- 1◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 21:41:17
- 2◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 21:42:24
- 3◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 21:44:27
〜〜〜
陽が傾き出した頃、油屋は開店の支度を始める。
壁に掛けられた出勤札を、カエル男やナメクジ女たちが手に取り、ひとつひとつ裏返していく。 その中に、リンと千尋の姿もあった。
まず初めに、広間の雑巾掛け。
リンと数人の小湯女たちは両手に雑巾を持ち、奥から手前へと勢いよく駆け抜けていく。
が、千尋は、相変わらず遅れをとっていた。
「……はぁっ、はぁ……リンさん待って……!」
それを何度か繰り返したところで、木桶の水に雑巾を浸けて汚れを落とす。
千尋は小さな手で、力いっぱい雑巾を絞った。
「……ふっ、んんっ……」 - 4◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 21:44:57
ふと、リンが隣に立ち、口を開く。
「……千。お前、前よか器用になってんじゃん」
「……えっ?本当?」
千尋はリンを見上げ、目をぱちくりさせた。
「おうよ。最初の頃なんか、全然力入ってなかったもんな」
リンはそう答え、ニッと笑いかける。
「……ありがとう」
千尋は小さく微笑み返すと、雑巾を広げた。
ーーー
1.兄役が来て、仕事の指示を出す
2.ハク(仕事モード)が来る
3.同じ頃、ある神様が『泡湯』の受付をしている
4. >>5
dice1d4=2 (2)
- 5◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 21:52:57
「リン、千」
突如、背後から響いた淡々とした声に、千尋の方がびくんと跳ねた。
一方、リンは「めんどくせー奴が来た」と言いたげに、眉を顰める。
そこには、白い水干の、容姿端麗な少年が立っていた。
「無駄口をきくな。早く掃除を終わらせろ。もうすぐお客様が入られるというのに」
「ちえっ、ちょっと喋ってただけじゃねーの。石頭が」
リンは唇を尖らせて雑巾を乱暴に広げた。
千尋は一言「ごめんなさい」と返したが、落ち込んではいなかった。
ハクが決して本心で言っているわけではないと、仕事の時は“ハク様”でいなければならないことを、知っているからだ。 - 6二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 22:01:36
観たのだいぶ前で忘れてるけど楽しそやね
- 7◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 22:05:49
「リン、今夜は団体様がいらっしゃる。宴会の会場の支度をしているが、まだ出来ていない。そなた、手伝いに行け」
ハクは帳簿を片手に淡々と指示を出す。
が、リンはそっけなく答えた。
「ああ?“大湯”の客は?千ひとりに任せろってのかよ?」
「団体の方が位も高い。ゆえにそちらが優先だ。それに……」
ハクはそう言いかけて、千尋に視線を移す。
「千は十分、ひとりでやれるようになったはずだ」
そう口にするハクの目は、一瞬だけ優しく、温かかった。
千尋はそれを決して見逃さなかった。 - 8◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 22:09:00
「……リンさん、大丈夫。私ひとりでも出来るから。それより、団体のお客さんの方、行ってあげて」
リンはため息を吐きながらも、すぐにいつもの調子で答えた。
「わかったよ、その代わりドジ踏むんじゃねえぞ。困っても助けにゃ行けねえんだから」
「うん……!」
にっこり微笑んで答える妹分に、リンも満足そうな笑みを浮かべると、ハクに振り返った。
「宴会場だな?んじゃ、すぐ行ってくる」
リンが早足で去っていくと、ハクは千尋にそっと近づいて、耳打ちした。
「……仕事が済んだら、また部屋で話そう」
「……うん。きっと」
千尋も小さく囁く。ハクは頷くと、すぐにスンとした表情に戻り、ツカツカと立ち去っていった。 - 9◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 22:11:30
- 10◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 22:26:12
〜〜〜
油屋の上階にある、特別な一室。
客用のソファーにどっしりと腰掛けているのは、巨大な大根の神。
福々しく肥え太った巨体。真っ白な肌。裏返した朱漆の盃のような被り物。その名は——おしら様。
その傍らには、立派な身なりのカエル男——『父役』が控えている。
「……お客様、ご指名の娘はお決まりでしょうか?」
おしら様は、『泡姫ご紹介帳』と表紙に書かれた帳面をパラパラとめくっている。
しかし——どこかつまらなさそうに、それをパタンと閉じてしまった。 - 11◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 22:27:40
『……ウ〜〜……』
おしら様が父役を見下ろし、低く唸る。
「……はぁ、人間の娘が良いとおっしゃる?……それはまた随分と変わったご趣味で」
おしら様は人差し指を立て、さらに唸り声を上げた。
父役はそれを聞いて、ますます首を傾げる。
「……『いつぞやエレベーターで出会った娘』……?もしや、“千”でございますか?」
『ウ〜〜ッ……』
父役が尋ねると、おしら様は深く頷いた。
しかし、父役は愛想笑いを浮かべて言う。
「しかしながらぁ、お客様。あの娘は“小湯女”に過ぎません。のでぇ……今一度、この中からお選びください」
うやうやしく、泡姫ご紹介帳を差し出す父役。けれど、おしら様はムッとしたように目を細めた。 - 12◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 22:29:16
- 13◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 22:33:41
すると——おしら様は、徐に父役へ片手を伸ばした。
その先には……
「ヒャッ!……砂金の大粒!」
父役は目を丸くして、砂金に食いついた。
すぐさま膝をつくと、興奮した様子で客にペコペコと頭を下げる。
「大変ご無礼いたしました!ただちに手配させていただきます!」
父役はそう叫ぶや否や、部屋を飛び出していった。 - 14二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 22:54:12
このレスは削除されています
- 15◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 22:54:51
(ここからは安価を増やしていきたいと思います。お待たせ致しました。)
- 16◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 22:57:15
千尋は巨大な風呂釜の縁に登って、湯を張っていた。木樋から勢いよく薬湯が注がれ、湯船をなみなみと満たしていく。
やがて、ちょうどいい頃合いを見て、木樋の先から垂れている紐を引くと、お湯の勢いが無くなっていき、ついにはチョロチョロ……と止まった。
「……今日はどんなお客さんが来るのかな」
そう呟いたところに——『兄役』が湯場へ入り込んできた。
「千!そなた、今夜は“泡湯”番だ!」
「えっ……?」
千尋は思わず目をぱちぱちさせた。
この大浴場で働くようになって、ひと月ほどが経つが、“泡湯”などは聞いたことがない。
千尋はしばらく返事に困っていたが、思い切って口を開いた。 - 17◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 22:57:45
「す、すみません……アワユって、何ですか?」
その言葉に、兄役は呆れたような表情を見せる。
「……そなた、知らんのか……!それではお客様の世話など、話にならん……!さて、困った……どうすれば……」
額に手を当ててウロウロする兄役の姿に、千尋の心にはなんとも言えない不安が湧いてきた。 - 18◆va2KrOhAnM25/08/11(月) 23:00:39
(八百万の神々が“溜まったモノ”を抜いてもらう、油屋最高級の湯場『泡湯』。
ですが、ダイスの展開でリンが別の持ち場についちゃったので、千尋にヤリ方を教えてくれる人がいないのでは……
次の行動/展開を、>>21 までで🎲)
- 19二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 01:02:46
通りがかったモブ女従業員を捕まえて教育係に任命