私のお部屋ではなく暖かい日差しに照らされた草原の、手毬さんのお膝の上でした。私、確か手毬さんと寝ていたはずじゃ? それに、ピクニック?
「もう、今日は二人で一緒に、あそこの山にピクニックに行くって話だったでしょ」
「そう言われるとそうだったような……? 」
「ほら、行くよ。手、繋ごっか」
「はい! わかりましたわ! 」
何が何だかよく分かりませんけれど……折角手毬さんとのピクニックなんですもの、楽しんでいかないと! ですわね。 - 25二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 11:05:40
ほし
- 26二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 17:02:54
「着いた……千奈、山頂だよ! 」
「まぁ……まぁ! なんて綺麗な景色なんでしょう! 」
「天川全体が見渡せて……いいね、ここ」
「そうですわね! 手毬さん、お写真を撮りましょう! 」
「うん、わかった。こう……だったよね」
「それでは……」
「はい、ちーず」
「ふふっ、大切な思い出ですわね♪ 」
「そうだね。帰ったら、写真立てに飾ろっか」 - 27二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 20:08:50
「手毬さん、この後はどうなさいますの? 」
「お昼にしよっか。ほら、ちょうどあそこに座れるところあるから」
「はい、そうですわね! 」
手毬さんと過ごせることが幸せで、色々な疑問が次から次へと消え去っていきます。ここはどこなんでしょう。私達は何故ピクニックに来ているのでしょう。
山頂につくと、丁度ベンチが置いてありました。そこに手毬さんと腰をかけて、リュックサックからお弁当を取りだします。こうしてると、思い出しますわね。篠澤さんと、花海さんと、三人で山登りに挑戦した時のことを。
「わぁ、美味しそうですわ! 」
「千奈が作ったのに? 」
「へ? 私が? 」
「え? うん、そうだけど。千奈、もしかしてだけど疲れてる? 」
へ? 私、料理は全くもってダメな人間なのですけれど…… - 28二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 20:11:11
流れ変わったな
- 29二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 20:52:03
「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした! 我ながら絶品でしたわね! 」
「うん。いつもいつも、千奈の作ってくれる料理は言葉にできないくらい美味しいんだから」
……はっ。私、気づいてしまいましたわ。もしやこれは、夢の世界なのでは? 約束した覚えのない月村さんとのピクニックに、作った覚えのない料理、しかもとても私が作ったとは思えないほどの絶品と……私の身に覚えのないことが次々と起こっています。
「月村さん。私達、アイドルですわよね? 」
「何言ってるの? アイドルは二年前に辞めたでしょ。私達の結婚にあわせて」
へっ? 私、月村さんと結婚しておりますの?
と、ともかく。これで夢の世界である事が確定しましたわ!
「そうでしたわね。昔の事を思い出していたら、記憶が曖昧になってしまったみたいですわ」
「……何それ。ほら、早く片付けて降りるよ」
「はいっ! 」 - 30二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 21:26:20
夢だとわかってしまえばもう何も不安などありませんわ! さぁ、あとは楽しんで覚めるのを待つのみ、ですわね!
「手毬さん、だいぶ降りてきましたわね」
「うん、そうだね。もうちょっとでふもとにつくみたい」
「とても、楽しいピクニックになりましたわね! 」
「今度、広達と登ったところも連れてってよ」
「はい! もちろんですわ! 」
それからどれくらいが経ったでしょうか。他愛もない話をしているうちに、もうふもと付近まで降りてくることができました。そういえば気になったのですが。私、手毬さんと結婚しているんですわよね? でしたら、私はどんな生活をしているのでしょうか。一軒家を買っていたりするのでしょうか?
気になりますわ! - 31二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 21:55:55
「ふぅ。無事、降りてこれたね」
「はい、そうですわね! 」
「少し、疲れちゃいましたわ。あそこのベンチでお休みさせてくださいませ……」
「うん、いいよ。休もっか」
それから無事、ふもとに着きまして。私がかなり疲れていて、足もものすごーく痛かったので、ふもとにあるベンチで休んでいました。その時でしたわ。
「……きゃっ!? 」
『緊急地震速報 緊急地震速報 現在、強い揺れが発生しております。皆様、頭を守って揺れが収まるまでその場から動かないでください』
私と手毬さんの携帯から大きな音がして、目の前にある電柱のスピーカーから放送が入ります。ど、どど、どうしましょう! どこか、どこか安全なところは……!
「っ! 千奈! 」
「てまっ」
慌てるあまり、私は気づいていませんでした。私の、後ろの気が私目掛けて倒れてきていることに。
手毬さんに背中を押されて私は間一髪、助かりました。けれど……
「手毬さん!? 」
私を庇って、手毬さんが木に押し潰されてしまいました。……更に、私の頭が真っ白になって何もかもが分からなくなってきます。手毬さん、手毬さん手毬さん手毬さんっ! - 32二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 22:04:58
!?
- 33二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 22:16:02
それから、何があったのかは全くと言っていいほど覚えていません。わかりましたわ。これはきっと、悪夢なのだと。なら、これで覚めれるはず。そう、思っていましたわ。でも、違いました。そんな、現実が甘いわけがありませんでした。
「手毬……さん……? 」
目を覚ましたらそこは真っ白なお部屋でしたわ。そして、目の前には棺が置かれています。この瞬間に、私はもう全てを察してしまいました。手毬さんは……死んだのだと。私を庇ったから。
「手毬さ……痛っ!? 」
その棺へと、駆け寄ろうとします。そうして、足を動かした瞬間。私に、激痛が襲いかかってきます。あぁ……私も何とか生き延びただけでかなりお怪我はしていますのね。
「手毬さん……」
ゆっくりと、ゆっくりと足を動かして、やっと棺へと辿り着きます。そこから見えた手毬さんの体は、もはや原型をとどめてない程にぼろぼろで。その顔も、数え切れないほどの傷ができていて。見ているだけで、吐き気と涙が抑えきれませんでした。
なんででしょう。見たくないのに。見ていたく、ないのに。吸い込まれるように、手毬さんを見つめてしまいます。 - 34二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 01:31:45
「な……ちな……千奈! 」
「あっ……手毬さん? 」
「大丈夫? 」
「はい、すいません。私、悪い夢を見てしまっていたみたいですわ」
「そっか。……あんまり無理しないでね」
「はい、もちろんですわ」
そしてまた、手毬さんに強く呼ばれて目を覚まします。そしたらそこは、私の部屋で目の前には手毬さんのお腹があって。夢から覚めたのだと、実感します。
どうしましょう……手毬さんのお顔を見ただけで泣いてしまいそうですわ - 35二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 05:02:24
良かった夢オチか…
- 36二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 12:21:45
ほし
- 37二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 14:54:56
「怖かった、よね」
「……はい。とても怖くて、最悪とも呼べる夢でしたわ」
「抱きしめても、いい? 」
「はい。沢山、抱きしめてくださいませ」
手毬さんは本当に優しい人ですわ。こうやって、私をすぐに気遣ってくれて。私の心配をしてくれて……それから、私が求めているものを直ぐに当ててそれを私にくださる。益々、好きになっていってしまいますわね。
「大丈夫? 」
「はい! 心配いりませんわ! もう、大丈夫ですの! 」
「なら良かった。朝ごはん、作ったから食べよ。行くんでしょ、初詣」
「はい! すぐに行くので少しお待ちくださいませ! 」 - 38二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 15:27:20
「まぁ、とっても美味しいですわ! 」
「そう? なら良かった。頑張って、作ってみたんだ。いつも千奈にばかり作って貰ってたから」
「手毬さんがこんなに料理がお上手だったなんて。もし良かったら、ですけど。ご飯、一緒に作りたいですわ」
「それ、いいね。凄い楽しそう」
「決まりですわね! 」
……え? - 39二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 20:31:50
夢、ですの? これもまた……夢? ようやく、覚めたと思いましたのに。それに、私の体が言うことを聞いてくれませんわ。私の意志に関係なく、言葉が発せられて、体が動いて。それはまるで、私が主役の人形劇でも始まったような。
- 40二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 20:35:04
- 41二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 20:36:18
これもしかして胡蝶の夢ってやつ?
- 42二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 20:55:38
果たしてどこから夢なんだろうね?
- 43二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 21:22:29
1が情を出してくれることに賭ける
- 44二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 22:15:17
「ご馳走様でした! 」
「ご馳走様でした。どう? 美味しかった、かな」
「はい! とても美味しかったですわ! 是非、またいただきたいですわ! 」
手毬さんが作ってくれたご飯を食べ終えて、私達は初詣をしに近くの神社へと参ります。……嫌な予感がしますわ
「わっ。たくさん雪積もってるね」
「そうですわね。こんなに積もったのはいつぶりでしょうか」
「千奈。お参りが終わったら、雪だるま作ろうよ」
「それ、いいですわね! 是非ともやりましょう! 」
外に出てみたら、真っ白に染まった空が私達をお出迎えしてくださりました。……これも、ですわね。本来であれば、雪なんて振っていませんでしたもの。
「千奈は何お願いするの? 」
「それは秘密ですわ。恥ずかしいですもの」
「そっか。……あ、見えてきたよ」 - 45二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 23:49:56
「千奈、楽しかったね」
「そうですわね! ……少し、食べすぎてしまった気もしますけれど」
不思議なことに、神社に着いたと思ったらもうそのまま終わっていましたわ。私、いつの間にお参りを済ませたのでしょう?
「それじゃあ帰ろっか」
「はい、そうですわね」
そう、手毬さんと手を繋いで歩いている時のことでした。
「わっ……とと」
「路面凍結してるみたいだね。転ばないように気をつけて」
「ありがとうございます……おかげで転ばずに済みましたわ」
「……当たり前の事をしただけだよ」
「まぁ、ふふ。私、本当に愛されているんですのね。手毬さ──」
「千奈っ! 」
また、手毬さんに背中を押されました。また、手毬さんが私を庇いました。今度は車でした。車が滑って、私達の方に突撃してきていました。
私を庇った手毬さんは、車に押し潰されて。
もう、救急なんて呼ばなくてもわかるくらいに即死でした。
なんで、なんですの? なんでこんな、手毬さんが死ぬ夢ばかり見てしまいますの? 今まで、こんなことなんてなかったはずですのに…… - 46二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 04:56:20
ほし
- 47二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 04:59:51
終わりがないのが終わり
それがレクイエム… - 48二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 10:34:13
「千奈……千奈っ!! 」
「……」
これで三度目。神様は本当にいたずらがお好きなのですね。私が我儘ばかり言っていたからでしょうか?
「大丈夫? ずっと魘されてたよ」
「大丈夫ですわ。少し、嫌な夢を見ただけですから」
「大丈夫じゃないって。顔色すごい悪いよ」
「えっ」
「お嬢様! 」
目を覚ますと、そこはまた、私の部屋でした。けれど……辺りは、真っ暗。手毬さんが、必死に私を強く抱き締めてくれてます。それからしばらくすると、香名江もやってきました。もしかして……やっと、覚めましたの?
「手毬さん。私、手毬さんに料理を振舞ったことってありましたっけ」
「何言ってるの? 千奈料理できないでしょ」
「あ……あぁ……」
やっと覚められたという喜びから、涙が止まらなくて。私はそのまま、手毬さんに泣きついてしまいました。流石に夜中ということもあって、声は殺していましたが。 - 49二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 10:34:56
持ち直したな
- 50二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:24:15
「……申し訳ないですわ。折角の、初詣でしたのに」
「気にしないでいいよ。初詣なんて何回でも行けばいいんだから」
あれから数時間が経ちまして、結局初詣は中止となって。私は今ベットで一人横になっていますわ。折角楽しみにしていましたのに。手毬さんも、とても楽しみにしていたでしょうに……申し訳ないですわ。
「それに、私も行くなら元気な千奈と行きたいから」
「手毬さん……」
「なぁに、千奈」
「手を、握ってもらっても? 」
「……うん」
……あら? 手を握って、と言ったら手毬さんの顔が険しい表情になってしまいましたわ。もしかして、私と手を握るのは嫌なのでしょうか
「やっぱり、いいですわ。ですからどうか、そばに居てくださいませ」
「うん、居るよ。ずっと」 - 51二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 13:20:38
手毬さんは、私のことをずっと見守っていてくれて。ご飯もご用意してくださって。とても暖かくて……そのまま、気持ちよく眠れましたわ。あの悪夢も、見ることはありませんでした。
ですが、それから手毬さんがお泊まりを嫌がるようになってしまいました。お泊まりしても、一緒に寝てくださらなくなりました。そのまま……何年かが経ちまして。私達は、同棲をすることになりました。 - 52二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 16:23:53
「わぁ……おっきなベッドですわね! でも、一つしかないですわ? 」
「ほんとだね」
「……手毬さん。我儘言ってもいいでしょうか」
「うん、いいよ。どうしたの? 千奈」
「今夜……また、一緒に寝たいですわ。せっかくこうやって同棲することになったんですもの。毎日、とは行かずとも」
「わかった。いいよ、寝よっか」
手毬さんは少しだけ考えた後、いいよ、と言ってくれました。ふふ、久しぶりに手毬さんと寝れますわ♪
「手毬さん、やっぱり暖かいですわ」
「千奈が冷たいだけじゃないの? 」
「いえ、手毬さんが暖かいのです」
「……そっか。ね、千奈」
「はい、何でしょう」
「ずっと……こうしてたいね」
「はい、私もですわ」 - 53二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:08:47
まるで千奈ロウデイズ
- 54二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:58:31
何故手毬は千奈と寝るのを嫌がっているのだろう?ボブは訝しんだ
- 55二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 01:08:01
ほしゅ
- 56二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 04:10:06
また、悪夢を見ましたわ。しかも今度は、前よりもさらに最悪な、一つの夢を。私は、暗闇に包まれた一本道に立たされていました。目の前だけしか見えなくて。左右も見えない。近くには当然、誰もいません。
不安に思っていると、遠くから声がしました。
「あ゛っ……あ゛あ゛っ゛!! 」
それは……手毬さんの悲鳴。遠くにいるはずなのに、鮮明に聞こえてきます。きぃぃぃん、という音と共に。なぜでしょう。なにが起きているのか、わかってしまいます。手毬さんは今──
何者かに、剣で体を滅多刺しにされているのです。
「手毬さん!! 」
私は当然、走りましたわ。手毬さんを助けるんだ、と。走って、疲れて、止まって。そうして止まった時に、頭の中に無数の映像が流れてきました。
全部、私と手毬さんが一緒にいて。それで、手毬さんが私の前で死んでしまうのです。一回走っただけで、もう何回の死を見たでしょうか。
転落死に、餓死に……首を吊って自殺、通り魔に刺殺、強盗に銃殺。私が首を絞めて殺しているのもありましたわね。
地獄、とはまさにこの事を指すのでしょうか。遠くの方では手毬さんが刺されていて、時期に死んでしまいますわ。けど、一歩歩くだけでも手毬さんの死に様が頭の中に流れてきてしまう。私が、何をしたというのでしょう。ただ私は、手毬さんと幸せになりたいだけ、ですのに。 - 57二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 04:24:31
……どれほど、歩いたでしょうか。どれほど、頭の中で手毬さんが死んだでしょうか。ようやく、私は声のする方に辿り着きました。そこには、蹲ってる手毬さんがいました。けれど、剣はどこにもありませんでした。
「手毬、さん……」
手毬さんが、そっと私の方を向きます。そうして、見えた顔は……黒塗りのモザイクで溢れていて、顔が見えなくて。本当に、手毬さん……なのでしょうか?
もう、怖いだなんて思いませんでしたわ。感情なんて、消し去っていましたもの。夢の中だからできること、ですわね。
「お ま え が さ さ れ ろ」
その、到底手毬さんとは呼べないような化け物は、呪いとも呼べるような声で私にそう、語り掛けました。
そして次の瞬間には、もう。
「え」
心臓に、剣が刺さっていました。首が、切断されていました。
あぁ。これできっと、こんな夢から覚めてしまえるのでしょうか。 - 58二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 04:29:03
「千奈……千奈っ!! ねぇ千奈!! 」
「てまっ」
手毬さんが、今にも泣き出しそうなくらい必死に私を揺さぶっていました。そして、手毬さんの名前を呼ぼうとした瞬間。とてつもないほどの吐き気が私の喉を登ってきます。
「う゛」
「そう、だよね。あんな夢見たら、気持ち悪くなるよね。……ほら、袋だよ」
手毬さんがそっと袋を広げてくれました。我慢できず、私はその袋に嘔吐してしまいました。……何故、ですの? 何故、手毬さんがあの夢のことを知っていますの?
「千奈。ちょっと、大事な話してもいい? 」
「はい、聞かせてくださいませ」 - 59二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 04:40:59
しばらくしまして、吐き気は落ち着きました。
……そして、手毬さんの大事なお話、とは。きっと、あの夢の事なんでしょうね。
「今から言うこと、信じてくれる? 」
「はい、もちろんですわ。あなたを恋い慕うものとして、絶対に疑ったりなんてしませんわ、約束します」
「……ありがと。これは、私が千奈と寝るのを嫌がってた理由にもなるんだけど、ね。私は、魔女の生まれ変わりなんだ」
「魔女、ですの? 」
魔女。小さい頃に、絵本で読んでいた不思議な存在。
そういえば前に、篠澤さんが教えてくださったような。はるか昔、この世界には魔女が存在していた、と。
「うん、魔女。千奈はさ、魔法ってあると思う? 」
「絵本のようなもの、ですわよね。ずっとずっと昔であれば、あったのでは無いのでしょうか? 」
「……正解だよ。だからもちろん、私にも魔法はあった。だし、なんなら今もある」
「もしかして……それが? 」
わかりましたわ。全て。悪夢の原因。それから、手毬さんが私と寝るのを拒んでいた理由。
「うん。私の魔法だよ。私の魔法は、呪いの魔法。私が触った人間は、地獄を超えるほどの悪夢を見る。もちろん、私も」 - 60二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 04:58:53
「じゃあ、手毬さんも」
「うん、見たよ。……数え切れないくらい、千奈が死ぬとこ」
「……ごめんなさい。私、知らなくて。手毬さん、迷惑でしたわよね。何度も寝ようって。私の為を思ってくれていましたのに」
「はぁ。やっぱりまだちょっとぽんこつだよね、千奈」
「ぽっ!? ど、どうしましたの急に」
「もう少し我儘になってもいいんだよ、ってこと。でもさ、千奈。これで……私と、寝たく無くなったでしょ」
「いえ。申し訳ないですが……私は、まだ手毬さんと寝たいですわ。悪夢を見たって関係ありません。その後に、手毬さんが私の心配をしてくれる。私を抱きしめてくれる。それだけで、私はとても嬉しいのです」
「……無理、してない? 」
「ええ、本心ですわ。私は、どれだけ傷つこうが手毬さんのそばに居たい。手毬さんに、触れていたいですわ」
「ごめん、さっきの嘘。千奈って、我儘なんだね」
手毬さんが、私に涙を浮かべながら優しく微笑んでくれました。その笑顔を見て、私の心が。あの夢を見て感じた苦しさが、全部消えていくのを感じましたわ。
「あんな夢を見たばかりですが……一緒に、横になりませんか? 私、手毬さんに抱きついてる時間がたまらなく好きで」
「いいよ。私も、千奈に抱きついてる時間はだいすき。でも、本当にいいの? もしかしたら、あれより酷いのを見ちゃうかもしれないんだよ? 」
「大丈夫ですわ。夢の原因。それから、手毬さんのあたたかい気遣い。それらがわかったのであれば! 」
「……本当に、どこまで明るいんだか」
抱きつくこと数分。うとうととしてきて、私はまた、夢を見ます。 - 61二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 05:09:04
それは、とてもとても、あたたかい夢でした。手毬さんと出会ってから、今まで過ごした楽しい日々。アイドルとして輝いてきた、誇れる日々。
「あ、ぽんこつ」
「倉本……」
「千奈、愛してる」
数え切れないほど、手毬さんが、月村さんが私の名前を呼んでくれます。その全部に、心が踊って。懐かしいですわね。私、最初は月村さんの事を怖い人、いじわるな人だと思っていて……でも、そこから優しい人だってわかってきて。そこから、恋を自覚するのはあっという間でしたわね。
結婚と……それから、同棲を発表した時も大変楽しかったのを覚えていますわ。初星の皆様が総出でお祝いしてくださって。星南お姉様、涙しておりましたわね。
ねぇ、手毬さん。私ね、思うのです。呪いはいつしか、解けるものなのだと。貴方は呪いの魔法だなんて言いましたけれど。私は、呪いだなんて思ったりしませんわ。それは、素敵なものだと思います。こうして、こんなにも素敵な夢を見ることができているんですもの。
私、あなたと出会えて本当に、本当に幸せですわ。 - 62二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 05:11:23
「月村さん、おはようございます! 懐かしい夢を見ましたわね」
「うん、そうだね。本当に、懐かしい夢を見たよ。それから。手毬って呼んで、って言ったでしょ。……ふふ。おはよ、倉本」
fin. - 63二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 05:27:53
- 64二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 05:48:19
乙!ちゃんと晴れてて良かった…
- 65二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 10:33:58
ごめんこの手のSS書く人って雑に曇らせて放りっぱなしで終わらせる人しか居ないと思ってたわ
ちゃんと晴らしてくれてありがとう